説明

ポリビニルアルコール系難燃繊維及びその製造方法

【課題】実質的にハロゲンを含有せず、しかも難燃性が高く機械的性能、品位等の諸性能に優れたPVA系難燃繊維及びその効率的な製造方法、さらに該繊維を用いてなる紡績糸、及び布帛を提供する。
【解決手段】ビニルアルコール系ポリマー(A)、リン系難燃剤(B)及び層状ケイ酸塩(C)から構成され、かつ下記1)、2)を満足することを特徴とするポリビニルアルコール系難燃繊維。
1)該ビニルアルコール系ポリマー(A)の結晶化度が40%以上、配向度が45%以上であること、
2)広角X線回折で測定した層状ケイ酸塩(C)の平均層間距離が20Å以上であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工業的に安価に製造可能で、かつ実質的にハロゲン原子を含有しないポリビニルアルコール(以下PVAと略記)系難燃繊維及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性繊維としては、難燃性モノマーを共重合したアクリル繊維やポリエステル繊維および難燃性薬剤を練り込み、あるいは反応させたレーヨン繊維、またはポリマー自体が難燃性である熱硬化性繊維やアラミド繊維、さらには難燃性薬剤で後加工した綿や羊毛などが従来より知られている。
しかしながら、アクリル繊維は燃焼時シアンガスの発生、ポリエステル繊維はメルトドリップ、熱硬化性繊維は繊維強度が低く、アラミド繊維は高価、綿や羊毛は後加工による風合硬化や洗濯耐久性などの問題があり、それぞれ改善の検討がなされている。
【0003】
一方、PVA系難燃繊維も従来より数多く知られており、消防服や作業服などの衣料分野やカーペットなどのリビング分野、カーシートなどの産業資材分野などに用いられている(例えば、特許文献1〜3参照。)。しかしながら、これらの難燃繊維を使用することで、近年、さまざまな材料・素材の環境に与える影響が非常に問題視されており、特にポリ塩化ビニルを代表とするハロゲン含有素材(ハロゲン含有樹脂、ハロゲン系難燃剤等)は焼却時にダイオキシンが発生する点等から、非ハロゲン系素材に代替することが強く要望されている。
【0004】
このような背景から、実質的にハロゲンを含まない非ハロゲンPVA系難燃繊維の検討がなされており、例えばリン系難燃剤を用いる方法として、PVA系繊維をポリリン酸アンモニウムの水性懸濁液等に浸漬して表面コーティング処理する方法(例えば、特許文献4〜5参照。)、PVA系繊維を縮合リン酸液と反応促進剤との混合液中に浸漬後、該繊維を加熱してリン酸エステル化する方法(例えば、特許文献6参照。)、さらにポリリン酸アンモニウム又はポリリン酸アミドを含有するPVA水溶液を乾式紡糸する方法(例えば、特許文献7〜8参照。)等が提案されている。
しかしながら、リン系難燃剤はハロゲン系難燃剤に比して難燃効果が低いために十分な難燃効果が得られにくく、十分な難燃効果を得るためには多量の難燃剤を配合する必要があるが、難燃剤の配合量を多くすると繊維性能が損われる問題があった。
【0005】
上記問題を改善するために、ポリリン酸アンモニウムやポリリン酸アミド、又はポリリン酸メラミンを含有するPVA系繊維を、湿式紡糸や乾湿式紡糸等で行う方法が提案されている(例えば、特許文献9〜10参照。)。しかしながら、これらポリリン酸系難燃剤はPVAの融点に近い比較的低温で分解するため、延伸時にPVAの脱水反応が進行する恐れがあり、その場合には分子内の共役二重結合生成による激しい着色が生じ、繊維の品位が低下してしまうばかりか、繊維の配向が阻害されて耐熱性の高い炭化物(チャーと呼ばれる)が生成しにくくなるといった問題があった。
【0006】
また一方で、層状ケイ酸塩を含有するPVA系繊維及びその製法が提案されている(例えば、特許文献11参照。)。層状ケイ酸塩をナノ分散させることで、室温から高温に至る広い温度領域での強度、弾性率などの機械的特性、及び耐湿熱性等に優れたPVA系繊維が得られるということであるが、難燃性については何等開示されておらず、また我々のトレース試験においても大きな難燃効果は得られなかった。
【0007】
【特許文献1】特公昭37−12920号公報
【特許文献2】特公昭49−10823号公報
【特許文献3】特公昭51−19494号公報
【特許文献4】特公昭45−34762号公報
【特許文献5】特開昭49−74768号公報
【特許文献6】特開昭48−28085号公報
【特許文献7】特開昭50−22050号公報
【特許文献8】特開昭50−22051号公報
