説明

マイクロ波加熱装置

【課題】加熱室の上側に配設されるマイクロ波給電構成をコンパクト化し、加熱室からの熱によるマグネトロンの温度上昇を抑制して、マグネトロンの長寿命化を図ったマイクロ波加熱装置の提供を目的とする。
【解決手段】マグネトロン16からのマイクロ波を伝送する導波管21は、直角に屈曲した水平部42と鉛直部43とを有し、鉛直部43にマグネトロン16が水平接続され、加熱室11の天井面から上方に突出して形成された給電室24の上方端部に水平部42に接続されてマイクロ波が加熱室11に伝送するよう構成されており、導波管21およびマグネトロン16はともに、加熱室11から離間するように構成されているので、マグネトロン16に伝わる熱が減少することで、マグネトロン16の温度上昇が防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物に対してマイクロ波を放射して誘電加熱するマイクロ波加熱装置に関し、特に、被加熱物である食品を誘電加熱して調理する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波加熱装置において、電子レンジに代表されるマイクロ波を用いた加熱調理器の基本構成は、マイクロ波が外部に漏れないようにシールドされた加熱室と、マイクロ波を発生するマグネトロンと、マグネトロンで発生したマイクロ波を加熱室まで伝送する導波管とを備えている。
【0003】
加熱調理器において、上記の加熱室、マグネトロンおよび導波管以外の構成物に関しては、その目的に応じた方式に応じて各種の構成が用いられる。例えば、加熱室に対してどの方向からマイクロ波を入射させるかによって、横給電方式、下給電方式、上給電方式、上下給電方式などがあり、これらの給電方式に応じてそれぞれ構成が異なっている。
【0004】
加熱室の側面からマイクロ波を入射させる横給電方式の場合は、マイクロ波の分布が偏らないように被加熱物である食品自体を加熱室内において回転させる必要がある。このように横給電方式においては、いわゆるターンテーブル方式が用いられる。逆に、加熱室における底面からマイクロ波を入射させる下給電方式、天井面からマイクロ波を入射させる上給電方式、および底面と天井面の両方からマイクロ波を入射させる上下給電方式等の場合においては、被加熱物である食品を移動させずに、導波管と加熱室との結合部分に設けた給電部であるアンテナを回転させてマイクロ波を攪拌放射している。このようにアンテナを回転させる、いわゆる回転アンテナ方式は、下給電方式、上給電方式および上下給電方式に用いられている。
【0005】
電子レンジにおいて、どのような給電方式を選択するかは、電子レンジの機能だけではなく、他の機能、例えば、オーブン機能、グリル機能、スチーム機能等との併用を考慮して決定される。このように電子レンジの機能と他の機能とを併用させる場合、マイクロ波の給電構成の他に、例えばヒータ、水タンク、スチーム発生機構等を設ける必要がある。このため、それぞれの構成物を装置内部において効率的に配置する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、例えばオーブン、グリル、および100度を越える水蒸気である過熱水蒸気等を加熱調理器に用いる場合、加熱室内が高温になるため、被加熱物である食品を載置する皿の材質としては耐熱性の高い導体製の皿が使用される場合がある。このように導体製の皿を使用した場合、マイクロ波が導体製の皿で反射されるため、マイクロ波が透過するガラスやセラミック等の誘電体製の皿を用いた場合とは加熱室内におけるマイクロ波の分布が異なってくる。
【0007】
また、導体製の皿の代わりとして、導体製の網を使用する場合もある。導体製の網を使用する場合には、網目が波長と比べてある程度大きくなるとマイクロ波が通過するようになるため、網形状によっても加熱室内のマイクロ波の分布は変化する。
【0008】
さらに、最近においては、電子レンジの機能と他の機能とが互いに協動して調理する必要性が高まってきている。例えば、大きな食品を焼く場合、又は冷凍状態の食品を焼く場合等においては、ヒータによる加熱だけでは食品の表面を加熱するだけであるため、食品の内部まで火が通らないことがある。このようなヒータだけの調理器としては、加熱源と
してヒータしか持たないオーブントースターがこれに該当する。このようなオーブントースターを用いてヒータだけで食品の内部まで加熱するためには、食品の表面を焦がさないように、火力(出力)を下げて低温度で長時間かけて熱伝導により徐々に加熱するしか方法がない。
【0009】
一方、誘電加熱する電子レンジを用いて被加熱物を加熱することにより、被加熱物である食品が誘電体であるため、マイクロ波が食品の内部まで浸透して、食品の内部を加熱することが可能となる。このように、電子レンジを用いることにより、短時間で食品の内部まで火を通すことが可能となる。したがって、食品の内部を加熱する電子レンジの機能と、食品の表面を焼くヒータの機能とを協動させることにより、大きな食品や冷凍状態の食品を短時間で美味しく焼き上げることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58−181289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の加熱調理器において、マイクロ波の高周波加熱と同時に、食品の表面を焼く輻射熱または熱風を用いたヒータ加熱を行う場合、高温加熱中の加熱室の影響を受けてマイクロ波の供給源であるマグネトロンが運転動作中に温度上昇するという問題がある。設備機器としてキッチンにビルトインされる構成の加熱調理器においては特に、加熱室をできるだけ大きくするとともに、使用者が操作しやすくするために操作盤を加熱室の上方に設けるため、マイクロ波の給電構成や他の構成(例えば、ヒータの駆動回路や冷却構成)も同様に加熱室の上方にまとめてコンパクトに実装することが求められる。この場合、高温になる加熱室の上方にマイクロ波の給電構成が配置されるので、マイクロ波給電構成とヒータ電力供給構成とを共存させて同時の加熱運転を実施する際に、マグネトロンの温度上昇防止と装置の小型化の両立を図ることが難しいという課題があった。
【0012】
図10は、一般的なマイクロ波給電構成を加熱室の上側に設けた加熱調理器に対して、ヒータを有するヒータ電力供給構成をさらに設けた場合の概略構成を示す正面断面図である。図10に示す加熱調理器において、加熱調理器の外観を構成する筐体100の内部には被加熱物である食品を誘電加熱するための加熱室101が設けられている。加熱室101の内部における上下位置にヒータ102が設けられている。また、上側のヒータ102の上方であり、且つ加熱室101の上方には、マグネトロン103、導波管104、回転アンテナ105、モータ106などのマイクロ波の給電構成が配置されている。
【0013】
このように構成された従来の加熱調理器においては、加熱室101から放出される熱が導波管104を伝導してマグネトロン103に伝わり、マグネトロンが加熱され易い構造を有している。その結果、従来の加熱調理ではマグネトロン103が自身の運転による発熱に加えて受熱することで容易く温度上昇してしまい、マグネトロン103の故障が生じたり、寿命が短くなったり、あるいはこれらを防止するために出力低下せざるを得なくなるという課題を有していた。また、従来の加熱調理器においては、マグネトロン103の温度上昇により、マイクロ波による加熱効率が低下するという問題も有していた。さらに、加熱室101の上側の空間にはマイクロ波給電構成が配設されているため、加熱室101の上側にマグネトロン103を図10のように垂直接続すると、高温空気の上昇によってマグネトロン103がより加熱されやすくなるとともに、加熱室101の上側にはかなりの高さの空間が必要となり、筐体100のサイズが大型とならざるを得ないという問題も有していた。
【0014】
