説明

ポリマーコートされたナノ繊維の不織ウェブ

上面と下面を有する不織ウェブであって、第1ポリマーとは異なる少なくとも第2ポリマーでコートされた第1ポリマーのポリマー繊維を含み、第2ポリマーのコーティング厚さには、ウェブの厚さ全体にわたって勾配がある、不織ウェブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1ポリマーを含むポリマー繊維の不織ウェブであって、蒸着プロセスにより第2ポリマーでコートされたウェブに関する。不織ウェブは、コートされた繊維を接続する第2ポリマーの接続ナノ繊維を含有する。
【背景技術】
【0002】
ナノ繊維ウェブは、近年、盛んに研究されてきた。ナノ繊維の平均繊維直径が減少すると、ナノ繊維ウェブの平均細孔サイズも減少することが分かっている。これらウェブの繊維サイズと細孔サイズの組み合わせによって、大半の繊維の繊維直径が1μmを超えるような以前から知られている不織ウェブと比べて、通気性に大幅に悪影響を及ぼすことなく、高液体バリアをもたらすことが分かっている。微孔径、薄さ、低通気性、高液体バリア、その他特性をはじめとするかかる特性のために、ナノ繊維ウェブは、気液濾過媒体、保護衣、電池セパレータおよびキャパシタセパレータをはじめとする様々な用途に用いることが考えられている。
【0003】
用途に応じて、親水性、疎水性および撥液性をはじめとする、ナノ繊維ウェブの特定の特性が望まれている。かかる特性を、予め形成されたナノ繊維ウェブに付与する手段が求められている。より直径の小さな繊維を紡糸せずに、ナノ繊維ウェブの細孔サイズを減少する手段も求められている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の実施形態は、上面と下面を有する不織ウェブであって、平均繊維直径が約50nm〜約800nmである第1ポリマーのポリマーナノ繊維と該ナノ繊維間の細孔とを含有し、該ウェブの少なくとも上面で、該ポリマーナノ繊維が、該第1ポリマーとは異なる少なくとも第2ポリマーでコートされており、上面のナノ繊維の第2ポリマーのコーティング厚さが、下面のナノ繊維の第2ポリマーのコーティング厚さより厚い、不織ウェブである。
【0005】
本発明の第2の実施形態は、上面と下面を有する不織ウェブであって、第1ポリマーのポリマー繊維と、該繊維間の細孔とを含有し、該繊維が、該第1ポリマーとは異なる少なくとも第2ポリマーでコートされており、第2ポリマーのコーティング厚さには、ウェブの厚さ全体にわたって勾配がある、不織ウェブである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
「ウェブ」という用語は、ロールに巻くことのできる繊維性材料のことを指す。
【0007】
「不織ウェブ」という用語は、個々の繊維が不規則に配置されて、編布や織布とは対照的に、識別可能なパターンのない平面材料を形成するウェブのことを指す。
【0008】
「ナノ繊維」という用語は、1μm未満の直径を有する繊維のことを指す。
【0009】
一実施形態において、本発明は、繊維、好ましくは、連続ナノ繊維のポーラスな不織ウェブに関し、ポリマー(本明細書においては「第1ポリマー」と呼ぶ)を含み、第1ポリマーとは異なるポリマー(本明細書においては「第2ポリマー」と呼ぶ)でコートされている。本発明のコートされたウェブは、さらに、コートされた繊維間にあって、これらを接続する第2ポリマーの接続ナノ繊維を含むことができる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、不織ナノ繊維ウェブは、ウェブの表面のみ、またはウェブの表面とコート表面に隣接するウェブの厚さの一部とを通して、またはウェブの全厚全体にコートすることができる。本明細書において、表面のみのナノ繊維をコートすると述べたときは、コーティングが適用される不織ウェブの表面(便宜上、「上面」と呼ぶ)の約2μm内のナノ繊維のみが、第2ポリマーのコーティングでコートされることを意味する。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、不織ウェブの上面と上面に隣接するウェブの厚さの一部のナノ繊維が、第2ポリマーのコーティングでコートされるとき、ウェブのコートされた部分内のウェブの厚さにわたり第2ポリマーのコーティング厚さにも傾斜を与えて、表面から離れるにつれてコーティング厚さを薄くするようにすることができる。同様に、第2ポリマーのコーティングを、下面のナノ繊維から完全になくすことができる。
【0012】
下にあるコートされた繊維間の細孔を橋架けする第2ポリマーから実質的になる接続ナノ繊維を、第2ポリマーのコーティングの深さに関わらず、コートされたウェブの繊維間に存在させることができる。スパンボンド繊維、メルトブローン繊維、フラッシュスパン繊維、ステープル繊維、エレクトロスパンナノ繊維またはエレクトロブローンナノ繊維またはこれらの組み合わせ等の第1ポリマーの不織ウェブを、蒸着プロセスにより第2ポリマーでコートする。このプロセスでは、ウェブ繊維の表面にコーティングを形成することに加えて、第1ポリマー繊維間で、これらを接続する第2ポリマーのナノ繊維の接続または橋架けを形成することができる。意外なことに、接続ナノ繊維は、未コート出発ウェブには存在しないが、蒸着プロセス中に作成できることが分かった。
【0013】
