説明

マイクロ波加熱調理食器

【課題】 茶碗蒸しなどの卵液を材料とした食品を電子レンジ等のマイクロ波加熱器により加熱可能で、かつ、水分の蒸発を防止することができ、しかも、そのまま食器としても使用することができるマイクロ波加熱調理食器を提供すること。
【解決手段】 蓋部材1は、容器本体2の上面開口部21を少なくともカバーする形状の蓋板11を有し、この蓋板11の外周縁部からは筒型フランジ12を垂直方向に一体に延成して垂下し、かつ、この筒型フランジ12の曲面に沿ってマイクロ波反射層13を帯状に設け、蓋部材1の蓋板11を容器本体2の上面開口部21に載置したとき、前記筒型フランジ12が容器本体2の側面周縁を包囲する一方、前記筒型フランジ12の下縁端部12aが、容器本体2の底面から所定距離上方に保持され、かつ、蓋板11によって容器本体2を蓋覆可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器の改良、更に詳しくは、茶碗蒸しなどの卵液を材料とした食品を電子レンジ等のマイクロ波加熱器により加熱可能で、かつ、水分の蒸発を防止することができ、しかも、そのまま食器としても使用することができるマイクロ波加熱調理食器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、茶碗蒸しやプリンなどの食品は材料に卵液が使用されており、こうして卵液が混ぜられた食品基材を加熱処理することによって、卵液に含まれるタンパク質成分をゲル状に凝固させて調理する。
【0003】
従来、かかる調理における加熱処理としては、仕込み済みの容器を中に入れた蒸し器を直火にかけていたが、火を取り扱うため危険であるし、蒸し器などの準備も非常に面倒であることから、最近では、簡単に茶碗蒸し等が作れるように、マイクロ波照射による加熱調理器具(電子レンジ)を使用して調理できるものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、電子レンジの庫内におけるマイクロ波照射方向は不規則であるため、このような容器では、マイクロ波の反射をうまく制御することができず、容器内の食品に均等に伝達せずに局部的な加熱ムラを生じてしまい、均一な硬さや温度の茶碗蒸しを作成することが困難であった。
【0005】
また、調理後の食器には蓋部材を被せておかないと、出来上がった食品の表面から水分がどんどん蒸発して乾燥したり、冷めて味を落とすおそれがあるため、調理作業とは別に蓋部材を用意する必要があり、この蓋部材の洗浄等に手間がかかってしまうという不満があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−239239号公報(第3−5頁、図1−4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の食器に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、茶碗蒸しなどの卵液を材料とした食品を電子レンジ等のマイクロ波加熱器により加熱可能で、かつ、水分の蒸発を防止することができ、しかも、そのまま食器としても使用することができるマイクロ波加熱調理食器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、卵液を混合した食品基材Fを収容可能な有底容器であって、底面形状が擂鉢状曲面である容器本体2と、この容器本体2に被冠可能な蓋部材1とから構成された複合食器であって、
この蓋部材1は、前記容器本体2の上面開口部21を少なくともカバーする形状の蓋板11を有し、この蓋板11の外周縁部からは筒型フランジ12を垂直方向に一体に延成して垂下し、かつ、この筒型フランジ12の曲面に沿ってマイクロ波反射層13を帯状に設けて、
蓋部材1の蓋板11を容器本体2の上面開口部21に載置したとき、前記筒型フランジ12が容器本体2の側面周縁を包囲する一方、前記筒型フランジ12の下縁端部12aが、容器本体2の底面から所定距離上方に保持され、かつ、蓋板11によって容器本体2を蓋覆可能であって、
照射されたマイクロ波を前記マイクロ波反射層13により容器本体2内に反射すると共に蓋板11を透過することによって、容器本体2内に収容された前記食品基材Fをゲル状に凝固可能であり、かつ、この蓋板11により加熱調理済みの食品の水分の蒸発を防止可能にするという技術的手段を採用したことによって、マイクロ波加熱調理食器を完成させた。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、蓋部材1のマイクロ波反射層13を、筒型フランジ12の内部に金属薄板を挿入して形成するという技術的手段を採用した。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、蓋部材1のマイクロ波反射層13を、筒型フランジ12を構成するゴム材料または樹脂材料に金属粉体を混練して形成するという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、蓋部材1のマイクロ波反射層13を、筒型フランジ12の表面に金属蒸着して形成するという技術的手段を採用した。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、蓋部材1のマイクロ波反射層13を、筒型フランジ12の表面に金属顔料を塗布して形成するという技術的手段を採用した。