説明

ポリマーを含む固化した熱可塑性組成物から、超吸収性ポリマー粒子を分離する方法

少なくとも30重量%の熱可塑性ポリマーを含む固化した熱可塑性組成物によって以前に固定された超吸収性ポリマー粒子を、再流動化する方法。超吸収性ポリマー粒子は、二酸化炭素、プロパン、又はこれらの混合物を含む超臨界流体の使用により、固化した熱可塑性組成物から分離される。分離は、1以上の共溶媒の使用により、更に改善され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも30重量%の熱可塑性ポリマーを含む固化した熱可塑性組成物によって以前に固定された、超吸収性ポリマー粒子を再流動化する方法に関する。超吸収性ポリマーは、二酸化炭素、プロパン、又はこれらの混合物を含む超臨界流体の使用により、固化した熱可塑性組成物から分離される。分離は、共溶媒の使用により更に改善され得る。
【背景技術】
【0002】
おむつ及び生理用ナプキンなどの使い捨て吸収性物品の製造において、欠陥のある又は不完全な物品を検出し、これらを生産プロセスから廃棄することは、よくあることである。これらの廃棄製品は販売には適さないが、捨てるにはあまりにも値打ちのある材料を含んでいることがある。それどころか、ある材料を欠陥製品から回収することが望ましいことがある。特に、使い捨て吸収性物品に典型的に含まれる超吸収性ポリマー粒子を回収することが望ましい。
【0003】
現在では、多くの使い捨ておむつは、セルロース繊維などのパルプ繊維(いわゆる「エアーフェルト」)と混ぜ合わされた超吸収性ポリマー粒子を含む吸収性コアを使用している。これらのおむつでは、超吸収性ポリマー粒子は、主として周囲のパルプ繊維により定位置に保持されている。それ故、超吸収性ポリマー(SAP)粒子は、物品を裁断し、例えば、振動によりSAP粒子を振り分け、粒子を周囲のパルプ繊維から解放することにより、回収され得る。
【0004】
しかし、吸収性コアがエアーフェルトを含まない、又は吸収性コアがエアーフェルトを少量しか含まない吸収性物品に移行するに際しては、SAP粒子はもはや周囲のパルプ繊維により定位置に保持されないので、これらは異なる方法により固定されなければならない。SAP粒子を吸収性コア内に固定する1つの方法は、接着剤の使用である。これら接着剤は、SAP粒子の量に比較して少量使用されるとはいえ、SAP粒子にしっかり接着する。SAP粒子を相互に付着させることとは別に、接着剤はSAP粒子を不織布ウェブなどの支持基材にも接着する。その結果、リサイクルするために粒子をたやすく振り分けることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故、SAP粒子を取り戻すために、SAP粒子を接着剤から分離する方法があることが望ましい。その結果、粒子は使い捨て吸収性物品の製造に再使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固化した熱可塑性組成物の重量に基づき少なくとも30重量%の熱可塑性ポリマーを含む固化した熱可塑性組成物から、超吸収性ポリマー粒子を分離する方法に関する。この方法は、
a)少なくとも超吸収性ポリマー粒子の一部が少なくとも固化した熱可塑性組成物の一部に接着している、超吸収性ポリマー粒子と固化した熱可塑性組成物との凝集体を用意する工程、
b)凝集体を二酸化炭素、プロパン、又はこれらの混合物を含む超臨界流体にさらす工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、並びに利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付図面を考慮することで、よりよく理解されるようになるであろう。
【図1】本発明の方法により製造される繊維構造を有するおむつの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
「吸収性物品」とは、身体からの排出物を吸収及び保持する装置のことを指し、より具体的には、着用者の身体に接して、又は近接して配置されることにより身体から排出される様々な排出物を吸収及び保持する装置のことを指す。吸収性物品は、おむつ、パンツ、トレーニングパンツ、大人用失禁物品、下着、生理用ナプキンなどを包含することがある。本明細書で使用する「体液」又は「身体排出物」という用語には、これらに限定されるものではないが、尿、血液、膣排泄物、母乳、汗及び糞便が含まれる。本発明の好ましい吸収性物品は、おむつ、パンツ、トレーニングパンツ、及び/又は生理用ナプキンである。
【0009】
「吸収性コア」は、吸収性物品に受け取られる液体を吸収しかつ収容するために、典型的には吸収性物品のトップシートとバックシートの間に配置される構造を意味する。吸収性コアは、典型的には、エアーフェルト(セルロース繊維を含む)、SAP粒子、及びたぶん不織布ウェブなどの、吸収性材料を含む。1つの実施形態においては、吸収性コアは10%未満のセルロース繊維を含むか、セルローを実質的に含まない(すなわち、1%未満のセルロース)ことさえあり、かつ1以上の基材、1以上の基材上に配置されたSAP粒子、及び固化した熱可塑性組成物を含むことがある。固化した熱可塑性組成物は、吸収性粒子状ポリマー材料を1以上の基材上に固定するために、SAP粒子及び少なくとも1以上の基剤の一部に適用される。1以上の基材は、不織布ウェブを含むか、又はそれからなることがある。不織布ウェブは、少なくとも部分的にSAP粒子及び固化した熱可塑性組成物を囲み、それゆえこれらの不織布はしばしばコアラップ又はコアカバーと呼ばれる。コアラップ又はコアカバーは、吸収性のある物品の身体面の表面に面する上側層、及び吸収性のある物品の衣類面側に面する下側層からなることがある。これら2つの層は、その外周に沿って互いに連続的又は断続的に結合させることができる。上側層と下側層とは同じ不織布ウェブで製造されてもよく、異なる不織布ウェブで製造されてもよい。すなわち、上側層を流体透過性とする一方で下側層を流体不透過性とすることができる。コアラップ/コアカバーはまた、SAP粒子及び固化した熱可塑性組成物を包む単一の不織布ウェブからなっていてもよい。多層の吸収性コアでは、SAP粒子を少なくとも部分的に分離及び分割するために、基材(例えば、不織布ウェブ)の1以上の層が、吸収性コア内に追加的に設けられてもよい。
【0010】
本発明においては、吸収性コアは、典型的には、吸収性材料(つまりどの基材層も除外する)の重量基準に基づく80%を超える、より好ましくは、90%を超えるSAP粒子を含む。吸収性コアはエアーフェルトを含まないことさえもある。吸収性コアの吸収性材料はまた、SAP粒子のみからなることもある。
【0011】
