マイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法
【課題】薄い厚みと大きな粒径とを有するので縦横比が大きく、光沢性に優れた薄片状酸化アルミニウムを製造可能な薄片状酸化アルミニウムの製造方法を提供する。
【解決手段】出発物質を粉砕した後、適切な大きさの粒子を分類し、前処理するステップ、前処理した出発物質を加熱して熱処理する遷移アルミナ製造ステップ、遷移アルミナに溶融塩及び添加剤を混合した後、分散及び粉砕するステップ、マイクロ波加熱源を用いて薄片状の酸化アルミニウムを溶融合成するステップ、合成完了した酸化アルミニウムから溶融塩及び添加剤を析出するステップ、及び、析出回収した薄片状酸化アルミニウム結晶の粒子表面から異物を除去する後処理ステップを経てなるマイクロ波を用いた薄片状酸化アルミニウムの製造方法である。
【解決手段】出発物質を粉砕した後、適切な大きさの粒子を分類し、前処理するステップ、前処理した出発物質を加熱して熱処理する遷移アルミナ製造ステップ、遷移アルミナに溶融塩及び添加剤を混合した後、分散及び粉砕するステップ、マイクロ波加熱源を用いて薄片状の酸化アルミニウムを溶融合成するステップ、合成完了した酸化アルミニウムから溶融塩及び添加剤を析出するステップ、及び、析出回収した薄片状酸化アルミニウム結晶の粒子表面から異物を除去する後処理ステップを経てなるマイクロ波を用いた薄片状酸化アルミニウムの製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化アルミニウムなどの出発物質に結晶成長を制御する添加剤と、真珠光沢顔料の製造時に結晶蒸着性を向上させるための添加剤とを混合して、加熱源としてマイクロ波を用いて薄片状の酸化アルミニウムを合成して製造することにより、長軸/短軸の比が50〜415の大きい縦横比を有し、光沢性に優れており、かつ均一な粒度分布を有して、塗料、プラスチック、インク、化粧品及び釉薬の原料として用いられる真珠光沢顔料の基底物質に適したことを特徴とするマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に薄片状の酸化アルミニウムは、耐磨耗性、耐食性、放熱性、光沢性などに優れているので、その産業上の利用可能性が非常に高い。特に優れた光沢性のために真珠光沢顔料の基質として脚光を浴びている。
【0003】
このような薄片状の酸化アルミニウムが真珠光沢顔料などの基質として用いられるためには、高い化学的安定性、大きな縦横比及び平滑な表面を有するべきである。このような形態を有するためには、結晶が成長する際に、特定方向に結晶が成長することを抑えなけらればならない。
【0004】
酸化アルミニウムを製造する代表的な方法には、バイヤー法、ベルヌーイ法、チョクラルスキー法、水熱合成法、溶融塩法などがある。バイヤー法、ベルヌーイ法、チォクラルスキー法は、大量で酸化アルミニウムを生産するには有利であるが、結晶状の形態と粉末の模様を一定に制御することは難しい。しかし、水熱合成法と溶融塩法とは、その製造方法が簡単であり、かつ安定した結晶状と粒子の模様とを制御することができ、薄片状の酸化アルミニウムを商業的に合成することに適していると知られている。
【0005】
酸化アルミニウムの製造方法に関する関連特許をみると、特許文献1に水熱合成装置で結晶成長抑制剤として燐酸イオンを添加して、六角板状形態を有する酸化アルミニウムを製造する方法について言及されており、また、特許文献2によると、水酸化アルミニウムをアルミナの原料として用い、融剤としてクリオライトを用いて1200〜1450℃で反応させて、直径が10〜200μmであり、縦横比が7程度である大結晶の薄片状酸化アルミニウム結晶粉末を製造する方法が提案されており、さらに、特許文献3には、酸化アルミニウムゲル粉末を高温でAlF3気体と反応させて合成する方法が記述されている。
【0006】
しかし、上記のような従来の方法の場合は、いくつかの問題点を有している。即ち、水熱合成法の場合は、比較的低い温度で厚みの薄い薄片状の酸化アルミニウムを合成することができるが、産業用の大量合成のためには、高温高圧の水熱合成装置が必要であるため、相当な費用が要求され、合成される粉末の大きさが20μm以下であるため、真珠光沢顔料の基質として用いるには多少不適である。
【0007】
また、出発物質と添加剤とを蒸気形態に作って反応させる気相反応の場合は、溶融塩を用いた融除法に比べて、合成温度を100℃以上低くすることができるという長所があるが、添加剤を蒸気状態に作るための装置と適切な合成雰囲気を制御するための高価の装置が必要であり、制御された雰囲気中で焼結が制御可能な高価の電気路を要するため、産業用の大量生産に適用するには不適である。
【0008】
溶融塩を用いた融除法は、高温で溶けた溶融塩内で溶質の結晶を成長させる方法であり、高温で溶けた溶融塩は、酸化物の合成反応を促進し、粒子の異方性を加速化する役割をし、結晶化温度を100〜200℃程度低くする役割をする。よって、この方法で薄片状酸化アルミニウムを合成製造するためには、溶融塩の役割が非常に重要であるため、適した溶融塩の選択が必須である。このような融除法による薄片状酸化アルミニウムの合成の場合、1250〜1450℃程度で粉末の合成が可能であり、粒子の大きさも20μm以上の大きな結晶で合成させることができるという長所を有している。
【0009】
特許文献4には、金属フルオロ化物質などの溶融塩及び添加剤を添加して溶融塩法で製造する工程が紹介されている。しかし、このような方法により、薄片状酸化アルミニウムを製造する場合は1,250℃以上で長期間の加熱が必要であり、大量生産をする場合は坩堝内における温度勾配の差のために均質な加熱が不可能であり、多結晶粒子及び二重結晶粒子が5%以内である均一な粒度分布の薄片状酸化アルミニウムを得難い。
【0010】
よって、本出願人は、上記のような問題点を解決するために研究した論文である非特許文献1に、「フラックス(flux)法によるアルファアルミナ板状体のマイクロ波合成」について発表したことがあるが、このようなマイクロ波合成方法は、2.45GHzの周波数を用いることにより、初期発熱は多少早いという長所を有しているが、物質自体を発熱させるために浸透する深みが低く、大容量の物質の加熱時には低い浸透深みによって、表面と内部との温度差があるという問題点を発生させて、大容量に適用時に表面と内部との温度勾配による結晶成長の違いで粒子の大きさ分布が多少悪くなるため、大容量の産業用に適用するには問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−33110号
【特許文献2】フランス公開特許公報2441584号
【特許文献3】韓国登録特許公報1996−64号
【特許文献4】国際公開特許公報WO2004/060804号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】韓国セラミック学会Vol.39、No.5、pp.473〜478、2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記した従来技術が有する問題点を解決するために、出発原料の準備時に本発明が創案した方法で出発物質を熱処理して前駆体に作り、添加剤と混合した前駆体の物理的処理を通じて、縦横比に優れた巨大結晶の薄片状酸化アルミニウムの粉末を製造すると同時に、多結晶粒子(multi crystal)及び二重結晶粒子(twin crystal)の生成を抑え、それによる製造方法の単純化及び製造歩留まりが向上可能なことを特徴とするマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を提供することにその目的がある。
【0014】
また、本発明は、該当技術分野において従来には試みなかった合成方法で、新規の物質、即ちスズ化合物を遷移アルミナに添加して合成させることにより、真珠光沢顔料を製造する際に、ナノ粒子の蒸着性を向上させ、化学的な安定性を維持する向上した物性を有することを特徴とするマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を提供することに他の目的がある。
【0015】
さらに、本発明は、酸化アルミニウムを合成時に加熱源として915MHzの周波数を有するマイクロ波を用いることにより、従来の電気炉を用いた熱対流現象による加熱合成方法に比べて、マイクロ波による誘電加熱方式の物質自体発熱としてマイクロ波が混合物内部に深く浸透されて均質に加熱させることができ、大容量の物質を加熱する場合も坩堝内の温度勾配が起こらず合成時間を顕著に減らすことができるため、生産性向上及びエネルギー効率を増大させ、均一な粒度分布の薄片を製造できるようにしたことを特徴とするマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を提供することに、また他の目的がある。
【0016】
従来の方法は、それまでの実験室的な方法で2.45GHzのマイクロ波を走査して、小型の合成容器を用いて酸化アルミニウムを合成することができたが、このような方法の場合は、加熱過程でその有効浸透深みが制限され、使用時に内部温度の不均一性による粒子の大きさの単分散性が低下して、縦横比の不均一性も高まるという問題点があったが、これに対して本発明は、周波数が915MHzであるマイクロ波を用いることにより、2.45GHzの周波数を用いたものに比べて、約3倍の有効浸透深みを有するため、大型の合成容器を用いる産業用の大量生産に適したことが特徴である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した目的を達成するための本発明の特徴によると、本発明は、薄片状の酸化アルミニウムを製造する方法において、
i)アルミナ水和物またはアルミニウム塩のような出発物質を粉砕した後、適切な大きさの粒子を分類し、出発物質を前処理するステップ;
ii)前処理した出発物質を加熱して熱処理する遷移アルミナ製造ステップ;
iii)遷移アルミナに溶融塩及び添加剤を混合した後、この混合物を分散及び粉砕するステップ;
iv)分散及び粉砕した混合物をマイクロ波加熱源を用いて薄片状の酸化アルミニウムを溶融合成するステップ;
v)上記で合成が完了した酸化アルミニウムから溶融塩及び添加剤を析出するステップ;
vi)析出回収した薄片状酸化アルミニウム結晶の粒子表面に付着した添加剤の残量のような異物を除去する後処理ステップ;
を経て製造されることを特徴とするマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を「課題を解決するための手段」とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を概略的に示した図面に関する。
【図2】本発明によるマイクロ波加熱源の断面図を示した図面に関する。
【図3】本発明による実施例1の合成粉末を走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図4】本発明による実施例3の合成粉末を走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図5】本発明による比較例1の合成粉末を走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図6】本発明による比較例2の合成粉末を走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図7】本発明による実施例1の合成した薄片状の酸化アルミニウムに、TiO2粒子をコーティングしたものを走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図8】本発明による実施例3の合成した薄片状の酸化アルミニウムに、TiO2粒子をコーティングしたものを走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図9】本発明による比較例2の合成した薄片状の酸化アルミニウムに、TiO2粒子をコーティングしたものを走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図10】本発明による実施例3の合成した薄片状の酸化アルミニウムに対する粒度分析結果(粒度分布、Particle size(粒径、um)対Volume(体積、%))を示した図面である。
【図11】本発明による実施例4の合成した薄片状の酸化アルミニウムに対する粒度分析結果(粒度分布、Particle size(粒径、um)対Volume(体積、%))を示した図面である。
【図12】本発明による比較例2の合成した薄片状の酸化アルミニウムに対する粒度分析結果(粒度分布、Particle size(粒径、um)対Volume(体積、%))を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述した目的を達成するための本発明によるマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を、添付した図面である図1を中心として詳しく説明すると、下記の通りである。
