説明

ポンプ

【課題】排出部とポンプ室の連通に伴う層流の乱れを軽減して、ポンプ効率の低下を抑制すると共に騒音を低減したポンプを提供する。
【解決手段】この課題を解決するために、ポンプを、モータと、前記モータによって回転されて流体を流動させる羽根車11と、前記羽根車11を内部に収納したポンプ室2と、前記ポンプ室2内に外部から流体を吸入する吸入部24と、前記ポンプ室2内から外部に流体を吐出する吐出部25と、前記ポンプ室2内の流体を外部に排出する排出部30と、を備えると共に、前記ポンプ室2が渦巻状の周面26からなるボリュート構造3を前記羽根車11の外周側に有し、前記排出部30が前記ボリュート構造3より外周に位置して、前記排出部30と前記ボリュート構造3の間に、前記ポンプ室2と前記排出部30を連通させる連通路31と、前記周面26に沿って壁面33を有した壁32と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ、殊に、ボリュート構造を有したポンプにおけるポンプ室の流体排出構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体を流動させる羽根車と、羽根車を収容したポンプ室と、羽根車を回転させるモータと、を備えて、羽根車の回転に伴う遠心力で流体を流動させる遠心式のポンプがある。該遠心式のポンプは、流体に増圧効果を与える渦巻形状のボリュート構造をポンプ室の羽根車の外周側に備えると共に、ポンプ室内の流体を排出してポンプ内への流体残留を抑制する排出部と、を備えたもの等がある(特許文献1等参照)。そのため、該ポンプは、モータを停止させた際等の吐出部からの流体吐出を行わないポンプの非駆動時に、ポンプ室内等に残った流体が排出部を介して外部に排出されて、ポンプ室内への流体残留が抑制されている。
【0003】
また、このような遠心式のポンプでは、図6に示すように、羽根車回転時に、流体がボリュート構造72の周面73に沿って流れて、層流77となることで、流体に増圧効果を与えている。そして、排出部74はボリュート構造72の渦巻形状の周面73を切り欠いた開口部75を有しており、排出部74は該開口部75を介してポンプ室71内に連通して、ポンプ室71内の流体を外部へ排出している。そのため、従来の遠心式のポンプは、開口部75によって、ボリュート構造72が周面73の一部(開口部75の位置)に外周側へ凹んだ段差76を有した形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−200427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボリュート構造74に段差76を生じたことで、羽根車回転時に、流体の一部が開口部75から排出部74(段差76)内に流れ込みながら流動する等で、段差76の位置で層流77に渦78を生じて、層流77が大きく乱れることがある。そして、渦78を生じて層流77が大きく乱れると、ボリュート構造74による増圧効果を流体に与え難くなり、ポンプ効率が低下することがあると共に、層流77の乱れや渦78の発生に伴い騒音を生じることがある。
【0006】
そこで、この事情を鑑み、排出部の形成による層流の乱れを軽減して、ポンプ効率の低下を抑制すると共に騒音を低減したポンプを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のポンプは、モータと、前記モータによって回転されて流体を流動させる羽根車と、前記羽根車を内部に収納したポンプ室と、前記ポンプ室内に外部から流体を吸入する吸入部と、前記ポンプ室内から外部に流体を吐出する吐出部と、前記ポンプ室内の流体を外部に排出する排出部と、を備えると共に、前記ポンプ室が渦巻状の周面からなるボリュート構造を前記羽根車の外周側に有し、前記排出部が前記ボリュート構造より外周に位置して、前記排出部と前記ボリュート構造の間に、放射状に形成され前記ポンプ室と前記排出部を連通させる連通路と、前記周面に沿って壁面を有した壁と、を設けたものであることを特徴とする。
【0008】
このポンプとして、前記壁に前記連通路となるメッシュ部或いはスリットを設けたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
このような構成としたことで、排出部とポンプ室の連通に伴う層流の乱れを軽減して、ポンプ効率の低下を抑制することができると共に、騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態の一例のポンプの軸方向に切断した断面図である。
【図2】(a)がボリュート構造の平面図であり、(b)がA領域の拡大図である。
