説明

ポリプロピレンインフレーションフィルム

1.8gから14.0g/10分のメルトフロー率および少なくとも115℃の融点を示すポリプロピレンを含有して成るインフレーションフィルム。このインフレーションフィルムは10%未満のヘイズ値および70%以上の光沢値を示す。このインフレーションフィルムを中密度のポリエチレンまたは15重量%の量の耐衝撃性共重合体と一緒に共押出し加工してもよい。また、透明化剤を添加することも可能である。ポリプロピレンを含有して成るインフレーションフィルムの製造を標準的空冷インフレーションフィルムラインで実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリプロピレン、より詳細には、主にインフレーションフィルム(blown
film)の製造で用いるに有用なポリプロピレンに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム市場は、フィルム特性の特殊な組み合わせをもたらし得るポリプロピレン樹脂を要求している。典型的には、キャスト、ダブルバブル(管状)および水急冷インフレーションフィルム加工を用いると透明性が高くて光沢値が高いポリプロピレンフィルムを製造することができる。また、テンダー−フレーム加工で二軸配向(BOPP)させることでも光学的に優れたフィルム特性を得ることができる。ポリエチレンフィルムの製造で幅広く用いられている空冷インフレーションフィルム加工で通常のポリプロピレン樹脂を用いたのでは高い透明性を示すフィルムはもたらされない。
【0003】
現存する加工技術を用いてポリプロピレンで作られた透明性が高くて光沢値が高いインフレーションフィルムを達成することが望まれている。また、高い引張り応力を示すインフレーションフィルムを製造することも望まれている。
【0004】
要約
1つの態様において、本発明はポリプロピレンを含有して成るインフレーションフィルムを包含し、前記ポリプロピレンは1.8g/10分から14.0g/10分のメルトフロー率および少なくとも115℃の融点を示しかつ前記インフレーションフィルムは10%未満のヘイズ値および70%以上の光沢値を示す。
【0005】
1つの態様において、本発明は製品を包含し、前記製品は、小売衣料品用オーバーラップ、特殊製パン用フィルム、フレッシュカット産物用パウチ、穀類(例えば米および豆)用の垂直製袋充填包装材、耐熱性フィルム、シーラントウエブ(sealant webs)、不正使用の度合を低くする冷凍食品用フィルム(low abuse frozen food films)であるか或は収縮フィルムに入れる少量成分としての製品である。
【0006】
1つの態様において、本発明は、1.8g/10分から14.0g/10分のメルトフロー率および少なくとも115℃の融点を示すポリプロピレンを含有して成りかつ10%未満のヘイズ値および70%以上の光沢値を示すインフレーションフィルムを成形する方法を包含し、この方法は、前記インフレーションフィルムを温度が10℃未満の空気で急冷することを含んで成りかつこの方法は更に内部バブル冷却、外部バブル安定化およびデュアルリップエアリング(dual lip air ring)も含んで成る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1に、透明化重合体から成形したインフレーション構造物(blown structure)が示した光沢値およびヘイズ値を例示する。
【図2】図2に、メタロセン触媒を用いて製造した重合体から成形したインフレーション構造物が示した光沢値およびヘイズ値を例示する。
【図3】図3に、フィルムが示した割線引張り応力(secant modulus)およびヘイズ/引張り応力比を例示する。
【図4】図4に、引き裂き抵抗およびダート耐衝撃性を例示する。
【0008】
詳細な説明
序論および定義
ここに詳細な説明を行う。添付請求項の各々で個々の発明を定義するが、それらは、抵触の目的で、当該請求項に示すいろいろな要素または制約の相当物を包含すると認識する。以下に「発明」を言及する場合、それらは全部、ある場合には、状況に応じて、特定の具体的態様のみを言及するものであり得る。他の場合の「発明」の言及は本請求項の必ずしも全部ではないが1つ以上に示す主題事項を言及するものであることは認識されるであろう。ここに、具体的態様、変形および実施例を包含する発明の各々を以下により詳細に記述するが、本発明をそのような態様にも変形にも実施例にも限定するものでなく、通常の当業者が本特許に示す情報を入手可能な情報および技術と組み合わせた時に本発明を作成しかつ使用することができるようにそれらを含めるものである。
【0009】
本明細書で用いる如きいろいろな用語を以下に示す。ある請求項で用いる用語を以下に定義しない場合、その度合で、印刷された出版物および発行された特許に示されている如き関係した技術分野の技術者がその用語に与えた最も幅広い定義をそれに与えるべきである。その上、特に明記しない限り、本明細書に記述する化合物は全部置換されているか或は置換されていなくてもよくかつ化合物のリストはそれらの誘導体を包含する。
【0010】
本明細書に開示する特定の重合方法は、ポリオレフィン用単量体を1種以上の触媒系と接触させて重合体を生じさせることを伴う。
【0011】
触媒系
本明細書で用いる触媒系は、担持型触媒系または非担持型触媒系(時には均一触媒と呼ぶ)として特徴付け可能である。このような触媒系はメタロセン触媒系、チーグラー・ナッタ触媒系またはポリオレフィンの製造に適することが当業者に公知の他の触媒系などであってもよい。そのような触媒系の簡単な考察を以下に含めるが、決して本発明の範囲をそのような触媒に限定することを意図するものでない。
【0012】
A.チーグラー・ナッタ触媒系
チーグラー・ナッタ触媒系の製造は一般に金属成分(例えば触媒前駆体)を1種以上の追加的成分、例えば触媒担体、共触媒および/または1種以上の電子供与体と一緒にすることで行われる。
【0013】
触媒前駆体の具体例は、一般に式:
MR
[式中、Mは遷移金属であり、Rはハロゲン、アルコキシまたはヒドロカルボキシル基であり、そしてxは前記遷移金属の原子価である]
