説明

マイクロ波検出器

【課題】 従来の方法よりも確実に誤警報源を識別することができ、初めて通過する誤警報源の前でも、正規のマイクロ波検出に伴う警報の出力を抑制すること
【解決手段】 所定のマイクロ波を検出するマイクロ波検出手段(12,14,16)と、その逓倍マイクロ波を検出する逓倍マイクロ波検出手段(22,24,26)と、を備え、解析判定部30は、2つの検出手段の出力に基づき、同一タイミングで基本波となるマイクロ波とその逓倍マイクロ波を受信した場合にはマイクロ波検出手段で件支出したマイクロ波は誤警報源からのマイクロ波と判断し、警報表示部42,警報音出力部44を用いた正規の警報を抑制する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両速度測定装置等の検出対象物から放出されたマイクロ波を受信した場合に警報を発するマイクロ波検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両速度測定装置から送出されるマイクロ波を検出して報知するマイクロ波検出器がよく知られている。このマイクロ波検出器は、車両速度測定装置と同一の周波数帯を用いた自動ドア等の誤警報源から送出されるマイクロ波を受信した場合も、車両速度測定装置からのマイクロ波の受信と認識して不要な警報を発してしまうという問題がある。このような事情に鑑み、最近のマイクロ波検出器は、誤警報源の位置情報を記憶しておき、GPSにより自車の位置を認識し、誤警報源に車両が位置したときにマイクロ波を検出しても警報を発しないように制御することで、不要な警報を発するのを防止しようとしている。
【0003】
こうした誤警報源の位置情報の記憶を自動的に行うものとして特許文献1に開示された発明がある。この発明は、所定の周波数帯のマイクロ波を受信した場合に警報を発するとともに、受信したマイクロ波が所定の条件を満した際に、車両の現在位置を検出する位置検出器の出力する位置情報を誤動作源位置情報として誤動作源位置記憶部に記憶し、次に同じ場所を通過した際(誤動作源位置記憶部に記憶されている位置情報のいずれかの所定距離内にある場合)にマイクロ波を受信したら、正規の警報動作を抑制するようにすることで誤警報源の位置情報を自動登録する。さらに、記憶している誤警報源位置情報の場所でマイクロ波を受信しない場合は、先に誤警報源位置情報として記憶した場所は、誤警報源ではないものとして記憶している誤警報源位置情報を消去する。これは自動ドア等の誤警報源から送出されるマイクロ波は常時送出されているとみなされるのに対し、移動式の車両速度測定装置からのマイクロ波は常時出力されていないとみなすことができる性質を利用したものである。
【特許文献1】特開2006−046976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この方法では、マイクロ波を受信した場合にその受信した場所が誤警報源位置情報として記憶されている場所である場合に警報を発しないようにしているため、誤警報源位置情報が記憶されていない場所を通過する場合にはそもそもそれが誤警報源であっても警報を発してしまうという問題がある。例えば、初めて通過する場所に誤警報源がある場合には、必ず警報が報知されてしまう。すなわち、特許文献1に開示された発明では、初回の誤警報を回避することが不可能である。
【0005】
さらに、誤警報源として登録された位置であっても、その位置を2回目以降に通過した際のマイクロ波の受信状態によっては、誤警報源位置情報を消去してしまう場合が有るという問題があった。つまり、たとえば誤警報源の一態様である自動ドアに付帯する人感センサからは、定期的にマイクロ波が放出される。通常、この人感センサは、店舗の営業中に動作してマイクロ波が放出されるが、営業終了後はマイクロ波が放出されない。そこで、一旦特許文献1に開示された発明により、ある自動ドアが誤警報源として登録されたとしても、その後に、営業終了後でマイクロ波が放出されていない期間にその自動ドアの前を通過した場合には、マイクロ波を受信しないためその自動ドアについての誤警報源位置情報が消去されてしまう。そのため、再度、昼間等の営業時間中に当該自動ドアの前を通過すると、マイクロ波を受信した際に警報が出力されてしまう。
【0006】
