説明

ポンプ内蔵エアマットレス

【課題】寝心地を損なうことなく、給排気ポンプを従来のエアマットレスの占有スペース内に収容することができ、ポンプの取り扱い性、介護作業性及びメンテナンス性等を向上させたポンプ内蔵エアマットレスを提供する。
【解決手段】ポンプ内蔵エアマットレス1は、夫々複数個の袋状セルをエアマットレスの長手方向に並置して構成されエアマットレスの長手方向に並ぶ複数個のエアセル群10と、給排気ポンプ11と、2以上のエアセル群について、各エアセル群毎に独立した系統でエアセル群10と給排気ポンプ11とを連結するエアチューブ13と、を有する。全ての袋状セルは、エアマットレス1の幅方向に延びる棒状であり、横たわる人の脚部に対応するエアセル群10の長さは、他の袋状セルよりも30%以下長さが短くてエアマットレス1の縁部との間に残された空間に、給排気ポンプ11が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用及び介護用に使用されるポンプ内蔵エアマットレスに関し、特に、介護作業性及びメンテナンス性を向上させたポンプ内蔵エアマットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアマットレス又はエア式の寝具としては、例えば特許文献1乃至3に開示されたものがある。特許文献1には、人がエアマットレスのベースマット上に仰臥したときの大腿部、左右肩部、又は臀部に対応して空気袋を設け、制御装置によりこれらの空気袋への給排気を制御して、エアマットレス上に横たわる人の呼気動作を補助する技術が開示されている。特許文献1に開示されたエアマットレスにおいては、空気袋を膨張及び収縮させる給排気装置は、ベースマットの隅部に配置されるか、又はベースマットの外部に設置されることが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、マットレス上に仰臥した人の太腿、足部等の下肢に対応する位置において、マットレス等の敷き寝具の上面に複数個の空気袋を設け、これらの空気袋の膨張及び収縮によりマットレス上に横たわる人の下肢のさすりを行うように構成したエア式寝具が開示されている。
【0004】
特許文献3には、褥瘡防止用のエアマットレスにおいて、エアマットレスの長手方向の端部、即ち、エアマットレス上に横たわる人の頭部側又は脚部側の端部に補強部材を設け、この補強部材の更に外方に補強部材よりも柔らかな弾性材料によって形成された軟質部材を設け、この軟質部材内にエア供給ポンプを埋設することが開示されている。そして、特許文献3には、エア供給ポンプをマットレスと一体化することにより、ポンプが介護者等の行動の邪魔になることを防止できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−297056号公報
【特許文献2】特開2004−222743号公報
【特許文献3】特開2000−189288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術には以下のような問題点がある。特許文献1のエアマットレスは、給排気装置をベースマットの外部に設けた場合においては、マットレスを移動させる際に、給排気装置もマットレスとは別に移動させる必要があり、医療行為又は介護行為等の作業性が劣化する。また、この場合には、給排気装置及びエアチューブをマットレスの外部に配置することになり、給排気装置及びエアチューブを破損する危険性が増大するという問題点がある。
【0007】
特許文献2のマットレスは、弾性材料からなるベースマット上に空気袋を設けたものであり、エアマットレスとして使用するものではない。従って、マットレスの長手方向の位置において、その空気圧を調整することにより、体圧分散を図ることができるものではない。
【0008】
特許文献3のエアマットレスは、エア供給ポンプを設置するために、エアマットレスの長手方向の端部に補強部材及び軟質部材を設置する必要があり、エアマットレスの構造が複雑であるだけでなく、エアマットレスが必要以上に大型化してしまう。従って、例えば在宅介護等において、限られた介護スペースを十分に活用できないという問題点がある。