で表される金属成分である。例えば、xは1から4であってもよい。そのようなチーグラー・ナッタ触媒化合物の遷移金属は、本明細書および請求項の全体に渡って記述するように、1つの態様ではIVからVIB族から選択可能であり、そしてより特別な態様ではチタン、クロムまたはバナジウムから選択可能である。Rは、1つの態様では、塩素、臭素、カーボネート、エステルまたはアルコキシ基から選択可能である。触媒前駆体の例には、これらに限定するものでないが、TiCl、TiBr、Ti(OCCl、Ti(OCCl、Ti(OC13Cl、Ti(OCBrおよびTi(OC1225)Clが含まれる。
【0014】
当業者は、触媒前駆体が重合用触媒の助長に有用であるようにそれをいくつかの方法で「活性化させ」ておくことを認識するであろう。以下に更に考察するように、活性化は、当該触媒前駆体を活性化剤(これをまた時には「共触媒」とも呼ぶ)と一緒にすることで達成可能である。本明細書で用いる如き用語「Z−N用活性化剤」は、Z−N触媒前駆体を活性化し得る担持型もしくは非担持型の化合物もしくは化合物の組み合わせのいずれかを指す。そのような活性化剤の具体例には、これらに限定するものでないが、有機アルミ
ニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEAl)およびトリイソブチルアルミニウム(TiBAl)などが含まれる。
【0015】
そのようなチーグラー・ナッタ触媒系に更に立体選択性を向上させる1種以上の電子供与体、例えば内部電子供与体および/または外部電子供与体などを含有させることも可能である。内部電子供与体を用いると結果としてもたらされる重合体が示すアタクティック形態の度合が低下することで、その重合体が含有するキシレン可溶物の量が低下し得る。ペンダント型基が重合体鎖の両側に無作為な様式で配列している時の重合体は「アタクティック」(低い立体選択性)である。対照的に、ペンダント型基の全部が鎖の同じ側に配列している時の重合体は「イソタクティック」であり、そしてペンダント型基が鎖の相対する側に交互に存在する時の重合体は「シンジオタクテック」である(両方とも高い立体選択性の例である)。そのような内部電子供与体には、1つの態様において、アミン、アミド、エステル、ケトン、ニトリル、エーテルおよびホスフィンが含まれ得る。より特別な態様における内部電子供与体には、これらに限定するものでないが、ジエーテル、スクシネートおよびフタレート、例えば米国特許第5,945,366号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているそれらが含まれる。別の態様における内部電子供与体には、ジアルコキシベンゼン、例えば米国特許第6,399,837号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されているそれらが含まれる。
【0016】
外部電子供与体を用いると生じるアタクティック重合体の量を更に制限することができる。そのような外部電子供与体には、単官能もしくは多官能カルボン酸、無水カルボン酸、カルボン酸エステル、ケトン、エーテル、アルコール、ラクトン、有機燐化合物および/または有機ケイ素化合物が含まれ得る。1つの態様における外部供与体には、ジフェニルジメトキシシラン(DPMS)、シクロヘキシメチルジメトキシシラン(CDMS)、ジイソプロピルジメトキシシランおよび/またはジシクロペンチルジメトキシシラン(CPDS)が含まれ得る。その外部供与体は使用する内部電子供与体と同じまたは異なってもよい。
【0017】
そのようなチーグラー・ナッタ触媒系の成分(例えば触媒前駆体、活性化剤および/または電子供与体)を担体と互いに組み合わせた状態でか或は互いに個別の形態で関連させてもよいか或は関連させなくてもよい。典型的な担体材料には、二ハロゲン化マグネシウム、例えば二塩化マグネシウムまたは二臭化マグネシウムなどが含まれ得る。
【0018】
チーグラー・ナッタ触媒系およびそのような触媒系を生じさせるに適した方法が少なくとも米国特許第4,298,718号、米国特許第4,544,717号および米国特許第4,767,735号(これらは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0019】
B.メタロセン触媒系
メタロセン触媒は一般に遷移金属にπ結合で配位しているシクロペンタジエニル(Cp)基(これは置換されているか或は置換されていなくてもよく、各置換基は同じまたは異なってもよい)が1個以上組み込まれている配位化合物であるとして特徴づけ可能である。
【0020】
前記Cpの置換基は直鎖、分枝もしくは環式ヒドロカルビル基であってもよい。その環式ヒドロカルビル基は更に他の隣接環構造を形成していてもよく、そのような隣接環構造には、例えばインデニル、アズレニルおよびフルオレニル基が含まれる。そのような追加的環構造もまたヒドロカルビル基、例えばCからC20ヒドロカルビル基などで置換されているか或は置換されていなくてもよい。
【0021】
メタロセン触媒の具体例はかさ高い配位子を有するメタロセン化合物であり、これは一般に式:
[L]M[A]
[式中、Lはかさ高い配位子であり、Aは脱離基であり、Mは遷移金属であり、そしてmおよびnは、配位子の総結合価が遷移金属の原子価に相当するような数である]
で表される。例えば、mは1から3であってもよくそしてnは1から3であってもよい。
【0022】
そのようなメタロセン触媒化合物の金属原子「M」は、本明細書および請求項の全体に渡って記述するように、1つの態様では3族から12族の原子およびランタニド族の原子から選択可能であり、より特別な態様では3族から10族の原子から選択可能であり、更により特別な態様ではSc、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、IrおよびNiから選択可能であり、更により特別な態様では4、5および6族の原子から選択可能であり、更により特別な態様ではTi、Zr、Hf原子から選択可能であり、更により特別な態様ではZrであり得る。その金属原子「M」の酸化状態は、1つの態様では0から+7の範囲であってもよく、より特別な態様では+1、+2、+3、+4または+5であり、更により特別な態様では+2、+3または+4である。金属原子「M」と結合している基は、特に明記しない限り、以下の式および構造に示す化合物が電気的に中性であるような基である。
【0023】
かさ高い配位子には、一般に、シクロペンタジエニル基(Cp)およびこれの誘導体が含まれる。Cp配位子1種または2種以上が当該金属原子Mと一緒に少なくとも1つの化学結合を形成することで「メタロセン触媒化合物」が生じる。そのCp配位子は、置換/引き抜き反応をあまり起こさない点で、触媒化合物と結合している脱離基とは異なる。
