説明

ポリペプチド−ポリマー抱合体およびその使用方法

本発明はポリペプチド-ポリマー抱合体を提供する。対象のポリペプチド-ポリマー抱合体は種々の用途において有用であり、これら用途も提供する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
相互参照
本出願は2008年3月28日出願の米国仮特許出願第61/040,556号の恩典を主張し、その出願の全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
背景
生物学的に活性な薬剤の固相形態を作り出すための化学的係留の使用は、広範な医学用途および生物学用途にわたって繰り返されるテーマである。化学的係留は、生理活性ペプチドまたはタンパク質を表面に付着させるために、生理活性を多孔質またはヒドロゲルインプラントに付与するために、または薬物送達用途において、使用することができる。固相の提示は、生物学的設定において生理活性分子が機能する方法を改変することができる。
【発明の概要】
【0003】
発明の概要
本発明はポリペプチド-ポリマー抱合体を提供する。対象のポリペプチド-ポリマー抱合体は種々の用途において有用であり、その用途も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】組換えタンパク質(Shh、ソニックヘッジホッグ)をポリマーヒアルロン酸(HyA)に移植するためのバイオコンジュゲートスキームを示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、Shh、ならびにポリ(アクリル酸)(pAAc)(図2A)およびHyA(図2B)とのその抱合物のゲル電気泳動を示す。
【図3】Shhシグナル伝達経路、および、Shhの多価性がその生理活性に与える影響について提案される機構の模式図を示す。
【図4】可溶性Shh(◆、太線)、可溶性Shhに可溶性HyAを加えたもの(■、破線)、ならびに0.6:1(△)、3.5:1(○)、7:1(◇)、14:1(□)、および22:1(x)の化学量論比のShh-HyA抱合体に対するC3H10T1/2の生理活性の結果を示す。
【図5】図5A〜Cは、負の対照の試料(図5A)、可溶性の高いShh(図5B)、および14:1 Shh/HyA多価形態(図5C)に対するニワトリ絨毛尿膜(CAM)反応を示す顕微鏡写真のパネルを提示する。
【図6】顕微鏡写真画像分析から導かれる、CAMアッセイでの血管新生の定量的結果を示す。
【図7】C3H10T1/2細胞中でのShh-HyA抱合体の生理活性の数値モデル結果を示す。上側パネルは、立体相互作用を組み入れるモデルの、化学量論比1:1〜30:1に対するShh濃度の関数として活性を提示する。下側パネルは、2種類のモデル対実験結果の、EC50対置換レベルのプロットを提示する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
定義
「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を意味し、それはコード化および非コード化アミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸、および修飾ペプチド主鎖を有するポリペプチドを含み得る。「ポリペプチド」という用語は、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、異種および相同リーダー配列を有し、N末端メチオニン残基を有するかまたは有さない融合物を含むがそれに限定されない融合タンパク質、免疫学的にタグをつけたタンパク質などを含む。「ポリペプチド」という用語は、脂肪酸部分、脂質部分、糖部分および炭水化物部分のうち1つまたは複数を含むポリペプチドを含む。「ポリペプチド」という用語は翻訳後修飾ポリペプチドを含む。
【0006】
本明細書で使用する「共重合体」という用語は2種類以上のサブユニットを含有するポリマーを記述する。この用語は2種、3種、4種、5種または6種のサブユニットを含むポリマーを包含する。
【0007】
「対象」、「個人」、「宿主」および「患者」という用語は、任意の哺乳動物または非哺乳動物の種のメンバーに対して本明細書では互換的に使用される。したがって、対象および患者としてはヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ブタ(swine)(例えばブタ(pig)))、トリ、げっ歯類(例えばラット、マウス)および他の対象が挙げられるがそれに限定されない。非ヒト動物モデル、特に哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ネズミ(例えばマウス、ラット)、ウサギなどを実験調査に使用可能である。
【0008】
状態または疾患の「処置(Treating)」または「処置(treatment)」としては、(1) 状態の少なくとも1つの症状を予防すること、すなわち疾患に晒されるかまたは罹患するおそれがあるが、未だ疾患を経験していないかまたはその症状を示していない哺乳動物において、臨床的症状を著しく発症させないこと、(2) 疾患を阻害すること、すなわち疾患またはその症状の発症を停止または減少させること、あるいは(3) 疾患を軽減すること、すなわち疾患またはその臨床的症状の退行を引き起こすことが挙げられる。
【0009】
「治療有効量」または「有効量」とは、疾患を処置するために哺乳動物または他の対象に投与する際に、別の薬剤との組み合わせまたは単独で、1つまたは複数の用量として、疾患のそのような処置を行うために十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度、ならびに処置すべき対象の年齢、体重などに応じて変動する。
【0010】
本明細書で使用する「単位剤形」という用語は、ヒトおよび動物対象用の単位投与量として好適な物理的に別々の単位を意味し、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体または媒体と共同して所望の作用を生成するために十分な量として計算される所定量の本発明の化合物を含有する。本発明の新規単位剤形の規格は、使用される特定の化合物および実現すべき作用、ならびに宿主中での各化合物に関連する薬力学に依存する。
【0011】
「生理的条件」という用語は、生細胞と適合性のある条件、例えば生細胞と適合性のある、温度、pH、塩分などの主に水性の条件を包含するよう意図されている。
【0012】
「薬学的に許容される賦形剤」、「薬学的に許容される希釈剤」、「薬学的に許容される担体」および「薬学的に許容される補助剤」とは、一般に安全で、無毒であり、かつ生物学的にもその他の点でも望ましくないということがない薬学的組成物を調製する上で有用である賦形剤、希釈剤、担体および補助剤を意味し、獣医学的使用およびヒトでの薬学的使用に許容される賦形剤、希釈剤、担体および補助剤を含む。本明細書および特許請求の範囲で使用する「薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、担体および補助剤」は、1つまたは複数のそのような賦形剤、希釈剤、担体および補助剤を含む。
【0013】
本発明をさらに説明する前に、本発明が、記載される特定の態様に限定されるわけではなく、したがって当然変動し得るということを理解すべきである。本明細書で使用する用語法が、特定の態様のみを記載するためのものであり、限定を意図するものではなく、これは本発明の範囲が添付の特許請求の範囲のみにより限定されるためであるということも理解すべきである。
【0014】
ある範囲の値が与えられる場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈上別途明確な断りがない限りは下限の単位の10分の1までの各介在値、およびその規定範囲内の任意の他の規定値または介在値が、本発明に包含されるということが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、そのより小さい範囲に独立して含まれ得るものであり、やはり本発明に包含され、規定範囲内の任意の具体的に除かれる限界に従属する。規定範囲が限界のうち一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のうち一方または両方を除く範囲も本発明に含まれる。
【0015】
別途定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同一の意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料も本発明の実施および試験に使用できるが、好ましい方法および材料をここに記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、その刊行物がそれに関連して引用される方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み入れられる。
【0016】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上別途明確な断りがない限り複数の参照対象を含むということに留意しなければならない。したがって、例えば、「合成基質」に対する言及は、複数のそのような基質を含み、「組換えポリペプチド」に対する言及は、当業者に公知の1つまたは複数の組換えポリペプチドおよびその等価物などに対する言及を含む。任意の任意的な要素を排除するように特許請求の範囲を起稿できることにさらに留意されたい。したがって、この陳述は、特許請求の範囲の要素の記載に関連しての「単に」、「のみ」などの排他的な用語法の使用の、または「否定的な」限定の使用の前提となる基礎として役立つよう意図されている。
【0017】
本明細書で論じる刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示についてのみ示される。本明細書における何物も、先行発明によるそのような刊行物に先行する資格が本発明に与えられないことの承認として解釈すべきではない。さらに、示される刊行日は実際の刊行日と異なることがあり、実際の刊行日は独立して確認する必要があることがある。
【0018】
詳細な説明
本発明はポリペプチド-ポリマー抱合体を提供するものであり、ここでそのような抱合体は制御された付着化学量論を有する。対象のポリペプチド-ポリマー抱合体は種々の用途において有用であり、その用途も提供される。
【0019】
いくつかの態様では、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体は下記式のものである:
X-(Y)n-Z
式中、Xは生物学的に活性なポリペプチドであり;
Yは任意的なリンカー部分であり、ここでnは0、または1〜約10の整数であり;
Zは約50〜100,000個のサブユニットを含む生体適合性ポリマーである。
【0020】
