説明

ポリマー組成物および二軸延伸フィルム

【課題】ポリエステルが主たる構成成分でありながら、従来のポリエステルフィルムに対して優れた耐熱性、耐湿熱性を有し、かつオリゴマーの少ない二軸延伸フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステル組成物を主成分とし、側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物をポリマー組成物100重量部に対して0.1〜5重量部、Li、Na、Kから選ばれる金属元素をポリマー組成物重量に対して1〜50mol/ton含有し、エステル環状三量体含有量がポリマー組成物100重量部に対して0.1〜0.6重量部であることを特徴とするポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー組成物および二軸延伸フィルムの改良に関し、詳しくは、優れた耐湿熱性・耐熱性および低オリゴマー性を有するポリマー組成物および二軸配向フィルムに関するものである。本フィルムは電気絶縁用、コンデンサ用、包装用、インクリボン用、回路基板用などの各種工業材料用として広く活用でき、特に電気絶縁用フィルムとして好適である。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは優れた機械特性、熱特性、電気特性、表面特性、また耐熱性などの性質を利用して、磁気記録媒体用、電気絶縁用、コンデンサー用、包装用、各種工業材料用など種々の用途に用いられている。これら用途の高品質化の中で、特に高温環境下での寸法安定性や耐熱性、耐湿熱性の向上などが要求されている。しかしエチレンテレフタレート単体からなるポリエステルフィルム(以下PETと称す)は、高温環境下での寸法安定性や耐熱性、耐湿熱性が十分でなく、また、優れた寸法安定性や耐熱性、耐湿熱性を有するポリエチレン−2,6−ナフタレート(以下PENと称す)は、割れやすいなど加工性が低く、その適用が限定されているのが現状であり、これら問題点の改良が強く望まれている。また、コンプレッサーモーターなどの電気絶縁用途においては、冷媒と絶縁フィルムが直接接するため、オリゴマーが抽出されやすく、耐熱性・耐湿熱性も要求される上に、エステル環状三量体を主とするオリゴマー含有量が少ないフィルムが求められている。
【0003】
ポリエステルの改質を目的として、アイオノマーを混練・アロイ化する方法が広く提案されている。アイオノマーとは、ポリマー側鎖にカルボン酸基、スルホン酸基などの酸性基を持ち、これらの一部あるいは全部を金属塩としたポリマー金属塩の総称である。
【0004】
特許文献1では、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに対して不飽和カルボン酸を1〜30モル%共重合したポリマーの金属塩20〜50重量部ブレンドし、耐衝撃性および耐加水分解性を向上させる技術が開示されている。また、特許文献2ではポリブチレンテレフタレートと側鎖にカルボキシル基を有する有機重合体の金属塩を組成物の全重量に対して10〜50重量%の割合で含有するポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物が提案されている。しかしながら、これら発明においては、アイオノマーの添加量が多すぎることから、耐湿熱性のみならず耐熱性が不十分であるうえ、オリゴマー含有量を低減させたポリエステルとこれらアイオノマーを配合させた場合の相乗効果による耐加水分解性の向上効果については、何ら開示されていなかった。
【特許文献1】特開昭61−243855号公報
【特許文献2】特開平6−145486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はポリエステルが主たる構成成分でありながら、従来のポリエステル組成物に対して優れた耐湿熱性・耐熱性を有するポリエステル組成物および二軸配向フィルムを得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、ポリエステル組成物を主成分とし、側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物をポリマー組成物全体を100重量部として0.1〜5重量部、Li、Na、Kから選ばれる金属元素をポリマー組成物の重量に対して1〜50mol/ton含有し、エステル環状三量体含有量がポリマー組成物全体を100重量部として0.1〜0.6重量部であることを特徴とする成形体用ポリマー組成物により達成される。
【0007】
また、本発明のポリマー組成物は、
(1)側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物中のカルボン酸基の少なくとも一部あるいは全部が、Li、Na、Kから選ばれる少なくとも1種の金属元素の一部あるいは全部との塩を形成すること。
(2)側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物が、エチレンと不飽和カルボン酸の共重合体であること。
(3)側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物が、スチレンと芳香族ビニルの共重合体であること。
