説明

ポリマー部材及びその製造方法

【課題】ポリマー基材上に高密着強度を有する無電解メッキ膜が形成されたポリマー部材を提供する。
【解決手段】表面から所定深さまでの第1領域505に金属微粒子が含浸したポリマー基材507と、ポリマー基材507の上記表面上に形成された金属膜509とを備え、ポリマー基材507の上記表面から上記所定深さより浅い深さを有する第2領域509aに、上記金属膜509の一部が浸透していることを特徴とするポリマー部材を提供する。ポリマー基材上に形成された金属膜の一部がポリマー基材内部に浸透しているので、より高密着強度を有する無電解メッキ膜が形成されたポリマー部材を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製のポリマー基材上に金属膜が形成されたポリマー部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマー基材(ポリマー成形品)の表面に安価に金属膜を形成する方法としては、無電解メッキ法が知られている。しかしながら、無電解メッキ法では、メッキ膜の密着性を確保するために、無電解メッキの前処理としてポリマー基材表面を六価クロム酸や過マンガン酸等の環境負荷の大きい酸化剤を用いてエッチングを行い、ポリマー基材の表面を粗化する必要がある。また、このようなエッチング液で浸漬されるポリマー、すなわち、無電解メッキが適用可能なポリマーとしては、ABS等のポリマーに限定されていた。これは、ABSにはブタジエンゴム成分が含まれており、この成分がエッチング液に選択的に浸漬され表面に凹凸が形成されるのに対して、他のポリマーではこのようなエッチング液に選択的に酸化される成分が少なく、表面に凹凸が形成され難いためである。それゆえ、ABS以外のポリマーであるポリカーボネート等では、無電解メッキを可能にするためにABSやエラストマーを混合したメッキグレードが市販されている。しかしながら、そのようなメッキグレードのポリマーでは、主材料の耐熱性が低下する等の物性の劣化は避けられず、耐熱性を要求する成形品に適用することは困難であった。
【0003】
また、従来、超臨界二酸化炭素等の高圧二酸化炭素を用いた表面改質方法をメッキ前処理に適用する技術が提案されている。高圧二酸化炭素を用いた表面改質方法では、高圧二酸化炭素に機能性材料を溶解させ、該機能材材料の溶解した高圧二酸化炭素をポリマー基材に接触させることにより、機能性材料をポリマー基材の表面内部に浸透させてポリマー基材表面を高機能化(改質)する。例えば、本発明者らは、高圧二酸化炭素を用いた表面改質処理を射出成形と同時に行い、ポリマー成形品の表面を高機能化させる方法を開示している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、次のような表面改質方法を開示している。まず、射出成形機の加熱(可塑化)シリンダー内で樹脂を可塑化計量した後、加熱シリンダー内のスクリューをサックバックさせて後退させる。次いで、スクリューのサックバックにより負圧になった(圧力が低下した)溶融樹脂のスクリュー前方部(フローフロント部)に超臨界状態の高圧二酸化炭素およびそれに溶解した金属錯体等の機能性有機材料を導入する。この動作によりスクリュー前方部における溶融樹脂に高圧二酸化炭素と機能性材料を浸透させることができる。次いで、溶融樹脂を金型に射出充填する。この際、機能性材料が浸透したスクリュー前方部の溶融樹脂がまず金型に射出され、次いで、機能性材料がほとんど浸透していない溶融樹脂が射出充填される。機能性材料が浸透したスクリュー前方部の溶融樹脂が射出された際には、金型内における流動樹脂のファウンテンフロー現象(噴水効果)により、スクリュー前方部の溶融樹脂は金型表面に引っ張られながら金型に接して表面層(スキン層)を形成する。それゆえ、特許文献1に記載の表面改質方法では、ポリマー成形品の表面内部に機能性材料が含浸した(機能性材料により表面改質された)ポリマー成形品が作製される。機能性材料として、メッキ触媒となる金属微粒子を含む金属錯体等を用いると、表面にメッキ触媒が含浸したポリマー成形品が得られるので、従来のメッキ前処理方法のようにエッチング液で表面を粗化する必要なく、無電解メッキ可能な射出成形品を得ることができる。
【0005】
さらに、従来、超臨界二酸化炭素を含む無電解メッキ液を用いて無電解メッキを行う方法が開示されている(例えば、特許文献2、非特許文献1)。これらの文献では、無電解メッキ液と超臨界二酸化炭素とを、界面活性剤を用いて相溶させ、攪拌によりエマルジョン(乳濁状態)を形成し、該エマルジョン中でメッキ反応を起こす無電解メッキ方法が開示されている。通常、電解メッキや無電解メッキにおいては、メッキ反応中に発生する水素ガスがメッキ対象物の表面に滞留しメッキ膜にピンホールが発生する要因となる。しかしながら、上記文献に開示されている無電解メッキ法のように超臨界二酸化炭素を含む無電解メッキ液を用いた場合には、超臨界二酸化炭素は水素を溶解するので、上記メッキ反応中に発生する水素が取り除かれ、それによりピンホールが発生しにくく、硬度の高い無電解メッキ膜が得られるとされる。
【0006】
また、超臨界二酸化炭素を用いた無電解メッキ法以外では、従来、光触媒を用いたビルドアップ法による絶縁材料への無電解メッキ法が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。非特許文献2に記載で提案されている技術では、エポキシ樹脂系絶縁材料表面に形成された改質処理層(30〜50nm程度の厚さ)に銅メッキ膜が入り込んだメッキ膜が形成されている。
【0007】
【特許文献1】特許第3696878号公報
【特許文献2】特許第3571627号公報
【非特許文献1】表面技術 Vol.56、No.2、第83頁(2005)
【非特許文献2】表面技術 Vol.57、No.2、第49−53頁(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来のポリマーのメッキ方法においては、環境負荷の大きい前処理を行う必要があり、ポリマー材料の選択性も狭いものであった。
【0009】
また、特許文献1に記載の技術を用いて得られたポリマー部材にメッキ膜を形成した場合、ポリマー部材の表面を粗化していないので、メッキ膜の物理的アンカー効果が得にくく、メッキ膜と成形品の強固な密着性を得ることが困難であるという課題があった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、ポリマー基材上に高密着強度を有する無電解メッキ膜が形成されたポリマー部材を提供することである。また、本発明の別の目的は、ポリマー基材の表面に、安価で、高密着強度を有する無電解メッキ膜を形成するポリマー部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に従えば、ポリマー部材であって、表面から所定深さまでの第1領域に金属微粒子が含浸したポリマー基材と、上記ポリマー基材の上記表面上に形成された金属膜とを備え、上記ポリマー基材の上記表面から上記所定深さより浅い深さを有する第2領域に、上記金属膜の一部が浸透していることを特徴とするポリマー部材が提供される。
【0012】
なお、本発明でいう金属微粒子が含浸している「所定深さ」とは、1μm以上の深さを意味する。また、金属膜の一部が浸透している「所定深さより浅い深さ」とは、ポリマー基材の表面から100nm以上の深さであり且つ金属微粒子が含浸している所定深さより浅い位置のことを意味する(以下、この深さを金属膜の浸透深さともいう)。
【0013】
上述のように、特許文献2及び非特許文献1で開示されている無電解メッキ方法で作製されたポリマー部材では、後述するように、ポリマー基材の最表面に存在する金属微粒子を触媒核として金属膜が成長するので、金属膜はポリマー基材内部にはほとんど成長していない(金属膜の一部がほとんどポリマー基材に浸透していない)。また、非特許文献2で開示されている無電解メッキ方法で作製されたポリマー部材では、金属膜の浸透深さは30〜80nm程度である。それに対して、本発明のポリマー部材では、特許文献2、非特許文献1及び非特許文献2に比べて、金属膜の一部がポリマー基材の表面からより深い位置まで連続的に成長している、すなわち、金属膜の一部がポリマー基材内部のより深い位置に浸透しているので、より大きなアンカー効果が得られ、より高密着強度を有する金属膜を備えたポリマー基材が得られる。なお、金属微粒子の浸透深さ及び濃度分布は、ポリマー基材の材料、プロセス条件等により変わる。
【0014】
本発明のポリマー部材では、上記ポリマー基材の内部に無電解メッキ液に溶解する物質の粒子が存在することが好ましく、特に、上記無電解メッキ液に溶解する物質が水溶性材料であることが好ましい。
【0015】
無電解メッキ液に溶解する物質(以下、溶出物質ともいう)としては、水やアルコールが主成分である無電解メッキ液に溶解する材料であれば、任意であるが、特に、水溶性物質または溶解性低分子物質が好ましい。水溶性物質としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のミネラル成分やポリアルキルグリコール等が用い得る。また、溶解性低分子物質としては、例えば、εカプロラクタム、ポリエチレングリコール等のポリアルキルグリコールなどが用い得る。なお、ポリマー基材に含浸されている溶出物質の粒子のサイズは、無電解メッキ液に溶解する物質の分子量により適宜調整可能であるが、好ましい粒子サイズは、10nm〜1μm程度である。この理由は、粒子サイズが10nmより小さくなると、メッキ膜のアンカー効果が十分に得られず、粒子サイズが1μmより大きいとポリマー部材の表面が粗化されすぎて、メッキ膜に金属光沢が得られなくなる恐れがあるためである。
【0016】
また、本発明のポリマー部材では、上記ポリマー基材の内部に空隙が存在することが好ましい。なお、本明細書でいう「空隙」とは、10nm〜100μm程度のサイズを有する空隙のことをいう。これは、例えば、後述するように、ポリマー基材に浸透した高圧二酸化炭素を発泡させることにより形成することができる。なお、空隙が10nmより小さくなると、セル(空隙)密度が小さくなり、メッキ膜のアンカー効果が低減され、空隙が100μmより大きいと、ポリマー部材の表面の機械的物性や平滑性が著しく低下する恐れがある。また、空隙のサイズはポリマー部材の成形時に、溶融樹脂を金型に充填する際の圧力を変化させる方法や、金型のコアバック法等により適宜調整可能である。
【0017】
本発明の第2の態様に従えば、ポリマー基材上にメッキ膜が形成されたポリマー部材の製造方法であって、表面内部に金属微粒子及び無電解メッキ液に溶解する物質の粒子が含浸したポリマー基材を用意することと、上記ポリマー基材に高圧二酸化炭素を接触させて上記ポリマー基材の表面近傍を膨潤させることと、上記ポリマー基材の表面近傍を膨潤させた状態で、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を上記ポリマー基材に接触させて、上記ポリマー基材にメッキ膜を形成することとを含む製造方法が提供される。
【0018】
本明細書でいう「高圧二酸化炭素」とは、超臨界状態の二酸化炭素のみならず、高圧の液状二酸化炭素及び高圧の二酸化炭素ガスも含む意味である。なお、本明細書でいう高圧とは、5MPa以上の圧力のことをいう。また、本明細書でいう「無電解メッキ法」とは、外部電源を用いることなく触媒活性を有する基材表面で、還元剤を用いて金属皮膜を析出する方法のことをいう。
【0019】
本発明者らが、特許文献2及び非特許文献1等に開示されている超臨界二酸化炭素を含む無電解メッキ液を用いた無電解メッキ方法について、鋭意検討したところ、表面内部に金属微粒子が含浸したポリマー基材(表面近傍に金属微粒子を含むポリマー基材)を、単に、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液(メッキ反応が起こる状態の無電解メッキ液)に接触させただけでは、ポリマー基材の表面に無電解メッキ膜は形成されるものの、十分な密着性を有するメッキ膜を形成することが困難であることが分かった。本発明者らの検証実験によると、この場合、メッキ膜は、主にポリマー基材の最表面に存在する金属微粒子を触媒核としてメッキ膜が成長しており(メッキ膜はポリマー基材内部にはほとんど成長していない)、メッキ膜の物理的アンカー効果が得にくくなっていることが分かった。それゆえ、単にメッキ反応が起こる状態の無電解メッキ膜を高圧二酸化炭素とともにポリマー基材に接触させただけでは、メッキ膜とポリマー基材との間に強固な密着性を得られなかったものと思われる。
