説明

ポンプ制御システム

【課題】循環水設備を利用してスラブに使用した水をタンクに貯蔵する場合に、実際の実績値と投入するスラブの諸元と投入時間間隔とに基づいて、タンクの水位変動を予測しつつ、排水ポンプの回転数と稼動時間を制御することにより消費電力を低減することができるポンプ制御システムを提供する。
【解決手段】スラブに使用する水を循環制御するポンプ制御システムであって、投入されるスラブの特徴に関するスラブ情報を収集する上位計算機1と、スラブに使用した水を貯めるための上位タンク5と、循環路上に設けられ、上位タンク5に貯められた水を循環させるためのポンプ6と、上位計算機1により収集されたスラブ情報に基づいて、上位タンク5の水位を所定範囲内に保つようにポンプ6のモータ回転数と稼働時間とを算出する制御装置2と、制御装置2により算出されたモータ回転数と稼働時間とに基づいて、ポンプ6のモータ回転数を制御するインバータ3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順次接続されたタンクにおいて、それらの水位が管理値を超えないように水を排出し、その後生産のために使用する水設備へ再循環させる循環水ポンプ設備において、最適なポンプ回転数に制御することで消費電力を最小にしつつ管理水位を確保するポンプ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ある種の目的に使用する水をタンクに貯蔵し、これを使用後、その水をポンプを使用して順次タンクに移しながら処理した後、再度ポンプにより再循環させ、上述したタンクに戻して再度製品用に使用する水処理設備が利用されており、例えば熱間圧延設備においては、デスケーリング、ロール冷却、ランアウトテーブル等、製品品質を確保するために使用する水を冷却、再処理、循環させる水処理循環水ポンプ設備が利用されている。
【0003】
圧延に際し、スラブと呼ばれる材料がラインに投入されるが、一般にスラブは、1)厚さ、2)長さ、3)幅、4)炉出口抽出温度等の特性を持っている。また、圧延ピッチに応じてスラブは加熱炉から抽出される。使用する水量は、スラブ緒元により決定され、様々な組み合わせがあり、使用後に循環水ポンプ設備に流れ込む水量も様々である。また、ここに至る配管内での遅れもあり、スラブ圧延時に使用された水量と水処理設備での水位変動を関連つけて制御することはまれであり、製品系の設備と水処理系の設備とは、それぞれ独立した設備として把握、制御されていることが一般的である。
【0004】
また、従来の水処理設備は、池、タンクの水位が管理水位高さまで達した場合にポンプが稼動して排出し、最低水位までくるとポンプを停止させる。この場合に、従来の設備は、上位水位から低位水位までの変動時間を管理せず、ポンプ周波数を最大で運転するのが通常である。
【0005】
この場合における水処理設備とは、主に上水道設備等が対象であり、主に流入水量と排出水量をベースとした循環のない需要水量の予測であり、計算機での処理を前提とした複雑な予測計算式や、これを簡便化するための方式が考えられている。
【0006】
特許文献1には、汚水流入量の変動をある範囲内に抑えながら、輸送量がなるべく一定になるように汚水ポンプを制御することを目的とする下水処理場の汚水ポンプ制御装置が記載されている。
【0007】
この汚水ポンプ制御装置は、過去のある時点から現在までに汚水貯留施設へ入ってきた実績流入量と、プラントデータをもとに、現在より先のある一定時間内に流入する汚水量を予測し、予め設定されたポンプ吐出量の目標値と、予測流入量と、実績流入量と、現在の貯蔵量と、現在のポンプ吐出量の情報より演算される情報を入力とし、予め決定されたメンバーシップ関数・ルールに従い、ファジィ推論によりポンプの目標吐出量を決定する。
【0008】
したがって、この汚水ポンプ制御装置によれば、将来の汚水の流入量を予測し、さらに現在・将来の状況をもとに、なるべく目標吐出量を変化させないように予め作成されたルールにしたがい汚水ポンプの目標吐出量を決定するので、汚水流入量にかかわらずに一定量の汚水を処理施設に輸送することができ、汚水処理施設での安定した処理が期待できる。
【0009】