【図3】(a)が軸方向に切断したケーシングの斜視図であり、(b)がB領域の拡大図である。
【図4】(a)が他例のボリュート構造の斜視図であり、(b)がC領域の拡大図である。
【図5】揚水量の増減に伴う全揚程の変化への排出部の影響の説明図である。
【図6】(a)が従来例のボリュート構造の平面図であり、(b)がD領域の拡大図であり、(c)がD領域の軸方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を例示して説明する。
【0012】
実施形態の一例のポンプ1は、図1に示すように、駆動源であるモータと、該モータに駆動される羽根車11と、で構成されると共に、羽根車11が配置され液体の流動するポンプ室2と、ポンプ室2内の液体から隔離されたモータ部4と、に区画されている。ポンプ室2はケーシングによって外殻が形成されると共に、羽根車11の外周側にボリュート構造3を有している。
【0013】
そして、ケーシングは、ポンプ室2に外部の流体を吸入する吸入部24と、ポンプ室2内の流体を外部に吐出する吐出部25と、吐出部25と異なる経路でポンプ室2内の流体を排出して流体残留を抑制する排出部30と、を備えている。更に、ケーシングは、図3に示すように、ポンプ室2の外殻を形成するポンプケース21と、ポンプ室2とモータ部4を区画する分離板16と、からなる。
【0014】
詳しくは、モータが、図1に示すように、コイルを有した環状のステータ5と、モータ駆動を制御する制御部6と、複数の磁極を有した円筒状のロータ7と、ロータ7を回転自在で支持した略円柱状の支持軸8と、を備えている。ステータ5及び制御部6はモータ部4内に配置されており、ロータ7及び支持軸8はポンプ室2内に配置されている。
【0015】
そして、制御部6はステータ5のコイルに流れる電流を制御することで、モータ駆動を制御しており、ステータ5は制御部6に通電制御されることで、ロータ7を磁気回転させている。更に、制御部6及びステータ5はモータ部4内に充填されたモールド材9を介して分離板16に固定されている。該モールド材9はステータ5や制御部6等のモータ部4内の部材を外部の水分や埃等の付着から保護すると共に、モータ部4の外殻を形成している。
【0016】
一方、ロータ7及び支持軸8は、図1に示すように、ステータ5と略同芯でステータ5の内周側に配置されており、支持軸8がロータ7の内周に配置されると共に、ロータ7とステータ5のラジアル方向の間に分離板16が介在している。以下、特に規定しない限り、ロータ7や支持軸8の軸芯の軸方向を単に軸方向と記載し、ロータ7のラジアル方向と周方向を夫々単にラジアル方向と周方向と記載し、軸方向に視た形状を平面視の形状と記載する。
【0017】
上記ロータ7は周方向に並んだ複数のマグネット(磁極)を有すると共に、軸方向の一端に羽根車11が略同芯で且つ一体で設けられており、ロータ7は羽根車11を伴って回転するものとなっている。羽根車11は、ロータ7の軸方向の一端から外周に延設された環状の回転板12と、回転板12と略同芯で且つ対向して配置されたシュラウド14と、回転板12とシュラウド14の軸方向の間に配置された複数の羽根部13と、からなる。そして、羽根部13は回転板12及びシュラウド14の間に放射状に設けられており、回転板12とシュラウド14の間が羽根車11の流路となっている。
【0018】
そのため、羽根車11はロータ7と共に回転することで、遠心力によって羽根車11の内周側に位置する流体を上記羽根車11の流路を介して外周側に流動させると共に、回転力によって外周側に位置する流体を周方向に流動させるものとなっている。
【0019】
また、分離板16は、図3に示すように、円形状の底部18を一端に備えた有底の円筒部17と、円筒部17の他端から外周に延設されたフランジ部19と、からなる。そして、円筒部17は、図1に示すように、ロータ7とステータ5のラジアル方向の間に周面が位置しており、円筒部17の内側の空間がロータ7を収容するロータ収容空間となっている。更に、底部18はロータ収容空間側の面に支持軸8の一端を固定保持する軸支持部を備えている。
【0020】
フランジ部19は一方の端面がステータ5の軸方向の端部に対向しており、該一方の端面側がモータ部4側の端面となっている。そして、他方の端面が羽根車11の回転板12に対向しており、該他方の端面がポンプ室2側の端面となっている。更に、フランジ部19はポンプ室2側の端面に羽根車11と略同芯の平面視略環状でポンプケース21側に突出した段部20を備えており、段部20は内径が羽根車11より大径となっている。
【0021】