1つの実施形態においては、吸収性コアはSAP粒子に加え臭気制御化合物を含む。臭気制御化合物は、臭気制御粒子の形態で提供され得る。臭気制御粒子は吸収性コア全体に均一に分布されていてもよく、または別の方法として、明確な領域のみに提供されてもよく、一方他の領域は臭気制御粒子を含まない。例えば、臭気制御粒子は、吸収性コア内に、1以上の明確な層の形で提供されてもよい。臭気制御粒子は、SAP粒子の粒子サイズと同等の粒子サイズを有してもよい。1つの実施形態においては、臭気制御化合物、例えば、臭気制御粒子は、テトラアセチルエチレンジアミン及び過炭酸塩を含む。過炭酸塩及びテトラアセチルエチレンジアミンを含む臭気制御粒子には、吸収性コア当たり200mg〜400mg、好ましくは250mg〜350mgの量が含まれていてもよい。典型的には、吸収性コア中のSAP粒子の重量は臭気制御化合物重量の30倍〜50倍、好ましくは吸収性コア中のSAP粒子の重量は臭気制御化合物重量の35倍〜45倍である。
【0012】
本発明に関しては、固化した熱可塑性組成物は吸収性を有しないので、固化した熱可塑性組成物は、存在する場合には臭気制御化合物と同様に、吸収性材料に包含されるとは考えられないと、理解される。更に、本発明に関しては、吸収性コアは吸収性物品のトップシート、バックシート、及び(存在する場合には)捕捉システムを含まない。
【0013】
本明細書において使用するとき、「超吸収性ポリマー粒子」は、遠心分離保持容量試験(Edana 441.2−01)を使用する測定で、0.9%食塩水溶液をその重量の少なくとも5倍吸収可能な架橋されたポリマー材料を指す。SAP粒子は、乾燥状態で流動するように粒子状形態である。本発明の好ましいSAP粒子は、ポリ(メタ)アクリル酸ポリマーから作られる。しかし、例えば、デンプン系SAP粒子またも本発明の範囲内に含まれる。
【0014】
本明細書において使用するとき、「汚染したSAP粒子」は本発明の固化した熱可塑性組成物が接着したSAP粒子を指す。
【0015】
「エアーフェルト」は、本明細書では、セルロース繊維の1つの形態である粉砕木材パルプを指すのに使用される。
【0016】
「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、及び「備える(comprises)」は非限定的な用語であり、それぞれの語の後に記載されるもの(例えば構成要素)の存在を特定するものであるが、他の特徴(例えば,要素、工程、当該技術分野において既知であるか、又は本明細書に開示される構成要素)の存在を除外するものではない。
【0017】
本明細書において「基本的に〜からなる」とは、例えば特許請求の範囲におけるような発明の主題の範囲を、特定の要素又は工程、及び発明の主題の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定するために使用される。
【0018】
「使い捨て」は、通常の意味では、様々な期間にわたって限定された使用回数、例えば、約20回未満、約10回未満、約5回未満、若しくは約2回未満の後に、処分される又は廃棄される物品を意味するのに使用される。使い捨て吸収性物品は、ほとんどの場合1回使用後廃棄される。
【0019】
「おむつ」とは、幼児及び失禁患者によって胴体下部の周囲に一般に着用されることにより、着用者の腰部及び脚部を包囲する吸収性物品のことであって、尿及び糞便を受容して閉じ込めるように特に適合した物のことを指す。本明細書において使用するとき、用語「おむつ」はまた以下に定義する「パンツ」も含む。
【0020】
「パンツ」又は「トレーニングパンツ」は、本明細書で使用するとき、幼児又は成人の着用者用に設計された腰部開口部及び脚部開口部を有する使い捨て衣類を指す。パンツは、着用者の脚を脚部開口部に挿入し、パンツを着用者の胴体下部の周囲にまでずらすことによって着用者に対して定位置に置くことができる。パンツは、再取り付け可能な及び/又は再取り付け不可能な結合(例えば、縫い目、溶接、接着剤、粘着結合、締め具など)を使用する物品の一部分の相互接合を含むが、これらに限定されない好適な任意の技術により予備成形されてもよい。パンツは、物品の周囲沿いのいずれかの箇所で(例えば、側面締結、前側腰部締結)予備成形されてもよい。用語「パンツ」又は「パンツ類」が本明細書では使用されるが、パンツはまた一般的に「密閉型おむつ」、「事前締結型おむつ」、「プルオンおむつ」、「トレーニングパンツ」、及び「おむつパンツ」とも呼ばれる。
【0021】
「不織布ウェブ」とは、摩擦及び/又は粘着及び/又は接着により結合させた、指向性のある又はランダムに配向された繊維から作られたシート、ウェブ、又はバット(batt)であり、紙、及び、さらなるニードル加工の有無を問わず、結合糸若しくはフィラメントを組み込んだ織り製品、編み製品、タフテッド製品、ステッチで結合した製品、又は湿式粉砕によるフェルト製品は含まれない。繊維は天然起源であっても人工起源であってもよく、ステープル若しくは連続フィラメントであっても、又はその場で形成されてもよい。市販の繊維は、約0.001mm未満から約0.2mmを超える範囲の直径を有し、短繊維(ステープル又はチョップドとして知られる)、連続単繊維(フィラメント又はモノフィラメント)、未撚連続フィラメント束(トウ)、及び連続フィラメントの撚糸束(ヤーン)などの、幾つかの異なる形態で提供される。不織布ウェブは、メルトブロー、スパンボンド、溶媒紡糸、電界紡糸、カード及びエアレイなどの多くのプロセスにより形成され得る。不織布ウェブの坪量は、通常、1平方メートル当たりのグラム数(gsm)で表される。
【0022】
繊維構造を含む吸収性物品
以下においては、本発明の吸収性物品の1つの例として、使い捨ておむつが説明される。しかし、パンツ、トレーニングパンツ、及び生理用ナプキンなどの他の使い捨て吸収性物品もまた本発明に包含されることが、理解される。
【0023】
図1は、本発明のある実施形態に基づいたおむつ210の平面図である。おむつ210は、その広げられた非収縮(つまり弾性による収縮がない)状態で示され、おむつ210の一部は、おむつ210の下層構造をより明瞭に示すために、切り取られている。着用者に接触するおむつ210の部分は、図1において観察者に面している。おむつ210は、一般的に、シャーシ212及びシャーシ内に配置される吸収性コア214を含み得る。
【0024】
図1のおむつ210のシャーシ212は、おむつ210の本体を構成する。シャーシ212は、液体透過性であることができるトップシート218、及び/又は液体不透過性であることができるバックシート220を含む外側カバー216を有し得る。吸収性コア214は、トップシート218とバックシート220との間に収容されてもよい。シャーシ212はまた、サイドパネル222、弾性レッグカフ224、及び弾性ウエスト機構226も含み得る。
【0025】
レッグカフ224及び弾性ウエスト機構226は、典型的には、それぞれ弾性部材228を含み得る。おむつ210の一方の末端部は、おむつ210の第1の腰部領域230として構成される。おむつ210の反対側の末端部は、おむつ210の第2腰部領域232として構成される。おむつ210の中間部は、第1のウエスト領域230と第2のウエスト領域232の間で長手方向に延びる股領域234として構成される。ウエスト領域230及び232は、着用者の腰部の周囲に寄り集まって改善されたフィット性及び密閉性をもたらすように、弾性要素を含むことができきる(弾性ウエスト機構226)。股部234は、おむつ210が着用される際に着用者の脚の間に概ね位置するおむつ210の部分である。
