説明

ポリラクチド樹脂を用いたインジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法

特定比率の乳酸立体異性体と伸張比をもつPLA樹脂を、インジェクション・ストレッチ・ブロー成形することにより、容器が製造された。この方法により、良好な製造速度で良好な品質の容器の製造が可能になった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アメリカ合衆国エネルギー省により与えられた契約DE-FC36-00GO10598番の下でアメリカ合衆国政府の支援により完成された。アメリカ合衆国政府は本発明について何がしかの権利を有する。
この出願は、2004年6月23日に出願された米国仮特許出願第60/582,155号に基づく優先権を主張する。
この発明は、容器を製造するためのインジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボトルのような容器はしばしばインジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法で熱可塑性樹脂を成形することにより成形される。ポリエチレンテレフタレート(PET)製ボトルはこの方法で大量に製造されている。この容器はしばしば透明であり、水や炭酸水のような飲物を封入するためによく用いられる。PETは、この用途に非常に適しているが、石油に基づく材料に由来するヒケ(drawback)の問題があり、生分解性でなく、腐らせて堆肥にすることができない。毎年再生可能な原料に由来する適当な高分子材料を開発することに大きな興味が集まっている。生分解性であって、腐らせて堆肥にすることができる材料は、適正な条件で地中に埋めて腐らせれば、比較的早く分解するので、これらもまた興味の対象になっている。この容器は、リサイクルできると同時に捨てることができるので、廃棄とリサイクルの幅広い用途が可能である。
【0003】
ポリラクチド樹脂(ポリ乳酸又はPLAとも呼ばれている)は現在市販されており入手できる。この樹脂は、トウモロコシ、米、その他の糖や澱粉を製造するための植物のような、毎年再生可能な原料から製造することができる。更に、PLA樹脂は腐らせて堆肥にすることができる。このような理由から、石油に基づく熱可塑性材料が今まで使われてきた用途を、PLAで置き換えようという顕著な興味がある。この目的のために、容器を作るためのインジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法に、PLA樹脂を使ってみようという試みがなされてきている。例えば、特許文献1を参照されたい。しかし、PLA樹脂は、PETに比べて、顕著に異なる結晶性を持ち、非常に小さな成形可能範囲しか持っていないので、PLA樹脂をインジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法で成形することは困難である。PLA樹脂を用いて高速で高品質のボトルを製造することはとても実績があるとは言えず難しい。いくつかの例として、この樹脂は、全くブローすることができなかったことが報告されている。また他の例では、この樹脂は、成形プロセス中で白化する傾向があったとか、透明な容器であるべきなのに不透明に成形されたとの報告もある。更に他の例では、このPLA樹脂で成形した容器はその肉厚が不均一であったとか、衝撃強度が劣っていたとの報告もある。これらの結論として、インジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法においてPLA樹脂で容器を製造することのできる成形条件が極めて狭いために、PLA樹脂がインジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法で成功裏に使用することができなかったことがわかった。現在インジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法に用いられている他のタイプの樹脂でも同様の問題があることがあるが、その場合、ポリマー骨格にコモノマーを加えるなどのポリマーの構造を変えることにより、解消することができる。しかし、このような変更により、ガラス転移温度、溶融粘度、溶解性、浸透性、化学安定性又は毒性などの他のポリマー特性が変わることがある。このため、通常、樹脂の化学構造を変えることは避けることが望ましい。