説明

マイクロニードル薬物送達の監視システム

本発明は、マイクロニードル薬物監視システム、及びさらに、インジケータ材料及び治療薬の層を備えるマイクロニードルの選択的及び連続的コーティングを含む、前記薬物監視システムを備えて提供されるマイクロニードル器具に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードルによる治療薬の送達を監視するためのシステムに関するものであり、特に、前記システムにおける使用に適合するマイクロニードルなどに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロニードルは、エンジニアリングとバイオサイエンスとの境界に存在する技術として出現した。マイクロニードルは、従来型の「ニードルとシリンジ」による注射に取って代わる極めて魅力的な選択肢であると幅広く報告されてきた。マイクロニードルは、一般には長さが100〜1,000μm(典型的には200〜600μm)の範囲にあるのでそのように呼ばれており、外側スキンバリア層、角質層を貫通するように設計されている。
【0003】
角質層は、表皮の上方の最も外側の部分を表す保護及び防御バリアを提供し、厚さは10〜20μmである。角質層は、脂質マトリックスに取り囲まれた扁平角質細胞からなる。角質層の防水バリア特性は、個別角質細胞を取り囲む細胞内多重膜脂質シートによって付与される。角質細胞は高密度に充填された不溶性ケラチン線維を含有し、機能酵素は存在するが、それらは機能的オルガネラの非存在及びそれらに再生能力がないことに起因して非生育性であると見なされている。しかし角質層は、動的状態では、細胞外バリア脂質の連続的更新及び修飾、ならびに多数の様々な酵素によって促進される角質細胞の制御された落屑を伴う。
【0004】
下にある生育性組織層へ治療薬が接近するための直接的かつ制御された経路を提供するためには、この角質層が貫通されなければならない。
【0005】
いくつかの場合では、マイクロニードルは、各マイクロニードルの長さが、貫通の深さが主として表皮下層内に存在する神経線維及び血管に微小の損傷しか引き起こさない長さとなるように製造することができるので、皮内への低分子量及び高分子量医薬品の送達は適用部位での疼痛又は出血を引き起こさずに達成することができる。
【0006】
マイクロニードルは、皮膚へ及び皮膚を通して領域的に治療薬を投与するための新たな機会を薬物送達の専門家に提供し、別の局所的若しくは経皮的アプローチ、又はその他の物理的皮膚送達方法と比較してこの方法は多数の利点を与える。これらの利点には標的皮膚層への医薬品の直接的かつ制御された送達、送達薬への大きな表面積の表皮の迅速な曝露(マイクロニードルアレイは1,000本を超えるマイクロニードルを含有することができる)、患者にとって簡単で、便宜的及び無痛の送達、最適作用を得るために製剤(例、液剤、懸濁剤、エマルジョン、乾燥粉末及びゲル)を操作する能力、付随送達方法、例えば経皮パッチなどの使用、ならびに医学的監視の必要を伴わずに患者が自己投与するのに適した最小侵襲性が含まれる。マイクロニードル使用における別の重要な利点は、従来型薬物分子、高分子、ナノ粒子及びワクチン類を含む広範囲の治療薬の送達を促進するためのニードルの構成及び寸法を適応させる能力にある。
【0007】
余り便宜的ではない、又は現在はより侵襲性方法によって送達されている医薬品を経皮的に送達するためにマイクロニードルが使用され、マイクロニードル構造が経皮パッチに組み込まれると、患者はおそらくこの送達系をポジティブな見方で捉えるだろう。しかし、臨床医にとって同等に重要であるのは、送達すべき医薬品がうまく、そして正しい用量で送達されたと十分に確信できることである。これは特に、医薬品が重篤若しくは致死性状態を治療するために使用される場合に当てはまり、例えば医薬品は、重要なワクチン、例えば遺伝性状態を治療するための遺伝子をベースとする療法、又は皮膚癌を治療するための細胞毒性物質の送達を含むことができる。
【0008】
このため、マイクロニードル薬物送達系は、当該の薬物が皮内へ、すなわち標的部位へ適切な用量で効果的に送達されたことを確認するための監視手段を含むことが重要である。外面、又は内面上に医薬品を含むマイクロニードルの場合には、これは事実上、医薬品のコーティング除去、又は放出及び周囲皮膚区画内への拡散を可能にするために適切な時間にわたって適所に残されたことを意味する。