ポリマーフィルム、フィルムロール及びナーリング付与ローラ
【課題】ポリマーフィルムにおける巻きズレや巻き緩みの防止と、耳伸びの防止とを両立する。
【解決手段】フィルム製造装置は、帯状のポリマーフィルムをつくる。ナーリング付与装置は、ポリマーフィルムの耳部にナーリング41を付与する。ナーリング41が付与されたポリマーフィルム11は、巻き芯に巻き取られ、フィルムロールとなる。ナーリング41は、ポリマーフィルム11の表面から突出する凸部を有する。凸部は稜線52と交点53とを有する。単位当たり面積における稜線52の長さの合計が所定値以上となるように、ナーリング41が耳部に設けられる。
【解決手段】フィルム製造装置は、帯状のポリマーフィルムをつくる。ナーリング付与装置は、ポリマーフィルムの耳部にナーリング41を付与する。ナーリング41が付与されたポリマーフィルム11は、巻き芯に巻き取られ、フィルムロールとなる。ナーリング41は、ポリマーフィルム11の表面から突出する凸部を有する。凸部は稜線52と交点53とを有する。単位当たり面積における稜線52の長さの合計が所定値以上となるように、ナーリング41が耳部に設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルム、フィルムロール及びナーリング付与ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフィルムは、優れた光透過性や柔軟性および軽量薄膜化が可能であるなどの特長から光学フィルム等として多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレートなどを用いたセルロースエステル系フィルムは、写真感光用フィルムをはじめとして、近年市場が拡大している液晶表示装置の構成部材である偏光板の保護フィルムや位相差フィルム等の光学フィルムに用いられている。
【0003】
ポリマーフィルムを製造する方法として、溶融製膜方法や溶液製膜方法等が知られている。これらの製造方法によれば、帯状のポリマーフィルムを得ることができる。得られたポリマーフィルムの取り扱い性の点から、得られた帯状のポリマーフィルムは、フィルムロールの状態で保管され、輸送される。フィルムロールは、得られた帯状のポリマーフィルムを巻き芯に押し付けて巻き取ることで得られる。
【0004】
フィルムロールにおけるポリマーフィルムの巻きズレや巻き緩みを防ぐために、ナーリング付与ローラ対を用いて、予め、ポリマーフィルムの幅方向両端部(以下、耳部と称する)にナーリングを設けることが知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
ナーリングが設けられた耳部は、ナーリングが設けられていない製品部に比べ厚みが厚い。この結果、耳部にナーリングを有するポリマーフィルムを巻き取ると、フィルムロールにおいて、製品部分が陥没してしまう故障(以下、陥没故障と称する)が発生してしまう。特許文献1では、このような陥没故障を防止するために、製品部分における厚み分布が、両端から中央部に向かうに従ってしだいに薄くなるようなポリマーフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−211803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1のようにして、耳部にナーリングが付与されたポリマーフィルムを、巻き芯に巻き取った場合であっても、耳部及び製品部の間の微小な膜厚差の積み重なりが、フィルムロールの外周面に段差となって現れてしまう。このような段差が現れたフィルムロールにポリマーフィルムを押し付けながら巻き取っていくと、段差近傍に応力が集中する。この結果、ポリマーフィルムのうち、耳部、及びその近傍が伸びてしまう(以下、耳伸びと称する)。耳伸びにより、製品部、特に耳部近傍の製品部の厚みが変動する結果、光学特性や機械特性等は、製品部全体として均一とならない。
【0008】
このような耳伸びを防止するために、巻き取り張力(テンション)や押圧ロールによる圧力を小さくすることも可能であるが、この場合には、巻きズレや巻き緩みが発生してしまう。また、ナーリングの高さを低くすることにより、耳伸びは発生しにくくなるものの、巻きズレや巻き緩みは発生しやすくなる。
【0009】
更に、ポリマーフィルムの長手方向が長くなる(以下、長尺化と称する)や幅方向が長くなる(以下、幅広化と称する)と、陥没故障が起こりやすくなる。このように、巻き取り用ナーリングの付与方法として、特許文献1の方法には限界がある。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するものであり、巻きズレや巻き緩みの防止と、耳伸びの防止との両立を可能にするポリマーフィルム、及びフィルムロールを提供することを目的とする。更に、ポリマーフィルムの長尺化や幅広化となっても、陥没故障を抑制することができるポリマーフィルム、及びフィルムロールを提供することを目的とする。更に、本発明は、上述したポリマーフィルムを製造するためのナーリング付与ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、帯状に形成されたポリマーフィルムにおいて、表面から突出したナーリングが並ぶナーリング付与エリアを幅方向両端部に有し、前記ナーリングの突端に設けられた稜線の長さの総和が、前記ナーリング付与処理エリア1mm2当たり、0.95mm以上3mm以下であることを特徴とする。
【0012】
前記稜線は、第1の稜線、この第1の稜線と交わる第2の稜線、及び前記第1の稜線と前記第2の稜線との交点を有することが好ましい。また、前記稜線により囲まれる部分は凹むように設けられる、或いは、前記稜線により囲まれる部分全体は平坦であることが好ましい。
【0013】
前記ポリマーフィルムの両表面のうち、一方の表面には第1ナーリングが設けられ、他方の表面には第2ナーリングが設けられることが好ましい。また、前記第1ナーリングの高さをAとし、前記第2ナーリングの高さをBとする場合に、A/Bの値が、0.5以上2以下であることが好ましい。更に、前記第1ナーリングのうち前記稜線により囲まれる部分は前記表面よりも凹むように設けられ、前記第2ナーリングのうち前記稜線により囲まれる部分全体が平坦に設けられたことが好ましい。
【0014】
本発明のフィルムロールは、上記のポリマーフィルムが長手方向に巻かれてなることを特徴とする。
【0015】
本発明のナーリング付与ローラは、ローラ本体と、前記ローラ本体の周面から突出するように設けられたナーリング歯とを有し、前記ナーリング歯と前記周面とがなす稜線の長さの総和が、前記ローラ本体の周面1mm2当たり3mm以下であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のナーリング付与ローラは、ローラ本体と、前記ローラ本体の周面に開口する穴からなるナーリング歯とを有し、前記穴の底面と前記底面から前記周面にかけて延設された側面とがなす稜線の長さの総和が、前記ローラ本体の周面1mm2当たり0.95mm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ナーリング付与処理エリアにおける単位面積当たりの稜線の長さが所定値以上となるようにナーリングを設けたので、巻きズレや巻き緩みの防止と、耳伸びの防止との両立を可能にする。更に、ポリマーフィルムの長尺化や幅広化となっても、陥没故障を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】フィルム製造設備の概要を示す説明図である。
【図2】ナーリング付与装置の概要を示す平面図である。
【図3】ナーリング付与装置のIII−III線断面図である。
【図4】第1のナーリング付与ローラの周面の拡大図である。
【図5】第1のナーリング付与ローラにより、ポリマーフィルムに第1のナーリングが付与される様子を示す説明図である。
【図6】第1のナーリング付与ローラの周面の概要を示す平面図である。
【図7】第1のナーリングの概要を示す斜視図である。
【図8】第1のナーリングの概要を示す断面図である。
【図9】第1のナーリングの概要を示す平面図である。
【図10】第2のナーリング付与ローラの周面の拡大図である。
【図11】第2のナーリング付与ローラにより、ポリマーフィルムに第2のナーリングが付与される様子を示す説明図である。
【図12】第2のナーリングの概要を示す斜視図である。
【図13】第2のナーリングの概要を示す断面図である。
【図14】第2のナーリング付与ローラの周面の概要を示す平面図である。
【図15】第3のナーリング付与ローラにより、ポリマーフィルムに第3のナーリングが付与される様子を示す説明図である。
【図16】第3のナーリングの概要を示す断面図である。
【図17】耳伸びの評価方法の概要を示す側面図である。
【図18】陥没の評価方法の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、フィルム製造設備10は、帯状のポリマーフィルム11を製造するフィルム製造装置12と、ポリマーフィルム11を巻き取ってなるフィルムロール13をつくる巻取装置14とを有する。
【0020】
ポリマーフィルム11の幅Wは、600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、ポリマーフィルム11の幅Wが2500mmより大きい場合にも効果がある。ポリマーフィルム11の厚さは、30μm以上200μm以下であることが好ましく、40μm以上150μm以下であることがより好ましく、40μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。ポリマーフィルム11の長さは、2000m以上であることが好ましく、4000m以上8000m以下であることがより好ましい。また、フィルムロール13の径(巻取り半径)は、450mm以上であることが好ましく、650mm以上920mm以下であることがより好ましい。
【0021】
また、フィルム製造装置12及び巻取装置14の間には、ポリマーフィルム11の搬送路が設けられる。ポリマーフィルム11の搬送路では、ポリマーフィルム11の長手方向(以下、A方向と称する)へ、ポリマーフィルム11が搬送される。ポリマーフィルム11の搬送路には、ポリマーフィルム11の幅方向の両端部(耳部)にナーリングを付与するナーリング付与装置15が設けられる。
