説明

マイクロフォンユニット及びその製造方法並びに音声入力装置

【課題】差動マイクを高密度に実装し、小型化したマイクロフォンユニット及びその製造方法並びに音声入力装置を提供する。
【解決手段】筐体10は、第1の空間22と筐体10の外部空間とを連通する第1の開口部40と、第2の空間24と筐体10の外部空間とを連通する第2の開口部50を有し、基板部80は、貫通孔100を有し、第2の開口部50と貫通孔100の少なくとも一部が重複するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロフォンユニット及びその製造方法並びに音声入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電話などによる通話や、音声認識、音声録音などに際しては、目的の音声(話者の声)のみを集音することが好ましい。しかし、音声入力装置の使用環境では、背景雑音など目的の音声以外の音が存在することがある。そのため、雑音が存在する環境で使用される場合にも目的の音声を正確に抽出することを可能にする、すなわち雑音を除去する機能を有する音声入力装置の開発が進んでいる。
【0003】
また、近年では、電子機器の小型化が進んでおり、音声入力装置を小型化する技術が重要になっている。
【特許文献1】特開2007−81614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠方ノイズを抑圧する接話マイクロフォンとして、2つのマイクロフォンからの電圧信号の差を示す差分信号を生成して利用する差動マイクが知られている。しかし、2つのマイクロフォンを用いるが故に、差動マイクを高密度に実装し、マイクロフォンユニットを小型化することは困難であった。
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、差動マイクを高密度に実装し、小型化したマイクロフォンユニット及びその製造方法並びに音声入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るマイクロフォンユニットは、
内部空間を有する筐体と、
前記内部空間を第1の空間と第2の空間に分割する少なくとも一部が振動膜で構成された仕切り部と、
前記振動膜の振動に基づいて電気信号を出力する電気信号出力部と、
前記電気信号出力部と電気的に接続される電極部と、
前記電極部と電気的に接続されるランド部とを含む基板部と、
を含み、
前記筐体は、前記第1の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第1の開口部と、前記第2の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第2の開口部を有し、
前記基板部は、貫通孔を有し、前記第2の開口部と前記貫通孔の少なくとも一部が重複するように配置されることを特徴とする。
【0007】
筐体、仕切り部及び電気信号出力部は、半導体装置として構成されてもよい。このとき、筐体、仕切り部及び電気信号出力部は、同一の半導体基板に形成してもよい。また、筐体、仕切り部及び電気信号出力部は、いわゆるメムス(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)として構成されてもよい。また、振動膜については無機圧電薄膜、あるいは有機圧電薄膜を使用して、圧電効果により音響−電気変換するようなものであっても構わない。また、基板部については、ガラスエポキシ基板等の基板により構成されるものであってよい。
【0008】
本発明によると、基板に貫通孔を有し、第2の開口部と貫通孔の少なくとも一部が重複するように配置されることにより、1枚の振動膜で構成された差動マイクを高密度に実装したマイクロフォンユニットが実現可能になる。
【0009】
(2)このマイクロフォンユニットであって、
前記筐体の表面の、前記第2の開口部を囲む第1の領域と、前記基板部の表面の、前記貫通孔を囲む第2の領域が対向して接合されていてもよい。
【0010】
(3)このマイクロフォンユニットであって、
前記電極部と前記ランド部との間及び前記第1の領域と前記第2の領域との間は、半田により接合されていてもよい。
【0011】
(4)このマイクロフォンユニットであって、
前記電極部と前記ランド部との間は、導電性接着剤により接合され、
前記第1の領域と前記第2の領域との間は、接着剤により接合されていてもよい。
【0012】
(5)このマイクロフォンユニットであって、
