説明

マイクロカプセル含有水分散液及び樹脂の硬化方法

【課題】 熱を加えることによりマイクロカプセルに内包された有機溶剤が液体から気体になる膨張でマイクロカプセル壁を破壊し、マイクロカプセルに内包されている樹脂用硬化剤をマイクロカプセル外に放出させることができるマイクロカプセル含有水分散液を提供する。
【解決手段】 マイクロカプセルが樹脂用硬化剤及び沸点が50℃から150℃の範囲内であり且つ250℃以下の引火点を有さない有機溶剤を内包しているマイクロカプセル含有水分散液、並びに該マイクロカプセル含有水分散液を硬化性樹脂組成物中に配合し、該配合した組成物に熱を加えてマイクロカプセル内の有機溶剤を気化、膨張させてその膨張力によりマイクロカプセル壁を破壊し、マイクロカプセル内の樹脂用硬化剤をマイクロカプセル外に放出させて樹脂を硬化させる樹脂の硬化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロカプセル含有水分散液及び樹脂の硬化方法に関し、より詳しくは、熱を加えることによりマイクロカプセルに内包された特定の有機溶剤が液体から気体になる膨張でマイクロカプセル壁を破壊し、マイクロカプセルに内包されている樹脂用硬化剤をマイクロカプセル外に放出させることができるマイクロカプセル含有水分散液及び樹脂の硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混合すると反応してしまう硬化性樹脂の主剤と硬化剤等との組み合わせの場合であっても、それらの混合物を安定に保存するためには主剤と硬化剤とが直接接触しないように硬化剤をマイクロカプセルに内包することが一般に実施されている。そこで、重要になってくるのがマイクロカプセルから内包物質を放出させる方法である。
【0003】
マイクロカプセルの内包物質を放出する方法として、マイクロカプセルに圧力を加えてマイクロカプセルを破壊させる方法(例えば、特許文献1、2、3参照)、マイクロカプセルを溶融させて内包物質を放出させる方法(例えば、特許文献4参照)、マイクロカプセルを輻射線にさらして内包物質を放出させる方法(例えば、特許文献5参照)などがある。しかし、圧力を加える方法ではミクロンからナノオーダーのマイクロカプセルに対して圧力を加えてマイクロカプセル壁を確実に破壊するのは難しく、マイクロカプセルを溶融させる方法ではマイクロカプセル内に用いる有機溶剤として引火点の低いものを使用する場合にはマイクロカプセルから放出された有機溶剤の蒸気で引火する危険があり、また、輻射線を照射する方法では顔料や樹脂などにより輻射線が通過しにくい場合や輻射線を吸収してしまう場合もあり、マイクロカプセルを破壊することが出来ない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−176594号公報
【特許文献2】特開2005−220236号公報
【特許文献3】特開2009−031385号公報
【特許文献4】特開2003−238656号公報
【特許文献5】特表2004−525007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の従来の方法とは異なる方法によってマイクロカプセルの内包物質を放出させることであり、即ち、熱を加えることによりマイクロカプセルに内包された有機溶剤が液体から気体になる膨張でマイクロカプセル壁を破壊し、マイクロカプセルに内包されている樹脂用硬化剤をマイクロカプセル外に放出させることができ、しかもマイクロカプセルの破壊に利用する有機溶剤として引火の危険が無いものを使用したマイクロカプセル含有水分散液及び樹脂の硬化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討を行った結果、沸点が50℃から150℃の範囲内であり且つ250℃以下の引火点を有さない有機溶剤をマイクロカプセルに内包させることにより、上記の目的が達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明のマイクロカプセル含有水分散液は、マイクロカプセルが樹脂用硬化剤及び沸点が50℃から150℃の範囲内であり且つ250℃以下の引火点を有さない有機溶剤を内包していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の樹脂の硬化方法は、上記の本発明のマイクロカプセル含有水分散液を硬化性樹脂組成物中に配合し、該配合した組成物に熱を加えてマイクロカプセル内の有機溶剤を気化、膨張させてその膨張力によりマイクロカプセル壁を破壊し、マイクロカプセル内の樹脂用硬化剤をマイクロカプセル外に放出させて樹脂を硬化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマイクロカプセル含有水分散液は、熱を加えることでマイクロカプセル壁を破壊することが出来、また、250℃以下の引火点を有さない有機溶剤を用いているので、マイクロカプセルを破壊したときに発生した有機溶剤、特にハイドロフルオロエーテルの蒸気は引火することが無いので安全である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明においては沸点が50℃から150℃の範囲内であり且つ250℃以下の引火点を有さないいかなる有機溶剤も使用することができ、特にハイドロフルオロエーテルは、現状の消防法で規定される引火点(250℃以下の引火点)を持っておらず、マイクロカプセル内から放出されたガスも引火する心配がないので好ましいものである。
