説明

マイクロミキサー

【課題】溶融樹脂とガスを効率良く分散させて、ガスを溶融樹脂中へ急速かつ均一に溶解させるマイクロミキサーを提供する。
【解決手段】溶融樹脂とガスとを混合し、該ガスを溶融樹脂中に分散または溶解させるマイクロミキサーであって、そのマイクロミキサー10は、内部に溶融樹脂を導入する第1導入路が設けられた第1筐体11と、ガスを導入する第2導入路と導入されたガスを分割して吹き出す複数の微細孔が設けられてなり、第1筐体の内部に設けられた第2筐体14とを有し、第1筐体11の内壁と第2筐体14の外壁とが近接して設けられて内壁と外壁間の隙間からなる微細領域で溶融樹脂と前記ガスとを合流させて混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを溶融樹脂中に分散または溶解させるマイクロミキサーに関する。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂は、気泡構造により軽量化が図れる他、柔軟性、緩衝性、断熱性、吸音性などに優れており、食品容器、梱包・包装、自動車成形材料、断熱材など幅広い分野で使用されている。
この発泡樹脂は、通常、化学発泡剤または物理発泡剤を使用して製造される。発泡樹脂の製造原理は、いずれの発泡剤を使用してもほぼ同じであり、物理的に導入したガスあるいは熱分解によって生じたガスを樹脂中へ溶解させ、次いで、条件を変化させて気泡核を発生させ、気泡を成長させ、最後に冷却などにより気泡を安定化させるというものである。
【0003】
化学発泡剤を使用する発泡樹脂の製造方法は、現在も主流の方法であるが、化学発泡剤の種類によっては、熱分解残渣物が製品中に混入する恐れや、アンモニア、窒素酸化物、ホルムアルデヒドなどの有害ガスが発生することなどの欠点を有している。
物理発泡剤は、環境上の理由から大きく変遷しており、以前は、特定フロン(CFC類:クロロフルオロカーボン)や指定フロン(HCFC類:ハイドロクロロフルオロカーボン)が使われていたが、オゾン破壊係数が高いため既に全廃されている。現在一部で使用されているHFC類(ハイドロフルオロカーボン)は、オゾン破壊係数能力がないため規制はないが、地球温暖化係数が高いため排出削減対象になっている。現在では、物理発泡剤として炭化水素系ガスが最も多く使用されているが、可燃性であるため取扱いに注意を要する。炭化水素系ガスも地球温暖化係数が3〜4程度と高いため、環境に配慮して、窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを物理発泡剤として使用する方策が検討されている。
【0004】
この窒素や二酸化炭素などの不活性ガスは、樹脂となじみにくく、樹脂中への溶解度が低いため、ガスを樹脂中へ溶解させることが困難であったが、特許文献1で提案されるように、超臨界流体を用いることにより、超微細な発泡樹脂を製造することが可能となっている。
しかしながら、特許文献1に記載されているように、溶融押出機を排出されたシートに、超臨界流体を溶解させる方法は、装置が非常に大型化するとともに、溶解時間が長く、工業的に連続的に製造するには問題があった。
また、溶融押出機の中に超臨界流体を導入して樹脂と溶解混合する方法も記載されているが、実際に工業的に利用する場合、不活性ガスが逆流する等、様々な問題がある。
特に顕著な問題は、樹脂中に溶解しているガスと樹脂中に溶解されずに分散されているガスが混在していることであり、このため発泡樹脂を安定的に製造することが困難となっている。
溶融樹脂はガスを溶解する程、粘度が低下して可塑性が増加するため、溶解ガス量が均一でない場合、流動が不安定となる。溶融押出機の中では、溶解ガス量が多い樹脂や未溶解分散ガスが前方へ送り出されやすくなり、混練が不十分になる。また、射出成形やブロー成形においては、計量後、成形用金型に送られるが、ガスの溶解と分散が不安定であるため、計量も不安定になる。
これらの技術課題を解決するためには、溶融樹脂と不活性ガスを均一に溶解混合するための特殊で高価な溶融押出機が必要となり、実用上の大きな課題となっている。
【0005】
