説明

マイクロ波センサ

【課題】侵入者あるいは侵入物の位置を判別可能なマイクロ波センサを提供する。
【解決手段】監視エリアを挟んで対向し、各々に異なる周波数f1,f2の第1、第2のマイクロ波を送受信する第1、第2のマイクロ波送受信機と、正常時における第1、第2のマイクロ波送受信機の各受信信号の強度特性をそれぞれ記憶し、第1、第2のマイクロ波送受信機の各受信信号及び正常時受信強度特性との比較に基づいて侵入位置を判定する判定装置とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を用いて人あるいは物の監視エリアへの侵入を検出するマイクロ波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に知られているマイクロ波センサは、監視エリアに対向して配置された送信装置及び受信装置並びに侵入判定を行う判定装置からなり、当該判定装置が送信装置から受信装置に向けて送信したマイクロ波(送信波)の受信装置における受信信号に基づいて侵入者あるいは侵入物の監視エリアへの侵入の有無を判定するものである。
例えば下記特許文献1には、このような従来のマイクロ波センサの一例が開示されている。
【特許文献1】特開2003-006753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来のマイクロ波センサでは、侵入者あるいは侵入物の有無を判定することはできるものの、侵入者あるいは侵入物の位置を判別することができないという問題点がある。例えば監視エリアが比較的広い場合には、侵入者あるいは侵入物が判定されても、位置が判別できない場合には、侵入者あるいは侵入物を短時間で拘束する等の適切な対応をとることができない。
【0004】
また、上記従来のマイクロ波センサでは、受信装置の直近エリアが死角となるという問題点がある。すなわち、送信装置及び受信装置の直近エリアに侵入者あるいは侵入物が存在する場合には、侵入者あるいは侵入物によってマイクロ波が完全に遮断されてしまうので、受信装置において送信波を全く受信することができず、よって受信信号が受信装置から判定装置に入力されないので、判定装置において侵入の有無を判定することができない。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、以下の点を目的とするものである。
(1)侵入者あるいは侵入物の位置を判別可能なマイクロ波センサを提供する。
(2)侵入検知における死角を解消することが可能なマイクロ波センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、監視エリアを挟んで対向し、各々に異なる周波数f1,f2の第1、第2のマイクロ波を送受信する第1、第2のマイクロ波送受信機と、正常時における前記第1、第2のマイクロ波送受信機の各受信信号の強度特性(正常時強度特性)をそれぞれ記憶し、前記第1、第2のマイクロ波送受信機の各受信信号及び前記正常時強度特性との比較に基づいて侵入位置を判定する判定装置とを具備する、という手段を採用する。
また、第2の解決手段として、上記第1の手段において、第1、第2のマイクロ波送受信機は、自らが送信する周波数のマイクロ波の反射波をも受信し、判定装置は、当該反射波のドップラ周波数に基づいて近接エリアにおける侵入を判定する、という手段を採用する。
さらに、第3の解決手段として、上記第1または第2の手段において、第1、第2のマイクロ波送受信機は、自らの送信信号を用いて対向する相手から受信した受信信号をスーパーヘテロダイン検波する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、監視エリアを挟んで対向し、各々に異なる周波数f1,f2の第1、第2のマイクロ波を送受信する第1、第2のマイクロ波送受信機と、正常時における前記第1、第2のマイクロ波送受信機の各受信信号の受信強度特性(正常時受信強度特性)をそれぞれ記憶し、前記第1、第2のマイクロ波送受信機の各受信信号及び前記正常時受信強度特性との比較に基づいて侵入位置を判定する判定装置とを具備するので、従来の一方向だけにマイクロ波を送信して受信するマイクロ波センサとは異なり、侵入者あるいは侵入物の位置を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るマイクロ波センサのシステム構成を示す図ロック図である。この図に示すように、本マイクロ波センサは、第1のマイクロ波送受信器A1、第2のマイクロ波送受信器A2、第1の信号処理装置B1、第2の信号処理装置B2及び判定装置Cから構成されている。
【0009】
第1のマイクロ波送受信器A1と第2のマイクロ波送受信器A2とは、所定の監視エリアを挟んで対向配置されており、互いにマイクロ波の発生及び受信機能を備えている。第1のマイクロ波送受信器A1は、図示するように所定周波数(24.15GHz)の第1の送信波を発生して第2のマイクロ波送受信器A2に向けて送信すると共に、第2のマイクロ波送受信器A2から送信された第2の送信波を受信する。
【0010】