また、ポンプケース21はフランジ部19のポンプ室2側の端面及び段部20と共に、図2に示すように、羽根車11を収容した平面視円形状の羽根車収容空間と、流体に増圧効果を与える平面視渦巻形状のボリュート構造3と、をポンプ室内に形成している。
【0022】
ポンプケース21の羽根車収容空間を形成する部位は、フランジ部19のポンプ室2側の端面に対向した平面視略円形状の平面を有した天面部22と、天面部22の外周端から軸方向に延設された側面部23と、からなる。
【0023】
そして、天面部22は円の中心に、吸入部24と連通する連通孔と、支持軸8の一端を固定する軸支持部と、を備えており、吸入部24は、図1や図3に示すように、内側に流路を有した管状で、軸方向に沿って外部に突出している。該吸入部24は、図1や図2に示すように、一端が天面部22の連通孔に連通して、他端が配管等の外部の上流流路(特に図示しない)に連通しており、上流流路からポンプ室2内へ流体を導入している。
【0024】
側面部23は内径が段部20の内径と略同寸となっており、側面部23と段部20は羽根車収容空間の円周面を形成している。そして、側面部23は段部20との軸方向の間にボリュート構造3が位置している。
【0025】
ボリュート構造3は羽根車収容空間と略同芯で羽根車収容空間の円周面からラジアル方向に凹んだ平面視渦巻形状の凹所からなり、凹所は羽根車11の回転方向RDに沿って前方側程漸次的に大径となる周面26を底部として備えている。そして、凹所は、羽根車収容空間の羽根部11の外周側に、周面26に沿った渦巻形状の空間を形成しており、ボリュート構造3は周面26に沿って流体が流れることで、流体に増圧効果を与えている。
【0026】
更に、周面26の軸方向のフランジ部19側の端部は、段部20の軸方向の端部(突出方向の先端)との間に、互いが接触しない程度の微小なギャップ34(隙間)を周面26の略全周に亘って有している。
【0027】
該ギャップ34は軸方向に沿った位置が羽根車11の羽根部13よりモータ部4側に近い位置に形成されると共に、内部にポンプ室2内の流体の一部が流れ込んでいる。そして、ギャップ34の外周にはポンプケース21と分離板16の軸方向の間を封止するシール部29が設けられており、シール部29はギャップ34に流入した流体の外部への漏れを抑制している。該シール部29は、例えば、Oリング等の弾性体からなるシール部材をフランジ部19とポンプケース21の軸方向の間に圧縮して配置したものとなっている。
【0028】
また、ポンプケース21は、ポンプ室2内の流体を外部に排出する排出部30を、ボリュート構造3より外周に備えており、排出部30は軸方向においてシール部29の一部に並んで位置しており、シール部29とギャップ34の間の流体が流れ込んでいる。そして、排出部30は、図1や図3に示すように、軸方向に沿って軸芯を有した有底筒状のものとなっており、排出部30は筒の一端側である開口側が外殻から軸方向に突出すると共に、外部の排出管等の排出流路(特に図示しない)に連通している。
【0029】
更に、排出部30とボリュート構造3のラジアル方向の間には、図1に示すように、壁32が設けられており、壁32は、図2に示すように、ポンプ室2内側(軸芯側)を向く壁面33がボリュート構造3を模した(周面26に沿った)形状となっている。そのため、壁面33は周面26に略面一で滑らかに連続して、該周面26の一部となっており、ボリュート構造3の渦巻形状の空間は周方向に段差の無いものとなっている。
【0030】
また、壁32は、図1や図3に示すように、軸方向のフランジ部19側の端部が周面26のフランジ部19側の端部と周方向に沿って略面一で連続しており、壁32と段部20の軸方向の間にもギャップ34を有している。そして、壁32と段部20の間のギャップ34はボリュート構造3(凹所)内と排出部30内を連通させる連通路31となっており、連通路31はラジアル方向に沿って放射状に形成されている。
【0031】
そのため、羽根車11から外周に流動された流体はボリュート構造3の周面26や壁面33に沿って流れると共に、流れる流体の一部が、図3の点線矢印に示すように、連通路31を介して排出部30内に流入するものとなっている。なお、ギャップ34(連通路31)の軸方向の寸法は、羽根車11回転時(層流50発生時)に流体が排出部30に流入し難く且つ回転方向RDに力の生じない羽根車11停止時(非駆動時)に排出部30へ流入する程度の微小な寸法のものが好ましい。
【0032】
そして、図1や図3に示す符号28はポンプケース21の外周端の軸方向の端部を略全周に亘ってフランジ部19の軸方向の端面に当接した当接部であり、ポンプ1組立時に段部20との間にギャップ34を確保する位置規定部を兼ねている。なお、当接部28を超音波溶着する等で封止して流体の漏れを抑制することで、当接部28がシール部29を兼ねたり、シール部29と当接部28で二重に漏れを抑制したりしたものであってもよい。
