説明

マイクロレンズの製造方法および露光用マスク

【課題】固体撮像素子に設けるマイクロレンズを、隣接するマイクロレンズとのギャップを狭くして高い集光性能を与えるとともに、各マイクロレンズの形状が均一になるように形成する製造方法を提供すること。
【解決手段】固体撮像素子10におけるマイクロレンズ7の製造方法であって、マイクロレンズを構成する第一の層81を設けた後に、マイクロレンズを構成する第二の層85を、第一の層とは異なる形状で第一の層に積層して設け、その後両層を熱処理して一体化することにより、所望の形状のマイクロレンズを形成する工程を含み、第一の層の形状が、各画素の中央から画素境界に向かう放射状パターンを含み、第二の層の形状が、多角形状の各画素の形状に近く、画素境界を越えない凸図形パターンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子に設けるマイクロレンズの性能向上に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置は画像の記録、通信、放送の内容の拡大に伴って広く用いられるようになっている。撮像装置として種々の形式のものが提案されているが、小型、軽量で高性能のものが安定して製造されるようになった固体撮像素子を組み込んだ撮像装置が、デジタルカメラやデジタルビデオとして普及してきている。
【0003】
固体撮像素子は、撮影対象物からの光学像を受け、入射した光を電気信号に変換する複数の光電変換素子を有する。光電変換素子の種類はCCD(電荷結合素子)タイプとCMOS(相補型金属酸化物半導体)タイプとに大別される。また、光電変換素子の配列形態から、光電変換素子を1列に配置したリニアセンサー(ラインセンサー)と、光電変換素子を縦横に2次元的に配列させたエリアセンサー(面センサー)との2種類に大別される。いずれのセンサにおいても光電変換素子の数(画素数)が多いほど撮影された画像は精密になるので、近年は特に、大画素数の固体撮像素子を安価に製造する方法が検討されている。
【0004】
固体撮像素子に要求される性能で重要な課題の一つに、入射する光への感度を向上させることが挙げられる。小型化した固体撮像素子で撮影した画像の情報量を多くするためには受光部となる光電変換素子を微細化して高集積化する必要がある。しかし、光電変換素子を微細化した場合、各光電変換素子の面積が小さくなり、受光部として利用できる面積割合も減るので、光を取り込む面積が小さくなるため、光電変換素子の受光部に取り込める光の量が少なくなり、実効的な感度は低下する。
【0005】
このような、微細化した固体撮像素子の感度の低下を防止するための手段として、光電変換素子の受光部に効率良く光を取り込むために、対象物から入射される光を集光して光電変換素子の受光部に導くマイクロレンズを光電変換素子上に形成する技術が提案されている。マイクロレンズで光を集光して光電変換素子の受光部に導くことで、受光部の見かけ上の開口率を大きくすることが可能になり、固体撮像素子の感度の向上が可能になる。
【0006】
マイクロレンズの製造方法としては、マイクロレンズの素材となる透明なアクリル系感光性樹脂をフォトリソグラフィー法により選択的にパターン形成した後に、材料の熱リフロー性を利用してレンズ形状を作るフローレンズタイプや、マイクロレンズの素材となるアクリル透明樹脂の平坦層の上に、アルカリ可溶性と感光性と熱フロー性を有するレジスト材料を用いてフォトリソグラフィー法と熱リフローによりレンズ母型を形成し、ドライエッチング法によりレンズ母型の形状をアクリル透明樹脂層に転写してレンズ形状を作る転写タイプがある。
【0007】
マイクロレンズの形成において、上記フローレンズタイプと転写タイプのいずれの製造方法で微細化された画素に対応する場合にも、マイクロレンズの光取り込み面積をできるだけ広く、すなわち、隣接するマイクロレンズとのギャップを狭くして、なおかつ、レンズ形状を良好に保つことが、固体撮像素子の実効的な感度を高く保持するための必要条件となる。しかし、例えばフローレンズ方式で製造する場合に、隣接するマイクロレンズとの境界部分での豊富な量の樹脂の熱リフロー挙動を制御して、狭ギャップと良好な形状とを保持することは高い難度を有し、品質の不安定要因となる。
また、カラーフィルタを用いてカラー画像を入力するためのカラー固体撮像素子において
は、光電変換素子毎に画素対応する着色画素上に設けるマイクロレンズのサイズまたは隣接するマイクロレンズとのギャップやレンズ自身の形状のばらつきにより、集光性能にばらつきが生じると、色別の感度のバランスが崩れて色表現上のムラ等の不具合が明瞭に発生するので、マイクロレンズの上記性能を高める必要性がさらに大きくなる。
【0008】
