説明

ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法

【課題】低密度で、且つ、坪量が100g/m2以下となるような軽量性を有するポリスチレン系樹脂発泡シートを連続気泡の形成を抑制しつつ製造することができるポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含有するポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡させてポリスチレン系樹脂発泡シートを作製するポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法であって、前記ポリスチレン系樹脂として、温度160℃、一定ひずみ速度0.1/秒の条件で一軸伸長粘度を測定して求められる時間−伸長粘度曲線の対数プロットにおける非線形領域の一次近似直線の傾き(a1)と上記曲線における線形領域の一次近似直線の傾き(a2)との比(a1/a2)が1.2以上2.0以下となるポリスチレン系樹脂を用いて、密度0.035g/cm3〜0.065g/cm3、坪量100g/m2以下のポリスチレン系樹脂発泡シートを作製することを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法に関し、特には、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含有するポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡させてポリスチレン系樹脂発泡シートを形成させるポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂発泡シートは、軽量でありながら機械的強度や保温断熱性に優れ、成形加工性にも優れていることから、皿状、カップ状、丼状などの形状に成形されて各種食品包装材や簡易容器として広く用いられている。
【0003】
この種の容器は、所定の一次厚みを有するポリスチレン系樹脂発泡シートを加熱して樹脂を軟化させつつ発泡シートに含まれているブタンなどの発泡剤の作用によって二次発泡させて厚みを増加させ、プレス成形、真空成形などの汎用の熱成形を実施することで形成されている。
このような熱成形においては、気泡どうしがつながった連続気泡を多く含んだポリスチレン系樹脂発泡シートでは二次発泡における厚みの確保が難しいために、従来、この種の用途に用いられるポリスチレン系樹脂発泡シートには連続気泡率の低減を図ることが求められている。
【0004】
ところで、容器リサイクル法の施行、環境問題への配慮、省資源の推進、コストダウンなどの観点からこの種の容器にはより軽量化を図ることが求められている。
このことに対し容器の軽量化を図るために容器の厚みを薄くすることが考えられるが、単に容器の厚みを薄くすると容器の強度が低下するといった問題を発生させるおそれを有する。
また、厚みを同じにし、従来に比べて発泡倍率を増大させて軽量化を図ることも考え得るが、従来のポリスチレン系樹脂発泡シートにおいては、既にそれ以上発泡倍率を増大させることが難しいような倍率で発泡されており、無理に発泡倍率を増大させようとすると連続気泡率を増大させてしまうおそれを有する。
【0005】
このような問題に関し、下記特許文献1には、高発泡で高い独立気泡率を有するポリスチレン系樹脂発泡体を得るための方法について記載されており、所定条件での一軸伸長粘度を測定した際に時間−伸長粘度曲線の対数プロットにおける非線形領域の一次近似直線の傾きと上記曲線における線形領域の一次近似直線の傾きとの比が10以上となるポリスチレン系樹脂組成物を用いて発泡体を形成させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−263650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、ポリスチレン系樹脂発泡シートには、さらなる軽量化が求められるようになってきており、所定の厚みを有しつつ坪量が100g/m2以下となるようなものまでもが求められるようになってきている。
