説明

マイクロレンズアレイ、マイクロレンズアレイの作製方法、発光装置および照明装置

【課題】発光素子からより効率よく光を取り出すことのできるマイクロレンズアレイを、簡便な工程で成型する。
【解決手段】両面に異なる大きさの凹凸を有するマイクロレンズアレイを成型することとした。また樹脂シートおよび樹脂ペレットを併用して、両面で異なる大きさの凹凸を有するマイクロレンズアレイを成型することとした。具体的には第1のレンズ面を形成する第1の凹凸構造が複数設けられた第1の金型と、第1の金型の該凹凸構造の10万分の1以上5分の1以下のピッチを有する第2のレンズ面を形成する第2の凹凸構造を複数有する第2の金型との間に、レンズ成形材として、第1の金型側から、樹脂ペレット及び樹脂シートをこの順に配置し、加熱プレス処理により樹脂ペレットと樹脂シートとを融合させ、第1のレンズ面と、該第1のレンズ面の裏面側に第2のレンズ面とを有する樹脂構造体を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイ、マイクロレンズアレイの作製方法、発光装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を利用した発光素子を用いた照明の開発が行われている。有機EL発光素子は、膜状に形成することが可能であるため、面状に発光を得ることができ、面光源の照明とすることができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であり、利用価値が高い。
【0003】
しかしながら、有機EL発光素子のように、屈折率が大気より高い領域で発光する発光素子では、大気との界面において発光素子の発する光の一部が全反射してしまうことがある。その結果、発光素子から大気側に光を取り出す際に発光強度が小さくなってしまうという問題がある。
【0004】
一方、光の利用効率の向上については、液晶パネルの画素の開口部に集光する、あるいはデジタルカメラの受光素子の開口部に集光するなどの目的で、複数の微小なレンズが並べられたマイクロレンズアレイが開発されている。例えば、特許文献1では、液晶パネルの表示画面を明るくすることのできる、両面に微小なレンズが並べられたマイクロレンズアレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−131505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、高効率な照明を得るために、発光素子の光をさらに効率よく利用することのできるマイクロレンズアレイが求められている。
【0007】
そこで本発明の一態様は、発光素子からより効率よく光を取り出すことのできるマイクロレンズアレイを、簡便な工程で成型する方法を提供することを目的の一とする。また、発光素子から効率よく光を取り出すことのできるマイクロレンズアレイ、該マイクロレンズアレイを用いた高効率な発光装置および照明装置を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、両面で異なる大きさの凹凸を有するマイクロレンズアレイを成型することとした。また樹脂シートおよび樹脂ペレットを併用して、両面で異なる大きさの凹凸を有するマイクロレンズアレイを成型することとした。
【0009】
本発明の一態様は、第1のレンズ面を形成する第1の凹凸構造が複数設けられた第1の金型と、第2のレンズ面を形成する第1の金型の該凹凸構造の10万分の1以上5分の1以下のピッチを有する第2の凹凸構造を複数有する第2の金型との間に、レンズ成形材として、第1の金型側から、樹脂ペレット及び樹脂シートをこの順に配置し、第1の金型と第2の金型でレンズ成形材を挟み込み、加熱プレス処理により樹脂ペレットと樹脂シートとを融合させ、第1の凹凸構造により形成される第1のレンズ面と、該第1のレンズ面の裏面側に第2のレンズ面と、を有する樹脂構造体を成形するマイクロレンズアレイの作製方法である。
【0010】
また本発明の一態様は、第1のレンズ面を形成する0.5mm以上10cm以下のピッチを有する第1の凹凸構造が複数設けられた第1の金型と、1μm以上100μm以下のピッチの凹凸を有する第2のレンズ面を形成する第2の凹凸構造を複数有する第2の金型との間に、レンズ成形材として、第1の金型側から、樹脂ペレット及び樹脂シートをこの順に配置し、第1の金型と第2の金型でレンズ成形材を挟み込み、加熱プレス処理により樹脂ペレットと樹脂シートとを融合させ、第1の凹凸構造により形成される第1のレンズ面と、該第1のレンズ面の裏面側に第2のレンズ面と、を有する樹脂構造体を成形するマイクロレンズアレイの作製方法である。