さらにまた、メモリの記憶容量との関係から誤警報源位置情報として登録できる数に制限があるため、かかる制限を超えて登録できない誤警報源から放出されるマイクロ波を受信した場合でも警報を発することになる。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたもので、従来の方法よりも確実に誤警報源を識別することができ、初めて通過する誤警報源の前でも、警報の出力を抑制することができるマイクロ波検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明に係るマイクロ波検出器は、(1)所定のマイクロ波を検出するマイクロ波検出手段と、前記マイクロ波検出手段による前記所定のマイクロ波の検出に基づいて警報手段を用いた警報を制御する制御手段とを備えるマイクロ波検出器において、前記所定のマイクロ波の発生源からの漏洩電波を検出するための漏洩電波検出手段を備え、前記制御手段は、前記マイクロ波検出手段によって前記所定のマイクロ波が検出された場合に、前記漏洩電波検出手段によって検出された漏洩電波の特徴が予め設定した誤警報源の特徴に該当しない場合には正規の警報を報知し、前記漏洩電波検出手段によって検出された漏洩電波の特徴が予め設定した誤警報源の特徴に該当する場合には正規の警報を抑制するように制御するようにした。正規の警報を抑制するとは、警報の程度を小さく(音量を小さく/表示を簡易等)することはもちろん、警報をしないことも含み、さらに、異なる態様で警報をすることなど、各種の態様がある。制御手段は、実施形態では、解析判定部30に対応する。漏洩電波検出手段は、実施形態では、逓倍マイクロ波帯受信部22に対応する。また、逓倍マイクロ波周波数測定部24と逓倍マイクロ波受信強度測定部26を、漏洩電波検出手段に含むようにしても良い。
【0009】
たとえば車両速度測定装置等の検出対象物よりも、自動ドア等の誤警報源の方がマイクロ波の送信機能・回路が簡易で精度も低いので、誤警報源の方が漏洩電波も多く放出されるなど、検出対象物からの漏洩電波と比較した場合に、誤警報源からの漏洩電波を識別できる特徴がある。従って、本発明によれば、誤警報源から送出されたマイクロ波を、警報対象のマイクロ波としてマイクロ波検出手段によって検出してしまった場合であっても、誤警報源からの漏洩電波の特徴を検出した場合には、警報を発しない。このように漏洩電波の特徴に基づいて警報の有無を制御するため、従来の方法よりも確実に誤警報源を識別することができ、誤警報の少ないマイクロ波検出器を提供することができる。
【0010】
(2)そして、さらに誤警報を減らすため、自車の位置を検出する位置検出手段と、前記警報の抑制をした場合に、前記位置検出手段によって検出された自車の位置に関する情報を誤警報源の位置として記憶する誤警報源位置情報記憶手段とを備え、前記警報報知手段は、前記マイクロ波検出手段によって所定のマイクロ波が検出された場合に、前記位置検出手段によって検出された自車の位置が、前記誤警報源位置情報記憶手段に記憶された誤警報源の位置から所定の範囲にある場合には、前記警報の報知を抑制する構成とするとよい。このようにすれば、例えば、誤警報源位置情報記憶手段に記憶された誤警報源の位置から所定の範囲に自車が入った場合であって、マイクロ波検出手段で所定のマイクロ波が検出された場合において、漏洩電波検出手段で漏洩電波がまだ検出されていない位置に自車がある場合であっても、正規の警報が抑制され、さらに誤警報を防止できる。
【0011】
また、制御手段は、いったん警報を抑制した場合には、所定時間経過あるいは所定距離移動するまで、その警報の抑制を継続する構成とするとよい。このようにすれば、警報の抑制後、障害物の存在などにより漏洩電波が検出されたりされなかったりする場合であっても、引き続き誤警報を抑制できる。また、制御手段は、マイクロ波検出手段によって所定のマイクロ波が検出された場合であって、漏洩電波検出手段によって検出された漏洩電波の特徴が予め設定した誤警報源の特徴に該当しない場合には、所定時間(例えば誤警報源からの電波をマイクロ波検出手段で検出してから、漏洩電波検出手段によって検出された漏洩電波の特徴が誤警報源の特徴に該当すると判定されるまでの時間(タイムラグ)に相当する時間)経過するまで、あるいは、所定距離移動するまで、警報を報知しない(留保する)構成としてもよい。このようにすれば、例えば誤警報源の発するマイクロ波が強力であり、漏洩電波が微弱であって、所定のマイクロ波のみが検出され、漏洩電波がまだ検出されていない場合であっても、誤警報を防止することができる。