本発明は、加熱室の上側に配設されるマイクロ波給電構成のコンパクト化を図り、小型のマイクロ波加熱装置を提供するとともに、加熱室からの熱によるマグネトロンの温度上昇を抑制して、マグネトロンの長寿命化、出力低下防止と、加熱効率向上を図ったマイクロ波加熱装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来の課題を解決するために、本発明のマイクロ波加熱装置は、被加熱物を収納して当該被加熱物にマイクロ波を放射して高周波加熱するための加熱室と、前記加熱室内で前記被加熱物を高周波加熱と同時に輻射熱または熱風の少なくとも一つで加熱することが可能な高温加熱手段と、前記加熱室の天井面から上方に突出して形成されたマイクロ波の給電室と、前記加熱室において前記被加熱物を高周波加熱するためのマイクロ波を生成するマイクロ波生成部と、前記給電室と前記マイクロ波生成部とを連結する導波管とを備え、前記マイクロ波生成部は前記加熱室の上方に設けられ、前記導波管は直角に屈曲した水平部と鉛直部とを有して前記鉛直部に前記マイクロ波生成部が水平接続され、前記給電室の上方端部に開口した給電口が前記水平部に接続されるとともに、前記導波管および前記マイクロ波生成部はともに、前記加熱室から離間しているように構成されたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のマイクロ波加熱装置は、加熱室の天井面に給電室を設けてそこに導波管を接続し、導波管およびマイクロ波生成部がともに、加熱室の天井面から離間しているように構成されているので、高温加熱中の加熱室天井面からマイクロ波生成部が熱を受けにくくなり、加熱室から導波管を経てマイクロ波生成部に伝わる熱も減少することで、マイクロ波生成部の温度上昇が防止される。したがって、マイクロ波生成部であるマグネトロンが加熱室の上方に設けられたコンパクト構成でも、加熱室からマグネトロンへの伝熱を減少させてマグネトロンの長寿命化、パワーダウン防止、出力効率向上が図れる。さらに、本発明のマイクロ波加熱装置においては、導波管の鉛直伝送路に対してマイクロ波生成部、例えばマグネトロンを横向きに水平接続しているため、装置全体としての高さ方向のサイズをコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施の形態1の加熱調理器における主要部の内部構成を示す正面断面図
【図2】本発明に係る実施の形態1の加熱調理器における導波管およびアンテナ室を示す斜視図
【図3】本発明に係る実施の形態1の加熱調理器におけるマグネトロンの動作点を示すインピーダンスチャート
【図4】本発明に係る実施の形態2の加熱調理器における主要部の内部構成を示す正面断面図
【図5】本発明に係る実施の形態2の加熱調理器における主要部の側面断面図
【図6】本発明に係る実施の形態2の加熱調理器における導波管およびアンテナ室を示す斜視図
【図7】本発明に係る実施の形態2の加熱調理器における加熱室の天井面に設けられた給電部、加熱部等を示す裏面図
【図8】本発明に係る実施の形態3の加熱調理器における導波管およびアンテナ室を示す斜視図
【図9】本発明に係る実施の形態4の加熱調理器におけるマイクロ波給電構成を示す正面断面図
【図10】加熱調理器における一般的なマイクロ波給電構成の概略構成を示す正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の発明は、被加熱物を収納して当該被加熱物にマイクロ波を放射して高周波加熱するための加熱室と、前記加熱室内で前記被加熱物を高周波加熱と同時に輻射熱または熱風の少なくとも一つで加熱することが可能な高温加熱手段と、前記加熱室の天井面から上方に突出して形成されたマイクロ波の給電室と、前記加熱室において前記被加熱物を高周波加熱するためのマイクロ波を生成するマイクロ波生成部と、前記給電室と前記マイクロ波生成部とを連結する導波管とを備え、前記マイクロ波生成部は前記加熱室の上方に設けられ、前記導波管は直角に屈曲した水平部と鉛直部とを有して前記鉛直部に前記マイクロ波生成部が水平接続され、前記給電室の上方端部に開口した給電口が前記水平部に接続されるとともに、前記導波管および前記マイクロ波生成部はともに、前記加熱室から離間しているように構成されたものである。
【0019】
本発明によれば、加熱室の天井面に給電室を設けてそこに導波管を接続し、導波管およびマイクロ波生成部がともに、加熱室の天井面から離間しているように構成されているので、高温加熱中の加熱室天井面からマイクロ波生成部が熱を受けにくくなり、加熱室から導波管を経てマイクロ波生成部に伝わる熱も減少することで、マイクロ波生成部の温度上昇が防止される。したがって、マイクロ波生成部であるマグネトロンが加熱室の上方に設けられたコンパクト構成でも、加熱室からマグネトロンへの伝熱を減少させてマグネトロンの長寿命化、パワーダウン防止、出力効率向上が図れる。さらに、本発明のマイクロ波加熱装置においては、導波管の鉛直伝送路に対してマイクロ波生成部、例えばマグネトロンを横向きに水平接続しているため、装置全体としての高さ方向のサイズをコンパクトにすることができる。
【0020】
第2の発明は、特に第1の発明において、導波管における対向する面に、マイクロ波が漏洩しない直径を有する貫通孔を設けた構成にすることにより、貫通孔の開口により導波管壁面の伝熱抵抗が大きくなるとともに、貫通孔を通じての空気の移動が可能になるので、この空気移動による冷却作用が生じる。したがって、マグネトロンが加熱室の上方に設けられたコンパクト構成でも、高温加熱中の加熱室からマグネトロンへの伝熱を減少させてマグネトロンの温度上昇を防止できる。
【0021】
第3の発明は、特に第2の発明において、冷却ファンを有し、前記冷却ファンにより形成された冷却風が貫通孔を通過するよう構成されたことにより、導波管の貫通孔を連通する冷却通路に冷却ファンによって冷却風を強制的に流すことができるので、マグネトロンや導波管の冷却効果が向上し、マグネトロンが加熱室の上方に設けられたコンパクト構成でも、マグネトロンの温度上昇を防止し、長寿命化、パワーダウン防止、出力効率向上が図れる。また、マグネトロンは一般的に温度が低いほうが効率が良いので、これによってマグネトロンによるマイクロ波の加熱効率が向上する。
【0022】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1つの発明の導波管を、水平部により形成されるマイクロ波の水平伝送路における水平伝送距離が、当該導波管内を伝送するマイクロ波波長の1/2より長くなるよう構成することにより、導波管における屈曲位置から給電口までの水平伝送距離が当該導波管内を伝送するマイクロ波波長の1/2より長いため、マイクロ波生成部と給電部との伝送の結合が安定し、負荷変化等の運転状態が変動しても高い効率で加熱を維持することができる。
【0023】
第5の発明は、特に第2〜4のいずれか1つの発明の導波管に設けた貫通孔を、開口部が直角に折り返された形状の突き出し孔状に形成することにより、導波管の貫通孔が突き出し孔状に形成されているので、折り返し部分の放熱フィン効果で導波管の冷却効果が向上し、導波管からマグネトロンに伝わる熱が減少する。
【0024】
第6の発明は、特に第1〜5のいずれか1つの発明において、導波管の水平伝送路に結合され、前記導波管を伝送したマイクロ波を加熱室の内部に放射するための回転アンテナ部を給電室内に備え、高周波加熱と高温加熱との同時加熱運転時に前記回転アンテナ部を回転駆動するように構成されたことにより、回転アンテナの位置によっては電気的結合の整合性が良化するので、マグネトロンから加熱室に放射されるマイクロ波の反射率が良化し、マグネトロンでの自己発熱が回転アンテナ部の回動によって低減する。したがって、マグネトロンの温度上昇が防止され、長寿命、出力低下防止、効率向上が図れる。
【0025】
以下、本発明のマイクロ波加熱装置に係る好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態のマイクロ波加熱装置においては加熱調理器を用いて説明するが、加熱調理器は例示であり、本発明のマイクロ波加熱装置としては加熱調理器に限定されるものではなく、高周波加熱である誘電加熱を利用した加熱装置、生ゴミ処理機、あるいは半導体製造装置等の加熱装置を含むものである。したがって、本発明は、以下の実施の形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成を含むものである。