【0020】
それに対して、本発明の第2の態様に従うポリマー部材の製造方法では、まず、表面内部にメッキ触媒核となるPd、Ni、Pt、Cu等の金属微粒子、並びに、無電解メッキ液に溶解する物質(溶出物質)が含浸したポリマー基材に高圧二酸化炭素を接触させる。この際、ポリマー基材が非晶性材料で形成されている場合にはガラス転移温度が低下して表面近傍が軟化して膨潤する。一方、ポリマー基材が結晶性材料で形成されている場合には、軟化しないまでも、表面近傍で分子間距離が拡大して膨潤する。
【0021】
次いで、このような表面状態にあるポリマー基材に、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を接触させる。この際、ポリマー基材の表面近傍が膨潤した状態で無電解メッキ液を接触させるので、無電解メッキ液は高圧二酸化炭素とともにポリマー基材の内部に浸透させることができる。また、この際、超臨界状態等の高圧二酸化炭素を混合した無電解メッキ液は表面張力が低くなるので、ポリマー基材の内部に無電解メッキ液がより浸透し易くなる。この結果、ポリマー基材の内部に存在する金属微粒子まで無電解メッキ液が到達し、その金属微粒子を触媒核としてメッキ膜が成長する。すなわち、本発明の第2の態様に従うポリマー部材の製造方法では、ポリマー基材の表面だけでなく、内部に存在する金属微粒子を触媒核としてメッキ膜が成長するので、メッキ膜がポリマー基材表面から内部に渡って連続的に形成される(メッキ膜の一部がポリマー基材の内部に食い込んだ状態でポリマー基材上に形成される)。それゆえ、本発明の第2の態様に従うポリマー部材の製造方法では、従来の無電解メッキ法のようにポリマー基材の表面をエッチングで粗化する必要がなく、多様な種類のポリマー基材に対しても容易に密着性の優れたメッキ膜を形成することができる。また、従来の無電解メッキ法のようにポリマー部材の表面を粗化しないので、表面粗度の非常に小さい(ナノオーダー)メッキ膜を形成することができる。
【0022】
また、本発明の第2の態様に従うポリマー部材の製造方法では、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液をポリマー基材に接触させた際に、高圧二酸化炭素が気体並みの拡散性を有するので、無電解メッキ液をポリマー基材内部のより深い位置まで浸透させることができ、より深い位置からメッキ膜を連続的に形成することができる。例えば、ミクロンオーダーの深さからメッキ膜を連続的に形成することができる(メッキ膜の一部をミクロンオーダーの深さまで浸透させることができる)。なお、非特許文献2で開示されている無電解メッキ方法によっても、ポリマー基材の内部からメッキ膜を連続的に形成することはできるが、非特許文献2の方法では、ポリマー基材の最表面層部分に光触媒効果により親水性(濡れ性)を与え、その表面改質された最表面層にメッキ膜を成長させる方法であるので、メッキ膜の浸透深さは数十nm程度であり、本発明のようにメッキ膜の一部がミクロンオーダーの深さで浸透したポリマー部材を製造することは困難である。
【0023】
さらに、本発明の第2の態様に従うポリマー部材の製造方法では、ポリマー基材の表面内部に溶出物質が含浸しているので、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液をポリマー基材に接触させた際に、ポリマー基材内部に含浸している溶出物質が無電解メッキ液に溶出して、溶出物質が占めていた領域に無電解メッキ液が入り込む(溶出物質の含浸領域が無電解メッキ液により置換される)。その結果、無電解メッキ液が入り込んだ領域(溶出物質が占めていた領域)にもメッキ膜が成長する。この方法では、結晶性材料のように内部の自由体積が拡大し難い材料をポリマー基材として用いた場合であっても、容易にポリマー基材内部に無電解メッキ膜が成長する十分な領域(空間)を確保することができる。また、溶出物質が占めている領域の大きさは溶出物質の分子量により制御することができるので、溶出物質が占めていた領域(無電解メッキ液で置換された領域)で成長する微細なメッキ粒子の大きさも溶出物質の分子量により任意に制御することができる。そのため、金属微粒子と一緒に溶出物質をポリマー基材内部に含浸させたポリマー基材上に無電解メッキ膜を形成した場合には、ポリマー基材内部に複雑な形状(毛細血管状、蟻の巣状、網目状等)のメッキ膜領域を形成することができ、溶出物質を浸透させない場合に比べてより強度な密着性有するメッキ膜を形成することができる。
【0024】
本発明の第2の態様に従うポリマー部材の製造方法では、表面内部に金属微粒子及び無電解メッキ液に溶解する物質の粒子が含浸したポリマー基材を用意することが、射出成形機の金型内で表面内部に金属微粒子及び無電解メッキ液に溶解する物質が含浸したポリマー基材を成形することを含むことが好ましい。
【0025】
射出成形機を用いて溶出物質の粒子及び金属錯体由来の金属微粒子をポリマー基材に浸透させる方法としては、例えば、特許文献1に記載されているような技術を用いて、溶融樹脂のフローフロント部に金属微粒子及び溶出物質を浸透させる方法を用いてもよい。この方法では、射出成形時に成形品(ポリマー基材)表面近傍のみに、金属微粒子及び溶出物質を浸透させることができるとともに、材料ロスが少なく成形と同時に多様なポリマー材料を改質できるので好適である。また、成形後に同じ金型内で無電解メッキ法で該成形品表面にメッキ膜を成長させた場合には、射出成形と同時に密着性の高い金属膜を形成できるので、低コストでポリマー部材を製造することができる。なお、射出成形機を用いて金属微粒子及び溶出物質の粒子をポリマー基材に浸透させる方法としてサンドイッチ成形法を用いてもよい。
【0026】
なお、ポリマー基材内部に金属微粒子及び溶出物質を浸透させる方法は任意であり、例えば、金属微粒子及び溶出物質と、樹脂とをブレンドした材料を押し出し成形にて混合して、ペレットを作製してもよい。キャスト法にて溶媒に溶解した樹脂と金属微粒子及び溶出物質とを混合してもよい。また、ポリイミド等のワニスに金属微粒子及び溶出物質を分散させ、ポリイミドシート等の基材に塗布して硬化させてもよい。
【0027】
本発明の第3の態様に従えば、ポリマー基材上にメッキ膜が形成されたポリマー部材の製造方法であって、表面内部に金属微粒子及び空隙が存在するポリマー基材を用意することと、上記ポリマー基材に高圧二酸化炭素を接触させて上記ポリマー基材の表面近傍を膨潤させることと、上記ポリマー基材の表面近傍を膨潤させた状態で、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を上記ポリマー基材に接触させて、上記ポリマー基材にメッキ膜を形成することとを含む製造方法が提供される。
【0028】
本発明の第3の態様に従うポリマー部材の製造方法では、本発明の第2の態様に従うポリマー部材の製造方法と同様に、メッキ膜の一部をポリマー基材の内部に浸透させることができる。それゆえ、従来の無電解メッキ法のようにポリマー基材の表面をエッチングで粗化する必要がなく、多様な種類のポリマー基材に対しても容易に密着性の優れたメッキ膜を形成することができる。また、従来の無電解メッキ法のようにポリマー部材の表面を粗化しないので、表面粗度の非常に小さい(ナノオーダー)メッキ膜を形成することができる。
【0029】
さらに、本発明の第3の態様に従うポリマー部材の製造方法では、ポリマー基材の表面内部に空隙が存在するので、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液をポリマー基材に接触させた際に、その空隙に無電解メッキ液が入り込み、その空隙にもメッキ膜が成長する。それゆえ、結晶性材料のように内部の自由体積が拡大し難い材料をポリマー基材として用いた場合であっても、容易にポリマー基材内部に無電解メッキ膜が成長する領域(空間)を確保することができる。
【0030】
本発明の第3の態様に従うポリマー部材の製造方法では、表面内部に金属微粒子及び空隙が存在するポリマー基材を用意することが、金型及び加熱シリンダーを備える射出成形機を用い、上記金属微粒子を含む金属錯体を溶解させた高圧二酸化炭素を上記加熱シリンダー内の上記ポリマー基材の溶融樹脂に導入することと、上記金属錯体を溶解させた高圧二酸化炭素が導入された溶融樹脂を上記金型内に射出することと、射出された溶融樹脂内の高圧二酸化炭素を発泡させて空隙を形成することとを含むことが好ましい。
【0031】
本発明のポリマー部材の製造方法では、上記無電解メッキ液が、アルコールを含むことが好ましい。
【0032】
本発明者の検討によると、特許文献2及び非特許文献1等に開示されている超臨界二酸化炭素を含む無電解メッキ液を用いた無電解メッキ方法では、高圧状態の二酸化炭素と水溶液である無電解メッキ液とは、界面活性剤を用いたとしても、相溶しにくく、攪拌効果を高くする必要のあることが判明した。具体的には、攪拌トルクの高い攪拌子を用いたり、底の浅い高圧容器を用いたりすることが必要であることが分かった。すなわち、無電解メッキ液と高圧二酸化炭素とを均一に混合して安定したエマルジョンを得るためには、高圧容器や攪拌子等の形状や攪拌子の回転数における制限が大きいことが分かった。
【0033】
そこで、本発明者らは、この課題を解決するために検討を重ねた結果、無電解メッキ液は水が主成分であるが、さらに、アルコールを無電解メッキ液に混合させることにより、無電解メッキ液と高圧二酸化炭素とを攪拌しなくても、高圧状態の二酸化炭素とメッキ液とが安定して混ざり易くなることがわかった。これは、アルコールが高圧状態の二酸化炭素と相溶しやすいためであると考えられる。それゆえ、通常、無電解メッキ液を調合する際には、金属イオンや還元剤等の入った原液を、例えばメーカー推奨の成分比に従って、水で薄めてメッキ液を健浴するが、本発明のポリマー部材の製造方法では、さらにアルコールを任意の割合で水に混合するだけで、無電解メッキ液と高圧二酸化炭素とが均一に相溶した安定した無電解メッキ液を調合することができる。なお、水とアルコールの体積比(アルコール/水)は、任意であるが、10〜80%の範囲であることが望ましい。アルコールが少ないと、安定な混合液が得られにくくなる。また、アルコール成分が多すぎると、例えばニッケル−リンメッキに用いられる硫酸ニッケルにエタノール等の有機溶媒は不溶であるため、浴が安定しない場合がある。
【0034】
なお、本発明に用い得るアルコールの種類は任意であり、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘプタノール、エチレングリコール等を用いることができる。
【0035】
また、本発明のポリマー部材の製造方法において、無電解メッキ液にアルコールを加えた場合には、アルコールは水よりも表面張力が低いので、アルコールが加えられた無電解メッキ液の表面張力は著しく低下する。そのため、ポリマー基材の自由体積(内部)、空隙、溶出物質の含浸領域等に、無電解メッキ液が一層浸透し易くなる。
【0036】
本発明のポリマー部材の製造方法では、上記無電解メッキ液が、界面活性剤を含むことが好ましい。これにより、超臨界二酸化炭素等の高圧二酸化炭素と水溶液である無電解メッキ液との相溶性(親和性)をより向上させ、エマルジョンの形成を助長することができる。また、ポリマー基材に対するメッキ液の親和性も向上させることができる。
【0037】