また、ポンプ及びエアチューブがエアマットレスの内部に埋設され、更にエアマットレスの全体が外装地により被覆されている構造であるため、ポンプ及びエアチューブのメンテナンス性が低いという問題点がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、ポンプ内蔵エアマットレスにおいて、寝心地を損なうことなく、給排気ポンプを従来のエアマットレスの占有スペース内に収容することができ、ポンプの取り扱い性、介護作業性及びメンテナンス性等を向上させたポンプ内蔵エアマットレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るポンプ内蔵エアマットレスは、ポンプ内蔵エアマットレスにおいて、夫々複数個の袋状セルから構成されエアマットレスの長手方向に並ぶ複数個のエアセル群と、給排気ポンプと、前記エアセル群のうち2以上のエアセル群について、各エアセル群毎に独立した系統で前記エアセル群と前記給排気ポンプとを連結するエアチューブと、を有し、全ての前記エアセル群の袋状セルは、エアマットレスの幅方向に延びる棒状のセルであり、前記各エアセル群は、この袋状セルをエアマットレスの長手方向に並置して構成され、エアマットレス上に横たわる人の踵部に対応するエアセル群以外のエアセル群の袋状セルは、前記エアマットレスの縁部まで延び、前記踵部に対応するエアセル群の袋状セルの長さは、他の袋状セルよりも30%以下長さが短くて前記エアマットレスの縁部との間に空間が残され、前記給排気ポンプは、前記空間に配置されていることを特徴とする。本発明においては、踵部に対応するエアセル群の袋状セルの長さは、例えば上記範囲を満足しつつ、他の袋状セルよりも給排気ポンプの幅以上長さが短い。
【0011】
上述のポンプ内蔵エアマットレスにおいて、例えば前記エアチューブにより独立した系統で連結された各エアセル群は、袋状セル内の圧力を各エアセル群毎に個別に制御可能である。
【0012】
ポンプ内蔵エアマットレスは、例えば前記給排気ポンプから前記エアチューブを外すことにより、前記給排気ポンプを離脱可能である。
【0013】
前記給排気ポンプは、その外面が柔軟性のある部材で覆われていることが好ましい。また、ポンプ内蔵エアマットレスは、例えば前記複数個のエアセル群及び前記給排気ポンプの上面を覆うトップカバーを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポンプ内蔵エアマットレスは、複数個の袋状セルがエアマットレスの幅方向に延びる棒状のセルであり、これらをエアマットレスの長手方向に並置して構成され、エアマットレス上に横たわる人の身体を支えている。そして、エアマットレス上に横たわる人の踵部に対応するエアセル群の袋状セルの長さは、他の袋状セルよりも30%以下長さが短く、マットレスの縁部との間に空間が残されていて、この空間に給排気ポンプが配置されている。この踵部の側部に対応する部分は、エアマットレス利用者が寝返りをうってもその身体が接触しにくい部分であり、寝心地を損なうことはない。そして、給排気ポンプは、従来のエアマットレスが占めていたスペース内に収まり、エアマットレスの外部に設置する必要もないので、その取り扱いが容易となる。
【0015】
また、給排気ポンプはエアマットレスに内蔵されているため、本発明のエアマットレスを使用した際の介護作業性は高く、給排気ポンプは、エアマットレスの隅部に配置されているため、介護者等が容易に給排気ポンプ及びエアチューブに接触してメンテナンスすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るポンプ内蔵エアマットレスを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るポンプ内蔵エアマットレスにおいて、各袋状セルと給排気ポンプの配置を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るポンプ内蔵エアマットレスにおいて、各袋状セルへの給排気系統を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係るポンプ内蔵エアマットレスにおいて、給排気ポンプ及びコネクタを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るポンプ内蔵エアマットレスにおいて、エアチューブ側のコネクタを示す平面図である。
【図6】(a)、(b)は、本発明の実施形態に係るポンプ内蔵エアマットレスにおいて、エアチューブ側コネクタをその嵌合面側から見た図である。