【0026】
(実施の形態1)
本発明に係る実施の形態1としては、マイクロ波加熱装置における加熱調理器について説明する。なお、以下の各実施の形態においては、加熱調理器の加熱部として少なくとも1つのヒータを備える電子レンジを例として説明する。
【0027】
図1は、本発明に係る実施の形態1のマイクロ波加熱装置としての加熱調理器における主要部の内部構成を示す正面断面図である。図1に示す加熱調理器において、加熱調理器の外観を構成する筐体10の内部には被加熱物である食品15を誘電加熱(高周波加熱)するための加熱室11が設けられている。即ち、加熱室11においては、被加熱物である食品15が収納されて、当該食品15にマイクロ波を放射して高周波加熱している。表面がホーロー塗装された鋼鈑により形成された加熱室11の内部には、加熱室内を高温にするための高温加熱手段としての輻射加熱部である2つのヒータ12,13が設けられている。一方のヒータ12は加熱室11の天井面側(上側)に配置されており、他方のヒータ13は加熱室11の底面側(下側)に配置されている。加熱室11の内部には、ステンレスの棒材を縦横に組み合わせて溶接して形成された焼き網14が脱着可能に設けられている。焼き網14は加熱室11における複数段の所望の位置に装着できる構成である。焼き網14の上に載せられた、被加熱物である食品15は、上ヒータ12と下ヒータ13とにより挟まれて上下方向から輻射加熱される。加熱室11を構成する壁面と壁面との間の接続部分の角は、曲面により構成されている。また、加熱室11の底面の全体は大きな曲率半径を有する曲面形状に形成されている。
【0028】
なお、実施の形態1の加熱調理器においては、壁面がホーロー塗装を行った鋼鈑で形成した例で説明するが、他の耐熱性を有する塗装を行った鋼鈑で形成してもよい。また、壁面材質としてはステンレス、PCM鋼板(Pre−coated metal)でもよい。実施の形態1においては、焼き網14はステンレスの棒材を組み合わせて形成したが、めっき処理を施した鋼材等を用いて形成することもできる。
【0029】
図1に示すように、加熱室11の天井面における中央付近には給電室24が設けられており、給電室24の内部には電波撹拌手段としての回転アンテナの給電部22が配置されている。給電室24の壁面は、給電部22から放射されたマイクロ波を反射する材料で構成されており、給電室24の外側へマイクロ波が漏洩しないよう遮蔽構造を有している。回転アンテナの給電部22は導波管21に形成された給電口25から導出するよう設けられている。導波管21は、マイクロ波生成部であるマグネトロン16からのマイクロ波を給電部22に伝送する。マグネトロン16は、加熱室11において被加熱物である食品1
5を高周波加熱するためのマイクロ波を生成している。給電部22に伝送されたマイクロ波は、加熱室11内に放射される。マグネトロン16は、加熱室11の上側に配置された導波管21おける右側端部(図1参照)に配置されており、導波管21に対してマグネトロン16の発振アンテナであるマグネトロン出力部44が横向きに挿入されている。
【0030】
上記のように構成された実施の形態1の加熱調理器においては、1つの加熱手段としてマイクロ波による誘電加熱部を有し、他の加熱手段として上下ヒータ12,13による輻射による高温加熱手段としての輻射加熱部を有している。このように、実施の形態1の加熱調理器は、誘電加熱部と高温加熱手段とを併用することにより、加熱室11内の被加熱物である食品15に対する所望の加熱調理を行う構成である。なお、実施の形態1においては、一つの加熱手段としてマイクロ波による誘電加熱部を有し、他の加熱手段として上下ヒータ12,13による輻射加熱部を有する構成で説明するが、上記輻射加熱部のような高温加熱手段の代わりに、加熱室内に熱風を循環させて加熱調理を行う対流加熱部を設けてもよい。この対流加熱部としては、加熱室の背面側に循環ファンと循環ヒータとを設けて、加熱室内の空気を高温度に加熱して循環させる構成である。勿論、誘電加熱部、輻射加熱部および対流加熱部の3つの加熱手段を設けて加熱調理を行うよう構成してもよい。
【0031】
実施の形態1における輻射加熱部である上下ヒータ12,13は、充填材とともに電熱線を金属パイプ内に封止して構成されている。加熱室11内には上ヒータ12の表面に接触する上ヒータ熱電対17が設けられている。上ヒータ熱電対17は、給電部22から放射されるマイクロ波の影響を受けないように、金属管で覆われており、上ヒータ12の温度検出手段として機能する。また、加熱室11内には下ヒータ13の表面に接触する下ヒータ熱電対18が設けられており、上ヒータ熱電対17と同様の構成を有している。下ヒータ熱電対18は下ヒータ13の温度検出手段として機能する。加熱室11の壁面には加熱室内の温度検出手段としてサーミスタ19が固定されている。上ヒータ熱電対17と下ヒータ熱電対18とサーミスタ19は、制御手段である制御部20に電気的に接続されている。制御部20は、上ヒータ熱電対17と下ヒータ熱電対18とサーミスタ19からのそれぞれの検出信号に基づき、上ヒータ12と下ヒータ13への通電量を制御している。このように、実施の形態1の加熱調理器においては、加熱室11に対する加熱量が設定された温度となるように精度高く加減制御されている。
【0032】
加熱室11の内部において、被加熱物である食品15に対して上方からの輻射熱により加熱する輻射加熱部の上ヒータ12は、給電室24の直下以外の領域に配置されている。即ち、給電室24内の回転アンテナである給電部22から放射されたマイクロ波により、上ヒータ12が直接的に照射されることがなく、被加熱物である食品15が直接的に照射される。
【0033】
加熱室11の上側に設けられた導波管21は、水平方向に延設された水平部42と、鉛直方向に延設された鉛直部43とで構成されている。即ち、導波管21は、水平部42により形成される水平伝送路(42)と、鉛直部43により形成される鉛直伝送路(43)とにより直角に折れ曲がったL字形状の内部通路(伝送路)を有している。マイクロ波生成部であるマグネトロン16は、導波管21の鉛直部43に対して発振アンテナであるマグネトロン出力部44が水平方向に挿入されて接続されている。したがって、マグネトロン16が導波管21に対して横向きに接続(水平接続)されているため、鉛直方向の高さ寸法は、導波管21に対してマグネトロン16を縦方向に接続(鉛直接続:図10参照)した場合に比べて短くなっている。
【0034】
上記のようにL字形状の内部通路(伝送路)を有する導波管21の水平部42(水平伝送路)に形成された給電口25には、回転アンテナである給電部22が設けられている。
給電部22は、アンテナ部22aと軸部22bで構成されている。給電部22の軸部22bはモータ23に接続されている。モータ23の駆動により軸部22bが回動されて、アンテナ部22aが回転する構成である。給電部22は、導波管21の水平伝送路(42)に結合されており、導波管21を伝送したマイクロ波が給電部22のアンテナ部22aにより加熱室11内に放射される。
【0035】
加熱室11の天井面の略中央には、回転するアンテナ部22aを収納するドーム形状の給電室24が設けられている。給電室24は、下端部分が円形に広がった形状を有しており、円錐台形形状である。給電室24は加熱室11の天井面を絞り加工により外側に突出させて円錐台形形状に形成されている。導波管21の水平部42の下面に形成された給電口25は、給電室24の上端部に形成された開口に接続されており、導波管21と給電部22との結合部分は、給電口として所定の直径が確保されている。上記のように、給電室24は、加熱室11の天井面に設けられ、アンテナ部22aから水平方向に放射されたマイクロ波を反射するよう構成されている。また、給電室24は、アンテナ部22aからのマイクロ波が加熱室内に放射されるように、給電室24の下端部分が開放されている。
【0036】