【0012】
(3)また、漏洩電波の特徴としては、例えば、漏洩電波の周波数分布特性などを利用することができる。特に、漏洩電波の特徴は、所定のマイクロ波を発する警報対象の装置の漏洩電波の周波数及び強度と、誤警報源の漏洩電波の周波数及び強度とに基づくものを利用するとよい。例えば、制御手段は、マイクロ波検出手段によって所定のマイクロ波が検出された場合に、マイクロ波検出手段によって検出された電波の強度と、漏洩電波検出手段によって検出された漏洩電波の強度の比に基づいて正規の警報を抑制するか否かを判定するようにしてもよい。すなわち純度に基づいて判定するようにしてもよい。
【0013】
(4)また、例えば、制御手段は、マイクロ波検出手段によって所定のマイクロ波が検出された場合に、漏洩電波検出手段によって検出された漏洩電波の強度を、予め設定した基準強度と比較し、前記漏洩電波の強度が前記基準強度未満の場合には前記警報を報知し、前記基準強度以上の場合には前記警報を報知しない構成とするとよい。基準強度は、目的とする警報対象である速度測定装置における漏洩電波の強度と、誤警報源の漏洩電波の強度との差に基づいて決定するとよい。通常、誤警報源からの漏洩電波の強度は、警報対象である車両速度測定装置からの漏洩電波の強度よりも強いため、この強度の差に基づいて基準強度を設定することができる。
【0014】
(5)また、検出する漏洩電波は、誤警報源の発する不要輻射、スプリアスに相当する電波としてもよいし、誤警報源の局部発振器のイメージ周波数の電波としてもよい。しかし特に、漏洩電波として検出対象の所定のマイクロ波の高調波(逓倍高調波・n倍高調波)と推定される所定範囲の周波数の電波を検出する構成とするとよい。自動ドアなどの誤警報源からは誤警報源の発する周波数(すなわち警報対象の所定の周波数とほぼ一致する周波数)の所定のマイクロ波とともにその逓倍高調波が発射されているのに対し、車両速度測定装置などの警報対象装置からは所定のマイクロ波の逓倍高調波は抑制されており、高調波の発射強度が誤警報源に比べ相対的に弱いためである。
【0015】
(6)現在位置を検出する位置検出手段と、前記漏洩電波検出手段によって検出された漏洩電波の特徴が予め設定した誤警報源の特徴に該当した場合に、前記位置検出手段で検出された現在位置を誤警報源位置として記憶保持する誤警報源位置記憶手段と、を備え、前記制御手段は、前記マイクロ波検出手段でマイクロ波を検出した際の現在位置が、前記誤警報源位置記憶手段に記憶された誤警報源位置から基準距離以内の場合には正規の警報の報知を抑制する機能を備えるとよい。上記の(1)から(5)に記載の発明により、一度誤警報源が検出された場合、その位置を記憶保持しておくことで、2回目以降の同一誤警報源からのマイクロ波に基づく誤警報の発生を効率よく、かつ正確に抑制することができる。この発明は、図4に示した実施形態により実現されている。
【0016】
(7)現在位置を検出する位置検出手段と、前記マイクロ波検出手段で前記所定のマイクロ波を受信しているエリアが基準以下の場合には、前記位置検出手段で検出した現在位置を誤動作源位置として記憶する誤警報源位置記憶手段と、を備え、前記制御手段は、前記マイクロ波検出手段でマイクロ波を検出した際の現在位置が、前記誤警報源位置記憶手段に記憶された誤警報源位置から基準距離以内の場合には正規の警報の報知を抑制する機能を備えるようにするとよい。
【0017】
誤警報源の一例である自動ドアから発せられるマイクロ波は、指向性が強いとともに、下向きに設定されているので、検出対象物である車両速度測定装置に比べてその受信距離がきわめて短い(マイクロ波の到達エリアが狭い)という特徴がある。一例としては、車両速度測定装は、500mあるいはそれ以上の到達距離があるが、自動ドアの場合、数十m程度となる。そこで、マイクロ波の受信の履歴等から、同一の発信源から出射されたマイクロ波を受信したエリア(距離)を求め、エリアが基準(たとえば100m)以下であれば誤警報源からのマイクロ波であったと判断できる。