【0026】
おむつ210は、その長手方向軸236及び横断方向軸238と共に図1に描かれている。おむつ210の外周240はおむつ210の外縁部によって画定され、長手方向の縁部242がおむつ210の長手方向軸236にほぼ平行に延び、端縁部244がおむつ210の横方向軸238にほぼ平行に長手方向の縁部242の間に延びている。おむつ220はまた、フィット性、密閉性、美的特徴を向上させるための前方及び後方イヤーパネル、ウエストキャップ機構、伸縮材などの当技術分野では既知の他の機構を含んでもよい。このような追加機構は当該技術分野において周知であり、例えば、米国特許第3,860,003号及び米国特許第5,151,092号に記載されている。
【0027】
おむつ210を着用者の周囲の定位置に保持するため、第1のウエスト領域230の少なくとも一部を締結部材246により第2のウエスト領域232の少なくとも一部に取り付けることによって、脚部開口部及び物品の腰部を形成することができる。ある実施形態によれば、おむつ210は再閉鎖可能な締結システムを備えてもよく、あるいはパンツ型のおむつの形態で提供されてもよい。吸収性物品がおむつである場合、おむつを着用者に固定するために、シャーシに接合した再閉鎖可能な締結装置を含むことが可能である。締結システムは、少なくとも1つの締結部材246と、少なくとも1つのランディングゾーン248とを含んでもよい。吸収性物品がパンツ型おむつでは、該物品は、長手方向軸236に向いて長手方向縁部に沿ってシャーシに連結され、かつ長手方向軸236から反対方向に向いて長手方向縁部に沿って互いに連結されてパンツを形成する、少なくとも2つのサイドパネルを含んでもよい。
【0028】
図1の切断線2−2に沿って図1の断面を眺め、着用者に面した面から始めると、おむつ210は、トップシート218、吸収性コア214の要素、及びバックシート220を含み得る。おむつ210はまた、液体透過性のトップシート218と、吸収性コア214の着用者に面した面との間に配置される捕捉システム250も含む。捕捉システム250は、吸収性コアと直接接触し得る。
【0029】
捕捉システム250は、単一層を含んでもよく、又は着用者に面する上部捕捉層252及び着用者の衣類に面する下部捕捉層254などの多層を含んでもよい。ある実施形態によれば、捕捉システム250は尿の放出などの大量の液体を受容するように機能し得る。別の言い方をすれば、捕捉システム250は、吸収性コア214が液体を吸収できるようになるまでの間、液体の一時的な貯留部として機能し得る。
【0030】
ある実施形態においては、捕捉システム250は、化学的に架橋したセルロース繊維及び/又は不織布ウェブを含んでもよい。
【0031】
超臨界流体
気体は十分高い圧力に圧縮されると、液体になる。一方で、もし気体が特定の温度を超えて加熱されると、もはや圧縮により液体状態に転移できなくなる。この温度は臨界温度と呼ばれ、対応する蒸気圧は臨界圧力と呼ばれる。これらの温度及び圧力の値により臨界点が定義され、臨界点は与えられた物質に固有である。下記のダイアグラムに示されているように、温度及び圧力の両方が臨界点の値を超える場合、物質の状態は超臨界状態と呼ばれる。二酸化炭素の臨界温度及び圧力の値は、31.1℃及び7.38MPa(73.8bar)である。プロパンについては、臨界温度及び圧力の値は、38.8℃及び4.25MPa(42.5bar)である。
【0032】

【0033】
この超臨界流体(SCF)は、気体及び液体の両方の多くの性質を呈する。超臨界状態においては、溶媒能力の増加及び溶媒性質の変化は、温度及び圧力の比較的小さい変更により達成できる。好ましい拡散率、粘度、表面張力、及び他の物理特性のため、SCFは抽出溶媒として特に適している。例えば、SC二酸化炭素は、エタノール、イソプロパノール、又はn−ヘキサンなどの典型的な液体溶媒に比較して、非常に高い拡散速度とかなり高い粘度を有している。
【0034】
その低い粘度と低い表面張力は、活性成分が抽出されることになる固体物質へのSCFの浸透を可能にする。
【0035】
更に、COによるSCF抽出においては、抽出物中に溶媒が残らない。本発明においては、CO純度は少なくとも99.95%であるべきである。また、その臨界温度が周囲温度に近いので、熱に不安定な製品には申し分なく適したものとなる。その蒸発潜熱が非常に小さいことにより、抽出分離に要求されるエネルギー投入量は比較的少ない。更に、COの超臨界状態を達成するために要求されるエネルギー量は、しばしば、従来の有機溶媒の蒸留に関連するエネルギーより少ない。超臨界流体抽出プロセスに必要なCOは、例えば、発酵プロセス又は肥料工業の副生成物として得られるように、容易に入手できる。それゆえ、抽出剤としてのその使用は、大気中に存在するCOの量を更に増やすことには少しもならない。COをSCF溶媒として使用することにより、「温室効果」は追加されない。更に、COは低いコストで容易に得られる。
【0036】
本発明の方法
本発明の方法を実行するために使用されるシステムは、少なくとも1つの抽出装置、1つの沈殿装置、及び抽出装置と沈殿装置とを連結しているチューブを備える。更に、システムは、システム内の超臨界流体を一定の流速と圧力に保つ、ポンプなどの装置を備えるべきである。すべての構成要素を閉じたシステムとして結合する必要がある。SCFは抽出装置を通過し、少なくとも1つの出口(抽出装置の)を通り抽出装置を出てチューブに入り、少なくとも1つの入口(沈殿装置の)を通り沈殿装置に移行する。沈殿装置で膨張するとすぐに、膨張した気体(前のSCF)は、少なくとも1つの出口(沈殿装置の)を通り沈殿装置を出、チューブを通り抽出装置に戻る。少なくとも1つの入口(抽出装置の)を通り抽出装置に再度入る前に、気体を超臨界状態に戻すため圧縮する必要がある。抽出装置及び/又は沈殿装置を閉鎖システムから分離することができ、システム全体を周囲条件にさらすことなく、これらの構成要素を開くことが許されるように、異なる構成要素(例えば抽出装置、沈殿装置)の切り離しを可能にすることに、バルブは役立つことができる。所望により、システムは更に冷却装置(例えば、沈殿装置を冷却する及び/又は超臨界状態に戻される前にチューブ内の気体を冷却するため)を備えてもよい。システムはまた、超臨界流体を望ましい温度に保持するために、加熱装置も備えてもよい。
【0037】