さらに、すべてのマイクロニードル技術において例外なく使用できるように、そのような手段が、単純で、確実、及び安価な性質の手段であることは重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このことを考慮に入れて、本発明者らは、マイクロニードルによって治療薬送達を監視することを可能にする監視システムを設計した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様によると、治療薬のその標的部位への効果的送達を監視するためのマイクロニードル薬物監視システムであって、マイクロニードル基質支持体上に提供された、若しくはマイクロニードル基質支持体と一体成型された複数のマイクロニードルを含み、前記マイクロニードルの大多数はインジケータ材料の少なくとも1つのコーティング及び治療薬に隣接する少なくとも1つのコーティングを有することを特徴とし、前記治療薬の送達が前記インジケータ材料の送達に先行して行われるように前記コーティングが配置され、これにより前記治療薬がうまく送達されたことを確認する手段として前記インジケータ(indicator)が機能する、マイクロニードル薬物監視システムが提供される。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、理想的には、前記マイクロニードルの全部に前記2つの異なるコーティングが提供されるが、これは十分なニードルがこの方法でコーティングされれば、その後に十分な治療薬がその標的部位へ送達されたことを確認できるので必須ではない。
【0012】
本発明の代替実施形態では、薬物/インジケータの1つのコーティングを提供するため、又は所定の実施形態では、薬物/インジケータの複数のコーティングを提供するためにインジケータ材料が薬物自体に加えられる。
【0013】
ここで、標的部位への適用とは、治療薬が送達される部位への適用を含み、この部位は、治療活性を有する実質的な部分を含むかあるいは含まない部位である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、前記インジケータ材料及び前記治療薬は、移動特性もしくは拡散特性を有するので、そこで前記マイクロニードルから前記標的部位へ移動できる。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施形態では、インジケータが薬物内に含まれない場合は、前記インジケータ材料は、第1下層として治療薬の下側に提供される。しかし、代替実施形態では、前記インジケータ材料は、前記マイクロニードルの先端から離れて設けてもよく、前記治療薬は前記マイクロニードルの先端側に設けてもよいので、前記インジケータは前記マイクロニードルの先端の後方、又は離れた層として提供され、前記先端若しくはその近くに配置された治療薬が前記インジケータに先行してその標的部位へ送達されたことが確認される。
【0016】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、インジケータ材料及び治療薬の追加の層を使用することができ、このため1つの実施形態では、マイクロニードルはインジケータ材料及び治療薬の複数層でコーティングすることができる。この実施形態では、前記インジケータ材料は、理想的には、観察者が前記治療薬の各々の送達を監視できるようにするために互いに区別可能であろう。本発明のこの実施形態では、治療薬は互いに区別可能であってもよい、又は同一であってもよい。例えば、前者の例では、多数の治療薬の送達を監視することが有利な場合がある。あるいは、後者の例では、遅延型若しくは時限型方法で所与の治療薬の2回の投与を送達することが必要条件となることがあり、そこでインジケータは第1回投与が送達されたこと、及びその後に次の投与が送達されたことを確認するために役立つ。
【0017】
本発明の層状の実施形態では、インジケータ材料及び治療薬は、交互方法で、一方が他方の上に層設されてもよい。あるいは、インジケータ材料及び治療薬は、ニードルの一端からニードルの他端へ次々に配置されてもよい。
【0018】
インジケータ材料が相当に短い使用寿命を有する場合は、治療薬の1回より多い送達に関して同一インジケータを使用する、又は単一治療薬を複数回送達することが可能である。この場合、観察者は、標的部位でのインジケータの出現、その後の消失、及び次の治療薬の送達後の標的部位での出現を期待するであろう。
【0019】
本発明において使用するために好ましいインジケータ材料は、例えば全てが当業者には周知である生理的に不活性な色素などの可視(visible)インジケータを含むが、好ましい色素はメチレンブルーである。本発明において使用するための別のインジケータ材料は、第10及び11頁に記載されている。
【0020】
本発明のさらに別の態様によると、共通の基質(common substrate)に取り付けられた複数のマイクロニードルが提供されるが、このとき前記マイクロニードルの大多数の上にはインジケータ材料及び治療薬の交互層又は複数の薬物層のいずれかがコーティングされており、このとき各薬物層は選択されたインジケータを含む、又はその中に組み入れている。
【0021】
本発明のこの好ましい実施形態では、層は相互に隣接してもよいし、又は一方が他方の上部にあってもよい。
【0022】
各薬物層が選択されたインジケータを含む、又はその内側に組み込まれている場合は、中空マイクロニードルを使用してもよく、各薬物はニードルの内側で一方が他方の後方に層設される。