【図7】(a)乃至(c)は、本発明の実施形態に係るポンプ内蔵エアマットレスにおいて、コネクタの離脱工程を示す一部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るポンプ内蔵エアマットレスについて、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の実施形態に係るポンプ内蔵エアマットレスを示す斜視図、図2は本発明の実施形態に係るポンプ内蔵エアマットレスにおいて、各袋状セルと給排気ポンプの配置を示す平面図、図3は本発明の実施形態に係るポンプ内蔵エアマットレスにおいて、各袋状セルへの給排気系統を示す模式図である。また、図4は、本実施形態の給排気ポンプ及びコネクタを示す斜視図、図5は本実施形態のエアチューブ側コネクタを示す平面図、図6(a)及び図6(b)は本実施形態のエアチューブ側コネクタをその嵌合面側から見た図、図7は本実施形態のポンプ内蔵エアマットレスにおいて、コネクタの離脱工程を示す図であり、図4の断面Aにおける断面図である。
【0018】
先ず、本実施形態のポンプ内蔵エアマットレスの構成について説明する。図1乃至図3に示すように、本発明のポンプ内蔵エアマットレス1には、複数個の袋状セルから構成されエアマットレスの長手方向に並ぶ複数個のエアセル群10と、給排気ポンプ11と、各エアセル群10の袋状セルを給排気ポンプ11に接続するエアチューブ13とが設けられており、複数個のエアセル群10、エアチューブ13及び給排気ポンプ11が全体として一体的に構成されている。
【0019】
図2に示すように、複数個のエアセル群10の各袋状セル17は、エアマットレス1の幅方向に延びる棒状のセルであり、複数個の袋状セル17がエアマットレスの長手方向に並置されることにより、エアマットレス本体を構成している。そして、図2及び図3に示すように、エアマットレス上に横たわる人の頭部、肩部、臀部、大腿部、膝部及び踵部に対応して夫々複数個の袋状セルが配置されている。本実施形態においては、図3に示すように、マットレス利用者の背部、臀部及び太腿部に対応する袋状セル17は、上段と下段に分離され、夫々別の系統により空気圧が制御される。各袋状セル17は、夫々、例えばナイロン繊維等の樹脂材を縫製することにより袋状に形成したものであり、隣接して配置された袋状セル同士は、例えば縫製により固定されている。なお、袋状セル同士の固定は、例えば接着によって行ってもよい。このように、エアマットレスの幅方向に延びる複数個の棒状のセルをエアマットレスの長手方向に並置し、各袋状セルの内部に空気を充填することにより、エアマットレス1はマットレス上に横たわる人の身体を支える。そして、袋状セル内部の空気圧を体の部分に応じて調整することにより、例えば背部及び大腿部の袋状セル内の圧力を臀部の袋状セル内の圧力より大きくすることにより、体圧分散を図ることができる。複数個の袋状セル17には、夫々、少なくとも1カ所にエアチューブ13を接続するための給排気用端子が設けられている。本実施形態においては、各袋状セルには、夫々1カ所に給排気用の端子が設けられており、この給排気端子にエアチューブ13を接続することにより、各系統のエアチューブ13を介して袋状セルに給排気を行い、各袋状セルが膨張又は収縮可能に構成されている。エアチューブ13は、例えば塩化ビニール等の樹脂製のものが好適に使用される。
【0020】
図3に示すように、本実施形態においては、エアマットレス上に横たわる人の頭部に対応するエアセル群10aの複数個の袋状セルは、1系統の独立した給排気系統で給気又は排気されるように共通のエアチューブ13に接続され、踵部のエアセル群13gの複数個の袋状セルは、1系統の独立した給排気系統で給気又は排気されるように共通のエアチューブ13に接続されている。更に、エアマットレス上に横たわる人の背部に対応するエアセル群10cの袋状セルのうち、下段の袋状セルは、大腿部のエアセル群10eの下段の袋状セルと共通のエアチューブ13に接続されて、1系統の独立した給排気系統(系統A)で給気又は排気されるように構成されている。同様に、臀部のエアセル群10dの下段の袋状セルは、1系統の独立した給排気系統(系統B)で給気又は排気されるように共通のエアチューブ13に接続されている。本実施形態においては、更に、エアマットレス上に横たわる人の肩部に対応するエアセル群10bの複数個の袋状セルは、3系統の独立した給排気系統(系統1、系統2及び系統3)のいずれかにエアチューブ13を介して接続されており、これにより、夫々独立して給気又は排気されるように構成されている。同様に、背部(上段)、臀部(上段)、大腿部(上段)及び膝部のエアセル群10c乃至10fの複数個の袋状セルも、3系統の独立した給排気系統(系統1、系統2及び系統3)のいずれかにエアチューブ13を介して接続されており、これにより、夫々独立して給気又は排気されるように構成されている。そして、図3に示すように、肩部から膝部にかけて、系統1、系統3、系統2、系統1、系統3・・・というように、3系統の各給排気系統の袋状セルが順次及び交互に配置されている。