説明

マイクロニードルアレイのコーティングのためのマスキング方法

基材および少なくとも1つのニードルを有するマイクロニードルアレイを提供する工程と;マスキング層によって基材が少なくとも部分的に被覆され、そして少なくとも1つのニードルが少なくとも部分的に暴露されたまま残るように、マイクロニードルアレイ上に取り外し可能なマスキング層を提供する工程と;マイクロニードルアレイの暴露部分の少なくとも一部にコーティング材料を適用する工程とを含んでなるマイクロニードルアレイのコーティング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体を本明細書に加入したものとする2004年11月18日付けで出願された米国仮特許出願第60/629,209号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、マイクロニードルアレイのコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0003】
承認された化学エンハンサーを使ってさえも、実証された治療価値を有する分子の限定された数のみが皮膚を通して輸送可能である。皮膚を通しての分子の輸送に対する主な障壁は角質層(皮膚の最外層)である。
【0004】
比較的小さい構造の配列を含むデバイスは、マイクロニードルまたはマイクロピンと呼ばれることがあり、これは皮膚および他の表面を通しての治療剤および他の物質の送達に関連する使用に関して開示されている。このデバイスは、典型的に、治療剤および他の物質が角質層を通り、そしてその下の組織へと通過するように角質層に穴を開ける目的のため、皮膚に押しつけられる。
【0005】
流体貯蔵器と、治療物質がそれを通して皮膚に送達される導管とを有するマイクロニードルデバイスが提案されているが、流体流動のため確実に使用可能である非常に微細なチャネルを作製する能力のような、かかる系に関して多くの難点が残っている。
【0006】
マイクロニードルアレイの表面上に乾燥コーティングを有するマイクロニードルデバイスは、流体貯蔵器デバイスと比較して、望ましい特徴を有する。このデバイスは一般的により単純であり、そしてマイクロニードルデバイスにおける非常に微細なチャネルを通しての流体流動の確実な制御を提供することを必要とせずに、直接的に皮膚に治療物質を注射することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マイクロニードルアレイ上で1つ以上の所望の位置において一貫したコーティングを提供する能力は、乾燥コーティングを有するマイクロニードルデバイスのための重要な特徴である。一般的に平面上で乾燥コーティングを提供する多数の周知の方法があるにもかかわらず、マイクロニードルアレイのコーティングは、いずれの配列デザインにおいても固有の高い表面不規則性のため、困難をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
マイクロニードルアレイの基材をマスキングすることによって、コーティング流体の乾燥速度およびコーティング位置を調節および制御できることがわかった。
【0009】
本発明は、なかんずく、基材および少なくとも1つのニードルを有するマイクロニードルアレイを提供する工程と;マスキング層によって基材が少なくとも部分的に被覆され、そして少なくとも1つのニードルが少なくとも部分的に暴露されたまま残るように、マイクロニードルアレイ上に取り外し可能なマスキング層を提供する工程と;マイクロニードルアレイの暴露部分の少なくとも一部にコーティング材料を適用する工程とを含んでなるマイクロニードルアレイのコーティング方法を提供する。
【0010】
本発明は、発明の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を含む残りの開示内容を考慮することによって、当業者にさらに理解されるであろう。
【0011】
本明細書で使用する場合、特定の用語は、以下に示される意味を有するものとして理解されるであろう。
【0012】
「アレイ」は、治療剤の経皮送達または皮膚を通して、もしくは皮膚への流体のサンプリングを促進するために角質層に穴を開けることが可能である1つ以上の構造を含む、本明細書に記載される医療デバイスを指す。
【0013】
「マイクロ構造」、「マイクロニードル」または「マイクロアレイ」は、治療剤の経皮送達または皮膚を通しての流体のサンプリングを促進するために角質層に穴を開けることが可能であるアレイと関連する特定の微細構造を指す。例として、マイクロ構造は、ニードルまたはニードル様構造、ならびに角質層に穴をあけることが可能である他の構造を含み得る。
【0014】
本発明の特徴および利点は、好ましい実施形態の詳細な説明ならびに添付の特許請求の範囲を考慮することで理解されるであろう。本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、本発明の様々な実例となる実施形態と関連して以下に記載される。上述のような本発明の要約は、本発明の開示された各実施形態または全ての実施を説明する意図はない。以下の図面および詳細な説明は、特に、実例となる実施形態を例示するためのものである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態について、添付の図面を参照して、以下にさらに詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の方法の一実施形態を図1〜図3に示す。図1は、基材220と、基材220から突出するマイクロニードル210とを有するコーティングされてないマイクロニードルアレイ200を示す。マスキング流体230がマイクロニードルアレイ200に適用され(図2に示される)、それによって基材220がコーティングされる。次いで、コーティング流体235が適用される(図3Aに示される)。コーティング流体235は、それがマスキング流体230を妨害しないように望ましく適用される。コーティング流体235は、マスキング流体230よりも上に望ましく別々の層を形成する。図3Bに示されるように、コーティング流体を部分的に蒸発させる。図3Cに示されるように、コーティング流体を完全に蒸発させ、マイクロニードル210の先端部上に乾燥コーティング240が残される。図3Dに示されるように、マスキング流体230を部分的に蒸発させる。図3Eに示されるように、マスキング流体230を完全に蒸発させる。
【0017】
上記の連続的な蒸発は、かかる不連続で段階的な手法で行う必要がないことは理解されなければならない。すなわち、コーティング流体の全てを蒸発させる前にマスキング流体のレベルが図3Bに示されるように低下し得るように、コーティング流体およびマスキング流体の両方を同時に蒸発させてもよい。同様に、図3Eに示される乾燥コーティングは、多くの異なる形状のいずれかを取ってもよい。図示されるように、それは各マイクロニードルの上部の薄層状コーティングであってもよいが、それは先端部においてより多くの液滴形状を形成してもよく、または同様にマイクロニードルの下部を部分的にコーティングしてもよい。乾燥コーティングの位置を調節するために、マスキング流体およびコーティング流体の蒸発および/または混合の相対的な速度を調節することは望ましい。乾燥コーティング部分は基材上に付着されてもよい。
【0018】
マスキング流体は、図2に示されるように基材を均一に被覆する必要はないが、図4に示されるように、表面張力効果のためにメニスカスを形成してもよい。このメニスカスは凹形形状として示されるが、凸面形状であってもよい。メニスカスの形状は、マスキング流体の種類、基材およびマイクロニードルの材料の種類、マイクロニードルの大きさ、マイクロニードル間の間隔、ならびにマイクロニードルおよび/または基材のいずれの表面処理を含む多くの要因によって調節されてもよい。
【0019】
一実施形態において(図示されず)、マスキング流体は、マイクロニードルの全部を被覆するように最初に適用されてもよい。次いで、コーティング材料が適用されたマイクロニードルが部分的に暴露されるように、マスキング流体を部分的に蒸発させるか、または部分的に除去してもよい。その後、マイクロニードルが暴露された後にコーティング材料が適用されてもよく、またはマスキング流体がマイクロニードルをまだ完全に被覆している間に、コーティング材料がマスキング流体の上部に適用されてもよい。マスキング流体が除去され、アレイが暴露されると、次いで、その後、コーティング材料はマイクロニードルアレイの暴露部分に適用される。
【0020】
選択されるマスキング流体の種類は広範囲であり、そして基材およびマイクロニードルの材料の種類、マイクロニードルの大きさ、マイクロニードル間の間隔、基材および/またはマイクロニードルのいずれの表面処理、コーティング流体の種類、コーティング流体内に含有されるいずれの治療剤、ならびに乾燥コーティングされたマイクロニードルアレイが意図される適用を含む多くの要因次第であり得る。
【0021】
一態様において、マスキング層の流体の密度はコーティング溶液の密度より高い。マイクロニードルアレイは典型的に、基材が下部から支持され、そしてコーティング流体が上部から適用される配向で配置される。この場合、マスキング層の流体のより高い密度は、マスキング流体およびコーティング溶液の混合を防止または最小化することを補助し得る。一態様において、マスキング流体はコーティング流体と実質的に不混和性である。実質的に不混和性によって、マスキング流体およびコーティング流体が完全に不混和性である必要はないが、他方における一方の相対的な溶解性が比較的小さく、わずかであることは理解されなければならない。例えば、コーティング流体中のマスキング流体の溶解性(またはその逆)は約5重量%未満、好ましくは約1重量%未満である。一態様において、コーティング流体内に含有される1つ以上の溶質は、マスキング流体内で実質的に不溶性である。実質的に不溶性によって、1つ以上の溶質が完全に不溶性である必要はないが、1つ以上の溶質の溶解性は比較的小さく、わずかであることは理解されなければならない。例えば、マスキング流体中のコーティング流体溶質の溶解性は、コーティング流体中の溶質の溶解性の10%未満、そして好ましくは1%未満である。