ポリマー基質に抱合されたポリペプチドの生物活性は、可溶性の形態のポリペプチドの活性に対して、例えばポリマーに抱合されていないポリペプチドの活性に比べて強化されている。いくつかの態様では、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体のポリペプチドの生物活性は、可溶性の(非抱合)形態のポリペプチドの生物活性より少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍もしくは少なくとも約1000倍、または1000倍を超えて大きい。
【0021】
いくつかの態様では、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体のポリペプチドの生物活性は、ポリマーに1:1のモル比で抱合されている場合のポリペプチドの生物活性より少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍もしくは少なくとも約1000倍、または1000倍を超えて大きい。
【0022】
いくつかの態様では、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体のポリペプチドの生物活性は、ポリマーと混合して存在する場合のポリペプチドの生物活性より少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍もしくは少なくとも約1000倍、または1000倍を超えて大きい。
【0023】
例えば、いくつかの態様では、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体のポリペプチドのEC50は、可溶性の(非抱合)形態のポリペプチドのEC50より少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍もしくは少なくとも約1000倍、または1000倍を超えて小さい。
【0024】
対象のポリペプチド-ポリマー抱合体のポリペプチドの生物活性が可溶性の(非抱合)形態のポリペプチドの生物活性に対して増加しているか否かは、生物活性についての適切なアッセイを使用して容易に決定される。
【0025】
ポリペプチド対ポリマーのモル比は約5:1〜約100:1、例えば約5:1〜約7:1、約7:1〜約10:1、約10:1〜約12:1、約12:1〜約15:1、約15:1〜約20:1、約20:1〜約25:1、約25:1〜約30:1、約30:1〜約35:1、約35:1〜約40:1、約40:1〜約45:1、約45:1〜約50:1、約50:1〜約60:1、約60:1〜約70:1、約70:1〜約80:1、約80:1〜約90:1、または約90:1〜約100:1で変動し得る。
【0026】
例えば、対象のポリペプチドポリマー抱合体が、血管新生を誘導するポリペプチドを含む(例えばポリペプチドが血管新生ポリペプチドである)場合、いくつかの態様では、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体の血管新生ポリペプチドは、ポリマーと混合して存在する場合、可溶性の(非抱合)形態の場合、またはポリマーに1:1のモル比で抱合されている場合の血管新生ポリペプチドより少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍もしくは少なくとも約1000倍、または1000倍を超えて、より多く血管新生を誘導する。
【0027】
ポリマー
生物学的に活性なポリペプチドがそれに抱合されている好適なポリマーは、約50〜約100,000サブユニット、例えば約50サブユニット〜約100サブユニット、約100サブユニット〜約500サブユニット、約500サブユニット〜約1,000サブユニット、約1,000サブユニット〜約5,000サブユニット、約5,000サブユニット〜約10,000サブユニット、約10,000サブユニット〜約25,000サブユニット、約25,000サブユニット〜約50,000サブユニット、または約50,000サブユニット〜約100,000サブユニットを含む生体適合性ポリマーを含む。いくつかの態様では、線状ポリマーは100,000を超えるサブユニットを含む。
【0028】
サブユニットはすべて同一であり得るものであり、例えばポリマーはホモポリマーである。他の態様では、2つ以上の種のサブユニットが存在し、例えばポリマーはヘテロポリマーまたは共重合体である。いくつかの態様では、ポリマーは線状ポリマーである。他の態様では、ポリマーは1つまたは複数の分岐を含み得る。
【0029】
好適なポリマーとしては天然ポリマー、半合成ポリマーおよび合成ポリマーが挙げられる。
【0030】
好適な天然ポリマーとしてはヒアルロン酸、コラーゲン、グリコサミノグリカン、セルロース、多糖などが挙げられる。
【0031】
好適な半合成ポリマーとしては、アルデヒドで架橋したコラーゲン、またはその前駆体、ジカルボン酸またはそのハロゲン化物、ジアミン、セルロース、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、ジェランガム、キサンタン、ペクチンまたはペクチン酸、ポリグリカン、ポリマンナン、寒天、アガロース、天然ゴム、ならびにグリコサミノグリカンの誘導体が挙げられるがそれに限定されない。
【0032】
好適な合成ポリマーとしては、ポリジオキサン、ポリホスファゼン、ポリスルホン樹脂、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸)ブチルエステル、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレン)、ポリウレタン樹脂、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)-メチルエステル、ポリ(メタクリル酸)-nブチルエステル、ポリ(メタクリル酸)-tブチルエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロプロピレン、ポリN-ビニルカルバゾール、ポリ(メチルイソプロペニルケトン)、ポリα-メチルスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ(オキシメチレン)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)およびポリエチレンテレフタレート; エチレンビニルアルコール共重合体(一般名EVOHまたは商品名EVALで一般に知られる); ポリブチルメタクリレート; ポリ(ヒドロキシバレレート); ポリ(L-乳酸); ポリカプロラクトン; ポリ(ラクチド-co-グリコリド); ポリ(ヒドロキシブチレート); ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート); ポリジオキサノン; ポリオルトエステル; ポリ酸無水物; ポリ(グリコール酸)(PGA); ポリ(D,L-乳酸)(PLA); PGAとPLAとの共重合体; ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート); ポリリン酸エステル; ポリリン酸エステルウレタン; ポリ(アミノ酸); シアノアクリレート; ポリ(トリメチレンカーボネート); ポリ(イミノカーボネート); コポリ(エーテル-エステル)(例えばPEO/PLA); ポリアルキレンオキサレート; ポリホスファゼン; ポリウレタン; シリコーン; ポリエステル; ポリオレフィン; ポリイソブチレンおよびエチレン-α-オレフィン共重合体; アクリルポリマーおよび共重合体; ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体; ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル; ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン; ポリアクリロニトリル; ポリビニルケトン; ポリスチレンなどのポリビニル芳香族; ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル; エチレン-メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ABS樹脂およびエチレン-酢酸ビニル共重合体などの、ビニル単量体同士のおよびビニル単量体とオレフィンとの共重合体; ナイロン66およびポリカプロラクタムなどのポリアミド; アルキド樹脂; ポリカーボネート; ポリオキシメチレン; ポリイミド; ポリエーテル; エポキシ樹脂; ポリウレタン; レーヨン; レーヨン-トリアセテート; セルロース; 酢酸セルロース; 酪酸セルロース; 酢酸酪酸セルロース; セロハン; 硝酸セルロース; プロピオン酸セルロース; セルロースエーテル; 非晶質テフロン; ならびにカルボキシメチルセルロースから誘導されるポリマーまたは共重合体が挙げられるがそれに限定されない。
【0033】
生物学的に活性なポリペプチドがそれに抱合されているポリマーは、ヒアルロン酸、アクリル酸、エチレングリコール、ビニル、プロピレン、メチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、テトラフルオロエチレン、オキシメチレン、糖(例えばグルコース、マンニトール、マルトース、アラビノースなど)、タウリン、ベタイン、変性セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、加工デンプン、疎水的に修飾されたデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、アミロース、アミロペクチン、酸化デンプン、アミノ酸、および上記のいずれかの共重合体より選択される複数のサブユニットを含み得る。いくつかの態様では、ポリマーはアミノ酸を含まない。
【0034】
いくつかの態様では、ポリマーはヒアルロン酸またはヒアルロン酸誘導体である。ヒアルロン酸誘導体としては、カルボン酸官能基の一部または全部が脂肪族、芳香族、アリール脂肪族、脂環式または複素環の系列のアルコールでエステル化されているヒアルロン酸エステル; ヒアルロン酸とのまたはヒアルロン酸の部分エステルもしくは完全エステルとの、コハク酸の半エステルまたはコハク酸の半エステルの重金属塩; 硫酸化またはN-硫酸化ヒアルロン酸が例えば挙げられる。
【0035】
ポリペプチド
対象のポリペプチド-ポリマー抱合体のポリペプチド成分は、生物学的に活性であり、例えばインビボおよび/またはインビトロで1つまたは複数の生物活性を示す。生物活性としては、抗原結合; 真核細胞中でのシグナル伝達経路の活性化; 細胞増殖の誘導; 細胞分化の誘導; 血管新生の誘導; アポトーシスの誘導; 血管新生の誘導; 血管新生の阻害; 凝固の減少; 細胞接着の減少; 細胞接着の強化; 細胞運命の調節; などが例えば挙げられる。
【0036】