前記電極部と前記ランド部との間及び前記第1の領域と前記第2の領域との間は、導電性接着剤により接合されていてもよい。
【0013】
(6)このマイクロフォンユニットであって、
前記第1又は第2の領域は、接地電位に接続されていてもよい。
【0014】
(7)このマイクロフォンユニットであって、
前記第1の開口部と連通する第1の管が筐体外部に設けられていてもよい。
【0015】
(8)このマイクロフォンユニットであって、
前記貫通孔と連通する第2の管が前記基板部の前記筐体と反対側の面に設けられていてもよい。
【0016】
(9)このマイクロフォンユニットであって、
前記第1の管の一端と前記第1の開口部とが嵌合して接合されていてもよい。
【0017】
(10)このマイクロフォンユニットであって、
前記第2の管の一端と前記貫通孔とが嵌合して接合されていてもよい。
【0018】
(11)このマイクロフォンユニットであって、
前記第1の管は、前記第1の開口部と嵌合する嵌合部と前記嵌合部以外の非嵌合部を有し、
前記第1の管の外形は、前記嵌合部の外周が前記非嵌合部の外周よりも短い段差構造であってもよい。
【0019】
(12)このマイクロフォンユニットであって、
前記第2の管は、前記貫通孔と嵌合する嵌合部と前記嵌合部以外の非嵌合部を有し、
前記第2の管の外形は、前記嵌合部の外周が前記非嵌合部の外周よりも短い段差構造であってもよい。
【0020】
(13)このマイクロフォンユニットであって、
前記第1の管は、前記筐体と接着されていてもよい。
【0021】
(14)このマイクロフォンユニットであって、
前記第2の管は、前記基板部と接着されていてもよい。
【0022】
(15)このマイクロフォンユニットであって、
前記振動膜から前記第1の管の前記筐体から遠い方の開口部までの距離と、前記振動膜から前記第2の管の前記筐体から遠い方の開口部までの距離が等しく構成されていてもよい。
【0023】
(16)本発明に係る音声入力装置は、このマイクロフォンシステムを含むことを特徴とする。
【0024】
(17)本発明に係るマイクロフォンユニットの製造方法は、
内部空間を有する筐体と、
前記内部空間を第1の空間と第2の空間に分割する少なくとも一部が振動膜で構成された仕切り部と、
前記振動膜の振動に基づいて電気信号を出力する電気信号出力部と、
前記電気信号出力部と電気的に接続される電極部と、
前記電極部と電気的に接続されるランド部とを含む基板部と、
を含み、
前記筐体は、前記第1の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第1の開口部と、前記第2の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第2の開口部を有したマイクロフォンユニットの製造方法であって、
前記基板部に貫通孔を形成し、前記第2の開口部と前記貫通孔の少なくとも一部が重複するように配置することを特徴とする。
【0025】
本発明によると、基板に貫通孔を形成し、第2の開口部と貫通孔の少なくとも一部が重複するように配置することにより、1枚の振動膜で構成された差動マイクを高密度に実装することが可能となるマイクロフォンユニットを製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を適用した実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。また、本発明は、以下の内容を自由に組み合わせたものを含むものとする。
【0027】
1.第1の実施の形態に係るマイクロフォンユニット及びその製造方法
はじめに、第1の実施の形態に係るマイクロフォンユニット1の構成について、図1乃至図5を参照して説明する。なお、以下に説明するマイクロフォンユニット1は、例えば、携帯電話や公衆電話、トランシーバー、ヘッドセット等の音声通信機器や、あるいは、録音機器やアンプシステム(拡声器)、マイクシステムなどに適用することができる。
【0028】
図1は、本実施の形態に係るマイクロフォンユニットの構成の一例を示す図であり、本実施の形態に係るマイクロフォンユニット1の断面を模式的に示した図である。
【0029】
本実施の形態に係るマイクロフォンユニット1は、筐体10を含む。筐体10は、マイクロフォンユニットの外形を構成する部材である。筐体10の外形は多面体構造となっていてもよい。本実施の形態においては、筐体10は直方体(六面体)である。なお、筐体10の外形は、例えば球状構造や半球状構造等、多面体以外の構造であってもよい。
【0030】
また筐体10は、シリコン(Si)で形成されてもよい。また筐体10は、ガラスエポキシ、プラスチック、金属等の材料で形成されてもよい。
