説明

マイクロカプセルを含む組成物を製造する方法及びそれにより製造される組成物

本発明の方法において、潤滑剤、油、香料、着色剤等などの少なくとも添加剤を含む複数のマイクロカプセルを分散性ポリマー材料と混合して最初のブレンドを形成させ、最初のブレンドを少なくともポリマー材料を含むベース中に370℃未満の温度で配合することにより、組成物を製造する。得られる組成物は、分離したマイクロカプセル及び熱分解したシェルを実質的に含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、マイクロカプセルを含む組成物及び/又は物品を製造する新規な方法、特に、それにより製造される改善された摩耗特性を有する潤滑性マイクロカプセルを含む自己潤滑性熱可塑性組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
マイクロカプセルは、多くの適用分野で広く使用されている。液体及び固体の例えば、接着剤、農薬、触媒、潤滑剤、生体細胞、香味料、香料、医薬品、ビタミン等の多数の物質がカプセル封入されている。シーリングエレメントのような耐摩耗適用分野、コンベア適用分野等向けの自己潤滑性組成物;抗菌性医療、衛生、家庭用品等向けの抗菌性樹脂組成物、例えば、注射びん用ゴム栓、ばんそうこう、マウスピース等の多くの適用分野向けの樹脂組成物が従来技術において開示されている。
【0003】
マイクロカプセルシェルは、有機ポリマーからワックスや脂肪(fats)までの多くの様々な物質を含む。マイクロカプセルがポリマー複合材料に用いられている適用分野において、マイクロカプセル、特に、尿素−ホルムアルデヒドコポリマー(PMU)をシェルとして含むマイクロカプセルの分解(break down)は、職業上及び健康上の害をもたらすホルムアルデヒドの放出をもたらす。
【0004】
従来技術は、潤滑剤を含むマイクロカプセルをポリマー複合材料中に最善の状態で導入することに対するアプローチについて言及していないか、又は特開平1−129067号公報におけるように「これらのマイクロカプセルは、ベース合成樹脂に添加し、分散させる時点の混合せん断力又は加工熱により分解(破壊)させるべきでない。したがって、壁材料(膜)になる高分子材料は、マイクロカプセルがベース合成樹脂の加工条件又は加工状態のもとで破壊されないように注意深く選択すべきである」のような注意を与えている。
【0005】
従来技術の実施において、マイクロカプセルは、次のうちの1つにより高温熱可塑性組成物中に導入される。すなわち、その後に射出成形が続く押出し、射出成形と組合せられたドライブレンド、及び、その後に圧縮成形が続く、マイクロカプセルとのポリマー顆粒のドライブレンド。従来技術の方法は、制御されない油の放出と煙の発生という結果を伴う、マイクロカプセルシェルの熱分解をもたらす。さらに、スプレー及び/又は焼けの跡が製造された物品に見られる。
【特許文献1】特開平1−129067号公報
【発明の開示】
【0006】
本発明は、マイクロカプセルの分離(segregation)及び/又はカプセル化シェルの熱分解(heat degradation)を避けるためのカプセル封入物質(encapsulated materials)を材料中に導入する改善された方法に関する。さらに、本発明の方法により製造される組成物は、一実施形態において、目に見えるスプレー/焼けの跡をほとんど又は全く有さない複雑な形状の物品を製造するために用いることができる。
【0007】
発明の概要
一態様において、本発明は、少なくとも1つの添加剤を含む複数のカプセル封入物質を分散性ポリマー物質(dispersing polymeric material)と混合して最初のブレンドを形成させ、最初のブレンドを少なくともポリマー物質を含むベース(base)中に370℃未満のプロセス温度で配合すること(compounding)により組成物を得るための方法に関するものであるが、得られる組成物は、分離したカプセル及び熱分解したシェルを実質的に含まない。
【0008】
一実施形態において、複数のマイクロカプセルを、ポリマーベースを形成する樹脂と同じである分散性ポリマー物質とドライブレンドする。他の実施形態において、複数のマイクロカプセルを、285℃未満の融点を有し、マスターバッチを形成する分散性ポリマー物質とドライブレンドし、この場合、分散性ポリマーがポリマーベースを形成する樹脂と異なり、最初のブレンドがマスターバッチである。
【0009】
他の態様において、本発明は、最初に複数のマイクロカプセルを少なくとも1つのキャリヤーポリマー樹脂(carrier polymeric resin)とドライブレンドし、マイクロカプセルとキャリヤーポリマーのドライブレンドを少なくとも1つの第2のポリマー樹脂と配合することにより形成されるポリマー組成物に関し、第2のポリマー樹脂がキャリヤーポリマー樹脂と同じ又は異なるが、得られる組成物は、分離したマイクロカプセル及び熱分解したシェルを実質的に含まない。
【0010】
本発明はさらに、最初に複数のマイクロカプセルを少なくとも1つのキャリヤーポリマー樹脂とドライブレンドし、マイクロカプセルとキャリヤーポリマーのドライブレンドを少なくとも1つの第2のポリマー樹脂と配合することにより形成されるポリマー組成物を含む物品(articles)に関し、第2のポリマー樹脂がキャリヤーポリマー樹脂と同じ又は異なるが、得られる組成物は、分離したマイクロカプセル及び熱分解したシェルを実質的に含まない。
【0011】
最後に、本発明は、複数のマイクロカプセルと最初のブレンドを形成する少なくともキャリヤーポリマー樹脂とを混合し、その後、1ppmの最大許容濃度未満のホルムアルデヒドの放出を伴う方法で最初のブレンドとポリマーマトリックス(polymeric matrix)とをメルトブレンドすること(melt−blending)により形成される自己潤滑ポリマー組成物(self−lubricating polymeric composition)を含む、自動車エンジンのピストン、コンベアベルト、タービン用シールアセンブリ、圧縮機用シールアセンブリ、シールエレメント等の、滑動適用分野(sliding applications)もしくは表面間のこすれ接触(rubbing contacts)を伴う適用分野用の部品(components)に関する。
【0012】
発明の詳細な説明
「a」及び「an」という語は、量の制限を意味するのではなく、言及した品目の少なくとも1つの存在を意味する。本明細書に開示するすべての範囲は、包含的(inclusive)であり、組合せ可能(combinable)である。さらに、本明細書に開示するすべての範囲は、終点を包含し、独立に組合せ可能である。