i)アルミナ水和物またはアルミニウム塩のような出発物質を粉砕した後、適切な大きさの粒子を分類し、出発物質を前処理するステップ;
ii)前処理した出発物質を加熱して熱処理する遷移アルミナ製造ステップ;
iii)遷移アルミナに溶融塩及び添加剤を混合した後、この混合物を分散及び粉砕するステップ;
iv)分散及び粉砕した混合物をマイクロ波加熱源を用いて薄片状の酸化アルミニウムを溶融合成するステップ;
v)上記で合成が完了した酸化アルミニウムから溶融塩及び添加剤を析出するステップ;
vi)析出回収した薄片状酸化アルミニウム結晶の粒子表面に付着した添加剤の残量のような異物を除去する後処理ステップ;
を経て製造されることを特徴とする。
【0020】
以下、本発明による薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を詳しく説明すると、下記の通りである。
【0021】
上記ステップi)で用いる出発原料として、アルミナ水和物は水酸化アルミニウム(Al(OH)3)であることが好ましく、アルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3・4〜18H2O)、窒酸アルミニウム(Al(NO3)3・9H2O)または酢酸アルミニウム(Al(CHCOO)3OH)などを用いることが好ましい。
【0022】
上記において出発原料に対する選択及び準備は、上述した内容の他に、本発明の重要な構成要素である多結晶粒子(multi−crystal)及び二重結晶粒子(twin−crystal)が合成完了状態の粉末粒子内に存在しないよう、細心な注意を払った選択及び準備が必要である。
【0023】
上記の多結晶粒子は、用いられる出発原料の微細粉末状態の粒子状態と、添加剤の分散状態とにより形成されるものと知られており、特に出発原料の微細粉末状態の粒子が単結晶ではなく多結晶である場合、その影響を大いに受けて上記多結晶粒子が形成される。
【0024】
上記の多(二重)結晶粒子の形成も、出発原料の微細粉末の粒子状態と添加剤の分散状態とによりなされるが、添加剤の分散が充分でない状態で、出発原料の粒子の一部に対して過多な結晶成長作用により二重の形態で結晶成長になることがより大きな要因として示される。
【0025】
一方、本発明は、縦横比(Aspect Ratio)が50〜415、粒子の大きさが5〜85μmの分布を有する単分散性の良い薄片状の酸化アルミニウムを製造するためには、その出発原料の粒子の大きさの選択が非常に重要である。本発明で用いる出発原料の粒子の大きさは、5〜50μmの粒子が適しており、好ましくは5〜25μmの大きさの粒子が好適である。
【0026】
上記出発原料の粒子の大きさを制限し準備するためには、出発原料の粉末粒子に対して走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて形態を確認し、また粒子は単結晶として5〜50μmの大きさの粒子で存在し、さらに多結晶の粒子の構成比は最大5%以内でなければならない。
【0027】
上記において多結晶粒子が5%を超過する場合は、最終合成完了の際に、溶融塩及び添加剤の析出後に完成した粉末に対する多結晶粒子の除去が複雑になり、完全に除去するためには、よく成長した単結晶粉末の損失が必要以上に大きく発生し得る。
【0028】
また、出発原料の粒子の大きさを5〜50μmに分類する方法は、通常の篩い分け方法を用い、このとき、上部は篩目の大きさが53μm(270Mesh)のものを用い、下部は篩目の大きさが10μmのものを用いる。篩い分け装置は通常の回転振動篩またはダルトン篩を用いることができ、篩い分け方式には、湿式方法または乾式方法があり得る。
【0029】
上記において出発原料の粒子の大きさを5〜50μmに制限するのは、粉砕過程における効率を極大化するためであり、上記粒子の大きさが50μm以上の場合は、粉砕効率を低下させて、最終粉末の製造時に巨大結晶に成長する恐れがあり、粒子の大きさが5μm以下の場合は、微粒子に粉砕されて、最終粉末の製造時に所望しない小さな大きさの結晶に生成される恐れがある。
【0030】
従って、出発原料の粒子の大きさを5〜50μmに制限した場合のみに、設計された単分散性の良い粒子分布の薄片状の酸化アルミニウム粉末を得ることができる。
【0031】
出発原料が上記のように5〜50μmの大きさに分類された後、ボールミル(Ball−mill)を用いて粒子の大きさを1〜20μmに粉砕する。このとき、ボールミル(Ball−mill)を通じる粉砕過程は、微量含有された多結晶粒子から単結晶を分離するためであり、また最終合成粉末の大きさ分布を5〜85μm以内に単分散するための過程である。
【0032】
上記ボールミルを用いた粉砕条件は、高純度アルミナ坩堝を有するボールミル容器(Ball−mill jar)に容積の30〜70%まで高純度のジルコニアボールまたはアルミナボールを入れた後、容器の容積の20〜40%程度に出発原料を入れて、乾式粉砕を行う。
【0033】
上記における容積は、出発原料を1〜20μmに粉砕するにおいて粉砕効率を最大化するためのものであり、より好ましくは、容積に対してジルコニアまたはアルミナボール50〜60%、出発原料30〜40%を入れることが好適である。
【0034】
上記のように満たされたボールミル容器を、100〜200rpmの回転速度でボールミルで3〜12時間粉砕して、これを良く乾燥させると、粒子の大きさが1〜20μmの出発原料を得ることができる。
【0035】
上記ステップii)は、粒子の大きさが1〜20μmの出発原料に熱処理を行って、遷移アルミナを製造するステップである。
【0036】
遷移アルミナは、溶融塩及び添加剤を共に混合して加熱することにより、本発明の目標である薄膜型アルファ(α)酸化アルミニウムを製造するのに用いられるものであって、その種類はα、λ、κ、χ、θ、γ−Al2O3などがあり、温度及び圧力条件によってその結晶状遷移ステップが変わり、最終的に約1,300℃以上では完全にアルファ(α)アルミナとなる。出発原料である水酸化アルミニウム及びアルミニウム塩は、水和物または硫化物などの状態であるので、種類によって250〜400℃で結合水(H2O)または結合ガス(Gas)が分解される現象を引き起こし、その後、温度及び圧力条件によって各種の遷移アルミナになることが特徴である。
【0037】
従って、本発明において出発原料の遷移アルミナへの熱処理条件は厳しく行われるべきである。出発原料に対する遷移アルミナへの熱処理のための加熱条件は、常温〜250℃までは500〜900℃/hrであって、好ましくは600〜750℃/hrが好適であり、250〜400℃までは150〜400℃/hrであって、好ましくは180〜300℃/hrが好適であり、400〜900℃までは300〜600℃/hrであって、好ましくは400〜500℃/hrが好適である。また、出発原料の種類別に設計される最高温度、即ち700〜900℃では60〜180分間維持した後、徐々に自然冷却させる。
【0038】
このとき、熱処理された遷移アルミナは、X−線回折方法を通じた分析においてγ−Al2O3が60〜80%であり、その他にκ、χまたはθ−Al2O3が20〜40%となることが好適である。
【0039】
上記熱処理された遷移アルミナにおいてγ−Al2O3が80%を超過するか、またはκ、χ、θ−Al2O3が20%未満になる場合は、最終生成物である薄片状酸化アルミニウムのアルファ(α)結晶度が良くなり、二重結晶粒子の生成は少なくなるが、粒子の厚みが厚くなってその縦横比(Aspect Ratio)が低くなってしまう恐れがあり、遷移アルミナにおいてγ−Al2O3が60%未満になるか、またはκ、χ、θ−Al2O3が40%を超過する場合は、最終生成物である薄片状酸化アルミニウムのアルファ(α)結晶化に対する所要時間が長くなり、その結晶も悪くなってしまう恐れがある。
【0040】
本発明において、出発原料の遷移アルミナへの熱処理における昇温速度は、生成された遷移アルミナの種類別の含量比例に合わせることが重要であり、熱処理する量を考慮して上記説明した昇温速度の範囲で結晶設計され、熱処理時に上記の範囲から外れる場合は、所望の遷移アルミナが生成されない恐れがある。
【0041】
また、熱処理された遷移アルミナはγ−Al2O3が殆どであるが、γ−Al2O3は不安定な状態で水分吸着性を有するので、冷却後直ちに乾燥した状態で密封して保管しなければならない。
【0042】
上記ステップiii)は、上記ステップii)により製造された遷移アルミナ、溶融塩及び添加剤を混合した後、この混合物を均一に分散及び粉砕するステップである。
【0043】
先ず、本発明による製造方法は、遷移アルミナに添加する化合物の種類によって二つの方法が適用される。
【0044】
第一に、遷移アルミナ1モル(mol)に、溶融塩3〜10モル(mol)と、添加剤として結晶成長剤0.2〜0.5モル(mol)とを混合させることが好ましい。
【0045】
第二に、遷移アルミナ1モル(mol)に、溶融塩3〜10モル(mol)と、添加剤として結晶成長剤0.2〜0.5モル(mol)と、また蒸着剤であるスズ化合物0.005〜0.025モル(mol)を混合させる場合は、添加されたスズ化合物により薄片状酸化アルミニウム微粒子表面の蒸着性が改善される。
【0046】
本発明に用いる溶融塩の混合量は、溶剤としての役割及び部分的な結晶成長に起因するので、合成完了した後、回収後処理ステップを考慮して選択することが適しており、遷移アルミナ1モル(mol)に対して3〜10モル(mol)であることが好ましい。溶融塩の混合量が3モル未満の場合は、溶剤としての役割及び結晶成長が困難になる恐れがあり、溶融塩の混合量が10モルを超過する場合は、溶剤としての役割及び部分的な結晶成長には良い影響を与え得るが、合成完了した後、回収後処理が困難になる恐れがある。
【0047】
また、溶剤として溶融塩は、通常知られた炭酸カルシウム(CaCO3)、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸カリウム(KCO3)、硫酸カリウム(K2SO4)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)などから1種またはそれ以上を選択して用いることができる。
【0048】
本発明に用いられる結晶成長添加剤は、遷移アルミナの種類によっていくつかの種類の添加剤を選択して混合され得るが、全体の混合量は、遷移アルミナ1モル(mol)に0.2〜0.5モル(mol)を用いることが好ましい。添加剤の混合量が0.2モル(mol)未満の場合は、結晶成長が低下する恐れがあり、添加剤の混合量が0.5モル(mol)を超過する場合は、最終製造された薄片状酸化アルミニウムの結晶粒子に異物が存在するようになり、またc軸方向における剥離現象による表面割れ現象が発生する恐れがある。
【0049】
上記において結晶成長の原因を提供する添加剤としては、金属塩、金属水和物または金属フッ化物などが好ましく、その種類には、通常知られたLiF2、AlF3、NaF、P2(SO4)3、NaPF6、K2TiF6などから1種またはそれ以上を選択して用いることができる。
【0050】
また、上記フッ化物は異方性結晶成長の原因を提供し、ナトリウム(Na)、アルミニウム(Al)、リン(P)なども、結晶成長においてa、b、c軸のうちc軸成長に原因を提供する。
【0051】
一方、本発明は真珠光沢顔料用として優れた用途を有するために、従来の技術において困難があった薄片状酸化アルミニウムの表面に微粒子の金属酸化物の蒸着性を向上させるため、従来とは異なり微粒子表面の蒸着性改善及び白度増進を目的として、スズ系化合物であるSnSO4、SnI2、SnF4、SnF2、SnOのうち1種を選択して用いることを特徴とする。
【0052】
本発明において蒸着剤であるスズ化合物の混合量は、遷移アルミナ1モル(mol)に0.005〜0.025モル(mol)を用いることが好ましい。混合量が0.005モル未満の場合は、添加による効果が低下する恐れがあり、混合量が0.025モルを超過する場合は、スズ化合物の特性上、過多部分は最終製造された粉末で数十〜数百ナノメートルの大きさの微粒子に生成され、その除去が容易ではない恐れがある。
【0053】
上記のように遷移アルミナに溶融塩及び添加剤を加えて混合させた混合物は、均一に分散及び粉砕される。粒子分布が調整された出発原料から処理された遷移アルミナと溶融塩及び結晶成長添加剤とが、原料の特性上、それぞれ互いに異なる粒子の大きさの分布を有するため、このような場合、そのまま混合して加熱合成を行うと、添加剤及び遷移アルミナの分散状態と粒子の大きさとによって結晶成長状態が不均一になり、また多量の二重結晶粒子が発生するので、本発明ではこのような問題点を解決するために、混合物に対して物理的に分散し粉砕する方法で解決するようにしたことに特徴がある。
【0054】