【0031】
筐体10は、内部空間20を有する。すなわち、筐体10は所定の空間を区画する構造をなしており、内部空間20とは、筐体10により区画される空間である。なお、内部空間20は、後述する仕切り部30により、第1の空間22と第2の空間24に区画されている。
【0032】
筐体10は、第1の開口部40及び第2の開口部50を有する。第1の開口部40は、第1の空間22と外部空間とを連通させる開口部である。第2の開口部50は、第2の空間24と外部空間とを連通させる開口部である。第1の開口部40及び第2の開口部50の外形は特に限定されるものではないが、例えば円形や矩形となっていてもよい。
【0033】
なお、本実施の形態においては、第1の開口部40及び第2の開口部50は、直方体である筐体10の対向する位置にそれぞれ形成されているが、特にその位置を限定するものではなく、例えば対向しない位置に形成されてもよい。
【0034】
本実施の形態に係るマイクロフォンユニット1は、仕切り部30を含む。仕切り部30は、内部空間20を第1の空間22と第2の空間24に区画する。
【0035】
仕切り部30は、振動膜32を含む。振動膜32は、音波が入射すると法線方向に振動する部材である。そして、マイクロフォンユニット1では、振動膜32の振動に基づいて電気信号を抽出することで、振動膜32に入射した音声を示す電気信号を取得する。すなわち、振動膜30は、マイクロフォンの振動膜である。なお、仕切り部30は、振動膜32を保持する保持部34を有していてもよい。
【0036】
以下、本実施の形態に適用可能なマイクロフォンの一例として、コンデンサ型マイクロフォン200の構成について説明する。図2は、コンデンサ型マイクロフォン200の構成を模式的に示した断面図である。
【0037】
コンデンサ型マイクロフォン200は、振動膜202を有する。なお、振動膜202が、本実施の形態に係るマイクロフォンユニット1の振動膜32に相当する。振動膜202は、音波を受けて振動する膜(薄膜)で、導電性を有し、電極の一端を形成している。コンデンサ型マイクロフォン200は、また、電極204を有する。電極204は、振動膜202と対向して配置されている。これにより、振動膜202と電極204とは容量を形成する。コンデンサ型マイクロフォン200に音波が入射すると、振動膜202が振動して、振動膜202と電極204との間隔が変化し、振動膜202と電極204との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化を、例えば電圧の変化として取り出すことによって、振動膜202の振動に基づく電気信号を取得することができる。すなわち、コンデンサ型マイクロフォン200に入射する音波を、電気信号に変換して出力することができる。なお、コンデンサ型マイクロフォン200では、電極204は、音波の影響を受けない構造をなしていてもよい。例えば、電極204はメッシュ構造をなしていてもよい。
【0038】
ただし、本発明に適用可能なマイクロフォン(振動膜32)は、コンデンサ型マイクロフォンに限られるものではなく、既に公知となっているいずれかのマイクロフォンを適用することができる。例えば、振動膜32は、動電型(ダイナミック型)、電磁型(マグネティック型)、圧電型(クリスタル型)等の、種々のマイクロフォンの振動膜であってもよい。
【0039】
あるいは、振動膜32は、半導体膜(例えばシリコン膜)であってもよい。すなわち、振動膜32は、シリコンマイク(Siマイク)の振動膜であってもよい。シリコンマイクを利用することで、マイクロフォンユニット1の小型化、及び、高性能化を実現することができる。
【0040】
振動膜32の外形は特に限定されるものではない。例えば、振動膜32の外形は円形をなしていてもよい。このとき、振動膜32と第1の開口部40及び第2の開口部50とは、径がほぼ同じ円形であってもよい。
【0041】
本実施の形態に係るマイクロフォンユニット1は、振動膜32の振動に基づいて電気信号を出力する電気信号出力回路60を含む。電気信号出力回路60は、少なくとも一部が、筐体10の内部空間100内に形成されてもよい。電気信号出力回路60は、例えば、筐体10の内壁面に形成されてもよい。すなわち、本実施の形態では、筐体10を電気回路の回路基板として利用してもよい。
【0042】