【0023】
本発明のさらに別の態様によると、治療薬の送達を監視する際に使用するためのマイクロニードルアレイの製造方法であって:
(a)マイクロニードルの少なくとも第1部、好ましくは前記アレイ内の全マイクロニードルを、第1インジケータ材料を用いて選択的にコーティングする工程と;
(b)前記インジケータがコーティングされたマイクロニードルの前記第1部又は異なる第2部のいずれかを、治療薬を用いて選択的にコーティングする工程と;
(c)場合によっては、その標的部位への選択された治療薬層の効果的監視を可能にするために、前記マイクロニードルが必要数のインジケータ材料層及び治療薬層でコーティングされるまで、工程(a)及び/又は(b)を繰り返す工程とを含む方法が提供される。
【0024】
さらに本発明は、治療薬のその標的部位への効果的送達を監視するためのマイクロニードル薬物監視システムであって、マイクロニードル基質支持体上に提供された、若しくはマイクロニードル基質支持体と一体成型された複数のマイクロニードルを含み、第1群の前記マイクロニードルは第1インジケータ材料の少なくとも1つのコーティング及び第1治療薬に隣接する少なくとも1つのコーティングを有することを特徴とし、このとき前記コーティングは、前記治療薬の送達が前記インジケータ材料の送達に先行して行われ、それにより前記治療薬がうまく送達されたことを確認する方法として前記インジケータが機能するように配列されるマイクロニードル薬物監視システムにまで及ぶ。
【0025】
1つの実施形態では、前記複数のニードルは、第2インジケータ材料のコーティング及び第2治療薬に隣接する1つのコーティングを有する少なくとも1つの第2群を有し、前記第2インジケータ材料及び/又は前記第2治療薬は第1の各材料又は治療薬とは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下では、本発明の実施形態を下記の図面を参照しながら例示する目的でのみ説明する。
【図1a】インジケータ材料の単一層及び治療薬の単一層でコーティングされたマイクロニードルの略図を示す。
【図1b】インジケータ材料の単一層及び治療薬の単一層でコーティングされたマイクロニードルの略図を示す。
【図2】インジケータの単一層及び治療薬の単一層を用いて交互方法でコーティングされたマイクロニードルの略図を示す。
【図3】ヒト被験者におけるマイクロニードルのメチレンブルー染色を示す。
【図4】インジケータ材料(メチレンブルー)でコーティングされたマイクロニードルを示す。
【図5】別のインジケータ材料(ヌクレアファストレッド)でコーティングされたマイクロニードルを示す。
【図6】マイクロニードルの挿入及び抜去後の皮膚のメチレンブルー染色を示す。
【図7】2群のマイクロニードルを示す。
【図8】異なるコーティングがされた交互アレイのマイクロニードルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
マイクロニードルは、従来方法で調製したか、あるいは入手可能な供給源から入手した。
【0028】
前者の例では、マイクロニードルアレイは、詳細にはニードル形の島を残すために扁平プラットフォームから規定領域のシリコン面を取り除くために、湿式(溶液)又は乾式(気体)のいずれかのエッチングプロセスを用いたシリコン微細加工法を含んでいた。あるいは、シリコンウェハからマイクロニードル器具を乾式エッチングする加工法は、リソグラフィによりパターン化した塊及び反応性イオンガスの混合気を使用する。しかし、マイクロニードル器具は、Silex Microsystems AB社(スウェーデン)及びDermaroller S.A.R.L.社(フランス)を含む供給業者から入手できる。
【0029】
典型的には、マイクロニードルはその上に配置する流体内でコーティングされ、その後に、流体の性質に依存して、乾燥するまで放置される。
【0030】
本発明では、マイクロニードルアレイは、最初に生理的に不活性な色素、例えばメチレンブルー又はヌクレアファストレッド(nuclear fast red)又はエバンスブルー(Evans Blue)又はGention Violetなどの第1インジケータ溶液でコーティングされる。あるいは、例えば以下の承認された食品着色剤、例えばFD&C Blue No.1 - Brilliant Blue FCF, E133(ブルーシェード(Blue shade))、FD&C Blue No.2 - Indigotine, E132(ダークブルーシェード(Dark Blue shade))、FD&C Green No.3 - Fast Green FCF, E143(ブルーイッシュグリーンシェード(Bluish green shade))、FD&C Red No.40 - Allura Red AC, E129(レッドシェード(Red shade))、FD&C Red No.3 - Erythrosine, E127(ピンクシェード(Pink shade))[4]、FD&C Yellow No.5 - Tartrazine, E102(イエローシェード(Yellow shade))、FD&C Yellow No.6 - Sunset Yellow FCF, E110(オレンジシェード(Orange shade))などのいずれか1つ又はそれ以上を使用できる、あるいは例えばフェースペインティング染料(face painting dye)若しくはタトゥー染料(tatooing dye)において使用される色素などの他の色素を使用のために検討することができる。当業者であれば、インジケータは、その入手可能性、使用の容易さ及び費用に関して選択されることを理解するであろう。
