説明

ポリブタジエン組成物、方法および物

本発明は、
a)1種以上のエラストマー100重量部、
b)1以上の末端官能性アルコキシル化ポリブタジエン(メタ)アクリレートを含む架橋助剤1種以上1〜40重量部、
c)充填剤0〜200重量部
を含有するエラストマー組成物に関する。さらに詳しくは、式I:


(式中、RはH,Me,EtまたはC
R’はHまたはMe,
R”はHまたはMe,
n=1〜100,および
Z=1〜3である)の末端官能性低分子量アルコキシル化ポリブタジエン(メタ)アクリレートを使用し、パーオキサイド、パーカーボネートまたはアゾ化合物から選択される少なくとも1種のフリーラジカル生成化合物の存在下に硬化されるエラストマー組成物の物性を改良する。エラストマーは、天然または合成またはそれらの混合物である。強化用充填剤が存在してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には加硫ラバー、係る加硫ラバーを製造する方法および加硫ラバー物を形成するに有用な改良エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー組成物は、有用なラバー特性を付与するためには加硫しなければならない。
【0003】
加硫反応は、近接ポリマー鎖間で化学的架橋を引き起こす。エラストマーポリマーを架橋することにより、高い引張強度、低い圧縮永久ひずみ、回復可能な伸長、高弾性率および改良された動的パフォーマンス等を有する有用な材料が形成される。
【0004】
パーオキサイドは、不飽和および飽和エラストマーを含むたいていのエラストマーポリマータイプを架橋することができる。架橋助剤は、架橋形成の効率を増加させるラジカルアクセプティング化合物である。架橋助剤は、一般的には低分子量構造であり、少なくとも2つのラジカルアクセプティングサイトを有している。架橋助剤をパーオキサイドと協同相乗的に使用すると、該架橋プロセスの有用性が広がる。
【0005】
多官能性架橋助剤を協同相乗的に使用すると、ネットワークの架橋密度を増大させることにより、そして架橋組成物を変えることによりパーオキサイド硬化の効率を改良できる。パーオキサイド硬化用架橋助剤と使用されてきた官能性化合物は多い。形成されるネットワークの最終的特性は架橋助剤の反応性と構造に依存するであろう。
【0006】
一般的に、架橋助剤の選択は、結果として生じる加硫物のいくつかの所望の物理特性をバランスさせるように行われる。アクリレート含有架橋助剤がよく使用されるが、加硫速度が増加する傾向にあり、焼け焦げの安全性が低い組成物となる。この問題は、架橋助剤、ラバー組成物またはパーオキサイド自体に焼け焦げ抑制添加剤を添加するという賢明な
方法により解決されてきた。このようにして、加硫の開始を遅らせることができ、十分な工程の安全性をラバー組成物に付与できるのである。現在入手可能な架橋助剤の使用は、焼け焦げの安全性を維持することと最終的物理特性との間での兼ね合いの結果になることが多い。例えば、一般的な多官能性アクリレートは、パーオキサイド硬化エラストマー組成物の弾性率および引張り強度を改良できるが、焼け焦げの安全性が低下する。低分子量ビニル基含有ポリブタジエンもパーオキサイド硬化用架橋助剤として使用されている。このような材料を使用すると化合物の焼け焦げ安全性を維持するが、アクリレートや他のさらに反応性のある架橋助剤を採用した化合物の弾性率や引張り強度を達成することができない。
【0007】
さらに、多官能性アクリレートは一般的に比較的少ない使用量で最高性能を付与し、使用量が多いと、恐らく大抵のラバー組成物における多官能性アクリレートの限定的溶解性によるのであろうが、得られた物性のどれかが低下する。
【0008】
それ故、焼け焦げ安全性を維持しつつ、パーオキサイド硬化ラバー組成物の物性を改良できる多官能性アクリレート架橋助剤に対する要求が存在する。また、多官能性アクリレートがラバー化合物の物性に最も大きくて肯定的なインパクトを与える使用量まで増加させたいという要求もある。
【0009】
化合物の焼け焦げ安全性への係る添加剤の影響を調節しつつ、アクリレート含有架橋助剤を使用し物性を改良するという先行技術がいくつか提案されている。
【0010】
合衆国特許第4857571号は、抑制剤すなわち焼け焦げ抑制剤としてメチル置換アミノアルキルフェノールをモノマー多官能性アクリレートおよびメタクリレート架橋助剤と共に使用することを開示している。架橋密度を擬制にして、焼け焦げ時間が改良されたことが示されている。
【0011】
合衆国特許第5696190号は、改良焼け焦げ抑制剤としてメチル置換アミノアルキルフェノールの酸塩をモノマー多官能性アクリレートおよびメタクリレート架橋助剤と共に形成することが記載されている。焼け焦げ禁止剤の塩形態は、塩形態でないのに比べて性能を改善するが、アクリレート官能性ポリブタジエンは同様の焼け焦げ防止をするとは考えられてもいないし予想もされていない。
