説明

ポンプ

【課題】圧送媒質中の不溶空気の割合が高い場合でも圧力の脈動等の問題を発生せず、圧送媒質中の発泡により圧送媒質の弾性が高い場合でも圧力補償が可能なポンプを提供すること。
【解決手段】 本発明は回転駆動ポンプエレメントが内設されたポンプチャンバと、ポンプチャンバに開口する少なくとも一個の吸込み接続部及び少なくとも一個の吐出し接続部と、ポンプエレメントの回転位置に応じて吸込み又は吐出し接続部と連結される容積可変の回転する送り出し隔室とを有するポンプに関する。吐出し接続部にある圧送媒質圧力が第1の接続部を介して送入さる油圧中間容積で、ポンプエレメントの回転位置に応じて吐出し接続部にある圧送媒質が第2の接続部を介して送入され、さもなければ、第2の接続部を介して、吐出し接続部と直結しない送り出し隔室と連結される前記油圧中間収容部が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動ポンプエレメントが内設されたポンプチャンバと、ポンプチャンバに接続する少なくとも一個の吸込み接続部及び少なくとも一個の吐出し接続部と、ポンプエレメントの回転位置に応じて吸込み又は吐出し接続部と連結される容積可変の循環する送り出し隔室とを有するポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ここで述べる種類のポンプは、例えばベーンポンプ及びローラポンプとして周知であり、これらのポンプにおいて送り出し隔室はポンプチャンバの隔壁と送り出し部材によって画定され、送り出し部材はベーン又はローラとして形成され、ポンプのロータをなす回転駆動ポンプエレメントに収容される。これらのポンプでは運転中に圧力の脈動が起こることが知られており、圧力の脈動は一方では送り出しの法則により、他方では吸込み接続部から吐出し接続部ヘ又は吐出し接続部から吸込み接続部へ送り出し隔室が移行するときの圧力補償過程により発生する。先行技術ではポンプチャンバの隔壁に形成され、及び/吸込み又は吐出し接続部と連通する小さな切欠きによって圧力補償過程を制御しようとした。切欠き付きのポンプのこのような構成が例えば独国特許第19626211号明細書で周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許第19626211号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがポンプのすべての応用例で圧力補償過程を十分に制御及び/又は調節できるとは限らないことが判明した。特に圧送媒質中の不溶空気の割合が高ければ、圧力補償過程に基づき圧力の脈動は、支配的な役割を果たす。特にこれは送り出し隔室が吸込み接続部から吐出し接続部へ移行するときに起こる圧力補償過程である。圧送媒質中の不溶空気量によって圧送媒質の弾性が増加する。この場合は送り出し隔室の圧送媒質を予圧して圧縮するために大きな体積流れが必要である。特に、このことはいわゆる予圧縮又は予備充填過程で問題を生じる。
【0005】
特にポンプ運転領域を超えて圧送媒質の発泡度、即ち圧送媒質中の不溶空気割合に大きな差異がある場合も問題が起こる。公知の切欠き付きポンプでは切欠きの設計に十分な妥協策を見出すことができない。従って特にポンプの運転状態の周波数極限域では圧力補償過程の制御を制限することを考慮に入れなければならない。その場合運転状態の周波数極限域は低い吐出し圧力と低い発泡度及び高い圧力と高い発泡度による。圧送媒質の発泡度が低ければ、同様な圧力勾配を得るのに、発泡が大きい場合よりも、圧力補償過程のための体積流れはより小さくて済む。切欠きを通って流れるときに生じる体積流れはまず第一に、生じる圧力差及び切欠きの断面積に依存する。圧送媒質の弾性が生み出す体積流れの依存性はそれほど重視されていないので、圧力補償過程で圧送媒質の発泡又は発泡度が考慮されない。
【0006】
