説明

マイクロチャンバ

【課題】マイクロリットル以下の液体試薬の制御された毛細管液体輸送および効率的な受動混合が可能な単純で低コストの使い捨てデバイスを提供すること。
【解決手段】基材(11)、カバー(12)、基材(11)とカバー(12)の間に形成された少なくとも1つのチャンバ(20)であって、該チャンバ(20)は、2つの対向する表面を備え、1つは基材(11)上、1つはカバー(12)上にそれぞれあり、各表面は、親水性領域(70)および疎水性領域(60)を備える、チャンバ、少なくとも1つのチャンバ(20)に液体を誘導する側方親水性領域(70)を備える、液体を混合するためのミクロ流体工学的デバイスであって、少なくとも2つの液体が薄層として、少なくとも1つのチャンバ(20)に入り、各々は、チャンバのそれぞれの1つの表面を濡らし、各々の表面上の層が増えるにつれて、該液体が互いに触れ、一体化する、デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、チャンバを備えるミクロ流体工学的(microfluidic)デバイス、および液体を混合するためにかかるデバイスを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
化学的または生化学的プロセスの開始および活性化は、試薬間の混合を必要とするため、ミクロ流体工学的システムは、提供されるものがたくさんあるが、有用な微細加工されたシステムは、液体をマイクロチャネル内に駆動し、誘導するための有効で簡便な手段だけでなく、これらを混合するための効率的で迅速な手段も提供することができなければならない。
【0003】
ミクロ流体工学的システム内での能動混合および受動混合の両方を増強するために、種々の方法が提案されている。受動方法は、支配的な層流のため、混合中に外部エネルギーを必要とせず、完全に拡散またはカオス移流に依存するため、最も魅力的である。これらの方法は、混合を改善するために、接触表面を増大させること、および/または拡散経路を減少させることにより機能を発揮するが、設計および製造は、常に単純とは限らず、チャネルを介して液体を駆動するためにポンプの使用が、ほとんどの場合でなお必要である。
【0004】
また、先行技術において、選択的濡れは、それぞれ疎水性表面または親水性表面の親水性または疎水性パターン形成によって達成されることが知られている。鏡像パターンを有する2つの表面が、小さな隙間を空けて並べられた場合、特定の流路が得られ得る。水性液体は、物理的側壁なしで親水性領域間の表面張力によって拘束されたままの毛管力によって駆動されて移動し得る。このようにして、気泡のない端が閉じられたフローパターン、ならびにチャンバ充填が達成され得る。しかしながら、これはまた、2つの表面のうち一方だけが親水性にパターン形成され、他方が完全に疎水性である場合にも起こり得、正確な整列(precise alignment)が回避されるという利点を有する。両方の場合において、パターンの幅および表面間の距離などの寸法を、記載された理論および実験データに従って許容される範囲内で選択することは重要であり、したがって、ポンプの必要性は排除される。
【0005】
受動混合機と毛細管ポンピングとの組合せは、したがって、好ましいが、なお制限がある。これは、例えば、経路に沿って乾燥化学物質を溶解するためには有用であり得るが、これらの経路は、通常、長く、線速度は小さい。一段階戻り、外部ポンプを使用することにより、プロセスはスピードアップされ得るが、流路を制御すること、例えば、定められた容量を導入することまたは定められた位置および時間で液体を停止することは、困難であり得る。
【0006】
しばしば、多くの有用な実生活の適用、例えば、インビトロ診断アッセイ、反応速度論研究、薬物-および生体-相互作用スクリーニングならびに試料調製のために、必要とされることは、非常に少量で別々の容量の試薬が小反応チャンバまたはチャンバのアレイ、例えば、好ましくは検出チャンバでもあるマイクロリットル以下のチャンバ内に送達され、急速に混合され、したがって、液体のさらなる移動がなく、大過剰の試薬が死容積を占めることなく、またはシステムを通って流れることもないことである。時として、特に、反応速度論研究では、必要とされることはまた、パルス化された充分定められた開始時間である。最後に、所望により、例えば、試料調製の一部として、さらなる加工処理のために少量の別々の下流反応容量を移すこともまた容易に可能になるはずである。
【0007】
側壁のない表面指向毛細管システムは、マイクロチャンバを充填するためにも使用され得ることは既に記載したが、かかるマイクロチャンバ内部での異なる別々の少量の液体の効率的な制御混合は、まだ記載されていない。特許文献1には、2つの液体間の接触表面が減少し、拡散経路が増大する、効率的な混合と全く反対の概念が適用された毛管力混合機が開示されている。