【0022】
一態様において、マスキング流体は、望ましくはコーティング流体の蒸気圧より低い蒸気圧を有する。すなわち、マスキング層の流体の揮発性はコーティング流体の揮発性より低い。これは、マスキング流体が蒸発する前にコーティング流体を実質的に蒸発させることを補助し得る。一実施形態において、揮発性または蒸気圧は、マスキング流体およびコーティング流体の両方が受ける乾燥温度において決定および比較されてよい。マスキング流体および/またはコーティング流体の乾燥は、いずれの適切な温度で実行されてもよい。例えば、乾燥は、典型的大気条件によって自然に提供される以外にも、本質的に蒸発への制限のない条件で周囲条件(例えば約20℃〜23℃)で実行されてよい。あるいは部分的または完全にマスキング流体および/またはコーティング流体蒸気によって飽和された環境にアレイを保持することによって、乾燥速度を変更することもできる。これは、アレイの周囲環境に蒸気を直接的に添加することによって、またはアレイ周囲の領域で蒸気を蓄積させるために部分的に閉鎖された環境にアレイを配置することによって実行され得る。例えば、乾燥中、閉鎖されたペトリ皿にアレイを保持してもよい。なおもう1つの選択肢において、乾燥速度を促進するように温度増加および/または空気流を組み合わせることが可能な乾燥オーブンにアレイを保持してもよい。なおもう1つの選択肢において、2つの流体の差異による蒸発を促進するために、コーティング流体とは異なる温度(例えば、より低い温度)においてマスキング流体を保持してもよい。1つの選択肢において、コーティング流体とほぼ同時速度で、またはコーティング流体よりも速い速度で蒸発するように、マスキング流体の蒸気圧を調節することが望ましい。かかる調節は、例えば、マイクロニードルの全側面のコーティングまたは基材の部分的コーティングを可能にし、これは、乾燥コーティングされたマイクロニードルアレイの意図された用途次第で望ましい。もう1つの実施形態において、コーティング溶液を乾燥させた後、マスキング流体は単に基材から除去されてもよい。
【0023】
フッ素化溶媒、例えばヒドロフルオロエーテル、ヒドロフルオロアルカン、ペルフルオロアルカンおよび他のペルフッ素化化合物は比較的高い密度を有し、そして水および/または多くの従来の有機溶媒と比較的不混和性であるため、マスキング流体としての使用のために特に適切であり得る。適切なフッ素化溶媒の例としては、3−エトキシ−1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6−ドデカフルオロ−2−トリフルオロメチル−ヘキサン(3M カンパニー(3M Co.)から3M(登録商標)ノベック(Novec)(登録商標)エンジニアド フルイド(Engineered Fluid)HFE−7500として入手可能)、エチルノナフルオロイソブチルエーテルおよびエチルノナフルオロブチルエーテル(3M カンパニー(3M Co.)から3M(登録商標)ノベック(Novec)(登録商標)エンジニアド フルイド(Engineered Fluid)HFE−7200として入手可能である混合物)、FC−43フルオリナート(FLUORINERT)(登録商標)エレクトロニック リキッド(Electronic Liquid)(3M カンパニー(3M Co.)から入手可能である第一級12炭素ペルフルオロ化合物の混合物)、ならびにFC−5312フルオリナート(FLUORINERT)(登録商標)エレクトロニック リキッド(Electronic Liquid)(3M カンパニー(3M Co.)から入手可能である第一級15炭素ペルフルオロ化合物の混合物)が挙げられる。例えば、コーティング溶液がヘキサンまたはヘプタンのような低密度有機溶媒を含んでなる場合、水はマスキング流体として適切であり得る。
【0024】
コーティング溶液はキャリア流体または溶媒と、最終的にマイクロニードルアレイ上で乾燥コーティングとなる少なくとも1種の溶解または分散されたコーティング材料とを含んでなる。キャリア流体または溶媒は、コーティングが意図される材料を溶解または分散することができるように選択されなければならない。分散された材料は懸濁液の形態であってもよく、すなわち、キャリア流体または溶媒中に分散または懸濁された粒子であってよい。適切なキャリア流体または溶媒の例としては、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、ヘキサンおよびヘプタンが挙げられる。コーティング溶液は、例えば、粘度変性剤、安定剤、界面活性剤および他の添加剤を含む追加的な賦形剤を含有してもよい。適切な追加的な賦形剤の例としては、スクロース、トレハロース、ラフィノース、ラクトース、オバルブミン、クエン酸カリウム、ポリビニールピロリドン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(すなわち、ポリソルベート)およびヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。一実施形態において、コーティング溶液は、好ましくはマスキング層を湿潤し、すなわち、それはマスキング層を横切って比較的均一に延展する。かかる延展は、コーティングされた材料のマイクロニードルアレイへの比較的均一な適用を望ましく導く。あるいは、コーティング溶液および/またはマスキング流体の表面特性は、コーティング溶液の延展量を制御し、それによって、マイクロニードルアレイ上の特定の位置においてコーティング材料の制御された量の適用が可能となるように調節されてもよい。キャリア流体の蒸発は周囲条件で生じてよく、あるいはマイクロニードルアレイの周囲雰囲気の温度または圧力を変更させることによって調節されてもよい。蒸発条件は、コーティング材料の分解を避けるように望ましく選択される。
【0025】
マイクロニードルアレイへの第1のマスキング流体の添加後、第2のマスキング流体が任意に添加されてもよい。例えば、ヒドロフルオロエーテルマスキング流体をアレイに添加し、続いてエタノールが添加され、マスキング層を調製してもよい。次いで、その後、コーティング溶液を前記の通り添加する。第2のマスキング流体は、相対的な蒸発速度の変更または異なる流体間の表面張力の調節において補助となり得る。
【0026】
もう1つの実施形態において、スプレーコーティングの場合のように、コーティングは固体として直接的に適用されてもよい。この場合、キャリア流体は任意であるか、または不必要である。もう1つの実施形態において、マスキング層は固体または半固体層の形態であってもよい。マスキングフィルム300の形態のマスキング層を図5に示す。かかるフィルムは、例えば薄ポリマーフィルムであってよい。これはマイクロニードルの先端部のみが暴露されるように、マイクロニードルによって、予め決められた高さまで穿孔される。図6に示されるように、コーティング溶液はニードル先端部に適用されてよい。コーティング溶液は、図3Aに示されるような連続層として適用されてもよい。
【0027】
乾燥コーティング材料をマイクロニードルアレイ上に付着させる。一実施形態において、乾燥コーティング材料をマイクロニードル上に優先的に付着させる。優先的に付着させるとは、単位表面領域あたりの乾燥コーティングの量がマイクロニードル上において基材上よりも大きいことを意味される。より好ましくは、乾燥コーティング材料はマイクロニードル先端部上またはその付近で優先的に付着される。いくつかの場合、重量で半分より多く、時には90%より多く、そしてたまに95%より多くの乾燥コーティング材料がマイクロニードル上で付着される。いくつかの場合、乾燥コーティングは、マイクロニードルの上部半分、すなわち基材から離れたマイクロニードル部分において優先的に配置される。一実施形態において、実質的に乾燥コーティング材料は基材上に付着されず、すなわち、実質的に全ての乾燥コーティング材料はマイクロニードル上に付着される。一実施形態において、実質的に全ての乾燥コーティング材料がマイクロニードルの上部半分上に付着される。実質的に全てということによって、乾燥コーティング材料の微量、例えば、乾燥コーティング材料の約5重量%未満、好ましくは約1重量%未満がマイクロニードルの上部半分上に付着されないことが理解されなければならない。乾燥コーティング材料の厚さは、マイクロニードルアレイの位置およびコーティングされたマイクロニードルアレイの意図された適用用途次第で異なってよい。典型的に乾燥コーティングの厚さは50ミクロン未満であり、しばしば20ミクロン未満であり、そして10ミクロン未満であることもある。コーティングの厚さに関して、皮膚に有効に穴をあけるマイクロニードルの能力を干渉しないように、マイクロニードル先端部付近でより小さいことが望ましい。
【0028】
一実施形態において、コーティング材料の異なる部分は、マイクロニードルアレイ上において異なる位置で優先的に付着されてよい。例えば、コーティング材料が薬学的に有効な物質(例えば、抗原)を含んでなる場合、マイクロニードルの先端部上または付近で薬学的に有効な物質を優先的に付着させることが望ましい。いくつかの場合、重量で半分より多く、時には90%より多く、そしてたまに95%より多くの薬学的に有効な物質がマイクロニードル上で付着される。いくつかの場合、薬学的に有効な物質は、マイクロニードルの上部半分、すなわち基材から離れたマイクロニードル部分において優先的に配置される。一実施形態において、薬学的に有効な物質は基材上に実質的に付着されず、すなわち、実質的に全ての薬学的に有効な物質はマイクロニードル上に付着される。一実施形態において、実質的に全ての薬学的に有効な物質は、マイクロニードルの上部半分に付着される。実質的に全てということによって、薬学的に有効な物質の微量、例えば、薬学的に有効な物質の約5重量%未満、好ましくは約1重量%未満がマイクロニードルの上部半分上に付着されないことが理解されなければならない。
