説明

ポンプ

【課題】容易に製造でき、組立性、メンテナンス性、応答性に優れた高寿命のポンプを得る。
【解決手段】ポンプ1は、シリンダ20内がダイヤフラム10によって、液体を吸入および吐出するポンプ室50と往復動部材30を収容する駆動室60とに仕切られ、往復動部材30をダイヤフラム10に離反可能に突き合い接触させ、駆動室60内の圧力P2を常にポンプ室50内の圧力P1よりも低く維持し(P2<P1)、かつその差圧P3(P1−P2)を常に所定圧以上に維持して、ダイヤフラム10を往復動部材30の動きに合わせて作動させ、ダイヤフラム10と往復動部材30の結合を無くす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の供給に用いられるポンプに関し、特に半導体、液晶等のFPD製造プロセス時の薬液供給に用いられるポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のポンプは、シリンダ内をダイヤフラムによって、液体を吸入および吐出するポンプ室と往復動部材を収容する駆動室とに仕切り、ダイヤフラムと往復動部材を締結により結合して、ダイヤフラムを往復動部材の動きに合わせて作動させ、ポンプ室の容積が拡大する吸込工程で該ポンプ室内に液体を吸入し、縮小する吐出工程で該ポンプ室内の液体を吐出する(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−53566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のポンプのように、ダイヤフラムと往復動部材を締結により結合したり、その他嵌合により結合した場合、ダイヤフラムと往復動部材の加工精度如何でダイヤフラムと往復動部材間にセンターずれを生じ、これに伴ってダイヤフラムに集中応力を生じたり往復動部材と同一軸心線上に配置された摺動部に偏磨耗を生じ、ポンプ寿命が低下するという課題があった。さらに、締結による結合の場合には、組立性、メンテナンス性が悪くなり、ねじのバックラッシュによりポンプ応答性も悪くなるという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明のポンプは、シリンダ20内がダイヤフラム10によって、液体を吸入および吐出するポンプ室50と往復動部材30を収容する駆動室60とに仕切られているポンプであって、往復動部材30がダイヤフラム10に略90度の角度で離反可能に接触され、駆動室60内の圧力P2が常にポンプ室50内の圧力P1よりも低く維持され(P2<P1)、かつその差圧が常に所定圧以上に維持されて、ダイヤフラム10が往復動部材30の動きに合わせて作動される構成とし、シリンダ20に組み込んでダイヤフラム10と往復動部材30の接触を保つスプリングなどの付勢部材を不要にしながら、ダイヤフラム10と往復動部材30の結合をなくした。この際、ダイヤフラム10がフッ素樹脂で形成され、ダイヤフラム10の円筒状外周部11が可撓性を有し、該外周部11が折返し部11aを経て該外周部11の開放端部にフランジ部13を有し、フランジ部13がシリンダ20に取り付けられ、往復動部材30が円柱状に形成され、往復動部材30がダイヤフラム10の閉鎖端部に略90度の角度で離反可能に接触され、ダイヤフラム10の外周部11が往復動部材30の外周面とシリンダ20の内周面に密着しながら該2面の隙間でローリングされることが好ましい。また、往復動部材30が該往復動部材30とダイヤフラム10の相互接触面間を駆動室60に連通させる通路33を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ダイヤフラム10と往復動部材30の結合をなくしたので、ポンプ寿命の向上を図ることができ、また、ポンプの組立性、メンテナンス性、応答性の向上も図ることができる。したがって、容易に製造でき、組立性、メンテナンス性、応答性に優れた高寿命のポンプを得ることができるという顕著な効果を奏する。
【0006】
また、往復動部材30が該往復動部材30とダイヤフラム10の相互接触面間を駆動室60に連通させる通路33を有しているので、ポンプ駆動時、往復動部材30とダイヤフラム10の相互接触面をより確実に密着保持させて、ダイヤフラム10を往復動部材30の動きに合わせてより確実に作動させることができ、ポンプの応答性能、定量性能、定流量性能などをより確実に発揮させることができると共に、ポンプ組立時に通路33から往復動部材30とダイヤフラム10間の空気を抜き、往復動部材30とダイヤフラム10とを、ダイヤフラム10に過負荷を生じることなく容易に接触させることができ、ダイヤフラム10の損傷を防止しながら、ポンプの組立性をより向上させることができるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施の形態に係るポンプの断面図である。