特許文献2には、ポンプ運転台数の変動が小さく、平滑化が可能な送水装置のポンプ最適運転制御方法が記載されている。このポンプ最適運転制御方法は、所定の需要時間帯に貯水槽から需要地に給水する需要水量と、所定の送水時間帯におけるポンプ運転台数、ポンプ運転時間、故障情報、井戸特性から運転するポンプを決定しこれを基本運転スケジュールとし、該基本運転スケジュールでポンプを運転した場合に送水される送水量と需要水量とから送水時間帯における貯水槽の水位変動を予測し、該水位変動予測を基準水位とし、基本運転スケジュールに基づいてポンプを運転し、運転後所定時間毎に基準水位と実際の前記貯水槽の水位とを比較しその水位差を求め、該水位差の原因となる需要水量が需要時間帯の間続くものと仮定し、貯水水位が所定の低レベルを割り込まない範囲で基本運転スケジュールを修正すると共に、該修正した基本運転スケジュールに基づいてポンプを運転した場合の基準水位を修正し、該修正した基本運転スケジュールに基づいてポンプを運転するものである。
【0010】
したがって、このポンプ最適運転制御方法によれば、ポンプ運転台数の変動が小さくよりポンプ運転台数の平滑化が可能で、ポンプ運転時間、故障情報、井戸特性及びポンプ消費電力を加味して運転するポンプを自動選定し、維持管理に貢献することができる。また、ポンプ運転台数の平滑化やポンプ運転時間の均一化ができるため、ポンプの寿命が長くなるとともに、ポンプのメンテナンス頻度が少なくなるといった効果がある。
【0011】
特許文献3には、雨水と汚水が混入されて流入するポンプ場において雨水と汚水の流入量を区別して正確な算出及び予測値を得ることを課題とするポンプ場の処理水監視制御システムが記載されている。この処理水監視制御システムは、降雨期間中でないときは現在の雨水流入量が一定時間後も変化しないとしてその算定値又は予測値を使用し、降雨期間中はポンプ場の揚水量と水位変化から流入量を求め、これに統計値としての汚水流入量を使って現在の雨水流入量を求め、この雨水流入量とその一定時間後の予測雨水流入量及び汚水量統計値と揚水量から一定時間後の増減量や水位、さらには雨水流入量を予測する。
【0012】
したがって、このポンプ場の処理水監視制御システムによれば、雨水に汚水が混入したポンプ場においても、雨水と汚水を分離し、さらに流入量の検証をしながら降雨による正確な雨水流入量を計測及び一定時間後の雨水流入量予測とポンプ井水位予測ができる。また、汚水流入量は流入量が安定する降雨期間外で揚水量とポンプ場の容積変動分と汚水流入量統計値から求めるようにしたため、月日、曜日及び時間帯別の汚水流入量を求めることができ、ポンプ運転の効率的な運用が可能となるし、雨水流入量の算出や予測のための汚水流入量統計値を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−68170号公報
【特許文献2】特開平11−37052号公報
【特許文献3】特開平11−272336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した先行技術文献に記載されているポンプ制御装置やシステムは、設備として、製品用タンクと水処理、再循環設備とを結合させ使用水を循環することを想定したものではないため、循環水設備に採用することが困難である。また従来技術の装置類は、水位が最大、最小になったときにポンプを起動、停止させる方式が多いため、ポンプの使用エネルギーを最小にしつつ制御する方式はないといった問題点がある。
【0015】
例えば上述した圧延材料を投入してデスケーリングを行うような設備においては、使用された水が処理され再循環されて製品用に再利用されるが、製品系の設備と水処理系の設備とが本来は関連した設備であるにも関わらず、各々が独立して運用制御されるので、ポンプ等を含めた設備全体のエネルギー管理から見て消費電力を最小にするための運用制御がなされていないといった問題点がある。
【0016】
具体的には、管理上位水位に達している段階で、次のスラブでの使用水量が小さい場合に、池やタンクに流入する水量も小さいため水位増加は緩やかであることが予想される。また、逆に使用水量が多いと水位増加は早いことが予想される。同時に、次に圧延するスラブの投入間隔でも上記の違いは発生する。
【0017】
このとき、現在の運転ではポンプの回転数を最大にして水を排出させる(または流入させる)が、ポンプは最大周波数で運転するので消費電力は常に最大になるという問題点がある。また、流入量に相関せず、水位だけを監視してオンオフ制御するので、その回数や消費電力が妥当であるかの評価が出来ないという欠点がある。
【0018】
さらに、従来の制御において、水位上限から下限まで最大周波数で運転する場合には時間が短くて済むが、消費電力は大きくなる。しかし次に投入されるスラブの間隔が長い場合、水位下限から増加する水位変動は遅くなり上限水位までに到達する時間が十分にある場合には、急速に下限まで水位を下げる必要はない。また、ポンプを最大周波数で運転させることによりポンプ寿命に影響を与えることになる。