これを例証するために、図1Aは、未コートナノ繊維ウェブ(以下の実施例2、未処理側)の走査電子顕微鏡写真(SEM)画像であり、図1Bは、第2ポリマーのコーティングでコートした後の同じナノ繊維ウェブ(以下の実施例2、処理側)のSEMである。図1Aにおいて、未コートウェブにある出発ナノ繊維は、参照文字AUで示されている。図1Bにおいて、コートされたナノ繊維は、参照文字ACで、接続ナノ繊維は、参照文字Bで示されている。見て分かるとおり、接続ナノ繊維Bは、コートされたナノ繊維AC間に形成され、接続ナノ繊維Bの各端部は、コートされたナノ繊維で終わっている。すなわち、接続ナノ繊維は、下にある第1ポリマーナノ繊維ウェブ(図1B)のオープン細孔を橋架けして、未コートウェブ(図1A)に比べて、コートされたウェブの平均細孔サイズを低減している。
【0014】
本発明によれば、ウェブの下面を、上面に加えて、コーティング処方が、ウェブを下面まで完全に浸透させるか、上面と同じやり方で、下面を別個にコーティングするかのいずれかにより、第2ポリマーでコートすることができる。あるいは、ナノ繊維の第1ポリマーおよび上面に適用されたコーティングの第2ポリマーの両方と異なる第3ポリマーで、ウェブの下面をコートすることができる。下面に、または下面と下面に隣接する厚さの一部にあるナノ繊維は、第2および/または第3ポリマーのコーティングでコートすることができる。
【0015】
下面または下面と下面に隣接するウェブの厚さの一部に適用されたコーティングは、ウェブの上面に適用されたコーティングと重なり合うことができる。第2ポリマーは、上下面の両方に適用することができ、コーティング厚さ勾配が、両方向からウェブの厚さにわたって形成される。あるいは、両表面からのコーティング適用を用いて、ウェブ全体に適用された略均一なコーティング厚さを有するコーティングウェブを形成することができる。
【0016】
本発明の実施において、第3ポリマーのコーティングを第2ポリマーのコーティングに適用することができる。例えば、第2ポリマーは、上面と上面に隣接するウェブの厚さの一部に適用することができ、その後、第3ポリマーを下面と下面に隣接するウェブの厚さの一部に適用して、第2と第3ポリマーによりコートされた部分が重なるようにすることができる。第2ポリマーが、第3ポリマーの表面張力に対して十分に高い表面エネルギーを有していて、第3ポリマーのコーティングが、第2ポリマーのコーティングの表面を濡らす場合、第3ポリマーは、第2ポリマーに接合する。ウェブの繊維が、第3ポリマーでコートされているときは、第3ポリマーから実質的になる接続ナノ繊維が、第3ポリマーでコートされた繊維間に形成される。これについては、第2ポリマーの接続繊維に関して前述したとおりである。
【0017】
さらに、所望であれば、第3ポリマーを、第2ポリマーのコーティングにコートして、追加のポリマーコーティングを追加することができる。第3(もしくはそれ以上)のコーティングを橋架けナノ繊維を含む第2ポリマーのコーティングに追加するときは、橋架けの第2ポリマーのナノ繊維もコートされる。
【0018】
未コートの出発ナノ繊維ウェブは、平均繊維直径が約50nm〜約800nmのナノ繊維を含むことができる。ナノ繊維ウェブは、この直径範囲のナノ繊維を作成することのできる、静電紡糸やエレクトロブローイングをはじめとするプロセスにより形成できる。エレクトロブローイングにより連続ナノ繊維のウェブを形成するプロセスは、参照により本明細書に援用される国際特許公開番号国際公開第03/080905A号パンフレット(2003年11月19日出願の米国特許出願第10/477,882号明細書に対応)に開示されている。不織ウェブは、かかるナノ繊維から実質的になり、ウェブの繊維の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、さらに少なくとも95%が、この直径範囲である。
【0019】
同様に、本明細書に開示されたコーティングプロセスは、これより大きなナノ繊維でできた不織ウェブやスクリム、さらにはポーラスなフィルムであっても適用することができ、同様の結果が得られる。例えば、コートされる不織ウェブまたはスクリムは、織布、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、フラッシュスパンウェブ、カードまたはエアレイドウェブを含むステープル系ウェブ、ウェットレイドウェブ不織布、樹脂ボンド不織布、ニードルパンチ不織布およびスパンレースウェブ等の不織布、ポーラスフィルム、編布、開口フィルム、紙およびこれらの組み合わせをはじめとする任意の可撓性シート材料とすることができる。
【0020】
不織ウェブのナノ繊維は、熱可塑性および熱硬化性ポリマーを含むポリマーで形成することができる。ナノ繊維に用いる、すなわち、第1ポリマーとして用いるのに好適なポリマーとしては、これらに限られるものではないが、ポリイミド、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリ(ウレアウレタン)、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ポリアニリン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルブチレン)、これらのコポリマーまたは誘導体化合物およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
図2は、真空中で、硬化性モノマーまたはオリゴマー(またはモノマーおよび/またはオリゴマーのブレンド)により不織ウェブを蒸着コーティングするのに好適な装置10の概略図であり、これは、その全内容が参照により本明細書に援用される2003年6月19日出願の同時係属米国特許出願第2004/0028931−A1号明細書に開示されている。ウェブが本発明によりコートされるプロセスを以下に説明する。供給ロール12に巻かれた出発ナノ繊維ウェブ16が、真空チャンバ8に配置される。真空チャンバは、真空ポンプ(図示せず)に接続されており、チャンバは所望の圧力まで排気される。好適な圧力は、2×10-4〜2×10-5トル(2.66×10-5〜2.66×10-6kPa)である。未コートウェブは、供給ロール12から供給される。未コートウェブの少なくとも1つの表面を、まず、任意で、プラズマ源14に晒して、緩く保持された低分子量化合物を除去して表面を官能化した後、表面の表面エネルギーを修正して、凝縮蒸気によりその湿潤性を改善する。プラズマ源は、低周波RF、高周波RF、DCまたはACである。好適なプラズマ処理方法は、米国特許第6,066,826号明細書、国際公開第99/58757号パンフレットおよび国際公開第99/59185号パンフレットに記載されている。