【0029】
乾燥コーティング材料は、キャリア流体の除去後、固体または半固体のままである。しかしながら、乾燥コーティング材料を指す場合、得られた乾燥コーティング材料にキャリア流体および/またはマスキング流体の比較的少量が残り得ることは理解されなければならない。例えば、キャリア流体が水を含んでなる場合、得られた乾燥コーティングは、典型的に、約0.1〜30重量%の水、しばしば約1重量%〜20重量%の水、そして時には約1〜10重量%の水を含有し得る。
【0030】
マスキングフィルムが利用される場合、それは望ましくは液体不浸透性フィルムであり、そして好ましくはポリマーフィルムである。適切なポリマーフィルムの例としては、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレートが挙げられる。マスキングフィルムは、例えばシリコーンまたはフルオロケミカルリリースコーティングのような表面コーティングを有してもよい。これは、マスキングフィルムから水性コーティング流体を撥ね、そして暴露されたニードル先端部上においてコーティング溶液をビーズ状にさせる。あるいは、マスキングフィルムは親水性コーティングを有してもよい。これは、マスキングフィルムから有機コーティング流体を撥ね得る。
【0031】
一態様において、キャリア流体を蒸発させ、図3Eに示されるような乾燥コーティングされたマイクロニードルアレイが残った後、マスキングフィルムが除去される。あるいは、マスキングフィルムは適切な位置で残されてよく、そして図6Cに示されるようなマスキングフィルムを有する乾燥コーティングされたマイクロニードルアレイを皮膚表面に直接的に適用することができる。もう1つの選択肢において(図示されず)、キャリア流体を蒸発させた後、フィルムを下方向に押して基材と接触させることができる。参照したことにより本明細書に開示内容を加入したものとする米国特許出願公開第2003/0135161号明細書に記載されるように、マスキングフィルムによってコーティングされたアレイはさらなる実用性を有し得る。力および超音波エネルギーの同時送達ならびに米国特許出願公開第2003/0135161号明細書に記載の他の方法を含むいずれかの適切な方法によって、マイクロニードルアレイによってマスキングフィルムを穿孔することができる。
【0032】
一実施形態において、2つの不混和性溶液を煽動または撹拌し、マイクロニードルアレイに適用可能な一時的に均一な乳濁液を形成してもよい。マイクロニードルアレイへの適用後、次いで、乳濁液は相分離し、基材に対してマスキング層として機能する流体層と、コーティング溶液として機能する流体層を残し得る。これらの層を次いで蒸発させ、前記のように乾燥コーティングフィルムを残してもよい。
【0033】
もう1つの実施形態において、マスキング層は、液体に変換され、その後除去され得る半固体または固体層であってもよい。適切なマスキング層の例としては、温度反応性ゲル、エレクトロレオロジー流体、可逆性ゲル、例えばpHまたはイオンのいずれかに感応性であるシリカまたはポリマーゲル、あるいはいずれかの他の適切な一時的または可逆性ゲルが挙げられる。
【0034】
マスキング層として有用である代表的な温度反応性ゲルは、プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロックコポリマーから形成されるゲル、例えば、プルロニック(Pluronic)(登録商標)F−77(BASFから入手可能)である。温度反応性プロピレンオキシド−エチレンオキシドブロックコポリマーの溶液を基材に適用し、次いでアレイを34℃以上の温度まで加熱してゲルを形成することによって、約1%固体含量の水性ゲルをマイクロニードルアレイ上に調製してもよい。コーティング溶液を暴露されたマイクロニードルに適用し、そしてその後乾燥させる。次いで、乾燥コーティングされたアレイを室温まで冷却し、それによってゲルを液体状態に戻し、これをアレイから除去してよい。温度反応性ゲルの他の例は、参照することによりその内容を本明細書に加入したものとする米国特許第4,474,751号明細書にも見られる。
【0035】
参照することにより本明細書に援用される米国特許第5,340,572号明細書および同第5,192,535号明細書に記載されるような塩への暴露時にゲル化する低固体含量ヒドロゲル溶液をマイクロニードルアレイ基材に適用し、マスキング層を提供してもよい。次いで塩溶液をヒドロゲル溶液に添加し、ヒドロゲル溶液をゲル化させてもよい。次いで、ゲル化されたマスキング層にコーティング溶液を適用し、そして乾燥させてもよい。それによって、マイクロニードルの暴露部分上に乾燥コーティングされたマイクロニードルアレイが残る。次いで、ゲル化されたマスキング層のpHまたはイオン含量を変更し、マイクロニードルアレイから容易に除去が可能な液体状態へとゲルを戻してよい。
【0036】
荷電コロイド状流体をマスキング層として適用してもよい。電場の適用時に、コロイド状流体は、半固体マスキング層として機能することが可能であるゲルを形成し得る。次いで、ゲル化されたマスキング層にコーティング溶液を適用し、そして乾燥させ、それによってマイクロニードルの暴露部分上に乾燥コーティングされたマイクロニードルアレイが残る。次いで電場を除去し、マスキング層を液体状態へと変換することができる。この液体はアレイから除去することができ、そして/または蒸発させることができる。
【0037】
もう1つの実施形態において、マスキング層は、氷のような凍結流体を含んでなる固体層であってもよい。コーティング溶液を適用し、そして乾燥させ、マイクロニードルの暴露部分上に乾燥コーティングされたマイクロニードルアレイが残る。次いで、氷の層は加温されて、いずれかの従来の手段によって除去することができる液体水となる。
【0038】
前記実施形態のいずれにおいても、マスキング流体をアレイ基材に適用するため、またはコーティング溶液をマスキングされたマイクロニードルアレイに適用するために、浸漬、ブラッシング、ドロップコーティング、精密容積計量分配(precision volumetric dispensing)、グラビアコーティングおよびスプレーコーティングを含む多くの従来のコーティング法のいずれが使用されてもよい。一実施形態において、アレイ基材にわたって延展される1滴以上の計量された量としてコーティング溶液および/またはマスキング溶液を適用してよい。
【0039】
一実施形態において、図3Eに示されるマイクロニードルアレイは、図7でより詳細に示されるパッチの形態で皮膚表面に適用されてもよい。図7は、アレイ22、感圧接着剤24およびバッキング26の組み合せの形態でパッチ20を含んでなるマイクロニードルデバイスを示す。アレイ22の一部には、マイクロニードル基材表面14から突出しているマイクロニードル10が示される。マイクロニードル10はいずれかの所望のパターンで配列されてよく、またはランダムにマイクロニードル基材表面14上に分散されてもよい。示されるように、マイクロニードル10は均一に間隔をあけた列に配列される。一実施形態において、本発明のアレイは、約0.1cm2より大きく、約20cm2未満の、好ましくは約0.5cm2より大きく、約5cm2未満の末端が面する表面領域を有する。一実施形態(図示せず)において、パッチ20の基材表面14の一部はパターン化されていない。一実施形態において、パターン化されていない表面は、患者の皮膚表面に面するデバイス表面の全領域の約1パーセントより大きく、約75パーセント未満の領域を有する。一実施形態において、パターン化されていない表面は、約0.10平方インチ(0.65cm2)より大きく、約1平方インチ(6.5cm2)未満の領域を有する。もう1つの実施形態(図7に示される)において、マイクロニードルは、アレイ22の実質的に全ての表面領域上に配置される。
【0040】
本発明の様々な実施形態において有用なマイクロニードルデバイスは、参照により本明細書に援用される以下の特許および特許出願に記載されるもののような様々な立体配置のいずれかを含んでもよい。マイクロニードルデバイスのための1つの実施形態は、米国特許出願公開第2003/0045837号明細書に開示される構造を含んでなる。この特許出願において開示されたマイクロ構造は、各マイクロニードルの外側表面において形成された少なくとも1つのチャネルを含むテーパー構造を有するマイクロニードルの形態である。マイクロニードルは一方向において伸長された基部を有してよい。細長い基部を有するマイクロニードル中のチャネルは、細長い基部の端部の一方からマイクロニードル先端部の方向へと延在し得る。マイクロニードルの側面に沿って形成されたチャネルは、任意にマイクロニードル先端部のぶん短く終了してもよい。マイクロニードルアレイは、マイクロニードルアレイが位置する基材の表面上で形成される導管構造を含んでもよい。マイクロニードルでのチャネルが、導管構造と流体連絡していてもよい。マイクロニードルデバイスのもう1つの実施形態は、同時係属中の2003年7月17日出願の米国特許出願第10/621620号明細書において開示される構造を含んでなる。この特許は、先端を切断されたテーパー形状および制御された縦横比を有するマイクロニードルを記載する。マイクロニードルデバイスのためのなおもう1つの実施形態は、米国特許第6,091,975号明細書(ダッドナ(Daddona)ら)に開示される構造を含んでなる。この特許は、皮膚に穴をあけるためのブレード様マイクロ突出を記載する。マイクロニードルデバイスのなおもう1つの実施形態は、米国特許第6,313,612号明細書(シャーマン(Sherman)ら)に開示される構造を含んでなる。この特許は、中空の中心チャネルを有するテーパー構造を記載する。マイクロアレイのなおもう1つの実施形態は、国際公開第00/74766号パンフレット(ガートスタイン(Gartstein)ら)に開示される構造を含んでなる。この特許は、マイクロニードル先端部の上部表面において少なくとも1つの縦方向のブレードを有する中空マイクロニードルを記載する。