SAP粒子をリサイクルするために、本明細書では抽出装置と呼ぶ適切な装置の中に、SAP粒子を置く。抽出装置の中に置かれたSAP粒子の少なくとも一部は、固化した熱可塑性組成物の重量基準に基づき少なくとも30重量%の熱可塑性ポリマーを含む、固化した熱可塑性組成物にしっかりと接着している。多くの実施形態においては、SAP粒子の大部分(すなわち、50%超)は、固化した熱可塑性組成物にしっかり接着しているであろう。しかし、50%超、例えば、70%超もしくは80%超、又は95%超さえもが、固化した熱可塑性組成物にしっかり接着していることがある。しっかりと接着するためには、SAP粒子表面の比較的小さい部分がそれに接着した固化した熱可塑性組成物を有することで十分であり、一方、残りの表面は固化した熱可塑性組成物から自由である。本発明においては、このようなSAP粒子は固化した熱可塑性組成物に汚染されていると、見なされるであろう。典型的には、SAP粒子は固化した熱可塑性組成物の繊維ネットワーク内に固定されるであろう。
【0038】
名称がすでに示しているように、汚染したSAP粒子がその中に置かれる抽出装置は、抽出容器としての役目を果たす。抽出装置は、例えば、オートクレーブであってもよい。抽出装置は、適切な圧力と温度の増加を許すために、周囲空気に対してハーメチックシールが可能でなければならない。
【0039】
抽出装置に置かれる材料は、固化した熱可塑性組成物が接着したSAP粒子のみであることがある。しかし、しっかり接着した固化した熱可塑性組成物を伴うSAP粒子が、本発明の方法の適用を受ける間、吸収性物品の吸収性コア内に含まれる場合にもまた本発明の方法が実施できることが、驚くべきことに見いだされた。吸収性コアは、汚染したSAP粒子に加えて、不織布ウェブ、エアーフェルト、及び/又は吸収性フォームなどの他の液体吸収材料を含むことがある。1つの実施形態においては、吸収性コアは汚染したSAP粒子及び1以上の不織布ウェブを含む。
【0040】
1つの実施形態においては、本発明の方法が適用される吸収性コアは、吸収性コアの総重量に基づき少なくとも75重量%のSAP粒子を含むであろう。他の実施形態においては、吸収性コアは吸収性コアの総重量に基づき少なくとも80重量%のSAP粒子を含むであろう。更に他の実施形態においては、吸収性コアは吸収性コアの総重量に基づき少なくとも90重量%のSAP粒子を含むであろう。
【0041】
更に、1つの実施形態においては、本発明の方法が適用される吸収性コアは、吸収性コアの総重量に基づき、8重量%未満の固化した熱可塑性組成物を含むであろう。他の実施形態においては、吸収性コアは、吸収性コアの総重量に基づき、6重量%未満の固化した熱可塑性組成物を含むであろう。更に他の実施形態においては、吸収性コアは、吸収性コアの総重量に基づき、5重量%未満の固化した熱可塑性組成物を含むであろう。
【0042】
あるいは、本発明の方法が適用される材料は、汚染したSAP粒子を伴う吸収性コアに加えて、捕捉システムなどの吸収性物品の他の成分も含む。
【0043】
更に、本発明者らは、完全な吸収性物品、例えば、完全なおむつ、に本発明の方法を適用することができることを見いだした。これにより、本発明の方法を吸収性コアに適用する前に、吸収性物品から吸収性コアを回収する必要がなくなる。このように、更に追加の実施形態においては、使い捨ておむつ、トレーニングパンツ、又は生理用ナプキンなどの完全な吸収性物品に本発明の方法が適用される。これらの吸収性物品は、固化した熱可塑性組成物が接着したSAP粒子を含む。SAP粒子は吸収性物品の内部に含まれる、すなわち、接着した固化した熱可塑性組成物を伴うSAP粒子は、不織布ウェブ、フィルム、及び/又はエアーフェルトなどの他の材料により囲まれている。完全な吸収性物品は、吸収性物品の一部に模様を与えるために使用されたインク(例えば、バックシート又はランディングゾーン上)も含むことがある。
【0044】
1つの実施形態においては、本発明の方法が適用される使い捨て吸収性物品は、使い捨て吸収性物品の総重量に基き少なくとも25重量%のSAP粒子を含む。他の実施形態においては使い捨て吸収性物品は、使い捨て吸収性物品の総重量に基き少なくとも30重量%のSAP粒子を含む。
【0045】
更に、1つの実施形態においては、本発明の方法が適用される使い捨て吸収性物品は、使い捨て吸収性物品の総重量に基づき3重量%未満の固化した熱可塑性組成物を含むであろう。他の実施形態においては、使い捨て吸収性物品は、使い捨て吸収性物品の総重量に基づき2.5重量%未満の固化した熱可塑性組成物を含むであろう。
【0046】
接着した固化した熱可塑性組成物を伴うSAP粒子を抽出装置内に置いた後、少なくとも1つの入口及び出口を抽出装置に連結し、抽出装置は周囲空気に対して密封される。
【0047】
超臨界二酸化炭素などの超臨界流体をシステムに供給すると、流体は少なくとも1つの入口ラインを通り抽出装置に入る。超臨界流体は抽出装置を通過する間に、抽出装置に含まれる材料も通過する。
【0048】
その低い粘性及び高い拡散係数のため、超臨界流体は抽出装置に置かれた材料に容易に浸透することができ、したがって、もしSAP粒子が吸収性物品に含まれていてさえも、固化した熱可塑性組成物が接着したSAP粒子に密接に接触するようになる。材料を通過しながら、超臨界流体は固化した熱可塑性組成物を抽出し、それにより、固化した熱可塑性組成物はSAP粒子から少しずつ除去される。
【0049】
超臨界流体は、固化した熱可塑性組成物とともに少なくとも1つの出口を通り抽出装置を去り、チューブを通過し沈殿装置に入る。沈殿装置の中において、超臨界流体は超臨界温度及び圧力未満の状態への膨張できるようになり、例えば、超臨界二酸化炭素及び/又はプロパンは気体状態へ戻される。超臨界流体が膨張するやいなや、気体状の二酸化炭素及び/又はプロパンはもはや抽出媒として役に立たないので、抽出された固化した熱可塑性組成物は沈殿容器内で沈殿する。
【0050】
しかし、固化した熱可塑性組成物の化学的な構成は、固化した熱可塑性組成物がSAP粒子に接着していた間に有していた化学的構成とは多分同じではないであろう。例えば、もし固化した熱可塑性組成物が純粋な化学化合物ではなく、むしろ異なる化合物の混合物であるとすれば、異なる化合物は抽出時において互いに少なくとも部分的に分離することがあり、以前に固化した熱可塑性組成物の一部はもしかするといまや液体状態(例えば、もし存在すれば油)であるという結果になる。
【0051】
抽出された材料が沈殿装置内で沈殿すると、二酸化炭素及び/プロパンは再生され、つまり抽出された材料はもはや「含まれて」いない。二酸化炭素及び/又はプロパンは、沈殿装置から少なくとも1つの出口を通り出て行き、沈殿装置にそれを導き戻すパイプに入る。戻る過程で、気体は超臨界状態に到達するまで再度圧縮される。その結果、超臨界流体は、固化した熱可塑性組成物が接着しているSAP粒子が置かれた抽出装置に再度入ることができる。
【0052】
すでに説明したように、本発明の方法は閉じたシステム内で実施することができ、二酸化炭素及び/又はプロパンは多くのサイクルの回数において少なくとも部分的にリサイクル又は再使用することができ、汚染したSAP粒子を含む抽出装置を繰り返し通過することができる。
【0053】
圧力及び温度