しかし、従来の方法では連続気泡の形成を抑制しつつこのようなポリスチレン系樹脂発泡シートを得ることが困難となっており、本発明は、低密度で、且つ、坪量が100g/m2以下となるような軽量性を有するポリスチレン系樹脂発泡シートを連続気泡の形成を抑制しつつ製造することができるポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべくポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含有するポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡させてポリスチレン系樹脂発泡シートを作製するポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法であって、前記ポリスチレン系樹脂として、温度160℃、一定ひずみ速度0.1/秒の条件で一軸伸長粘度を測定して求められる時間−伸長粘度曲線の対数プロットにおける非線形領域の一次近似直線の傾き(a1)と上記曲線における線形領域の一次近似直線の傾き(a2)との比(a1/a2)が1.2以上2.0以下となるポリスチレン系樹脂を用いて、密度0.035g/cm3〜0.065g/cm3、坪量100g/m2以下のポリスチレン系樹脂発泡シートを作製することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、特定のポリスチレン系樹脂が用いられることから僅かな樹脂量でも破泡の生じにくい気泡膜を形成させることができ、密度0.035g/cm3〜0.065g/cm3、坪量が100g/m2以下となるような軽量性を有するポリスチレン系樹脂発泡シートを、連続気泡の形成を抑制しつつ製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】時間(s)−伸長粘度曲線(Pa・s)の測定結果を示す対数プロット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について説明する。
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう)は、一軸伸長粘度の測定において所定の特性を示すポリスチレン系樹脂を用いる点以外には、一般的な発泡シートの製造方法と同様にして製造することができ、例えば、ポリスチレン系樹脂、気泡調整剤、発泡剤、及び、必要に応じて各種添加剤を含有させたポリスチレン系樹脂組成物を押出機で溶融混練して、該押出機の先端に装着させたフラットダイやサーキュラーダイから押出発泡させる方法を採用することができる。
【0012】
そして、前記のように、本実施形態においては、一軸伸長粘度の測定において所定の特性を示すポリスチレン系樹脂を用いることが重要であり、より具体的には、温度160℃、一定ひずみ速度0.1/秒の条件で一軸伸長粘度を測定して求められる時間(s)−伸長粘度曲線(Pa・s)の対数プロットにおける非線形領域の一次近似直線の傾き(a1)と上記曲線における線形領域の一次近似直線の傾き(a2)との比(a1/a2)が1.2以上2.0以下となるポリスチレン系樹脂を用いることが重要である。
この一軸伸長粘度については、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0013】
なお、ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体、若しくは、これらの共重合体、又は、該スチレン系単量体と共重合可能な、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性単量体と、前記スチレン系単量体との共重合体などが知られているが、通常、これらのモノマーを単に重合させただけの一般的なポリスチレン系樹脂では、上記のような条件を満足させることが難しく、このようなポリスチレン系樹脂に対して温度160℃、一定ひずみ速度0.1/秒の条件で一軸伸長粘度を測定すると4〜5秒付近に変曲点が観測されるものの該変曲点を境に傾きを小さくさせる傾向がある。
【0014】
一方で、分子内に分岐構造を複数有するポリスチレン系樹脂(以下「多分岐ポリスチレン系樹脂」ともいう)では、同様の箇所において変曲点を示し、しかも、該変曲点を境にして傾きを増大させる傾向を示す。
従って、本実施形態においては、例えば、多分岐ポリスチレン系樹脂の中から、上記のような特性を示すものを1種以上選択するか、又は、多分岐ポリスチレン系樹脂の内の1種以上と分岐構造を実質的に有していないポリスチレン系樹脂(以下「線状ポリスチレン系樹脂」ともいう)の内の1種以上とを混合して上記のような特性を発揮させればよい。
【0015】
なお、「非線形領域」とは、前記変曲点以降に現れる領域を意図しており、「非線形領域」における一次近似直線の傾き(a1)とは、変曲点付近において任意な1点を選択し、そこから9秒後までに観測されるデータに基づく回帰直線の傾きを意図している。
また、「線形領域」とは、前記変曲点以前に現れる比較的データに直線性が得られる領域を意図しており、「線形領域」における一次近似直線の傾き(a2)とは、先に設定した点(変曲点付近の任意な点)から4秒前までに観測されるデータに基づく回帰直線の傾きを意図している。
