説明

ポリマーおよび感光性ペースト

【課題】高精細かつ高アスペクト比のパターンを形成する場合であっても、露光部の強度や現像液耐性低下による現像欠陥や焼成欠陥の発生しにくい感光性ペースト、およびそれに最適な新規のポリマーを提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される構成単位(A)とアルカリ可溶性基を含有する特定構成単位(B)の両方を有することを特徴とするポリマーおよびこれを用いた感光性ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、および蛍光表示管等などの平面ディスプレイのパターン形成に好適な感光性ペーストおよびそれに好適に用いられるポリマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、蛍光表示管、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、発光ダイオードなどの平面ディスプレイの開発が急速に進められている。このうち、プラズマディスプレイは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に備えられた放電空間内で対向するアノード電極とカソード電極間にプラズマ放電を生じさせ、上記放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線を、放電空間内に設けた蛍光体に照射することにより表示を行うものである。プラズマディスプレイや蛍光表示管などのガス放電タイプのディスプレイは、放電空間を仕切るための絶縁性の隔壁を必要とする。また、フィールドエミッションディスプレイなどの電界放射型ディスプレイは、ゲート電極とカソードを隔絶するための絶縁性隔壁を必要とする。これらプラズマディスプレイパネルやフィールドエミッションディスプレイなどの絶縁性隔壁の形成においては、ガラス粉末などの無機材料を高精度でパターン加工ができる材料や加工方法が必要である。
【0003】
特にプラズマディスプレイに関して、より微細な隔壁を形成してより広い放電空間を確保することは、プラズマディスプレイを高精細化、高輝度化するための必須の技術である。従来、無機材料の微細パターン加工を行う方法として、感光性ペースト法によりパターンを形成する方法が提案されている(例えば特許文献1〜3)。プラズマディスプレイ用隔壁の断面形状は、より広い放電空間を確保し、隣接セルへの電荷漏れを抑制するために、底部線幅、頂部線幅が共に細いことが望まれるが、無機微粒子とバインダー樹脂を主成分とする感光性ペースト塗布膜においては、無機微粒子とバインダー樹脂の局在化に起因する露光光の散乱が発生し、それに起因するパターン形状の線幅太りやパターン間の残膜形成などが起こりやすくなるという問題があった。また、底部線幅、頂部線幅が共に細いと、露光部の強度や現像液耐性が低下するため、面内の一部あるいは全箇所において現像時にハガレや蛇行といった現像欠陥が、焼成時に亀裂や断線といった焼成欠陥が発生し、収率が低下するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3249576号公報(請求項1)
【特許文献2】特許第3239759号公報(請求項1)
【特許文献3】特許第3402070号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に着目し、高精細かつ高アスペクト比のパターンを形成する場合であっても、無機微粒子とバインダー樹脂の局在化に起因する線幅太りや残膜の欠点がなく、さらに、露光部の強度や現像液耐性低下による現像欠陥や焼成欠陥の発生しにくい感光性ペースト、およびそれに最適な新規のポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち本発明は、一般式(1)で表される構成単位(A)と一般式(2)で表される構成単位(B)の両方を有することを特徴とするポリマーである。
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R、R、Rはそれぞれ2価の有機基、R、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルキレン基よりそれぞれ独立に選ばれる基、Rはエチレン性不飽和基を有する置換基、Rはアルカリ可溶性基を示す。R、R、R10は水素あるいはメチル基からそれぞれ独立に選ばれる。mは0または1である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高精細かつ高アスペクト比のパターンを形成する場合であっても、露光部の強度や現像液耐性低下による現像欠陥や焼成欠陥の発生しにくい感光性ペースト、およびそれに最適な新規のポリマーを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリマーは、一般式(1)で表される構成単位(A)と一般式(2)で表される構成単位(B)の両方を有することを特徴とするポリマーである。
【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R、R、Rはそれぞれ2価の有機基、R、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルキレン基よりそれぞれ独立に選ばれる基、Rはエチレン性不飽和基を有する置換基、Rはアルカリ可溶性基を示す。R、R、R10は水素あるいはメチル基からそれぞれ独立に選ばれる。mは0または1である。)