【0024】
Cpは典型的に縮合環1種または2種以上または環系を含有する。そのような環1種または2種以上または環系1種または2種以上は典型的に13族から16族の原子、例えば炭素、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、燐、ゲルマニウム、ホウ素、アルミニウムおよびこれらの組み合わせから選択される原子を含有していて炭素が環員の少なくとも50%を構成している。非限定例には、2−メチル,4フェニルインデニル;シクロペンタジエニル;シクロペンタフェナントレネイル;インデニル;ベンゾインデニル;フルオレニル;テトラヒドロインデニル;オクタヒドロフルオレニル;シクロオクタテトラエニル;シクロペンタシクロドデセン;フェナントロインデニル;3,4−ベンゾフルオレニル;9−フェニルフルオレニル;8−H−シクロペント[a]アセナフチレニル;7−H−ジベンゾフルオレニル;インデノ[1,2−9]アントレン;チオフェノインデニル;チオフェノフルオレニル;それらの水添変形(例えば4,5,6,7−テトラヒドロインデニルまたはHInd)、それらの置換変形および複素環式変形が含まれる。
【0025】
Cpの置換基には、水素基、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アシル、アロイル、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、ジアルキルアミン、アルキルアミド、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルバモイル、アルキル−およびジアルキル−カルバモイル、アシルオキシ、アシルアミノ、アロイルアミノおよびこれらの組み合わせが含まれ得る。アルキル置換基のより特別な非限定例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、メチルフェニルおよびt−ブチルフェニル基などが含まれ、それらにはあらゆる異性体、例えばt−ブチル、イソプロピルなどが含まれる。他の可能な基には、置換されているアルキルおよびアリール、例えばフルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、ヨードプロピル、ブロモヘキシル、クロロベンジルなど、およびヒドロカルビルで置換されている有機半金属基(トリメチルシリル、トリメチルゲルミル、メチルジエチルシリルなどを包含)、ハロカルビルで置換されている有機半金属基[トリス(トリフルオロメチル)シリル、メチルビス(ジフルオロメチル)シリル、ブロモメチルジメチルゲルミルなどを包含]、二置換ホウ素基(ジメチルホウ素などを包含)、二置換15族基(ジメチルアミン、ジメチルホスフィン、ジフェニルアミン、メチルフェニルホスフィンを包含)および16族基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、フェノキシ、メチルスルフィドおよびエチルスルフィドを包含)が含まれる。他の置換基Rにはオレフィン、例えばこれらに限定するものでないが、オレフィン系不飽和置換基(ビニル末端配位子、例えば3−ブテニル、2−プロペニル、5−ヘキセニルなどを包含)などが含まれる。1つの態様では、少なくとも2個のR基、1つの態様では隣接して位置する2個のR基が一緒になって、炭素、窒素、酸素、燐、ケイ素、ゲルマニウム、アルミニウム、ホウ素およびこれらの組み合わせから選択される原子を3から30個有する環構造を形成している。また、置換基R基、例えば1−ブタニルなどは元素Mと結合関係を形成していてもよい。
【0026】
アニオン性脱離基の各々を独立してハロゲンイオン、ハイドライド、CからC12アルキル、CからC12アルケニル、CからC12アリール、CからC20アルキルアリール、CからC12アルコキシ、CからC16アリールオキシ、CからC18アルキルアリールオキシ、CからC12フルオロアルキル、CからC12フルオロアリール、CからC12ヘテロ原子含有炭化水素およびこれらの置換誘導体、更により特別な態様ではハイドライド、ハロゲンイオン、CからCアルキルカルボキシレート、CからCフッ素置換アルキルカルボキシレート、CからC12アリールカルボキシレート、CからC18アルキルアリールカルボキシレート、CからCフルオロアルキル、CからCフルオロアルケニルおよびCからC18フルオロアルキルアリール、更により特別な態様ではハイドライド、クロライド、フルオライド、メチル、フェニル、フェノキシ、ベンゾキシ、トシル、フルオロメチルおよびフルオロフェニル、更により特別な態様ではCからC12アルキル、CからC12アルケニル、CからC12アリール、CからC20アルキルアリール、置換CからC12アルキル、置換CからC12アリール、置換CからC20アルキルアリール、CからC12ヘテロ原子含有アルキル、CからC12ヘテロ原子含有アリールおよびCからC12ヘテロ原子含有アルキルアリール、更により特別な態様ではクロライド、フルオライド、CからCアルキル、CからCアルケニル、CからC18アルキルアリール、ハロゲン置換CからCアルキル、ハロゲン置換CからCアルケニルおよびハロゲン置換CからC18アルキルアリール、更により特別な態様ではフルオライド、メチル、エチル、プロピル、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、フルオロメチル(モノ−、ジ−およびトリフルオロメチル)およびフルオロフェニル(モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−およびペンタフルオロフェニル)、更により特別な態様ではフルオライドなどの如きいずれかの脱離基から選択しかつアニオン性脱離基の各々にはそれらのいずれも含まれ得る。
【0027】
脱離基の他の非限定例には、アミン、ホスフィン、エーテル、カルボキシレート、ジエン、炭素原子数が1から20の炭化水素基、フッ素置換炭化水素基[例えば−C(ペンタフルオロフェニル)]、フッ素置換アルキルカルボキシレート[例えばCFC(O)O]、ハイドライド、ハロゲンイオンおよびこれらの組み合わせが含まれる。脱離基の他の例には、アルキル基、例えばシクロブチル、シクロヘキシル、メチル、ヘプチル、トリル、トリフルオロメチル、テトラメチレン、ペンタメチレン、メチリデン、メチオキシ、エチオキシ、プロポキシ、フェノキシ、ビス(N−メチルアニリド)、ジメチルアミド、ジメチルホスフィド基などが含まれる。1つの態様では、2個以上の脱離基が縮合環もしくは環系の一部を形成している。
