説明

ポンプ循環を用いてアゾ化合物の金属化合物を調製する方法

【課題】ポンプ循環を用いてアゾ化合物の金属化合物を調製する方法を提供する。
【解決手段】式(I)


に互変異性構造体の形態で一致するアゾ化合物の金属化合物を調製する方法であって、ポンプ循環を用いてバッチ法で調製が行われることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッチ法でポンプ循環を用いてアゾ化合物の金属化合物を調製する方法と、顔料としての金属化合物の使用と、顔料の使用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
金属と、次式
【0003】
【化1】

〔式中、
RおよびR’は、互いに独立して、OH、NH、NH−CN、アリールアミノ、またはアシルアミノであり、そして
およびR1’は、互いに独立して、−OHまたは−NHである〕
で示されるアゾ化合物と、からなる金属錯体顔料、さらにはそのホスト−ゲスト化合物は、たとえば、(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)などの文献に広範に記載されている。
【0004】
以上に記載の金属化合物またはホスト−ゲスト化合物の調製は、生成物特性の比較的大きなばらつきを伴うことが知られている。特に工業規模の製造条件下では、なかでも特にバッチ法では、得られる物質のいくつかのパラメーター(たとえばBET比表面積など)は、実質的に大きなばらつきを生じやすい。記載の化合物の需要者は一貫性のある生成物品質を望んでいるので、このことは当然ながら欠点である。さらに、特に液晶ディスプレイ用の色フィルターの製造前、大きいBET表面積を有する生成物グレードが望まれる。
【0005】
(特許文献3)や(特許文献6)などに記載されているように、熱処理工程を利用して生成物品質(再現性)にある程度の均一性をもたせることが可能である。しかしながら、これは、BET比表面積の減少(これは、特に液晶ディスプレイ用の色フィルターの製造に適用するには不利である)という犠牲を払って達成される。
【0006】
先行技術として記載されているバッチ法の欠点は、特に比較的大きいタンク容量の場合に混合物を加熱したり調製プロセス中に添加される反応物(特に酸および塩基)を所望の均一度で分散させたりすることができないことである。温度、濃度、およびpHにそのような勾配を生じると、競合反応が起こって不十分な再現性および/またはばらつきのある生成物品質をもたらすおそれがある。さらに、バッチ法は、特に工業規模では比較的長い反応時間を必要とする。バッチ法の欠点の概要は、(特許文献7)に詳細に記載されている。それに記載されている連続的調製方法は、装置にかなりの追加経費を必要とする。該装置としては、特に、2台以上の反応物槽、混合反応器、ならびに体積制御式およびpH制御式の調整システム、ポンピングシステム、およびセーフティーシステムが挙げられ、これらは、互いにきわめて高い精度で調和させなければならない。
【特許文献1】DE−A−2 064 093
【特許文献2】米国特許第4,622,391号明細書
【特許文献3】EP 0 994 162 A1
【特許文献4】EP 0 994 163 A1
【特許文献5】EP 0 994 164 A1
【特許文献6】DE 103 28 999 A1
【特許文献7】EP−A−1142960
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、前述の金属化合物を調製するための高い空時収率を有する経済的な方法を見いだすことであった。ただし、該方法は、金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製の再現性を増大させるものであり、特に、大きいBET表面積を有する生成物の再現性のある生成を可能にするものである。生成物品質のばらつきは、きわめて小さくなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式(I)
【0009】
【化2】

で示されるアゾ化合物またはその互変異性構造体の金属化合物を調製する方法であって、
〔該式中、
XおよびYで表される環は、それぞれ、=O、=S、=NR、−NR、−OR、−SR、−COOR、−CN、−CONR、−SO
【0010】
【化3】