本発明のポリマーは、一般式(1)で表される構成単位(A)を有する。構成単位(A)中、アルコキシシリル基(Si−(OR))部分が無機微粒子と相互作用するため、無機微粒子と混合し感光性ペーストとした場合に分散性を向上でき、引いてはペースト塗布膜の露光光の散乱を抑制でき、露光光の散乱によるパターンの太りや感光性ペースト塗布膜下部における硬化不足を防ぐことができる。また、アルコキシシリル基を有するため、現像液耐性も飛躍的に向上できる。さらに、アルコキシシリル基の近傍にエチレン性不飽和基を有する置換基(R)を含有するため、露光時により均一な状態で架橋体を形成でき、硬化物の強度が著しく向上する。このように、構成単位(A)を有することで、無機微粒子と混合した際の分散性を向上でき、かつ露光部分の強度および現像液耐性を向上できるということを、発明者らは明らかにした。
【0015】
構成単位(A)中、Rは2価の有機機であれば特に限定されないが、エステル基、エーテル基、置換あるいは無置換ベンゼン環を含有する基が好適に用いられる。これらの基を導入することで、アルコキシシリル基の運動性を適度に向上できると共に、ポリマーへの構成単位(A)の導入を容易なものとできる。
【0016】
は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルキレン基よりそれぞれ独立に選ばれる基であるが、Rは炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。炭素数をこの範囲とすることで、無機微粒子との反応を促進し、より分散性を向上できる。さらに好ましくは、炭素数1〜3である。
【0017】
はエチレン性不飽和基を有する置換基であれば特に限定されないが、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基などが好ましい。これらの基を有することで、露光時の架橋を適度に進行させることができる。特に好ましいのは、(メタ)アクリル基である。
【0018】
構成単位(A)をポリマー中に導入する方法としては、側鎖に水酸基、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有するアクリル樹脂、ビニル樹脂等のポリマーを用い、当該ポリマーの水酸基、フェノール性水酸基またはカルボキシル基に対して、エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤を縮合させる方法が好ましく用いられる。エチレン性不飽和基を有するシランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0019】
構成単位(A)の含有量としては、ポリマー中10〜20重量%が好ましい。さらに好ましくは、12〜18重量%である。含有量をこの範囲とすることで、透過率向上と硬化性向上効果を維持しながら、現像性を十分なものとできる。
【0020】
さらに、本発明のポリマーは、一般式(2)で表される構成単位(B)を有する。構成単位(B)はアルカリ可溶性基を含有するため、感光性ペーストに適用した際、アルカリ現像が可能となる。さらに、同じポリマー分子中に構成単位(A)と(B)を有するため、露光部では構成単位(A)により強度および現像液耐性を向上し、未露光部では構成単位(B)によりアルカリ可溶性が付与されているため、現像液溶解性のコントラストが大きいものとなる。
【0021】
構成単位(B)中、Rは2価の有機機であれば特に限定されないが、エステル基、エーテル基、置換あるいは無置換ベンゼン環を含有する基が好適に用いられる。これらの基を導入することで、アルカリ可溶性基の運動性を適度に向上できると共に、ポリマーへの構成単位(A)の導入を容易なものとできる。Rはアルカリ可溶性基であるが、例えば水酸基、フェノール性水酸基、スルホニル基、カルボキシル基などが好適に用いられる。
【0022】
構成単位(B)をポリマーに導入する方法を具体的に挙げると、硬化性モノマーとして不飽和カルボン酸等の不飽和酸を重合させて合成できる。不飽和酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニル、またはこれらの酸無水物が挙げられる。これらを付加した後のポリマーの酸価は30〜150の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは50〜100である。
【0023】
本発明のポリマーは、さらに一般式(3)で表される構成単位(C)を有することが好ましい。構成単位(C)を有することで、さらに露光部の架橋密度を向上し、現像時、焼成時の欠陥を抑制できる。
【0024】
【化5】

【0025】
(Rは2価の有機基を示す。R10は水素あるいはメチル基からそれぞれ独立に選ばれる。)
エチレン性不飽和基を有する基(R)としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。このような官能基をポリマーに付加させるには、側鎖にメルカプト基、アミノ基、水酸基またはカルボキシル基を有するアクリル樹脂、ビニル樹脂等のポリマーを用い、当該ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基に対して、グリシジル基および炭素−炭素二重結合を有する化合物や、イソシアネート基と炭素−炭素二重結合を有する化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させてつくる方法がある。
【0026】