図3には、本実施の形態に適用可能な電気信号出力回路60の一例を示す。電気信号出力回路60は、コンデンサ62(振動膜32を有するコンデンサ型マイクロフォン)の静電容量の変化に基づく電気信号を、信号増幅回路63で増幅して出力するように構成されていてもよい。コンデンサ62は、例えば、振動膜ユニット61の一部を構成していてもよい。なお、電気信号出力回路60は、入力電源電圧を昇圧するチャージポンプ回路65と、オペアンプ66とを含んで構成されていてもよい。これにより、コンデンサ62の静電容量の変化を精密に取得することが可能になる。本実施の形態では、例えば、コンデンサ62、信号増幅回路63、チャージポンプ回路65、オペアンプ66は、筐体10の内壁面に形成されていてもよい。また、電気信号出力回路60は、ゲイン調整回路64を含んでいてもよい。ゲイン調整回路64は、信号増幅回路63の増幅率(ゲイン)を調整する役割を果たす。ゲイン調整回路64は、筐体10の内部に設けられていてもよいが、筐体10の外部に設けられていてもよい。
【0043】
ただし、振動膜32としてシリコンマイクを適用する場合には、電気信号出力回路60は、シリコンマイクの半導体基板に形成された集積回路によって実現してもよい。また、筐体10、仕切り部30及び電気信号出力部60は、同一の半導体基板に形成してもよい。また、筐体10、仕切り部30及び電気信号出力部60は、いわゆるメムス(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)として構成されてもよい。
【0044】
なお、電気信号出力回路60は、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換回路や、デジタル信号を圧縮(符号化)する圧縮回路などをさらに含んでいてもよい。
【0045】
本実施の形態に係るマイクロフォンユニット1は、電極部70を含む。電極部70は、電気信号出力回路60と電気的に接続され、電気信号出力回路60へ電源を供給したり、電気信号出力回路60からの出力信号を取り出したりするための電気的な経路の役割を果たす。なお、電極部70は、後述するランド部90と電気的に接続する。
【0046】
本実施の形態に係るマイクロフォンユニット1は、基板部80を含む。基板部80は、筐体10と物理的に接合し、筐体10を支持する。
【0047】
基板部80は、ランド部90を含む。ランド部90は、電極部70と電気的に接続し、電気信号出力回路60へ電源を供給したり、電気信号出力回路60からの出力信号を取り出したりするための電気的な経路の役割を果たす。ランド部90と電極部70との電気的な接続は、例えば半田により接合されてもよい。また例えば、銀ペーストのような導電性接着剤で接合されてもよい。
【0048】
基板部80は、貫通孔100を含む。貫通孔100は、少なくとも一部が第2の開口部50と重複するように配置される。これにより、筐体10と基板部80を近接して設置しても貫通孔100及び第2の開口部50を通じて音声を取り込むことができる。したがって、1枚の振動膜で構成された差動マイクを高密度に実装したマイクロフォンユニットが実現できる。
【0049】
また、基板に貫通孔を形成し、第2の開口部と貫通孔の少なくとも一部が重複するように配置することにより、1枚の振動膜で構成された差動マイクを高密度に実装することができるマイクロフォンユニットを製造することが可能になる。
【0050】
本実施の形態に係るマイクロフォンユニット1は、筐体10の表面の、第2の開口部50を囲む第1の領域121と、基板部80の表面の、貫通孔100を囲む第2の領域122を接合してもよい。
【0051】
図4(A)は、本実施の形態における筐体10の底面図である。第1の領域121は、第2の開口部50を囲む閉じた領域である。図4(B)は、本実施の形態における基板部80の平面図である。第2の領域122は、貫通孔100を囲む閉じた領域である。第1の領域121と第2の領域122は対向して接合されている。
【0052】
なお、第1の領域121及び第2の領域122の形状は特に限定されない。図5(A)及び図5(B)は、第1の領域121の形状の他の例を示す図である。第1の領域121の形状は、図5(A)に示すように円状の領域であってもよく、図5(B)に示すように幅が一様ではない領域であってもよい。第2の領域122についても同様である。
【0053】
第1の領域121と第2の領域122は、例えば半田により接合されてもよい。また例えば、銀ペーストのような導電性接着剤や、特に導電性のない接着剤により接合されてもよい。また例えば、粘着シール等気密性を確保できる材料により接合されてもよい。これにより、図1におけるシール部120が形成され、筐体10と基板部80の隙間から第2の開口部50に入り込む音声(音響リーク)を防ぐことができる。したがって、マイクロフォンユニットの振動膜32の上、下方向からの音声を音響リークなしに振動膜32まで導くことができ、所望の特性を実現した差動マイクを高密度に実装したマイクロフォンユニットが実現できる。