(4)側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物が、飽和および/または不飽和シクロアルキレン構造を含むこと。
(5)ポリエステル組成物がポリエチレンテレフタレートであること。
(6)ポリエステル組成物がポリエチレン−2,6−ナフタレートであること。
を、それぞれ好ましい態様として含んでおり、また、本発明の二軸延伸フィルムは
(1)耐湿熱性テストにおける破断伸度保持率半減期が20時間以上であること。
(2)耐熱性テストにおける破断伸度保持率半減期が15時間以上であること。
(3)電気絶縁用途であること、
を、それぞれ好ましい態様として含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた耐湿熱性・耐熱性を有し、かつオリゴマー含有量の少ない二軸配向フィルムを提供でき、その工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
本発明に使用するポリエステルとは、ジオールとジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体の縮重合により得られるポリマーである。ここでジカルボン酸とは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸などで代表されるものである。また、これらのエステル形成性誘導体とは、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル等に代表される化合物である。また、ジオールとは、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどで代表されるものである。
【0011】
具体的なポリマーとしては、例えば、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどを使用することができ、なかでもポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが耐熱性の点で好ましく使用できる。
【0012】
勿論、これらのポリエステルは、ホモポリマーであっても、コポリマーであってもよく、コポリマーの場合、共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分、ヒドロキシ安息香酸、6ーヒドロキシー2ーナフトエ酸などのヒドロキシカルボン酸成分を含有していても良いが、耐熱性の観点からは、これら共重合成分の含有量は、全てのジカルボン酸成分またはジオール成分に対して10モル%以下であることが好ましい。
【0013】
中でも本発明の場合、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートおよびこれらの共重合体および変成体のうち1種以上が好ましく使用される。
【0014】
本発明におけるポリエステルの製造方法は特に制限がなく、従来公知の溶融重合により製造することが出来る。すなわち、直接重合法でもエステル交換反応法でも製造することができ、バッチ式でも連続重合法でも製造することができる。
【0015】
本発明のポリエステルの製造触媒は、特に限定されるものではなく、従来公知の触媒を用いることができる。エステル交換反応に有効な触媒としては、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ度類金属化合物の他、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸亜鉛、酢酸スズ、アルコキシドチタンなどを用いることができる。また、重合触媒としては、3酸化2アンチモン、2酸化ゲルマニウム、アルコキシドチタンなどの他、アルミ・シリカ・チタンなどを構成成分として含む複合酸化物などを用いることができる。また、安定剤として、リン酸、亜リン酸、トリメチルホスフェートなどの各種リン化合物を添加することが好ましい。該リン化合物の添加時期は、エステル化反応後あるいはエステル交換反応後から重縮合反応の初期に添加することが好ましい。
【0016】
本発明におけるポリエステルは、フィルムに易滑性を与える目的で各種不活性粒子を含有することができる。これら不活性粒子としては、湿式あるいは乾式シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、珪酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化銅、などの酸化物無機粒子、金、銀、銅、鉄、白金等の無機金属粒子、架橋ポリスチレン、架橋ジビニルベンゼンなどに代表される有機粒子、その他炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、硫酸バリウムなどの粒子を挙げることができる。これら粒子は、ポリエステルの重縮合における任意の工程、好ましくはオリゴマーから重縮合工程に移行する前に反応系に添加されることが分散性向上の観点から好ましい。また、粒子は、水あるいはエチレングリコールなどのポリエステルモノマー化合物を分散媒として添加されることが好ましい。また、これら粒子を、ベント孔つき二軸押出機を用いて、あらかじめ得られたポリエステルに混練分散しても構わない。また、ポリエステルの重縮合触媒に起因して重縮合過程において生成する、いわゆる内部粒子を含有しても構わない。