グリシジル基と炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネートなどが挙げられる。イソシアネート基と炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アクリロイルエチルイソシアネート、メタクリロイルエチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0027】
構成単位(C)の含有量としては、ポリマー中、30〜50重量%であることが好ましい。構成単位(C)の含有量をこの範囲とすることで、露光部の架橋密度を適正な範囲とすることができる。
【0028】
本発明のポリマーは、構成単位(A)〜(C)以外の基を含有しても良い。そのような基の導入方法としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロへキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレートなどのアクリル系モノマー、及びこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたものなどを共重合することができる。アクリル系モノマー以外の共重合成分としては、炭素−炭素二重結合を有する化合物が使用可能であるが、好ましくはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどのスチレン類や、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0029】
本発明のポリマーは、上述のように感光性ペーストに好適に用いられるが、本発明の感光性ペーストは上述のポリマーと、金属粒子または/あるいは金属酸化物粒子などと混合して用いることがさらに好ましい。本発明のポリマー中の構成単位(A)部分が金属粒子または/あるいは金属酸化物粒子の表面と作用して分散性を大幅に向上できるためである。
【0030】
本発明の感光性ペーストに用いられる金属粒子としては、Au、Ni、Ag、Pd、Ptなどの導電性粉末の金属粒子を好ましく用いることができ、Au、Ag、Pd、Ptの貴金属導電性粒子が好ましく、特に有用であるのはAgを用いた場合である。
各金属はそれぞれ単独にまたは混合粉末として用いることができる。例えば、Ag(30〜80)−Pd(70〜20)、Ag(40〜70)−Pd(60〜10)−Pt(5〜20)、Ag(30〜80)−Pd(60〜10)−Cr(5〜15)、Pt(20〜40)−Au(60〜40)−Pd(20)、Au(75〜80)−Pt(25〜20)、Au(60〜80)−Pd(40〜20)、Ag(40〜95)−Pt(60〜5)、Pt(60〜90)−Rh(40〜10)(以上( )内は重量%を表す)などの2元系、3元系の混合金属粒子が用いられる。また、上記の組み合わせにCrやRhを添加したものは高温特性を向上できる点で好ましい。
【0031】
本発明の感光性ペーストに用いられる金属酸化物としては、シリカ、アルミナ、ジルコニアなどのセラミック粉末やガラス粉末が挙げられるが、特に低軟化点ガラス粉末を含有することが好ましい。低軟化点ガラス粉末を含有することにより、低軟化点ガラス粉末の軟化温度以上の温度で焼成し、後述の感光性有機成分等の有機成分を除去し、無機成分からなるパターンを得ることができる。本発明において低軟化点ガラス粉末とは、示差熱(DTA)曲線での第3変曲点を軟化温度(Ts)と定義したとき、Tsが400〜700℃の範囲であるガラス粉末を指す。Tsがこの範囲にあることで焼結時にパターンの変形がなく、溶融性も適切となるためである。より好ましいTsの範囲は500〜650℃である。また、低軟化点ガラス粉末の無機成分に占める割合は60体積%〜85体積%が好ましい。含有割合が60体積%より小さくなると、焼成時の焼結が困難になり、焼成後のパターンの空隙率が大きくなるため好ましくない。85体積%より大きくなると、焼成時の無機成分全体の流動性が大きくなってしまうため焼成後のパターン形状の制御が困難になる、焼成後のパターンの機械的強度が小さく衝撃によってパターンが欠ける、などの問題が発生する場合があるため好ましくない。
【0032】
低軟化点ガラス粉末の屈折率は1.50〜1.65であることが好ましい。このような低軟化点ガラス粉末を用いることによって無機成分と有機成分の屈折率を整合させ、光散乱を抑制することにより高精度のパターン加工が容易になる。また、低軟化点ガラス粉末の粒子径は、作製しようとするパターンの形状を考慮して選ばれるが、重量分布曲線における50%粒子径(平均粒子径)が0.1〜3.0μm、最大粒子経(トップサイズ)が10μm以下であることが好ましい。好ましく使用できる低軟化点ガラス粉末は、例えば酸化リチウム7質量%、酸化ケイ素22質量%、酸化ホウ素33質量%、酸化亜鉛3質量%、酸化アルミニウム19質量%、酸化マグネシウム6質量%、酸化バリウム5質量%、酸化カルシウム5質量%の組成を有するものであるが、これに限定されない。
【0033】
本発明の感光性ペーストに含まれる無機成分としては、上記の低軟化点ガラス粉末以外にフィラー成分を含有することが好ましい。本発明におけるフィラー成分とは、パターンの強度や焼成収縮率を改善するために添加されるものであり、焼成温度でも溶融流動しにくい無機微粒子を指す。フィラー成分を添加することで、パターンの焼成による収縮を抑制したり、パターンの強度を向上させることができる。フィラー成分としては感光性ペースト中への分散性や充填性、露光時の光散乱の抑制を考慮し、平均粒子径1〜4μm、平均屈折率1.4〜1.7であるものを好ましく使用することができる。本発明では、このようなフィラー成分として、ガラス転移温度が500℃以上である高軟化点ガラス粉末や、コーディエライト、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニアなどのセラミックス粉末から選ばれた少なくとも1種を用いることができるが、平均粒子径や平均屈折率の調節のしやすさの点から高軟化点ガラス粉末の使用が好ましい。