【0016】
この非線形領域の傾き(a1)と線形領域傾き(a2)との比(a1/a2)が1.2以上2.0以下となることが重要であるのは、この範囲を超えて比率(a1/a2)が大きくなると発泡時に気泡膜に生じる張力と発泡剤の膨張力とが早い段階において拮抗して低密度な発泡シートを得ることが難しくなるばかりでなく押出機に過剰な負荷を掛けるおそれがあるためであり、逆に、前記範囲に満たない比率(a1/a2)では、発泡における早い段階で気泡膜が破れやすく低密度な発泡シートを形成させることが難しいためであり、仮に低密度なものが得られたとしても連続気泡率が高いものしかできないためである。
【0017】
即ち、上記の一軸伸長粘度を示すポリスチレン系樹脂を発泡シートの形成に用いるポリスチレン系樹脂組成物の主成分とすることが、密度0.035g/cm3〜0.065g/cm3、坪量が100g/m2以下の発泡シートを作製する上において重要な要素となるものである。
【0018】
なお、ポリスチレン系樹脂は、上記のような低密度な発泡シートを連続気泡率の低い状態にさせやすい点において重量平均分子量が20万〜60万であることが好ましく、25万〜45万であることがより好ましい。
また、同様の理由からポリスチレン系樹脂のZ平均分子量は、75万以上であることが好ましく75万〜100万であることがより好ましく、80万〜100万であることが特に好ましい。
【0019】
また、ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量と重量平均分子量との比(Z平均分子量/重量平均分子量)は、1.8〜3.5であることが好ましく、1.9〜2.7であることがより好ましく、2.0〜2.3であることが特に好ましい。
【0020】
なお、このようなポリスチレン系樹脂以外の、気泡調整剤、発泡剤、及び、各種添加剤については、従来の発泡シートに用いられているものと同様のものを採用することができる。
例えば、前記気泡調整剤としては、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレン、などの有機化合物などが採用可能である。
【0021】
また、前記発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンなどの炭化水素が採用可能であり、他に、水、ジメチルエーテル、塩化メチル、塩化エチル、窒素、二酸化炭素、アルゴン等を採用することも可能である。
前記発泡剤としては、熱分解してガスを発生させる化合物粒子を採用することも可能であり、該化合物粒子としては、例えば、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などを用いることができる。
【0022】
さらに、その他の添加剤としては、例えば、耐候剤や老化防止剤といった各種安定剤、滑剤などの加工助剤、スリップ剤、防曇剤、帯電防止剤といった機能性薬剤、顔料、香料などが挙げられる。
【0023】
このような成分を含むポリスチレン系樹脂組成物を用いて形成させる発泡シートは、密度0.035g/cm3〜0.065g/cm3、坪量が100g/m2以下(通常60g/m2以上)のもので、通常、0.8mm〜3.0mm の厚みとされ、好ましくは1.0mm〜2.5mm、より好ましくは、1.5mm〜2.0mmとされる。
なお、連続気泡率をある程度高い値にすることなく形成させることが従来の方法では困難で、本発明の効果がより顕著に発揮される点において、作製する発泡シートの密度は、0.035g/cm3〜0.045g/cm3とすることが好ましい。
本発明によれば、このような発泡シートを、10%以下の連続気泡率とすることができる。
即ち、本発明によれば、軽量でありながらも熱成形が容易な発泡シートを提供することができ、資源消費を抑制しつつも強度に優れ外観美麗な成形品の作製に有用な発泡シートを提供することができる。
【実施例】
【0024】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
<ポリスチレン系樹脂の特性>
まず、発泡シートの原料として「原料1」〜「原料3」の3種類のポリスチレン系樹脂を用意した。
この「原料1」〜「原料3」のポリスチレン系樹脂に対して以下のような特性調査を行った。
【0026】
(MFRの測定)
ポリスチレン系樹脂に対するメルトマスフローレイト(MFR)の測定は、JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法記載の方法により測定した。