【0022】
巻取装置14は、ナーリング付与装置15から送り出されたポリマーフィルム11を巻き取る円柱状の巻き芯21を有する。更に、巻取装置14は、ナーリング付与装置15から送り出されたポリマーフィルム11を巻き芯21へ案内するガイドローラ22と、ガイドローラ22によって案内されたポリマーフィルム11を、巻き芯21の方向へ押し付ける押し付けローラ23とを有する。
【0023】
図1及び図2に示すように、ナーリング付与装置15は、A方向に搬送されるポリマーフィルム11をニップするナーリング付与ローラ対26と、ナーリング付与ローラ対26の押圧力を調節するシフト部27と、ナーリング付与ローラ対26が有する各ローラの周面の温度を調節するヒータ28とを有する。
【0024】
ナーリング付与ローラ対26は、ポリマーフィルム11の幅方向(以下、B方向と称する)の両側にそれぞれ配される。図3に示すように、ナーリング付与ローラ対26は、円筒状の第1ローラ31と、第1ローラ31から離隔して配された円筒状の第2ローラ32とを有する。第1ローラ31は第1回転軸31xに軸着され、第2ローラ32は第2回転軸32xに軸着される。第1ローラ31は、ポリマーフィルム11の搬送路を介して第2ローラ32と正対する。第1ローラ31は、ポリマーフィルム11の第1表面11h側に配される。第2ローラ32は、ポリマーフィルム11の第2表面11t側に配される。
【0025】
図4及び図5に示すように、第1ローラ31の周面31aには、凸ナーリング歯31bが所定のピッチで複数設けられる。凸ナーリング歯31bは、周面31aから突出するように設けられ、四角錐台状に形成される。第2ローラ32の周面32aは平坦に形成される。なお、周面32aは滑らかであることが好ましい。
【0026】
図4及び図6に示すように、四角錐台状に形成された凸ナーリング歯31bは、周面31aから起立する姿勢の第1側面33a〜第4側面33dと、上面33yとを有する。上面33yは、四角形状であり、平坦に形成される。なお、上面33yは、台形、平行四辺形、ひし形、長方形、正方形のいずれであってもよい。
【0027】
図6に示すように、凸ナーリング歯31bには、第1側面33a〜第4側面33dによって形成される側面稜33ab、33bc、33cd、33daと、第1側面33a〜第4側面33dと周面31aとによって形成される周面側稜33ax、33bx、33cx、33dxと、第1側面33a〜第4側面33dと上面33yとによって形成される上面側稜33ay、33by、33cy、33dyとが形成される。
【0028】
各上面側稜33ay〜33dyがなす4つの角のうち少なくとも1つの角の角度θ1は、0°より大きく90°以下である。また、各上面側稜33ay〜33dyがなす4つの角のうち少なくとも1つの角の角度θ1は、0°より大きく90°未満であることが好ましく、0°より大きく70°以下であることがより好ましい。各上面側稜33ay〜33dyがなす角のうち少なくとも1つの角の角度θ1が0°より大きく90°以下であれば、他の角の角度が鈍角となっていてもよい。なお、図では、上面側稜33ayと33byとがなす角の角度を角度θ1として示したが、本発明はこれに限られず、上面側稜33byと上面側稜33cyとがなす角の角度、上面側稜33cyと上面側稜33dyとがなす角の角度、上面側稜33dyと上面側稜33ayとがなす角の角度のいずれを角度θ1としてもよい。
【0029】
巻きズレや巻き緩みの防止と、耳伸びの防止との両立が可能なナーリングを形成するため、周面31aにおいて1cm2当たりに形成された各周面側稜33ax〜33dxの長さの総和L33xは、3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましい。総和L33xは、0.95mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。また、周面31aにおいて1cm2当たりに形成された各上面側稜33ay〜33dyの長さの総和L33yは、0.95mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。総和L33yは、3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましい。各周面側稜33ax〜33dxの長さは、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。各周面側稜33ax〜33dxの長さは、例えば、0.25mm以上0.70mm以下であることが好ましい。同様に、各上面側稜33ay〜33dyの長さは、例えば、0.25mm以上0.70mm以下であることが好ましい。更に、各側面稜33ab、33bc、33cd、33daの数は、周面31aにて1cm2当たり、50個以上120個以下であることが好ましい。
【0030】
なお、凸ナーリング歯31bは、四角錐台状のものに限られず、三角錐台状、五角錐台状、六角錐台状、及び円錐台状その他の錐台状でもよいし、円柱や多角形などの柱状でもよいし、1つまたは2以上の突条であってもよい。
【0031】
図1及び図2に示すように、シフト部27は、ナーリング付与ローラ対26を用いて、ポリマーフィルム11の耳部11aをニップする。耳部11aの幅Weは、ポリマーフィルム11の幅Wの0.001倍以上0.01倍以下であることが好ましい。ヒータ28により第1ローラ31及び第2ローラ32は所定の温度に調節されているため、ナーリング付与ローラ対26によりニップされている耳部11aは、加熱される。更に、図4に示すように第1ローラ31の周面31aには凸ナーリング歯31bが設けられるため、熱変形により凸ナーリング歯31bの外形が耳部11aに転写される(図5参照)。こうして、ナーリング付与ローラ対26により、ナーリング付与エリア40が、第1表面11h側の耳部11aに形成される(図2参照)。ナーリング付与エリア40は、ポリマーフィルム11のうち第1ローラ31と第2ローラ32との間を通過した部分である(図3参照)。ナーリング付与エリア40には複数のナーリング41が並ぶ(図4参照)。
【0032】
図2に示すように、ナーリング付与エリア40の幅W40は、ポリマーフィルム11の幅Wの0.1×10−3倍以上2.0×10−3倍以下であることが好ましい。ポリマーフィルム11のB方向の端11eとナーリング付与エリア40のB方向の端40eとは一致していてもよいし、離れていても良い。B方向における端11eと端40eと間隔CL1は、ポリマーフィルム11の幅Wの5×10−3倍以下であることが好ましい。
【0033】
図7及び図8に示すように、ナーリング41は、凸ナーリング部42と凹ナーリング部43とを有する。凸ナーリング部42と凹ナーリング部43とは、凸ナーリング歯31bを有する周面31aと周面32aとの押圧により形成されたものである(図5参照)。凹ナーリング部43は、凸ナーリング歯31bの突端部分が型となって、第1表面11hから凹むように形成された部分である。凸ナーリング部42は、凹ナーリング部43の周縁に設けられ、第1表面11hから突出して形成される。凸ナーリング部42は突端に稜51を有する。凸ナーリング部42は、凸ナーリング歯31bと周面32aとの押圧により、凸ナーリング歯31bの周りに押し出されたポリマーフィルム11の一部である(図5参照)。
【0034】
図9に示すように、ナーリング部42は、凹ナーリング部43を囲む4本の突条42a〜42dからなる。各突条42a〜42dの突端には、稜線52a〜52dが形成される。各突条42a〜42dが交わった部分の突端には、稜線52a〜52dの交点53が形成される。こうして、稜線52a〜52dと交点53とからなる稜51が凸ナーリング部42の突端に形成される。第1表面11hから各稜線52a〜52dの高さH1(図8参照)は、3μm以上30μm以下であることが好ましく、3μm以上15μm以下であることがより好ましく、3μm以上9μm以下であることが特に好ましい。なお、ポリマーフィルム11の厚み方向において、凸ナーリング部42の突端部分の断面形状は鋭角、すなわち角度φ1は0°より大きく90°未満であることが好ましい。
【0035】
図7及び図9に示すように、各稜線52a〜52dがなす4つの角のうち少なくとも1つの角の角度θ2は、0°より大きく90°以下である。各稜線52a〜52dがなす角のうち少なくとも1つの角の角度θ2が0°より大きく90°以下であれば、他の角の角度が鈍角となっていてもよい。角度θ2は0°より大きく90°未満であることが好ましい。なお、図では、角度θ2を稜線52aと稜線52bとがなす角の角度として示したが、本発明はこれに限られず、稜線52bと稜線52cとがなす角の角度、稜線52cと稜線52dとがなす角の角度、稜線52dと稜線52aとがなす角の角度のいずれを角度θ2としてもよい。
【0036】
図8に示すように、凹ナーリング部43はくぼみ部55を有する。くぼみ部55は、ナーリング41が設けられていない第1表面11hよりも低くなるように設けられる。なお、図8では、くぼみ部55におけるポリマーフィルム11の厚みが、ナーリング41が設けられていない部分の厚みよりも薄いが、本発明はこれに限られず、くぼみ部55におけるポリマーフィルム11の厚みが、ナーリング41が設けられていない部分の厚みと等しくてもよいし、ナーリング41が設けられていない部分の厚みよりも厚くてもよい。ここで、ナーリング41が設けられていない部分とは、ポリマーフィルム11のうちナーリング付与エリア40を除く部分を指す。
【0037】
耳部11aに設けられた凸ナーリング部42は、ポリマーフィルム11を巻き取ってフィルムロール13とするときに、重なり合うポリマーフィルム11同士の滑りを防ぐため、巻きズレや巻き緩みを防止することができる。
【0038】
凸ナーリング部42の各稜線52a〜52dは、重なるポリマーフィルム11同士の保持力の増大に寄与する。従来は、ポリマーフィルム11同士の保持力を増大させるために、凸ナーリング部42を高くしていた。しかしながら、凸ナーリング部42を高くすると、耳伸び故障や陥没故障が発生しやすくなる。本発明によれば、稜線52を密に形成することで、凸ナーリング部42を必要以上に高くすることなく、ポリマーフィルム11同士の保持力を増大させることが可能となる。
【0039】