そこで発明の課題は、これらの欠点がない冒頭に挙げた種類のポンプを示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、回転駆動ポンプエレメントが内設されたポンプチャンバを有するポンプによって解決される。またポンプはポンプチャンバに接続する少なくとも一個の吸込み接続部及び少なくとも一個の吐出し接続部を有する。さらにポンプは循環する容積可変の送り出し隔室を有し、この送り出し隔室はポンプエレメントの回転位置に応じて吸込み又は吐出し接続部と連結される。本発明に係るポンプは特に吐出し接続部にある圧送媒質が第1の接続部を介して圧送され、ポンプエレメントの回転位置に応じて吐出し接続部にある圧送媒質が第2の接続部を介して送入され、さもなければ、第2の接続部は吐出し接続部に直結しない送り出し隔室と連結される油圧中間収容部を特徴とする。中間収容部の2つの接続部が圧送媒質に接続されると、この中間収容部は充圧される。ところが中間収容部の第2の接続部が吐出し接続部に接続しない送り出し隔室と連結されたときは、中間収容部はこの送り出し隔室に放圧する。本発明のこの実施形態では中間収容部が若干の弾性を有することが好ましく、この弾性は一方では中間収容部の容積の大きさに、他方では圧送媒質自体の発泡度に依存する。つまり発泡度が低ければ中間収容部の蓄圧効果が小さく、発泡度が高ければ大きい訳である。このことは、発泡度が低ければ隔室内の圧送媒質を予圧するのに相応に小さな体積流れで済むという点で好都合である。この場合圧力補償過程は主として2つの接続部の直列接続の抵抗部の大きさで決まる。発泡度が大きければ相応に大きな体積流れが必要であり、それは高い発泡度での中間収容部の大きな蓄圧効果によってカバーされる。こうして発泡度が高ければ、圧力補償過程の初めに中間収容部は充填される送り出し隔室の方向へ圧力を放出し、圧力補償過程の期間に急速な圧力上昇を生じさせる。この補償過程が終了すると、作動圧力は充填される隔室と中間収容部どちらにも充圧しなければならない。その結果、送り出し隔室の圧力上昇が全体としてなだらかになる。このなだらかな圧力上昇は有利であり、望ましいものである。油中の不溶空気分が大きければ、低い圧力で弾性が高く、高い圧力で低いからである。即ち弾性曲線が著しく累進的である。充填される送り出し隔室の圧力が低ければ大きな体積流れが必要であり、それは中間収容部を減圧又は放圧することによって供給され、また充填される隔室の圧力が高ければ小さな体積流れが必要であり、それは中間収容部と隔室に充圧することによって供給される。
【0008】
好ましい実施例によれば中間収容部の第1の接続部は吐出し接続部と連結されている。即ち第1の接続部はポンプチャンバ側の吐出し接続部に直結される。この場合吐出し接続部と中間収容部の間に極めて長い接続連絡路は必要ないので、中間収容部を吐出し接続部の直近に配設することが好ましい。
【0009】
発明の別の実施形態では中間収容部の第2の接続部がポンプチャンバの隔壁に開口し、送り出し隔室を画定する送り出し部材によって摺接されるように構成されている。このようにして中間収容部の充圧及び放圧過程の制御を特に簡単に行うことができる。こうしてポンプエレメントの回転に基づいて中間収容部の充圧と放圧が保証される。従って補助制御要素をなして済ますことができるという特別の利点がある。第2の接続部がポンプチャンバの隔壁に開口し、好ましい実施形態では中間収容部の第1の接続部が吐出し接続部に直結されることによって、送り出し部材が接続部の開口部の上を摺動して通過し、第2の接続部の開口部が送り出し部材により開閉されるだけで充圧又は放圧過程の制御が簡単に行われる。即ち2つの接続部が圧送媒質圧力に接続され、さもなければ、第1の接続部に圧送媒質圧力が送られ、第2の接続部が充填される送り出し隔室と連結されるのである。こうして全体として制御を極めて簡単に、しかも確実行うことができる特に簡単な設計が、結果として得られる。
【0010】
好ましい実施形態では中間収容部が送り出し隔室の約2倍の容積を有する。容積の変化によって中間収容部の前述の弾性を調整することができる結果として、中間収容部の蓄圧効果を現在の発泡度に合わせて調整することができる。
【0011】
中間収容部の第1及び/又は第2の接続部に油圧抵抗部がある実施例が特に好ましい。このことは、圧送媒質の発泡度が低い場合に有利な結果を生む。その場合は圧力補償過程が主として中間収容部と好ましくは直列接続された抵抗部の大きさできまる。このような発泡度では中間収容部自体の効果はむしろ小さい。