本発明は、出発原料の粒子の大きさの制御に用いられた同種類の高純度アルミナボールミル容器(Ball−mill jar)に、容積の30〜70%までアルミナまたはジルコニアボール(Ball)を入れた後、混合物を容積の20〜40%程度に入れ、湿式分散のためにエチルアルコールまたはアセトンをボールと混合物とを入れた後に全体容積の70〜90%まで満たした後、これをボールミル(Ball−mill)を用いて100〜200rpmの回転により12〜72時間粉砕を施するが、より好ましくは、ボール(Ball)は容積の40〜60%、混合物は容積の23〜33%、溶液はボールと混合物とを入れた状態で全体容積の75〜85%まで満たし、120〜160rpmの回転により24〜48時間粉砕を施することが好適である。
【0055】
一方、溶融塩及び添加剤は遷移アルミナに比べて硬度が低いので、適宜に粉砕及び分散して混合物を良く乾燥すれば、1〜15μmの大きさに調節された粉末を得ることができる。
【0056】
上記ステップiv)は、上記ステップiii)で分散及び粉砕した混合物をマイクロ波加熱源を用いて溶融合成させるステップである。
【0057】
本発明で遷移アルミナと溶融塩及び添加剤とを溶融合成させる方法としてマイクロ波加熱源を用いることにより、薄片状酸化アルミニウムが合成される時間を顕著に減らして生産性を向上させ、エネルギー使用効率を高め、さらに最終製造された粉末の粒子の大きさ分布の単分散性を高めるためのものである。
【0058】
上記マイクロ波は、電場変化による物質内部の格子運動に対する自体発熱の原理を有しており、従来の電気炉発熱体による発熱及び対流による加熱方式とは異なる。マイクロ波による発熱は物質自体発熱によるものであって、物質の加熱において温度勾配の差を有しないという特性を有している。このような特性により、現在は有機合成分野においてマイクロ波を用いた方法が多様に用いられている。
【0059】
一方、マイクロ波は、本発明のような無機素材の材料合成には殆ど適用されておらず、これは無機素材が有する物質特性である誘電率の高低により適用分野が制限されるためである。
【0060】
P=1/18[fυ2ε×tanδ×10−10(W/m3)] (1)
Q=1/2.1[fυ2ε×tanδ×10−8(cal)] (2)
上記式(1)は、素材が有する誘電特性を用いて熱に変わる電力の損失を示し、上記式(2)は、単位体積当たりに発生する熱量を示すものである。
【0061】
上記式(1)、(2)においてPは電力、Qは熱量、fは周波数、υはマイクロ波電界の大きさ、εは比誘電率、tanδは誘電損失角を意味する。
【0062】
本発明では、無機素材の物質特性を研究して加熱源としてマイクロ波を適用する方法を用いることができた。また遷移アルミナは、低温では低い誘電率を有するが、600℃の高温では急激に高くなる誘電率を有しており、溶融塩及び添加剤として用いられた材料も極性の形態であるため、これは誘電加熱における大きな長所となる。
【0063】
本発明で用いられるマイクロ波は、915MHzの周波数が用いられる。
【0064】
【数1】
上記式(3)は、マイクロ波の電力密度が物体表面の値に対して1/2に減少する深みを示すものであって、マイクロ波エネルギーが物体内部に伝達されて加熱反応できる有効浸透深みを示す。式(3)においてfは周波数、εは比誘電率、tanδは誘電損失角を意味する。
【0065】
実験室の方法では、合成容器が小型であるため、2.45GHzのマイクロ波を用いることができるが、本発明に目標である産業用の大量生産のための加熱過程では、その有効浸透深みが制限され、使用時に内部温度の不均一性による粒子の大きさの単分散性が低下し、縦横比の不均一性も大きくなる。
【0066】
本発明の混合された材料は混合比率により、常温で比誘電率(ε)は9.5〜12.4、誘電損失角(tanδ)は450×10−4〜960×10−4である。混合された材料の比誘電率(ε)と誘電損失角(tanδ)とを、式(3)を用いてその有効浸透深みを計算すると、2.45GHzの周波数では4〜9cmの有効浸透深みを有し、915MHzの周波数では10〜26cmの有効浸透深みを有する。言い換えれば、915MHzのマイクロ波は、2.45GHzに比べて約3倍の有効浸透深みを有する。
【0067】
産業用の大量生産のために用いられる高純度アルミナまたはジルコニア材質の坩堝の直径が通常14cm以上であるので、2.45GHzのマイクロ波を用いる場合、短い浸透深みによる内部の不均一な加熱により、粒子成長の不均一性及びそれによる単分散性の低下を招く。
【0068】
従って、本発明は、915MHzを用いてこのような問題を解決し、また高エネルギー効率の産業用マイクロ波を用いた薄片状酸化アルミニウムを加熱合成できるようになった。
【0069】
また、本発明で遷移アルミナと溶融塩及び添加剤との混合物を溶融合成させる方法は、図2のように電源装置(マグネトロン)(1)、アイソレーター(2)、パワーモニター(3)、チューナー(4)と結合され、かつ導波管(5)と連結された断熱材(6)とかくはん器(7)及び赤外線温度計(8)が設けられた加熱キャビティ(9)で構成されたマイクロ波加熱源内において、高純度アルミナまたはジルコニア材質の坩堝に入れて溶融合成させることである。
【0070】
上記マイクロ波加熱源の加熱条件は、昇温速度が常温〜700℃まで420〜900℃/hrであり、701〜950℃まで180〜360℃/hrであり、950℃で溶融塩が充分に溶ける時間と、遷移アルミナ及び添加剤の融融流動性とを確保するために10〜60分間維持した後、951〜1,250℃まで60〜120℃/hrであり、混合物の用量別に設計される最高温度、即ち1,100〜1,250℃では60〜180分間維持した後、徐々に常温まで自然冷却させる。このとき、加熱雰囲気は加熱坩堝の蓋を閉じたままの通常の酸化雰囲気からなる。
【0071】
上記において昇温速度は、より好ましくは常温〜700℃まで540〜660℃/hrであり、701〜950℃まで240〜300℃/hrであり、951〜1,250℃まで60〜120℃/hrである。また、昇温速度の調節は、混合物の各材料における融点の差による激しい反応と、揮発の問題と、合成量に対する必要な熱量とを考慮して選定し、温度測定は、マイクロ波による誘電加熱方式の非接触式温度計(IR温度計)を用いることが好ましい。
【0072】
上記に設計された最高温度1,100〜1,250℃で60〜180分間維持する時間は、遷移アルミナのアルファ(α)アルミナに結晶化される時間であり、維持時間が60分未満の場合は、結晶度の充分でないという問題が発生する恐れがあり、維持時間が180分を超過する場合は、過多結晶成長によって厚みが厚くなり、縦横比(A/R)が悪くなる恐れがある。
【0073】
また、このとき用いられる坩堝は、完全に磁化した高純度アルミナあるいはジルコニア材質の坩堝を用いなければならない。坩堝の状態及び材質が制限されるのは、高温で混合物が溶融され液状で存在する際に、その液状が漏れず、破損されないようにするためである。
【0074】
上記ステップv)は、上記ステップiv)で合成された混合物から溶融塩及び添加剤を析出するステップであり、合成が完了して溶融塩及び添加剤と凝固された薄片状酸化アルミニウム結晶粒子とを析出する過程であって、通常の溶融塩に対する析出方法を用いれば良い。
【0075】
上記において溶融塩に対する析出方法は、合成完了した坩堝を撹拌機が取り付けられた水を満たした恒温水槽に入れて、撹拌機を回転させると、溶融塩と添加剤とが溶解されて、薄片状酸化アルミニウム結晶粒子が析出される。このような過程を繰り返し行うと、良い薄片状酸化アルミニウム結晶粒子を回収することができるようになる。このとき、恒温水槽の水は蒸溜水を用い、水温を80〜100℃に維持すればより早く回収することができる。
【0076】
上記ステップvi)は、薄片状酸化アルミニウム結晶の粒子表面に付着した添加剤による異物を完全に除去して、きれいでかつ平滑な表面を作る過程であって、通常の酸処理方法によって行われる。薄片状酸化アルミニウムは化学的に安定した化合物であるので、用途に適した硫酸、窒酸などを選択し、適宜に希釈して用いることができる。
【0077】
上記のように酸処理が完了した後、蒸溜水で充分に中和させて乾燥すれば、縦横比が50〜415の範囲であって、5〜85μmの大きさの分布を有する白色の透明な単分散性の良い薄片状酸化アルミニウム結晶粉末を得ることができる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の構成を実施例を通じて詳しく説明すると下記の通りであるが、本発明の構成は下記の実施例に限定されるものではない。
【0079】
[実施例1]
1.薄片状酸化アルミニウムの製造
(1)水酸化アルミニウム粉末の製造
篩目の大きさが53μmの篩と、10μmの篩とを用いて得られた10〜53μmの水酸化アルミニウム粉末(日本国、昭和電工(株)製)618.5gを2.2Lの容量の高純度アルミナボールミル容器(Jar)に入れ、口径7mmのアルミナボール2637gをさらに入れた後、150rpmの速度で6時間ボールミルを行った。ボールミル完了後、80℃の乾燥器で12時間乾燥して、遷移アルミナの前駆体である平均粒子の大きさ分布が1〜20μmの水酸化アルミニウム粉末を得た。
【0080】
(2)遷移アルミナの製造
上記(1)により製造された水酸化アルミニウム粉末を、SiC発熱体を有する温度調節機が取り付けられた箱型電気炉を用い、常温〜250℃まで600℃/hr、251〜400℃の範囲では200℃/hr、401〜850℃の範囲では400℃/hrの昇温速度で昇温させた後、120分間維持し、その後自然冷却させて、遷移アルミナを製造した。
【0081】
(3)乾燥粉末の製造
上記(2)により製造された遷移アルミナ粉末1molを、2.2Lの容量のアルミナ容器(Jar)に入れ、ここに溶融塩として硫酸ナトリウム(Na2SO4)7molと、添加剤としてAlF30.048mol、NaPF60.009mol、NaF0.428mol、P2(SO4)30.009mol、及びナノ粒子の蒸着性を向上させるためにスズ化合物であるSnF40.005molを入れた後、700mlのエチルアルコールと、アルミナボール2kgと、を入れて、回転数150rpmで24時間ボールミルを行い、粉砕して完了した混合物を乾燥器に入れ、90℃で24時間乾燥した後、篩(60メッシュ)を用いてボールと、乾燥した粉末とを分離し、1〜15μmの乾燥粉末を得た。
【0082】
(4)結晶成長のための加熱
上記(3)により製造された乾燥粉末をアルミナ材質の坩堝に入れ、六面体キャビティ(cavity)に発振周波数915MHz、最大出力5000Wの可変型産業用高出力マグネトロン(Richardson Electronics、NL10257、米国)を取り付け、また均一なマイクロ波の照射のための導波管及びチューナー(Tuner)を取り付け、赤外線温度計(Raytek、3iG5、米国)を用いて温度制御を行うマイクロ波加熱装置で常温〜700℃まで540℃/hr、701〜950℃まで240℃/hrの速度で昇温させて60分間維持した後、951〜1,200℃まで60℃/hrの速度で昇温させた後に180分間維持して、薄片状のアルファ(α)アルミナに結晶遷移させた後、常温まで自然冷却した。
【0083】
(5)薄片状酸化アルミニウムの製造
結晶成長が完了して常温に冷却された薄片状酸化アルミニウム粉末((α)アルミナ)が入った坩堝を80℃、5リットルの蒸溜水が入っている容器に入れ、十字型撹拌機で撹拌しながら溶融塩及び添加剤を充分に溶解させた後、減圧フィルターを用いて薄片状酸化アルミニウム粉末と溶解された溶融塩及び添加剤とを分離する過程を3回繰り返した。十分な洗浄を経た薄片状の酸化アルミニウム粉末を水5:硫酸1:窒酸1の比率で混合した混合酸溶液に入れて3時間放置した後、蒸溜水で中和及び洗浄して90℃で抗量まで充分に乾燥させ、白色の薄片状酸化アルミニウム97gが得られた。
【0084】
[実施例2]
(1)結晶成長のための加熱
上記実施例1で行った同様の方法で、水酸化アルミニウム粉末の製造、遷移アルミナの製造及び乾燥粉末の製造を行い、乾燥粉末を上記実施例1と同様のマイクロ波加熱装置で常温〜700℃まで660℃/hr、701〜950℃まで300℃/hrの速度で昇温させて10分間維持した後、951〜1,200℃まで120℃/hrの速度で昇温させた後に60分間維持して、薄片状のアルファ(α)アルミナに結晶を遷移させた後、常温まで自然冷却させた。但し、実施例1で乾燥粉末の製造時にナノ粒子の蒸着性向上のために添加したSnF4の含量を0.025molに増加させた。
【0085】
(2)薄片状酸化アルミニウムの製造
上記(1)で合成が完了した薄片状酸化アルミニウムを含む坩堝を、実施例1と同様の方法で結晶析出、洗浄、乾燥過程を経て白色の薄片状アルミニウム97gが得られた。
【0086】
[実施例3]
(1)結晶成長のための加熱
上記実施例1で行った同様の方法で水酸化アルミニウム粉末の製造、遷移アルミナの製造及び乾燥粉末の製造を行い、乾燥粉末を上記実施例1と同様のマイクロ波加熱装置で同様な条件で加熱処理して、薄片状のアルファ(α)アルミナに結晶を遷移させた後、常温まで自然冷却させた。但し、実施例1で乾燥粉末の製造時にナノ粒子の蒸着性向上のために添加したSnF4を全く添加しなかった。