アルキル、シクロアルキル、アリール、およびアラルキルからなる群から選択される1個もしくは2個の置換基を有していてもよく、
環Xおよび環Yのいずれについても環内二重結合と環外二重結合との合計数は、3であり、
{ここで、
は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルであり、
は、水素、シアノ、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、またはアシルであり、そして
は、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルである}
、R、R、およびRは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルであり、このほかに、介在線により式(I)に示されるように、5員もしくは6員の環(この環には、さらなる環が縮合されていてもよい)を形成してもよく、
は、−OH、−NR、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルであり{ここで、RおよびRは、先に定義したとおりである}、
かつR〜Rに対して与えられている置換基がCH基を含有するときは、CH基中の水素原子は、置換されていてもよく、
そしてm、n、o、およびpは、1であってもよいし、他の選択肢として、点線により式(I)に示されるように、対応する置換基R〜Rの位置する環窒素原子から二重結合が開始されるときは、0であってもよく、
しかも該金属化合物は、場合によりゲスト化合物を含有していてもよい〕
ポンプ循環を用いてバッチ法で調製が行われることを特徴とする、上記方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
当業者の熟知するところであるが、「バッチ法」という用語は、不連続法を意味する。すなわち、金属化合物の調製は、連続的に行われるのではなく、バッチ単位でつまりバッチ方式で行われる。1反応バッチが完成した後、生成物は単離される。連続法の場合、これとは対照的に、出発物質は連続的に供給され、生成物は連続的に取り出される。
【0012】
本発明では、「ポンプ循環」とは、調製中に内容物を反応器から取り出して再びそれに戻すことのできる手段が提供されることを意味する。そのようなポンプ循環の好ましい実施形態は、好ましくは反応器の外部に位置するパイプラインシステムを備えた反応器(特に攪拌タンク)の使用を伴う。パイプラインシステムは、少なくとも2つの異なる箇所で反応器または反応器内容物に結合される。パイプラインシステムは、反応器内容物を反応器から1箇所以上で取り出して、パイプラインシステムを通り抜けた後、再び一箇所以上の他の箇所で戻すことのできる手段を備える。この種の特定の手段は、ポンプである。本発明に従って使用されるポンプ循環システムは、好ましくは、反応器の外部に位置するパイプラインシステムに反応相手(たとえば、出発物質、出発物質の溶液、酸、塩基など)を導入できるようにする計量装置を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る特に好ましい一方法は、酸および塩基を反応器中に直接計量供給するのではなくポンプ循環システム中に計量供給することを含む。本発明に係る特に好ましい方法は、計量時間が理論的全ポンプ循環サイクルの時間の0.2倍〜5倍、特に1倍〜2倍になるように反応物、酸、および/またはアルカリもしくは塩基を計量供給することを含む。理論的全ポンプ循環サイクルとは、反応器内容物の全量がポンプ循環システムを1回通り抜ける時間を意味する。
【0014】
本発明に従って使用されるポンプ循環は、比較的速い流速を呈する領域を形成すると推定される。この流速は、一般的には、弱い攪拌作用の箇所(たとえば、一番上の攪拌ブレードよりも上の領域)における攪拌タンク反応器中の流速よりも速い。ポンプ循環システムの領域に計量添加する場合、速い流速がそこに広くゆきわたっているので、特に、濃度の局所ピークを回避することが可能である。さらに、反応器内容物全体のより良好な混合が確実に行われる。本発明に係る方法では、驚くべきことに、本発明に係るポンプ循環法を用いずに調製される生成物よりも大きい比表面積を有する生成物が製造される。さらに、本発明に係る方法を使用すると、生成物品質のばらつきが低減される。
【0015】
本発明によれば、2つ以上のポンプ循環システムを並列で利用することも可能である。
【0016】
好ましくは、式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物の本発明に係る調製は、ポンプ循環を用いてアジテーター槽中で行われる。調製は、好ましくは、ワンポット法で行われる。
【0017】
調製は、好ましくは、約10m〜100mの容積を有するアジテーター槽中で行われる。攪拌は、好ましくは5rpm〜200rpm、特に10rpm〜60rpmで行われる。反応器は、好ましくは、フローディスラプターを内包する。
【0018】
本発明に従って使用されるポンプ循環で1時間あたりにポンプ循環される体積は、好ましくは反応器容量の0.5倍〜10倍、特に反応器容量の1倍〜5倍に対応する。
【0019】
反応器内容物の熱処理は、好ましくは、反応器のシェルを介して達成される。熱処理はまた、反応器の外部でポンプ循環される物質を熱処理することによりまたは内部および/もしくは外部の熱交換器を利用して、達成することも可能である。
【0020】
本発明に係る方法を適用すれば、バッチの再現性が改良されるかもしくは生成物品質のばらつきが低減されるかまたはその両方が達成される。さらに、本発明に従って調製される金属化合物は、非常に狭い粒度分布および非常に大きいBET表面積を呈する。後者の場合、特にLCD用途に適したものとなる。
【0021】
本発明に係る方法の特定の一利点は、連続法と比較して簡単なプロセス方式でありかつ特に工業用途でロバスト性があり、それと同時に反応時間が顕著に低減されかつ生成物品質が改良される点である。
【0022】
本発明によれば、式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物は、特に、式(I)で示されるアゾ化合物の金属錯体化合物および/または式(I)で示されるアゾ化合物の塩型金属化合物であると理解される。本発明に従って調製される金属化合物では、式(I)で示されるアゾ化合物は、一般的には、単一脱プロトン化または多重脱プロトン化によりアニオンとして存在し、一方、金属は、カチオンとして存在し、(I)で示されるアゾ化合物のアニオンに塩型〜錯体型または配位型(すなわち共有結合成分含有型)として結合される。式(I)は、非脱プロトン化形態ですなわち遊離酸形態でアゾ化合物を示している。これらの錯体型および/または塩型の金属化合物の調製は、好ましくは、場合により塩基の存在下で式(I)で示される酸性アゾ化合物を金属化合物と反応させて式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物を形成することに基づく。
【0023】
本発明に従って調製される金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物は、水和物の形態をとることも可能である。
【0024】
XおよびYで表される環上の置換基(1個もしくは2個の置換基)の上述した数は、本発明では、図示された置換基R〜Rおよび−OHを含まないと解釈されるものとする。したがって、XおよびYで表される環上の指定の置換基は、R〜Rにより占有されていない位置に配置される置換基である。したがって、置換基R〜Rに関しては、XおよびYで表される環に3個以上の置換基を配置することも可能である。
【0025】
本発明に係る方法の好ましい一実施形態では、式(I)で示される化合物中のXで表される環は、式
【0026】
【化4】