【0013】
本明細書では、関連する基本的機能の変化をもたらさずに変化し得る定量的表現を修飾するために、近似術語(approximating language)が用いられるであろう。したがって、「約」及び「実質的に」などの1つの用語又は複数の用語により修飾される値は、場合によって、特定される正確な値に限定されなくてよい。少なくともいくつかの例において、近似術語は、値を測定するための器具の精度に対応し得る。
【0014】
本明細書では、「マイクロカプセル(単数形)」又は「マイクロカプセル(複数形)」という用語は、マイクロカプセルに組み入れられる又は封入される、香料、薬剤、ビタミン、潤滑剤などの相変化物質(phase change materials)等から選択される少なくとも添加剤を有するマイクロ又はナノサイズのカプセルを意味する「カプセル」、「カプセル封入マイクロ粒子」、「マイクロ粒子」、「ナノカプセル」と同義で用いることができる。
【0015】
本明細書では、「相変化物質」という用語は、温度安定化範囲(temperature stabilizing range)で、又は範囲内で熱流を減少又は除去するために熱エネルギーを吸収又は放出する能力を有するあらゆる物質(又は物質の混合物)を含み得る。本発明の一実施形態において、マイクロカプセルは、少なくとも潤滑剤を含む。
【0016】
本明細書では、「分離したマイクロカプセル及び熱分解したシェルを実質的に含まない」という用語は、少量のマイクロカプセルのみが組成物を製造する工程において分解することを意味する。一実施形態において、配合されたマイクロカプセルの10%未満がその工程において分解する(破壊される/分解する)。一実施形態において、配合されたマイクロカプセルの5%未満がその工程において破壊される/分解する。第3の実施形態において、配合されたマイクロカプセルの5%未満が破壊される/分解する。第4の実施形態においては、3%未満である。
【0017】
マイクロカプセルの分解は、パルスNMR法(p−NMR)を用いることにより検出することができる。マイクロカプセルが破壊されるとき、潤滑剤がポリマーマトリックス中に放出され、その柔軟性を失い、ひいてはそのp−NMRシグナルを失う。
【0018】
マイクロカプセルのシェルがポリオキシメチレン尿素などの尿素ホルムアルデヒドコポリマー(PMU)を含む一実施形態において、本発明の方法により製造される組成物は、シェルの分解に起因して放出されるホルムアルデヒドの量が8時間時間加重平均(TWA)単位として0.75ppm未満であるというように、分離したマイクロカプセル及び熱分解したシェルを実質的に含まない。第2の実施形態において、TWAレベルは、米国国立労働安全衛生研究所(US National Institute for Occupational Safety and Health(NIOSA))による推奨限界である0.30ppm未満のホルムアルデヒド放出である。第3の実施形態において、その放出は、1ppmの最大許容濃度(MAC)未満である。
【0019】
本発明の方法により製造される組成物は、少なくとも1つのポリマーキャリヤー(polymeric carrier)、潤滑剤などの少なくとも添加剤を含む複数のマイクロカプセル、及びポリマーマトリックス物質としての少なくとも1つのポリマー樹脂を含む。キャリヤーポリマー(carrier polymer)は、マトリックス物質を含むポリマーと同じであるか、又は異なっていてもよい。
【0020】
添加剤を含むマイクロカプセル
本発明の方法において、マイクロカプセルは、1〜30重量%の最終重量含量を達成するようにポリマー組成物中に均一に分散している。第2の実施形態において、マイクロカプセルは、2〜25重量%の量で存在する。第3の実施形態において、マイクロカプセルは、3〜20重量%の最終量で存在する。第4の実施形態において、マイクロカプセルは、5〜15重量%の量で存在する。
【0021】
ポリマー組成物の最終末端用途及び/又はマイクロカプセル化技術によって、潤滑油を含有するためのシェルは、ワックス動物ワックス、植物ワックス又は石油ワックス;ゼラチン;ポリビニルアルコール;メチルセルロース;ポリビニルピロリドン;ポリテレフタルアミド;及びポリオキシメチレン尿素(PMU)などの他のポリマーから選択される物質を含んでいてよい。PMUは、マイクロカプセルの一般的に用いられているシェルである。
【0022】
マイクロカプセルは、同じ又は異なる形状又はサイズを有することができる。それらは、球体、楕円体、対称又は不規則形状のものであってよい。一実施形態において、マイクロカプセルは、約0.01〜約2000μmの範囲の最大直線寸法(例えば、直径)を有する。他の実施形態において、マイクロカプセルは、一般的に球形及び約0.5〜約500μmの範囲の最大直線寸法を有する。第3の実施形態において、直径は1〜約200μmである。第5の実施形態において、直径は約3〜100μmである。
【0023】
潤滑油などの添加剤を含むカプセルは、米国特許第5,112,541号、PCT特許公開番号WO9822549A1及びまた「Development of Micro and Nano−encapsulation Techniques」,Prof.Kiparissides of Chemical Process Engineering Research institute,Aristotle University of Thessaloniki(2004年)に開示されているような方法を含む、軟質アルギン酸塩ビーズを用いる乾燥噴霧、プリリング(prilling)、コアセルベーション、及びin situ重合等を含む当技術分野で知られている様々なマイクロカプセル化技術を用いて製造することができる。用いられる方法は、潤滑粒子の要求される寸法及び本発明のポリマー組成物の末端用途に依存する。
【0024】
マイクロカプセルを乾燥噴霧法を用いて製造する一実施形態において、5〜30μmと小さい寸法のカプセルに添加剤を封入することが可能である。プリリング法を用いる他の実施形態において、2〜2000μmのサイズのマイクロカプセルが製造され、5〜500μmの範囲が一般的に認められる。第3の実施形態において、25〜300μmのサイズを有するマイクロカプセルについて、それらをコアセルベーション法を用いて製造する。さらに他の実施形態において、25〜300μmのサイズを有するカプセルについて、強いポリマーシェルを得るために尿素−ホルムアルデヒドコポリマー(PMU)を用いるin−situ重合法を用いて潤滑剤をカプセル封入する。第5実施形態において、マイクロカプセルを4000μmまでのサイズを有する容易に押しつぶすことができる球形を有するアルギン酸塩軟質ビーズにカプセルに封入する。