【0087】
(2)薄片状酸化アルミニウムの製造
上記(1)で合成が完了した薄片状酸化アルミニウムを含む坩堝を実施例1と同様の方法で結晶析出、洗浄、乾燥過程を経て白色の薄片状アルミニウム97gが得られた。
【0088】
[実施例4]
(1)結晶成長のための加熱
上記実施例1で行った同様の方法で水酸化アルミニウム粉末の製造、遷移アルミナの製造及び乾燥粉末の製造を行い、乾燥粉末を上記実施例2と同様のマイクロ波加熱装置で同様な条件で加熱処理して、薄片状のアルファ(α)アルミナに結晶を遷移させた後、常温まで自然冷却させた。但し、実施例1で乾燥粉末の製造時にナノ粒子の蒸着性向上のために添加したSnF4を全く添加しなかった。
【0089】
(2)薄片状酸化アルミニウムの製造
上記(1)で合成が完了した薄片状酸化アルミニウムを含む坩堝を、実施例1と同様の方法で結晶析出、洗浄、乾燥過程を経て白色の薄片状アルミニウム97gが得られた。
【0090】
[比較例1]
(1)結晶成長のための加熱
上記実施例1で行った同様の方法で水酸化アルミニウム粉末の製造、遷移アルミナの製造及び乾燥粉末の製造を行い、乾燥粉末をアルミナ材質の坩堝に入れ、六面体キャビティ(cavity)に発振周波数2.45GHz、最大出力3000Wの可変型産業用高出力マグネトロン(Richardson Electronics、NL10230、米国)を取り付け、また均一なマイクロ波の照射のための導波管及びチューナー(Tuner)を取り付け、赤外線温度計(Raytek、3iG5、米国)を用いて温度制御を行うマイクロ波加熱装置で常温〜700℃まで540℃/hr、701〜950℃まで240℃/hrの速度で昇温させて60分間維持した後、951〜1,200℃まで60℃/hrの速度で昇温させた後に180分間維持して、薄片状のアルファ(α)アルミナに結晶を遷移させた後、常温まで自然冷却させた。
【0091】
(2)薄片状酸化アルミニウムの製造
上記(1)で合成が完了した薄片状酸化アルミニウムを含む坩堝を実施例1と同様の方法で結晶析出、洗浄、乾燥過程を経て白色の薄片状アルミニウム97gが得られた。
【0092】
[比較例2]
(1)遷移アルミナの製造
薄片状の酸化アルミニウムの製造に適した前駆物質である遷移アルミナを製造するために、水酸化アルミニウム1kgをアルミナ材質の坩堝に入れ、電気炉で600℃/hrの速度で900℃まで昇温させて180分間維持した後、常温まで自然冷却させて遷移アルミナを製造した。
【0093】
(2)乾燥粉末の製造
上記(1)の方法で製造された遷移アルミナに溶融塩及び添加剤を混合した後、実施例1と同様の条件で加熱合成して乾燥粉末を製造した。
【0094】
(3)結晶成長のための加熱
上記(2)で製造した乾燥粉末をアルミナ材質の坩堝に入れ、電気炉で1,300℃まで300℃/hrの速度で加熱して180分間維持した後、常温まで自然冷却させた。
【0095】
(4)薄片状酸化アルミニウムの製造
上記(3)で合成が完了した薄片状アルミニウムを含む坩堝を、実施例1と同様の方法で結晶析出、洗浄、乾燥過程を経て白色の薄片状アルミニウム97gが得られた。
【0096】
2.分析方法
上記1の実施例1〜4及び比較例1〜2の方法によって製造された薄片状酸化アルミニウムの特性を確認するため、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粒子の形態を測定し、レーザー散乱粒度分析機(PSA)を用いて粒子の平均的な大きさと大きさ分布とを測定し、X線回折装置(XRD)を用いて合成物質の結晶形態を分析し、さらに加水分解法による真珠光沢顔料の合成試験を行って、粒子表面に対するナノ粒子の蒸着性につき、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定しており、その結果は[表1]の通りである。
【0097】
【表1】
【0098】
3.分析結果
上記[表1]の測定結果に示すように、実施例1、2と実施例3、4及び比較例1で合成した粉末は全て縦横比の大きい板状の形態であって、縦横比の大きさが実施例1>実施例2>実施例4>実施例3>>比較例1>比較例2の順に示されることが分かる。
【0099】
実施例1(図3)及び実施例3(図4)に対する走査型電子顕微鏡(SEM)の写真をみると、発振周波数915MHz、最大出力5000Wのマグネトロンを取り付け、SnF4化合物が添加された実施例1(図3)は、粒子の大きさが均一であって、多結晶粒子及び二重結晶粒子が殆ど存在せず、平均粒径が26μmであることが分かり、同様の加熱装置において同様な熱処理条件で合成したものの、SnF4化合物が含まれていない実施例3(図4)は、粒子の大きさが僅かに不均一であって、多結晶粒子及び二重結晶粒子は殆ど存在せず、平均粒径が24μmであることが分かる。このことから、SnF4化合物の添加粒子の大きさにも多少影響を与えることが分かる。しかし、比較例2の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真(図6)をみると、製造工程が異なって、SnF4化合物が添加されないことにより、大きな粒子と小さな粒子とが混ざっていて、多結晶粒子及び二重結晶粒子が多量存在し、平均粒径も20μmであることが分かる。また、比較例1(図5)は、実施例3と同様の条件で合成するものの、マイクロ波の周波数が2.45GHzであるマイクロウエーブ加熱装置を用いて合成した結果物であって、実施例3に比べて平均粒子の大きさは23μmで僅かに小くなったが厚みが厚く、多結晶/二重結晶粒子が一部見られることが分かる。
【0100】
また、SnF4化合物の添加によるTiO2ナノ粒子の蒸着性向上の有無を調べるために、加水分解法による真珠光沢顔料の合成試験を行い、粒子表面に対するナノ粒子の蒸着性につき、走査型電子顕微鏡(SEM)を通じて観察した結果をみると、実施例1のSnF4化合物が添加された基底物質でコーティングした結果物(図7)は、TiO2粒子が非常に均一でかつ稠密に蒸着され、良好な蒸着力を有することが確認できるが、実施例3のSnF4化合物が添加されていない基底物質でコーティングした結果物(図8)は、粒子の剥離現象が多少発見された。これに比べて、製造工程及びSnF4化合物の添加有無が異なる比較例2の結果(図9)は、TiO2粒子が均一にコーティングされず、多くの部分で剥離が発生することが確認された。
【0101】
また、実施例3(図10)及び実施例4(図11)に対する粒度分析(PSA)結果をみると、時間当りに昇温される温度が遅く、最終温度での維持時間が長い実施例3(図10)の方がより均一な粒度分布を有し、平均粒子の大きさも24μmであって、大きいということが分かり、実施例4(図11)は、実施例3と同様の配合条件にて製造されたにもかかわらず、昇温される温度が比較的早く、最終温度での維持時間が比較的短くなることにより、実施例3に比べて粒子の大きさ分布が比較的広く、大きさが23μmであって、多少小さくなることが分かる。このような昇温条件による結果は、表1に示した実施例1及び実施例2においても同様な傾向にあることが分かる。
しかし、比較例2の粒度分析結果(図12)をみると、加熱方法及び製造工程が異なるため広い粒度分布を示し、平均粒子の大きさも20μmであって、小さく示されることが分かる。
上述したように、本発明は、上記の実施例を通じてその物性の優秀性が立証されたが、本発明は上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の置換、変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
従来の合成方法では、薄片状酸化アルミニウムが出発原料及び溶融塩、添加剤混合物に対する適切な粒子の大きさの調節及び分散性が不充分であったため、合成完了時に粉末内に多量の多結晶粒子及び二重結晶粒子が存在した。しかし、上記の「課題を解決するための手段」によってその目的を達成した本発明は、構成要素である出発物質の粒子分布処理、及び混合物に対する粒子分布処理、並びに添加剤に対する完璧な分散を通じて、合成完了した粉末粒子における多結晶粒子及び二重結晶粒子を5%未満に減少させた。
【0103】
また、本発明によれば、構成要素である加熱源として、マイクロ波を用いて薄片状酸化アルミニウムを合成することにより、選択的な加熱及びバルク発熱による結晶粒子の自体発熱合成による特性から、従来の方法に比べて加熱温度分布の差が少なく、合成最高温度が100℃以上低い温度での合成が可能なため、最終合成粒子分布の単分散性の良い高エネルギー効率の合成工程を作ることができた。
【0104】
また、本発明によればは、真珠光沢顔料の基底物質として用いるための薄片状酸化アルミニウムの粒子表面に対する蒸着性を向上させるために新規のスズ化合物を添加することで、真珠光沢顔料を合成する際に、TiO2ナノ粒子の蒸着性を向上させて、より高級化した真珠光沢顔料が製造できるようにしたことが長所である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化アルミニウムなどの出発物質に結晶成長を制御する添加剤と、真珠光沢顔料の製造時に結晶蒸着性を向上させるための添加剤とを混合して、加熱源としてマイクロ波を用いて薄片状の酸化アルミニウムを合成して製造することにより、長軸/短軸の比が50〜415の大きい縦横比を有し、光沢性に優れており、かつ均一な粒度分布を有して、塗料、プラスチック、インク、化粧品及び釉薬の原料として用いられる真珠光沢顔料の基底物質に適したことを特徴とするマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に薄片状の酸化アルミニウムは、耐磨耗性、耐食性、放熱性、光沢性などに優れているので、その産業上の利用可能性が非常に高い。特に優れた光沢性のために真珠光沢顔料の基質として脚光を浴びている。
【0003】
このような薄片状の酸化アルミニウムが真珠光沢顔料などの基質として用いられるためには、高い化学的安定性、大きな縦横比及び平滑な表面を有するべきである。このような形態を有するためには、結晶が成長する際に、特定方向に結晶が成長することを抑えなけらればならない。
【0004】
酸化アルミニウムを製造する代表的な方法には、バイヤー法、ベルヌーイ法、チョクラルスキー法、水熱合成法、溶融塩法などがある。バイヤー法、ベルヌーイ法、チォクラルスキー法は、大量で酸化アルミニウムを生産するには有利であるが、結晶状の形態と粉末の模様を一定に制御することは難しい。しかし、水熱合成法と溶融塩法とは、その製造方法が簡単であり、かつ安定した結晶状と粒子の模様とを制御することができ、薄片状の酸化アルミニウムを商業的に合成することに適していると知られている。
【0005】
酸化アルミニウムの製造方法に関する関連特許をみると、特許文献1に水熱合成装置で結晶成長抑制剤として燐酸イオンを添加して、六角板状形態を有する酸化アルミニウムを製造する方法について言及されており、また、特許文献2によると、水酸化アルミニウムをアルミナの原料として用い、融剤としてクリオライトを用いて1200〜1450℃で反応させて、直径が10〜200μmであり、縦横比が7程度である大結晶の薄片状酸化アルミニウム結晶粉末を製造する方法が提案されており、さらに、特許文献3には、酸化アルミニウムゲル粉末を高温でAlF3気体と反応させて合成する方法が記述されている。
【0006】
しかし、上記のような従来の方法の場合は、いくつかの問題点を有している。即ち、水熱合成法の場合は、比較的低い温度で厚みの薄い薄片状の酸化アルミニウムを合成することができるが、産業用の大量合成のためには、高温高圧の水熱合成装置が必要であるため、相当な費用が要求され、合成される粉末の大きさが20μm以下であるため、真珠光沢顔料の基質として用いるには多少不適である。
【0007】
また、出発物質と添加剤とを蒸気形態に作って反応させる気相反応の場合は、溶融塩を用いた融除法に比べて、合成温度を100℃以上低くすることができるという長所があるが、添加剤を蒸気状態に作るための装置と適切な合成雰囲気を制御するための高価の装置が必要であり、制御された雰囲気中で焼結が制御可能な高価の電気路を要するため、産業用の大量生産に適用するには不適である。
【0008】
溶融塩を用いた融除法は、高温で溶けた溶融塩内で溶質の結晶を成長させる方法であり、高温で溶けた溶融塩は、酸化物の合成反応を促進し、粒子の異方性を加速化する役割をし、結晶化温度を100〜200℃程度低くする役割をする。よって、この方法で薄片状酸化アルミニウムを合成製造するためには、溶融塩の役割が非常に重要であるため、適した溶融塩の選択が必須である。このような融除法による薄片状酸化アルミニウムの合成の場合、1250〜1450℃程度で粉末の合成が可能であり、粒子の大きさも20μm以上の大きな結晶で合成させることができるという長所を有している。
【0009】