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,409,751号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法で高速で高品質の容器を製造するために、PLA樹脂を用いることのできる方法を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、熱可塑性樹脂がプリフォームを形成するように成形され、このプリフォームが容器の金型の中で機械的に伸張され吹き込みされて軸方向と半径方向に伸張されて、容器を形成することからなる、熱可塑性樹脂から容器を製造するためのインジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法であって、(1)この熱可塑性樹脂が、L乳酸単位及びD乳酸単位を反復することから成り、L乳酸単位又はD乳酸単位のいずれかを主たる反復単位とするコポリマーであって、主たる反復単位が乳酸反復単位全体の90〜99.5%を占めるポリ乳酸(PLA)樹脂であり、かつ(2)軸方向の伸張比と輪方向の伸張比の積が約3〜約17.5であるインジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法(以下「ISBM方法」という。)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のインジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法は、1段階又は2段階のものでもよい。これらについては後述する。
上述のエナンチオマー比を持つPLA樹脂の選択は、ISBM方法に顕著な利点をもたらし、短いサイクルタイム、制御された結晶性、良好な透明性、良好な強度と衝撃強度、及び均一な肉厚を持つ容器を製造することを可能にする。上述のエナンチオマー比を持つPLA樹脂を使用すると、成形条件の範囲が広がり、高速で高品質の容器を製造することが容易になる。
【0008】
容器は、ISBM方法を用いた本願発明の製法で作られる。ISBM方法は公知であり、例えば、特許文献1に記載されている。この方法は、まず、プリフォーム又は"プラグ"を形成する第1の工程を含む。このプリフォームは中空で、最終容器のサイズに比べると小さい寸法を有する。このプリフォームは、金型の中にそれを挿入し、そして軸方向(即ち、その長さ方向)と半径方向への伸張することにより、容器の形に形成される。軸方向の伸張は、そのプリフォームの中に"プッシャーロッド(pusher rod)"を挿入し、その金型の底の方向へ機械的に引き伸ばすことにより機械的に成される。半径方向の伸張は、そのプラグに圧縮ガスを注入することにより成され、それにより、金型の内表面に接触するように樹脂を外側に押す。典型的には、ガスの最初の増加分を注入することにより、予備的な半径方向の伸張が成される。これは、伸張用のロッドに隙間を与え、挿入を容易にする。このプリフォームは伸張され、その後すぐにより多くのガスにより吹き込みされ(ブローされ)、このブロー成形操作は完結する。
【0009】
軸方向の伸張(又は軸方向の伸張比)は典型的には、約1.5〜約3.5であり、特に、約2〜約3である。この軸方向の伸張は、プリフォームの長さに対する容器の長さの比と考えられる。一方、半径方向の伸張又は輪(hoop)方向の伸張(又は、輪方向の伸張比)は、典型的には、約2〜約5であり、特に、約3〜約5であり、プリフォームの円周の長さに対する容器のプリフォームの円周の長さの比と考えられる。この輪方向の伸張は、容器の円周の長さが一定ではないので、通常いかなる容器に対しても一定ということはない。特に記載しない限り、本発明において、輪方向の伸張とは、容器の横壁の平均の輪方向の伸張比をいう。
面積伸張(又は面積伸張比)は、軸方向の伸張に輪方向の伸張を乗じたものをいい、典型的には、約3〜約17.5であり、特に約3〜約15、約5〜約12、又は特に約8〜約11である。
【0010】
ISBM方法は、主に2つのタイプに分けられる。1つの主なタイプは、1段階で、プリフォームを成形し、条件を整えて、そのプリフォームがその軟化温度より温度が下がる前に、そのストレッチ・ブロー成形工程に移す。ISBM方法の他の主なタイプは、2段階で、プリフォームを予め用意しておく。この場合、このプリフォームはストレッチ・ブロー成形方法を行うために再加熱される。この2段階方法は、ストレッチ・ブロー成形段階が、より遅いインジェクション成形段階が終わることに依存しないため、サイクルタイムが早いという利点がある。しかし、この2段階方法には、プリフォームをストレッチ・ブロー成形のための温度まで再加熱しなければならないという問題がある。この加熱には、通常赤外線加熱が用いられるが、その照射エネルギーはプリフォーム以外にも注がれてしまう。また、この方法を注意深く行わないと、プリフォームを均一に加熱することは困難であり、プリフォームの外側から中心にかけて大きな温度勾配ができてしまう。プリフォームの外側を過熱しないように、中心を成形に適した温度に加熱するためには、その条件を注意深く選択しなければならない。そのため、通常、2段階方法は、1段階方法に比べて、成形条件の範囲は狭い。そのため、本発明のPLA樹脂を用いれば、この成形条件の範囲を広くすることができることが分かってきた。