【0011】
また上記において、第2の金型の凹凸構造は、PV(Peak to Valley)値を0.1μm以上100μm以下とすることができる。また上記において、樹脂ペレットと樹脂シートには、同一の材料を用いることができる。また上記において、樹脂ペレットと樹脂シートには、アクリル樹脂を用いることができる。また上記において、第1の金型の凹凸構造は、半球状の凹部が連続した形状とすることができる。
【0012】
また本発明の一態様は、凹凸構造が複数設けられた第1のレンズ面と、該第1のレンズ面の裏面側に、第1のレンズ面の凹凸構造の10万分の1以上5分の1以下のピッチを有する凹凸構造が複数設けられた第2のレンズ面と、を有するマイクロレンズアレイである。
【0013】
また本発明の一態様は、0.5mm以上10cm以下のピッチの凹凸構造が複数設けられた第1のレンズ面と、第1の面の裏面に、1μm以上100μm以下のピッチの凹凸構造が複数設けられた第2のレンズ面と、を有するマイクロレンズアレイである。
【0014】
また上記において、第2の面の凹凸構造は、PV値は0.1μm以上100μm以下とすることができる。また上記において、マイクロレンズアレイは、アクリル樹脂を含むことができる。また上記において、第1の面の凹凸構造は、半球状の凸部が連続した形状とすることができる。
【0015】
また本発明の一態様は、上記のマイクロレンズアレイを有する発光装置である。また上記のマイクロレンズアレイと、有機エレクトロルミネッセンスを用いた発光素子を有する、発光装置である。また、上記の発光装置を有する照明装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様により、発光素子から効率よく光を取り出すことのできるマイクロレンズアレイを、簡便な工程で成型することができる。また、発光素子から効率よく光を取り出すことのできるマイクロレンズアレイ、および該マイクロレンズアレイを用いた高効率な発光装置および照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一態様に係るマイクロレンズアレイの成型工程を示す断面図。
【図2】本発明の一態様に係るマイクロレンズアレイおよび発光素子の断面図および平面図。
【図3】本発明の一態様に係るマイクロレンズアレイの断面図および平面図。
【図4】本発明の一態様に係るマイクロレンズアレイの断面図および平面図。
【図5】本発明の一態様に係る発光装置の断面図および平面図。
【図6】本発明の一態様に係る照明装置を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0019】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0020】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態では、マイクロレンズアレイの成型方法の一例、マイクロレンズアレイと発光素子の配置の一例、およびマイクロレンズアレイの変形例について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0022】
<マイクロレンズアレイの成型方法>
はじめに、マイクロレンズアレイの成型方法の一例として、図1(A)乃至(C)の工程を経て、図1(D)に示すマイクロレンズアレイ200を成型する方法について説明する。
【0023】
まず、第1の金型101および第2の金型104を用意する(図1(A)参照)。
【0024】
第1の金型101には、複数の凹凸が設けられているものを用いる。マイクロレンズアレイ200の第1の面(図1(D)のマイクロレンズアレイ200におけるS1)に、凹凸を成型するためである。マイクロレンズアレイ200の第1の面の凹凸により、マイクロレンズアレイ200と発光素子を組み合わせた際に、光取り出し効率を高めることができる。
【0025】
第1の金型101の凹凸のピッチは、マイクロレンズアレイ200と発光素子を組み合わせた際に光取り出し効率を高められる長さとする。詳細は図2を用いて後述するが、例えば各発光素子の大きさと合わせる。なお本明細書においてピッチとは、一つの凹凸の周期の長さ、たとえば図1(A)におけるLをいう。第1の金型101の凹凸のピッチは、光取り出し効率を向上させるため、およびマイクロレンズアレイの成型を容易にするため、0.5mm以上とすることが好ましく、また扱いやすい大きさのマイクロレンズアレイにするため、10cm以下とすることが好ましい。また、1mm以上10mm以下がより好ましく、5mm以上10mm以下がさらに好ましい。
