説明

ポリマーチューブからステントをレーザ加工するためのレーザパワーの設定

複数のステントを形成するために、ポリマー製のチューブの複数のセクションのレーザ加工のパワーがチューブのセクション毎に調整されて、異なるチューブの複数のセクションから形成される複数のステントの再現性のあるストラット幅を得るレーザ加工が開示される。セクション各々のレーザ加工毎の閾値のパワーが決定され、セクション各々の加工に用いるパワーは閾値のパワーに基づいて決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントを形成するために行うチューブへのレーザ加工に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ステント等のデバイスのレーザ加工に関する。レーザ加工とは、レーザとターゲット材料との相互作用による材料の除去のことをいう。一般的にいえば、これらのプロセスにはレーザ穿孔、レーザカッティング(レーザ切断)、及びレーザによる溝加工、刻印又は罫書き(scribing)が含まれる。レーザ加工のプロセスは、光子エネルギを熱エネルギ又は光化学エネルギの形態でターゲット材料に送り込む。材料は溶融して吹き飛ばされるか、又は直接に蒸発/アブレーション(分解−気化−蒸散)することによって除去される。
【0003】
高品質のレーザによる材料加工のための超短パルスレーザの印加は、著しく高いインテンシティ(強度/輝度)、超短周期のパルス(1ピコ秒未満)及び非接触による加工の特性から特に有用である。超短パルスレーザにより、精密かつ効率的な加工が、特にマイクロスケールで可能となる。長パルスレーザ及び従来の他の製造技術に比べて、超短パルスレーザは、材料の除去をより精密に制御することができ、加工対象とする材料の選択肢が著しく広く、熱による損傷の発生を抑えて、しかも非常に清浄(クリーン)に微細形状の加工が可能である。これらの特徴により、超短パルスレーザは、マイクロ加工(微細加工)、薄膜の形成、レーザ洗浄(レーザクリーニング)、並びに医療用途及び生物学用途に適したツールとなる。
【0004】
しかしながら、基材をレーザ加工すると、基材への好ましくない熱伝達を生ずる傾向があるために、熱の影響を受ける領域が生じることになる。熱の影響を受ける領域とは、除去されていないターゲット材料の領域であって、しかし、レーザによる熱の影響を受ける領域のことである。この領域の材料の特性は、レーザからの熱による悪影響を受け得る。従って、一般的には、除去された材料より先へ伝わる熱を抑制するか、又は皆無とし、ひいては熱に影響される領域を小さくするか、なくすことが望ましい。
【0005】
レーザ加工の数多くの医療用途の内の1つに、体内の管腔への埋込みに適した、径方向に拡張可能な内部人工器官(endoprosthese)の製作がある。「内部人工器官」は、体内に設置される人工のデバイスを指す。「管腔」とは、血管等の管状器官の空洞を指す。
【0006】
ステントはそのような内部人工器官の一例である。ステントは、一般的に円柱状の形状をしたデバイスで、血管又は他の尿路及び胆管等の解剖学的管腔の一セグメントを開いた状態に保持し、時には拡張するよう機能する。ステントは、血管中のアテローム硬化型狭窄の治療によく使用される。「狭窄」は、体内の導管又は開口部の直径が狭小化又は収縮することを指す。そのような治療においてステントは、身体の血管を補強し、血管系における血管形成の後の再狭窄を阻止する。「再狭窄」は、一見して成功裏に(例えば、バルーン血管形成、ステントによる治療又は弁形成によって)治療を受けた後の、血管内又は心臓弁における狭窄の再発を指す。
【0007】
ステントを用いた患部又は病変の治療は、ステントの送達及び展開の両方を含む。「送達」は、体内の管腔を通して、治療を要する血管内の病変部のような領域にステントを導入及び輸送することを指す。「展開」は、治療領域において管腔内でステントを拡張することを指す。ステントの送達及び展開は、カテーテルの一端部の回りにステントを配置すること、皮膚を通して体内の管腔へカテーテルの端部を挿入すること、体内の管腔内のカテーテルを所望の治療位置へ進めること、治療位置でステントを拡張すること、及び管腔からカテーテルを除去することによって成し遂げられる。
【0008】
バルーン拡張型ステントの場合、ステントは、カテーテル上に配置したバルーンの周囲に設置される。ステントの設置は、典型的にはステントをバルーンに圧着する(圧縮して縮める)、又は押し付けるステップを備える。次いでバルーンを膨らませることによって、ステントを拡張する。次いでバルーンを収縮させ、カテーテルを引き抜く。自己拡張型ステントの場合には、ステントは、引込み式シース又はソックス状のカバーを介してカテーテルに固定してもよい。ステントが体内の所望の位置にある時点で、シースを引き抜いて、ステントを自己拡張させることができる。
【0009】
ステントは、いくつかの機械的な必要条件を満たすことができなければならない。第1に、ステントは、構造上の負荷、即ちステントが血管の壁を支えることによりステントにかけられる径方向の圧縮力に耐えることができなければならない。したがって、ステントには適切な径方向の強度及び剛性がなくてはならない。径方向の強度は、径方向の圧縮力に抵抗するステントの性能であり、ステントの周方向の強度に起因する。
【0010】
鼓動する心臓が誘発する周期的な負荷を含む、様々な荷重がステントにかかることになるが、ステントは、一度拡張されれば、そのサイズ及び形状を耐用年数の間十分に維持しなくてはならない。例えば、径方向の荷重はステントを内向きに後退(リコイル/スプリングバック)させてしまうことがある。一般的に、後退(リコイル/スプリングバック)は最小限にすることが望ましい。加えて、ステントは、圧着、拡張、及び周期的負荷を許容するために可撓性を十分に持っていなくてはならない。破壊は、ステントの性能に逆行する影響を与える。また、最終的には、有害な血管反応を誘発しないように、ステントは生体適合性を有さねばならない。