【特許文献9】特開2000−314030号公報
【特許文献10】特開2004−123805号公報
【特許文献11】特開2005−9029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、実質的にハロゲンを含有せず、しかも難燃性が高く、機械的性能、品位等の諸性能に優れたPVA系難燃繊維及びその製造方法、さらに該繊維を用いてなる紡績糸、及び布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を達成すべく鋭意検討を行った結果、ビニルアルコール系ポリマー中に、リン系難燃剤と層状ケイ酸塩を併用し、さらに層状ケイ酸塩をナノ分散させることにより、従来の難燃繊維に比べて燃焼ガス毒性、メルトドリップ性、強度、コスト、耐洗濯耐久性、風合いなどの点に優れる非ハロゲン性PVA系難燃繊維が得られることを見出した。
すなわち本発明は、ビニルアルコール系ポリマー(A)、リン系難燃剤(B)及び層状ケイ酸塩(C)から構成され、かつ下記1)、2)を満足することを特徴とするPVA系難燃繊維である。
1)該ビニルアルコール系ポリマー(A)の結晶化度が40%以上、配向度が45%以上であること、
2)広角X線回折で測定した層状ケイ酸塩(C)の平均層間距離が20Å以上であること。
【0010】
また本発明は、好ましくはリン系難燃剤(B)の含有量が2〜35質量%/ビニルアルコール系ポリマーである上記のPVA系難燃繊維であり、より好ましくはリン系難燃剤(B)がホスファゼン系難燃剤である上記のPVA系難燃繊維である。
さらに好ましくは層状ケイ酸塩(C)の含有量が1〜20質量%/ビニルアルコール系ポリマーである上記のPVA系難燃繊維である。
【0011】
さらに本発明は、ビニルアルコール系ポリマー(A)を溶媒に溶解して得られる紡糸原液を湿式紡糸、乾湿式紡糸または乾式紡糸をするにあたり、リン系難燃剤(B)および層状ケイ酸塩(C)を以下1)、2)の条件にて付与することを特徴とするPVA系難燃繊維の製造方法に関する。
1)リン系難燃剤(B)は紡糸原液から乾燥・乾熱延伸工程にいたるまでのいずれかの固化・抽出工程で付与すること、
2)層状ケイ酸塩(C)は紡糸原液中に付与すること。
【0012】
そして本発明は上記のPVA系難燃繊維を用いてなる布帛である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のPVA系難燃繊維は、ノンハロゲン難燃化を達成したものであり、しかも難燃性アクリル繊維、難燃性ポリエステル繊維、熱硬化性繊維、アラミド繊維、難燃性綿、難燃性羊毛などのPVA系以外の難燃繊維素材に比べ、燃焼ガス毒性、メルトドリップ性、強度、コスト、耐洗濯耐久性、風合などの点に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明において、繊維に十分な難燃性を付与する目的から、少なくともリン系難燃剤(B)および層状ケイ酸塩(C)を用いる必要がある。
リン系難燃剤(B)は他の非ハロゲン系難燃剤に比べて難燃効果は高く、しかも繊維性能を劣化させにくいという優れた特性を有する。リン系難燃剤による難燃効果は、通常、以下の(1)〜(4)の少なくとも1以上のメカニズムが相乗的に作用していると考えられる。
(1)難燃剤中のリン原子が燃焼時に発生する活性ラジカルのトラップ剤として働く。
(2)リン系難燃剤が燃焼時に縮合してポリリン酸を形成し、これが繊維表層を被膜することによって外部からの燃焼熱を遮断したり、繊維内部からの可燃性ガスの発生を抑制する。
(3)リン系難燃剤によりビニルアルコール系ポリマーの脱水反応が促進されて架橋・炭化反応が加速され、この時生じたPVA由来の炭化物(チャーと呼ばれる)が繊維表面を被膜して、外部からの燃焼熱を遮断したり、繊維内部からの可燃性ガスの発生を抑制する。
(4)ビニルアルコール系ポリマーの脱水反応によって発生する水分の気化熱によって繊維表面が冷却される。
このように、リン系難燃剤(B)を配合することによって、上記(1)〜(4)の少なくとも1以上のメカニズムが発現されることにより、他の非ハロゲン系難燃剤に比べて優れた難燃効果が奏される。
【0015】
本発明者等は、リン系難燃剤によるPVA系繊維の難燃化について詳細に検討したところ、上記した発現メカニズムの中でも(2)および(3)、特に(3)が繊維の難燃性に大きな影響を与えることを見出した。