【0026】
また、第1の金型101の凹凸の形状は適宜設計することができ、例えば半球が連続した形状、半円柱が連側した形状、角錐が連続した形状、角柱が連続した形状、波状などとすることができる。より効率よく光を取り出せるマイクロレンズアレイとするためには、マイクロレンズアレイが第1の面から見て半球状の凸部が連続した形状となるように、第1の金型101を設計することが好ましい。マイクロレンズアレイの第1の面から見て凸型であると、照明装置に適用したとき発光素子の光を拡散することができ好ましいためである。なお本明細書において、半球状とは、凸の頂点を通る断面において円弧を含む形状をいう。例えば、凸の底面が円形であって、頂点を通る断面が半円であるものは半球状の構造の一例である。また、底面が多角形であって、頂点を通る断面が円弧(半円等)を含むもの(傘状の構造とも言うことができる)も半球状の構造の一例である。半球状の構造の底面の形が円である場合は、多角形の角の数が多い場合と実質的に同一である。底面が多角形であると、隣接する半球状の構造同士を隙間無く配置することができる。例えば、三角形、四角形、六角形の場合、最密に充填して平面に配置できる。特に、底面が六角形の半球状の凸部が連続した形状とすると、光の取り出し効率を高めるため好ましい。なお本明細書において凹凸とは、平坦でない形状を言う。効率のよい光の取りだしにもっとも重要であるのは、マイクロレンズアレイとそれに接する要素との界面の角度である。そのため基準面に対して凸のみでもよいし、凹のみでもよい。たとえば図1(D)におけるS1は、図中の基準面SBを基準して、S1から見たときに凸のみであるが、これも凹凸と呼ぶ。
【0027】
また、凹凸を半球状の凸部が連続した形状としたときの、第1の金型101の凹凸のPV(Peak to Valley)値は、ピッチの半分程度が好ましい。より効率よく光を取り出せるためである。本明細書において、PV値とは、凹凸の谷底から頂点までの高さをいう。たとえば図1(D)におけるマイクロレンズアレイ200の第1の面の凹凸のPV値は、H1である。本実施の形態では、ピッチ10mm、PV値5mmの半球状の凹凸を持つ第1の金型101を用いることとする。
【0028】
第2の金型104には、複数の凹凸が設けられているものを用いる。マイクロレンズアレイ200の第2の面(第1の面の裏面、図1(D)のマイクロレンズアレイ200におけるS2)に、凹凸を成型するためである。マイクロレンズアレイ200の第2の面の凹凸により、屈折率の高い領域で発光する発光素子から、屈折率の低いマイクロレンズアレイ200に効率よく光を取り出すことができる。第2の金型104の凹凸のピッチは、可視光を効率よく取り出すために、1μm以上100μm以下とすることが好ましい。また、光の回折による色の分散を防ぐため、3μm以上100μm以下とすることがより好ましい。また、可視光を効率よく取り出すため、第2の金型104の凹凸は、PV値が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。また、第1の金型と第2の金型の凹凸の比較においては、第2の金型は第1の金型の10万分の1以上、5分の1以下のピッチであることが好ましい。本実施の形態では、10μmのピッチ、5μmの高さの凹凸を持つ第2の金型104を用いることとする。
【0029】
また、第1の金型101または第2の金型104の少なくとも一方の外枠に、治具105を用いて、両者の大きさを調整してもよい。また、第1の金型101、第2の金型104および治具105の樹脂と触れる面に、離型剤を塗布してもよい。離型剤としては、フッ素系樹脂やシリコーン樹脂、油脂等を用いることができる。
【0030】
次に、樹脂ペレット102および樹脂シート103を用意する。
【0031】
樹脂ペレット102には、透光性を有し、所望の形状に成型できる材料を用いる。特に可視光を透過する材料が好ましい。例えば、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)、環状オレフィンコポリマー樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはポリ塩化ビニル樹脂、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、またこれらを組み合わせたものなどを用いることができる。また、光取り出し効率の向上のため、可視光の透過率は85%以上であることが好ましい。アクリル樹脂は可視光の透過率が高いため好ましい。また、環状オレフィンコポリマー樹脂およびシクロオレフィンポリマー樹脂は、可視光の透過率が高く耐熱性がすぐれているため好ましい。
