説明

ポリシクロ染料およびその使用

本発明は、架橋ポリシクロ部分を含んでなる蛍光性化合物のファミリーに関する。化合物は、タンパク質、核酸、および治療的小型分子などの生体分子に化学的に結合できる。化合物は、多様な医学、生物学、および診断用途におけるイメージングのために使用でき、特に哺乳類において関心のある領域を生体内で画像化するのに有用である。本方法は、(a)本発明の蛍光色素化合物を動物またはヒトなどの対象に投与するステップと、(b)蛍光色素化合物を対象に分布させ、または生物学的標的と接触もしくは反応させるステップと、(c)対象を、例えば蛍光色素化合物が吸収できる波長の光などの電磁放射に曝すステップと、(d)蛍光色素化合物によって放出される光学信号を、例えば内視鏡、カテーテル、断層撮影システム、平面または反射システム、ハンドヘルド光学イメージングシステム、または術中システム、および顕微鏡を用いて検出するステップとを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によってその全体を本明細書に援用する2007年2月9日に出願された米国仮特許出願第60/889,066号明細書の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
光学的イメージング法は、その他のイメージング法に比べていくつかの利点を提供する。このようなイメージングは、典型的に赤色および近赤外線(NIR)範囲(600〜1200nm)の光を使用して組織透過を最大化し、ヘモグロビンおよび水などの天然の生物学的吸収体からの吸収を最小化する。光学的イメージングは高感度を提供することができ、被検者または検査技師の電離放射線への曝露を必要とせず、複数の識別可能プローブの同時使用を可能にでき(これは分子イメージングにおいて重要であり得る)、機能的イメージングおよび生体内鏡検法のそれぞれで重要な高い時間解像度および空間解像度を提供する。
【0003】
蛍光イメージングでは、励起光源としてフィルター透過光または規定帯域幅のレーザーを使用する。励起光は体組織を透過し、励起光がレポーター分子(例えば造影剤または造影プローブ)に遭遇すると光は吸収される。次にレポーター分子は、励起光とは異なる検出可能な特性を有する光を発する。次に得られた放射光を使用して、画像を構築できる。ほとんどの光学的イメージング技術は、レポーター分子として有機および無機蛍光染料の使用に依存する。
【0004】
蛍光染料は一般に公知であり、蛍光鏡検法、蛍光免疫測定法、およびフローサイトメトリーなどの手順による、様々な生体および非生体材料の蛍光標識および検出のために使用される。このような材料を蛍光染料によって標識する典型的な方法は、染料分子上の適切な基と、標識する材料上の適合する基との間の結合によって、蛍光性の複合体を作り出すことである。このようにして、細胞、組織、アミノ酸、タンパク質、抗体、薬剤、ホルモン、ヌクレオチド、核酸、脂質、および多糖類などの材料を化学的に標識、検出または定量化してもよく、または標的材料と特異的に結合でき蛍光検出方法によって検出される、蛍光性プローブとして使用してもよい。色鮮やかな蛍光染料は、付着した材料を非常に高感度で検出または局在化できるようにする。
【0005】
長年にわたってポリメチン染料は、写真において、特にスペクトルの赤色および近赤外線領域で増感剤として有用であった。しかしより最近では、これらの染料は、レーザーおよび電気光学用途、光学的記録媒体、および医療診断用途などの多様な異なる革新的な技術分野で使用されている。このような用途では、例えば必要とされる純度および合成法の再現性など、染料に高い水準が求められる。ポリメチン染料は、特に、得られるコンジュゲートが効率的な蛍光性生物学的分析物またはプローブとして機能するように、このような染料が関心のある生体分子と安定した共有結合を形成できる官能基を含む場合、生物学的用途における標識薬剤として有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それにもかかわらず、様々な医学的、診断用、および生物学的用途で使用できる新しい染料に対する継続的な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一つには、多様な生体外および生体内イメージング用途において使用できる、ポリメチン架橋を含有する蛍光色素化合物を生成できるという発見に基づく。
【0008】
一態様では、本発明は、一般に式1、
−PMB−Z (1)
(式中、
およびZはそれぞれ独立して、複素環部分を含んでなる多環基を表し、PMBは架橋ポリシクロ部分を含んでなるポリメチン架橋を表す)で表される蛍光色素化合物ファミリーおよびそれらの塩類を提供する。特定の実施態様では、ポリメチン架橋は架橋ビシクロ部分を含んでなる。
【0009】
好ましい実施態様では、本発明の蛍光色素化合物は、式、
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R、R、R、R、R、R、X、X、X、X、X、W、W、n、およびnについては、より詳細に後述する)およびそれらの塩類を有する。
【0012】
別の態様では、本発明は生体内での光学的イメージング方法を提供する。本方法は、(a)本発明の蛍光色素化合物を動物またはヒトなどの対象に投与するステップと、(b)蛍光色素化合物を対象に分布させ、または生物学的標的と接触もしくは反応させるステップと、(c)対象を、例えば蛍光色素化合物が吸収できる波長の光などの電磁放射に曝すステップと、(d)蛍光色素化合物によって放出される光学信号を、例えば内視鏡、カテーテル、断層撮影システム、平面または反射システム、ハンドヘルド光学イメージングシステム、または術中システム、および顕微鏡を用いて検出するステップとを含んでなる。化合物によって放出される信号を使用して、画像化する領域または構造の画像、例えば断層画像などを構築できる。蛍光色素化合物は、生体分子と化学的に結合する蛍光色素染料を含んでなることができるものと理解される。
【0013】
前述のステップを所定の間隔で反復し、それによって経時的に対象における蛍光性化合物の放出信号を評価できるようにしてもよい。特定の実施態様では、その信号特性が識別可能である2つ以上の化合物を対象に投与でき、それらの放出特性を使用して対象中の2つ以上の特徴を画像化できる。
【0014】
開示される方法を使用して、例えば骨疾患、癌、心血管疾患、皮膚疾患、公害病、免疫疾患、感染症、炎症、遺伝性疾患、代謝疾患、神経変性疾患、眼疾患、および呼吸器疾患などの疾患を検出および/またはモニターできる。
【0015】
特定の実施態様では、細胞を本明細書に記載の蛍光色素化合物で標識し、得られた標識細胞を対象に投与する。蛍光色素化合物によって放出される信号を使用して、細胞の輸送および局在化をモニターし、または細胞治療法の有効性を評価できる。
【0016】
別の態様では、本発明は、生体外での光学的イメージング方法を提供する。本方法は、(a)例えば生物学的サンプルなどのサンプルを本発明の蛍光色素化合物に接触させるステップと、(b)蛍光色素化合物を生物学的標的によって活性化させ、またはそれに結合させるステップと、(c)場合により非結合蛍光色素化合物を除去するステップと、(d)サンプルを例えば蛍光色素化合物が吸収できる波長の光などの電磁放射に曝すステップと、(e)蛍光色素化合物から放出される信号を検出し、それによって蛍光色素化合物が生物学的標的によって活性化され、またはそれに結合したかどうかを判定するステップとを含んでなる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、約500nm〜約1100nmの範囲、より好ましくは約600nm〜約900nmの範囲の波長を有する光を吸収および/または放出する蛍光色素化合物(染料)のファミリーを提供する。特定の実施態様では、染料は約600nm〜約850nm、約650nm〜約900nm、または約650nm〜約850nmの範囲の波長を有する光を吸収および/または放出する。蛍光色素化合物は、多様な生体外および生体内イメージング用途において特に有用である。
【0018】
本発明の蛍光色素化合物は、式、Z−PMB−Z(式中、ZおよびZはそれぞれ独立して、複素環部分を含有する同一または異なる多環基を表し、PMBは架橋ポリシクロ部分を含んでなるポリメチン架橋を表す)およびそれらの塩類によって表すことができる。蛍光色素化合物についてはより詳細に後述する。しかし本発明をさらに詳しく説明する前に、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲で用いられる特定の用語を、以下の節にまとめることとする。
【0019】
I.定義
ここで列挙する定義は、開示の残部に照らして読まれ、当業者が理解するように理解されるべきである。特に断りのない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0020】
「化学的に結合した」とは、結合した凝集体が一体として機能するのに十分強力な原子間引力によって結合していることを意味する。これとしては、限定されるものではないが、共有結合などの化学結合と、イオン結合、金属結合、および架橋結合などの非共有結合と、疎水性相互作用と、水素結合と、ファンデルワールス相互作用とが挙げられる。これには、架橋またはケージングもまた含まれる。
【0021】
「アルキル」という用語は当業者には認識され、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基をはじめとする飽和脂肪族基を含む。特定の実施態様では、直鎖または分枝鎖アルキルは、その主鎖中に約30個以下の炭素原子を有し(例えば直鎖ではC〜C30、分枝鎖ではC〜C30)、あるいは約20個以下を有する。同様にシクロアルキルは、それらの環構造中に約3〜約10個の炭素原子を有し、あるいは約5、6または7個の炭素を環構造中に有する。「アルキル」という用語はまた、ハロゲン置換アルキルも含む。
【0022】
さらに「アルキル」という用語は「置換アルキル」を含み、これは炭化水素主鎖の1つ以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分を指す。このような置換基としては、例えばヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオフォルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくは複素環式芳香族部分が挙げられる。適切ならば、炭化水素鎖上の置換部分は、それ自体が置換されていてもよいことを当業者は理解するであろう。例えば置換アルキルの置換基は、置換および非置換のアミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートをはじめとする)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイル、およびスルホネートをはじめとする)、およびシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート、およびエステルをはじめとする)、−CNなどを含んでもよい。例示的な置換アルキルについては後述する。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、−CNなどによってさらに置換されていてもよい。
【0023】
「アラルキル」および「アルキルアリール」という用語は当業者には認識され、アリール基(例えば芳香族または複素環式芳香族基)で置換されたアルキル基を指す。
【0024】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は当業者には認識され、長さが類似し、上述のアルキルへの置換があり得るが、それぞれ少なくとも1つの二重または三重結合を含有する、不飽和脂肪族基を指す。
【0025】
「ヘテロ原子」という用語は当業者には認識され、炭素または水素以外のあらゆる元素の原子を指す。例示的なヘテロ原子としては、ホウ素、窒素、酸素、リン、イオウ、およびセレンが挙げられる。
【0026】
「アリール」という用語は当業者には認識され、例えばベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどの0〜4個のヘテロ原子を含んでもよい5−、6−、および7−員環の単環芳香族基を指す。環構造中にヘテロ原子を有するこれらのアリール基はまた、「ヘテロアリール」または「複素環式芳香族」とも称される。芳香族環は環の1つ以上の位置で、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素環式芳香族部分、−CF、−CNなどの上述のような置換基によって置換されてもよい。「アリール」という用語はまた、その中で2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通である(環が「融合環」である)2つ以上の環を有する多環系も含み、例えば環の少なくとも1つが芳香族であり、もう1つの環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであってもよい。
【0027】
「ヘテロシクリル」「複素環基」、または「複素環部分」という用語は当業者には認識され、その環構造が1〜4個のヘテロ原子を含む3〜約10員環の構造、あるいは3から約7員環を指す。複素環はまた多環式であってもよい。ヘテロシクリル基としては、例えばチオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサンテン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタルアジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノンおよびピロリジノンなどのラクタム、スルタム、スルトンなどが挙げられる。複素環は、1つ以上の位置で、例えばハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素環式芳香族部分、−CF、−CNなどの上述のような置換基によって置換されてもよい。
【0028】
「ポリシクリル」、「多環基」または「ポリシクロ部分」という用語は当業者には認識され、その中で2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通である、例えば環が「融合環」である、2つ以上の環を指す(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリル)。非隣接原子を通じてつながった環は、「架橋」環と称される。多環の各環は、例えばハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族または複素環式芳香族部分、−CF、−CNなどの上述のような置換基によって置換されてもよい。
【0029】
「ニトロ」という用語は当業者には認識され、−NOを指し、「ハロゲン」という用語は当業者には認識され、−F、−Cl、−Brまたは−Iを指し、「スルフヒドリル」という用語は業者には認識され、−SHを指し、「ヒドロキシル」という用語は−OHを意味し、「スルホニル」という用語は当業者には認識され、−SOを指す。「ハロゲン化物」はハロゲンの対応するアニオンを表し、「擬ハロゲン化物」は、Cotton and Wilkinsonによる「Advanced Inorganic Chemistry」に記載の定義を有する。
【0030】
「アミン」および「アミノ」という用語は当業者には認識され、例えば一般式、
【0031】
【化2】