【0028】
LとAは互いに橋渡しされていてもよい。架橋メタロセンは、例えば一般式:
XCpCpMA
[式中、Xは構造ブリッジであり、CpおよびCpは各々がシクロペンタジエニル基を表しかつ各々が同じまたは異なってもよくかつ置換されているか或は置換されていなくてもよく、Mは遷移金属であり、そしてAはアルキル、ヒドロカルビルまたはハロゲン基であり、そしてnは0から4の整数、特別な態様では1または2のいずれかである]
などで記述可能である。
【0029】
橋渡し基(X)の非限定例には、13から16族の原子を少なくとも1個、例えばこれらに限定するものでないが、炭素、酸素、窒素、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、ゲルマニウム、錫およびこれらの組み合わせの中の少なくとも1個を含有する二価の炭化水素基が含まれ、そのようなヘテロ原子はまた結合価が中性であることを満たすように置換されているCからC12アルキルもしくはアリールであってもよい。そのような橋渡し基は、また、この上で定義した如き置換基を含有していてもよく、そのような置換基には、ハロゲン基および鉄が含まれる。橋渡し基のより特別な非限定例はCからCアルキレン、置換CからCアルキレン、酸素、硫黄、RC=、RSi=、−Si(R)Si(R)−およびRGe=、RP=(ここで、「=」は2個の化学結合を表す)であり、ここで、Rは独立してハイドライド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、ヒドロカルビル置換有機半金属、ハロカルビル置換有機半金属、二置換ホウ素、二置換15族原子、置換16族原子およびハロゲン基の群から選択され、かつ2個以上のRが一緒になって環もしくは環系を形成していてもよい。1つの態様における架橋メタロセン触媒成分は橋渡し基(X)を2個以上有する。
【0030】
本明細書で用いる如き用語「メタロセン活性化剤」は、シングルサイト触媒化合物(例えばメタロセン、15族含有触媒など)を活性化し得る担持型もしくは非担持型の化合物もしくは化合物組み合わせのいずれかであると定義する。それは、典型的に、触媒成分の金属中心から脱離基(例えば前記式/構造中のA基)を少なくとも1個引き抜くことを伴う。このように、本発明の触媒成分にそのような活性化剤を用いた活性化をそれがオレフィンの重合を起こさせる方向に受けさせる。そのような活性化剤の具体例には、ルイス酸、例えば環式もしくはオリゴマー状のポリヒドロカルビルアルミニウムオキサイドおよびいわゆる配位しないイオン性活性化剤(「NCA」)、または「イオン化活性化剤」または「化学量論的活性化剤」、または中性のメタロセン触媒成分をオレフィンの重合に関して活性のあるメタロセンカチオンに変化させる能力を有する他の如何なる化合物も含まれる。
【0031】
より詳細には、ルイス酸、例えばアルモキサン(例えば「MAO」)、修飾アルモキサン(例えば「TIBAO」)およびアルキルアルミニウム化合物を活性化剤として用いて本明細書に記述する必要なメタロセンを活性化させることは本発明の範囲内である。MAOおよびアルミニウムが基になった他の活性化剤は当該技術分野で良く知られている。本明細書に記述する触媒用の活性化剤として使用可能なアルミニウムアルキル化合物の非限定例には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムなどが含まれる。
【0032】
イオン化活性化剤は当該技術分野で良く知られていて、例えばEugene You−Xian ChenおよびTobin J.Marks、Cocatalysts for Metal−Catalyzed Olefin Polymerization:Activators,Activation Processes,and Structure−Activity Relationships 100(4)CHEMICAL REVIEWS 1391−1434(2000)などに記述されている。中性のイオン化活性化剤の例には、13族の三置換化合物、特に三置換ホウ素、テルル、アルミニウム、ガリウムおよびインジウム化合物およびこれらの混合物[例えばトリ(n−ブ
チル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素および/またはトリスパーフルオロフェニルホウ素半金属前駆体]が含まれる。そのような3個の置換基を各々独立してアルキル、アルケニル、ハロゲン、置換アルキル、アリール、アリールハライド、アルコキシおよびハライドから選択する。1つの態様では、その3個の基を独立してハロゲン、単もしくは多環式(ハロ置換を包含)アリール、アルキル、アルケニル化合物およびこれらの混合物の群から選択する。別の態様では、その3個の基を炭素原子数が1から20のアルケニル基、炭素原子数が1から20のアルキル基、炭素原子数が1から20のアルコキシ基、炭素原子数が3から20のアリール基(置換アリールを包含)およびこれらの組み合わせの群から選択する。更に別の態様では、その3個の基を炭素基数が1から4のアルキル、フェニル、ナフチルおよびこれらの混合物の群から選択する。更に別の態様では、その3個の基を高度にハロゲン置換されている炭素基数が1から4のアルキル、高度にハロゲン置換されているフェニル、高度にハロゲン置換されているナフチルおよびこれらの混合物の群から選択する。「高度にハロゲン置換されている」は、水素の少なくとも50%がフッ素、塩素および臭素から選択されるハロゲン基に置き換わっていることを意味する。更に別の態様における中性の化学量論的活性化剤は、高度にフッ素置換されているアリール基を含有して成る三置換13族化合物であり、前記基は高度にフッ素置換されているフェニルおよび高度にフッ素置換されているナフチル基であってもよい。
【0033】
そのような活性化剤を担体と当該触媒成分(例えばメタロセン)、例えばGregory G.Hlatky、Heterogeneous Single−Site Catalysts for Olefin Polymerization 100(4)CHEMICAL REVIEWS 1347−1374(2000)に記述されている如き触媒成分と一緒または個別に関連もしくは結合させてもよいか或は関連も結合も生じさせなくてもよい。