よって、係る場合には、以後の警報制御においては、(6)の発明と同様に、登録された誤警報源位置情報に基づいて、2回目以降の同一誤警報源からのマイクロ波に基づく誤警報の発生を効率よく、かつ正確に抑制することができる。また、この機能を設けることで、たとえば、漏洩電波に基づく判定で検出対象物と判断された場合にも、受信エリアが狭い場合に誤警報源からのものと判断しなおすことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、従来の方法よりも確実に誤警報源を識別することができ、初めて通過する誤警報源の前でも、マイクロ波検出に伴う誤警報の出力を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明のマイクロ波検出器の好適な一実施形態を示している。本実施形態のマイクロ波検出器は、車両速度測定装置が発する周波数帯10.525GHz±15MHzのマイクロ波を検出対象とする。一方、自動ドア等の誤警報源から発せられるマイクロ波の周波数帯は、10.525GHz±25MHzである。
【0020】
図1に示すように、この検出対象の周波数帯のマイクロ波を受信する検出対象マイクロ波帯受信部12と、その検出対象マイクロ波帯受信部12で受信したマイクロ波の受信周波数(以下この受信周波数を「検出対象マイクロ波周波数fa」という)を測定する検出対象マイクロ波受信周波数測定部14と、その検出対象マイクロ波帯受信部で受信したマイクロ波の受信強度(以下この受信強度を「検出対象マイクロ波受信強度La」という)を測定する検出対象マイクロ波受信強度測定部16を備える。
【0021】
またこれとは別に検出対象マイクロ波帯受信部12で受信可能なマイクロ波の2倍高調波の周波数帯(周波数21.050GHz±50MHz或いはこれを超える範囲とするのがよい)を受信する逓倍マイクロ波帯受信部22と、その逓倍マイクロ波帯受信部で受信したマイクロ波の受信周波数(以下この受信周波数を「逓倍マイクロ波受信周波数fb」という)を測定する逓倍マイクロ波受信周波数測定部24と、その逓倍マイクロ波帯受信部で受信したマイクロ波の受信強度(以下この受信強度を「逓倍マイクロ波受信強度Lb」という)を測定する逓倍マイクロ波受信強度測定部26を備える。
【0022】
そして、検出対象マイクロ波受信周波数測定部14で測定した検出対象マイクロ波周波数faと、検出対象マイクロ波受信強度測定部16で測定した検出対象マイクロ波受信強度Laと、逓倍マイクロ波受信周波数測定部24で測定した逓倍マイクロ波受信周波数fbと、逓倍マイクロ波受信強度測定部26で測定した逓倍マイクロ波受信強度Lbを入力し、これらの状態に基づき、警報を行うか否かを解析して判定する解析判定部30と、その解析判定部30が警報を行うと判定された場合に警報の表示を行う警報表示部42と、警報音を出力する警報音出力部44を備える。警報音は、ブザーや音声等がある。
【0023】
従来のマイクロ波検出器では、検出対象のマイクロ波の周波数帯を受信対象とし、その受信した信号のみに基づいて、受信したマイクロ波が速度測定装置等の検出対象物から放出された検出対象のマイクロ波か否かを判断し、検出対象のマイクロ波を受信したと判断した場合に警報を発するようにしていたが、本実施形態では、係る検出対象のマイクロ波の周波数帯に加えて、その周波数の2倍の周波数のマイクロ波(2倍高調波・逓倍波)が存在する周波数帯も監視し、2つの周波数帯で同一タイミング(同時・一定の時間差以内)で受信するマイクロ波の関係から、検出対象マイクロ波帯受信部12で受信したマイクロ波が、検出対象物である速度測定装置等から放出されたものか否かを判断するようにしている。係る判断は、解析判定部30にて行われ、具体的には、以下のアルゴリズムで行うようにしている。
【0024】
解析判定部30は、検出対象マイクロ波周波数faが、所定の周波数帯のもので、かつ、検出対象マイクロ波受信強度Laが予め設定された閾値以上の一定のレベルのマイクロ波を受信した場合、検出対象物である速度測定装置が存在すると判断し、警報表示器42や警報音出力部44を動作させ、所定の警報を報知することを前提とする。そして、検出対象マイクロ波周波数fa、検出対象マイクロ波受信強度La、逓倍マイクロ波受信周波数fb、逓倍マイクロ波受信強度Lbを監視し、以下の(1),(2)のすべての条件を満たす場合に、自動ドア等の誤警報源の受信であると判定する。すなわち、検出したマイクロ波が警報対象のマイクロ波ではない(速度測定装置の発したマイクロ波ではない)と判定する。そして、誤警報源の受信であると判定された場合には、解析判定部30は、上記の警報表示部42及び警報音出力部44への警報の出力を行わない制御を行う。