【0054】
また、第1の領域121と第2の領域122を接合することにより、所望の特性を実現し、高密度に実装することが可能なマイクロフォンユニットを製造することが可能になる。
【0055】
なお、例えば電極部70とランド部90との間及び第1の領域121と第2の領域122との間をともに半田で接合することにより、同一の工程(例えばリフロー工程)で接合することが可能になる。
【0056】
また、例えば電極部70とランド部90との間及び第1の領域121と第2の領域122との間をともに導電性接着剤で接合することにより、同一の工程で接合することが可能になる。
【0057】
さらに、第1の領域121又は第2の領域122を接地電位に接続することにより、マイクロフォンユニットのシールド効果を強化し、耐電磁ノイズ性能を高めることができ、差動マイクの接地電位をより安定化させることが可能になる。なお、接地電位との接続は、筐体10の内部を経由して接続してもよいし、基板部80上に配線を形成して接続してもよい。
【0058】
2.第2の実施の形態に係るマイクロフォンユニット及びその製造方法
次に、第2の実施の形態に係るマイクロフォンユニット2の構成について、図6乃至図8を参照して説明する。なお、以下に説明するマイクロフォンユニット2は、例えば、携帯電話や公衆電話、トランシーバー、ヘッドセット等の音声通信機器や、あるいは、録音機器やアンプシステム(拡声器)、マイクシステムなどに適用することができる。
【0059】
図6は、本実施の形態に係るマイクロフォンユニットの構成の一例を示す図であり、本実施の形態に係るマイクロフォンユニット2の断面を模式的に示した図である。なお、図1と共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0060】
本実施の形態に係るマイクロフォンユニット2は、第1の管130を含んでもよい。第1の管130は、第1の開口部40と連通するように筐体10の外部に設けられる。第1の管130の開口部の断面の形状は特に限定されないが、例えば第1の開口部40とほぼ同一の形状及び大きさであってもよい。
【0061】
本実施の形態に係るマイクロフォンユニット2は、第2の管140を含んでもよい。第2の管140は、貫通孔100と連通するように、基板部80の筐体10と反対側の面に設けられる。第2の管140の開口部の断面の形状は特に限定されないが、例えば貫通孔100とほぼ同一の形状及び大きさであってもよい。
【0062】
なお、第1の管130及び第2の管140は、例えば樹脂やゴム等の材料で形成されてもよい。
【0063】
第1の管130及び第2の管140を通過する音声は、拡散による減衰はほとんどない。したがって、本実施の形態においては、振動膜32の上面での伝わる音圧は、第1の管130の筐体10から遠い方の開口部135の位置での音圧とほぼ等しく、振動膜32の下面での伝わる音圧は、第2の管140の筐体10から遠い方の開口部145の位置での音圧とほぼ等しくなる。したがって、振動膜32では、開口部135の位置での音圧と開口部145の位置での音圧との音圧差に相当する振動が発生する。
【0064】
一方、先に説明したマイクロフォンユニット1においては、振動膜32の上面での伝わる音圧は、第1の開口部40の位置での音圧とほぼ等しく、振動膜32の下面での伝わる音圧は、貫通孔100の位置での音圧とほぼ等しくなる。したがって、振動膜32では、第1の開口部40の位置での音圧と貫通孔100の位置での音圧との音圧差に相当する振動が発生する。
【0065】
よって、本実施の形態に係るマイクロフォンユニット2での音圧入力位置は、開口部135と開口部145となっており、先に説明したマイクロフォンユニット1での音圧入力位置は、第1の開口部40と貫通孔100となっている。すなわち、音圧入力位置の間隔は、本実施の形態に係るマイクロフォンユニット2の方が、先に説明したマイクロフォンユニット1よりも大きいといえる。
【0066】
一方、マイクロフォンユニット外部の音声は、媒質中を進行するにつれ減衰し、音圧(音波の強度・振幅)が低下する。音圧は、音源からの距離に反比例するため、音圧Pは、音源からの距離Rとの関係において、
【数1】

と表すことができる。なお、式(1)中、Kは比例定数である。図7には、式(1)を表すグラフを示す。本図からもわかるように、音圧(音波の強度・振幅)は、音源に近い位置(グラフの左側)では急激に減衰し、音源から離れるほどなだらかに減衰する。