すなわち、第1のマイクロ波送受信器A1は、上記第2の送信波に第1の送信波をミキシングして得られた信号(つまり、スーパーヘテロダイン検波方式に基づいて得られた中間周波数信号)を第1のIF信号として第1の信号処理装置B1に出力する。また、第1のマイクロ波送受信器A1は、上記第1のIF信号に加え、第1の送信波の反射波をも受信して当該反射波に含まれるドップラ信号を第1のドップラ信号として第1の信号処理装置B1に出力する。
【0011】
第2のマイクロ波送受信器A2は、上記第1の送信波とは異なる周波数(24.11GHz)の第2の送信波を発生して第1のマイクロ波送受信器A1に向けて送信すると共に、第1のマイクロ波送受信器A1から送信された第1の送信波を受信する。すなわち、第2のマイクロ波送受信器A2は、上記第1の送信波に第2の送信波をミキシングして得られた信号(つまり、スーパーヘテロダイン検波方式に基づいて得られた中間周波数信号)を第2のIF信号として第2の信号処理装置B2に出力する。また、第2のマイクロ波送受信器A2は、上記第2のIF信号に加え、第2の送信波の反射波をも受信して当該反射波に含まれるドップラ信号を第2のドップラ信号として第2の信号処理装置B2に出力する。
【0012】
ここで、第1のIF信号及び第2のIF信号の周波数は、第1の送信波の周波数(24.15GHz)と第2の送信波の周波数(24.11GHz)とをミキシング処理(乗算処理)して得られるので、第1の送信波の周波数と第2の送信波の周波数との周波数差、つまり40MHzとなる。
【0013】
第1の信号処理装置B1は、第1のマイクロ波送受信器A1から供給された第1のIF信号及び第1のドップラ信号に所定の信号処理(つまり、第1のIF信号及び第1のドップラ信号のデジタル信号への変換処理、デジタル信号化された第1のIF信号についてのレベル検出処理、第1のドップラ信号が示すドップラ周波数の検出処理等)を施し、その処理結果を第1の検出信号として判定装置Cに出力する。この第1の検出信号は、第1のIF信号のレベル(信号強度)及び第1のドップラ信号のドップラ周波数を示す信号である。
【0014】
第2の信号処理装置B2は、第2のマイクロ波送受信器A2から供給された第2のIF信号及び第2のドップラ信号に所定の信号処理(つまり、第2のIF信号及び第2のドップラ信号のデジタル信号への変換処理、デジタル信号化された第2のIF信号についてのレベル検出処理、第2のドップラ信号が示すドップラ周波数の検出処理等)を施し、その処理結果を第2の検出信号として判定装置Cに出力する。この第2の検出信号は、第2のIF信号のレベル(信号強度)及び第2のドップラ信号のドップラ周波数を示す信号である。
【0015】
判定装置Cは、第1の検出信号及び第2の検出信号並びに予め記憶している第1、第2のIF信号の強度特性に基づいて監視エリアに侵入者あるいは侵入物が存在するか否かを判定し、その判定結果を本マイクロ波センサの出力信号として外部に出力するものである。より具体的には、判定装置Cは、第1、第2の検出信号に含まれる第1のドップラ信号及び第2のドップラ信号に基づいて第1、第2のマイクロ波送受信器A1,A2の近傍エリアにおける侵入者あるいは侵入物の存在を判定し、第1、第2のマイクロ波送受信器A1,A2の近傍以外のエリアについては第1、第2の検出信号に含まれる第1、第2のIF信号のレベル及び予め記憶している第1、第2のIF信号の強度特性、つまり侵入者あるいは侵入物が存在しない場合(正常時)における第1、第2のIF信号の強度特性(正常時強度特性)に基づいて侵入者あるいは侵入物の存在を判定する。
【0016】
次に、このように構成された本マイクロ波センサの動作について、図2をも参照して詳しく説明する。
【0017】
図2は、上記第1、第2のIF信号のレベルデータに基づいて第1、第2のマイクロ波送受信器A1,A2間の位置(一方の第1のマイクロ波送受信器A1を基準とした位置)に応じた第1、第2のIF信号のレベル変化を示す特性図である。本マイクロ波センサでは、監視エリアの監視中において、第1のマイクロ波送受信器A1が第1の送信波を第2のマイクロ波送受信器A2に向けて常時送信し、また第2のマイクロ波送受信器A2が第2の送信波を第1のマイクロ波送受信器A1に向けて送信する。
【0018】
すなわち、本マイクロ波センサでは、監視時において、第1のマイクロ波送受信器A1は第2の送信波を常時受信し、また第2のマイクロ波送受信器A2は第1の送信波を常時受信する。なお、第1、第2の送信波は、上述したように周波数が異なっているので、混信することはない。
【0019】
そして、第1のマイクロ波送受信器A1は、第2の送信波の受信結果して第1のIF信号を第1の信号処理装置B1に出力し、また第2のマイクロ波送受信器A2は、第1の送信波の受信結果して第2のIF信号を第2の信号処理装置B2に出力する。
【0020】
また、第1のマイクロ波送受信器A1は、自らが送信する第1のIF信号の反射波をも受信することにより第1のドップラ信号を第1の信号処理装置B1に出力し、また第2のマイクロ波送受信器A2は、自らが送信する第2のIF信号の反射波をも受信することにより第2のドップラ信号を第2の信号処理装置B2に出力する。