【0025】
一実施形態において、マイクロカプセルは、PMUのシェル又はワックス又は薄膜内に含まれた、潤滑剤、例えば液体又は油、などの相変化物質を含む。潤滑油の例としては、有機、天然又は合成油などがある。特に適切な油は、酸性度が低く、高い操作温度に耐える潤滑油である。一実施形態において、マイクロカプセル内に用いられる潤滑油は、約40℃の温度で測定される20〜250cStの範囲内の粘度値を示す。マイクロカプセル内に含まれる潤滑油に加えて、意図する用途によって他の添加剤を用いることができる。特に、高圧条件下での使用のために、亜鉛、ホウ素及びその混合物などの微量元素を導入させることができる。
【0026】
最初のブレンドを形成するためのキャリヤーポリマー
一実施形態において、マイクロカプセルは、自己潤滑適用分野に一般的に用いられる樹脂と比べて低い温度耐性を有するPMUシェルにカプセル化される。この温度耐性は、マイクロカプセルを導入することができるポリマーマトリックスの種類、特に、好ましくは滑動/シール適用分野に用いられる高温可塑性物質(Tm>285℃)を制限する。ある種のマイクロカプセルシェルのこの低い温度限界のほかに、マイクロカプセルに封入されている大部分の潤滑剤もそれらが分解される前の温度限界を有する。
【0027】
本発明の一実施形態において、発明者らは、マスターバッチ又は濃縮物(concentrate)を形成する、285℃未満の融点を有する少なくとも1つのキャリヤーポリマーに、マイクロカプセルを最初にメルトブレンドすることによって分解の問題を多少とも解消している。一実施形態において、キャリヤーポリマーは、260℃未満の融点を有する。マスターバッチ(濃縮物又はプレブレンド)にメルトブレンドするマイクロカプセルの量は、一実施形態において1〜50重量%、第2の実施形態において10〜40重量%、第3の実施形態において10〜30重量%の範囲にある。
【0028】
本発明の第2の実施形態において、発明者らは、少なくとも1つのキャリヤーポリマーにマイクロカプセルを最初にドライブレンドし、その後、高温でのマイクロカプセルの分解を最小限にするために下流の供給点又はサイドフィーダーを介して押出し機法の後の部分(later portion)にドライブレンドした混合物をメルトブレンドすることによって分解の問題を多少とも解消している。混合物にドライブレンドするマイクロカプセルの量は、一実施形態において1〜80重量%、第2の実施形態において5〜70重量%、第3の実施形態において10〜50重量%の範囲にある。
【0029】
マイクロカプセルをマスターバッチにメルトブレンドする一実施形態において、キャリヤーポリマーは、285℃未満の融点を有する熱可塑性ポリマー(又は熱可塑性ポリマーの混合物)から選択される。第2の実施形態において、キャリヤーポリマーは、260℃未満の融点を有する熱可塑性樹脂から選択される。
【0030】
低融点を有するキャリヤーポリマーの例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネートホモポリマー、ポリエステルカーボネートコポリマー、線状芳香族ポリカーボネート樹脂、枝分れ芳香族ポリカーボネート樹脂及びポリ(エステル−カーボネート)樹脂などのポリカーボネート、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ポリアセタール、などのポリアミド、ポリエチレン又はポリプロピレン、オレフィンのコポリマー(3元ポリマー等を含む)などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン及びこれらのモノマーの相互の又は他の不飽和モノマーとのコポリマーなどのハロゲン化ビニル又はビニリデンポリマー、ポリアミドコポリマー、スチレンポリマー及びコポリマー、ポリアクリロニトリル、熱可塑性シリコーン樹脂、熱可塑性ポリエーテル、ポリケトン、ポリイミド、熱可塑性修飾セルロース、ポリスルホン及びその混合物を含むが、これらに限定されない。
【0031】
マイクロカプセルをキャリヤーポリマー中にドライブレンドしてドライブレンド混合物を形成させる実施形態において、キャリヤーポリマーは、ベースポリマーマトリックス、すなわち、上で挙げたような高温熱可塑性樹脂又は285℃未満の融点を有するポリマー樹脂を含むポリマーと同じであるか、又は異なっていてよい。
【0032】
マイクロカプセルのキャリヤーポリマーとして使用する高温ポリマーの例は、半結晶性並びに非晶質ポリマーを含む。高温半結晶性ポリマーの例としては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などのポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、高温ナイロン(HTN)及びそのブレンドなどがある。高温非晶質ポリマーの例としては、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)及びそのブレンドなどがある。
【0033】
一実施形態において、ポリエチレンテレフタレートを、ベースポリマーとしてのポリエーテルイミドを含む組成物を得るためのマイクロカプセルのキャリヤー(carrier)として用いる。第2の実施形態において、ポリエチレンテレフタレートを、ポリエーテルエーテルケトンを含む組成物を得るためのキャリヤーとして用いる。第3の実施形態において、ポリカーボネートを、自己潤滑ポリエーテルエーテルケトン複合材を得るためのキャリヤーとして用いる。第4の実施形態において、ポリアミドを、ポリエーテルエーテルケトン組成物を得るためのキャリヤーとして用いる。
【0034】
キャリヤーポリマーの量は、最終組成物の総重量に基づく5〜40重量%の範囲にある。第2の実施形態において、キャリヤーポリマーの量は、組成物の総重量に基づく5〜30重量%の範囲にある。第3の実施形態において、キャリヤーポリマーの量は、組成物の総重量に基づく5〜20重量%の範囲にある。
【0035】
組成物のポリマーベースとしてのマトリックスポリマー材料:
一般的に、マトリックスポリマー材料は、1つ又は複数の所望の物理的特性を、有する、又はポリマー複合材若しくはそれから製造される物品に与えるあらゆるポリマー(又はポリマーの混合物)を含んでいてよい。物理的特性の例は、機械的特性(例えば、延性、引張強度及び硬度)、熱的特性(例えば、熱成形性)及び化学的特性(例えば、反応性)などである。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、マトリックスポリマー材料は、キャリヤーポリマーに相溶性若しくは混和性であることができ、又は親和性を有する。本発明のいくつかの実施形態において、そのような親和性は、キャリヤーポリマー材料及びマトリックスポリマー材料の例えば、溶解性パラメーター、極性、疎水特性又は親水特性に依存し得る。
【0037】
前記キャリヤー材料の場合と同様に、マトリックスポリマーは、上述のような高温熱可塑性樹脂又は上記のような285℃未満の融点を有するポリマー樹脂であってよい。マトリックスポリマーの例は、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン12、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸等)、ポリアミン、ポリイミド、ポリアクリル(例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、メタクリル酸及びアクリル酸のエステル等)、ポリカーボネート(例えば、ポリビフェノールAカーボネート、ポリプロピレンカーボネート等)、ポリジエン(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリノルボルネン等)、ポリエポキシド、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリエチレンアジピン酸、ポリブチレンアジピン酸、ポリプロピレンコハク酸等)、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド)、ポリブチレングリコール、ポリプロピレンオキシド、ポリオキシメチレン(パラホルムアルデヒド)、ポリテトラメチレンエーテル(ポリテトラヒドロフラン)、ポリエピクロロヒドリン等)、ポリフルオロカーボン、ホルムアルデヒドポリマー(例えば、尿素−ホルムアルデヒド、メラミン−ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド等)、天然ポリマー(例えば、セルロース誘導体、キトサン、リグニン、ワックス等)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリブテン、ポリオクテン等)、ポリフェニレン(例えば、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテルスルホン等)、シリコン含有ポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボメチルシラン等)、ポリウレタン、ポリビニル(例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリビニルメチルケトン等)、ポリアセタール、ポリアリーレート、コポリマー(例えば、ポリエチレン−コ−酢酸ビニル、ポリエチレン−コ−アクリル酸、ポリブチレンテレフタレート−コ−ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリラウリルラクタム−ブロック−ポリテトラヒドロフラン等)及びその混合物を含むが、これらに限定されない。
【0038】
本発明の一実施形態において、マトリックスポリマーは、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、高温ナイロン(HTN)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)及びそのブレンドの少なくとも1つから選択される。
【0039】
マトリックスポリマーの量は、最終組成物の総量に基づく15〜90重量%の範囲にある。第2の実施形態において、マトリックスポリマーの量は、自己潤滑組成物の総量に基づく30〜80重量%の範囲にある。第3の実施形態において、マトリックスポリマーの量は、30〜50重量%の範囲にある。
【0040】
任意選択添加成分:
他の通例の添加剤は、物理的特性に有害な影響を及ぼさない必要な量で樹脂の混合又は成形時に樹脂組成物のすべてに加えることができる。熱可塑性組成物に一般的に用いられている、例えば、着色剤(顔料又は染料)、耐熱剤、酸化防止剤、有機繊維状充填材、耐風化剤、抗酸化剤、潤滑剤、離型剤、流動促進剤、可塑剤及び流動性促進剤等も所望の量で加えることができる。
【0041】
耐摩耗性組成物の一実施形態において、マイクロカプセルに加えて、組成物は、石油などの液体潤滑剤又はPTFEなどの固体乾燥潤滑剤の形の潤滑剤をさらに含んでいてよい。
【0042】
組成物は、繊維状充填材及び/又は低アスペクト比充填材を含む充填材成分をさらに含んでいてよい。適切な繊維状充填材は、ポリマー樹脂に用いられ、1を超えるアスペクト比を有する任意の従来の充填材、例えば、ウィスカ、ニードル、ロッド、チューブ、ストランド、細長いプレートレット、薄板状プレートレット、楕円体、マイクロファイバー、ナノファイバー及びナノチューブ、細長いフラーレン等であってよい。そのような充填材が集合体の形で存在する場合、1を超えるアスペクト比を有する集合体も繊維状充填材に十分である。充填材の他の例は、E、A、C、ECR、R、S、D及びNEガラスなどのガラス繊維並びに石英等などである。他の適切な無機繊維状充填材は、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及び硫酸カルシウム半水和物のうちの少なくとも1つを含むブレンド由来のものを含む。繊維状充填材に、炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル又は銅を含む単結晶繊維又は「ウィスカ」も含まれる。他の適切な無機繊維状充填材としては、炭素繊維、ステンレススチール繊維、金属被覆繊維等がある。
【0043】