【0008】
図1に示すポンプ1は、液晶等のFPDや半導体の製造プロセスに使用されるレジスト液等の薬液を定量、定流量で供給するためのダイヤフラムポンプであり、用いるダイヤフラム10は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂で形成されて耐薬品性が付与されたローリングダイヤフラムである。
【0009】
まず、ダイヤフラム10は略底付き円筒状(カップ状)に形成されており、中間部で内側または外側に折返して(捲返して)なる円筒状外周部(以下、「ローリング部」という。)11を有し、曲げ角度略180度の折返し部11aと、この折返し部11aの内周側端部及び外周側端部から軸方向に平行に延出される内周部11bおよび外周部11cとを設けている。また、内周部11bの端部を閉鎖端部にする円板状の端板部12と、外周部11cの端部から半径方向に起立するリング状のフランジ部13とを有している。さらに、ローリング部11が薄膜状に形成されて可撓性を有し、端板部12およびフランジ部13が厚肉に形成されて剛性を有している。図1には、外周部11cの軸方向長さが内周部11bの軸方向長さより短い初期形状(ポンプ組立時の形状)にローリング部11を形成した引きタイプ(ポンプ動作を吸込工程から開始するタイプ)のダイヤフラム10を示している。
【0010】
而して、ポンプ1は、前記ダイヤフラム10と、前記ダイヤフラム10を収容するポンプハウジングである円筒状のシリンダ20と、前記ダイヤフラム10を作動させる往復動部材30と、この往復動部材30に往復運動を与えるリニアアクチュエータなどのポンプ駆動源40とから構成されている。図1には、シリンダ20の軸心線CLが垂直で、この垂直軸心線CL上にダイヤフラム10、往復動部材30が配置された縦型のポンプ1を示している。
【0011】
垂直軸心線CLを有するシリンダ20は、円筒状のシリンダパイプ21と、このシリンダパイプ21の上側に取り付けられる有天円筒状のヘッドカバー22と、前記シリンダパイプ21の下側に取り付けられるロッドカバー23とから構成されている。また、ロッドカバー23に軸受け部24を設け、ヘッドカバー22に薬液を吸入および吐出する内外面貫通の吸入口25および吐出口26を設け、シリンダパイプ21に内外面貫通の通気口27を設けている。軸受け部24と吐出口26は前記垂直軸心線CL上に配置され、吸入口25はヘッドカバー22の下部に配置され、通気口27はシリンダパイプ21の下部に配置されている。そして、吸入口25には図示しない逆止弁を介して図示しない薬液タンクが接続され、吐出口26は図示しない逆止弁を介して図示しない薬液供給部に接続される。吸入側の逆止弁は薬液のタンクから吸入口25への流れを許容し、その逆の流れを阻止する。吐出側の逆止弁は薬液の吐出口26から薬液供給部への流れを許容し、その逆の流れを阻止する。
【0012】
前記シリンダ20と同一軸心線上に配置される往復動部材30は、上側に円柱状のピストン31を有し、下側にピストン31より細長い円柱状のピストンロッド32を有している。ピストン31は前記シリンダ20内に収容されて、ピストン31の外周面がシリンダ20の内周面と所定の隙間を設けて対向している。また、ピストン31の外周部には、このピストン31の上側端面から下側端面に貫通する直線状の細長い孔でなる空気通路33が複数、同一円周上で等間隔に設けられている。ピストンロッド32は前記シリンダ20の軸受け部24に挿通されて、前記垂直軸心線CL上で軸方向(上下方向)に摺動自在に支持されている。この摺動部からの漏れを防ぐため、摺動部の軸受け部24側の上下2箇所には0リングなどのパッキン28が設けられている。そして、ピストンロッド32の下端部は前記シリンダ20の下側から外部に突出され、このピストンロッド32の下端部が、前記シリンダ20と同一軸心線上でこのシリンダ20の下側外部に配置されるポンプ駆動源40の出力軸と前記垂直軸芯線CL上で一直線状に結合され、このピストンロッド32の下端部に、ポンプ駆動源40の出力軸から軸方向の往復運動が与えられる。
【0013】
図1には、前記ピストン31と前記ピストンロッド32からなる2ピース構造の往復動部材30を示している。この往復動部材30はピストン31がその下側端面に比較的浅い位置決め用の円形凹部34を設けている。円形凹部34は前記垂直軸心線CL上に配置され、この円形凹部34には前記シリンダ20と同一軸心線上に配置されたピストンロッド32の上端部が下側から嵌め込まれている。これにより、ピストン31が、このピストン31の下側端面中心部(円形凹部34の天面)に接触しているピストンロッド32の上端面で下側から支えられ、円形凹部34の周側面と僅かな嵌合隙間を設けて対向しているピストンロッド32の上端部外周面で前記垂直軸心線CL上に略位置決めされている。ここで、円形凹部34とピストンロッド32上端部との嵌合は、ピストン31とピストンロッド32とを結合一体化するものではない。よって、メンテナンス時にピストン31とピストンロッド32の一方を固定した状態で他方に抜き方向の力が加えられると、両者は引き離されて分離される。