そして、同一の給排気系統(系統1、系統2、系統3)の袋状セルは、夫々共通のエアチューブ13に接続されている。更にまた、本実施形態においては、更に、1系統の独立した系統で給気される噴気用のエアチューブ13がマットレスの下面に敷設されており、噴気用エアチューブに給気することにより、噴気用エアチューブの外面に設けられた複数個の噴気孔から空気を噴出し、マットレスの除湿を行うことができるように構成されている。即ち、本実施形態においては、マットレス利用者の頭部、踵部、臀部(下段)、並びに背部(下段)及び大腿部(下段)のブロック制御用の4系統の給排気系統が設けられており、系統1、系統2及び系統3の交互膨縮用の3系統の給排気系統と、噴気用の1系統の給気系統との合計8系統の給排気系統が設けられている。これにより、袋状セル内部の空気圧を体の部分に応じて個別に調整して、体圧分散を図ることができる。例えば、背部及び大腿部のエアセル群10c、10eの袋状セル内の圧力を臀部のエアセル群10dの袋状セル内の圧力より大きくする。なお、各袋状セルには、必要に応じて、内部圧力を計測するための圧力センサが設置され、圧力センサによる計測値を後述する手元スイッチ内部又は給排気ポンプ11の内部に設置された制御回路15に出力するように構成されている。この場合においては、全ての袋状セルに圧力センサが設置されているか、又は同一系統の袋状セルに対しては、設置する圧力センサが共通化されている。
【0021】
図2に示すように、これらの複数個のエアセル群10の袋状セルのうち、エアマットレス上に横たわる人の踵部に対応して配置されたエアセル群10gの袋状セルは、他のエアセル群(10a乃至10f)の袋状セルよりも長さが短く、他のエアセル群10の袋状セルは、エアマットレスの縁部まで延びている。従って、踵部に対応するエアセル群10gの袋状セルは、エアマットレスの縁部との間に空間が残されている。なお、本実施形態においては、エアマットレス上に横たわる人の踵部に対応して配置されたエアセル群10gの袋状セルは、他の袋状セルよりも後述する給排気ポンプ11の幅以上長さが短く、他の袋状セルよりも30%以下長さが短い。即ち、複数個の袋状セルが配列されて全体として平面視で矩形となるように形成された袋状セルの集合体において、その4隅のうち、エアマットレス上に横たわる人の踵部側の一方の隅部には、袋状セルが配置されていない空間が残されている。
【0022】
給排気ポンプ11は、この袋状セルが配置されていない空間において、その長手方向がエアマットレス1の長手方向に対して平行になるように、即ち、エアマットレス上に横たわる人の頭部から脚部に向かう方向に長手方向を有するように配置されている。これにより、給排気ポンプ11は、全体として平面視で矩形となるように構成されたエアマットレス1の4隅のうち、マットレス上に横たわる人の踵部に対応する隅部に配置されている。この踵部の側部に対応する部分は、エアマットレス利用者が寝返りをうってもその身体が接触しにくい部分であり、寝心地を損なうことはない。仮に接触したとしても、それは踵であるから、ポンプの存在により寝心地が悪くなることはない。なお、給排気ポンプ11の外面を例えばウレタン等の柔軟性部材で覆うことにより、仮に、エアマットレス上の人が寝返り等によって踵が給排気ポンプ11上に位置した場合においても、柔軟性部材がクッションとして作用するので、これによっても寝心地の低下を防止することができる。また、柔軟性部材により、踵からの衝撃から給排気ポンプ11を保護することができ、マットレスとしての機能は阻害されない。柔軟性部材としては、体圧分散性が高い部材を使用することが好ましい。これにより、褥瘡が発生するリスクを低減することができる。また、給排気ポンプ11は、エアマットレス利用者の踵部に対応する部分に配置されているため、ポンプの動作音により、エアマットレス利用者の寝心地を損なうこともない。
【0023】
本実施形態においては、給排気ポンプ11は、複数個のエアセル群10からなるエアマットレスの幅及び長さの範囲内の領域に設置され、従って、従来のエアマットレスが占めていたスペース内に収まり、エアマットレスの外部に設置する必要もないので、その取り扱いは容易である。また、給排気ポンプをエアマットレス利用者の踵部に対応する隅部に設置しているため、本実施形態のエアマットレスは、例えば膝上げ及び膝下げ機能を有するベッドのボトム上に載置して使用することができる。即ち、給排気ポンプ11は、エアマットレスが膝上げ及び膝下げ機能を有するベッドのボトム上に載置された場合に、エアマットレスが屈曲される部分に配置されておらず、給排気ポンプの存在により、ベッドの膝上げ及び膝下げ動作が阻害されることもない。給排気ポンプ11の高さは、各エアセル群10の袋状セルの高さ以下であることが好ましい。これにより、空気が充填された各袋状セルに比して硬度が高い給排気ポンプ11がエアセル群10よりも高さ方向に突出することを防止することができると共に、例えばサイドレールを有するベッド上に設置されたエアマットレスにおいて、エアマットレス上に横たわる人の位置がサイドレールの高さ以上となることが防止される。