他の任意選択の添加剤は、シリカ粉末;窒化ホウ素粉末及びホウケイ酸粉末;アルカリ土類金属塩;アルミナ及び酸化マグネシウム(又はマグネシア);珪灰石;硫酸カルシウム;炭酸カルシウム;タルク;ガラス粉末;ガラス−セラミック粉末;クレー;雲母;長石及びかすみ石を含む閃長岩;石英;珪岩;パーライト;珪藻土;炭化ケイ素;硫化亜鉛;チタン酸バリウム;バリウムフェライト;バリウムスルフェート及び重晶石;粒子状アルミニウム、青銅、亜鉛、銅及びニッケル;カーボンブラック;フレーク状充填材;等を含む低アスペクト比充填剤を含んでよい。当技術分野によく知られているそのような充填材の例は、「Plastic Additives Handbook、4th Edition」R.Gachter及びH.Muller(編集者)、P.P.Klemchuck(准編集者)、Hansen Publishedrs、New York 1993に記載されているものを含む。
【0044】
組成物中に存在する任意選択の添加剤の総量は、組成物の総重量の約0.1〜約50重量%であってよい。一実施形態において、3〜約30重量%の量である。他の実施形態において、5〜約20重量%である。
【0045】
本発明が上述の組成物の反応生成物を含むことは、明らかであるはずである。
【0046】
本発明の方法:
本明細書では、「プロセス温度」は、配合装置、例えば、押出し機について最初に設定した温度である。本発明の方法の第1の実施形態において、285℃未満のTmを有する少なくともキャリヤーポリマーを添加剤を含むマイクロカプセルと最初にメルトブレンドして、濃縮物又はマスターバッチの最初のブレンドを形成させる。第2のステップにおいて、製造したマスターバッチペレットは、物品を形成させる後続の射出成形若しくは圧縮成形のために少なくともマトリックスポリマーとドライブレンドするか、又は370℃未満のプロセス温度で少なくともマトリックスポリマーとさらに混合(メルトブレンド)して、ポリマー組成物の顆粒又はペレット又はシート又は成形ブリケットを得ることができる。1つの例において、別個のフィーダーを用いて、マイクロカプセル及びキャリヤーポリマーを押出し機、好ましくはツイン押出し機に供給する。第2の例において、マイクロカプセルをキャリヤーポリマーより下流に供給して、マイクロカプセルの分離/分解を最小限にする。1つの例において、配合ステップにおける処理温度は、350℃未満である。第2の例において、300℃未満の温度である。第3の例において、処理温度は、285℃未満である。
【0047】
本発明の方法の第2の実施形態において、キャリヤーポリマーを最初に、添加剤、例えば、香料、潤滑剤を含むマイクロカプセルとドライブレンドして、最初のドライブレンドを形成させる。第2のステップにおいて、そのドライブレンドを少なくともマトリックスポリマーと配合して、自己潤滑ポリマー組成物の顆粒又はペレット又はシート又は成形ブリケットを得る。
【0048】
配合ステップにおいて、マイクロカプセルは、マトリックスポリマーと別個のフィーダーを用いて、すなわち、処理温度が370℃未満である、マトリックスポリマーを供給するためのフィーダーから下流のフィーダー又はサイドフィーダーを経由して供給する。1つの例において、その工程は、ポリマーマトリックス用高温ポリマーを上流供給点を介して押出し工程の開始時に加え、マイクロカプセル/キャリヤーポリマードライブレンドを下流供給点を介して押出し機工程の後の部分に加えるワン−パスプロセスである。1つの例において、メルトブレンディングステップにおける処理温度は350℃未満である。第2の例において、300℃未満の温度である。第3の例において、処理温度は285℃未満である。
【0049】
メルトブレンディングは、せん断力、伸張力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー又は前記力若しくはエネルギーの形態の少なくとも1つを含む組合せの使用を伴っていてよく、単式スクリュー、複式スクリュー、噛合い型同方向回転若しくは逆方向回転スクリュー、非噛合い型同方向回転若しくは逆方向回転スクリュー、往復スクリュー、ピンを有するスクリュー、ピンを有するバレル、ロール、ラム、ヘリカルロータ又は前記の少なくとも1つを含む組合せなどの処理装置中で行う。フュームドシリカを、第1の実施形態においてマイクロカプセルと、又は第2の実施形態のドライブレンドとブレンドして、マイクロカプセルの流動を促進することができる。
【0050】
ドライミキシング/ブレンディングは、当技術分野で知られている処理装置、例えば、リボン混合機又は高強度Henschel若しくはWelex混合機で行うことができる。
【0051】
本発明の方法により製造されたポリマー組成物は、さらなる下流処理のために顆粒若しくはペレットに押出し、又はシートに切断し、又はブリケットに成形した後に当技術分野で知られている標準的処理技術を用いてさらに処理して、物品を作ることができる。組成物は、熱可塑性組成物を処理するために一般的に用いられる装置、例えば、射出成形機で成形することができる。
【0052】
本発明の方法は、マイクロカプセルの分解が最小限のため望ましくない物質の放出レベルが比較的低いことにより、環境及び健康に有利に適合できると特徴づけられる。尿素−ホルムアルデヒドコポリマー(PMU)シェルを有するマイクロカプセルを用いる一実施形態において、シェルが分解した場合にホルムアルデヒドが放出され得る。ホルムアルデヒドは、最大許容濃度(MAC)を有するヒト発癌物質である。一実施形態において、ホルムアルデヒドの放出は、押出し装置のストランドとヒューム抽出ユニットとの間のダイヘッドにおいてDraegerチューブを用いて測定する。測定されるホルムアルデヒドのレベルがMACレベルを上回っている場合、操作を直ちに中止しなければならず、さらなる配合は許容されない。いくつかの国におけるMACレベルは、1ppmである。
【0053】
一実施形態において、その放出レベルは、15分間の期間にわたり2ppm未満である(短期曝露限界(STEL))。第2の実施形態において、その放出レベルは、米国労働安全衛生局(US Occupational Safety and Health Administration(OSHA))限界である8時間時間加重平均(TWA)としての0.75百万分率(ppm)未満である。第3の実施形態において、放出レベルは8時間TWAの0.016ppm未満であり、米国国立労働安全衛生研究所(NIOSA)による推奨限界に従った15分間にわたる0.1ppmの最大値を有する。
【0054】
好ましい操作条件の利点のほかに、マイクロカプセルが添加剤として潤滑剤を含む実施形態において、本発明の方法は、マイクロカプセルの添加のないポリマーと比較して優れた摩耗及び摩擦を示す組成物も製造する。一実施形態において、10%マイクロカプセルを含むポリエステルを含む組成物は、マイクロカプセルを含まない組成物と比較して摩耗係数を2桁改善し、すなわち、金属表面をプラスチック表面に押し付ける摩擦学的システムで測定したとき、50未満の摩耗係数K、0.04未満の摩擦係数(μ)を有する。摩耗係数Kは、米国特許出願番号S/N:11/175241に開示されているようなWI−0687(修正摩耗試験方法であり、ASTM D3702−78と類似している)を含む当技術分野で知られている方法を用いて測定することができる。その方法は、米国特許第4749738号;第4663391号;第S6887938号;及び米国特許出願公開番号20030004268A1に同様に開示されている。