【0011】
ハイドロフルオロエーテルとしてC49OCH3(沸点:61℃、引火点:なし)、C49OC25(沸点:78℃、引火点:なし)、C613OCH3(沸点:97℃、引火点:なし)、C3HF6−CH(CH3)O−C3HF6(沸点:131℃、引火点:なし)などを使用することが出来、マイクロカプセルのハイドロフルオロエーテルの含有量はマイクロカプセル100質量部(マイクロカプセル壁と内包物質との合計量)に対して1〜75質量部であることが望ましく、更に好ましくは5〜50質量部である。ハイドロフルオロエーテルの含有量が1質量部未満である場合には、液体から気体になる膨張でマイクロカプセル壁を破壊する力が弱くなり、実用性に乏しいものとなる傾向がある。また、ハイドロフルオロエーテルの含有量が75質量部を超えるマイクロカプセルを調製しようとしても、マイクロカプセル壁を形成させるためのイソシアネート化合物やエポキシ化合物の均一溶解または分散性が悪くなり、壁厚の均一なマイクロカプセルを調製することが困難になる傾向がある。
【0012】
本発明のマイクロカプセル含有水分散液においては、マイクロカプセルが樹脂用硬化剤も必須成分として内包するので、沸点が50℃から150℃の範囲内であり且つ250℃以下の引火点を有さない有機溶剤、特にハイドロフルオロエーテルに加えて、必要に応じて、樹脂用硬化剤を良好に溶解又は分散させるための有機溶剤を添加することができる。樹脂用硬化剤を良好に溶解又は分散させるための疎水性有機溶剤として、パラフィンやイソパラフィン、オレフィン、脂肪族ジエン等のオイル類、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニル等の芳香族炭化水素及びその誘導体や水素化物、テレピン油やナフテン油等の天然または合成オイル等を用いることができる。また、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ポリメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のシリコーンオイルを用いることもできる。更には、これらの疎水性有機溶剤の混合物を用いることもできる。
【0013】
マイクロカプセルに内包される樹脂用硬化剤として、一分子中に2個以上のイソシアネート基又はイソチオシアネート基を有するイソシアネート化合物などを挙げることができる。このようなイソシアネート化合物として、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、エチリジンジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートや、p−フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等のジイソチオイソシアネートを用いることができる。また、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体などのトリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの多価イソシアネートや、これらの多価イソシアネートを多価アミン、多価カルボン酸、多価チオール、多価ヒドロキシ化合物、エポキシ化合物などの親水性基を有する化合物に付加させたものを用いることもできる。さらには、上記のイソシアネート化合物を複数混合して用いることもできる。マイクロカプセルの調製を水中で行う場合には、イソシアネート基と水との反応速度が遅いヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0014】
また、マイクロカプセルに内包される樹脂用硬化剤として、ポリオール類の水酸基をグリシジルエーテル化した化合物を使用することができ、該ポリオールとしては、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール類、レゾルシノール、あるいはこれらの縮重合物などを用いることが出来る。その他、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂など、所謂エポキシ樹脂や、もしくはこれらの水素添加樹脂を用いることができる。さらに、エポキシ化大豆油のような、不飽和結合をエポキシ化した油脂類を用いることが出来る。
【0015】
本発明のマイクロカプセル含有水分散液の分散安定性を改善するために、必要に応じて界面活性剤、水溶性高分子などを用いることが出来る。例えば、界面活性剤として、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、脂肪族アンモニウム塩などのイオン性活性剤を挙げることができ、また、脂肪族アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミドエチレンオキサイド付加物、アルキルグルコシド、アルキルグリセライド、ソルビタンアルキルエーテルなどのノニオン性活性剤を挙げることができる。
【0016】
水溶性高分子として、ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリアクリル酸、アクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマー、ポリナフタレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレン−ポリプロピレンブロック共重合物などを挙げることができる。またこれらの部分変性物も同様に使用することが可能である。