より詳しくは、凸ナーリング部42の各稜線52a〜52dの長さ(La〜Ld)の総和が、ナーリング付与エリア40にて1mm2当たり、0.95mm以上3mm以下であるため、巻きズレや巻き緩みの防止と、耳伸びの防止との両立を可能にする。なお、稜線52の長さの総和が、ナーリング付与エリア40にて1mm2当たり、1.0mm以上2.5mm以下であることがより好ましい。また、各稜線52a〜52dの長さ(La〜Ld)は、それぞれ、0.25mm以上0.70mm以下であることが好ましい。なお、各稜線52a〜52dの長さ(La〜Ld)は、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
稜線52d〜52aが四角形をなす場合、稜線52d〜52aがなす形状は、台形、平行四辺形、ひし形、長方形、正方形のいずれであってもよい。
【0041】
また、凸ナーリング部42の交点53も、ポリマーフィルム11同士の保持力の増大に寄与する。したがって、各稜線52a〜52dを密に形成するとともに、交点53を密に形成することが好ましい。例えば、交点53の数が、ナーリング付与エリア40にて1cm2当たり、50個以上120個以下であることが好ましい。
【0042】
上記実施形態では、周面31aに凸ナーリング歯31bを有する第1ローラ31と、平坦な周面32aを有する第2ローラ32とを用いて、耳部11aにナーリング41を設けたが、本発明はこれに限られない。第1ローラ31に代えて、図10に示すように、周面60aに凹ナーリング歯60bを複数有する第3ローラ60を用いてもよい。図11に示すように、第2ローラ32と第3ローラ60とを用いて耳部11aをニップすると、図12及び図13に示すような凸ナーリング65を耳部11aに複数設けることができる。凸ナーリング65は、ポリマーフィルム11の第1表面11hから突出して設けられ、四角錐台状に形成される。凸ナーリング65は、複数の稜線67と、稜線67の交わりにより形成される頂点68と、複数の稜線67に囲まれる平坦部69とを有する。平坦部69は、複数の稜線67に囲まれる部分全体である。
【0043】
図10及び図14に示すように、凹ナーリング歯60bは、周面60aに開口する四角錐台状の穴61を複数有する。穴61の底部には底面61zが形成され、穴61の側部には、底面61zから周面60aにかけて延設された4つの第1側面61a〜第4側面61dが形成される。底面61zは、四角形状であり、平坦に形成される。なお、底面61zは、台形、平行四辺形、ひし形、長方形、正方形のいずれであってもよい。
【0044】
凹ナーリング歯60bには、第1側面61a〜第4側面61dによって形成される側面稜61ab、61bc、61cd、61daと、第1側面61a〜第4側面61dと周面60aとによって形成される周面側稜61ax、61bx、61cx、61dxと、第1側面61a〜第4側面61dと底面61zとによって形成される底面側稜61az、61bz、61cz、61dzとが形成される。
【0045】
各底面側稜61az〜61dzがなす4つの角のうち少なくとも1つの角の角度θ3は、0°より大きく90°以下である。また、各底面側稜61az〜61dzがなす4つの角のうち少なくとも1つの角の角度θ3は、0°より大きく90°未満であることが好ましく、0°より大きく70°以下であることがより好ましい。各底面側稜61az〜61dzがなす角のうち少なくとも1つの角の角度θ1が0°より大きく90°以下であれば、他の角の角度が鈍角となっていてもよい。なお、図では、底面側稜61azと底面側稜61bzとがなす角の角度を角度θ3として示したが、本発明はこれに限られず、底面側稜61bzと底面側稜61czとがなす角の角度、底面側稜61czと底面側稜61dzとがなす角の角度、底面側稜61dzと底面側稜61azとがなす角の角度のいずれかを角度θ3としてもよい。
【0046】
巻きズレや巻き緩みの防止と、耳伸びの防止との両立が可能なナーリングを形成するため、周面60aにおいて1cm2当たりに形成された各底面側稜61az〜61dzの長さの総和L61zは、0.95mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。総和L61zは、3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましい。また、周面60aにおいて1cm2当たりに形成された各周面側稜61ax〜61dxの長さの総和L61xは、3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましい。総和L61xは、0.95mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。各周面側稜61ax〜61dxの長さは、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。各周面側稜61ax〜61dxの長さは、例えば、0.25mm以上0.70mm以下であることが好ましい。同様に、各底面側稜61az〜61dzの長さは、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。各周面側稜61ax〜61dxの長さは、例えば、0.25mm以上0.70mm以下であることが好ましい。更に、各側面稜61ab、61bc、61cd、61daの数は、周面60aにて1cm2当たり、50個以上120個以下であることが好ましい。
【0047】
なお、穴61は、四角錐台状のものに限られず、三角錐台状、五角錐台状、六角錐台状、及び円錐台状その他の錐台状でもよいし、円柱や多角形などの柱状でもよいし、1つまたは2以上の溝であってもよい。
【0048】
また、図15に示すように、第1ローラ31(図4参照)と第3ローラ60(図10参照)とを用いて、耳部11aにナーリング70を設けてもよい。図16に示すように、ナーリング70は、第1表面11hに設けられる第1ナーリング71と第2表面11tに設けられる第2ナーリング72とを有する。第1ナーリング71は、第1表面11hからの高さがH1の凸ナーリング部71aと凹ナーリング部71bとを有する。第2ナーリング72は、第2表面11tからの高さがH2の凸ナーリング部72aを有する。凸ナーリング部71a及び凸ナーリング部72aは、稜線、この稜線の交わりにより形成される頂点をそれぞれの突端に有する。
【0049】
稜線の長さの総和は、ナーリング付与エリア40にて1mm2当たり、0.95mm以上3mm以下である。ここで、「稜線の長さの総和」は、凸ナーリング部71aの稜線の長さの総和と凸ナーリング部72aの稜線の長さの総和とを合算したものをいう。なお、稜線の長さの総和は、ナーリング付与エリア40にて1mm2当たり、1.0mm以上2.5mm以下であることがより好ましい。
【0050】
凸ナーリング部71aの高さH1は、3μm以上30μm以下であることが好ましく、3μm以上15μm以下であることがより好ましく、3μm以上9μm以下であることが特に好ましい。H1/H2の値は、0.5以上2以下であることが好ましく、1.0以上1.5以下であることがより好ましい。
【0051】
なお、第1ナーリング71及び第2ナーリング72の形成ピッチは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。また、第2ナーリング72が設けられる位置は、第1ナーリング71が設けられる位置の真裏としてもよいし、2つの第1ナーリング71の間としてもよい。なお、第1ナーリング71が設けられる位置の真裏とすることが好ましい。したがって、周面31aに設けられる凸ナーリング歯31bの形成ピッチと、周面60aに設けられる凹ナーリング歯60bの形成ピッチとは等しいことが好ましい。また、凸ナーリング歯31bと凹ナーリング歯60bとが正対した状態でポリマーフィルム11をニップするように、回転方向における第1ローラ31及び第3ローラ30の向きが調整されていることが好ましい。例えば、シフト部27により、第1ローラ31及び第3ローラ30の向きを調整してもよい。
【0052】
上記実施形態では、第1ナーリング71を第1表面11hに第2ナーリング72を第2表面11tに設けたが、本発明はこれに限られず、第1ナーリング71を第2表面11tに第2ナーリング72を第1表面11hに設けても良い。
【0053】
上記実施形態では、凸ナーリング部として、四角錐台状のものを設けたが、本発明はこれに限られず、三角錐台状、五角錐台状、六角錐台状、及び円錐台状その他の錐台状でもよいし、1つまたは2以上の突条であってもよい。
【0054】
なお、各ナーリングを設ける向きはいずれの方向を向いていても良い。また、各ナーリングの向きは、同一方向を向いていても良いし、ランダムであっても良い。
【0055】
(ポリマーフィルムの製造方法)
フィルム製造装置12では、溶液製膜方法、溶融製膜方法やその他の製膜方法を行ない、ポリマーフィルムをつくる。溶液製膜方法の場合には、原料となるポリマーが溶媒に溶解したポリマー溶液を支持体へ流して、液膜をつくる。その後、液膜を剥がして、液膜から溶媒を蒸発させて、ポリマーフィルムとする。なお、支持体からの剥ぎ取り作業性の点から、支持体から剥がす前に、自己支持性発現工程を行ってもよい。自己支持性発現工程では、自己支持性が発現するまで液膜を冷却してもよいし、自己支持性が発現するまで液膜から溶媒を蒸発させてもよい。また、溶融製膜方法の場合には、押出機を用いて、溶融した原料ポリマーをフィルム状に押し出す方法である。
【0056】
(ポリマー)
上記実施形態では、ポリマーフィルムの原料となるポリマーは、特に限定されない。溶液製膜方法を行う場合には、原料ポリマーとして、例えば、セルロースアシレートや環状ポリオレフィン等がある。一方、溶融製膜方法を行う場合には、原料ポリマーとして、例えば、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状ポリオレフィン、ポリカーボネイト等が挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状ポリオレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状ポリオレフィンであり、さらに好ましくは付加重合によって得られた環状ポリオレフィンである。