【0055】
他の実施形態において、10%マイクロカプセルを含むポリエーテルイミドは、マイクロカプセルを含まないポリエーテルイミド組成物と比較して摩耗係数を3桁改善する一方、摩擦は少なくとも1桁低下し、すなわち、金属表面をプラスチック表面に押し付ける摩擦学的システムで測定したとき、50未満の摩耗係数、0.1未満の摩擦係数(μ)を有する。他の実施形態において、本発明の方法により製造されたポリエチレンテレフタレート/マイクロカプセルの30%ブレンドを含むポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、マイクロカプセルを含まないポリエーテルエーテルケトン組成物と比較して4桁改善された摩耗係数を有する。
【0056】
組成物からの物品
組成物は、フィルム及びシート押出し、射出成形、ガス援用射出成形、押出し成形、圧縮成形及びブロー成形などの一般的な方法を用いて物品に製造することができる。カプセル封入された潤滑剤を含むマイクロカプセルを含む組成物については、組成物は、その組成物から作られている表面が、他の異なるプラスチック表面又は金属表面を含む他の表面を圧迫する特に摩擦学的適用分野における耐久性物品、構造製品並びに電気及び電子部品等などの成形品を製造するのに用いることができる。
【0057】
マイクロカプセルを主フィーダースロートより下流に供給する本発明の一実施形態において、本発明の組成物から製造される物品は、従来技術の方法で組成物から製造された濁った又は不透明な物品(マイクロカプセルの分解に起因する)とは対照的に透明であると特徴づけづけられる。
【0058】
一実施形態において、潤滑性マイクロカプセルを含む組成物は、低い摩耗及び/又はかなり改善された寿命を有する、ベアリングシール、或いは往復圧縮機用のシリンダ及びピストンのシールエレメントのような乾燥滑動適用分野に用いることができる。第2の実施形態において、組成物を、タービンのような回転機械のシールアセンブリにおけるアブレイダブル(abradable)シール部材として用いる。組成物は、高温操作用の自動車エンジンのピストン部品として用いることができる。
【0059】
すべての引用した特許、特許出願及び他の参考文献は、参照によりその全部が本明細書に組み込まれる。本発明は、以下の非限定的実施例によりさらに説明される。
【0060】
実施例
例において、すべての例で用いたPBTポリマーは、General Electric Company(「GE」)からValox PBT315樹脂又はPBT195として入手可能である。用いたPETポリマーは、GEからValox PET962樹脂として入手可能である。ポリエーテルイミドは、GEからUltem PEI1010樹脂として入手可能である。用いたポリカーボネートも示すようにGEからLexan PC105又はPC175樹脂として入手可能である。用いたPEEKは、VictrexによりVictrex P151として市販されている。ナイロン6は、E.I.duPont de Nemours & Co.(「DuPont」)により市販されている。用いたポリアセタールは、Hoescht CelaneseからHostaform POM C13031として入手可能である。PTFE潤滑剤は、DuPont製である。
【0061】
例で用いたマイクロカプセルは、米国のミネソタ州のAveka,Inc.製であり、PMUシェルを有し、カプセル封入された添加剤として潤滑剤を含む。潤滑剤は、ExxonMobil Corp.からGargoyle Artic SHC226として入手される。
【0062】
例A
ポリマーマトリックス材料としてのPET及びPEEK中10重量%マイクロカプセルを含む組成物は、従来技術の方法、すなわち、組成物中マイクロカプセルの直接メルトブレンディングを用いて製造した。配合されたPETペレット中に油カプセルが目視により認められ、油カプセルの一部が配合工程により伸びた(分解した)ように思われた。さらに、カプセルがPEEK成形試料に見られた。
【0063】
例B
この例において、10〜30重量%の量のマイクロカプセルをWerner & Pfleiderer押出し機(2穴、2ロブスクリュー及び9バレル)のサイドフィーダーを介してPEI組成物に直接加えた。PEIは、スロートフィーダーに加えた。工程は、マイクロカプセルが分解し、室内に滞在する操作者に対して許容できるレベルを超えるホルムアルデヒドを発生したときに停止になった。
【0064】
例C
メルトブレンディングを約260℃の温度で行い、マイクロカプセルをPETキャリヤーポリマーとドライブレンドしてサイドフィーダーを介して押出し機に加えることにより、最大30重量%のマイクロカプセルをキャリヤーポリマーとしてのPETに最初に導入した。様々な割合のマスターバッチ(例えば、90%PET、10%マイクロカプセル等)を、下の表1に示すように様々な量(重量%)のポリマーマトリックスとしてのPEI1010又はPEI1010とPET962のブレンドを含む組成物中にブレンドした。油の燃焼又は煙は検出されなかった。
【0065】
【表1】

【0066】
例D
この例において、様々な量のマイクロカプセルを最初に粉砕したPEI1010とドライブレンドする。ドライブレンドをマトリックスキャリヤー(matrix carrier)としてのPEI1010中に種々の量(重量%)で、350℃の高温に設定した押出し機を用いて配合した。PEI1010とマイクロカプセルとのドライブレンドは、下流にサイドフィーダーを介して供給し、マトリックスポリマーは、Werner & Pfleiderer押出し機の主フィーダーに直接供給した。マイクロカプセルのキャリヤーとしてマスターバッチを用いた例と同様に、350℃での3回の操作すべてにおいて油の燃焼又は煙は検出されなかった。
【0067】
【表2】

【0068】
例E
処理を370℃で行なったことを除いて、例Dを繰り返した。MACを超えるホルムアルデヒドの放出のため、工程を停止した。
【0069】
例F