【0017】
本発明のマイクロカプセルの平均粒径は、0.1〜500μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜200μmである。マイクロカプセルの平均粒径が500μmを超える場合には溶媒中の分散安定性が悪くなる傾向であり、平均粒子径が0.1μm未満である場合にはマイクロカプセルの壁厚を制御することが極めて困難になり、マイクロカプセル内包物の量を均一化することが極めて困難であり、また、マイクロカプセル壁も薄くなるため貯蔵時のマイクロカプセル内包物の維持性に問題が生じる可能性がある。
【0018】
本発明のマイクロカプセル含有水分散液は、硬化性樹脂組成物、特に塗料組成物や接着剤組成物などの構成成分として、これらの中に含ませることができる。マイクロカプセル含有水分散液を硬化性樹脂組成物中に配合し、該配合した組成物に熱を加えてマイクロカプセル内の有機溶剤を気化、膨張させてその膨張力によりマイクロカプセル壁を破壊し、マイクロカプセル内のイソシアネート化合物などの樹脂用硬化剤をマイクロカプセル外に放出させ、架橋反応によって、塗膜を強固にしたり、接着強度を高めたりすることができる。
【0019】
本発明のマイクロカプセル含有水分散液は、従来周知の技術、例えば、界面重合法、in situ 重合法、コアセルベーション法、スプレードライ法などの方法によって調製することができる。
【0020】
特に本発明のマイクロカプセル含有水分散液の調製においては、イソシアネート化合物などの樹脂用硬化剤及びマイクロカプセルに内包される有機溶剤は油溶性で、樹脂用硬化剤と反応するポリアミン類、ポリオール類は水溶性のものを選択し、これら両液を混合し、界面重合反応によってマイクロカプセル壁を形成させることが望ましい。具体的にはマイクロカプセルに内包される有機溶剤中にイソシアネート化合物やエポキシ化合物などの樹脂用硬化剤を均一に溶解又は分散させて、水と界面活性剤の存在下で混合してO/Wエマルションとした後、ポリアミン類、ポリオール類を溶解している水溶液を添加し、界面重合させてマイクロカプセル壁を形成させる。
【0021】
マイクロカプセル壁の形成に用いられるポリアミン類として、分子中に2個以上のNH基またはNH2基を含有する多価アミンを使用することができ、該多価アミンとしては、水相中に溶解あるいは分散可能なものであれば全て利用することができる。このような多価アミンの具体例として、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族多価アミン、脂肪族多価アミンのエポキシ化合物付加物、ピペラジンなどの脂環式多価アミン、3,9−ビス−アミノプロピル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−(5,5)ウンデカンなどの複素環状ジアミンなどを挙げることができる。これらの多価アミンを複数種類添加することも可能である。
【0022】
また、マイクロカプセル壁の形成に用いられるポリオールとして、分子中に2個以上のOH基を含有する多価アルコールを使用することができ、該多価アルコールとしては、水相中に溶解あるいは分散可能なものであれば全て利用することができる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコールなどを挙げることができる。
【0023】
本発明のマイクロカプセル含有水分散液においては、マイクロカプセル壁の組成の一部にもマイクロカプセルに内包される樹脂用硬化剤を利用することから、マイクロカプセル内に樹脂用硬化剤が十分残るように樹脂用硬化剤と反応するポリアミン類、ポリオール類の添加量などの調整を行う。また、マイクロカプセル含有水分散液の調製工程における温度としては40℃以下が好ましい。
【0024】
本発明のマイクロカプセル含有水分散液においては、熱を加えることによりマイクロカプセルに内包された有機溶剤が液体から気体になる膨張でマイクロカプセル壁を破壊し、マイクロカプセルに内包されている樹脂用硬化剤をマイクロカプセル外に放出させる必要があるので、マイクロカプセルのカプセル壁を破壊させるための温度はマイクロカプセルに内包された有機溶剤の沸点以上である必要があり、好ましくはマイクロカプセルに内包された有機溶剤の沸点より25℃以上高い温度である。
【実施例】
【0025】
実施例1<マイクロカプセル分散液1>
ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート80質量部とC49OCH310質量部とを混合し、この混合物を5%ポリビニルアルコール水溶液200質量部に加え、超音波ホモジナイザーで乳化してO/Wエマルションを調製した。さらに、このO/Wエマルションを10℃で撹拌しながら、このO/Wエマルションに10%ジエチレントリアミン水溶液5質量部を加え、10℃に維持しながら5時間撹拌を行い、イソシアネート化合物とジエチレントリアミンとを界面重合させて、ウレア結合により形成さマイクロカプセル壁でジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びC49OCH3が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は約780nmであった。