【0011】
2段階方法では、通常プリフォームはストレッチ及びブローするに十分に軟化する温度まで加熱される。この温度は一般にPLA樹脂のガラス転移温度(Tg)より高い。好ましい温度は約70〜約120℃、より好ましくは約80〜約100℃である。プリフォームにおけるより均一な温度勾配を得るためには、プリフォームの温度が均一になる短時間の間、プリフォームを上記温度に保持してもよい。
2段階方法における金型の温度は、通常PLA樹脂のTgより低く、例えば約30〜約60℃、特に約35〜約55℃である。より厚い肉厚が必要な場合には、金型の温度は、より低い温度に保持してもよく、例えば約0〜約35℃、特に約5〜約20℃である。
【0012】
1段階方法では、インジェクション成形工程でできたプリフォームをストレッチ・ブロー成形工程に移す。その間、プリフォームはストレッチ及びブローするに十分に軟化する温度、好ましくはその樹脂のTgより高い温度、例えば約80〜約120℃、特に約80〜約110℃にある。プリフォームを、温度が均一になる短時間の間、上記温度に保持してもよい。1段階方法における金型の温度は、通常PLA樹脂のTgより高くても低くてもよい。通常低温成形方法と呼ばれる方法においては、金型の温度は2段階方法で使われる温度とほぼ同じである。通常高温成形方法と呼ばれる方法においては、金型の温度はPLA樹脂のTgより幾分高く保たれる。その温度は、例えば約65〜約100℃である。高温成形方法においては、成形が終わった後、更に樹脂の結晶性を上げるために、短時間成形された部品を圧力下に保持してもよい(ヒートセット)。このヒートセット(heat setting)は、成形された容器の透明性を保ったまま寸法安定性と耐熱性を向上させる効果がある。ヒートセットは2段階方法でも用いてもよいが、サイクルタイムを長くしてしまうので、そうしばしば使われてはいない。
【0013】
1段階方法及び2段階方法で、ブロー用のガス圧は、典型的には、約5〜約50bar(約0.5〜約5MPa)の範囲であり、例えば、約8〜約45bar(約0.8〜約4.5MPa)の範囲である。予備的な半径方向の伸張工程ではより低圧のガス注入を使うのが一般的であり、その後より高圧のインジェクションを行いブロー工程を完結させる。
【0014】
本発明において、「ポリラクチド」、「ポリ乳酸」及び「PLA」の語は互換的に用いられ、これらの反復単位がどのようにポリマーの中で形成されるかにかかわり無く、−OCO(O)CH(CH)−構造の反復単位を持つポリマーを表す。このPLA樹脂は、これらの反復単位を、重量で、好ましくは少なくとも90%、例えば、少なくとも95%又は少なくとも98%含む。本発明で用いるPLA樹脂は、典型的には、D及びLエナンチオマー反復単位の両方を含むランダムポリマーである。1段階のISBM方法を用いる場合には、支配的なエナンチオマーは重合された反復単位の90〜99.5%を占め、他方のエナンチオマーは重合された反復単位の0.5〜10%を占める。1段階方法に適当なエナンチオマー比は、例えば、支配的なエナンチオマーが92〜98%であり、他方のエナンチオマーが2〜8%、支配的なエナンチオマーが94〜98%であり、他方のエナンチオマーが2〜6%、又は支配的なエナンチオマーが95〜97%であり、他方のエナンチオマーが3〜5%である。最も好ましくは、このPLA樹脂が重合されたL乳酸単位を支配的に含むが、重合されたD乳酸単位を支配的に含むPLA樹脂を用いることもまた本発明の範囲内である。
【0015】
PLA樹脂は、平均エナンチオマー比が上記範囲内にあるPLA樹脂の混合物であってもよい。特に、エナンチオマー比が70:30〜95:5、特に80:20〜90:10の範囲の1つの樹脂と、エナンチオマー比が95:5又はそれ以上、特に97:3又はそれ以上の範囲の他の樹脂との混合物は有用である。構成する複数の樹脂の割合は、混合物の平均エナンチオマー比が全体として上記範囲内にあるように選択される。いくつかの例では、このようなポリマーの混合物を使うと、収縮を減少させ、白化を減らすような品質の向上に効果があったことが報告されている。
【0016】
好ましいPLA樹脂はラクチドの単一ポリマー又はコポリマーである。乳酸のようなα−ヒドロキシ酸は2つの光学エナンチオマーとして存在し、これらは一般的に「D」及び「L」エナンチオマーと呼ばれる。D−又はL−乳酸は、合成法によって製造されうるが、Lエナンチオマーは発酵法が通常、しかし常にではないが、好ましい製造法である。ラクチドは様々なエナンチオマー形で存在し、例えば、2つのL−乳酸のダイマーである「L−ラクチド」、2つのD−乳酸のダイマーである「D−ラクチド」、及び1つのL−乳酸分子と1つのD−乳酸分子のダイマーである「メソ−ラクチド」が挙げられる。更にL−ラクチドとD−ラクチドの50/50の混合物は約126℃の融点を持ちしばしば「D、L−ラクチド」と呼ばれる。ラクチドのこれらの形のいずれのポリマー又はそれらの混合物も、そのPLA樹脂が上記の異性体比を持つ限り、本発明に使用できる。