【0012】
合衆国特許第5272213号は、ヒドロキノンとスルフェンアミドの混合物を使用すると、ポリアクリレートを使用しているパーオキサイド硬化エラストマー系における焼け焦げ安全性に効果があることを記載している。架橋密度および焼け焦げ安全性改良が示されている。範囲はポリアクリレート架橋助剤に限定されており、アクリレート官能性ポリブタジエンは考慮されていない。
【0013】
合衆国特許第3974129号は、アクリレートグラフト化ポリジエン樹脂を形成するための、酸無水物付加低分子量ポリブタジエンとヒドロキシアルキルアクリレートの反応生成物からなる硬化性樹脂組成物を記載している。アクリレートグラフト化ポリジエン材料は、硬化性樹脂の製造に使用されており、ラバー物における用途は予想されていない。アクリレートポリブタジエン付加物は、テレケリック(telechelic)(官能化末端基を有する)でなかった。
【0014】
合衆国特許第4295909号は、重合性接着剤およびシーラント配合物におけるポリブタジエンポリオールに基づいたウレタンアクリレートキャップドプレポリマーの使用を記載している。親ポリブタジエンの微細構造は1,4−コンフィギュレーションが少なくとも70%である。ラバー化合物における適用は予想されていない。
【0015】
合衆国特許第5747551号は、UV硬化性圧力感応性接着剤組成物において、マイナーな成分として、アクリレートグラフト化ポリブタジエンを使用することが記載されている。ポリブタジエンのアクリレート感応性は、テレケリックでもないし、ラバー用途も予想されていない。
【0016】
合衆国特許第6491598号は、エンドレスパワートランスミッションベルトの製造に有用なパーオキサイド硬化ラバー組成物におけるアクリレートポリブタジエンの使用を開示している。開示されているアクリレート化ポリブタジエンはグラフト反応の生成物で、アクリレート官能性をポリブタジエンバックボーンに付加したものである。これらの材料は、構造においてテレケリックでない。さらに、この発明は、アクリレート化ポリブタジエンと共に含まれる追加的硬化架橋助剤(モノマー)を要求している。追加的モノマー架橋助剤なくしてテレケリックポリブタジエンアクリレートの有用性は予想されていない。
【0017】
興味ある刊行物には以下のようなものがある:
“Peroxide Vulcanization of Elastomers”, P. R. Dluzneski, Rubber Chem. Technol. 74, 451 (2001)。
“Fundamentals of Curing Elastomers with Peroxides and Coagents”, S. K. Henning and R. Costin, Paper E, 167th Spring Technical Meeting, Rubber Division, ACS, San Antonio, TX, May 16-18, 2005。
“Saret(登録商標) Liquid Coagents, Multifunctional Acrylic Monomers”, Sartomer Company Brochure #3800, 1998。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
先行技術は、低分子量末端官能性ポリブタジエンアクリレートを使用し、改良された物性と焼け焦げ安全性の両者をパーオキサイド硬化性エラストマー組成物に付与することは教示も示唆もしていない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、一つには、特定のエラストマー組成物、該組成物の製造方法およびそれから硬化された物からなる。
【0020】
エラストマー組成物は、天然あるいは合成エラストマーまたはそれらの混合物、架橋反応を開始することのできるフリーラジカル源、および効果的架橋助剤として作用する多ビニル組成物(high vinyl composition) の末端官能性低分子量ポリブタジエンアクリレート1種以上、を含んでいる。用語「ポリブタジエンアクリレート」は、別に指定されなければ、「ポリブタジエンメタクリレートおよび/またはアクリレート」を意味するものとして考慮されるべきであり、「ポリブタジエン(メタ)アクリレート」として引用されることもある。組成物は、フリーラジカルを補足し加硫を送らせる目的のものでる追加抑制化合物を使用することなく、拡張焼け焦げ安全性および改良物性の両特性を有する。組成物と物は、従来のモノマー多官能性アクリレートの同じ使用量で硬化引張り強度および弾性率を増加させる。本発明のエラストマー組成物は、それらに限定されるものではないが、タイヤ成分、ベルトやホース、ラバーガスケットやリング、エンジンマウントや防振マウント、ラバーローラーおよび他の自動車および産業用途用ラバー物等、工業用ラバー製品を含む用途に使用することができる。