図2は、実施の形態1の加熱調理器における導波管21および給電室24を示す斜視図である。図2に示すように、導波管21は、水平伝送路を形成する水平部42と、鉛直伝送路を形成する鉛直部43とを有しており、伝送路である内部通路がL字形状に直角に折れ曲がった屈曲形状を有している。即ち、水平伝送路(42)の延設方向(水平方向)と、鉛直伝送路(43)の延設方向(鉛直方向)とは直交している。上記のように、導波管21は、直角に屈曲した水平伝送路(42)と鉛直伝送路(43)とを有し、鉛直伝送路(43)にマイクロ波生成部であるマグネトロン16が水平接続されており、マグネトロン16からのマイクロ波を水平伝送路(42)に伝送している。
【0037】
実施の形態1においては、水平部42と鉛直部43との接続部位における屈曲位置C(図2参照)から、給電口25の中心までの水平伝送距離をH(図2参照)とすると、実施の形態1においては、距離Hが約135mmに設定されている。なお、水平伝送距離Hとは、導波管21内の伝送路における屈曲位置Cから給電口25の中心までの水平伝送路の延設方向(図1における左右方向)に沿った水平距離のことである。
【0038】
導波管21の伝送路である内部通路の幅aは約80mmであり、導波管21の水平部42の内部通路の高さbは約16mmである。なお、内部通路の幅aおよび水平部42における内部通路の高さbとは、導波管21の内面側となる伝送路の長さを示している。
【0039】
前述のように、導波管21の鉛直部43に対してはマグネトロン16が横向きで水平接続で固定されている。即ち、マグネトロン16の発振アンテナであるマグネトロン出力部44が、導波管21の鉛直部43の側面壁(右側面壁)に形成された開口部29に横向きに挿入されて装着されている。導波管21において、屈曲位置Cからマグネトロン16のマグネトロン出力部44の中心までの鉛直伝送距離(鉛直方向の長さ)をV(図2参照)とすると、実施の形態1における鉛直伝送距離Vは、約15mmに設定されている。
【0040】
実施の形態1の加熱調理器において、マグネトロン16は発振周波数が約2450MHzのものが使用されている。このため、導波管21内の管内波長をλgとすると、λgは約190mmになり、半波長(λg/2)の長さは約95mmとなる(λg/2=95mm)。したがって、実施の形態1の加熱調理器における導波管21の構成は、水平部42における実質的な伝送路の長さである水平伝送距離H(約135mm)が半波長(λg/2)よりも長く(H>λg/2)なっている。また、鉛直部43における実質的な伝送路の長さである鉛直伝送距離V(約15mm)は1/4波長(λg/4)よりも短く(V<λg/4)なっている。
【0041】
導波管21から伝送されたマイクロ波を攪拌放射する給電部22のアンテナ部22aは、金属製で構成され、厚さ1mmの約φ62の直径を有する略円板形状を有している。モータ23の回転をアンテナ部22aに伝動する軸部22bは、アンテナ部22aにおける円板中心から約12mm偏心した位置に接続されている。軸部22bにおいて、モータ23側の部分はフッ素樹脂で構成されており、アンテナ部22a側の部分は金属で構成されている。軸部22bにおける金属部分は、導波管21の内部に約11mm入っており、導波管21の給電口25を通って給電室24側に約15mm突出している。また、軸部22bにおける金属部分と給電口25との隙間は、5mm以上の距離が確保されている。
【0042】
図1に示すように、加熱室11の天井面において、給電室24の下端となる開口部分にカバー27が設けられている。カバー27は、マイカ製であり、給電部22のアンテナ部22a等に対して加熱室11内の食品から飛び散った汚れ等が付着しないように設けられている。カバー27は、加熱室11の天井面に設けられた絶縁体のフック26に脱着可能に装着されている。なお、カバー27は低損失誘電材料であるマイカを用いた例で説明したが、マイカに限定されるものではなく、セラミックやガラス等の材料を用いても同様の効果を奏する。
【0043】
加熱室11内の上部に設けられた上ヒータ12は、給電部22からのマイクロ波により直接的に加熱されないように、給電室24の下端となる開口部分の直下は避けて配置されている。このように上ヒータ12が給電室24の開口部分を迂回するよう配置されているため、上ヒータ12の中央部分には空隙部28が形成されている。したがって、給電部22から食品15の方向に向かって直接に放射されたマイクロ波M(図1参照)は、上ヒータ12により妨げられることがない。このように、実施の形態1の加熱調理器においては、給電部22から放射されたマイクロ波が上ヒータ12を直接加熱することがなく、損失が防止されており、加熱効率の向上が図られている。
【0044】
実施の形態1の加熱調理器においては、導波管21が直角に折れ曲がったL字形状を有しており、マグネトロン16が導波管21に対して横向きに接続されている。即ち、導波管21の鉛直壁面に対してマグネトロン16のマグネトロン出力部44の導出部分が直交するよう取り付けられている。このため、マグネトロン16が接続された導波管21の配置空間は、上下方向である鉛直方向の寸法(高さ)が小さくなる。例えば、前述の図10に示した構成におけるマグネトロン103が鉛直方向に接続された導波管104の配置空間における高さに比べて、実施の形態1におけるマグネトロン16が接続された導波管21の配置空間における高さは小さくなっている。また、マグネトロン16が導波管21に対して横向きに接続されているため、マグネトロン16より上方の空間に余裕があり、他の構成物を配置することが可能となる。
【0045】
したがって、実施の形態1の加熱調理器においては、マグネトロン16、導波管21、および給電室24等で構成されるマイクロ波給電構成をコンパクトに形成することが可能となる。また、キッチンにビルトインされる構成にする場合に、操作盤を加熱室の上方に設けるとともに、電気回路やマイクロ波給電構成、冷却構成などの他の構成も加熱室の上方にまとめてコンパクトに実装する空間が得られやすくなる。
【0046】
実施の形態1の加熱調理器においては、加熱室11の天井面から上方に突設された給電室24の突出端部の開口に導波管21の水平部42が接続され、導波管21の鉛直部43が屈曲位置Cから上方に延設され、加熱室11の天井面から遠ざかるように配置されている。そして実施の形態1の加熱調理器においては、加熱室11の天井面に給電室24を形成し、その給電室24の上方端部に導波管21が接続されている。このため、導波管21は給電室24を介して加熱室11と結合されている。したがって、導波管21と給電室2
4との接触部分は、導波管を加熱室の天井面に直接接触させた場合に比して、小さな面積とすることが可能となり、水平部42の半分以上を他の部材と接触しないように構成できる。また、導波管21は加熱室11から離間するように構成されて両者の間には空間が形成されるため、高温加熱中の加熱室11の天井面から導波管21に対して直接的に熱伝導されることが防止されている。また、加熱室11から給電室24、導波管21を介してマグネトロン16に伝導する熱量においても大幅に減少している。さらに、マグネトロン16も加熱室11から離間するように構成されているため、加熱室11の天井面から直接的に熱伝導されることが防止されている。
【0047】
これにより、高温加熱中の加熱室天井面からマグネトロンが熱を受けにくくなり、加熱室から導波管を経てマグネトロンに伝わる熱も減少することで、マグネトロンの温度上昇が防止される。その結果、マグネトロンが加熱室の上方に設けられたコンパクト構成でも、加熱室からマグネトロンへの伝熱を減少させてマグネトロンの長寿命化、パワーダウン防止、出力効率向上が図れる。さらに、本発明のマイクロ波加熱装置においては、導波管の鉛直伝送路に対してマイクロ波生成部、例えばマグネトロンを横向きに水平接続しているため、装置全体としての高さ方向のサイズをコンパクトにすることができる。
【0048】
実施の形態1の加熱調理器においては、導波管21の水平部42における水平伝送距離H(図2参照)を長く設定することにより、加熱室11から給電室24および導波管21を介してマグネトロン16に伝導する熱量をさらに抑制することができる。マグネトロン16は、一般的に低い温度の方が効率が高いため、マグネトロン16の出力効率が向上する構成となる。
【0049】