高い圧力の達成はより困難であるため、プロセス工学及びコストの観点から比較的低い圧力が望ましい。しかし、SAP粒子を再可動化し、固化した熱可塑性組成物から解き放つために、汚染したSAP粒子が超臨界流体にさらされなければならない時間の短縮に多分つながるので、比較的高い圧力がこの発明の方法をより効果的となし得ることが見いだされた。圧力が高いということは、所与の体積あたりより多くの超臨界流体の分子が存在することを意味し、したがってより迅速な抽出を可能とする。本発明の方法においては、超臨界流体は、10MPa(100bar)〜60MPa(600bar)又は、15MPa(150bar)〜40MPa(400bar)又は20MPa(200bar)〜35MPa(350bar)の圧力下にあってもよい。
【0054】
二酸化炭素は、7.38MPa(73.8bar)の圧力及び31.1℃の温度において超臨界状態に到達するので、超臨界流体の温度は少なくとも40℃であるべきである。40℃未満の温度では、システム内において少なくとも一時的に超臨界温度である31.1℃未満の温度の領域をもたらすことがある。したがって、プロセスの安定性を確保するために温度は少なくとも40℃であるべきである。しかし、もしプロパンが使用されれば、超臨界流体(又は圧倒的にプロパンからなる混合物)は、プロパンの臨界温度が二酸化炭素に比べてわずかに高いことから、少なくとも45℃の温度を有することが望ましいことがある。一般的に、超臨界流体の温度は、40℃〜100℃、好ましくは40℃〜75℃、及びより好ましくは、40℃〜60℃であることが、望ましい。100℃を超える温度は、システムの運転コストを増加させるのみならず、これはまたSAP粒子に悪い影響、例えば、SAP粒子の黄化、を与えることもある。
【0055】
この発明の方法が適用される汚染したSAP粒子が、過炭酸塩及びテトラアセチルエチレンジアミンを含む臭気制御粒子などの臭気制御化合物をもし含めば、臭気制御化合物は高い温度において劣化することがある。例えば、過炭酸塩は分解することがあり、過酸化水素を放出する。しかし、本発明に関しては、本発明の適用を受けて臭気制御化合物が分解し不活性化されるか否かは、SAP粒子に悪影響がない限り、重大ではない。
【0056】
臭気制御化合物の活性を保持することが望まれる場合には、臭気制御化合物が不活性化される温度を測定することができ、不活性化を避けるために、臭気制御化合物を含む汚染したSAP粒子が超臨界流体にさらされる温度をそれによって選択することができる(40℃未満の温度が要求されない限りは、これらの実施形態においては臭気制御化合物の活性は保持され得ない)。例えば、分解及び過酸化水素の遊離を避けるためには、過炭酸塩は60℃を超える温度にさらされるべきではない。
【0057】
超臨界流体の量及び時間
超臨界流体は、汚染したSAP粒子を含む抽出装置に連続流として提供される。流れは、少なくとも1つの入口を通り抽出装置に入り、少なくとも1つの出口を通り抽出装置を出る。
【0058】
一般的に、超臨界流体の量は、SAP粒子から固化した熱可塑性組成物を分離するために抽出される、固化した熱可塑性組成物の量の何倍もであることが望ましい。
【0059】
実際に必要とされる量は、二酸化炭素及び/又はプロパン以外に、共溶媒が適用されるか否かにとりわけ依存する。もし共溶媒が使用される場合には、より少ない量の超臨界流体で十分であろう。もし純粋な二酸化炭素が使用される場合には、抽出装置を通り流れる超臨界流体の量は、固化した熱可塑性組成物の量の50倍〜500倍(重量で)、より好ましくは70倍〜150倍(重量で)が望ましい。
【0060】
純粋なプロパン又は二酸化炭素とプロパン(のみ)の混合物が使用される場合(すなわち、追加の共溶媒なし)には、抽出装置を通り流れる超臨界流体の量は、固化した熱可塑性組成物の量の40倍〜300倍(重量で)、より好ましくは50倍〜100倍(重量で)が望ましい。二酸化炭素とプロパンとの混合物が使用される場合には、混合物は超臨界流体の総重量に基づき、60重量%〜95重量%の二酸化炭素と5重量%〜40重量%のプロパン、より好ましくは75重量%〜95重量%の二酸化炭素と5重量%〜25重量%のプロパンからなることが好ましい。
【0061】
もし共溶媒を使用する場合には、固化した熱可塑性組成物の量に比べて、20倍〜120倍(重量で)、好ましくは20倍〜80倍(重量で)、及びより好ましくは20倍〜60倍の抽出装置を通過する超臨界流体を使用することで十分であろう。
【0062】
SAP粒子を固化した熱可塑性組成物から分離するために、汚染したSAP粒子が超臨界流体にさらされなければならない時間は、とりわけ超臨界流体の圧力、流量及びそれに使用される超臨界流体に依存する。
【0063】
一般的に、汚染したSAP粒子を超臨界流体に15分〜180分、又は30分〜90分間さらしてもよい。
【0064】
本発明の方法は、バッチプロセス又は準連続プロセスで実行してもよい。本明細書において使用するとき、「バッチプロセス」は、接着した固化した熱可塑性組成物を伴うSAP粒子の所与の量を抽出装置の中に置き、SAP粒子が固化した熱可塑性組成物から完全に分離されるまで超臨界流体により処理することを意味する。したがって、SAP粒子(及び使い捨て吸収性物品/完全な吸収性物品の他の部品、もしあれば)を抽出装置から取り出し、接着した固化した熱可塑性組成物を伴う新しいSAP粒子(すなわち、新しいバッチ)を抽出装置に置く。また、固化した熱可塑性組成物の抽出の結果である沈殿した材料の量が多過ぎる場合には、沈殿装置を空にすることが必要となり得る。しかし、本発明はまた、SA粒子を準連続プロセスで処理する方法も包含する。本明細書において使用するとき、「準連続」プロセスは、2つ以上の抽出装置をシステムが含むことを意味する。このシステムは、1以上の抽出装置を開くことができるようにシステムから切り離し、一方システムの残りの部分(他の抽出装置がある)には影響を与えないように、適切に構成されている。
【0065】
本発明の方法において使用される超臨界流体
本発明に関しては、超臨界流体は二酸化炭素、プロパン又はこれらの混合物を含む。二酸化炭素及びプロパンは、ともに非極性溶媒である。
【0066】
一般的に、化合物のSCFによる抽出され易さは、これらの化合物中の個々の官能基の存在、これらの分子量及び極性に依存する。
【0067】
多くの非極性有機溶媒(二酸化炭素又はプロパンなど)は、極性物質を溶解することができる。モル質量が同程度の極性及び非極性分子を比較すると、極性分子間の双極子−双極子相互作用のために、極性分子が一般的により高い沸点を有している。このような極性相互作用の最もありふれた形態は、水素結合であり、H−結合としても知られている。
【0068】
本発明の方法において使用されるSCFの溶解力を更に改善するために、1以上の共溶媒を、二酸化炭素、プロパン又は二酸化炭素/プロパン混合物に加えて使用してもよい。したがて、本発明の1つの実施形態においては、SCFは二酸化炭素、プロパン又は二酸化炭素/プロパン混合物に加えて、1以上の共溶媒を含む。また、本発明の1つの実施形態においては、SCFは二酸化炭素と1以上の共溶媒との混合物である。本発明の別の実施形態においては、SCFは二酸化炭素からなる。