【0032】
(式中、R50、R51、R52、およびR53はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH−R61を表し、またはR50およびR51はそれらが付着するN原子と一緒になって環構造中に4〜8原子を有する複素環を構成し、R61はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環を表し、mは0または1〜8の範囲内の整数である)によって表されてもよい部分である、非置換および置換アミンの双方を指す。特定の実施態様では、R50またはR51の1つだけがカルボニルであってもよく、例えばR50、R51、および窒素は一緒になってイミドを形成しない。別の実施態様では、R50およびR51(そして場合によりR52)はそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、または−(CH−R61を表す。したがって「アルキルアミン」という用語は、それに付着する置換または非置換アルキルを有する上で定義されるアミン基を含み、すなわちR50およびR51の少なくとも1つはアルキル基である。
【0033】
「アシルアミノ」という用語は当業者には認識され、一般式、
【0034】
【化3】

【0035】
(式中、R50は上に定義したとおりであり、R54は水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH−R61(式中、mおよびR61は上で定義される)を表す)によって表されてもよい部分を指す。
【0036】
「アミド」という用語は当業者にはアミノ置換カルボニルとして認識され、一般式、
【0037】
【化4】

【0038】
(式中、R50およびR51は上で定義される)によって表されてもよい部分を含む。本発明のアミドの特定の実施態様は、不安定であり得るイミドを含まない。
【0039】
「アルキルチオ」という用語は、それに付着するイオウ基を有する、上で定義されるアルキル基を指す。特定の実施態様では、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニル、および−S−(CH−R61(式中、mおよびR61は上で定義される)の1つによって表される。代表的なアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
【0040】
「カルボニル」という用語は当業者には認識され、一般式、
【0041】
【化5】

【0042】
(式中、X50は結合であるか、または酸素またはイオウを表し、R55およびR56は水素、アルキル、アルケニル、−(CH−R61または薬学的に許容できる塩を表し、R56は水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH−R61(式中、mおよびR61は上で定義される)を表す)によって表されてもよい部分を含む。X50が酸素であり、R55またはR56が水素でない場合、式は「エステル」を表す。X50が酸素であり、R55が上に定義したとおりである場合、部分は本明細書でカルボキシル基と称され、特にR55が水素である場合、式は「カルボン酸」を表す。X50が酸素であり、R56が水素である場合、式は「ホルメート」を表す。一般に上式の酸素原子がイオウによって置換されている場合、式は「チオールカルボニル」基を表す。X50がイオウであり、R55またはR56が水素でない場合、式は「チオールエステル」を表す。X50がイオウであり、R55が水素である場合、式は「チオールカルボン酸」を表す。X50がイオウであり、R56が水素である場合、式は「チオールホルメート」を表す。他方では、X50が結合であり、R55が水素でない場合、上式は「ケトン」基を表す。X50が結合であり、R55が水素である場合、上式は「アルデヒド」基を表す。
【0043】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は当業者には認識され、それに付着する酸素を有する、上で定義されるアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」は酸素によって共有結合する2つの炭化水素である。したがってアルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH−R61(式中、mおよびR61は上述のとおり)で表されてもよいものなどのアルコキシルであり、またはそれに類似している。
【0044】
「スルホネート」という用語は当業者には認識され、一般式、
【0045】
【化6】

【0046】
(式中、R57は電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである)によって表されてもよい部分を指す。
【0047】
「スルフェート」という用語は当業者には認識され、一般式、
【0048】
【化7】

【0049】
(式中、R57は上で定義される)によって表されてもよい部分を含む。
【0050】
「スルホンアミド」という用語は当業者には認識され、一般式、
【0051】
【化8】

【0052】
(式中、R50およびR56は上で定義される)によって表されてもよい部分を含む。
【0053】
「スルファモイル」という用語は当業者には認識され、一般式、
【0054】
【化9】

【0055】
(式中、R50およびR51は上で定義される)によって表されてもよい部分を指す。
【0056】
「スルホニル」という用語は当業者には認識され、一般式、
【0057】
【化10】

【0058】
(式中、R58は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールの1つである)によって表されてもよい部分を指す。
【0059】
「スルホキシド」という用語は当業者には認識され、一般式、
【0060】
【化11】

【0061】
(式中、R58は上で定義される)によって表されてもよい部分を指す。
【0062】
「ホスホリル」という用語は当業者には認識され、一般に、式、
【0063】
【化12】

【0064】
(式中、Q50はSまたはOを表し、R59は水素、低級アルキルまたはアリールを表す)によって表されてもよい。例えばアルキルを置換するために使用される場合、ホスホリルアルキルのホスホリル基は、一般式、
【0065】
【化13】

【0066】
(式中、Q50およびR59はそれぞれ独立して、上で定義され、Q51はO、SまたはNを表す)によって表されてもよい。Q50がSである場合、ホスホリル部分は「ホスホロチオエート」である。
【0067】
「ホスホラミダイト」という用語は当業者には認識され、一般式、
【0068】
【化14】

【0069】
(式中、Q51、R50、R51、およびR59は上で定義される)で表されてもよい。
【0070】
「ホスホンアミダイト」という用語は当業者には認識され、一般式、
【0071】
【化15】