実施の形態1の加熱調理器においては、導波管21の両側の対向する壁面であるE面には多数の貫通孔36a,36bを有する通気領域21aが形成されている。図2においては、一方の壁面における複数の貫通孔36aで構成された通気領域21aのみを記載しているが、この一方の壁面に隠れてはいるが対向する他方の壁面にも同様に複数の貫通孔36bで構成された通気領域21aが形成されている。通気領域21aは、導波管21の外部へマイクロ波が漏洩しないように、直径約2〜5mmの小さい貫通孔36a,36bが多数個配列された壁面の領域である。このように、導波管21の壁面に複数の貫通孔36a,36bを有する通気領域21aを設けることにより、導波管21の壁面における伝熱抵抗が大きくなるとともに、通気領域21aにおける貫通孔36a,36bを通って空気の移動が可能になる。この結果、導波管21において空気移動が生じることにより、冷却作用が発生し、加熱室11から導波管21を介してマグネトロン16に伝わる熱が低減される。したがって、マグネトロン16が加熱室11の上方に設けられたコンパクト構成でも、高温加熱中の加熱室11からマグネトロン16への伝熱を減少させてマグネトロン16の温度上昇を防止し、マグネトロン16の長寿命化を図ることができる。また、マグネトロン16は、一般的に低い温度の方が効率が高いため、実施の形態1の加熱調理器は、マグネトロン16によるマイクロ波の加熱効率が向上する構成となる。
【0050】
また、実施の形態1の構成においては、導波管21の水平部42の水平伝送距離Hを半波長(λg/2)より長く設定しているため、マグネトロン16と給電部22との結合状態を安定させることができ、負荷変化等の運転状態が変動した場合であっても、高い効率を維持できる構成となる。また、長い水平伝送路を有する導波管により加熱室からマグネトロンへ伝熱が抑制され、マグネトロンが加熱室の上方に設けられたコンパクト構成でも、マグネトロンの温度上昇を防止できる。
【0051】
さらに、実施の形態1の加熱調理器においては、導波管21におけるマグネトロン出力部44の中心から屈曲位置Cまでの鉛直伝送距離Vを1/4波長(λg/4)より短く設定することにより、伝送効率を向上させることができる。導波管21において、鉛直伝送
距離Vを発振周波数の1/4波長以下とすることにより、マグネトロン出力部44から屈曲位置Cを含む屈曲部分までの領域において電界が逆方向になることがなく、導波管21の伝送路内において複雑な反射の発生を防止することができる。この結果、実施の形態1の加熱調理器においては、高い発振効率となり、加熱効率の高い装置となる。
【0052】
実施の形態1の加熱調理器においては、導波管21の水平部42(水平伝送路)に形成された給電口25には、給電室24に収納された回転アンテナとして、アンテナ部22aとモータ23に接続された軸部22bが設けられている。そして、マイクロ波による誘電加熱(高周波加熱)と高温加熱との同時加熱運転時に、モータ23の駆動により軸部22bが回動されて、アンテナ部22aが回転駆動するように構成されている。このときのマグネトロンの動作点を図3のインピーダンスチャートに示す。
【0053】
図3に示すように、回転アンテナの位置(アンテナ部22aの回転角度)によって動作点が異なる。インピーダンスチャート上に「50」と表示された中心点からの距離で、A点で示した回転角度では最も整合が悪く、B点の回転角度では最も電気的結合の整合性が良化するように動作点が変化する。このように、同時加熱運転時に回転アンテナを回転駆動することにより、その位置によっては電気的結合の整合性が良化するので、マグネトロン16から加熱室に放射されるマイクロ波の反射率が良化し、マグネトロンでの自己発熱が回転アンテナ部の回動によって低減する。したがって、マグネトロン16の温度上昇が防止され、長寿命化、パワーダウン防止、出力効率向上が図れる。
【0054】
なお、実施の形態1の加熱調理器においては、一つの加熱手段としてマイクロ波による誘電加熱部を有し、他の加熱手段として上下ヒータ12,13による輻射による高温加熱手段を併用した構成で説明したが、本発明はこのような構成に限定されず、他の高温加熱手段として加熱室内に熱風を循環させて加熱調理を行う対流加熱部を設けてもよい。さらに、マグネトロンを用いた誘電加熱部と共に、高温加熱手段として輻射加熱部と対流加熱部の両方を設けた構成としてもよい。このように構成された本発明のマイクロ波加熱装置は、誘電加熱部の構成において、加熱室11から給電室24および導波管21を介してマグネトロン16に伝導する熱量が大幅に低減されているため、他の加熱手段を用いたとしても、マグネトロン16の温度上昇を防止して長寿命化を図ることができるものとなる。
【0055】
(実施の形態2)
以下、本発明に係る実施の形態2の加熱調理器について説明する。実施の形態2の加熱調理器において、前述の実施の形態1の加熱調理器と大きく異なる点は、加熱室にマイクロ波を給電するための構成である。
【0056】
以下の実施の形態2の加熱調理器の説明においては、実施の形態1の加熱調理器における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1の説明を適用する。図4は実施の形態2の加熱調理器における主要部の内部構成を示す正面断面図である。図5は、図4に示した加熱調理器の側面断面図である。
【0057】
図4および図5に示すように、実施の形態2の加熱調理器において、マグネトロン16からのマイクロ波を伝送する導波管21は、実施の形態1における導波管21と同様に、水平部42と鉛直部43とを有してL字形状に屈曲して構成されている。即ち、導波管21の内部通路は、直角に折れ曲がった水平伝送路と鉛直伝送路とにより構成されている。マグネトロン16はマグネトロン出力部44が導波管21に対して水平方向に挿入されるように横向きに接続(水平接続)されている。即ち、マグネトロン出力部44の導出部分が導波管21の鉛直部43の鉛直側面に対して直交するよう設けられている。したがって、マグネトロン16が導波管21に接続された状態において、上下方向である鉛直方向の高さ寸法は、実施の形態1の構成と同様に小さくなっている。
【0058】
上記のようにL字形状の内部通路(伝送路)を有する導波管21の水平部42には、アンテナ部22aと軸部22bとを有する給電部22が接続されている。加熱室11の天井面の略中央部分には、アンテナ部22aを収納する給電室49が形成されている。給電室49は、下端部分が円形に広がった形状であり、円錐台形形状を有している。給電室49は加熱室11の天井面を絞り加工により形成されている。なお、実施の形態2においては、給電室49の下端部分を覆うカバーが設けられていないため、カバーにおいて僅かに生じる誘電損失が無く、加熱効率がさらに向上する構成となる。
【0059】
図6は、実施の形態2の加熱調理器における導波管21および給電室49を示す斜視図である。図6に示すように、実施の形態2の導波管21においては、実施の形態1における導波管21と同様に、水平部42の水平伝送距離Hは約135mmであり、半波長(λg/2)より長く設定されている(H>λg/2)。また、鉛直部43の鉛直伝送距離Vは約15mmであり、1/4波長(λg/4)より短く設定されている(V<λg/4)。なお、実施の形態2においても、マグネトロン16の発振周波数は約2450MHzのものが使用されているため、導波管21内の管内波長λgは約190mmであり、半波長(λg/2)の長さは95mmである(λg/2=95mm)。
【0060】