【0012】
一実施例では中間収容部が少なくとも二個の部分収容部からなり、特に好ましい実施形態ではこれらの部分収容部が直列に接続された構成とすることができる。2つの部分収容部の間に油圧抵抗部を配設することができる。そこで好ましい実施形態では部分収容部の直列接続部、及び部分収容部、油圧抵抗部からなる。
また第1及び/又は第2の接続部に油圧抵抗部があれば、これらの接続部と油圧抵抗部を直列に接続して、全体として油圧抵抗部と部分収容部の直列接続が生じるようにすることが好ましい。
【0013】
好ましい実施形態では中間収容部がポンプケーシングの中に形成されている。
代案として又は補足的に中間収容部をポンプチャンバから外れたポンプチャンバ隔壁に配設することもできる。もちろん組み合わせの可能性も考えられる。但し中間収容部がポンプケーシングの中にある限り、ポンプチャンバに極めて近接して配設されるから、中間収容部のための長い接続路が回避される。
【0014】
ポンプの好ましい実施例は、ポンプチャンバがカムリングとカムリングの端面側にある少なくとも一個の圧力板で形成され、及び/又はポンプケーシングによって画定されることを特徴とする。その場合好ましい実施形態では圧力板の一つに油圧抵抗部があり、ポンプケーシング内に中間収容部がある。こうして小さな横断面の簡単な貫通穴によって油圧抵抗部を実現することができ、この貫通穴は同時に中間収容部の第1及び第2の接続部を形成する。その場合圧力板の背後に空欠部としての中間収容部があり、空欠部は圧力板によって覆われ、圧力板の貫通穴と連通する。こうして中間収容部及び/又は少なくとも一個の油圧抵抗部が圧力板の一つ及び/又はカムリング及び/又はポンプケーシングにある。
【0015】
好ましい実施形態では油圧抵抗部がポンプエレメントに隣接する隔壁と、この隔壁の反対側のポンプチャンバの隔壁(外壁)との間にある。こうしてとりわけ段状の貫通穴によって油圧抵抗部を簡単に作ることができる。
【0016】
上記の実施形態で漏れを回避するために、圧送媒質が圧力板とポンプケーシングの面の間から流出しないように、油圧抵抗部と中間収容部の接合部を密封すること即ち接合部を他の圧力領域に対して密封することが好ましい。
【0017】
ポンプチャンバの隔壁に開口する中間収容部の第2の接続部が円形横断面を有する実施例が好ましい。このような貫通穴は穴あけ、押抜き又は侵食によって特に簡単に作製することができ、その場合切粉が発生しない材料削除法が好ましい。
【0018】
一実施例では第2の接続部の開口区域が円形になっている。しかし別の実施例ではポンプチャンバ隔壁のこの開口区域が少なくとも区域的に拡張された構成とすることができる。こうして例えばポンプチャンバ隔壁の切欠きからなる開口断面拡張部を設けることができる。さらに充填される隔室に流入する体積流れを切欠きによって調節することができる。また切欠きは一定の又は変化する横断面を有することができる。充填される隔室に流入する体積流れをこうしてポンプエレメントの回転位置に応じて調節することができる。また横断面がロータの回転方向と逆向きに減少する切欠きを使用すれば、ゆるやかに増加する体積流れを供給することができる。これは特に発泡度が低い場合に好都合である。
【0019】
もちろんポンプは複数個の吸込み及び吐出し接続部を備えることができる。こうして多行程ポンプを構成することができる。その場合吐出し接続部の数に従って中間収容部が形成される。このように各吐出し接続部ごとに中間収容部を設けることが好ましい。
【0020】
特に本発明に係るポンプは、送り出し部材がとりわけベーン又はローラからなるベーンポンプ又はローラポンプであることが好ましい。特に自動変速機では発泡度が著しく異なるオイルが存在するから、このポンプを自動変速機で変速手段又は油圧制御素子への作動用の媒質の供給のために使用することが特に好ましい。
【0021】
ポンプの一実施例では独国特許第19900927号明細書に記載されているように、圧力板の一つがスペーサによりポンプケーシングに支えられる。
【0022】