【0072】
(式中、Q51、R50、R51、およびR59は上で定義され、R60は低級アルキルまたはアリールを表す)で表されてもよい。
【0073】
アルケニルおよびアルキニル基に類似体置換を行って、例えばアミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニルまたはアルキニルを生成してもよい。
【0074】
例えばアルキル、m、nなどの各表現の定義があらゆる構造中で1回を超えて現れる場合、同一構造中の他の場所でのその定義から独立していることが意図される。
【0075】
「置換」または「〜で置換された」とは、このような置換が、置換された原子および置換基の許容原子価に従うこと、および置換が、例えば転位、環化、離脱、またはその他の反応による変換などを自然発生的に被らない安定した化合物をもたらすこと、という黙示条件を含むものと理解される。
【0076】
「置換された」という用語はまた、有機化合物の全ての許容できる置換基を含むものと考えられる。広義の態様では、許容できる置換基としては、有機化合物の非環式および環式、分枝および非分枝、炭素環式および複素環式、芳香族、および非芳香族置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば上述したものが挙げられる。許容できる置換基は1つ以上であってもよく、適切な有機化合物について同じであるかまたは異なっていてもよい。本発明の目的で、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載される有機化合物のあらゆる許容できる置換基を有してもよい。本発明は、有機化合物の許容できる置換基によってどのようにも限定されるものではない。
【0077】
「ポリメチン架橋」という用語は、奇数の炭素を含んでなる共役二重結合メチレン鎖を指す。このような架橋は共役二重結合メチレン鎖の一部として、環構造を含むことができる。
【0078】
「生理学的に許容可能なキャリア」という用語は、その中に本発明の化合物の1つ以上が分散、溶解、懸濁、混合して、生理学的に許容可能である、すなわち過度の不快感、または刺激、または毒性なしに、対象の身体に、その中に、またはその上に投与できるキャリアを指す。
【0079】
説明全体を通じて、組成物が特定の構成要素を有する、含む、または含んでなると述べられる場合、組成物はまた、列挙された組成物から本質的になる、またはそれからなることが考えられる。同様に方法が特定の方法ステップを有する、含む、または含んでなると述べられる場合、その方法はまた、列挙された方法ステップから本質的になる、またはそれからなる。さらにステップの順序または特定の動作を実施する順序は、本発明が作動可能のままでありさえすれば、重要でないものと理解される。さらに2つ以上のステップまたは動作を同時に行ってもよい。
【0080】
II.本発明の蛍光色素化合物
考察されたように、本発明の化合物は、式(1)、
−(PMB)−Z (1)
およびそれらの塩類で表されることができる。
【0081】
およびZはそれぞれ独立して、複素環部分を含んでなる多環基を表す。例えばZおよびZはそれぞれ独立して、置換または非置換インドリニウムまたはベンゾインドリニウム環から選択されることができる。PMBは架橋ポリシクロ部分を含んでなるポリメチン架橋を表す。化合物は約500nm〜約1100nmの範囲の、好ましくは約600nm〜約900nmの範囲の吸収および放射波長を有する。特定の実施態様では、染料は約600nm〜約850nm、約650nm〜約900nm、または約650nm〜約850nmの範囲の波長を有する光を吸収および/または放出する。
【0082】
、Z、および/またはPMBは、場合により、生体分子と共有結合および/または化学結合を形成できるリンカー部分を含むことができる。このようなリンカー部分は、異なる化合物上の官能基と化学的に反応して共有結合を形成できる反応性基、または異なる化合物上の反応性基と化学的に反応して共有結合を形成できる官能基を含むことができる。このような反応性基としては、例えばそれぞれ求核剤または求電子剤である、対応する官能基への曝露を通じて共有結合を形成できる、求電子剤または求核剤が挙げられる。あるいは、反応性基は光活性化可能な基であり、適切な波長の光で照射して初めて化学的に反応性になる。本発明の化合物と結合させる生体分子との反応によって、本発明の化合物を複合物質に付着させる新しい結合に、反応性基の1つ以上の原子を組み込むことができる。
【0083】
本明細書で考察する生体分子としては、限定されるものではないが、タンパク質(例えば酵素、ホルモン、抗体およびその抗原結合断片、および一本鎖抗体)、ペプチド、アミノ酸、糖タンパク質、細胞受容体のリガンド、多糖類、炭水化物、核酸(例えばDNAおよびRNA)、ヌクレオシド、ヌクレオチド、アプタマー、ペプチジル核酸、細胞受容体、酵素基質、酵素補助因子、ビオチン、ホルモン、神経伝達物質、成長因子、サイトカイン、リンフォカイン、レクチン、セレクチン、脂質、脂質集団(例えばミセルまたは小胞)、および毒素が挙げられる。葉酸媒介ターゲティングなどのターゲティングおよび送達に関与するものと(Leamon & Low,Drug Discovery Today,6:44−51,2001)、トランスフェリンと、ビタミンと、炭水化物と、これに限定されるものではないが、アシアロ糖タンパク質受容体、ソマトスタチン、神経成長因子、オキシトシン、ボンベシン、カルシトニン、アルギニンバソプレシン、アンギオテンシンII、心房性ナトリウム利尿ペプチド、インシュリン、グルカゴン、プロラクチン、ゴナドトロピン、様々なオピオイドおよびウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子をはじめとする内面化受容体を標的とするリガンドなど、その他の生体分子も使用できる。限定されるものではないが、ウィルスおよび細菌をはじめとするいくつかの起源に由来することができる、膜、膜貫通、および核転座シグナル配列もまた考えられる。生体分子としては、有機分子、ポリマー、デンドリマー、細胞(例えば哺乳類細胞、非哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、胎芽細胞)、細菌、バクテリオファージ、ウィルス、生物、粒子、微粒子、またはナノ粒子もまた挙げられる。生体分子としては、限定されるものではないが、光線治療または放射線治療分子をはじめとする治療用薬剤分子もまた挙げられる。
【0084】
本発明の蛍光色素化合物を使用して、以下のタイプの造影剤またはプローブの1つ以上を作り出すことができる:分子プローブ、活性化可能プローブ、酵素活性化可能プローブ、量子ドットベース造影プローブ、ナノ粒子ベース造影プローブ、生体分子標的プローブ、波長シフトビーコン、多色プローブ、対標的高結合親和性プローブ、非特異的造影プローブ、細胞ベースプローブ、二重モダリティ剤、光学的/CT二重モダリティ剤(例えば物理的または化学的にCT剤に結合する光学剤)、光学的/MR二重モダリティ剤(例えば物理的にまたは化学的にMR剤に結合する光学剤)、光学的/核二重モダリティ剤(例えば放射性原子と物理的にまたは化学的に結合する光学剤)および/またはあらゆるそれらの組み合わせ。
【0085】
化学的に結合した生体分子を含む本発明の化合物は、生体分子と化学的に結合していない化合物と比較して、強化された蛍光を有し得る。特定の実施態様では、非結合化合物と比べると、蛍光が約10%、約25%または約50%強化される。本発明の化合物と化学的に結合する生体分子は、生体内および/または生体外で、分子の蓄積、生体内分布、除去、ターゲティング、結合、および/または認識を変更または増強し得る。
【0086】
1つ以上の生体分子は、いくつかの反応性官能基を含有する多価の結合またはリンカーを通じてZ、PMB、および/またはZと化学的に結合して、構造(Z−(PMB)−Z)−((L)(BM)、(式中、Lはリンカーまたはスペーサーまたは多価のスペーサーまたはリンカーであり、BMは生体分子であり、Z、Z、およびPMBは先に定義されたとおりであり、t=1〜6、v=1〜500およびr=1〜500である)の生体適合性蛍光分子を形成してもよい。(L)は、vが1より大きい場合、同一リンカーのコピーまたは異なるリンカーの組み合わせを表す。
【0087】
本発明の化合物の適切なリンカー部分の例は、先行文献に記載されている(米国特許出願公開第2002/0064794号明細書(2002年)、米国特許第6,086,737号明細書、米国特許第6,048,982号明細書、米国特許第6,747,159号明細書、および米国特許第6,448,008号明細書を参照されたい)。
【0088】
2つ以上の本発明の蛍光色素化合物を単一生体分子と化学的に結合できるものと理解される。このような構造の例は、[Z−(PMB)−Z−BM(式中、u=1〜500であり、Z、Z、PMB、およびBMは上で定義される)として表すことができる。
【0089】
開示される化合物の塩もまた考慮され、塩基および酸付加塩の双方が含まれる。本発明の化合物は、適切な有機塩基または無機塩基と反応して塩基付加塩を形成できる、1つ以上の十分に酸性の陽子を有することができる。塩基付加塩としては、アンモニウムまたはアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物、炭素塩、炭酸水素塩などの無機塩基、およびアルコキシド、アルキルアミド、アルキル、およびアリールアミンなどの有機塩基に由来するものが挙げられる。したがって本発明の塩を調製するのに有用な塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
【0090】
アミンなどの十分に塩基性の基を有する本発明の化合物は、有機酸または無機酸と反応して酸付加塩を形成できる。塩基性基がある化合物から酸付加塩を形成するのに一般に用いられる酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸、およびp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニル−スルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸などの有機酸などである。このような塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸、塩化物、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソブチレート、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩などが挙げられる。
【0091】
例えば式(1)の化合物は、
【0092】
【化16】

【0093】
(式中、
およびXはそれぞれ独立して、C(CH)(CH)(式中、KおよびKはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、およびC〜C20アルキルからなる群から選択され、KおよびKは場合により一緒になってサイクリック環の一部を形成できる)、O、S、およびSeからなる群から選択され、
およびRはそれぞれ独立して、H、C1〜20、アルキル、アルキルアリール、および−R(式中、Rは独立してC〜C20アルキル、アリール、アルキルアリール、および−(CH−O−CHCH(式中、yは1〜100の整数から選択される)からなる群から選択され、Tは生体分子と共有結合を形成できるリンカー部分である)からなる群から選択され、
はH、ハロゲン、−T10(式中、TはS、O、およびNR’からなる群から選択され、R10はH、C1〜20アルキル、アリール、アリールアルキルからなる群から選択される)、−T、および−Rからなる群から選択され、
およびXはそれぞれ独立して、(CK(式中、iは1〜7の整数から選択される)、NR’(式中、R’はH、ハロゲン、およびアルキルからなる群から選択される)、−NR’R、O、およびSからなる群から選択され、
およびWはそれぞれアリール部分の一部としての非金属原子を表し、
、およびnはそれぞれ独立して、0〜4から選択され、
、R、R、およびRはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、カルボキシレート、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン、アミド、スルホンアミド、ヒドロキシル、O−アルキル、S−アルキル、アルキル、スルホン酸、スルホン酸塩、ホスホリル、SONR−Q−CHR−[(CH−Y−(CH−(O)(CH
(式中、
は独立してC〜C20アルキル、アリール、アルキルアリールからなる群から選択され、
は独立してH、C〜C20アルキル、アリール、およびアルキルアリールからなる群から選択され、
およびRは合わさって、場合により置換されていてもよい4−、5−、6−または7−員環の飽和または不飽和環を形成し、
Qは独立して結合、カルボニル、C〜Cアルキル、およびC〜Cシクロアルキルからなる群から選択され
Yは独立して結合、−SONR−Q−CHR−、−O−、−COO−、および−CONR’−からなる群から選択され、
hは0〜70から選択される整数であり、
kは0または1であり、
dは0〜12の整数であり、
mは0〜12の整数であり、
pは0〜12の整数である)、
および−Rからなる群から選択される)またはその塩によって表すことができる。
【0094】
特定の実施態様では、XはO−(CH−T、S−(CH−T、O−Ph−(CH−T、S−Ph−(CH−T(式中、jは0〜6の整数であり、Phはフェニルである)からなる群から選択することができる。
【0095】
別の実施態様では、Tは、−NH、−OH、−SH、−SOH、カルボキシル、−COCl、−(CO)O(CO)R13(式中、R13はH、アルキル、およびアリールからなる群から選択される)、−CONHNH、置換および非置換N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、置換および非置換N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、ニトロ−またはフルオロ−フェノールエステル、アジド、−NCS、−CHO、アジド、−COCHI、ホスホラミダイト、フタルアミド、およびマレイミドからなる群から選択される。
【0096】
別の実施態様では、Xは−CH−CH−であり、Xは−CH、−NCH、および−C(CHからなる群から選択される。
【0097】
別の実施態様では、nおよびnは1である。
【0098】
別の実施態様では、XおよびXは−C(CHである。
【0099】
およびWは同じであるかまたは異なってもよいものと理解される。例えばWおよびWは、
【0100】
【化17】