【0031】
アレイが第1インジケータでコーティングされると、アレイは24時間にわたり乾燥するまで放置され、次に必要な濃度で治療薬の溶液内でコーティングされ、その後再び、さらに24時間にわたり乾燥するまで放置される。
【0032】
インジケータ及び治療薬の両方のコーティングを促進するために使用される処方は、粘度及び界面活性を最適化するために変更することができる。典型的な粘度増強剤には、アカシア、トラガカント、アルギン酸、カラギーナン、ローカストビーンガム、グアールガム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、Carbopol(登録商標)、ベントナイト及びVeegum(登録商標)が含まれる。代表的な界面活性剤には、ナトリウムドデシルスルフェート(SDS)、アンモニウムラウリルスルフェート、及びその他のアルキルスルフェート塩類、ナトリウムラウレススルフェート、アルキルベンゼンスルホネート、石鹸若しくは脂肪酸塩類、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)及びその他のアルキルトリメチルアンモニウム塩類、セチルピリジニウムクロライド(CPC)、ポリエトキシル化獣脂アミン(POEA)、ベンザルコニウムクロライド(BAC)、ベンゼトニウムクロライド(BZT)、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミンオキサイド、コカミドプロピルベタイン、ココアムホグリシネート、アルキルポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー類(商業的にはポロキサマー類又はポロキサミン類と呼ばれる)ならびにアルキルポリグルコシド類が含まれる。
【0033】
これらの追加の作用物質は、0.1〜50(w/v)%、及び理想的には0.5〜5(w/v)%の濃度で使用される。
【0034】
この1つのコーティングの他方のコーティング上への層形成は、図1aに示されており、マイクロニードル(A)が着色色素(B)の形態にあるインジケータ及び別の治療薬のコーティング(C)でコーティングされる。
【0035】
図1bでは、マイクロニードル(A)は色素(B)でコーティングされ、次に治療薬(C)で部分的にオーバーコートされる。
【0036】
本発明の代替実施形態では、図2に示したように、マイクロニードルのコーティングはオーバーラップ法ではなくむしろラテラル法で行われるので、このためマイクロニードル(A)の第1端は着色色素(B)でコーティングされ、マイクロニードル(A)の別の端は治療薬(C)でコーティングされる。
【0037】
コーティングされたマイクロニードルが調製されると、それらは次に従来方法で使用することができるので、そこでマイクロニードルは典型的には例えば経皮パッチ上に適用され、適切な力を加えることによって従来方法で皮内に圧入される。この力はマイクロニードルを角質層内に押し込み、最初に治療薬、次にインジケータ材料が皮膚組織内に拡散するのを許容する。
【0038】
図3は、可視インジケータが皮膚組織を通って移動する結果として生成される微小流路(microchannel)のメチレンブルー染色を示している。
【0039】
図4及び5は、マイクロニードルの画像を示しており、マイクロニードルは第1治療薬(図示せず)でコーティングされており、マイクロニードルを覆っているのはインジケータ材料の層(図示されている)である。図4では、インジケータ材料はメチレンブルーであり、図5ではインジケータ材料はヌクレアファストレッドである。
【0040】
図6は、二重コーティングされたマイクロニードルの挿入及び抜去後の一連のメチレンブルー染色を示す図である。画像は、第1に、覆っている「薬物」層を示し、第2に、下にある可視インジケータ層がマイクロニードルから除去されてヒトの皮膚内へ治療薬が送達されたことを示す、青色着色の存在を明らかに示している。
【0041】
本発明は可視インジケータを参照しながら例示してきたが、上記で述べたように、例えば紫外線、蛍光又はその他の電磁放射線へ曝露した場合にのみ視認できる紫外線反射染色などの不可視インジケータを使用することができる。使用者にはこの種類のインジケータが好まれる可能性があるが、それは皮膚上に目障りなしみを残さないからである。電磁放射線の影響下で蛍光を発するナノ粒子は、同等の作用で使用できる。