【0011】
ステントの構造は、典型的には、当業界でストラット(支柱)あるいはバーアーム(棒腕)としばしば呼ばれる相互接続する構造要素の、パターン又は網目を含むスキャフォールド(骨格)により構成される。スキャフォールドはワイヤ、チューブ、又は円柱形状に材料が巻かれたシートから形成することができる。スキャフォールドは、ステントを径方向に圧縮(圧着可能なように)及び径方向に拡張(展開可能なように)できるように設計されている。
【0012】
ステントは、金属及びポリマー等の数多くの材料から製造されている。生体分解性のポリマー材料も含まれる。生体分解性のステントは、多くの治療用途において望ましい。それら多くの治療用途においては、例えば血管開通の維持及び/又は薬物送達等の、意図された機能が遂行されるまで、身体内のステントの存在として限られた期間の間必要とされる。
【0013】
ステントは、レーザ加工を用いてチューブ又はシート上にパターンを形成することによって製造することができる。しかし、前述のように、レーザ加工を用いるとポリマーを含む材料の特性に悪影響を及ぼすことがある。
【発明の概要】
【0014】
本発明の多様な実施の形態は、同一の設計のステントを形成する際に使用するための同一の種類のプロセシング(処理)ステップによって各々が個別に形成されるポリマー製のチューブの複数のセクションを提供するステップと;チューブの複数のセクションの各々からレーザ加工によってステントを形成する際に使用するためのレーザのパワーレベルをチューブのセクション毎に決定するステップと;チューブのセクション毎に決定されるレーザのパワーレベルを用いて、ステントパターンをチューブの複数のセクションにレーザ加工して複数のステントを形成するステップとを備え;ステントパターンは複数のストラットを有し、チューブのセクション毎に決定されるレーザのパワーレベルは、異なるチューブの複数のセクションから形成されるステントパターンにおいて再現性のあるストラット幅を得るように選定される、複数のステントを製造する方法を含む。
【0015】
本発明の更なる実施の形態は、ポリマー製のチューブの複数のセクションをレーザ加工して、複数のストラットを有する複数のステントを形成するステップを備え;チューブの複数のセクションは同一の設計の複数のステントを形成する際に使用するための同一の種類のプロセシングステップによって各々個別に形成され;レーザ加工のパワーは、異なるチューブの複数のセクションから形成される複数のステントの再現性のあるストラット幅を得るためにチューブの複数のセクション毎に調整される、複数のステントを製造する方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、ステントの例を示す図である。
【0017】
【図2】図2は、一の実施の形態のチューブをレーザ加工するための加工制御システムの一部を示す図である。
【0018】
【図3】図3は、レーザビームがチューブと相互作用する領域を軸方向に拡大して示す図である。
【0019】
【図4】図4は、ストラット幅とチューブを製造するためのレーザのパワーとの関係を異なる2つの径方向の拡大率について示す図である。
【0020】
【図5A】図5Aは、70mW出力(パワー)のレーザを用いて形成されたステントパターンのイメージを示す図であり、アイランド及びフラッシュ(バリ)を示す図である。
【図5B】図5Bは、70mW出力(パワー)のレーザを用いて形成されたステントパターンのイメージを示す図であり、フラッシュを示す図である。
【図5C】図5Cは、70mW出力(パワー)のレーザを用いて形成されたステントパターンのイメージを示す図であり、粗面を示す図である。
【図5D】図5Dは、70mW出力(パワー)のレーザを用いて形成されたステントパターンのイメージを示す図であり、フラッシュ及びグリッタを示す図である。
【0021】
【図6A】図6Aは、90mW出力(パワー)のレーザを用いて形成されたステントパターンのイメージを示す図であり、4scfhのヘリウム冷却ガスの流れの条件下でカッティングされたときの溶融及びグリッタの残存を示す図である。
【図6B】図6Bは、90mW出力(パワー)のレーザを用いて形成されたステントパターンのイメージを示す図であり、4scfhのヘリウム冷却ガスの流れの条件下でカッティングされたときの溶融及びグリッタの残存を示す図である。
【図6C】図6Cは、90mW出力(パワー)のレーザを用いて形成されたステントパターンのイメージを示す図であり、6scfhのヘリウム冷却ガスの流れの条件下でカッティングされたときに溶融及びグリッタが残存していないことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の複数の実施の形態は、再現性のあるステント寸法を得るためにレーザシステムのパワーを設定するステップを含む、ポリマー製のチューブをレーザ加工してステントを製造する方法に関する。本方法は他のレーザ加工技術にも適用できるが、特に、基材の超短パルスレーザ加工に関連する。これらの実施の形態は、ステント等の埋込型の医療デバイスの微細かつ複雑な構造の製造に適している。「超短パルスレーザ」とは、約1ピコ(=10−12)秒より短いパルス幅、即ち、持続時間を有するパルスをいう。「パルス幅」は時間に対する光パルスの持続期間をいう。持続時間は2つ以上の方法で定義できる。詳細には、光パワーの時間関数(時間的パルス)の半値全幅(FWHM)としてパルス持続時間を定義できる。
【0023】
超短パルスレーザには、ピコ秒(ps)及びフェムト(=10−15)秒(fs)の両レーザを含めることができる。超短パルスレーザは、従来の連続波及び著しく長いパルスを有する長パルスレーザ(ナノ(10−9)秒(ns)レーザ)と明瞭に区別できる。詳細には、本実施の形態の方法は、約10−13秒より短いパルスを有するフェムト秒レーザを利用する。フェムト秒レーザの代表例としては、限定はしないが、Tiサファイアレーザ(735nm乃至1035nm)及びエキシマダイレーザ(220nm乃至300nm、380nm乃至760nm)が含まれる。