好ましいラクチドは乳酸を重合して製造されプレポリマーを形成し、次にこのプレポリマーを解重合し同時に生成するラクチドを蒸留して除去する。このような方法は米国特許第5,274,073号に記載されているので参照されたい。
【0017】
PLA樹脂は、更に、ラクチド又は乳酸と共重合可能な他のモノマーを反復単位として含んでもよい。このようなモノマーとして、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラメチレンオキシド等を含む。)、環状ラクトン類、環状カーボネート類が挙げられる。これら他のモノマーに由来する反復単位はブロック及び/又はランダムに存在できる。これら他のモノマーは好ましくはPLA樹脂に重量で、0〜10%、特に0〜5%含まれる。このPLA樹脂は一般にこのような他のモノマーを欠いている。
PLA樹脂は、また開始剤化合物の残渣を含んでもよい。開始剤化合物は、分子量を制御するために重合工程でしばしば使われる。このような適当な開始剤として、例えば、水、アルコール、グリコールエ−テル、種々のタイプのポリヒドロキシ化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヒドロキシ末端のブタジエンポリマーなど)が挙げられる。
【0018】
PLA樹脂の、ポリスチレンを基準としてGPCで測定した数平均分子量は、有利には、約80,000〜約150,000、特に約95,000〜約120,000である。このPLA樹脂の、30℃でメチレンクロライド中で測定した相対粘度は、有利には、約3.5〜約4.5、特に約3.6〜約4.2である。
ラクチドを重合してPLA樹脂を製造するために特に適した方法は、米国特許第5,247,059号、同第5,258,488号及び同第5,274,073号に記載されている。この好ましい重合方法は典型的には揮発分除去工程を含み、この工程でポリマー中のフリーのラクチド含量が、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下に下がる。溶融安定なラクチドポリマーを製造するために、重合工程の最後で触媒を除去又は不活性化することが好ましい。これは、触媒を沈殿させたり又は好ましくはポリマーに不活性試薬を加えたりすることにより成される。触媒の不活性化は、好ましくは揮発分除去工程に先立って、重合反応容器に不活性化試薬を加えることにより行われる。適当な不活性試薬として、カルボン酸、好ましくはポリ乳酸のカルボン酸;ヒンダードアルキル、アリール及びフェノリックヒドラジド;脂肪族及び芳香族モノ−及びジ−カルボン酸のアミド;環状アミドヒドラゾン及びビス−ヒドラゾン及び芳香族アルデヒド、脂肪族及び芳香族モノ−及びジ−カルボン酸のヒドラジド、ビス−アクリル酸ヒドラジン誘導体、ホスファイト化合物及びヘテロ環状化合物が挙げられる。
【0019】
PLA樹脂は、長鎖の側鎖を導入するように改変されてもよい。この長鎖の側鎖は、ポリマーのレオロジー、特に溶融強度を改善することが分ってきた。長鎖の側鎖を導入する方法は種々報告されており、例えば、米国特許第5,359,026号に記載されているようなエポキシ化脂肪又はオイル又はWO 02/100921 A1に記載されているような2環ラクトンコモノマーを用いてラクチドを共重合する方法;米国特許第5,594,095号及び同第5,798,435号に記載されているようなペルオキシドでPLA樹脂を処理する方法、及び米国特許第5,210,108号、同第5,225,521号、GB2277324及びEP632081に記載されているような重合工程で多官能の開始剤を使う方法が挙げられる。近年、複数のエポキシ基を有するアクリルポリマー及びコポリマーがPLA樹脂の側鎖を導入するための試薬として有用であることが分ってきた。このようなポリマー及びコポリマーとして、Johnson Polymers, Inc.製の登録商標Joncryl 4368やJoncryl 4369を付したものが挙げられる。
【0020】
PLA樹脂は種々のタイプの添加剤と複合化されうる。この添加剤として、抗酸化剤、保存剤、触媒不活性化試薬、安定剤、可塑剤、フィラー、核形成剤、全てのタイプの着色剤及び発泡剤が挙げられる。透明なボトルを製造する場合の好ましい実施態様として、PLA樹脂は好ましくは樹脂を(結晶化に起因して)白化させたり不透明化させる添加剤を欠くことが望ましい。添加剤として、カーボンブラックのような粒子状物質は、少量用いた場合には白化や不透明化を起こさず、赤外線を吸収しプリフォームの加熱速度を上げてISBM方法(特に2段階方法)を資するため、好ましい。
【0021】