【0041】
マスキング層およびコーティング材料を適用する前に、マイクロニードルアレイの1つ以上の表面をコーティングまたは表面一次処理によって変更してもよい。例えば、マスキング層を適用する前に材料の薄層をアレイの全表面に適用してもよい。かかるコーティングはアレイの親水性または疎水性を変化させ、それによってアレイを湿潤させるマスキング層および/またはコーティング溶液の能力に影響を及ぼし得る。キャリア溶媒が完全に蒸発する前にコーティングがコーティング溶液に部分的または完全に溶解し、それによってコーティング一次処理材料とその後に適用されるコーティング材料との乾燥混合物が残るように、かかるコーティングはコーティング溶液と部分的または完全に混和性であってもよい。かかるコーティングの例としては、ポリマーコーティング、乾燥粉末および非晶質ガラスが挙げられる。
【0042】
適切なポリマーコーティングの例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、フルオロポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる。かかるポリマーコーティングは、ポリマー溶液(例えば、水溶液またはエタノール溶液)をアレイに適用し、そして溶媒を蒸発させ、それによって乾燥ポリマーコーティングを背後に残すことによってアレイ上に調製することができる。あるいは、例えば熱またはプラズマ付着の使用によって、コーティングを固体材料として直接的に適用してもよい。乾燥粉末の例としては、硫酸アルミニウムカリウム十二水和物、水酸化アルミニウム一水和物、スクロース、トレハロースおよびラクトースが挙げられる。アレイ上へ硬化される材料の薄層の例としては、米国特許第6,881,538号明細書(ハダド(Haddad)ら)に記載のもののようなプラズマ付着させられたダイヤモンドライクガラスフィルム、米国特許第5,440,446号明細書(シャウ(Shaw)ら)に記載されるもののような紫外線重合アクリレート、プラズマ付着フルオロポリマー、あるいはスプレーコーティングまたはロールコーティングのような従来のコーティング法によって適用され、その後いずれかの適切な放射線を使用して架橋されるいずれかの他の薄層が挙げられる。
【0043】
単純に表面の化学官能性を変化させる表面一次処理によってマイクロニードルの表面を変化させてもよい。典型的な表面一次処理としては、表面官能性を変化させることが可能な様々なプラズマ処理が挙げられる。例えば、ポリカーボネートは、アミド官能性を生じるように窒素プラズマでプラズマ処理されるか、またはカルボキシレート官能性を生じるように酸素プラズマでプラズマ処理されてもよい。混合表面官能性を与えるために、窒素および酸素プラズマ処理の組み合せを使用してもよい。
【0044】
コーティング溶液は、1種以上の生物学的に活性な材料、薬学的に有効な物質および治療活性物質を含んでもよい。一実施形態において、本発明における使用のために適切なマイクロニードルデバイスを、様々な経皮送達において皮膚を通して、または皮内もしくは局所治療のために皮膚へと、ワクチンのような薬物(いずれの薬剤も含む)を送達するために使用してもよい。一態様において、巨大分子量である薬物は経皮的に送達されてもよい。薬物の分子量を増加させることは、典型的に補助のない経皮送達における低下を生じる。本発明における使用のために適切なマイクロニードルデバイスは、受動的な経皮送達によって送達することが通常困難である巨大分子の送達に関する実用性を有する。かかる巨大分子の例としては、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド配列、モノクロナール抗体、DNAワクチン、多糖類、例えばヘパリンおよび抗生物質、例えばセフトリアキソンが挙げられる。
【0045】
もう1つの態様において、本発明における使用のために適切なマイクロニードルデバイスは、受動的な経皮送達によって送達するのが困難であるか、または不可能である小分子の経皮送達を向上または可能にするための実用性を有し得る。かかる分子の例としては、塩型;イオン分子、例えば、アレンドロン酸ナトリウムまたはパミドロン酸ナトリウムを含むビスホスホネート;および受動的な経皮送達に貢献しない物理化学特性を有する分子が挙げられる。
【0046】
もう1つの態様において、本発明における使用のために適切なマイクロニードルデバイスは、例えば、皮膚科治療、ワクチン送達において、またはワクチン補助剤の免疫応答増加において、皮膚への分子送達を向上するための実用性を有し得る。適切なワクチンの例としては、インフルエンザワクチン、ライム病ワクチン、狂犬病ワクチン、はしかワクチン、おたふくかぜワクチン、水痘ワクチン、天然痘ワクチン、肝炎ワクチン、百日咳(pertussis)ワクチン、風疹ワクチン、ジフテリアワクチン、脳炎ワクチン、黄熱ワクチン、組換えタンパク質ワクチン、DNAワクチン、ポリオワクチン、治療癌ワクチン、ヘルペスワクチン、肺炎球菌ワクチン、髄膜炎ワクチン、百日咳(whooping cough)ワクチン、破傷風ワクチン、腸チフスワクチン、コレラワクチン、結核ワクチンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。従って、用語「ワクチン」は、限定されないが、タンパク質、多糖類、オリゴ糖類または弱化もしくは死滅ウイルスの形態の抗原が挙げられる。適切なワクチンおよびワクチン補助剤の追加的な例は、参照することによりその開示内容が本明細書に援用される米国特許出願公開第2004/0049150号明細書に記載されている。
【0047】
マイクロニードルデバイスは、それらが適用されて直ちに適用部位から除去されるか、またはそれらが適切な位置で数分から長くて1週間の範囲の延長された期間で残されてもよい即時送達のために使用されてもよい。一態様において、送達の延長期間は、適用および即時除去によって得られる場合よりも薬物の完全な送達を可能にするために1分〜30分であってよい。もう1つの態様において、送達の延長期間は、薬物の除放をもたらすために4時間〜1週間であってよい。
【実施例】
【0048】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による破傷風トキソイド全アレイ含量
50mM過塩素酸カリウム、50mMクエン酸カリウム、20mMリン酸ナトリウム、376mM塩化ナトリウムおよび100μg/mLウシ血清アルブミンを含有する試料抽出溶媒を調製した。HPLC試料溶液は、ポリプロピレンカップにアレイを配置し、このカップに1.0mLの試料抽出溶媒を添加し、試料カップ上にキャップをはめ、そして30分間超音波処理することによって調製した。
【0049】
勾配溶出HPLC(移動相A):0.2%(v/v)過塩素酸;移動相B:10%水、88%アセトニトリル、2%イソプロパノール、0.2%過塩素酸(70%);溶媒プログラム:0.00分、22%B、1.0mL/分;6.00分、58%B、1.0mL/分;6.01分、100%B、1.0mL/分;6.50分、100%B、0.5mL/分;10.0分、0%B、0.5mL/分;注射量:100μL;カラム:ゾルバックス(Zorbax)300SB−C8(50×4.6mm、3.5ミクロン)を使用して、HPLC試料溶液中の破傷風トキソイドの量を定量した。
【0050】
凍結乾燥されたTT一次標準(リスト バイオロジクス(List Biologics))に対して、補助剤を含まない(Non-adjuvanted)破傷風トキソイド(TT)ワクチン(アベンティス(Aventis))を較正し、そして常用標準として使用した。常用標準を使用し、約1μg−TT/mL〜28μg−TT/mLまでの較正曲線を得た。較正曲線の直線回帰に関する相関係数は、典型的に0.999より高かった。破傷風トキソイド含量の結果は、6回および10回の複数回の間の平均である。
【0051】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による破傷風トキソイド先端部含量
それがHPLC試料溶液中に抽出されないように、基材上およびマイクロニードルの下部の適切な位置でトキシドを固定することによって、マイクロニードル先端部上の破傷風トキソイド含量を測定した。マイクロニードルアレイは、針が上向きの状態で平坦な表面上に配置され、そして10μLのオイルベースのポリウレタンコーティング溶液(ミンワックス(Minwax)(登録商標)ファースト−ドライニング(Fast−Drying)ポリウレタン)をアレイに適用し、そしてアレイの基材をコーティングした。ポリウレタンを周囲条件で少なくとも3時間硬化させた。全含量の方法において記載されるように、その後、アレイを抽出し、分析した。
【0052】
誘導結合プラズマ(ICP)によるアルミニウム含量
ICPによるアルミニウム分析のため、HPLC試料溶液(前記)の0.5mLアリコートを4%硝酸によって5.0mLまで希釈した。1、2、4、5、6、8および11μg/mLのアルミニウム標準を使用することによって、分析を較正した。較正曲線の直線回帰に関する相関係数は、典型的に0.999より高かった。
【0053】
酵素結合イムノソルバントアッセイ(ELISA)