【0017】
また、本発明のポリエステルは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、易滑剤、着色剤などの各種添加剤を、ポリエステルおよび本発明のフィルムの物性を損なわない範囲で添加することができる。
【0018】
本発明のポリエステル組成物は、側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物をポリマー組成物全体を100重量部として0.1〜5重量部含有し、このましくは0.3〜3重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。含有量が0.1より少ないと、充分な耐湿熱性を発現させることができない。含有量が5を越えると、耐熱性に劣る。
【0019】
側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物としては、ポリアクリル酸、ポリ(エチレン−アクリル酸)共重合体、ポリ(エチレン−メタクリル酸)共重合体、ポリ(プロピレン−アクリル酸)共重合体、ポリ(スチレン−アクリル酸)共重合体、ポリ(スチレンーメタクリル酸)共重合体、ポリ(スチレン−ビニル安息香酸)共重合体などをもちいることができ、なかでもポリ(エチレン−アクリル酸)共重合体、ポリ(エチレン−メタクリル酸)共重合体、ポリ(スチレン−ビニル安息香酸)共重合体が好ましく、さらに耐熱性の上で好ましいのはポリ(スチレン−ビニル安息香酸)共重合体である。
【0020】
また、本発明における側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物は、飽和および/または不飽和シクロアルキレン構造を含んでいる態様がさらに好ましい。シクロアルキレン構造を含有することにより、さらに耐熱性を向上させることができる。シクロアルキレン構造の含有率は、特に限定されないが、高ければ高いほど耐熱性が向上するので好ましい。このようなポリマーの一部あるいは全部の構成成分となるモノマーとしては、好ましくは置換および未置換の二環もしくはそれ以上の多環ノルボルネンであり、具体的なモノマーとして、例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−ドデシル−2−ノルボルネンなどの二環ノルボルネン、ジシクロペンタジエン(DCP)、ジヒドロジシクロペンタジエンなどの三環ノルボルネン、テトラシクロドデセン、メチルテトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、ジメチルテトラシクロドデセンなどの四環ノルボルネン、トリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエンなどのごとき五環以上の多環ノルボルネンあるいはこれらの一部の水素基をカルボン酸基で置換した化合物が挙げられる。これらのノルボルネン系モノマーの中でも、三環ないし五環ノルボルネンが好ましい。側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物は、上記のシクロアルキレン基含有モノマーに、エチレン、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、安息香酸ビニルなど先に挙げたモノマーを共重合して構成されていても良い。また、残存した二重結合を利用して、重合後にカルボン酸基を導入しても構わない。
【0021】
本発明のポリマー組成物は、Li、Na、Kから選ばれる金属元素を、ポリマー組成物の重量に対して1〜50mol/ton含有し、好ましくは3〜30mol/ton、より好ましくは5〜20mol/tonである。金属元素量が1mol/ton未満であると充分な耐湿熱性が得られない。金属元素量が50mol/tonを越えると耐熱性が悪化する。
【0022】
本発明においては、側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物中に含まれるカルボン酸基の一部あるいは全部が、Li、Na、Kから選ばれる少なくとも一種の金属元素の一部あるいは全部と塩を形成していることが好ましい。Li、Na、K以外の金属元素では充分な耐湿熱性を発現させることができない。
【0023】
これらの側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物は、上記のようにカルボン酸を有するモノマーを構成成分として含む。このカルボン酸を有するモノマーの共重合量は特に限定されるものではないが、1〜50mol%程度が耐熱性の観点から好ましい。
【0024】
側鎖にカルボン酸基を有し、Li、Na、Kから選ばれる金属元素とカルボン酸の塩を有するポリオレフィン含有組成物中に含有されるLi、Na、Kの含有量は、特に限定されるものではないが、ポリマー組成物に対して、500〜2000mol/tの範囲であることが好ましい。
【0025】
側鎖にカルボン酸基を有し、Li、Na、Kから選ばれる金属元素とカルボン酸の塩を有するポリオレフィン含有組成物を製造する方法としては、特に限定はされないが、側鎖にカルボン酸を有するポリマーとLi、Na、Kの塩を、それぞれの混合比が所定量となるように、単軸あるいは二軸混練押出機に供給し溶融混練する事が好ましい。Li、Na、Kの塩としては、それぞれの炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物等を用いることができる。