図4に示すように、給電室49の下端部分の裾の部分は加熱室11の内部に突出しており、加熱室の天井面から下方に突出する遮蔽壁となっている。一方、給電室49の上端部分は加熱室11の天井面より上方に突出している。導波管21の水平部42に形成されている給電口25は、給電室49の上端部分に形成された開口に接続されている。このため、導波管21は給電室49を介して加熱室11と結合されている。したがって、導波管21と給電室49との接触部分は、導波管を加熱室の天井面に直接接触させた場合に比して、小さな面積とすることが可能となり、水平部42の半分以上を他の部材と接触しないように構成できる。また、導波管21は加熱室11から離間するように構成されて両者の間には空間が形成されるため、高温加熱中の加熱室11の天井面から導波管21に対して直接的に熱伝導されることが防止されている。また、加熱室11の天井面における上側の面においては、給電室49の回りを取り囲むように、断熱材で形成された断熱部50が設けられている。このように断熱部50が設けられているため、加熱室11の天井面から上方への放出熱が抑制されている。断熱部50は、導波管21と加熱室11の天井面との間の空間に配設されており、加熱室11の天井面からの放出熱により導波管21が直接的に加熱されないよう構成されている。したがって、高温加熱中の加熱室11から導波管21を介してマグネトロン16に伝導する熱量は大幅に抑制されている。さらに、マグネトロン16も加熱室11から離間するように構成されているため、加熱室11の天井面から直接的に熱伝導されることが防止されている。この結果、実施の形態2の加熱調理器においては、マグネトロン16の温度上昇が防止され、マグネトロン16が加熱室11の上方に設けられたコンパクト構成でも、マグネトロンの長寿命化、パワーダウン防止、出力効率向上を図ることができる構成を有する。
【0061】
また、導波管21の水平部42の水平伝送距離Hを半波長(λg/2)より長く設定することにより、マグネトロン16と給電部22との結合状態が安定し、負荷変化等の運転状態が変動した場合であっても、高い加熱効率を維持できる構成となる。そして、長い水平伝送路を有する導波管21により加熱室11からマグネトロン16へ伝熱が抑制され、マグネトロン16が加熱室11の上方に設けられたコンパクト構成でも、マグネトロン16の温度上昇を防止できる。
【0062】
さらに、実施の形態2の加熱調理器においては、導波管21におけるマグネトロン出力部44の中心から屈曲位置Cまでの鉛直伝送距離Vを1/4波長(λg/4)より短く設定することにより、発振効率を向上させることができる。導波管21において、鉛直伝送
距離Vを発振周波数の1/4波長以下とすることにより、マグネトロン出力部44から屈曲位置Cを含む屈曲部分までの領域において電界が逆方向になることがなく、導波管21の伝送路内において複雑な反射の発生を防止することができる。この結果、実施の形態2の加熱調理器においては、発振効率が大幅に向上している。
【0063】
上記のように、実施の形態2の加熱調理器においては、導波管21がL字形状の屈曲形状であり、給電室49が加熱室11の天井面から上方に突設されている。このため、導波管21の水平部42と加熱室11の天井面との間の空間に断熱部50を設けることが可能となっている。したがって、加熱室11と導波管21とを給電室49を介して結合する構成とすることにより、加熱室11と導波管21との間の空間内に熱伝導を防止する断熱部50を設けることが可能となる。このように断熱部50を設けることにより、加熱効率の高い加熱調理器をコンパクトな構成で構築することが可能となる。
【0064】
また、実施の形態2の加熱調理器においては、加熱室11の天井面に突設された給電室49の上端部分に上方に屈曲した導波管21を設けることにより、加熱室11の天井面に断熱部50を設けるためのスペースを確保することができ、断熱部50を厚く敷設することが可能となる。また、実施の形態2の加熱調理器には、加熱室内の排気を行う換気ファン61および加熱室内の照明となるランプ62が設けられている。
【0065】
上記のように構成された実施の形態2の加熱調理器においては、高温加熱手段としてヒータなどの加熱手段を使った調理工程において、断熱部50の断熱作用により加熱室11から上方へ放出される熱が遮断されているため、加熱効率の大幅な向上を図ることができる。さらに、実施の形態2の加熱調理器は、ヒータによる輻射加熱および対流加熱と共に誘電加熱を連動させた調理の場合において、加熱室11からマグネトロン16へ伝導する熱量を大幅に抑制する構成を有しているため、コンパクトで加熱効率の高い調理器となる。
【0066】
なお、実施の形態2の加熱調理器の構成においては、図4および図5に示すように、加熱室11の内部における上部に上ヒータ12が設けられており、加熱室11の底面壁の下側に下ヒータ13が設けられている。また、実施の形態2の加熱調理器においては、この下ヒータ13により加熱室11の底面壁が加熱される構成である。さらに、実施の形態2の加熱調理器は、加熱室11の背面側にオーブン調理のための熱風循環用の背面ヒータ30および循環ファン31を有している。このように実施の形態2の加熱調理器は、誘電加熱による加熱以外にも輻射熱および対流熱により直接食品を加熱できる構成である。したがって、実施の形態2の加熱調理器は、複数の調理メニューに対応することが可能な高機能を有する調理器となる。
【0067】
加熱室11の上部に設けられた上ヒータ12の一端(端子側)は、加熱室11の背面において固定されており、上ヒータ12の前面側が上ヒータ支持具51により保持されている。上ヒータ支持具51は上ヒータ12の熱膨張に対応できるように自由度を有して上ヒータ12を保持する構成である。なお、上ヒータ支持具51の材料としては耐熱要求温度に応じて碍子等のセラミックで構成され、金属金具に比べてマイクロ波への影響が小さくなる材質が用いられている。
【0068】
図4および図5に示すように、給電室49の下端部分は加熱室11の内部に天井面から突出しており、その給電室49の下端部分の回りには上ヒータ12が配置されている。即ち、上ヒータ12は、給電室49の下端部分の開口部分の直下を避けて設けられている。このように、上ヒータ12は、加熱室内に突設された給電室49の下端部分である遮蔽壁の外側に設けられているため、給電部22からのマイクロ波により直接加熱されることがなく、マイクロ波加熱の損失が防止されている。
【0069】
図7は、加熱室11の天井面の下面側を示す配置図であり、天井面に設けられている給電部22、給電室49、上ヒータ支持具51、上ヒータ12等を示している。図7において、上方が装置の前面側である。図7に示すように、上ヒータ12は、給電室49の下端部分の開口部分を避けるように配置されており、複数の箇所で上ヒータ支持具51により遊動可能に保持されている。
【0070】
実施の形態2の加熱調理器において、加熱室11の底面壁の下側に設けられた下ヒータ13は、加熱室11の底面壁を加熱する構成である。下ヒータ13により加熱室11の底面壁を加熱して、加熱室11の内部において輻射熱や対流熱を発生させている。
【0071】
また、実施の形態2の加熱調理器の構成においては、加熱室11の背面側にオーブン調理のための熱風循環用の背面ヒータ30および循環ファン31が設けられており、対流加熱部が構成されている。この対流加熱部は、背面ヒータ30の発熱と、循環ファン31の回転により、加熱室11の内部の空気が加熱されて、加熱室11の内部を熱風が循環するよう構成されている。実施の形態2の加熱調理器は、上記のように構成された対流加熱部により、加熱室11の内部を熱風が循環して被加熱物である食品を加熱調理するよう構成されている。
【0072】
さらに、実施の形態2の加熱調理器においては、図5に示すように、前面側には開閉用のドア32が設けられており、ドア32の開閉により被加熱物の加熱室11に対する出し入れを行うよう構成されている。ドア32の上部には加熱調理の各種条件の設定等を行うための操作部33が設けられている。
【0073】
図5に示すように、実施の形態2の加熱調理器においては、ドア32と操作部33との間には隙間34が形成されている。隙間34は、加熱室11の上側空間における後方位置に設けられた冷却ファン35からの冷却風が排出されるよう冷却通路が形成されている。冷却ファン35からの冷却風は、断熱部50の上面に接触しつつ流れるとともに、導波管21における対向する両側の壁面に形成された小さい貫通孔36a,36bを通り、隙間34から前方へ排気されている。ここで、小さい貫通孔36a,36bとは、マイクロ波が漏洩しない大きさ、例えば直径が2〜5mmの孔である。この図5に示す貫通孔36a,36bが形成する通気領域21cは、導波管21の給電口25近傍に設けられているが、図6に示すように導波管21の鉛直部43のE面にも、多数の貫通孔36a,36bを有する別の通気領域21aが、実施の形態1の構成と同様に形成されている。したがって、冷却ファン35からの冷却風は、断熱部50を冷却するとともに、導波管21を貫通して流れて導波管21の冷却も行っている。
【0074】