ウサギ血清からの抗破傷風トキソイドIgGの定量決定をELISAによって実行した。破傷風トキソイドを固体相にコーティングし、そしてウサギ血清試料からの抗破傷風トキソイドIgGを結合させる。プレートを洗浄し、そして抗ウサギIgG−HRP抱合体によってウサギIgGを検出する。EP獣医標準のウサギ抗破傷風トキソイドBRPバッチ(Batch)1(EDQM−ヨーロピアン ファーマコぺイア コミッション(EDQM−European Pharmacopeia Commission)カタログ番号C2425600)に対してアッセイを標準化した。このELISAからの1000任意単位(AU)は、1国際単位(IU)と同等である。特記されない限り、抗破傷風トキソイドIgGの結果は5回の繰り返しの幾何学平均として報告される。
【0054】
マイクロニードルアレイ
マイクロニードルアレイを以下のように調製した。ディスクの片側に集中した正方形(1cm2)のマイクロニードルのアレイ(37×37)によって部分的にパターン化された円形ディスク(面積2cm2、厚さ1.02mm)を調製した。ニードルは、正方形のパターンにおいて隣接したニードル先端部間で275ミクロンの距離で規則正しく間隔をあけられた。個々のニードルは、250ミクロンの高さおよび83.3ミクロンの側長を有する正方形基部のピラミッド形状であった。先端部は、5ミクロンの側長を有する平坦な正方形のトップを有するように先端を切られた。アレイは、国際公開第05/82596号パンフレットに提供される一般的な記述にしたがって射出成形され、ポリカーボネートから製造された(レクサン(Lexan)(登録商標)HPS1R−1125、GE プラスチックス(GE Plastics)、マサチューセッツ州、ピッツフィールド(Pittsfield,MA))。次いでディスクの中心をダイカットし、ディスクのパターン側の表面の約90%においてマイクロニードルを有するマイクロニードルアレイ(面積=1cm2)を提供した。マイクロニードルアレイは約1200マイクロニードルを有した。
【0055】
実施例1
6.0gの硫酸アルミニウムカリウム十二水和物(ペンタ(Penta)、USPグレード)、0.24gの水酸化アルミニウム一水和物および100mLの水のアルミニウム混合物を調製し、溶液がほぼ透明になるまで超音波処理した。次いで、小容積の貯蔵器、乱流発生装置およびアレイ保持器によって改造されたシックス−ジェット(Six−Jet)噴霧器(モデル9306、TSI インコーポレイテッド(TSI Inc.)、ミネソタ州、ショレヴュー(Shoreview,MN))を使用して、アルミニウム混合物をアレイ上へ1分間スプレーコーティングした。コーティング速度は、名目的には1分あたりアルミニウム20μgであった。次いで、ニードルが上方を向いている平坦な表面上にマイクロニードルアレイを配置した。HFE−7500 3M(登録商標)ノベック(Novec)(登録商標)エンジニアド フルイド(Engineered Fluid)、3−エトキシ−1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6−ドデカフルオロ−2−トリフルオロメチル−ヘキサン(3Mカンパニー(3M Co.)、ミネソタ州、セントポール(St.Paul,MN))をマスキング流体として使用した。ピペットを使用して、マスキング流体のアリコート(25μL)をアレイの中心に適用し、そしてアレイにわたって延展させた。抗原コーティング配合物は、同一部の破傷風トキソイド(スタテンス シラム インスティチュート(Statens Serum Institute)ロット92−1、888Lf/mL)およびエタノールを混合することによって調製された。ピペットを使用して、抗原コーティング配合物の10μLアリコートをアレイ上でマスキング流体の中心に適用した。適用された抗原コーティング配合物中の破傷風トキソイドの公称量は16μgであった。抗原コーティング配合物およびマスキング流体を約30分間、周囲条件で乾燥させ、アレイ上に乾燥した抗原コーティングを提供した。走査電子顕微鏡法(SEM)による抗原コーティングされたアレイの試験によって、マイクロニードル表面上に比較的滑らかなコーティングが示された。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は18.2μg(st.dev.=1.2μg)であった。ICPによって測定された、コーティングされたアレイのアルミニウム含量は40μg(st.dev.=10μg)であった。
【0056】
実施例2
抗原コーティング配合物を適用する前にアルミニウム混合物をアレイ上に3分間スプレーコーティングし、そしてマスキング流体の13μLアリコートを使用したことを除き、コーティングされたアレイを実施例1に記載の手順に従って調製した。走査電子顕微鏡法(SEM)による抗原コーティングされたアレイの試験によって、マイクロニードル先端部またはその付近に材料の塊状物または球体が示された。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は19.1μg(st.dev.=1.0μg)であった。ICPによって測定された、コーティングされたアレイのアルミニウム含量は57μg(st.dev.=21μg)であった。
【0057】
実施例3
以下の例外を除き、コーティングされたアレイを実施例1に記載の手順に従って調製した。1部の破傷風トキソイド、3部の水および4部のエタノールを混合することによって、抗原コーティング配合物を調製した。マスキング流体の13μLアリコートを使用した。適用された抗原コーティング配合物中の破傷風トキソイドの公称量は4μgであった。走査電子顕微鏡法(SEM)による抗原コーティングされたアレイの試験によって、マイクロニードル表面上に比較的滑らかなコーティングが示された。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は4.4μg(st.dev.=0.2μg)であった。ICPによって測定された、コーティングされたアレイのアルミニウム含量は13μg(st.dev.=6μg)であった。
【0058】
実施例4
抗原コーティング配合物を適用する前にアルミニウム混合物をアレイ上に5分間スプレーコーティングしたことを除き、コーティングされたアレイを実施例3に記載の手順に従って調製した。走査電子顕微鏡法(SEM)による抗原コーティングされたアレイの試験によって、マイクロニードル先端部またはその付近に材料の塊状物または球体が示された。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は4.7μg(st.dev.=0.4μg)であった。ICPによって測定された、コーティングされたアレイのアルミニウム含量は94μg(st.dev.=19μg)であった。
【0059】
実施例5
抗原コーティング配合物を適用する前にアルミニウム混合物をアレイ上に5分間スプレーコーティングしたことを除き、コーティングされたアレイを実施例2に記載の手順に従って調製した。走査電子顕微鏡法(SEM)による抗原コーティングされたアレイの試験によって、マイクロニードル表面上に比較的滑らかなコーティングが示された。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は17.9μg(st.dev.=0.8μg)であった。ICPによって測定された、コーティングされたアレイのアルミニウム含量は65μg(st.dev.=8μg)であった。
【0060】
実施例6
以下の例外を除き、コーティングされたアレイを実施例1に記載の手順に従って調製した。抗原コーティング配合物を適用する前にアルミニウム混合物をアレイ上に3分間スプレーコーティングした。2部の破傷風トキソイド、2部の水および4部のエタノールを混合することによって、抗原コーティング配合物を調製した。適用された抗原コーティング配合物中の破傷風トキソイドの公称量は8μgであった。走査電子顕微鏡法(SEM)による抗原コーティングされたアレイの試験によって、マイクロニードル表面上に比較的滑らかなコーティングが示された。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は7.6μg(st.dev.=0.7μg)であった。ICPによって測定された、コーティングされたアレイのアルミニウム含量は23μg(st.dev.=6μg)であった。
【0061】
実施例7
以下の例外を除き、コーティングされたアレイを実施例1に記載の手順に従って調製した。6.0gの硫酸アルミニウムカリウム十二水和物(ペンタ(Penta)、USPグレード)、0.06gの水酸化アルミニウム一水和物および100mLの水の比率でアルミニウム混合物を調製した。1部の破傷風トキソイドを1部の水と混合することによって、抗原コーティング配合物を調製した。マスキング流体の13μLアリコートを使用した。抗原コーティング配合物を適用する前に、ピペットを使用してマスキング流体の中心にエタノール(13μL)を適用した。次いで、エタノール上に抗原コーティング配合物を適用した。適用された抗原コーティング配合物中の破傷風トキソイドの公称量は16μgであった。走査電子顕微鏡法(SEM)による抗原コーティングされたアレイの試験によって、マイクロニードル表面上に滑らかなコーティングが示された。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は16.8μg(st.dev.=0.8μg)であった。ICPによって測定された、コーティングされたアレイのアルミニウム含量は15μg(st.dev.=3μg)であった。
【0062】
生体内抗破傷風トキソイドIgGおよび破傷風トキソイド除去