また吐出し接続部及び/又は吸込み接続部が開口拡張部を有し、圧力補償過程が中間収容部によっても切欠きによっても制御される実施例が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は、本発明の1実施形態のポンプのポンプチャンバを開いたポンプの図であり、(b)は、(a)にXで示した細部の拡大部分図である。
【図2】図1の(a)のII−II線に沿った図1の(a)のポンプの横断面図である。
【図3】図1のポンプの「展開した」ロータの部分的な概要図である。
【図4】先行技術によるポンプ及び本発明のポンプの種々の圧力曲線の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に図面を参照して実施形態に基づき発明を詳述する。
【0025】
以下ではベーンポンプとして設計されたポンプ1を図1及び2に基づいて説明する。図1の(a)には図2の切断線I−Iに沿って、ケーシングを開いたポンプ1が示されている。ポンプ1はポンプケーシング2を有する。ポンプケーシング2は複数の部品から、特に2つの部品から形成することができ、−具体的な例としては−ケーシング本体3とケーシングカバー4がある。ケーシング本体3は凹陥部5を有し、ここにポンプ挿入物6が配設されている。ポンプ挿入物6はポンプチャンバ7及びポンプチャンバ7内に回転駆動可能に配設されたポンプエレメント8を有し、このポンプエレメント8はケーシング2に支承された駆動軸9によって駆動され、この駆動軸9はケーシング2及び/又はケーシングカバー4を貫通する。駆動軸9の一方の端部はポンプエレメント8と遊転不能に結合されている。ここに図示しない他方の端部では駆動トルクが駆動軸9に伝達される。
【0026】
ポンプチャンバ7はカムリング10とカムリング10の正面側にある2枚の圧力板11及び12によって画定される。しかしポンプチャンバ7をカムリング10、圧力板11又は12のいずれか一つ及びポンプケーシング2で画定することもできる。カムリング10の周囲にらせん形構造の吸込み室13が形成されており、ここに図示しない圧送媒質貯蔵容器と連結することができる。カムリング10と圧力板11又は12の少なくとも一つとの間に貫通穴14が形成されている。貫通穴14はポンプチャンバ7に開口し、こうして吸込み室13とポンプチャンバ7を連絡して吸込み接続部15を形成する。ポンプエレメント8によって圧送媒質が吸込み接続部15を経てポンプチャンバ7に送入され、搬送され、吐出し接続部16でポンプチャンバ7から排出される。このためにポンプエレメント8は回転駆動可能なロータ17を有する。ロータには半径方向に延びるスロット18が形成され、スロット18にそれぞれ一個の半径方向移動可能な羽根19が挿入されている。羽根19は−回転方向Dに見て−送り出し隔室21を画定する送り出し部材20をなす。送り出し隔室21の半径方向外側はカムリング10のすべり面22によって画定され、すべり面22に沿って送り出し部材20が摺動又は転動する。図2で見てもわかるように、送り出し隔室21の側面は圧力板11及び12によって画定される。カムリング10の貫通穴の横断面形状により送り出し隔室21は容積が変化する。ロータ17の回転とともに送り出し隔室21はポンプチャンバ7の中で回転するから、交互に吸込み接続部15及び吐出し接続部16と連結される。前述のように本例ではベーンポンプが示されている。しかしポンプ1をローラポンプとして構成することもできる。その場合は羽根19の代わりにロータ17の適当な凹陥部にあるころタイプの送り出し部材20が設けられる。
【0027】
吐出し接続部16は吐出し室23に開口し、この吐出し室23はケーシング2、特にケーシング本体3の中にあり、この場合は単なる一例として凹陥部5の一部からなり、圧力板11によって画定される。パッキン24によって吐出し室23が吸込み室13に対して密閉される。吐出し室23は負荷接続部25と連結されている。ここに図示しない負荷を負荷接続部25に接続可能となり、圧送媒質を圧送することができる。負荷は例えば自動変速機であり、このために特にケーシング2が自動変速機の内部へフランジ付けされているので、吐出し室と連結された負荷接続部25を経て自動変速機の負荷に供給する構成になっている。