【0057】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0058】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1である)を意味する。
【0059】
全アシル化置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)である。
【0060】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基による置換度の総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であり、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBはその20%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは25%以上が6位水酸基の置換基であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートも挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶剤において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
【0061】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでも良い。
【0062】
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
【0063】
(溶剤)
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶剤に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
【0064】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0065】
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶剤組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶剤として用いることができる。
【0066】
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶剤及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
【0067】
(用途)
本発明のポリマーフィルムは、偏光板保護フィルムや位相差フィルムとして有用である。このポリマーフィルムに光学的異方性層、反射防止層、防眩機能層等を付与して、高機能フィルムとしてもよい。
【実施例】
【0068】
次に、本発明の効果の有無を確認するために、実験1〜6を行った。詳細な説明は実験1で行い、実験2〜6については、実験1と同じ条件の箇所の説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0069】
(実験1)
図1に示すフィルム製造装置12において、長さが5000m、幅が1500mm、厚みが80μmのセルロースアシレートフィルムをつくった。その後、第1ローラ31及び第2ローラ32を有するナーリング付与装置15は、凹ナーリング部43と凹ナーリング部43を囲む4つの突条により構成される凸ナーリング部42とを有するナーリング41(図6参照)を、セルロースアシレートフィルムの耳部11aに設けた。そして、巻取装置14は、耳部11aにナーリング41が付与されたセルロースアシレートフィルムを巻き芯21に巻き取って、フィルムロール13とした。
【0070】
各突条に設けられる稜線52の長さL1は、全て0.25mmであった。1つのナーリング41当たりの稜線52の長さL1の総和ΣL1は、1.00mmであった。各突条に設けられる稜線52は、隣り合う突条に設けられる稜線52と略直角に交わっていた。また、ナーリング付与エリア40において1mm2あたりにおける凸ナーリング部42の稜線52の長さdΣL1は、0.8605mm−1であった。凸ナーリング部42の高さH1は、10μmであった。
【0071】
(実験2〜4)
稜線52の長さL1、稜線52の長さLの総和ΣL1、ナーリング付与エリア40において1mm2あたりにおける稜線52の長さdΣL1、及び凸ナーリング部42の高さH1を表1に示す値としたこと以外は、実験1と同様にして、耳部11aにナーリング41が付与されたセルロースアシレートフィルムを巻き芯21に巻き取って、フィルムロール13とした。
【0072】
(実験5〜6)
第1ローラ31及び第3ローラ60を有するナーリング付与装置を用いて、セルロースアシレートフィルムの第1表面11hに第1ナーリング71を、第2表面11tに第2ナーリング72を設けた。第1ナーリング71の稜線の長さL1、稜線の長さLの総和ΣL1、ナーリング付与エリア40において1mm2あたりにおける稜線の長さdΣL1、及び凸ナーリング部の高さH1は、それぞれ表1に示すとおりであった。同様に、第2ナーリング72の稜線の長さL2、稜線の長さL2の総和ΣL2、ナーリング付与エリア40において1mm2あたりにおける稜線の長さdΣL2、及び凸ナーリング部の高さH2は、それぞれ表1に示すとおりであった。それ以外は、実験1と同様にして、耳部11aに各ナーリング71,72が付与されたセルロースアシレートフィルムを巻き芯21に巻き取って、フィルムロール13とした。
【0073】
(評価)
得られたフィルムロールについて、以下の評価を行った。
【0074】
1.巻き緩みの評価
「巻き緩み」の評価では、巻取り終了後のフィルムロール13の巻取り半径が、その周方向に渡って均一であるか否かを評価した。具体的には、図17に示すように、巻き取りが終了したフィルムロール13の巻き芯21から図中上方向と下方向とにそれぞれ向かう方向に延びた巻取り半径RU,RLを計測する。そして、その計測結果からRUとRLとの差分である上下径差ΔRを算出した。そして、この上下径差ΔRについて、以下基準により評価した。
○:ΔR<2mm
△:2mm≦ΔR<5mm
×:ΔR≧5mm
【0075】
2.耳伸びの評価
「耳伸び」の評価では、巻取り前の耳部の幅We0と巻取り後の耳部の幅We1とを測定し、(We1/We0)を算出した。そして、(We1/We0)について、以下基準により評価した。ここで、巻取り前の耳部の幅We0は、巻取り前のポリマーフィルムであって、ナーリングが付与された耳部の幅である。また、巻取り後の耳部の幅We1は、巻き芯に巻取られた後、巻き芯から送り出されたポリマーフィルムであって、ナーリングが付与された耳部の幅である。
○:We1/We0<4
△:4≦We1/We0<9
×:We1/We0≧9
【0076】
3.陥没の評価
「陥没」の評価では、フィルムロール13の陥没部90の深さDを計測した。まず、図18に示すように、フィルムロール13の両端に糸91を張り、糸91と陥没部90との距離を測定した。次に、糸91及び陥没部90の距離の測定値のうち最大のものを陥没部90の深さDとした。そして、陥没部90の深さDについて、以下基準により評価した。
○:D<10
△:10≦D<20
×:D≧20
【0077】
【表1】
【0078】
各評価項目についての評価結果を表1に纏めて示す。なお、表1に示す評価結果の番号は、各評価項目に付した番号をあらわす。
【符号の説明】
【0079】
10 フィルム製造設備
11 ポリマーフィルム
12 フィルム製造装置
13 フィルムロール
15 ナーリング付与装置
17 巻取装置
26 ナーリング付与ローラ対
31 第1ローラ
31b、60b ナーリング歯
32 第2ローラ
41、65、70〜72 ナーリング
42、71a、72a 凸ナーリング部
43、71b 凹ナーリング部
51 稜
52、67 稜線
53、68 交点
55 くぼみ部
60 第3ローラ
69 平坦部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルム、フィルムロール及びナーリング付与ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフィルムは、優れた光透過性や柔軟性および軽量薄膜化が可能であるなどの特長から光学フィルム等として多岐に利用されている。中でも、セルロースアシレートなどを用いたセルロースエステル系フィルムは、写真感光用フィルムをはじめとして、近年市場が拡大している液晶表示装置の構成部材である偏光板の保護フィルムや位相差フィルム等の光学フィルムに用いられている。
【0003】
ポリマーフィルムを製造する方法として、溶融製膜方法や溶液製膜方法等が知られている。これらの製造方法によれば、帯状のポリマーフィルムを得ることができる。得られたポリマーフィルムの取り扱い性の点から、得られた帯状のポリマーフィルムは、フィルムロールの状態で保管され、輸送される。フィルムロールは、得られた帯状のポリマーフィルムを巻き芯に押し付けて巻き取ることで得られる。
【0004】
フィルムロールにおけるポリマーフィルムの巻きズレや巻き緩みを防ぐために、ナーリング付与ローラ対を用いて、予め、ポリマーフィルムの幅方向両端部(以下、耳部と称する)にナーリングを設けることが知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
ナーリングが設けられた耳部は、ナーリングが設けられていない製品部に比べ厚みが厚い。この結果、耳部にナーリングを有するポリマーフィルムを巻き取ると、フィルムロールにおいて、製品部分が陥没してしまう故障(以下、陥没故障と称する)が発生してしまう。特許文献1では、このような陥没故障を防止するために、製品部分における厚み分布が、両端から中央部に向かうに従ってしだいに薄くなるようなポリマーフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−211803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1のようにして、耳部にナーリングが付与されたポリマーフィルムを、巻き芯に巻き取った場合であっても、耳部及び製品部の間の微小な膜厚差の積み重なりが、フィルムロールの外周面に段差となって現れてしまう。このような段差が現れたフィルムロールにポリマーフィルムを押し付けながら巻き取っていくと、段差近傍に応力が集中する。この結果、ポリマーフィルムのうち、耳部、及びその近傍が伸びてしまう(以下、耳伸びと称する)。耳伸びにより、製品部、特に耳部近傍の製品部の厚みが変動する結果、光学特性や機械特性等は、製品部全体として均一とならない。