【特許文献1】国際公開第01/52975号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、先行技術における上記の隙間をすべて充填し、マイクロリットルおよびマイクロリットル以下の範囲の平行なアレイ形式のマイクロチャンバに理想的な、マイクロリットル以下の容量の液体試薬の制御された毛細管液体輸送および効率的な受動混合ための単純で低コストの使い捨てデバイスを提供することである。このデバイスは、インビトロ診断(IVD)応用、反応速度論研究、薬物-および生体-相互作用スクリーニングならびにさらなる加工処理前の試料調製に特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、
〔1〕 −基材(11)、
−カバー(12)、
−基材(11)とカバー(12)の間に形成された少なくとも1つのチャンバ(20)であって、該チャンバ(20)は、2つの対向する表面を備え、1つは基材(11)上、1つはカバー(12)上にそれぞれあり、各表面は、親水性領域(70)および疎水性領域(60)を備える、チャンバ、
−少なくとも1つのチャンバ(20)に液体(90、100)を誘導する側方親水性領域(70)
を備える、液体(90、100)を混合するためのミクロ流体工学的デバイスであって、少なくとも2つの液体(90、100)が薄層として、少なくとも1つのチャンバ(20)に入り、各々は、チャンバのそれぞれの1つの表面を濡らし、各々の表面上の層が増えるにつれて、該液体が互いに触れ、一体化する、デバイス、
〔2〕 前記側方親水性領域および側方疎水性領域がマイクロチャネルに含まれることを特徴とする、〔1〕記載のデバイス、
〔3〕 前記マイクロチャネルが、基材もしくはカバーのいずれかに、または基材およびカバーの両方に、または基材とカバーの間の少なくとも1つのスペーサー層に形成される、〔2〕記載のデバイス、
〔4〕 前記側方親水性領域が、基材もしくはカバーのいずれかに、または基材およびカバーの両方にあることを特徴とする、〔1〕〜〔3〕いずれか記載のデバイス、
〔5〕 少なくとも1つの親水性領域が疎水性領域内に閉じ込められていることを特徴とする、〔1〕〜〔4〕いずれか記載のデバイス、
〔6〕 チャンバの容積が、チャンバの2つの対向する表面上の親水性領域の間の容積によって定められることを特徴とする、〔5〕記載のデバイス、
〔7〕 マイクロチャンバ内部の疎水性領域がデバイスの外部と連絡し、その結果、デバイスの内部は、全ての側面から通気されることを特徴とする、〔1〕〜〔6〕いずれか記載のデバイス、
〔8〕 デバイスが、マイクロチャンバのアレイおよび側方親水性領域のアレイを備え、少なくとも2つの側方親水性領域が液体を同じチャンバに導くことを特徴とする、〔1〕〜〔7〕いずれか記載のデバイス、
〔9〕 デバイスが使い捨てであり、ポリマー材料からなることを特徴とする、〔1〕〜〔8〕いずれか記載のデバイス、
〔10〕 材料が透明であることを特徴とする、〔9〕記載のデバイス、
〔11〕 液体が毛管力によって側方親水性領域に沿って、該領域内に閉じ込められてチャンバに誘導されることを特徴とする、〔1〕〜〔10〕いずれか記載のデバイス、
〔12〕 少なくとも2つの液体が連続様式でチャンバに入ること、即ち、各々がその同じ面に沿って進行し続けること、または該少なくとも2つの液体が不連続様式でチャンバに入ること、即ち、チャンバの異なる深さのために段をたどることを特徴とする、〔1〕〜〔11〕いずれか記載のデバイスを使用することによる少なくとも2つの液体を混合する方法、
〔13〕 検出が各チャンバの透明な本体を通ってインサイチュで実施されることを特徴とする、〔12〕記載の方法、
〔14〕 少なくとも2つの液体が混合されるかまたは反応された後、非混和性有機液体がチャンバに導入され、別個の液滴またはプラグとしてチャンバの外に反応した水性試料を輸送する機能を有することを特徴とする、〔12〕記載の方法、
〔15〕 2つの液体が一体化する時間が、反応速度論的研究のためのパルス化された十分に定められた開始時間として同定されることを特徴とする、〔12〕または〔13〕記載の方法、
〔16〕 親水性領域および疎水性領域がガス化学およびプラズマ重合を使用して生成されることを特徴とする、〔1〕〜〔11〕いずれか記載のデバイスを製造する方法であって、ここで疎水性プラズマ重合工程は、まず、使用されるポリマー材料の天然の疎水性より疎水性である表面を生成するために親水性にパターン形成されるように表面上で一様に実施され、その後、疎水性表面の上面にマスキングおよび親水性パターン形成を実行する、方法、
〔17〕 インビトロ診断(IVD)応用、または反応速度論的研究、または薬物−および生体−相互作用スクリーニング、またはさらなる加工処理前の試料調製のための、〔1〕〜〔11〕いずれか記載のデバイスの使用