で示される環である。
〔該式中、
LおよびMは、互いに独立して、=O、=S、または=NRであり、
は、水素、−OR、−SR、−NR、−COOR、−CONR、−CN、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルであり、かつ
は、−OR、−SR、−NR、−COOR、−CONR、−CN、−SO
【0027】
【化5】

アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルであり、
または置換基MとRもしくはMとRは、5員もしくは6員の環を形成してもよく、そして
、R、R、R、R、およびRは、先に定義したとおりである〕
【0028】
本発明に従って調製される特に好ましい金属化合物は、式(II)もしくは(III)
【0029】
【化6】

で示される構造体またはその互変異性形に遊離酸の形態で一致するアゾ化合物の金属化合物である。
〔該式中、
R’は、−OHまたはNHであり、
R’、R”、R’、およびR”は、それぞれ、水素であり、そして
M’およびM”は、互いに独立して、水素、−OH、−NH、−NHCN、アリールアミノ、またはアシルアミノである〕
【0030】
特に好ましい金属化合物は、式(IV)
【0031】
【化7】

で示される構造体またはその互変異性構造体に遊離酸の形態で一致する式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物である。
〔該式中、
M”’およびMIVは、互いに独立して、OHおよび/またはNHCNである〕
【0032】
特に好ましいのは、式:
【0033】
【化8】

で示されるアゾ化合物またはその互変異性構造体の金属化合物である。
【0034】
以上の式では、置換基は、好ましくは以下の定義を有する:
【0035】
アルキルの定義に包含される置換基は、好ましくは、C〜Cアルキルであり、これは、たとえば、ハロゲン(たとえば、塩素、臭素、もしくはフッ素)、−OH、−CN、−NH、またはC〜Cアルコキシにより置換されていてもよい。それに包含されるC〜Cアルキルは、1個〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝状のアルキル、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルであり、それらの異性体形がすべて包含される。
【0036】
シクロアルキルの定義に包含される置換基は、好ましくはC〜Cシクロアルキル、特にC〜Cシクロアルキルであり、これらは、たとえば、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン(たとえば、Cl、Br、F)、C〜Cアルコキシ、−OH、−CN、および−NHにより置換されていてもよい。
【0037】
アリールの定義に包含される置換基は、好ましくは、フェニルまたはナフチルであり、これらは、たとえば、ハロゲン(たとえば、F、Cl、Br)、−OH、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、−NH、−NO、および−CNにより置換されていてもよい。
【0038】
アラルキルの定義に包含される置換基は、好ましくは、フェニル−C〜C−アルキルまたはナフチル−C〜C−アルキルであり、これらは、たとえば、ハロゲン(たとえば、F、Cl、Br)、−OH、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、−NH、−NO、および−CNにより芳香族基が置換されていてもよい。
【0039】
アシルの定義に包含される置換基は、好ましくは、(C〜Cアルキル)−カルボニル、フェニルカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル、フェニルスルホニル、場合により、C〜Cアルキル置換、フェニル置換、およびナフチル置換のカルバモイル、場合により、C〜Cアルキル置換、フェニル置換、およびナフチル置換のスルファモイル、または場合により、C〜Cアルキル置換、フェニル置換、もしくはナフチル置換のグアニルであり、指定のアルキル基は、たとえば、ハロゲン(たとえば、Cl、Br、F)、−OH、−CN、−NH、または、C〜Cアルコキシにより置換可能であり、かつ指定のフェニル基およびナフチル基は、たとえば、ハロゲン(たとえば、F、Cl、Br)、−OH、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、−NH、−NO、および−CNにより置換可能である。
【0040】
と一緒になったMもしくはRと一緒になったM、ならびに/またはR、R、R、および/もしくはRが、介在線を利用して先の式に示されるように、5員もしくは6員の環を形成する場合、該当する環系は、好ましくは、トリアゾール、イミダゾールもしくはベンゾイミダゾール、ピリミジン、またはキナゾリンの環系である。
【0041】
式(I)〜(V)で示されるアゾ化合物の金属化合物(金属化合物とは、すでに記載したように、塩型または錯体型の金属化合物を意味する)として好適な代表例は、好ましくは、式(I)〜(V)で示されるアゾ化合物のモノアニオン、ジアニオン、トリアニオン、およびテトラアニオンの塩および錯体である。好適な金属は、有利には、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sn、Pb、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Hf、Ta、W、La、Ce、Pr、およびNdからなる群から選択される1種以上の金属から選択される。
【0042】
特に好ましいのは、式(I)〜(V)と二価または三価の金属との塩および錯体、特にニッケル塩およびニッケル錯体である。本発明に係る方法の好ましい一実施形態では、式(I)で示されるアゾ化合物のNi塩またはNi錯体が調製されている。
【0043】
金属化合物は、好ましくは、構造
【0044】
【化9】