【0024】
図1に示すように、本実施形態においては、複数個のエアセル群10と給排気ポンプ11とは1枚のトップカバー14により覆われて上面を保護されている。トップカバー14は、例えばナイロン繊維をポリウレタンでコーティングしたものであり、撥水性を有する。トップカバー14でエアセル群10及び給排気ポンプ11の上面を保護することにより、例えばマットレス利用者の汚物等によりマットレス内部が汚れたり、マットレス内部にカビ及び異臭等が発生することを防止することができる。また、トップカバー14により、給排気ポンプ11の電気回路部分に対する防水性を向上させることができ、また、エアマットレスの上面を清掃する作業等が容易となる。トップカバー14でエアセル群10及び給排気ポンプ11の上面を覆うことにより、給排気ポンプ11は、エアマットレス1の幅方向の一方の側面と、エアマットレス1の長手方向におけるマットレス利用者の脚部に対応する側の側面と、下面とが外部に露出している。なお、本実施形態の如く、トップカバー14を設置する場合においては、複数個のエアセル群10からなるエアセル群の集合体及び/又は給排気ポンプ11をトップカバー14に固定するための構造を設けることができる。この場合においては、給排気ポンプ11は、エアセル群10に固定してもよい。また、トップカバー12を設置しない場合においても、エアセル群10に給排気ポンプ11を固定するための構造を設けることができる。例えば、踵部に対応するエアセル群10gにリング状又はベルト状の構造を設け、給排気ポンプ11の外周面にリング部材又はベルト部材を巻きつけて給排気ポンプ11をエアセル群10に固定することができる。
【0025】
図1に示すように、給排気ポンプ11は、例えばエアマットレス1の長手方向の端部にて外部に露出した側面に、電源入力用のコードと、マットレスを操作する手元スイッチとの間の入出力信号用コードと、ベッドの制御回路に接続されて信号の送受信を行うコードとが、夫々1本ずつ設けられている。これにより、電源から供給された電力により給排気ポンプ11を駆動し、手元スイッチからの信号の入出力又はベッドの制御回路からの信号の入出力により、各エアチューブ13に対する給気及び排気動作を制御するように構成されている。本実施形態においては、手元スイッチ(図示せず)には、系統1、系統2及び系統3のエアチューブ13に連通した袋状セルへの給気量及び排気量を連続的に変化させることにより、マットレス上に横たわる人の肩部から膝部にかけて隣接するセル同士を交互膨縮させて、マットレス利用者の身体の一部分に一定の圧力が負荷されないようにする褥瘡防止モード等、マットレスの圧力を切り替えるスイッチが設けられており、この手元スイッチからの入力信号により、上述の7系統の給排気系統及び1系統の噴気系統のエアチューブ13への給気量及び排気量を制御することにより、各給気系統のエアチューブ13に連通した袋状セルの内部圧力を制御することができる。手元スイッチには、褥瘡防止モード用スイッチの他に、例えばエアマットレス上に人が横たわった状態で搬送する際に、エアマットレスの各袋状セル内の空気を排気しないように排気孔を閉じる搬送モード用スイッチが設けられている。
【0026】
本実施形態においては、図4に示すように、エアチューブ13は給排気ポンプ11にコネクタを介して接続されている。給排気ポンプ側のコネクタ110は、例えば給排気ポンプ11の長手方向において、電源コードとは逆側の側面に2カ所設けられている。本実施形態においては、各給排気ポンプ側のコネクタ110には、夫々4個の給排気口110aが設けられており、給排気ポンプ11に合計8個設けられた給排気口110aのうち、7個は給排気口として構成されており、頭部、踵部、系統1乃至3、並びに系統A及びBにエアチューブ13を介して接続された袋状セルに対して給排気を行う。また、8個の給排気口110aのうちの残りの1個は給気口として構成されており、マットレスの下面に敷設した噴気用エアチューブに給気することにより、噴気用エアチューブ外面に設けられた複数個の噴気孔から空気を噴出し、マットレスの除湿を行うことができる。なお、本実施形態においては、図5に示すように、エアチューブ側のコネクタ12は、4本のエアチューブを接続することができるものであり、従って、図4に示すように、2個のエアチューブ側コネクタ12を給排気ポンプ11に接続することにより、7系統の給排気系統により各系統のエアチューブ13を介して、各袋状セル内の圧力を制御し、1系統の噴気系統によりマットレスの除湿を行う。なお、図6(b)においては、8系統の給排気系統に対応する吸排気端子12aの配置を一例として示してある。