上述のように隣接するマイクロレンズとのギャップを狭くしてレンズ形状を良好に保つために、マイクロレンズの製造工程を実施する対象領域を画素区分により分けて、それぞれ別個にフォトリソグラフィー法を含む工程により処理する方法が提案されている(特許文献1および特許文献2を参照)。図2は、このような画素区分による領域分割により2段階でマイクロレンズを形成する方法を説明するための部分模式図である。図2(a)、(b)は、ベイヤ(Bayer)配列と呼ばれる市松模様の配列をカラーフィルタに適用した場合を例として、マイクロレンズ形成時に使用される露光用マスクの主要部のパターンを説明するための模式平面図であり、(c)は、(a)、(b)に示す各露光用マスクを用いて2段階のフォトリソグラフィー法によりマイクロレンズを形成した結果のカラー固体撮像素子の構造の一例を示す模式断面図である。
【0009】
図2(c)において、カラー固体撮像素子1は、半導体基板2上に規則的に設けた複数の光電変換素子3を平面配置した固体撮像素子画素部の受光面側表面4に、透明平坦化層5を介して、複数色を繰り返し配列する着色透明画素パターン6を複数の光電変換素子3に1対1に対応させて設け、さらに第二の透明平坦化層51により着色透明画素パターン6を配列した平面上の平坦化を行った後に、上記のマイクロレンズ71、72を設けてなる。
【0010】
なお、ベイヤ配列と呼ばれる市松模様の配列をカラーフィルタに適用する例は、カラー固体撮像素子に多く用いられる。前記マイクロレンズでの集光を考慮すると、素子の形状を細長くすることは困難であり、また、微細化した各画素3色に対応させて光電変換素子の数を増やすことも製造上の制約を大きくするので、見かけ上の解像度を低下させずに総画素数の低減を図ることが、ベイヤ配列を用いる理由である。
ベイヤ配列では、1画素が1色のカラーフィルタ画素に対応しており、G(緑色)2画素を対角に配置した4画素で1組の配列が繰り返し配置される。この配列の場合、光電変換素子の総画素数Nに対して、G(緑色)の画素数はN/2、R(赤色)及びB(青色)の画素数はN/4となるが、各画素ごとに周辺の画素の出力を用いて補間演算を行うことにより、N個のRGBの組を作り出す。ここで、G(緑色)の画素を他の色に比べて2倍に多くしているのは、人の目の視感度の高いGに対する解像度が見かけ上の解像度を高めるからである。
【0011】
図2(a)において、ベイヤ配列されたカラーフィルタの着色透明画素パターン6の4画素からなる1組を拡大表示すると、対角配置されRおよびB表示の無いG(緑色)の画素に対応させたマイクロレンズ用の露光用マスクのパターン73を位置合わせしてフォトリソグラフィー法の露光工程に使用し、図2(c)に示すG(緑色)の画素に対応するマイクロレンズ71を形成する。すなわち、前述のフローレンズタイプで形成する例では、例えばポジ型感光性レンズ材料を用いる場合には、パターン73を遮光領域とし、非パターン部を透明領域とすることにより、パターン73のレンズ材料を選択的に残し、材料の熱リフロー性を利用してマイクロレンズ71を作る。G(緑色)の画素に対応するマイクロレンズ71を形成した後に、図2(b)に示す露光用マスクを用いて同様の方法を繰り返すことにより、G表示の無いR(赤色)及びB(青色)の画素に対応させたマイクロレンズ用の露光用マスクのパターン74を用いて、マイクロレンズ72を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−22117号公報
【特許文献2】特開2000−269474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のように異なる色の画素に対応するマイクロレンズ71、72を形成するための露光用マスクを別個に準備し、形状の異なるパターン73、74を用いることにより、隣接するマイクロレンズとのギャップを狭くすることが可能となる。しかし、画素区分による領域分割に対応して形状の異なるパターンを用いて、全画素上のマイクロレンズを2段階で形成する方法では、狭ギャップ化は達成できても、マイクロレンズの形状も含めて同一に揃えることは困難であり、高さを一定にしてもその断面形状は必ずしも同一にできないため、マイクロレンズの集光性能にばらつきが生じ、カラー固体撮像素子においては色別の感度に差異が生じる。
【0014】
本発明は、前記の問題点に鑑みて提案するものであり、本発明が解決しようとする課題は、固体撮像素子に設けるマイクロレンズを、隣接するマイクロレンズとのギャップを狭くして高い集光性能を与えるとともに、各マイクロレンズの形状が均一になるように形成する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、複数の光電変換素子の各々に対応して多角形状の画素を有し、各画素毎に1個のマイクロレンズを設けた固体撮像素子におけるマイクロレンズの製造方法であって、マイクロレンズを構成する第一の層を設けた後に、マイクロレンズを構成する第二の層を、第一の層とは異なる形状で第一の層に積層して設け、その後両層を熱処理して一体化することにより、所望の形状のマイクロレンズを形成する工程を含み、第一の層の形状が、各画素の中央から画素境界に向かう放射状パターンを含み、第二の層の形状が、多角形状の各画素の形状に近く、画素境界を越えない凸図形パターンであることを特徴とするマイクロレンズの製造方法である。