特許文献4には、金属フルオロ化物質などの溶融塩及び添加剤を添加して溶融塩法で製造する工程が紹介されている。しかし、このような方法により、薄片状酸化アルミニウムを製造する場合は1,250℃以上で長期間の加熱が必要であり、大量生産をする場合は坩堝内における温度勾配の差のために均質な加熱が不可能であり、多結晶粒子及び二重結晶粒子が5%以内である均一な粒度分布の薄片状酸化アルミニウムを得難い。
【0010】
よって、本出願人は、上記のような問題点を解決するために研究した論文である非特許文献1に、「フラックス(flux)法によるアルファアルミナ板状体のマイクロ波合成」について発表したことがあるが、このようなマイクロ波合成方法は、2.45GHzの周波数を用いることにより、初期発熱は多少早いという長所を有しているが、物質自体を発熱させるために浸透する深みが低く、大容量の物質の加熱時には低い浸透深みによって、表面と内部との温度差があるという問題点を発生させて、大容量に適用時に表面と内部との温度勾配による結晶成長の違いで粒子の大きさ分布が多少悪くなるため、大容量の産業用に適用するには問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−33110号
【特許文献2】フランス公開特許公報2441584号
【特許文献3】韓国登録特許公報1996−64号
【特許文献4】国際公開特許公報WO2004/060804号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】韓国セラミック学会Vol.39、No.5、pp.473〜478、2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記した従来技術が有する問題点を解決するために、出発原料の準備時に本発明が創案した方法で出発物質を熱処理して前駆体に作り、添加剤と混合した前駆体の物理的処理を通じて、縦横比に優れた巨大結晶の薄片状酸化アルミニウムの粉末を製造すると同時に、多結晶粒子(multi crystal)及び二重結晶粒子(twin crystal)の生成を抑え、それによる製造方法の単純化及び製造歩留まりが向上可能なことを特徴とするマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を提供することにその目的がある。
【0014】
また、本発明は、該当技術分野において従来には試みなかった合成方法で、新規の物質、即ちスズ化合物を遷移アルミナに添加して合成させることにより、真珠光沢顔料を製造する際に、ナノ粒子の蒸着性を向上させ、化学的な安定性を維持する向上した物性を有することを特徴とするマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を提供することに他の目的がある。
【0015】
さらに、本発明は、酸化アルミニウムを合成時に加熱源として915MHzの周波数を有するマイクロ波を用いることにより、従来の電気炉を用いた熱対流現象による加熱合成方法に比べて、マイクロ波による誘電加熱方式の物質自体発熱としてマイクロ波が混合物内部に深く浸透されて均質に加熱させることができ、大容量の物質を加熱する場合も坩堝内の温度勾配が起こらず合成時間を顕著に減らすことができるため、生産性向上及びエネルギー効率を増大させ、均一な粒度分布の薄片を製造できるようにしたことを特徴とするマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を提供することに、また他の目的がある。
【0016】
従来の方法は、それまでの実験室的な方法で2.45GHzのマイクロ波を走査して、小型の合成容器を用いて酸化アルミニウムを合成することができたが、このような方法の場合は、加熱過程でその有効浸透深みが制限され、使用時に内部温度の不均一性による粒子の大きさの単分散性が低下して、縦横比の不均一性も高まるという問題点があったが、これに対して本発明は、周波数が915MHzであるマイクロ波を用いることにより、2.45GHzの周波数を用いたものに比べて、約3倍の有効浸透深みを有するため、大型の合成容器を用いる産業用の大量生産に適したことが特徴である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した目的を達成するための本発明の特徴によると、本発明は、薄片状の酸化アルミニウムを製造する方法において、
i)アルミナ水和物またはアルミニウム塩のような出発物質を粉砕した後、適切な大きさの粒子を分類し、出発物質を前処理するステップ;
ii)前処理した出発物質を加熱して熱処理する遷移アルミナ製造ステップ;
iii)遷移アルミナに溶融塩及び添加剤を混合した後、この混合物を分散及び粉砕するステップ;
iv)分散及び粉砕した混合物をマイクロ波加熱源を用いて薄片状の酸化アルミニウムを溶融合成するステップ;
v)上記で合成が完了した酸化アルミニウムから溶融塩及び添加剤を析出するステップ;
vi)析出回収した薄片状酸化アルミニウム結晶の粒子表面に付着した添加剤の残量のような異物を除去する後処理ステップ;
を経て製造されることを特徴とするマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を「課題を解決するための手段」とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を概略的に示した図面に関する。
【図2】本発明によるマイクロ波加熱源の断面図を示した図面に関する。
【図3】本発明による実施例1の合成粉末を走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図4】本発明による実施例3の合成粉末を走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図5】本発明による比較例1の合成粉末を走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図6】本発明による比較例2の合成粉末を走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図7】本発明による実施例1の合成した薄片状の酸化アルミニウムに、TiO2粒子をコーティングしたものを走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図8】本発明による実施例3の合成した薄片状の酸化アルミニウムに、TiO2粒子をコーティングしたものを走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図9】本発明による比較例2の合成した薄片状の酸化アルミニウムに、TiO2粒子をコーティングしたものを走査型電子顕微鏡で表した写真である。
【図10】本発明による実施例3の合成した薄片状の酸化アルミニウムに対する粒度分析結果(粒度分布、Particle size(粒径、um)対Volume(体積、%))を示した図面である。
【図11】本発明による実施例4の合成した薄片状の酸化アルミニウムに対する粒度分析結果(粒度分布、Particle size(粒径、um)対Volume(体積、%))を示した図面である。
【図12】本発明による比較例2の合成した薄片状の酸化アルミニウムに対する粒度分析結果(粒度分布、Particle size(粒径、um)対Volume(体積、%))を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述した目的を達成するための本発明によるマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を、添付した図面である図1を中心として詳しく説明すると、下記の通りである。
i)アルミナ水和物またはアルミニウム塩のような出発物質を粉砕した後、適切な大きさの粒子を分類し、出発物質を前処理するステップ;
ii)前処理した出発物質を加熱して熱処理する遷移アルミナ製造ステップ;
iii)遷移アルミナに溶融塩及び添加剤を混合した後、この混合物を分散及び粉砕するステップ;
iv)分散及び粉砕した混合物をマイクロ波加熱源を用いて薄片状の酸化アルミニウムを溶融合成するステップ;
v)上記で合成が完了した酸化アルミニウムから溶融塩及び添加剤を析出するステップ;
vi)析出回収した薄片状酸化アルミニウム結晶の粒子表面に付着した添加剤の残量のような異物を除去する後処理ステップ;
を経て製造されることを特徴とする。
【0020】
以下、本発明による薄片状の酸化アルミニウムの製造方法を詳しく説明すると、下記の通りである。
【0021】
上記ステップi)で用いる出発原料として、アルミナ水和物は水酸化アルミニウム(Al(OH)3)であることが好ましく、アルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3・4〜18H2O)、窒酸アルミニウム(Al(NO3)3・9H2O)または酢酸アルミニウム(Al(CHCOO)3OH)などを用いることが好ましい。
【0022】
上記において出発原料に対する選択及び準備は、上述した内容の他に、本発明の重要な構成要素である多結晶粒子(multi−crystal)及び二重結晶粒子(twin−crystal)が合成完了状態の粉末粒子内に存在しないよう、細心な注意を払った選択及び準備が必要である。
【0023】
上記の多結晶粒子は、用いられる出発原料の微細粉末状態の粒子状態と、添加剤の分散状態とにより形成されるものと知られており、特に出発原料の微細粉末状態の粒子が単結晶ではなく多結晶である場合、その影響を大いに受けて上記多結晶粒子が形成される。
【0024】
上記の多(二重)結晶粒子の形成も、出発原料の微細粉末の粒子状態と添加剤の分散状態とによりなされるが、添加剤の分散が充分でない状態で、出発原料の粒子の一部に対して過多な結晶成長作用により二重の形態で結晶成長になることがより大きな要因として示される。
【0025】
一方、本発明は、縦横比(Aspect Ratio)が50〜415、粒子の大きさが5〜85μmの分布を有する単分散性の良い薄片状の酸化アルミニウムを製造するためには、その出発原料の粒子の大きさの選択が非常に重要である。本発明で用いる出発原料の粒子の大きさは、5〜50μmの粒子が適しており、好ましくは5〜25μmの大きさの粒子が好適である。
【0026】
上記出発原料の粒子の大きさを制限し準備するためには、出発原料の粉末粒子に対して走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて形態を確認し、また粒子は単結晶として5〜50μmの大きさの粒子で存在し、さらに多結晶の粒子の構成比は最大5%以内でなければならない。
【0027】
上記において多結晶粒子が5%を超過する場合は、最終合成完了の際に、溶融塩及び添加剤の析出後に完成した粉末に対する多結晶粒子の除去が複雑になり、完全に除去するためには、よく成長した単結晶粉末の損失が必要以上に大きく発生し得る。
【0028】
また、出発原料の粒子の大きさを5〜50μmに分類する方法は、通常の篩い分け方法を用い、このとき、上部は篩目の大きさが53μm(270Mesh)のものを用い、下部は篩目の大きさが10μmのものを用いる。篩い分け装置は通常の回転振動篩またはダルトン篩を用いることができ、篩い分け方式には、湿式方法または乾式方法があり得る。
【0029】
上記において出発原料の粒子の大きさを5〜50μmに制限するのは、粉砕過程における効率を極大化するためであり、上記粒子の大きさが50μm以上の場合は、粉砕効率を低下させて、最終粉末の製造時に巨大結晶に成長する恐れがあり、粒子の大きさが5μm以下の場合は、微粒子に粉砕されて、最終粉末の製造時に所望しない小さな大きさの結晶に生成される恐れがある。
【0030】
従って、出発原料の粒子の大きさを5〜50μmに制限した場合のみに、設計された単分散性の良い粒子分布の薄片状の酸化アルミニウム粉末を得ることができる。
【0031】
出発原料が上記のように5〜50μmの大きさに分類された後、ボールミル(Ball−mill)を用いて粒子の大きさを1〜20μmに粉砕する。このとき、ボールミル(Ball−mill)を通じる粉砕過程は、微量含有された多結晶粒子から単結晶を分離するためであり、また最終合成粉末の大きさ分布を5〜85μm以内に単分散するための過程である。
【0032】
上記ボールミルを用いた粉砕条件は、高純度アルミナ坩堝を有するボールミル容器(Ball−mill jar)に容積の30〜70%まで高純度のジルコニアボールまたはアルミナボールを入れた後、容器の容積の20〜40%程度に出発原料を入れて、乾式粉砕を行う。
【0033】
上記における容積は、出発原料を1〜20μmに粉砕するにおいて粉砕効率を最大化するためのものであり、より好ましくは、容積に対してジルコニアまたはアルミナボール50〜60%、出発原料30〜40%を入れることが好適である。
【0034】
上記のように満たされたボールミル容器を、100〜200rpmの回転速度でボールミルで3〜12時間粉砕して、これを良く乾燥させると、粒子の大きさが1〜20μmの出発原料を得ることができる。
【0035】