プリフォームや製造される容器に湿度に対する耐久性を持ちその他の蒸気が侵入することを防ぐような遮蔽ポリマー層を持たせるために、PLA樹脂を遮蔽効果を有するポリマーとコインジェクション成形してもよい。適当な遮蔽効果を有するポリマーとして、ポリエチレン又はエチレンのコポリマー、ポリプロピレン又はプロピレンのコポリマー、ポリビニリデン又はビニリデンクロライドのコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド及び同様のポリマーが挙げられる。
本発明を用いて透明なボトルを製造することは特に興味を引くことである。透明性は便利にはヘイズ%(% haze)として表され、ASTM D-1003に従って測定されうる。本発明に従って製造されるボトルのヘイズは、好ましくは20%より大きくはなく、より好ましくは15%より大きくはなく、更に好ましくは10%より大きくはない。

以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。全ての部と%は特記した場合を除き重量による。分子量はポリスチレンを基準としてテトラヒドロフラン中のGPCによって測定されたものである。
【実施例1】
【0022】
以下の2段階ISBM方法を用いて種々のPLA樹脂から1.5Lのボトルを作成した。この樹脂を200〜210℃に加熱してプリフォーム金型に射出するインジェクション成形法により、長さが129mm、平均直径が23mm、重さが42〜44gのプリフォームを作成した。製品ひずみを最小限にして不透明性の無い透明な製品ができるように、成形条件を最適化した。成形されたプリフォームは、別工程でストレッチ・ブロー成形方法を行う前に、室温まで冷却された。
ストレッチ・ブロー成形方法は、最高速で1時間に約2400個のボトルを製造可能な実験室スケールの成形機で行われた。このプリフォームは赤外線ランプにより約98〜110℃に加熱され、金型に挿入され、約10bar(1MPa)の圧力で予備吹き込みされ、そして38bar(3.8MPa)の圧力で伸張され吹き込みされた。金型の温度は基部(base)以外は100°F(38℃)であり、基部は40°F(4℃)に冷却された。伸張比については、軸方向の伸張が2.1、輪方向の伸張比が4.0、面積伸張比が8.4であった。
用いたPLA樹脂は:
樹脂1:L−ラクチド96.5%及びD−ラクチド3.5%のコポリマーであり、数平均分子量が約105,000である。
樹脂2:L−ラクチド96%及びD−ラクチド4%のコポリマーであり、数平均分子量が約105,000である。
このような条件で、1時間あたり2300〜2400個の製造速度で樹脂1と樹脂2は良好に加工処理され、良好な品質の透明なボトルを製造した。
【実施例2】
【0023】
以下の2段階ISBM方法を用いて種々のPLA樹脂から16オンス(453.6g)の炭酸ソフトドリンク用ボトルを作成した。この樹脂を205〜225℃に加熱してプリフォーム金型に射出するインジェクション成形法により、長さが68.2mm、平均直径が15.6mm、参照外径が22.4mm、重さが〜24gのプリフォームを作成した。
ストレッチ・ブロー成形方法は、最高速で1時間に約1200個のボトルを製造可能な実験室スケールの成形機で行われた。このプリフォームは赤外線ランプにより約85〜90℃に加熱され、金型に挿入され、約20bar(2MPa)の圧力で予備吹き込みされ、そして38bar(3.8MPa)の圧力で伸張され吹き込みされた。金型の温度は基部(base)以外は120°F(49℃)であり、基部は40°F(4℃)に冷却された。伸張比については、軸方向の伸張が2.2、輪方向の伸張比が3.7、面積伸張比が8.1であった。
プリフォーム温度は各樹脂ごとに、上記の製造速度で良好な品質のボトルが製造可能なプリフォーム温度の範囲に決定された。ボトルの品質は、伸張白化の表出、基部の肉厚の薄さ、壁面の肉厚の薄さ、及び基部の中心における樹脂のこぶ(slug)のでき方について評価した。
【0024】
用いたPLA樹脂は:
樹脂3:L−ラクチド96.8%及びD−ラクチド3.2%のコポリマーであり、数平均分子量が約102,000、相対粘度が3.99である。
樹脂4:L−ラクチド95.9%及びD−ラクチド4.1%のコポリマーであり、数平均分子量が約103,500、相対粘度が〜4.00である。
樹脂5:L−ラクチド95.1%及びD−ラクチド4.9%のコポリマーであり、数平均分子量が約101,000、相対粘度が3.6である。
樹脂6:L−ラクチド95.7%及びD−ラクチド4.3%のコポリマーであり、数平均分子量が約83,000、相対粘度が3.29である。
樹脂7:L−ラクチド95.3%及びD−ラクチド4.7%のコポリマーであり、数平均分子量が約80,000、相対粘度が3.23ある。