(1)検出対象マイクロ波受信強度Laが強度基準値L1を超えた時と、逓倍マイクロ波受信強度Lbが強度基準値L2を越えた時との時間差が基準時間T1以内である。
(2)逓倍マイクロ波受信周波数fbが検出対象マイクロ波周波数faの約2倍の周波数である。
【0025】
すなわち、自動ドア等の誤警報源の場合、車両速度測定装置に比べて、発振回路や送信回路等の精度が低いため、本来の送信する基本周波数のマイクロ波とともに、比較的漏洩レベルの高い高調波成分のマイクロ波が放出される。従って、基本周波数のマイクロ波と高調波成分のマイクロ波(ここでは、逓倍マイクロ波:2次高調波)は、同時に出力されているので、(1)の条件を充足する場合、逓倍マイクロ波帯受信部22で受信したマイクロ波は、検出対象マイクロ波帯受信部12で受信されたマイクロ波に基づく逓倍マイクロ波である可能性がある。換言すると、(1)の条件を満たさない場合、それぞれのマイクロ波帯受信部12,22で受信された2つのマイクロ波は、別々の発信源から送信されてきたマイクロ波とみなせる。なお、基準時間T1以内の時間差を許容しているのは、たとえば、マイクロ波を受信するとともに信号処理する系統がそれぞれ異なることからマイクロ波検出器内での信号処理のずれ等が生じることがあり、同一の誤警報源から出力されたマイクロ波とその逓倍マイクロ波であっても、その検出タイミングが完全に一致するとは限らないからである。
【0026】
そして、さらに(2)の条件を充足する場合、逓倍マイクロ波帯受信部22で受信したマイクロ波は、検出対象マイクロ波帯受信部12で受信されたマイクロ波に基づく逓倍マイクロ波であると推定できる。換言すると、(2)の条件を満たさない場合、それぞれのマイクロ波帯受信部12,22で受信された2つのマイクロ波は、別々の発信源から送信されてきたマイクロ波とみなせる。すなわち、検出対象マイクロ波帯受信部12で受信可能な周波数帯域には一定の幅がある。同様に、逓倍マイクロ波帯受信部22で受信可能な周波数帯域にも一定の幅がある。従って、仮に同一タイミングでそれぞれの受信部12,22でマイクロ波を受信したとしても、それぞれの別々の発信源から送信された2つのマイクロ波が、たまたま各マイクロ波帯受信部12,22の受信可能な周波数帯域である場合、(1)の条件を充足するが、同一の発信源から基本周波数のマイクロ波と逓倍マイクロ波であれば、fb=2×faの関係にあるので、(2)の条件を満たさない場合には、上記の別々の発信源からのマイクロ波を受信したといえる。受信精度や、信号処理の関係から、逓倍マイクロ波であってもその周波数が、検出対象マイクロ波帯受信部12で受信されたマイクロ波の周波数の2倍に完全に一致するとは限らないので、一定の許容範囲を持たせると良い。
【0027】
なお、強度基準値L1は、実際に設置されている車両速度測定装置から出力された検出対象のマイクロ波を受信した際の検出対象マイクロ波受信強度Laの値を測定し、この測定された値に設定する。すなわち、車両速度測定装置から出力されるマイクロ波の無受信時と受信時とを弁別可能な値に設定する。
【0028】
また、強度基準値L2は、誤警報源(例えば自動ドア)から出力された逓倍マイクロ波(2倍高調波)を受信した際の逓倍マイクロ波受信強度Lbの値を測定し、この測定された値に設定する。すなわち、誤警報源から出力されるマイクロ波の無受信時と受信時とを弁別可能な値に設定する。さらに、この逓倍マイクロ波は、正規の検出対象物である車両速度測定装置から放射されるマイクロ波にも存在している。しかし、車両速度測定装置の送信回路等は高精度であるため、その逓倍マイクロ波の漏洩レベルは自動ドアのそれに比べると小さい。そこで、強度基準値L2は、車両速度測定装置から出力される逓倍マイクロ波のレベルよりも大きく、両者を弁別可能な値に設定する。
【0029】