上記ステップii)は、粒子の大きさが1〜20μmの出発原料に熱処理を行って、遷移アルミナを製造するステップである。
【0036】
遷移アルミナは、溶融塩及び添加剤を共に混合して加熱することにより、本発明の目標である薄膜型アルファ(α)酸化アルミニウムを製造するのに用いられるものであって、その種類はα、λ、κ、χ、θ、γ−Al2O3などがあり、温度及び圧力条件によってその結晶状遷移ステップが変わり、最終的に約1,300℃以上では完全にアルファ(α)アルミナとなる。出発原料である水酸化アルミニウム及びアルミニウム塩は、水和物または硫化物などの状態であるので、種類によって250〜400℃で結合水(H2O)または結合ガス(Gas)が分解される現象を引き起こし、その後、温度及び圧力条件によって各種の遷移アルミナになることが特徴である。
【0037】
従って、本発明において出発原料の遷移アルミナへの熱処理条件は厳しく行われるべきである。出発原料に対する遷移アルミナへの熱処理のための加熱条件は、常温〜250℃までは500〜900℃/hrであって、好ましくは600〜750℃/hrが好適であり、250〜400℃までは150〜400℃/hrであって、好ましくは180〜300℃/hrが好適であり、400〜900℃までは300〜600℃/hrであって、好ましくは400〜500℃/hrが好適である。また、出発原料の種類別に設計される最高温度、即ち700〜900℃では60〜180分間維持した後、徐々に自然冷却させる。
【0038】
このとき、熱処理された遷移アルミナは、X−線回折方法を通じた分析においてγ−Al2O3が60〜80%であり、その他にκ、χまたはθ−Al2O3が20〜40%となることが好適である。
【0039】
上記熱処理された遷移アルミナにおいてγ−Al2O3が80%を超過するか、またはκ、χ、θ−Al2O3が20%未満になる場合は、最終生成物である薄片状酸化アルミニウムのアルファ(α)結晶度が良くなり、二重結晶粒子の生成は少なくなるが、粒子の厚みが厚くなってその縦横比(Aspect Ratio)が低くなってしまう恐れがあり、遷移アルミナにおいてγ−Al2O3が60%未満になるか、またはκ、χ、θ−Al2O3が40%を超過する場合は、最終生成物である薄片状酸化アルミニウムのアルファ(α)結晶化に対する所要時間が長くなり、その結晶も悪くなってしまう恐れがある。
【0040】
本発明において、出発原料の遷移アルミナへの熱処理における昇温速度は、生成された遷移アルミナの種類別の含量比例に合わせることが重要であり、熱処理する量を考慮して上記説明した昇温速度の範囲で結晶設計され、熱処理時に上記の範囲から外れる場合は、所望の遷移アルミナが生成されない恐れがある。
【0041】
また、熱処理された遷移アルミナはγ−Al2O3が殆どであるが、γ−Al2O3は不安定な状態で水分吸着性を有するので、冷却後直ちに乾燥した状態で密封して保管しなければならない。
【0042】
上記ステップiii)は、上記ステップii)により製造された遷移アルミナ、溶融塩及び添加剤を混合した後、この混合物を均一に分散及び粉砕するステップである。
【0043】
先ず、本発明による製造方法は、遷移アルミナに添加する化合物の種類によって二つの方法が適用される。
【0044】
第一に、遷移アルミナ1モル(mol)に、溶融塩3〜10モル(mol)と、添加剤として結晶成長剤0.2〜0.5モル(mol)とを混合させることが好ましい。
【0045】
第二に、遷移アルミナ1モル(mol)に、溶融塩3〜10モル(mol)と、添加剤として結晶成長剤0.2〜0.5モル(mol)と、また蒸着剤であるスズ化合物0.005〜0.025モル(mol)を混合させる場合は、添加されたスズ化合物により薄片状酸化アルミニウム微粒子表面の蒸着性が改善される。
【0046】
本発明に用いる溶融塩の混合量は、溶剤としての役割及び部分的な結晶成長に起因するので、合成完了した後、回収後処理ステップを考慮して選択することが適しており、遷移アルミナ1モル(mol)に対して3〜10モル(mol)であることが好ましい。溶融塩の混合量が3モル未満の場合は、溶剤としての役割及び結晶成長が困難になる恐れがあり、溶融塩の混合量が10モルを超過する場合は、溶剤としての役割及び部分的な結晶成長には良い影響を与え得るが、合成完了した後、回収後処理が困難になる恐れがある。
【0047】
また、溶剤として溶融塩は、通常知られた炭酸カルシウム(CaCO3)、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸カリウム(KCO3)、硫酸カリウム(K2SO4)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)などから1種またはそれ以上を選択して用いることができる。
【0048】
本発明に用いられる結晶成長添加剤は、遷移アルミナの種類によっていくつかの種類の添加剤を選択して混合され得るが、全体の混合量は、遷移アルミナ1モル(mol)に0.2〜0.5モル(mol)を用いることが好ましい。添加剤の混合量が0.2モル(mol)未満の場合は、結晶成長が低下する恐れがあり、添加剤の混合量が0.5モル(mol)を超過する場合は、最終製造された薄片状酸化アルミニウムの結晶粒子に異物が存在するようになり、またc軸方向における剥離現象による表面割れ現象が発生する恐れがある。
【0049】
上記において結晶成長の原因を提供する添加剤としては、金属塩、金属水和物または金属フッ化物などが好ましく、その種類には、通常知られたLiF2、AlF3、NaF、P2(SO4)3、NaPF6、K2TiF6などから1種またはそれ以上を選択して用いることができる。
【0050】
また、上記フッ化物は異方性結晶成長の原因を提供し、ナトリウム(Na)、アルミニウム(Al)、リン(P)なども、結晶成長においてa、b、c軸のうちc軸成長に原因を提供する。
【0051】
一方、本発明は真珠光沢顔料用として優れた用途を有するために、従来の技術において困難があった薄片状酸化アルミニウムの表面に微粒子の金属酸化物の蒸着性を向上させるため、従来とは異なり微粒子表面の蒸着性改善及び白度増進を目的として、スズ系化合物であるSnSO4、SnI2、SnF4、SnF2、SnOのうち1種を選択して用いることを特徴とする。
【0052】
本発明において蒸着剤であるスズ化合物の混合量は、遷移アルミナ1モル(mol)に0.005〜0.025モル(mol)を用いることが好ましい。混合量が0.005モル未満の場合は、添加による効果が低下する恐れがあり、混合量が0.025モルを超過する場合は、スズ化合物の特性上、過多部分は最終製造された粉末で数十〜数百ナノメートルの大きさの微粒子に生成され、その除去が容易ではない恐れがある。
【0053】
上記のように遷移アルミナに溶融塩及び添加剤を加えて混合させた混合物は、均一に分散及び粉砕される。粒子分布が調整された出発原料から処理された遷移アルミナと溶融塩及び結晶成長添加剤とが、原料の特性上、それぞれ互いに異なる粒子の大きさの分布を有するため、このような場合、そのまま混合して加熱合成を行うと、添加剤及び遷移アルミナの分散状態と粒子の大きさとによって結晶成長状態が不均一になり、また多量の二重結晶粒子が発生するので、本発明ではこのような問題点を解決するために、混合物に対して物理的に分散し粉砕する方法で解決するようにしたことに特徴がある。
【0054】
本発明は、出発原料の粒子の大きさの制御に用いられた同種類の高純度アルミナボールミル容器(Ball−mill jar)に、容積の30〜70%までアルミナまたはジルコニアボール(Ball)を入れた後、混合物を容積の20〜40%程度に入れ、湿式分散のためにエチルアルコールまたはアセトンをボールと混合物とを入れた後に全体容積の70〜90%まで満たした後、これをボールミル(Ball−mill)を用いて100〜200rpmの回転により12〜72時間粉砕を施するが、より好ましくは、ボール(Ball)は容積の40〜60%、混合物は容積の23〜33%、溶液はボールと混合物とを入れた状態で全体容積の75〜85%まで満たし、120〜160rpmの回転により24〜48時間粉砕を施することが好適である。
【0055】
一方、溶融塩及び添加剤は遷移アルミナに比べて硬度が低いので、適宜に粉砕及び分散して混合物を良く乾燥すれば、1〜15μmの大きさに調節された粉末を得ることができる。
【0056】
上記ステップiv)は、上記ステップiii)で分散及び粉砕した混合物をマイクロ波加熱源を用いて溶融合成させるステップである。
【0057】
本発明で遷移アルミナと溶融塩及び添加剤とを溶融合成させる方法としてマイクロ波加熱源を用いることにより、薄片状酸化アルミニウムが合成される時間を顕著に減らして生産性を向上させ、エネルギー使用効率を高め、さらに最終製造された粉末の粒子の大きさ分布の単分散性を高めるためのものである。
【0058】
上記マイクロ波は、電場変化による物質内部の格子運動に対する自体発熱の原理を有しており、従来の電気炉発熱体による発熱及び対流による加熱方式とは異なる。マイクロ波による発熱は物質自体発熱によるものであって、物質の加熱において温度勾配の差を有しないという特性を有している。このような特性により、現在は有機合成分野においてマイクロ波を用いた方法が多様に用いられている。
【0059】
一方、マイクロ波は、本発明のような無機素材の材料合成には殆ど適用されておらず、これは無機素材が有する物質特性である誘電率の高低により適用分野が制限されるためである。
【0060】
P=1/18[fυ2ε×tanδ×10−10(W/m3)] (1)
Q=1/2.1[fυ2ε×tanδ×10−8(cal)] (2)
上記式(1)は、素材が有する誘電特性を用いて熱に変わる電力の損失を示し、上記式(2)は、単位体積当たりに発生する熱量を示すものである。
【0061】
上記式(1)、(2)においてPは電力、Qは熱量、fは周波数、υはマイクロ波電界の大きさ、εは比誘電率、tanδは誘電損失角を意味する。
【0062】
本発明では、無機素材の物質特性を研究して加熱源としてマイクロ波を適用する方法を用いることができた。また遷移アルミナは、低温では低い誘電率を有するが、600℃の高温では急激に高くなる誘電率を有しており、溶融塩及び添加剤として用いられた材料も極性の形態であるため、これは誘電加熱における大きな長所となる。
【0063】
本発明で用いられるマイクロ波は、915MHzの周波数が用いられる。
【0064】
【数1】
上記式(3)は、マイクロ波の電力密度が物体表面の値に対して1/2に減少する深みを示すものであって、マイクロ波エネルギーが物体内部に伝達されて加熱反応できる有効浸透深みを示す。式(3)においてfは周波数、εは比誘電率、tanδは誘電損失角を意味する。
【0065】
実験室の方法では、合成容器が小型であるため、2.45GHzのマイクロ波を用いることができるが、本発明に目標である産業用の大量生産のための加熱過程では、その有効浸透深みが制限され、使用時に内部温度の不均一性による粒子の大きさの単分散性が低下し、縦横比の不均一性も大きくなる。
【0066】
本発明の混合された材料は混合比率により、常温で比誘電率(ε)は9.5〜12.4、誘電損失角(tanδ)は450×10−4〜960×10−4である。混合された材料の比誘電率(ε)と誘電損失角(tanδ)とを、式(3)を用いてその有効浸透深みを計算すると、2.45GHzの周波数では4〜9cmの有効浸透深みを有し、915MHzの周波数では10〜26cmの有効浸透深みを有する。言い換えれば、915MHzのマイクロ波は、2.45GHzに比べて約3倍の有効浸透深みを有する。
【0067】
産業用の大量生産のために用いられる高純度アルミナまたはジルコニア材質の坩堝の直径が通常14cm以上であるので、2.45GHzのマイクロ波を用いる場合、短い浸透深みによる内部の不均一な加熱により、粒子成長の不均一性及びそれによる単分散性の低下を招く。
【0068】
従って、本発明は、915MHzを用いてこのような問題を解決し、また高エネルギー効率の産業用マイクロ波を用いた薄片状酸化アルミニウムを加熱合成できるようになった。
【0069】
また、本発明で遷移アルミナと溶融塩及び添加剤との混合物を溶融合成させる方法は、図2のように電源装置(マグネトロン)(1)、アイソレーター(2)、パワーモニター(3)、チューナー(4)と結合され、かつ導波管(5)と連結された断熱材(6)とかくはん器(7)及び赤外線温度計(8)が設けられた加熱キャビティ(9)で構成されたマイクロ波加熱源内において、高純度アルミナまたはジルコニア材質の坩堝に入れて溶融合成させることである。
【0070】
上記マイクロ波加熱源の加熱条件は、昇温速度が常温〜700℃まで420〜900℃/hrであり、701〜950℃まで180〜360℃/hrであり、950℃で溶融塩が充分に溶ける時間と、遷移アルミナ及び添加剤の融融流動性とを確保するために10〜60分間維持した後、951〜1,250℃まで60〜120℃/hrであり、混合物の用量別に設計される最高温度、即ち1,100〜1,250℃では60〜180分間維持した後、徐々に常温まで自然冷却させる。このとき、加熱雰囲気は加熱坩堝の蓋を閉じたままの通常の酸化雰囲気からなる。