また、特許文献2では、不活性ガスと溶融樹脂を充分に混ぜ合わせることが可能な射出成形機を提供することを目的とし、溶融押出機の先端に往復移動可能なピストンとサブシリンダを設置し、ピストンの往復移動により溶融樹脂とガスを充分混ぜ合わせ、さらに複数の貫通孔を形成したミキシングヘッドを設置して、攪拌性能の向上を図っている。
特許文献2の射出成形機は、主に、樹脂を加熱溶融供給するためのメインシリンダ部、不活性ガスの供給部、溶融樹脂と不活性ガスを混合するための混合筒・サブシリンダ部、溶融樹脂と不活性ガスの混合物を射出する射出ノズル部で構成されている。
特許文献2によれば、樹脂はメインシリンダ部によって加熱溶融供給され、混合筒へ導入される。一方、不活性ガスは、微細孔が多数形成された多孔質焼結体を介して、混合筒へ導入される。混合筒とサブシリンダ部は、複数の貫通孔が形成されたスタティックミキシングヘッドを介して接続されており、混合筒へ導入された溶融樹脂と不活性ガスは、サブシリンダ部の往復移動可能なピストンによって、サブシリンダ部と混合筒を往復し、この過程で混合される。さらに、射出ノズル部には多貫通孔ブロックが備えられており、多貫通孔ブロックを通すことによって、せん断熱発生による混合流体の温度上昇および気泡の微細化を図っている。また、混合筒内では、溶融樹脂と不活性ガスは、ランダムな状態になり、複数の貫通孔を有するスタティックミキシングヘッドを往復流動する際にも、ランダムな状態で流動する。即ち、複数の貫通孔のうち、溶融樹脂のみが流動する孔や不活性ガスのみが流動する孔が存在することになる。このランダムな状態を、ピストン往復移運動とサブシリンダ空間によって、マクロ流動させることにより、次第に均一な流動状態になり、混合されていくものと考えられる。射出ノズル部では、多貫通孔ブロックや先細りのノズルを混合流体が流動するため、ここでも一定の混合効果が得られるものと考えられる。しかしながら、特許文献2の構成では、混合を促進するために、ピストン駆動手段やサブシリンダを設けているので、設備の大型化やコスト高になる。
【0006】
さらに、特許文献3には、ガスを高粘度流体に分散させる発泡装置として、数メートル以上の分散用管路ユニットを使用し、さらにスタティックミキサーやパワーミキサーと併用する装置が提案されている。特許文献3には、管路の径は明記されていないが、ガスと高粘度流体を加圧状態で分散用管路を通過することにより、ガスがせん断力によって微細化され、高粘度流体内に分散されることが記述されている。
しかしながら、特許文献3では、数メートル以上の分散用管路ユニットを使用していることから設備が大型になり、しかも管路が長くなると、それに比例して圧力損失も大きくなり、供給エネルギーが過剰になる恐れや、ガスと高粘度流体の粘度差が非常に大きいために流れ方向にムラが生じガスが均一に分散されない恐れがある。
【0007】
またさらに、特許文献4には、流動性材料とガスを交互に送り出し、高圧に加圧して、管路内で流動性材料とガスを混合する方法及び装置が開示され、この構成によれば、高圧管路よりも狭い通路を有する狭路手段を通過させることにより一層緻密に混合されるとされている。この特許文献4において、高圧管路は、内径10mm、長さ2mであり、狭小手段は、高圧配管内に装着された鋼線メッシュ(線径0.5〜0.3mm、1mm角程度のメッシュ)である。この特許文献4の構成において、高圧管路内での混合は、加圧圧送されることにより、液体樹脂とガスの間に混合作用が生じ、分断されていたガスが液体樹脂中に溶け込んでいくことによるものとされており、狭路手段による混合は、それをさらに緻密化させると記述されている。しかしながら、特許文献4の構成では、液体樹脂とガスを交互に送りだしても、液体樹脂とガスの粘度差が大きいため、加圧手段や管路内で樹脂同士あるいはガス同士が合一する恐れがあり、また、流れ方向にムラが生じる恐れがあることから、必ずしも微細なガスを均一に分散させることは容易ではなかった。
【0008】