上記メカニズム(3)を十分に発現させるためには、燃焼時に繊維の分解反応が大きく進行する前に脱水反応が生じる必要があるが、ビニルアルコール系ポリマー(A)の分解温度と融点はどちらも240〜250℃程度とほぼ重なっているため、融点付近の温度で行われるビニルアルコール系ポリマー(A)の延伸時に、ビニルアルコール系ポリマー(A)自身も分解されることが問題であった。
【0016】
上記した問題点に鑑み、本発明者等が鋭意検討した結果、層状ケイ酸塩(C)を併用することで上記問題が解決できることを見出した。
すなわち、層状ケイ酸塩(C)を併用し、ビニルアルコール系ポリマー(A)中でナノ分散させることにより、ビニルアルコール系ポリマー(A)の分解温度が上昇する。ビニルアルコール系ポリマー(A)の分解温度が上昇することにより、用いるリン系難燃剤(B)もビニルアルコール系ポリマー(A)の融点以上で分解するものを選択可能となるため、結果としてPVA系繊維、リン系難燃剤(B)とも分解しない温度で延伸することが可能となり、上記問題点が解決できることを見出した。
何故、層状ケイ酸塩(C)をナノ分散することでビニルアルコール系ポリマー(A)の分解温度が上昇するのかは不明であるが、繊維中でナノ分散した層状ケイ酸塩(C)とビニルアルコール系ポリマー(A)との相互作用が強いため、高温下の条件において物性低下を引き起こす分子運動を抑制されるものと推定される。
【0017】
すなわち、層状ケイ酸塩(C)をナノ分散させて、繊維を構成するビニルアルコール系ポリマー(A)との接触表面積を大きくすることが最も重要である。
具体的には、層状ケイ酸塩(C)の層と層の間にビニルアルコール系ポリマー(A)がインターカレーションされて層間を広げ、平均層間距離を20Å以上となるようにナノ分散されていることが重要である。層状ケイ酸塩(C)の平均層間距離が20Å未満の場合は、ポリマーの層間へのインターカレーションが不十分であり、所望の物性を得ることはできない。好ましくは23Å以上、より好ましくは27Å以上である。ここで、層間距離とは層状ケイ酸塩の(001)面反射のピーク位置により決定できる。
【0018】
層状ケイ酸塩(C)としては、その層電荷が0.2〜2.0であり、また陽イオン交換量が50〜200meq/100gであるような陽イオン交換能力を有するものが好ましい。具体的にはモンモリロナイト、サポナイト、ハイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、バイロサイト及びステイブンサイト等のスメクタイト系粘土化合物や、ジ−バーミキュライト、トリ−バーミキュライト、フッ素バーミキュライト等のバーミキュライト系粘土化合物、白雲母、パラゴナイト、イライト等の雲母系粘土化合物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、合成フッ素雲母(Li型四珪素フッ素雲母、Na型四珪素フッ素雲母等)等を例示することができ、これらは、天然物であっても合成物であってもよい。さらに本発明では、これらの層状ケイ酸塩を単独または2種以上組み合わせて用いることができる。この中でも、スメクタイト系粘土化合物または合成フッ素雲母が繊維の機械特性、耐熱性の観点から特に好ましい。
【0019】
また、上記に示した層状ケイ酸塩(C)は、本発明の繊維を溶液紡糸するにあたっての溶媒に対する膨潤性の付与、及びビニルアルコール系ポリマー(A)が層間にインターカレーションされ易いように層状ケイ酸塩の層間を大きくする目的で、有機化処理等により層状ケイ酸塩の層間がカチオン変性されていてもよい。この場合、層間に挿入されるカチオン種は特に限定されるものではないが、例えば特開2002−3608号公報や特開2001−316551号公報にて開示されているような、モノアルキル、ジアルキル、トリアルキル、テトラアルキルのアンモニウムイオン等を挙げることができる。また、アルキル鎖以外にもエチレンオキサイドを構成単位とする、ポリエチレングリコール鎖を持つ1級〜4級のアンモニウムイオンでもよく、或いは高級脂肪酸の1級〜4級のアンモニウムイオン、高級脂肪酸エステルの1級〜4級のアンモニウムイオン、高級アルコールの1級〜4級のアンモニウムイオンを例示することができる。
【0020】
PVA系繊維中の層状ケイ酸塩(C)の総含有量は、層状ケイ酸塩の種類等によって変更すればよいが、ビニルアルコール系ポリマー(A)の分解温度向上効果、繊維の機械的性能等の点から1〜20質量%/ビニルアルコール系ポリマーとするのが好ましく、特に5〜15質量%/ビニルアルコール系ポリマーとするのが好ましい。20質量%/ビニルアルコール系ポリマーを上回る層状ケイ酸塩(C)の添加は、紡糸工程性が不調となる点からも、繊維の引張り強度が低くなる点からも好ましくない。
