説明

マイクロカプセルを生成する方法

コアと、コアをカプセル化するコーティングとを有するタイプのマイクロカプセルを生成する方法は、コア形成流体流及びコーティング形成流体流を供給するステップと、第2のノズルの周りに同心に配置されたコアノズルを有する2噴霧ノズル構成を設けるステップと、コアノズルからコア形成流体流を噴霧し、同心ノズルからコーティング形成流体流を噴霧して、マイクロカプセルを生成するステップと、形成されたマイクロカプセルを適当な気体中で凝固させるステップとを含む。マイクロカプセルを凝固させる手段として、噴霧乾燥法又は噴霧冷却法を使用することができる。コアと固体コーティングとを有するマイクロカプセルも記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア(core)と、コアをカプセル化(encapsulating)するコーティングとを有するマイクロカプセルを生成する方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法によって形成されるマイクロカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセル化(microencapsulation)は、投与薬物の遅延放出(delayed release)、持続放出(sustained release)、並びに投与薬物を最適な標的吸収部位及び/又は標的作用部位に向かわせるターゲティング(targeting)に応用するため、医薬品業界において広く利用されている工程である。さらに、マイクロカプセル化を使用して、不快な味を覆い隠すことができ、また、酸化などの環境の影響から、又は他の不適合物質/活性物質との接触から薬物を保護することができる。マイクロカプセル化には、コアセルベーション、乳濁液からの溶媒蒸発及び流動床コーティングを含むいくつかの技法が存在する。
【0003】
噴霧乾燥法(spray drying)は、液体及びスラリを乾燥させる最も効率的で最も幅広く使用されている技法の1つである。噴霧乾燥法は、信頼できる再現可能な方法であり、簡単なスケールアップを提供する1ステップの連続手順である。噴霧乾燥法は、空気、窒素、アルゴンなどの循環する熱気体とともに液体流がノズルを通してチャンバ内へ噴霧される技法である。ノズルで形成された小液滴(droplet)がこの熱気体中で乾燥し、その結果、粒子が形成される。図1に示されているように、形成される乾燥物質は通常、噴霧乾燥された溶液の各種成分の均一な混合物からなる微小粒子である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、コアと、コアをカプセル化するコーティングとを有するタイプのマイクロカプセルを生成する方法であって、コア形成流体流及びコーティング形成流体流を供給するステップと、第2のノズルの周りに同心に配置されたコアノズルを有する2噴霧ノズル構成を設けるするステップと、コアノズルからコア形成流体流を噴霧し、同心ノズルからコーティング形成流体流を噴霧して、マイクロカプセルを生成するステップと、形成されたマイクロカプセルを適当な気体中で凝固させるステップとを含む方法が提供される。
【0005】
したがって、この方法は実質的に、ノズルを通して流体流を噴霧して小液滴を生成するステップと、空気中で小液滴を乾燥(噴霧乾燥法の場合)又は硬化(噴霧冷却(spray chilling)法の場合)させるステップとを含む。一般に、この空気は、マイクロカプセルがノズルを出たときにマイクロカプセルを乾燥させる熱空気である。しかしながら、流体流(1つ又は複数)が、加熱されて融解した脂質及び/又はろう及び/又は低融点ポリマーを含む噴霧冷却法の場合には、ノズルで形成されたマイクロカプセルを、熱空気ではなく冷空気中で凝固させる。噴霧冷却法の全般的な詳細は、Buchi社のSpray Chilling Accessoryに付属のQuick Operation Guideに出ている。
【0006】
一般に、この方法は、ノズルが、それを通してコア形成流体が噴霧されるコアノズルと、コアノズルの周りに同心に形成され、それを通してコーティング形成流体流が噴霧される第2のノズルとを含む限りにおいて、従来の噴霧乾燥法又は噴霧冷却法よりも有利であると言える。この2ノズル構成によって形成される小液滴は、第1の流体のコアと、第2の流体のコーティングとを含む。本発明の好ましい一実施形態では、コーティングがコアを完全にカプセル化する。
【0007】
噴霧乾燥法の場合、熱気体が一般に空気であり、又は窒素、アルゴンなどの不活性ガスのような別の気体である。噴霧冷却法の場合には一般に、45℃以下の周囲温度の空気が使用される。
【0008】
コア形成流体は一般に液体又は気体である。コア形成流体が液体のとき、コア形成流体は、溶液、懸濁液、分散液(dispersion)、コロイド溶液又はコロイド分散液、油及び乳濁液を含むグループから選択される。適当には、コア形成液体が、任意選択で医薬品として許容される1種又は数種の賦形剤(excipient)と組み合わされた活性化合物又は活性物質を含む。活性化合物又は活性物質は、任意のタイプの治療、予防、診断又は予後薬とすることができる。さらに、活性化合物又は活性物質を、画像化又は標識付けにおいて使用される作用物質とすることもできる。好ましい一実施形態では、この作用物質を、調節された態様で放出させる必要がある、医薬品として活性の作用物質とすることができ、したがって、生理環境中でゆっくりと崩壊して、カプセル化されたコアをある期間にわたって放出するように、コーティングを設計することができる。
【0009】
一般に、コアは、コーティングの材料/物質とは異なる材料/物質を含む。
【0010】
任意選択で、コアが持続放出ポリマーを含むことができ、コーティングを、1つ又は複数のターゲティング部分を含む/含まない第2の調節放出(controlled release)ポリマーとすることができる。
【0011】
一実施形態では、コア形成流体が、気体、又は限定はされないがエタノール、アセトン、酢酸エチルなどの揮発性溶媒を含むことができ、或いは、気体、又は限定はされないがエタノール、アセトン、酢酸エチルなどの揮発性溶媒からなることができる。この気体は、空気、不活性ガス、画像化応用に適した気体、又はこれらの混合物を含むグループから選択することができる。気体コアの使用は特に、肺送達用のマイクロカプセルに応用することができ、この気体コアは、エアロゾル剤として送達するのにより適した低密度のマイクロカプセルを与える。
【0012】