また、特許文献5では、ミクロンオーダーの微細な通路を有する樹脂用エレメントおよび空気用エレメントを交互に多段上に積層させた分散部を構成し、溶融樹脂および空気を夫々通過させることにより、規則正しく分散させることが開示されている。しかし、この分散部では、溶融樹脂と空気は直接接触することはなく、規則正しく分散された状態で分散部から排出され、分散部から排出された後に始めて溶融樹脂と空気が接触・混合される。分散部から直接成形機ノズルに供給、または、分散部と成形機ノズルの間にスタティックミキサーを有する混合部を設けて、均質な発泡樹脂を得ようとしている。
しかしながら、分散部から直接成形機ノズルに供給するだけでは十分な混合が確保できないという問題があり、十分な混合を確保するためにはスタティックミキサーを設けるなど装置が複雑になるという問題があった。
【0009】
また、特許文献6〜7では、2液以上の流体の迅速かつ均一な混合を達成させるために、マイクロデバイスが提案されている。例えば、特許文献6で示されているマイクロデバイスでは、2つの流体をそれぞれ分割させ、中心軸の一点で合流させるように流路が構成され、合流後の混合部における排出チャンネルは、相当径1mm以下の単純な流路となっている。また、特許文献7で示されているマイクロデバイスでは、それぞれ分割させた2以上の流体を、合流させるように工夫している。
しかしながら、このようなマイクロデバイスを用いて、溶融樹脂とガスの混合を行おうとする場合、粘度の低いガスのみが優先的に通過してしまい、充分な混合が達成できない。すなわち、混合させようとする2つの流体の流量や粘度に大きな差が無ければ、このようなマイクロデバイスを用いて、迅速かつ均一な混合が達成されるが、溶融樹脂とガスのような場合、溶融樹脂に比べて、ガスの体積流量は非常に大きく、ガスの粘度は非常に低い。このため、ガスのみが優先的に通過してしまい、充分な混合が達成できず、溶融樹脂中へのガスの溶解は不十分になる。
【0010】
また、特許文献8では、海島構造のマイクロデバイスを提案しているが、高流速条件や流量比が同一な条件で運転しない限り、ノズルによって構造的に島状に分散させた流体が、もう一方の流体(海)の中で、合一する恐れがあり、溶融樹脂中へのガスの溶解が不十分になる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2626676号(特表平6−506724)
【特許文献2】特許第3339756号(特開平8−207094)
【特許文献3】特許第3851895号(特開2004−1571)
【特許文献4】特許第3685531号(特開平9−94450)
【特許文献5】特開2007−125704
【特許文献6】特許第4339163号(特開2005−288254)
【特許文献7】特開2010−428
【特許文献8】特開2006−231255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、従来の物理発泡装置は、溶融樹脂とガスを均一に溶解混合させるために、特殊な溶融押出機や大型の混合装置が必要であったため、コスト高となり、実用上の大きな課題となっていた。また、従来のマイクロデバイスでは、溶融樹脂とガスのように粘度差の大きな流体同士を混合させることが困難であり、短時間で効率良くガスを溶融樹脂中に均一に分散または溶解させるような物理発泡装置に適用することができなかった。
【0013】
そこで、本発明は、ガスを溶融樹脂中へ短時間で均一に溶解させることができる小型で簡単な構成のマイクロミキサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の目的を達成するために本発明に係るマイクロミキサーは、溶融樹脂とガスとを混合し、該ガスを前記溶融樹脂中に分散または溶解させるマイクロミキサーであって、
該マイクロミキサーは、内部に前記溶融樹脂を導入する第1導入路が設けられた第1筐体と、前記ガスを導入する第2導入路と導入されたガスを分割して吹き出す複数の微細孔が設けられてなり、前記第1筐体の内部に設けられた第2筐体と、を有し、前記第1筐体の内壁と前記第2筐体の外壁とが近接して設けられて前記内壁と前記外壁間の隙間からなる微細領域で前記溶融樹脂と前記ガスとを合流させて混合することを特徴とする。
【0015】