界面活性剤としては、公知の、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、両性イオン性界面活性剤のうち、少なくも1種類以上を選択して用いることが望ましい。特に、超臨界二酸化炭素と水とのエマルジョンを形成するのに有効であると確認されている各種界面活性剤を用いることが望ましい。例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)−ポリプロピレンオキシド(PPO)のブロックコポリマー、アンモニウムカルボキシレートパーフルオロポリエーテル(PFPE)、PEO−ポリブチレンオキシド(PBO)のブロックコポリマー、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル等を用いることができる。
【0038】
本発明のポリマー部材の製造方法では、上記高圧二酸化炭素が、7.38MPa以上20MPa以下の圧力を有する超臨界状態の二酸化炭素であることが好ましい。二酸化炭素の臨界圧力は7.38MPaであるが、それ以上の超臨界状態であると密度が高くなり、メッキ液と相溶しやすくなるので好適である。また、圧力が30MPa以上に高くなると、二酸化炭素の使用量が過剰に多くなったり、高圧容器のシールが困難になる等の不具合が生じるので望ましくない。
【0039】
本発明のポリマー部材の製造方法では、短時間で最小限の薄いメッキ膜をポリマー基材の表面に形成して、メッキ膜とポリマー基材との密着性を確保することが好ましい。それにより無電解メッキ液が過剰にポリマー基材内部に浸透することを抑制することができ、無電解メッキ液によるポリマー基材の変形や変質を抑制することができる。また、メッキ膜の膜厚を厚くする必要がある場合には、本発明の上記方法によりポリマー基材上に無電解メッキ膜を形成した後に、常圧で従来のメッキ法(無電解メッキ法及び/又は電解メッキ法)を施すことにより、所望の膜厚を有するメッキ膜をポリマー基材上に積層することができる。この方法では、メッキ膜の信頼性(密着性)と、導電性等の物性の確保とを両立したメッキ膜を得ることができる。
【0040】
また、本発明者の検討によれば、特許文献2及び非特許文献1に記載されているような高圧二酸化炭素をメッキ液に含ませてメッキを行う方法では、高圧二酸化炭素を混合した際に、その混合条件によっては無電解メッキの析出速度が低下する等の不具合が生じることが判明した。これは、酸性の高圧二酸化炭素が高密度で無電解メッキ液に混合されるため、無電解メッキ液のpHが低下し、高圧二酸化炭素の混合したメッキ浴が最適なpH範囲の下限値より低くなるためであると考えられる。それゆえ、本発明のポリマー部材の製造方法では、無電解メッキ液のpHを予め高めに調整しておいてもよい。この場合、高密度の二酸化炭素を含む無電解メッキ液を調合すると、高密度の二酸化炭素を混入させることにより無電解メッキ液のpHが低下し、メッキ浴を最適なpH範囲にすることができる。それゆえ、この方法を用いた場合には上述したメッキ膜の析出速度が低下する等の問題を抑制することができる。
【0041】
本発明のポリマー部材の製造方法では、メッキ皮膜となる金属としては、Ni,Co,Pd,Cu,Ag,Au,Pt,Sn等を用いることができ、これらは無電解メッキ液中における硫酸ニッケル、塩化パラジウム、硫酸銅等の金属塩から供給される。また、還元剤としては、ジメチルアミンボラン、次亜燐酸ナトリウム(ホスフィン酸ナトリウム)、ヒドラジン、ホルマリン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、三塩化チタン等を用いることができる。
【0042】
また、無電解メッキ液には、公知の各種添加剤を添加してもよい。例えば、無電解メッキ液中で金属イオンと安定な可溶性錯体を形成するクエン酸、酢酸、コハク酸、乳酸等の錯化剤を添加してもよい。また、無電解メッキ液の安定剤として、チオ尿素等の硫黄化合物や鉛イオン、光沢剤、湿潤剤(界面活性剤)を添加してもよい。
【0043】
本発明の製造方法に用い得るポリマー基材の形成材料は任意であり、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂を用いることができる。特に、熱可塑性樹脂で形成したポリマー基材を用いることが望ましい。熱可塑性樹脂の種類は任意であり、非晶性、結晶性いずれでも適用できる。例えば、ポリエステル系等の合成繊維、ポリプロピレン、ポリアミド系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ABS系樹脂、ポリアミドイミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリ乳酸等の生分解性プラスチック、ナイロン樹脂等及びそれら複合材料を用いることできる。また、ガラス繊維、カーボン繊維、ナノカーボン、ミネラル等、各種無機フィラー等を混練させた樹脂材料を用いることもできる。
【0044】
また、本発明のポリマー部材の製造方法では、ポリマー基材の形態および作製方法は任意であり、例えば、押し出し成形により作製されたシートやパイプ、紫外線硬化や射出成形により作製されたポリマー成形品を用いることができる。工業性を考慮すると、連続生産性の高い射出成形により得られたポリマー成形品を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0045】
本発明のポリマー部材によれば、ポリマー基材上に形成された金属膜の一部がポリマー基材の表面内部に浸透しているので、より密着性の優れた金属膜を備えたポリマー部材が得られる。
【0046】
本発明のポリマー部材の製造方法によれば、無電解メッキ液をポリマー基材の内部に浸透させてメッキ反応を起こさせるので、従来のようにポリマー基材の表面を粗化する必要がなくなり、あらゆる種類のポリマー基材に対して密着性の優れたメッキ膜を形成することができる。
【0047】
また、本発明のポリマー部材の製造方法によれば、ポリマー基材内部に含浸した溶出物質で占められた領域、または、空隙に無電解メッキ液を浸透させてメッキ膜を成長させることができるので、結晶性材料のように内部の自由体積が拡大し難い材料をポリマー基材として用いた場合であっても、容易にポリマー基材内部に無電解メッキ膜が成長する領域(空間)を確保することができる。
【0048】
さらに、本発明のポリマー部材の製造方法によれば、ポリマー基材内部に含浸した溶出物質で占められた領域、または、空隙にメッキ膜が成長するので、ポリマー基材内部に複雑な形状のメッキ膜領域を形成することができ、一層強固な密着性有するメッキ膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明のポリマー部材の製造方法の実施例について図面を参照しながら具体的に説明するが、以下に述べる実施例は本発明の好適な具体例であり、本発明はこれに限定されない。
【実施例1】
【0050】
実施例1では、バッチ処理によりポリマー基材の表面に無電解メッキ膜を形成する方法を説明する。
【0051】
本実施例では、ポリマー基材として、携帯電話やデジタルカメラ等で用いられるカメラレンズモジュールのマウントを用いた。本実施例のポリマー基材の概略断面図を、図2に示した。図2に示すように、カメラレンズモジュール101は、内穴108を有するマウント102と、レンズ104と、レンズ104を固定するレンズホルダー103とから構成される。なお、図2(a)はマウント102とレンズホルダー103を分解した際の図であり、図2(b)はマウント102とレンズホルダー103を合体させた際の図である。図2(a)に示すように、レンズホルダー103は内穴107が設けられており、その内穴107に、レンズ104が固定されている。また、カメラモジュール101下部には、図示しないC−MOSセンサー等の撮像素子が固定される。
【0052】
レンズホルダー103の外壁には、図2(a)に示すように、ネジ溝105が形成されており、マウント102の内穴108内壁の上端部には、レンズホルダー103のネジ溝105と勘合するネジ溝106が形成されている。レンズホルダー103のネジ溝105と、マウント102のネジ溝106とを勘合させることにより、図2(b)に示すように、マウント102とレンズホルダー103とが合体される。
【0053】
なお、携帯電話やデジタルカメラ等で用いられるカメラレンズモジュール101では、レンズ104により被写体像をCCDやC−MOS等の撮像素子等のセンサーに結像させるが、携帯電話本体からの電気信号ノイズによる該モジュールへの悪影響を抑制する方法として、撮像素子に隣接したマウント102を電磁波シールドすることが望ましい。しかしながら、マウント102全体にメッキ膜を形成した場合、マウント102の内壁表面が金属の光沢膜であると、マウント102内部で光が反射するのでゴーストフレアの要因となる。それゆえ、本実施例のポリマー部材の製造方法の最終工程では、マウント102の表面に黒色無電解メッキを施した。
【0054】
また、本実施例では、ポリマー基材102(マウント)の形成材料として、ガラス繊維およびミネラル65%入りの強化ポリフタルアミド(ソルベイアドバンストポリマー製アモデルAS−1566HS)を用いた。
【0055】
[メッキ装置]
実施例1で用いたメッキ装置の概略構成図を図1に示した。メッキ装置100は、図1に示すように、主に、二酸化炭素ボンベ21、フィルター26、高圧シリンジポンプ20及び高圧容器1から構成されており、これらの構成要素は配管27により接続されている。また、図1に示すように、各構成要素間を繋ぐ配管27には、高圧二酸化炭素の流動を制御するための手動バルブ22〜24が所定の位置に設けられている。
【0056】
高圧容器1(高圧容器本体)は、図1に示すように、無電解メッキ液8及びポリマー基材102(ポリマー)が収容される容器本体2と、蓋3とからなる。蓋部3には、公知のバネが内蔵されたポリイミド製シール4が設けられており、ポリイミド製シール4により、高圧容器1内部に高圧ガスを密閉する。また、蓋3のメッキ液8側の表面(下面)には、複数のポリマー基材102を無電解メッキ液8内に吊るして保持することのできる保持部材5が設けられている。一方、容器本体2内の底部には、無電解メッキ液8を攪拌するためのマグネチックスターラー6が設けられている。また、容器本体2は、温調流路7を有しており、温調機(不図示)により温度制御された温調水をこの温調流路7内に流すことにより、高圧容器1の温度が調整される。なお、この例では、30℃から145℃の任意の温度により温調することができる。また、容器本体2の側壁部には、図1に示すように、高圧二酸化炭素の導入口25を設けた。
【0057】
本実施例では、高圧容器1の形成材料としてSUS316Lを用いた。これは、次のような理由からである。なお、高圧容器1の形成材料としては、腐食されにくい材質を用いることが望ましく、SUS316、SUS316L、インコネル、ハステロイ、チタン等を用いることができる。
【0058】
また、本実施例では、高圧容器1の内壁面には、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相法)によりDLC(ダイヤモンドライクカーボン)からなる膜(以下、非メッキ成長膜と称す)を形成した。これは、次の理由によるものである。
【0059】
従来の無電解メッキ法では、一般に、メッキ液の容器として樹脂製容器が用いられるが、例えば、特許文献2及び非特許文献1に記載されているような高圧二酸化炭素をメッキ液に含ませてメッキを行う方法では、高圧容器つまり耐圧の要求される金属製容器内でメッキ反応させる必要がある。しかしながら、本発明者らの検証実験によると、高圧容器にSUS等の金属材料を用いた場合、メッキ対象物(ポリマー基材)ではない高圧容器の表面にもメッキ膜が成長してメッキ浴が不安定になり、その結果、メッキ対象物に均一な金属膜を成長させることが困難になることが分かった。また、容器表面に成長したメッキ膜の密着性は悪いので、メッキの最中に容器表面に成長した該メッキ膜が剥離して、メッキ対象物(ポリマー基材)に異物として混入する問題も発生することがわかった。すなわち、高圧二酸化炭素を無電解メッキ液に含ませてメッキを行う方法において、無電解メッキ液の容器として金属製の高圧容器を用いた場合には、上述のような問題から工業化が困難であることが判明した。