樹脂3〜7を用いて、良好な品質の透明なボトルが製造された。しかし、製造条件の範囲について顕著な差が見られた。樹脂3と4は最も広い製造条件の範囲を示し、両者とも約88〜95℃のプリフォーム温度で良好な品質のボトルが製造された。より高いD異性対含量とやや小さい分子量を持つ樹脂5は、87〜91.5℃の、範囲は約4.5℃の製造条件幅を示した。樹脂5に比べてより低いD異性対含量とより小さい分子量を持つ樹脂6と7もまた約4.5〜5℃の製造条件幅を示した。
【実施例3】
【0025】
L−ラクチド82.5%及びD−ラクチド17.5%の粒子状コポリマーを、L−ラクチド98.6%及びD−ラクチド1.4%の粒子状コポリマーとドライブレンドした。この出発材料の比率は、混合物のL−:D−エナンチオマーの平均比が96.8:3.2となるように選択された。
以下の2段階ISBM方法を用いて種々のPLA樹脂から1Lの真直ぐな壁面を持つボトルを作成した。インジェクション成形により重さが〜29gのプリフォームを作成した。成形されたプリフォームは、別工程でストレッチ・ブロー成形方法を行う前に、室温まで冷却された。
ストレッチ・ブロー成形方法は、最高速で1時間に約1200個のボトルを製造可能な実験室スケールの成形機で行われた。このプリフォームは赤外線ランプにより約83℃に加熱され、金型に挿入され、約5bar(0.5MPa)の圧力で予備吹き込みされ、そして40bar(4MPa)の圧力で伸張され吹き込みされた。金型の温度は100°F(38℃)であった。伸張比については、軸方向の伸張が2.3、輪方向の伸張比が4.35、面積伸張比が10.0であった。
10個のボトルを環境条件に24時間置いた後、高さ、主な直径及びあふれんばかりにいっぱいにした容積を測定した。その後、これらのボトルを100°F(38℃)及び相対湿度100%の条件に24時間置き、上記寸法を再測定した。これらボトルの平均収縮率は1.03%であった。
L−エナンチオマー96.8%及びD−エナンチオマー3.2%を含む単一PLA樹脂を用いる他は、同様にしてボトルを作成した。これらボトルの平均収縮率は1.19%であった。
同じ出発材料を用いて、L−:D−エナンチオマーの平均比を96:4とした混合物を用いて、更にボトルを作成した。これらボトルの平均収縮率は1.16%であった。L−:D−エナンチオマーの平均比が96:4である単一PLA樹脂を用いて作成したボトルの平均収縮率は1.32%であった。
特許請求の範囲に定義された発明の範囲から逸脱することなく、以上記載した本発明に多くの変更を行うことが可能であることは了解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂がプリフォームを形成するように成形され、このプリフォームが容器の金型の中で機械的に伸張され吹き込みされて軸方向と半径方向に伸張されて、容器を形成することからなる、熱可塑性樹脂から容器を製造するためのインジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法であって、(1)この熱可塑性樹脂が、(a)L乳酸単位及びD乳酸単位を反復することから成り、L乳酸単位又はD乳酸単位のいずれかを主たる反復単位とするコポリマー、又は(b)主たる反復単位が乳酸反復単位全体の90〜99.5%を占める、このような複数のコポリマーの混合物である、ポリ乳酸(PLA)樹脂であり、かつ(2)軸方向の伸張比と輪方向の伸張比の積が約3〜約17.5であるインジェクション・ストレッチ・ブロー成形方法。
【請求項2】
前記樹脂をプリフォームに成形した後で、プリフォーム成形後であってかつそのプリフォームがその樹脂の軟化温度より温度が下がる前に、このプリフォームは容器の金型の中で機械的に伸張され吹き込まれる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器が透明な容器である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PLA樹脂の、ポリスチレンを基準としてGPCで測定した数平均分子量が80,000〜150,000である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記PLA樹脂の、30℃でメチレンクロライド中で測定した相対粘度が3.5〜4.5である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記PLA樹脂中の乳酸エナンチオマー反復単位の90〜99.5%が支配的なエナンチオマーである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記PLA樹脂中の乳酸エナンチオマー反復単位の94〜99%が支配的なエナンチオマーである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記容器の金型の温度が、PLA樹脂のガラス転移温度(Tg)より低い請