【0101】
からなる群から選択することができる。融合環上への1つ以上の非水素置換基の組み込みを使用して、得られた染料の吸収および放出スペクトルを調整できる。
【0102】
特定の実施態様では、本発明の化合物は、式11〜22、
【0103】
【化18】

【0104】
【化19】

【0105】
(式中、TはOまたはSであり、XはN−MeまたはCHであり、R11はSOH、COOH、OH、SH、およびNHからなる群から選択され、R12はH、SOH、NCS、(CHCOOH(式中、kは0〜6の整数である)からなる群から選択される)のいずれか1つで表すことができる。
【0106】
ポリメチン架橋の構造は、蛍光色素の吸収および蛍光特性に影響を与え得る。炭素原子数またはZとZと間の二重結合数に左右されるポリメチン架橋の長さは、蛍光色素の吸収および蛍光特性に変化を引き起こすことができる。例えばn=0、n=0、X=Hであり、WおよびWのそれぞれがさらなる環に融合していないインドリニウム複素環である場合、得られる蛍光色素は、典型的に約650nm前後の最大吸収を示す。n=1、n=1では、同様の化合物は典型的に約750nm前後の最大吸収を示す。
【0107】
本発明の化合物を環およびポリメチン架橋中の二重結合の位置を示す構造によって、本明細書で示す場合、構造はまた、例えば下図で示されるようなあらゆる共鳴構造をも包含するものと理解される。
【0108】
【化20】

【0109】
上の各構造中のR、R、R、R、R、R、W、W、X、X、X、X、X、n、およびnは、ここで定義されるとおりである。
【0110】
一般に本明細書で開示される化合物は、次のようにして合成できる。最初に四級化複素環Zを調製する。次に複素環塩基と、PhNH−PMB−CH=NHPh.HCl、またはRO−PMB−CH(OR)などの求電子性試薬であるポリメチン架橋(PMB)(式中、PMBは共役二重結合鎖(CH=CH)−を含み、それはこのような鎖の一部としてポリシクロ部分を含み、Phはフェニル環であり、Rはメチル基またはエチル基である)とを反応させて、Z−PMB−CH=NHPhまたはZ−PMB−CH=NAcPh(式中、Acはアセチル基である)またはZ−(CH=CH)−ORなどのヘミシアニンを得る。次にこれらの中間体を異なる四級複素環Zと反応させる。官能性側鎖は、第1の(Z)または第2の(Z)四級化複素環のいずれかに付着する。最終結果は、非対称ポリメチン標識試薬Z−PMB−Zである。ヘミシアニン中間体の例については、F.M.Hamer,「Some Unsymmetrical Pentamethincyanine Dyes and their Tetramethin Intermediates」,J.Chem.Soc.,32(1949)およびR.B.Mujumdar,L.A.Ernst,Swati R.Mujumdar,C.J.Lewis,およびA.S.Waggoner,「Cyanine Dye Labelling Reagents:Sulfoindocyanine Succinimidyl Esters」,Bioconjugate Chemistry,4,105,(1993)に記載されている。
【0111】
別の態様では、本発明は、一般構造式40および41、
【0112】
【化21】

【0113】
(式中、X、X、およびXは上で定義され、Phはフェニルである)の化合物を提供する。
【0114】
特定の実施態様では、XおよびXはそれぞれ独立して、CH−CH、NMe、およびCMeからなる群から選択される。
【0115】
特定の別の実施態様では、式42〜45によって表される以下の構造を考慮する。
【0116】
【化22】

【0117】
特定の実施態様では、本発明の化合物は、生体分子(biological molecule)または生体分子(biomolecule)(BM)と化学的に結合できる。得られた化合物−生体分子コンジュゲートは、例えば受容体−リガンド相互作用、酵素−基質相互作用、抗体−抗原相互作用などを通じた、例えば生体分子と標的との間の相互作用の結果、標的に対する高い結合親和力を有することができる。一般形態[Z−(PMB)−Z]−BMを有するこのような化学的に結合した化合物は、例えば次のように表すことができる。
【0118】
【化23】