【0024】
前述のように、ステントのような埋込型の医療デバイスの製造に際して、前述のレーザ加工方法の実施の形態を用いることができる。一般に、ステントは、埋め込まれる体内の管腔と相性が良い、略任意の構造のパターンを有することができる。典型的には、ステントは、複数の円周リングと、長手方向に延在して相互接続されているストラット又はバーアームの構造要素とのパターン又は網目で構築される。一般に、ストラットは、血管の管腔壁と接触し、血管の開通性を維持するように設計されたパターンで編成される。
【0025】
ステントの例示の構造を図1に示す。図1は、ストラット12で設けられたステント10を示す。ステント10は、連結するストラット又はリンク16によって連結された相互に連結する円筒リング14を有する。本明細書で開示する複数の実施の形態は、ステントの製造、又は図1で示すステントパターンに限定されない。本実施の形態は、他のステントパターン及び他のデバイスに容易に適用することができる。パターンの構造のバリエーションは、ほぼ無限である。製造するステントの外径は0.2乃至5.0mm(圧着及び展開する前)とすることができる。冠状動脈のための用途では、製造するステントの直径は2.5乃至3.5mmとすることができる。ステントの長さは約6乃至12mmとすることができる。
【0026】
本実施の形態は、特に、ステントを形成するためのポリマー基材のレーザ加工に関連するが、本方法は、金属及びセラミック、又は、ポリマー、金属及びセラミックの組合せで構成される複合材料等の他の材料にも適用することができる。ポリマーは、生体安定性、生体吸収性、生体分解性、又は生体浸食性とすることができる。生体安定性ポリマーは生体分解性ではないポリマーをいう。生体分解性、生体吸収性、及び生体浸食性、並びに分解性、浸食性、及び吸収性の用語は、交換可能に用いられ、血液等の生体内の流体に曝されると完全に浸食され、又は吸収されると共に、身体により次第に分解、吸収、及び/又は除去されるポリマーをいう。更に、治療用のステントは、活性の薬剤もしくは薬品、又は活性の薬剤もしくは薬品を含むポリマーキャリアによりステントの表面をコーティングして製造してもよい。薬剤コーティングは、典型的には、ステント本体に塗布するか、又はレーザ加工で形成した後に、スキャフォールドへ塗布する。コーティングはスキャフォールドのストラットより著しく薄いのが典型的であり、例えば、ストラットの厚さを140乃至160μmとしたとき、コーティングの厚さを1乃至5μmとすることができる。
【0027】
ステント等の埋込型の医療デバイスは、そのデバイスを形成する構造をレーザ加工によって製造することができる。構造における選択された複数の領域から材料を除去し、それによりデバイスの構造を形成する。具体的には、レーザで薄壁のチューブの部材を加工することによってステントを製造することができる。チューブの選択された複数の領域をレーザ加工によって除去することで所望のパターンを有するステントを得ることができる。具体的には、チューブの表面の上方でビームを平行移動又は走査させて、チューブの壁の全体に広がる溝又は切り口(の材料)を除去する。切り口の開始点と終了点とが一致すると、切り口が囲む領域は落下する、つまり除去される。代替として、又は追加として、チューブを平行移動及び回転させて加工することもできる。
【0028】
例示の複数の実施の形態では、図2に概略的に図示するような機械加工制御(CNC)されたレーザを用いてチューブからステントを切り出すことができる。図2は、一の実施の形態のチューブをレーザ加工するための加工制御システムの一部を示す図である。図2では、チューブ200をレーザ212に対して位置決めするために、チューブ200を加工制御装置208の回転コレットチャック(回転コレット固定器)204に取り付ける。加工機のコード化された命令に従って、チューブ200は回転し、同じく機械加工制御されたレーザ212に対して軸方向に移動する。レーザはチューブから材料を選択的に除去し、パターンカッティングされたチューブが得られる。こうして、チューブには不連続な(離散した)パターンが切られてステントが完成する。
【0029】
図3は、チューブ414と相互作用するレーザビーム408を拡大して示す図である。レーザビーム408は集束レンズ338によりチューブ414上に合焦される。チューブ414は、制御された回転コレット337により一端を支持され、付加的なチューブ支持ピン339により他端を支持される。ビームが基材をカッティングし、基材がアブレーション(分解−気化−蒸散)するとき、同軸に設けられたガスジェットアセンブリ340が、ノズル344を通じて吹き付ける冷却ガスのジェット又はストリーム342を導き、それにより加工面が冷却される。ガスのストリームは切り口からの切屑の除去及びビーム近傍の領域の冷却を助ける。ガスの供給は矢印354で示される。同軸に設けられたガスジェット用のノズル344は、焦点に集束されたビーム352の周囲に集中させる。幾つかの実施の形態では、供給される冷却ガスの圧力は30乃至100psiである。冷却ガスの例示の流量は2乃至10scfhである。例示の冷却ガス又はプロセスガスにはヘリウム、アルゴン、窒素又は酸素が含まれる。
【0030】
レーザビームがチューブの上面を切り抜いたとき、ビームが切断部からの溶融した材料や切屑と共に、チューブ414の内側の対向する表面に衝突(作用)するのを防ぐために、レーザビーム352を遮断することが求められる場合もあり得る。その場合には、マンドレルビームブロック(マンドレルビーム遮断器)362により支持されるマンドレル360をチューブの内側に配置し、パターンがカッティングされるときにチューブ414の底部で回転させる。これは、内径側の対向する壁面を保護する、ビーム/切屑の遮断器として機能する。