【0021】
我々は、アルコキシル化ポリブタジエンアクリレート、より詳しくは少なくとも1つのアルコキシ、好ましくは少なくとも1つのエトキシまたはプロポキシ、より好ましくは1つのプロポキシユニットを各末端までに有し、かつ末端アクリレート(上記したように、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する)官能性を有するものが、他の典型的なモノマー多官能性アクリレート架橋助剤と比べると、焼け焦げ安全性を同時に増加しながら、パーオキサイド硬化ラバー(またはエラストマー)組成物の物性を改善できることを見出した。
【0022】
本発明の第1の主題は、
(a)1種以上のエラストマー100重量部、
(b)1以上の末端官能性アルコキシル化ポリブタジエン(メタ)アクリレートを含有する架橋助剤(coagent)1種以上1〜40重量部、好ましくは5〜20重量部、
(c)充填剤0〜200重量部、好ましくは150重量部まで、より好ましくは50〜100重量部
を含有するパーオキサイド硬化性エラストマー(あるいは、通常言われているラバー)組成物に関する。
【0023】
より具体的には、上記架橋助剤は、ポリブタジエン(メタ)アクリレート1種以上からのみなっていてもよい。
【0024】
上記ポリブタジエンアクリレート、本発明の架橋助剤は、より具体的には以下の一般式Iによる化学構造を有していてもよい:

(式中、「ポリブタジエン樹脂」は、ブタジエンホモポリマーまたはコポリマー基(一価〜三価)、
RはH,Me,EtまたはC
R’はHまたはMe,
R”はHまたはMe,
n=1〜100,および
Z=1〜3である)。
【0025】
式Iの好ましいポリマーは、2官能性ポリブタジエン(Z=2)の各末端に、1つのアルコキシ(n=1)、好ましくは1つのエトキシまたはプロポキシ、より好ましくは1つのプロポキシユニットを有し、かつ末端(メタ)アクリレート官能性を持っている。繰り返すが、「(メタ)アクリレート」の用語は、本発明に従い「アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味している。
【0026】
本発明は、1種以上のエラストマー100重量部;架橋助剤として式Iの末端官能性アルコキシル化ポリブタジエン(メタ)アクリレート1種以上を約1〜40重量部含有する組成物からなる。これらの組成物は、パーオキサイド、パーカーボネートまたはアゾ化合物等のフリーラジカル生成化合物の存在下硬化性である。
【0027】
本発明はまた、1種以上のエラストマー100重量部に対して、本発明に従い上記で規定されているように、架橋助剤1種以上1〜40重量部、好ましくは5〜20重量部、および硬化剤としてフリーラジカル生成化合物を添加すること、次に、上記で規定されているように、該フリーラジカル生成化合物の存在下に加硫すること、を含む、本発明により規定されるような加硫エラストマー組成物の製造方法からなる。本発明に従い調製された加硫ラバー物は、本発明の一部である。
【0028】
本発明の加硫物は、如何なる形態、例えばタイヤ成分、自動車および産業用ラバー物、およびベルト、ホース、ラバーガスケット、リング、エンジンマウント、防振マウントおよびラバーローラーからなるグループから選択される工業用ラバー製品であってもよい。
【0029】
上記末端官能性ポリブタジエンアクリレートは、相当する数平均分子量Mn1000〜12000g/molのアルコキシル化ポリブタジエンジオールから製造され、それらは、等量のphr使用量で従来の(メタ)アクリレート化モノマー架橋助剤と比較すると、活性(メタ)アクリレート官能性の10/1の量だけを含有することができる。それらは、また、従来の架橋助剤と比較して、架橋密度を増加させ、改良された物性を与える。焼け焦げ抑制添加剤は、要求されない;しかしながら、いくつのケースにおいては、それらはさらなる焼け焦げ防止を提供するかもしれない。
【0030】
本発明のアルコキシル化ポリブタジエンアクリレートは、エステル交換反応、直接エステル化によって、またはアクリル酸および/またはメタクリル酸ハロゲン化物あるいは酸無水物との反応によって形成することができる。エステル交換反応および直接エステル化は、好ましい工業的方法である。より詳細には、エステル交換反応の場合においては、本発明の最終ポリマーを調製するプロセスは、対応するヒドロキシル末端アルコキシル化ポリブタジエン樹脂、好ましくは対応するジオールと、好ましくはメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルあるいはイソブチルあるいはt−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルあるいはイソブチルあるいはt−ブチルメタクリレートから選択される低分子量アクリレートおよび/またはメタクリレートエステル、との間でのエステル交換反応からなる。