【0019】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、スラブに使用した水を循環水設備タンクに貯蔵、排循環する場合、実際の水位変動実績値、投入するスラブの諸元、投入時間間隔とに基づいて、タンクの水位変動をデータベース化し学習、予測可能とし、これにより次に投入されるスラブに対する水位も予測可能にすることにより水ポンプの回転数とポンプ稼働時間を制御することにより消費電力を低減することができるポンプ制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係るポンプ制御システムは、上記課題を解決するために、スラブに使用する水を循環制御するポンプ制御システムであって、投入される前記スラブの特徴に関するスラブ情報のうち、水位変動に関連するパラメータを収集、統計処理する情報収集部と、前記スラブに使用した水を貯めるためのタンクと、循環路上に設けられ、前記タンクに貯められた水を循環させるためのポンプと、前記情報収集部により収集、統計処理された水位変動関連情報に基づいて、前記タンクの水位を所定範囲内に保つように前記ポンプのモータ回転数と稼働時間とを算出するモータ回転数算出部と、前記モータ回転数算出部により算出されたモータ回転数と稼働時間とに基づいて、前記ポンプのモータ回転数を制御する回転数制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、循環水設備を利用してタンクに貯蔵した水をスラブに使用する場合に、実際の使用実績値、水位変動量、投入するスラブのうち水位変動関連諸元とスラブ投入時間間隔等に基づいて、タンクの水位変動を学習予測し、経験的にグループ化可能な現象についてはグループ化することにより、投入予定のスラブに対してあらかじめ水位変動を関連予測することで排水ポンプの回転数と稼働時間を制御することにより消費電力を低減することができる。
【0022】
また、関連予測不能な場合は、従来の商用運転(ポンプ周波数を商用最大で運転)にて稼働させることで、設備操業品質を確保することができる。
【0023】
関連予測不能な場合でも、操業を継続する過程で学習、予測が可能になれば、省エネ制御可能なグループに分類することで、省エネ運転制御範囲も拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1の形態のポンプ制御システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1の形態のポンプ制御システムの制御装置において処理される水位変動ベクトルグループを示す図である。
【図3】本発明の実施例1の形態のポンプ制御システムの制御装置において処理される過去の運転実績のグループ化の様子を示す図である。
【図4】本発明の実施例1の形態のポンプ制御システムの制御装置において処理されるスラブ情報のグループ化の様子を示す図である。
【図5】本発明の実施例1の形態のポンプ制御システムの制御装置によるモータ回転数と稼働時間の算出例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のポンプ制御システムの実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態の構成を説明する。図1は、本発明の実施例1のポンプ制御システムの構成例を示すブロック図である。本実施例のポンプ制御システムは、熱延ラインを代表例として、デスケーリング、ロール冷却、ランアウトテーブル等、製品品質を確保するためにスラブに使用する水を循環させる循環水設備においてポンプ制御を行うものであり、図1に示すように、上位計算機1、制御装置2、インバータ3、電動機4、上位タンク5、ポンプ6、下位タンク7、ポンプ8、及び貯水タンク9により構成される。
【0027】
すなわち、本実施例のポンプ制御システムは、鉄鋼水処理設備において、スラブに使用した水を上位タンク5に貯水し、下位タンク7において再処理を行った後、水を循環させて貯水タンク9に水を戻すことでスラブに再使用する水循環設備において、上位タンク5に貯水された水を排出するポンプ6の消費電力を低減することを目的としたシステムである。
【0028】
上位計算機1は、本発明の情報収集部に対応し、投入されるスラブの特徴に関するスラブ情報を収集する。具体的には、上位計算機1は、投入される予定のスラブに関する情報を外部から受信する。本発明を実現するために、情報収集部は、投入されるスラブの特徴に関するスラブ情報として、各スラブの厚み、長さ、幅、温度、投入タイミングのうち少なくとも1つを収集する。本実施例における上位計算機1は、各スラブの厚み、長さ、幅、及び投入タイミングを収集するものとする。すなわち、上位計算機1は、スラブ情報のうち、水位変動に関連するパラメータを収集、統計処理する。