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従うと、マイクロリットルおよびマイクロリットル以下の範囲の平行なアレイ形式のマイクロチャンバに理想的な、マイクロリットル以下の容量の液体試薬の制御された毛細管液体輸送および効率的な受動混合ための単純で低コストの使い捨てデバイスが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、基材、カバー、該基材と該カバー間に形成される少なくとも1つのチャンバを備え、前記チャンバが、それぞれ該基材上に1つ、該カバー上に1つの2つの対向する表面を備え、各表面が親水性領域および疎水性領域を備えるミクロ流体工学的デバイスであって、前記チャンバの該2つの対向する表面の各々の上の各親水性領域は、少なくとも1種類の液体によって独立して濡らされ得ることを特徴とするミクロ流体工学的デバイスに関する。
【0012】
本発明によるデバイスは、側方親水性領域および側方疎水性領域またはパターンをさらに備え得、前記側方親水性側方および側方疎水性領域は、少なくとも1つのチャンバをもたらす。1つの好ましい態様において、前記側方親水性領域および側方疎水性領域またはパターンは、該基材内または該カバー内のいずれかに形成され得るマイクロチャネルに含まれている。別の可能性は、マイクロチャネルが該基材および該カバーの両方に形成されることである。さらに別の可能性は、マイクロチャネルが、該基材と該カバーとの間の1つ以上のスペーサー層によって形成されることである。
【0013】
側方親水性領域またはパターンは一側面上のみに存在し得、それは該基材上または該カバー上のいずれかであるが、該基材上と該カバー上の両方でもあり得る。
【0014】
好ましくは、親水性領域は、疎水性領域内に閉じ込められている(confine)か、または疎水性領域に囲まれている。
【0015】
前記領域内に通じた表面エネルギー、すなわち、毛管力は、液体が、毛管力によって側方親水性領域またはパターンに沿って誘導され、一側面から前記チャンバに侵入し、前記チャンバの反対の表面に接触することなく薄層としての前記チャンバの一表面の一部を濡らし、したがって、第2の液体が、平行して、または逐次のいずれかで、類似した機構または経路で前記チャンバの反対の表面の一部を濡らすようになり、最終的に第1の液体層に接触し、突然の一体化および液体間の効率的な混合をもたらすまで親水性パターンに通じたチャンバ内部の容量が充填されることを回避し得るようなものである。
【0016】
混合は、接触表面が大きいため、および2つの液体が接触して一体化した瞬間に生成するカオス移流のため、効率的である。実際、チャンバは、好ましくは、前記マイクロチャンバの容積が典型的に0.01μL〜5μL、好ましくは0.05μL〜2μLで構成され、平均拡散距離が比較的小さいままになるように、マイクロチャンバの高さ、すなわち、濡れた表面間の距離が典型的に約1mm未満、好ましくは約300μm未満であるマイクロチャンバである。しかしながら、かかる小さな範囲の正確な容量を達成することは困難であり得るため、これらの範囲は概算であり限定されないことを理解されたい。
【0017】
液体が同様にチャンバ内部にある親水性パターンのみをたどること、すなわち、親水性領域に隣接する疎水性周囲部によって、液体が、決して側方で物理的側壁に接触することなくパターン内で閉じ込められたままであることが確実になることに注目することは重要である。混合される液体の容量は、したがって、チャンバの容積そのものではなく、その内部の親水性領域によって定められる容積によって定められる。換言すると、チャンバの容積は、チャンバの2つの対向する表面上の親水性領域間の容積によって定められる。
【0018】
チャンバ内の濡れていない疎水性領域または周囲部は、例えば、他の側方チャネルによって、システムがすべての側面から通気され、気泡を捕捉することなく適正な流れおよび充填で空気が漏れるのが可能となるようにデバイスの外部と連絡する。
【0019】
本発明において言及される液体は、好ましくは、化学的もしくは生化学的溶液、または極性溶媒中の試薬、好ましくは水性の溶液または試薬である。もちろん、親水性領域と疎水性領域の位置を反転すること、および代わりに無極性液体または有機溶媒を用いて作業することが可能である。
【0020】
本発明に開示された概念は、親水性領域の接触角が約30度未満、最も好ましくは約20度未満である場合、および疎水性領域の接触角が約100度より大きい、最も好ましくは約110度より大きい場合、最良に機能を果たす。湿式法または気相法のいずれかを使用して安定なパターンを達成するために利用可能な種々の方法および技術がある。好ましくて簡便な選択肢はプラズマ重合である。パターン形成のための基材、すなわちデバイスに使用される材料は、例えば、成型によって容易で廉価に製造され得る好ましくは、必ずしもそうでなくもよいが、透明な任意の適当なポリマー材料であり得、デバイスは使い捨て可能であり得る。疎水性領域に対して大きな値の接触角を達成するため、使用されるポリマー材料の天然の疎水性よりも疎水性である表面をもたらすために、最初に、親水性にパターン形成される表面上で均一に疎水性プラズマ重合工程が実行され、その後、疎水性表面の上面でマスキングおよび親水性パターン形成が実行され得る。