【0008】
このような耳伸びを防止するために、巻き取り張力(テンション)や押圧ロールによる圧力を小さくすることも可能であるが、この場合には、巻きズレや巻き緩みが発生してしまう。また、ナーリングの高さを低くすることにより、耳伸びは発生しにくくなるものの、巻きズレや巻き緩みは発生しやすくなる。
【0009】
更に、ポリマーフィルムの長手方向が長くなる(以下、長尺化と称する)や幅方向が長くなる(以下、幅広化と称する)と、陥没故障が起こりやすくなる。このように、巻き取り用ナーリングの付与方法として、特許文献1の方法には限界がある。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するものであり、巻きズレや巻き緩みの防止と、耳伸びの防止との両立を可能にするポリマーフィルム、及びフィルムロールを提供することを目的とする。更に、ポリマーフィルムの長尺化や幅広化となっても、陥没故障を抑制することができるポリマーフィルム、及びフィルムロールを提供することを目的とする。更に、本発明は、上述したポリマーフィルムを製造するためのナーリング付与ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、帯状に形成されたポリマーフィルムにおいて、表面から突出したナーリングが並ぶナーリング付与エリアを幅方向両端部に有し、前記ナーリングの突端に設けられた稜線の長さの総和が、前記ナーリング付与処理エリア1mm2当たり、0.95mm以上3mm以下であることを特徴とする。
【0012】
前記稜線は、第1の稜線、この第1の稜線と交わる第2の稜線、及び前記第1の稜線と前記第2の稜線との交点を有することが好ましい。また、前記稜線により囲まれる部分は凹むように設けられる、或いは、前記稜線により囲まれる部分全体は平坦であることが好ましい。
【0013】
前記ポリマーフィルムの両表面のうち、一方の表面には第1ナーリングが設けられ、他方の表面には第2ナーリングが設けられることが好ましい。また、前記第1ナーリングの高さをAとし、前記第2ナーリングの高さをBとする場合に、A/Bの値が、0.5以上2以下であることが好ましい。更に、前記第1ナーリングのうち前記稜線により囲まれる部分は前記表面よりも凹むように設けられ、前記第2ナーリングのうち前記稜線により囲まれる部分全体が平坦に設けられたことが好ましい。
【0014】
本発明のフィルムロールは、上記のポリマーフィルムが長手方向に巻かれてなることを特徴とする。
【0015】
本発明のナーリング付与ローラは、ローラ本体と、前記ローラ本体の周面から突出するように設けられたナーリング歯とを有し、前記ナーリング歯と前記周面とがなす稜線の長さの総和が、前記ローラ本体の周面1mm2当たり3mm以下であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のナーリング付与ローラは、ローラ本体と、前記ローラ本体の周面に開口する穴からなるナーリング歯とを有し、前記穴の底面と前記底面から前記周面にかけて延設された側面とがなす稜線の長さの総和が、前記ローラ本体の周面1mm2当たり0.95mm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ナーリング付与処理エリアにおける単位面積当たりの稜線の長さが所定値以上となるようにナーリングを設けたので、巻きズレや巻き緩みの防止と、耳伸びの防止との両立を可能にする。更に、ポリマーフィルムの長尺化や幅広化となっても、陥没故障を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】フィルム製造設備の概要を示す説明図である。
【図2】ナーリング付与装置の概要を示す平面図である。
【図3】ナーリング付与装置のIII−III線断面図である。
【図4】第1のナーリング付与ローラの周面の拡大図である。
【図5】第1のナーリング付与ローラにより、ポリマーフィルムに第1のナーリングが付与される様子を示す説明図である。
【図6】第1のナーリング付与ローラの周面の概要を示す平面図である。
【図7】第1のナーリングの概要を示す斜視図である。
【図8】第1のナーリングの概要を示す断面図である。
【図9】第1のナーリングの概要を示す平面図である。
【図10】第2のナーリング付与ローラの周面の拡大図である。
【図11】第2のナーリング付与ローラにより、ポリマーフィルムに第2のナーリングが付与される様子を示す説明図である。
【図12】第2のナーリングの概要を示す斜視図である。
【図13】第2のナーリングの概要を示す断面図である。
【図14】第2のナーリング付与ローラの周面の概要を示す平面図である。
【図15】第3のナーリング付与ローラにより、ポリマーフィルムに第3のナーリングが付与される様子を示す説明図である。
【図16】第3のナーリングの概要を示す断面図である。
【図17】耳伸びの評価方法の概要を示す側面図である。
【図18】陥没の評価方法の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、フィルム製造設備10は、帯状のポリマーフィルム11を製造するフィルム製造装置12と、ポリマーフィルム11を巻き取ってなるフィルムロール13をつくる巻取装置14とを有する。
【0020】
ポリマーフィルム11の幅Wは、600mm以上であることが好ましく、1400mm以上2500mm以下であることがより好ましい。また、本発明は、ポリマーフィルム11の幅Wが2500mmより大きい場合にも効果がある。ポリマーフィルム11の厚さは、30μm以上200μm以下であることが好ましく、40μm以上150μm以下であることがより好ましく、40μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。ポリマーフィルム11の長さは、2000m以上であることが好ましく、4000m以上8000m以下であることがより好ましい。また、フィルムロール13の径(巻取り半径)は、450mm以上であることが好ましく、650mm以上920mm以下であることがより好ましい。
【0021】
また、フィルム製造装置12及び巻取装置14の間には、ポリマーフィルム11の搬送路が設けられる。ポリマーフィルム11の搬送路では、ポリマーフィルム11の長手方向(以下、A方向と称する)へ、ポリマーフィルム11が搬送される。ポリマーフィルム11の搬送路には、ポリマーフィルム11の幅方向の両端部(耳部)にナーリングを付与するナーリング付与装置15が設けられる。
【0022】
巻取装置14は、ナーリング付与装置15から送り出されたポリマーフィルム11を巻き取る円柱状の巻き芯21を有する。更に、巻取装置14は、ナーリング付与装置15から送り出されたポリマーフィルム11を巻き芯21へ案内するガイドローラ22と、ガイドローラ22によって案内されたポリマーフィルム11を、巻き芯21の方向へ押し付ける押し付けローラ23とを有する。
【0023】
図1及び図2に示すように、ナーリング付与装置15は、A方向に搬送されるポリマーフィルム11をニップするナーリング付与ローラ対26と、ナーリング付与ローラ対26の押圧力を調節するシフト部27と、ナーリング付与ローラ対26が有する各ローラの周面の温度を調節するヒータ28とを有する。
【0024】
ナーリング付与ローラ対26は、ポリマーフィルム11の幅方向(以下、B方向と称する)の両側にそれぞれ配される。図3に示すように、ナーリング付与ローラ対26は、円筒状の第1ローラ31と、第1ローラ31から離隔して配された円筒状の第2ローラ32とを有する。第1ローラ31は第1回転軸31xに軸着され、第2ローラ32は第2回転軸32xに軸着される。第1ローラ31は、ポリマーフィルム11の搬送路を介して第2ローラ32と正対する。第1ローラ31は、ポリマーフィルム11の第1表面11h側に配される。第2ローラ32は、ポリマーフィルム11の第2表面11t側に配される。
【0025】
図4及び図5に示すように、第1ローラ31の周面31aには、凸ナーリング歯31bが所定のピッチで複数設けられる。凸ナーリング歯31bは、周面31aから突出するように設けられ、四角錐台状に形成される。第2ローラ32の周面32aは平坦に形成される。なお、周面32aは滑らかであることが好ましい。
【0026】
図4及び図6に示すように、四角錐台状に形成された凸ナーリング歯31bは、周面31aから起立する姿勢の第1側面33a〜第4側面33dと、上面33yとを有する。上面33yは、四角形状であり、平坦に形成される。なお、上面33yは、台形、平行四辺形、ひし形、長方形、正方形のいずれであってもよい。
【0027】
図6に示すように、凸ナーリング歯31bには、第1側面33a〜第4側面33dによって形成される側面稜33ab、33bc、33cd、33daと、第1側面33a〜第4側面33dと周面31aとによって形成される周面側稜33ax、33bx、33cx、33dxと、第1側面33a〜第4側面33dと上面33yとによって形成される上面側稜33ay、33by、33cy、33dyとが形成される。
【0028】
各上面側稜33ay〜33dyがなす4つの角のうち少なくとも1つの角の角度θ1は、0°より大きく90°以下である。また、各上面側稜33ay〜33dyがなす4つの角のうち少なくとも1つの角の角度θ1は、0°より大きく90°未満であることが好ましく、0°より大きく70°以下であることがより好ましい。各上面側稜33ay〜33dyがなす角のうち少なくとも1つの角の角度θ1が0°より大きく90°以下であれば、他の角の角度が鈍角となっていてもよい。なお、図では、上面側稜33ayと33byとがなす角の角度を角度θ1として示したが、本発明はこれに限られず、上面側稜33byと上面側稜33cyとがなす角の角度、上面側稜33cyと上面側稜33dyとがなす角の角度、上面側稜33dyと上面側稜33ayとがなす角の角度のいずれを角度θ1としてもよい。
【0029】