【0034】
フィラー成分として高軟化点ガラス粉末を用いる場合は、Tsが700〜1300℃を有するものを、全無機微粒子に対して3〜40質量%の組成範囲で添加することが好ましい。3質量%より少ない場合は焼成時にパターンのエッジが崩れやすくなり、良好な形状のパターンが得られない場合がある。また40質量%より多い場合は形成するパターンの緻密性が低下しやすくなるので好ましくない。好ましく使用できる高軟化点ガラス粉末は例えば酸化ナトリウム1質量%、酸化ケイ素40質量%、酸化ホウ素10質量%、酸化アルミニウム33質量%、酸化亜鉛4質量%、酸化カルシウム9質量%、酸化チタン3質量%の組成を有するものであるが、これに限定されない。
【0035】
本発明において、上記無機成分は感光性ペーストの固形分中に40体積%〜65体積%、より好ましくは40体積%〜55体積%の含有率で含まれていることが望ましい。ここで、固形分とはペースト中に含まれる無機成分および溶媒を除く有機成分を意味する。無機成分の含有率が40体積%より小さくなると焼成によるパターンの収縮が大きくなり、形状が不良となりやすいので好ましくない。また、65体積%より大きくなると露光による架橋反応が不十分となり、パターン形成が難しくなるので好ましくない。
【0036】
固形分中の無機成分の含有割合(体積%)は、ペースト調製時に無機成分および有機成分の比重を考慮して、添加量(質量%)で制御できる。また、無機成分の含有割合を分析する方法としては、熱重量測定(TGA)と無機成分の焼成膜の比重測定により求める方法や、感光性ペーストを塗布、乾燥して得られるペースト乾燥膜の透過型電子顕微鏡観察像の画像解析により求める方法が挙げられる。熱重量測定と無機成分の焼成膜の比重測定により求める場合、例えば、感光性ペースト10mg程度をサンプルとして、室温〜600℃の重量変化をTGA(例えば、株式会社島津製作所製「TGA−50」)により評価する。通常、100〜150℃でペースト中の溶媒が蒸発するので、溶媒蒸発後の重量に対する600℃昇温後の重量の割合から、無機成分と有機成分の質量比を求める。一方、焼成膜の膜厚、面積と質量を基に無機成分の比重を評価すれば含有割合を評価できる。また、透過型電子顕微鏡観察により含有割合を求める場合は、ペースト乾燥膜の膜面に垂直な断面を、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製「JEM−4000EX」)により観察し、像の濃淡により無機成分と有機成分を区別し、画像解析を行えばよい。透過型電子顕微鏡の評価エリアとしては、例えば、20μm×100μm程度の面積を対象とし、1000〜3000倍程度で観察すればよい。
【0037】
本発明の感光性ペーストは、他に反応性モノマーを含有することが好ましい。反応性モノマーを含有することで、露光部の架橋をより強固なものとできる。なお、本発明の感光性ペーストに用いる反応性モノマーは、炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物であり、その具体的な例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、また、これらの芳香環の水素原子のうち、1〜5個を塩素または臭素原子に置換したモノマー、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボシキメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、および、上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに置換したもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。また、多官能モノマーにおいて、不飽和結合を有する基はアクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基が混在していてもよい。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0038】
反応性モノマーの含有量は、ポリマー100重量部に対し、20〜60重量部であることが好ましい。含有量をこの範囲とすることで、架橋度を適正な範囲とし、現像耐性と焼成欠陥抑制を両立できる。さらに好ましくは、30〜50重量部である。
【0039】
本発明で用いられる感光性ペーストは、さらにウレタン化合物を含有することが好ましい。ウレタン化合物を含有することにより、ペースト乾燥膜の柔軟性が向上し、焼成時の応力を小さくでき、亀裂や断線などの欠陥を効果的に抑制できるためである。また、ウレタン化合物を含有することにより、熱分解性が向上し、焼成工程において焼成残渣が発生しにくくなる。本発明で好ましく使用するウレタン化合物として、例えば、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0040】
【化6】

【0041】