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、蓋部材1のマイクロ波反射層13における金属材料を、アルミニウムにするという技術的手段を採用した。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、蓋部材1を構成する材料を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABSの何れかの熱可塑性樹脂を少なくとも含み、または、これにガラスフィラーを混合するという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0016】
本発明にあっては、卵液を混合した食品基材を収容可能な有底容器であって、底面形状が擂鉢状曲面である容器本体と、この容器本体に被冠可能な蓋部材とから構成された複合食器であって、この蓋部材は、前記容器本体の上面開口部を少なくともカバーする形状の蓋板を有し、この蓋板の外周縁部からは筒型フランジを垂直方向に一体に延成して垂下して、かつ、この筒型フランジの曲面に沿ってマイクロ波反射層を帯状に設けたことによって、
蓋部材の蓋板を容器本体の上面開口部に載置したとき、前記筒型フランジが容器本体の側面周縁を包囲する一方、前記筒型フランジの下縁端部が、容器本体の底面から所定距離上方に保持して、かつ、蓋板によって容器本体を蓋覆可能にして、照射されたマイクロ波を前記マイクロ波反射層により容器本体内に反射すると共に蓋板を透過することによって、容器本体内に収容された前記食品基材をゲル状に凝固可能であり、かつ、この蓋板により加熱調理済みの食品の水分の蒸発を防止することができる。
【0017】
したがって、本発明のマイクロ波加熱調理食器を使用することにより、茶碗蒸しなどの卵液を材料とした食品を電子レンジ等のマイクロ波加熱器により加熱可能で、かつ、水分の蒸発を防止することができ、しかも、そのまま食器としても使用することができることから、産業上の利用価値は頗る大きいと云える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態のマイクロ波加熱調理食器を表わす斜視図である。
【図2】本発明の実施形態のマイクロ波加熱調理食器の蓋部材を表わす斜視図である。
【図3】本発明の実施形態のマイクロ波加熱調理食器を表わす説明断面図である。
【図4】本発明の実施形態のマイクロ波加熱調理食器の蓋部材の変形例を表わす説明断面図である。
【図5】本発明の実施形態のマイクロ波加熱調理食器の蓋部材の変形例を表わす説明断面図である。
【図6】本発明の実施形態のマイクロ波加熱調理食器の蓋部材の変形例を表わす説明断面図である。
【図7】本発明の実施形態のマイクロ波加熱調理食器の蓋部材の変形例を表わす斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0020】
本発明の実施形態を図1から図7に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものは蓋部材であり、また、符号2で指示するものは容器本体であり、この容器本体2は、卵液を混合した食品基材Fを収容可能な有底容器であって、底面形状が擂鉢状曲面であり、材質は陶器やプラスチック製である。
【0021】
しかして、本実施形態におけるマイクロ波加熱調理食器は、容器本体2およびこれに被冠可能な蓋部材1とから構成された複合食器であって、以下に詳細を説明する。
【0022】
まず、この蓋部材1は、前記容器本体2の上面開口部21を少なくともカバーする形状の蓋板11を有している。本実施形態では、上面開口部21が円形であるものを採用する。
【0023】
また、本実施形態では、蓋部材1の蓋板11の上面にツマミ突起14を形成することができ、蓋部材1の着脱を容易にするとともに、火傷を防止することができる。
【0024】
そして、この蓋板11の外周縁部からは筒型フランジ12を垂直方向に一体に延成して垂下して、かつ、この筒型フランジ12の曲面に沿ってマイクロ波反射層13を帯状に設ける。
【0025】
本実施形態では、蓋部材1のマイクロ波反射層13を、筒型フランジ12の内部に金属薄板を挿入して形成する。この際、蓋部材1を構成する材料を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABSの何れかの熱可塑性樹脂を少なくとも含み、これを単独または複数で用いるか、または、これにガラスフィラー(粉体や粒体)を混合することができ、金属薄板をインサートして射出成形することができる。
【0026】
また、蓋部材1のマイクロ波反射層13における金属材料を、アルミニウムやステンレススチールにすることができる。
【0027】
そして、茶碗蒸しやプリンなどの、卵液を少なくとも含んで、適宜、具材や調味料を混合した食品基材Fを容器本体2に収容した後、蓋部材1の蓋板11を容器本体2の上面開口部21に載置したとき、前記筒型フランジ12が容器本体2の側面周縁を包囲する。
【0028】
この際、前記筒型フランジ12の下縁端部12aは、容器本体2の底面から所定距離(好ましくは約4cm)上方に保持される。そして、蓋板11によって容器本体2を蓋覆する。
【0029】