装置:セミオートメルトインデクサー((株)東洋精機製作所製)
試験温度:200℃
試験荷重:5.0kgf
操作方法:B法
熱時間:5分間
【0027】
(分子量分布の測定)
ポリスチレン系樹脂に対する分子量の測定は以下の条件で実施した。

測定装置:東ソー HLC−8320GPC(RI検出器内蔵)
ガードカラム:TOSOH TSKguardSuperMP(HZ)−HX 1本 (4.6mmI.D.×2cm)
カラム:TOSOH TSKgel SuperMultiporeHZ−HX 2本 (4.6mmI.D.×15cm)
測定条件:カラム温度(40℃),移動相(THF),移動相流量(0.2mL/min)
注入量(20μL),測定時間(25min),検出器(RI)
測定方法:試料4mgをTHF4mLで溶解後、非水系0.45μmクロマトディスクで濾過した
浸透時間:6.0±0.5hr(完全溶解)
【0028】
(一軸伸長粘度の測定)
ポリスチレン系樹脂に対する一軸伸長粘度の測定は以下の条件で実施した。

測定装置:粘弾性測定装置「PHYSICA MCR301」(Anton Paar社製)
測定モード#:オシレーション測定(温度依存性)
測定条件: 周波数(1Hz) 歪み0.1sec-1
温度条件:160℃一定
試験数:2
ジオメトリー:パラレルプレートφ25mm、GAP2.0mm(オートコンプレッション)
雰囲気ガス:窒素
試験片作成: プレート化190℃ 厚み3mm 径25mmプレート

試験手順:試料をプレート上(測定温度)で予熱5分後、GAP2.0mmにし樹脂をかきとり、測定温度に達してから5分後に測定開始する。
【0029】
なお、「原料1」〜「原料3」についての時間(s)−伸長粘度曲線(Pa・s)の対数プロットを図1に示す。
この図にも示されているように、「原料1」では、非線形領域の一次近似直線の傾き(a1)が「766628」となり、線形領域の一次近似直線の傾き(a2)が「586262」となり、比(a1/a2)が「約1.31」であることがわかる。
また、「原料2」では、非線形領域の一次近似直線の傾き(a1)が「734593」となり、線形領域の一次近似直線の傾き(a2)が「375879」となり、比(a1/a2)が「約1.95」であることがわかる。
さらに、「原料3」では、非線形領域の一次近似直線の傾き(a1)が「301377」となり、線形領域の一次近似直線の傾き(a2)が「319012」となり、比(a1/a2)が「約0.94」であることがわかる。
即ち、「原料1」、「原料2」を用いて発泡シートを製造する場合が本発明の製造方法にあたるものである。
【0030】
<発泡シートの作製>
以下に、上記「原料1」〜「原料3」を用いて発泡シートを作製した事例について示す。
(実施例1)
内径が90mmの第一押出機の先端に内径が115mmの第二押出機が接続されてなるタンデム型押出機を用意した。
そして、「原料1」のポリスチレン系樹脂100質量部、及び、タルク練り込みポリスチレンマスターバッチ〔東洋スチレン(株)社製のDSM1401A〕0.50重量部を第一押出機に供給して最高温度250℃にて溶融混練した後、第一押出機内にブタン(イソブタン/ノルマルブタン(重量比)=2:1)6.1質量部を圧入した。
【0031】
次に、第一押出機内の溶融状態のポリスチレン系樹脂組成物を連続的に第二押出機に供給して155℃まで冷却した上で第二押出機の先端に取り付けられたサーキュラ金型から押出発泡させて円筒状発泡体を得た。なお、サーキュラ金型は、その内径が175mmで且つ開口部の開口幅が0.4mmであった。
【0032】
そして、押出発泡された直後の円筒状発泡体の内外周面に32℃の冷風を吹き付けた。円筒状発泡体の内周面には0.002m3/m2の吹き付け量で、外周面には0.002m3/m2の吹き付け量で冷風を吹き付けた。
【0033】
この円筒状発泡体を20.3m/分の引取速度にて引取ながら直径が673mmで且つ長さが800mmの冷却マンドレルに沿わせて円筒状発泡体を拡径させるとともに冷却した後、円筒状発泡体をその押出方向に連続的に内外周面間に亘って切断し切り開くことによって厚み1.6mmの発泡シートを作製した。
【0034】
(実施例2)
用いるポリスチレン系樹脂を「原料2」に変更し、引取速度を15.5m/分に変更し、混合ブタンを5.0重量部に変更して厚み1.65mmの発泡シートを作製した以外は実施例1と同様に発泡シートを作製した。
【0035】
(実施例3)
「原料2」を「原料1」に変更して厚み1.65mmの発泡シートを作製した以外は実施例2と同様に発泡シートを作製した。
【0036】
(実施例4)
引取速度を13.2m/分に変更し、混合ブタンを4.1重量部に変更して厚み1.60mmの発泡シートを作製した以外は実施例2と同様に発泡シートを作製した。
【0037】
(比較例1)
用いるポリスチレン系樹脂を「原料3」に変更し、実施例2と同様に厚み1.60mmの発泡シートを作製した。
【0038】
(比較例2)
引取速度を16.5m/分に変更し、混合ブタンを2.5重量部に変更し厚み0.7mmの発泡シートを作製した以外は比較例1と同様に発泡シートを作製した。
【0039】
(比較例3)
引取速度を5.3m/分に変更し、厚み2.2mmの発泡シートを作製した以外は比較例2と同様に発泡シートを作製した。
【0040】
<作製した発泡シートの特性>
得られた発泡シートの特性については、以下のようにして評価した。
【0041】
(見掛け密度)
発泡シートの見掛け密度は、JIS K7222:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した。
【0042】
(連続気泡率)
発泡シートの連続気泡率は、発泡シートから一辺が25mmの平面正方形状の試験片を5枚切り出して測定する。
なお、発泡シートから試験片を切り出すにあたっては発泡シートの表面はスライスして除去し試験片表面に気泡が露出している状態にさせる。
得られた5枚の試験片を厚み方向に複数枚重ね合わせて積層体を作製し、この積層体の見掛け体積(V1)をノギスを用いて測定する。
次に、上記積層体の体積(V2)をASTM D2856−87に準拠して1−1/2−1気圧法により測定し、下記式に基づいて連続気泡率を算出する。
なお、積層体の体積(V2)は、東京サイエンス社から市販されている空気比較式比重計1000型を用いて測定することができる。