【0069】
本発明の方法に使用するために、抽出装置に供給されるSCFに含まれる共溶媒は、エタノール、酢酸エチル、ブタン、酢酸ブチル、アセトン、亜酸化窒素、二酸化炭素、窒素、及びこれらの混合物からなる群から選択してもよい。抽出装置に供給されるSCFに含まれる共溶媒の量(又は2以上の共溶媒が使用される場合には、共溶媒の総量)は、超臨界流体の総重量に基づき0.1重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜30重量%、及び更により好ましくは1重量%〜20重量%であってもよい。すべての超臨界流体は相互に完全に混ざり合い、したがって、混合物が臨界点を超えている場合には、混合物に関して単一相が保証される。
【0070】
本発明の方法は、完全な吸収性コアのみならず、吸収性コアを含む完全な吸収性物品に対してさえも実行できることが見いだされた。驚くべきことに、完全な吸収性コア、又は完全な若しくは少なくとも部分的に組み立てられた吸収性物品が使用されると、この方法はよりうまくいくことさえもあることが更に見いだされた。
【0071】
理論に束縛されるものではないが、この改善の1つの理由は、吸収性コア又は吸収性物品に含まれるある化合物が共溶媒として作用することであると信じられる。例えば、吸収性物品は物品の異なるウェブ又は材料を互いに結合することに使用される接着剤を典型的に含む。更に、多くの吸収性物品は、共溶媒として役立つ物質を含むことがある弾性部材を有する。吸収性物品においてしばしば使用が見られる他の化合物は、界面活性剤(例えば、トップシートに親水性を与える)である。このような界面活性剤は、この発明の方法の共溶媒としてもまた作用することがある。本発明に関しては、これらの「内在的共溶媒」は、超臨界流体(特に、好ましい共溶媒の化合物及び量を決めるに際して)において使用される共溶媒に言及する場合には、考慮に入れられないことを理解すべきである。そうではなく、共溶媒に言及する場合は、意識しかつ管理された方法で超臨界流体に混合される化合物のみが言及される。
【0072】
SCFは、汚染したSAP粒子を通り抜けるのみならず、吸収性物品全体をも通り抜ける。このように、固化した熱可塑性組成物が抽出されるのみならず、物品の他の領域において使用される接着剤、界面活性剤、インク、及び弾性要素中にあり得る弾性体などの他の化合物もまた、抽出により影響を受ける。吸収性物品が、前には吸収性物品に組み立てられていたトップシート、バックシート、テープなどの個々の要素に、少なくともある程度までは取り外され分解されているという事実により、このことは容易に立証することができる。
【0073】
このように、他の化合物が抽出されると、それは自由となりSCF流に含まれ、SCFとともに抽出装置を通過し、その結果汚染したSAP粒子に接触する。超臨界CO2及びプロパンとは異なり、これらの化合物の多くは極性物質であり、固化した熱可塑性組成物の抽出を、特にもし固化した熱可塑性組成物がある程度極性である物質(すなわち、固化した熱可塑性組成物のポリマーに加えた物質)を含めば、後押しすることができる。しかし、吸収性コア、又はもちろん吸収性物品からも抽出されるどちらかと言えば非極性化合物もまた、共溶媒としての可能性を有している。
【0074】
超吸収性ポリマー粒子
SAP粒子は多くの形状であり得る。「粒子」という用語は、顆粒、繊維、フレーク、球体、粉末、小板、並びにSAPの当業者に既知のその他の形状及び形態のことを指す。例えば、粒子は、約10μm〜約1000μm、好ましくは約100μm〜約1000μm、更により好ましくは約150μm〜約850μm、及び非常に好ましくは約150μm〜約500μmの粒径を有するビーズ又は顆粒の形態であり得る。別の実施形態においては、SAP粒子は繊維の形状、すなわち細長い針状のSAP粒子であり得る。こうした実施形態において、SAP繊維は、約1mm未満、普通は約500μm未満、好ましくは250μm未満から50μmまでの、小さい寸法(即ち、繊維の直径)を有する。繊維の長さは、好ましくは約3mm〜約100mmである。繊維はまた、織ることのできる長いフィラメントの形態であってもよい。
【0075】
この発明の好ましいSAP粒子は、球類似粒子である。本発明によれば、繊維とは対照的に「球類似粒子」は、最長の最短粒子寸法に対する粒子比が1〜5の範囲である最長および最短寸法を有し、ここで値1は完全な球状粒子と同等であると見なされ、5はこのような球状粒子からの若干のずれを考慮したものである。
【0076】
本発明で有用なSAP粒子としては、様々な非水溶性ではあるが大量の流体を吸収できる水膨潤性ポリマーが挙げられる。このようなポリマー材料は、一般的に当該技術分野において既知であり、使い捨て吸収性物品技術に関連して使用されるか又は役立つと見なされるよく知られたこれらのポリマーを全部含む。
【0077】
SAP粒子の作製において使用に好ましいポリマー材料は、部分的に中和されたポリアクリル酸及びそれらのデンプン誘導体の、わずかに網状架橋したポリマーである。デンプン系SAP粒子もまた本発明に包含される。好ましくは、SAP粒子は、重量で25%〜95%、より好ましくは50%〜80%の、中和したわずかに網状架橋したポリアクリル酸を含む。網状架橋はポリマーを実質的に非水溶性とし、ヒドロゲル形成吸収性ポリマーの吸収能力及び抽出可能なポリマー含有量特性を、部分的に決定する。
【0078】
好ましくは、SAPは1つのタイプ(すなわち、均質)であるが、本発明においてはポリマーの混合物もまた使用することができる。SAP粒子は、例えば、粉砕シリカ、界面活性剤、接着剤、バインダーなどの1以上の低濃度の添加剤の混合物を含むこともできる。更に、SAP粒子は粒子寸法に傾斜を含むことができ、つまり粒子寸法にある幅を含むことができる。
【0079】
以前から知られている多くのSAP粒子はゲルブロッキングを示す。「ゲルブロッキング」は、SAP粒子が濡れて粒子が膨潤し、吸収性構造の他のゾーン又は領域への流体の透過を抑制するときに起こる。それ故、吸収性コアのこれらの他の領域の濡れは、非常に遅い拡散プロセスを経て起こる。実際的には、これは吸収性構造体による流体の捕捉が、特に噴出される状況において、流体が排泄される速度よりはるかに遅いことを意味する。吸収性コア内のSAP粒子が完全な飽和に近づくよりもかなり前に、つまり流体が「ブロッキング」粒子を通り越して残りの吸収性コア内に拡散又は吸い上げられる前に、吸収性物品からの漏れが起こり得る。
【0080】
ゲルブロッキングを減少させるために一般的に適用される1つの方法は、粒子をより硬くすることであり、それによってSAP粒子がその元の形状を保持できるため、粒子間の空隙が作り出されるか又は維持される。硬さを高める周知の方法は、SAP粒子の表面上に露出しているカルボキシル基を共有結合により架橋することである。この方法は一般に表面架橋と呼ばれている。