以上のように構成された本発明に係るマイクロミキサーによれば、前記第1導入路の注入口から注入されて前記微細領域を拡流する溶融樹脂に向けて前記ガスを前記複数の微細孔を介して分割して吹き出すことができるので、合流時に溶融樹脂とガスの接触面積が増加して、合流と同時に混合が開始され、さらに合流後に溶融樹脂とガスの混合物が微細領域を通過する際に混合が促進される。
これにより、ガスを溶融樹脂中へ短時間で均一に溶解させることができる。
また、前記第1筐体の内壁と第2筐体の外壁とを近接して設けることにより微細領域が形成されているので、構成を簡単にできる。
【0016】
本発明に係るマイクロミキサーのある形態では、前記微細孔は、第2導入路の開口端に設けられた板状部材において一方の主面から他方の主面に貫通するように形成されており、前記第1筐体における前記第1導入路の注入口が設けられた内壁と該内壁と対向する前記一方の主面との間の隙間によって前記微細領域の一部を構成する微小合流領域が構成されている。
【0017】
本発明に係るマイクロミキサーのある形態では、前記微小合流領域を除く微細領域により、さらに前記微小合流領域において前記溶融樹脂と前記ガスとの混合物の混合が促進される。
【0018】
本発明に係るマイクロミキサーのある形態では、前記微小合流領域において前記溶融樹脂が第1導入路を中心として放射状に拡流される。
【0019】
本発明に係るマイクロミキサーのある形態では、前記微小合流領域において、前記溶融樹脂の拡流方向と前記ガスの吹き出し方向とが直交する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、ガスを溶融樹脂中へ短時間で均一に溶解させることができる小型で簡単な構成のマイクロミキサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施形態のマイクロミキサーを用いて構成した成形装置の断面図である。
【図2】実施形態のマイクロミキサーの断面図である。
【図3】実施形態の変形例のマイクロミキサーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施形態のマイクロミキサーについて説明する。
実施形態.
図1は、本発明に係るマイクロミキサーを用いて構成した実施形態の成形装置の断面図である。
実施形態の成形装置は、マイクロミキサー10を挟んで溶融樹脂供給部200と成形部300とが配置されてなる。成形部300は、用途に応じて種々の成形方法が選択されるが、例えば、押出、射出、ブロー成形などから選択される。溶融樹脂供給部200も用途に応じて種々の供給方法が選択される。図1では、押出溶融機を例示しているが、押出溶融機にギアポンプを備えたものや、攪拌溶融槽にギアポンプまたはスクリューポンプを備えたものなどから選択される。溶融樹脂供給部200は、樹脂投入口220を備えた筒体210と筒体210の空洞内に挿入されたスクリュー230とからなり、筒体210の空洞の内壁とスクリュー230の間に樹脂搬送部240が形成されて溶融樹脂がスクリュー230の回転によって搬送される。樹脂搬送部240の先端に樹脂供給孔250が設けられて、溶融樹脂がマイクロミキサー10に供給される。
本明細書において、溶融樹脂とは、流動性のある樹脂を指し、常温でも流動性のある樹脂や、常温で固体状態であっても、高温では溶融して、流動性が生じ、ポンプなどで移送可能な樹脂を指す。また、樹脂は、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーであってもよく、硬化前の熱硬化性樹脂や熱可塑性エラストマーの原料樹脂であっても良い。
【0023】
本発明に係るマイクロミキサー10は、図2に示すようにガスを分割して、溶融樹脂に合流させるように構成されており、合流した後の溶融樹脂とガスの混合物が微細流路を流通することによって、溶融樹脂にガスを効率良く分散させて、ガスを溶融樹脂中へ急速かつ均一に溶解させている。
ここで、本発明で使用されるガスは、特にガスの種類に制限はなく、窒素や二酸化炭素、あるいは空気の他、ブタンやペンタンなどの炭化水素系ガスやハイドロフルオロカーボン系ガスなど種々のガスが含まれるが、本発明に係るマイクロミキサーによれば、窒素や二酸化炭素、あるいは空気など、溶融樹脂とはほとんど反応しなかったり、又は、溶融樹脂中への溶解度が非常に低いガスであっても容易に溶融樹脂中に分散又は溶解させることができる。