接着剤バッキングに実施例1〜2に記載の抗原コーティングされたアレイを接着させることによって、マイクロニードルデバイスを調製した。米国特許出願第60/578,651号明細書に一般的に記載されるようにアプリケーターを使用して、アレイをニュージーランド ホワイト(New Zealand White)メスウサギ(N=5)に適用した。前記文献は参照により本明細書に援用される。アプリケーターピストン質量は2.88gであり、そしてデバイスは6.19メートル/秒の速度で適用された。皮膚を刺激しないように注意しながら、各ウサギの腹部領域を密接にクリップし、そして剃った。1つのデバイスを各ウサギに適用し、そして除去の前に20分間、適切な位置で維持させた。最初の適用から14日後に各ウサギに第2のデバイス(第1のデバイスと同一コーティングを有するもの)を適用し、そして再び除去の前に20分間、適切な位置で維持させた。最初の適用の21日後に各ウサギから血清試料を採取し、そしてELISAによって抗破傷風トキソイドIgGのレベルに関して分析した。結果を表1にまとめる。ウサギから除去されたアレイの破傷風トキソイドの残量をHPLCによって試験した。アレイから除去された破傷風トキソイドの量は、初期破傷風トキソイドレベルと残留破傷風トキソイドレベルとの間で差異を計算することによって決定された。結果を表2にまとめる。
【0063】
【表1】

【0064】
実施例8
使用されたマスキング流体がFC−43フルオリナート(FLUORINERT)(登録商標)エレクトロニック リキッド(Electronic Liquid)、第一級12炭素ペルフルオロ化合物の混合物(3M カンパニー(3M Co.)、ミネソタ州、セントポール)であり、そして適用されたマスキング流体の量が15μLであったことを除き、コーティングされたアレイを実施例1に記載の手順に従って調製した。逆相HPLCによって測定された、コーティングされたアレイの破傷風トキソイド含量は17.6μg(st.dev.=1.8μg)であった。マイクロニードルの先端部上の破傷風トキソイド含量は2.7μg(st.dev.=0.2μg)であると測定された。
【0065】
実施例9
ニードルが上方を向いている平坦な表面上にマイクロニードルアレイを配置した。FC−43フルオリナート(FLUORINERT)(登録商標)エレクトロニック リキッド(Electronic Liquid)をマスキング流体として使用した。ピペットを使用して、マスキング流体のアリコート(15μL)をアレイの中心に適用し、そしてアレイにわたって延展させた。抗原コーティング配合物は、同一部の破傷風トキソイド(スタテンス シラム インスティチュート(Statens Serum Institute)ロット92−1、888Lf/mL)およびエタノールを混合することによって調製された。ピペットを使用して、抗原コーティング配合物の10μLアリコートをアレイ上でマスキング流体の中心に適用した。適用された抗原コーティング配合物中の破傷風トキソイドの公称量は16μgであった。抗原コーティング配合物およびマスキング流体を約30分間、周囲条件で乾燥させ、アレイ上に乾燥した抗原コーティングを提供した。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は23.6μg(st.dev.=0.1μg)であった。破傷風トキソイド先端部含量は21.7μg(st.dev.=1.2μg)として測定された。
【0066】
実施例10
25mLの水に825mgのポリビニルピロリドン(PVP)(プラスドン(Plasdone)(登録商標)K−29/32、ポビドンUSP(Povidone USP)、ISPテクノロジーズ(ISP Technologies)、ニュージャージー州、ウェイン(Wayne,NJ))を添加し、そしてPVPが溶解するまで混合することによってPVP貯蔵液を調製した。25mLエタノールに50mgポリソルベート80(トウィーン(Tween)(登録商標)−80、シグマ ケミカル カンパニー(Sigma Chemical Co.)、ミズーリ州、セントルイス(St.Louis,MO))を添加することによって貯蔵液を調製した。18mLエタノールに2mLのポリソルベート貯蔵液を添加することによって希釈貯蔵液を調製した。9mLの希釈ポリソルベート貯蔵液に1mLのPVP貯蔵液を添加することによってPVPプライミング溶液を調製した。ニードルが上方を向いている平坦な表面上にマイクロニードルアレイを配置し、そしてピペットを使用して30μLのPVPプライミング溶液のアリコートをアレイの中心に適用し、そしてアレイにわたって延展させた。PVPプライミング溶液を周囲条件で乾燥させた。
【0067】
トウィーン(Tween)(登録商標)−80(90mg)を水(30mL)に添加し、3mg/mLの濃度のトウィーン(Tween)(登録商標)−80貯蔵液を調製した。PVP(1.8g)を水(20mL)に添加し、90mg/mLの濃度のPVP貯蔵液を調製した。スクロース(1.8g)を水(20mL)に添加し、90mg/mLの濃度のスクロース貯蔵液を調製した。クエン酸カリウム(1.8g)を水(20mL)に添加し、90mg/mLの濃度のクエン酸カリウム貯蔵液を調製した。破傷風トキソイド(スタテンス シラム インスティチュート(Statens Serum Institute)ロット92−1、888Lf/mL)を、トウィーン(Tween)(登録商標)−80、PVP、スクロースおよびクエン酸カリウム貯蔵液のアリコートと混合することによって抗原コーティング配合物を調製した。
【0068】
ピペットを使用して、マスキング流体(FC−43フルオリナート(FLUORINERT)(登録商標)エレクトロニック リキッド(Electronic Liquid))のアリコート(15μL)をアレイの中心に適用し、そしてアレイにわたって延展させた。ピペットを使用して、抗原コーティング配合物の10μLアリコートをアレイ上でマスキング流体の中心に適用した。適用された抗原コーティング配合物中の破傷風トキソイドの公称量は10μgであった。適用された抗原コーティング配合物中のトウィーン(Tween)(登録商標)−80の公称量は6μgであった。適用された抗原コーティング配合物中のPVP、スクロースおよびクエン酸カリウムの公称量は100μgであった。抗原コーティング配合物およびマスキング流体を約30分間、周囲条件で乾燥させ、アレイ上に乾燥した抗原コーティングを提供した。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は11.9μg(st.dev.=0.5μg)であった。破傷風トキソイド先端部含量は5.0μg(st.dev.=1.2μg)として測定された。
【0069】
実施例11〜14
表2に示されるようにPVP、スクロースおよびクエン酸カリウムの公称量が変更されたことを除き、コーティングされたアレイを実施例10に記載の手順に従って調製した。逆相HPLCによって測定された、コーティングされたアレイの破傷風トキソイド含量およびマイクロニードルの先端部上の破傷風トキソイド含量を測定した。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
生体内破傷風トキソイド付着
接着剤バッキングに実施例10〜14に記載の抗原コーティングされたアレイを接着することによってマイクロニードルデバイスを調製した。米国特許出願第60/578,651号明細書に一般的に記載のアプリケーターを使用して、アレイをヘアレスモルモットに適用した。この文献は本明細書に援用される。アプリケーターピストン質量は5.08gであり、そしてデバイスは8.07メートル/秒の速度で適用された。肋骨の下および骨盤のちょうど上の腹部の軟質組織および腰部の筋肉の部位にデバイスを適用した。デバイスを適用する前に適用部位を70%イソプロピルアルコールで清浄し、そして少なくとも30秒間空気乾燥させた。特定の時間にデバイス(N=5)を除去し、そしてアレイの上に残る破傷風トキソイド含量をHPLCで測定した。結果を表3にまとめる。
【0072】
【表3】

【0073】
実施例15
以下の通り、ポリビニルアルコールプライミング溶液を調製した。ある量(250mg)のポリビニルアルコール(80%加水分解、典型的なMw=9,000〜10,000、CAS 9002−89−5、アルドリッチ(Aldrich)、ミズーリ州、セントルイス(St.Louis,MO))を水(25mL)に添加し、ポリビニルアルコール貯蔵液を調製した。ポリビニルアルコール貯蔵液のアリコート(2mL)をエタノール(18mL)に添加し、ポリビニルアルコールプライミング溶液を調製した。ニードルが上方を向いている平坦な表面上にマイクロニードルアレイを配置し、そしてピペットを使用して30μLのポリビニルアルコールプライミング溶液のアリコートをアレイの中心に適用し、そしてアレイにわたって延展させた。ポリビニルアルコールプライミング溶液を周囲条件で乾燥させた。次いで、ピペットを使用して、マスキング流体(FC−43フルオリナート(FLUORINERT)(登録商標)エレクトロニック リキッド(Electronic Liquid))のアリコート(15μL)をアレイの中心に適用し、そしてアレイにわたって延展させた。ピペットを使用して、抗原コーティング配合物の10μLアリコートをアレイ上でマスキング流体の中心に適用した。抗原コーティング配合物は、実施例10に記載の一般手順に従って調製された。適用された抗原コーティング配合物中の破傷風トキソイドの公称量は10μgであった。適用された抗原コーティング配合物中のトウィーン(Tween)(登録商標)−80の公称量は6μgであった。適用された抗原コーティング配合物中のPVP、スクロースおよびクエン酸カリウムの公称量は100μgであった。抗原コーティング配合物およびマスキング流体を約30分間、周囲条件で乾燥させ、アレイ上に乾燥した抗原コーティングを提供した。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は10.4μg(st.dev.=0.7μg)であった。破傷風トキソイド先端部含量は9.3μg(st.dev.=0.4μg)として測定された。