対象のポリペプチド-ポリマー抱合体のポリペプチド成分は天然ポリペプチド、組換えポリペプチドまたは合成ポリペプチドであり得る。ポリペプチドは1つまたは複数の非アミノ酸部分、例えば脂質部分、糖部分、炭水化物部分などを含み得る。
【0037】
いくつかの態様では、単一の種のポリペプチドがポリマーに付着し、例えば、いずれも同一のアミノ酸配列を有する複数のポリペプチドがポリマーに付着する。他の態様では、2つ以上の種のポリペプチドがポリマーに付着し、ここで第1のポリペプチドは第1のアミノ酸配列を有し、第2のポリペプチドは第1のアミノ酸配列とは異なる第2のアミノ酸配列を有する(例えばここで第2のアミノ酸配列は約95%〜約99%、約90%〜約95%、約85%〜90%、約80%〜約85%、約75%〜約80%、約70%〜約75%、約65%〜約70%、または65%未満の、第1のアミノ酸配列とのアミノ酸配列同一性を有する)。例えば、第1および第2のポリペプチドは異なる細胞表面受容体を標的化する可能性があり、例えば、第1のポリペプチドはインテグリン受容体を通じて細胞接着を与える可能性があり、第2のポリペプチドは例えば成長因子受容体などを経由して結合細胞の活性化を与える可能性がある。別の例として、第1および第2のポリペプチドは細胞分化を誘導する可能性があり、例えば、第1および第2のポリペプチドはいずれも筋形成を誘導する可能性があり、第1および第2のポリペプチドはいずれも心筋形成を誘導する可能性があり、第1および第2のポリペプチドはいずれも神経発生を誘導する可能性があり、第1および第2のポリペプチドはいずれも軟骨細胞に対する前駆細胞の分化を誘導する可能性があり、または第1および第2のポリペプチドはいずれも標的の全能性、多能性もしくは多分化能の前駆細胞中での造血を誘導する可能性がある。
【0038】
いくつかの態様では、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体のポリペプチド成分は組換え体であり、例えば、ポリペプチドは、通常はポリペプチドとアミド結合していない1つまたは複数のアミノ酸を含む。例えば、ポリペプチド-ポリマー抱合体のポリマー成分に対する結合を容易にするアミノ酸を含むように、ポリペプチドを操作することができる。一例として、ポリペプチド-ポリマー抱合体のポリマー成分に対する結合を容易にするシステイン残基を含むように、ポリペプチドを操作することができる。
【0039】
ポリペプチドのサイズは2kDa〜約2000kDa、例えば約2kDa〜約5kDa、約5kDa〜約10kDa、約10kDa〜約25kDa、約25kDa〜約50kDa、約50kDa〜約100kDa、約100kDa〜約250kDa、約250kDa〜約500kDa、約500kDa〜約1000kDa、約1000kDa〜約2000kDaの範囲であり得る。
【0040】
いくつかの態様では、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体のポリペプチド成分は検出可能な標識を含む。好適な標識としては、放射性同位体(例えば125I、35Sなど); その生成物が検出可能なシグナルを発生させる酵素(例えばルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど); 蛍光標識(例えばフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリンなど); EDTAなどの金属キレート化基を通じて抗体に付着する蛍光発光金属、例えば152Euまたはランタニド系の他の金属; 化学発光化合物、例えばルミノール、イソルミノール、アクリジニウム塩など; 生物発光化合物、例えばルシフェリン; 蛍光タンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質など); などが例えば挙げられる。
【0041】
対象のポリペプチド-ポリマー抱合体を生み出すためのポリマーに対する付着について関心対象のポリペプチドとしては、成長因子、受容体、受容体に対するポリペプチドリガンド、酵素、抗体、凝固因子、抗凝固因子、血管新生因子、抗血管新生因子などが例えば挙げられる。好適なポリペプチドとしては線状ポリペプチドおよび環状ポリペプチドが挙げられる。好適なポリペプチドとしては天然ポリペプチド、合成ポリペプチドなどが挙げられる。
【0042】
好適なポリペプチドとしては、インターフェロン(例えばIFN-γ、IFN-α、IFN-β、IFN-ω; IFN-τ); インスリン(例えばノボリン、ヒューマリン、ヒューマログ、ランタス、ウルトラレンテなど); エリスロポエチン(「EPO」; 例えばプロクリット(登録商標)、エプレックス(Eprex)(登録商標)またはエポゲン(Epogen)(登録商標)(エポエチン-α); アラネスプ(Aranesp)(登録商標)(ダルベポエチン(darbepoietin)-α); ネオレコルモン(NeoRecormon)(登録商標)、エポジン(登録商標)(エポエチン-β); など); 抗体(例えばモノクローナル抗体)(例えばリツキサン(登録商標)(リツキシマブ); レミケード(登録商標)(インフリキマブ); ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ); ヒュミラ(商標)(アダリムマブ); ゾレア(登録商標)(オマリズマブ); ベキサール(登録商標)(トシツモマブ); ラプティバ(商標)(エファリズマブ); アービタックス(商標)(セツキシマブ); など)であって、モノクローナル抗体の抗原結合性断片を含む抗体; 血液因子(例えばアクチバーゼ(登録商標)(アルテプラーゼ)組織プラスミノーゲンアクチベーター; ノボセブン(登録商標)(組換えヒト因子VIIa); 因子VIIa; 因子VIII(例えばコージネイト(登録商標)); 因子IX; β-グロビン; ヘモグロビン; など); コロニー刺激因子(例えばニューポジェン(登録商標)(フィルグラスチム; G-CSF); ニューラスタ(Neulasta)(ペグフィルグラスチム); 顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-単球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、巨核球コロニー刺激因子; など); 成長ホルモン(例えばソマトトロピン、例えばジェノトロピン(登録商標)、ニュートロピン(登録商標)、ノルディトロピン(登録商標)、サイゼン(登録商標)、セロスティム(登録商標)、ヒューマトロープ(登録商標)など; ヒト成長ホルモン; など); インターロイキン(例えばIL-1; 例えばプロロイキン(Proleukin)(登録商標)を含むIL-2; IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9; など); 成長因子(例えばレグラネクス(登録商標)(ベカプレルミン(beclapermin); PDGF); フィブラスト(登録商標)(トラフェルミン; bFGF); ステムジェン(Stemgen)(登録商標)(アンセスチム; 幹細胞因子); ケラチノサイト成長因子; 酸性線維芽細胞成長因子、幹細胞因子、塩基性線維芽細胞成長因子、肝細胞成長因子; など); 受容体(例えば、エンブレル(登録商標)(エタネルセプト)などのTNF-α結合可溶性受容体; VEGF受容体; インターロイキン受容体; γ/δ T細胞受容体; など); 神経伝達物質受容体(例えばニコチン性アセチルコリン受容体、グルタミン酸受容体、GABA受容体など); 酵素(例えばα-グルコシダーゼ; セレザイム(Cerazyme)(登録商標)(イミグルセラーゼ(imiglucarase)); β-グルコセレブロシダーゼ、セレダーゼ(Ceredase)(登録商標)(アルグルセラーゼ)); 酵素アクチベーター(例えば組織プラスミノーゲンアクチベーター); ケモカイン(例えばIP-10; Mig; Groα/IL-8、ランテス; MIP-1α; MIP-1β; MCP-1; PF-4; など); 血管新生剤(例えば血管内皮成長因子(VEGF)); 抗血管新生剤(例えばVEGF受容体); ブラジキニン、コレシストキニン、ガスチン(gastin)、セクレチン、オキシトシン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、β-エンドルフィン、エンケファリン、サブスタンスP、ソマトスタチン、プロラクチン、ガラニン、成長ホルモン放出ホルモン、ボンベシン、ダイノルフィン、ニューロテンシン、モチリン、甲状腺刺激ホルモン、ニューロペプチドY、黄体ホルモン、カルシトニン、インスリン、グルカゴン、バソプレシン、アンジオテンシンII、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、血管作用性小腸ペプチド、睡眠ペプチドなどの向神経活性ペプチド; 血栓溶解剤、心房性ナトリウム利尿ペプチド、骨形態形成タンパク質、トロンボポエチン、リラキシン、グリア線維性酸性タンパク質、濾胞刺激ホルモン、ヒトα-1アンチトリプシン、白血病阻害因子、トランスフォーミング成長因子、インスリン様成長因子、黄体ホルモン、マクロファージ活性化因子、腫瘍壊死因子、好中球走化性因子、神経成長因子、組織メタロプロテアーゼ阻害物質; 血管作用性小腸ペプチド、アンジオゲニン、アンジオトロピン(angiotropin)、フィブリン; ヒルジン; 白血病阻害因子; IL-1受容体アンタゴニスト(例えばキネレット(Kineret)(登録商標)(アナキンラ)); イオンチャネル、例えば嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR); ジストロフィン; ユートロフィン、腫瘍抑制因子; リソソーム酵素酸性α-グルコシダーゼ(GAA); などの他のタンパク質が挙げられるがそれに限定されない。
【0043】
好適なポリペプチドとしてはソニックヘッジホッグ(Shh)、骨形態形成タンパク質4、インターロイキン3 (IL-3)、幹細胞因子1 (SCF-1)、fms様チロシンキナーゼ3 (Flt3)リガンド、白血病阻害因子(LIF)、線維芽細胞成長因子2 (FGF-2)および上皮成長因子(EGF)が挙げられる。好適なポリペプチドとしては脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン3 (NT-3)、ニューロトロフィン4 (NT-4)、ニューロトロフィン5 (NT-5)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、インスリン様成長因子1 (IGF-1)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)およびプロテアーゼネキシン1が挙げられる。好適な血管新生ポリペプチドとしてはネトリン1ポリペプチド、血管内皮成長因子(VEGF)ポリペプチド、血小板由来成長因子(PDGF)ポリペプチド、線維芽細胞成長因子(FGF)ポリペプチドおよびアンジオポエチンポリペプチドが挙げられる。