【0031】
本発明は、5乃至10fs、10乃至80fs、80乃至120fs、120乃至500fs、又は500乃至1000fsのパルス幅を有するフェムト秒パルスレーザに適用することができる。本発明は、1000fs(1ps)を超えるパルス幅、10psを超えるパルス幅、特には10乃至15psのパルス幅を有するレーザにも適用可能であると考えられる。
【0032】
ステント用のポリマーをフェムト秒レーザで加工するために用いる繰返しレートは、概ね1乃至5kHzである。このようなレーザ加工のパルス当たりエネルギは概ね2乃至1000μJであり、より狭くは20乃至30μJである。このようなレーザ加工のフルエンス(流束量)は、概ね1乃至20J/cm2、より狭くは5乃至15J/cm2である。パルス当たりの平均パワー、即ち、ビームのパワーは10乃至1000mW、より狭くは50乃至150mWとすることができる。ポリマーをレーザ加工するためには固定及び可変の波長のレーザを使用することができる。例示の固定波長レーザの波長は、248nm、532nm、又は800nmとすることができる。
【0033】
本発明の複数の実施の形態は、ポリマーチューブをレーザ加工するために用いるフェムト秒レーザのパワーの決定に関する。カッティングの好ましくない影響を低減又は皆無にするパワーをチューブのセクション毎に決定する。このパワーの決定により、レーザ加工に先立って個別にプロセシングされる、他のチューブの複数のセクション群(のステント寸法)と比較すると、ストラット幅等のステント寸法の再現性の向上が提供される。
【0034】
本実施の形態の方法は、同一の設計のステントを形成する際に使用するための同一の種類のプロセシングステップによって各々が個別に形成されるポリマー製のチューブの複数のセクションを提供するステップを含む。同一の設計とは、ステントパターン及び構造要素の寸法、又は厚さ並びに幅を含むステントパターンのストラット等の特徴が同一であることをいう。設計の他の特徴には、半径方向の強度及び破壊靱性等の機械的特性が含まれる。特徴には更に、ポリマーの配向、結晶化度、及び半結晶質ポリマーの結晶サイズ等のモルフォロジ(結晶形態)の特性が含まれる。ステント前駆体の構造、即ち、チューブの複数のセクションのプロセシング(ステント前駆体の構造は、プロセシングによりもたらされる)は、異なる時間に製造されるチューブの複数のセクションのこのような特徴が可能な限りばらつかないように行われる。
【0035】
チューブのセクション毎に、チューブの複数のセクションの各々からレーザ加工によってステントを形成する際に使用するためのレーザのパワーレベルが決定される。本方法は、チューブのセクション毎に決定したレーザのパワーレベルを用いて、ステントパターンをチューブのセクションにレーザ加工して、複数のステントを形成するステップを更に含む。このステントパターンには複数のストラットが含まれる。チューブのセクション毎に決定されたレーザのパワーは、異なるチューブの複数のセクションから形成されるステントパターンにおいて、ストラットが再現性のある幅をもつように選択される。
【0036】
本願発明者等は、複数のPLLAチューブを加工して複数のステントを形成するためにフェムト秒レーザ(120fs、フルエンス=10±5)を使用した。加工パワーは、チューブの全体を加工してストラットを形成するために求められる最小値よりも著しく高いと考えられる値に設定された。本願発明者等はチューブの全てのロットに同一のパワーを用いた。チューブの「ロット」とは、所与の時間に製造、又はプロセシングされたチューブのセクション、例えば、押出し加工され、次いで半径方向に拡張されたチューブのロットを指す。
【0037】
具体的には、本願発明者等は、同一のパワー、同一のレーザで異なるロットをレーザ加工すると、異なる品質及び異なるストラット幅を有するステントができあがることを予期せず見出した。異なるロットは同一材料のPLLAであり、壁の厚さは全て同一であった。異なるロットは、同一のプロセス条件又は僅かに異なるだけのプロセス条件により、異なる時間に製造(プロセシング)されていた。
【0038】
本願発明者等は、異なるチューブのロットをレーザ加工して得られたステントの品質及びステントの寸法が、レーザのパワー(のレベル)に極端な感受性を持っていることを観察した。「品質」とは、カッティングされたステントパターンの幾つかの様相をいう。一の様相はカッティングの滑らかさの程度である。低品質のカッティングは、過度にカッティングされて除去された部分から引き裂かれたカッティングされていない材料を指し、フラッシュ(バリ)のような、カッティング面に粗い部分を持つことがある。低品質のカッティングの他の様相は、反射面を形成する程大きな粒子として再堆積した材料を指す、「グリッタ」である。ステントパターンの部分的な過度の溶融は、低品質のカッティングの他の様相である。低品質のステントパターンの更に他の様相は、切り口により囲まれる領域がまだストラットに付着しているためにカッティングパターンから落下しない、ステントパターンの一部とする意図がないチューブの一部である「アイランド(島状部)」を指す。アイランドは、ビームが除去すべき領域の周囲を巡るときに、全行程を通してチューブの壁を貫通してカッティングするだけのビームのパワーが不十分であるときに生じることがある。
【0039】
異なるチューブのロットを加工する際の差異は、異なるチューブの(複数の)ロットにおけるポリマーのモルフォロジ(形態)の変動(ばらつき)から生じる可能性を有する、パワーに対する感受性に起因する。モルフォロジの差異は非常に僅かなプロセス条件の差異から生じることさえある。プロセス条件の僅かな差異でも、チューブの複数のロットの間でこのようなモルフォロジの変動を生じる可能性がある。しかし、本願発明者等は、加工前のプロセス条件のこのような僅かな変動が、カッティングの品質及びストラットの寸法に劇的に影響するということを把握していなかった。本願発明者等は、チューブの異なる複数のロット毎にパワーを調整することで、これらの変動に対する予期されていなかった感受性を補償することが極めて重要であることを見出した。