ここで、R11およびR15はエチレン性不飽和基を含む置換基、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、アラルキル基およびヒドロキシアラルキル基からなる群から選ばれたものであり、それぞれ同じであっても異なっていても良い。R13はアルキレンオキサイド基またはアルキレンオキサイドオリゴマ、R12およびR14はウレタン結合を含む有機基である。nは1〜10の整数である。
【0042】
このようなウレタン化合物としては、エチレンオキサイド単位を含む化合物が好ましい。より好ましくは、一般式(4)中、R13がエチレンオキサイド単位(以下、EOと示す)とプロピレンオキサイド単位を含むオリゴマであり、かつ、該オリゴマ中のEO含有量が8〜70質量%の範囲内である化合物である。EO含有量が70質量%以下であることにより、柔軟性がさらに向上し、焼成応力を小さくできるため、欠陥を効果的に抑制できる。さらに、熱分解性が向上し、後の焼成工程において、焼成残渣が発生しにくくなる。また、EO含有量が8%以上であることにより、他の有機成分との相溶性が向上する。
【0043】
また、ウレタン化合物が炭素−炭素二重結合を有することも好ましい。ウレタン化合物の炭素−炭素二重結合が他の架橋剤の炭素−炭素二重結合と反応して架橋体の中に含有されることにより、さらに重合収縮を抑制することができる。
【0044】
本発明で好ましく用いられるウレタン化合物の具体例としては、UA−2235PE(分子量18000、EO含有率20%)、UA−3238PE(分子量19000、EO含有率10%)、UA−3348PE(分子量22000,EO含有率15%)、UA−5348PE(分子量39000、EO含有率23%)(以上、新中村化学(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は混合して用いてもよい。
【0045】
ウレタン化合物の含有量は、溶媒を除く有機成分の0.1〜10質量%であることが好ましい。含有量を0.1質量%以上とすることで、ペースト乾燥膜の柔性を向上することができ、ペースト乾燥膜を焼成する際の焼成収縮応力を緩和することができる。含有量が10質量%を超えると、有機成分と無機成分の分散性が低下し、また相対的にモノマーおよび光重合開始剤の濃度が低下するので、欠陥が生じやすくなる。
【0046】
本発明の感光性ペーストは、光重合開始剤を含有する。
【0047】
光重合開始剤は活性光源の照射によってラジカルを発生する光ラジカル開始剤を好ましく用いることができ、その具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホルフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組合せなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、硬化性モノマーとポリマーの合計量に対し、0.05〜20質量%、より好ましくは、0.1〜15質量%の範囲で添加される。重合開始剤の量が少なすぎると、光感度が不良となるおそれがあり、光重合開始剤の量が多すぎれば、露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0048】
本発明の感光性ペーストには酸化防止剤が好ましく添加される。酸化防止剤とは、ラジカル連鎖禁止作用、三重項の消去作用およびハイドロパーオキサイドの分解作用のうち1つ以上を持つものである。感光性ペーストに酸化防止剤を添加すると、酸化防止剤がラジカルを捕獲したり、励起された光重合開始剤のエネルギー状態を基底状態に戻したりすることにより散乱光による余分な光反応が抑制され、酸化防止剤で抑制できなくなる露光量で急激に光反応が起こることにより、現像液への溶解、不溶のコントラストを高くすることができる。具体的にはp−ベンゾキノン、ナフトキノン、p−キシロキノン、p−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、ヒドラジン塩酸塩、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、フェニル−β−ナフチルアミン、パラベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、ピクリン酸、キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピロガロール、タンニン酸、トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、クペロン、2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)−2−エチルへキシルアミノニッケル−(II)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,2,3−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられるがこれらに限定されない。本発明ではこれらを1種以上使用することができる。酸化防止剤の添加量は、感光性ペースト中に好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%の範囲である。酸化防止剤の添加量をこの範囲内とすることにより、感光性ペーストの光感度を維持し、また重合度を保ちパターン形状を維持しつつ、露光部と非露光部のコントラストを大きくとることができる。
【0049】