然る後、電子レンジから照射されたマイクロ波(周波数:2.45GHz)を前記マイクロ波反射層13により容器本体2内に反射させると共に、蓋板11を透過させることによって、600ワット約2分程度で、容器本体2内に収容された前記卵液のタンパク質成分を加熱してゲル状に凝固可能であり、かつ、調理後、そのままの状態にしておいて料理を提供することができ、この蓋板11により加熱調理済みの食品の水分の蒸発を防止可能であるとともに、食品を適当に蒸らすこともできる。
【0030】
なお、本実施形態では、図4に示すように、蓋部材1のマイクロ波反射層13を、筒型フランジ12を構成するゴム材料または樹脂材料に金属粉体を混練して形成することも可能である。
【0031】
更にまた、本実施形態では、蓋部材1のマイクロ波反射層13を、筒型フランジ12の表面に金属蒸着して形成したり、筒型フランジ12の表面に金属顔料を塗布して形成することも可能である。この際、図5に示すように、筒型フランジ12の内側面にのみ設けることもできるし、図6に示すように、筒型フランジ12の内側外側の両面に設けることもできる。
【0032】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、図7に示すように、蓋部材1の蓋板11の上面にツマミ突起14の形状を平板状に形成することもでき、本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0033】
1 蓋部材
11 蓋板
12 筒型フランジ
12a 下縁端部
13 マイクロ波反射層
14 ツマミ突起
2 容器本体
21 上面開口部
F 食品基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵液を混合した食品基材(F)を収容可能な有底容器であって、底面形状が擂鉢状曲面である容器本体(2)と、この容器本体(2)に被冠可能な蓋部材(1)とから構成された複合食器であって、
この蓋部材(1)は、前記容器本体(2)の上面開口部(21)を少なくともカバーする形状の蓋板(11)を有し、この蓋板(11)の外周縁部からは筒型フランジ(12)が垂直方向に一体に延成して垂下されており、かつ、この筒型フランジ(12)の曲面に沿ってマイクロ波反射層(13)が帯状に設けられており、
蓋部材(1)の蓋板(11)を容器本体(2)の上面開口部(21)に載置したとき、前記筒型フランジ(12)が容器本体(2)の側面周縁を包囲する一方、前記筒型フランジ(12)の下縁端部(12a)が、容器本体(2)の底面から所定距離上方に保持され、かつ、蓋板(11)によって容器本体(2)を蓋覆可能であって、
照射されたマイクロ波を前記マイクロ波反射層(13)により容器本体(2)内に反射すると共に蓋板(11)を透過することによって、容器本体(2)内に収容された前記食品基材(F)をゲル状に凝固可能であり、かつ、この蓋板(11)により加熱調理済みの食品の水分の蒸発を防止可能であることを特徴とするマイクロ波加熱調理食器。
【請求項2】
蓋部材(1)のマイクロ波反射層(13)が、筒型フランジ(12)の内部に金属薄板が挿入されて形成されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波加熱調理食器。
【請求項3】
蓋部材(1)のマイクロ波反射層(13)が、筒型フランジ(12)を構成するゴム材料または樹脂材料に金属粉体が混練して形成されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波加熱調理食器。
【請求項4】
蓋部材(1)のマイクロ波反射層(13)が、筒型フランジ(12)の表面に金属蒸着して形成されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波加熱調理食器。
【請求項5】
蓋部材(1)のマイクロ波反射層(13)が、筒型フランジ(12)の表面に金属顔料を塗布して形成されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波加熱調理食器。
【請求項6】
蓋部材(1)のマイクロ波反射層(13)における金属材料が、アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載のマイクロ波加熱調理食器。
【請求項7】
蓋部材(1)を構成する材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABSの何れかの熱可塑性樹脂を少なくとも含み、または、これにガラスフィラーが混合されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載のマイクロ波加熱調理食器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11078(P2012−11078A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152131(P2010−152131)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(394019749)フレッグ食品工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】