本発明の一実施形態では、コーティング形成流体が、コア材料の周りにフィルム又は壁を形成する能力を有するコーティング材料を含む。理想的には、コーティング材料が、コア材料を完全にカプセル化するフィルム又は壁を形成する能力を有する。本明細書では、用語「完全にカプセル化する」が、コアを完全に覆う、又はコアの大部分を覆うコーティングを意味することを理解されたい。適当には、コーティング形成流体が、ポリマー;脂質;ろう;界面活性剤;表面安定剤;及び体内の特定の所望の標的作用部位にマイクロカプセルを向かわせるのに適したリガンドを含むグループから選択された成分を含む。適当には、このポリマーが、Eudragitポリマーなどのメタクリル酸ポリマー;エチルセルロースポリマー;ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリ−ラクチド−co−グリコリド(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCA)などの生分解性ポリエステル;ポリアミノ酸;並びにアルブミン、ゼラチン、アルギン酸塩及びキトサン、或いはこれらの誘導体を含むグループから選択される。他の適当なフィルム形成又は壁形成材料は当業者に知られるであろう。
【0013】
好ましくは、コーティング形成流体が、医薬品として活性の作用物質、味マスキング剤(すなわち甘味料)、定められたある種の(おそらくは生理的な)条件下で溶解、膨潤又は分解しやすい作用物質(例えばpH感受性ポリマー、デンプン及びデンプン誘導体など)、ターゲティング化合物(腫瘍細胞中で過剰発現した細胞表面レセプタ、すなわち液胞型ATPアーゼに対するリガンド)、エンハンサ(短鎖及び中間鎖脂肪酸及びそれらの塩)、界面活性剤又は湿潤剤(tween、ポロキサマー(poloxamer)など)、及び表面安定剤(ポロキサマー、ポリビニルピロリドンなど)を含むグループから選択された1種又は数種の作用物質を含む。
【0014】
他の実施形態では、所望の部位に活性作用物質を送達するために、コーティングが、標的分子、細胞、組織又は器官に向かわせるように設計されたターゲティング部分を含むことができる。ターゲティング部分は例えば、腫瘍細胞の表面で高度に発現したレセプタに対して高い親和性を有するリガンド、すなわち液胞型プロトンATPアーゼに対するリガンドとすることができる。
【0015】
噴霧冷却法が使用されるとき、コーティング形成流体は、リン脂質を含む脂質、ろう、ポリエチレングリコールなどの界面活性剤又は低融点ポリマーを含むことができ、これらは全て75℃以下の融点を有することが好ましい。
【0016】
一実施形態では、コアノズルが0.7から2mmの直径を有する。同心ノズルは一般に1.4から4mmの直径を有する。好ましくは、コアノズルが約1mmの直径を有し、同心ノズルが約2mmの直径を有する。或いは、コアノズルが約1.5mmの直径を有し、同心ノズルが約3mmの直径を有する。或いは、コアノズルが約2mmの直径を有し、同心ノズルが約4mmの直径を有する。コアノズルの直径は一般に、同心ノズルの直径の40%から60%、好ましくは約50%である。
【0017】
適当には、コア及びコーティング形成流体流が、溶液の粘度及びポンプの設定によって最大25ml/分の流量を有する。
【0018】
ノズルによって形成された小液滴は、ノズルを出て、加熱された気体内を通過するときに乾燥される。噴霧乾燥法では、この気体が、熱空気又は窒素などの加熱された不活性ガスであり、これらは一般に80℃から220℃の入口温度を有する(加熱された窒素が使用されるときには90℃から110℃であることが好ましく、約100℃であると理想的である)。適当には、加熱された窒素が、40℃から70℃の出口温度を有する。
【0019】
加熱された空気が使用されるとき、入口温度は120〜220℃、出口温度は60℃から160℃である。
【0020】
上記の方法は、単一のコーティングによってカプセル化されたコアを有するマイクロカプセルを形成するのに適する。この点に関して、カプセル化は、完全なカプセル化でも、又は部分的なカプセル化でもよい。しかしながら、この方法を使用して、2つ以上のコーティングを有するマイクロカプセルを生成することもできる。したがって、ノズルは、第2のノズルの周りに同心に形成され、それを通して追加のコーティング形成流体流が噴霧される少なくとも1つの追加のノズルを含むことができる。複数のコーティングの使用は、2種類以上の活性作用物質の調節された逐次送達において有利であることができる。したがって、例えば、第1の活性物質を含むコアと、第2の活性物質を含む第1のコーティングと、外側コーティングとを含むマイクロカプセルを形成することができる。使用時、このようなマイクロカプセルは、第2の活性物質が最初に(ただし外側コーティングが分解された後に)放出され、第1の活性物質が最後に送達される活性物質の遅延放出を達成するであろう。或いは、いくつかの異なるコーティングを提供することによって活性物質の持続放出が達成されるように、マイクロカプセルの成分を選択することもできる。
【0021】
本発明の一実施形態では、コアが実質的に活性作用物質からなり、コーティングが、ポロキサマーなどの界面活性剤又は表面安定剤を含み、マイクロカプセルが、5μ未満、好ましくはlμ未満の平均径を有する。この実施形態では、コーティングが、マイクロカプセルの凝集を防ぐ。これは、溶解度、溶解速度、吸収及びバイオアベイラビリティを増大させる手段として、溶解度の低い薬物に応用可能である。
【0022】
本発明はさらに、本発明の方法によって得られるマイクロカプセルを提供する。このマイクロカプセルは一般に、125μ未満、好ましくは50μ未満、好ましくは40μ未満、好ましくは30μ未満、好ましくは20μ未満、好ましくは10μ未満、好ましくは5μ未満、好ましくは4μ未満、好ましくは3μ未満、好ましくは2μ未満、好ましくは1.5μ未満の平均径を有する。一実施形態では、本発明のマイクロカプセルが約1.5μ又は1.5μ未満の平均径を有する。
【0023】
本発明はさらに、少なくとも1つの固体コーティングの内側にカプセル化された固体又は流体コアを有し、125μ未満、好ましくは50μ未満、好ましくは40μ未満、好ましくは30μ未満、好ましくは20μ未満、好ましくは10μ未満、好ましくは5μ未満、好ましくは4μ未満、好ましくは3μ未満、好ましくは2μ未満、好ましくは1.5μ未満の平均径を有するマイクロカプセルに関する。一実施形態では、本発明のマイクロカプセルが約1.5μ又は1.5μ未満の平均径を有する。
【0024】
本発明はさらに、本発明の方法によって得られるマイクロカプセルの製剤を提供する。一般に、この製剤中の50%のマイクロカプセルは、125μ未満、好ましくは50μ未満、好ましくは40μ未満、好ましくは30μ未満、好ましくは20μ未満、好ましくは10μ未満、好ましくは5μ未満、好ましくは4μ未満、好ましくは3μ未満、好ましくは2μ未満、好ましくは1.5μ未満の直径を有する。一実施形態では、この製剤中の50%のマイクロカプセルが、約1μ又は1μ未満の直径を有する。
【0025】
本発明はさらに、少なくとも1つの固体コーティングの内側にカプセル化された固体又は流体コアをそれぞれのマイクロカプセルが有するマイクロカプセルの製剤であって、製剤中の50%のマイクロカプセルが、125μ未満、好ましくは50μ未満、好ましくは40μ未満、好ましくは30μ未満、好ましくは20μ未満、好ましくは10μ未満、好ましくは5μ未満、好ましくは4μ未満、好ましくは3μ未満、好ましくは2μ未満、好ましくは1.5μ未満の直径を有するマイクロカプセルの製剤に関する。一実施形態では、この製剤中の50%のマイクロカプセルが、約1μ又は1μ未満の直径を有する。