【0021】
次に本発明に用いるリン系難燃剤(B)としては、燃焼時にビニルアルコール系ポリマー(A)の脱水反応を進行させるのに十分な酸性を有するものが好ましい。
具体的にはリン酸系化合物が好適に挙げられ、工業的汎用性、難燃性発現効果、着色抑制性等を考慮すると、リン酸、亜リン酸、メタリン酸等やこれらの誘導体(リン酸、亜リン酸、メタリン酸等のリン原子に直接アルキル基又はフェニル基が結合した化合物等)、さらにリン酸、亜リン酸、メタリン酸等又はこれらの誘導体の縮合物、また該縮合物のエステル類(アルキルエステル類、フェニルエステル類等)、アンモニウム塩、アミド化物、またホスファゼン化合物及びその誘導体(フェノキシ基、イソプロポキシ基等がリンに付加されたもの)等がリン酸系化合物として好適に使用できる。なかでも、耐化学薬品性の点からはホスファゼン化合物がより好適に使用できる。
【0022】
より具体的にはメチルホスフェート、ジメチルホスフェート、トリメチルホスフェート、エチルホスフェート、ジエチルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジエチルヘキシルホスフェート、ブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホストリキシレニルホスフェート、エチルジエチルフォスホノアセテート、ブチルピロホスフェート、ブトキシエチルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、フェニルホスフェート、ジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル(アルキルエステル類、フェニルエステル類等)、リン酸3アンモニウム、亜リン酸アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム等のリン酸化合物塩、そのほかホスフェートアミン化合物、リン酸アミド、フェニルホスホン酸、ジメチルフェニルホスホネート、ジエチルフェニルホスホネート等が挙げられる。またポリリン酸メチル、ポリリン酸エチル、ポリリン酸プロピル、ポリリン酸ブチル、ポリリン酸フェニル等のリン酸又はリン酸誘導体の縮合物のエステル類(アルキルエステル類、フェニルエステル類)、及びホスファゼン化合物、またホスファゼンのリン部分にある2つの置換基がフェノキシ基、イソプロポキシ基、メトキシ基等付加し得る置換基の単独または組み合わせとなったホスファゼン化合物誘導体(たとえばジフェノキシホスファゼン、ジイソプロポキシホスファゼン、フェノキシフェノキシ−イソプロポキシ−ホスファゼン等)も好適に使用できる。
【0023】
なお本発明にいうリン系難燃剤(B)とはリンを含有する化合物であり、難燃性及び繊維性能の点からリン含有化合物に占めるリン原子の質量割合が10質量%以上、特に20〜80質量%であるのが好ましい。また2種以上のリン系難燃剤を併用してもよく、本発明の効果を損なわない範囲であればリン系難燃剤以外の難燃剤をさらに併用しても構わない。
PVA系繊維中のリン系難燃剤(B)の総含有量は難燃剤の種類等によって変更すればよいが、難燃効果、繊維の機械的性能、着色抑制等の点から2〜35質量%/ビニルアルコール系ポリマー、特に10〜30質量%/ビニルアルコール系ポリマーとするのが好ましい。
【0024】
また難燃効果だけでなく、紡糸性及び繊維性能等の点からは、少なくともリン系難燃剤としてホスファゼン系難燃剤を用いるのが好ましく、該難燃剤を用いることにより顕著な効果が奏される。 先述のとおり、ホスファゼン化合物は耐薬品性に優れており、様々な化学耐久性が必要とされる紡糸工程、仕上げ工程を通過してもその性能は変わらない。一方、ホスファゼン化合物以外のリン系難燃剤は性能の度合いは様々であるが、総じてホスファゼン化合物よりは耐薬品性が不良であり、工程通過中に分解される結果として難燃性能が劣るものとなる。
【0025】
さらに本発明のPVA系繊維は、ビニルアルコール系ポリマー(A)の結晶化度が40%以上、配向度が45%以上であることが重要である。結晶化度が40%に満たない場合には、繊維の機械特性、耐湿熱性に乏しいものとなる。また配向度が45%に満たない場合にも耐熱性、機械特性、耐湿熱性に劣るという問題がある。好ましくは結晶化度が50%以上、配向度が60%以上、更には結晶化度が60%以上、配向度が75%以上であると機械特性が向上するのでより好ましい。なお、ここでいう結晶化度、配向度とは後述する方法により測定した値をいう。