で示される1:1アゾバルビツール酸−ニッケル錯体またはその互変異性構造体である。
【0045】
本発明に従って調製される金属化合物は、場合により1種以上のゲスト化合物を含有していてもよい。ゲスト化合物は、好ましくは、無機化合物、すなわち、共有結合された炭素原子を少なくとも1個有する化合物である。本発明に従って調製される金属化合物とゲスト有機化合物との組成物は、包接化合物、インターカレーション化合物、または固溶体のいずれであってもよい。
【0046】
好ましくは、それらは、構造
【0047】
【化10】

で示される1:1アゾバルビツール酸−ニッケル錯体またはその互変異性構造体とそれに含まれる少なくとも1種の他の有機化合物との包接化合物、インターカレーション化合物、または固溶体である。
【0048】
特に好ましくは、それらは、式(VI)で示される以上に記載の金属化合物とメラミンとの1:2のモル比のインターカレーション化合物である。
【0049】
一般的にいえば、本発明に従って調製される金属化合物は、1層の薄膜内の結合が本質的には水素結合および/または金属イオンによるものである層状結晶格子を形成する。該当する金属錯体は、好ましくは、実質的に平面状の薄膜で構成された結晶格子を形成する。
【0050】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、式(I)で示されるアゾ化合物の金属錯体またはそのホスト−ゲスト化合物の本発明に係る調製は、種結晶の存在下で行われる。種結晶は、好ましくは、本発明に係る方法により調製される式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物と同一の化学構造を有する。特に、調製される生成物が式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物とその中にゲストとして存在する化合物との組成物である場合、この種の包接組成物の種結晶もまた利用される。驚くべきことに、使用される種結晶の物理的性質は、必ずしも調製される金属化合物の物理的性質を決定するとは限らないことが判明した。したがって、たとえば、利用される種結晶が比較的小さいBET比表面積を有する場合でさえも、大きいBET比表面積を有する金属化合物が得られる。
【0051】
本発明に係る調製は、所与の反応バッチで調製される金属化合物の理論取得可能量を基準にして、好ましくは1ppm〜10,000ppm、特に10ppm〜5000ppm、非常に好ましくは50ppm〜3000ppm、特に100ppm〜2000ppmの種結晶の存在下で行われる。
【0052】
本発明によれば、好ましくはゲスト化合物を含有する式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物および特にLCD用途向けに非常に大きいBET比表面積を有するそれに対応する顔料を有利に調製することが可能である。
【0053】
したがって、本発明に係る方法により、式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物またはその少なくとも1種のゲスト化合物との組成物を、少なくとも160m/g、好ましくは少なくとも165m/gのBET比表面積で得ることが可能である。特に、種結晶を添加することにより、180m/g超、たとえば180〜240m/g、特に180〜210m/gの比表面積を得ることが可能である。比表面積は、DIN66131:ブルナウアー(Brunauer)、エメット(Emmett)、およびテラー(Teller)(B.E.T.)の方法を用いる気体吸着による固体の比表面積の決定に準拠して決定される。
【0054】
ある種の用途では、EP−A1−0994162に記載されているように、本発明に係る方法により得られる金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物を熱処理に付すことが賢明なこともある。熱処理を行うと、一般的には、より狭い粒度分布が得られる。しかしながら、冒頭に記載したように、これは、一般的には、比表面積の減少を伴う。好ましい実施形態では、金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の水性懸濁液の調製物は、少なくとも2つのpH段階で熱処理される。これにより、単一段階の熱処理と比較して有意に改良された色強度を得ることが可能になる。多段階の熱処理は、有利には、各処理工程において80〜125℃の温度で行われる。多段階の熱処理は、好ましくは、0〜4の範囲内のpH値において水および場合により有機溶媒の存在下で行われる。少なくとも1つの熱処理段階のpHは、好ましくは2〜4、特に2.5〜3.5である。第2の熱処理段階のpHは、好ましくは0〜3、より好ましくは1〜2.5である。2つの熱処理段階のpH値は、好ましくは0.5〜3単位、好ましくは1〜2単位異なる。好ましくは、少なくとも2つの熱処理段階は、互いに独立して、0.25時間〜24時間、特に1時間〜12時間、非常に好ましくは2時間〜8時間持続する。
【0055】
しかしながら、それにもかかわらず、熱処理法を利用する場合にも、ポンプ循環を行うことさらには場合により種結晶を使用することが賢明である。なぜなら、生成物品質のばらつきが減少するという利点が保持され、かつ熱処理前により高レベルの比表面積から開始することが可能であるからである。
【0056】
ポンプ循環さらには場合により種結晶を使用しても、必ずしも180m/g超のBET比表面積になるとは限らない。この理由は、当業者の承知するところであるが、比表面積の設定値がたとえば調製温度などの他の調製パラメーターにも依存することにある。しかしながら、それ以外では有利な調製条件下で、本発明に係る方法を用いれば、本発明に従って調製される金属化合物のより大きいBET比表面積の再現性が高くなる。
【0057】
本明細書の文面では、式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物(好ましくは少なくとも1種のゲスト化合物を含有し、ポンプ循環を用いて調製されたものである)はまた、本発明に従って調製される顔料としても言及される。
【0058】
好適な金属化合物としては、塩または金属錯体などの金属化合物がたとえばニッケル錯体などの他の金属錯体の結晶格子中に組み込まれたものが挙げられる。この場合、たとえば式(VI)中のニッケルなどの金属の一部分が他の金属イオンで置き換えられる可能性があるか、またはさらなる金属イオンが金属化合物(好ましくはニッケル錯体)と実質的に強い相互作用を行うようになる可能性がある。
【0059】
金属錯体の包接化合物、インターカレーション化合物、および固溶体は、それ自体、文献から公知である。それらはまた、解説もなされており、それらの調製については、たとえば、EP0074515、EP0073463、EP0994163、およびEP0994162(その中の第5頁第40行〜第7頁第58行)に記載されている。したがって、それらの刊行物中の好適な化合物に関する記述の全内容が参照可能である。
【0060】
使用される特に好ましいゲスト化合物は、メラミンまたはメラミン誘導体、特に、式(VII)
【0061】
【化11】