【0032】
樹脂シート103には、透光性を有し、所望の形状に成型できる材料を用いる。特に可視光を透過する材料が好ましい。また、内部で均一な光学特性を持つマイクロレンズアレイ200とするため、樹脂シート103には樹脂ペレット102と同じ材料を用いることが好ましい。本実施の形態では、樹脂ペレットおよび樹脂シートにアクリル樹脂を用いることとする。
【0033】
次に、第1の金型101の上に、樹脂ペレット102、樹脂シート103、および第2の金型104を上記の順に配置する。
【0034】
第1の金型101の凹凸の上に、樹脂ペレット102を配置することで、第1の金型101の大きな凹凸の中に十分に材料を充填することができる。また、材料として樹脂ペレットのみを用いると、ペレットを平坦に積載することが難しい。さらに、樹脂ペレットは第2の金型のピッチよりも大きいため、第2の金型が変形や破損などで消耗する可能性が高まる。しかし第2の金型104と接して樹脂シート103を配置することで、第2の金型104の変形や破損を防ぐことができる。また、樹脂ペレット102上に樹脂シート103を介して第2の金型104を配置することで、第2の金型104をより安定して配置することができる。
【0035】
なお、第1の金型101、樹脂ペレット102、樹脂シート103、および第2の金型104は、上下を逆に配置してもよい。
【0036】
次に、上部ヒーター107と下部ヒーター100を有する、プレス機を用意する(図1(B)参照)。プレス機は、後の工程で必要な温度と圧力をかけられるものであれば、どのようなものを用いてもよい。
【0037】
次に、第1の金型101、樹脂ペレット102、樹脂シート103、および第2の金型104を、プレス機の上部ヒーター107と下部ヒーター100との間にセットし、これら同士を接触させる。このとき、より均一に加圧するために、上部ヒーター107と下部ヒーター100の間に、平坦な板106を配置してもよい。
【0038】
次に、上部ヒーター107と下部ヒーター100により、樹脂ペレット102および樹脂シート103を加熱する。加熱温度は、樹脂シート103および樹脂ペレット102のガラス転移点以上融点以下とする。ここでは、180℃まで加熱することとする。
【0039】
加熱された樹脂ペレット102が軟化するに従い、樹脂ペレット102間のすきまが詰まるので、プレス機の圧力を段階的に上げたのち、一定時間保持する。ここでは、0.6MPaごとに3.6MPaまで加圧した後、10分間保持することとする(図1(C)参照)。この加熱および加圧により、樹脂ペレット102および樹脂シート103を融合させてマイクロレンズアレイ200を成型する。
【0040】
次に、マイクロレンズアレイ200を冷却する。ここでは、80℃未満になるまで放冷することとする。
【0041】
次に、プレス機の圧力を下げ、マイクロレンズアレイ200を取り出す(図1(D)参照)。マイクロレンズアレイ200は第1の面と、第1の面の裏面に第2の面を有し、第1の面は上述の第1の金型101に接して成型され、第2の面は第2の金型104に接して成型されている。そのため、第1の面および第2の面の凹凸のピッチ、PV値、形状については、第1の金型101および第2の金型104の記載を参酌することができる。なお、図1(D)に示すようにマイクロレンズアレイ200の全体の高さをHとし、第1の面の凹凸の谷底から頂点までの高さをH1とし、HからH1を除いた部分の高さをH2としたとき、H1とH2との関係は、H1がH2の20〜30倍であることが好ましく、25倍程度であることがより好ましい。これにより、より光取り出し効率を高くすることができる。ここでは、H1が5mm、H2が0.2mmのマイクロレンズアレイ200とする。
【0042】
このような両面で凹凸のピッチが大きく異なるマイクロレンズアレイ200を成型する場合、樹脂シートのみを材料として用いることはできない。なぜならば樹脂シートでは、第1の金型の大きな凹凸の中に十分に材料を充填できないためである。また、材料として樹脂ペレットのみを用いると、樹脂ペレットを平坦に積載することが難しいため、第2の金型に対して均一に加圧することが難しい。さらに、樹脂ペレットが十分に軟化しないまま加圧した場合、樹脂ペレットは第2の金型のピッチよりも大きいため、第2の金型が変形や破損などで消耗する可能性が高まる。そのためこの場合は、樹脂ペレットから、第1の金型と別の平坦な金型とに接して樹脂を成型する工程と、この樹脂を冷却したのち、樹脂の平坦な面に第2の金型の凹凸を成型する工程と、の2回の加熱および加圧が必要となる。