【0026】
本発明のPVA系繊維を構成するビニルアルコール系ポリマー(A)は特に限定されないが、ポリマーの結晶性、機械的性能、難燃性等の点から粘度平均重合度1000以上、特に1500以上とするのが好ましく、紡糸性、コストの点から5000以下とするのが好ましい。また同理由からケン化度98モル%以上、なかでも99モル%以上、特に99.5モル%以上とするのが好ましい。
ビニルアルコール系ポリマー(A)には他のモノマーが共重合されていてもよく、共重合成分としてはたとえばエチレン、酢酸ビニル、イタコン酸、ビニルアミン、アクリルアミド、ピバリン酸ビニル、無水マレイン酸、スルホン酸含有ビニル化合物などが挙げられる。繊維性能、難燃性能等の点からはビニルアルコールユニットを全構成ユニットの70モル%以上有するポリマーとするのが好ましい。また本発明の効果を損わない範囲であれば、繊維にビニルアルコール系ポリマー以外のポリマーや他の添加剤を含んでいてもかまわない。繊維性能等の点からはビニルアルコール系ポリマーの含有量を30質量%以上/繊維、特に50質量%以上/繊維とするのが好ましい。
【0027】
本発明のPVA系難燃繊維の製造方法は特に限定されないが、ビニルアルコール系ポリマー(A)、リン系難燃剤(B)、及び層状ケイ酸塩(C)を含む紡糸原液を溶液紡糸、具体的には湿式紡糸、乾湿式紡糸、乾式紡糸して製造される。紡糸原液に用いる溶媒としては、PVA系繊維の製造に際して従来から用いられている溶媒、例えば水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコールなどの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、供給性、環境負荷への影響の観点から、水及びDMSOが特に好ましい。紡糸原液中のポリマー濃度は、ビニルアルコール系ポリマー(A)の組成や重合度、溶媒によって異なるが、6〜60質量%の範囲が一般的である。本発明の効果を損なわない範囲であれば、紡糸原液にはビニルアルコール系ポリマー(A)、リン系難燃剤(B)、及び層状ケイ酸塩(C)以外にも、目的に応じて、界面活性剤、分解抑制剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤などの添加剤などが含まれていてもよい。
【0028】
前記した溶液紡糸により得られた本発明のPVA系繊維は、結晶化度40%以上、配向度が45%以上とするためには延伸熱処理するのが好ましい。延伸熱処理条件は、一般的には210℃以上の温度、好ましくは220℃〜260℃の温度で行うのがよい。
さらに、この延伸熱処理工程を含め8倍以上の全延伸倍率、好ましくは10〜25倍の全延伸倍率で延伸すると、繊維の結晶化度と配向度が向上し、そのため繊維の機械特性が著しく向上するので好ましい。
また、本発明のPVA系繊維では、用途や目的に応じ、耐熱水性を向上させることを目的としてPVA系繊維で一般的に行われているアセタール化処理やその他の架橋処理を施すこともできる。すなわち、PVA系繊維をビニルアルコール系ポリマー(A)の水酸基と反応するホルムアルデヒド等の架橋剤を含む水溶液中で処理して、水酸基を封鎖することで繊維を疎水化することができる。
【0029】
本発明のPVA系難燃繊維の製造において、リン系難燃剤(B)の付与は繊維が難燃性を発現するに十分な量を付与可能であり、かつ最終的に得られる繊維を構成するビニルアルコール系ポリマー(A)が十分な結晶性を有し得る方法であれば、紡糸原液から乾熱延伸後のいずれの工程で行ってもかまわない。たとえば、紡糸原液中に添加する方法、膨潤状態の糸篠を難燃剤を添加した抽出浴を通過させる方法、さらに適当な液体に溶解・分散したリン系難燃剤(B)を紡糸した繊維表面に塗布する方法等が挙げられる。
【0030】
また本発明のPVA系難燃繊維の製造において、層状ケイ酸塩(C)をビニルアルコール系ポリマー(A)中にナノ分散させるには、予め調製しておいたビニルアルコール系ポリマー(A)の紡糸原液に層状ケイ酸塩を直接添加した後、攪拌によるせん断応力付与により紡糸原液中で微細に且つ均一に分散させる方法や、予め調製したビニルアルコール系ポリマー(A)の紡糸原液と、層状ケイ酸塩分散液をそれぞれ調製し、その後、高速攪拌等によるせん断応力を付与することで達成できる。しかしながら、攪拌能力が低く十分なせん断応力が溶液に付与されない場合には、ポリマー中への層状ケイ酸塩(C)のナノ分散は達成できず、従って所望の物性を期待することはできない。