【0081】
固化した熱可塑性組成物
SAP粒子に接着した本発明の固化した熱可塑性組成物は、接着剤、好ましくはホットメルト接着剤であり得る。接着剤は、SAP粒子を固定するために最初に適用されていてもよい。このようなSAP粒子の固定は、使い捨て吸収性物品の吸収性コアが少量(例えば、吸収材料の総重量の10%未満)のエアーフェルトしか含まないか、又は吸収性コアがエアーフェルトを全く含まない、実施形態において、一般的に必要となることがある。典型的には、SAP粒子は不織布支持ウェブの上に置かれ、そこで吸収性物品の製造、保管、及び使用中に定位置に確実に留まらせるために固定される。
【0082】
固化した熱可塑性組成物は、SAP粒子上への適用中は固化した状態ではないことがあるが、SAP粒子上への適用を容易にするために、固化した熱可塑性組成物が半流体又は流体である温度に加熱することがあると、理解すべきである。それ故、本発明における固化した熱可塑性組成物は、室温で固化した組成物を指す。一般的に、本発明における固化した熱可塑性組成物も、吸収性物品の使用中の温度及びそりより少し高い温度において、すなわち約40℃(吸収性物品のパーツの使用中の温度がより低くても)まで、固体であるべきである。固化した熱可塑性組成物はSAP粒子を容易に固定し、これを定位置に保持する。
【0083】
SAP粒子の周りに繊維状接着剤網のたぐいを形成するために、固化した熱可塑性組成物を半流体又は流体状態に変え(加熱により)ながら、固化した熱可塑性組成物の少なくとも一部を繊維形態としてSAP粒子の上に適用する(例えば吹付により)ことができる。固化した熱可塑性組成物が繊維形態として適用される場合には、繊維は典型的に約1〜約50マイクロメートル又は約1〜約35マイクロメートルの平均太さ、及び約5mm〜約50mm又は約5mm〜約30mmの平均長さを有するであろう。
【0084】
固化した熱可塑性組成物は、単一の熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物を含み得る。熱可塑性ポリマーは、ASTM D−36−95の「Ring and Ball」法で測定される、50℃と300℃の間の軟化点を持ち得る。熱可塑性ポリマーは、好ましくは、10,000を超える分子量(Dalton表示の重量平均Mw)、及び室温(25℃)以下のガラス転移温度(Tg)又は−6℃>Tg<16℃を有する。固化した熱可塑性組成物中の熱可塑性ポリマーの典型的な濃度は、重量で30重量%〜約50重量%、好ましくは重量で30重量%〜約40重量%である。好ましくは、固化した熱可塑性組成物中の熱可塑性ポリマーは、水と不混和性(固化した熱可塑性組成物の重量で5%を超える量)である。
【0085】
代表的な熱可塑性ポリマーは、A−B−A三元ブロック構造、A−B二元ブロック構造、及び(A−B)n放射状ブロックコポリマー構造を包含するスチレンブロックコポリマーなどのコポリマーであり、Aブロックは、典型的にはポリスチレンを含む非エラストマーポリマーブロックであり、またBブロックは、不飽和共役ジエン又はその(部分的に)水素添加したものである。Bブロックは一般的に、イソプレン、ブタジエン、エチレン/ブチレン(水素添加ブタジエン)、エチレン/プロピレン(水素添加イソプレン)、及びこれらの混合物である。好ましくは、固化した熱可塑性組成物中のポリマーは、スチレンイソプレンスチレン(SIS)ブロックコポリマー、スチレンブタジエンスチレン(SBS)ブロックコポリマー又はこれらの混合物である。スチレンブロックコポリマーは、吸収性物品の中で適用される接着剤にしばしば使用される。固化した熱可塑性組成物が1つを超えるポリマーを含む本発明の実施形態においては、固化した組成物は、好ましくは、固化した熱可塑性組成物の総重量に基づき、少なくとも30重量%のスチレンイソプレンブロックコポリマーなどの、スチレンブロックコポリマーを含む。
【0086】
使用することが可能な他の好適な熱可塑性ポリマーとして、シングルサイト触媒又はメタロセン触媒を使用して調製されるエチレンポリマーであるメタロセンポリオレフィンがある。その場合、少なくとも1種類のコモノマーをエチレンと重合して、コポリマー、ターポリマー、又はより高次のポリマーを調製することができる。C2〜C8のアルファーオレフィンのホモポリマー、コポリマー、又はターポリマーである非晶質ポリオレフィンあるいは非晶質ポリアルファーオレフィン(APAO)もまた同様に適している。少なくとも30重量%の熱可塑性ポリマーの他に、固化した熱可塑性組成物は、更に粘着付与樹脂及び/又は油を含むことがある。なおその上に、固化した熱可塑性組成物は、抗酸化剤、充填剤(例えば、砂及び/又はケイ酸塩)及び/又は界面活性剤などの添加剤を、比較的少量含むことがある。
【0087】
粘着付与樹脂の量は、もし固化した熱可塑性組成物中に存在すれば、固化した熱可塑性組成物の重量に基づき、典型的には、1重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜40重量%、及びより好ましくは5重量%〜30重量%であろう。油の量は、もし固化した熱可塑性組成物中に存在すれば、固化した熱可塑性組成物の重量に基づき、典型的には、1重量%〜40重量%、好ましくは5重量%〜30重量%、又は5重量%〜20重量%であろう。本発明の固化した熱可塑性組成物は、2つ以上の油(すなわち、異なる油)を含むことがあり、及び/又は2つ以上の粘着付与樹脂(すなわち、異なる粘着付与樹脂)を含むことができる。添加剤の総量は、固化した熱可塑性組成物中で使用される場合には、固化した熱可塑性組成物の重量に基づき、15重量%、好ましくは、10重量%、より好ましくは8重量%を超えないこともある。
【0088】
本発明の樹脂は、多くの植物、特に針葉樹の炭化水素分泌物、例えば、ロジンエステル(これはしばしば粘着性付与剤として使用される)である。本明細書における用語、樹脂は、類似の性質を有する合成樹脂にもまた使用される。合成樹脂は、天然樹脂に類似の特性、硬化可能で粘稠な液体、の材料である。これらは、典型的には、有機化合物のエステル化又はけん化により製造される。古典的な変種はエポキシ樹脂である。固化した熱可塑性組成物の粘着付与樹脂は、典型的には、5,000未満の重量平均Mw(Dalton表示)を有する。Tgは通常室温を超えるであろう。本発明の油は、周囲温度において液体であり、疎水性であるが有機溶媒に可溶性の任意の物質である。油は炭素及び水素の含有量が多く、非極性物質である。本発明の固化した熱可塑性組成物に役立つ油は鉱油である。1つの実施形態においては、油はペトロラタム油であり、例えば、パラフィン油、ナフテン油、又はこれらの混合物である。油は、1,000未満の低い重量平均Mw(Dalton表示)を有することができる。Tgは、好ましくは、室温(25℃)未満であろう。
【0089】