この場合において、エステル交換反応は、エステル交換反応を触媒するとして当該分野で知られている、メタルアルコキシド、メタルオキサイド、ルイス酸あるいは他の触媒またはそれらの組合わせから選択される少なくとも1種の触媒により触媒作用が及ぼされるのが好ましい。分子量Mnは500〜15000ダルトン、好ましくは1000〜12000の範囲にある。ポリブタジエン樹脂に対しては、ミクロ構造は、1,2−vs1,4−付加の量、および1,4−付加の部分のトランス二重結合に対するシスの割合に関する。1,2−付加の量は、ビニル基含量としてよく言及される。ポリブタジエンビニル基含量は、約5%〜約90%の範囲でよい。トランス二重結合に対するシスの割合は、約1:10〜約10:1の範囲でよい。分子当たりの反応性末端ヒドロキシル基の平均数は約1〜3の範囲でよい。好ましい範囲は約1.0〜2.0であり、より好ましくは2,0である。式Iのアルコキシル化末端官能性ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、Klangら合衆国シリアルナンバー10/938221に記載されており、その内容を参考としてここに引用する。
【0031】
アクリレート末端アルコキシル化ポリブタジエン、より具体的には式Iの化合物を調製する第2番目のオプションは、対応するヒドロキシル末端アルコキシル化ポリブタジエンと、アクリル酸および/またはメタクリル酸、ハロゲン化物あるいは酸無水物との直接エステル化である。アクリル酸および/またはメタクリル酸との直接エステル化においては、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはエステル化反応を触媒するものとして当該分野で知られている他の強い鉱酸または有機酸から選択されるエステル化触媒を使用することができる。ヒドロキシル末端ポリブタジエン樹脂は、好ましくはブタジエンのアニオン重合により得られる。
【0032】
ポリブタジエンヒドロキシル末端樹脂は、他のアニオン的に重合可能なジエンおよび/またはコモノマー、例えば(限定されるものではないが)、イソプレンあるいはスチレン等のビニル芳香族モノマーとブタジエンとのアニオン的に得られたコポリマーであることも可能である。コポリマーは、ランダムまたはブロックコポリマーであってよく、ブロックコポリマーは好ましくはジブロックコポリマーである。このようなランダムまたはブロックコポリマーの例として、スチレンーブタジエンまたはスチレンーイソプレンコポリマーを挙げることができる。
【0033】
より詳しくは、アルコキシル化ポリブタジエンアクリレートは、末端アクリレートエステル基を有しており、好ましくは2官能性のもの(ジアクリレート)である。より好ましくは、ポリブタジエンは、少なくとも50%ビニル微細構造(トータルの不飽和の少なくとも50%)を含んでいる。
【0034】
本発明によるエラストマーまたはエラストマーのブレンドは、ポリジエン、ジエンとビニル芳香族モノマーとのコポリマー、ジエンとアクリロニトリルモノマーとのコポリマーエチレンとプロピレンとのコポリマー、エチレン、プロピレンおよびジエン含有モノマーのターポリマー、ジエンとアクリロニトリルモノマーとのコポリマーの水素化形態、およびジエン、アクリロニトリルモノマーおよびカルボキシル化モノマーのターポリマーの水素化形態のグループ化から選択することができる。
【0035】
本発明に従い末端官能性ポリブタジエンアクリレートが共に利用してもよいエラストマーは、それらに限定するものではないが、フリーラジカル生成化合物または放射源で硬化する天然ラバーおよび種々の合成ラバー(またはラバーポリマー、用語「ポリマー」は「コポリマー」を含む)を含むエラストマー有機ハイポリマーを含む。一般に、これらの硬化性ラバーは、共役ジエンのポリマーまたは、カーボンーカーボン結合を通じてモノマーが連結され容易に引き抜き可能な水素を有するポリマーである。共役ジエンの合成ラバーポリマーを例示すると、それらに限定されるものではないが、合成ポリイソプレン、スチレンーブタジエンラバー、ポリブタジエンラバー、ブチルラバー、ブロモブチルラバー、クロロブチルラバー、ネオプレン、エチレンプロピレンラバー、ニトリルエラストマー、シリコーンエラストマー、熱可塑性エラストマー、フルオロエラストマー、ハイスチレンブタジエンコポリマー、ビニルアセテートエチレンコポリマー、塩素化ポリエチレンラバー、クロロスルホン化ポリエチレンエラストマー、ポリエチレンおよび再生ラバーを含む。
【0036】