連続気泡率(%)=100×(V1−V2)/V1
【0043】
(平均気泡径)
ASTM D2842−69の試験方法に準拠し測定した。すなわち試験体をMD方向(押出方向)、TD方向(押出方向に直行する方向)及びVD方向(厚み方向)に沿って切断し、それぞれの切断面のカット面外側より1/10〜9/10以上内側を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−3000N)で17〜20倍(場合により200倍)に拡大して撮影する。
撮影した画像をA4用紙上に4画像ずつ印刷し、それぞれの方向に平行な任意の一直線上(長さ60mm)にある気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出した。
但し任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにした(接してしまう場合は気泡数に含める)。計測は6ヶ所とした。

平均弦長(t)=60/(気泡数×写真の倍率)

そして次式により各方向における気泡径を算出した。

平均気泡径(mm)=(DMD+DTD+DVD)/3

また、試験片厚みが薄く、VD方向に60mm長さ分の気泡数を数えられない場合には、30mm又は20mm分の気泡数を数えて60mm分の気泡数に換算した。
【0044】
以上の評価結果、ならびに、得られた発泡シートを用いて熱成形を行った際の成形性についての評価結果を下記表1に示す。
なお、実施例1〜4の発泡シートについては、いずれも良好なる成形を行うことが出来たため、成形性の判定結果を「○」とした。
一方で比較例1では、発泡シートが十分二次発泡しなかったため、成形性を「×」の判定とした。
さらに、比較例2では発泡シートが裂けるなどのトラブルがあり連続成形に適していないと判定し、「×」と判定した。
なお、比較例3の発泡シートは、軽量性が得られていないため、成形性の評価対象外とした。
【0045】

【表1】

【0046】
この表からもわかるように、実施例では、連続気泡率が10%以下の低い値となっている。
即ち、この表からも本発明によれば連続気泡の形成を抑制しつつ低密度で、且つ、坪量が100g/m2以下となるような軽量性を有するポリスチレン系樹脂発泡シートを製造し得ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含有するポリスチレン系樹脂組成物を押出発泡させてポリスチレン系樹脂発泡シートを作製するポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法であって、
前記ポリスチレン系樹脂として、温度160℃、一定ひずみ速度0.1/秒の条件で一軸伸長粘度を測定して求められる時間−伸長粘度曲線の対数プロットにおける非線形領域の一次近似直線の傾き(a1)と上記曲線における線形領域の一次近似直線の傾き(a2)との比(a1/a2)が1.2以上2.0以下となるポリスチレン系樹脂を用いて、密度0.035g/cm3〜0.065g/cm3、坪量100g/m2以下のポリスチレン系樹脂発泡シートを作製することを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項2】
見掛け密度0.035g/cm3〜0.045g/cm3のポリスチレン系樹脂発泡シートを作製する請求項1記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−207172(P2012−207172A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75372(P2011−75372)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】