感光性ペーストを基板に塗布する時の粘度を塗布方法に応じて調整するために有機溶媒がを用いることが好ましい。このとき使用される有機溶媒としてはメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などや、これらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混物が用いられる。
【0050】
本発明の感光性ペーストは、上述のポリマー、および必要に応じて反応性モノマーを含む感光性有機成分、上述の金属粒子および/または金属酸化物粒子、感光性有機成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、分散剤、および溶媒などの各成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラーなどの混練機器を用いて本混練を行って、均質分散し、感光性ペーストを作製する。また、本混練を終えた感光性ペーストを適宜、濾過、脱泡しておくことも好ましい。
【0051】
本発明はかくして得られた本発明の感光性ペーストを乾燥後の膜厚みが150μm以上となるよう塗布した後、少なくとも露光、現像、焼成してなるパターンの形成方法に関する。本発明のパターン形成方法を用いることによって、高精細かつ高アスペクト比のパターンを精度良く形成することができる。本発明の感光性ペーストは、上述の通り露光光の散乱が少なく感度が高いため乾燥後の厚みが150μm以上の場合であっても1回の露光でパターン化が可能である。
【0052】
以下にプラズマディスプレイパネル用部材の作製手順を述べる。ここでは、プラズマディスプレイとして最も一般的な交流(AC)型プラズマディスプレイを例に取りその基本的構造などについて説明するが、必ずしもこれに限定されない。
【0053】
プラズマディスプレイは、前面板もしくは背面板またはその両方に形成された蛍光体層が内部空間内に面しているように、該前面板と該背面板を封着してなる部材において、前記内部空間内に放電ガスが封入されてなるものである。前面板には、表示面側の基板上に表示用放電のための透明電極(サスティン電極、スキャン電極)が形成されている。放電のため、前記サスティン電極と前記スキャン電極の間隙は比較的狭い方がよい。より低抵抗な電極を形成する目的で透明電極の背面側にバス電極を形成してもよい。但し、バス電極は材質がAg、Cr/Cu/Cr等で構成されていて、不透明であることが多い。従って、前記透明電極とは異なり、セルの表示の邪魔となるので、表示面の外縁部に設けることが好ましい。AC型プラズマディスプレイの場合、電極の上層に透明誘電体層およびその保護膜としてMgO薄膜が形成される場合が多い。背面板には、表示させるセルをアドレス選択するための電極(アドレス電極)が形成されている。セルを仕切るための隔壁や蛍光体層は前面板、背面板のどちらかまたは両方に形成してもよいが、背面板のみに形成される場合が多い。プラズマディスプレイは、前記前面板と前記背面板は封着され、両者の間の内部空間には、Xe−Ne、Xe−Ne−He等の放電ガスが封入されている。
【0054】
プラズマディスプレイ用部材である背面板の作製方法を説明する。ガラス基板は、ソーダガラスやプラズマディスプレイ用の耐熱ガラスである“PP8”(日本電気硝子社製)、“PD200”(旭硝子社製)を用いることができる。ガラス基板のサイズは特に限定はなく、厚みは1〜5mmのものを用いることができる。
【0055】
ガラス基板上に銀やアルミニウム、クロム、ニッケルなどの金属により、アドレス電極用のストライプ状の導電パターンを形成する。形成方法としては、これらの金属の粉末と有機バインダーを主成分とする金属ペーストをスクリーン印刷でパターン印刷する方法や、有機バインダーとして感光性有機成分を用いた感光性金属ペーストを塗布した後に、フォトマスクを用いてパターン露光し、不要な部分を現像工程で溶解除去し、さらに通常350〜600℃に加熱・焼成して電極パターンを形成する感光性ペースト法を用いることができる。また、ガラス基板上にクロムやアルミニウムを蒸着した後に、レジストを塗布し、レジストをパターン露光・現像した後にエッチングにより不要な部分を取り除く、エッチング法を用いることができる。さらに、アドレス電極上に誘電体層を設けることが好ましい。誘電体層を設けることによって、放電の安定性向上や、誘電体層の上層に形成する隔壁の倒れや剥がれを抑止することができる。また、誘電体層を形成する方法としては、ガラス粉末や高軟化点ガラス粉末などの無機成分と有機バインダーを主成分とする誘電体ペーストをスクリーン印刷、スリットダイコーター等で全面印刷または塗布する方法などがある。
【0056】
次に、フォトリソグラフィ法による隔壁の形成方法について説明する。隔壁パターンは特に限定されないが、格子状、ワッフル状などが好ましい。まず、誘電体を形成した基板上に本発明の感光性ペーストからなる隔壁ペーストを塗布する。塗布方法は、バーコーター、ロールコーター、スリットダイコーター、ブレードコーター、スクリーン印刷等の方法を用いることができる。塗布厚みは、所望の隔壁の高さとペーストの焼成による収縮率を考慮して決めることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、ペーストの粘度等によって調整できる。本発明においては、乾燥後の塗布厚みは150μm以上となるように塗布することが好ましい。150μm以上とすることで、十分な放電空間が得られ、蛍光体の塗布範囲を広げてプラズマディスプレイの輝度を向上することができる。
【0057】