【0119】
および
【0120】
【化24】

【0121】
上の各構造中のR、R、R、R、R、R、R、W、W、X、X、X、X、X、T、n、およびnは、本明細書で定義されるとおりであり、Yは対イオンであり、BMは生体分子である。前述の構造は例示的であり、生体分子(BM)は、R、R、R、R、R、R、R、W、W、X、X、X、X、X、およびTと同定された基のいずれか1つ以上を通じて、このような化合物と化学的に結合できるものと理解される。
【0122】
化合物は次のようにして、生体分子または細胞で標識できる。本発明の化合物(蛍光色素)を様々な濃度の1つ以上の生体分子と共に、約4℃から約37℃の温度で約5分から24時間以上インキュベートする。インキュベーションの後、例えばクロマトグラフィーまたは限外濾過法などの当業者に公知の方法を使用して、遊離蛍光色素または生体分子と化学的に結合した蛍光色素を除去できる。
【0123】
細胞をインキュベーションした後に、遠心分離して細胞ペレットを作成でき、それから上清を除去する。細胞を培養液または生理学的食塩水に再懸濁して、残留、非結合または遊離蛍光色素を洗い流すことができる。これを数回反復できる。このようにして、内部または外部細胞分子への直接的なコンジュゲーション、または限定されるものではないが、細胞質ゾル、エンドソーム、核、ゴルジ体、およびその他の細胞内小器官をはじめとする様々な細胞内区画内への非特異的細胞取り込みのいずれかによって、細胞を標識できる。
【0124】
開示される化合物および/または組成物は、場合により化合物の使用説明書を含んでもよいキットとしてパッケージできる。非限定的な例としては、例えば粉末または凍結乾燥形態の組成物、および生体内および/または生体外用途のための戻し方、投薬量情報、および保存情報を含む使用説明書の入ったキットが挙げられる。キットは場合により、粉末形態を戻すためのバイアル、注射用シリンジ、カスタマイズされたIV送達系、吸入器などの、即座に使える液体形態の、または投与用溶液とのさらなる混合を要する組成物の容器を含有してもよい。このような容器は、単一または複数の対象用量を含んでもよい。さらにキットは、例えば専用内視鏡、濾光器などの生体内または生体外で組成物の検出を助ける構成要素を含み得る。
【0125】
生体分子と化学的に結合する化合物をはじめとするここで開示される化合物は、例えば動物またはヒト対象などの対象への投与に適した医薬組成物に調合できる。したがって製剤は、所望の形態および/または投与量に適した生理学的に許容可能なキャリアと共に、化合物を含む。生理学的に許容可能なキャリアは、水、食塩水を含むことができ、緩衝液などの薬剤、および医薬製剤での使用に適合する保存料などのその他の薬剤をさらに含んでもよい。好ましいキャリアは、流体、好ましくは液体、より好ましくは水溶液であるが、固形剤、局所製剤、吸入剤、点眼剤、および経皮製剤のためのキャリアについてもまた、本発明の範囲内として考えられる。
【0126】
さらに医薬組成物は、生理学的に許容可能なキャリア中に1つ以上の安定剤を含むことができる。このような組成物で使用するための適切な安定剤の例としては、例えばソルビトール、およびグリセロールなどの直鎖多価アルコールなどの例えば低分子量炭水化物が挙げられる。イノシトールなどのその他の低分子量炭水化物もまた使用してもよい。
【0127】
本発明の化合物は、経口的にまたは非経口的に投与できることが考えられる。非経口投与のためには、化合物は静脈内、筋肉内、皮膚的、経皮的、皮下、経直腸的、経鼻的、経膣的、および経眼的に投与できる。したがって組成物は、例えば固形錠剤、カプセル、丸薬、凍結乾燥粉末をはじめとする粉末、コロイド懸濁液、微小球、リポソーム顆粒、懸濁液、エマルジョン、溶液、ヒドロゲルをはじめとするゲル、ペースト、軟膏、クリーム、プラスター、灌注液、水薬、透過圧送達装置、坐薬、浣腸、注射剤、植込錠、スプレー、または煙霧剤の形態であってもよい。医薬組成物は、従来の製薬慣習に従って調合できる(例えば「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」,第20版,2000,A.R.Germaro編,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia、および「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology」,J.SwarbrickおよびJ.C.Boylan編,1988−1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照されたい)。
【0128】
III 本発明の蛍光色素化合物の用途
本発明の化合物は、多様な生体内および生体外用途で使用できる。これらの用途については、以下の節で論じる。
【0129】
(a)生体内用途
本発明は、例えば光学的イメージング用途などの多様なイメージング用途で使用できる新規の蛍光性化合物を提供する。光学的イメージング技術の総説については、例えばAlfano et al.,Ann.NY Acad.Sci.820:248−270,1997;Weissleder,Nature Biotechnology 19,316−317(2001);Ntziachristos et al.,Eur.Radiol.13:195−208(2003);Graves et al.,Curr.Mol.Med.4:419−430(2004);Citrin et al.,Expert Rev.Anticancer Ther.4:857−864(2004);Ntziachristos,Ann.Rev.Biomed.Eng.8:1−33(2006);Koo et al.,Cell Oncol.28:127−139(2006);およびRao et al.,Curr.Opin.Biotechnol.18:17−25(2007)を参照されたい。
【0130】
本発明の実施において有用なイメージングシステムは、典型的に3つの基本的構成要素を含む。(1)本発明の蛍光色素化合物を励起させる適切な光源、(2)蛍光色素励起を誘発するのに使用される光からの発光を分離または識別するシステム、および(3)検出システム。この検出システムは、ハンドヘルド式であることができ、または内視鏡、カテーテル、術中顕微鏡などのその他の有用な撮像装置内に組み込まれることができ、および/または観察者であることができる。
【0131】
好ましくは光源は、単色(または実質的に単色)光を提供する。光源は、適切に濾過された白色光、すなわち広帯域光源からの帯域光であることができる。例えば150ワットのハロゲンランプからの光をOmega Optical (Brattleboro,VT)から市販される適切な帯域フィルターに通過させることができる。システム次第で、光源はレーザーであることができる。例えばBoas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:4887−4891,1994;Ntziachristos et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:2767−2772,2000;およびAlexander,J.Clin.Laser Med.Surg.9:416−418,1991を参照されたい。イメージングのためのレーザーに関する情報は、例えばImaging Diagnostic Systems,Inc.,Plantation,FLおよび様々なその他の情報源にある。高域または帯域フィルターを使用して、励起光から光学発光を分離できる。適切な高域または帯域フィルターはOmega Optical,Burlington,VTから市販される。
【0132】
一般に光検出システムは、集光/画像形成コンポーネント、および光検出/画像記録コンポーネントを含むと見なすことができる。光検出システムは、双方の構成要素が組み込まれた一体型装置であることができるが、集光/画像形成コンポーネント、および光検出/画像記録コンポーネントについて、別々に論じる。
【0133】
特に有用な集光/画像形成コンポーネントは内視鏡である。腹膜(Gahlen et al.,J.Photochem.Photobiol.B 52:131−135,1999)、卵巣癌(Major et al.,Gynecol.Oncol.66:122−132,1997)、結腸および直腸(Mycek et al.,Gastrointest.Endosc.48:390−394,1998;and Stepp et al.,Endoscopy 30:379−386,1998)、胆管(Izuishi et al.,Hepatogastroenterology 46:804−807,1999)、胃(Abe et al.,Endoscopy 32:281−286,2000)、膀胱(Kriegmair et al.,Urol.Int.63:27−31,1999;およびRiedl et al.,J.Endourol.13:755−759,1999)、肺(Hirsch et al.,Clin Cancer Res 7:5−220,2001)、脳(Ward,J.Laser Appl.10:224−228,1998)、食道、および頭頸部領域をはじめとする、多数の組織および臓器の生体内光学的イメージングで使用される内視鏡装置および技術を本発明を実施するのに使用できる。
【0134】
その他のタイプの集光コンポーネントは、光ファイバー装置をはじめとするカテーテルベースの装置である。このような装置は、特に血管内イメージングに適する。例えばTearney et al.,Science 276:2037−2039,1997;およびCirculation 94:3013,1996を参照されたい。
【0135】
位相配列技術(Boas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:4887−4891,1994;Chance,Ann.NY Acad.Sci.838:29−45,1998)、光断層撮影(Cheng et al.,Optics Express 3:118−123,1998;およびSiegel et al.,Optics Express 4:287−298,1999)、生体顕微鏡検査(Dellian et al.,Br.J.Cancer 82:1513−1518,2000;Monsky et al,Cancer Res.59:4129−4135,1999;およびFukumura et al.,Cell 94:715−725,1998)、共焦点イメージング(Korlach et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:8461−8466,1999;Rajadhyaksha et al.,J.Invest.Dermatol.104:946−952,1995;およびGonzalez et al.,J.Med.30:337−356,1999)および蛍光分子断層撮影(FMT)(Nziachristos et al.,Nature Medicine 8:757−760,2002;米国特許第6,615,063号明細書、国際公開第03/102558号パンフレット、およびPCT US/03/07579号明細書)をはじめとするなおも別のイメージング技術が、本発明の蛍光色素化合物と共に使用できる。同様に蛍光色素化合物は、例えば[1]IVIS(登録商標)Imaging Systems:100 Series,200 Series(Xenogen,Alameda,CA)、[2]SPECTRUMおよびLUMINA (Xenogen,Alameda,CA)、[3]SoftScan(登録商標)またはeXplore Optix(商標)(GE Healthcare,英国)、[4]MaestroTMおよびNuanceTM−2 Systems(CRi,Woburn,MA)、[5]Rochester,NYのCarestream Molecular Imaging(以前のKodak Molecular Imaging Systems)からのImage Station In−Vivo FX[6]OV100、IV100(Olympus Corporation,日本国)、[7]Cellvizio Mauna Kea Technologies,仏国)[8]NanoSPECT/CTまたはHiSPECT (Bioscan,Washington,DC)、[9]CTLM(登録商標)またはLILATM(Imaging Diagnostic Systems,Plantation,FL)、[10]DYNOTTM (NIRx Medical Technologies,Glen Head,NY)、および[11]Berthold Technologies,独国によるNightOWL Imaging Systemsなどの様多なイメージングシステムで使用できる。
【0136】
例えば電荷結合素子(CCD)システムまたは写真フィルムなどの多様な光検出/画像記録コンポーネントが、このようなシステムで使用できる。光検出/画像記録の選択は、使用される集光/画像形成コンポーネントのタイプをはじめとする要因に左右される。しかし適切なコンポーネントの選択、それらの光学イメージングシステムへの組み立て、およびシステムの操作は、当業者の技術の範囲内であるものと理解される。
【0137】
光学的イメージングおよび測定技術としては、限定されるものではないが、蛍光イメージング、ルミネセンスイメージング、内視鏡検査、蛍光内視鏡検査、光干渉断層撮影、透過イメージング、時間分解透過イメージング、共焦点イメージング、非線形鏡検、光音響イメージング、音響光学イメージング、分光法、反射分光、生体内イメージング、二光子イメージング、干渉法、コヒーレンス干渉法、拡散光断層撮影、および蛍光分子断層撮影が挙げられる。
【0138】
注射用蛍光色素化合物は、例えば粒子などの固体担体と結合させ、またはそれに組み込むことができると考えられる。したがって蛍光色素化合物は、磁性を有する金属酸化物ナノ粒子に結合させて、蛍光性でもある粒子を生成できるものと理解される。したがって得られた粒子は、当該技術分野で知られている技術を使用して、MRIイメージングでもまた使用できる。「MRI技術の総説については、Westbrook,Handbook of MRI Technique」,第2版,1999,Blackwell Scienceを参照されたい。例えば蛍光分子断層撮影によって、および磁気共鳴イメージングによって得られた画像を互いに位置合わせし、または融合して、画像化中のアイテムに関する追加的情報を提供することが可能である。さらにマルチモダリティのイメージングシステム(すなわち光学およびMRイメージングシステムの組み合わせ)を使用して、組み合わせされた光学的MR画像を作り出すことができる。
【0139】
さらに本発明の方法の組成物は、その他のイメージング組成物および方法と組み合わせて使用できる。例えば本発明の蛍光色素化合物を使用して、単独で、またはX線、コンピュータ断層撮影(CT)、MRイメージング、超音波、陽電子放射型断層撮影法(PET)、および単一光子コンピュータ断層撮影(SPECT)などのその他の伝統的なイメージングモダリティと組み合わせて、光学的イメージングプロトコールを通じて、関心のある領域を画像化できる。例えば本発明の組成物および方法をCTまたはMRイメージングと組み合わせて使用して、例えば別のイメージングモダリティによって作り出された画像の位置合わせによって、解剖学的情報および分子情報の双方を同時に得ることができる。本発明の組成物および方法はまた、X線、CT、PET、超音波、SPECT、MR、およびその他の光学的造影剤と組み合わせて使用でき、あるいは、本発明の蛍光色素化合物はまた、光学的イメージングと組み合わさったCT、PET、SPECT、およびMRイメージングモダリティを使用して検出できる、ヨウ素、ガドリニウム原子、および放射性同位体などの造影剤を含有してもよい。
【0140】
生体内での光学的イメージングの例示的な方法は、(a)本発明の蛍光性化合物を例えばヒトまたは動物である対象に投与するステップと、(b)蛍光色素化合物が対象中に分布し、または生物学的標的と接触しまたは反応するのに十分な時間を取るステップと、(c)対象を、例えば蛍光色素化合物が吸収できる波長の光である電磁放射に曝すステップと、(d)蛍光色素化合物によって放出される光学信号を検出するステップとを含んでなる。
【0141】
対象は、例えばヒトをはじめとする哺乳類などの脊椎動物動物であってもよいものと理解される。動物はまた、非脊椎動物(例えばC.エレガンス(elegans)、ショウジョウバエ(drosophila)、またはその他のモデル研究生物など)であってもよい。生物学的標的は、限定されるものではないが、細胞、細胞培養物、組織、組織切片、臓器、臓器切片、サイトスピンサンプル、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質などを含むことができる。
【0142】
例えばステップ(a)〜(d)を含む前述のステップは、所定の時間間隔で反復でき、それによって経時的に対象における蛍光性化合物の放出信号を評価できるようになる。照射および検出ステップ(それぞれステップ(c)および(d))は、平面イメージングシステム、内視鏡、カテーテル、断層撮影システム、ハンドヘルド光学イメージングシステム、ゴーグル、または術中顕微鏡を使用して実施できる。蛍光色素化合物によって放出される信号を使用して、例えば断層画像である画像を構築できる。
【0143】
これらのステップの前、またはその最中に、対象(例えば動物またはヒト)の周囲または近傍に検出システムを配置して、対象から放出される光学的および/またはその他の信号(例えばMR、核、X線)を検出できる。放出される光学的および/またはその他の信号を処理して、例えば断層または平面画像である画像を構築できる。さらに処理済信号は、単独または融合(結合)画像のいずれかの画像表示できる。
【0144】
さらに同時に1つ以上の造影剤を選択的に検出して画像化する、生体内イメージング法を実施できる。このようなアプローチでは、例えば上記のステップ(a)において、その信号特性が互いに区別できる2つ以上の造影剤が同時または逐次のどちらかで対象に投与され、造影剤の少なくとも1つは本発明の蛍光色素化合物を含有する。複数の薬剤の使用は、複数の生物学的過程、機能または標的の記録を可能にする。
【0145】
本発明はまた、標識細胞が対象に投与される生体内イメージング法を特徴とする。細胞は、生体外で蛍光色素化合物によって標識できる。細胞は直接対象に由来でき、または別の起源(例えば別の対象、細胞培養物など)に由来できる。蛍光色素化合物を細胞と混合して細胞を効果的に標識でき、得られた標識細胞はステップ(a)で対象に投与される。次に上述のようにステップ(b)〜(d)が続く。この方法は、T細胞、腫瘍細胞、免疫細胞、および幹細胞をはじめとする特定の細胞型、およびその他の細胞型の輸送および局在化をモニターするために使用できる。特にこの方法を使用して、細胞ベースの治療法をモニターしてもよい。
【0146】
蛍光色素化合物の調合、投与法の選択、対象に投与する蛍光色素化合物の投薬量、および蛍光色素化合物の投与と、光(および状況下で適切ならばその他の形態の電磁放射)へのそれらの曝露との間のタイミングは、当業者の技術レベルの範囲内であるものと理解される。
【0147】
本発明の方法を使用して、対象における蛍光色素化合物の局在化の経時的追跡、または対象における蛍光色素化合物の代謝および/または排出の変化または変更の経時的評価をはじめとするいくつかの兆候を判定できる。この方法を使用して、限定されるものではないが、有効性の判定、最適タイミング、(個々の患者または被検者のための)最適用量レベル、および治療法併用の相乗効果をはじめとする、このような治療法によって調節される分子事象および生物学的経路を画像化することによって、このような疾患のための治療法を追跡調査することもできる。
【0148】
本発明の方法および組成物を使用して、内科医または外科医が関節炎、癌および特に結腸ポリープまたは脆弱性または不安定プラークなどの疾患領域を同定および特性決定するのを助け、例えば脳外科手術において、通常の手術用顕微鏡を使用して検出するのが困難な腫瘍境界を検出するなど、患部および正常組織を区別するのを助け、例えば病変が癌性であり除去すべきであるか、または非癌性でありそのままにすべきかどうかを判定することによって、治療的または外科的介入を決定づけるのを助け、または例えば術中リンパ節病期分類、前哨リンパ節マッピングなど外科的に疾患を病期分類するのを助け、または術中出血を評価するのを助け、または腫瘍境界を描くのを助けることもできる。
【0149】
本発明の方法および組成物はまた、疾患、特に初期疾患の局在化、疾患または疾患関連病状の重篤性の検出、特性決定および/または判定、疾患の病期分類、および/または疾患のモニターに使用することもできる。放出信号の存在、不在、またはレベルは、疾患状態を示すことができる。本発明の方法および組成物を使用して、外科的処置などの様々な治療的介入をモニターおよび/またはガイドし、細胞ベースの治療法をはじめとする薬剤治療法をモニターすることもできる。本発明の方法を使用して、疾患病状の予後診断をすることもできる。
【0150】
前述のそれぞれに関して、(治療の前、最中、または後に)検出またはモニターできる疾患または疾患病状の例としては、例えば炎症(例えば関節炎、例えば関節リウマチによって引き起こされる炎症)、癌(例えば結腸直腸、卵巣、肺、乳、前立腺、頚部、精巣、皮膚、脳、胃腸、膵臓、肝臓、腎臓、膀胱、胃、白血病、口、食道、骨)、心血管疾患(例えばアテローム動脈硬化および血管の炎症状態、虚血、脳卒中、血栓症、播種性血管内凝固症候群)、皮膚科疾患(例えばカポジ肉腫、乾癬、アレルギー性皮膚炎)、眼疾患(例えば黄斑変性、糖尿病性網膜症)、感染症(例えば後天性免疫不全症症候群、マラリア、シャーガス病、住血吸虫症をはじめとする細菌、ウィルス、真菌、および寄生虫感染症)、免疫疾患(例えば自己免疫障害、リンパ腫、多発性硬化症、関節リウマチ、糖尿病、紅斑性狼瘡、重症筋無力症、グレーブス病)、中枢神経系疾患(例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン疾患、筋萎縮性側索硬化、プリオン疾患などの神経変性疾患)、遺伝性疾患、代謝疾患、公害病(例えば鉛、水銀、および放射線中毒、皮膚癌)、骨関連疾患(例えば骨粗鬆症、原発性および転移性骨腫瘍、骨関節炎)、神経変性疾患、および外科手術関連合併症(移植片拒絶、臓器拒絶反応、創傷治癒における変質、線維症など、または外科的移植片に関連するその他の合併症)が挙げられる。
【0151】
したがって本発明の方法および組成物を使用して、例えば腫瘍細胞の存在および/または局在化、例えばアテローム動脈硬化または関節炎における活性化マクロファージの存在をはじめとする炎症の存在および/または局在化、冠動脈および末梢動脈中の急性閉塞リスクがある領域(すなわち脆弱性プラーク)を含む血管疾患の存在および局在化、膨張する動脈瘤の領域、頸動脈中の不安定プラーク、および虚血領域を判定できる。本発明の開示される方法は、例えばアポトーシス、壊死、低酸素症、および血管新生の同定、および評価において使用できる。あるいは開示される方法を使用して、例えば治療的な化合物または治療法による処置の前後に対象を画像化し対応する画像を比較することで、特定の分子標的に対する治療的化合物または治療法の効果を評価することもできる。
【0152】
(b)生体外用途
さらに蛍光色素化合物は、例えば結合実験などの多様な生体外アッセイ、および生体外イメージング実験において使用できるものと理解される。前節で論じられるイメージング技術はまた、生体外イメージング実験にも応用できるものと理解される。
【0153】
例示的な生体外イメージング法は、(a)サンプルを本発明の蛍光色素化合物を含んでなるプローブに接触させるステップと、(b)蛍光色素化合物を(i)生物学的標的によって活性化させ、および/または(ii)それに結合させるステップと、(c)場合により非活性化または非結合蛍光色素化合物を除去するステップと、(d)サンプルを、例えば、蛍光色素化合物が吸収できる波長の光である電磁放射線に曝すステップと、(e)蛍光色素化合物から放出される信号を検出し、それによって蛍光色素化合物が生物学的標的によって活性化され、またはそれに結合したかどうかを判定するステップを含んでなる。
【0154】
サンプルは、例えば初代細胞、細胞培養物、または組織を含有する液体または固体サンプルであることができる。生物学的標的は、例えば細胞、細胞凝集、組織または組織サンプル、構造物(マクロ細胞レベル(例えば骨または組織)または細胞下レベル(例えばミトコンドリアまたは核)の双方)、および例えばタンパク質(例えば酵素または構造的タンパク質)、脂質、核酸または多糖類などの細胞構成要素であることができる。
【0155】
蛍光色素化合物は、多様な生体外リガンド結合アッセイにおいて使用でき、磁性粒子中に組み込めば、磁性検出ベースのアッセイで使用できる(米国特許第6,046,585号明細書および米国特許第6,275,031号明細書、米国特許第5,445,970号明細書、米国特許第4,219,335号明細書、Chemla,et.al.(2000)Proc Natl Acad.Sci USA 97,14268−72を参照されたい)。それらはまた、米国特許第5,164,297号明細書およびPerez et al.Nature Biotechnol.2002,20(8):816−20に記載されているものなどの磁気共鳴ベースリガンド結合アッセイでも使用できる。蛍光色素化合物はまた、細胞選別および計数用途のためにも使用できる。
【0156】
蛍光色素化合物はまた、核酸ベースのアッセイにおいてレポーター基として使用できる。例えば蛍光色素化合物は、例えば原位置ハイブリダイゼーションアッセイなどのハイブリダイゼーションアッセイ、配列決定反応、例えばリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応増幅反応などの増幅反応で使用される、例えばDNAまたはRNAなどの核酸、修飾核酸、PNA、分子ビーコン、またはその他の核酸結合分子(例えば低分子干渉RNAまたはsiRNA)と結合できる。例えば核酸ハイブリダイゼーション原理を通じてサンプル中の一本鎖核酸(すなわちmRNA、cDNAまたは変性二本鎖DNA)を検出するために、本発明の蛍光色素化合物を一本鎖核酸(プローブ)に化学的に結合させ、1つ以上の一本鎖核酸(標的核酸)を含有する疑いがあり、場合によって固体担体上に固定されているサンプルと接触させる。プローブがサンプル中の標的核酸にハイブリダイズして二本鎖が形成される条件下で、プローブをサンプルと共にインキュベートする。非結合プローブは洗浄によって除去でき、結合プローブは検出でき、プローブ中の蛍光色素化合物によって放出される蛍光の存在またはレベルは、サンプル中の標的核酸の存在または量を示す。
【0157】
ここで、例示のみを目的として供され、本発明の範囲を限定することは意図されない、以下の実施例によって本発明を例示する。
【実施例】
【0158】
本発明の化合物を調製するのに使用され得る代表的な材料および方法については、さらに詳しく後述する。全ての市販される化学薬品および溶剤(試薬等級)は、一般にさらに精製することなく供給された形態で使用する。分析および分取HPLC法は、以下を含む。
A カラム:Agilent Zorbax 80Å、Extend C18、4.6×250mm(5μm)
移動相:アセトニトリル、25mMトリエチル酢酸アンモニウム
B カラム:Varian Dynamax,100Å、C18、41.4×250mm
移動相:アセトニトリル、25mMトリエチル酢酸アンモニウム
C カラム:Phenomenex Jupiter,300Å、C18
移動相:アセトニトリル、25mMトリエチル酢酸アンモニウム
実施例1:化合物12の合成
化合物12を以下のスキーム(スキーム1)に従って合成した。
【0159】
【化25】