【0022】
チャンバ内で、硬化性モノマー、オリゴマーまたはそれらのブレンドを、入口管19を通して、容器(図示せず)からフラッシュ蒸発装置18に連続フローで供給し、そこで蒸気が生成される。フラッシュ蒸発装置は、超音波噴霧器とすることができ、ヒーター(図示せず)により、モノマーまたはオリゴマーがフラッシュ蒸発される。モノマーは、蒸気として、真空チャンバに注入される前に脱気されるのが好ましい。フラッシュ蒸発およびモノマー堆積プロセスの具体的な態様は、参照により本明細書に援用される米国特許第4,842,893号明細書、第4,954,371号明細書および第5,032,461号明細書に詳細に記載されている。
【0023】
フラッシュ蒸発モノマーは、ナノ繊維ウェブの一表面17(本明細書では上面と呼ぶ)で凝縮して、ウェブの上面から約2μmの深さ以内で、ナノ繊維にモノマーまたはオリゴマーのコーティングを生成する。任意で、十分な時間、モノマーまたはオリゴマーがウェブを通して所望の深さまで浸透するようにする。そうしたら、公知の好適な硬化手段22によりコーティングを硬化する。好適な硬化手段としては、電子ビームおよび紫外線源が挙げられ、凝縮コーティングを重合または架橋させることにより、モノマーまたはオリゴマーコーティングを硬化するものである。電子ビームガンを用いる場合、参照により本明細書に援用される米国特許第6,083,628号明細書に記載されているように、電子のエネルギーは、コーティングをその全厚において重合させるのに十分なものとしなければならない。モノマーおよびオリゴマーの硬化についてはまた、米国特許第4,842,893号明細書、第4,954,371号明細書および第5,032,461号明細書にも記載されている。あるいは、オリゴマーは、冷却により同時に固化することができる。室温で固体のオリゴマーについては、参照により本明細書に援用される米国特許第6,270,841号明細書に記載されているように、硬化は必要ない。コーティングは、蒸気密度および滞留時間条件下で硬化でき、厚さが約15nm〜約2μmのポリマーコーティングが得られる。
【0024】
2枚以上のコーティングが必要な場合には、複数のフラッシュ蒸発装置を並べて用いる。追加のコーティングが、基板16の反対面に必要な場合には、任意で、追加のフラッシュ蒸発装置20、21および硬化手段22を図2に示す通りにして提供する。コートされた基板は最終的には、巻き上げロール24に巻かれる。
【0025】
多数のモノマーまたはオリゴマーコーティングを堆積するために、不織ウェブを、供給ロールと巻き上げロールとの間で前後に動かすことができる。あるいは、供給ロールから巻き上げロールへ、直線経路に沿って供給せずに、出発不織ウェブを、上述のプロセス工程を連続的に通過させながら、1つ以上の回転ドラム上を移動させることができるものと考えられる(図示せず)。
【0026】
コーティングの厚さは、蒸着プロセスに用いるフラッシュ蒸発装置の線速度および/または蒸気フラックスにより制御することができる。コーティングが厚くなるにつれ、電子がコーティングを通し手浸透して、有効に重合が行えるようにするよう、電子ビームのエネルギーを調節する必要がある。例えば、10kVおよび120mAの電子ビームは、アクリレートコーティングを2μmの厚さまで有効に重合することができる。
【0027】
蒸着中にコートされるウェブを冷却すると、米国特許第4,842,893号明細書および国際公開第98/18852号パンフレットに記載されているように、モノマー/オリゴマー凝縮の効率が改善される。これは、米国特許第4,842,893号明細書のように、蒸着中、ウェブを冷却ドラム上に通過させることにより行えばよい。低温板(図示せず)をこのために用いてもよく、蒸着前にウェブを冷却するような場所に置く。
【0028】
本プロセスは、コートされたウェブの最終的な細孔サイズを制御する手段を提供する。本プロセスを実施して、コーティングがウェブの細孔を塞がないようにする。例えば、出発ウェブを、高線速度でプロセスの蒸着部分に通過させると、比較的薄いコーティングが得られる。あるいは、本プロセスを実施して、コーティングが不織ウェブの平均細孔サイズを大幅に低減するようにする。これは、例えば、該接続ナノ繊維を形成するか、またはコーティング厚さのみにすることによる。すなわち、出発ウェブを、低線速度でプロセスの蒸着部分に通過させたり、ウェブをコートする真空チャンバに複数回通過させると、比較的厚いコーティングが得られる。これは、ウェブの細孔を部分的に制御したり、完全に塞ぐことができる。このようにして、ノンポーラスな膜を製造することさえできる。
【0029】