この例においては、様々な量のマイクロカプセルを最初にPC175とドライブレンドした。ドライブレンドを、マトリックスキャリヤーとしてのPC105中に種々の量(重量%)で、押出し機を300℃の温度に設定し、また、PC175中に押出し機の温度を275℃に設定して配合した。結果は、表3に示す通りである。NOKは、ホルムアルデヒドが許容レベルを超えていたことを意味する。
【0070】
【表3】

【0071】
例G
この例においては、様々な量のマイクロカプセルを最初にPBT195とドライブランドする。ドライブランドをポリマーマトリックスとしてのPBT195及びPBT315のブレンド中に表4に示すように様々な量(重量%)で、260℃の温度に設定した押出し機を用いて配合した。この例においては、酸化防止剤はトリス(ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェートであった。テトラステアリン酸ペンタエリトリトールを離型剤として用いた。14μmの平均長さを有するガラス繊維を充填材として用いた。すべての操作において油の燃焼又は煙は検出されなかった。
【0072】
【表4】

【0073】
例H
この例においては、様々な量のマイクロカプセルを最初にナイロン6(PA6)とドライブランドする。ドライブランドをポリマーマトリックスとしてのPA6中に表5に示すように様々な量(重量%)で、240℃の温度に設定した押出し機を用いて配合した。この例においては、用いた離型剤は、EBSワックスであった。酸化防止剤は、PA6用のフェノール系酸化防止剤及びホスホナイトPEPQであった。すべての操作において油の燃焼又は煙は検出されなかった。
【0074】
【表5】

【0075】
この書面による説明は、最良の態様を含む本発明を開示し、また、当業者が発明を作製し、使用することを可能にするための実施例を用いる。本発明の特許を受けることができる範囲は、特許請求の範囲により定義されており、当業者に思い浮かぶ他の例を含むことができる。そのような他の例は、請求項の文字通りの意味と異なっていない構造的要素を有する場合、又は請求項の文字通りの意味と軽微な差異がある同等の構造的要素を有する場合、特許請求の範囲内にあるものとされる。
【0076】
本明細書に記載するすべての引用文は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物を製造する方法であって、
少なくとも添加剤を含む複数のカプセル封入物質をキャリヤーポリマー材料と混合して最初のブレンドを形成するステップと、
最初のブレンドを、キャリヤーポリマー材料と同じ又は異なるポリマー材料を含むポリマーマトリックス中に配合するステップと
を含み、
ここで、配合が370℃未満のプロセス温度であり、得られる組成物が分離したマイクロカプセル及び熱分解したシェルを実質的に含まない方法。
【請求項2】
カプセル封入物質がマイクロカプセル又はナノカプセルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カプセル封入物質の平均直径が5nmを超える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
カプセル封入物質に含まれる添加剤が、潤滑剤、油、香料、香味料、触媒及びその混合物の群から選択される相変化物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
マイクロカプセルが、潤滑剤、油及びその混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
配合が300℃未満の配合温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
配合が285℃未満の配合温度で実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
配合が260℃未満の配合温度で実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
マイクロカプセルがポリオキシメチレン尿素(PMU)のシェルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ポリオキシメチレン尿素を含む熱分解したシェルから放出されるホルムアルデヒドがMACレベル未満であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
ポリオキシメチレン尿素を含む熱分解したシェルから放出されるホルムアルデヒドが1ppm未満であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
潤滑性物質を含む複数のマイクロカプセルをキャリヤーポリマー材料とメルトブレンディングにより混合し、キャリヤーポリマー材料が285℃未満の融点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
キャリヤーポリマー材料が260℃未満の融点を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
キャリヤーポリマー材料が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートホモポリマー、ポリエステルカーボネートコポリマー、線状芳香族ポリカーボネート樹脂、枝分れ芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリ(エステル−カーボネート)樹脂;ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィンのコポリマー、ハロゲン化ビニルポリマー、ビニリデンポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミドコポリマー、スチレンポリマー、スチレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、シリコーン樹脂、ポリエーテル、ポリケトン、ポリイミド、修飾セルロース、ポリスルホン及びその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