本発明による「パーオキサイド硬化性」という用語は、違ったふうに規定されていなければ、「熱分解し、ラバー組成物の硬化または加硫をすることができるフリーラジカルを生成することのできる加硫化剤または化合物の手段により硬化可能である」という意味として考慮されなければならない。硬化サイクルの間、分解しフリーラジカルを生成する加硫化剤を、本発明の組成物および方法におけるエラストマーを硬化する硬化剤として採用してもよい。フリーラジカル生成化合物として適しているのは、それに限定されるものではないが、パーオキサイド、パーカーボネート、アゾ化合物等である。
【0037】
ジターシャリーパーオキサイド硬化化合物は、好ましいフリーラジカル生成化合物である。このようなジターシャリーパーオキサイド硬化剤は、ターシャリーカーボンアトム間に配置された少なくとも1つのパーオキシ基を含有しており、ターシャリーカーボンアトムは、付加基の各部分を構成するカーボンアトムに結合し、付加基はアルキル(直鎖、分岐鎖、環状を含む)、アルケニル、またはアリール基、またはそれらの混合基であってもよく、付加基はさらに、非炭化水素基、例えばエーテル、さらなるパーオキシ基、または塩素等のハロゲンで置換されていてもよく、無機パーオキサイドは硬化プロセスまたは硬化エラストマープロダクトに支障をきたさない。
【0038】
上記記述による有機パーオキサイドとしては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルーヘキサン、α,α’−ビス−(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイドおよび、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキン(hexyne)−3を例示できる。
【0039】
好適な有機パーオキサイドは、限定されるものではないが、アシルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、およびパーオキシカーボネートを包含してもよい。係るパーオキサイドの例としては、限定するものではないが、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ−(p−クロロ−ベンゾイル)パーオキサイド、ジ−(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、t−ブチルパーオキシイソブチレート、O,O−t−ブチル−O−イソプロピルモノパーオキシ−カーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジメチル−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ(2−エチルブチレート)、1,1−ジ−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、およびn−ブチル−ビス(t−ブチルパーオキシ)−バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、4−メチル−4−ブチルパーオキシ−2−ペンタノン、エチル3,3−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブチレート、O,O−t−ブチル−O−(2−エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート等を含む。前記有機パーオキサイドは、単独または組み合わせて使用してもよく、市場で入手可能である。
【0040】
本発明において使用されるフリーラジカル生成化合物の量は、エラストマーや選択される架橋助剤により変化する。それ故、本発明を実施するに要求されるフリーラジカル生成化合物の要求量は、当該分野の当業者によって難なく確かめることのできる硬化有効量である。一般的に、エラストマーまたはエラストマーのブレンド100重量部当たり約0.1〜約20重量部、好ましくは約0.5〜約10重量部の量を使用する。
【0041】
不活性フィラーが本発明の方法および硬化性組成物に含まれてもよい。不活性フィラーを所望する場合、本明細書に記載の加硫プロセスの邪魔をしない、如何なる公知のあるいは従来のフィラーを使用してもよく、係るフィラーは細かく分割された形態が望ましい。フィラーとしては、これらに限定されるものではないが、以下のものが適当である:シリカおよびシリケート、サーマルブラック(すなわちファーネス、チャネル(channel)およびランプ(lamp)カーボンブラック)、クレイ、カオリン、ケイソウ土、酸化亜鉛、コーク、チタニア、コットンフロック、セルロースフロック、レザーファイバー、弾性繊維、プラスチック粉末(flour)、レザー粉末、ガラスや合成繊維等の繊維フィラー、金属酸化物およびカーボネート、およびタルク。不活性フィラーの量は、そのタイプと組成物の意図された最終用途により決定され、一般的には、エラストマーまたはエラストマーのブレンド100重量部当たり、0〜200、好ましくは0〜150、より好ましくは50〜100重量部である。