【0060】
上記課題を解決するために、本実施例では、高圧容器1の内壁面に非メッキ成長膜(DLC)を形成し、容器内壁にメッキ膜が成長しないようにした。なお、非メッキ成長膜の形成材料としては、メッキ膜がその表面に成長しない材料であれば任意である。例えば、ダイヤモンドライクカーボン(硬質炭素膜)等の緻密な炭素膜、超臨界二酸化炭素に侵されにくいPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の有機物質の薄膜を用いることができる。これらの薄膜は、高周波プラズマCVD、スパッタ、溶射、塗装等を用いて形成することができる。あるいは、金(Au)やチタン等の安定な金属膜をメッキやスパッタでコーティングしてもよい。
【0061】
また、本実施例では、無電解メッキ液8としてニッケル−リンを用いた。なお、無電解メッキ液としては、ニッケル−ホウ素,パラジウム,銅,銀,コバルト等を用いても良い。また、無電解メッキ液8としては、中性、弱アルカリ性から酸性の浴でメッキできる液が好適であり、ニッケル−リンの場合はpH4〜6の範囲で用いることができるので望ましい。なお、高圧二酸化炭素を導入する前の無電解メッキ液8の条件によっては、高圧二酸化炭素を無電解メッキ液に浸透させる(導入する)ことで、無電解メッキ液8のpHが低下し、リン濃度が上昇して、メッキ膜の析出速度が低下する等の弊害が生じる恐れもあるので、予め無電解メッキ液8のpHを上昇させておいてもよい。
【0062】
本実施例では、無電解メッキ液8の原液として、硫酸ニッケルの金属塩と還元剤や錯化剤が含まれる奥野製薬社製ニコロンDKを用いた。また、無電解メッキ液8にアルコールを混合させた。本実施例で用い得るアルコールの種類は任意であり、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘプタノール、エチレングリコール等を用いることができるが、本実施例ではエタノールを用いた。より具体的には、無電解メッキ液1l中の各成分の割合は、硫酸ニッケルの金属塩と還元剤や錯化剤の含まれる原液(奥野製薬社製ニコロンDK)を150ml、水を350ml、及び、アルコール(エタノール)を500mlとした。すなわち、無電解メッキ液8中のアルコールの割合は50%とした。なお、硫酸ニッケルはアルコールに不溶なので、アルコールの添加量が80%を超えると硫酸ニッケルが多く沈殿するので適用できないことがわかった。
【0063】
本発明者らの検討によれば、無電解メッキ液8は水が主成分であるが、アルコールを混合することで、高圧状態の二酸化炭素と無電解メッキ液が安定に混ざり易くなることが分かった。これは、アルコールと超臨界二酸化炭素とが相溶し易いことによるものと考えられる。それゆえ、本実施例のように無電解メッキ液にアルコールを混合した場合には、無電解メッキ液に界面活性剤を添加したり、無電解メッキ液を攪拌する必要がなくなる。さらに、ポリマー基材内に高圧二酸化炭素とともにメッキ液を浸透させてポリマー基材内部でメッキ反応を起こさせるためには、メッキ液にアルコールを添加させたほうが、水のみよりも表面張力が低下するため、より好適である。ただし、本発明では、高圧二酸化炭素と無電解メッキ液との相溶性(親和性)をより高めるために、界面活性剤を添加したり、無電解メッキ液を攪拌したりしても良い。この例では、後述するように、界面活性剤を無電解メッキ液に添加し、無電解メッキ液の攪拌も行った。
【0064】
本実施例では、さらに、界面活性剤としてオクタエチレングリコールモノドデシルエーテルを無電解メッキ液8に対し、3wt%添加した。
【0065】
なお、本実施例で用いたメッキ装置100のシリンジポンプ20では、手動バルブ22、23を開いた状態で圧力一定制御することにより、高圧容器1内部の温度および高圧二酸化炭素の密度が変化した際にも、圧力変動を吸収することができ、それにより、高圧容器1内部の圧力を安定に保持することができる構造になっている。
【0066】
[ポリマー部材の製造方法]
まず、次のようにして、金属微粒子が表面内部に浸透したポリマー基材102(マウント)を作製(用意)した。射出成形により、図2に示した所定形状のポリマー基材102を成形した。次いで、成形後のポリマー基材102と金属錯体とを表面改質装置(不図示)の高圧容器(不図示)内に装着した。なお、この際、ポリマー基材102の全表面が、後に高圧容器に導入される超臨界状態の二酸化炭素(以下、超臨界二酸化炭素という)と接するようにポリマー基材102を高圧容器内で保持した。また、この例では、金属錯体としてヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)を用いた。
【0067】
次いで、高圧容器内に15MPaの超臨界二酸化炭素を導入した。この際、高圧容器内に仕込まれた金属錯体は超臨界二酸化炭素に溶解し、超臨界二酸化炭素とともにポリマー基材102全体の表面内部に浸透する。次いで、高圧容器を120℃で30分間圧力を保持することにより、ポリマー基材102の表面全体に浸透した金属錯体の一部が還元される。この例では、このようにして金属微粒子が表面内部に浸透したポリマー基材102を作製した(図12中のステップS11)。この様子を示したのが、図3であり、図3中の黒丸印がポリマー基材102の表面内部に浸透している金属微粒子である。
【0068】
次に、上述のようにして作製されたポリマー基材102を、図1に示した高圧容器1の蓋5の保持部材5に装着した後、ポリマー基材102を容器本体2内に挿入して蓋3を閉め、高圧容器1を密閉した。なお、容器本体2には予め無電解メッキ液8を容器本体2の内容積の70%満たしており、蓋3で容器本体2を密閉することにより、界面活性剤およびアルコールを含む無電解メッキ液8中に複数個のポリマー基材102が吊るされた状態となる(図1の状態、図12中のステップS12)。ただし、この時点では、高圧容器1および無電解メッキ液8の温度を、高圧容器1の温調流路7を流れる温調水により、メッキの反応温度(70℃〜85℃)以下である50℃に調整した。それゆえ、この時点では、ポリマー基材102はメッキの反応温度以下の低温(メッキ反応の起こらない温度)の無電解メッキ液と接触しており、ポリマー基材102の表面にメッキ膜は成長しない。
【0069】
次に、高圧二酸化炭素を、次のようにして、メッキ反応が起こらない低温度に温調されている高圧容器1内に導入した。なお、この例では、高圧二酸化炭素として超臨界二酸化炭素を用いた。まず、液体二酸化炭素ボンベ21より取り出した液体二酸化炭素を、フィルター26を介して高圧シリンジポンプ20で吸い上げ、次いで、ポンプ内で15MPaに昇圧にした(超臨界二酸化炭素を生成した)。次いで、手動バルブ22,23を開いて15MPaの超臨界二酸化炭素を導入口25を介して高圧容器1内部に導入し、ポリマー基材102と接触させた(図12中のステップS13)。この際、導入された超臨界二酸化炭素により、ポリマー基材102の表面は膨潤し、また、超臨界二酸化炭素の混合したメッキ液は表面張力が低くなっているので、無電解メッキ液8が超臨界二酸化炭素とともにポリマー基材102内部に浸透する。その結果、ポリマー基材102の内部に存在する金属微粒子まで無電解メッキ液8が到達することになる。なお、この例では無電解メッキ液8にアルコールを含ませているので、無電解メッキ液8の表面張力が一層低下するため、無電解メッキ液8がポリマー基材102の内部により浸透し易くなる。
【0070】
なお、この例では、超臨界二酸化炭素導入後に、マグレチックスタラー6を高速で回転させて無電解メッキ液8を攪拌した。上述のように、この例では、無電解メッキ液にアルコールが含まれているので、マグレチックスタラー6を用いて無電解メッキ液8を拡散しなくとも、超臨界二酸化炭素とメッキ液との相溶性を十分に確保できるが、この例では、超臨界二酸化炭素とメッキ液との相溶性をより高くするために、マグレチックスタラー6で無電解メッキ液8を攪拌した。
【0071】
次に、高圧容器1の温度を85℃に昇温し、高圧容器1内でメッキ反応を起こして(無電解メッキを施して)ポリマー基材102の表面にメッキ膜を形成した(図12中のステップS14)。この際、この例のポリマー部材の製造方法では、上述のようにポリマー基材102の内部に存在する金属微粒子のところまで無電解メッキ液が浸透しているので、ポリマー基材102の表面だけでなく、その内部に存在する金属微粒子を触媒核としてメッキ膜が成長する。すなわち、この例のポリマー部材の製造方法では、ポリマー基材102内部の自由体積内にもメッキ膜が成長することとなり、メッキ膜の一部がポリマー基材102内部に浸透した状態(メッキ膜がポリマー基材102の内部に食い込んだ状態)で、ポリマー基材102上にメッキ膜が形成される。
【0072】
メッキ終了後、マグネチックスターラー6を停止させ、しばらく静置して、高圧容器1内で二酸化炭素とメッキ液とを2相分離させた。その後、手動バルブ22を閉じて、手動バルブ24を開き、高圧容器1内の二酸化炭素を排気した。次いで、高圧容器1を開けて、ポリマー部材102を高圧容器1から取り出した。取り出されたポリマー部材102を目視で確認したところ、ポリマー基材102の表面全体に金属光沢がみられた。
【0073】
次に、高圧容器1から取り出したポリマー基材102の内部から二酸化炭素および無電解メッキ液を脱気させるために、ポリマー基材102を150℃で1時間アニールした。次いで、酸化されたメッキ膜表面を塩酸で活性化した。その後、大気中で従来の無電解ニッケル−リン液を用いて、常圧で無電解メッキを施し、500nmのメッキ膜を積層し、さらに、その上に無電解銅メッキを1μm積層し、電磁波シールド膜を施した。次いで、黒色の無電解メッキを行ない、無電解銅メッキ膜の上に黒色の無電解ニッケル−リンメッキ膜を積層した。黒色化は、専用の無電解ニッケルーリンメッキ液を用いてメッキを施した後、エッチングにより表面を粗化して行った。これは、ポリマー基材102(マウント)の内壁を黒色化して、光の反射によるゴーストフレアを抑制するためである。この例では、上述のようにして、図4に示すようなポリマー基材102の全表面を金属膜(図4中の符号番号300)で覆ったポリマー部材を得た。
【0074】
[メッキ膜の評価]
上述のようにして作製されたポリマー部材に対して、高温多湿試験(条件:温度80℃、湿度90%Rh、放置時間500時間)やヒートサイクル試験(80℃と150℃との温度間を15サイクル)を行った後、ピール試験したところ、膜剥れは発生しなかった。また、本実施例の上記プロセスを繰り返し行ったところ、高圧容器1内部にはメッキ膜の成長や容器内壁の腐食は認められなかった。
【0075】
また、この例で作製したポリマー部材の表面近傍の断面をSEM(走査電子顕微鏡)で観察した。その結果を図5に示した。図5中の領域102aは、メッキ膜が形成されていないポリマー基材102の領域であり、領域102bはポリマー基材102の内部にメッキ膜の一部が浸透している層(第2領域)である。また、図5中の領域102cは、大気中で従来の無電解ニッケル−リン液を用いて、常圧で無電解メッキを施した際に形成された金属膜の領域であり、図5中の領域102dは、無電解銅メッキ膜の領域である。それゆえ、領域102bと領域102cの境界付近が、ポリマー基材102の最表面となる。図5の観察像から明らかなように、ポリマー基材102の内部に金属膜が成長している層が形成されたことが確認された(図5中の領域102b)。また、ポリマー基材102の表面から約1μmの深さまでメッキ膜の一部が浸透していることが分かった。なお、金属膜の浸透深さはポリマー基材の材料やプロセス条件等を適宜変更することができる。
【0076】
この例では、さらに、ポリマー基材102の内部に存在する金属をXRD(X線回折装置)により成分分析したところ、Ni、PとPdが検出された。この結果から、ポリマー部材102の内部に浸透した金属錯体由来のPdが触媒として働き、ポリマー内部でNi−Pメッキ膜が成長していることが確認された。また、この例では、ポリマー基材102のメッキ膜の浸透深さより深い位置にPdが検出された。具体的には、ポリマー基材102の表面から約500μmの深さ位置までの領域(第1領域)でPdが検出された。