【0033】
また、図2に示すように、ポンプ室2はボリュート構造3の渦巻の最も大径となる部位がポンプ室2内の流路の下流端27となっており、ポンプ室2は該下流端27で吐出部25の一端に連通している。
【0034】
そして、吐出部25は内部に流路を有した管状で、他端側の部位がポンプ室2の外殻から外周側に突出している。更に、吐出部25は他端がポンプ室2内を配管等の外部の下流流路(特に図示しない)に連通しており、ボリュート構造3に沿って流れる流体を下流端27から下流流路へ導出している。
【0035】
また、図1に示すように、本例のポンプ1は、軸方向を略水平に位置すると共に、排出部30を最下方側に位置した姿勢で、構造体に設置されるものとなっている。詳しくは、壁32の壁面33がボリュート構造3(周面26)の最も下方側に位置する面となっており、排出部30がポンプ室2内の最下方側の外周に位置している。そのため、ポンプ室2内の流体は、吐出部25からの流体吐出を行わないポンプ1の非駆動時に、流体の自重で排出部30に流入されて外部に排出される構成となっている。
【0036】
このように、ボリュート構造3と排出部30のラジアル方向の間に、壁32を設けたことで、排出部30の設置に伴うボリュート構造3内のラジアル方向における段差の発生を回避、抑制することができる。そのため、羽根車11回転時に、段差(排出部30との連通)に伴う渦51が流体の流れ(層流50)に発生し難くなり、層流50の乱れが軽減されて、層流50の乱れに伴うポンプ効率の低下を抑制することができる。
【0037】
そして、壁32によって、羽根車11回転時の層流50の乱れを抑制したことで、層流50の乱れに伴う騒音の発生を抑制することができて、ポンプ1駆動時の騒音を低減することができる。
【0038】
更に、壁32の壁面33をボリュート構造3を模してポンプ室2の内面に沿った形状としたことで、ボリュート構造3の周面26と壁面33が略段差の無い滑らかに連続した面になり、壁面33がボリュート構造3を形成する面の一部となっている。そのため、ボリュート構造3の周面26と壁面33の間に段差が発生せず、壁32の設置に伴う層流50の乱れの発生を抑制することができる。
【0039】
また、壁32とフランジ部19の軸方向の間にギャップ34を有したことで、該ギャップ34がポンプ室2と排出部30を連通させる連通路31となり、ポンプ室2内の流体をギャップ34を介して排出部30に排出させることができる。
【0040】
そして、流体排出用のギャップ34と羽根部13の軸方向の高さ位置をずらしたことで、羽根車11回転時に、羽根車11の外周端から導出された流体が連通路31へ流入され難くなり、排出部30への流入に伴う渦51を発生し難くすることができる。
【0041】
更に、排出部30及び連通路31をポンプ室2内より下方側に配置される構成としたことで、ポンプ室2内の流体が流体排出用の動力を設けなくても外部に排出され易くなると共に、流体排出時に残留し難くなり、流体の排出性能を向上することができる。
【0042】
また、図4に示すように、壁32に複数のスリット42を設けることで、スリット42が連通路31となり、流体排出時の流体の排出効率を向上させることができる。なお、前述の例と略同様の構成は同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0043】
詳しくは、ボリュート構造3と排出部30のラジアル方向の間に壁32が設けられており、該壁32は、ボリュート構造3を模してポンプ室2の内面(周面26)に沿った壁面33を有すると共に、軸方向に切り欠かれた複数のスリット42を有している。
【0044】
そして、スリット42は壁面33を有した仕切り部41によって周方向に略等間隔に仕切られると共に、ポンプ室2内と排出部30を連通させる連通路31となっている。そのため、各スリット42を介してポンプ室2内から排出部30に流体が流入可能となっている。なお、スリット42の周方向の幅は仕切り部41の周方向の幅より狭い或いは略同じものとなっている。
【0045】
このように、スリット42を設けたことで、ポンプ室2内の流体は分離板16との間のギャップ34に加えて、スリット42からも排出部30に流れ込むため、排出部30への流入量を増加させることができる。そのため、流体排出時の排出効率が向上して、排出性能を向上させることができる。
【0046】