【0040】
前述のプロセシングには、押出し工程によりポリマー樹脂からチューブを成形するステップと、次いでチューブを半径方向に拡張し、及び軸方向に延伸するステップとが含まれる。ステントは、拡張され、延伸されたチューブにステントパターンをレーザ加工するステップにより形成される。チューブが半径方向に拡張され、かつ軸方向に延伸されることで、チューブ及びチューブから製造されるステントの半径方向の強度及び破壊靱性が増大する。
【0041】
PLLA等の半結晶質ポリマーには、アモルファス(非晶質)領域と分離され、即ち、アモルファス領域に取り囲まれる結晶領域が含まれる。モルフォロジ(結晶形態)には、限定はしないが、結晶化度、ポリマー鎖の分子の配向、及び結晶サイズの程度が含まれる。分子の配向とは、ポリマー鎖の長手方向軸又は共有結合軸に沿うポリマー鎖の相対的な配向をいう。配向とは、結晶ラメラの配向及びアモルファス領域内のポリマー鎖の配向を指すことができる。
【0042】
押出し工程によるチューブの製造に関して、押出し機の代表的な例には、単軸スクリュー押出し機、インターメッシュ共回転/逆回転2軸スクリュー押出し機、及び他のマルチスクリュー咬合押出し機が含まれる。例えば、ステント用のチューブを1インチ単軸押出し機で成形することができる。押出し機の内部の温度範囲はポリマーのTm(溶融温度)を少なくとも摂氏20度上回る温度範囲とされる。例えば、PLLA用の押出しの例示の温度範囲は摂氏200度乃至摂氏225度である。PLLAチューブのための他の例示のプロセス条件には、押出し機の内部での約10分間の滞留時間、室温水槽での急冷、ダイ(口金)/急冷(水槽)間の3/4インチの距離、16フィート/分の引抜速度、2000psiのバレル(シリンダ)圧力、及び約3:1の縮小比(押出し型の内径と引抜かれたチューブの内径との比)が含まれる。
【0043】
チューブの内側の圧力を上昇させるステップと、チューブの円筒軸に沿って張力を印加するステップとにより、ポリマーチューブはそれぞれ半径方向に拡張され、軸方向に延伸される。チューブの内側の圧力は、チューブ内に流体を送り込むステップにより、チューブ内の内部圧力を増大させることで上昇させる。好ましくは、張力を一端に印加し、他端を静止(固定)状態に保持する。チューブは、ポリマーのガラス転移温度(Tg)と溶融温度(Tm)との間の温度に加熱されて、半径方向に拡張され、チューブの軸方向に延伸されることを許容する。
【0044】
プロセシングの開始にあたって、チューブは円筒部材、即ち、(モールド)型の中に配置される。チューブが型の内面に向けて拡張し、それにより拡張したチューブの外径が型の内径と等しくなるようにプロセスパラメータを調整する。チューブの一端を封止又は塞ぎ、空気、窒素、酸素、アルゴン等のガスをポリマーチューブの他端に送り込んでチューブ内の圧力を上昇させる。
【0045】
チューブの一部に加熱ガスを吹き付ける一本以上のノズル等の熱源でチューブを加熱する。ノズルを近位端から遠位端までチューブの円筒軸に沿って平行移動させ、(モールド)型の軸方向のセクション又は部分と、型内部のチューブの軸方向のセクション又は部分とを加熱するノズル(複数であってもよい)が平行移動するときに、型の軸方向のセクション又は部分に加熱ガスを吹き付ける。ノズルの平行移動と共に加熱された部分が拡張するように、温度及びノズル速度を調整する。ノズルの平行移動に従って半径方向の拡張が生じ、チューブの円筒軸に沿って半径方向の拡張が伝搬する。ノズルが平行移動するとき、チューブの一端は、一定速度であることが好ましい、規定の速度で牽引される。
【0046】
拡張及び軸方向の延伸が同時に開始され、同時に終了するようにノズル速度及び牽引速度を調整する。更に、変形されるポリマーの特性は変形速度に概ね依存するのでノズル速度及び牽引速度を一定とするのが好ましい。
【0047】
拡張及び延伸に先立って、変形温度近くまでチューブを予備加熱する。予備加熱は圧力及び張力を増大させずにチューブの長手方向に沿って平行移動するノズルにより行うことができる。拡張及び延伸が完了してから、圧力を減少させる前又は後、及び/又は張力を減少させる前又は後に、ポリマーチューブを冷却する、即ち、Tg(溶融温度)未満の温度まで冷却することを許容する。チューブを冷却することにより、チューブは成形後の適切な形状、サイズ、及び長さを確実に維持できる。このように説明した方法で拡張したチューブのセクションがチューブの「ロット」とされる。
【0048】
ロットとロットとの間のプロセシング条件の何らかの僅かな変動が、ロットとロットとの間のモルフォロジの差異を生み出すことがある。変動は、前述のように、所望する方法で拡張できるようにするプロセシング条件の調整に起因することがある。プロセシング条件のこのような僅かな変動は、再現性のあるストラットの寸法を有する高品質に加工されたステントを得るためのパワーの要求を思いのほか変えてしまう。
【0049】
PLLAチューブの変形の例示のプロセシング条件には、摂氏75乃至130度の変形温度、110乃至140psiの拡張圧力、0.2乃至1.2mm/sの平行移動速度、0.4乃至4.0mm/sの牽引速度が含まれる。
【0050】
チューブの半径方向の拡張のパーセント値(%RE)は、100%×(拡張されたチューブの内径/元のチューブの内径−1)である。軸方向の延伸(伸び)のパーセント値(%AE)は、100%×(延伸されたチューブの長さ/元のチューブの長さ−1)である。例示の%REは200乃至500%であり、%AEは20乃至200%である。拡張されたPLLAチューブ及び拡張されたPLLAチューブから製造されたステントの例示の結晶化度は、20乃至50%、より狭くは45乃至50%である。