【実施例2】
【0077】
実施例2では、実施例1と同様に、バッチ処理によりポリマー基材の表面に無電解メッキ膜を形成する方法を説明する。なお、この例では、メッキ装置内の高圧容器に実施例1と異なる構造の高圧容器を用いた。なお、この例で用いた無電解メッキ液は実施例1と同じとした。また、この例では、実施例1と同様に、カメラレンズモジュールのマウント(図2に示す構造のマウント102)の表面に金属膜を形成した。また、無電解メッキ液に導入する高圧二酸化炭素としては、超臨界二酸化炭素を用いた。
【0078】
[メッキ装置]
実施例2で用いたメッキ装置の概略構成図を図6に示した。メッキ装置200は、図6に示すように、主に、二酸化炭素ボンベ21、フィルター26、高圧シリンジポンプ20、及び、高圧容器1’から構成されており、これらの構成要素は配管27により接続されている。また、図6に示すように、各構成要素間を繋ぐ配管27には、超臨界二酸化炭素の流動を制御するための手動バルブ22〜24が所定の位置に設けられている。
【0079】
高圧容器1’は、図6に示すように、容器本体2と、蓋3と、容器本体2の内部に収容される内部容器9とからなる。蓋3は、実施例1のようにポリマー基材102を保持する保持部材を備えないこと以外は、実施例1と同様の構造である。この例の容器本体2では、その内壁表面に、非メッキ成長膜を設けなかったこと以外は、実施例1と同様の構造とした。
【0080】
そして、この例のメッキ装置200では、金属製の容器本体2の内部に収容可能なPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製の内部容器9を用い、この内部容器9内でポリマー基材102に無電解メッキを施した。この例では、メッキ膜が成長しない材料で形成された内部容器を用い、その中で無電解メッキを施すので、内部容器を収容する高圧容器の内壁に直接メッキ液が接触しにくくなり、安定してメッキを行うことができる。また、この場合、高圧容器の内壁をコーティングする必要もないので、安価な装置となる。なお、高圧二酸化炭素が分散した無電解メッキ液の拡散性は低いので、無電解メッキ液が内部容器の外に漏れ出すことはほとんどない。また、内部容器の形成材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)以外では、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド等の樹脂材料及び、それらの樹脂材料にガラス繊維等の無機物を混合した材料、並びに、金属材料としてはチタンやハステロイ、インコネル等の金属材料等が用い得る。
【0081】
内部容器9は、図6に示すように、無電解メッキ液8及びポリマー基材102が収容される容器本体部9aと、蓋部9bとからなる。蓋部9bの無電解メッキ液8側の表面(下面)には、複数のポリマー基材102を無電解メッキ液8内に吊るして保持することのできる保持部材5が設けられている。この保持部材5は、実施例1の保持部材と同様の構造を有する。一方、容器本体部9a内の底部には、無電解メッキ液8を攪拌するためのマグネチックスターラー6が設けられている。また、容器本体部9aの上端付近の外壁にはネジ溝が形成されており、蓋部9b内壁には容器本体部9aの上端の外壁に設けられたネジ溝と勘合するネジ溝が形成されている。そして、容器本体部9aのネジ溝と蓋部9bのネジ溝とを勘合させることにより、内部容器9を閉める構造になっている。
【0082】
[ポリマー部材の製造方法]
まず、この例では、実施例1と同様にして、金属微粒子が表面内部に浸透したポリマー基材102(図2に示した形状のマウント102)を作製(用意)した。なお、この例では、金属錯体としてヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)を用いた。
【0083】
次いで、成形後のポリマー基材102を、図6に示した内部容器9の蓋部9bの保持部材5に装着した後、ポリマー基材102を容器本体部9a内に挿入して蓋部9bを閉めた。なお、この際、図6に示したように、界面活性剤およびアルコールを含む無電解メッキ液8中に複数個のポリマー基材102が吊るされた状態となる。そして、常温でこの状態を保持した。それゆえ、この時点では、無電解メッキ液8の温度はメッキ反応温度(70℃〜85℃)以下であるのでポリマー基材102の表面にメッキ膜は成長しない。
【0084】
次いで、予め90℃に温調しておいた高圧容器1’内に、内部容器9を挿入して、蓋3を閉め、直ちに、超臨界二酸化炭素を実施例1と同様にして導入口25を介して高圧容器1’内に導入した。その後、マグネチックスターラー6で無電解メッキ液8を攪拌した。この際、内部容器9の容器本体部9aと蓋部9bは、上述のように、ネジで勘合されるが、その状態においても、超臨界二酸化炭素は、粘度が低く拡散性が高いので、内部容器9のネジで勘合されている部分のわずかの隙間から内部容器9の内部に充分に導入される。また、この時点では、内部容器9には熱伝導性の低い樹脂を使用しているので、内部容器9内の温度は急激には上昇しないので、メッキ反応が起こる温度以下の低温度になっており、ポリマー基材102の表面にメッキ膜は成長しない。それゆえ、内部容器9を高圧容器1’内に挿入して、直ちに超臨界二酸化炭素を導入すると、実施例1と同様に、ポリマー基材102の表面は膨潤し、また、超臨界二酸化炭素の混合したメッキ液は表面張力が低くなっているので、無電解メッキ液が超臨界二酸化炭素とともにポリマー基材102の内部に浸透し、ポリマー基材102の内部に存在する金属微粒子まで無電解メッキ液が到達する。
【0085】
その後、時間の経過とともに、内部容器9内の温度が上昇し、最終的には無電解メッキ液8等の温度がメッキ反応温度まで上昇する。その時点で内部容器9でメッキ反応が起こり、ポリマー基材102の表面にメッキ膜が成長する。この際、この例のポリマー部材の製造方法では、上述のようにポリマー基材102の内部に存在する金属微粒子のところまで無電解メッキ液が浸透しているので、ポリマー基材102の表面だけでなく、その内部に存在する金属微粒子を触媒核としてメッキ膜が成長する。すなわち、この例のメッキ膜の形成方法では、メッキ膜の一部がポリマー基材102内部に浸透した状態で、ポリマー基材102上にメッキ膜が形成される。
【0086】
次に、上述したメッキ処理後(内部容器9の挿入後、約30分経過後)、超臨界二酸化炭素を高圧容器1’から排気し、そのまま90℃に内部容器9を温調保持した。このプロセスにより、ポリマー基材102の内部から成長したメッキ膜の上に、さらに常圧でメッキ膜を成長させた。その後、内部容器9を高圧容器1’から取り出し、次いで、内部容器9からポリマー基材102を取り出した。次いで、内部容器9から取り出したポリマー基材102に対して、実施例1と同様にして、無電解銅メッキおよび黒色無電解ニッケル−リンメッキを施した。この例では、上述のようにして、図4に示すような全表面が金属膜(図4中の符号番号300)で覆われたポリマー部材を得た。
【0087】
[メッキ膜の評価]
上述のようにして作製されたポリマー部材に対して、実施例1と同様にして環境試験(高温多湿試験、ヒートサイクル試験)及び密着性評価(ピール試験)を行ったところ、実施例1と同様に、密着性の高いメッキ膜がポリマー基材102上に形成されていることが分かった。
【0088】
また、本実施例の高圧容器1’の内部にはメッキ液は確認されなかった。それゆえ、本実施例のように、樹脂製の内部容器を用いた場合には、高圧容器1’内部をコーティングしなくても高圧容器1’内壁にメッキが成長することはないので、安定したメッキを行うことができる。また、高圧容器1’の表面の腐食を抑制することができるので、超臨界二酸化炭素を用いたメッキ膜の形成方法として好適なメッキ装置である。
【実施例3】
【0089】
実施例3では、無電解メッキ液に界面活性剤を添加しなかったこと、及び、マグネチックスターラーによる無電解メッキ液の攪拌を行わなかったこと以外は、実施例2と同様のメッキ装置を用いて、同様の方法によりポリマー基材に無電解メッキ処理を施し、ポリマー部材を作製した。
【0090】
また、この例で作製されたポリマー部材に対しても、実施例2と同様にして環境試験(高温多湿試験、ヒートサイクル試験)及び密着性評価(ピール試験)を行ったところ、実施例2と同様に、密着性の高いメッキ膜がポリマー基材上に形成されていることが分かった。すなわち、本発明のポリマー部材の製造方法によれば、界面活性剤やマグネチックスタラーを用いて、超臨界二酸化炭素と無電解メッキ液との親和性(相溶性)の向上は図らなくても、良好な密着性を有するメッキ膜をポリマー基材上に形成できることが分かった。
【実施例4】
【0091】
実施例4では、無電解メッキ液にアルコールを混合しなかったこと、及び、無電解メッキ液に導入する超臨界二酸化炭素の圧力を20MPaと高くしたこと以外は、実施例2と同様のメッキ装置を用いて、同様の方法によりポリマー基材に無電解メッキ処理を施し、ポリマー部材を作製した。
【0092】
また、この例で作製されたポリマー部材に対しても、実施例2と同様にして環境試験(高温多湿試験、ヒートサイクル試験)及び密着性評価(ピール試験)を行ったところ、実施例2と同様に、密着性の高いメッキ膜がポリマー基材上に形成されていることが分かった。すなわち、本発明のポリマー部材の製造方法では、アルコールを用いなくても、界面活性剤および機械攪拌を用いることで、水系溶媒(無電解メッキ液)と超臨界二酸化炭素の親和性を高めることができることが分かった。
【実施例5】
【0093】
実施例5では、メッキ装置の高圧容器の内壁に非メッキ成長膜をコーティングしなかったこと以外は、実施例1と同様のメッキ装置を用いて、実施例1と同様の方法によりポリマー基材に無電解メッキ処理を施し、ポリマー部材を作製した。
【0094】
また、この例で作製されたポリマー部材に対しても、実施例1と同様にして環境試験(高温多湿試験、ヒートサイクル試験)及び密着性評価(ピール試験)を行ったところ、実施例1と同様に、密着性の良好なメッキ膜がポリマー基材上に形成されていることが分かった。ただし、この例では、メッキ装置の高圧容器の内壁に非メッキ成長膜を形成しなかったので、高圧容器内壁にはメッキ膜の成長および腐食が確認された。
【0095】
[比較例1]
比較例1では、メッキ装置の内部容器で攪拌を行わなかったこと以外は、実施例4(無電解メッキ液にアルコールを混合しない場合)と同様にして、ポリマー基材に無電解メッキ処理を施し、ポリマー部材を作製した。
【0096】
また、この例で作製されたポリマー部材に対しても、実施例1と同様にして環境試験(高温多湿試験、ヒートサイクル試験)及び密着性評価(ピール試験)を行ったところ、作製した殆どのポリマー部材で無電解メッキ膜に剥離が生じた。この結果から、無電解メッキ液にアルコールを混合しない場合には、界面活性剤を無電解メッキ液に添加しても、無電解メッキ液の攪拌が必要であることがわかった。
【0097】
[比較例2]
比較例2では、無電解メッキ液と金属微粒子が表面内部に浸透したポリマー基材を、メッキ装置の内部容器に挿入した後、80℃に加温した。次いで、実施例3と同様にして内部容器を高圧容器内に挿入し、超臨界二酸化炭素を導入して無電解メッキ処理を行った。すなわち、比較例2では、ポリマー基材に接触させる無電解メッキ液の温度を、超臨界二酸化炭素を導入する前後でほぼ一定にした。
【0098】
また、この例で作製されたポリマー部材に対しても、実施例1と同様にして環境試験(高温多湿試験、ヒートサイクル試験)及び密着性評価(ピール試験)を行ったところ、作製した殆どのポリマー部材で無電解メッキ膜に剥離が生じた。これは、比較例2のメッキ膜の形成方法では、超臨界二酸化炭素の導入前(超臨界二酸化炭素をポリマー基材に接触させる前)に無電解メッキ液をメッキ反応温度に調整したので、無電解メッキ液がポリマー基材の内部に浸透する前にポリマー基材の表面でメッキ反応およびメッキ膜が析出し、ポリマー基材の内部に無電解メッキ液が浸透せず、ポリマー基材の内部におけるメッキ膜の成長が阻害されたためと考えられる。
【0099】