【0021】
毛細管流動および例えば、2つの平行な表面の一方のみを他方と接触することなく濡らすことを可能にする他の条件は異なり得、基本的理論は文献に見られ得る。例えば、経路の幅は、典型的に、毛管力、したがって線速度を最大限にするために充分に小さくなければならないが、流動抵抗のため、小さすぎてはならないチャネルの高さより大きいことが知られている。これは、マイクロチャネルの1つの表面のみまたは両表面が親水性にパターン形成されているかどうかにも大きく依存する。単なる示唆を示すため、高さを50μm未満に、幅を200μmより大きく維持するのがよいが、チャンバは、好ましくはチャネルよりも3倍を超えて高い。
【0022】
より詳細には、本発明は、態様の例として示され、これらの態様によって範囲を決して制限しない以下の図面と関連させて読むと最良に理解され得る。
【0023】
一般的なチャンバ 20、前記チャンバ 20内で混合される第1および第2の液体をそれぞれ駆動する一般的なミクロ流体工学的チャネル30および40、ならびに一般的な側方チャネル50を備える本発明による一般的なデバイス10が図1に開示される。ここでは、親水性領域(斜線部)70および疎水性領域(白)60は互いに区別されている。図1のデバイス10 は、同一縮尺ではないが透明な上面図とみなされたく、互いの上面に組み立てられた基材11およびカバー12としても定められる少なくとも2つの対称に重なる異なる層からなる。
【0024】
基材11およびカバー12の内側を、独立して図2および3に示し、これらはデバイス10の可能な2つの態様を示している。具体的に、図2は、チャネルの1つの表面上にのみ存在する親水性領域すなわちパターン70によって、液体がチャネル30および40に沿って駆動される態様を示し、図3は、チャネルの両方の表面上に存在する親水性領域すなわちパターン70によって、液体がチャネル30および40に沿って駆動される態様を示す。
【0025】
本発明によると、チャネル30および40ならびにチャンバ20の両方の親水性パターン70のいずれかの側の疎水性領域60がどれほど大きいかということが重要でないことに留意すべきである。例えば、デバイス10は、チャネル30、40および50を全く備えないか、または使用に従って異なって配置されたチャネル30、40および50を備えて、平行でありかつ互いの間隔が短い大きな疎水性表面60上の親水性パターン70のみで定められるチャンバ20のアレイを備え得る。アレイ中の異なるチャンバがまた、異なる設計を有し、異なる容積を示し得ることはいうまでもないことである。
【0026】
理解を容易にするために、第1の液体がチャネル30から来、第2の液体がチャネル40から来、これらの両方が、同時にまたは次々に短時間内にチャンバ20に入り、各々は、それぞれの1つの表面を濡らし、各々の表面上の液体層が最終的に増えるにつれて、これらは、互いに触れ、デバイス10の領域80において一体化し、それは、チャンバ20の上面および底面上の2つの親水性領域70によって定められる体積であるということを想像し得る。従って、混合される液体の体積である反応容積は、このようにチャンバ20の容積によって定められないが、該容積は、チャンバ20内の親水性領域によって定められる。
【0027】
制御するのはより困難であるが、同じ機構を用いて、2つより多い液体をチャンバ20にもたらし、これらの2つ以上を異なる比で混合することはもちろん想像し得る。これは、例えば、チャンバ20の内部の上領域および底領域70を異なるように設計することによって、および/または薄い疎水性パターン60または溝によって混合または反応ゾーン80に通じる、即ち、各液体層が進行を停止する領域に通じる疎水性領域70を再分割することによって達成され得る。
【0028】
デバイス内部の圧力は、デバイス外部と同じであり、即ち、システムは、大気圧下で作動する。実際に、チャンバ20内部の疎水性領域60および側面チャネル50に通じる非湿潤ゾーンは、空気が漏れるのを可能にする。言い換えると、システムは、全ての側面から通気され、適切な流れを可能にし、気泡を捕捉することなく充填される。側面チャネル50はまた、別個の液滴またはプラグとしてチャンバ20の外に反応した水性試料を輸送する機能を有する非混和性の有機液体を、第2段階において、導入するために使用され得る。これは、デバイス10、特にアレイ形式のデバイスにおいて、が非常に少量の試薬から開始して試料調製のために使用される場合、特に有利である。