第2のモノマーの蒸気の凝縮と硬化の間、低線速度だと、液体の第2のモノマーが、ウェブの厚さを通して、繊維の表面を濡らすことができる。湿潤厚さの程度は、蒸気モノマーが凝縮して、繊維表面を濡らした後、電子ビームが達して重合が生じ、凝縮モノマーによりさらに濡れるのを止める前の許容された時間により制御することができる。湿潤が生じる速度はまた、ナノ繊維と凝縮した第2のモノマーの第1ポリマーの表面張力によっても異なる。モノマー蒸気がナノ繊維上で凝縮する前のナノ繊維のプラズマ処理はまた、ナノ繊維の表面張力を増大することにより、かかる湿潤を促すことができる。コーティングのモノマー蒸気による第1ポリマー表面の良好な湿潤によって、蒸気に直接晒されるナノ繊維表面の良好な被覆率が得られる。第1ポリマーナノ繊維のプラズマ処理がないと、コーティングとナノ繊維との間の表面張力の差によっては、ナノ繊維の湿潤が制限された局所的なものとなり、ナノ繊維が部分的にしかコートされず、第2ポリマーのナノ繊維への接着不良となる恐れがある。これらのパラメータを適切に制御することによって、ナノ繊維のコーティング厚さが成長して、均一に細孔構造を塞いだり、ナノ繊維に局所的に突出した構造を形成することによりそれを抑えることができる。ナノ繊維表面がモノマー蒸気で良好に湿潤する条件下で、比較的重荷重の第2のモノマーがナノ繊維に堆積すると、凝縮モノマーが蓄積されてビーズを形成するのが認められている。こうした条件下では、ビーズ表面が隣接すると、ビーズ表面が結合して、第2ポリマーのナノ繊維が形成されて、ウェブ繊維を接続し、間にある細孔を橋懸けする。
【0030】
コーティングモノマーまたはオリゴマーは、モノマーまたはオリゴマーの重合生成物であるポリマーコーティングの所望の機能によって選択することができる。ポリマーコーティングは、様々な用途に有用な様々な機能を与えることができる。例えば、コーティングポリマー組成物を選択して、水、油、アルコールによって濡れないない撥液性表面、水によって濡れない疎水性表面または水によってすぐに濡れたり、第1ポリマーよりも早く吸収される親水性表面とすることができる。
【0031】
本発明に用いるのに好適なモノマーとしては、参照により本明細書に援用される米国特許第6,933,005号明細書に開示されているようなエチレン化不飽和モノマーが挙げられる。エチレン化不飽和モノマーの不飽和部位の数は、少なくとも1であるが、2以上とすることができる。
【0032】
好適なエチレン化不飽和モノマーは、アルキル基が1〜15個の炭素原子、さらには2〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレートおよびこれらの混合物である。好適なアルキルメタクリレートモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等である。同様に、好適なアルキルアクリレートモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。脂環式メタクリレートおよびアクリレートもまた用いることができ、例えば、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレートまたはt−ブチルシクロヘキシルメタクリレート等である。アリールアクリレートおよびアリールメタクリレートもまた用いることができ、例えば、ベンジルアクリレートおよびベンジルメタクリレート等である。当然のことながら、上述したモノマーの2種類以上の組み合わせも好適である。
【0033】
アルキルアクリレートまたはメタクリレートに加えて、他のエチレン化不飽和モノマーを本発明においては用いることができる。かかる他のモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が例示される。ヒドロキシ官能性モノマーも用いることができる。好適なヒドロキシ官能性モノマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、すなわち、アルキル基に1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等である。
【0034】
上に挙げたモノマーおよびこれらの混合物の重合により、一般に、疎水性ポリマーコーティングが得られ、疎水性のレベルは、ポリマー骨格のフリー水素結合部位の相対的な利用可能性に対応している。重合したままのコーティングの親水性は、モノマーを、高疎水性の懸垂基により変性することにより高めることができる。例えば、カルボン酸、スルホン酸またはアルキル酸化物変性剤により形成されたようなもの、またはアルキル酸化物オリゴマーをコーティング処方に添加する等による。
【0035】
「撥液性」ポリマーコーティング、すなわち、高疎水性、疎油性および撥アルコール性のものは、高度にフッ素化されたモノマー、例えば、フルオロアルキル含有モノマーを堆積し重合することにより得られる。典型的な有用なフルオロアルキル含有モノマーは、パーフルオロメチルエチルメタクリレート、パーフルオロエチルエチルメタクリレート、パーフルオロブチルエチルメタクリレート、パーフルオロペンチルエチルメタクリレート、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、パーフルオロデシルエチルメタクリレート、パーフルオロラウリルエチルメタクリレート、パーフルオロステアリルエチルメタクリレート、パーフルオロメチルエチルアクリレート、パーフルオロエチルエチルアクリレート、パーフルオロブチルエチルアクリレート、パーフルオロペンチルエチルアクリレート、パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、パーフルオロオクチルエチルアクリレート、パーフルオロデシルエチルアクリレート、パーフルオロラウリルエチルアクリレート、パーフルオロステアリルエチルアクリレート等である。フルオロアルキル基が4〜20個の炭素原子を含有するパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを用いることができる。
【0036】
本発明に用いるその他の好適なアクリレートモノマー組成物はまた、参照により本明細書に援用される米国特許第6,083,628号明細書および国際公開第98/18852号パンフレットに記載されている。