【0074】
実施例16〜23
表4に示されるようにPVP、スクロースおよびクエン酸カリウムの公称量が変更されたことを除き、コーティングされたアレイを実施例15に記載の手順に従って調製した。逆相HPLCによって測定された、コーティングされたアレイの破傷風トキソイド含量およびマイクロニードルの先端部上の破傷風トキソイド含量を測定した。結果を表4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
実施例24
コーティングされたアレイを実施例16に記載の手順に従って調製した。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は10.7μg(st.dev.=0.9μg)であった。破傷風トキソイド先端部含量は8.7μg(st.dev.=0.6μg)として測定された。上記「生体内破傷風トキソイド付着」の項目に記載の通り、ヘアレスモルモットにアレイを適用した。ヘアレスモルモットから除去後のアレイ上に残る破傷風トキソイドの量をHPLCによって測定した。結果を表5にまとめる。
【0077】
実施例25
コーティングされたアレイを実施例17に記載の手順に従って調製した。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は11.4μg(st.dev.=0.3μg)であった。破傷風トキソイド先端部含量は8.6μg(st.dev.=0.5μg)として測定された。上記「生体内破傷風トキソイド付着」の項目に記載の通り、ヘアレスモルモットにアレイを適用した。ヘアレスモルモットから除去後のアレイ上に残る破傷風トキソイドの量をHPLCによって測定した。結果を表5にまとめる。
【0078】
実施例26
コーティングされたアレイを実施例18に記載の手順に従って調製した。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は10.8μg(st.dev.=0.3μg)であった。破傷風トキソイド先端部含量は6.8μg(st.dev.=0.9μg)として測定された。上記「生体内破傷風トキソイド付着」の項目に記載の通り、ヘアレスモルモットにアレイを適用した。ヘアレスモルモットから除去後のアレイ上に残る破傷風トキソイドの量をHPLCによって測定した。結果を表5にまとめる。
【0079】
実施例27
コーティングされたアレイを実施例22に記載の手順に従って調製した。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は11.7μg(st.dev.=0.3μg)であった。破傷風トキソイド先端部含量は5.3μg(st.dev.=1.0μg)として測定された。上記「生体内破傷風トキソイド付着」の項目に記載の通り、ヘアレスモルモットにアレイを適用した。ヘアレスモルモットから除去後のアレイ上に残る破傷風トキソイドの量をHPLCによって測定した。結果を表5にまとめる。
【0080】
【表5】

【0081】
実施例28
マイクロニードルアレイを前記のように調製し、そして以下のように処理した。アレイは、プラズマ−サーム(Plasma−Therm)VII 7000シリーズ プラズマプロセッシングシステムを使用してプラズマ処理された。15秒間適用された2000W RFパワーによる非圧縮プラズマにおいて、テトラメチルシラン(150標準立方センチメートル/分、sccm)および酸素(200sccm)ガスの混合物を供給することによって、プラズマ付着によってダイヤモンド様ガラス薄フィルムを形成した。次いで、アレイを60秒間300Wパワーで150mTorrの圧力下で酸素プラズマ(400sccm)によって処理し、表面原子層から元素および共有結合炭素を除去し、そして親水性の表面を生じた。
【0082】
ピペットを使用して、マスキング流体(FC−43フルオリナート(FLUORINERT)(登録商標)エレクトロニック リキッド(Electronic Liquid))のアリコート(15μL)をアレイの中心に適用し、そしてアレイにわたって延展させた。ピペットを使用して、抗原コーティング配合物の10μLアリコートをアレイ上でマスキング流体の中心に適用した。抗原コーティング配合物は、実施例10に記載の一般手順に従って調製された。適用された抗原コーティング配合物中の破傷風トキソイドの公称量は10μgであった。適用された抗原コーティング配合物中のトウィーン(Tween)(登録商標)−80の公称量は6μgであった。適用された抗原コーティング配合物中のPVP、スクロースおよびクエン酸カリウムの公称量は100μgであった。抗原コーティング配合物およびマスキング流体を約30分間、周囲条件で乾燥させ、アレイ上に乾燥した抗原コーティングを提供した。逆相HPLCによって測定された破傷風トキソイド全アレイ含量は12.1μg(st.dev.=0.6μg)であった。破傷風トキソイド先端部含量は9.6μg(st.dev.=1.2μg)として測定された。上記「生体内破傷風トキソイド付着」の項目に記載の通り、ヘアレスモルモットにアレイを適用した。ヘアレスモルモットから除去後のアレイ上に残る破傷風トキソイドの量をHPLCによって測定した。結果を表7にまとめる。
【0083】
実施例29〜32
表6に示されるようにPVP、スクロースおよびクエン酸カリウムの公称量が変更されたことを除き、コーティングされたアレイを実施例28に記載の手順に従って調製した。逆相HPLCによって測定された、コーティングされたアレイの破傷風トキソイド含量およびマイクロニードルの先端部上の破傷風トキソイド含量を測定した。結果を表6に示す。上記「生体内破傷風トキソイド付着」の項目に記載の通り、ヘアレスモルモットにアレイを適用した。ヘアレスモルモットから除去後のアレイ上に残る破傷風トキソイドの量をHPLCによって測定した。結果を表7にまとめる。
【0084】
【表6】

【0085】
【表7】

【0086】
実施例33
100mLの水中でスクロース(1.053g)およびトウィーン(Tween)(登録商標)−80(0.1053g)を混合することによって貯蔵液を調製した。ある量(1.0mL)の0.02ミクロン蛍光性ビーズ(モレキュラー プローブス インコーポレイテッド(Molecular Probes,Inc.)、オレゴン州、ユージン(Eugene,Oregon)からのフルオスフェイアズ(FluoSpheres)カルボキシレート変性ミクロスフィア、赤色蛍光(580/605)、2.0%固体)を19mLのスクロース貯蔵液に添加し、コーティング配合物を調製した。スクロースの公称濃度は1.0%(w/v)であり、トウィーン(Tween)(登録商標)−80は0.1%(w/v)であり、そして蛍光性ビーズは0.1%(w/v)であった。
【0087】
マイクロニードルアレイを前記のように調製し、そして以下のように処理した。アレイは、プラズマ−サーム(Plasma−Therm)VII 7000シリーズ プラズマプロセッシングシステムを使用してプラズマ処理された。2分間適用された500W RFパワーによる300mTorr圧力下のプラズマを形成するテトラメチルシラン(150標準立方センチメートル/分、sccm)および酸素(500sccm)ガスの混合物を供給することによって、プラズマ付着によってダイヤモンド様ガラス薄フィルムを形成した。次いで、アレイを2分間300Wパワーで300mTorrの圧力下で酸素プラズマ(500sccm)によって処理し、表面原子層から元素および共有結合炭素を除去し、そして親水性の表面を生じた。平坦なポリカーボネートシートの同等の表面処理によって、室温で脱イオン水に対して8°の前進接触角を有する材料が得られた。
【0088】
処理されたマイクロニードルアレイを、ニードルが上方を向いている平坦な表面上に配置した。FC−43フルオリナート(FLUORINERT)(登録商標)エレクトロニック リキッド(Electronic Liquid)をマスキング流体として使用した。ピペットを使用して、マスキング流体のアリコート(15μL)をアレイの中心に適用し、そしてアレイにわたって延展させた。ピペットを使用して、抗原コーティング配合物の10μLアリコートをアレイ上でマスキング流体の中心に適用し、そして乾燥させた。コーティング配合物およびマスキング流体を少なくとも12時間、周囲条件で乾燥させ、アレイ上に乾燥コーティングを提供した。顕微鏡によってアレイを観察し、そして乾燥コーティングによって被覆されたマイクロニードルのパーセントを決定した。乾燥コーティングによって約100パーセントのマイクロニードルが被覆された。
【0089】
実施例34
テトラメチルシラン(50sccm)および酸素(500sccm)の混合物によってダイヤモンド様ガラス薄フィルムを形成したことを除き、実施例33に記載の通りマイクロニードルアレイをコーティングした。平坦なポリカーボネートシートの同等の表面処理によって、室温で脱イオン水に対して前進接触角を有する材料が得られた。顕微鏡によってアレイを観察し、そして乾燥コーティングによって被覆されたマイクロニードルのパーセントを決定した。乾燥コーティングによって約24パーセントのマイクロニードルが被覆された。
【0090】
実施例35
テトラメチルシラン(150sccm)および酸素(500sccm)の混合物によってダイヤモンド様ガラス薄フィルムを形成したことを除き、実施例33に記載の通りマイクロニードルアレイをコーティングした。平坦なポリカーボネートシートの同等の表面処理によって、室温で脱イオン水に対して40°の前進接触角を有する材料が得られた。顕微鏡によってアレイを観察し、そして乾燥コーティングによって被覆されたマイクロニードルのパーセントを決定した。乾燥コーティングによって約20パーセントのマイクロニードルが被覆された。
【0091】
実施例36