塗布した隔壁ペーストは乾燥後、露光を行う。露光は通常のフォトリソグラフィで行われるように、フォトマスクを介して露光する方法が一般的である。また、フォトマスクを用いずに、レーザー光などで直接描画する方法を用いてもよい。露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機などを用いることができる。この際使用される活性光源は、例えば、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも、超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みにより異なるが、通常、1〜100mW/cmの出力の超高圧水銀灯を用いて0.01〜30分間露光を行う。
【0058】
露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度の差を利用して現像を行うが、通常、浸漬法やスプレー法、ブラシ法等で行う。現像液としては感光性ペースト中の有機成分が溶解可能である有機溶媒を用いることができるが、感光性ペースト中にカルボキシル基などの酸性基を持つ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムや、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム水溶液等を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。
【0059】
有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的にはテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。
【0060】
アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が除去されにくく、アルカリ濃度が高すぎればパターンを剥離や腐食させるおそれがあり好ましくない。また、現像時の現像温度は20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0061】
また、隔壁は2層以上で構成されていても良い。2層以上の構造体とすることで、隔壁形状の構成範囲を3次元的に拡大することができる。例えば、2層構造の場合、1層目を塗布し、ストライプ状に露光した後、2層目を塗布し、1層目とは垂直方向のストライプ状に露光し、現像を行うことで段違い状の井桁構造を有する隔壁の形成が可能である。次に、焼成炉にて520〜620℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行い、隔壁を形成する。
【0062】
本発明の感光性ペーストは上述の隔壁の形成に好適であり、本発明の感光性ガラスペーストは高感度で露光マージンが広いため、高精細な隔壁を精度良く形成することができる。
【0063】
次に、蛍光体ペーストを用いて蛍光体を形成する。感光性蛍光体ペーストを用いたフォトリソグラフィ法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法等によって形成できる。蛍光体の厚みは特に限定されるものではないが、10〜30μm、より好ましくは15〜25μmである。蛍光体粉末は特に限定されないが、発光強度、色度、色バランス、寿命などの観点から、以下の蛍光体が好適である。青色は2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体(例えば、BaMgAl1017:Eu)やCaMgSiである。緑色では、パネル輝度の点からZnSiO:Mn、YBO:Tb、BaMgAl1424:Eu,Mn、BaAl1219:Mn、BaMgAl1423:Mnが好適である。さらに好ましくはZnSiO:Mnである。赤色では、同様に(Y、Gd)BO:Eu、Y:Eu、YPVO:Eu、YVO:Euが好ましい。さらに好ましくは(Y、Gd)BO:Euである。焼成する工程を経て蛍光体を形成する場合、上述の誘電体層や隔壁の焼成と同時に行っても良い。
【実施例】
【0064】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
ポリマー合成および感光性ペーストに用いた原料は次の通りである。
・ベースポリマーB−I:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=30/30/40重量部からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.8当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000、酸価100)
・ベースポリマーB−II:メタクリル酸/アクリル酸イソブチル=15/85からなる共重合体(重量平均分子量38000、酸価110)
・シランカップリング剤S−I:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製“Z6030”、分子量232.4)
・シランカップリング剤S−II:γ−メタクリロキシプロピルトリフェノキシシラン(分子量294.2)
・シランカップリング剤S−III:n-ヘキシルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製“Z6582”、分子量206.4)
・金属酸化物粒子MO−I:低軟化点ガラス粉末(酸化リチウム7質量%、酸化ケイ素22質量%、酸化ホウ素33質量%、酸化亜鉛3質量%、酸化アルミニウム19質量%、酸化マグネシウム6質量%、酸化バリウム5質量%、酸化カルシウム5質量%からなり、Ts:595℃、d50:2μm、dmax:10μm)