【0037】
ナイロン6,6、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル等といった親水性ポリマーでできたナノ繊維ウェブにおいて、水はナノ繊維ウェブを通して浸み込み、水接触角はゼロである。第1ポリマー繊維がフルオロポリマーまたはその他かかるフッ素含有成分を含有しないナノ繊維ウェブの表面が、撥液性モノマーの重合により形成されたポリマーでコートされているときは、得られるコートされたウェブは、高度な平坦さのフィルムのような連続した平面に適用されたコーティングポリマーの連続層について、理論的に最大の接触角よりも大きな水接触角をコートされた表面に意外にも有することが分かった。ナノ繊維ウェブの表面を、これらのモノマーの重合により形成されたポリマーでコートすると、表面の水の静的接触角が、少なくとも約135°である/とすることができることが分かった。この高い接触角は、ナノ繊維間の空間で空気と部分的に接触し、かつナノ繊維と部分的に接触する水滴の結果である。その後、疎水性/撥液性コーティングでコートされて、親水性ではなくなり、疎水性/撥液性コーティング処方により定義されるように表面張力が低減している。
【0038】
ナノ繊維ウェブを親水性ポリマーで作成すると、水頭はゼロである。同様に、ナノ繊維ウェブの撥アルコールまたは油性も、容易に湿潤するため、ゼロである。固体細孔を通る液体の浸透速度は、平均細孔半径、液体の表面張力および固体のその接触角のコサインに比例しており、液体の粘度および細孔のサイズに反比例している。疎水性ポリマーでコーティングすることにより、ナノ繊維の表面張力を減少することにより、水接触角が増大し、コートされたウェブの水頭を大幅に増大できることが分かった。フッ素化ポリマー等の撥液性ポリマーを用いて、水頭を有し、撥アルコール性がゼロの親水性ウェブの表面をコートすると、得られるコートされた不織ウェブの水頭は、少なくとも約3.0m、さらには6.6mと高くなる。同様に、撥アルコール性は、1〜5の範囲、さらには5〜10と高くなる(すなわち、純イソプロピルアルコール)ことが分かった。
【0039】
反対に、親水性ポリマー組成物でコートすると、本発明のウェブは、比較的親水性のポリマーナノ繊維の未コートの同等のウェブよりも少なくとも25%湿潤時間が短い。
【0040】
本発明によれば、本発明のコートされた不織ウェブは、支持スクリムと組み合わせることができる。スクリムは、コートされた不織ウェブに、改善された構造的完全性を与えることのできる任意の可撓性シート材料(不織材料、織布、編布、フィルム、紙、複合体シート等を含む)とすることができる。支持スクリムとして用いるのに好適な材料としては、織布、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、フラッシュスパンウェブ、カードおよびエアレイドウェブを含むステープル系ウェブ、ウェットレイド不織布、樹脂ボンド不織布、ニードルパンチ不織布およびスパンレースウェブ等の不織布、ポーラスフィルム、編布、開口フィルム、紙およびこれらの組み合わせが例示される。多層複合体は、1枚以上のコートされた不織ウェブ(N)をスクリム層(S)と重ねることにより、SNx構造を形成する、または2枚のスクリム層間に1枚以上のコートされた不織ウェブを挟んで、SNx構造を形成することにより(xは少なくとも1である)、作成することができる。
【0041】
試験方法
以下の限定されない実施例において、次の試験方法を用いて、さまざまな記録された特徴および特性を求めた。ASTMとは、アメリカ材料試験協会(American Society of Testing Materials)のことである。ISOとは、国際標準化機構(International Standards Organization)のことである。TAPPIとは、紙パルプ技術協会(Technical Association of Pulp and Paper Industry)のことである。
【0042】
坪量は、参照により本明細書に援用されるASTM D−3776により求め、g/m2で記録してある。
【0043】
繊維直径は次のようにして求めた。各ナノ繊維層サンプルについて、11枚の走査電子顕微鏡写真(SEM)画像を5,000倍で撮った。10本の明らかに異なるナノ繊維の直径を写真から測定し、記録した。欠陥(すなわち、ナノ繊維の塊、ポリマードロップ、ナノ繊維の交差)はなかった。各サンプルの平均繊維直径を計算した。同様に、蒸着したポリマーコーティングの厚さを、コーティング前後のナノ繊維の直径を比較することにより、10000倍の5枚のSEM画像で測定した。
【0044】
Frazier空気透過性は、多孔性材料の空気透過性の尺度であり、ft3/分/ft2の単位で記録してある。0.5インチ(12.7mm)の水の差圧で材料を通る空気流の体積を測定するものである。サンプルを通る空気の流れを、測定可能な量に制限するために、オリフィスを真空システムに取り付ける。オリフィスのサイズは、材料の多孔性による。Frazier透過性は、較正されたオリフィスを有するSherman W. Frazier Co.のdual manometerを用いてft3/分/ft2測定され、m3/分/m2の単位に変換される。
【0045】
撥アルコール/撥水性は次のようにして求めた。イソプロパノールのパーセントによって1〜10の数字(数字は、10で割ったイソプロパノールのパーセントを表している)のついた10の異なる水中アルコール溶液からそれぞれ15滴を、測定するシートの幅に沿って1インチ離して並べた。試験するシートの幅は、蒸着コートされたロールサンプルの幅に対応している。5分後、湿潤の兆候があるか、シートの他方の側に浸透していないか、各液滴を調べる。シートの撥アルコール/撥水性は、シートが湿潤の兆候を示すアルコール/水溶液の数マイナス1で計算し、これは、湿潤の兆候およびシートの他方の側に浸透しなかった溶液の最高数でもある。