25%(w/v)の公称スクロース濃度でコーティング配合物を調製したことを除き、実施例33に記載の通りマイクロニードルアレイをコーティングした。顕微鏡によってアレイを観察し、そして乾燥コーティングによって被覆されたマイクロニードルのパーセントを決定した。乾燥コーティングによって約61パーセントのマイクロニードルが被覆された。
【0092】
実施例37
25%(w/v)の公称スクロース濃度でコーティング配合物を調製したことを除き、実施例34に記載の通りマイクロニードルアレイをコーティングした。顕微鏡によってアレイを観察し、そして乾燥コーティングによって被覆されたマイクロニードルのパーセントを決定した。乾燥コーティングによって約27パーセントのマイクロニードルが被覆された。
【0093】
実施例38
25%(w/v)の公称スクロース濃度でコーティング配合物を調製したことを除き、実施例35に記載の通りマイクロニードルアレイをコーティングした。顕微鏡によってアレイを観察し、そして乾燥コーティングによって被覆されたマイクロニードルのパーセントを決定した。乾燥コーティングによって約19パーセントのマイクロニードルが被覆された。
【0094】
本発明はそれらのいくつかの実施形態を参照することによって説明されている。以上の詳細な記述および例は明瞭な理解のみのため提供されており、それらから不必要な限定は理解されない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、記載された実施形態を変更することができることは当業者に明白であろう。従って、本発明の範囲は、本明細書に記載された組成および構造の正確な詳細に限定されるべきではなく、むしろ特許請求の範囲によって限定される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】コーティング前のマイクロニードルアレイの模式断面図である。
【図2】マスキング流体が基材に適用されたアレイの模式断面図である。
【図3A】コーティング流体が適用されたアレイの模式断面図である。
【図3B】コーティング流体の一部を蒸発させたアレイの模式断面図である。
【図3C】乾燥コーティングが残るようにコーティング流体を蒸発させたアレイの模式断面図である。
【図3D】マスキング流体の一部を蒸発させたアレイの模式断面図である。
【図3E】ニードル先端部上に乾燥コーティングを有するアレイが残るようにマスキング流体を蒸発させたアレイの模式断面図である。
【図4】マスキング流体が基材に適用されたマイクロニードルアレイのもう1つの実施形態の模式断面図である。
【図5】マスキングフィルムが適用されたマイクロニードルアレイの模式断面図である。
【図6A】コーティング流体が適用された図5のマイクロニードルアレイの模式断面図である。
【図6B】コーティング流体が適用された図5のマイクロニードルアレイの模式平面図である。
【図6C】乾燥コーティングが残るようにコーティングを蒸発させたアレイの模式断面図である。
【図7】パッチマイクロニードルデバイスの模式斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材および少なくとも1つのニードルを有するマイクロニードルアレイを提供する工程と;
マスキング層によって基材が少なくとも部分的に被覆され、そして少なくとも1つのニードルが少なくとも部分的に暴露されたまま残るように、マイクロニードルアレイ上に取り外し可能なマスキング層を提供する工程と;
マイクロニードルアレイの暴露部分の少なくとも一部にコーティング材料を適用する工程と
を含んでなるマイクロニードルアレイのコーティング方法。
【請求項2】
マスキング層が流体である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コーティング材料が、キャリア流体を含んでなるコーティング溶液から適用され、そしてキャリア流体を蒸発させて乾燥コーティングを提供する工程をさらに含んでなる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
マスキング層の流体の密度がキャリア流体の密度より高い請求項3に記載の方法。
【請求項5】
マスキング層の流体の揮発性がキャリア流体の揮発性より低い請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
キャリア流体がマスキング層の流体と実質的に不混和性である請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
マスキング層の流体を蒸発させる工程をさらに含んでなる請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
マスキング層の流体が完全に蒸発する前に、キャリア流体を完全に蒸発させる請求項3〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
マスキング層の流体がフッ素化液体である請求項2〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
マイクロニードルアレイが複数のニードルを含んでなる請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
マイクロニードルアレイに適用されたコーティング材料の50重量%より多くがニードル上に存在する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
マスキング層が、液体に変換され得る固体または半固体である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
温度、電場またはpHの変化によってマスキング層の変換がひきおこされる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コーティング溶液が治療活性物質を含んでなる請求項3〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
マイクロニードルアレイに適用された治療活性物質の50重量%より多くがニードル上に存在する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
コーティング溶液が水を含んでなる請求項3〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
コーティング溶液が、ワクチン、ワクチン補助剤またはそれらの混合物を含んでなる請求項3〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
コーティング材料がマイクロニードル上に優先的に付着される請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
コーティング材料がマイクロニードルの先端部上またはその付近に優先的に付着される請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
マイクロニードルが暴露されず、そしてその後、マスキング層を部分的に蒸発させて少なくとも1つの部分的に暴露されたニードルを提供するように、取り外し可能なマスキング層が最初にマイクロニードルアレイに適用される請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
コーティング材料が最初にマスキング層に適用され、そしてマスキング層の蒸発時に、マイクロニードルアレイの暴露部分の少なくとも一部へのコーティング材料の適用が行なわれる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
コーティング溶液がキャリア流体を含んでなる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項23】
コーティング溶液が分散粒子の懸濁液を含んでなる請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
マイクロニードルアレイ上に取り外し可能なマスキング層を提供する工程の前に、マイクロニードルの表面の少なくとも一部がプラズマ処理に供される請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
プラズマが酸素または窒素を含んでなる請求項24に記載の方法。
【請求項26】
マイクロニードルアレイ上に取り外し可能なマスキング層を提供する工程の前に、マイクロニードルの表面の少なくとも一部上に固体コーティングを提供する請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
固体コーティングがポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、クエン酸カリウム又はダイヤモンドライクガラスを含んでなる請求項26に記載の方法。
【請求項28】
マイクロニードルアレイの暴露部分の少なくとも一部にコーティング材料を適用する工程の前に、溶媒がマスキング層に適用される請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−520370(P2008−520370A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543281(P2007−543281)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/041858
【国際公開番号】WO2006/055799
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】