【0029】
制御装置2は、本発明のモータ回転数算出部に対応し、上位計算機1により収集されたスラブ情報に基づいて、上位タンク5の水位を所定範囲内に保つようにポンプ6のモータ回転数と稼働時間とを算出する。言い換えれば、制御装置2は、上位計算機1により収集、統計処理された水位変動関連情報に基づいて、上位タンク5の水位を所定範囲内に保つようにポンプ6のモータ回転数と稼働時間とを算出する。
【0030】
具体的には、制御装置2は、過去の運転実績と上位計算機1により収集されたスラブ情報とに基づいて上位タンク5の水位変動を予測するとともに、上位タンク5の水位を所定範囲内に保ちつつポンプ6消費電力が最小になるようにポンプ6のモータ回転数と稼働時間とを算出する。
【0031】
インバータ3は、本発明の回転数制御部に対応し、制御装置2により算出されたモータ回転数と稼動時間とに基づいて、ポンプ6(すなわち電動機4)のモータ回転数と稼働時間とを制御する。
【0032】
上位タンク5は、本発明のタンクに対応し、スラブに使用した水を貯めるためのタンクである。また、ポンプ6は、本発明のポンプに対応し、循環路上に設けられ、上位タンク5に貯められた水を循環させるためのポンプであり、インバータ3により電動機4を介してモータ回転数と稼働時間とを制御される。ポンプ6により上位タンク5から排出された水は、バルブを介して上位タンク7に流れ込む。
【0033】
下位タンク7は、ポンプ6により上位タンク5から排出された水を貯めるためのタンクであり、水を再使用可能にするために必要な水処理等を行う。また、ポンプ8は、下位タンク7から水を吸入し、貯水タンク9に水を戻す。
【0034】
貯水タンク9は、スラブに使用する水を貯めるためのタンクである。
【0035】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。まず、上位計算機1は、投入されるスラブの特徴に関するスラブ情報を収集する。具体的には、上位計算機1は、投入される予定のスラブの特徴に関するスラブ情報を外部から受信し、制御装置2に出力する。このスラブ情報は、例えば、投入される個々のスラブについての厚さ、長さ、幅、抽出温度、投入タイミング等であり、本実施例においては少なくとも、厚さ、長さ、幅、及び投入タイミング(一つ前のスラブが投入されてから当該スラブが投入されるまでの時間)を含むものとする。
【0036】
制御装置2は、上述したように、過去の運転実績と上位計算機1により収集されたスラブ情報とに基づいて上位タンク5の水位変動を予測する。なお、制御装置2は、過去の運転実績を蓄積し、データマイニングにより水位変動予測に活用することができる。
【0037】
前提として、圧延用投入スラブは、1)厚さ、2)長さ、3)幅、4)炉出口抽出温度等の特性を持っている。また、圧延ピッチに応じて、スラブは加熱炉から抽出される。このとき、これらのデータと水処理設備における水位変化を統計処理、データベース化する。基準としては、当該スラブに必要な流量と、投入ピッチと対応して変化する水位変化をグループ化して対応つける。なお,グループ化手法については基本概要を後述する。
【0038】
図2は、本実施例のポンプ制御システムの制御装置2において処理される水位変動ベクトルグループを示す図である。図2に示す水位変動ベクトルグループは、p個のベクトルグループが存在することを示しており、pは任意である。例えば、10個の水位変動ベクトルグループ(p=10)を使用する場合には、水位変動ベクトルグループΔH(1),ΔH(2),ΔH(3),ΔH(4),…,ΔH(10)ができる。制御装置2は、過去の運転実績に基づいて、投入流量に対する水位変動量を統計処理しグループ化する。例えば、流量がこの範囲内であればベクトルグループΔH(1)、この範囲内であればベクトルグループΔH(2)、…というように、流量に対応するベクトルグループが決定される。
【0039】
制御装置2は、流量(投入されるスラブに対する水量)に加えて、投入タイミングについてもグループ化を行う。投入されるスラブに対する水量と投入タイミングがグループ化されるということは、対応する水位変化が予見されることを意味する。また、異なるグループに推移する場合、推移したグループに対応した水位変化の大きさが予見されるが、このときも投入タイミングがグループ化のパラメータとなる。
【0040】