【0046】
静水頭は、参照により本明細書に援用されるISO811を用いて測定され、水のcmで記録してある。この試験は、静荷重下での液体の水による浸透に対するシートの耐性を測定するものである。100cm2のサンプルを、Shirley静水頭試験機(Shirley Developments Limited,Stockport,England)製)に取り付ける。反対表面に3点の漏れが現れるまで、サンプルの片側に対して水をポンピングする。
【0047】
化学分析用電子分光法(ESCA)(XPSまたはX線光電子分光法としても知られている)を用いて、表面官能基(たとえば、ポリエチレンまたは炭化水素オリゴマーにおけるようなC−C結合、アクリレートにおけるような−C(=O)O、フルオロアクリレートにおけるような−CF2、−CF3等)を特定し、かつ、半定量的表面元素組成(すなわち、表面上の原子、すなわち、水素を除く、炭素、酸素、フッ素などの%である原子%)を提供した。ここで使用されるようなESCAのサンプリング深さは、約10nmであり、その結果として、それが提供する情報は、表面上部の化学的性質の特徴である。
【0048】
静的水接触角は、Rame−Hart:NRL C.A.Goniometerモデル100−00−115を使用して測定した。試験流体、この場合は水、を備えたシリンジを、試験サンプルの表面より上の適切な高さまで下げ、1滴を分配し、表面と接触させる。サンプル表面と液滴の接線として分度器により、正しい接触角を読むことができるように視野を調整する。
【0049】
機械方向の水ウィッキング速度を、サンプル毎に、3つの38mm×160mmの試料について測定した。600mLのレベルまで水を入れたガラスビーカーで、25mmのしるしを付けたところまで試料を下げた。水の先端が38mmのラインと交差したら、5分間にわたってタイマーでの計測を開始し、そのときの水の先端の時間を読み取り、記録した。ウィッキング速度をmm/5分で計算した。
【0050】
サンプル毎の3つの試料における4滴の液滴の湿潤時間を、液滴が表面についてから、湿潤によりウェブを通って見えなくなるまでの時間で測定した。
【実施例】
【0051】
2つの親水性および1つの疎水性/撥液性モノマー処方を、以下の実施例では用いた。親水性処方1(親水性1)は、カルボン酸とスルホン酸変性アクリレート(例えば、β−カルボキシエチルアクリレート、スルホン酸アクリレート等)およびトリアクリレートモノマー(例えば、SR9035、SR351等)の混合物である。親水性処方2(親水性2)は、トリアクリレートモノマー(例えば、SR9035、SR351等)とポリエチレングリコールオリゴマー(例えば、ポリエチレングリコールフェニルエーテル等)の混合物である。疎水性/撥液性処方(撥液性)は、ゾニル(Zonyl)(登録商標)TMとジアクリレートモノマー(例えば、SR238、SR9003等)の混合物である。
【0052】
SR351、SR9035、SR238およびSR9003は、Sartomer Company)(Exton,PA)より市販されている。Zonyl(登録商標)TMフッ素化テロマーBメタクリレートは、E.I.du Pont de Nemours and Company)(Wilmington,DE)より入手可能である。
【0053】
実施例1〜9
以降、本発明を、以下の実施例においてより詳細に説明する。国際特許公開国際公開第2003/080905号パンフレットに開示されたような本発明のエレクトロブローイングプロセスおよびナノ繊維ウェブを形成する装置を用いて、以下の実施例の連続ナノ繊維の不織ウェブを作成した。
【0054】
坪量が39g/m2、厚さが110μmのナノ繊維の不織ウェブを、純度99%のギ酸(Kemira Oyj,Helsinki,Finland)より入手可能)24重量パーセントで、密度が1.14g/ccのナイロン6,6ポリマー(E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,Delaware)の溶液をエレクトロブローイングすることにより作成した。不織ウェブの繊維直径範囲は、約200〜約800nmであった。
【0055】
以下の各実施例について、幅18インチ(46cm)の連続ナノ繊維ウェブ18のサンプルを、リーダーシートに取り付けて、図2に概して示されるように、供給ロール、プラズマ前処理、モノマーまたはオリゴマー蒸気を導入できるフラッシュ蒸発ノズル、モノマーまたはオリゴマーを硬化できる電子ガンおよび巻き上げロールを備え、任意の追加のモノマー入口21およびフラッシュ蒸発装置20のない真空チャンバに入れた。真空チャンバを、5×10-4トル未満までポンプダウンした。サンプルをまず、1kWおよび40kHzで、Ar/N2(80/20)プラズマ前処理に露出した。
【0056】
不織ウェブを、制御された速度で真空チャンバを通して移動しながら、モノマーまたはオリゴマー、あるいはモノマーおよび/またはオリゴマーブレンドを、制御された速度でノズルを通してフラッシュ蒸発器に供給した。所望の時間後、凝縮したモノマー/オリゴマーコーティングを、電子ビームを用いて硬化した。モノマーの不織ウェブへの堆積と、その硬化との間の時間を制御した。これは、「硬化までの時間」と呼ばれる。例えば、用いるモノマー処方、処方供給速度、ウェブ速度、硬化までの時間および理論表面被覆率を表1に示す。理論表面被覆率は、モノマー供給速度、ウェブ速度およびウェブ幅に基づいて計算される。モノマー/オリゴマーの密度は1g/cc、モノマー凝縮および蒸着効率は100%、コートされるウェブ表面は平坦と仮定される。