そして、羽根車11回転時に、ポンプ室2内の流体の一部がスリット42を介して排出部30に流入して渦51を生じるが、該渦51はスリット42毎に分散して発生するものとなっている。そのため、図6に示した壁32の無い従来のものに比べて、小さい(影響力の弱い)渦51となり、従来のものに比べて渦51が層流50に影響し難く、排出部30への流入量の増加に伴う層流50の乱れを軽減することができる。
【0047】
更に、複数のスリット42を仕切り部41で周方向に仕切って並べたことで、周方向(羽根車11の回転方向RD)に沿った渦51の成長を仕切り部41で阻害することができる。そのため、回転速度の上昇時等での渦51の回転方向RDに沿った成長や合体等の肥大化を抑えられて、層流50の乱れを抑制することができる。
【0048】
なお、複数のスリット42を設けたものに限らず、ラジアル方向に貫通した貫通孔を複数設けた格子状や網状等のメッシュ部を設けたものや、スリット42や貫通孔を一つだけ設けたものや、スリット42と貫通孔を組み合わせて設けたもの等であってもよい。もちろん、複数のスリット42や貫通孔の各配置間隔は、少なくとも夫々に生じる渦51が合体、成長しない程度に離れて位置したものであればよく、等間隔でなくてもよい。ましてや、スリット42やメッシュ部を設けたものでは、ポンプケース21と分離板16の軸方向の間にギャップ34の無いものであってもよい。
【0049】
また、図5は揚水量Qwの増減に伴う全揚程Htの変化を示したポンプ性能の曲線図であり、符号P1の曲線は壁32にメッシュ部を備えた図4に示す本例のポンプ1のものとなっている。そして、符号P2の曲線はボリュート構造3を有するが排出部の無い従来の遠心式のポンプのものである。符号P3の曲線はボリュート構造3と排出部73を有するが排出部73とボリュート構造の間に壁の無い図6に示す従来の遠心式のポンプのものである。以下、符号P1の曲線のポンプ1を本ポンプとし、符号P2の曲線のポンプを排出無ポンプとし、符号P3の曲線のポンプを壁無ポンプとして記載する。
【0050】
本ポンプは、揚水量Qwの増減に伴う全揚程Htの変化(曲線)が、排出無ポンプに近い変化を示している。そして、壁無ポンプは、他の二つのポンプに比べて、揚水量Qwの増加に伴って全揚程Htが著しく低下している。そのため、本ポンプのように連通路31の上流端33に壁32を設けることで、壁無ポンプに比べて、揚水量Qw増加時の全揚程Htの低下が抑制されることが判る。
【0051】
もちろん、図1に示したポンプ1も、図4に示した本ポンプと略同様の揚水量Qwの増減に伴う全揚程Htの変化(ポンプ性能)を示し、壁無ポンプに比べて、揚水量Qw増加時の全揚程Htの低下が抑制されている。
【0052】
なお、図1や図4に示したポンプ1における流体は、温水や冷水、湯水等の水に限らず、液体燃料や冷却液、気体溶解液等の液体や気液混合流体であってもよい。また、壁32は分離板16のフランジ部19から軸方向に突出して設けて、シュラウド14の外周側の側面23と周面26の間にギャップ34を形成したものや、壁面33にスリット42やメッシュ部を設けたもの等であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 ポンプ
2 ポンプ室
3 ボリュート構造
11 羽根車
22 吸入部
23 吐出部
26 周面
30 排出部
31 連通路
32 壁
33 壁面
42 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータによって回転されて流体を流動させる羽根車と、前記羽根車を内部に収納したポンプ室と、前記ポンプ室内に外部から流体を吸入する吸入部と、前記ポンプ室内から外部に流体を吐出する吐出部と、前記ポンプ室内の流体を外部に排出する排出部と、を備えると共に、前記ポンプ室が渦巻状の周面からなるボリュート構造を前記羽根車の外周側に有し、
前記排出部が前記ボリュート構造より外周に位置して、前記排出部と前記ボリュート構造の間に、放射状に形成され前記ポンプ室と前記排出部を連通させる連通路と、前記周面に沿って壁面を有した壁と、を設けたものであることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記壁に前記連通路となるメッシュ部或いはスリットを設けたものであることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−102636(P2012−102636A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250041(P2010−250041)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】