【0160】
A.化合物27の調製
0℃に冷却された3mLのDMFに、2mLのPOClを2分間かけて滴下して添加した。5分間撹拌した後、2mLのDMF中の1gのトロピノン26を10分間かけて添加した。瞬時に明るいオレンジ色に発色した。0℃で30分間撹拌した後、冷却槽を除去して反応混合物を30分間かけて室温にし、次に水浴上で70℃に加熱した。3時間後、反応混合物を室温に冷却して、氷上で冷却しながら3mLエタノール中の1.4mLのアニリンを添加した。続いてビーカー内の2mLの濃塩酸(HCl)を含有する30gの氷の中に混合物を注いだ。混合物をよく撹拌し、4℃で一晩保存した。褐色溶液を遠心処理して、化合物27の沈殿を収集した。残留物を50%水性エタノールで穏やかに洗浄して真空下で乾燥させ、35%の収率で1.0gの生成物を生成した。
【0161】
B.四級塩(28)の調製
20mmolの2,3,3トリメチルインドリニンと25mmolのブタンスルトンとの混合物を密封管内の20mLの1,2ジクロロベンゼン中で、125℃で8時間加熱した。有機溶剤をデカントした後、75〜80%の収率で四級塩28の淡いピンク色の易流動性粉末が得られるまで、残留物をメタノール−アセトンから繰り返し沈殿させた。
【0162】
C.化合物11の調製
15mLのガラス管内で、120mgの四級塩28(0.4mmol)および80mgのクロロビスアニル27(0.2mmol)を混合した。2mLの酢酸、2mLの無水酢酸、および82mgの酢酸ナトリウム(1mmol)を添加した。管を密封して110℃で3時間加熱し、その間に反応混合物は緩慢に緑色になった。冷却後、反応混合物に5mLの酢酸エチルを添加し、粗製染料は暗色残留物として沈殿した。暗色残留物をsemi−prep RPC18 HPLCカラム上で精製した。HPLC画分のSpeed vac乾燥によって71%の収率で110mgの化合物11が生じ、MALDIによって同定された。K塩(C4051ClKN)の計算値808.53;実測値808.81。最大吸収:760nm(水)、770nm(MeOH);最大発光:775nm(水)、790nm(MeOH)。
【0163】
D.化合物12の調製
2mL管内で110mgの化合物11を1mLのDMFに溶解し、それに25μLのメルカプトプロピオン酸および5μLのトリエチルアミンを添加した。内容物を室温で一晩撹拌した。HPLCによる反応混合物の分析は、化合物11の化合物12への完全な変換を明らかにした。DMF−エチル酢酸塩中での反復沈殿によって生成物を単離した。収率80mg、69%。MALDIによる同定:C4357の計算値:840.12;観測値841.70。最大吸収:768nm(水)、780nm(MeOH);最大発光:787nm(水)、810nm(MeOH)。
【0164】
実施例2:化合物15の合成
以下のスキーム(スキーム2)に記載されているようにして、化合物15を調製した。
【0165】
【化26】