本発明におけるPVA系繊維の製造方法は、比較的粘度の低い溶液状態でのせん断応力付与が重要で、この手段によってポリマーの層状ケイ酸塩(C)へのインターカレーションや、層状ケイ酸塩(C)のナノ分散が効率的に行われる。そのため、層状ケイ酸塩分散液にビニルアルコール系ポリマー(A)を少量同時に溶解しておき、攪拌することで、インターカレーションが速やかに達成される。その液を予め調製したビニルアルコール系ポリマー紡糸原液に添加する方法が、効率的なナノ分散が行われるため、特に好ましい。
【0031】
繊維の単繊維繊度は用途、目的に応じて適宜変更すれば良く、たとえば布帛等に用いる場合には0.1〜10dtex,特に1〜5dtex程度のものが広く適用できる。また繊維強度は3cN/dtex以上、特に5cN/dtex以上であるのが好ましく、本発明においては繊維の機械的性能を大きく損うことなく優れた難燃性能を付与できる。難燃性能については、LOI値が23以上、特に26以上であるのが好ましい。
また該難燃繊維はあらゆる形態で使用できる。たとえばフィラメント、カットファイバー(捲縮繊維等)、紡績糸、紐状物、ロープ、布帛(不織布、織編物)等の形態で使用でき、また他の非難燃繊維及び/又は他の難燃繊維と併用して繊維構造物を形成してもかまわない。なかでも本発明の難燃繊維は風合に優れていることから布帛として用いた場合に顕著な効果が得られる。本発明の難燃繊維を50質量%以上、さらに80質量%以上、特に90質量%以上含む布帛とすることにより一層優れた難燃効果が奏される。
【0032】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。尚、本発明の実施例において、また実施例中、%や比率は特に断りがない限り質量に基づく値である。
【0033】
[繊維強度 cN/dtex]
JIS L−1013に準じて測定した。
【0034】
[結晶化度 %]
差動型示差熱天秤(理学電機社製「TAS−2000」)を用いて、約2〜3mgの精秤した繊維サンプルを窒素中で25℃から300℃まで昇温速度80℃/min、ガス流量20ml/minの条件で昇温した際のビニルアルコール系ポリマーの結晶融解に基づく吸熱ピーク面積から融解熱(J)を求めた。次いで難燃剤等を除いたビニルアルコール系ポリマー1gあたりの融解熱(J/g)を換算し、該値の結晶化度100%のビニルアルコール系ポリマー1gあたりの融解熱(174.5J/g)に対する割合(%)を結晶化度として求めた。
【0035】
[配向度 %]
パルス式直読粘弾性測定器(株式会社オリエンテック製「DDV―5―B型」)を用い、繊維サンプルの繊維軸に沿った10kHzの音波の速度Cを測定し、PVAのキャストフィルムから得られた無配向試料の音速Cu(2.20km/sec)と比較してMoselayの式(配向度=1―Cu/C)により配向度を算出した。
【0036】
[LOI値]
JIS K−7201に準拠して測定した。
【0037】
[層状ケイ酸塩の平均層間距離 Å]
ポリマー中の層状ケイ酸塩の平均層間距離の測定は、広角X線回折装置(理学電気社製「RINT2400」)を用いて行った。グラファイトモノクロメーターで単色化されたCuKα線を用い、40mV−100mAの条件で測定を行った。スキャンスピードは2θ=1°/min、ステップ幅は0.01°、走査角2°≦2θ≦10°の条件で、繊維軸に対して垂直方向の回折強度の角度依存性を測定した。層状ケイ酸塩の(001)面からの回折ピーク位置を平均層間距離とし、以下のブラッグの式より算出した。
d=λ/2sinθ
λ:X線波長(1.5142Å)
θ:回折角度
【0038】
[熱水収縮率 %]
デシテックスあたり2mgのおもりを一端に取り付け、目盛板上に他端を固定して、繊維の長さAを測定する。これを100℃煮沸水中に垂直になるように入れて浸漬させ、30分間放置し、その後熱水中での繊維の長さBを目盛から読み取り、以下の式より収縮率を算出した。
熱水収縮率(%)=(A−B)/A×100
【0039】
[実施例1]