図3は、本実施例のポンプ制御システムの制御装置2において処理されるグループ化の様子を示す図である。図3の最上段のグラフは、上位タンク5における過去の実変動を表しており、横軸が時間で縦軸が水位を表す。時間軸にところどころ記載されている三角形のマークは、そのタイミングでスラブが投入されたことを示す。このグラフが示すように、水位変動は、水位変動ベクトルの合成であると考えることができる。
【0041】
投入時間間隔も予めグループ分けしておく。例えば、投入時間間隔がこの範囲内であればT1、この範囲内であればT2、…というように、投入時間間隔に対応する時間グループが決定される。本実施例において、制御装置2は、T1,T2,…,T5までの5つの時間グループを用意しているものとする。
【0042】
制御装置2は、図3に示すように過去の運転実績をグループ分けし、スラブ情報と関連付けて記憶しておく。例えば、図3の上から2番目のグラフが示すように、T1時間経過後にスラブが投入され、投入直後から水位が変動した場合には、制御装置2は、水位変動ベクトルに対応した流量G(Q1,T1)をスラブ情報(投入したスラブの厚さ、幅、長さ)と投入タイミング(この場合では時間T1)と関連付けて記憶しておく。次に、T2時間経過後にスラブが投入され、投入直後から水位が変動した場合には、制御装置2は、水位変動ベクトルに対応した流量G(Q2,T2)をスラブ情報(投入したスラブの厚さ、幅、長さ)と投入タイミング(この場合では時間T2)と関連付けて記憶しておく。
【0043】
このように、制御装置2は、例えば1年分の過去の運転実績を蓄積し、グループ化して統計処理することで、新たに上位計算機1により収集されたスラブ情報を入手した場合にも未来の上位タンク5の水位変動を予測できるようにする。グループ化としては、スラブ情報と水位変動を投入間隔と流量の関係として捕らえる。
【0044】
このように、制御装置2は、多量のサンプリングを採取し、データ処理することでスラブと水位変化について疎な関係から密な関係へ発展把握できる。
【0045】
図4は、本実施例のポンプ制御システムの制御装置2において処理されるスラブ情報のグループ化の様子を示す図であり、スラブ情報10−1〜10−8がどのように投入グループに割り当てられるのかを示している。スラブ情報10−1〜10−8の位置は、各スラブの厚さ、幅、及び長さを示しており、矢印に沿って記載された時間は、スラブの投入タイミングを示している。例えば、スラブ情報10−4に示すスラブは、スラブ情報10−3に示すスラブが投入されてからt5時間経過後に投入されることを示している。
【0046】
制御装置2は、図4に示すように、上位計算機1により収集されたスラブ情報10−1〜10−8に基づいて、上位タンク5の水位変動を予測する。すなわち、図4は、スラブ情報10−1〜10−8が持つ各スラブの厚さ、幅、長さ、及び投入タイミングと、過去の運転実績からデータマイニングにより定めたルールとに基づいて、制御装置2が各スラブ情報をいずれかの投入グループに割り当てる様子を示している。
【0047】
すなわち、制御装置2は、過去の運転実績に基づいてスラブ情報と水位変動とを関連付けた複数のグループを予め生成し、上位計算機1により収集されたスラブ情報が複数のグループのいずれに分類されるかに基づいて上位タンク5の水位変動を予測する。
【0048】
制御装置2は、これによって水位変動を予測することができるので、上位タンク5の水位を所定範囲内に保ちつつポンプ6消費電力が最小になるようにポンプ6のモータ回転数と稼働時間とを算出する。
【0049】
なお、このグループ数は、処理能力を考え,当初は20−30程度とする。例えば、本実施例においては、図4に示すように、流量を4つのグループに分け、投入時間間隔を5つのグループに分けているので20のグループが存在することになる。制御装置2は、学習によって当該グループ数を増加、削減させる。また生産により、当該グループの範囲内に入らない場合もあるが、この時は省エネ運転領域とは認識せず、従来の最大周波数運転を実施する。
【0050】
すなわち、制御装置2は、上位計算機1により収集されたスラブ情報に基づいて省エネ運転領域を逸脱していると判断した場合に、ポンプ6のモータ回転数と稼働時間とを商用運転に切り替える。言い換えれば、制御装置2は、学習、予測により省エネグループに入る場合にのみ省エネを実施するといえる。
【0051】
投入スラブに対して使用される水量、投入タイミングと、処理側で変動する水位量とは時間差があるため、例えば投入側が同一水量であっても投入タイミングが異なれば処理側の水位変動は異なってくる。この場合、制御装置2は、異なる投入タイミングで、同一の水量としてグループ化する。
【0052】