【0026】
製剤中の50%のマイクロカプセルの直径(D50%)を決定する方法は実施例の項に記載されている。
【0027】
一般に、固体コーティングは、ポリマー;脂質;ろう;界面活性剤;表面安定剤;及び体内の特定の所望の標的作用部位にマイクロカプセルを向かわせるのに適したリガンドを含むグループから適当に選択されたフィルム形成又は壁形成材料を含む。適当には、このポリマーが、Eudragitポリマーなどのメタクリル酸ポリマー;エチルセルロースポリマー;ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリ−ラクチド−co−グリコリド(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCA)などの生分解性ポリエステル;ポリアミノ酸;並びにアルブミン;ゼラチン;アルギン酸塩;及びキトサンを含むグループから選択される。他の適当なフィルム形成又は壁形成材料は当業者に知られるであろう。
【0028】
好ましくは、固体コーティングが、医薬品として活性の作用物質、味マスキング剤(すなわち甘味料)、定められたある種の(おそらくは生理的な)条件下で溶解、膨潤又は分解しやすい作用物質、ターゲティング化合物、エンハンサ、界面活性剤又は湿潤剤、及び表面安定剤を含むグループから選択された1種又は数種の作用物質を含む。
【0029】
他の実施形態では、活性作用物質を送達するために、コーティングが、標的細胞、組織又は器官に向かわせるように設計されたターゲティング部分を含むことができる。ターゲティング部分は例えば、腫瘍細胞の表面で高度に発現したレセプタに対して高い親和性を有するリガンド、すなわち液胞型プロトンATPアーゼに対するリガンドとすることができる。
【0030】
流体のとき、コアは液体又は気体とすることができる。コア形成流体が液体のとき、コア形成流体は、溶液、懸濁液、分散液、コロイド溶液又はコロイド分散液、油及び乳濁液を含むグループから選択される。適当には、コア形成液体が、任意選択で医薬品として許容される1種又は数種の賦形剤と組み合わされた活性化合物又は活性物質を含む。活性化合物又は活性物質は、任意のタイプの治療、予防、診断又は予後薬とすることができる。さらに、活性化合物又は活性物質を、画像化又は標識付けにおいて使用される作用物質とすることもできる。好ましい一実施形態では、この作用物質を、調節された態様で放出させる必要がある、医薬品として活性の作用物質とすることができ、したがって、生理環境中でゆっくりと崩壊して、カプセル化されたコアをある期間にわたって放出するように、コーティングを設計することができる。
【0031】
一般に、コアは、コーティングの材料/物質とは異なる材料/物質を含む。
【0032】
任意選択で、コアが持続放出ポリマーを含むことができ、コーティングを、1つ又は複数のターゲティング部分を含む/含まない第2の調節放出ポリマーとすることができる。
【0033】
一実施形態では、流体コアが、気体、又は限定はされないがエタノール、アセトン、酢酸エチルなどの揮発性溶媒を含むことができ、或いは、気体、又は限定はされないがエタノール、アセトン、酢酸エチルなどの揮発性溶媒からなることができる。この気体は、空気、不活性ガス、及び画像化用途に適した気体を含むグループから選択することができる。気体コアの使用は特に、肺送達用のマイクロカプセルに応用することができ、この気体コアは、エアロゾル剤として送達するのにより適した低密度のマイクロカプセルを与える。
【0034】
本発明はさらに、活性作用物質を体に送達するためのビヒクル(vehicle)であって、本発明に基づくマイクロカプセルを含み、活性作用物質が、マイクロカプセルのコア又はコーティング中に位置するビヒクルに関する。適当には、投与経路が、経口、頬、鼻、肺、非経口、局所及び眼を含むグループから選択される。本発明に基づくマイクロカプセルをさらに、例えばカプセル剤に製剤する、迅速融解型錠剤を含む錠剤に製剤する、適当なビヒクルに分散させる、ゲル剤、乳剤又はローション剤に含める、眼科用製剤に製剤する、又は業者に知られている他の任意の剤形に製剤するなど、適当な剤形に製剤することができる。
【0035】
本発明はさらに、活性作用物質の肺送達用のビヒクルであって、本発明に基づくマイクロカプセルを含み、好ましくはコアが気体を含むビヒクルに関する。このコアは一般に、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%の気体を含む。好ましくは、コアが実質的に気体からなる。一実施形態では、マイクロカプセルの外側コーティングが、肺の所望の標的作用部位にマイクロカプセルを向かわせるのに適した分子を含む。理想的には、マイクロカプセルが実質的に中空である(コアが実質的に気体である)。
【0036】
本発明はさらに、不快な味の活性作用物質を体に送達するためのビヒクルであって、本発明に基づくマイクロカプセルを含み、活性作用物質がマイクロカプセルのコア中に位置し、コアをカプセル化する少なくとも1つのコーティングが、コア中に位置する活性作用物質の不快な味を覆い隠すビヒクルに関する。
【0037】
本発明は、単に例として示される、本発明のいくつかの実施形態の以下の説明からより明らかに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来の噴霧乾燥ノズルの図である。
【図2】本発明の一実施形態に基づく噴霧乾燥ノズルの図である。
【図3】本発明の方法に従って形成されたマイクロカプセルの図である。
【図4】サンプル5及び6は、本発明の方法に従って形成された、コーティングされたジクロフェナクナトリウムマイクロカプセルの図であり、サンプル7は、本発明の方法に従って形成された、コーティングされたインスリンマイクロカプセルの図であり、サンプル8は、従来の噴霧乾燥法に従って形成されたエチルセルロース/ジクロフェナク微小粒子の図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、生物製剤を含む活性物質の調節放出及び/又は持続放出並びに/或いは標的への送達に応用するマイクロカプセルを生成する新規の方法に関する。一実施形態では、この方法が、2同心ノズルシステムを通して2つの流体流を同時に噴霧乾燥することによってマイクロカプセル製剤を形成することを含む。これらのマイクロカプセルは、1種又は数種のフィルム形成ポリマー、脂質、又はターゲティングリガンドなどの他のコーティング材料のコーティングを有するコアとして、1種又は数種の治療、予防又は診断薬を単独で又は組み合わされて含むことができる。マイクロカプセルのコアは、用途に応じて固体又は流体とすることができる。この内側コアは、適当な溶媒に可溶化した活性物質、又は適当なビヒクルに分散した活性物質を含むことができ、或いは乳濁液として調製することができる。
【0040】