【0057】
実施例7〜9において、試料は両側から処理されて片側勾配と釣り合いをとり、ウェブの厚さを通してより均一な被覆率を形成する。
【0058】
表1

【0059】
モノマーがウェブに堆積するにつれて、処理側のコーティング厚さが繊維表面で増大し、繊維交点(すなわち、ウェブ繊維が交わって重なるところ)で、コーティングが蓄積するのが観察された。この後、第2のコーティングポリマーのコーティングビーズが、ウェブ繊維の表面に形成される。これらのコーティングビーズは、表面同士が近くなったときに最も起りやすいことであるが、最終的に結合し、ウェブの元のナノ繊維を接続するコーティングナノ繊維へ分離される(図1B)。
【0060】
連続ナノ繊維ウェブが、プラズマ前処理されないと、最初の合計表面被覆率が0.6g/m2と低いコーティング橋架け繊維の形成が観察された。合計表面被覆率は、両側からの処理および凝縮の0.9効率(これは非フッ素化アクリレートをカバーする)に基づいて計算され、平坦な連続表面(すなわち、蒸気が透過しない厚さのフィルム)に蓄積したコーティングの量に相当する。
【0061】
ウェブをプラズマ前処理して、モノマー蒸気により繊維表面の湿潤を促進すると、片側処理では、上述したようにして計算されたコーティング繊維の処方の最初の合計表面被覆率は、2.6g/m2である。第2ポリマーのナノ繊維の橋架けは、コーティング厚さ範囲が約60〜240nmのときに観察された。
【0062】
ESCAを用いて、対照例および実施例の表面組成を分析した。ESCAは、90度光電子出口角度で実施した。これは、約10nmのサンプリング深さに対応している。表2には、ESCAを用いて測定された、対照例の表面および実施例の処理済みおよび未処理側のフッ素、炭素、酸素、窒素および硫黄含量が含まれる。コーティング表面被覆率は、コートされた表面のパーセンテージを表しており、処理済みまたは未処理側対未処理対照表面の窒素含量(ポリアミドナノ繊維ウェブの窒素原子を表す)のESCAパーセント変化として、すなわち、(%N対照例−%N処理済み)/%N対照例×100、または(%N対照例−%N未処理)/%N対照例×100で計算される。
【0063】
表2

ND = 検出されず
【0064】
未処理の対照例表面の組成は、ナノ繊維ウェブのナイロン6,6ポリマーの組成と等価である。実施例1の場合には、未処理側の組成は、対照例の組成と等価であり(通常の測定誤差範囲内)、処理側の組成は、対照例表面とは大きく異なっていた。ポリマーコーティングの組成を含んでいたためであった。これは、コーティング組成の大半がウェブの処理側にあること、そして、コーティングが、処理側の表面を超えて浸透した場合、未処理側のコーティングがないことにより示されるとおり、厚さの僅か一部しかコートされなかったことを示している。これとは対照的に、実施例2〜6のコーティングは、未処理側までウェブの全厚に浸透した。この場合、コーティング処方の組成に関わらず、処理側と未処理側との間にコーティング被覆率の勾配が明らかにあった。実施例2〜4において、処理側から未処理側までのコーティング勾配は略同じであり、硬化までの時間が重要であることが分かる。対照的に、実施例5の大量のコーティングは、ウェブの全厚に浸透し、未処理側のナノ繊維の表面の約54%が被覆された。
【0065】
実施例9においては、実施例5に比べて、2倍の量の撥液性処方を用いたが、硬化までの時間は略7倍長く、結果的に、撥液性処方は、硬化可能となる前に、真空でポンピングアウトされたとものと考えられる。実施例9は、ここで用いた特定のコーティング処方のコーティングと硬化間の時間差を制限することを示している。
【0066】
表3には、対照例と、撥液性処方でコートされた実施例5および6についてのウェブ表面での水の接触角、ウェブの水頭および撥アルコール性の測定値が含まれる。これらのデータによれば、本発明によりコートされたナノ繊維ウェブは、極めて耐水性および耐イソプロピルアルコール(IPA)性があり、水接触角は125°を超え、さらには135°を超えることが分かる。実施例5の水頭は、意外にも高く、本発明を用いて、バリアのない(水頭がゼロの)不織ウェブを、フッ素化ポリマーナノ繊維を含む不織ウェブの変形例として極めて高いバリアを有する不織ウェブに変換することができることが分かる。
【0067】
表3

【0068】
表4には、対照サンプルと、親水性処方1および2でコートした実施例1、7および8について測定したウェブの表面でのウィッキングレートおよび水の湿潤時間が含まれる。これらのデータによれば、ナノ繊維ウェブの表面は、本発明に従って変性すると、ウィッキングレートが増大し、これに対応して、湿潤時間が減少することが分かる。
【0069】
表4

【0070】
従って、本明細書の例示のデータによれば、ポーラス繊維ウェブ材料、特に、ポーラス不織ナノ繊維ウェブに対する新しい有用な変性は、モノマーコーティングをウェブに蒸着した後、堆積したモノマーを重合することにより達成できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1A】ポリマーナノ繊維を含む未コート不織ウェブの走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図1B】本発明によるコートされた不織ウェブのSEMである。
【図2】本発明の不織ウェブを形成するのに好適な装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面を有する不織ウェブであって、平均繊維直径が約50nm〜約800nmである第1ポリマーのポリマーナノ繊維と前記ナノ繊維間の細孔とを含有し、前記ウェブの少なくとも上面で、前記ポリマーナノ繊維が、前記第1ポリマーとは異なる少なくとも第2ポリマーでコートされており、上面のナノ繊維の第2ポリマーのコーティング厚さが、下面のナノ繊維の第2ポリマーのコーティング厚さより厚い、不織ウェブ。