上記実施例1〜5並びに比較例1及び2における高圧容器の形態、無電解メッキ液の条件、及び、評価結果をまとめた表を表1に示す。なお、表1中のメッキ膜の密着性及び高圧内壁の腐食性の評価基準は、次の通りである。
メッキ膜の密着性:
◎ 環境試験(高温多湿、ヒートサイクル試験)後のピール試験で問題がない場合(メッキ膜の剥離、膜膨れ等がない場合)
○ 環境試験前のピール試験で問題がない場合
× 環境試験前のピール試験で剥離した場合
容器内壁の腐食性及びメッキ膜の成長:
○ 容器内壁に錆やメッキ膜の成長がない場合
× 容器内壁に錆やメッキ膜の成長が発生した場合
【0100】
【表1】

【実施例6】
【0101】
実施例6では、射出成形機を用いてポリマー基材を射出成形した後に、同じ射出成形機内で無電解メッキ処理を行う方法について説明する。本実施例では、ポリマー部材として自動車ヘッドライトのリフレクターを作製した。
【0102】
[ポリマー部材の製造装置]
本実施例で用いたポリマー部材の製造装置の概略構成を図7に示した。本実施例の製造装置500は、図7に示すように、主に、金型を含む縦型の射出成形装置部503と、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液の金型への供給及び排出を制御する無電解メッキ装置部501と、射出成形装置部503の可塑化シリンダー内の溶融樹脂に金属錯体を溶解した高圧二酸化炭素を浸透させるための表面改質装置部502とからなる。
【0103】
縦型の射出成形装置部503は、主に、図7に示すように、ポリマー基材の形成樹脂を可塑化溶融する可塑化溶融装置110と、金型を開閉する型締め装置111とからなる。
【0104】
可塑化溶融装置110は、主に、スクリュー51を内臓した可塑化シリンダー52と、ホッパー50と、可塑化シリンダー52内の先端部(フローフロント部)付近に設けられた高圧二酸化炭素の導入バルブ65とからなる。また、可塑化シリンダー52の導入バルブ65と対向する位置には、樹脂内圧を計測するための圧力センサー40を設けた。なお、ホッパー50内から可塑化シリンダー52内に供給される図示しない樹脂ペレットの材料(ポリマー基材の形成材料)としては、ポニフェニレンサルファイド(大日本インキ化学工業社製FZ−8600 Black)を用いた。
【0105】
また、型締め装置111は、主に、固定金型53と、可動金型54とからなり、可動金型54が可動プラテン56およびそれに連結した図示しない油圧型締め機構の駆動に連動して4本のタイバー55間を開閉する構造になっている。また、可動金型54には、可動金型54及び固定金型53との間に画成されるキャビティ504に、高圧二酸化炭素及び無電解メッキ液を供給及び排出するためのメッキ液導入路61,62が形成されている。なお、メッキ液導入路61,62は、図7に示すように後述する無電解メッキ装置部501の配管15に接続されており、配管15を介して高圧二酸化炭素及び無電解メッキ液がキャビティ504に導入される構造になっている。また、キャビティ504のシールは、固定金型53の外径部に設けられたバネ内蔵シール17と可動金型54との勘合により行われる。
【0106】
表面改質装置部502は、図7に示すように、主に、液体二酸化炭素ボンベ21と、シリンジポンプ20,34と、フィルター57と、背圧弁48と、金属錯体を高圧二酸化炭素に溶解する溶解槽35と、これらの構成要素を繋ぐ配管80とから構成される。また、表面改質装置部502の配管80は、図7に示すように、可塑化シリンダー52の導入バルブ65に接続されており、導入バルブ65付近の配管80には圧力センサー47が設けられている。なお、この例では、溶解槽35に仕込んだ金属微粒子の原料としては、金属錯体(ヘキサフルオロアセチルアセトナパラジウム(II))を用いた。
【0107】
無電解メッキ装置部501は、図7に示すように、主に、液体二酸化炭素ボンベ21と、ポンプ19と、バッファータンク36と、無電解メッキ液と高圧二酸化炭素を混合させる高圧容器10と、循環ポンプ90と、無電解メッキ液を補給するためのメッキタンク11と、シリンジポンプ33と、無電解メッキ液を回収する回収容器63と、回収槽12と、これらの構成要素を繋ぐ配管15とから構成される。また、高圧二酸化炭素及び無電解メッキ液の流動を制御するための自動バルブ43〜46,38が配管15の所定箇所に設けられている。また、配管15は、図7に示すように、可動金型54のメッキ液導入路61,62と接続されている。なお、この例では、無電解メッキ液としては、実施例1と同様のアルコールおよび界面活性剤を混合した無電解メッキ液を用い、その調合組成は実施例1と同様とした。
【0108】
[ポリマー基材の成形方法]
次に、表面内部に金属微粒子を浸透させたポリマー基材の成形方法について説明する。なお、本発明において金属微粒子の樹脂への浸透方法は任意であるが、本実施例では、可塑化シリンダー52内で可塑化計量した溶融樹脂の先端部(フローフロント部)に金属微粒子を溶解した高圧二酸化炭素を導入した。
【0109】
まず、溶解槽35において金属錯体をエタノールに溶解させ、金属錯体が溶解したエタノールをシリンジポンプ34内で15MPaに昇圧した。一方、液体二酸化炭素ボンベ21よりフィルター53を介してシリンジポンプ20に供給し、シリンジポンプ20内で液体二酸化炭素を15MPaと昇圧した。そして、生成した高圧液体二酸化炭素と金属錯体が溶解した高圧エタノールとを可塑化溶融装置110に供給する際には、各シリンジポンプ20,34の制御を圧力制御から流量制御に切り替えて行った。この際、高圧液体二酸化炭素と金属錯体が溶解した高圧エタノールとが配管80内で混合されながら送液される(以下、この混合された流体を高圧混合流体という)。なお、この高圧混合流体を可塑化溶融装置110に供給する際、高圧混合流体の供給圧力は、圧力計49の表示が15MPaになるように、背圧弁48により制御した。さらに、高圧混合流体を可塑化溶融装置110に供給する際には、高圧混合流体を、配管80内で図示しないヒーターにより50℃に温度制御しつつ、可塑化溶融装置110に供給した。
【0110】
次に、高圧混合流体を可塑化溶融装置110内に導入する手順を図7及び8を参照しながら説明する。図8(a)及び8(b)は、可塑化溶融装置110の導入バルブ65付近の拡大断面図である。まず、ホッパー50から樹脂ペレットを供給しながら、可塑化シリンダー52内のスクリュー51を回転させて、樹脂の可塑化計量を行った。可塑化計量完了時における導入バルブ65付近の状態を示したのが図8(a)である。なお、この際、図8(a)に示すように、導入バルブ62の導入ピン651が後退(図8(a)中の左側に移動)することで、溶融樹脂66へ高圧混合流体67が導入されること遮断している。
【0111】
次いで、スクリュー51をサックバック(後退)して、溶融樹脂66の内圧力を低下させると同時に、両シリンジポンプ20,34を圧力制御から流量制御に切り替え、該金属錯体の溶解したエタノールと二酸化炭素の流量をそれぞれ上述の方法にて1:10としながら、高圧混合流体67を導入バルブ65を介して可塑化シリンダー52内のフローフロント部の溶融樹脂66に導入した(図8(b)の状態)。図8(b)中の領域68が高圧混合流体67が浸透した溶融樹脂の部分である。
【0112】
なお、本実施例の可塑化シリンダー52の導入バルブ65では、溶融樹脂66と高圧混合流体67との圧力差が5MPa以上となったときに、高圧混合流体67が可塑化シリンダー52内の溶融樹脂66の導入される構造になっており、導入バルブ65による高圧混合流体67の導入原理は次の通りである。可塑化計量完了後、スクリュー51をサックバックさせると、溶融樹脂66が減圧され密度が低下する。そして、溶融樹脂66と高圧混合流体67との圧力差が5MPa以上となったとき、高圧混合流体67の圧力が導入バルブ65内のバネ652の戻し力(弾性力)に打ち勝ち、導入ピン651が溶融樹脂66側に前進し、高圧混合流体67が溶融樹脂66内部に導入される。なお、高圧混合流体67の導入は、樹脂圧および高圧混合流体67の圧力を、それぞれ圧力センサー40,47で監視しながら行った。
【0113】
次いで、両シリンジポンプ20,34を停止して高圧混合流体67の送液を停止した。また、それと同時に、スクリュー51を前進させて、樹脂圧力を再度上昇させ、導入ピン64を後退(図8(b)中の左方向に移動)させた。それにより、高圧混合流体67の導入を停止するとともに、高圧混合流体67と溶融樹脂66とを相溶させた。
【0114】
次いで、両シリンジポンプ20,34を、配管80中の図示しない自動バルブを閉鎖した後、可塑化溶融装置110に供給した高圧二酸化炭素及び金属錯体が溶解したエタノール溶液の流量分をシリンジポンプ20,34内に補液した。その後、圧力制御に切り替え、15MPaの高圧に保持し、次ショットの送液まで待機させた。
【0115】
次に、可塑化シリンダー52内のフローフロント部の溶融樹脂66に高圧混合流体67を導入した後、型締め装置111の油圧型締め機構(不図示)により型締めされ、温調回路(不図示)により温度制御された金型内に画成されたキャビティ504に溶融樹脂を射出充填した。次いで、成形品の発泡を抑制するために金型に保圧を与えた後、成形品を冷却固化した(図9の状態)。なお、溶融樹脂を金型内に射出成形する際、最初に射出されるフローフロント部の溶融樹脂68は噴水効果(ファウンテンフロー)により、射出成形品の表皮を形成する。すなわち、この例では、フローフロント部近傍に金属錯体由来の金属微粒子が分散しているので、図9に示すように、ポリマー基材507の表皮505(表面内部)には金属微粒子が含浸したポリマー基材507が得られる(図13中のステップS61)。この例では、このようにして、表皮であるスキン層505に金属微粒子が分散し、内皮であるコア層506に、ほとんど金属微粒子が存在しないポリマー基材507を得た。
【0116】
[メッキ膜の形成方法]
上述のようにして作製された表面内部に金属微粒子が分散したポリマー基材507に対して、次のようにして、金型内で無電解メッキ処理を行った。なお、無電解メッキ処理を行っている間、金型内部は80℃に温調した。
【0117】
まず、図10に示すように、型締め装置111の油圧型締め機構(不図示)を後退(図10中の下方向)させることにより、可動プラテン56および可動金型54を後退させ、固定金型53とポリマー基材507との間に隙間508(キャビティ508)を設けた。
【0118】
次いで、無電解メッキ装置部501の二酸化炭素ボンベ21より供給した二酸化炭素をポンプ19で昇圧し、バッファータンク36に貯蔵した。次いで、自動バルブ43を開放して、バッファータンク36に貯蔵されていた高圧二酸化炭素をメッキ液導入路61を介してキャビティ508に導入してポリマー基材507の表面に高圧二酸化炭素を接触させた(図13中のステップS62)。なお、この際、固定金型13の外径部に設けられたバネ内蔵シール17と可動金型54の勘合により、キャビティ508はシールされているので、導入された高圧二酸化炭素が金型外部に漏れ出すことはない。また、この際、キャビティ508における高圧二酸化炭素の圧力は15MPaとした。このように、ポリマー基材507の表面に高圧二酸化炭素を接触させることにより、ポリマー基材507の表面が膨潤するので、次いで導入される高圧二酸化炭素と無電解メッキ液との混合流体のポリマー基材507の内部への浸透がよりスムーズに行われるという効果が得られる。
【0119】
次いで、次のようにして、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液をキャビティ508に導入して、ポリマー基材507に接触させた。まず、予め、無電解メッキ装置部501のメッキタンク11から供給されたアルコールおよび界面活性剤混合の無電解メッキ液と、バッファータンク36から供給された15MPaの高圧二酸化炭素とを、高圧容器10内にて混合させた。なお、この例の無電解メッキ液は、それに含まれる各成分の割合が、実施例1と同様となるように調合した。また、この際、スタラー16の駆動および、マグネチックスターラー17の高速回転により高圧二酸化炭素と無電解メッキ液とを高圧容器10内で相溶させた。次いで、自動バルブ43を閉鎖し、自動バルブ44,45を開放した。