【0014】
そして、前記ダイヤフラム10は、そのフランジ部13がシリンダパイプ21とヘッドカバー22との接合面間で挟持されてシリンダ20内に取り付けられている。この取り付け状態(ポンプ組立状態)では、固定端(フランジ13)に繋がる外周部11cがシリンダパイプ21の内周面と接触し、かつシリンダパイプ21の内周面に沿って下側へ延ばされ、折返し部11aがシリンダパイプ21の内周側に位置し、端板部12に繋がる内周部11bが前記外周部11cと平行に上側へ延ばされ、端板部12がヘッドカバー22の天面近傍でその天面に対し離反対向している。これにより、ダイヤフラム10がシリンダ20内で前記垂直軸心線CL上に収容されて、シリンダ20内がダイヤフラム10によって、吸入口25および吐出口26と連通したダイヤフラム10よりも上側(ヘッドカバー22側)のポンプ室50と、通気口27と連通し、かつ往復動部材30を収容するダイヤフラム10よりも下側(ロッドカバー23側)の駆動室60とに仕切られている。
【0015】
また、前記ダイヤフラム10によってシリンダ20上部のポンプ室50と仕切られたシリンダ20下部の駆動室60内では、往復動部材30の上部に有するピストン31がダイヤフラム10のローリング部10内周に下側から嵌め込まれ、ピストン31の上側端面がダイヤフラム10の端板部12下側表面に略90度の角度で接触、つまり突き合い接触されている。これにより、ローリング部11の内周部11bはピストン31の外周面と接触し、折返し部11aはピストン31の外周面とシリンダパイプ21の内周面との隙間に位置し、ダイヤフラム10と往復動部材30のピストン31が同一軸心線上に配置される。つまりダイヤフラム10と往復動部材30のピストン31およびピストンロッド32がシリンダ20内で前記垂直軸心線CL上に配置される。ここで、ダイヤフラム10のローリング部10と往復動部材30のピストン31との嵌合は、ダイヤフラム10と往復動部材30を結合一体化するものではない。よって、メンテナンス時にダイヤフラム10のローリング部10と往復動部材30のピストン31の一方を固定した状態で他方に抜き方向の力が加えられると、両者は引き離されて分離される。
【0016】
さらに、突き合い接触するピストン31上側端面と端板部12下側表面の間は、ピストン31に設けられた複数の前記空気通路33によって駆動室60と連通されている。
【0017】
上記のようにポンプ1は、シリンダ20内がダイヤフラム10によって、薬液を吸入および吐出するポンプ室50と往復動部材30を収容する駆動室60とに仕切られ、往復動部材30がダイヤフラム10に突き合い接触されただけで結合はされていない。そして、ポンプ駆動時に駆動室60内の圧力P2が常にポンプ室50内の圧力P1よりも低く維持され(P2<P1)、かつその差圧P3(P1−P2)が常に所定圧以上に維持されて、ダイヤフラム10が往復動部材30の動きに合わせて作動されるように構成している。ここで、維持する差圧P3は、ポンプ駆動時に突き合い接触する端板部12下側表面とピストン31上側端面および突き合い接触するピストン31下側端面中心部とピストンロッド32上端面を引き離そうとする軸方向の力に打ち勝って確実に密着保持させることができる所定圧以上に設定される。この所定圧は、ポンプ性能やフッ素樹脂からなるダイヤフラム10のローリング部11の硬さなどを考慮すると、50KPa未満では、突き合い接触する各接触面が引き離されるおそれがあり、50KPa以上で引き離されるおそれがなく確実に密着保持させることができるので、50KPa以上に設定することが好ましい。
【0018】
また、駆動室60内の圧力P2を常にポンプ室50内の圧力P1よりも低く維持し、かつその差圧P3を常に所定圧(50KPa)以上に維持する場合、ポンプ室50側に正圧を加えるか、駆動室60側を負圧にするが、図1には、駆動室60に連通するシリンダ30の通気口27に接続し、駆動室60を負圧にする真空ポンプ、真空発生器などの差圧形成手段70を示している。この場合、駆動室60内の圧力P2を、ポンプ室50内の圧力P1の変動に応じて差圧P3が変動しても所定圧未満に下がらないような設定圧(負圧)に一定に維持しても、駆動室60内の圧力P2を、ポンプ室50内の圧力P1変動に応じて自動調整し、差圧P3を所定圧以上の設定圧に一定に維持してもよい。
【0019】