【0034】
メタロセン触媒は担持型もしくは非担持型であってもよい。典型的な担体材料には、タルク、無機酸化物、粘土および粘土鉱物、イオン交換を受けた層状化合物、ケイソウ土化合物、ゼオライトまたは樹脂状担体材料、例えばポリオレフィンなどが含まれ得る。
【0035】
具体的無機酸化物には、これらに限定するものでないが、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニアおよびジルコニアなどが含まれる。担体材料として用いる無機酸化物の平均粒径は30ミクロンから600ミクロンまたは30ミクロンから100ミクロンであってもよく、表面積は50m/gから1,000m/gまたは100m/gから400m/gであってもよくかつ細孔容積は0.5cc/gから3.5cc/gまたは0.5cc/gから2cc/gであってもよい。イオン性メタロセン触媒に担持を受けさせるに好適な方法が米国特許第5,643,847号、09184358および09184389(これらは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0036】
重合方法
本明細書の他の場所に示したように、触媒系を用いてポリオレフィン組成物を製造する。上述しそして/または当業者に公知のように、触媒系を調製した後、その組成物を用いていろいろな工程を実施することができる。使用可能ないろいろな方策には、とりわけ、米国特許第5,525,678号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に示されている手順が含まれる。所定工程における装置、工程条件、反応体、添加剤および他の材料は勿論生じさせる重合体の所望組成および特性に応じて多様である。例えば、米国特許第6,420,580号、米国特許第6,380,328号、米国特許第6,359,072号、米国特許第6,346,586号、米国特許第6,340,730号、米国特許第6,339,134号、米国特許第6,300,436号、米国特許第6,274,684号、米国特許第6,271,323号、米国特許第6,248,845号、米国特許第6,245,868号、米国特許第6,245,705号、米国特許第6,242,545号、米国特許第6,211,105号、米国特許第,6,207,606号、米国特許第6,180,735号および米国特許第6,147,173号(これらは引用することによって本明細書に組み入れられる)に示されている方法などを用いることができる。
【0037】
上述した触媒系はいろいろな重合方法で幅広い範囲の温度および圧力に渡って使用可能である。その温度は約−60℃から約280℃または約50℃から約200℃の範囲内であってもよく、そして用いる圧力は1気圧から約500気圧またはそれ以上の範囲内であってもよい。
【0038】
重合方法には、溶液、気相、スラリー相、高圧方法またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0039】
特定の態様における本発明の方法は、炭素原子数が2から30または炭素原子数が2から12または炭素原子数が2から8の1種以上のオレフィン単量体、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテンおよびデセンなどの溶液、高圧、スラリーもしくは気相重合方法に向けたものである。他の単量体には、エチレン系不飽和単量体、炭素原子数が4から18のジオレフィン、共役もしくは非共役ジエン、ポリエン、ビニル単量体および環式オレフィンが含まれる。非限定単量体には、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよびシクロペンテンが含まれ得る。1つの態様では、共重合体、例えばプロピレン/エチレンなどを生じさせるか或は三元重合体を生じさせる。溶液方法の例が米国特許第4,271,060号、米国特許第5,001,205号、米国特許第5,236,998号および米国特許第5,589,555号(これらは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0040】
気相重合方法の一例では一般に連続サイクルを用い、この連続サイクルでは、循環している気体流れ(他の様式では再循環流れまたは流動媒体としても知られる)を反応槽内の重合熱で加熱する。その熱を前記反応槽の外側に位置させた冷却装置を用いてサイクルの別の部分で再循環流れから除去する。1種以上の単量体が入っている気体流れを触媒が存在する流動床の中に通して反応条件下で連続的に循環させてもよい。その気体流れを流動床から取り出した後、前記反応槽に再循環させて戻す。同時に重合体生成物を前記反応槽から取り出した後、重合した単量体の代わりに新鮮な単量体を加える[例えば米国特許第4,543,399号、米国特許第4,588,790号、米国特許第5,028,670号、米国特許第5,317,036号、米国特許第5,352,749号、米国特許第5,405,922号、米国特許第5,436,304号、米国特許第5,456,471号、米国特許第5,462,999号、米国特許第5,616,661号および米国特許第5,668,228号(これらは引用することによって本明細書に組み入れられる)を参照のこと]。
【0041】
気相方法における反応槽の圧力は約100psigから約500psigまたは約200psigから約400psigまたは約250psigから約350psigなどに及んで多様であり得る。気相方法における反応槽の温度は約30℃から約120℃または約60℃から約115℃または約70℃から約110℃または約70℃から約95℃に及んで多様であり得る。本方法で意図する他の気相方法には、米国特許第5,627,242号、米国特許第5,665,818号および米国特許第5,677,375号(これらは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている方法が含まれる。
【0042】
スラリー方法は、一般に、固体粒子状の重合体が液状の重合用媒体に入っている懸濁液