キャリヤーポリマーが、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド及びその混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ポリマーマトリックスが、ポリアリーレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、高温ナイロン(HTN)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)及びそのブレンドの群から選択される高温材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
潤滑性物質を含む複数のマイクロカプセルをキャリヤーポリマー材料とドライブレンディングにより混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
潤滑性物質を含む複数のマイクロカプセルをキャリヤーポリマー材料とドライブレンディング又はメルトブレンディングにより混合して最初のブレンドを形成し、最初のブレンドを、キャリヤーポリマー材料と同じ又は異なるポリマー材料を含むポリマーマトリックス中に配合し、
ここで、該最初のブレンドをポリマーマトリックス材料より下流の供給点からポリマーマトリックス中に配合する、
請求項1に記載の方法。
【請求項19】
最初のブレンドのための下流供給点が285℃未満の温度である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
下流供給点が押出し機のサイドフィーダーである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記マイクロカプセルが5〜500μmの平均直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記マイクロカプセルが20〜200μmの平均直径を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
マイクロカプセルが組成物の総重量の約1重量%〜約40重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
マイクロカプセルが組成物の総重量の約5重量%〜約40重量%の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
キャリヤーポリマー材料が組成物の総重量の約5重量%〜約40重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
キャリヤーポリマー材料が組成物の総重量の約5重量%〜約30重量%の量で存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
キャリヤーポリマー材料が組成物の総重量の約5重量%〜約20重量%の量で存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
ポリマーマトリックスを含む材料が組成物の総重量の約40重量%〜約90重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
ポリマーマトリックスを含む材料が組成物の総重量の約50重量%〜約80重量%の量で存在する、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
ポリマーマトリックスを含む材料が組成物の総重量の約60重量%〜約80重量%の量で存在する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
請求項1に記載の方法により製造される組成物。
【請求項32】
少なくとも添加物を含む複数のマイクロカプセルを含む組成物であって、
複数のマイクロカプセルがキャリヤーポリマー材料中に最初に混合されて濃縮ブレンドが形成され、
濃縮ブレンドがその後、キャリヤーポリマー材料と同じ又は異なるポリマー材料を含むポリマーマトリックス中に配合される、
分離したマイクロカプセル及び熱分解したシェルを実質的に含まない組成物。
【請求項33】
マイクロカプセルの10%未満が分離しているか、又は熱分解したシェルを有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項34】
マイクロカプセルの5%未満が分離しているか、又は熱分解したシェルを有する、請求項30に記載の組成物。
【請求項35】
マイクロカプセルの3%未満が分離しているか、又は熱分解したシェルを有する、請求項31に記載の組成物。
【請求項36】
マイクロカプセルが少なくとも潤滑剤を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項37】
キャリヤーポリマーが、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド及びその混合物の少なくとも1つを含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項38】
ポリマーマトリックスが、ポリアリーレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、高温ナイロン(HTN)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)及びそのブレンドの群から選択される高温材料を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項39】
マイクロカプセルが組成物の総重量の約1.0重量%〜約40重量%の量で存在する、請求項29に記載の組成物。
【請求項40】
少なくとも添加物を含む複数のマイクロカプセルを含む組成物であって、
複数のマイクロカプセルがキャリヤーポリマー材料中に最初に混合されて濃縮ブレンドが形成され、
濃縮ブレンドがその後、キャリヤーポリマー材料と同じ又は異なるポリマー材料を含むポリマーマトリックス中に配合され、
配合が370℃未満のプロセス温度である組成物。
【請求項41】
配合が300℃未満のプロセス温度である、請求項33に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−522430(P2009−522430A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549587(P2008−549587)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/000371
【国際公開番号】WO2007/081854
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】