(1)重合度1750、ケン化度98.5モル%のPVA、硼酸、酢酸を、水中90℃で2時間撹拌(攪拌速度=200rpm)溶解し、PVAのポリマー濃度が16%、硼酸1.8%/PVA、酢酸0.35%/PVAの組成を有する紡糸原液を得た(I)。一方、モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製「クニピアF」)を水に4.5%となるように添加後、混合攪拌し層状粘土鉱物分散溶液を得た(II)。(I)中のPVAに対して、モンモリロナイトが5%になるように、(II)の溶液を加え、90℃で5時間攪拌(攪拌速度=200rpm)して均一な原液とした。その後、得られた原液に、ホスファゼン構造のリン部分の置換基が2つともフェノキシ基である、フェノキシホスファゼン(株式会社伏見製薬所製「FP−100」)40%の水分散液(III)を、PVAに対して、フェノキシホスファゼンが20%となるように加え、50℃で10分間混合し、紡糸原液を得た。
(2)上記(1)で得られた紡糸原液を孔径0.08μm、孔数1000ホールのノズルを通して、苛性ソーダ17g/lと芒硝350g/lを含有する40℃の水溶液よりなる固化浴中に湿式紡糸した。次いで2.5倍のローラー延伸、硫酸と芒硝の水溶液から中和浴にて中和、95℃の飽和芒硝水溶液中で1.6倍の湿延伸、30℃の水洗浴で洗浄、300g/lの芒硝水溶液で芒硝置換し、130℃で乾燥、230℃で3.0倍の乾熱延伸、235℃で5%の乾熱収縮を施して、PVA繊維を得た。得られた繊維の単繊維繊度は2.0dtexで、配向度は84%、結晶化度は61%、モンモリロナイトの層間距離は23Åであった。繊維強度は7.2cN/dtexと高強度で、また熱水収縮率は2.3%と耐水性も良好であった。またLOI値は28と高く、優れた難燃性能を有していた。
【0040】
[実施例2]
フェノキシホスファゼンに代えて縮合リン酸エステル(大八化学工業株式会社製「PX−200」)を20%/PVA用いた以外は実施例1と同様の条件にてPVA繊維を製造した。得られた繊維の単繊維繊度は2.1dtexで、配向度は82%、結晶化度は60%、モンモリロナイトの層間距離は24Åであった。繊維強度は6.8cN/dtexと高強度で、また熱水収縮率は2.5%と耐水性も良好であった。またLOI値は26と高く、優れた難燃性能を有していた。
【0041】
[実施例3]
モンモリロナイトに代えて合成マイカ(株式会社コープケミカル製「MEE3000S」)を用いた以外は実施例1と同様の条件にてPVA繊維を製造した。得られた繊維の単繊維繊度は2.0dtexで、配向度は84%、結晶化度は62%、マイカの層間距離は29Åであった。繊維強度は7.3cN/dtexと高強度で、熱水収縮率は2.2%と耐水性も良好であった。またLOI値は28と高く、優れた難燃性能を有していた。
【0042】
[実施例4]
(1)重合度1750、ケン化度99.9モル%のPVAを、DMSO中90℃で2時間撹拌(攪拌速度=200rpm)溶解し、PVAのポリマー濃度が20%の組成を有する紡糸原液を得た(I)。一方、モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製「クニピアF」)をDMSOに4.5%となるように添加し、混合攪拌し層状粘土鉱物分散溶液を得た(II)。(I)中のPVAに対して、モンモリロナイトが5%となるように、(II)の溶液を加え、90℃で5時間攪拌(攪拌速度=200rpm)して均一な紡糸原液とした。得られた紡糸原液を孔径0.08mm、孔数1000ホールのノズルを通して、メタノール/DMSOの質量比が70/30である5℃の固化浴中に湿式紡糸した。さらに40℃メタノール浴で3倍湿延伸したあと、繊維を2段のメタノール抽出浴を順次通過させることによりジメチルスルホキシドを全部除去した。最後のメタノール抽出浴に、フェノキシホスファゼンを浴に対して10%添加して均一溶液としたあと、繊維を0.5分間滞留させてメタノール含有繊維の内部および表面に該リン系難燃剤を浸透させた後、プレス搾液を行った。搾液後の含液質量は100%/PVAであったことから、フェノキシホスファゼンの繊維中導入量は10質量%/PVAであった。その後、150℃の熱風でメタノールを乾燥し、さらに230℃で3.3倍乾熱延伸を施し、PVA繊維を得た。
(2)上記(1)で得られた繊維の単繊維繊度は2.0dtexで、配向度は85%、結晶化度は68%、モンモリロナイトの層間距離は23Åであった。繊維強度は9.1cN/dtexと高強度で、また熱水収縮率は1.5%と耐水性も良好であった。またLOI値は26と高く、優れた難燃性能を有していた。
【0043】
[比較例1]
フェノキシホスファゼンを用いない以外は実施例1と同様の条件にてPVA繊維を製造した。得られた繊維の単繊維繊度は1.9dtexで、配向度は85%、結晶化度は63%、モンモリロナイトの層間距離は23Åであった。繊維強度は7.8cN/dtexと高強度で、また熱水収縮率は1.9%と耐水性も良好であったが、LOI値は22と低いものであった。