【0026】
本発明のポリマー組成物はエステル環状三量体含有量が、ポリマー組成物100重量部に対して0.1〜0.6重量部であり、好ましくは0.2〜0.5重量部である。エステル環状三量体含有量が0.1重量部未満とする場合、生産性に劣る。エステル環状三量体含有量が0.6重量部を越えると、例えばコンプレッサーなどの電気絶縁フィルム用途に用いる場合には、抽出されたエステル環状三量体を主成分とするオリゴマーによるロッキング現象を引き起こしやすくなり、また、耐湿熱性にも劣るため好ましくない。
【0027】
なお、エステル環状三量体とは、ポリエステルのモノマー単位3つからなる環状オリゴマーであり、例えばポリエステルがポリエチレンテレフタレートである場合には、エチレンテレフタレート環状三量体を指す。エステル環状三量体含有量を低減させる方法としては、溶媒による抽出なども可能であるが、最も好ましい方法は、溶融重合により得られたポリエステルを、さらに133Pa以下の減圧下あるいは窒素等の不活性ガス雰囲気下において、結晶化温度以上融点以下の温度で加熱処理することにより固相重合を施すことが好ましい。この温度は、例えばポリエステルがポリエチレンテレフタレートである場合には180〜250℃が好ましく、より好ましくは200〜240℃の範囲である。ポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合には、200〜250℃の範囲が好ましい。
【0028】
本発明のフィルムのヤング率は、長手方向・幅方向とも3.5GPa以上であることが好ましく、加工性および使用上の信頼性を向上させるためには4.0GPa以上であることがより好ましい。フィルムヤング率が3.5GPa未満であると、一般的機械強度の低下のほか、例えば、コンプレッサーの電気絶縁フィルムとして用いる場合には、スロット挿入工程でフィルムが曲がってしまうなど、工程安定性が劣る。
【0029】
ポリエステル組成物、側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物およびLi、Na、Kから選ばれる金属元素を所望の重量分率含有するフィルムを得るにあたっては、これら樹脂をそれぞれ乾燥し、それぞれの樹脂およびLi、Na、Kの金属元素が所望の含有量となるよう計量し、溶融押出機に供給・混練して直接未延伸フィルムを製造しても構わないが、これら各成分がより均一に分散したフィルムを得るためには、あらかじめポリエステル組成物、側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物および金属塩をブレンドし、溶融混練機でマスターペレットを製造し、しかるのちこのペレットを、側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物および金属の含有量が所望の値となるようにポリエステルペレットで希釈して、本発明の二軸配向フィルムを得ることが好ましい。
【0030】
このマスターペレットを得る方法としては、ポリエステル組成物、側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物およびLi、Na、Kから選ばれる金属元素の塩をそれぞれ計量して混練してマスターペレットを得る方法、あるいは側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物とLi、Na、Kから選ばれる金属元素の塩をあらかじめ溶融混練してペレットを作成し、さらにこれをポリエステルで希釈してマスターペレットを作成する方法が考えられるが、金属元素の分散性の観点から、後者の方法がより好ましい。
【0031】
マスターペレットの製造方法を、側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物としてエチレン−メタクリル酸共重合体を、金属元素としてNaを用いる場合を例として以下に述べる。定法に従って重合・乾燥したエチレン−メタクリル酸ランダム共重合体と、炭酸ナトリウムを150℃で溶融混練し、エチレン−メタクリル酸Na塩を得る。一方、ポリエステル組成物を結晶化温度以上融点以下、例えばポリエステルがポリエチレンテレフタレートである場合は、好ましくは140〜200℃の温度で2〜5時間減圧乾燥する。乾燥後の水分率は好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下である。エチレンーメタクリル酸共重合体のナトリウム塩は40〜90℃、好ましくは50〜80℃で6時間以上、好ましくは8時間以上乾燥する。乾燥したポリエステルチップとエチレン−メタリル酸共重合体Na塩をブレンドし、250℃〜300℃に加熱されたベント式二軸押出機に供給する。マスターペレット製造時のポリエステルとエチレン−メタクリル酸共重合体Na塩の重量分率は特に制限されるものではないが、好ましくはエチレン−メタクリル酸共重合体Na塩の重量分率が1〜50重量%、より好ましくは5〜20重量%である。ただし、この混練濃度は、エチレン−メタクリル酸共重合体Na塩が含有するNa金属元素量にも依存するので、最終的にフィルムに含有させるNa金属量が所望の量となるように濃度を決定する必要がある。二軸押出機のスクリュー構成は、パドルやダルメージなどからなるニーディングゾーンを備えていることが好ましい。剪断速度は50〜400sec−1が好ましく、より好ましくは100〜300sec−1である。剪断速度が50sec−1以下であると十分な分散状態が得られず、剪断速度が300sec−1を越えると、剪断発熱の発生などにより温度制御が困難となるばかりでなく、ポリマーの分解を引き起こす可能性がある。混練ポリマーの滞留時間は0.5〜10分であることが好ましく、より好ましくは1〜5分である。滞留時間が0.5分未満であると十分な分散状態が得られず、5分を越えるとポリマーの分解を引き起こす可能性がある。