【0028】
図示の実施例ではポンプ1が2行程ポンプとして構成されている。従ってポンプ1は二個の吐出し接続部16と二個の吸込み接続部15を有する。もちろん一個の吐出し接続部16と一個の吸込み接続部15を備えた1行程ポンプを構成することもできる。もちろんポンプチャンバが二個以上の吸込み及び吐出し接続部を有するポンプを実現することもできる。
【0029】
吐出し接続部16はポンプチャンバ7、とりわけ圧力板11及び/又は12に形成することができるいわゆる吐出しノズル26に開口する。吸込み接続部15は特に図1の(a)で示すように、いわゆる吸込みノズルに開口する。吸込みノズルにも吐出しノズルどちらにも開口拡張部27又は28を形成することができ、好ましくは、この開口拡張部を切欠きとして形成され、開口拡張部28に示すようにロータの回転方向に横断面が広がり、又は開口拡張部27に示すようにロータの回転方向に横断面が狭まるように形成することが好ましい。
【0030】
ポンプ1は少なくとも一個の油圧中間収容部29を備え、この中間収容部29はこうして圧送媒質を中間貯蔵し、再び放出することができる。圧送媒質の中間貯蔵のために、吐出し接続部16で働く圧送媒質の圧力をポンプエレメント8の回転位置に応じて中間収容部29に送ることができる。中間貯蔵された圧送媒質は別の回転位置で、吸込み接続部16にも吐出し接続部15にも直結しない送り出し隔室21へ放出される。中間収容部29の第1の接続部30と第2の接続部31が、吐出し接続部16と直結する送り出し隔室21の中にあるならば、中間収容部29が充圧される。図1の(a)では第1の接続部30が第1の送り出し隔室21’の中にあり、第2の接続部が第2の送り出し隔室21’’の中にあって、この送り出し隔室21’’が吸込み接続部15及び吐出し接続部16と直結しないロータ位置が示されている。2つの接続部30及び31はこのように−ロータ17の周方向に見て−互いに間隔をおいて配設されている。
【0031】
好ましい実施形態では図1の(a)及び(b)で示すように、中間収容部29の第1の接続部が吐出し接続部16と直結されている。中間収容部29の第2の接続部31はポンプチャンバの壁面Wに、即ち送り出し隔室21、21’、21”が摺接する、従ってロータ17側の壁面Wの区域に開口する。好ましい実施形態では第2の接続部31が圧力板12のロータ17側の面に開口する。もちろん中間収容部29の第2の接続部31がすべり面22に開口してもよい。このことはもちろん中間収容部29の第1の接続部30にも当てはまる。
【0032】
図2で明らかなように、中間収容部29はポンプ1のケーシング2、特にケーシングカバー4にあり、第1又は第2の接続部30、31は圧力板12に形成されている。圧送媒質が圧力板12とケーシングカバー4の接触面の間に入り込まないように、密封手段32が設けられており、この密封手段32は−図2に示すように−ケーシング2、特にケーシングカバー4又は圧力板12に形成することができる。
【0033】
接続部30及び31は圧力板12に貫通穴として形成されており、この貫通穴は円形横断面を有することが好ましい。貫通穴33又は34を段付き貫通穴として形成した実施例が好ましい。第1及び/又は第2の接続部の内部即ち貫通穴33又は34の内部に油圧抵抗部35又は36が形成されており、従ってこの油圧抵抗部35又は36は中間収容部29と直列である。一実施例により中間収容部29がポンプチャンバ7の壁面W’にあることも可能であり、その場合この壁面W’がポンプチャンバ7の外壁面をなすことは明らかである。また中間収容部29が圧力板11及び/又は12及び/又はカムリング10にあってもよい。もちろん−図示のように−ケーシング部材3及び/又は4にあることも可能である。同じことが油圧抵抗部並びに貫通穴33及び34にも当てはまる。図示の実施例では油圧抵抗部35及び36がポンプチャンバ7の壁面Wと外壁面W’の間にある。
【0034】