【0027】
図4に示すように、給排気ポンプ側の2個のコネクタ110には、夫々4個の給排気口110aが設けられており、この給排気口110aに、図5に示すエアチューブ側コネクタ12の吸排気端子12aを挿入し、コネクタカバー12b側面の突起を給排気ポンプ側コネクタ110の内面の凹部に係合させることにより、給排気ポンプ側のコネクタ110にエアチューブ側のコネクタ12を嵌合させる。なお、エアチューブ側コネクタ12の吸排気端子12aには、その外面にゴムシール12cが設けられており、給排気口110aと吸排気端子12aとの間のシール性を高めている。
【0028】
本実施形態においては、図7に示すように、コネクタ12を給排気ポンプ11から離脱させると、全てのエアチューブ13は、夫々8系統の給排気系統への連通が解除され、従って、袋状セルの内部圧力の制御も解除され、全袋状セル内の空気は各給排気系統のエアチューブ13から速やかに排気されるように構成されている。
【0029】
図7(a)及び図7(b)に示すように、本実施形態のコネクタ12は、コネクタカバー12bの前端縁は相互に対向する方向に延出しており、コネクタカバー12bの後端縁を相互に接近する方向に押圧すると、コネクタカバー12b側面の突起と給排気ポンプ側コネクタ110の内面の凹部との係合が外れると同時に、図7(b)に示すように、コネクタカバー12bの延出先端部は、給排気ポンプ側コネクタ110の給排気口が設けられた面(嵌合面)を押圧するように構成されている。
【0030】
次に、本実施形態のポンプ内蔵エアマットレスの動作について説明する。本実施形態においては、マットレス利用者がマットレス1のトップカバー14上に仰臥した状態で、介護者等が手元スイッチのスイッチを操作し、エアマットレス1の動作を例えば褥瘡防止モードに切り替えると、手元スイッチからの入力信号は、手元スイッチ内部又は給排気ポンプ11の内部に設置されたマットレス用制御回路15に入力される。そして、制御回路15は、給排気ポンプ11内に設けられた例えば電磁式のモータの回転数等を制御する信号を送信し、これにより、給排気ポンプの各給排気系統に接続されたエアチューブ13への給排気量を調整することにより、各給気系統のエアチューブ13に連通した袋状セルの内部圧力を制御する。
【0031】
この際、制御回路は、例えば、ブロック制御用の4系統の給気系統に接続されたエアチューブ13に対しては、夫々対応する袋状セル内の圧力が常時一定となるように制御する。即ち、マットレス上に横たわる人の体重が例えば30乃至135kgである場合においては、人の頭部に対応するエアセル群10aの袋状セルの内部圧力を例えば1.6乃至4.3kPa、踵部に対応するエアセル群10gの袋状セルの内部圧力を例えば1.1乃至3.0kPa、背部及び大腿部に対応する下段のエアセル群10c、10e(系統A)の袋状セルの内部圧力を1.5乃至6.4kPa、臀部に対応する下段のエアセル群10d(系統B)の袋状セルの内部圧力を1.1乃至3.3kPaとなるように各エアセル群毎に個別に制御する。マットレス利用者の頭部及び踵部に対応するエアセル群10a、10gの袋状セルの内部圧力を一定となるように制御することにより、マットレス利用者が仰臥した状態で人体の背部側に突出した骨(後頭骨及び踵骨)に対応する部位を安定的に支持することができる。また、マットレス利用者の背部及び大腿部に対応する下段のエアセル群10c、10e(系統A)の袋状セルの内部圧力を臀部に対応する下段のエアセル群10d(系統B)の袋状セルの内部圧力よりも大きく制御することにより、マットレス側に突出し、従って、仰臥した状態で体重が他の部位に比して大きく負荷される臀部をその両側、即ち、背部及び大腿部に対応するエアセル群10c、10eの袋状セルにより安定的に支持することができ、これにより、臀部に対応するエアセル群10dの袋状セルからの押圧力が大きくなることを防止し、体圧分散を図ることができる。
【0032】