マイクロカプセル化は、投与薬物の遅延放出、持続放出、並びに投与薬物を最適な標的吸収部位及び/又は標的作用部位に向かわせるターゲティングに応用するため、医薬品業界において広く利用されている工程である。さらに、マイクロカプセル化を使用して、不快な味を覆い隠すことができ、また、酸化などの環境の影響から、又は他の不適合物質/活性物質との相互作用から薬物を保護することができる。マイクロカプセル化には、コアセルベーション、乳濁液からの溶媒蒸発及び流動床コーティングを含むいくつかの技法が存在する。噴霧乾燥法は、液体及びスラリを乾燥させる最も効率的で最も幅広く使用されている技法の1つである。噴霧乾燥法は、信頼できる再現可能な方法であり、簡単なスケールアップを提供する1ステップの連続手順である。噴霧乾燥法は、熱循環気体とともに液体流がノズルを通してチャンバ内へ噴霧される技法である。ノズルで形成された小液滴がこの熱気体中で乾燥し、その結果、粒子が形成される。比較の図1に示されているように、形成される乾燥物質は通常、噴霧乾燥された溶液の各種成分の均一な混合物からなる微小粒子である。
【0041】
実験
図2を参照する。本発明の方法は、2つの液体流、すなわちコア形成流2とコーティング形成流2がノズル先端4から同時に噴霧されることを可能にしうるノズルシステム1を使用する。適当なコーティング材料でコーティングされた薬物を含むマイクロカプセルを調製することができる。内側ノズルコアから薬液を噴霧し、同時に外側ノズルコアからポリマー又は他のコーティング溶液を噴霧することができ、その結果、ノズル先端に2層粒子が形成される。他のカプセル化技術、例えば使用される溶媒が非混和性でなければならない乳濁液からの溶媒蒸発とは違い、この新規の技術では、2つの供給溶液がノズルの接触点まで分離されているため、完全に混和可能な液体、例えば水とエタノール、アセトンとエタノール、酢酸エチルとエタノール、エタノールとエタノールを使用してマイクロカプセルを形成することができる。この技術を使用して、液体をコーティングし、又は液体ビヒクルに溶解した薬物をコーティングすることもでき、この場合には液体が内側ノズルコアから噴霧される。この技術を使用して、肺送達用又は画像化用の中空マイクロスフェア(microsphere)を調製することもでき、この場合には内側の液体を適当な溶媒/気体によって置き換えることができる。
【0042】
この2ノズルシステムを使用して、Eudragit E100又はPLGA(RG504H)ポリマーを外側コーティング溶液とし、フルオレセインナトリウム(sodium fluorescein)を内側コア溶液中のモデル薬物として噴霧乾燥させた。画定されたフルオレセインナトリウムコアを含むマイクロカプセルを調製し、共焦点顕微鏡法によって調べた。処方1及び3は、図3にサンプル1及び3として示されるマイクロカプセルを得た。サンプル2及び4に関しては、内側コア溶液の粘度を増大させるために、モデル薬物であるフルオレセインナトリウムをEudragit E100ポリマーと混合し、これを、Eudragit E100のコーティング溶液とともにうまく噴霧乾燥させて、内側コアとしてフルオレセインナトリウム/Eudragit Eを含み、外側コーティングとしてEudragit Eを含むマイクロカプセルを生成した。サンプル4では、使用したEudragit E100コーティング溶液が、より高い10%w/vの濃度を有する。
【0043】
実施例2及び4はまた、内側コアが、ポリマーマトリックスとともに処方された活性物質からなり、コーティングが調節放出ポリマーである処方の例を提供する。
【0044】
サンプル1、2、3及び4を調製するために使用した処方及び噴霧乾燥パラメータは、下記の実施例1〜4に示されている。コーティング溶液は、噴霧乾燥機の一体型Bucchiぜん動ポンプを使用して外側ノズルを通して送出した。コア溶液は、外部ぜん動ポンプを使用して内側ノズルを通して噴霧した。これらの実施例で使用した外部ポンプは、内径4.06mmのTygon管が取り付けられたEcoline VC−280、モデルISM 1078である。この管を、内径2.2mmの第2の管に接続し、次いでこの第2の管を内側ノズルのフィードポートに接続した。これらの溶液を、Bucchi一体型ポンプの設定16及び外部Ecoline vc−280ポンプの設定1に相当する毎分4〜6mlの速度で、入口温度100℃の乾燥チャンバ内へ噴霧した。乾燥工程の全体を通じて出口温度を測定し、出口温度は、4つの処方全てについて同様であり、48℃〜65℃の範囲にあった。
【0045】
可燃性溶媒の安全な噴霧乾燥を可能にするため不活性ループB−295が取り付けられたBuchi B−290 mini噴霧乾燥機を使用して、噴霧乾燥を実施した。この噴霧乾燥機は、水性処方物を乾燥させるために空気が使用される場合には開モードサイクルで使用することができ、又は、不活性雰囲気での乾燥、すなわち空気がない条件での乾燥を提供するために不活性ループB−295がオンにされたときには閉サイクルで使用することができる。エタノール、アセトン、ジクロロメタン、トルエン、酢酸エチルを含む可燃性溶媒を使用して処方物が調製されるときには閉サイクルモードが使用される。処方例1〜4については、B−290 Buchi噴霧乾燥機を、不活性溶媒ループを使用する閉サイクルで、システムを低温に保ち、揮発性溶媒を凝縮させるため温度−20℃で動作させ、空気ではなく、窒素雰囲気で溶液を噴霧乾燥させた。
【0046】
噴霧乾燥技法は当業者によく知られており、「Spray Drying Handbook」、K.Masters著、John Wiley & Sons社刊、ニューヨーク、1984年、及びthe Buchi spray drying training papers、Buchi Labortechnik AG社、1997、1998年に記載されている。一般に、噴霧乾燥中に、連続液体フィードを霧化する他に、回転霧化器(rotary atomizer)を使用することもできる。本発明では、2つの液体フィードを2ノズルシステムを通して連続的に供給し、圧縮窒素を使用して霧化させた。次いで窒素雰囲気で小液滴を乾燥させた。本発明の粒子は、溶媒に応じた80から220℃、好ましくは80から160℃の入口温度及び40℃から120℃の出口温度を使用した噴霧乾燥によって得られる。使用した窒素流量は600L/時、使用したアスピレータ設定は30m/時である。
【0047】
この2ノズルシステム及び上記の方法を使用して、外側コーティング溶液としてのエチルセルロース、Eudragit E100又はキトサンポリマーを、内側コア溶液中のジクロフェナクナトリウム(sodium diclofenac)、シンバスタチン(simvastatin)又はインスリンのいずれか及び蛍光マーカであるフルオレセインナトリウムとともに噴霧乾燥させ、画定された薬物コアを含むマイクロカプセルを調製した。実施例5〜7に対して使用したTygon管の内径及び外径はそれぞれ0.8mm及び4mmである。このマイクロカプセルを透過型電子顕微鏡(TEM)によって調べた。処方及び噴霧乾燥パラメータの詳細は下記の実施例5〜7に示されている。
【0048】
材料:
ポリエステルである、ポリ−ラクチド−co−グリコリドポリマーResomer RG504Hは、Boehringer Ingleheim Pharma GmbH社(ドイツ)から、Eudragit E 100はDegussa社(ドイツ)から入手した。エチルセルロースはSigma−Aldrich社から購入した。中間分子量のキトサンはSigma−Aldrich社から購入した。フルオレセインナトリウムはSigma社から入手した。ジクロフェナクナトリウム(GMPグレード)は、Dipharma Francis社(イタリア、Milano)から、ウシインスリンはSigma−Aldrich社から、シンバスタチン(GMPグレード)はLeo Chem社(中国、Changzhou)から入手した。
【実施例】
【0049】
実施例1
磁気攪拌機を使用してEudragit E100ポリマー4.95gを酢酸エチル100mlに溶解することによって、Eudragit E100溶液を調製した。別のデュランびん(Duran bottle)で、フルオレセインナトリウム50mgをエタノール100mlに溶解して、フルオレセインナトリウムを0.05%w/v、Eudragit E100を4.95g含む溶液を調製した。Eudragit E100溶液をコーティング溶液として使用し、設定16の一体型Bucchiポンプを使用して外側ノズルを通して送出した。フルオレセインナトリウム溶液をコア溶液として使用し、設定1のEcoline vc−280ぜん動ポンプを使用して内側ノズルを通して送出した。
【0050】
上記の実験の項で説明した方法及び装置を使用し、Eudragit E100溶液及びフルオレセインナトリウムを噴霧乾燥させて、図3のサンプル1に示されているようなマイクロカプセルを生成した。乾燥粉末分析用のScirocco 2000(A)アタッチメントが取り付けられたMalvern Mastersizer Model 2000によって測定したマイクロカプセルのサイズは、50%のマイクロカプセルの直径(D50%)が7.78+/−0.09ミクロンであることを示した。このマイクロカプセルの共焦点像が図3のサンプル1に示されている。実験全体を通して測定した出口温度は51〜65℃の範囲にあった。
【0051】
実施例2
磁気攪拌機を使用してEudragit E100ポリマー5gを酢酸エチル100mlに溶解することによって、Eudragit E100溶液を調製した。別のデュランびんで、磁気攪拌機を使用してEudragit E100ポリマー4.95gをエタノール100mlに溶解することによって、Eudragit E100溶液を調製した。Eudragit Eをエタノールに溶解した後、別のデュランびんの中でフルオレセインナトリウム50mgを溶液に加え、溶解して、フルオレセインナトリウムを0.05%w/v含む溶液を調製した。Eudragit E100溶液をコーティング溶液として使用し、設定16の一体型Bucchiポンプを使用して外側ノズルを通して送出した。フルオレセインナトリウム/Eudragit E100溶液をコア溶液として使用し、設定1のEcoline vc−280ぜん動ポンプを使用して内側ノズルを通して送出した。
【0052】
上記の実験の項で説明した方法及び装置を使用し、Eudragit E100溶液及びフルオレセインナトリウム/Eudragit E100溶液を噴霧乾燥させて、図3のサンプル2に示されているようなマイクロカプセルを生成した。乾燥粉末分析用のScirocco 2000(A)アタッチメントが取り付けられたMalvern Mastersizer Model 2000によって測定した乾燥マイクロカプセルのサイズは、50%のマイクロカプセルの直径(D50%)が6.94+/−0.23ミクロンであることを示した。このマイクロカプセルの共焦点像が図3のサンプル2に示されている。実験全体を通して測定した出口温度は51〜62℃の範囲にあった。
【0053】
実施例3
磁気攪拌機を使用して、ポリマーであるResomer RG504H 1.98gを酢酸エチル100mlに溶解することによって、ポリ−ラクチド−co−グリコリドResomer RG504H溶液を調製した。フルオレセインナトリウム20mgを計量し、別のデュランびんの中でエタノール100mlに溶解して、フルオレセインナトリウムを0.02%w/v含む溶液を調製した。RG504H溶液をコーティング溶液として使用し、設定16の一体型Bucchiポンプを使用して外側ノズルを通して送出した。フルオレセインナトリウム溶液をコア溶液として使用し、設定1のEcoline vc−280ぜん動ポンプを使用して内側ノズルを通して送出した。
【0054】
上記の実験の項で説明した方法及び装置を使用し、RG504H溶液及びフルオレセインナトリウムを噴霧乾燥させて、図3のサンプル3に示されているようなマイクロカプセルを生成した。乾燥粉末分析用のScirocco 2000(A)アタッチメントが取り付けられたMalvern Mastersizer 2000によって測定したマイクロカプセルのサイズは、50%のマイクロカプセルの直径(D50%)が11.53+/−0.885ミクロンであることを示した。実験全体を通して測定した出口温度は48〜53℃の範囲にあった。
【0055】
実施例4
磁気攪拌機を使用してEudragit E100ポリマー10gを酢酸エチル100mlに溶解することによって、Eudragit E100溶液を調製した。別のデュランびんで、磁気攪拌機を使用してEudragit E100ポリマー4.95gをエタノール100mlに溶解することによって、Eudragit E100溶液を調製した。Eudragit Eをエタノールに溶解した後、別のデュランびん中でフルオレセインナトリウム50mgを溶液に加え、溶解して、フルオレセインナトリウムを0.05%w/v含む溶液を調製した。Eudragit E100溶液をコーティング溶液として使用し、設定16の一体型Bucchiポンプを使用して外側ノズルを通して送出した。フルオレセインナトリウム/Eudragit E100溶液をコア溶液として使用し、設定1のEcoline vc−280ぜん動ポンプを使用して内側ノズルを通して送出した。
【0056】
上記の実験の項で説明した方法及び装置を使用し、Eudragit E100溶液及びフルオレセインナトリウム/Eudragit E100を噴霧乾燥させて、図3のサンプル4に示されているようなマイクロカプセルを生成した。乾燥粉末分析用のScirocco 2000(A)アタッチメントが取り付けられたMalvern Mastersizer 2000によって測定したマイクロカプセルのサイズは、50%のマイクロカプセルの直径(D50%)が7.1+/−0.11ミクロンであることを示した。実験全体を通して測定した出口温度は50〜55℃の範囲にあった。以上の4つの実施例では、コーティングポリマー溶液によってコア溶液がうまくカプセル化された。このMalvern Mastersizerモデルを使用した乾燥粉末分析によって測定したマイクロカプセルサンプル1、2、3及び4の平均径D50%は7ミクロン以内であった。サンプル3は、より大きなD50%値107を示した。これらのサンプルの共焦点像は、生成されたマイクロカプセルはサイズが小さく、4つの全ての実施例において5ミクロン未満のサイズ範囲にあったことを示す。このサイズ範囲は、肺への送達並びにワクチン及び生物製剤の標的部位への送達において特に有用である。