【0029】
しかし、本発明によれば、デバイス10は、例えば、図7の態様に示されているような、少量の試薬が並行しておよび/または種々の組み合わせで互いに接触され、検出が各チャンバ20の透明な本体によってインサイチュで実施される静的な反応様式に特に適切である。
【0030】
デバイス10は、例えば、インビトロ診断(IVD)応用、薬物−および生体−相互作用スクリーニングならびに反応速度論的研究に特に有利に使用され得る。後者は、2つの液体が一体化する時間で同定され得る十分に定められた開始時間を実際に必要とする。
【0031】
図2を参照すると、これは、チャネル30および40の1つの表面のみを有し、即ち、基材11またはカバー12のいずれかを有し、親水性領域またはパターン70でそれぞれパターン形成されたデバイス10の特定の態様である。これは、親水性領域70がそれらの経路を続け、従って、チャネル30および40からチャンバ20に液体層を誘導する方式に従う、図4の側面図に示される他の態様をさらに特徴とする。図4Bにおいて、例えば、各チャネルからの経路は、連続的であり、同じ平面に沿って進行し続ける。代わりに図4Aにおいて、経路は、それがチャンバ20の異なる深さのために段をたどるという意味で、不連続である。
【0032】
同様の考察が、チャネル30および40の上面および底面の両方、即ち、基材11およびカバー12の両方が、パターン形成されている図3の態様をいう図5Aおよび5Bに関してなされ得る。
【0033】
図6Aおよび6Bは、図4Aおよび4Bそれぞれの態様に対して、親水性経路に沿ってチャネル30および40それぞれからチャンバ20へと液体90および100がたどる経路の概略図を提供する。
【0034】
同様に、液体90および100に対する類似した経路は、図5の態様に対して想定され得る。
【0035】
特定の態様を参照することによって本発明を記載してきたが、添付の特許請求の範囲に規定される発明の範囲を逸脱することなく変更が可能であることは明らかであるはずである。より具体的には、本発明のいくつかの側面が好ましいと同定されるが、本発明は、これらの好ましい側面に必ずしも限定されないことが企図される。特に、特許請求の範囲は、記載された態様または可能であり、例えば、親水性パターンに沿って毛管力によって液体を駆動するために必要な条件のような、全ての特定の条件を可能にすることが必ずしも必要とされない類似した態様を有するデバイス10を実現する概念である。
【0036】
参考文献

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、一般的なチャンバ、液体をこのチャンバ内に駆動する一般的なチャネル、および一般的な側方チャネルを備え、ここで、親水性領域および疎水性領域は、互いの上面の少なくとも2つの異なる組み立てられた層の一部として区別され、対称に重なる一般的なデバイスの概略的で同一縮尺でない透明な上面図を示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、それぞれ、図1による態様の1つを重ね合わせたときに形成する2つの半分側の内面の図を示す。具体的には、これらは、チャネルの1つの表面のみに存在する親水性領域またはパターンによって液体がチャネルに沿って駆動される態様を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、それぞれ、図1による態様の1つを重ね合わせたときに形成する2つの半分側の内面の図を示す。具体的には、これらは、チャネルの上面および底面の両方に存在する親水性領域またはパターンによって液体がチャネルに沿って駆動される態様を示す。
【図4】図4Aおよび4Bは、それぞれ、図1および2による可能な態様の2つの断面図を示す。
【図5】図5Aおよび5Bは、それぞれ、図1および3による可能な態様の2つの断面図を示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、それぞれ常に概略的に、図4の態様のチャネルからチャンバ内への親水性パターンに沿った液体経路を示す。同様の経路が図5の態様についても想定され得る。
【図7】図7は、複数の図1のもののようなチャンバからなるアレイの2つの可能な態様を示す。図7Aは、個々にアクセス可能なチャンバのアレイを示す。図7Bは、一側面から連絡している、すなわち、1種類の液体が平行に一工程でアクセス可能であるが、第2の液体によって他方からなお個々にアドレス可能であるチャンバのアレイを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−基材(11)、
−カバー(12)、