を生じさせてそれに単量体および場合により水素に加えて触媒を添加することを包含する。その懸濁液(希釈剤が入っていてもよい)を前記反応槽から断続的または連続的に取り出してもよく、揮発性成分を重合体から分離しそして場合により蒸留後に前記反応槽に再循環させてもよい。重合用媒体で用いる液化希釈剤は典型的に炭素原子数が3から7のアルカン、例えば分枝アルカンなどである。その用いる媒体は一般に重合条件下で液体でありかつ相対的に不活性であり、例えばヘキサンまたはイソブタンなどである。
【0043】
スラリー方法もしくは塊状方法(例えば希釈剤を用いない方法)は1基以上のループ反応槽内で連続的に実施可能である。当該触媒をスラリーまたは自由流れする乾燥粉末として規則的に反応槽ループに注入してもよく、その反応槽自身を成長する重合体の粒子が希釈剤に入っている循環するスラリーで満たしておいてもよい。場合により水素を分子量調節剤として添加してもよい。前記反応槽を約27バールから約45バールの圧力および約38℃から約121℃の温度などに維持してもよい。そのような反応槽は多くが二重ジャケット付きパイプの形態であることから、ループ壁を通して反応熱を除去してもよい。そのスラリーを前記反応槽から規則的な間隔または連続的に出させて加熱されている低圧のフラッシュ槽、回転式乾燥機そして窒素パージカラムに至らせることで、希釈剤および未反応の単量体および共重合用単量体の全部を連続的な形態で除去する。次に、その結果として炭化水素が除去された粉末をいろいろな用途で用いるに適したコンパウンドにしてもよい。別法として、他の種類のスラリー重合方法を用いることも可能であり、例えば撹拌型反応槽を直列、並列またはこれらの組み合わせで位置させることなどを行ってもよい。
【0044】
重合体生成物
本明細書に記述する方法で生じさせる重合体は幅広く多様な製品および最終使用用途で使用可能である。そのような重合体にはポリプロピレンおよびポリプロピレン共重合体が含まれ得る。
【0045】
特定の態様では、本明細書に記述する方法を用いてプロピレンが基になった重合体を製造することができる。そのような重合体には、アタクティックポリプロピレン、イソタクティックポリプロピレン、半イソタクティックおよびシンジオタクテックポリプロピレンが含まれる。他のプロピレン重合体には、ブロックもしくは耐衝撃性のプロピレン共重合体が含まれる。
【0046】
そのようなプロピレン重合体が示す分子量分布、即ちゲル浸透クロマトグラフィーで測定した数平均分子量に対する重量平均分子量(Mw/Mn)は約2から約20、または約2から約12などであり得る。
【0047】
加うるに、そのようなプロピレン重合体が示すメルトフロー率(MFR)はASTM−D−1238−条件Lで測定して約0.5g/10分から約20.0g/10分または約1.0g/10分から約17.0g/10分または約1.5g/10分から約14.0g/10分または約1.8g/10分から約10.0g/10分などであり得る。
【0048】
更に、そのようなプロピレン重合体が示す融点は、DSCで測定して少なくとも約115℃または約119℃から約170℃または約134℃から約165℃または約140℃から約155℃などであり得る。
【0049】
そのようなプロピレン重合体が示す密度はASTM D1505で測定して約0.900g/ccまたは約0.905g/ccであり得る。
【0050】
生成物の用途
製造した重合体はいろいろな最終使用用途、例えばフィルムの製造などで用いるに有用
である。
【0051】
1つの態様では、そのような重合体をインフレーションフィルムの成形で用いる。インフレーションフィルムの製造は通常の当業者に公知の方法のいずれかを用いて実施可能であり、例えばDavis Standardの5層ミニ共押出し加工インフレーションフィルムラインなどを用いて実施可能である。
【0052】
その上、そのような加工には追加的層を共押出し加工して多層フィルムを生じさせることも含まれ得る。そのような追加的層は、当該技術分野で公知の共押出し加工フィルム、例えばシンジオタクテックポリプロピレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ブチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブチレン三元重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ナイロンなどのいずれであってもよい。
【0053】
そのような共押出し加工フィルムもしくは共押出し加工品は少なくとも外側層と中心層を有する。その外側層はポリプロピレンを含有して成っていてもよい一方、中心層は中密度ポリエチレン(密度が0.927から0.947g/ccまたは典型的には0.937g/cc)または耐衝撃性共重合体を含有して成っていてもよい。その中心層が含有する耐衝撃性共重合体の量は15重量%以下、または耐衝撃性共重合体の量は10重量%以下、または耐衝撃性共重合体の量は5重量%以下であってもよい。その耐衝撃性共重合体を含有して成る中心層にポリエチレンまたは別のポリプロピレンを中心層中の耐衝撃性共重合体の量が重合体の総量を基準にして15重量%未満のいずれかの量になるように混合してもよい。そのポリプロピレンはメタロセン触媒を用いて製造された重合体またはチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造された重合体であってもよい。
【0054】
当該フィルムが具体的最終使用で示す特定の特性を改良または向上させる目的で、前記層の中の1層以上に適切な添加剤を有効な量で含有させることも可能である。そのような添加剤を適用段階(インフレーションフィルムの成形)中に用いてもよいか或は加工段階(ペレット押出し加工)中に当該重合体と一緒にしてもよい、等々。そのような添加剤には、紫外線による劣化、熱または酸化による劣化および/または化学線による劣化に対する保護を与える安定剤(例えばヒンダードアミン、ベンゾフラノン、インドリノン)、帯電防止剤(例えば中から高分子量の多価アルコールおよび第三級アミン)、抗ブロック、摩擦係数調整剤、加工助剤、着色剤、透明化剤(clarifiers)、核形成剤および当業者に公知の他の添加剤が含まれ得る。透明化剤、例えばMilliken Milliad 3988などの添加量は0.15重量%から0.3重量%の範囲内であってもよい。
【0055】