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、第一の層と第二の層とは、マイクロレンズ形成後に同一の光学特性を示す材料からなることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズの製造方法である。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、第一の層が、画素の中央に一方の端部を共有し、画素の各隅に他方の端部を有する複数の線分パターンを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロレンズの製造方法である。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、第一の層が第二の層より薄いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロレンズの製造方法である。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、前記多角形状が四角形状であって、四角形状の画素毎に各隅を除いた八角形状の層を第二の層として積層してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロレンズの製造方法である。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、第一の層の画素境界に近い方の端部を、積層する第二の層の端部より画素境界に近接して設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロレンズの製造方法である。
【0021】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロレンズの製造方法に用いる露光用マスクにおいて、積層される各層のパターンに対応したパターン形
状をそれぞれ別個の複数枚に有することを特徴とする露光用マスクである。
【発明の効果】
【0022】
本発明のマイクロレンズの製造方法は、異なるパターンを組み合わせた2段階のフォトリソグラフィー法による工程を使用するが、画素区分による領域分割に対応する従来の方法ではなく、各マイクロレンズを画素区分によらず同一に処理し、レンズ形状の骨格となる第一の層に略被せて第二の層を積層して熱処理により一体化するので、固体撮像素子に設けるマイクロレンズを、隣接するマイクロレンズとのギャップを狭くして高い集光性能を与えるとともに、各マイクロレンズの形状が均一になるように形成することができる。従って、本発明により、マイクロレンズの集光性能にばらつきが生じず、カラー固体撮像素子に用いられる場合には色別の感度に差異が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の製造方法において分割形成されるマイクロレンズの各層のパターンの例を部分拡大して説明するための模式図であって、(a1)、(a2)はマイクロレンズを構成する第一の層の2種類のパターンの例を示す平面図、(b)はマイクロレンズを構成する第二の層のパターンの例を示す平面図、(c)はマイクロレンズを設けた固体撮像素子の構造例を示す断面図である。
【図2】従来の、画素区分による領域分割により2段階でマイクロレンズを形成する方法を説明するための部分模式図であって、(a)、(b)は、ベイヤ配列をカラーフィルタに適用した場合を例として、マイクロレンズ形成時に使用される露光用マスクの主要部のパターンを説明するための模式平面図であり、(c)は、(a)、(b)に示す各露光用マスクを用いて2段階のフォトリソグラフィー法によりマイクロレンズを形成した結果のカラー固体撮像素子の構造の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の製造方法において分割形成されるマイクロレンズの各層のパターンの他の一例を部分拡大して説明するための模式平面図であって、(a)、(b)はそれぞれマイクロレンズを構成する第一の層のパターンと第二の層のパターンの例を示し、(c)は第一の層と第二の層を積層した状態を示し、(d)は積層した2層を熱処理により一体化した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に従って、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の製造方法において分割形成されるマイクロレンズの各層のパターンの例を部分拡大して説明するための模式図であって、(a1)、(a2)はマイクロレンズを構成する第一の層の2種類のパターンの例を示す平面図、(b)はマイクロレンズを構成する第二の層のパターンの例を示す平面図、(c)はマイクロレンズを設けた固体撮像素子の構造例を示す断面図である。
【0025】