巻きズレや巻き緩みの防止と、耳伸びの防止との両立が可能なナーリングを形成するため、周面31aにおいて1cm2当たりに形成された各周面側稜33ax〜33dxの長さの総和L33xは、3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましい。総和L33xは、0.95mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。また、周面31aにおいて1cm2当たりに形成された各上面側稜33ay〜33dyの長さの総和L33yは、0.95mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。総和L33yは、3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましい。各周面側稜33ax〜33dxの長さは、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。各周面側稜33ax〜33dxの長さは、例えば、0.25mm以上0.70mm以下であることが好ましい。同様に、各上面側稜33ay〜33dyの長さは、例えば、0.25mm以上0.70mm以下であることが好ましい。更に、各側面稜33ab、33bc、33cd、33daの数は、周面31aにて1cm2当たり、50個以上120個以下であることが好ましい。
【0030】
なお、凸ナーリング歯31bは、四角錐台状のものに限られず、三角錐台状、五角錐台状、六角錐台状、及び円錐台状その他の錐台状でもよいし、円柱や多角形などの柱状でもよいし、1つまたは2以上の突条であってもよい。
【0031】
図1及び図2に示すように、シフト部27は、ナーリング付与ローラ対26を用いて、ポリマーフィルム11の耳部11aをニップする。耳部11aの幅Weは、ポリマーフィルム11の幅Wの0.001倍以上0.01倍以下であることが好ましい。ヒータ28により第1ローラ31及び第2ローラ32は所定の温度に調節されているため、ナーリング付与ローラ対26によりニップされている耳部11aは、加熱される。更に、図4に示すように第1ローラ31の周面31aには凸ナーリング歯31bが設けられるため、熱変形により凸ナーリング歯31bの外形が耳部11aに転写される(図5参照)。こうして、ナーリング付与ローラ対26により、ナーリング付与エリア40が、第1表面11h側の耳部11aに形成される(図2参照)。ナーリング付与エリア40は、ポリマーフィルム11のうち第1ローラ31と第2ローラ32との間を通過した部分である(図3参照)。ナーリング付与エリア40には複数のナーリング41が並ぶ(図4参照)。
【0032】
図2に示すように、ナーリング付与エリア40の幅W40は、ポリマーフィルム11の幅Wの0.1×10−3倍以上2.0×10−3倍以下であることが好ましい。ポリマーフィルム11のB方向の端11eとナーリング付与エリア40のB方向の端40eとは一致していてもよいし、離れていても良い。B方向における端11eと端40eと間隔CL1は、ポリマーフィルム11の幅Wの5×10−3倍以下であることが好ましい。
【0033】
図7及び図8に示すように、ナーリング41は、凸ナーリング部42と凹ナーリング部43とを有する。凸ナーリング部42と凹ナーリング部43とは、凸ナーリング歯31bを有する周面31aと周面32aとの押圧により形成されたものである(図5参照)。凹ナーリング部43は、凸ナーリング歯31bの突端部分が型となって、第1表面11hから凹むように形成された部分である。凸ナーリング部42は、凹ナーリング部43の周縁に設けられ、第1表面11hから突出して形成される。凸ナーリング部42は突端に稜51を有する。凸ナーリング部42は、凸ナーリング歯31bと周面32aとの押圧により、凸ナーリング歯31bの周りに押し出されたポリマーフィルム11の一部である(図5参照)。
【0034】
図9に示すように、ナーリング部42は、凹ナーリング部43を囲む4本の突条42a〜42dからなる。各突条42a〜42dの突端には、稜線52a〜52dが形成される。各突条42a〜42dが交わった部分の突端には、稜線52a〜52dの交点53が形成される。こうして、稜線52a〜52dと交点53とからなる稜51が凸ナーリング部42の突端に形成される。第1表面11hから各稜線52a〜52dの高さH1(図8参照)は、3μm以上30μm以下であることが好ましく、3μm以上15μm以下であることがより好ましく、3μm以上9μm以下であることが特に好ましい。なお、ポリマーフィルム11の厚み方向において、凸ナーリング部42の突端部分の断面形状は鋭角、すなわち角度φ1は0°より大きく90°未満であることが好ましい。
【0035】
図7及び図9に示すように、各稜線52a〜52dがなす4つの角のうち少なくとも1つの角の角度θ2は、0°より大きく90°以下である。各稜線52a〜52dがなす角のうち少なくとも1つの角の角度θ2が0°より大きく90°以下であれば、他の角の角度が鈍角となっていてもよい。角度θ2は0°より大きく90°未満であることが好ましい。なお、図では、角度θ2を稜線52aと稜線52bとがなす角の角度として示したが、本発明はこれに限られず、稜線52bと稜線52cとがなす角の角度、稜線52cと稜線52dとがなす角の角度、稜線52dと稜線52aとがなす角の角度のいずれを角度θ2としてもよい。
【0036】
図8に示すように、凹ナーリング部43はくぼみ部55を有する。くぼみ部55は、ナーリング41が設けられていない第1表面11hよりも低くなるように設けられる。なお、図8では、くぼみ部55におけるポリマーフィルム11の厚みが、ナーリング41が設けられていない部分の厚みよりも薄いが、本発明はこれに限られず、くぼみ部55におけるポリマーフィルム11の厚みが、ナーリング41が設けられていない部分の厚みと等しくてもよいし、ナーリング41が設けられていない部分の厚みよりも厚くてもよい。ここで、ナーリング41が設けられていない部分とは、ポリマーフィルム11のうちナーリング付与エリア40を除く部分を指す。
【0037】
耳部11aに設けられた凸ナーリング部42は、ポリマーフィルム11を巻き取ってフィルムロール13とするときに、重なり合うポリマーフィルム11同士の滑りを防ぐため、巻きズレや巻き緩みを防止することができる。
【0038】
凸ナーリング部42の各稜線52a〜52dは、重なるポリマーフィルム11同士の保持力の増大に寄与する。従来は、ポリマーフィルム11同士の保持力を増大させるために、凸ナーリング部42を高くしていた。しかしながら、凸ナーリング部42を高くすると、耳伸び故障や陥没故障が発生しやすくなる。本発明によれば、稜線52を密に形成することで、凸ナーリング部42を必要以上に高くすることなく、ポリマーフィルム11同士の保持力を増大させることが可能となる。
【0039】
より詳しくは、凸ナーリング部42の各稜線52a〜52dの長さ(La〜Ld)の総和が、ナーリング付与エリア40にて1mm2当たり、0.95mm以上3mm以下であるため、巻きズレや巻き緩みの防止と、耳伸びの防止との両立を可能にする。なお、稜線52の長さの総和が、ナーリング付与エリア40にて1mm2当たり、1.0mm以上2.5mm以下であることがより好ましい。また、各稜線52a〜52dの長さ(La〜Ld)は、それぞれ、0.25mm以上0.70mm以下であることが好ましい。なお、各稜線52a〜52dの長さ(La〜Ld)は、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
稜線52d〜52aが四角形をなす場合、稜線52d〜52aがなす形状は、台形、平行四辺形、ひし形、長方形、正方形のいずれであってもよい。
【0041】
また、凸ナーリング部42の交点53も、ポリマーフィルム11同士の保持力の増大に寄与する。したがって、各稜線52a〜52dを密に形成するとともに、交点53を密に形成することが好ましい。例えば、交点53の数が、ナーリング付与エリア40にて1cm2当たり、50個以上120個以下であることが好ましい。
【0042】
上記実施形態では、周面31aに凸ナーリング歯31bを有する第1ローラ31と、平坦な周面32aを有する第2ローラ32とを用いて、耳部11aにナーリング41を設けたが、本発明はこれに限られない。第1ローラ31に代えて、図10に示すように、周面60aに凹ナーリング歯60bを複数有する第3ローラ60を用いてもよい。図11に示すように、第2ローラ32と第3ローラ60とを用いて耳部11aをニップすると、図12及び図13に示すような凸ナーリング65を耳部11aに複数設けることができる。凸ナーリング65は、ポリマーフィルム11の第1表面11hから突出して設けられ、四角錐台状に形成される。凸ナーリング65は、複数の稜線67と、稜線67の交わりにより形成される頂点68と、複数の稜線67に囲まれる平坦部69とを有する。平坦部69は、複数の稜線67に囲まれる部分全体である。
【0043】
図10及び図14に示すように、凹ナーリング歯60bは、周面60aに開口する四角錐台状の穴61を複数有する。穴61の底部には底面61zが形成され、穴61の側部には、底面61zから周面60aにかけて延設された4つの第1側面61a〜第4側面61dが形成される。底面61zは、四角形状であり、平坦に形成される。なお、底面61zは、台形、平行四辺形、ひし形、長方形、正方形のいずれであってもよい。
【0044】
凹ナーリング歯60bには、第1側面61a〜第4側面61dによって形成される側面稜61ab、61bc、61cd、61daと、第1側面61a〜第4側面61dと周面60aとによって形成される周面側稜61ax、61bx、61cx、61dxと、第1側面61a〜第4側面61dと底面61zとによって形成される底面側稜61az、61bz、61cz、61dzとが形成される。
【0045】
各底面側稜61az〜61dzがなす4つの角のうち少なくとも1つの角の角度θ3は、0°より大きく90°以下である。また、各底面側稜61az〜61dzがなす4つの角のうち少なくとも1つの角の角度θ3は、0°より大きく90°未満であることが好ましく、0°より大きく70°以下であることがより好ましい。各底面側稜61az〜61dzがなす角のうち少なくとも1つの角の角度θ1が0°より大きく90°以下であれば、他の角の角度が鈍角となっていてもよい。なお、図では、底面側稜61azと底面側稜61bzとがなす角の角度を角度θ3として示したが、本発明はこれに限られず、底面側稜61bzと底面側稜61czとがなす角の角度、底面側稜61czと底面側稜61dzとがなす角の角度、底面側稜61dzと底面側稜61azとがなす角の角度のいずれかを角度θ3としてもよい。