【0044】
好適なポリペプチドとしては凝固因子、例えばトロンビンなども挙げられる。好適なポリペプチドとしては抗凝固薬も挙げられる。好適なポリペプチドとしては細胞結合性ポリペプチドも挙げられる。
【0045】
好適なポリペプチドとしてはネスチン、ビメンチン、プロミニン(Prominin)/CD133、ソニックヘッジホッグおよび他のヘッジホッグリガンド、Wntリガンド、ニューロカン/テネイシンC、Nurr 1、Pax-6、Sox-2、Musashi-1、NG2/CSPG-4、Neuro D3、ニューロゲニン1、ならびに任意のこれらのポリペプチドの活性断片および部分配列も例えば挙げられる。
【0046】
好適なポリペプチドとしてはβチューブリンIII、MAP2、ニューロン特異的エノラーゼ、NCAM、CD24、HAS、シナプシンI、シナプトフィジン、CAMK Iia、チロシンヒドロキシラーゼ、グルタミン酸輸送体、グルタミン酸受容体、コリン受容体、ニコチンA2、EphB2、GABA-A受容体、セロトニン(5HT-3)受容体、コリンアセチルトランスフェラーゼ、ならびに上記のいずれかの断片および部分配列も例えば挙げられる。
【0047】
好適なポリペプチドとしてはカルシウムチャネル; T細胞抗原受容体; ケモカイン受容体; カリウムチャネル; 神経伝達物質受容体(例えばセロトニン受容体; GABA受容体; グルタミン酸受容体; ニコチン性アセチルコリン受容体; など); 成長因子受容体(例えば上皮成長因子受容体; 血管内皮成長因子受容体など); 骨形態形成タンパク質; 細胞シグナル伝達経路を活性化させるポリペプチド; なども例えば挙げられる。
【0048】
対象のポリペプチド-ポリマー抱合体のポリペプチド成分は生物学的に活性である。特定の生物活性を試験するように設計されたいくつかの周知のアッセイのいずれかを使用して、所与のポリペプチドが生物学的に活性であるか否かを、当業者は容易に決定することができる。特定の生物学的に活性なポリペプチドに有用なアッセイの例としては、GMCSF (Eaves, A. C. and Eaves C. J., Erythropoiesis in culture. In: McCullock E A (edt) Cell culture techniques--Clinics in hematology. W B Saunders, Eastbourne, pp 371-91 (1984); Metcalf, D., International Journal of Cell Cloning 10: 116-25 (1992); Testa, N. G., et al., Assays for hematopoietic growth factors. In: Balkwill F R (edt) Cytokines A practical Approach, pp 229-44; IRL Press Oxford 1991) EPO (バイオアッセイ: Kitamura et al., J. Cell. Physiol. 140 p323 (1989)); ヒルジン(血小板凝集アッセイ: Blood Coagul Fibrinolysis 7(2):259-61 (1996)); IFNα (抗ウイルスアッセイ: Rubinstein et al., J. Virol. 37(2):755-8 (1981); 抗増殖アッセイ: Gao Y, et al Mol Cell Biol. 19(11):7305-13 (1999); およびバイオアッセイ: Czarniecki et al., J. Virol. 49 p490 (1984)); GCSF(バイオアッセイ: Shirafuji et al., Exp. Hematol. 17 p116 (1989); マウスNFS-60細胞の増殖(Weinstein et al, Proc Natl Acad Sci 83:5010-4 (1986)); インスリン(3H-グルコース取り込みアッセイ: Steppan et al., Nature 409(6818):307-12 (2001)); hGH (Ba/F3-hGHR増殖アッセイ: J Clin Endocrinol Metab 85(11):4274-9 (2000); 成長ホルモンの国際基準: Horm Res, 51 Suppl 1:7-12 (1999)); 因子X(因子X活性アッセイ: Van Wijk et al. Thromb Res 22:681-686 (1981)); 因子VII(プロトロンビン凝固時間を使用する凝固アッセイ: Belaaouaj et al., J. Biol. Chem. 275:27123-8(2000); Diaz-Collier et al., Thromb Haemost 71:339-46 (1994))が挙げられるがそれに限定されない。
【0049】
細胞シグナル伝達経路の活性化のアッセイは当技術分野で公知である。細胞増殖誘導のアッセイは当技術分野で公知であり、3H-チミジン取り込みアッセイなどが例えば挙げられる。血管新生誘導のアッセイとしてはニワトリ絨毛尿膜(CAM)アッセイ、インビトロ内皮細胞アッセイ、マトリゲルアッセイ、ディスク血管新生システムなどが例えば挙げられる。細胞分化誘導のアッセイは当技術分野で公知であり、ある分化細胞の種類に関連する遺伝子産物を検出するアッセイが挙げられる。
【0050】
リンカー
先に記したように、いくつかの態様では、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体は、ポリペプチドをポリマーに結合させるリンカー基を含む。好適なリンカーとしてはペプチドリンカーおよび非ペプチドリンカーが挙げられる。
【0051】
リンカーペプチドは、種々のアミノ酸配列のいずれかを有し得る。例示的なペプチドリンカーは、長さ約6〜約40アミノ酸または長さ約6〜約25アミノ酸である。例示的なリンカーとしてはポリ(グリシン)リンカー(例えば(Gly)n、式中、nは2〜約10の整数である); GlyおよびSerを含むリンカー; などが挙げられる。
【0052】
抱合
種々の抱合方法および化学反応を使用して、ポリペプチドをポリマーに抱合させることができる。各種ゼロ長、ホモ二官能性およびヘテロ二官能性架橋試薬を使用可能である。ゼロ長架橋試薬としては、外的材料の導入を伴わない2個の内在的な化学基の直接抱合が挙げられる。ジスルフィド結合の形成を触媒する薬剤がこの分類に属する。別の例は、カルボジイミド、クロロ蟻酸エチル、ウッドワード試薬K (2-エチル-5-フェニルイソオキサゾリウム-3'-スルホネート)およびカルボニルジイミダゾールなどのアミド結合を形成するための、カルボキシルと一級アミノ基との縮合を誘導する試薬である。ホモおよびヘテロ二官能性試薬はそれぞれ2つの同一部位または2つの非同一部位を一般に含有し、これらの部位はアミノ基、スルフヒドリル基、グアニジノ基、インドール基または非特異的基と反応性があり得る。
【0053】
いくつかの態様では、ポリマーは、ポリペプチド上またはリンカー上の一級アミン基と反応するためのアミノ反応性基を含む。好適なアミノ反応性基としてはN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、イミドエステル、イソシアネート、ハロゲン化アシル、アリールアジド、p-ニトロフェニルエステル、アルデヒドおよび塩化スルホニルが挙げられるがそれに限定されない。
【0054】
いくつかの態様では、ポリマーは、例えばポリペプチド中のシステイン残基と反応するためのスルフヒドリル反応性基を含む。好適なスルフヒドリル反応性基としてはマレイミド、ハロゲン化アルキル、ピリジルジスルフィドおよびチオフタルイミドが挙げられるがそれに限定されない。
【0055】
他の態様では、水と有機溶媒との両方に可溶性のカルボジイミドをカルボキシル反応性試薬として使用する。これらの化合物は遊離カルボキシル基と反応してプソイド尿素を形成し、次に利用可能なアミンとこれをカップリングさせてアミド結合を得ることができる。
【0056】
先に記したように、いくつかの態様では、ホモ二官能性架橋剤を使用してポリペプチドをポリマーに抱合させる。
【0057】
いくつかの態様では、ホモ二官能性架橋剤は一級アミンと反応性がある。一級アミンと反応性があるホモ二官能性架橋剤としてはNHSエステル、イミドエステル、イソチオシアネート、イソシアネート、ハロゲン化アシル、アリールアジド、p-ニトロフェニルエステル、アルデヒドおよび塩化スルホニルが挙げられる。
【0058】
ホモ二官能性NHSエステルの非限定的な例としてはジスクシンイミジルグルタレート(DSG)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS)、ジスクシンイミジルタルタレート(DST)、ジスルホスクシンイミジルタルタレート(スルホ-DST)、ビス-2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチルスルホン(BSOCOES)、ビス-2-(スルホスクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチルスルホン(スルホ-BSOCOES)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)(スルホ-EGS)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート(DSP)およびジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート(スルホ-DSP)が挙げられる。ホモ二官能性イミドエステルの非限定的な例としてはジメチルマロンイミデート(DMM)、ジメチルスクシンイミデート(DMSC)、ジメチルアジピミデート(DMA)、ジメチルピメリミデート(DMP)、ジメチルスベリミデート(DMS)、ジメチル-3,3'-オキシジプロピオンイミデート(DODP)、ジメチル-3,3'-(メチレンジオキシ)ジプロピオンイミデート(DMDP)、ジメチル-,3'-(ジメチレンジオキシ)ジプロピオンイミデート(DDDP)、ジメチル-3,3'-(テトラメチレンジオキシ)ジプロピオンイミデート(DTDP)およびジメチル-3,3'-ジチオビスプロピオンイミデート(DTBP)が挙げられる。
【0059】