本発明は、半導体基板2上に平面配置した複数の光電変換素子3の各々に対応して定義され、対応領域を図の破線で仕切って明示する平面形状が多角形状となる画素60を有し、各画素毎に1個のマイクロレンズ7を設けた固体撮像素子10、におけるマイクロレンズ7の製造方法である。本例における画素60は、従来例を説明した図2(c)の着色透明画素パターン6や透明平坦化層5や第二の透明平坦化層51を含むものであっても良く、従って固体撮像素子10は、カラー固体撮像素子であっても良い。多角形状の画素60の平面配列例として、図2に示したベイヤ配列と呼ばれる市松模様の配列を構成する四角形状を例として以下に説明するが、これに限定されない。
【0026】
マイクロレンズの基本的な製造プロセスとしては、前述のとおり、フローレンズタイプや転写タイプが、いずれも可能である。本発明は、マイクロレンズを骨格構造に相当する第一の層と外形構造に相当する第二の層との2段階に分割設計して、それぞれを基本的な
製造プロセスにより実施して積層し、しかる後に熱処理により統合するものであり、以下の説明では、簡単のためにフローレンズタイプの製造プロセスに統一して説明する。
【0027】
本発明は、マイクロレンズの骨格構造に相当する第一の層を設けた後に、マイクロレンズの外形構造に相当する第二の層を、第一の層とは異なる形状で第一の層に積層して設け、その後両層を熱処理して一体化することにより、所望の形状のマイクロレンズを形成する工程を含む。
【0028】
第一の層と第二の層とを別個に形成するプロセスは、例えば、透明なアクリル系感光性樹脂をフォトリソグラフィー法により選択的にパターン形成する工程を繰り返すことで可能であり、第一の層を形成した後に、材料の熱リフロー性を利用して一旦先行熱処理を行うことができる。
第一の層と第二の層とは、熱処理による変形後に一体となってマイクロレンズを形成するので、熱処理後の光学特性が同一になることが望ましい。各層を構成する材料は、例えば透明なアクリル系感光性樹脂の同一種を用いることができるが、積層後の最終処理により各層による構成部分の光学特性に差異が生じないことが望ましいので、各パターンのプロセス処理の経過の詳細条件により、元の材料を若干調整することも可能である。
【0029】
本発明は、また、第一の層81、82の形状が、多角形状の各画素の中央から画素境界に向かう放射状パターンを含み、第二の層85の形状が、多角形状の各画素の形状に近く、一点鎖線で示す画素境界を越えない凸図形パターンであることを特徴とする。第一の層および第二の層は、前記フォトリソグラフィー法により別個に形成するものであり、露光プロセスに用いる露光用マスクにおける透過・非透過の選択的パターンの形状に対応する。例えば、マイクロレンズを形成するアクリル系感光性樹脂が光分解性を有するポジタイプであれば、上記の選択的パターンは非透過すなわち遮光パターンを、透過すなわち透明な背景中に形成すればよい。
なお、第一の層が、マイクロレンズの骨格構造を作るための放射状パターンを主体とする以外に、マイクロレンズの外形構造を作るための第二の層の機能を一部分担して、他種パターンを併せたものとすることを排除しない。
また、第二の層の形状を示す凸図形とは、図形上の任意の2点を結ぶ線分上の点が常に同一図形上に存在するような図形を指し、本例の場合は平面図形である。
【0030】
本例において、前記第一の層81、82は、図1(a1)、(a2)に示すように、各画素60の中央に一方の端部を共有し、画素の各隅に他方の端部を有する複数の線分パターンを含み、各画素上に有する同一の孤立した放射状の線分パターンを、画素配列上の同一の相対位置に繰り返す配列で形成することができる。特に上記のような線分パターンが、画素60の領域内をできるだけ広く、すなわち、隣接する画素のマイクロレンズとのギャップをできるだけ狭く、最終のマイクロレンズ形状を規定するための骨格構造を作ることになる。また、前記第二の層85は、図1(b)に示すように、各画素60上に同一の孤立した凸図形のパターンを、画素配列上の同一の相対位置に繰り返す配列で形成することができる。前記孤立した凸図形のパターンは、多角形状の各画素の形状に近く、各画素領域を略覆うことができ、画素境界を越えないものであるので、マイクロレンズの全体形状を各画素の平面形状に対応して決める上で適正である。しかも、第二のパターンには、前述の骨格構造を作る第一のパターンとの積層、熱処理による接触状態での流動性の制御が働くので、マイクロレンズの外形構造を制御しやすい。従って、隣接するマイクロレンズとのギャップを狭くして高い集光性能を与えるとともに、各マイクロレンズの形状が均一になるように形成することができる。
また、以下に記述する工夫により、さらに適正形状のマイクロレンズを簡単な方法で得ることができる。
【0031】
前記積層される層は、2層に限定されず、例えば、第一の層と第二の層との中間に同種の材料で別の層を形成することも可能であるが、製造工程をできるだけ短くするためには、2層からなる構成が望ましい。2層からなる構成で、本発明のマイクロレンズの製造方法を実施する場合に、下層、すなわち、骨格構造を作る第一の層を外形構造を作る第二の層より薄く形成することが好ましい。先行して構築する第一の層を上層に較べて相対的に薄く設けることにより、流動する樹脂量を抑制して正確に制御された端部の位置を実現することができ、上層、すなわち、外形構造を作る第二の層の挙動を導くことに最適に利用できる。