一方、制御回路は、交互膨縮用の3系統の吸気系統のエアチューブ13に対しては、例えば、先ず、系統1の吸排気系統のエアチューブ13への給気量を系統2及び系統3の吸排気系統のエアチューブ13への給気量よりも小さくし、系統2と系統3のエアチューブ13への給気量をほぼ同等とする。これにより、系統1のエアチューブに連通している袋状セルの内部圧力が最も小さくなり、系統2のエアチューブに連通している袋状セルの内部圧力は、系統3のエアチューブに連通している袋状セルの内部圧力とほぼ等しく、且つ系統1の袋状セルの内部圧力よりも大きくなる。この際、各系統の袋状セルに圧力センサを設置している場合には、制御回路は、圧力センサによる計測値の出力により、各系統への給気量を適宜増減して、各系統のエアチューブ13に連通している袋状セルの内部圧力を所定の設定値に速やかに設定することができる。
【0033】
この状態で、各交互膨縮用の3系統のエアチューブ13に連通した袋状セルの内圧を、例えば460秒以下の所定の期間保持した後、制御回路は、7系統の給排気系統による給排気量を制御することにより、系統1の袋状セル内の圧力を増やし、系統2の袋状セル内の圧力を減らし、系統3の袋状セル内の圧力を一定に保持する。これにより、例えば、170秒以下の圧力遷移期間を経て、系統2の袋状セルの内部圧力が最も小さくなり、系統1の袋状セルの内部圧力と系統3の袋状セルの内部圧力とがほぼ等しく、且つ系統2の袋状セルの内部圧力よりも大きくなる。頭部、背部(下段)、臀部(下段)、大腿部(下段)及び踵部に対応する袋状セルについては、内部圧力を一定に保持する。
【0034】
この状態で、制御回路は、上述した方法と同様の方法により、各袋状セルの内圧制御を行う。即ち、制御回路は、各袋状セル内の圧力を例えば460秒以下の所定の期間の後、7系統の給排気系統による給排気量を制御することにより、170秒以下の圧力遷移期間を経て、系統3の袋状セルの内部圧力を最も小さくし、系統1の袋状セルの内部圧力と系統2の袋状セルの内部圧力とをほぼ等しく、且つ系統3の袋状セルの内部圧力よりも大きくなるように制御する。頭部、背部(下段)、臀部(下段)、大腿部(下段)及び踵部に対応する袋状セルについては、内部圧力を一定に保持する。
【0035】
このように、各給排気系統のエアチューブ13に連通した袋状セルの内部圧力を制御することにより、マットレス利用者が仰臥した状態で、マットレスの表面に皮膚が触れる部分、即ち、肩部、背部、臀部、大腿部及び膝部に対応するエアセル群10の袋状セルの内部圧力を連続的に変化させることができ、皮膚の特定の部分に長時間同一の圧力が負荷されて褥瘡が発生することを防止することができる。
【0036】
マットレス利用者に対して医療又は介護作業等を行う場合には、介護者等は、手元スイッチのスイッチを操作することにより、例えばエアマットレスの褥瘡防止機能を停止する。即ち、エアマットレスの褥瘡防止機能が動作している途中の状態で各袋状セルの内部圧力を一定に保持した状態とするか、各系統のエアチューブ13に連通した袋状セル内の圧力を医療又は介護作業等に適した圧力に設定した後、設定圧力を保持するか、又は全ての袋状セルの内部圧力を同一に設定した状態にして設定圧力を保持する。
【0037】
本実施形態のエアマットレス1は、給排気ポンプ11がマットレス内に内蔵されている。従って、マットレスの外部に設置した給排気ポンプにより医療行為及び介護行為等が阻害されることはなく、これらの作業性を向上させることができる。
【0038】
マットレス利用者に緊急の医療行為、例えば心臓マッサージ等を行う必要がある場合においては、エアマットレスによる弾性力が医療行為を阻害してしまう場合がある。この際には、給排気ポンプからエアチューブを外す。本実施形態のポンプ内蔵エアマットレスにおいては、エアチューブ13は給排気ポンプ11にコネクタ12を介して接続されている。図7(a)乃至図7(c)に示すように、本実施形態のコネクタ12は、コネクタカバー12bの後端縁を相互に接近する方向に押圧すると、コネクタカバー12b側面の突起と給排気ポンプ側コネクタ110の内面の凹部との係合が外れると同時に、図7(b)に示すように、コネクタカバー12bの延出先端部は、給排気ポンプ側コネクタ110の給排気口が設けられた面(嵌合面)を押圧するように構成されている。従って、介護者等がコネクタ12の側面を押圧するだけで、給排気ポンプ11からのコネクタ12の離脱を速やかに行うことができ、従って、全ての袋状セルからの排気も円滑に行われる。
【0039】
エアマットレスを例えばベッド上に設置した場合において、マットレス利用者をベッドごと移動させる必要がある場合においては、例えば、手元スイッチに設けられた搬送モードスイッチを押した後、給排気ポンプ11の電源コード先端のプラグを電力供給源、例えばコンセントから抜く。手元スイッチの搬送モードボタンを押すことにより、給排気ポンプ11は、例えば各給排気系統から排気が行われないように、給排気口を閉じるように構成されており、各袋状セル内の圧力は一定に保持された状態となる。これにより、マットレス利用者の搬送時に、袋状セル内が減圧されて大きく沈み込む底突きが発生することが防止され、ベッドのボトムによりマットレス利用者の臀部等が押圧されて褥瘡が発生することが防止される。