【0067】
差動マイクは、2つのマイクの出力の差分を出力するマイクである。図7のグラフにおいて、一方のマイクの音源からの距離をd0、他方のマイクの音源からの距離をd1とした場合、すなわち差動マイクを構成する2つのマイク間距離がΔd1の場合、差動マイクの出力はΔp1に比例した値となる。一方、図7のグラフにおいて、一方のマイクの音源からの距離をd0、他方のマイクの音源からの距離をd2とした場合、すなわち差動マイクを構成する2つのマイク間距離がΔd1よりも大きいΔd2の場合、差動マイクの出力はΔp1よりも大きいΔp2に比例した値となる。
【0068】
したがって、第1の管130及び第2の管140、若しくはそのいずれか一方を有することにより、音圧入力位置の間隔、すなわち差動マイクを構成する2つのマイク間距離が大きくなるため、出力の大きな差動マイクを用いたマイクロフォンユニットを実現することができる。
【0069】
また、第1の管130及び第2の管140、若しくはそのいずれか一方を設置することにより、音圧入力位置の間隔、すなわち差動マイクを構成する2つのマイク間距離が大きくなるため、出力の大きな差動マイクを用いたマイクロフォンユニットを製造することが可能になる。
【0070】
なお、第1の管130を第1の開口部40と嵌合するように構成してもよい。これにより、接合面積を拡大して接合力を向上させ、第1の管130と第1の開口部40との間からの音響リークを防止することができる。同様に、第2の管140を貫通孔100と嵌合するように構成してもよい。これにより、接合面積を拡大して接合力を向上させ、第2の管140と貫通孔100との間からの音響リークを防止することができる。
【0071】
図8(A)及び図8(B)は、第1の管130及び第2の管140の外形の一例を示す図である。第1の管130の第1の開口部40と嵌合する部分の外形は、例えば図8(A)に示すような段差部300を有した構造や、図8(B)に示すようなテーパ部310を有した構造であってもよい。同様に、第2の管140の貫通孔100を嵌合する部分の外形は、例えば図8(A)に示すような段差部300を有した構造や、図8(B)に示すようなテーパ部310を有した構造であってもよい。
【0072】
さらに、第1の管130と第1の開口部40とが嵌合する部分を接着する構成としてもよい。これにより、さらに接合力を向上させ、第1の管130と第1の開口部40との間からの音響リークを防止することができる。同様に、第2の管140と貫通孔100とが嵌合する部分を接着する構成としてもよい。これにより、さらに接合力を向上させ、第2の管140と貫通孔100との間からの音響リークを防止することができる。
【0073】
また、本実施の形態に係るマイクロフォンユニット2は、振動膜32から第1の管130の筐体10から遠い方の開口部135までの距離D1と、振動膜32から第2の管140の筐体10から遠い方の開口部145までの距離D2とが等しく構成されていてもよい。これにより、音波の位相成分を揃えることで、より精度の高い雑音除去機能を実現することができる。
【0074】
なお、本実施の形態においては、第1の管130及び第2の管140の長手方向の中心線は直線であるが、それに限らず、長手方向の中心線の一部又は全部に曲線を含む管であってもよい。
【0075】
3.第3の実施の形態に係る音声入力装置
次に、第3の実施の形態に係る音声入力装置3の構成について、図9乃至図10を参照して説明する。なお、以下に説明する音声入力装置3は、例えば、携帯電話や公衆電話、トランシーバー、ヘッドセット等の音声通信機器や、あるいは、録音機器やアンプシステム(拡声器)、マイクシステムなどに適用することができる。
【0076】
図9は、本実施の形態に係る音声入力装置の構成の一例を示す図であり、本実施の形態に係る音声入力装置3の断面を模式的に示した図である。なお、図1及び図6と共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0077】
本実施の形態に係る音声入力装置3は、外部筐体150を含んでもよい。外部筐体150の内部には、マイクロフォンユニット2が設置されている。外部筐体150は、第1の管130の筐体10から遠い方の開口部135及び第2の管140の筐体10から遠い方の開口部145と連通する開口部を有している。
【0078】
なお、外部筐体150の内部にマイクロフォンユニット1を設置する場合には、外部筐体150は、第1の開口部40及び貫通孔100と連通する開口部を有する構成としてもよい。
【0079】