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記容器の金型の温度が、PLA樹脂のガラス転移温度(Tg)より高くかつその融点より低い請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記容器が容器の金型の中で圧力下に保持(ヒートセット)される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一層の遮蔽ポリマー層を有するプリフォームを形成させるために、PLA樹脂を遮蔽効果を有するポリマーとコインジェクション成形し、少なくとも一層の遮蔽ポリマー層を有する容器を形成するために該プリフォームをストレッチ・ブロー成形する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記遮蔽効果を有するポリマーが、ポリエチレン又はエチレンのコポリマー、ポリプロピレン又はプロピレンのコポリマー、ポリビニリデン又はビニリデンクロライドのコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、又はポリアミドである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プリフォームが、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)より低い温度から高い温度に加熱され、容器の金型の中でストレッチ・ブロー成形される請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記容器が透明な容器である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂がPLA樹脂であり、該PLA樹脂の、ポリスチレンを基準としてGPCで測定した数平均分子量が80,000〜150,000である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PLA樹脂の、30℃でメチレンクロライド中で測定した相対粘度が3.5〜4.5である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記PLA樹脂中の乳酸エナンチオマー反復単位の90〜99.5%が支配的なエナンチオマーである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記PLA樹脂中の乳酸エナンチオマー反復単位の94〜99%が支配的なエナンチオマーである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記金型の温度が、PLA樹脂のガラス転移温度(Tg)より低い請求項13に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも一層の遮蔽ポリマー層を有するプリフォームを形成させるために、PLA樹脂を遮蔽効果を有するポリマーとコインジェクション成形し、少なくとも一層の遮蔽ポリマー層を有する容器を形成するために該プリフォームをストレッチ・ブロー成形する請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記遮蔽効果を有するポリマーが、ポリエチレン又はエチレンのコポリマー、ポリプロピレン又はプロピレンのコポリマー、ポリビニリデン又はビニリデンクロライドのコポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、又はポリアミドである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記容器の金型の温度が、PLA樹脂のガラス転移温度(Tg)より高くかつその融点より低い請求項13に記載の方法。
【請求項23】
PLA樹脂が、ラクチド又は乳酸と共重合可能なモノマーに由来する反復単位を0〜10重量%含む請求項2に記載の方法。
【請求項24】
PLA樹脂が、ラクチド又は乳酸と共重合可能なモノマーに由来する反復単位を0〜10重量%含む請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2008−504144(P2008−504144A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518340(P2007−518340)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/022629
【国際公開番号】WO2006/002409
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(398074751)ネイチャーワークス・エル・エル・シー (8)
【Fターム(参考)】