【0051】
品質と再現性のためのパワーの選定に加えて、加工される基材の熱の影響を受ける領域を低減するためにもパワーが選定される。前述の通り、熱の影響を受ける領域は、除去されない加工対象材料上の領域であって、しかし、レーザからの熱エネルギによって影響を受ける領域のことである。熱の影響を受ける領域内では、領域内の材料の特性は距離の関数として変化する。ステントの性能は、熱の影響を受ける領域における特性の変動を低減又は皆無にすることにより、向上させることができる。ステントの性能には、開通性並びに低いリコイル(スプリングバック)を十分に維持するだけの半径方向の高い強度、及び圧着し、展開したときのクラックに対する耐性を有することが含まれる。
【0052】
本願発明者等は、熱の影響を受ける領域の特性の変動が(レーザ加工の)パワーに依存することを見出した。(レーザ加工の)パワーが増大すると、深さ及び特性変動に変化が生じる。これはナノインデンテーション(ナノ押込み)試験法の結果により立証されている。従って、(レーザ加工の)パワーは低い方が好ましい。
【0053】
本発明の幾つかの実施の形態では、選択したチューブのロットからステントを製造するための加工パワーの選定には、チューブの壁を貫通して、切り口、即ち、溝をカッティングするレーザのパワーレベルの近似の閾値を決定するステップが含まれる。閾値のパワーは、チューブの異なる場所によって厚さ及び特性に僅かな変動があることに関わらず、ビームをチューブの長さの全体に走査させたとき、チューブの長さにわたってレーザビームが完全にチューブをカッティングできるパワーのレベルと一致させてもよい。レーザを長さに沿って走査するとき、長さに沿って全長にわたって、カッティングされる部分と、長さに沿ってカッティングされない部分とが生じることとなるパワーのレベルは、閾値のパワー未満である。パワーの閾値を決定するためのこのセクションの長さは、0.2乃至20mm、又はより短くは0.2乃至0.5mm、0.5乃至1mm、1乃至5mm、5乃至10mm、又は10乃至20mmであってよい。
【0054】
チューブのロットの各々が異なる閾値のパワーのレベルを持つようにしてもよい。厚さ、半径方向の拡張のパーセント、軸方向の延伸(伸び)のパーセント、又は結晶化度等の、材料に対する何らかの差異又は変化によりパワーの閾値を変更してもよい。本願発明者等は、PLLAチューブの異なる複数のロットが、異なる複数の閾値のパワーのレベルを有することを見出した。
【0055】
幾つかの実施の形態では、閾値のパワーは、チューブのロットから複数のステントをレーザ加工するために用いるパワーであるステントをカッティングするパワーとしてもよい。他の実施の形態では、ステントをカッティングするパワーのレベルが閾値のパワーを上回ってもよい。このような実施の形態では、ステントをカッティングする例示のパワーのレベルを、A×閾値のパワーとしてもよく、ここで、「A」は100乃至120%、より狭くみると、100乃至110%である。「A」は、100乃至102%、102乃至105%、105乃至108%、108乃至112%、又は112乃至120%としてもよい。他の実施の形態では、「A」は120乃至150%であってもよく、又は150%を越えてもよい。
【0056】
本願発明者等は、ステントをカッティングする好適なパワーレベルが閾値のパワーレベルの110%であることを見出した。幾つかの実施の形態では、そのパワーを用いるステントパターンのカッティングには、フラッシュ(バリ)、グリッタ、又は溶融部分が皆無であるか、又はほとんど発生しない。
【0057】
幾つかの実施の形態では、前述のようにチューブの壁を貫通して、切り口、即ち、溝をカッティングできると考えられる初期のパワーレベルを初めに選定することで、閾値のパワーを決定してもよい。次いで、初期のパワーレベルでチューブのある長さを加工することによりその仮定を検証する。次に、チューブのある長さを、初期のパワーよりも低いパワーレベルで加工し、加工した部分を検査する。パワーを不連続にステップダウンさせていき、レーザを全長に渡って走査させた後、加工長さに沿って全体にカッティングされた部分と、カッティングされない部分とが生じるパワーレベル(「閾値未満のパワー」)が見付かるまでこのプロセスを繰り返す。
【0058】
幾つかの実施の形態では、閾値未満のパワーを超えるように選定された最小のパワーレベルを閾値のパワーとして選定することができる。他の複数の実施の形態では、2つの最小のパワーレベルの間の1つ以上の追加のパワーレベルについて試験を行い、より正確な閾値のパワーの値を得ることもできる。
【0059】
[実施例]
【0060】
以下に説明する実施例及び実験データは、説明を目的とするに過ぎず、本発明を限定する意味合いは全くない。以下の実施例は本発明の理解を深めるためのものであり、本発明が実施例の特定の材料又は手順に限定されないことは理解されることであろう。
【実施例1】
【0061】
以下の実施例のセットにより、PLLAチューブの4つのロットに対してレーザ加工のパワーを決定した結果を説明する。チューブの各ロットは100%のPLLA樹脂を押出し加工で成形したものである。チューブの寸法、即ち、押出し寸法は、外径(OD)=0.066インチ、内径(ID)=0.025インチである。押し出されたPLLAチューブは、前述のプロセシングにより半径方向に拡張されている。目標とする%REは400%である。
【0062】
チタンサファイアの固定波長の複数のレーザを800nmの波長で使用した。レーザのパルス幅は95乃至120ps、繰返しレートは5kHzである。フルエンスは10±5kJ/cmである。所与のレーザに対して、各ロットは、決定された選定加工パワーが異なることが見いだされた。更に、所与のロットのチューブに対して、選定された加工パワーがレーザ毎に異なっていた。様々なロットのチューブに対して決定された選定加工パワー(110%×閾値のパワー)は、90乃至140mWであった。