ホモ二官能性イソチオシアネートの非限定的な例としてはp-フェニレンジイソチオシアネート(DITC)および4,4'-ジイソチオシアノ-2,2'-ジスルホン酸スチルベン(DIDS)が挙げられる。ホモ二官能性イソシアネートの非限定的な例としてはキシレン-ジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2-イソシアネート-4-イソチオシアネート、3-メトキシジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジカルボキシ-4,4'-アゾフェニルジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。ホモ二官能性ハロゲン化アリールの非限定的な例としては1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン(DFDNB)および4,4'-ジフルオロ-3,3'-ジニトロフェニル-スルホンが挙げられる。ホモ二官能性脂肪族アルデヒド試薬の非限定的な例としてはグリオキサール、マロンジアルデヒドおよびグルタルアルデヒドが挙げられる。ホモ二官能性アシル化試薬の非限定的な例としてはジカルボン酸のニトロフェニルエステルが挙げられる。ホモ二官能性芳香族塩化スルホニルの非限定的な例としてはフェノール-2,4-ジスルホニルクロリドおよびα-ナフトール-2,4-ジスルホニルクロリドが挙げられる。さらなるアミノ反応性ホモ二官能性試薬の非限定的な例としては、アミンと反応してビスカルバメートを与えるエリスリトールビスカーボネートが挙げられる。
【0060】
いくつかの態様では、ホモ二官能性架橋剤は遊離スルフヒドリル基と反応性がある。遊離スルフヒドリル基と反応性があるホモ二官能性架橋剤としてはマレイミド、ピリジルジスルフィドおよびハロゲン化アルキルが例えば挙げられる。
【0061】
ホモ二官能性マレイミドの非限定的な例としてはビスマレイミドヘキサン(BMH)、N,N'-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N'-(1,2-フェニレン)ビスマレイミド、アゾフェニルジマレイミドおよびビス(N-マレイミドメチル)エーテルが挙げられる。ホモ二官能性ピリジルジスルフィドの非限定的な例としては1,4-ジ-3'-(2'-ピリジルジチオ)プロピオンアミドブタン(DPDPB)が挙げられる。ホモ二官能性ハロゲン化アルキルの非限定的な例としては2,2'-ジカルボキシ-4,4'-ジヨードアセトアミドアゾベンゼン、α,α'-ジヨード-p-キシレンスルホン酸、α,α'-ジブロモ-p-キシレンスルホン酸、N,N'-ビス(b-ブロモエチル)ベンジルアミン、N,N'-ジ(ブロモアセチル)フェニルヒドラジンおよび1,2-ジ(ブロモアセチル)アミノ-3-フェニルプロパンが挙げられる。
【0062】
先に記したように、いくつかの態様では、ヘテロ二官能性試薬を使用してポリペプチドをポリマーに抱合させる。好適なヘテロ二官能性試薬としては、ピリジルジスルフィド部分を含むアミノ反応性試薬; マレイミド部分を含むアミノ反応性試薬; ハロゲン化アルキル部分を含むアミノ反応性試薬; およびジハロゲン化アルキル部分を含むアミノ反応性試薬が挙げられる。
【0063】
ピリジルジスルフィド部分およびアミノ反応性NHSエステルを有するヘテロ二官能性試薬の非限定的な例としては、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル6-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミドヘキサノエート(LC-SPDP)、スルホスクシンイミジル6-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミドヘキサノエート(スルホ-LCSPDP)、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)およびスルホスクシンイミジル6-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルアミドヘキサノエート(スルホ-LC-SMPT)が挙げられる。
【0064】
マレイミド部分およびアミノ反応性NHSエステルを含むヘテロ二官能性試薬の非限定的な例としては、スクシンイミジルマレイミジルアセテート(AMAS)、スクシンイミジル3-マレイミジルプロピオネート(BMPS)、N-γ-マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)、N-γ-マレイミドブチリルオキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ-GMBS)、スクシンイミジル6-マレイミジルヘキサノエート(EMCS)、スクシンイミジル3-マレイミジルベンゾエート(SMB)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ-MBS)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)、スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)およびスルホスクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(スルホ-SMPB)が挙げられる。
【0065】
ハロゲン化アルキル部分およびアミノ反応性NHSエステルを含むヘテロ二官能性試薬の非限定的な例としては、N-スクシンイミジル-(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、スルホスクシンイミジル-(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(スルホ-SIAB)、スクシンイミジル-6-(ヨードアセチル)アミノヘキサノエート(SIAX)、スクシンイミジル-6-(6-((ヨードアセチル)-アミノ)ヘキサノイルアミノ)ヘキサノエート(SIAXX)、スクシンイミジル-6-(((4-(ヨードアセチル)-アミノ)メチル)-シクロヘキサン-1-カルボニル)アミノヘキサノエート(SIACX)およびスクシンイミジル-4((ヨードアセチル)-アミノ)メチルシクロヘキサン-1-カルボキシレート(SIAC)が挙げられる。
【0066】
アミノ反応性NHSエステルおよびジハロゲン化アルキル部分を含むヘテロ二官能性試薬の非限定的な例としてはN-ヒドロキシスクシンイミジル2,3-ジブロモプロピオネート(SDBP)がある。ハロゲン化アルキル部分およびアミノ反応性p-ニトロフェニルエステル部分を含むヘテロ二官能性試薬の非限定的な例としてはp-ニトロフェニルヨードアセテート(NPIA)がある。
【0067】
組成物
本発明は、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体を含む薬学的組成物を含む組成物を提供する。
【0068】
いくつかの態様では、対象の組成物は対象のポリペプチド-ポリマー抱合体を含み、ここで対象のポリペプチド-ポリマー抱合体は均一であり、例えば、ポリペプチド-ポリマー抱合体のすべてのポリペプチドは同一のアミノ酸配列を含む。例えば、いくつかの態様では、対象の組成物は複数の(例えば複数のコピーの)対象のポリペプチド-ポリマー抱合体を含み、ここで各ポリペプチド-ポリマー抱合体分子は、いずれも同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0069】
他の態様では、対象の組成物は2つ以上の種の対象のポリペプチド-ポリマー抱合体を含み、例えば、対象の組成物は、第1のアミノ酸配列のポリペプチドを含む第1のポリペプチド-ポリマー抱合体; および少なくとも、第1のアミノ酸配列とは異なる第2のアミノ酸配列のポリペプチドを含む第2のポリペプチド-ポリマー抱合体を含む。いくつかの態様では、対象の組成物は第3のまたはさらなるポリペプチド-ポリマー抱合体を含む。非限定的な一例として、第1のポリペプチド-ポリマー抱合体は、インテグリンに対する結合を与える第1のポリペプチドを含み、第2のポリペプチド-ポリマー抱合体は、細胞シグナル伝達経路を活性化する第2のポリペプチドを含む。第1の、第2の、その他のポリペプチドの各種の他の組み合わせを使用可能である。対象の組成物中の第1のポリペプチド-ポリマー抱合体対第2のポリペプチド-ポリマー抱合体の比は、例えば約0:001対103〜約103対0.001で変動し得る。同様に、対象の組成物が第1、第2および第3のポリペプチド-ポリマー抱合体を含む場合、第1、第2および第3のポリペプチド-ポリマー抱合体の比は変動し得る。
【0070】
対象の組成物は、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体に加えて、塩、例えばNaCl、MgCl、KCl、MgSO4など; 緩衝剤、例えばトリス緩衝液、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)など; 可溶化剤; 界面活性剤、例えばTween-20などの非イオン性界面活性剤など; プロテアーゼ阻害剤; などのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0071】
本発明は、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。好適な賦形剤媒体としては、例えば水、食塩水、ブドウ糖、グリセリン、エタノールなど、およびその組み合わせがある。さらに、所望であれば、媒体は、微量の湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝剤などの補助物質を含有し得る。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に公知であるかまたは明らかであろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 17th edition, 1985を参照されたい。いずれにせよ、投与すべき組成物または製剤は、処置される対象において所望の状態を実現するために十分な量の薬剤を含有する。媒体、補助剤、担体または希釈剤などの薬学的に許容される賦形剤は一般向けに容易に入手可能である。さらに、pH調整剤および緩衝剤、等張化剤、安定剤、湿潤剤などの薬学的に許容される補助物質は一般向けに容易に入手可能である。
【0072】
本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」および「薬学的に許容される賦形剤」という用語は互換的に使用され、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体と組み合わせる際に抱合体の生物活性に実質的に影響を与えず、宿主中の免疫応答を誘導せず、宿主に対していかなる実質的な有害生理作用も有さない任意の材料を含む。例としてはリン酸緩衝食塩水溶液、水、水中油型乳剤などの乳剤、および各種湿潤剤などの標準的薬学担体のいずれかが挙げられるがそれに限定されない。他の担体としては滅菌溶液、コーティング錠剤を含む錠剤、およびカプセルも挙げることができる。典型的には、そのような担体は、デンプン、乳、糖、ある種の粘土、ゼラチン、ステアリン酸もしくはその塩、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、タルク、植物脂もしくは植物油、ゴム、グリコール、または他の公知の賦形剤などの賦形剤を含有する。そのような担体としては、調味添加剤および着色添加剤または他の成分も挙げることができる。そのような担体を含む組成物は、周知の慣行的方法により調剤される。