・金属酸化物粒子MO−II:高軟化点ガラス粉末(酸化ナトリウム1質量%、酸化ケイ素40質量%、酸化ホウ素10質量%、酸化アルミニウム33質量%、酸化亜鉛4質量%、酸化カルシウム9質量%、酸化チタン3質量%からなり、Ts:761℃、d50:2μm、dmax:10μm)
・反応性モノマーM−I:トリメチロールプロパントリアクリレート
・反応性モノマーM−II:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
・光重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(チバスペシャリティーケミカルズ社製IC369)
・紫外線吸収剤:スダンIV(東京応化工業株式会社製)
・溶媒:γ−ブチロラクトン
A.ポリマーの作製
ベースポリマーに対して、シランカップリング剤を表1記載の量秤量した後、80℃で1時間反応させ、ポリマーを得た。
【0065】
【表1】

【0066】
B.感光性ペーストの作製
得られたポリマー、金属酸化物I、金属酸化物II、感光性モノマーI、紫外線吸収剤、光重合開始剤、酸化防止剤、溶媒を表1記載の量秤量した後、3本ローラー混練機にて混練し、感光性ペーストとした。
【0067】
【表2】

【0068】
C.感光性ペースト塗布膜の全光線透過率(T、T)の測定
ガラス基板上に乾燥後の厚みが150μmになるように感光性ペーストを塗布、乾燥し、分光光度計(株式会社日立製作所製「U−3410」)を用いて全光線透過率の測定を行った。途中の乾燥は100℃で90分行った。測定は、塗膜を形成していないガラス基板の全光線透過率を100%として、波長465nmにおける全光線透過率を読み取り、全光線透過率が60%以上ではA、40〜60%ではB、40%以下だとCとした。
D.ディスプレイ用部材の製造
プラズマディスプレイ背面板は以下の手順にて作製した。旭硝子株式会社製“PD−200”ガラス基板(42インチ)上に、感光性銀ペーストを用いたフォトリソグラフィ法によりアドレス電極パターンを形成した。次いで、アドレス電極が形成されたガラス基板上に誘電体層をスクリーン印刷法により20μmの厚みで形成した。しかる後、感光性ペーストをダイコータ塗布法によりアドレス電極パターンおよび誘電体層が形成された背面板ガラス基板上に乾燥後の厚みが150μmとなるように均一に塗布し、100℃で60分乾燥させて感光性ペースト塗布膜を得た。引き続き、ピッチ160μm、線幅25μm、プラズマディスプレイにおけるストライプ状の隔壁パターン形成が可能になるように設計したクロムマスクを用いて、上面から50mW/cm出力の超高圧水銀灯で紫外線露光した。
【0069】
次に、35℃に保持した炭酸ナトリウムの0.5質量%水溶液をシャワーで150秒間かけることにより現像し、シャワースプレーを用いて水洗浄して光硬化していないスペース部分を除去した。さらに、560℃で30分保持して焼成することにより隔壁を形成した。次に蛍光体層をディスペンサー法にて厚さ20μmに形成し、焼成して背面板を得た。背面板パターン加工性の評価は、隔壁パターンの現像後に底部幅が30μm、35μm、40μmの箇所で現像後ハガレや蛇行、断線が0〜3箇所であれば現像後評価をA、4〜10箇所であればB、11箇所以上であればCとした。さらに、590℃、15分焼成後に、焼成により生じた亀裂や断線が0〜3箇所であれば焼成後評価をA、4〜10箇所であればB、11箇所以上であればCとした。評価結果を表2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションディスプレイ、および蛍光表示管等などの平面ディスプレイに好適なポリマーおよび感光性ペーストとして有用に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される構成単位(A)と一般式(2)で表される構成単位(B)の両方を有することを特徴とするポリマー。
【化1】

【化2】

(式中、R、Rはそれぞれ2価の有機基、R、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルキレン基よりそれぞれ独立に選ばれる基、Rはエチレン性不飽和基を有する置換基、Rはアルカリ可溶性基を示す。R、Rは水素あるいはメチル基からそれぞれ独立に選ばれる。mは0または1である。)
【請求項2】
さらに、一般式(3)で表される構成単位(C)を有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー。
【化3】

(Rは2価の有機基を示す。R10は水素あるいはメチル基からそれぞれ独立に選ばれる。)
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリマーと、金属粒子および/または金属酸化物粒子と、光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性ペースト。
【請求項4】
さらに請求項1または2に記載のポリマー100重量部に対し、30〜50重量部の反応性モノマーを含有することを特徴とする請求項3に記載の感光性ペースト。

【公開番号】特開2012−51961(P2012−51961A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193195(P2010−193195)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】