1つの態様における重合体が基になったフィルムは、例えば小売衣料品用オーバーラップ、特殊製パン用フィルム、フレッシュカット産物用パウチ、穀類(例えば米および豆)用の垂直製袋充填包装材、耐熱性フィルム、シーラントウエブ、不正使用の度合を低くする冷凍食品用フィルムで用いられるかつ収縮フィルムに入れる少量成分として用いられるインフレーションフィルムである。そのようなフィルムは一般に水分、空気および有害な香料の透過に対して抵抗を示しかつ更に好ましい機械的特性、例えば強度および透明性なども示す。
【0056】
そのようなフィルムが示すヘイズ値はASTM 1003で測定して1%から約10%または3%から約9%から5%から約8%であり得る。そのフィルムが45゜の角度で示す光沢はASTM D523で測定して50%から約90%または60%から約85%または約70%から約83%であり得る。
【0057】
また、そのようなフィルムが示す1%割線引張り応力(流れ方向)はASTM D882で測定して約80kpsiから約200kpsiまたは約90kpsiから約150kpsiまたは約95kpsiから約135kpsiまたは約96kpsiから約120kpsiであり得る。また、そのフィルムが示す1%割線引張り応力(横方向)はASTM D882で測定して80kpsiから約200kpsiまたは約90kpsiから約150kpsiまたは約95kpsiから約135kpsiまたは約100kpsiから約120kpsiであり得る。
【0058】
また、そのようなフィルムが示す静的摩擦係数はASTM D1894で測定して1未満、または約0.40から約0.85または約0.50から約0.60であり得る。また、そのフィルムが示す動的摩擦係数はASTM D1894で測定して1未満、または約0.35から約0.85または約0.50から約0.70または約0.52から約0.65であり得る。
【0059】
また、そのようなフィルムが示す水蒸気透過率(WVTR)はASTM F1249で測定して約0.3g/100平方インチ/日から約0.8g/100平方インチ/日または約0.4g/100平方インチ/日から約0.5g/100平方インチ/日であり得る。また、そのフィルムが示す酸素透過率(OTR)はASTM D3985で測定して約100cc/100平方インチ/日から約300cc/100平方インチ/日または約130cc/100平方インチ/日から約200cc/100平方インチ/日または約150cc/100平方インチ/日から約180cc/100平方インチ/日であり得る。
【0060】
また、そのようなフィルムが含有するゲルの量も低く、その結果として透明性が更に高い可能性がある。また、そのフィルムが示すブロッキング力(blocking forces)は約5から約30、または約10から約25または約20から約24であり得る。また、そのフィルムが示すシール開始温度(seal initiation temperature)は約104℃から約150℃または約115℃から約140℃または約120℃から約135℃であり得る。
【0061】
また、そのようなフィルムは向上したホットタック(hot tack)も示し得る。ホットタックは、密封サイクルが完了した後であるがシールが周囲温度に到達する前に指定時間間隔で測定した熱シールの強度である。シール温度があまりにも低いと結果としてもたらされるシールは弱く、シール温度があまりにも高い時にもたらされるシールも同様に弱い。ホットタック曲線は理想的にはベルの形状であるべきであり、ベルの形状であることは、最大の熱シール強度が可能でありかつ加工ウィンドウが満足される高いシール強度値を得るに適することを示している。
【0062】
そのようなフィルムが示すエルメンドルフ引裂き度はASTM D−1922で測定して流れ方向では約15グラムから約100グラムまたは約25グラムから約75グラムまたは約40グラムから約55グラムでありそして横方向では約75グラムから約600グラムまたは約125グラムから約300グラムまたは約150グラムから約180グラムであり得る。
【0063】
そのようなフィルムが示すダート耐衝撃性はASTM D−1709で測定して約30グラムから約90グラムまたは約40グラムから約75グラムまたは約50グラムから約70グラムであり得る。
【実施例】
【0064】
表1に、生じさせる共押出し加工フィルム構造物のスキン層として用いるポリプロピレ
ン樹脂を示す。樹脂1および樹脂2はそれぞれチーグラー・ナッタおよびメタロセンを用いた透明化ホモ重合体である。樹脂3はメタロセンを用いたホモ重合体であり、樹脂4はメタロセンを用いた透明化ランダム共重合体であり、そして樹脂5、6および7はメタロセンを用いたランダム共重合体である。
【0065】
【表1】

【0066】
メルトインデックスが1.7で0.92g/ccの低密度ポリエチレン(LDPE)であるTenite 1830F(Eastman Voridianから入手可能)およびメタロセンを用いて製造されたメルトインデックスが0.9で0.934g/ccの中密度ポリエチレン(mMDPE)であるTotal Petrochemicals M3410 EPを中心層用樹脂として用いた。フィルム構造物の中の1つでは、ヘテロ相(heterophasic)の耐衝撃性共重合体(ICP)であるインフレーションフィルムグレードのTotal Petrochemicals 4170ポリプロピレンを中心層に入れる少量成分として用いた。
【0067】
そのようなフィルム構造物の製造をDavis Standardの5層共押出し加工インフレーションフィルムラインで実施した。その押出し加工機は溝付き供給装置(grooved feed)であり、直径が1インチのスクリューが備わっておりかつL/Dは24であった。そのラインは、ダイスの直径が60mmでダイスのギャップが1.2mmの円錐螺旋形マンドレルが備わっていることを特徴としていた。冷却用環の空気温度を35℃にした。生じさせるフィルムの厚みを1.2ミルにし、BURを2.5にすることに加えて、構造を層分布が25%/50%/25%のA/B/A型の構造にした。表2に、この上に記述した材料を用いて製造した共押出し加工フィルムの構造を示す。
【0068】
【表2】

【0069】
図1に、表2に示すインフレーションフィルムサンプルAからEに関して得た光沢値およびヘイズ値を示す。フィルムサンプルCがもたらした光学特性は対照A(LDPE)のそれと同等であったが、対照Bのそれに比べて有意に良好な光学特性であった。樹脂2をスキン層として用いた時にもたらされたフィルムが示したヘイズ値はほんの3%でありかつ45゜の光沢は83%であった。中心層にICPを15%添加(サンプルD)しても光学特性への影響は無視できるほどであった。サンプルEがもたらした光学特性は対照Bに比べて有意に良好であった。表3に、図1に示した数値を示す。