一方、ポンプ室50側に正圧を加える図示しない差圧形成手段は、シリンダ20の吸入口25に接続される吸入側逆止弁の上流側に設置する薬液加圧用のポンプと、シリンダ20の吐出口26に接続される吐出側逆止弁の上流側または下流側に設置するポンプ室圧力保持用の絞り弁とで構成することができる。
【0020】
なお、非常に大きな差圧P3を必要とする場合、駆動室60を負圧にする差圧形成手段70とポンプ室50側に正圧を加える差圧形成手段との併用を妨げない。
【0021】
前記ポンプ1では、ダイヤフラム10以外の接液部であるシリンダ20のヘッドカバー22もダイヤフラム10と同様にPTFE等のフッ素樹脂で形成されて耐薬品性が付与されていることが好ましい。
【0022】
次に、上記のように構成されたポンプ1の動作を図1を参照して説明する。
【0023】
図1に示すポンプ1は、引きタイプのダイヤフラム10を組み込んであるため、ポンプ駆動源40を作動させて駆動すると、ピストンロッド32の上下往復駆動が下向きの復動から開始される。そして、ポンプ駆動時に差圧形成手段70によって、駆動室60内の圧力P2が常にポンプ室50内の圧力P1よりも低く維持され、かつその差圧P3が常に所定圧以上に維持され、ピストンロッド32上端面に対しピストン31下側端面中心部が密着(吸着)保持され、かつピストン31上側端面に対しダイヤフラム10の端板部12下側表面が密着(吸着)保持されているので、ピストンロッド32が復動すると、ピストン31とダイヤフラムの端板部12がピストンロッド32の復動に追従して下向きに復動する。つまり往復動部材30とダイヤフラム10の端板部12が一体的に下向きに復動する。この吸入工程において、ダイヤフラム10のローリング部11は、内周部11bの軸方向長さが短くなり、外周部11cの軸方向長さが長くなり、シリンダパイプ21の内周面とピストン31の外周面との隙間で折返し部11aが下向き変位しながらローリングし、これに伴って、ポンプ室50の容積が拡大し、その過程でポンプ室50に液体タンク内の薬液が吸入される。
【0024】
また、ピストンロッド32が上向きに往動すると、ピストンロッド32上端面でピストン31下側端面中心部が下側から押し上げられ、同時にピストン31上側端面でダイヤフラム10の端板部12下側表面が下側から押し上げられ、ピストンロッド32上端面とピストン31下側端面中心部およびピストン31上側端面とダイヤフラム10の端板部12下側表面が密着保持された状態で、ピストン31とダイヤフラム10の端板部12がピストンロッド32の往動に追従して上向きに往動する。つまり往復動部材30とダイヤフラム10の端板部12が一体的に上向きに往動する。この吐出工程において、ダイヤフラム10のローリング部11は、内周部11bの軸方向長さが長くなり、外周部11cの軸方向長さが短くなり、シリンダパイプ21の内周面とピストン31の外周面との隙間で折返し部11aが上向き変位しながらローリングし、これに伴って、ポンプ室50の容積が縮小し、その過程でポンプ室50内の液体が吐出されて薬液供給部に供給される。
【0025】
このように、ダイヤフラム10が往復動部材30の動きに合わせて作動されることにより、薬液供給部に液体タンク内の液体が定量、かつ定流量で供給される。
【0026】
そして、ポンプ1は、上記のようにダイヤフラム10を往復動部材30の動きに合わせて作動させて、液体を定量、かつ定流量で供給するに当たり、ダイヤフラム10と往復動部材30を締結により結合したり、その他嵌合により結合していないので、そのような結合により生じるダイヤフラム10と往復動部材30のセンターずれが無くなり、そのセンターずれに伴って生じるローリング部11の折返し部11aへの応力集中および往復動部材30と同一軸心線上に配置されたパッキン28の偏磨耗が解消されるため、ポンプ寿命が向上する。また、ポンプ1の組立性、メンテナンス性、応答性も向上する。さらに、ダイヤフラム10と往復動部材30の接触を保つスプリングなど、シリンダ20内に組み込む付勢部材が不要になるので、ポンプ1の組立性は非常に良くなる。
【0027】
また、突き合い接触するピストン31上側端面とダイヤフラム10の端板部12下側表面間がピストン31に設けられた前記空気通路33によって直接駆動室60に連通されているので、ポンプ1駆動時、駆動室60内の圧力P2とポンプ室50内の圧力P1の差圧P3によってピストン31上側端面とダイヤフラム10の端板部12下側表面をより確実に密着保持させて、ダイヤフラム10を往復動部材30の動きに合わせてより確実に作動させることができ、ポンプの応答性能、定量性能、定流量性能などをより確実に発揮させることができると共に、ポンプ1組立時に前記空気通路33からピストン31とダイヤフラム10間の空気を抜きながら、ピストン31とダイヤフラム10とを、ダイヤフラム10のローリング部11に過負荷を生じることなくスムーズに嵌合させ、ピストン31上側端面とダイヤフラム10の端板部12下側表面とを突き合い接触させることができ、ダイヤフラム10の損傷を防止しながら、ポンプ1の組立性をより向上させることができるようになっている。