【0042】
本発明の硬化性組成物に添加してもよい他の添加剤は、硬化エラストマーの意図した最終用途によるが、酸化防止剤、UV安定剤、オゾン劣化防止剤、可塑剤、離型剤、粘着付与剤、粘着防止剤、分散剤、溶媒、軟化剤、脂肪酸、加工助剤、着色剤等を含む。
【0043】
本発明の第2番目の主題は、本発明に規定されたパーオキサイド硬化性(加硫性)ラバー組成物の製造方法に関し、パーオキサイド硬化性ラバーエラストマーまたはエラストマーのブレンド100重量部に対して、少なくとも1種の末端官能性ポリブタジエンアクリレートおよび/またはメタクリレートからなる架橋助剤1〜40重量部およびフリーラジカル生成硬化剤としてのパーオキサイドを添加することからなる。
【0044】
さらに詳しくは、このようなラバー物は、タイヤ成分、自動車および産業用途用ラバー物、(トランスミッションベルト、およびトランスポートベルトを含む)ベルト、ホース、ラバーガスケット、リング、エンジンマウント、防振マウントおよびラバーローラーから選択される工業用ラバー製品のグループから選択されてもよい。
【0045】
前述の成分は従来の方法で混合される。混合は、それら成分をバンバリーミキサーまたはラバー混合ロールへ充填し、組成物が均一になるまでそれら成分を均質に混合する。混合操作の温度は、決定的ではないが、硬化反応が始まる温度より低くすべきである。通常のラバーミリング手法が採用される。
【0046】
パーオキサイド硬化性ラバー組成物から加硫ラバーを得るには、要求される硬化時間は、一般に、適当な硬化温度範囲で、約1〜30分、好ましくは約5〜15分の範囲である。硬化温度は、熱的にフリーラジカル生成化合物を分解するに十分な温度とすべきである。そのため、硬化温度は、主として、選択されるフリーラジカル生成化合物に基づいて、予想される。本発明において有用な温度は、90℃〜250℃、好ましくは140℃〜215℃のような広い範囲の間で変化しうる。大きなラバーロールを硬化するためには、ロールに応力をかけるのを避ける為に、24時間の硬化時間が、通常である。
【0047】
本発明の他のアスペクトは、本発明により規定されているようなパーオキサイド硬化性ラバー組成物の少なくとも1種以上の硬化(加硫)の結果生じる加硫(硬化)ラバー物である。
【0048】
本発明は、純粋に例示的な以下の実施例を考慮することにより、さらに明確になる。
【実施例1】
【0049】
以下の実施例中、すべての部またはパーセンテージは、特に断らない限りラバー100重量部当たりの重量部(phr)に基づく目方によるものであり、それらの実施例は本発明のいくつかの具体例および他の組成物での比較例を例示して示しているものである。
【0050】
配合原料は、エラストマー、フィラー、酸化亜鉛、ステアリン酸およびプロセス油を含有するマスターバッチとして開始する。エチレン55重量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン(norbornene)4.9重量%からなり、ムーニー粘度40(ASTM D 1646)を有するエチレンプロピレンジエンモノマーのターポリマー(EPDM)、さらに、セミレインホーシング(semi-reinforcing)カーボンブラック(N660)100phrを使用した。100℃で33センチストークスの粘度(ASTM D 445)、−12℃の流動点(ASTM D 97)およびアニリン点129℃(ASTM D 611)を有するパラフィン系オイル50phrをプロセス油として使用した。ラバー化学物質、酸化亜鉛およびステアリン酸を、それぞれ5および1phrで混合した。2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(重合化)1phrを酸化防止剤として使用した。
この原料は、実施例に含まれるすべての評価に使用するに十分な量で調製した。2本ロール機上で引続いて硬化剤をマスターバッチに添加することにより、本発明をデモンストレートする。カオリンクレー(40%活性)(40% actives)に担持されたジクミルパーオキサイド7.5phrおよび架橋助剤を添加した後、生産化合物を、1.3〜1.0の比で異なるローラーrpmで最低10分間、す練りした。化合物をミルから出しシート状にし、テスト用に備えた。
【0051】
硬化レオメトリーを、ASTMD5289に従いムービングダイレオメーター(MDR)上で行った。硬化加硫物は、3°のアークディグリーディフレクション(arc degree deflection)で35分間160℃で圧縮成形することにより形成した。硬化の状態はMDRから知らされるデルタトルク(M−M)として与えられる。焼け焦げ特性は、トルクにおける2点上昇(ts2)に対する時間で特徴づけた。引張試験は、引張試験機上でASTM D 412に従い行われた。圧縮永久ひずみは、100℃22時間加熱後に評価した(ASTM D 395-B)。