【0057】
実施例5
磁気攪拌機を使用してエチルセルロースポリマー2.5gをエタノール100mlに溶解することによって、エチルセルロース溶液を調製した。別のデュランびんで、ジクロフェナクナトリウム2.495g及びフルオレセインナトリウム2.5mgをエタノール100mlに溶解した。エチルセルロース溶液をコーティング溶液として使用し、設定29(供給流量8ml/分に相当する)の一体型Bucchiポンプを使用して外側ノズルを通して送出した。フルオレセインナトリウム/ジクロフェナクナトリウム溶液をコア溶液として使用し、管径4.0mm、設定10(供給流量4ml/分に相当する)のEcoline vc−280ぜん動ポンプを使用して内側ノズルを通して送出した。
【0058】
上記の実験の項で説明した方法及び装置を使用し、エチルセルロース溶液及びフルオレセインナトリウム/ジクロフェナクナトリウムを噴霧乾燥させて、図4のサンプル5及び6に示されているようなマイクロカプセルを生成した。図4のサンプル5のスケールによって示されたマイクロカプセルのサイズは、直径1ミクロン未満であることが分かった。実験全体を通して測定した出口温度は45℃の範囲にあった。
【0059】
実施例6
1%v/v酢酸水溶液50mlにキトサンポリマー0.5gを溶解することによって、キトサン溶液を調製した。別のデュランフラスコで、ウシインスリン20mg及びフルオレセインナトリウム10mgを1%v/v酢酸水溶液50mlに溶解した。キトサン溶液をコーティング溶液として使用し、設定14(供給流量4ml/分に相当する)の一体型Bucchiポンプを使用して外側ノズルを通して送出した。インスリン溶液をコア溶液として使用し、管径4.0mm、設定10(供給流量4ml/分に相当する)のEcoline vc−280ぜん動ポンプを使用して内側ノズルを通して送出した。
【0060】
上記の実験の項で説明した方法及び装置を使用し、キトサンポリマー溶液及びフルオレセインナトリウム/インスリン溶液を入口温度170℃で噴霧乾燥させて、図4のサンプル7に示されているようなマイクロカプセルを生成した。
【0061】
湿式分散分析法を使用してMalvern Mastersizer Model 2000によって測定したマイクロカプセルのサイズは、50%のマイクロカプセルの直径(D50%)が12.14+/−1.17ミクロンであることを示した。
【0062】
実験全体を通して測定した出口温度は87〜90℃の範囲にあった。
【0063】
実施例7
磁気攪拌機を使用してシンバスタチン0.625gをエタノール25mlに溶解することによって、シンバスタチン溶液を調製した。別のデュランびんで、Eudragit E100ポリマー1.875gをエタノール25mlに溶解して、全薬物及びポリマーをそれぞれ2.5%及び7.5%w/v含む溶液を調製した。Eudragit E100溶液をコーティング溶液として使用し、設定15の一体型Bucchiポンプを使用して外側ノズルを通して送出した。シンバスタチン溶液をコア溶液として使用し、設定10のEcoline vc−280ぜん動ポンプを使用して内側ノズルを通して送出した。
【0064】
上記の実験の項で説明した方法及び装置を使用し、エチルセルロース溶液及びフルオレセインナトリウム/ジクロフェナクナトリウムを入口温度55℃で噴霧乾燥させて、マイクロカプセルを生成した。乾燥粉末分析用のScirocco 2000(A)アタッチメントが取り付けられたMalvern Mastersizer Model 2000によって測定したマイクロカプセルのサイズは、50%のマイクロカプセルの直径(D50%)が8.40+/−0.08ミクロンであることを示した。実験全体を通して測定した出口温度は33〜37℃の範囲にあった。
【0065】
以上の実施例1〜7では、コアノズル径1mm、同心ノズル径2mmのBuchi3流体ノズル(Buchi Three Fluid Nozzle)を使用した。
【0066】
実施例8
比較のため、磁気攪拌機を使用して、エチルセルロースポリマー7.5g及びジクロフェナクナトリウム2.5gをエタノール100mlに溶解することによって、エチルセルロース/ジクロフェナクナトリウム溶液を調製した。このエチルセルロース/ジクロフェナクナトリウム溶液を、直径0.7mmの従来のノズルが取り付けられたBuchi実験室噴霧乾燥機(Buchi lab spraydrier)を使用して噴霧乾燥させた。この溶液を、設定36の一体型Bucchiポンプ及び設定86のアスピレータを使用して送出した。使用した入口温度は100℃である。
【0067】
このマイクロカプセルをTEMによって調べた。このマイクロカプセルは図4のサンプル8に示されている。図4のスケールによって示されたマイクロカプセルのサイズは、直径1ミクロン未満であることが分かった。実験全体を通して測定した出口温度は60℃の範囲にあった。
【0068】
本発明は、調節された態様及び/又は標的に向かわせる態様で活性作用物質を送達するためのマイクロカプセルを提供する。活性作用物質は保健、美容又は食品関連とすることができる。活動作用物質が保健関連(すなわち治療薬)であるとき、導入方法は、限定はされないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外及び経口経路を含む。組成物は、都合のよい任意の経路によって、例えば輸液又はボーラス注射によって、上皮又は皮膚粘膜ライニング(lining)(例えば口腔粘膜、直腸及び腸管粘膜など)を通した吸収によって投与することができ、他の生物活性物質と一緒に投与することもできる。投与は全身又は局所投与とすることができる。さらに、脳室内及び髄腔内注射を含む適当な任意の経路によって、本発明のマイクロカプセルを中枢神経系に導入することが望ましいことがある。脳室内注射は、例えばオマヤレザバー(Ommaya reservoir)などのレザバーに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易にすることができる。例えば吸入器又はネブライザ及びエアロゾル化剤を含む製剤を使用することにより、肺投与を使用することもできる。
【0069】
本発明のマイクロカプセルを治療を必要とする領域に局所的に投与することが望ましいことがあり、これは例えば、限定はされないが、局所塗布によって、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、又はインプラントによって達成することができ、前記インプラントは、シアラスティック(sialastic)膜などの膜又は繊維を含む多孔質、無孔又はゼラチン状材料とすることができる。
【0070】