本実施の形態においては、第1の管130及び第2の管140の長手方向の中心線は直線であるが、それに限らず、長手方向の中心線の一部又は全部に曲線を含む管であってもよい。図10(A)及び図10(B)は、本発明に係る音声入力装置の他の構成例について模式的に示した断面図である。図10(A)に示すように、第1の管130又は第2の管140の一方(図10(A)では第1の管130)を長手方向の中心線が直線になる管とし、他方(図10(A)では第2の管140)を長手方向の中心線の一部に曲線を含む管としてもよい。また、図10(B)に示すように、第1の管130及び第2の管140をともに長手方向の中心線の一部に曲線を含む管としてもよい。
【0080】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1の実施の形態に係るマイクロフォンユニットについて説明するための図。
【図2】第1の実施の形態に係るマイクロフォンユニットについて説明するための図。
【図3】第1の実施の形態に係るマイクロフォンユニットについて説明するための図。
【図4】第1の実施の形態に係るマイクロフォンユニットについて説明するための図。
【図5】第1の実施の形態に係るマイクロフォンユニットについて説明するための図。
【図6】第2の実施の形態に係るマイクロフォンユニットについて説明するための図。
【図7】第2の実施の形態に係るマイクロフォンユニットについて説明するための図。
【図8】第2の実施の形態に係るマイクロフォンユニットについて説明するための図。
【図9】第3の実施の形態に係る音声入力装置について説明するための図。
【図10】第3の実施の形態に係る音声入力装置について説明するための図。
【符号の説明】
【0082】
1 マイクロフォンユニット、2 マイクロフォンユニット、3 音声入力装置、10 筐体、20 内部空間、22 第1の空間、24 第2の空間、30 仕切り部、32 振動膜、34 保持部、40 第1の開口部、50 第2の開口部、60 電気信号出力部、61 振動膜ユニット、62 コンデンサ、63 信号増幅回路 64 ゲイン調整回路部、65 チャージポンプ回路、66 オペアンプ、70 電極部、80 基板部、90 ランド部、100 貫通孔、120 シール部、121 第1の領域、122 第2の領域、130 第1の管、135 開口部、140 第2の管、145 開口部、150 外部筐体、200 コンデンサ型マイクロフォン、202 振動膜、204 電極、300 段差部、310 テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する筐体と、
前記内部空間を第1の空間と第2の空間に分割する少なくとも一部が振動膜で構成された仕切り部と、
前記振動膜の振動に基づいて電気信号を出力する電気信号出力部と、
前記電気信号出力部と電気的に接続される電極部と、
前記電極部と電気的に接続されるランド部とを含む基板部と、
を含み、
前記筐体は、前記第1の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第1の開口部と、前記第2の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第2の開口部を有し、
前記基板部は、貫通孔を有し、前記第2の開口部と前記貫通孔の少なくとも一部が重複するように配置されることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロフォンユニットであって、
前記筐体の表面の、前記第2の開口部を囲む第1の領域と、前記基板部の表面の、前記貫通孔を囲む第2の領域が対向して接合されていることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロフォンユニットであって、
前記電極部と前記ランド部との間及び前記第1の領域と前記第2の領域との間は、半田により接合されていることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項4】
請求項2に記載のマイクロフォンユニットであって、
前記電極部と前記ランド部との間は、導電性接着剤により接合され、
前記第1の領域と前記第2の領域との間は、接着剤により接合されていることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項5】
請求項2に記載のマイクロフォンユニットであって、
前記電極部と前記ランド部との間及び前記第1の領域と前記第2の領域との間は、導電性接着剤により接合されていることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項6】