【0043】
しかし、本発明の一態様に係るマイクロレンズアレイの成型方法を用いることで、樹脂ペレットにより第1の金型101の大きな凹凸の中に十分に材料を充填し、また樹脂シートにより第2の金型104を均一に加圧し、また変形や破損を防ぐことができる。その上で、1回の加熱および加圧により、両面で凹凸のピッチが大きく異なる、光取り出し効率の高いマイクロレンズアレイを成型することができる。このため、生産性を向上させることができる。
【0044】
<マイクロレンズアレイと発光素子の配置>
次に、図2を参照して、マイクロレンズアレイと発光素子の配置の一例について説明する。図2(A)にマイクロレンズアレイおよび発光素子の平面図を示す。図2(B)は図2(A)
における一点鎖線ABの断面図である。
【0045】
図2におけるマイクロレンズアレイ200は、上述の方法で成型することができる。図2(B)に示すように、マイクロレンズアレイ200の第2の面の上に、平坦化膜202を介して、複数の発光素子209を配置する。また、図2(A)に示すように、マイクロレンズアレイ200の第1の面の凹凸の1つにつき、発光素子209内の発光領域210が1つ位置するように、マイクロレンズアレイ200と発光素子209を配置する。すなわち、マイクロレンズアレイ200の第1の面の凹凸のピッチと、各発光素子209の大きさが等しくなるようにする。図2において発光素子209の光は、マイクロレンズアレイ200を透過し、図2(B)における矢印の方向に取り出される。
【0046】
このようなマイクロレンズアレイ200および発光素子209の配置、並びにマイクロレンズアレイ200の構造により、発光素子209から効率よく光を取り出すことができる。以下に詳細を説明する。
【0047】
発光素子209は、第1の電極203と第2の電極205に電圧を加えることにより発光層204が発光する。この光は、透光性を有する第1の電極203を透過して、平坦化膜202の界面に進む。
【0048】
平坦化膜202は発光素子209と同程度の屈折率を備えるため、光の大部分は平坦化膜202との界面で全反射することなく、平坦化膜202に進入できる。
【0049】
平坦化膜202に進入した光は、マイクロレンズアレイ200の第2の面の凹凸に進む。第2の面の凹凸は、発光素子209の平面と平行でない角度を備える。凹凸を有する面への光の入射角と、発光素子209と平行な面への光の入射角と比較した場合、発光素子209から放射状に広がる光の大部分は、凹凸を有する面への入射角の方が大きい。そのため、発光素子209と平行な面と比較して、凹凸のある第2の面の方が、マイクロレンズアレイ200と平坦化膜202の界面において全反射が繰り返されにくい。その結果、発光素子209の光がマイクロレンズアレイ200の内部まで高い効率で進入できる。
【0050】
なお、照明として用いる場合は可視光の取り出しが重要となるが、可視光の波長に対してこの第2の面の凹凸が小さすぎると光が回折して色が分散する。また、凹凸が大きすぎると、発光素子209の光が効率よく進入しない。そのため、第2の面の凹凸は1μm以上100μm以下のピッチが好ましく、また0.1μm以上100μm以下のPV値が好ましい。
【0051】
図2(B)に示すように、マイクロレンズアレイ200は、屈折率が低い大気に接して第1の面の凹凸を備えている。また、第1の面の凹凸の1つと発光領域210の1つが重なり、また発光領域210の方が小さくなるように設けられている。第1の面の凹凸の外周部211に近い領域に進入する光は、全反射を繰り返し取り出しにくい。そのため、外周部211を避けて発光領域210を設ける構成とすることで、取り出し効率の低下を防ぐことができる。この配置により、発光素子209から発せられた光は、全反射が抑制され、効率よく第1の面の凹凸を通して外部に取り出すことができる。特に、発光領域210が第1の面の凹凸の平面形状に相似である場合、効率がよい。
【0052】
なお、この第1の面の凹凸が小さすぎると、光取り出し効率の向上に十分でなく、また、大きすぎると、照明に用いるマイクロレンズアレイとして扱いにくい。また、高さはピッチの半分程度である場合、取り出し効率がよい。そのため、第1の面の凹凸は0.5mm以上10cm以下のピッチが好ましく、またPV値はピッチの半分程度が好ましい。ここでピッチの半分程度とは、ピッチの30%以上70%以下をいうこととする。