【0026】
実施例2<マイクロカプセル分散液2>
ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート75質量部と、C49OC2515質量部と、イソパラフィン系溶剤(出光石油製、IPソルベント1620)20質量部とを混合し、この混合物を5%ポリビニルアルコール水溶液200質量部に加え、超音波ホモジナイザーで乳化してO/Wエマルションを調製した。さらに、このO/Wエマルションを10℃で撹拌しながら、このO/Wエマルションに10%ジエチレントリアミン水溶液5質量部を加え、10℃に維持しながら5時間撹拌を行い、イソシアネート化合物とジエチレントリアミンとを界面重合させて、ウレア結合により形成させたマイクロカプセル壁でジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、C49OC25及びイソパラフィン系溶剤が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は約670nmであった。
【0027】
実施例3<マイクロカプセル分散液3>
ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート65質量部と、C613OCH325質量部とを混合し、この混合物を5%ポリビニルアルコール水溶液200質量部に加え、超音波ホモジナイザーで乳化してO/Wエマルションを調製した。さらに、このO/Wエマルションを10℃で撹拌しながら、このO/Wエマルションに10%ジエチレントリアミン水溶液5質量部を加え、10℃に維持しながら5時間撹拌を行い、イソシアネート化合物とジエチレントリアミンとを界面重合させて、ウレア結合により形成させたマイクロカプセル壁でジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びC613OCH3が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は約600nmであった。
【0028】
実施例4<マイクロカプセル分散液4>
ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート45質量部と、C49OCH325質量部と、イソパラフィン系溶剤(出光石油製、IPソルベント1620)20質量部とを混合し、この混合物を5%ポリビニルアルコール水溶液200質量部に加え、超音波ホモジナイザーで乳化してO/Wエマルションを調製した。さらに、このO/Wエマルションを10℃で撹拌しながら、このO/Wエマルションに10%ジエチレントリアミン水溶液5質量部を加え、10℃に維持しながら5時間撹拌を行い、イソシアネート化合物とジエチレントリアミンとを界面重合させて、ウレア結合により形成させたマイクロカプセル壁でジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、C49OCH3及びイソパラフィン系溶剤が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は約550nmであった。
【0029】
実施例5<マイクロカプセル分散液5>
ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート45質量部と、C49OC2525質量部と、イソパラフィン系溶剤(出光石油製、IPソルベント1620)20質量部とを混合し、この混合物を5%ポリビニルアルコール水溶液200質量部に加え、超音波ホモジナイザーで乳化してO/Wエマルションを調製した。さらに、このO/Wエマルションを10℃で撹拌しながら、このO/Wエマルションに10%ジエチレントリアミン水溶液5質量部を加え、10℃に維持しながら5時間撹拌を行い、イソシアネート化合物とジエチレントリアミンとを界面重合させて、ウレア結合により形成させたマイクロカプセル壁でジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、C49OC25及びイソパラフィン系溶剤が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は約550nmであった。
【0030】
実施例6<マイクロカプセル分散液6>
ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート45質量部と、C613OCH325質量部と、イソパラフィン系溶剤(出光石油製、IPソルベント1620)20質量部とを混合し、この混合物を5%ポリビニルアルコール水溶液200質量部に加え、超音波ホモジナイザーで乳化してO/Wエマルションを調製した。さらに、このO/Wエマルションを10℃で撹拌しながら、このO/Wエマルションに10%ジエチレントリアミン水溶液5質量部を加え、10℃に維持しながら5時間撹拌を行い、イソシアネート化合物とジエチレントリアミンとを界面重合させて、ウレア結合により形成させたマイクロカプセル壁でジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、C613OCH3及びイソパラフィン系溶剤が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は約600nmであった。
【0031】
比較例1<マイクロカプセル分散液7>
ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート90質量部を5%ポリビニルアルコール水溶液200質量部に加え、超音波ホモジナイザーで乳化してO/Wエマルションを調製した。さらに、このO/Wエマルションを10℃で撹拌しながら、このO/Wエマルションに10%ジエチレントリアミン水溶液5質量部を加え、10℃に維持しながら5時間撹拌を行い、イソシアネート化合物とジエチレントリアミンとを界面重合させて、ウレア結合により形成させたマイクロカプセル壁でジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートが内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は約900nmであった。
【0032】
比較例2<マイクロカプセル分散液8>
ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート45質量部と、イソパラフィン系溶剤(出光石油製、IPソルベント2028)45質量部とを混合し、この混合物を5%ポリビニルアルコール水溶液200質量部に加え、超音波ホモジナイザーで乳化してO/Wエマルションを調製した。さらに、このO/Wエマルションを10℃で撹拌しながら、このO/Wエマルションに10%ジエチレントリアミン水溶液5質量部を加え、10℃に維持しながら5時間撹拌を行い、イソシアネート化合物とジエチレントリアミンとを界面重合させて、ウレア結合により形成させたマイクロカプセル壁でジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びイソパラフィン系溶剤が内包されたマイクロカプセルの分散液を得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は約780nmであった。
【0033】
<評価>
樹脂固形分量が40%である水酸基含有エマルション(メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸=18/12/6/0.8)85質量部と、上記実施例1〜6及び比較例1〜2で得たマイクロカプセル分散液1〜8の1種10質量部と、成膜助剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)5質量部とを混合し、その混合物を4ミルアプリケーターを用いてガラス板上に塗布した。マイクロカプセル分散液1、2、4、5、7、8を用いた場合については100℃で15分間乾燥を行った後に、マイクロカプセル分散液3、6を用いた場合については120℃で15分間乾燥を行った後に、そのガラス板を40℃の水に24時間浸漬して塗膜の状態を目視で観察した。また、鉛筆硬度の測定はJIS K 5400法に則って行った。それらの結果は第1表に示す通りであった。
【0034】
【表1】

【0035】
第1表に示すように、マイクロカプセル分散液1〜6を用いた場合には、40℃の水に24時間浸漬後の塗膜の状態が透明であり、かつ塗膜の鉛筆硬度がH〜3Hであるので、マイクロカプセル内の硬化剤のイソシアネート基が加熱によってマイクロカプセル外に放出され、主剤である水酸基含有エマルジョンと十分に反応していることがわかる。一方、マイクロカプセル分散液7及び8を用いた場合には、40℃の水に24時間浸漬後の塗膜の状態が白濁しており、塗膜の鉛筆硬度がBと低いことから硬化剤と主剤の反応が不十分であることがわかる。
【0036】
なお、上記水酸基含有エマルション(メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸=18/12/6/0.8)95質量部と、成膜助剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)5質量部とを混合し、その混合物を4ミルアプリケーターを用いてガラス板上に塗布後、120℃で15分間乾燥を行った後に得られた塗膜については、40℃の水に24時間浸漬後の塗膜の状態は白濁しており、鉛筆硬度はBであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロカプセルが樹脂用硬化剤及び沸点が50℃から150℃の範囲内であり且つ250℃以下の引火点を有さない有機溶剤を内包していることを特徴とするマイクロカプセル含有水分散液。
【請求項2】
沸点が50℃から150℃の範囲内であり且つ250℃以下の引火点を有さない有機溶剤がハイドロフルオロエーテルであることを特徴とする請求項1記載のマイクロカプセル含有水分散液。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマイクロカプセル含有水分散液を硬化性樹脂組成物中に配合し、該配合した組成物に熱を加えてマイクロカプセル内の有機溶剤を気化、膨張させてその膨張力によりマイクロカプセル壁を破壊し、マイクロカプセル内の樹脂用硬化剤をマイクロカプセル外に放出させて樹脂を硬化させることを特徴とする樹脂の硬化方法。

【公開番号】特開2011−31147(P2011−31147A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178438(P2009−178438)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】