【0063】
表1は、3つの異なるレーザ毎に、4つのロットのチューブで選定された加工パワーを示す。また、チューブのロット毎の変形(プロセシング)パラメータを表2に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【実施例2】
【0066】
ストラット幅に対するパワー及び半径方向の拡張の程度の影響を調査した。本願発明者等は、異なる複数のロットのチューブを同一のパワーで加工した場合に、再現性のあるストラット幅が得られなかったことを観察した。本願発明者等は、所与のパワーに対して、半径方向の拡張の程度が異なるチューブから異なるストラット幅が得られたことも観察した。レーザのパワーはその都度調整して所望のストラット幅を得なければならなかった。
【0067】
300%及び400%の2つの異なる%REを有する2つのPLLAチューブを、幾つかのパワーレベルでレーザ加工することにより、パワー及び半径方向の拡張の程度の影響を調査した。複数のステントの各々のストラット幅を測定して、ストラット幅に対するパワーの影響を判定した。チューブの拡張した内径及び外径は、略同一であった。
【0068】
ストラット幅のデータの要約を表3に示し、そのデータを図4にプロットする。
【0069】
【表3】

【0070】
表3及び図4のデータは以下を立証する:
1.所与のロットのチューブをレーザ加工するとき、パワーを増加させると、ストラット幅は狭くなる。その傾向は、調査した半径方向の拡張が異なる2つのチューブで明らかであった。
2.半径方向の拡張の程度はストラット幅に影響する。
【0071】
2つのグループは、同一のレーザ及び同一のステントパターンのプログラムによりカッティングされた。測定は、ピンゲージで較正したKeyenceの200倍光学顕微鏡により実施した。パワー依存性は、全ての複数のチューブに同一のパワーを使用するとしたら、異なる複数のストラット幅が得られるであろうことを示す。
【実施例3】
【0072】
2つの異なるパワーレベルでPLLAチューブからカッティングされたステントパターンは、カッティングの品質に対するパワーの影響を示した。PLLAチューブの半径方向の拡張の程度は400%であった。拡張されたチューブは、外径0.136インチ、ノミナル(公称)の壁厚は0.006インチであった。レーザのパルス幅は92fs、ヘリウムガスを吹き出す冷却ノズルの高さは0.35であった。吹き付けは1150ft/分であった。 ステントパターンは2つのパワーレベル、70mW及び90mWでカッティングされた。
【0073】
70mWのパワーレベル及び4scfhのヘリウム冷却ガスの流れの条件でカッティングされたステントパターンには、フラッシュ(バリ)、粗面、及びアイランドが存在した。図5A乃至図5Dは、これらの条件のもとでカッティングされたステントパターンの一部の例示の画像(イメージ)である。図5Aはアイランド及びフラッシュを示す。図5Bはフラッシュを示す。図5Cは粗面を示す。図5Dはフラッシュ及びグリッタを示す。
【0074】
図6A乃至図6Cは、90mWのパワーレベルでカッティングされたステントパターンの一部の例示の画像(イメージ)である。図6A及び図6Bは、4scfhのヘリウム冷却ガスの流れの条件下でカッティングされた部分を示し、図6Cは、6scfhのガスの流れの条件下でカッティングされた部分を示す。図6A及び図6Bに示すように、フラッシュ(バリ)はもはや存在しないが、溶融及びグリッタが存在する。ヘリウムの流量が4から5に増加された場合にも、溶融及びグリッタが残っている(不図示)。図6Cに示すように、流量が6scfhに増加されてからは、溶融及びグリッタはもはや存在しなくなった。
【0075】
本明細書で使用する場合、「実質的に同一」又は「ほとんど同一」は0.01%乃至5%以内の誤差の範囲を許容する。
【0076】
本発明の特定の実施の形態を示し、記述してきたが、本発明のより広い態様を逸脱しない限り、変更及び変形を施すことも可能であることは当業者にとって自明であろう。したがって、添付の請求項はその範囲において本発明の真の精神及び範囲に含まれる全ての変更及び変形を包含する。
【符号の説明】
【0077】
10 ステント
12 ストラット
14 円筒リング
16 リンク
200 チューブ
204 回転コレットチャック
208 加工制御装置(CNC制御装置)
212 レーザ
337 回転コレット
338 集束レンズ
339 チューブ支持ピン
340 ガスジェットアセンブリ
342 冷却ガスのジェット
344 ノズル
352 焦点に集束されるビーム
354 矢印(ガスの供給)
360 マンドレル
362 マンドレルビームブロック(マンドレルビーム遮断器)
408 レーザビーム
414 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステントを製造する方法であって;
同一の設計の前記ステントを形成する際に使用するための同一の種類のプロセシングステップによって各々が個別に形成されるポリマー製のチューブの複数のセクションを提供するステップと;
前記チューブの複数のセクションの各々からレーザ加工によってステントを形成する際に使用するためのレーザのパワーレベルを前記チューブのセクション毎に決定するステップと;
前記チューブのセクション毎に決定される前記レーザのパワーレベルを用いて、ステントパターンを前記チューブの複数のセクションにレーザ加工して複数の前記ステントを形成するステップとを備え;
前記ステントパターンは複数のストラットを有し、前記チューブのセクション毎に決定される前記レーザのパワーレベルは、異なる前記チューブの複数のセクションから形成される前記ステントパターンにおいて再現性のあるストラット幅を得るように選定される;
方法。
【請求項2】