−基材(11)とカバー(12)の間に形成された少なくとも1つのチャンバ(20)であって、該チャンバ(20)は、2つの対向する表面を備え、1つは基材(11)上、1つはカバー(12)上にそれぞれあり、各表面は、親水性領域(70)および疎水性領域(60)を備える、チャンバ、
−少なくとも1つのチャンバ(20)に液体(90、100)を誘導する側方親水性領域(70)
を備える、液体(90、100)を混合するためのミクロ流体工学的デバイスであって、少なくとも2つの液体(90、100)が薄層として、少なくとも1つのチャンバ(20)に入り、各々は、チャンバのそれぞれの1つの表面を濡らし、各々の表面上の層が増えるにつれて、該液体が互いに触れ、一体化する、デバイス。
【請求項2】
前記側方親水性領域および側方疎水性領域がマイクロチャネルに含まれることを特徴とする、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記マイクロチャネルが、基材もしくはカバーのいずれかに、または基材およびカバーの両方に、または基材とカバーの間の少なくとも1つのスペーサー層に形成される、請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
前記側方親水性領域が、基材もしくはカバーのいずれかに、または基材およびカバーの両方にあることを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載のデバイス。
【請求項5】
少なくとも1つの親水性領域が疎水性領域内に閉じ込められていることを特徴とする、請求項1〜4いずれか記載のデバイス。
【請求項6】
チャンバの容積が、チャンバの2つの対向する表面上の親水性領域の間の容積によって定められることを特徴とする、請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
マイクロチャンバ内部の疎水性領域がデバイスの外部と連絡し、その結果、デバイスの内部は、全ての側面から通気されることを特徴とする、請求項1〜6いずれか記載のデバイス。
【請求項8】
デバイスが、マイクロチャンバのアレイおよび側方親水性領域のアレイを備え、少なくとも2つの側方親水性領域が液体を同じチャンバに導くことを特徴とする、請求項1〜7いずれか記載のデバイス。
【請求項9】
デバイスが使い捨てであり、ポリマー材料からなることを特徴とする、請求項1〜8いずれか記載のデバイス。
【請求項10】
材料が透明であることを特徴とする、請求項9記載のデバイス。
【請求項11】
液体が毛管力によって側方親水性領域に沿って、該領域内に閉じ込められてチャンバに誘導されることを特徴とする、請求項1〜10いずれか記載のデバイス。
【請求項12】
少なくとも2つの液体が連続様式でチャンバに入ること、即ち、各々がその同じ面に沿って進行し続けること、または該少なくとも2つの液体が不連続様式でチャンバに入ること、即ち、チャンバの異なる深さのために段をたどることを特徴とする、請求項1〜11いずれか記載のデバイスを使用することによる少なくとも2つの液体を混合する方法。
【請求項13】
検出が各チャンバの透明な本体を通ってインサイチュで実施されることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
少なくとも2つの液体が混合されるかまたは反応された後、非混和性有機液体がチャンバに導入され、別個の液滴またはプラグとしてチャンバの外に反応した水性試料を輸送する機能を有することを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項15】
2つの液体が一体化する時間が、反応速度論的研究のためのパルス化された十分に定められた開始時間として同定されることを特徴とする、請求項12または13記載の方法。
【請求項16】
親水性領域および疎水性領域がガス化学およびプラズマ重合を使用して生成されることを特徴とする、請求項1〜11いずれか記載のデバイスを製造する方法であって、ここで疎水性プラズマ重合工程は、まず、使用されるポリマー材料の天然の疎水性より疎水性である表面を生成するために親水性にパターン形成されるように表面上で一様に実施され、その後、疎水性表面の上面にマスキングおよび親水性パターン形成を実行する、方法。
【請求項17】
インビトロ診断(IVD)応用、または反応速度論的研究、または薬物−および生体−相互作用スクリーニング、またはさらなる加工処理前の試料調製のための、請求項1〜11いずれか記載のデバイスの使用。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−25301(P2009−25301A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−177266(P2008−177266)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】