投入タイミングは、当該スラブが生産される直前に決定されることが多いが、少なくとも水位変化よりも前なので、省エネ制御側(制御装置2)としては十分前に本タイミングを知ることができるので十分である。
【0053】
このように、結論として省エネ制御側(制御装置2)としては、事前に水位変化とその間隔をタイミングチャートとして予見することができるので、水位が上限まで到達する時間が予見でき、この時間内で最適の周波数でポンプ6を回転させ、水位を下限まで下げればよいことになる。
【0054】
一般に流量とポンプの消費電力には三乗則が適用でき、流量を半分にすれば消費電力は25%程度ですむことになる。
【0055】
図5は、本実施例のポンプ制御システムの制御装置2によるモータ回転数と稼働時間の算出例を示す図である。まず、図5(a)に示すように、従来の装置は、未来における水位変化を不明なものとして制御しているため、水位が上限レベルに達した場合にポンプを最大運転させて水を排出し、下限レベルまで水位を下げる。この場合のポンプエネルギーを1PUとする。
【0056】
これに対し、本実施例のポンプ制御システムは水位変動を予測できるので、図5(b)に示すように、水位が上限レベルに達したとしても、次に水が流入するまで時間に余裕があるときには、ポンプエネルギーを抑えて水を排出することができる。図5(a)に示す従来装置が1PUのポンプエネルギーでT秒間、水を排出しているのに対し、本実施例のポンプ制御システムは、図5(b)に示すように0.25PUのポンプエネルギーで4×T秒間、水を排出している。最終的に排出される水量は同量であるが、ポンプの消費電力はモータ回転数の3乗に比例するため、図5(b)の場合の方が大幅に消費電力を低減することができ、省エネ効果を得られることがわかる。
【0057】
また、設備の処理として別途水位計を使用し、水位変化に対して省エネでのポンプ処理が少なく水位が増加しすぎた場合、省エネ運転とは別にポンプ運転を最大にすることで対応することもできる。この場合でも常に最大周波数運転で稼動させるよりエネルギーの削減が可能となる。
【0058】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係るポンプ制御システムによれば、循環水設備を利用してスラブに使用した水を上位タンク5に貯蔵した場合に、実際の実績値と投入するスラブの諸元と投入時間間隔とに基づいて、上位タンク5の水位変動を予測しつつ、ポンプ6の回転数と稼動時間を制御することにより消費電力を低減することができる。
【0059】
制御装置2は、投入スラブとその投入間隔に対応した水量に応じて変動する水位とその時間を実績から学習、想定し、ポンプ回転数を最適にすることで消費電力を最小にしつつ管理水位を確保することができる。
【0060】
すなわち、本実施例のポンプ制御システムは、制御装置2を備えることにより、様々な諸元を持つスラブとその投入時間間隔を、実際の実績値を元に順次有限のグループに分類することを可能とし、同時に水位変化量をもグループ化することで、その間の関係を一義的に結びつけることで次に投入されるスラブが判明するので、上位タンク5の水位変化を推定でき、その時間に応じてポンプ6の回転数と稼動時間を決定することができ、投入スラブと間隔に最適なポンプ周波数が決定でき、水処理設備の消費電力を最小にすることができる。
【0061】
また、本実施例のポンプ制御システムにおける制御装置2は、スラブ情報から、製品タンクで必要とされる水量を確保しつつ、当該スラブに使用された水量の結果、一定時間遅れ後に流れ込むことで発生する上位タンク5での水位変動において、運転実績から統計処理、学習、予測し、次にアトランダムに投入圧延されるスラブに対してもその投入時間と水量から廃水側の水位変動を学習、予測することができる。したがって、制御装置2は、排水処理設備側の水位変動を予測し,最小のエネルギーでポンプ6を運転することができ、かつ複雑な制御ロジック、そのためのパラメータと調整を必要とする制御理論を適用することなく、同時に従来の製品の品質、生産量を確保することができる。
【0062】
このように、本実施例のポンプ制御システムによれば、循環水設備を利用してタンクに貯蔵した水をスラブに使用する場合に、実際の使用実績値、水位変動量、投入するスラブのうち水位変動関連諸元とスラブ投入時間間隔等に基づいて、タンクの水位変動を学習予測し、経験的にグループ化可能な現象についてはグループ化することにより、投入予定のスラブに対してあらかじめ水位変動を関連予測することで排水ポンプの回転数と稼働時間を制御することにより消費電力を低減することができる。
【0063】
また、関連予測不能な場合は、従来の商用運転(ポンプ周波数を商用最大で運転)にて稼働させることで、設備操業品質を確保することができる。