【0120】
次いで、循環ポンプ9を運転し、高圧容器10、配管15およびキャビティ508からなる循環流路に、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を循環させて、ポリマー基材507の表面に無電解メッキ液を接触させ、メッキ膜(ニッケル−リン膜)を形成した(図13中のステップS63)。この際、ポリマー成形品507の表面は膨潤しているので、ポリマー基材507の表面から無電解メッキ液がポリマー基材507の内部に浸透するとともに、ポリマー基材507内部に分散する金属微粒子を触媒核にして、メッキ膜が成長する。すなわち、ポリマー基材507上に形成されたメッキ膜の一部が浸透した状態(ポリマー基材507上に形成されたメッキ膜がポリマー基材507の内部に食い込んだ状態)でメッキ膜が成長するので、密着性の優れたメッキ膜が形成される。なお、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液が循環している際には、キャビティ508および循環ライン15の圧力は圧力センサー58,59で同圧になっていた。また、無電解メッキ液の補給は、メッキタンク11より供給したメッキ液をシリンジポンプ33で昇圧して、自動バルブ46の開放と同時に送液することで随時行った。
【0121】
次いで、上述のようにしてポリマー基材507上にメッキ膜を形成した後、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液の循環経路から高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を回収容器63を介して回収槽12から排気した。具体的には、自動バルブ44,45を閉鎖し、次いで、自動バルブ38を開放することで、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を回収容器16に排出した。回収容器63では、回収した高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液が、遠心分離の原理で水溶液(メッキ液)と高圧ガス(二酸化炭素)に分離される。メッキ液は回収槽12で回収し再利用することができる。ガス化した二酸化炭素は回収容器63の上部から排出され、図示しない排気ダクトに回収される。
【0122】
次いで、自動バルブ43を一定時間開いて、固定金型53とポリマー基材507との間の隙間508(キャビティ508)に高圧二酸化炭素を導入し、キャビティ508に残ったメッキ液の残留物を高圧二酸化炭素とともに金型の外へ排出した。次いで、キャビティ508の内圧が圧力センサー59のモニター値でゼロになったところで、金型を開きポリマー基材507を取り出した。
【0123】
次に、取り出したポリマー基材507に対して、通常の置換型金メッキを施して、ポリマー基材507の表面に金メッキ膜を積層した。この例では、上述のようにして、ポリマー基材上にメッキ膜が形成されたポリマー部材を得た。
【0124】
この例で作製されたポリマー部材の一部の模式断面図を図11に示した。この例で作製されたポリマー部材のスキン層505内部には金属微粒子600(図11中の黒丸印)が分散していることが確認された(この例では、このスキン層が金属微粒子が含浸している第1領域となる)。また、ポリマー基材507の片側には、金型内で成長させたニッケル−リンのメッキ膜509(金属膜)が形成されており、ニッケルーリンのメッキ膜509はポリマー基材507の内部から成長していた(メッキ膜509の浸透層509a(第2領域)が形成されていた)。なお、この例で作製したポリマー部材のメッキ膜のポリマー基材507への浸透深さは200nm程度であり、それより深い位置には、図11に示すように、Pd(金属微粒子)600が存在していた。具体的には、スキン層(Pdが含浸している第1領域)の深さは100μm程度であった。また、ニッケル−リンのメッキ膜509の上に金の高反射膜510が形成されていた。
【0125】
また、この例で作製されたポリマー部材に対しても、金属膜の密着性評価を、実施例1と同様な高温多湿環境試験にて行った。また、温度150℃、放置時間500時間の条件で高温試験も行った。その結果、実施例1と同様の結果が得られ、金属膜の密着性の低下は認められなかった。さらに、この例で作製されたポリマー部材の表面粗さRaを測定したところ、金型の表面粗さと同等のRa=100nmであった。すなわち、この例のポリマー部材の製造方法によれば、射出成形と同時にメッキ処理を行うことができ、プロセスが簡略化することができるだけでなく、密着性が高く且つ平滑な金属膜を耐熱性の高い樹脂材料に形成できることが分かった。
【0126】
なお、上記実施例6の無電解メッキ処理では、まず、高圧二酸化炭素のみをポリマー基材に接触させてポリマー基材の表面を膨潤した後に、無電解メッキ液をポリマー基材に接触させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ポリマー基材に高圧二酸化炭素を含み且つメッキ反応の起こらないメッキ液濃度を有する第1の無電解メッキ液をポリマー基材に接触させ、次いで、高圧二酸化炭素を含み且つメッキ反応の起こるメッキ液濃度を有する第2の無電解メッキ液をポリマー基材に接触させてメッキ膜を形成してもよい。なお、ここでいう、メッキ液濃度とは、メッキ液中の、メッキ反応を決定する因子である次亜燐酸ナトリウム等の還元剤の濃度のことである。すなわち、上記方法をより具体的に説明すると、メッキ反応が起きない程度に十分に還元剤量が少ない無電解メッキ液(第1の無電解メッキ液)と高圧二酸化炭素をポリマー基材に接触させることでポリマー基材内にメッキ液を浸透させ、次いで、第1の無電解メッキ液を、十分にメッキ反応が起きる程度に還元剤が含まれた無電解メッキ液(第2の無電解メッキ液)に置換してもよい。または、還元剤を主成分とする水やアルコ−ルの含まれる溶媒と高圧二酸化炭素を、還元剤の少ない第1の無電解メッキ液に添加することで、第2の無電解メッキ液を形成してもよい。
【0127】
また、実施例6では、ポリマー基材の射出成形時に、溶融樹脂のフローフロント部に金属錯体を導入して射出成形し、金属微粒子をポリマー基材の表面内部に浸透させる例を説明したが、本発明はこれに限定されない。サンドイッチ成形法により金属微粒子が表面内部に含浸したポリマー基材を成形しても良い。具体的には、金属微粒子を含んだ溶融樹脂を加熱シリンダーから射出し、次いで、金属微粒子を含まない溶融樹脂を別の加熱シリンダーから射出して成形しても良い。また、実施例1のように、表面に金属微粒子が含浸していないポリマー基材を成形した後、金属錯体を溶解した高圧二酸化炭素をポリマー基材に接触させて、金属微粒子をポリマー基材の表面内部に浸透させても良い。
【実施例7】
【0128】
実施例7では、実施例6と同様の射出成形機を用いてポリマー基材を射出成形した後に、同じ射出成形機内で無電解メッキ処理を行う方法について説明する。本実施例では、実施例6と同様に、ポリマー部材として自動車ヘッドライトのリフレクターを作製し、ポリマー基材の形成材料もポニフェニレンサルファイド(大日本インキ化学工業社製FZ−8600 Black)を用いた。また、金属微粒子の原料としては、金属錯体(ヘキサフルオロアセチルアセトナパラジウム(II))を用いた。
【0129】
本実施例では、金属微粒子とともに、水溶性物質である平均分子量1000のポリエチレングリコール(無電解メッキ液に溶解する物質:溶出物質)を、可塑化シリンダー(加熱シリンダー)内の可塑化計量された溶融樹脂の先端部(フローフロント部)を導入し、ポリマー基材の表面に含浸させた。具体的には、溶解槽35にて該金属錯体及びポリエチレングリコールをエタノールに溶解させ、金属錯体及びポリエチレングリコールが溶解したエタノールと、高圧二酸化炭素との混合高圧流体を溶融樹脂の先端部(フローフロント部)を導入した。それ以外は、実施例6と同様にして、本実施例のポリマー部材を作製した。
【0130】
本実施例では、金属錯体とポリエチレングリコールを、可塑化シリンダー52内の溶融樹脂のフローフロント部に導入して、ポリマー基材を射出成形したので、ポリマー基材のスキン層(表面内部)に、金属微粒子及びポリエチレングリコールが含浸し、コア層には金属微粒子及びポリエチレングリコールが殆ど浸透していないポリマー基材が得られる(図20中のステップS71)。その様子を示したのが図14であり、図14には、この例で成形したポリマー基材の表面近傍(スキン層の一部)の概略断面図である。この例の成形直後のポリマー基材の表面近傍では、図14に示すように、金属微粒子600とポリエチレングリコール601が分散している。なお、この例で成形したポリマー基材の内部に含浸しているポリエチレングリコール601の粒子サイズをEPMA(Electron Probe Micro Analizer)で調べたところ、約50nmであった。
【0131】
次いで、図14に示すようなスキン層に金属微粒子600及びポリエチレングリコール601が含浸しているポリマー基材に対して、実施例6と同様にして、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液と接触させてポリマー基材上にメッキ膜を形成した(図20中のステップS62及びS63)。
【0132】
高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を、表面が膨潤した状態のポリマー基材表面に接触させると、無電解メッキ液がポリマー基材内に浸透して、ポリエチレングリコール601に到達する。この際、ポリエチレングリコール601は水溶性物質であるので、無電解メッキ液の主成分である水やアルコールにポリエチレングリコール601が溶出し、ポリエチレングリコール601が占めていた(存在していた)領域に無電解メッキ液が入り込む(ポリエチレングリコール601が占めていた領域が無電解メッキ液に置換される)。その結果、ポリエチレングリコール601が占めていた領域(無電解メッキ液で置換された領域)においても無電解メッキ膜が成長する。このように、本実施例では、ポリエチレングリコール601が存在していた領域にメッキ膜を成長することができるので、ポリマー基材の形成材料として、ポリマー内部の自由体積が拡大し難い結晶性材料を用いた場合であっても、ポリマー基材内部に容易に無電解メッキ膜が成長する領域を確保することができる。
【0133】
この例の製造方法でメッキ膜をポリマー基材上に形成した場合のポリマー基材とメッキ膜との界面の様子を示したのが、図15である。この例では、ポリマー基材に含浸した金属微粒子600の周囲だけでなくポリエチレングリコール601が存在していた領域(図15中の破線603で囲まれた領域)にもメッキ膜が成長するので、図15に示すように、ポリマー基材の内部において非常に複雑な形状でメッキ膜602が成長し、ポリマー基材内部から連続したメッキ膜をポリマー基材上に形成することができる。それゆえ、より高密着性を有するメッキ膜が形成される。なお、図15に示すように、無電解メッキ液が到達しなかったポリエチレングリコール601の領域は、ポリエチレングリコール601が溶出せず、そのままの状態でポリマー基材内に残留する。
【0134】
この例で作製されたポリマー部材に対しても、金属膜の密着性評価を、実施例1と同様な高温多湿環境試験にて行った。また、温度150℃、放置時間500時間の条件で高温試験も行った。その結果、実施例1と同様の結果が得られ、金属膜の密着性の低下は認められなかった。さらに、この例で作製されたポリマー部材の表面粗さRaを測定したところ、金型の表面粗さと同等のRa=100nmであった。すなわち、この例のメッキ膜の形成方法によれば、射出成形と同時にメッキ処理を行うことができ、プロセスが簡略化することができるだけでなく、密着性が高く且つ平滑な金属膜を耐熱性の高い樹脂材料に形成できることが分かった。
【0135】
また、この例で作製されたポリマー部材では、メッキ膜のポリマー基材への浸透深さは約200nmであり、それより深い位置、具体的には、100μm程度の深さ位置まで金属微粒子(Pd)が存在していた。