【0052】
末端官能性アルコキシル化ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、以下に概説された手順に従い調製された。機械的撹拌機、熱電対、エアー注入チューブおよびディーンスタークトラップを取り付けた1リットル多口丸底フラスコに、ヘプタン(157g)、アクリル酸(43g)、メタンスルホン酸(3.2g)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(1.9g)および、エチレンオキサイド由来のヒドロキシル基(アルコキシル化度=2)(ヒドロキシル当たり2エチレンオキサイド単位)を有し、50mgKOH/gのヒドロキシル価および計算数平均分子量Mn2244g/molを有するヒドロキシル末端ポリブタジエン樹脂(424g)を充填した。混合物を加熱還流し、反応の水を取り除き、還流を水生成がストップするまで維持した。強酸触媒、溶媒および過剰のアクリル酸を取り除いた後、粘性のある薄茶色の液体として最終生成物を得た。架橋助剤は、末端官能性アルコキシル化ポリブタジエンジアクリレートである。
【0053】
比較の架橋助剤材料を表1に含めている。
【表1】

【0054】
実施例1−6(発明:実施例2−6)
実施例2−6は発明を記述している。実施例1は、コントロール(ポリブタジエンジアクリレートなし)であり、表2に略述したマスターバッチにパーオキサイドだけを7.5phr混合して調製されたものである。本発明を表す実施例2−6は、パーオキサイドに加え、末端官能性ポリブタジエンジアクリレート架橋助剤の量を増加させながらマスターバッチに添加することにより調製されたものである。官能性ポリマー架橋助剤の添加により、硬化状態が改良され、圧縮永久歪みを低下させつつ、引張強さおよび弾性率を増加に導くことを示している、硬化速度論や物性を報告する。
【0055】
【表2】

【0056】
実施例7−12 比較例
表3における比較の実施例7−12は、モノマー架橋助剤、1,4−ブタンジオールジアクリレートを使用している。配合物は、先の実施例に概略されている同様の方法で調製した。同様の使用量では、モノマージアクリレートは、発明の実施例2−6と同じようなデルタトルクと引張特性を示しているが、圧縮永久ひずみが増加している。さらに、焼け焦げ安全性がモノマージアクリレートを使用すると著しく減少した。
【0057】
【表3】

【0058】
実施例13−18 比較例
表4における比較の実施例13−18は、第2番目の通常のモノマー架橋助剤、トリメチロールプロパントリアクリレートを使用している。このプロダクトは、登録商標をもつ焼け焦げ禁止剤をも含有している。配合物は、先の実施例に概略されている同様の方法で調製した。同様の使用量では、モノマートリアクリレートは、先の実施例と同様のデルタトルクと引張特性を示している。実施例7−12との関係では、焼け焦げ安全性は向上しているものの、本発明による与えられる焼け焦げ防止の方がより大きい。
【0059】
【表4】

【0060】
実施例19−24 比較例
表5に記載されている比較の実施例19−24は、末端アクリレート官能性を有しないポリブタジエン樹脂架橋助剤を使用している。配合物は、先の実施例に概略されている同様の方法で調製した。同様の使用量では、比較の非感応性樹脂は、実施例2−6の発明の実施例に比べると、デルタトルクおよび引張特性が減少し、圧縮永久歪みに劣っている。焼け焦げ防止は、発明の実施例に対して改良さているが、物性がより重要であり、本発明実施例においては改良されている。
【0061】
【表5】

【0062】
実施例25−30 比較例
表7における比較の実施例25−30は、実施例7−12で評価されたモノマージアクリレート物質および非官能性ポリブタジエン樹脂のブレンド物を使用している。2成分ブレンド物は、アクリレートとビニル基のモル濃度が、与えられたphrで発明実施例におけるポリブタジエンジアクリレートのそれと等価になるように調製した(下記表6参照)。1,4−ブタンジオールジアクリレートにおけるアクリレート官能性のモル濃度は、モノマー1g当たり10mmolであると計算された。本発明を具現化したポリブタジエンジアクリレートにおけるアクリレート官能性のモル濃度は、ポリマー樹脂1g当たり1mmol含有する。ブレンドAからEとして同定されている架橋助剤ブレンド物が、表6に記載されている。
【0063】
【表6】

【0064】
配合物は、先の実施例に概略されている同様の方法で調製し、テストの結果を表7に示している。焼け焦げ安全性および圧縮永久歪みは、発明実施例で与えられるそれらと同様である。しかしながら、同様の使用量では、ブレンド物は、発明実施例2−6で得られたデルタトルクおよび弾性特性より劣った特性を示している。
【0065】
【表7】

【0066】
