説明

マイクロ波加熱ユニット

【課題】移動する吸着材をマイクロ波で加熱する方式のマイクロ波加熱式VOC吸着回収装置置において、吸着材の内部にマイクロ波が十分吸収され、加熱でき、かつマイクロ波の漏洩を防止し、簡便な機構で効率よくマイクロ波を加熱部位に導入し、吸着材をマイクロ波によって加熱するマイクロ波加熱ユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、マイクロ波加熱式VOC吸着回収装置おいて、金属性の箱型容器であるマイクロ波チャンバー2と、前記マイクロ波チャンバー2のひとつの壁面に接続したマイクロ波7を導入するための矩形の導波管3と、前記導波管3の接続方向と直角方向の前記マイクロ波チャンバー2に2箇所ある開口部2a、2aに挿通し、内部に粒状吸着材8が速度調節されて移動するマイクロ波7を透過する誘電体管4とからなることを特徴とするマイクロ波加熱ユニットの構成の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状吸着材をマイクロ波によって加熱して、粒状吸着材に吸着されたガスを脱離するマイクロ波加熱式VOC吸着回収装置おいて、マイクロ波照射によって吸着物質を脱離させるマイクロ波加熱ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から有機溶剤などを吸着させて回収する溶剤回収装置が開発され、その吸着材として活性炭などが用いられてきた。一般に吸着材はスチームを用いて加熱され、吸着されたガスを脱離していた。
【0003】
一般的な吸着回収装置はスチームを発生させるボイラーや水蒸気が液化したあとの水から溶剤を回収するために水処理設備等が必要で付帯装置が必要であり、大型になりやすく小型で簡便な装置が望まれていた。
【0004】
そこで、スチームを用いずマイクロ波によって吸着材を直接加熱することによって吸着された溶剤を脱離し回収する方法が開発されている。特許文献1の粉末状物質を熱処理処理するための方法及び装置は、粉末状物質を熱処理する方法において、粉末状物質を、キャリヤーガス中に分散させ、かつ加熱された反応器に連続的方法で導通し、前記反応器中で前記物質を熱処理し、かつついで冷却媒体により急冷し、かつ気−固分離装置中に捕集することを特徴とする。エネルギーを、化学的燃焼によるか、マイクロ波放射によるか、誘導によるか又は発熱反応により供給する。
【特許文献1】特表2005−534635号公報
【0005】
ここで、マイクロ波は被加熱対象物に吸収されて、そのとき電磁波のエネルギーは熱に変わり結果的に被加熱対象物を加熱する直接的な加熱法であるが、そのマイクロ波は加熱されやすい素材の場合、その対象物が大きいと対象物内部の深部にまでマイクロ波が届かないなどの問題がある。
【0006】
このようなマイクロ波の特徴からすると、速やかに加熱すべき固体の吸着材では大きな容積を一度に加熱することが困難である。そのため本発明では、粒状の被覆活性炭を少量ずつ移動させながら加熱させることに着目した。
【0007】
ただし、マイクロ波の粒状吸着材に対する吸収の深さを考慮した構造が必要であり、また移動しながら通過する粒状活性炭の出入り口でのマイクロ波の漏洩の防止や、簡便な機構で効率よく円滑にマイクロ波を加熱部位まで導入する工夫や、移動する吸着材を均一に加熱する工夫などが必要であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明では、移動する吸着材をマイクロ波で加熱する方式のマイクロ波加熱式VOC吸着回収装置置において、吸着材の内部にマイクロ波が十分吸収され、加熱でき、かつマイクロ波の漏洩を防止し、簡便な機構で効率よくマイクロ波を加熱部位に導入し、吸着材をマイクロ波によって加熱し、吸着材に吸着されたガスを脱離させるマイクロ波加熱ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、粒状吸着材8をマイクロ波7によって加熱して、粒状吸着材8に吸着されたガスを脱離するマイクロ波加熱式VOC吸着回収装置おいて、金属性の箱型容器であるマイクロ波チャンバー2と、前記マイクロ波チャンバー2のひとつの壁面に接続したマイクロ波7を導入するための矩形の導波管3と、前記導波管3の接続方向と直角方向の前記マイクロ波チャンバー2に2箇所ある開口部2a、2aに挿通し、内部に粒状吸着材8が速度調節されて移動するマイクロ波7を透過する誘電体管4とからなることを特徴とするマイクロ波加熱ユニットの構成、
前記粒状吸着材8が、絶縁体で被覆された粒状活性炭であることを特徴とする前記マイクロ波加熱ユニットの構成、