【0053】
なお、第1の面の凹凸の外周部211には、絶縁層207を設けることができる。絶縁層207は、発光領域210同士を分離する機能を有し、第1の面の凹凸の外周部211と重畳する。絶縁層207としては、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、レジスト材料をはじめとする有機物や、酸化シリコン、窒化酸化シリコン等の無機物を用いることができる。
【0054】
また第1の面の凹凸の外周部211には、第1の電極203と接する補助配線206を設けることができる。補助配線は、第1の電極203より抵抗の低い材料を用いることが好ましい。第1の電極203は透光性を有する材料から形成するため、シート抵抗が高くなり、電圧降下が生じる恐れがある。しかし第1の電極203に接して低抵抗な補助配線206を設けることで、第1の電極203の電圧降下を抑制することができる。その結果より効率のよい発光素子209とすることができる。また、発光素子209としては、例えば有機エレクトロルミネッセンスを用いた発光素子を用いることができる。発光効率のよい有機エレクトロルミネッセンスを用いることで、より効率のよい発光素子とすることができる。
【0055】
<マイクロレンズアレイの変形例>
図3および図4を参照して、マイクロレンズアレイの変形例について説明する。
【0056】
第1の面の凹凸が半球状の凸部が連続した形状であるマイクロレンズアレイの一例について、図3(A−1)に平面図を示し、その一点鎖線CDの断面を図3(A−2)に示す。この半球状の凹凸は底面が円形であり、頂点を通る断面が半円である。
【0057】
第1の面の凹凸が半球状の凸部が連続した形状であるマイクロレンズアレイの別の一例について、図3(B−1)に平面図を示し、その一点鎖線EFの断面を図3(B−2)に示す。この半球状の凹凸は底面が六角形であり、頂点を通る断面に円弧を含む。
【0058】
第1の面の凹凸が半球状の凸部が連続した形状であるマイクロレンズアレイの別の一例について、図3(C−1)に平面図を示し、その一点鎖線GHの断面を図3(C−2)に、一点鎖線IJの断面を図3(C−3)に示す。この半球状の凹凸は底面が六角形であり、頂点を通る断面に円弧を含む。傘状の構造と呼ぶこともできる。
【0059】
第1の面の凹凸が半球状の凸部が連続した形状であるマイクロレンズアレイのまた別の一例について、図3(D−1)に平面図を示し、その一点鎖線KLの断面を図3(D−2)に、一点鎖線MLの断面を図3(D−3)に示す。この半球状の凹凸は底面が四角形であり、頂点を通る断面に円弧を含む。
【0060】
また、第1の面の凹凸が半円柱状の凸部が連続した形状であるマイクロレンズアレイの一例について、図3(E−1)に平面図を示し、その一点鎖線OPの断面を図3(E−2)に示す。この半円柱状の凹凸は底面が四角形であり、断面が半円である。
【0061】
また、第1の面の凹凸が角錐状の凸部が連続した形状であるマイクロレンズアレイの一例について、図4(A−1)に平面図を示し、その一点鎖線QRの断面図を図4(A−2)に示す。この角錐状の凹凸は底面が四角形であり、断面が三角形である。
【0062】
また、第1の面の凹凸が角錐状の凸部が連続した形状であるマイクロレンズアレイの別の一例について、図4(B−1)に平面図を示し、その一点鎖線STの断面図を図4(B−2)に示す。この角錐状の凹凸は底面が三角形であり、断面が三角形である。
【0063】
また、第1の面の凹凸が角錐状の凸部が連続した形状であるマイクロレンズアレイのまた別の一例について、図4(C−1)に平面図を示し、その一点鎖線UVの断面図を図4(C−2)に示す。この角錐状の凹凸は底面が六角形であり、断面が三角形である。
【0064】
また、第1の面の凹凸が角柱状の凸部が連続した形状であるマイクロレンズアレイの一例について、図4(D−1)に平面図を示し、その一点鎖線WXの断面を図4(D−2)に示す。この角柱状の凹凸は底面が四角形であり、断面が三角形である。
【0065】
なお、マイクロレンズアレイと発光素子の配置を説明する図2の例では、マイクロレンズアレイ200と組み合わせられる発光素子209の発光領域210は円形であったが、本発明の一態様はこれに限られない。つまり、発光領域は、発光素子の平面形状にあわせて、多角形、線形、またはそのほかの形状とすることができる。これらのマイクロレンズアレイと、マイクロレンズアレイおよび発光素子の配置により、光取り出し効率を向上させることができる。