【0166】
A.化合物33の調製
スキーム3で例示されるようにして、市販されるノルボルネン29から文献の手順(Organic Syntheses,CV6,142頁)に従って、化合物33を合成した。
【0167】
【化27】

【0168】
B.化合物34の調製
化合物27について記載された手順を使用して、ビルスマイヤー反応によって、1gの化合物33から化合物34を調製した。
【0169】
C.化合物35の調製
化合物28についての記載と同じ方法で、化合物35、N(4−スルホネート)−2,3,3トリメチル−5−スルホ−インドリノンを調製した。
【0170】
D.化合物36の調製
0.1mmolの化合物34および0.2mmolの化合物35をガラス管内で混合して、2mLの酢酸、2mLの無水酢酸、および1mmolの酢酸ナトリウムを添加した。管を密封して110℃で加熱した。染料形成は反応混合物が緑色になることで示された。5時間後に反応混合物を冷却し、5mLの酢酸エチルを添加して、沈殿した染料を酢酸エチルで2回洗浄した。上清溶剤を廃棄して、残留物を迅速真空乾燥後にsemi prep RPC18 HPLCカラム上で精製し、65%の純粋な化合物36を得た。これをMALDIによって同定した。C3846ClN12の分子量計算値886.49、実測値886.01.最大吸収:794nm(水)、802nm(MeOH);最大発光:814nm(水)、823nm(MeOH)。
【0171】
E.化合物15の調製
DMF中でメルカプトプロピオン酸とトリエチルアミンとを室温で一晩反応させて、化合物36から化合物15を得て、HPLC精製がそれに続いた。
【0172】
実施例3:化合物38の合成
A.化合物37の調製
2,3,3−トリメチルベンゾインドール−5,7−ジスルホン酸塩(3.1g、7mmol)を25mLの乾燥DMFに溶解して、透明なオレンジ色の溶液を得た。3mL(5.85g、37.5mmol、Aldrich)のヨウ化エチルを添加し、溶液を密封管内において130℃で16時間加熱した。濃紫色に変化した反応混合物を冷却して、150mLのエチルエーテル中に注いだ。混合物を遠心分離し、溶剤をデカントして除去した。固体生成物を25mLづつ3回の2−プロパノールとそれに続く25mLのエーテルによって管内でさらに洗浄し、真空内で乾燥させた。2.6gの濃紫色固形物(85%)が得られ、MALDI−TOF−MSによって確認された。C1719NOの計算値m/e 397.1[M]+、実測値:397.6。
【0173】
【化28】

【0174】
B.化合物38の調製
化合物11の合成についての記載と同一の手順に従って、化合物27および37を使用して化合物38を合成した。収率は65%であった。最大吸収:805nm(水)、814nm(MeOH);最大発光:827nm(水)、835nm(MeOH)。
【0175】
【化29】

【0176】
実施例4:化合物13の合成
本実施例に記載されているようにして、化合物13(下に構造を示す)を化合物39(下に構造を示す)から生成した。
【0177】
【化30】

【0178】
A.化合物39の調製
化合物11についての記載と類似した手順によって、化合物39を化合物27およびそれぞれの四級塩35から合成した。C3847ClN12について計算されたMALDI:901.51;実測値:901.27。最大吸収:768nm(水)、780nm(MeOH);最大発光:788nm(水)、802nm(MeOH)。
【0179】
B.化合物13の調製
化合物15および12について記載された手順を使用し、室温においてDMF中で3−メルカプトプロピオン酸とトリエチルアミンとの反応を実施して、化合物39から化合物13を得た。C4151KN14について計算されたMALDI:1009.28;実測値1008.99。最大吸収:777nm(水)、788nm(MeOH);最大発光:797nm(水)、810nm(MeOH)。
【0180】
実施例5:細胞標識
マウス脾細胞を単細胞懸濁液として調製し、B細胞およびマクロファージを除去するカラムを通過させて、脾細胞調製物中のT細胞亜集団を濃縮する(R&D kit,Mouse T−cell enrichment columns,MTCC500)。次にT細胞を遠心分離して10細胞の細胞ペレットを作り出す。細胞ペレットから上清を除去し、100μL中の化合物12の10mg/mLのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル溶液を添加する。細胞を室温で5分間インキュベートして、生理学的緩衝液中での2回の遠心分離および再懸濁がそれに続き、非結合化合物12を洗い落とす。細胞を蛍光鏡検法によって評価する。
【0181】
実施例6:細胞標識および生体内イメージング
マウス4T1乳腺癌細胞を遠心分離して、10細胞の細胞ペレットを作り出す。細胞ペレットから上清を除去し、100μL中の化合物12の10mg/mLのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル溶液を添加する。細胞を室温で5分間インキュベートして、生理学的緩衝液中での2回の遠心分離および再懸濁がそれに続き、非結合化合物12を洗い落とす。細胞を蛍光鏡検法によって評価する。
【0182】
マウスあたり5×10細胞で細胞をマウスに静脈内注射し、注射直後および注射の24時間後に生きているマウスを蛍光分子断層撮影によって画像化する。4T1細胞は主として肺に転移するので、肺蛍光を定量化できる。
【0183】
実施例7:化合物12−ペプチドコンジュゲートを用いたFMTイメージング
塩基性条件下で、化合物12のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルの溶液をArg−Gly−Asp含有ペプチドに化学的に結合させて、生体内光学的イメージングのための生体適合性蛍光分子を生じさせる。
【0184】
腫瘍細胞系HT−29(ヒト結腸癌腫/HTB−38)はATCC(Manassas,VA)から得られる。5%COを含有する加湿雰囲気内において、10%FBS添加マッコイ培地中でHT−29細胞を37℃で生育させる。対数増殖期細胞をトリプシン処理し、ハンクス平衡塩類溶液に3×10細胞/mLの濃度で再懸濁する。6〜8週齢のメスNU/NUマウス(Charles River Laboratory,Wilmington,MA)の第1乳腺脂肪パッドに3×10個のHT−29細胞を両側性に皮下注射する。1週間後、腫瘍がおよそ30mmになったら(150μLの1×PBS中の)蛍光分子をマウスに静脈内注射し、24時間後に蛍光反射率システム(FRI,Kodak 2000MM)、およびVisEn Medical,Inc.(Woburn,MA)からの蛍光断層撮影システム(FMT)で画像化する。
【0185】
実施例8:化合物12を用いた骨成長の生体内イメージング
塩基性条件下で化合物12のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル溶液と、ビスホスホネート含有生体分子とを化学的に結合して、生体内光学的イメージングのための生体適合性蛍光分子を生じさせる。
【0186】
5日齢のBALB/c x CF−1 Fマウスに(15μLの1×PBS中の)蛍光分子を皮下注射し、24時間後に蛍光反射率イメージング(FRI)システム(Kodak 2000MM)を使用して画像化する。骨成長領域が画像化される。
【0187】
実施例9:ナノ粒子標識
化合物12のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル溶液と、酸化鉄ナノ粒子のポリマー表面上に配列するアミン基とを化学的に結合して、生体内蛍光イメージングのための生体適合性蛍光性プラットフォームを生じさせる。これらのナノ粒子に対するポリエチレングリコールの続く結合によって、蛍光イメージングおよび生体顕微鏡検査に適した生体適合性造影剤が生成する。
【0188】
参照による援用
本明細書で言及される全ての公報、特許、および特許出願は、個々に援用されたものとして、その内容全体をあらゆる目的のために、参照によって本明細書に援用されるものとする。
【0189】
等価物
本発明は、その趣旨または本質的特性を逸脱することなく、その他の特定形態で具体化されてもよい。したがって前述の実施態様は、本明細書に記載の本発明に対する限定ではなく、むしろ全ての点で例示的と見なされるものとする。したがって本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって表され、特許請求の等価物の意味および範囲内に入る全ての変更は、それに包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−PMB−Z
(式中、
およびZはそれぞれ独立して、複素環部分を含んでなる多環基を表し、
PMBは架橋ポリシクロ部分を含んでなるポリメチン架橋を表す)で表される化合物およびそれらの塩類。
【請求項2】
前記化合物が蛍光色素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
PMBが架橋ビシクロ部分を含んでなる、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が、
【化1】