本発明はさらに、本発明のマイクロカプセルを含む医薬組成物を提供する。このような組成物は、治療上有効な量の治療薬及び医薬品として許容されるキャリア(carrier)を含む。特定の実施形態では、用語「医薬品として許容される(pharmaceutically acceptable)」が、米国連邦政府又は州政府の規制機関によって承認されていること、或いは米国薬局方又は動物、特に人間に対して使用される一般に認められた他の薬局方に記載されていることを意味する。
【0071】
用語「キャリア」は、治療薬と一緒に投与される希釈剤、アジュバント(adjuvant)、賦形剤又はビヒクルを指す。このような医薬キャリアは、水、油などの滅菌液とすることができ、油は、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、石油、動物、野菜又は合成物起源の油を含む。医薬組成物が静脈内に投与されるとき、水は好ましいキャリアである。液体キャリア、特に注射可能な溶液に対する液体キャリアとして、食塩水並びにデキストロース及びグリセロール水溶液を使用することもできる。適当な医薬賦形剤は、デンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク(chalk)、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グルセロール、プロピレングリコール、水、エタノール他を含む。
【0072】
希望する場合、組成物はさらに、少量の湿潤剤又は乳化剤、或いはpH緩衝剤を含むことができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、持続放出製剤などの形態をとることができる。
【0073】
組成物は、トリグリセリドなどの伝統的な結合剤及びキャリアを含む坐剤として製剤することができる。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準キャリアを含むことができる。適当な医薬キャリアの例は、E.W.Martin著「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、治療上有効な量の、好ましくは精製された形態の治療薬、及び患者に適切に投与するための剤形を提供する適当な量のキャリアを含む。剤形は投与の態様に適していなければならない。
【0074】
好ましい一実施形態では、組成物が、人間への静脈内投与に適合した医薬組成物として、ルーチンの手順に従って製剤される。一般に、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物はさらに、可溶化剤、及び注射部位の痛みを和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔薬を含むことができる。一般に、これらの成分は別個に供給され、又は単位用量剤として、例えば活性作用物質の量を指示するアンプル、サシェ(sachette)などの気密容器に入れた凍結乾燥粉末又は水を含まない濃縮物として一緒に混合される。輸液によって投与される場合、組成物は、医薬品グレードの滅菌水又は滅菌食塩水を含む輸液びんに分配することができる。組成物が注射によって投与される場合には、滅菌注射用水又は滅菌食塩水のアンプルを供給して、投与前に成分を混合できるようにしてもよい。
【0075】
本発明は、本明細書に記載された実施形態に限定されない。本明細書に記載された実施形態は、本発明の趣旨から逸脱することなく構造と詳細の両方を変更することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアをカプセル化するコーティングとを有するタイプのマイクロカプセルを生成する方法であって、コア形成流体流及びコーティング形成流体流を供給するステップと、コアノズルの周りに同心に配置された外側ノズルを有する2噴霧ノズル構成を設けるステップと、前記コアノズルから前記コア形成流体流を噴霧し、前記外側ノズルから前記コーティング形成流体流を噴霧して、マイクロカプセルを生成するステップと、形成された前記マイクロカプセルを適当な気体中で凝固させるステップとを含む方法。
【請求項2】
前記コア形成流体が液体、揮発性溶媒又は気体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コア形成液体が、溶液、分散液、油及び乳濁液を含むグループから選択された、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コア形成液体が、任意選択で医薬品として許容される少なくとも1種の賦形剤と組み合わされた活性化合物又は活性物質を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コア形成気体が、空気、不活性ガス及び画像化応用に適した気体を含むグループから選択された、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティング形成流体が、ポリマー、脂質、ろう、界面活性剤、表面安定剤、体内の特定の所望の標的作用部位に前記マイクロカプセルを向かわせるのに適したリガンドを含むグループから選択されたコーティング材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマーが、フィルム形成ポリマー又は壁形成ポリマーである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フィルム形成ポリマーが、Eudragitポリマーなどのメタクリル酸ポリマー;エチルセルロースポリマー;ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、乳酸とグリコール酸の共重合体などの生分解性ポリエステル;ポリ−ラクチド−co−グリコリド(PLGA);ポリカプロラクトン(PCA);ポリアミノ酸;及びアルブミン、ゼラチン、アルギン酸塩又はキトサン、或いはこれらの誘導体を含むグループから選択された、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コアノズルが0.7から2mmの直径を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記外側ノズルが1.4から4mmの直径を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記コア形成流体流が1〜25ml/分の流量を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記コア形成流体流が1〜25ml/分の流量を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
噴霧乾燥法であり、前記気体が、80℃から220℃の入口温度を有する熱空気である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記熱空気が、90℃から160℃の入口温度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱空気が、40℃から130℃の出口温度を有する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項16】