【0066】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示したマイクロレンズアレイと、マイクロレンズアレイおよび発光素子の配置を用いた発光装置の例について、図5を参照して説明する。
【0067】
図5(A)に、発光素子が形成される基板(ここではマイクロレンズアレイ200が基板として機能する)を透過して光を取り出す、いわゆるボトムエミッション型の発光装置を示す。図5(A)における発光装置では、マイクロレンズアレイ200の上に、平坦化膜202を介して複数の発光素子209が形成されている。図5(A)におけるマイクロレンズアレイ200、発光素子209および平坦化膜202の配置は図2と同様である。また、発光素子209の第1の電極306は第1の端子301に電気的に接続され、発光素子の第2の電極308は第2の端子302に電気的に接続されている。また、第1の端子301および第2の端子302は、シール材304によって基板303と接着されている。また、基板303とマイクロレンズアレイ200の内側に、乾燥剤305を配置してもよい。
【0068】
図5(B)に、発光素子が形成される基板と反対に光を取り出す、いわゆるトップエミッション型の発光装置を示す。図5(B)における発光装置では、基板313の上に、第1の電極306、発光層307および第2の電極308を有する複数の発光素子310が形成されている。また、発光素子310の上に、平坦化膜202を介して、マイクロレンズアレイ200が配置されている。また、発光素子の第1の電極306は第1の端子301に電気的に接続され、発光素子の第2の電極308は第2の端子302に電気的に接続されている。また、第2の電極308と平坦化膜202の間に、バリア膜309を形成してもよい。また、第1の面の凹凸の外周部に、絶縁層311および補助配線312を形成してもよい。絶縁層311は、発光領域同士を分離する機能を有し、マイクロレンズアレイ200第1の面の凹凸の外周部と重畳する。絶縁層311は、絶縁層207と同様の材料で形成することができる。
【0069】
図5(A)および図5(B)の発光装置に、実施の形態1で示したマイクロレンズアレイ、およびマイクロレンズアレイと発光素子の配置を適用することにより、光取り出し効率の高い発光装置を得ることができる。
【0070】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2で示した発光装置を用いた照明装置の例について、図6を参照して説明する。
【0071】
図6(A)では、実施の形態2の発光装置を適用した、室内の照明装置401及び卓上照明器具403を示す。本発明の一態様に係る発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。
【0072】
なお図5では、全体として板状の発光装置の一例を示したが、本発明の一態様はこれに限られない。発光部が曲面を有する照明装置を実現することも可能である。また、本発明の一態様では、シースルーの発光部を有する照明装置を実現することも可能である。また、本発明の一態様は、自動車の照明にも適用することができ、例えば、ダッシュボードや、フロントガラス上、天井等に照明を設置することもできる。その他、ロール型の照明装置402として用いることもできる。
【0073】
図6(B)に別の照明装置の例を示す。図6(B)に示す卓上照明装置は、照明部405、支柱406、支持台407等を含む。照明部405は、本発明の一態様の発光装置を含む。このように、本発明の一態様では、曲げに強い樹脂材料を用いることで、曲面を有する、またはフレキシブルに曲がる照明部を有する照明装置を実現することができる。このように、フレキシブルな発光装置を照明装置として用いることで、照明装置のデザインの自由度が向上するのみでなく、曲面を有する場所にも照明装置を設置することが可能となる。
【0074】
上述の照明装置に、本発明の一態様の発光装置を適用することにより、高効率な照明装置を得ることができる。
【0075】
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0076】
100 下部ヒーター
101 第1の金型
102 樹脂ペレット
103 樹脂シート
104 第2の金型
105 治具
106 板
107 上部ヒーター
200 マイクロレンズアレイ
202 平坦化膜
203 第1の電極
204 発光層
205 第2の電極
206 補助配線
207 絶縁層
209 発光素子