【0064】
関連予測不能な場合でも、操業を継続する過程で学習、予測が可能になれば、省エネ制御可能なグループに分類することで、省エネ運転制御範囲も拡大することができる。
【0065】
さらに、既設システムのうち生産量、品質のための制御が中心、省エネを目的とした制御が搭載されていない制御装置に対し、本発明は、制御装置2を追加することにより、既設システムを改造することなく、省エネを目的とした最適な機能を持ったシステムを追加することができる。
【0066】
また、本実施例のポンプ制御システムは、生産中に平均的な生産パターン以外や、緊急停止が発生したことで今回発明の省エネ運転領域を逸脱する場合、生産へ影響を与えることなく、速やかに既設商用運転に切り替えることができる。
【0067】
また、本実施例のポンプ制御システムは、省エネ制御を行うにあたり、ポンプ6のモータ回転数を適切に制御するので、従来のように常にポンプを最大周波数で運転させる場合に比して、ポンプ寿命を延ばすことができる。
【0068】
なお、本制御について必要となる投入スラブにおける水量、投入時間間隔等の省エネ関連情報、及び各タンクにおける水位変動情報のベクトル、グループ化等の関連性を数理化することになり、数理統計処理等様々ある。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係るポンプ制御システムは、スラブに使用する水を循環路において貯めるための池やタンク等を備え、当該タンク等の水位が管理値を超えないように水を排出し再循環させる循環水ポンプ設備に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 上位計算機
2 制御装置
3 インバータ
4 電動機
5 上位タンク
6 ポンプ
7 下位タンク
8 ポンプ
9 貯水タンク
10 スラブ情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブに使用する水を循環させる循環水設備においてポンプ制御を行うポンプ制御システムであって、
投入される前記スラブの特徴に関するスラブ情報を収集する情報収集部と、
前記スラブに使用した水を貯めるためのタンクと、
循環路上に設けられ、前記タンクに貯められた水を循環させるためのポンプと、
前記情報収集部により収集されたスラブ情報に基づいて、前記タンクの水位を所定範囲内に保つように前記ポンプのモータ回転数と稼働時間とを算出するモータ回転数算出部と、
前記モータ回転数算出部により算出されたモータ回転数と稼働時間とに基づいて、前記ポンプのモータ回転数と稼働時間とを制御する回転数制御部と、
を備えることを特徴とするポンプ制御システム。
【請求項2】
前記情報収集部は、投入されるスラブの特徴に関するスラブ情報として、各スラブの厚み、長さ、幅、温度、投入タイミングのうち少なくとも1つを収集することを特徴とする請求項1記載のポンプ制御システム。
【請求項3】
前記モータ回転数算出部は、過去の運転実績と前記情報収集部により収集されたスラブ情報とに基づいて前記タンクの水位変動を予測するとともに、予測した前記タンクの水位変動に基づいて、前記タンクの水位を所定範囲内に保ちつつ前記ポンプの消費電力が最小になるように前記ポンプのモータ回転数と稼働時間とを算出することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のポンプ制御システム。
【請求項4】
前記モータ回転数算出部は、過去の運転実績に基づいてスラブ情報と水位変動とを関連付けた複数のグループを予め生成し、前記情報収集部により収集されたスラブ情報が前記複数のグループのいずれに分類されるかに基づいて前記タンクの水位変動を予測することを特徴とする請求項3記載のポンプ制御システム。
【請求項5】
前記モータ回転数算出部は、前記情報収集部により収集されたスラブ情報に基づいて省エネ運転領域を逸脱していると判断した場合に、前記ポンプのモータ回転数と稼働時間とを商用運転に切り替えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のポンプ制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−173775(P2012−173775A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32097(P2011−32097)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】