前記チューブのセクション毎の前記レーザのパワーレベルはA×閾値のパワーであり、前記閾値のパワーは、選択された前記チューブのセクションの壁を完全に貫通する溝を提供する最小のパワーであり、前記Aは100乃至120%であって前記チューブのセクション毎に同一の値である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Aは108乃至112%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザのパワーレベルは前記チューブの複数のセクションの内の少なくとも2つにおいて異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記チューブの複数のセクションの各々は、同一の材料で製造され、同一又は実質的に同一の壁の厚さ及び外径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記チューブの複数のセクションの各々の前記レーザ加工におけるパルス幅、繰返しレート及びフルエンスは同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセシングステップは、前記チューブの押出し及び前記押出しされたチューブの半径方向の拡張を含み、前記方法は、前記チューブの複数のセクションを押し出すステップと、前記押出しされたチューブの複数のセクションを半径方向に拡張して前記チューブの複数のセクションを形成するステップとを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザは、パルス幅が95乃至120fsのフェムト秒レーザである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記チューブの複数のセクションはPLLAで製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記決定されたレーザのパワーレベルを用いて形成される前記ステントは、フラッシュ、グリッタ、及び溶融部分を含む欠陥がない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザ加工のパラメータには、95乃至120fsのパルス幅、2.5乃至5kHzの繰返しレート、0.2乃至0.3mWのパワーレベル及び5乃至15J/cmのフルエンスが含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
複数のステントを製造する方法であって:
ポリマー製のチューブの複数のセクションをレーザ加工して、複数のストラットを有する前記複数のステントを形成するステップを備え;
前記チューブの複数のセクションは同一の設計の前記複数のステントを形成する際に使用するための同一の種類のプロセシングステップによって各々個別に形成され;
前記レーザ加工のパワーは、異なる前記チューブの複数のセクションから形成される前記複数のステントの再現性のあるストラット幅を得るために前記チューブの複数のセクション毎に調整される;
方法。
【請求項13】
前記チューブ複数のセクションの各々は同一の半結晶質のポリマー材料で製造され、前記チューブの複数のセクションの各々は同一又は実質的に同一の壁の厚さ及び外径を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記チューブのセクション毎に調整された前記パワーは、他のチューブのセクションで調整されたパワーと異なる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記チューブの複数のセクションの各々のプロセシングステップの内の少なくとも一のプロセシングパラメータが異なり、前記プロセシングされたチューブの複数のセクションのモルフォロジは前記少なくとも一のプロセシングパラメータに依存する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記プロセシングステップは、前記チューブの押出し及び前記押出しされたチューブの半径方向の拡張を含み、前記方法は、前記チューブの複数のセクションを押し出すステップと、前記押出しされたチューブの複数のセクションを半径方向に拡張して前記チューブの複数のセクションを形成するステップとを更に有する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記レーザ加工は、パルス幅が80乃至120fsであるレーザにより行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記レーザ加工は、パルス幅が10乃至15psであるレーザにより行われる、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2013−503716(P2013−503716A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528102(P2012−528102)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/047880
【国際公開番号】WO2011/029044
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(509268314)アボット カルディオバスキュラー システムズ インコーポレーテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】Abbott Cardiovascular Systems Inc.
【住所又は居所原語表記】3200 Lakeside Drive,Santa Clara,California 95054,United States of America
【Fターム(参考)】