上記のように、実施の形態2の加熱調理器においては、冷却ファン35および冷却通路を設けることにより、例えばオーブン調理で加熱室内が高温になった場合でも、冷却ファン35を駆動して、加熱室11の天井面を外側から冷却することができる。このため、実施の形態2の加熱調理器は、加熱室11の天井面よりも上側に配置された制御部20等を構成する各種部品の温度上昇を防止することができる。また、実施の形態2の加熱調理器においては、加熱室11の天井面よりも上側に配設される部品実装を高密度に行っても温度上昇が生じにくい構成となる。このため、実施の形態2の加熱調理器は、装置全体としてコンパクトな構成とすることが可能となる。
【0075】
そして、導波管21の貫通孔36a,36bを連通する冷却通路に冷却ファン35によって冷却風を強制的に流すことができるので、マグネトロン16や導波管21の冷却効果が向上し、マグネトロン16が加熱室11の上方に設けられたコンパクト構成でも、マグネトロン16の温度上昇を防止し、長寿命化、パワーダウン防止、出力効率向上が図れる
。また、マグネトロンは一般的に温度が低いほうが効率が良いので、これによってマグネトロンによるマイクロ波の加熱効率が向上する。
【0076】
実施の形態2の加熱調理器においては、給電室49の下端部分が、加熱室11内に突出するよう構成されており、給電室49の下端部分の外周に上ヒータ12が配置されている。このように上ヒータ12が配置されているため、給電部22から放射されたマイクロ波は、食品15に対して直接的に放射され、上ヒータ12により遮られることがない。このように、実施の形態2の構成においては、上ヒータ12が給電部22からのマイクロ波を塞ぐことがないため、給電部22からのマイクロ波が上ヒータ12を加熱して損失することが防止されており、加熱効率の向上が図られている。
【0077】
また、実施の形態2の加熱調理器においては、給電室49における加熱室11内への突出部分がマイクロ波の遮蔽壁として機能している。この遮蔽壁は、アンテナ部22aから放射されたマイクロ波を遮蔽する材料で構成されている。このため、回転アンテナである給電部22から略水平方向に放射されたマイクロ波は遮蔽壁により確実に遮られ、給電室49の周囲に設けられた上ヒータ12および上ヒータ支持具51が給電部22からのマイクロ波により直接的に加熱されることがない。即ち、遮蔽壁により、アンテナ部からのマイクロ波が反射されて、給電室49の外周部分に配置された上ヒータ12の高温加熱手段を直接加熱しないよう構成されている。この結果、実施の形態2の加熱調理器は、マイクロ波の損失が大幅に抑制されており、高い加熱効率で被加熱物である食品を加熱調理できる構成である。
【0078】
(実施の形態3)
以下、本発明に係る実施の形態3の加熱調理器について説明する。実施の形態3の加熱調理器において、前述の実施の形態1および実施の形態2の加熱調理器と大きく異なる点は、加熱室にマイクロ波を給電するための構成である。実施の形態3の加熱調理器において、その他の構成に関しては、実施の形態1又は実施の形態2の構成が適用される。
【0079】
以下の実施の形態3の加熱調理器の説明においては、実施の形態1および実施の形態2の加熱調理器における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1および実施の形態2の説明を適用する。
【0080】
図8は、実施の形態3の加熱調理器における導波管21および給電室24を示す斜視図である。図8に示すように、導波管21は、水平伝送路を形成する水平部42と、鉛直伝送路を形成する鉛直部43とを有しており、伝送路である内部通路がL字形状に直角に折れ曲がった屈曲形状を有している。即ち、水平伝送路(42)の延設方向(水平方向)と、鉛直伝送路(43)の延設方向(鉛直方向)とは直交している。上記のように、導波管21は、直角に屈曲した水平伝送路(42)と鉛直伝送路(43)とを有し、鉛直伝送路(43)にマイクロ波生成部であるマグネトロン16が水平接続されており、マグネトロン16からのマイクロ波を水平伝送路(42)に伝送している。
【0081】
実施の形態3の導波管21においては、実施の形態1および実施の形態2における導波管21と同様に、水平部42の水平伝送距離Hは約135mmであり、半波長(λg/2)より長く設定されている(H>λg/2)。また、鉛直部43の鉛直伝送距離Vは約15mmであり、1/4波長(λg/4)より短く設定されている(V<λg/4)。なお、実施の形態3においても、マグネトロン16の発振周波数は約2450MHzのものが使用されているため、導波管21内の管内波長λgは約190mmであり、半波長(λg/2)の長さは95mmである(λg/2=95mm)。
【0082】
実施の形態3の加熱調理器においては、導波管21の両側の対向する壁面であるE面に
は多数の貫通孔56a,56bを有する通気領域21aが形成されている。図8においては、一方の壁面における複数の貫通孔56aで構成された通気領域21aのみを記載しているが、この一方の壁面に隠れてはいるが対向する他方の壁面にも同様に複数の貫通孔56bで構成された通気領域21aが形成されている。
【0083】
ここで貫通孔56a,56bは、開口部が直角に折り返されて、壁面から円筒状のフィンが突き出た形状の、突き出し孔状に形成されている。通気領域21aは、導波管21の外部へマイクロ波が漏洩しないように、直径約2〜10mmの貫通孔56a,56bが多数個配列された壁面の領域である。円筒状の折り返し部分が突き出ているので、折り返し部分が無い貫通孔よりもマイクロ波の遮蔽効果が大きく、突き出し孔形状の貫通孔56a,56bは、直径を少し大きくすることができる。このように、導波管21の壁面に複数の貫通孔56a,56bを有する通気領域21aを設けることにより、導波管21の壁面における伝熱抵抗が大きくなるとともに、通気領域21aにおける貫通孔56a,56bを通って空気の移動が可能になる。この結果、導波管21において空気移動が生じることにより、冷却作用が発生し、加熱室11から導波管21を介してマグネトロン16に伝わる熱が低減される。さらに、円筒状の折り返し部分に放熱フィンの効果が生じて導波管の冷却効果がより向上し、導波管からマグネトロンに伝わる熱がさらに減少する。したがって、マグネトロン16が加熱室11の上方に設けられたコンパクト構成でも、高温加熱中の加熱室11からマグネトロン16への伝熱を減少させてマグネトロン16の温度上昇を防止し、マグネトロン16の長寿命化を図ることができる。また、マグネトロン16は、一般的に低い温度の方が効率が高いため、実施の形態1の加熱調理器は、マグネトロン16によるマイクロ波の加熱効率が向上する構成となる。
【0084】
(実施の形態4)
以下、本発明に係る実施の形態4の加熱調理器について説明する。実施の形態4の加熱調理器において、前述の実施の形態1〜3の加熱調理器と大きく異なる点は、加熱室にマイクロ波を給電するための構成である。実施の形態4の加熱調理器において、その他の構成に関しては、実施の形態1又は実施の形態2の構成が適用される。
【0085】
以下の実施の形態4の加熱調理器の説明においては、実施の形態1および実施の形態2の加熱調理器における構成要素と同じ機能、構成を有するものには同じ符号を付し、その詳細な説明は実施の形態1および実施の形態2の説明を適用する。図9は実施の形態4の加熱調理器におけるマイクロ波給電構成を示す正面断面図である。
【0086】
図9に示すように、実施の形態4の加熱調理器においては、上ヒータ12が加熱室11の天井面37の一部を外側(上側)に突出させて形成した凹み部52の内側に収納されるように配設されている。加熱室11の上側に設けられている給電室53は、下端部分の形状である平面形状が正方形であり、全体が直方体形状に構成されている。この給電室53の上端部分には水平部47と鉛直部48とを有するL字形状の導波管46が設けられている。実施の形態4における導波管46は、前述の実施の形態1における導波管21と同様に、加熱室11の天井面37から上方に突設された給電室53の突出端部の開口に導波管46の水平部47の給電口25が結合され、導波管46の鉛直部48の下端部分が加熱室11の天井面37(凹み部52)上に隙間を介して配置されている。したがって、実施の形態4においては、給電室53の突出部分を相殺するように、導波管46の鉛直部48の高さ寸法の長さが設定されている。