請求項3又は請求項5のいずれかに記載のマイクロフォンユニットであって、
前記第1又は第2の領域は、接地電位に接続されていることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のマイクロフォンユニットであって、
前記第1の開口部と連通する第1の管が筐体外部に設けられていることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のマイクロフォンユニットであって、
前記貫通孔と連通する第2の管が前記基板部の前記筐体と反対側の面に設けられていることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項9】
請求項7に記載のマイクロフォンユニットであって、
前記第1の管の一端と前記第1の開口部とが嵌合して接合されていることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項10】
請求項8に記載のマイクロフォンユニットであって、
前記第2の管の一端と前記貫通孔とが嵌合して接合されていることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項11】
請求項7又は9のいずれかに記載のマイクロフォンユニットであって、
前記第1の管は、前記第1の開口部と嵌合する嵌合部と前記嵌合部以外の非嵌合部を有し、
前記第1の管の外形は、前記嵌合部の外周が前記非嵌合部の外周よりも短い段差構造であることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項12】
請求項8又は10のいずれかに記載のマイクロフォンユニットであって、
前記第2の管は、前記貫通孔と嵌合する嵌合部と前記嵌合部以外の非嵌合部を有し、
前記第2の管の外形は、前記嵌合部の外周が前記非嵌合部の外周よりも短い段差構造であることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項13】
請求項7、9又は11のいずれかに記載のマイクロフォンユニットであって、
前記第1の管は、前記筐体と接着されていることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項14】
請求項8、10又は12のいずれかに記載のマイクロフォンユニットであって、
前記第2の管は、前記基板部と接着されていることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項15】
請求項8、10、12又は14のいずれかに記載のマイクロフォンユニットであって、
前記振動膜から前記第1の管の前記筐体から遠い方の開口部までの距離と、前記振動膜から前記第2の管の前記筐体から遠い方の開口部までの距離が等しく構成されていることを特徴とするマイクロフォンユニット。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれかに記載のマイクロフォンユニットを含むことを特徴とする音声入力装置。
【請求項17】
内部空間を有する筐体と、
前記内部空間を第1の空間と第2の空間に分割する少なくとも一部が振動膜で構成された仕切り部と、
前記振動膜の振動に基づいて電気信号を出力する電気信号出力部と、
前記電気信号出力部と電気的に接続される電極部と、
前記電極部と電気的に接続されるランド部とを含む基板部と、
を含み、
前記筐体は、前記第1の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第1の開口部と、前記第2の空間と前記筐体の外部空間とを連通する第2の開口部を有したマイクロフォンユニットの製造方法であって、
前記基板部に貫通孔を形成し、前記第2の開口部と前記貫通孔の少なくとも一部が重複するように配置することを特徴とするマイクロフォンユニットの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−135661(P2009−135661A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308833(P2007−308833)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【出願人】(505303059)株式会社船井電機新応用技術研究所 (108)
【Fターム(参考)】