【0032】
こうして得られたマスターペレットとポリエステルペレットをそれぞれ乾燥後、フィルム中のエチレン−アクリル酸共重合体Na塩を、エチレン−メタクリル酸共重合体およびNa金属含有量が、所望の重量分率となるように混合し、250〜300℃に加熱された溶融押出機に供給し、押出機に具備されたT型ダイ口金からシート状に押し出し、10〜50℃に冷却されたキャスティングドラム上へで、ドラムを一定速度で回転させながら、静電印加法により密着固化し、未延伸フィルムを得る。得られた未延伸フィルムを、複数のロール群を備えた延伸機で、ロール間の周速差を利用して長手方向に延伸する。延伸温度は90〜170℃が好ましい。延伸倍率は2〜5倍が好ましく、より好ましくは2.5〜4倍である。こうして得られた、長手方向に延伸されたフィルムの両端をクリップで把持して、加熱したテンター内で幅方向に延伸を行う。延伸倍率は2〜5倍が好ましく、より好ましくは2.5〜4.5倍である。また、延伸温度は90〜180℃が好ましい。また、幅方向に延伸した後、さらに長手方向または幅方向に110〜180℃の延伸温度範囲で1.01〜2.5倍に延伸してもよい。
【0033】
また、延伸後に融点以下の温度で熱処理を加えることが好ましく、より好ましい温度範囲は190〜245℃であり、更に好ましくは200〜230℃である。熱処理時間は、好ましくは1〜30秒間である。
【0034】
また、さらに熱処理工程後に100〜160℃の中間冷却および弛緩処理を行ってもよい。弛緩処理の倍率は、幅方向及び/または長手方向に2〜10%であることが好ましく、より好ましくは4〜9%である。
【0035】
また、本発明のフィルムは、延伸工程でコーティングなどの表面処理を行って表面を改質しても良いし、多種のポリマーを積層押し出しあるいは張り合わせにより積層構成のフィルムとしても構わない。
【0036】
こうして得られた本発明のフィルムは、優れた耐熱性、耐湿熱性に加えて低オリゴマー性を有するため、プリント基板用、電気絶縁用、コンデンサ用、包装用、インクリボン用、工程紙などの各種工業材料用フィルム、特に電気絶縁用として好適である。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)耐熱性(破断伸度の半減時間)
フィルム長手方向に、長さ200mm、幅10mmの短冊状サンプルを切り出して用いた。JIS K−7127に規定された方法に従って、引っ張り試験器を用いて25℃ 65%RHにて破断伸度を測定した。初期引っ張りチャック間距離は100mmとし、引っ張り速度は300m/分とした。測定はサンプルを変更して20回行い、その破断伸度の平均値(X)を求めた。また、長さ200mm、幅10mmの短冊状サンプルをギアオーブンに入れ、200℃の雰囲気下で放置した後、自然冷却し、このサンプルについて前記と同条件での引っ張り試験を20回行い、その破断伸度の平均値(Y)を求めた。得られた破断伸度の平均値(X)、(Y)から伸度保持率を次式で求めた。
伸度保持率(%)=(Y/X)×100
伸度保持率が50%以下となるまでの熱処理時間を破断伸度の半減時間とした。耐熱性は下記の基準に従って評価し、◎と○を合格レベルとした。
◎◎:伸度半減期が25時間以上
◎:伸度半減期が20時間以上
○:伸度半減期が15時間以上
×:伸度半減期が15時間未満。
【0037】
(2)耐湿熱性(破断伸度の半減時間)
フィルム長手方向に、長さ200mm、幅10mmの短冊状サンプルを切り出して用いた。JIS K−7127に規定された方法に従って、引っ張り試験器を用いて25℃ 65%RHにて破断伸度を測定した。初期引っ張りチャック間距離は100mmとし、引っ張り速度は300m/分とした。測定はサンプルを変更して20回行い、その破断伸度の平均値(X)を求めた。また、長さ200mm、幅10mmの短冊状サンプルを高度加速寿命試験器(タバイエスペック(株)製プレッシャークッカーTPC−211型)を用いて2kg/cmの加圧下、140℃ 80%RHの雰囲気下で放置した後、自然冷却・乾燥し、このサンプルについて前記と同条件での引っ張り試験を20回行い、その破断伸度の平均値(Y)を求めた。得られた破断伸度の平均値(X)、(Y)から伸度保持率を次式で求めた。
伸度保持率(%)=(Y/X)×100
伸度保持率が50%以下となるまでの熱処理時間を破断伸度の半減時間とした。耐湿熱性は下記の基準に従って評価し、◎と○を合格レベルとした。
◎:伸度半減期が25時間以上
○:伸度半減期が20時間以上
×:伸度半減期が20時間未満。
【0038】
(3)フィルム厚み
アンリツ(株)製電子マイクロメーター(K−312A型)を用いて、針圧30gにてフィルム厚みを測定した。