【0044】
[比較例2]
モンモリロナイトを用いない以外は実施例1と同様の条件にてPVA繊維を製造した。得られた繊維の単繊維繊度は2.0dtexで、配向度は84%、結晶化度は63%であった。繊維強度は7.1cN/dtexと高強度で、また熱水収縮率は2.4%と耐水性も良好であったが、LOI値は23と低いものであった。
【0045】
[比較例3]
200℃で1.4倍の乾熱延伸、および210℃で1%の乾熱収縮を施す以外は実施例1と同様の条件にてPVA繊維を製造した。得られた繊維の単繊維繊度は5.9dtexで、配向度は50%、モンモリロナイトの層間距離は23Å、LOI値は28と高いものであったが、乾熱延伸温度、全延伸倍率が不十分であるため結晶化度は38%と低く、そのため繊維強度も4.1cN/dtexと低強度で、また熱水収縮率も11.8%と耐水性も不良であった。
【0046】
[比較例4]
230℃で1.0倍の定長熱処理、および235℃で1%の乾熱収縮を施す以外は実施例1と同様の条件にてPVA繊維を製造した。得られた繊維の単繊維繊度は6.1dtexで、結晶化度は48%、モンモリロナイトの層間距離は24Å、LOI値は27.5と高いものであったが、全延伸倍率が低いため配向度は41%と低く、そのため繊維強度も3.9cN/dtexと低強度で、また熱水収縮率も9.4%と耐水性も不良であった。
【0047】
原液調製において、(I)に(II)の溶液を加えて90℃で攪拌する際の時間を1時間とする以外は、実施例1と同様の条件にてPVA繊維を製造した。得られた繊維の単繊維繊度は2.0dtexで、配向度は83%、結晶化度は61%であり、繊維強度は6.8cN/dtexと高強度で、また熱水収縮率も2.5%と耐水性も良好であったが、原液調製において、(I)に(II)の溶液を加えて90℃で攪拌する際の攪拌時間が短いため、モンモリロナイトの層間距離は15Åと小さく、LOI値も24と難燃性が不十分であった。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明により得られる難燃繊維は、燃焼ガス毒性、メルトドリップ性、コスト、耐洗濯耐久性等の諸性能に優れ、しかも高い難燃効果を有しているのみでなく品位、機械的性能等にすぐれていることから、産業資材用途のみならず、あらゆる用途に使用できる。具体的には戦闘服や消防服などの防護衣料分野、カーシートや車両バネ受材やエアフィルターなどの産業資材分野、カーテン、カーペット、毛布、フトン側地、シーツカバー、中入綿などの生活資材分野に有効に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルアルコール系ポリマー(A)、リン系難燃剤(B)及び層状ケイ酸塩(C)から構成され、かつ下記1)、2)を満足することを特徴とするポリビニルアルコール系難燃繊維。
1)該ビニルアルコール系ポリマー(A)の結晶化度が40%以上、配向度が45%以上であること、
2)広角X線回折で測定した層状ケイ酸塩(C)の平均層間距離が20Å以上であること。
【請求項2】
リン系難燃剤(B)の含有量が2〜35質量%/ビニルアルコール系ポリマーである請求項1に記載のポリビニルアルコール系難燃繊維。
【請求項3】
リン系難燃剤(B)がホスファゼン系難燃剤である請求項1または2記載のポリビニルアルコール系難燃繊維。
【請求項4】
層状ケイ酸塩(C)の含有量が1〜20質量%/ビニルアルコール系ポリマーである請求項1記載のポリビニルアルコール系難燃繊維。
【請求項5】
ビニルアルコール系ポリマー(A)を溶媒に溶解して得られる紡糸原液を湿式紡糸、乾湿式紡糸または乾式紡糸をするにあたり、リン系難燃剤(B)および層状ケイ酸塩(C)を以下1)、2)の条件にて付与することを特徴とするポリビニルアルコール系難燃繊維の製造方法。
1)リン系難燃剤(B)は紡糸原液から乾燥・乾熱延伸工程にいたるまでのいずれかの固化・抽出工程で付与すること、
2)層状ケイ酸塩(C)は紡糸原液中に付与すること。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリビニルアルコール系難燃繊維を用いてなる布帛。

【公開番号】特開2008−38268(P2008−38268A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210758(P2006−210758)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】