【0073】
薬学的組成物は、局所投与、経口投与、経鼻投与、静脈内投与、頭蓋内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、腫瘍周囲投与、皮下投与または筋肉内投与を例えば含む、選択される投与様式用に調剤することができる。皮下注射などの非経口投与では、担体は水、食塩水、アルコール、脂肪、ワックスまたは緩衝液を含み得る。経口投与では、上記担体のいずれか、またはマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、タルカム、セルロース、グルコース、スクロースおよび炭酸マグネシウムなどの固体担体を使用することができる。生分解性マイクロスフェア(例えばポリラクテート、ポリグリコレート)も、対象の薬学的組成物用の担体として使用可能である。好適な生分解性マイクロスフェアは、例えば米国特許第4,897,268号および第5,075,109号に開示されている。
【0074】
いくつかの態様では、対象の薬学的組成物を非経口投与、例えば静脈内投与する。したがって、本発明は、許容される担体、好ましくは水性担体、例えば水、緩衝水、食塩水、リン酸緩衝食塩水などに溶解または懸濁した対象の抱合体を含む、非経口投与用組成物を提供する。組成物は、pH調整剤および緩衝剤、等張化剤、湿潤剤、界面活性剤などの、生理的条件に近づくために必要である薬学的に許容される補助物質を含有し得る。
【0075】
対象の組成物は、慣行的滅菌技術で滅菌することができるか、または滅菌濾過することができる。得られる水溶液は、そのまま使用するために包装するか、または凍結乾燥させることができ、凍結乾燥製剤は投与前に滅菌水性担体と組み合わせる。製剤のpHは3〜11、例えば約pH 5〜約pH 9、または約pH 7〜約pH 8の範囲であり得る。
【0076】
埋め込み可能な組織およびデバイス
いくつかの態様では、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体を、埋め込み可能な組織またはデバイス、例えば人工組織; 組織中へのインプラント; 埋め込み式デバイス(血管内ステント、人工関節、スキャフォールド、グラフト(例えば大動脈グラフト)、人工心臓弁、髄液シャント、冠状動脈シャント、ペースメーカー電極、心内膜リードなどの)用のコーティング; 埋め込み式薬物送達システム; などの上にコーティングするか、その上に積層するか、その中に組み入れるか、またはそれを形成する。人工組織としては合成心臓弁(例えば合成大動脈弁、合成僧帽弁など)が例えば挙げられる。ステントとしては自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、およびステント-グラフトが例えば挙げられる。生体材料としてはフィルム、ゲル、スポンジ、ガーゼ、不織布、メンブレン、マイクロスフェア、マイクロカプセル、糸、ガイドチャネルなどが例えば挙げられる。
【0077】
例えば、いくつかの態様では、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体をマトリックス上に積層もしくはコーティングするかまたはそうでなければそれに付着させて、合成埋め込み式デバイスを形成する。例えば、マトリックス(「生体適合性基材」とも呼ぶ)は、対象内への埋め込みに好適な材料であって、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体がその上に積層されるか、コーティングされるか、またはそうでなければ付着する材料である。生体適合性基材は、一旦対象に埋め込まれると、毒性のまたは傷害性の作用を引き起こさない。一態様では、生体適合性基材は、修復または交換を必要とする所望の構造として形作ることができる表面を有するポリマーである。生体適合性基材は、修復または交換を必要とする構造の一部として形作ることもできる。生体適合性基材は、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体をその上に積層、コーティング、またはそうでなければ付着可能な支持枠組を与える。
【0078】
いくつかの態様では、それに付着する対象のポリペプチド-ポリマー抱合体を含むマトリックスまたはスキャフォールドは、ポリペプチド-ポリマー抱合体を含むマトリックスまたはスキャフォールドに結合した1つもしくは複数の細胞および/または1つもしくは複数の細胞種類をさらに含む。そのようなマトリックスまたはスキャフォールドは、組織工学、細胞培養、細胞移植などの文脈で有用である。
【0079】
いくつかの態様では、薬物送達デバイスが対象のポリペプチド-ポリマー抱合体を含む。例えば、薬物放出デバイスは拡散型システム、対流型システムまたは侵食型システム(例えば侵食に基づくシステム)に基づきうる。例えば、薬物放出デバイスは電気化学ポンプ、浸透圧ポンプ、電気浸透圧ポンプ、蒸気圧ポンプまたは浸透圧破裂マトリックスであり得るものであり、ここで例えば薬物はポリマーに組み入れられ、ポリマーは薬物含浸ポリマー材料(例えば生分解性薬物含浸ポリマー材料)の分解と同時に薬物製剤の放出を与える。他の態様では、薬物放出デバイスは電気拡散システム、電解ポンプ、発泡ポンプ、圧電ポンプ、加水分解型システムなどに基づく。
【0080】
いくつかの態様では、埋め込み可能な薬物送達システムは、活性薬剤の投与を与えるようにプログラム可能である。例示的なプログラム可能な埋め込み式システムとしては埋め込み式輸液ポンプが挙げられる。例示的な埋め込み式輸液ポンプ、またはそのようなポンプとの関連で有用なデバイスは、米国特許第4,350,155号; 第5,443,450号; 第5,814,019号; 第5,976,109号; 第6,017,328号; 第6,171,276号; 第6,241,704号; 第6,464,687号; 第6,475,180号; および第6,512,954号に例えば記載されている。さらなる例示的なデバイスはSynchromed輸液ポンプ(Medtronic)である。
【0081】
埋め込み式薬物送達デバイスを使用して、種々の薬剤、例えば免疫応答調整剤、抗増殖剤、抗アポトーシス剤、有糸分裂阻害剤、抗血小板剤、白金配位錯体、ホルモン、抗凝固剤、血栓溶解薬、抗分泌剤、抗遊走剤、免疫抑制剤、血管新生剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、一酸化窒素供与体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、細胞周期阻害剤、副腎皮質ステロイド、血管新生抑制ステロイド、抗寄生虫薬、抗緑内障薬、抗生物質、分化制御剤、抗ウイルス薬、抗がん薬および抗炎症薬のいずれかを送達することができる。
【0082】
有用性
対象のポリペプチド-ポリマー抱合体は、治療用途(例えば薬物送達、埋め込み式デバイス、組織工学、再生医学)、診断用途、創薬用途および研究用途を含む各種用途において有用性を見出す。
【0083】
治療用途
対象のポリペプチド-ポリマー抱合体は各種の治療用途において有用性を見出す。
【0084】
例えば、先に論じたように、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体を薬物送達デバイスに付着させることができ、ここでポリペプチド-ポリマー抱合体の生物学的に活性なポリペプチド成分は機能性を与え、薬物送達デバイスは治療薬を与える。例えば、生物学的に活性なポリペプチドは、治療薬による処置を必要とする特定の細胞種類または組織種類に対する標的化を与えることができ、薬物送達デバイスは局所的に治療薬を与えうる。
【0085】
別の例として、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体の生物学的に活性なポリペプチド成分は、例えば、腫瘍細胞においてアポトーシスの誘導を与えること; 処置部位での血液の凝固を誘導すること; 血小板凝集を阻害すること; 血管新生を誘導すること; 細胞分化を誘導すること; などにより、それ自体治療薬となる可能性がある。
【0086】
別の例として、先に論じたように、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体を埋め込み式医療用デバイス、例えばステント、シャント、人工弁、リード、人工関節、グラフト、電極などに付着させることができ、ここで対象のポリペプチド-ポリマー抱合体の生物学的に活性なポリペプチド成分は所望の活性、例えば新生内膜過形成再狭窄の減少; 細胞増殖の阻害; 細胞接着の阻害; などを与える。
【0087】
別の例として、先に論じたように、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体をマトリックスまたはスキャフォールドに付着させることができ、ここでポリペプチド-ポリマー抱合体は細胞結合を与える。対象のポリペプチド-ポリマー抱合体を含み、ポリペプチド-ポリマー抱合体に細胞が結合しているかまたは結合していない、マトリックスまたはスキャフォールドを、細胞移植、組織工学などの文脈で個人に導入することができる。
【0088】
いくつかの態様では、対象のポリペプチド-ポリマー抱合体は、(例えばポリペプチドが血管新生を誘導するものである場合)、それを必要とする個人において、例えば虚血組織中またはその近傍において、血管新生を誘導することに有用性を見出す。
【0089】
研究用途
対象のポリペプチド-ポリマー抱合体は、例えば細胞シグナル伝達経路を調査するためなどの各種研究用途において有用性を見出す。対象のポリペプチド-ポリマー抱合体を疾患の実験非ヒト動物モデルに投与することで、そのモデルにおける生理応答に対する対象のポリペプチド-ポリマー抱合体の作用を試験することができる。対象のポリペプチド-ポリマー抱合体は薬物スクリーニング用途にも使用可能である。
【実施例】
【0090】
実施例
以下の実施例は、どのようにして本発明を実行および使用するかの完全な開示および説明を当業者に与えるために記載されるものであり、本発明者らがその発明と見なすものの範囲を制限するよう意図されているわけではなく、以下の実験がすべてであるかまたは行った唯一の実験であるということを表すよう意図されているわけでもない。使用した数(例えば量、温度など)について正確さを確保するよう努めたが、いくつかの実験上の誤差および偏差を考慮すべきである。別途指示がない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度はセルシウス度であり、圧力は大気圧またはその近傍である。標準的な略語、例えばbp、塩基対; kb、キロベース; pl、ピコリットル; sまたはsec、秒; min、分; hまたはhr、時間; aa、アミノ酸; kb、キロベース; bp、塩基対; nt、ヌクレオチド; i.m.、筋肉内; i.p.、腹腔内; s.c.、皮下; などが使用されている可能性がある。