【0039】
(4)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から下記式により計算した。
ηsp/C=[η]+K[η]・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量(g/100ml)、Kはハギンス常数(0.343とする)である。また溶液粘度と溶媒粘度は、オストワルド粘度計を用いて測定した。
【0040】
(5)ポリマー組成物の耐加水分解性
溶融押出ししたキャストフィルムの一部をサンプリングし、これをポリマー組成物サンプルとした。このポリマー組成物サンプルを高度加速寿命試験器(タバイエスペック(株)製プレッシャークッカーTPC−211型)を用いて2kg/cmの加圧下、140℃ 80%RHの雰囲気下で4時間放置した後、自然冷却・乾燥し、固有粘度を測定した([η]3)。該処理前のサンプルの固有粘度([η]0)との差Δ[η]=[η]0−[η]3≦0.17以下を合格レベル(○)とし、Δ[η]>0.17を不合格(×)とした。
【0041】
(6)エステル環状三量体含有量
ポリマー組成物あるいはフィルム100mgをオルトクロロフェノール2ml中に溶解し、液体クロマトグラフィー(LC10A 島津製作所製)で測定し、ポリマーに対する割合(重量%)で示した。
【0042】
(7)ポリマー中金属量
金属元素は、ポリエステルを濃硫酸で灰化した後、原子吸光法(AA630−13型(島津製作所製))によって各々の金属量を定量した。
【0043】
参考例1
ポリエチレンテレフタレート(PET)の製造
ジメチルテレフタレート100重量部とエチレングリコール60重量部を、精留塔および攪拌機を備えた容器中で150℃で加熱溶融する。溶融後攪拌しながら酢酸マグネシウム4水和物を0.05重量部加え、徐々に240℃まで昇温させてメタノールを留去し、低分子量体を得た。ここにリン酸トリメチルを0.02重量部、3酸化2アンチモンを0.04重量部、平均粒子径20nmのコロイダルシリカ(日産化学(株)製)0.5重量部を添加した後、290℃まで昇温しながら徐々に反応容器内を減圧させ、133Pa以下に到達させた。その後、エチレングリコールおよび水を留去させながら重縮合反応させ、所定の攪拌トルクに到達後ガット状に吐出し、水槽で冷却した後、ガットをチップ状にカットして、[η]=0.56g/dlのポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。こうして得られたペレットを、133Pa以下の減圧下、230℃で20時間固相重合を行うことにより、[η]=0.85g/dl、エチレンテレフタレート環状三量体含有量0.25重量部のポリエチレンテレフタレートチップを得た。
【0044】
参考例2
ポリエチレンナフタレート(PEN)の製造
ジメチルナフタレート100重量部とエチレングリコール50重量部を、精留塔および攪拌機を備えた容器中で190℃で加熱溶融する。溶融後攪拌しながら酢酸マグネシウム4水和物を0.05重量部加え、徐々に240℃まで昇温させてメタノールを留去し、低分子量体を得た。ここにリン酸トリメチルを0.02重量部、3酸化2アンチモンを0.04重量部、平均粒子径20nmのコロイダルシリカ(日産化学(株)製)0.5重量部を添加した後、290℃まで昇温しながら徐々に反応容器内を減圧させ、133Pa以下に到達させた。その後、エチレングリコールおよび水を留去させながら重縮合反応させ、所定の攪拌トルクに到達後ガット状に吐出し、水槽で冷却した後、ガットをチップ状にカットして、[η]=0.61のポリエチレンナフタレートのペレットを得た。こうして得られたペレットを、133Pa以下の減圧下、230℃で20時間固相重合を行うことにより、[η]=0.80g/dl、エチレンナフタレート環状三量体含有量0.30重量部のポリエチレンテレフタレートチップを得た。
【0045】
参考例3
エチレン−メタクリル酸共重合体Na塩(PEMA−Na)
減圧下で充分に蒸留したエチレン83重量部とメタクリル酸メチル17重量部を、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を開始剤として、窒素雰囲気下60℃でラジカル重合を行い、洗浄を数回行ってエチレン−メタクリル酸メチル共重合体を得た。さらにこれを酸触媒下で加水分解することにより、エチレン−メタクリル酸共重合体(メタクリル酸成分含有量15重量部)を得た。これを60℃で8時間乾燥した該共重合体100重量部と、炭酸ナトリウム5.6重量部を、150℃に加熱された二軸三段タイプのスクリュー(PETとPPSの混練可塑化ゾーン/ダルメージ混練ゾーン/逆ネジダルメージによる微分散相容化ゾーンの構成)を具備したベント式二軸押出機(L/D=40、ベント真空度200Pa)に供給し、滞留時間3分にて溶融押出し、エチレン−メタクリル酸共重合体Na塩(PEMA−Na)を得た。
【0046】
参考例4
エチレン−アクリル酸共重合体K塩(PEMA−K)
炭酸ナトリウム5.6重量部のかわりに、炭酸カリウム7.2重量部を用いる他は、参考例3と同様にしてエチレン−メタクリル酸共重合体K塩(PEMA−K)を得た。
【0047】
参考例5
エチレン−アクリル酸共重合体Li塩(PEMA−Li)
炭酸ナトリウム5.6重量部のかわりに、炭酸リチウム3.9重量部を用いる他は、参考例3と同様にしてエチレン−メタクリル酸共重合体Li塩(PEMA−Li)を得た。