【0070】
【表3】

【0071】
図2に、表2に示すインフレーションフィルムサンプルFからJに関して得た光沢値およびヘイズ値を示す。図2に、また、これらのフィルムサンプルを製造する時に用いたスキン層材料が示した融点も示す。融点が最も低いランダム共重合体を用いて製造したフィルムサンプルJがもたらした光学特性は、融点がより高い材料を用いて製造したサンプルF、HおよびIが示したそれに比べて良好であった。透明化樹脂4を用いて製造したフィルムサンプルGがもたらした光学特性が最も良好であった。表4に、図2に示した数値を示す。
【0072】
【表4】

【0073】
図3に、インフレーションフィルムサンプルの全部が示した流れ方向割線引張り応力(剛性)を示す。サンプルCが示した割線引張り応力は対照A(LDPE)のそれに比べて5倍高い一方、光学特性(図1)は同等である。中心層に4170 ICPを15%添加(サンプルD)すると割線引張り応力がサンプルCのそれに比べて若干高くなった。ランダム共重合体樹脂を用いて製造したサンプルが示した割線引張り応力の方が低い。融点が最も低いランダム共重合体を用いて製造したフィルムサンプルJがもたらした引張り応力は、融点がより高い材料を用いて製造したサンプルF、HおよびIに比べて最も低かった。透明化樹脂を用いて製造したフィルムサンプルEおよびGがもたらした引張り応力が最も高かった。表5に、図3に示した数値を示す。表6に、各サンプルが示した横方向(TD)の割線引張り応力(kpsi)および動的摩擦係数を示す。
【0074】
【表5】

【0075】
図4に、インフレーションフィルムサンプルのいくつかが示した流れ方向および横方向のエルメンドルフ引裂き抵抗およびダート耐衝撃性を示す。表7に、そのようなデータの値を示す。表8に、平均ブロッキング力値を示す。ポリプロピレン樹脂のスキンをLDPEと比較した時、ブロッキングを起こす傾向が低くかつ動的摩擦係数値も相対的に低かった(前記表6に示すように)。ブロッキングを起こす度合はランダム共重合体が最も低かったが、それが示した動的摩擦係数はポリプロピレンホモ重合体のそれに比べて高かった。
【0076】
【表6】

【0077】
前記は本発明の態様に向けたものであるが、本発明の他のさらなる態様を本発明の基本的範囲から逸脱することなく考案することができ、本発明の範囲を以下の請求項で決定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.8g/10分から14.0g/10分のメルトフロー率および少なくとも115℃の融点を示すポリプロピレンを含有して成るインフレーションフィルムであって、10%未満のヘイズ値および70%以上の光沢値を示すインフレーションフィルム。
【請求項2】
更に80kpsiから150kpsiの範囲内の割線引張り応力も示す請求項1記載のインフレーションフィルム。
【請求項3】
ゲルの量が少ない請求項1記載のインフレーションフィルム。
【請求項4】
1.0未満の摩擦係数を示す請求項1記載のインフレーションフィルム。
【請求項5】
5から25のブロッキング力を示す請求項1記載のインフレーションフィルム。
【請求項6】
104℃から150℃のシール開始温度を示す請求項1記載のインフレーションフィルム。
【請求項7】
0.3から0.8g/100平方インチ/日のWVTRを示す請求項1記載のインフレーションフィルム。
【請求項8】
100から300cc/100平方インチ/日のOTRを示す請求項1記載のインフレーションフィルム。
【請求項9】
共押出し加工で外側層と中心層を含有して成る共押出し加工品に成形されている請求項1記載のインフレーションフィルム。
【請求項10】
前記ポリプロピレンが前記外側層を構成している請求項9記載のインフレーションフィルム。
【請求項11】
前記中心層が中密度のポリエチレンを含有して成る請求項9記載のインフレーションフィルム。
【請求項12】
前記中心層が耐衝撃性共重合体を含有して成る請求項9記載のインフレーションフィルム。
【請求項13】
前記中心層が含有する耐衝撃性共重合体の量が15重量%以下である請求項12記載のインフレーションフィルム。
【請求項14】
前記ポリプロピレンがメタロセン触媒を用いて製造されたものである請求項1記載のインフレーションフィルム。
【請求項15】
前記ポリプロピレンがチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたものである請求項1記載のインフレーションフィルム。
【請求項16】
更に透明化剤も含有して成る請求項15記載のインフレーションフィルム。
【請求項17】
前記透明化剤が0.15重量%から0.3重量%の量で存在する請求項16記載のインフレーションフィルム。
【請求項18】
請求項1記載のインフレーションフィルムを含有して成る製品。
【請求項19】
小売衣料品用オーバーラップ、特殊製パン用フィルム、フレッシュカット産物用パウチ、穀類(例えば米および豆)用の垂直製袋充填包装材、耐熱性フィルム、シーラントウエブ、不正使用の度合を低くする冷凍食品用フィルムであるか或は収縮フィルムに入れる少量成分としての請求項18記載の製品。
【請求項20】
1.8g/10分から14.0g/10分のメルトフロー率および少なくとも115℃の融点を示すポリプロピレンを含有して成りかつ10%未満のヘイズ値および70%以上の光沢値を示すインフレーションフィルムを成形する方法であって、前記インフレーションフィルムを温度が10℃未満の空気で急冷することを含んで成りかつ更に内部バブル冷却、外部バブル安定化およびデュアルリップエアリングも含んで成る方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−513067(P2010−513067A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541606(P2009−541606)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/087525
【国際公開番号】WO2008/079733
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】