【0021】
そして、第1の信号処理装置B1は、上述したように第1のマイクロ波送受信器A1から入力される第1のIF信号及び第1のドップラ信号を第1の検出信号に変換して判定装置Cに出力し、また第2の信号処理装置B2は、上述したように第2のマイクロ波送受信器A2から入力される第2のIF信号及び第2のドップラ信号を第2の検出信号に変換して判定装置Cに出力する。
【0022】
このような状況において、監視エリアに何らかの物あるいは人が侵入し、この物あるいは人が例えば図2に示す位置(X/4)に存在した場合、第1,第2の送信波(すなわち、第1,第2のIF信号)は、この物あるいは人の存在によって同一タイミング(より正確には略同一タイミング)で減衰するが、当該減衰直前の第1,第2の送信波(すなわち、第1,第2のIF信号)の信号レベルは、位置(X/4)の場合には異なる。
なお、第1、第2のマイクロ波送受信器A1,A2間の中間である位置(X/2)の場合、減衰直前の第1,第2の送信波(すなわち、第1,第2のIF信号)の信号レベルは、図2に示すように同一となる。
【0023】
判定装置Cは、第1,第2の検出信号に基づいて第1,第2のIF信号の減衰を検出することによって侵入物あるいは侵入者の存在を判定し、さらに上記減衰直前における第1,第2のIF信号を予め記憶している第1、第2のIF信号のレベルデータと比較照合することにより侵入物あるいは侵入者が第1、第2のマイクロ波送受信器A1,A2間のどの位置に存在するのかを判定する。
【0024】
一方、侵入物あるいは侵入者が第1のマイクロ波送受信器A1の近傍に存在する場合、第1のドップラ信号は、侵入物あるいは侵入者の動きに起因して侵入物あるいは侵入者が存在しない場合とは異なるドップラ周波数を示す。判定装置Cは、この第1のドップラ信号のドップラ周波数の変化を第1の検出信号に基づいて検出し、第1のマイクロ波送受信器A1の近傍に侵入物あるいは侵入者が存在すると判定する。
【0025】
また、第2のマイクロ波送受信器A2の近傍に侵入物あるいは侵入者が存在する場合には、第2のドップラ信号は、侵入物あるいは侵入者の動きに起因して侵入物あるいは侵入者が存在しない場合とは異なるドップラ周波数を示す。判定装置Cは、この第2のドップラ信号のドップラ周波数の変化を第2の検出信号に基づいて検出し、第2のマイクロ波送受信器A2の近傍に侵入物あるいは侵入者が存在すると判定する。
【0026】
このような本マイクロ波センサによれば、第1、第2の検出信号及び第1、第2のIF信号の強度特性(正常時強度特性)に基づいて侵入者あるいは侵入物の存在と侵入位置を判定することができる。すなわち、侵入者あるいは侵入物の存在を判定するだけではなく、侵入位置をも判定することにより、監視側では侵入者あるいは侵入物に対して迅速な対応をとることができる。
また、第1、第2のドップラ信号を用いることにより、第1、第2のマイクロ波送受信器A1の近傍においても侵入者あるいは侵入物の存在を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係わるマイクロ波センサのシステム構成を示す図ロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わるマイクロ波センサにおける第1、第2のIF信号の位置に応じたレベル変化を示す特性図である。
【符号の説明】
【0028】
A1…第1のマイクロ波送受信器、A2…第2のマイクロ波送受信器、B1…第1の信号処理装置、B2…第2の信号処理装置、C…判定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視エリアを挟んで対向し、各々に異なる周波数f1,f2の第1、第2のマイクロ波を送受信する第1、第2のマイクロ波送受信機と、
正常時における前記第1、第2のマイクロ波送受信機の各受信信号の強度特性(正常時強度特性)をそれぞれ記憶し、前記第1、第2のマイクロ波送受信機の各受信信号及び前記正常時強度特性との比較に基づいて侵入位置を判定する判定装置と
を具備することを特徴とするマイクロ波センサ。
【請求項2】
第1、第2のマイクロ波送受信機は、自らが送信する周波数のマイクロ波の反射波をも受信し、
判定装置は、当該反射波のドップラ周波数に基づいて近接エリアにおける侵入を判定することを特徴とする請求項1記載のマイクロ波センサ。
【請求項3】
第1、第2のマイクロ波送受信機は、自らの送信信号を用いて対向する相手から受信した受信信号をスーパーヘテロダイン検波することを特徴とする請求項1または2記載のマイクロ波センサ。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−99020(P2009−99020A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271200(P2007−271200)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000232357)横河電子機器株式会社 (109)
【Fターム(参考)】