【0091】
実施例1
ポリペプチド-ポリマー抱合体の合成および特徴づけ
タンパク質ソニックヘッジホッグ(Shh)の強力に活性な多価形態を、カルボジイミドとマレイミドとの化学反応を利用する2段階反応を経由して、線状ポリマーポリアクリル酸(pAAc)およびヒアルロン酸(HyA)に対するShhの修飾組換え形態のバイオコンジュゲーションにより生成した。HyA直鎖当たりShh分子30個の化学量論比(すなわち30:1 Shh:HyA)であっても、抱合の効率は約75%であった。0.6:1 Shh:HyA〜22:1 Shh:HyAで変動するShh分子対HyA直鎖の化学量論比の範囲にわたる細胞アッセイを経由して、抱合体の生理活性を試験した。結果は、抱合比が低いとShhの生理活性は低下し、比が高いとこの活性は単量体Shhの作用強度を超えて増加し、単量体可溶性Shhと7:1 Shh:HyAでの抱合Shhとの間の活性がほぼ同等であることを示している。さらに、高い比の構築物はインビボニワトリ絨毛尿膜(CAM)アッセイにより決定される血管新生を増加させた。これらの結果はShh:HyA抱合体と細胞表面受容体との間の複数の相互作用の動力学モデルにより捕捉され、この相互作用によりバルクShh濃度が小さいほど細胞シグナル伝達が大きくなる。
【0092】
方法
組換えShhおよびバイオコンジュゲーション技術
既に記載されているラットShhのN末端シグナル伝達ドメインのcDNAを使用して(15)、さらなるシステイン残基および6x Hisタグをコードする塩基対を、タンパク質のC末端上にPCRを通じて付加することで、スルフヒドリルに基づく反応およびタンパク質精製をそれぞれ可能にした。この係留部位は、タンパク質のこの区域がその活性部位と離れていること、およびここに付着する不活性分子が活性を改変しないことを示す研究(16)に基づいて具体的に選択した。産生した修飾Shh PCR産物をpBAD-HisA(カリフォルニア州カールズバッド、Invitrogen)プラスミドに挿入し、得られたプラスミドをDNA配列決定により確認し、アラビノース誘導を通じてタンパク質をBL21 (DE3).pLys.E大腸菌(E. coli)中で発現させた。誘導タンパク質の発現後、細胞を溶解させ、得られた発現ShhをNiNTA(カリフォルニア州バレンシア、Qiagen)結合、続いてイミダゾール溶出を使用して精製した。精製タンパク質を10%グリセリン、2mM EDTAおよび50μM ZnSO4を含有するpH 7.4 PBS中に透析した。
【0093】
ポリマーのカルボキシレート基でのカルボジイミド化学反応およびタンパク質C末端システインでのマレイミド反応を使用する2段階反応を通じて、精製Shhを線状ポリマーに抱合させた(図1)。第1段階は、[N-ε-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド(EMCH、イリノイ州ロックフォード、Pierce Biotechnology)を線状ポリマーに付加して、引き続くタンパク質の付着を可能にすることであった。この非免疫原性ヒドラジド-マレイミドヘテロ二官能性架橋剤を2つの線状ポリマーに、同一の一般的手順で、但しわずかに異なる反応条件で付加した。pAAc抱合体では、小さいペプチド配列の付着について記載のように(17)、2mg/mlの450,000Da pAAc(ペンシルベニア州ウォリントン、Polysciences)を、3.9mg/mlの1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)、1.1mg/mlのN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ-NHS)および0.5mg/mlのEMCHと、pH6.5 MES緩衝液中、室温で2時間反応させた。HyAの活性化では、ヒドラジドの付着について既に記載の方法(9)と同様の方法を106Da分子量HyA(マサチューセッツ州ケンブリッジ、Genzyme)と共に使用した。これを3mg/mlで、pAAc反応で使用した同一濃度のEDC、スルホ-NHSおよびEMCHを用いて、pH5.0の0.1M MES緩衝液中で終夜溶解および反応させた。EMCHの付着後、得られたマレイミド活性化線状ポリマーを非抱合試薬から、逐次希釈および分子量50,000カットオフ遠心分離フィルター(Pall Gellman)中での遠心分離を通じて分離した。
【0094】
次に、活性化ポリマーをShhと、変動する化学量論供給比で反応させて、変動する分子置換の抱合体を生成した。50μMトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP、イリノイ州ロックフォード、Pierce Biotechnology)を含有する0.1M MES緩衝液(pH 6.5)中、4℃で終夜この反応を行って、反応の期間中C末端Shhシステインを還元状態に維持した。反応後、0.5mMジチオスレイトールの添加および4℃で1時間のインキュベーションにより、線状ポリマー上のあらゆる残存マレイミド基を還元した。
【0095】
すべての抱合反応をゲル電気泳動によりアッセイし、反応液を同質量の未反応Shhと比較することでタンパク質共役効率を視覚的に点検した。さらに、20:1および10:1のShh対HyAのモル供給比での三つ組Shh:HyA抱合反応のセットをSpectra/Por(登録商標)Float-A-Lyzer(登録商標)デバイス(カリフォルニア州ランチョドミンゲス、Spectrum Laboratories)を使用して0.1 MES緩衝液(pH 6.5)中で終夜透析して、非抱合Shhを除去した。次に、透析HyA-Shh溶液中のタンパク質濃度を、microBCAアッセイ(イリノイ州ロックフォード、Pierce Biotechnology)を使用して定量化した。
【0096】
生理活性アッセイ
生理活性を試験するために、他所(18、19)に記載のようにShhに曝露することによりマウス胚性C3H10T1/2細胞(バージニア州マナサス、American Type Culture Collection)を誘導して骨原性系統に分化させた。簡潔に述べると、細胞を5000個/ウェルで96ウェルプレートにおいて通常の成長培地(10% FBSを有するαMEM)中にプレーティングした。2日後、培地を低FBS(2%)培地で置き換え、タンパク質および抱合体反応液を補充した。試験条件は、1〜100nMの範囲の可溶性Shh、50μg/mlの非抱合HyAを伴う同一範囲の可溶性Shh、または、培地溶液中のShhの濃度がやはり1〜100nMになる量でのShh:HyA抱合体を含んでいた。さらに3日間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、溶解させ、蛍光プローブ9-H-(1,3-ジクロロ-9,9-ジメチルアクリジン-2-オン-7-イル)ホスフェート(DDAO、オレゴン州ユージン、Molecular Probes)を使用してアルカリホスファターゼ(ALP)活性を測定することで、細胞溶解液を分化についてアッセイした。非抱合ポリアクリル酸は細胞の分化を阻害することがわかったため、これらの抱合体の生理活性試験は行わなかった。
【0097】
血管新生アッセイ
Shhは公知の血管新生剤である(20)。可溶性ShhおよびShh:HyA抱合体からの血管新生の誘導を、CAM窓アッセイを使用してアッセイした。稔性白色レグホン卵(コネチカット州フランクリン、Charles River)を8日目まで加湿環境中37℃でインキュベートし、その時点でアルブミン2mlを卵の平らな端から除去し、反対側の殻に小さい1cm x 1cmの窓を作った。滅菌PBS、Shh 0.1μg、または20:1 Shh:HyA供給比抱合体のShh 0.1μgを添加した濾紙の滅菌正方形を発育中のCAM上に直接配置した。次にこの窓をパラフィルムで封止し、卵をインキュベーターに戻した。3日後、Olympus SZX7立体鏡を使用して試験材料の周囲の血管新生を顕微鏡評価した。取り付けたQImaging Qfireカメラを使用して高解像度顕微鏡写真を撮影した。ImageJソフトウェアを使用してこれらの画像を分析することで、インプラントをその端部から0.1cmおよび0.25cm離れた距離で取り囲む正方形周辺内の単位長さ当たりの血管の数を定量化した。各群の線密度測定値を、0.1cmと0.25cmとの両方の距離データに対する一方向ANOVA、続いて個々の群のホルム対t検定を使用して、統計的有意性について試験した。
【0098】
Shh:HyA抱合体の細胞シグナル伝達の分子モデリング
単量体Shhに応答したGli転写エフェクターの発現を説明する結合および輸送数値モデル(21、22)、ならびに多価リガンド-受容体結合を説明する数値動力学モデル(23)(図3)を構築して、Shh:HyA抱合体の細胞シグナル伝達をモデリングした。図3では、Shhコアシグナル伝達ネットワーク、および多価抱合体を包含する仮定的反応を、代表的細胞の周囲に示す。タンパク質間の矢印は結合または解離を表し、遺伝子からタンパク質への矢印は発現を表し、タンパク質から遺伝子への矢印は活性化または抑制を示す。Smo、スムースンド(Smoothened)。細胞レベルでは、Shhは、パッチト(Patched, Ptc)というその膜貫通受容体との相互作用によって細胞運命転換を誘導する。既に記載のように(Lai et al., 2004)、Shhの非存在下では、Ptcは膜貫通タンパク質Smoのシグナル伝達活性を抑制し、したがってShhシグナル伝達のリプレッサーとして作用する。gli上方制御は正のフィードバックを表し、一方、ptc上方制御は負のフィードバックを与える。シミュレーションにより各種機構の作用を調査する: HyA:Shh抱合体の結合(結合活性); 抱合体-Ptc複合体の内部移行; およびHyA:Shhの分解。
【0099】
Shhシグナル伝達の無次元式を以下に示す。
可溶性Shhのシグナル伝達について

【0100】
抱合体のシグナル伝達について
価数i(Bcomi)および最大価数fの細胞表面多価-受容体複合体について、

の上記式を下記式で置き換える。

価数i(Ccomi)の内部移行多価-受容体複合体について、

の上記式を下記式で置き換える。


の上記式を下記で置き換える。

【0101】
初期条件、パラメータおよび変数の説明をそれらの文献の出典と共に表1に列挙する。「Promoter(プロモーター)」および「Basal(基底)」という用語は以前に定義されている(Lai, Robertson et al. 2004)。可溶性Shhネットワークにおけるパラメータの感度分析についてはSaha and Schaffer Development, 2006を参照されたい。
【0102】