【0042】
図面では見ることができないが、上述したように、マイクロニードルは1つより多い層のインジケータ材料で、及びさらに1つより多い層の治療薬でコーティングすることができ、この場合には、被覆もしくは隣接する層のインジケータ/治療薬を構築するために、インジケータ材料及び治療薬の層が、マイクロニードルの選択された部分へ連続的に付与されるであろう。
【0043】
ニードルのコーティングは、浸漬コーティングによって実施することができる。別の代替法では、インジケータ材料及び治療薬両方のためのコーティングプロセスは、それらの材料をエアロゾル化する工程と、適切なマスキングを行って、又は行わずにそれらをニードルの上にスプレーする工程によって達成できる。これに関連して、英国特許第0725017.8号明細書の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
さらに別の代替法では、異なるニードルを異なるインジケータ材料でコーティングすることができる。そこで例えば、同一アレイ内で第1治療薬が1群のニードルに適用され、第2治療薬が第2群に適用される場合は、例えば第1及び第2治療薬が異なる吸収特性若しくは粘度を有するとき、場合によっては異なるカラーのインジケータを各群に使用することができる。図7は、添字1及び2によって表示したそのような2つの群を示しており、このときマイクロニードルアレイの構造及びコーティングは、第1群が第2群とは別個に形成され、それらの各基質は適切なコーティング後にジョイント(D)で一緒にさせられる以外は上述した構造及びコーティングと同一である。その他の群の配列が可能であり、複数の群を使用できる。
【0045】
さらに別の代替法では、大多数のマイクロニードルを治療薬でコーティングすることができ、次に少数のマイクロニードルを治療薬の上方/隣接の、又は別個のニードル上のいずれかのコーティングとしてインジケータ材料でコーティングすることができる。この代替法は、治療薬がインジケータに対して特に感受性である、又はインジケータと相互作用する場合に使用できるので、治療薬の作用は有意には変化しないであろうが、それは治療薬がインジケータ材料とは接触しない、又はインジケータ材料が使用された場合に限定された部位でしか接触しないからである。インジケータ材料のこの限定された使用は、一時的皮膚染色が、例えば美容上の理由から最小限に限定される場合にも有益であろう。そのような代替法は、図8に示されるように、マイクロニードル(A)は1つの場所(E)でインジケータ(B)を用いて選択的に、次に治療薬(C)で、及び別の場所(F)で治療薬(C)だけを用いてコーティングされる。この実施例では、治療薬(C)コーティングしか有していないニードルの数は、追加のインジケータ材料コーティング(B)を有するニードルの数より多い。
【0046】
この技術は、治療薬のその標的場所への安全な送達の効果的監視を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的部位への治療薬の効果的送達を監視するためのマイクロニードル薬物監視システムであって、
マイクロニードル基質支持体上に提供された、またはマイクロニードル基質支持体と一体成型された複数のマイクロニードルを含み、
前記マイクロニードルの大多数が、インジケータ材料の少なくとも1つのコーティング及び治療薬に隣接する少なくとも1つのコーティングを有することを特徴とし、
前記治療薬の送達が前記インジケータ材料の送達に先行して行われるように前記コーティングが配置され、
これにより前記治療薬がうまく送達されたことを確認する手段として前記インジケータが機能する、マイクロニードル薬物監視システム。
【請求項2】
前記マイクロニードルの全部に異なる2種のコーティングが提供される、請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記インジケータ材料及び前記治療薬が、移動特性または拡散特性を有し、前記マイクロニードルから前記標的部位へ移動できる、請求項1又は2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記インジケータ材料が、前記治療薬の下側に下層として提供される、請求項1から3のいずれか一項に記載の監視システム。
【請求項5】
前記インジケータ材料が前記マイクロニードルの先端から離れて設けられ、前記治療薬が前記マイクロニードルの先端側に設けられる、請求項1から3に記載の監視システム。
【請求項6】
追加層のインジケータ材料及び治療薬が使用され、これにより前記マイクロニードルが複数層のインジケータ材料及び治療薬でコーティングされる、請求項1から5のいずれか一項に記載の監視システム。
【請求項7】
前記インジケータ材料が互いに区別できる、請求項6に記載の監視システム。
【請求項8】
前記治療薬が互いに区別可能であってもよい、又は同一であってもよい、請求項6又は7に記載の監視システム。