【0046】
巻きズレや巻き緩みの防止と、耳伸びの防止との両立が可能なナーリングを形成するため、周面60aにおいて1cm2当たりに形成された各底面側稜61az〜61dzの長さの総和L61zは、0.95mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。総和L61zは、3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましい。また、周面60aにおいて1cm2当たりに形成された各周面側稜61ax〜61dxの長さの総和L61xは、3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましい。総和L61xは、0.95mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましい。各周面側稜61ax〜61dxの長さは、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。各周面側稜61ax〜61dxの長さは、例えば、0.25mm以上0.70mm以下であることが好ましい。同様に、各底面側稜61az〜61dzの長さは、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。各周面側稜61ax〜61dxの長さは、例えば、0.25mm以上0.70mm以下であることが好ましい。更に、各側面稜61ab、61bc、61cd、61daの数は、周面60aにて1cm2当たり、50個以上120個以下であることが好ましい。
【0047】
なお、穴61は、四角錐台状のものに限られず、三角錐台状、五角錐台状、六角錐台状、及び円錐台状その他の錐台状でもよいし、円柱や多角形などの柱状でもよいし、1つまたは2以上の溝であってもよい。
【0048】
また、図15に示すように、第1ローラ31(図4参照)と第3ローラ60(図10参照)とを用いて、耳部11aにナーリング70を設けてもよい。図16に示すように、ナーリング70は、第1表面11hに設けられる第1ナーリング71と第2表面11tに設けられる第2ナーリング72とを有する。第1ナーリング71は、第1表面11hからの高さがH1の凸ナーリング部71aと凹ナーリング部71bとを有する。第2ナーリング72は、第2表面11tからの高さがH2の凸ナーリング部72aを有する。凸ナーリング部71a及び凸ナーリング部72aは、稜線、この稜線の交わりにより形成される頂点をそれぞれの突端に有する。
【0049】
稜線の長さの総和は、ナーリング付与エリア40にて1mm2当たり、0.95mm以上3mm以下である。ここで、「稜線の長さの総和」は、凸ナーリング部71aの稜線の長さの総和と凸ナーリング部72aの稜線の長さの総和とを合算したものをいう。なお、稜線の長さの総和は、ナーリング付与エリア40にて1mm2当たり、1.0mm以上2.5mm以下であることがより好ましい。
【0050】
凸ナーリング部71aの高さH1は、3μm以上30μm以下であることが好ましく、3μm以上15μm以下であることがより好ましく、3μm以上9μm以下であることが特に好ましい。H1/H2の値は、0.5以上2以下であることが好ましく、1.0以上1.5以下であることがより好ましい。
【0051】
なお、第1ナーリング71及び第2ナーリング72の形成ピッチは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。また、第2ナーリング72が設けられる位置は、第1ナーリング71が設けられる位置の真裏としてもよいし、2つの第1ナーリング71の間としてもよい。なお、第1ナーリング71が設けられる位置の真裏とすることが好ましい。したがって、周面31aに設けられる凸ナーリング歯31bの形成ピッチと、周面60aに設けられる凹ナーリング歯60bの形成ピッチとは等しいことが好ましい。また、凸ナーリング歯31bと凹ナーリング歯60bとが正対した状態でポリマーフィルム11をニップするように、回転方向における第1ローラ31及び第3ローラ30の向きが調整されていることが好ましい。例えば、シフト部27により、第1ローラ31及び第3ローラ30の向きを調整してもよい。
【0052】
上記実施形態では、第1ナーリング71を第1表面11hに第2ナーリング72を第2表面11tに設けたが、本発明はこれに限られず、第1ナーリング71を第2表面11tに第2ナーリング72を第1表面11hに設けても良い。
【0053】
上記実施形態では、凸ナーリング部として、四角錐台状のものを設けたが、本発明はこれに限られず、三角錐台状、五角錐台状、六角錐台状、及び円錐台状その他の錐台状でもよいし、1つまたは2以上の突条であってもよい。
【0054】
なお、各ナーリングを設ける向きはいずれの方向を向いていても良い。また、各ナーリングの向きは、同一方向を向いていても良いし、ランダムであっても良い。
【0055】
(ポリマーフィルムの製造方法)
フィルム製造装置12では、溶液製膜方法、溶融製膜方法やその他の製膜方法を行ない、ポリマーフィルムをつくる。溶液製膜方法の場合には、原料となるポリマーが溶媒に溶解したポリマー溶液を支持体へ流して、液膜をつくる。その後、液膜を剥がして、液膜から溶媒を蒸発させて、ポリマーフィルムとする。なお、支持体からの剥ぎ取り作業性の点から、支持体から剥がす前に、自己支持性発現工程を行ってもよい。自己支持性発現工程では、自己支持性が発現するまで液膜を冷却してもよいし、自己支持性が発現するまで液膜から溶媒を蒸発させてもよい。また、溶融製膜方法の場合には、押出機を用いて、溶融した原料ポリマーをフィルム状に押し出す方法である。
【0056】
(ポリマー)
上記実施形態では、ポリマーフィルムの原料となるポリマーは、特に限定されない。溶液製膜方法を行う場合には、原料ポリマーとして、例えば、セルロースアシレートや環状ポリオレフィン等がある。一方、溶融製膜方法を行う場合には、原料ポリマーとして、例えば、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状ポリオレフィン、ポリカーボネイト等が挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状ポリオレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状ポリオレフィンであり、さらに好ましくは付加重合によって得られた環状ポリオレフィンである。
【0057】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
【0058】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1である)を意味する。
【0059】
全アシル化置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.28以上が好ましく、より好ましくは0.30以上、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)である。
【0060】
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基による置換度の総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であり、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBはその20%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは25%以上が6位水酸基の置換基であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートも挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶剤において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
【0061】
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでも良い。
【0062】
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
【0063】
(溶剤)
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶剤に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
【0064】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0065】
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶剤組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶剤として用いることができる。
【0066】
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶剤及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。
【0067】
(用途)
本発明のポリマーフィルムは、偏光板保護フィルムや位相差フィルムとして有用である。このポリマーフィルムに光学的異方性層、反射防止層、防眩機能層等を付与して、高機能フィルムとしてもよい。
【実施例】
【0068】
次に、本発明の効果の有無を確認するために、実験1〜6を行った。詳細な説明は実験1で行い、実験2〜6については、実験1と同じ条件の箇所の説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0069】
(実験1)
図1に示すフィルム製造装置12において、長さが5000m、幅が1500mm、厚みが80μmのセルロースアシレートフィルムをつくった。その後、第1ローラ31及び第2ローラ32を有するナーリング付与装置15は、凹ナーリング部43と凹ナーリング部43を囲む4つの突条により構成される凸ナーリング部42とを有するナーリング41(図6参照)を、セルロースアシレートフィルムの耳部11aに設けた。そして、巻取装置14は、耳部11aにナーリング41が付与されたセルロースアシレートフィルムを巻き芯21に巻き取って、フィルムロール13とした。