【0071】
上記において昇温速度は、より好ましくは常温〜700℃まで540〜660℃/hrであり、701〜950℃まで240〜300℃/hrであり、951〜1,250℃まで60〜120℃/hrである。また、昇温速度の調節は、混合物の各材料における融点の差による激しい反応と、揮発の問題と、合成量に対する必要な熱量とを考慮して選定し、温度測定は、マイクロ波による誘電加熱方式の非接触式温度計(IR温度計)を用いることが好ましい。
【0072】
上記に設計された最高温度1,100〜1,250℃で60〜180分間維持する時間は、遷移アルミナのアルファ(α)アルミナに結晶化される時間であり、維持時間が60分未満の場合は、結晶度の充分でないという問題が発生する恐れがあり、維持時間が180分を超過する場合は、過多結晶成長によって厚みが厚くなり、縦横比(A/R)が悪くなる恐れがある。
【0073】
また、このとき用いられる坩堝は、完全に磁化した高純度アルミナあるいはジルコニア材質の坩堝を用いなければならない。坩堝の状態及び材質が制限されるのは、高温で混合物が溶融され液状で存在する際に、その液状が漏れず、破損されないようにするためである。
【0074】
上記ステップv)は、上記ステップiv)で合成された混合物から溶融塩及び添加剤を析出するステップであり、合成が完了して溶融塩及び添加剤と凝固された薄片状酸化アルミニウム結晶粒子とを析出する過程であって、通常の溶融塩に対する析出方法を用いれば良い。
【0075】
上記において溶融塩に対する析出方法は、合成完了した坩堝を撹拌機が取り付けられた水を満たした恒温水槽に入れて、撹拌機を回転させると、溶融塩と添加剤とが溶解されて、薄片状酸化アルミニウム結晶粒子が析出される。このような過程を繰り返し行うと、良い薄片状酸化アルミニウム結晶粒子を回収することができるようになる。このとき、恒温水槽の水は蒸溜水を用い、水温を80〜100℃に維持すればより早く回収することができる。
【0076】
上記ステップvi)は、薄片状酸化アルミニウム結晶の粒子表面に付着した添加剤による異物を完全に除去して、きれいでかつ平滑な表面を作る過程であって、通常の酸処理方法によって行われる。薄片状酸化アルミニウムは化学的に安定した化合物であるので、用途に適した硫酸、窒酸などを選択し、適宜に希釈して用いることができる。
【0077】
上記のように酸処理が完了した後、蒸溜水で充分に中和させて乾燥すれば、縦横比が50〜415の範囲であって、5〜85μmの大きさの分布を有する白色の透明な単分散性の良い薄片状酸化アルミニウム結晶粉末を得ることができる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の構成を実施例を通じて詳しく説明すると下記の通りであるが、本発明の構成は下記の実施例に限定されるものではない。
【0079】
[実施例1]
1.薄片状酸化アルミニウムの製造
(1)水酸化アルミニウム粉末の製造
篩目の大きさが53μmの篩と、10μmの篩とを用いて得られた10〜53μmの水酸化アルミニウム粉末(日本国、昭和電工(株)製)618.5gを2.2Lの容量の高純度アルミナボールミル容器(Jar)に入れ、口径7mmのアルミナボール2637gをさらに入れた後、150rpmの速度で6時間ボールミルを行った。ボールミル完了後、80℃の乾燥器で12時間乾燥して、遷移アルミナの前駆体である平均粒子の大きさ分布が1〜20μmの水酸化アルミニウム粉末を得た。
【0080】
(2)遷移アルミナの製造
上記(1)により製造された水酸化アルミニウム粉末を、SiC発熱体を有する温度調節機が取り付けられた箱型電気炉を用い、常温〜250℃まで600℃/hr、251〜400℃の範囲では200℃/hr、401〜850℃の範囲では400℃/hrの昇温速度で昇温させた後、120分間維持し、その後自然冷却させて、遷移アルミナを製造した。
【0081】
(3)乾燥粉末の製造
上記(2)により製造された遷移アルミナ粉末1molを、2.2Lの容量のアルミナ容器(Jar)に入れ、ここに溶融塩として硫酸ナトリウム(Na2SO4)7molと、添加剤としてAlF30.048mol、NaPF60.009mol、NaF0.428mol、P2(SO4)30.009mol、及びナノ粒子の蒸着性を向上させるためにスズ化合物であるSnF40.005molを入れた後、700mlのエチルアルコールと、アルミナボール2kgと、を入れて、回転数150rpmで24時間ボールミルを行い、粉砕して完了した混合物を乾燥器に入れ、90℃で24時間乾燥した後、篩(60メッシュ)を用いてボールと、乾燥した粉末とを分離し、1〜15μmの乾燥粉末を得た。
【0082】
(4)結晶成長のための加熱
上記(3)により製造された乾燥粉末をアルミナ材質の坩堝に入れ、六面体キャビティ(cavity)に発振周波数915MHz、最大出力5000Wの可変型産業用高出力マグネトロン(Richardson Electronics、NL10257、米国)を取り付け、また均一なマイクロ波の照射のための導波管及びチューナー(Tuner)を取り付け、赤外線温度計(Raytek、3iG5、米国)を用いて温度制御を行うマイクロ波加熱装置で常温〜700℃まで540℃/hr、701〜950℃まで240℃/hrの速度で昇温させて60分間維持した後、951〜1,200℃まで60℃/hrの速度で昇温させた後に180分間維持して、薄片状のアルファ(α)アルミナに結晶遷移させた後、常温まで自然冷却した。
【0083】
(5)薄片状酸化アルミニウムの製造
結晶成長が完了して常温に冷却された薄片状酸化アルミニウム粉末((α)アルミナ)が入った坩堝を80℃、5リットルの蒸溜水が入っている容器に入れ、十字型撹拌機で撹拌しながら溶融塩及び添加剤を充分に溶解させた後、減圧フィルターを用いて薄片状酸化アルミニウム粉末と溶解された溶融塩及び添加剤とを分離する過程を3回繰り返した。十分な洗浄を経た薄片状の酸化アルミニウム粉末を水5:硫酸1:窒酸1の比率で混合した混合酸溶液に入れて3時間放置した後、蒸溜水で中和及び洗浄して90℃で抗量まで充分に乾燥させ、白色の薄片状酸化アルミニウム97gが得られた。
【0084】
[実施例2]
(1)結晶成長のための加熱
上記実施例1で行った同様の方法で、水酸化アルミニウム粉末の製造、遷移アルミナの製造及び乾燥粉末の製造を行い、乾燥粉末を上記実施例1と同様のマイクロ波加熱装置で常温〜700℃まで660℃/hr、701〜950℃まで300℃/hrの速度で昇温させて10分間維持した後、951〜1,200℃まで120℃/hrの速度で昇温させた後に60分間維持して、薄片状のアルファ(α)アルミナに結晶を遷移させた後、常温まで自然冷却させた。但し、実施例1で乾燥粉末の製造時にナノ粒子の蒸着性向上のために添加したSnF4の含量を0.025molに増加させた。
【0085】
(2)薄片状酸化アルミニウムの製造
上記(1)で合成が完了した薄片状酸化アルミニウムを含む坩堝を、実施例1と同様の方法で結晶析出、洗浄、乾燥過程を経て白色の薄片状アルミニウム97gが得られた。
【0086】
[実施例3]
(1)結晶成長のための加熱
上記実施例1で行った同様の方法で水酸化アルミニウム粉末の製造、遷移アルミナの製造及び乾燥粉末の製造を行い、乾燥粉末を上記実施例1と同様のマイクロ波加熱装置で同様な条件で加熱処理して、薄片状のアルファ(α)アルミナに結晶を遷移させた後、常温まで自然冷却させた。但し、実施例1で乾燥粉末の製造時にナノ粒子の蒸着性向上のために添加したSnF4を全く添加しなかった。
【0087】
(2)薄片状酸化アルミニウムの製造
上記(1)で合成が完了した薄片状酸化アルミニウムを含む坩堝を実施例1と同様の方法で結晶析出、洗浄、乾燥過程を経て白色の薄片状アルミニウム97gが得られた。
【0088】
[実施例4]
(1)結晶成長のための加熱
上記実施例1で行った同様の方法で水酸化アルミニウム粉末の製造、遷移アルミナの製造及び乾燥粉末の製造を行い、乾燥粉末を上記実施例2と同様のマイクロ波加熱装置で同様な条件で加熱処理して、薄片状のアルファ(α)アルミナに結晶を遷移させた後、常温まで自然冷却させた。但し、実施例1で乾燥粉末の製造時にナノ粒子の蒸着性向上のために添加したSnF4を全く添加しなかった。
【0089】
(2)薄片状酸化アルミニウムの製造
上記(1)で合成が完了した薄片状酸化アルミニウムを含む坩堝を、実施例1と同様の方法で結晶析出、洗浄、乾燥過程を経て白色の薄片状アルミニウム97gが得られた。
【0090】
[比較例1]
(1)結晶成長のための加熱
上記実施例1で行った同様の方法で水酸化アルミニウム粉末の製造、遷移アルミナの製造及び乾燥粉末の製造を行い、乾燥粉末をアルミナ材質の坩堝に入れ、六面体キャビティ(cavity)に発振周波数2.45GHz、最大出力3000Wの可変型産業用高出力マグネトロン(Richardson Electronics、NL10230、米国)を取り付け、また均一なマイクロ波の照射のための導波管及びチューナー(Tuner)を取り付け、赤外線温度計(Raytek、3iG5、米国)を用いて温度制御を行うマイクロ波加熱装置で常温〜700℃まで540℃/hr、701〜950℃まで240℃/hrの速度で昇温させて60分間維持した後、951〜1,200℃まで60℃/hrの速度で昇温させた後に180分間維持して、薄片状のアルファ(α)アルミナに結晶を遷移させた後、常温まで自然冷却させた。
【0091】
(2)薄片状酸化アルミニウムの製造
上記(1)で合成が完了した薄片状酸化アルミニウムを含む坩堝を実施例1と同様の方法で結晶析出、洗浄、乾燥過程を経て白色の薄片状アルミニウム97gが得られた。
【0092】
[比較例2]
(1)遷移アルミナの製造
薄片状の酸化アルミニウムの製造に適した前駆物質である遷移アルミナを製造するために、水酸化アルミニウム1kgをアルミナ材質の坩堝に入れ、電気炉で600℃/hrの速度で900℃まで昇温させて180分間維持した後、常温まで自然冷却させて遷移アルミナを製造した。
【0093】
(2)乾燥粉末の製造
上記(1)の方法で製造された遷移アルミナに溶融塩及び添加剤を混合した後、実施例1と同様の条件で加熱合成して乾燥粉末を製造した。
【0094】
(3)結晶成長のための加熱
上記(2)で製造した乾燥粉末をアルミナ材質の坩堝に入れ、電気炉で1,300℃まで300℃/hrの速度で加熱して180分間維持した後、常温まで自然冷却させた。
【0095】
(4)薄片状酸化アルミニウムの製造
上記(3)で合成が完了した薄片状アルミニウムを含む坩堝を、実施例1と同様の方法で結晶析出、洗浄、乾燥過程を経て白色の薄片状アルミニウム97gが得られた。
【0096】
2.分析方法
上記1の実施例1〜4及び比較例1〜2の方法によって製造された薄片状酸化アルミニウムの特性を確認するため、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粒子の形態を測定し、レーザー散乱粒度分析機(PSA)を用いて粒子の平均的な大きさと大きさ分布とを測定し、X線回折装置(XRD)を用いて合成物質の結晶形態を分析し、さらに加水分解法による真珠光沢顔料の合成試験を行って、粒子表面に対するナノ粒子の蒸着性につき、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定しており、その結果は[表1]の通りである。
【0097】
【表1】
【0098】
3.分析結果
上記[表1]の測定結果に示すように、実施例1、2と実施例3、4及び比較例1で合成した粉末は全て縦横比の大きい板状の形態であって、縦横比の大きさが実施例1>実施例2>実施例4>実施例3>>比較例1>比較例2の順に示されることが分かる。
【0099】
実施例1(図3)及び実施例3(図4)に対する走査型電子顕微鏡(SEM)の写真をみると、発振周波数915MHz、最大出力5000Wのマグネトロンを取り付け、SnF4化合物が添加された実施例1(図3)は、粒子の大きさが均一であって、多結晶粒子及び二重結晶粒子が殆ど存在せず、平均粒径が26μmであることが分かり、同様の加熱装置において同様な熱処理条件で合成したものの、SnF4化合物が含まれていない実施例3(図4)は、粒子の大きさが僅かに不均一であって、多結晶粒子及び二重結晶粒子は殆ど存在せず、平均粒径が24μmであることが分かる。このことから、SnF4化合物の添加粒子の大きさにも多少影響を与えることが分かる。しかし、比較例2の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真(図6)をみると、製造工程が異なって、SnF4化合物が添加されないことにより、大きな粒子と小さな粒子とが混ざっていて、多結晶粒子及び二重結晶粒子が多量存在し、平均粒径も20μmであることが分かる。また、比較例1(図5)は、実施例3と同様の条件で合成するものの、マイクロ波の周波数が2.45GHzであるマイクロウエーブ加熱装置を用いて合成した結果物であって、実施例3に比べて平均粒子の大きさは23μmで僅かに小くなったが厚みが厚く、多結晶/二重結晶粒子が一部見られることが分かる。