で示されるものである。
〔該式中、
は、水素、またはOH基により場合により置換されていてもよいC〜Cアルキルであり、非常に好ましくは、
は、水素である〕
【0062】
金属錯体の結晶格子中に組み込みうるゲスト物質の量は、一般的には、金属化合物の量を基準にして5〜200重量%である。10〜100重量%を組み込むことが好ましい。これは、適切な溶媒で洗浄することにより除去することのできないゲスト物質の量であり、元素分析から明らかにされる。もちろん、指定量よりも多量または少量の物質を添加することも可能であり、場合により、過剰量をまったく洗浄除去しないようにすることも可能である。金属化合物の量を基準にして10〜150重量%の量が好ましい。
【0063】
金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製は、たとえば、EP0074515、EP0073463、EP0994163、およびEP0994162に記載されているように行われる。アゾ化合物の合成に続いて、一般的にはインターカレートされる化合物の存在下で、金属塩により錯化が行われる。工業的に関心の対象となる二価および三価の金属の錯体のインターカレーション化合物の場合、特に、アゾバルビツール酸−ニッケル錯体の工業的および経済的に重要なインターカレーション化合物の場合、錯化およびインターカレーションさらには後続の単離は、有利には酸性pHの範囲内で行われる。
【0064】
金属塩の適合性は、好ましくは、上述した金属の水溶性塩、特に、好ましくはニッケルの塩化物、臭化物、酢酸塩、硝酸塩などにより得られる。利用される金属塩は、好ましくは、20℃において20g/l超、特に50g/l超の水への溶解度を有する。
【0065】
種々の指定の金属を含むこれらの塩の混合物を使用することも可能である。そのような塩混合物の使用は、特に中間色相の着色最終生成物を得る上で望ましい。
【0066】
調製で得られる懸濁液は、好ましくは濾過され、こうして得られるプレスケーキは、場合により水で洗浄した後、乾燥させることが可能である。
【0067】
一方、これに関連して好適な乾燥法としては、パドル乾燥などの慣用的方法が挙げられる。この種の乾燥法を適用してから顔料を従来方式で粉砕すると、粉末形態の顔料が得られる。
【0068】
プレスケーキは、好ましくは、水性スラリーの形態でスプレー乾燥される。スプレーに供されるスラリーは、好ましくは10〜40重量%、特に15〜30重量%の固形分を有する。
【0069】
本発明はさらに、本発明に従って調製される少なくとも1種の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物と少なくとも1種の分散剤とを混合する顔料配合物の調製方法を提供する。これらの顔料配合物は、好ましくは、水系への組込みに役立つ。
【0070】
好適な分散剤に関しては、冒頭で述べた先行技術、特にEP−A1−0994164の第9頁第56行〜第11頁第23行(その開示内容は本明細書の一部分をなすものとする)を参照しうる。特に好ましくは、顔料配合物は、90重量%超、特に95重量%超、好ましくは97重量%超の顔料(本発明に従って調製される金属化合物+場合によりゲスト種としての化合物)と分散剤とを含有する。
【0071】
本発明は、好ましくは、液晶ディスプレイ中の色フィルター用の顔料としての本発明に従って調製される金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の使用に関する。
【0072】
本発明はこのほかに、本発明に従って調製される金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物(好ましくはいずれの場合にも少なくとも160m/gのBET比表面積を有する)の使用を含む液晶ディスプレイ中の色フィルターの製造方法を提供する。
【0073】
本発明はさらに、少なくとも1種の光硬化性モノマーと少なくとも1種の光開始剤とを含むフォトレジストを調製するための、本発明に従って調製される金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の使用を提供する。本発明はこのほかに、色フィルターおよびそれから製造される液晶ディスプレイを製造するための、本発明に従って調製される金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の使用を提供する。液晶ディスプレイ用の色フィルターの製造時、本発明に従って調製された金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物(好ましくはメラミンを有する)は、バインダー樹脂および/または分散剤を添加してまたは添加せずに、有機溶媒中で粉砕され、次に、光硬化性モノマー、光反応開始剤、ならびに場合によりさらなるバインダーおよび/または溶媒を添加してフォトレジストを与えるように加工され、その後、フォトレジストは、たとえばローラーコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、またはエアナイフコーティングなどの適切なコーティング法により、適切な基材(一般的にはガラス板)に適用され、次に、色フィルターを形成すべく、フォトマスクを用いて露光され、硬化され、そして現像される。
【0074】
さらに、本発明に従って調製される金属化合物もしくはそのホスト−ゲスト化合物または顔料配合物は、すべての顔料最終用途に際立って好適である。
【0075】
それらは、たとえば、印刷インク、水性塗料、またはバインダーカバー材を製造するためのあらゆる種類のワニスを顔料着色するのに、ポリビニルクロリド、ポリスチレンポリアミド、ポリエチレン、またはポリプロピレンなどの合成、半合成、または天然の高分子物質を大量に着色するのに、好適である。それらはまた、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリカーボネート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、またはポリアミド繊維などの天然、再生、または人造の繊維の原着に、さらにはテキスタイルおよびペーパーの印刷に、使用することも可能である。非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性の界面活性剤の存在下で粉砕または混練を行うことにより、これらの顔料から、ペーパーの着色、テキスタイルの顔料捺染、ラミネート印刷、またはビスコースの原着に使用しうるペイント(たとえばエマルジョンペイント)の優れた安定水性顔料着色物を製造することが可能である。本発明に係る方法により調製される顔料は、インクジェット用途に、および比較的大きいBET比表面積に基づき、ディスプレイ用の色フィルターに、際立って好適である。