【請求項2】
第2ポリマーのコーティングが、前記下面のナノ繊維に存在しない請求項1に記載の不織ウェブ。
【請求項3】
前記第1ポリマーの前記ポリマーナノ繊維を接続する前記第2ポリマーのナノ繊維をさらに含む請求項1に記載の不織ウェブ。
【請求項4】
前記第2ポリマーの前記ナノ繊維が、前記第1ポリマーの前記ナノ繊維間の細孔を橋架けしている請求項3に記載の不織ウェブ。
【請求項5】
ポリマーナノ繊維の第2ポリマーのコーティングの厚さが、約15nm〜約2μmである請求項1に記載の不織ウェブ。
【請求項6】
第2ポリマーのコーティング厚さには、ウェブの厚さ全体にわたって勾配がある請求項1に記載の不織ウェブ。
【請求項7】
第2ポリマーのコーティング厚さには、ウェブの厚さ全体にわたって勾配がある請求項3に記載の不織ウェブ。
【請求項8】
下面の約2μm内のポリマーナノ繊維が、第2ポリマーでコートされている請求項2に記載の不織ウェブ。
【請求項9】
下面のポリマーナノ繊維と、下面に隣接するウェブの厚さの一部とが、第2ポリマーでコートされている請求項1に記載の不織ウェブ。
【請求項10】
前記ウェブの下面の第2ポリマーのコーティングが、前記上面からの第2ポリマーのコーティングの勾配と重なる前記ウェブの厚さ全体にわたる勾配厚さを生成する請求項9に記載の不織ウェブ。
【請求項11】
第2ポリマーが撥液性である請求項1に記載の不織ウェブ。
【請求項12】
ウェブが、少なくとも約300cmの静水頭を有する請求項11に記載の不織ウェブ。
【請求項13】
コートされた上面が、少なくとも約135°の静水接触角を示す請求項11に記載の不織ウェブ。
【請求項14】
前記第1ポリマーの繊維が、フッ素化成分を含まない請求項1に記載の不織ウェブ。
【請求項15】
前記第2ポリマーが親水性であり、コートされたウェブ表面が、未コートの同等のウェブより少なくとも25%短い水湿潤時間を有する請求項1に記載の不織ウェブ。
【請求項16】
前記第1および第2ポリマーとは異なる第3ポリマーのコーティングをさらに含む請求項1に記載の不織ウェブ。
【請求項17】
前記下面のナノ繊維が、前記第3ポリマーでコートされている請求項16に記載の不織ウェブ。
【請求項18】
不織ウェブの平均細孔サイズが、前記第2ポリマーのコーティングにより低減する請求項1に記載の不織ウェブ。
【請求項19】
不織ウェブの平均細孔サイズが、前記橋架けする第2ポリマーのナノ繊維により低減する請求項4に記載の不織ウェブ。
【請求項20】
不織布の支持スクリム;メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、フラッシュスパンウェブ、ステープル系カードまたはエアレイドウェブ、ウェットレイドウェブ、樹脂ボンドウェブ、ニードルパンチウェブおよびスパンレースウェブからなる群より選択される不織布;ポーラスフィルム;編布;開口フィルム;紙;およびこれらの組み合わせをさらに含む請求項1に記載の不織ウェブ。
【請求項21】
上面と下面を有する不織ウェブであって、第1ポリマーのポリマー繊維と、前記繊維間の細孔とを含有し、前記繊維が、前記第1ポリマーとは異なる少なくとも第2ポリマーでコートされており、第2ポリマーのコーティング厚さには、ウェブの厚さ全体にわたって勾配がある、不織ウェブ。
【請求項22】
第2ポリマーのコーティングが、前記下面のナノ繊維には存在しない請求項21に記載の不織ウェブ。
【請求項23】
不織ウェブが、前記第1ポリマーの前記繊維を接続する前記第2ポリマーのナノ繊維をさらに含む請求項21に記載の不織ウェブ。
【請求項24】
前記第2ポリマーの前記ナノ繊維が、前記第1ポリマーの前記ナノ繊維間の細孔を橋架けしている請求項23に記載の不織ウェブ。
【請求項25】
前記第1ポリマーの前記ポリマー繊維が、スパンボンド繊維、メルトブローン繊維、フラッシュスパン繊維、エレクトロスパン繊維、エレクトロブローン繊維、ステープル繊維およびこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項21に記載の不織ウェブ。
【請求項26】
織布の支持スクリム;メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、フラッシュスパンウェブ、ステープル系カードまたはエアレイドウェブ、ウェットレイドウェブ、樹脂ボンドウェブ、ニードルパンチウェブおよびスパンレースウェブからなる群より選択される不織布;ポーラスフィルム;編布;開口フィルム;紙;およびこれらの組み合わせをさらに含む請求項25に記載の不織ウェブ。
【請求項27】
前記第1ポリマーの繊維が、フッ素化成分を含まない請求項21に記載の不織ウェブ。
【請求項28】
前記第2ポリマーが親水性であり、コートされたウェブ表面が、未コートの同等のウェブより少なくとも25%短い水湿潤時間を有する請求項21に記載の不織ウェブ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−534543(P2009−534543A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504297(P2009−504297)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/008489
【国際公開番号】WO2008/054492
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】