【0100】
また、SnF4化合物の添加によるTiO2ナノ粒子の蒸着性向上の有無を調べるために、加水分解法による真珠光沢顔料の合成試験を行い、粒子表面に対するナノ粒子の蒸着性につき、走査型電子顕微鏡(SEM)を通じて観察した結果をみると、実施例1のSnF4化合物が添加された基底物質でコーティングした結果物(図7)は、TiO2粒子が非常に均一でかつ稠密に蒸着され、良好な蒸着力を有することが確認できるが、実施例3のSnF4化合物が添加されていない基底物質でコーティングした結果物(図8)は、粒子の剥離現象が多少発見された。これに比べて、製造工程及びSnF4化合物の添加有無が異なる比較例2の結果(図9)は、TiO2粒子が均一にコーティングされず、多くの部分で剥離が発生することが確認された。
【0101】
また、実施例3(図10)及び実施例4(図11)に対する粒度分析(PSA)結果をみると、時間当りに昇温される温度が遅く、最終温度での維持時間が長い実施例3(図10)の方がより均一な粒度分布を有し、平均粒子の大きさも24μmであって、大きいということが分かり、実施例4(図11)は、実施例3と同様の配合条件にて製造されたにもかかわらず、昇温される温度が比較的早く、最終温度での維持時間が比較的短くなることにより、実施例3に比べて粒子の大きさ分布が比較的広く、大きさが23μmであって、多少小さくなることが分かる。このような昇温条件による結果は、表1に示した実施例1及び実施例2においても同様な傾向にあることが分かる。
しかし、比較例2の粒度分析結果(図12)をみると、加熱方法及び製造工程が異なるため広い粒度分布を示し、平均粒子の大きさも20μmであって、小さく示されることが分かる。
上述したように、本発明は、上記の実施例を通じてその物性の優秀性が立証されたが、本発明は上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の置換、変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
従来の合成方法では、薄片状酸化アルミニウムが出発原料及び溶融塩、添加剤混合物に対する適切な粒子の大きさの調節及び分散性が不充分であったため、合成完了時に粉末内に多量の多結晶粒子及び二重結晶粒子が存在した。しかし、上記の「課題を解決するための手段」によってその目的を達成した本発明は、構成要素である出発物質の粒子分布処理、及び混合物に対する粒子分布処理、並びに添加剤に対する完璧な分散を通じて、合成完了した粉末粒子における多結晶粒子及び二重結晶粒子を5%未満に減少させた。
【0103】
また、本発明によれば、構成要素である加熱源として、マイクロ波を用いて薄片状酸化アルミニウムを合成することにより、選択的な加熱及びバルク発熱による結晶粒子の自体発熱合成による特性から、従来の方法に比べて加熱温度分布の差が少なく、合成最高温度が100℃以上低い温度での合成が可能なため、最終合成粒子分布の単分散性の良い高エネルギー効率の合成工程を作ることができた。
【0104】
また、本発明によればは、真珠光沢顔料の基底物質として用いるための薄片状酸化アルミニウムの粒子表面に対する蒸着性を向上させるために新規のスズ化合物を添加することで、真珠光沢顔料を合成する際に、TiO2ナノ粒子の蒸着性を向上させて、より高級化した真珠光沢顔料が製造できるようにしたことが長所である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状の酸化アルミニウムを製造する方法において、
i)出発物質としてアルミナ水和物またはアルミニウム塩を粉砕した後、5〜50μmの大きさの粒子を分類し、出発物質を前処理するステップ;
ii)前処理した出発物質を加熱して熱処理する遷移アルミナ製造ステップ;
iii)遷移アルミナに、溶融塩として炭酸カルシウム(CaCO3)、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸カリウム(KCO3)、硫酸カリウム(K2SO4)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)のうち1種または2種を選択し、添加剤としてLiF2、AlF3、NaF、P2(SO4)3、NaPF6、K2TiF6のうち1種または2種を選択して、これを混合した後、この混合物を分散及び粉砕するステップ;
iv)分散及び粉砕した混合物をマイクロ波加熱源を用いて薄片状の酸化アルミニウムを溶融合成するステップ;
v)上記で合成が完了した酸化アルミニウムから溶融塩及び添加剤を析出するステップ;
vi)析出回収した薄片状酸化アルミニウム結晶の粒子表面に付着した添加剤の残量のような異物を除去する後処理ステップ;
を経て製造されることを特徴とするマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項2】
上記ステップi)におけるアルミナ水和物は、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を用い、またアルミニウム塩は、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3・4〜18H2O)、窒酸アルミニウム(Al(NO3)3・9H2O)、または酢酸アルミニウム(Al(CHCOO)3OH)のうち1種を選択して用いることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項3】
上記ステップii)における加熱条件は、常温〜250℃までは500〜900℃/hrであり、250〜400℃までは150〜400℃/hrであり、400〜900℃までは300〜600℃/hrであり、また700〜900℃では60〜180分間維持した後、徐々に自然冷却させて遷移アルミナを製造することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項4】
上記ステップiii)における混合物は、遷移アルミナ1モル(mol)に溶融塩3〜10モル(mol)と、添加剤として結晶成長剤0.2〜0.5モル(mol)とを混合させることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項5】
上記ステップiii)における混合物は、遷移アルミナ1モル(mol)に溶融塩3〜10モル(mol)、結晶成長添加剤0.2〜0.5モル(mol)、並びにスズ化合物0.005〜0.025モル(mol)を混合させることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項6】
上記スズ化合物は、SnSO4、SnI2、SnF4、SnF2、SnOのうち1種を選択して用いることを特徴とする請求項5に記載のマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項7】
上記ステップiv)における混合物の加熱は、常温〜700℃までは420〜900℃/hrであり、701〜950℃までは180〜360℃/hrであり、951〜1,250℃までは60〜120℃/hrであり、また1,100〜1,250℃では60〜180分間維持した後、徐々に常温まで自然冷却させて溶融合成させることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項1】
薄片状の酸化アルミニウムを製造する方法において、
i)出発物質としてアルミナ水和物またはアルミニウム塩を粉砕した後、5〜50μmの大きさの粒子を分類し、出発物質を前処理するステップ;
ii)前処理した出発物質を加熱して熱処理する遷移アルミナ製造ステップ;
iii)遷移アルミナに、溶融塩として炭酸カルシウム(CaCO3)、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸カリウム(KCO3)、硫酸カリウム(K2SO4)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)のうち1種または2種を選択し、添加剤としてLiF2、AlF3、NaF、P2(SO4)3、NaPF6、K2TiF6のうち1種または2種を選択して、これを混合した後、この混合物を分散及び粉砕するステップ;
iv)分散及び粉砕した混合物をマイクロ波加熱源を用いて薄片状の酸化アルミニウムを溶融合成するステップ;
v)上記で合成が完了した酸化アルミニウムから溶融塩及び添加剤を析出するステップ;
vi)析出回収した薄片状酸化アルミニウム結晶の粒子表面に付着した添加剤の残量のような異物を除去する後処理ステップ;
を経て製造されることを特徴とするマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項2】
上記ステップi)におけるアルミナ水和物は、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を用い、またアルミニウム塩は、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3・4〜18H2O)、窒酸アルミニウム(Al(NO3)3・9H2O)、または酢酸アルミニウム(Al(CHCOO)3OH)のうち1種を選択して用いることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項3】
上記ステップii)における加熱条件は、常温〜250℃までは500〜900℃/hrであり、250〜400℃までは150〜400℃/hrであり、400〜900℃までは300〜600℃/hrであり、また700〜900℃では60〜180分間維持した後、徐々に自然冷却させて遷移アルミナを製造することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項4】
上記ステップiii)における混合物は、遷移アルミナ1モル(mol)に溶融塩3〜10モル(mol)と、添加剤として結晶成長剤0.2〜0.5モル(mol)とを混合させることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項5】
上記ステップiii)における混合物は、遷移アルミナ1モル(mol)に溶融塩3〜10モル(mol)、結晶成長添加剤0.2〜0.5モル(mol)、並びにスズ化合物0.005〜0.025モル(mol)を混合させることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項6】
上記スズ化合物は、SnSO4、SnI2、SnF4、SnF2、SnOのうち1種を選択して用いることを特徴とする請求項5に記載のマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【請求項7】
上記ステップiv)における混合物の加熱は、常温〜700℃までは420〜900℃/hrであり、701〜950℃までは180〜360℃/hrであり、951〜1,250℃までは60〜120℃/hrであり、また1,100〜1,250℃では60〜180分間維持した後、徐々に常温まで自然冷却させて溶融合成させることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波を用いた薄片状の酸化アルミニウムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2010−536711(P2010−536711A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522809(P2010−522809)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005058
【国際公開番号】WO2009/028888
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(510054197)ジェイピーエス マイクロテック カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】JPS Micro−Tech Co., Ltd.
【出願人】(510054201)
【氏名又は名称原語表記】Seo Geum Seok
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005058
【国際公開番号】WO2009/028888
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(510054197)ジェイピーエス マイクロテック カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】JPS Micro−Tech Co., Ltd.
【出願人】(510054201)
【氏名又は名称原語表記】Seo Geum Seok
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]