【0048】
参考例6
スチレン−4−ビニル安息香酸共重合体Na塩(PSVBA−Na)
減圧下で充分に蒸留したスチレン80重量部と、4−ビニル安息香酸20重量部を、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を開始剤として、窒素雰囲気下60℃でラジカル重合を行い、洗浄を数回行ってスチレン−4−ビニル安息香酸共重合体を得た。60℃で8時間乾燥した該共重合体100重量部と、炭酸ナトリウム3.2重量部を、ベント付き二軸押出機に供給し、150℃で溶融混練して、スチレン−4−ビニル安息香酸共重合体Na塩(PSVBA−Na)を得た。
【実施例】
【0049】
実施例1
参考例1で得たPET90重量部を150℃、133Pa以下の減圧化で4時間乾燥し、一方、参考例3で得た(PEMA−Na)10重量部を60℃、133Pa以下の減圧下で8時間乾燥した。これら樹脂を、280〜300℃に加熱された二軸三段タイプのスクリュー(PETとPPSの混練可塑化ゾーン/ダルメージ混練ゾーン/逆ネジダルメージによる微分散相容化ゾーンの構成)を具備したベント式二軸押出機(L/D=40、ベント真空度200Pa)に供給し、滞留時間3分にて溶融押出し、エチレン−アクリル酸共重合体を10重量%、Naを102mol/ton含有したマスターペレットを得た(M−1)。
マスターペレットM−1を1重量部と参考例1で得たPETのペレット99重量部(すなわち、PEMA−NaのPETに対する重量分率が0.1重量部)を混合し、180℃で3時間乾燥したのち、260〜280℃に加熱された、Tダイを具備した溶融押出機に供給してシート状に吐出し、25℃に冷却されたキャスティングドラム上へ静電印加法により密着固化させ冷却し、未延伸フィルムを得た。
【0050】
続いて、得られた未延伸フィルムを、加熱された複数のロール群からなる縦延伸気を用いてロールの周速差を利用して、95℃の温度で3.5倍に延伸し、さらにこのフィルムの両端部をクリップで把持して、テンター中100℃の温度で幅方向に4.0倍延伸し、さらに220℃で5秒間熱処理を行い、さらに幅方向に4%弛緩させて熱処理を行ったのち冷却して、厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。各種物性の評価結果を表1に示す。フィルム中に含有されるNa含有量は1mol/tonであり、耐熱性、耐湿熱性、オリゴマー量とも合格レベルのフィルムであった。
【0051】
実施例2〜5
M−1の量を5、10、20、50重量部と変えて、PEMA−NaおよびNa含有量が表1に示した値となるようにするほかは、実施例1と同様に二軸配向フィルムを得た。全てのフィルムにおいて耐熱性、耐湿熱性、オリゴマーとも合格レベルであった。
【0052】
実施例6、7
PEMA−Naの代わりにPEMA−KおよびPEMA−Liを用いる他は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。金属含有量としては、モル量として実施例3と同じとしたが、耐湿熱性はやや劣るフィルムであった。
【0053】
実施例8〜10
PEMA−Naの代わりにPSVBA−Naを用いる他は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。PEMAに比較して、耐熱性に優れたフィルムであった。
【0054】
参考例7
窒素雰囲気下の反応容器中で、エチレン18重量部、ノルボルネン75重量部、メタクリル酸メチル17重量部をトルエンに溶解し、攪拌しながら、エチレンを窒素と置換して封入する。ここに助触媒としてメチルアルミノキサンを添加し、30分攪拌後、さらに触媒としてrac−ジメチルシリルビス(2−メチル−e−ベンジンデニル)ジルコニウムジクロライドを添加し、エチレン−ノルボルネン−メタクリル酸メチルランダム共重合体を得た。これを酸触媒下で加水分解して、エチレン−ノルボルネン−メタクリル酸ランダム共重合体(PENMA)を得た(エチレン成分8重量部、ノルボルネン成分77重量部、メタクリル酸成分15重量部)。60℃で8時間乾燥したPENMA100重量部と、炭酸ナトリウム5.6重量部を、ベント付き二軸押出機で混練し、エチレン−ノルボルネン−メタクリル酸ランダム共重合体のNa塩(PENMA−Na)を得た。
【0055】
実施例11〜13
PEMA−Naの替わりにPENMA−Naを用い、PENMAおよびNa含有量が表中に示した値となるようにする他は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
耐熱性においては、最も優れたフィルムが得られた。
【0056】
参考例8
固相重合時間を10時間とする他は、参考例1と同様にして、[η]=0.70、エチレンテレフタレート環状三量体含有量0.50wt%のPETを得た。
実施例14
参考例1のPETの替わりに参考例8のPETを用いる他は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。耐熱性・耐湿熱性ともに合格レベルではあるが、やや劣るフィルムであった。
【0057】
実施例15
参考例1のPETの替わりに、参考例2のPENを用いる他は、実施例と同様にしてフィルムを得た。耐熱性・耐湿熱性とも非常に優れたフィルムであった。