図3で明らかなように中間収容部29は互いに連結された複数の部分収容部37、38からなり、第1の部分収容部37は第1の接続部30と連結され、第2の部分収容部38は第2の接続部31と連結される。2つの部分収容部37及び38は互いに連結されており、その場合、それらの間に油圧抵抗部39を連結することが好ましい。こうして油圧抵抗部34、部分収容部37、油圧抵抗部39、部分収容部38及び油圧抵抗部35の直列接続が結果としてなる。中間収容部29の収容部は、送り出し隔室21のほぼ2倍の容積を有するように設計されている。部分収容部37、38を設けた場合は、中間収容部の容積が適当に分割される。部分収容部37、38の容積は等しいか又は異なる。さらに等しい又は異なる容積を持つ部分収容部の並列接続も考えられる。
【0035】
上記の実施例では中間収容部29がポンプケーシング2に形成されている。しかし圧力板12を適当に厚く設計すれば、接続部30及び31、油圧抵抗部35、36及び39並びに中間収容部29を圧力板12に形成することも考えられる。また中間収容部及び/又は油圧抵抗部をカムリング10に設けることも考えられる。
【0036】
第1及び第2の接続部30、31の開口区域は一実施例では円形である。しかし図1bの拡大図でたやすく分かるように、第2の接続部31の開口区域40を拡張することもできる。各開口区域40に例えば開口区域40からロータ17の回転方向と逆向きに延びる切欠きKを設けることができる。切欠きは一定の横断面を持つことができるが、ロータの回転方向に又はその反対側へ広がり又は狭まるように、開口区域40を拡張することも可能である。
【0037】
図4に中間収容部29のない公知のポンプ及び中間収容部29を有する本発明のポンプ1について、種々の圧力とポンプエレメントの回転角の関係を示す。線図の相互関係は次の説明で明らかである。
41 −−− 中間収容部のない公知のポンプの使用圧力
42 −・− 公知のポンプの送り出し隔室圧力
43 中間収容部29を有するポンプ1の使用圧力
44 −・・− 中間収容部29の圧力
45 −・・・− 中間収容部29を有するポンプ1の送り出し隔室圧力
【0038】
以下の考察はロータ17の回転角φ1て吸込み接続部15を介して充填された送り出し隔室に適用される。回転角φ1からはじまって送り出し隔室21は中間収容部29によって充圧される。そこで送り出し隔室圧力45が僅かに上昇し始める。中間収容部29は送り出し隔室21へ放圧するために、その圧力が低下する。
【0039】
公知のポンプの送り出し隔室の圧力曲線42と比較して、ポンプ1の送り出し隔室21のおだやかな圧力上昇が明らかである。特に圧送媒質の発泡度が高ければ、図4の回転角φ1からはじまってφ3までに示されるように、中間収容部29は充填された隔室の方向へ圧力放出する。ポンプエレメントがさらに回転すると、中間収容部29はこの期間に送り出し隔室21に早期の圧力上昇を生じさせる。回転角φ3から使用圧力が、充填される隔室と中間収容部29に再び充圧される。使用圧力は−前述のように−中間収容部29と充填される隔室からなる大きな容積を充圧しなければならないから、送り出し隔室21の圧力がゆるやかに上昇する。圧送媒質中の不溶空気の割合が高く、低い圧力で圧送媒質の弾性が大きく、高い圧力で弾性が小さい場合は、まさしくこの挙動が望ましい。即ち弾性曲線が著しく累進的に推移する。ポンプ1にはこの送り出し挙動が現われるから、充填される送り出し隔室21の圧力が低ければ大きな体積流れが隔室に到達する。これは中間収容部29が圧力放出することによって達成される。また充填される隔室の圧力が高ければ、充填される隔室に小さな体積流れが存在しなければならない。このことはやはり送り出し隔室21とともに中間収容部も充圧することによって達成される。このようにして中間収容部29を有するポンプ1では、使用状態スペクトルの極限域例えば低い圧力と低い発泡度及び高い圧力と高い発泡度に相当する使用状態も調整及び改善できることが明らかである。こうしてポンプ1の全回転数範囲にわたって有利な圧力曲線が成立する。
【0040】
図2はさらに圧力板12がスペーサ46により凹陥部5の底面Bから間隔をおいて支持されることを示す。スペーサ46はケーシング部材4又は圧力板12と一体に実現することができる。また別個の挿入部材であることも可能である。スペーサ46によって機械的ギャップ補償が実現される。その場合スペーサ46の内側の圧力板12の区域がロータ17の方向にたわみ、こうして漏れギャップを減少するのである。なお密封手段32の密封効果に影響はない。独国特許第19900927号明細書ではスペーサによる圧力板の支持とギャップ補償が詳しく説明されている。