本発明を詳細に記述し、例示したが、種々の他の具体例や改良は本発明の精神および範囲からはずれることなく当該分野の当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1種以上のエラストマー100重量部、
b)1以上の末端官能性アルコキシル化ポリブタジエン(メタ)アクリレートを含む架橋助剤1種以上1〜40重量部、
c)充填剤0〜200重量部
を含有するエラストマー組成物。
【請求項2】
末端官能性アルコキシル化ポリブタジエン(メタ)アクリレートが式I:

(式中、「ポリブタジエン樹脂」は、ブタジエンホモポリマーまたはコポリマー基(一価〜三価)、
RはH,Me,EtまたはC
R’はHまたはMe,
R”はHまたはMe,
n=1〜100,および
Z=1〜3である)
請求項1に記載のエラストマー組成物。
【請求項3】
式Iの末端官能性アルコキシル化ポリブタジエン(メタ)アクリレートが、数平均分子量Mn1000〜12000を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
式Iの末端官能性アルコキシル化ポリブタジエン(メタ)アクリレートが、R’=Hを有する、請求項1〜3いずれかに記載の組成物。
【請求項5】
ポリブタジエンアクリレートが、2官能性アクリレートである、請求項1〜4いずれかに記載の組成物。
【請求項6】
ポリブタジエンアクリレートが、少なくとも50%ビニル微細構造を含有する、請求項1〜5いずれかに記載の組成物。
【請求項7】
ポリブタジエンジアクリレートが、上記1種以上のエラストマー100重量部当たり5〜20重量部存在する、請求項1〜6いずれかに記載の組成物。
【請求項8】
上記1種以上のエラストマーが、ポリジエン、ジエンとビニル芳香族モノマーとのコポリマー、ジエンとアクリロニトリルモノマーとのコポリマー、エチレンとプロピレンとのコポリマー、エチレン、プロピレンとジエン含有モノマーとのターポリマー、ジエンとアクリロニトリルモノマーとのコポリマーの水素化形態、およびジエン、アクリロニトリルモノマーとカルボキシル化モノマーとのターポリマーの水素化形態のグループから選択される、請求項1〜7いずれかに記載の組成物。
【請求項9】
パーオキサイド、パーカーボネートまたはアゾ化合物から選択される少なくとも1種のフリーラジカル生成化合物を硬化剤としてさらに含有する、請求項1〜8いずれかに記載の組成物。
【請求項10】
組成物がパーオキサイド硬化性組成物である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
フリーラジカル生成パーオキサイドが、ジ−ターシャリー有機パーオキサイドから選択されるパーオキサイドである、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
硬化剤が、ジ−ターシャリー有機パーオキサイドであり、上記1種以上のエラストマー100重量部当たり約0.1〜20重量部である、請求項9〜11いずれかに記載の組成物。
【請求項13】
充填剤が、150重量部以下の量で存在する、請求項1〜12いずれかに記載の組成物。
【請求項14】
1種以上のエラストマー100重量部に対して、末端官能性ポリブタジエン(メタ)アクリレートを1種以上含有する架橋助剤1種以上1〜40重量部と硬化剤としてフリーラジカル生成化合物を添加すること、次に該フリーラジカル生成化合物の存在下に加硫すること、を含む、請求項1〜13いずれかに記載の加硫化エラストマー組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに規定されるか、または請求項14に記載の方法で規定される少なくとも1種のエラストマー組成物の加硫化の結果物である、加硫化ラバー物。
【請求項16】
タイヤ成分、自動車および産業用途用ラバー物、およびベルト、ホース、ラバーガスケット、リング、エンジンマウント、防振マウントおよびラバーローラーから選択される工業用ラバー製品から選択される、請求項15に規定される物。

【公表番号】特表2009−526103(P2009−526103A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553676(P2008−553676)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001048
【国際公開番号】WO2007/090634
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(502433287)サートーマー・テクノロジー・カンパニー・インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Sartomer Technology Company, Inc.
【Fターム(参考)】