[実施例]
【0076】
実施例1(実施例1は本発明に係るものではない)
ジャケット加熱/冷却システム、スターラー、およびフローディスラプターを備えた20m反応器に、20rpmの攪拌速度で、6000リットルの高温(80℃)水を仕込む。81%の乾物含有率のジアゾバルビツール酸水湿潤ペースト380kg(乾燥重量308kgに対応する)を導入する。
【0077】
温度を80℃に保持し、この温度で268kgのバルビツール酸を導入する。2時間後、濃度30%の水酸化カリウム溶液(反応器内の表面上に計量供給される)を用いて2時間にわたりpHを5.0に調整する。この後、続いて、80℃およびpH5.0で3時間攪拌する。その後、15,000リットルになるまで水でバッチを希釈する。次に、90℃に加熱し、この温度で500kgのメラミンを導入する。その後、1150kgの濃度22.5%の塩化ニッケル溶液を反応器内の表面上に1時間かけて計量導入する。できるかぎり完全な反応を達成するために、続いて2時間攪拌する。次に、濃度30%の水酸化カリウム溶液(反応器内の表面上に計量供給される)を用いて1時間にわたりpHを5.0に調整する。
【0078】
続いて、反応器内の表面上に塩酸を計量供給することにより、1時間にわたりpHを2.5に調整する。温度を98℃に上昇させ、熱処理を4時間行う。この後、濃度30%の水酸化カリウム溶液(反応器内の表面上に計量供給される)を用いて2時間にわたりpHを5.0に調整し、温度を80℃に調整する。
【0079】
少量のケーキング物質以外は完全に反応器から排出させることができる。顔料スラリーをフィルタープレスで単離し、電解質を洗浄除去し、そして80℃で乾燥させる。これにより、149m/gのBET表面積を有する生成物が得られる。
【0080】
実施例2(実施例2は本発明に係るものである)
ジャケット加熱/冷却システム、スターラー、フローディスラプター、およびポンプ循環システムを備えた20m反応器に、20rpmの攪拌速度で、6000リットルの高温(80℃)水を仕込む。81%の乾物含有率のジアゾバルビツール酸水湿潤ペースト380kg(乾燥重量308kgに対応する)を導入する。
【0081】
温度を80℃に保持し、この温度で268kgのバルビツール酸を導入する。ポンプ循環を作動させ、15m/hに設定する。ポンプ循環の1時間後、濃度30%の水酸化カリウム溶液(反応器内の表面上に計量供給される)を用いて1時間にわたりpHを5.0に調整する。この後、続いて、ポンプ循環を行いながら80℃およびpH5.0で2時間攪拌する。その後、15,000リットルになるまで水でバッチを希釈する。次に、90℃に加熱し、この温度で500kgのメラミンを導入する。ポンプ循環を30m/hに設定する。その後、1150kgの濃度22.5%の塩化ニッケル溶液を反応器内の表面上に1時間かけて計量導入する。できるかぎり完全な反応を達成するために、続いてポンプ循環を行いながら90分間攪拌する。次に、濃度30%の水酸化カリウム溶液(反応器内の表面上に計量供給される)を用いて1時間にわたりpHを5.0に調整する。
【0082】
続いて、反応器内の表面上に塩酸を計量供給することにより、1時間にわたりpHを2.5に調整する。温度を98℃に上昇させ、熱処理を4時間行う。この後、濃度30%の水酸化カリウム溶液(反応器内の表面上に計量供給される)を用いて1時間にわたりpHを5.0に調整し、温度を80℃に調整する。
【0083】
実質的にケーキングを伴うことなく反応器から完全に排出させることができる。顔料スラリーをフィルタープレスで単離し、電解質を洗浄除去し、そして80℃で乾燥させる。これにより、狭い粒度分布および162m/gのBET表面積を有する実質的に均一な生成物が得られる。
【0084】
実施例3(実施例3は本発明に係るものである)
ジャケット加熱/冷却システム、スターラー、フローディスラプター、およびポンプ循環システムを備えた20m反応器に、20rpmの攪拌速度で、6000リットルの高温(80℃)水を仕込む。81%の乾物含有率のジアゾバルビツール酸水湿潤ペースト380kg(乾燥重量308kgに対応する)を導入する。
【0085】
温度を80℃に保持し、この温度で268kgのバルビツール酸を導入する。ポンプ循環を作動させ、15m/hに設定する。ポンプ循環の1時間後、濃度30%の水酸化カリウム溶液(ポンプ循環内に計量供給される)を用いて30分間にわたりpHを5.0に調整する。この後、続いて、ポンプ循環を行いながら80℃およびpH5.0で2時間攪拌する。その後、1500リットルになるまで水でバッチを希釈する。次に、90℃に加熱し、この温度で500kgのメラミンを導入する。ポンプ循環を30m/hに設定する。その後、ポンプ循環路を介して1150kgの濃度22.5%の塩化ニッケル溶液を30分間かけて計量導入する。できるかぎり完全な反応を達成するために、続いてポンプ循環を行いながら90分間攪拌する。次に、濃度30%の水酸化カリウム溶液(ポンプ循環内に計量供給される)を用いて30分間にわたりpHを5.0に調整する。
【0086】
続いて、ポンプ循環路内に塩酸を計量供給することにより、30分間にわたりpHを2.5に調整する。温度を98℃に上昇させ、熱処理を4時間行う。この後、30%の水酸化カリウム溶液(ポンプ循環路内に計量供給される)を用いて30分間にわたりpHを5.0に調整し、温度を80℃に調整する。
【0087】
ケーキングを伴うことなく反応器から非常に容易に実質的に完全に排出させることができる。均一な顔料スラリーをフィルタープレスで単離し、電解質を洗浄除去し、そして80℃で乾燥させる。これにより、非常に狭い粒度分布および167m/gのBET表面積を有するきわめて均一な生成物が得られる。
【0088】
実施例4(実施例4は本発明に係るものである)
実施例3のバッチにおいて、約20リットルの生成物懸濁液を種結晶として反応器内に残存させ、次に、実施例3に記載の操作を反復する。これにより、非常に狭い粒度分布および182m/gのBET表面積を有するきわめて均一な生成物が得られる。
【0089】
実施例からわかるように、本発明に係る方法によれば、比較的大きいBET表面積を有する生成物が比較的少ないばらつきで得られる。さらに、本発明に係る実施例からわかるように、ポンプ循環を使用したときに反応時間を有意に減少させることが可能である。実施例4からわかるように、種結晶を使用するとBET比表面積がさらに増大される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