【0040】
本実施形態のエアマットレス1においては、給排気ポンプ11はマットレスの隅部に配置されているため、エアマットレスを使用しない際に、給排気ポンプ11及びエアチューブ13のメンテナンスを行う場合には、給排気ポンプ11に容易に接触することができる。この場合に、給排気ポンプ11からエアチューブ13を外したときに、給排気ポンプ11をマットレスから離脱可能であるように構成している場合においては、給排気ポンプ11及びエアチューブ13のメンテナンスは更に容易となる。
【0041】
以上のように、本発明においては、給排気ポンプは、エアマットレス上に横たわる人の踵部に対応するエアセル群とマットレスの縁部との間に残された空間に配置されており、エアマットレス利用者が寝返りをうってもその身体が給排気ポンプに接触しにくく、寝心地を損なうことはない。また、給排気ポンプは、複数個のエアセル群からなるエアマットレスの幅及び長さの範囲内であるマットレスの隅部に設置されているため、給排気ポンプは、従来のエアマットレスが占めていたスペース内に収まり、エアマットレスの外部に設置する必要もないので、その取り扱いが容易となる。
【0042】
更に、給排気ポンプにより医療行為及び介護行為等が阻害されることはなく、これらの作業性を向上させることができる。更にまた、給排気ポンプが外部に露出する面積も最小限に抑えられているため、給排気ポンプ及びエアチューブが破損する危険性を低減しつつ、給排気ポンプ及びエアチューブのメンテナンスも容易である。
【符号の説明】
【0043】
1:(ポンプ内蔵)エアマットレス、10:エアセル群、11:給排気ポンプ、110:(給排気ポンプ側)コネクタ、110a:給排気口、12:エアチューブ側コネクタ、12a:給排気用端子、12b:コネクタカバー、12c:ゴムシール、13:エアチューブ、14:トップカバー、2:電動ベッド、2a:電動ベッド制御回路、2b:アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ内蔵エアマットレスにおいて、
夫々複数個の袋状セルから構成されエアマットレスの長手方向に並ぶ複数個のエアセル群と、
給排気ポンプと、
前記エアセル群のうち2以上のエアセル群について、各エアセル群毎に独立した系統で前記エアセル群と前記給排気ポンプとを連結するエアチューブと、
を有し、
全ての前記エアセル群の袋状セルは、エアマットレスの幅方向に延びる棒状のセルであり、前記各エアセル群は、この袋状セルをエアマットレスの長手方向に並置して構成され、
エアマットレス上に横たわる人の踵部に対応するエアセル群以外のエアセル群の袋状セルは、前記エアマットレスの縁部まで延び、
前記踵部に対応するエアセル群の袋状セルの長さは、他の袋状セルよりも30%以下長さが短くて前記エアマットレスの縁部との間に空間が残され、
前記給排気ポンプは、前記空間に配置されていることを特徴とするポンプ内蔵エアマットレス。
【請求項2】
前記エアチューブにより独立した系統で連結された各エアセル群は、袋状セル内の圧力を各エアセル群毎に個別に制御可能であることを特徴とする請求項1に記載のポンプ内蔵エアマットレス。
【請求項3】
前記給排気ポンプから前記エアチューブを外すことにより、前記給排気ポンプを離脱可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポンプ内蔵エアマットレス。
【請求項4】
前記給排気ポンプは、その外面が柔軟性のある部材で覆われていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポンプ内蔵エアマットレス。
【請求項5】
前記複数個のエアセル群及び前記給排気ポンプの上面を覆うトップカバーを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポンプ内蔵エアマットレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−160894(P2011−160894A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24861(P2010−24861)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(390039985)パラマウントベッド株式会社 (165)
【Fターム(参考)】