【0136】
なお、本実施例では、ポリマー基材の内部に十分なメッキ膜の成長領域を形成するために、水溶性物質としてポリエチレングリコールを用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されず、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等のミネラル成分、デンプン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、アクリル酸等を用いても良い。また、水溶性物質の代わりに溶解性の低分子材料、例えば、ポリエチレンオキシド、εカプロラクタム、アルコール(エタノール、プロパノール、ブタノール等)、エチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、アセチルセルロース等を用いても良い。
【実施例8】
【0137】
実施例8では、実施例6と同様の射出成形機を用いてポリマー基材を射出成形した後に、同じ射出成形機内で無電解メッキ処理を行う方法について説明する。実施例7では、金属微粒子とともに、水溶性物質であるポリエチレングリコールをポリマー基材の表面に浸透させて、ポリマー基材の内部に十分なメッキ膜の成長領域を形成する例を説明したが、実施例8では、ポリマー基材の内部に微細な発泡セル(空隙)を形成することにより、ポリマー基材の内部に十分なメッキ膜の成長領域を形成する例を説明する。ポリマー基材の内部に微細な発泡セルを形成すること以外は、実施例7と同様にしてポリマー基材を成形し、ポリマー基材上にメッキ膜を形成した。
【0138】
なお、本実施例では、実施例6と同様に、ポリマー基材として自動車ヘッドライトのリフレクターを作製し、ポリマー基材の形成材料もポニフェニレンサルファイド(大日本インキ化学工業社製FZ−8600 Black)を用いた。また、金属微粒子の原料としては、金属錯体(ヘキサフルオロアセチルアセトナパラジウム(II))を用いた。
【0139】
この例のポリマー基材の内部に微細な発泡セルを形成する方法を、図16〜19、21及び22を参照しながら説明する。
【0140】
まず、実施例7と同様にして、可塑化シリンダー内の可塑化計量された溶融樹脂の先端部(フローフロント部)に金属錯体(金属微粒子)を溶解した高圧二酸化炭素を導入した(図22中のステップS81A)。次いで、実施例7と同様にして、金型のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填した(図22中のステップS81B)。溶融樹脂の射出充填時の状況を示したのが、図16〜18である。
【0141】
最初に、フローフロント部の溶融樹脂701(金属微粒子705及び二酸化炭素が分散もしくは溶解している)がキャビティ内に充填されると、その溶融樹脂701は、ファンウンテンフロー効果(噴水効果)により金型壁面703に引っ張られ(図16中の矢印702で示されるような挙動を示し)、ポリマー基材のスキン層を形成する。そして、続いて、金属微粒子705及び二酸化炭素が含まれていない溶融樹脂が充填され、ポリマー基材のコア層を形成する。
【0142】
フローフロント部の溶融樹脂701が充填された際、図16に示すように、二酸化炭素は金型703の表面内部で減圧され発泡セル704を形成する。さらに充填が進むと、金型壁面703と接する充填樹脂の表面近傍706では、二酸化炭素が排出されやすいので明確な発泡セルが殆ど消出する。その結果、図17に示すように、ポリマー基材の表面近傍706より少し内側の領域に発泡セル704が残ると考えられる。次いで、射出充填後、保圧を与えずに金型の型締め圧力を減圧し、充填された樹脂内圧を急激に減圧した。その結果、図18に示すように、ポリマー基材の表面近傍706より少し内側(ポリマー基材の内部側)の領域に、図17中の発泡セル704よりさらに微細な発泡セル708が形成される(図22中のステップS81C)。次いで、実施例7と同様にして、金型からポリマー基材を取り出した。この例では、以上のようにして、内部に微細な発泡セルが形成されたポリマー基材を得た(図21中のステップS81)。
【0143】
次いで、実施例7と同様にして、ポリマー基材上に高圧二酸化炭素と無電解メッキ液の混合流体を接触させて、メッキ膜を形成した(図21中のステップS82及びS83)。この際、無電解メッキ液がポリマー基材内に形成された発泡セル708内に浸透し、発泡セル内にもメッキ膜が成長する。その結果、図19に示すように、ポリマー基材の内部深くに複雑な形状でメッキ膜が成長し、ポリマー基材内部から連続したメッキ膜709を形成することができる。それゆえ、より高密着性を有するメッキ膜が形成される。なお、図19に示すように、無電解メッキ液が到達しなかった発泡セル708は、そのままの状態でポリマー基材内に残留する。なお、この例で成形したポリマー基材の内部に存在する発泡セル708のサイズをSEM(Scanning Electron Microscope)で調べたところ、約10〜20μmであった。
【0144】
この例で作製されたポリマー部材に対しても、金属膜の密着性評価を、実施例1と同様な高温多湿環境試験にて行った。また、温度150℃、放置時間500時間の条件で高温試験も行った。その結果、実施例1と同様の結果が得られ、金属膜の密着性の低下は認められなかった。すなわち、この例のメッキ膜の形成方法によれば、射出成形と同時にメッキ処理を行うことができ、プロセスが簡略化することができるだけでなく、密着性が高い金属膜を耐熱性の高い樹脂材料に形成できることが分かった。
【0145】
また、この例で作製されたポリマー部材では、金属膜のポリマー基材への浸透深さは約50μmであり、それより深い位置、具体的には、100μm程度の深さ位置まで金属微粒子(Pd)が存在していた。
【0146】
上記実施例1〜8では、ポリマー基材(ポリマー成形品)の形成材料として結晶材料を用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されず、ポリマー基材(ポリマー成形品)の形成材料として非結晶材料を用いた場合でも同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明のポリマー部材の製造方法では、ポリマー基材の表面を粗化することなく、ポリマー基材の表面内部から連続的に成長したメッキ膜を形成することができるので、様々な種類のポリマー基材に対して密着性の優れたメッキ膜を形成する方法として最適である。
【0148】
また、本発明のポリマー部材の製造方法において、射出成形機内で無電解メッキ処理を行った場合には、密着性が高く平滑な金属膜を耐熱性の高い樹脂材料に形成できるので、LED等高い耐熱性の要求される自動車用ヘッドライトのリフレクター等の作製方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は、実施例1で用いたメッキ装置の概略構成図である。
【図2】図2は、実施例1で作製したポリマー基材の概略断面図であり、図2(a)はマウントとレンズホルダーを分解した際の図であり、図2(b)はマウントとレンズホルダーを合体させた際の図である。
【図3】図3は、実施例1のポリマー部材の製造方法において、ポリマー基材の表面改質後のポリマー基材の概略断面図である。
【図4】図4は、実施例1のポリマー部材の製造方法において、ポリマー基材の表面にメッキ膜を形成した後のポリマー部材の概略断面図である。
【図5】図5は、実施例1で作製したポリマー部材の表面近傍のSEM画像である。
【図6】図6は、実施例2で用いたメッキ装置の概略構成図である。
【図7】図7は、実施例6で用いた製造装置の概略構成図である。
【図8】図8は、可塑化シリンダー内の溶融樹脂に金属錯体を溶解した高圧二酸化炭素を導入する際の様子を示した図であり、図8(a)は溶融樹脂の可塑化軽量完了時の様子を示した図であり、図8(b)は高圧二酸化炭素導入時の様子を示した図である。
【図9】図9は、実施例6のポリマー成形品の製造方法において、ポリマー成形品の射出成形完了時の様子を示した図である。
【図10】図10は、実施例6のポリマー成形品の製造方法において、ポリマー成形品に対して無電解メッキ処理を施している際の様子を示した図である。
【図11】図11は、実施例6で作製したポリマー成形品の断面構造を模式的に表した図である。
【図12】図12は、実施例1のポリマー部材の製造方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【図13】図13は、実施例6のポリマー部材の製造方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【図14】図14は、実施例7で作製したポリマー基材の表面近傍内部の断面構造を模式的に表した図である。
【図15】図15は、実施例7で作製したポリマー部材のポリマー基材とメッキ膜との境界面付近の断面構造を模式的に表した図である。
【図16】図16は、実施例8のポリマー基材の射出成形時の金型内の溶融樹脂の流動の様子を示した図である。
【図17】図17は、実施例8のポリマー基材の射出成形完了時の金型内の溶融樹脂の様子を示した図である。
【図18】図18は、実施例8で、射出成形後に、樹脂内圧を減圧して、微細な発泡セルを樹脂内部に形成した際の様子を示した図である。
【図19】図19は、実施例8で作製したポリマー部材の断面構造を模式的に表した図である。
【図20】図20は、実施例7のポリマー部材の製造方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【図21】図21は、実施例8のポリマー部材の製造方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【図22】図22は、実施例8のポリマー部材の製造方法における射出成形の手順を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0150】
1,1’,10 高圧容器
8 無電解メッキ液
9 内部容器
21 液体二酸化炭素ボンベ
20,33,34 シリンジポンプ
100,200 メッキ装置
102 ポリマー部材(マウント)
109,600 金属微粒子
300,602,709 無電解メッキ膜
500 製造装置
501 無電解メッキ装置部
502 表面改質装置部
503 射出成形装置部
504 キャビティ
505 スキン層(表皮)
506 コア層
507 ポリマー成形品
509 無電解ニッケル−リン膜
510 金メッキ膜
601 水溶性物質
708 発泡セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー部材であって、
表面から所定深さまでの第1領域に金属微粒子が含浸したポリマー基材と、
上記ポリマー基材の上記表面上に形成された金属膜とを備え、
上記ポリマー基材の上記表面から上記所定深さより浅い深さを有する第2領域に、上記金属膜の一部が浸透していることを特徴とするポリマー部材。
【請求項2】
上記ポリマー基材の内部に無電解メッキ液に溶解する物質の粒子が存在することを特徴とする請求項1に記載のポリマー部材。
【請求項3】
上記無電解メッキ液に溶解する物質が水溶性材料であることを特徴とする請求項2に記載のポリマー部材。
【請求項4】
上記ポリマー基材の内部に空隙が存在することを特徴とする請求項1に記載のポリマー部材。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2008−174840(P2008−174840A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10808(P2008−10808)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【分割の表示】特願2006−330167(P2006−330167)の分割
【原出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】