210 発光領域
211 外周部
301 第1の端子
302 第2の端子
303 基板
304 シール材
305 乾燥剤
306 第1の電極
307 発光層
308 第2の電極
309 バリア膜
310 発光素子
311 絶縁層
312 補助配線
313 基板
401 照明装置
402 照明装置
403 卓上照明器具
405 照明部
406 支柱
407 支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレンズ面を形成する第1の凹凸構造が複数設けられた第1の金型と、第2のレンズ面を形成する前記第1の金型の第1の凹凸構造の10万分の1以上5分の1以下のピッチを有する第2の凹凸構造を複数有する第2の金型との間に、
レンズ成形材として、前記第1の金型側から、樹脂ペレット及び樹脂シートをこの順に配置し、
前記第1の金型と前記第2の金型で前記レンズ成形材を挟み込み、加熱プレス処理により前記樹脂ペレットと前記樹脂シートとを融合させ、
前記第1の凹凸構造により形成される第1のレンズ面と、該第1のレンズ面の裏面側に前記第2のレンズ面とを有する樹脂構造体を成形する、マイクロレンズアレイの作製方法。
【請求項2】
第1のレンズ面を形成する0.5mm以上10cm以下のピッチを有する第1の凹凸構造が複数設けられた第1の金型と、第2のレンズ面を形成する1μm以上100μm以下のピッチの凹凸を有する第2の凹凸構造を複数有する第2の金型との間に、
レンズ成形材として、前記第1の金型側から、樹脂ペレット及び樹脂シートをこの順に配置し、
前記第1の金型と前記第2の金型で前記レンズ成形材を挟み込み、加熱プレス処理により前記樹脂ペレットと前記樹脂シートとを融合させ、
前記第1の凹凸構造により形成される第1のレンズ面と、該第1のレンズ面の裏面側に前記第2のレンズ面とを有する樹脂構造体を成形する、マイクロレンズアレイの作製方法。
【請求項3】
前記第2の金型の凹凸構造は、PV値が0.1μm以上100μm以下である、請求項1または2に記載のマイクロレンズアレイの作製方法。
【請求項4】
前記樹脂ペレットと前記樹脂シートには、同一の材料を用いる、請求項1乃至3のいずれか一に記載のマイクロレンズアレイの作製方法。
【請求項5】
前記樹脂ペレットと前記樹脂シートには、アクリル樹脂を用いる、請求項1乃至4のいずれか一に記載のマイクロレンズアレイの作製方法。
【請求項6】
前記第1の金型の凹凸構造は、半球状の凹部が連続した形状である、請求項1乃至5のいずれか一に記載のマイクロレンズアレイの作製方法。
【請求項7】
凹凸構造が複数設けられた第1のレンズ面と、
前記第1のレンズ面の裏面側に、前記第1のレンズ面の凹凸構造の10万分の1以上5分の1以下のピッチの凹凸構造が複数設けられた第2のレンズ面と、を有するマイクロレンズアレイ。
【請求項8】
0.5mm以上10cm以下のピッチの凹凸構造が複数設けられた第1のレンズ面と、
前記第1の面の裏面に、1μm以上100μm以下のピッチの凹凸構造が複数設けられた第2のレンズ面と、を有するマイクロレンズアレイ。
【請求項9】
前記第2の面の凹凸構造は、PV値が0.1μm以上100μm以下である、請求項7または8に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項10】
前記マイクロレンズアレイは、アクリル樹脂を含む、請求項7乃至9のいずれか一に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項11】
前記第1の面の凹凸構造は、半球状の凸部が連続した形状である、請求項7乃至10のいずれか一に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか一に記載のマイクロレンズアレイを有する発光装置。
【請求項13】
請求項7乃至11のいずれか一に記載のマイクロレンズアレイと、有機エレクトロルミネッセンスを用いた発光素子を有する、発光装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の発光装置を有する照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−181515(P2012−181515A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25687(P2012−25687)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】