【0087】
また、マグネトロン16は、導波管46の鉛直部48に対して発振アンテナであるマグネトロン出力部44が水平方向に挿入されて接続されている。したがって、マグネトロン16が導波管46に対して横向きに接続(水平接続)されているため、鉛直方向の高さ寸法は、導波管に対してマグネトロンを縦方向に接続(鉛直接続)した場合に比べて短くな
っている。
【0088】
実施の形態4の加熱調理器においては、導波管46の両側の対向する壁面には多数の貫通孔36a,36bを有する通気領域46aが形成されている。図9においては、一方の壁面における複数の貫通孔36aで構成された通気領域46aのみを記載しているが、この一方の壁面に対向する他方の壁面にも同様に複数の貫通孔36b(図5参照)で構成された通気領域46aが形成されている。通気領域46aは、導波管46の外部へマイクロ波が漏洩しないように、直径約2〜5mmの小さい貫通孔36a,36bが多数個配列された壁面の領域である。このように、導波管46の壁面に複数の貫通孔36a,36bを有する通気領域46aを設けることにより、導波管46の壁面における伝熱抵抗が大きくなるとともに、通気領域46aにおける貫通孔36a,36bを通って空気の移動が可能になる。この結果、導波管46において空気移動が生じることにより、冷却作用が発生し、加熱室11から導波管46を介してマグネトロン16に伝わる熱が低減される。したがって、マグネトロン16が加熱室11の上方に設けられたコンパクト構成でも、高温加熱中の加熱室11からマグネトロン16への伝熱を減少させてマグネトロン16の温度上昇を防止し、マグネトロン16の長寿命化を図ることができる。また、マグネトロン16は、一般的に低い温度の方が効率が高いため、実施の形態1の加熱調理器は、マグネトロン16によるマイクロ波の加熱効率が向上する構成となる。
【0089】
実施の形態4の加熱調理器においては、前述の実施の形態2において説明した冷却ファン35および冷却通路を設けることにより、例えばオーブン調理で加熱室11内が高温になった場合でも、冷却ファン35を駆動して、導波管46を冷却するとともに加熱室11の天井面を外側から冷却することができる構成となる。
【0090】
実施の形態4の加熱調理器においては、上ヒータ12が天井面37の凹み部52の内側に設けられているため、上ヒータ12は給電室53の下端部分と同一、若しくはその下端部分より高い位置に配置されている。この結果、給電室53より下側の加熱空間における上下方向の寸法に無駄なスペースが無く、装置全体としてコンパクト化を図ることができる。また、上ヒータ12は、給電室53の下端部分と同一、若しくは上方に配置されているため、回転アンテナである給電部22から下方の食品に向けて放射されるマイクロ波が上ヒータ12により妨げられることがない。したがって、実施の形態4の加熱調理器においては、給電部22からのマイクロ波が上ヒータ12を直接加熱して損失することが防止されており、高い効率で食品を加熱調理できる。
【0091】
なお、加熱室11の壁面の一部である凹み部52の内面形状は、図9に示すように、上ヒータ12からの輻射熱を食品に向かって反射するような角度を有する構成としてもよい。
【0092】
また、実施の形態4においては、給電室53の平面形状が正方形である例について説明したが、給電室53の平面形状としてはアンテナ部22aの回転に干渉しない形状であればよく、円形や正方形に限らず、楕円や多角形、またこれらの組み合わせた形状としてもよい。
【0093】
以上のように、各実施の形態において説明したように、本発明のマイクロ波加熱装置においては、加熱室の天井面に給電室を設けてそこに導波管を接続し、導波管およびマイクロ波生成部がともに、加熱室の天井面から離間しているように構成されているので、高温加熱中の加熱室天井面からマイクロ波生成部が熱を受けにくくなる。また、L字形状に折れ曲げた屈曲形状の導波管、導波管の鉛直伝送路に対して水平接続したマイクロ波生成部、および給電部を収納する給電室を設けて、導波管の水平伝送路に給電室を結合する構成とすることにより、マイクロ波給電構成をコンパクトにすることができるとともに、加熱
室からマイクロ波生成部へ伝わる熱量を減少させることが可能となる。この結果、マイクロ波生成部の温度上昇が防止されるので、マイクロ波生成部が加熱室の上方に設けられたコンパクト構成でも、加熱室からマイクロ波生成部への伝熱を減少させてマグネトロンの長寿命化、パワーダウン防止、出力効率向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、食品にマイクロ波を放射して誘電加熱する加熱調理器、特にオーブン、グリル、過熱スチームなどのその他の加熱と併用する加熱調理器の他に、乾燥装置、陶芸用加熱装置、生ゴミ処理機、或いは半導体製造装置などの各種工業用途におけるマイクロ波加熱装置において有用である。
【符号の説明】
【0095】
11 加熱室
12 上ヒータ(高温加熱手段)
13 下ヒータ(高温加熱手段)
15 食品(被加熱物)
16 マグネトロン(マイクロ波生成部)
21 導波管
22a アンテナ部
24 給電室
25 給電口
35 冷却ファン
36a、36b 貫通孔
42 水平部(水平伝送路)
43 鉛直部
46 導波管
47 水平部(水平伝送路)
48 鉛直部
49、53 給電室
56a,56b 貫通孔(突き出し孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収納して当該被加熱物にマイクロ波を放射して高周波加熱するための加熱室と、
前記加熱室内で前記被加熱物を高周波加熱と同時に輻射熱または熱風の少なくとも一つで加熱することが可能な高温加熱手段と、
前記加熱室の天井面から上方に突出して形成されたマイクロ波の給電室と、
前記加熱室において前記被加熱物を高周波加熱するためのマイクロ波を生成するマイクロ波生成部と、
前記給電室と前記マイクロ波生成部とを連結する導波管とを備え、
前記マイクロ波生成部は前記加熱室の上方に設けられ、前記導波管は直角に屈曲した水平部と鉛直部とを有して前記鉛直部に前記マイクロ波生成部が水平接続され、前記給電室の上方端部に開口した給電口が前記水平部に接続されるとともに、前記導波管および前記マイクロ波生成部はともに、前記加熱室から離間しているように構成されたマイクロ波加熱装置。
【請求項2】
導波管における対向する面に、マイクロ波が漏洩しない直径を有する貫通孔を設けた請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項3】
冷却ファンを有し、前記冷却ファンにより形成された冷却風が貫通孔を通過するよう構成された請求項2に記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項4】
導波管は、水平部により形成されるマイクロ波の水平伝送路における水平伝送距離が、当該導波管内を伝送するマイクロ波波長の1/2より長くなるよう構成された請求項1〜3のいずれか1項記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項5】
導波管に設けた貫通孔を、開口部が直角に折り返された形状の突き出し孔状に形成した請求項2〜4のいずれか1項記載のマイクロ波加熱装置。
【請求項6】
導波管の水平伝送路に結合され、前記導波管を伝送したマイクロ波を加熱室の内部に放射するための回転アンテナ部を給電室内に備え、高周波加熱と高温加熱との同時加熱運転時に前記回転アンテナ部を回転駆動するように構成された請求項1〜5のいずれか1項記載のマイクロ波加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−26106(P2013−26106A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161673(P2011−161673)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】