図4のC3H10T1/2生理活性データについて最も単純なモデルを開発するために、以下の前提を援用した: スムースンドのパッチト(Ptc)抑制はPtc受容体の集合(aggregation)に影響を受けず; リガンド誘導性内部移行速度はすべての価数について同一であり; アルカリホスファターゼ活性は細胞中のGli1レベルに直線的に比例し; C3H10T1/2細胞の分化はShhに対するその応答性を変化させない。HyA:Shh抱合体の初期結合は単量体Shh-Ptc結合速度に従うと想定されたが、他のPtc受容体に対する抱合体からのShh部分のすべての他のさらなる結合はより速い速度で生じると想定された。この想定は、多価抱合体の初期結合後の結合の加速を考慮に入れる等価部位仮説と呼ばれている(24)。
【0103】
モデルパラメータを文献(21、22)より取得したが、いくつかのパラメータは図4の生理活性データより直接推定した。第一に、単量体Shh-Ptc結合定数kon/koffおよびアルカリホスファターゼ活性:Gli1発現比を、可溶性Shh生理活性曲線より推定した。さらに、多量体Shh-Ptc結合定数を22:1抱合体曲線より直接推定した(表1を参照されたい)。パラメータをShhの文献または同様のリガンド-受容体系のいずれかより取得した。すべての細胞速度定数は細胞の体積または表面内の平均である。これは、これらの定数が細胞内で空間的に変動することが知られていないためである。図7に示すシミュレーション結果の初期条件を各変数と共に列挙する。微分方程式における各項の相対的重要性を理解する好都合な方法は、無次元濃度と表1のパラメータとを比較することである。
【0104】
(表1)パラメータの定義および値範囲





【0105】
Ptcに対する抱合体結合親和性の単純な減少としてのHyA鎖の立体障害を組み入れる代替モデルも策定した。「立体モデル(model with sterics)」と称する、立体を組み入れる代替モデルでは、0.6:1、3.5:1および7:1の抱合供給比での多量体Shh-Ptc結合定数konを5.5倍減少させて、図4の0.6:1曲線からの実験データに一致させた。以下は、f=5の多価抱合体(5:1 Shh:HyA抱合体)のシミュレーションに関するBERKELEY MADONNAコードである。以下のコードを本文では「非立体モデル(model without sterics)」と称する。「立体モデル」について、方法のセクションで言及したように、1つのパラメータ変化のみを行った: 多量体Shh-Ptc結合定数konを5.5倍減少させて、図4の0.6:1曲線からの実験データに一致させた。




【0106】
結果
化学抱合
C末端の近傍にシステイン残基を有する組換えラットShh変異体を構築し、発現させ、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを経由して精製した。組換えタンパク質の抱合をpAAcとHyAとの両方に対して高効率で実現した。ゲル電気泳動を使用して、反応により、単量体Shhバンドの減少(図2)および高分子量抱合体の出現が生じたことが明らかになった。pAAc(図2A)(分子量 = 450,000)では、これによりゲルを通じてスメアが生じ、Shh抱合モル供給比が1:1から30:1まで増加するに従って質量が増加した。HyA(分子量 = 106Da)では、高分子量抱合体はゲル内部に深く浸透しなかった(図2B)。対照的に、Shhと生pAAcまたはHyAとの単純な混合ではゲル中でのShhの移動度は改変されなかった。10:1および30:1のモル供給比での精製Shh:HyA反応の、三つ組で行ったタンパク質分析は、約70〜75%の高効率度で反応が再現可能であることを示した(表2)。1:1、5:1、10:1、20:1および30:1のモル供給比は、それぞれ0.6:1、3.5:1、7:1、14:1および22:1のモル置換比を有するShh:HyA抱合体を生成した。
【0107】
(表2)30:1および10:1のモル供給比でのShh:HyA反応について決定した抱合比および共役効率

【0108】
C3H10T1/2細胞生理活性アッセイ
マウス胚性細胞系C3H10T1/2の使用を通じて、Shhの抱合が、溶液中の実際のShh濃度に対して評価した場合の係留タンパク質の活性を劇的に改変することがわかった(図4)。可溶性Shhがこの細胞系中で誘導する分化をpAAcが阻害したため、HyA抱合Shhしかこの細胞系を使用して試験することができなかった。低係留(例えば3.5:1)では、おそらくは大きい線状ポリマーが付着の際に引き起こした立体障害が理由で、活性が低下し、溶液中のShhのEC50が推定で10倍増加した。抱合比が7:1に達した際に活性は増加して正常に戻った。これを超えると、係留Shhの活性は劇的に増加し、推定EC50値は非係留Shhから22:1構築物まで10倍低下した。
【0109】
CAM血管新生モデル
CAMの結果は、抱合Shh:HyAの増加した作用強度を示した。写真分析および定量化(それぞれ図5および6)は、インプラントの近接距離(0.1mm)内において、負の対照と比較して、Shh添加試料の周囲の脈管構造が統計的に有意に増加していることを明らかにした。14:1の比で抱合したShh:HyAは0.1cmで負の対照と非抱合Shhとの両方に対して増加した平均血管数を有していたが、それは0.25cmで負の対照に対してより大きい範囲の持続的増加も有していた。可溶性Shhもこの距離で負の対照に対して増加した平均血管数を有していたが、この観察は統計的に有意ではなかった。
【0110】
多価Shhの生理活性の数値モデリング
HyA:Shh抱合体の結合、輸送および下流シグナル活性化の単純な動力学モデルを開発した。抱合体の多価性の作用に焦点を当てるため、いくつかの前提を単純化モデルで援用した: Ptc受容体の集合はシグナル伝達に影響を与えず; リガンドの内部移行は価数により影響されず; アルカリホスファターゼ活性は分化にかかわらず細胞中のGli1レベルに直線的に比例し; 抱合体結合の2つの速度、すなわち抱合体の初期結合、および他のPtc受容体に対する抱合体からのすべてのさらなるShh部分のより大きい結合速度のみが生じる(モデル式については方法のセクション、パラメータについては表1を参照)。これらの前提と共に2種類のモデル、すなわちPtcに対する抱合体の結合親和性の単純な減少としてのHyA鎖の立体障害を組み入れる1種類、および立体障害のあらゆる影響を無視する1種類を開発した。これら2つのモデルをそれぞれ「立体モデル」および「非立体モデル」と称した。これらの前提の下、モデリング結果は、生理活性アッセイにおけるShh対そのHyA担体の抱合比の増加により、漸進的な細胞シグナル伝達の増加およびEC50の減少が得られるはずであることを示した(図7)。試験した抱合比での両種類の動力学モデルを使用しかつ上記の前提を用い、実験データからの推定EC50値は十分に一致した(非立体モデルについてR2=0.7; 立体モデルについてR2=0.8)。非立体モデルでは、EC50値は高抱合比で実験結果に十分に一致したが、モデリング結果は7:1以下の抱合比のEC50値を過大評価していた(図7)。立体モデルの結果はこの偏差を補正し得る(図7)。
【0111】
参考文献




【0112】
本発明をその具体的な態様を参照して説明してきたが、様々な変更を行うことができること、および本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく等価物を置き換えることができることを、当業者は理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセスの段階を本発明の目的、精神および範囲に適応させるために、多くの修正を行うことができる。すべてのそのような修正は、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲内であるように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の抱合体:
X-(Y)n-Z
式中、Xは生物学的に活性なポリペプチドであり;
Yは任意的なリンカー部分であり、ここでnは0、または1〜約10の整数であり;
Zは約50〜100,000個のサブユニットを含む生体適合性ポリマーであり、
ここで生物学的に活性なポリペプチド対ポリマーのモル比は少なくとも約5:1である。
【請求項2】
ポリマーが、ヒアルロン酸、アクリル酸、エチレングリコール、メタクリル酸、アクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、マンニトール、マルトース、グルコース、アラビノース、タウリン、ベタイン、変性セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、加工デンプン、疎水的に修飾されたデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、アミロース、アミロペクチン、酸化デンプン、およびその共重合体より選択される複数のサブユニットを含む線状ポリマーである、請求項1記載の抱合体。
【請求項3】
生物学的に活性なポリペプチドが、受容体、受容体に対するリガンド、成長因子、血管新生因子、細胞分化を誘導するポリペプチド、抗体、または細胞増殖を阻害するポリペプチドである、請求項1記載の抱合体。
【請求項4】
ポリマーが線状ポリ(アクリル酸)である、請求項1記載の抱合体。
【請求項5】
ポリマーがヒアルロン酸である、請求項1記載の抱合体。
【請求項6】
生物学的に活性なポリペプチド対ポリマーのモル比が約5:1〜約10:1である、請求項1記載の抱合体。
【請求項7】
生物学的に活性なポリペプチド対ポリマーのモル比が約10:1〜約25:1である、請求項1記載の抱合体。
【請求項8】
生物学的に活性なポリペプチド対ポリマーのモル比が約25:1〜約50:1である、請求項1記載の抱合体。
【請求項9】
生物学的に活性なポリペプチドが約2kDa〜約100kDaの分子量を有する、請求項1記載の抱合体。
【請求項10】
a) 請求項1記載の抱合体、および
b) 薬学的に許容される賦形剤
を含む薬学的組成物。
【請求項11】
請求項1記載の抱合体を含む埋め込み可能なデバイス。
【請求項12】
ステント、シャント、人工弁、リード、人工関節、グラフト、または電極である、請求項11記載の埋め込み可能なデバイス。
【請求項13】
請求項1記載の抱合体を含む埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項14】
有効量の請求項10記載の薬学的組成物、請求項11記載の埋め込み可能なデバイス、または請求項13記載の埋め込み可能な薬物送達デバイスを、それを必要とする個人に投与する段階を含む、処置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−517451(P2011−517451A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502070(P2011−502070)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/038446
【国際公開番号】WO2009/120893
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】