【0041】
本願とともに提出した請求の範囲は、継続中の特許保護の先入見を含まない文言の提案である。出願人はこれまでもっぱら明細書及び/又は図面で開示されたその他の特徴の組合せも請求の範囲とすることを留保する。
【0042】
従属請求項で使用した帰属関係は、当該の従属請求項の特徴により主請求項の主題が別途に構成されることを示唆するものである。それは派生した従属請求項の特徴の組合せについて独立の具体的保護を得ることを放棄したものと解すべきでない。
【0043】
従属請求項の主題は先行技術に関して優先権日に独自かつ独立の発明をなすことができるから、出願人はこれを独立請求項の主題とし又は分割の言明を行うことを留保する。また従属請求項の主題は、先行する従属請求項の主題から独立の構成を有する独立の発明を含むことができる。
【0044】
実施例は発明の限定と解すべきでない。むしろこの開示の範囲内で多数の変更及び修正が可能である。特に例えばこれに関連して一般的説明、実施形態及び請求の範囲に記載され、図面に挙げられた個々の特徴又は要素又は方法段階の組合せ又は変更により、課題の解決策に関して当業者が察知することができ、かつ組合せ可能な特徴により新規な主題をもたらし、又は製造、試験及び作業方法について言えば新規な方法段階又は方法段階列をもたらすような変法、要素、組合せ及び/又は材料が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 ポンプ
7 ポンプチャンバ
8 ポンプエレメント
15 吸込み接続部
16 吐出し接続部
21 送り出し隔室
29 中間収容部
30 第1の接続部
31 第2の接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング本体(3)と、前記ケーシング本体の凹陥部(5)に嵌められたカムリング(10)と、前記カムリングが画成するポンプチャンバ(7)と、前記ポンプチャンバの内側に配置された回転駆動ポンプエレメント(8)と、前記ポンプチャンバに開口する少なくとも一個の吸込み接続部(15)及び少なくとも一個の吐出し接続部(16)と、前記ポンプエレメント(8)の回転位置に応じて前記吸込み接続部(15)又は前記吐出し接続部(16)と連結される容積可変の循環送り出し隔室(21)と、を有し、
第1の接続部(30)を前記吐出し接続部(16)における圧送媒質の圧力とすることにより加圧され、かつ、前記ポンプエレメント(8)の前記回転位置に応じて、第2の接続部(31)を前記吐出し接続部(16)における圧送媒質の圧力とすることにより加圧されるか又は前記吐出し接続部(16)に直結しない前記送り出し隔室(21)と連結される液圧中間収容部(29)を備えて、
前記液圧中間収容部(29)の前記第1の接続部(30)及び前記第2の接続部(31)に液圧抵抗(35,36)を設けたことを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記中間収容部(29)の前記第1の接続部(30)は、前記吐出し接続部(16)と連結されていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記中間収容部の前記第2の接続部(31)は、前記ポンプチャンバ(7)の壁面に開口し、かつ前記送り出し隔室(21)を画定する送り出し部材によって摺接されることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項4】
前記中間収容部(29)は、一つの送り出し隔室(21)のほぼ2倍の容積を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項5】
前記中間収容部(29)は、少なくとも二個の部分収容部(37,38)からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項6】