で示されるアゾ化合物またはその互変異性構造体の金属化合物を調製する方法であって、
〔該式中、
XおよびYで表される環は、それぞれ、=O、=S、=NR、−NR、−OR、−SR、−COOR、−CN、−CONR、−SO
【化2】

アルキル、シクロアルキル、アリール、およびアラルキルからなる群から選択される1個もしくは2個の置換基を有していてもよく、
環Xおよび環Yのいずれについても環内二重結合と環外二重結合との合計数は、3であり、
{ここで、
は、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルであり、
は、水素、シアノ、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、またはアシルであり、そして
は、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルである}
、R、R、およびRは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルであり、このほかに、介在線により式(I)に示されるように、5員もしくは6員の環(この環には、さらなる環が縮合されていてもよい)を形成してもよく、
は、−OH、−NR、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルであり{ここで、RおよびRは、先に定義したとおりである}、
かつR〜Rに対して与えられている置換基がCH基を含有するときは、CH基中の水素原子は、置換されていてもよく、
そしてm、n、o、およびpは、1であってもよいし、他の選択肢として、点線により式(I)に示されるように、対応する置換基R〜Rの位置する環窒素原子から二重結合が開始されるときは、0であってもよく、
しかも該金属化合物は、場合によりゲスト化合物を含有していてもよい〕
ポンプ循環を用いてバッチ法で調製が行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
式(I)で示される化合物中のXで表される環が、式
【化3】