前記誘電体管4を覆うような金属性の管である減衰筒5が、前記マイクロチャンバー2から外に併設され、前記減衰筒5が前記マイクロ波チャンバー2に電気的に導通するように全円周で接触していることを特徴とする前記マイクロ波加熱ユニットの構成、
前記誘電体管4の直径が、前記粒状吸着材8におけるマイクロ波7の電力半減深度の2倍以下であることを特徴とする前記何れかに記載のマイクロ波加熱ユニットの構成、
前記導波管3の一方の長辺が、マイクロ波チャンバー2の内部に伸びた整合反射板6を備えることを特徴とする前記何れかに記載のマイクロ波加熱ユニットの構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上の構成であるから以下の効果が得られる。マイクロ波の特性上、金属で囲まれた閉空間に誘電損失を持つ物体が存在しているときには、金属壁面で乱反射しながら、最終的にすべて対象物体に吸収されマイクロ波のエネルギーはすべて熱に変換される。従って、基本的に誘電損失を持つ物体である吸着材にほとんどのエネルギーは吸収され、物体が加熱される。
【0011】
このことから、被覆活性炭が通過する直径がマイクロ波の電力半減深度の二倍程度の誘導体管は、マイクロ波を十分良く透過するテフロン(登録商標)やホウ珪酸ガラスでできていて、それを取り囲むようにマイクロ波が十分乱反射できるだけの空間を有した金属製のマイクロ波チャンバーを配置する基本構造において、乱反射しながら移動する活性炭の内部にマイクロ波は十分に吸収され均一な加熱ができる。
【0012】
また、誘導体管を覆うような減衰筒を、マイクロ波チャンバーの外部に設けたことにより、マイクロ波が減衰して外部に漏洩しないようにしたことから、特別な装置や複雑な機構を設けることなく、マイクロ波をマイクロ波の加熱部位を内包する金属製のマイクロ波チャンバー内に導入できる。
【0013】
さらに、整合反射板を設けたことにより、導波管の上下に電圧を生じながら進行してきたマイクロ波は、なだらかなインピーダンス変化を作りだしてマイクロ波を反射させることなく効率的に伝送できる。またこの整合反射板はマイクロ波をマイクロ波チャンバー内で散乱させることにも寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
絶縁体で被覆された粒状活性炭である粒状吸着材8をマイクロ波7によって加熱して、粒状吸着材8に吸着されたガスを脱離するマイクロ波加熱式VOC吸着回収装置おいて、
金属性の箱型容器であるマイクロ波チャンバー2と、前記マイクロ波チャンバー2のひとつの壁面に接続したマイクロ波7を導入するための矩形の導波管3と、
前記導波管3の接続方向と直角方向の前記マイクロ波チャンバー2に2箇所ある開口部2a、2aに挿通し、内部に粒状吸着材8が速度調節されて移動するマイクロ波7を透過する
前記粒状吸着材8におけるマイクロ波7の電力半減深度の2倍以下である直径の誘電体管4と、
前記マイクロチャンバー2から外に併設され、前記減衰筒5が前記マイクロ波チャンバー2に電気的に導通するように全円周で接触している前記誘電体管4を覆うような金属性の管である減衰筒5と、
前記導波管3の一方の長辺が、マイクロ波チャンバー2の内部に伸びた整合反射板6と
からなることを特徴とするマイクロ波加熱ユニット1の構成とすることで実現した。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明である別の実施例について説明する。図1は、本発明であるマイクロ波加熱ユニットの透視斜視図である。
【0016】
図1に示すように、本発明であるマイクロ波加熱ユニット1は、矩形の直方体の金属性のマイクロ波チャンバー2に、二つの開口部2a、2aがあり、その開口部2a、2aに円筒の誘電体管4、例えばガラス製チューブが挿入されていて、その直方体のマイクロ波チャンバー2の壁面にマイクロ波をチャンバー内に導入する導波管3が接続されている。
【0017】
導波管3の中をマイクロ波は進行するがこのとき矩形の導波管3の二つの長辺の間に電圧が掛かりながらマイクロ波は進行する。この電圧の掛かる方向とガラス製チューブの挿入方向を一致させる。ガラス製チューブ中を、粒状吸着材8、例えば、絶縁体で被覆された粒状の活性炭(以下、被覆活性炭という。)が移動し、マイクロ波照射によって被覆活性炭は加熱される。この被覆活性炭にはVOCなどのガスが吸着しており、マイクロ波で加熱されることで、吸着ガスは脱離しガラス製チューブに流されるキャリアガスによって系外に排出され、そこで冷却されて、凝集し溶剤が回収される。
【0018】