(式中、
およびXはそれぞれ独立して、C(CH)(CH)(式中、KおよびKはそれぞれ独立して、HおよびC〜C20アルキルからなる群から選択され、KおよびKは場合により一緒になってサイクリック環の一部を形成できる)、O、S、およびSeからなる群から選択され、
およびRはそれぞれ独立して、H、C1〜20、アルキル、アルキルアリール、および−R(式中、Rは独立してC〜C20アルキル、アリール、アルキルアリール、および−(CH−O−CHCH(式中、yは1〜100の整数から選択される)からなる群から選択され、Tは生体分子と共有結合を形成できるリンカー部分である)からなる群から選択され、
はH、ハロゲン、−T10(式中、TはS、O、およびNR’からなる群から選択され、R10はH、C1〜20アルキル、アリール、アリールアルキルからなる群から選択される)、−T、および−Rからなる群から選択され、
およびXはそれぞれ独立して、(CK(式中、iは1〜7の整数から選択される)、NR’(式中、R’はHおよびアルキルからなる群から選択される)、−NR’R、O、およびSからなる群から選択され、
およびWはそれぞれアリール部分の一部としての非金属原子を表し、
、およびnはそれぞれ独立して、0〜4から選択され、
、R、R、およびRはそれぞれ独立して、H、ハロゲン、カルボキシレート、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン、アミド、スルホンアミド、ヒドロキシル、O−アルキル、S−アルキル、アルキル、スルホン酸、スルホン酸塩、ホスホリル、SONR−Q−CHR−[(CH−Y−(CH−(O)(CH
(式中、
は独立してC〜C20アルキル、アリール、アルキルアリールからなる群から選択され、
は独立してH、C〜C20アルキル、アリール、アルキルアリール、およびアリールアルキルからなる群から選択され、
およびRは合わさるとき、場合により置換されていてもよい4、5、6または7員環の飽和または不飽和環を形成し、
Qは独立して結合、カルボニル、C〜Cアルキル、およびC〜Cシクロアルキルからなる群から選択され
Yは独立して結合、−SONR−、−O−、−COO−、および−CONR’−からなる群から選択され、
hは0〜70から選択される整数であり、
kは0または1であり、
dは0〜12の整数であり、
mは0〜12の整数であり、
pは0〜12の整数である)、
および−Rからなる群から選択される)によって表される、請求項3に記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
前記分子が約500nm〜約1100nmの範囲の吸収および放射波長を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記分子が約600nm〜約900nmの範囲の吸収および放射波長を有する、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が、O−(CH−T、S−(CH−T、O−Ph−(CH−T、S−Ph−(CH−T
(式中、
jは0〜6の整数であり、
Phはフェニルである)からなる群から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
が、−NH、−OH、−SH、−SOH、カルボキシル、−COCl、−(CO)O(CO)R13(式中、R13はH、アルキル、およびアリールからなる群から選択される)、−CONHNH、置換および非置換N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、置換および非置換N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、ニトロ−またはフルオロ−フェノールエステル、アジド、−NCS、−CHO、アジド、−COCHI、ホスホラミダイト、フタルアミド、およびマレイミドからなる群から選択される、請求項4または7に記載の化合物。
【請求項9】
が−CH−CH−であり、Xが−CH、−NCH、および−C(CHからなる群から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項10】
、およびnが1である、請求項4に記載の化合物。
【請求項11】
およびWが同一である、請求項4に記載の化合物。
【請求項12】
およびWが、
【化2】


からなる群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
およびXがC(CHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項14】
式11〜22、
【化3】


【化4】


(式中、
はOまたはSであり、
はN−MeまたはCHであり、
11はSOH、COOH、OH、SH、およびNHからなる群から選択され、
12はH、SOH、NCS、(CHCOOH(式中、kは0〜6の整数である)からなる群から選択される)のいずれか1つを有する、請求項4に記載の化合物、およびその塩。
【請求項15】
、ZまたはPMBが、生体分子と共有結合を形成できるリンカー部分をさらに含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
前記蛍光分子が生体適合性である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
一般構造式40および41、
【化5】


(式中、
、X、およびXについては請求項4に定義されるとおりであり、Phはフェニルである)で表される化合物。
【請求項18】
およびXがそれぞれ独立して、CH−CH、NMe、およびCMeからなる群から選択される、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
式42〜45、
【化6】


で表される構造のいずれかを有する、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の蛍光色素化合物と化学的に結合する生体分子を含んでなる、蛍光性生体分子。
【請求項21】
前記生体分子が細胞、タンパク質または核酸である、請求項20に記載の蛍光性生体分子。
【請求項22】
a)請求項1〜19のいずれか一項に記載の蛍光色素化合物を対象に投与するステップと、
b)前記蛍光色素化合物を前記対象中に分布させ、または生物学的標的と接触させもしくは反応させるステップと、
c)前記対象を、前記化合物が吸収できる波長の光に曝すステップと、
d)前記蛍光色素化合物によって放出される光学信号を検出するステップと、
を含んでなる、生体内での光学的イメージング方法。
【請求項23】
前記化合物によって放出される前記信号を使用して画像を構築する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記画像が断層画像である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記断層画像が、磁気共鳴またはX線コンピュータ断層撮影によって得られる画像と位置合わせされる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(a)〜(d)を所定の間隔で反復して、経時的に前記対象における前記蛍光性化合物の放出信号を評価できるようにする、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が動物またはヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(a)において、その信号特性が識別可能である2つ以上の化合物を前記対象に投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(c)および(d)が、内視鏡、カテーテル、断層撮影システム、平面イメージングシステム、ハンドヘルド光学イメージングシステム、または術中顕微鏡を使用して実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記蛍光色素化合物によって放出される信号の存在、不在、またはレベルが疾患状態を示す、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
ステップdの後に、疾患を検出するステップをさらに含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
ステップdの後に、疾患をモニターするステップをさらに含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記疾患が、骨疾患、癌、心血管疾患、皮膚疾患、公害病、免疫疾患、感染症、炎症、遺伝性疾患、代謝疾患、神経変性疾患、眼疾患、および呼吸器疾患からなる群から選択される、請求項30、31または32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記疾患が炎症性疾患である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患が癌である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患が心血管疾患である、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(a)において蛍光色素化合物で標識した前記細胞を前記対象に投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項38】
前記蛍光色素化合物によって放出される信号を使用して、前記細胞の輸送および局在化をモニターし、または細胞治療法の有効性を評価する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
a)サンプルを、請求項1〜19のいずれか一項に記載の蛍光色素化合物に接触させるステップと、
b)前記蛍光色素化合物を生物学的標的によって活性化させ、またはそれに結合させるステップと、
c)場合により非結合蛍光色素化合物を除去するステップと、
d)前記サンプルを、前記蛍光色素化合物が吸収できる波長の光に曝すステップと、
e)前記蛍光色素化合物から放出される信号を検出し、それによって前記蛍光色素化合物が前記生物学的標的によって活性化され、またはそれに結合したかどうかを判定するステップと、
を含んでなる、生体外での光学的イメージング方法。
【請求項40】
前記サンプルが生物学的サンプルである、請求項38に記載の方法。

【公表番号】特表2010−518236(P2010−518236A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549253(P2009−549253)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/053399
【国際公開番号】WO2008/100817
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(508064849)ビセン メディカル, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】