【0070】
各突条に設けられる稜線52の長さL1は、全て0.25mmであった。1つのナーリング41当たりの稜線52の長さL1の総和ΣL1は、1.00mmであった。各突条に設けられる稜線52は、隣り合う突条に設けられる稜線52と略直角に交わっていた。また、ナーリング付与エリア40において1mm2あたりにおける凸ナーリング部42の稜線52の長さdΣL1は、0.8605mm−1であった。凸ナーリング部42の高さH1は、10μmであった。
【0071】
(実験2〜4)
稜線52の長さL1、稜線52の長さLの総和ΣL1、ナーリング付与エリア40において1mm2あたりにおける稜線52の長さdΣL1、及び凸ナーリング部42の高さH1を表1に示す値としたこと以外は、実験1と同様にして、耳部11aにナーリング41が付与されたセルロースアシレートフィルムを巻き芯21に巻き取って、フィルムロール13とした。
【0072】
(実験5〜6)
第1ローラ31及び第3ローラ60を有するナーリング付与装置を用いて、セルロースアシレートフィルムの第1表面11hに第1ナーリング71を、第2表面11tに第2ナーリング72を設けた。第1ナーリング71の稜線の長さL1、稜線の長さLの総和ΣL1、ナーリング付与エリア40において1mm2あたりにおける稜線の長さdΣL1、及び凸ナーリング部の高さH1は、それぞれ表1に示すとおりであった。同様に、第2ナーリング72の稜線の長さL2、稜線の長さL2の総和ΣL2、ナーリング付与エリア40において1mm2あたりにおける稜線の長さdΣL2、及び凸ナーリング部の高さH2は、それぞれ表1に示すとおりであった。それ以外は、実験1と同様にして、耳部11aに各ナーリング71,72が付与されたセルロースアシレートフィルムを巻き芯21に巻き取って、フィルムロール13とした。
【0073】
(評価)
得られたフィルムロールについて、以下の評価を行った。
【0074】
1.巻き緩みの評価
「巻き緩み」の評価では、巻取り終了後のフィルムロール13の巻取り半径が、その周方向に渡って均一であるか否かを評価した。具体的には、図17に示すように、巻き取りが終了したフィルムロール13の巻き芯21から図中上方向と下方向とにそれぞれ向かう方向に延びた巻取り半径RU,RLを計測する。そして、その計測結果からRUとRLとの差分である上下径差ΔRを算出した。そして、この上下径差ΔRについて、以下基準により評価した。
○:ΔR<2mm
△:2mm≦ΔR<5mm
×:ΔR≧5mm
【0075】
2.耳伸びの評価
「耳伸び」の評価では、巻取り前の耳部の幅We0と巻取り後の耳部の幅We1とを測定し、(We1/We0)を算出した。そして、(We1/We0)について、以下基準により評価した。ここで、巻取り前の耳部の幅We0は、巻取り前のポリマーフィルムであって、ナーリングが付与された耳部の幅である。また、巻取り後の耳部の幅We1は、巻き芯に巻取られた後、巻き芯から送り出されたポリマーフィルムであって、ナーリングが付与された耳部の幅である。
○:We1/We0<4
△:4≦We1/We0<9
×:We1/We0≧9
【0076】
3.陥没の評価
「陥没」の評価では、フィルムロール13の陥没部90の深さDを計測した。まず、図18に示すように、フィルムロール13の両端に糸91を張り、糸91と陥没部90との距離を測定した。次に、糸91及び陥没部90の距離の測定値のうち最大のものを陥没部90の深さDとした。そして、陥没部90の深さDについて、以下基準により評価した。
○:D<10
△:10≦D<20
×:D≧20
【0077】
【表1】
【0078】
各評価項目についての評価結果を表1に纏めて示す。なお、表1に示す評価結果の番号は、各評価項目に付した番号をあらわす。
【符号の説明】
【0079】
10 フィルム製造設備
11 ポリマーフィルム
12 フィルム製造装置
13 フィルムロール
15 ナーリング付与装置
17 巻取装置
26 ナーリング付与ローラ対
31 第1ローラ
31b、60b ナーリング歯
32 第2ローラ
41、65、70〜72 ナーリング
42、71a、72a 凸ナーリング部
43、71b 凹ナーリング部
51 稜
52、67 稜線
53、68 交点
55 くぼみ部
60 第3ローラ
69 平坦部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に形成されたポリマーフィルムにおいて、
表面から突出したナーリングが並ぶナーリング付与エリアを幅方向両端部に有し、
前記ナーリングの突端に設けられた稜線の長さの総和が、前記ナーリング付与処理エリア1mm2当たり、0.95mm以上3mm以下であることを特徴とするポリマーフィルム。
【請求項2】
前記稜線は、第1の稜線、この第1の稜線と交わる第2の稜線、及び前記第1の稜線と前記第2の稜線との交点を有することを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
前記稜線により囲まれる部分は凹むように設けられることを特徴とする請求項1または2記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
前記稜線により囲まれる部分全体は平坦であることを特徴とする請求項1または2記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
前記ポリマーフィルムの両表面のうち、一方の表面には第1ナーリングが設けられ、他方の表面には第2ナーリングが設けられることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
前記第1ナーリングの高さをAとし、前記第2ナーリングの高さをBとする場合に、A/Bの値が、0.5以上2以下であることを特徴とする請求項5記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
前記第1ナーリングのうち前記稜線により囲まれる部分は前記表面よりも凹むように設けられ、
前記第2ナーリングのうち前記稜線により囲まれる部分全体が平坦に設けられたことを特徴とする請求項5または6記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちいずれか1項記載のポリマーフィルムが長手方向に巻かれてなることを特徴とするフィルムロール。
【請求項9】
ローラ本体と、
前記ローラ本体の周面から突出するように設けられたナーリング歯とを有し、
前記ナーリング歯と前記周面とがなす稜線の長さの総和が、前記ローラ本体の周面1mm2当たり3mm以下であることを特徴とするナーリング付与ローラ。
【請求項10】
ローラ本体と、
前記ローラ本体の周面に開口する穴からなるナーリング歯とを有し、
前記穴の底面と前記底面から前記周面にかけて延設された側面とがなす稜線の長さの総和が、前記ローラ本体の周面1mm2当たり0.95mm以上であることを特徴とするナーリング付与ローラ。
【請求項1】
帯状に形成されたポリマーフィルムにおいて、
表面から突出したナーリングが並ぶナーリング付与エリアを幅方向両端部に有し、
前記ナーリングの突端に設けられた稜線の長さの総和が、前記ナーリング付与処理エリア1mm2当たり、0.95mm以上3mm以下であることを特徴とするポリマーフィルム。
【請求項2】
前記稜線は、第1の稜線、この第1の稜線と交わる第2の稜線、及び前記第1の稜線と前記第2の稜線との交点を有することを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
前記稜線により囲まれる部分は凹むように設けられることを特徴とする請求項1または2記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
前記稜線により囲まれる部分全体は平坦であることを特徴とする請求項1または2記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
前記ポリマーフィルムの両表面のうち、一方の表面には第1ナーリングが設けられ、他方の表面には第2ナーリングが設けられることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
前記第1ナーリングの高さをAとし、前記第2ナーリングの高さをBとする場合に、A/Bの値が、0.5以上2以下であることを特徴とする請求項5記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
前記第1ナーリングのうち前記稜線により囲まれる部分は前記表面よりも凹むように設けられ、
前記第2ナーリングのうち前記稜線により囲まれる部分全体が平坦に設けられたことを特徴とする請求項5または6記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちいずれか1項記載のポリマーフィルムが長手方向に巻かれてなることを特徴とするフィルムロール。
【請求項9】
ローラ本体と、
前記ローラ本体の周面から突出するように設けられたナーリング歯とを有し、
前記ナーリング歯と前記周面とがなす稜線の長さの総和が、前記ローラ本体の周面1mm2当たり3mm以下であることを特徴とするナーリング付与ローラ。
【請求項10】
ローラ本体と、
前記ローラ本体の周面に開口する穴からなるナーリング歯とを有し、
前記穴の底面と前記底面から前記周面にかけて延設された側面とがなす稜線の長さの総和が、前記ローラ本体の周面1mm2当たり0.95mm以上であることを特徴とするナーリング付与ローラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−143710(P2011−143710A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259878(P2010−259878)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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