本発明の固化した熱可塑性組成物の例は、次のホットメルト接着剤である、Bostik Findley H2401、弾性粘着剤;H.B.FullerからのLunatack D 3155 B Zeropack及びD 3166 Zeropack;H.B.FullerからのHL 1358;National Starchが販売しているDispomelt(DM526及びDM519 A)。
【0090】
本発明の固化した熱可塑性組成物により固定されたSAP粒子を伴う、吸収性コアを含む吸収性物品の1つの例は、インドにおいて市販されているPampers Magic Nickerである。
【0091】
本明細書において言及されたProcter & Gamble Companyに譲渡された全ての特許及び特許出願(それに基づいて発行されたいかなる特許も含む)は、本明細書と一貫性がある範囲において、参照により援用される。
【0092】
本明細書に開示された寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく制限されるものとして理解されるべきでない。それよりむしろ、特に指定されない限り、それぞれのそのような寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。
【0093】
「発明を実施するための形態」で引用した全ての文献は、関連部分において参照により本明細書に援用されるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものと解釈されるべきではない。本書における用語のいずれかの意味又は定義が、参照により援用された文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいて、本書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0094】
本発明の特定の諸実施形態を図示し、記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正ができることは、当業者には自明である。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲に包含するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固化した熱可塑性組成物の重量に基づき少なくとも30重量%の熱可塑性ポリマーを含む固化した熱可塑性組成物から、超吸収性ポリマー粒子を分離する方法であって、
a)前記超吸収性ポリマー粒子の少なくとも一部が前記固化した熱可塑性組成物の少なくとも一部に接着している、前記超吸収性ポリマー粒子と前記固化した熱可塑性組成物との凝集体を提供する工程と、
b)前記凝集体を二酸化炭素、プロパン、又はこれらの混合物を含む超臨界流体にさらす工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記超臨界流体が、1つ以上の共溶媒を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共溶媒が、エタノール、酢酸エチル、ブタン、酢酸ブチル、アセトン、亜酸化窒素、二酸化炭素、窒素、水、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1以上の共溶媒の総量が、超臨界流体の総重量に基づき、0.1重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜30重量%、及びより好ましくは1重量%〜20重量%である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記固化した熱可塑性組成物が、前記固化した熱可塑性組成物の重量に基づき、1重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜40重量%の樹脂を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記固化した熱可塑性組成物が、前記固化した熱可塑性組成物の重量に基づき、1重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜30重量%の油を更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記固化した熱可塑性組成物が、抗酸化剤、砂、シリコーン及び界面活性剤の群から選択される添加剤を更に含み、前記添加剤の総量が前記固化した熱可塑性組成物の重量に基づき、15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記凝集体が、超臨界流体の連続流にさらされる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記超臨界流体が、前記凝集体にさらされた後でリサイクルされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記凝集体が、前記超臨界流体にさらされる間、完全な使い捨て吸収性物品又は吸収性物品の一部に含まれている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記吸収性物品が、おむつ、トレーニングパンツ又は生理用ナプキンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記吸収性物品の一部が、吸収性コアである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記吸収性コアが、前記凝集体に加えて1以上の不織ウェブを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも30%の熱可塑性ポリマーを含む固化した熱可塑性組成物から超吸収性ポリマー粒子を分離するための超臨界流体の使用であって、前記吸収性ポリマー粒子の少なくとも一部が前記組成物の少なくとも一部に接着しており、前記超臨界流体が二酸化炭素、プロパン又はこれらの混合物を含む、使用。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法により得られる、超吸収性ポリマー粒子。

【図1】
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【公表番号】特表2013−520533(P2013−520533A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554102(P2012−554102)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2011/025882
【国際公開番号】WO2011/106392
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】