【0024】
図2のマイクロミキサー10は、混合室11aを有する筐体11と、混合室11a内に設けられたガス導入用筐体14とを有してなる。ガス導入用筐体14は、さらに、ガス導入路12bに連結されてその連結部から前方に向かって徐々に断面積が拡大するガス拡流部12aとからなるガス供給部12と、ガス拡流部12aの先端に設けられたガス分割放出部13とからなる。実施形態において、ガス分割放出部13は、複数の微細流路13bが一方の主面から他方の主面に貫通するように形成された板状部材13aからなり、板状部材13aの外形がガス拡流部12aの開口部の形状と同じになるように加工されており、ガス分割放出部13がガス拡流部12aの開口端部に嵌め込まれている。
そして、ガス導入用筐体14の外壁と筐体11の内壁とが近接して設けられて微細領域(混合室11a)が形成される。この微細領域(混合室11a)は、機能的には、筐体11の樹脂導入孔11bが設けられた内壁(合流領域壁)と該内壁に近接して配置された板状部材13aの表面とによって構成された微小合流領域15と、その微小合流領域15を除く微細領域からなる微小混合促進領域16とに分けることができる。
【0025】
尚、筐体11に形成された樹脂導入孔11bは、溶融樹脂供給部200の樹脂供給孔250に連通する。板状部材13aの表面と混合室11aの合流領域壁との間の間隔、即ち、微小合流領域15の隙間幅は、微小合流領域15を拡流する溶融樹脂に吹出口から吹き出されたガスが吹き出し方向全体にわたって浸透するように溶融樹脂の粘度や吐出圧力及びガスの吐出圧及び微細流路13bの径を考慮して設定されるが、例えば、10μm〜3mmの範囲に設定される。
【0026】
以上のように構成された実施形態のマイクロミキサー10において、樹脂導入孔11bから注入された溶融樹脂は、微小合流領域15内を板状部材13aの表面に沿って拡がっていく。この板状部材13aの表面に沿って拡がっていく溶融樹脂に向けて複数の微細流路13bによって微細に分割されたガスが吹き出される。このように微細に分割したガスを溶融樹脂に向けて吹き出すことによって、合流時における溶融樹脂とガスの接触面積を増加させることができ、合流と同時に混合又は溶解が開始される。
【0027】
具体的には、微小合流領域15の中を拡流する溶融樹脂を薄く伸ばした流動状態にすることにより、溶融樹脂の線流速が増加し、さらには、せん断応力が増加することにより、溶融粘度が低下する。一方、ガスを微細流路13bから噴き出して拡流・分割することにより、合流部におけるガスの線流速が減少する。これにより、溶融樹脂とガスのように流量差や粘度差が大きな流体の混合でも均質な混合を行うことが可能となる。
【0028】
また、微小合流領域15においてガスが合流混合された溶融樹脂は、微細領域における微小混合促進領域16を通過する際に混合又は溶解が促進される。すなわち、実施形態のマイクロミキサーでは、混合室11aの内壁とガス拡流部12aの外壁の間隔が微小合流領域15の隙間と同程度(例えば、10μm〜3mm)に設定されて微小混合促進領域16が構成されており、微小バブルとなったガスが混合された溶融樹脂が微小混合促進領域16を通過することにより、混合が促進される。
尚、微小合流領域15の機能と微小混合促進領域16の機能とは異なっていることから、微小合流領域15における筐体11の内壁とガス導入用筐体14の外壁間の間隔と微小混合促進領域16における筐体11の内壁とガス導入用筐体14の外壁間の間隔とは異なっていても良い。
【0029】
以上のようにして、実施形態のマイクロミキサーによれば、ガスを複数の微細流路に分割してそれぞれ吹出口から吹き出して拡流している溶融樹脂に効果的に分散させることができることに加え、微小合流領域15及び微小混合促進領域16において溶融樹脂とガスの接触面積を増加させて確実に混合することができ、かつ微小領域を通過させている間にガスを溶融樹脂中へ効果的かつ急速に溶解させることが可能となる。
【0030】