前記少なくとも二個の部分収容部(37,38)が直列に接続されていることを特徴とする請求項5に記載のポンプ。
【請求項7】
前記少なくとも二個の前記部分収容部(37,38)の間に液圧抵抗部があることを特徴とする請求項5又は6に記載のポンプ。
【請求項8】
前記ポンプチャンバ(7)は、カムリング(10)及び該カムリングの端面側にある少なくとも一つの圧力板(11,12)から形成され、及び/又はポンプケーシング(2)により画定されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項9】
前記中間収容部(29)は、前記ポンプチャンバに対面する壁面及び/又は前記ポンプチャンバから離れた壁面であって、前記カムリング(10)及び/又は前記圧力板(12)の壁面の一つに形成されたものであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項10】
前記液圧抵抗は、前記ポンプチャンバ(7)の内側にある壁面と、前記ポンプチャンバ(7)から離れた壁面との間にあることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項11】
前記圧力板(11,12)及び/又は前記カムリング(10)及び/又は前記ポンプケーシング(2)に液圧抵抗があり、前記ポンプケーシング及び/又は前記カムリング及び/又は前記圧力板に前記中間収容部(29)があることを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項12】
前記中間収容部(29)が他の圧力領域に対して密封されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項13】
前記ポンプチャンバの壁面に開口する前記中間収容部の前記第2の接続部は、円形横断面を有することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項14】
前記第2の接続部の開口区域が円形であることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項15】
前記第2の接続部の開口区域が少なくとも拡張されている区域であることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項16】
各吐出し接続部ごとにそれぞれ一個の中間収容部が形成された複数個の吸込み及び吐出し接続部を備えていることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項17】
ベーンポンプ又はローラポンプとして構成され、前記送り出し部材がベーン又はローラからなることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項18】
前記ポンプチャンバ(7)がカムリング(10)及び少なくとも一つの圧力板(11,12)から形成され、前記少なくとも一つの圧力板がスペーサ(46)を有したケーシングに支持されていることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項19】
前記吐出し接続部(16)及び/又は前記吸込み接続部(15)に開口拡張部が形成されていることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−50112(P2013−50112A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−267248(P2012−267248)
【出願日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【分割の表示】特願2002−502315(P2002−502315)の分割
【原出願日】平成13年6月1日(2001.6.1)
【出願人】(597092288)ルーク ファールツォイク−ヒドラウリク ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー (1)
【Fターム(参考)】