噴霧乾燥法であり、前記気体が、60℃から160℃の入口温度を有する不活性ガスである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記不活性ガスが、80℃から120℃の入口温度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
噴霧冷却法であり、前記コーティング形成流体流が、脂質、ろう又は低融点ポリマーを含み、任意選択で、前記コーティング形成流体流が、前記外側ノズルに供給される前に加熱され、前記気体が45℃以下の温度を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記コア形成流体流が、融解した脂質、ろう又は低融点ポリマーのポリマー中に溶解又は分散した活性物質を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記コア形成又はコーティング形成流体流が、界面活性剤と、湿潤剤と、他の適当な医薬賦形剤とのうちの1つ又は複数を含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記コアノズル及び/又は前記外側ノズルが加熱される、請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記コーティング形成流体流が、表面改質剤と、表面安定剤と、界面活性剤又は湿潤剤とのうちの1つ又は複数を含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ノズルが、前記外側ノズルの周りに同心に形成され、それを通して追加のコーティング形成流体流が噴霧される少なくとも1つの追加のノズルを含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法によって得られるマイクロカプセル。
【請求項25】
125μ未満のD50%を有する、請求項24に記載のマイクロカプセル。
【請求項26】
50μ未満のD50%を有する、請求項24に記載のマイクロカプセル。
【請求項27】
30μ未満のD50%を有する、請求項24に記載のマイクロカプセル。
【請求項28】
5μ未満のD50%を有する、請求項24に記載のマイクロカプセル。
【請求項29】
少なくとも1つの固体コーティングの内側にカプセル化された固体又は流体コアを有し、100μ未満のD50%を有するマイクロカプセル。
【請求項30】
30μ未満のD50%を有する、請求項29に記載のマイクロカプセル。
【請求項31】
10μ未満のD50%を有する、請求項29に記載のマイクロカプセル。
【請求項32】
5μ未満のD50%を有する、請求項29に記載のマイクロカプセル。
【請求項33】
2μ未満のD50%を有する、請求項29に記載のマイクロカプセル。
【請求項34】
1μ未満のD50%を有する、請求項29に記載のマイクロカプセル。
【請求項35】
前記少なくとも1つの固体コーティングが、フィルム形成又は壁形成物質によって形成された、請求項29〜34のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項36】
前記コアが、任意選択で1種又は数種の医薬賦形剤と組み合わされた医薬品として活性な作用物質を含む、請求項29〜35のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項37】
前記医薬品として活性の作用物質が、1種又は数種の適当な溶媒中の溶液、適当なキャリア中の分散液、乳濁液、或いは固体の形態で存在する、請求項36に記載のマイクロカプセル。
【請求項38】
異なる特性の少なくとも2つの固体コーティングを有する、請求項29〜37のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項39】
前記(外側)コーティングが、体内の標的分子、細胞、器官及び組織に向かわせるターゲティング部分を含む、請求項29〜38のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項40】
前記コアが少なくとも50%(V/V)の気体を含む、請求項29〜39のいずれか一項に記載のマイクロカプセル。
【請求項41】
活性作用物質を体に送達するためのビヒクルであって、請求項24〜40のいずれか一項に記載のマイクロカプセルを含み、前記活性作用物質が、前記マイクロカプセルの前記コア又はコーティング中に位置するビヒクル。
【請求項42】
投与経路が、鼻、肺、頬、非経口、髄腔内、静脈内、筋肉内、局所及び眼を含むグループから選択された、請求項41に記載のビヒクル。
【請求項43】
活性作用物質を肺に送達するためのビヒクルであって、請求項24〜40のいずれか一項に記載のマイクロカプセルを含むビヒクル。
【請求項44】
前記コアが少なくとも50%(V/V)の気体を含む、請求項43に記載のビヒクル。
【請求項45】
前記コアが実質的に気体からなる、請求項43に記載のビヒクル。
【請求項46】
前記コアが気体である、請求項41〜45のいずれか一項に記載のビヒクル。
【請求項47】
前記マイクロカプセルの前記外側コーティングが、肺又は気道の所望の標的作用部位に前記マイクロカプセルを向かわせるのに適した分子を含む、請求項41〜46のいずれか一項に記載のビヒクル。
【請求項48】
不快な味の活性作用物質を体に送達するためのビヒクルであって、請求項24〜40のいずれか一項に記載のマイクロカプセルを含み、前記活性作用物質が前記マイクロカプセルの前記コア中に位置し、前記コアをカプセル化する前記少なくとも1つのコーティングが、前記コア中に位置する前記活性作用物質の前記不快な味を覆い隠すビヒクル。
【請求項49】
請求項24〜40のいずれか一項に記載のマイクロカプセルを含む医薬組成物。
【請求項50】
錠剤、カプセル剤、フィルム及びカシェ剤の形態の請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記錠剤が迅速融解型の錠剤である、請求項50に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−509046(P2010−509046A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535877(P2009−535877)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/IE2007/000108
【国際公開番号】WO2008/056344
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(507261504)ロイヤル カレッジ オブ サージョンズ イン アイルランド (5)
【Fターム(参考)】