〔該式中、
LおよびMは、互いに独立して、=O、=S、または=NRであり、
は、水素、−OR、−SR、−NR、−COOR、−CONR、−CN、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルであり、かつ
は、−OR、−SR、−NR、−COOR、−CONR、−CN、−SO
【化4】

アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアラルキルであり、
または置換基MとRもしくはMとRは、5員もしくは6員の環を形成してもよく、そして
、R、R、R、R、およびRは、請求項1に定義したとおりである〕
で示される環であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)で示されるアゾ化合物が、その遊離酸の形態で、式(II)もしくは(III)
【化5】

〔該式中、
R’は、−OHまたはNHであり、
R’、R”、R’、およびR”は、それぞれ、水素であり、そして
M’およびM”は、互いに独立して、水素、−OH、−NH、−NHCN、アリールアミノ、またはアシルアミノである〕
またはその互変異性形に一致することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(I)で示されるアゾ化合物が、その遊離酸の形態で、式(V)
【化6】

またはその互変異性形に一致することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(I)で示されるアゾ化合物の金属化合物が、式(I)で示されるアゾ化合物のモノアニオン、ジアニオン、トリアニオン、およびテトラアニオンと、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sn、Pb、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Hf、Ta、W、La、Ce、Pr、およびNdからなる群から選択される1種以上の金属と、の塩および錯体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)で示されるアゾ化合物のNi塩またはNi錯体が、金属化合物として使用されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属化合物が、ゲスト化合物として環式もしくは非環式の有機化合物(特にメラミン)を含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属化合物の調製方法。
【請求項8】
前記調製が、10m〜100mの容積を有するアジテーター槽中で行われ、かつ好ましくはアジテーターが5rpm〜200rpmで作動されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項9】
1時間あたりにポンプ循環される体積が反応器容量の0.5〜10倍(特に反応器容量の1倍〜5倍)に相当するように、前記ポンプ循環の寸法決めが行われることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項10】
前記調製中に、少なくとも1種の反応物および/またはその溶液もしくは分散液ならびに/あるいはアルカリおよび/または酸が、ポンプ循環システム中に計量供給されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項11】
計量時間が理論的全循環ポンピングサイクルの時間の0.2倍〜5倍に相当するように、少なくとも1種の反応物ならびに/あるいはアルカリおよび/または酸の計量時間が調和されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項12】
前記調製が種結晶の存在下で行われることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項13】
顔料のBET比表面積が少なくとも160m/gで得られることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により調製される金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物が、水性スラリーの形態でスプレー乾燥されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の調製方法。
【請求項15】
印刷インク、水性塗料、またはバインダー着色材を調製するための、合成、半合成、または天然の高分子物質(特に、ポリビニルクロリド、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン、またはポリプロピレン)を大量に着色するための、さらには天然、再生、または人造の繊維(たとえば、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリカーボネート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、またはポリアミド繊維)を原着するための、さらにはテキスタイルおよびペーパーを印刷するための、請求項1〜14のいずれか一項に従って調製される金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の使用。
【請求項16】
ラミネートを製造するための顔料としての、フォトレジストを製造するための顔料としての、液晶ディスプレイの色フィルターを製造するための顔料としての、またはインクジェット印刷するための顔料としての、請求項1〜14のいずれか一項に従って調製される金属化合物またはそのホスト−ゲスト化合物の使用。

【公開番号】特開2007−23284(P2007−23284A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194685(P2006−194685)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】