【0032】
図3は、本発明の製造方法において分割形成されるマイクロレンズの各層のパターンの他の一例を、一つの画素60の最小単位で部分拡大して説明するための模式平面図であって、(a)、(b)はそれぞれマイクロレンズを構成する第一の層のパターンと第二の層のパターンの例を示し、(c)は第一の層と第二の層を積層した状態を示し、(d)は積層した2層を熱処理により一体化した状態を示す。
【0033】
本例においては、画素の平面形状を表す多角形状が四角形状であって、図3(b)に示すように、四角形状の画素毎に各隅を除いた八角形状の層を第二の層85として積層する。四角形状の画素毎の各隅においては、特に第二の層単独での形状制御が難しいため、マイクロレンズの最終的に形成される形状を第一の層に依存させることを目的とした設計である。
【0034】
また、図3(a)に示すように、第一の層81である放射状パターンの点線で示す画素境界61に近い方の端部をできるだけ画素境界に近接し、上層を積層した状態を示す図3(c)で明らかなように、第二の層85の端部より第一の層81の端部を画素境界61に近接して設けることができる。この状態に積層したものを熱処理して一体化したマイクロレンズ7を形成すると、図3(d)に示すように、隣接するマイクロレンズとのギャップを狭くして高い集光性能を与えるとともに、各マイクロレンズの形状を均一に形成できる。
【0035】
また、本発明のマイクロレンズの製造方法に用いる露光用マスクは、上述の第一の層および第二の層をそれぞれ別個に有する複数枚のマスクであって、それらの露光用マスクを順次使用して積層パターンを実現する。前記複数枚の露光用マスクは、共通のマークにより位置合わせされた露光用マスクの組を提供するものである。
【符号の説明】
【0036】
1・・・カラー固体撮像素子
2・・・半導体基板
3・・・光電変換素子
4・・・受光面側表面
5・・・透明平坦化層
51・・・第二の透明平坦化層
6・・・着色透明画素パターン
60・・・画素
61・・・画素境界
7、71、72・・・マイクロレンズ
73・・・露光用マスクのパターン(緑色画素対応のマイクロレンズ用)
74・・・露光用マスクのパターン(赤色、青色画素対応のマイクロレンズ用)
81、82・・・第一の層
85・・・第二の層
10・・・固体撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換素子の各々に対応して多角形状の画素を有し、各画素毎に1個のマイクロレンズを設けた固体撮像素子におけるマイクロレンズの製造方法であって、
マイクロレンズを構成する第一の層を設けた後に、マイクロレンズを構成する第二の層を、第一の層とは異なる形状で第一の層に積層して設け、その後両層を熱処理して一体化することにより、所望の形状のマイクロレンズを形成する工程を含み、第一の層の形状が、各画素の中央から画素境界に向かう放射状パターンを含み、第二の層の形状が、多角形状の各画素の形状に近く、画素境界を越えない凸図形パターンであることを特徴とするマイクロレンズの製造方法。
【請求項2】
第一の層と第二の層とは、マイクロレンズ形成後に同一の光学特性を示す材料からなることを特徴とする請求項1に記載のマイクロレンズの製造方法。
【請求項3】
第一の層が、画素の中央に一方の端部を共有し、画素の各隅に他方の端部を有する複数の線分パターンを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロレンズの製造方法。
【請求項4】
第一の層が第二の層より薄いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロレンズの製造方法。
【請求項5】
前記多角形状が四角形状であって、四角形状の画素毎に各隅を除いた八角形状の層を第二の層として積層してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマイクロレンズの製造方法。
【請求項6】
第一の層の画素境界に近い方の端部を、積層する第二の層の端部より画素境界に近接して設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロレンズの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロレンズの製造方法に用いる露光用マスクにおいて、積層される各層のパターンに対応したパターン形状をそれぞれ別個の複数枚に有することを特徴とする露光用マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−30666(P2013−30666A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166663(P2011−166663)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】