【0058】
比較例1
M−1を用いず、PETのみを用いるほかは、実施例1と同様に製膜を行ってフィルムを得た。耐熱性、耐湿熱性、オリゴマー含有量いずれも不合格レベルであった。
【0059】
比較例2
M−1の量を、60重量部としPEMA−NaおよびNaの含有量を表中に示した値となるように添加する他は、実施例1と同様に製膜を行ってフィルムを得た。耐熱性・耐湿熱性とも不合格レベルであった。
【0060】
参考例9
溶融重合で到達させる[η]を0.6dl/gとし、固相重合時間を行わない他は、参考例1と同様にしてPETを得た。環状三量体含有量は1.1重量部であった。
【0061】
比較例3
参考例1のPETの替わりに参考例9のPETを用いる他は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。耐熱性・耐湿熱性・オリゴマー含有量全てにおいて不合格レベルであった。
【0062】
参考例10
エチレン−アクリル酸共重合体Zn塩(PEMA−Zn)
炭酸ナトリウム5.6重量部のかわりに、炭酸亜鉛13重量部を用いる他は、参考例3と同様にしてエチレン−メタクリル酸共重合体Zn塩(PEMA−Zn)を得た。
【0063】
比較例4
PEMA−Naの代わりにPEMA−Znを用いる他は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。耐熱性・耐湿熱性に劣るフィルムであった。
【0064】
比較例5
参考例1で得たPET75重量部、ポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ“トレコン”1100S 固有粘度0.89dl/g)25重量部、PEMA−Na30重量部(すなわち、ポリエステル組成物77重量部に対して、PEMA−Na23重量部)を予備混合して押出機に投入して、この組成比からなるPET/PBT/PEMA−Naのフィルムを得た。耐熱性・耐湿熱性に明らかに劣るものであった。
【0065】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のフィルムは、優れた寸法安定性、耐熱性、耐湿熱性を有し、かつ加工性に優れるため、プリント基板用、電気絶縁用、コンデンサ用、包装用、インクリボン用、工程紙などの各種工業材料用フィルムとして好適であり、特にコンプレッサーなどの電気絶縁用途として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを主成分とし、
側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物をポリマー組成物全体を100重量部として0.1〜5重量部、
Li、Na、Kから選ばれる少なくとも1種の金属元素をポリマー組成物の重量に対して1〜50mol/ton含有し、
エステル環状三量体含有量がポリマー組成物全体を100重量部として0.1〜0.6重量部である
ことを特徴とする成形体用ポリマー組成物。
【請求項2】
側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物中の側鎖のカルボン酸の一部あるいは全部と、Li、Na、Kから選ばれる少なくとも一種の金属元素の一部あるいは全部が塩を形成していることを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物が、エチレンと不飽和カルボン酸の共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物が、スチレンと芳香族ビニルの共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
側鎖にカルボン酸基を有するポリオレフィン含有組成物が、飽和および/または不飽和シクロアルキレン構造を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
ポリエステル組成物がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
ポリエステル組成物がポリエチレン−2,6−ナフタレートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー組成物からなることを特徴とする二軸延伸フィルム。
【請求項9】
耐湿熱性テストにおける破断伸度保持率半減期が20時間以上であることを特徴とする請求項8に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項10】
耐熱性テストにおける破断伸度保持率半減期が15時間以上であることを特徴とする請求項8または9に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項11】
電気絶縁用途であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の二軸延伸フィルム。

【公開番号】特開2007−2115(P2007−2115A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184475(P2005−184475)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】