【0028】
以上、本実施の形態は本発明の好適な一実施の形態を示したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変更実施することができる。
【0029】
例えば、本実施の形態では縦型のダイヤフラムポンプ1を示したが、本発明はシリンダ20の軸心線が水平で、この水平軸心線上にダイヤフラム10、往復動部材30が配置された横型のダイヤフラムポンプにも好適に実施することができる。また、本実施の形態では引きタイプのローリングダイヤフラム10を用いたダイヤフラムポンプ1を示したが、本発明は外周部11cの軸方向長さが内周部11bの軸方向長さより長い初期形状(ポンプ組立時の形状)にローリング部11を形成した押しタイプ(ポンプ動作を吐出工程から開始するタイプ)のローリングダイヤフラムを用いたダイヤフラムポンプにも好適に実施することができる。
【0030】
さらに、本実施の形態ではピストン31とピストンロッド32からなる2ピース構造で、ピストン31の下側端面にピストンロッド32の上端部を嵌め込む位置決め用の円形凹部34を設ける往復駆動部材30を用いたダイヤフラムポンプ1を示したが、本発明は、図2(A)に示すように、ピストン31とピストンロッド32からなる2ピース構造で、ピストン31の下側端面中心部に小さな円柱状の位置決め用突起31Aを設けると共に、ピストンロッド32の上端面中心部に前記突起31Aを上側から嵌め込む位置決め用円形凹部34Aを設ける往復駆動部材30A、つまり図1に示した往復駆動部材30とはピストン31とピストンロッド32との嵌合部の凹凸を逆にした往復駆動部材30Aを用いたダイヤフラムポンプにも好適に実施することができる。また、本発明は、図2(B)に示すように、ピストン31とピストンロッド32を一体に形成する1ピース構造の往復駆動部材30Bを用いたダイヤフラムポンプにも好適に実施することができる。
【0031】
この他、本発明は、本実施の形態とは供給する液体や用いるダイヤフラムの材質や形態が異なるダイヤフラムポンプにも好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態に係るポンプの断面図である。
【図2】図1のA部の変形構造を示す部分図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ポンプ
10 ダイヤフラム
11 ローリング部
11a 折返し部
11b 外周部
11c 内周部
12 端板部
13 フランジ部
20 シリンダ
30 往復動部材
31 ピストン
32 ピストンロッド
33 空気通路
50 ポンプ室
60 駆動室
70 差圧形成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内がダイヤフラムによって、液体を吸入および吐出するポンプ室と往復動部材を収容する駆動室とに仕切られているポンプであって、往復駆動部材がダイヤフラムに略90度の角度で離反可能に接触され、駆動室内の圧力が常にポンプ室内の圧力よりも低く維持され、かつその差圧が常に所定圧以上に維持されて、ダイヤフラムが往復動部材の動きに合わせて作動されることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
ダイヤフラムがフッ素樹脂で形成され、ダイヤフラムの円筒状外周部が可撓性を有し、該外周部が折返し部を経て該外周部の開放端部にフランジ部を有し、フランジ部がシリンダに取り付けられ、往復動部材が円柱状に形成され、往復駆動部材がダイヤフラムの閉鎖端部に略90度の角度で離反可能に接触され、ダイヤフラムの外周部が往復動部材の外周面とシリンダの内周面に密着しながら該2面の隙間でローリングされる請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
往復動部材が該往復動部材とダイヤフラムの相互接触面間を駆動室に連通させる通路を有している請求項1または請求項2に記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−106674(P2010−106674A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276711(P2008−276711)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】