【請求項9】
前記インジケータ材料及び前記治療薬が、交互方法で、1つが他方の上に乗る層状である、請求項1から4及び6から8に記載の監視システム。
【請求項10】
前記インジケータ材料及び前記治療薬が、前記ニードルの一端、すなわち先端から前記ニードルの他端に向かって次々に配置される、請求項1から3及び5から8に記載の監視システム。
【請求項11】
前記インジケータ材料が、視認できるインジケータである、請求項1から10のいずれか一項に記載の監視システム。
【請求項12】
共通の基質に取り付けられた複数のマイクロニードルを含むマイクロニードル送達器具であって、
前記マイクロニードルの大多数が、インジケータ材料及び治療薬の交互層又は複数層の薬物のいずれかがコーティングされて、
前記薬物層の各々が、選択されたインジケータを含むか又は選択されたインジケータがその中に組み入れられている、マイクロニードル送達器具。
【請求項13】
前記層が相互に隣接してもよい、又は相互の上にあってもよい、請求項12に記載の器具。
【請求項14】
治療薬の送達を監視する際に使用するためのマイクロニードルアレイの製造方法であって、
(a)マイクロニードルの少なくとも第1部、好ましくは前記アレイ内の全マイクロニードルを、第1インジケータ材料で選択的にコーティングする工程と;
(b)前記インジケータがコーティングされたマイクロニードルの前記第1部又は異なる第2部のいずれかを、治療薬で選択的にコーティングする工程と;
(c)場合によっては、その標的部位への選択された治療薬層の効果的監視を可能にするために、必要数のインジケータ材料層及び治療薬層で前記マイクロニードルがコーティングされるまで、工程(a)及び/又は(b)を繰り返す工程と、を含む方法。
【請求項15】
標的部位への治療薬の効果的送達を監視するためのマイクロニードル薬物監視システムであって、
マイクロニードル基質支持体上に提供された、またはマイクロニードル基質支持体と一体成型された複数のマイクロニードルを含み、
前記マイクロニードルの第1群は第1インジケータ材料及び第1治療薬に隣接する少なくとも1つのコーティングを有することを特徴とし、
前記治療薬の送達が前記インジケータ材料の送達に先行して行われるように前記コーティングが配置され、これにより前記治療薬がうまく送達されたことを確認する方法として前記インジケータが機能する、マイクロニードル薬物監視システム。
【請求項16】
前記複数のニードルが、第2インジケータ材料のコーティング及び第2治療薬に隣接する1つのコーティングを有する少なくとも1つの第2群を含み、
前記第2インジケータ材料及び/又は前記第2治療薬が各第1の材料又は治療薬とは異なる、請求項15に記載の監視システム。
【請求項17】
前記インジケータ材料が、以下のメチレンブルー、ヌクレアファストレッド(nuclear fast red)、エバンスブルー(Evans Blue)、Gention Violet、食品着色剤、例えばFD&C Blue No.1 - Brilliant Blue FCF, E133(ブルーシェード)、FD&C Blue No.2 - Indigotine, E132(ダークブルーシェード)、FD&C Green No.3 - Fast Green FCF, E143(ブルーイッシュグリーンシェード)、FD&C Red No.40 - Allura Red AC, E129(レッドシェード)、FD&C Red No.3 - Erythrosine, E127(ピンクシェード)[4]、FD&C Yellow No.5 - Tartrazine, E102(イエローシェード)、FD&C Yellow No.6 - Sunset Yellow FCF, E110(オレンジシェード)、フェースペインティング染料、タトゥー染料、蛍光マーカーなどのうちの任意の1つ又はそれ以上から選択される、請求項1から16に記載の監視システム、マイクロニードル送達器具、又は方法。
【請求項18】
前記インジケータ材料が、粘度増強剤及び/又は界面活性剤を含む、請求項17に記載の監視システム、マイクロニードル送達器具、又は方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−506023(P2011−506023A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538898(P2010−538898)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/004201
【国際公開番号】WO2009/081122
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(510170774)ユニバーシティ カレッジ カーディフ コンサルタンツ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】