また、実施形態のマイクロミキサーでは、筐体11の内壁にガス導入用筐体14の外壁を近接して配置することにより、微小合流領域15及び微小混合促進領域16を構成しているので、溶融樹脂とガスのように流量差や粘度差が大きな流体の混合でも均質な混合を行うことが可能なマイクロミキサーを簡単な構成により実現することとができる。
【0031】
さらに、筐体11とガス導入用筐体14とを二重管構造にすることによりマイクロミキサーを構成しているので、熱交換作用も働き、熱エネルギーの効率的な利用や温度条件の調整も容易に行うことができる。
【0032】
以上の実施形態では、マイクロミキサー1において、樹脂導入孔11bと樹脂射出孔11cとを中心軸が一致するように構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図3に示すように、樹脂導入孔11bとガス導入路12b’の中心軸を一致させ、樹脂導入孔11bの中心軸と樹脂射出孔11cの中心軸とを直交するように構成してもよい。
このようにすると、ガスと混合された溶融樹脂の流れる方向が不連続に変化したときに混合がさらに促進される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明したように本発明によれば、溶融樹脂中への溶解度が非常に低いガスだけでなく、溶融樹脂中への溶解度が高く、従来から使用されている炭化水素系ガスにも適用することが可能な汎用性のあるマイクロミキサーを提供することができる。
また、溶融樹脂とガスを均一に溶解混合させるための高価で特殊な溶融押出機を必要とせずに、安価で汎用の溶融押出機に、本発明のマイクロミキサーを取り付けることにより、発泡樹脂を安価に製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
10マイクロミキサー、
11 筐体
11a 混合室
11b 樹脂導入孔
11c 樹脂射出孔
12 ガス供給部
12a ガス拡流部
12b ガス導入路
13 ガス分割放出部
13a 板状部材
13b 微細流路
14 ガス導入用筐体
15 微小合流領域
16 微小混合促進領域
200 溶融樹脂供給部、
300 成形部
210 筒体、
220 樹脂投入口
230 スクリュー、
240 樹脂搬送部、
250 樹脂供給孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂とガスとを混合し、該ガスを前記溶融樹脂中に分散または溶解させるマイクロミキサーであって、
該マイクロミキサーは、
内部に前記溶融樹脂を導入する第1導入路が設けられた第1筐体と、
前記ガスを導入する第2導入路と導入されたガスを分割して吹き出す複数の微細孔が設けられてなり、前記第1筐体の内部に設けられた第2筐体と、を有し、
前記第1筐体の内壁と前記第2筐体の外壁とが近接して設けられて前記内壁と前記外壁間の隙間からなる微細領域で前記溶融樹脂と前記ガスとを合流させて混合するマイクロミキサー。
【請求項2】
前記微細孔は、第2導入路の開口端に設けられた板状部材において一方の主面から他方の主面に貫通するように形成されており、前記第1筐体における前記第1導入路の注入口が設けられた内壁と該内壁と対向する前記一方の主面との間の隙間によって前記微細領域の一部を構成する微小合流領域が構成されている請求項1に記載のマイクロミキサー。
【請求項3】
前記微小合流領域を除く微細領域により、さらに前記微小合流領域において前記溶融樹脂と前記ガスとの混合物の混合が促進される請求項2記載のマイクロミキサー。
【請求項4】
前記微小合流領域において前記溶融樹脂が第1導入路を中心として放射状に拡流される請求項2又は3に記載のマイクロミキサー。
【請求項5】
前記微小合流領域において、前記溶融樹脂の拡流方向と前記ガスの吹き出し方向とが直交する請求項2〜4のうちのいずれか1つに記載のマイクロミキサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−254580(P2012−254580A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129377(P2011−129377)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】