マイクロ波チャンバー2に接続される導波管3の一方の長辺がマイクロ波チャンバー2の内部に伸びて整合反射板6を形成している。マイクロ波は矩形の導波管3からチャンバーへ進行するとき大きくインピーダンスが変化し、通常大きくインピーダンスが変化する場所でマイクロ波7は反射しそれより先に進むマイクロ波7がうまく伝送できない(図2(B))。
【0019】
しかし、今回の発明を構成する整合反射板6は図2(A)に示されたように、上下に電圧を生じながら進行してきたマイクロ波7は、マイクロ波チャンバー2の内部に入った箇所で、一方の導波管3がまだ連続しているような作用を及ぼし、なだらかなインピーダンス変化を作りだしてマイクロ波7を反射させることなく効率的に伝送できる。
【0020】
またこの整合反射板6はマイクロ波7をマイクロ波チャンバー2内で散乱させることにも寄与し、ガラス製チューブのなかを流れる被覆活性炭を均一に加熱させることができる。
【0021】
ここでマイクロ波チャンバー2は200mm×200mm×300mmであり、チューブの外径は被覆活性炭の2.45GHzでのマイクロ波における電力半減深度から求めφ60mmとした。この被覆活性炭の内部にマイクロ波に影響されない光ファイバー温度計を挿入し加熱温度を測定した結果が図4である。
【0022】
この図4のグラフから、移動しながら加熱される被覆活性炭が、特に大きな加熱ムラを生じることなくなだらかな分布で加熱できていることが分かる。
【0023】
また、図3にあるように、マイクロ波チャンバー2を貫通する誘導体管4であるガラス製チューブには金属製の減衰管5がチャンバーと円周の全周にわたって電気的に接続されているように配置されている。この減衰管5の中を通過して外部に出ようとするマイクロ波7は、ガラス製チューブ内のマイクロ波吸収率の高い被覆活性炭を通過することによって十分に減衰し、外部にマイクロ波が漏洩することは無い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明であるマイクロ波加熱ユニットの透視斜視図である。
【図2】整合反射板の効果を示す模式図である。
【図3】マイクロ波加熱油ユニットを用いた照射試験の様子を示す図である。
【図4】本発明であるマイクロ波加熱ユニットによる加熱試験結果である。
【符号の説明】
【0025】
1 マイクロ波加熱ユニット
2 マイクロ波チャンバー
2a 開口部
3 導波管
4 誘電体管
5 減衰筒
6 整合反射板
7 マイクロ波
8 粒状吸着材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状吸着材をマイクロ波によって加熱して、粒状吸着材に吸着されたガスを脱離するマイクロ波加熱式VOC吸着回収装置おいて、
金属性の箱型容器であるマイクロ波チャンバーと、前記マイクロ波チャンバーのひとつの壁面に接続したマイクロ波を導入するための矩形の導波管と、前記導波管の接続方向と直角方向の前記マイクロ波チャンバーに2箇所ある開口部に挿通し、内部に粒状吸着材が速度調節されて移動するマイクロ波を透過する誘電体管とからなることを特徴とするマイクロ波加熱ユニット。
【請求項2】
前記粒状吸着材が、絶縁体で被覆された粒状活性炭であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波加熱ユニット。
【請求項3】
前記誘電体管を覆うような金属性の管である減衰筒が、前記マイクロチャンバーから外に併設され、前記減衰筒が前記マイクロ波チャンバーに電気的に導通するように全円周で接触していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマイクロ波加熱ユニット。
【請求項4】
前記誘電体管の直径が、前記粒状吸着材におけるマイクロ波の電力半減深度の2倍以下であることを特徴とする
請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロ波加熱ユニット。
【請求項5】
前記導波管の一方の長辺が、マイクロ波チャンバーの内部に伸びた整合反射板を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のマイクロ波加熱ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−279415(P2008−279415A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128345(P2007−128345)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(506149748)エンバイロメント・テクノロジー・ベンチャーズ株式会社 (11)
【Fターム(参考)】