また、基準時間T1は、例えば、誤警報源へ遠方から近接していき、検出対象マイクロ波受信強度Laが強度基準値L1を超えた時から逓倍マイクロ波受信強度Lbが強度基準値L2を越える時までの時間に設定する。すなわち、誤警報源の発する検出対象マイクロ波を受信したと判定されてから(La>L1)、誤警報源の発する逓倍マイクロ波を受信されたと判定される(Lb>L2)までの時間に設定する。このような制御は回路で行うようにしてもよいし、解析判定部30としてマイコンを用い、マイコンの処理によって制御するようにしてもよい。
【0030】
次に、上記の条件を充足するか否かの判定処理機能を備えた解析判定部30をマイコンで構成した場合の処理の流れの一例を図2に示して説明する。まず解析判定部30は、検出対象マイクロ波受信強度Laが強度基準値L1を超えたか否かを判定する(S110)。検出対象マイクロ波受信強度Laが強度基準値L1を超えない場合には(S110:NO)、S110へ戻る。一方、検出対象マイクロ波受信強度Laが強度基準値L1を超えた場合には(S110:YES)、S120へ移行する。
【0031】
解析判定部30は、タイマ値tをリセット(t=0)するとともに、タイマをスタートさせる(S120)。そして、解析判定部30は、逓倍マイクロ波受信強度Lbが強度基準値L2を超えたか否かを判定する(S130)。逓倍マイクロ波受信強度Lbが強度基準値L2を超えない場合には、S140へ移行する。
【0032】
次いで解析判定部30は、タイマ値tが基準時間T1を超えたか否かを判定し(S140)、超えていない場合(S140:NO)にはS130へ戻る。一方、タイマ値tが基準時間T1を超えた場合には(S140:YES)、上述の条件(1)を充足しない(誤警報源からのマイクロ波ではない=検出対象物からのマイクロ波の受信)ことになるので、S160へ移行し、解析判定部30は、警報表示部42に警報を表示させ、警報音出力部44から警報音を出力させる警報処理を行う。
【0033】
一方、S130の分岐判断で、逓倍マイクロ波受信強度Lbが強度基準値L2を超えた場合(S130:YES)、タイマ値tがタイムアップ(t>T1)する前に2つのマイクロ波を受信したことになるので上記の条件(1)を充足し、S150へ移行する。そして、解析判定部30は、逓倍マイクロ波受信周波数fbが検出対象マイクロ波周波数faの約2倍の周波数であるか否かを判定する(S150)。具体的には、2fa−fd<fb<2fa+fd(fdは、例えば1MHz)であるか否かを判定する。逓倍マイクロ波受信周波数fbが検出対象マイクロ波周波数faの約2倍の周波数でなければ(S150:NO)、逓倍マイクロ波帯受信部22で受信したマイクロ波は、検出対象マイクロ波帯受信部12で受信したマイクロ波の逓倍マイクロ波ではないのでS160へ移行し、前述した警報処理を行う。一方、逓倍マイクロ波受信周波数fbが検出対象マイクロ波周波数faの約2倍の周波数であれば(S150:YES)、上記の条件(2)も充足することになる(受信中のマイクロ波、誤警報源から出力されたもの)ので、検出対象マイクロ波帯受信部12で受信したマイクロ波は誤警報源からのマイクロ波であると推定できるので警報を行わずに、S110へ戻る。
【0034】
このような処理により、検出対象マイクロ波受信強度Laが強度基準値L1を超えていない間は警報がなされない。また、検出対象マイクロ波受信強度Laが強度基準値L1を超え(S110:YES)、検出対象マイクロ波受信強度Laが強度基準値L1を超えてから基準時間T1以内に(S140:NO)、逓倍マイクロ波受信強度Lbが強度基準値L2を越え(S130:YES)、逓倍マイクロ波受信周波数fbが検出対象マイクロ波周波数faの約2倍の周波数である場合(S150:YES)には、警報を抑制することができる。
【0035】
一方、検出対象マイクロ波受信強度Laが強度基準値L1を超えたものの(S110:YES)、検出対象マイクロ波受信強度Laが強度基準値L1を超えてから基準時間T1を経過しても、逓倍マイクロ波受信強度Lbが強度基準値L2を越えない場合(S130:NO、S140:YES)、条件(1)を満たさないので警報を報知することができる。また、逓倍マイクロ波受信周波数fbが検出対象マイクロ波周波数faの約2倍の周波数でない場合(S150:YES)にも、条件(2)を満たさないので警報を報知することができる。
【0036】
また、解析判定部30は、検出対象マイクロ波受信強度Laが強度基準値L1を超えた時であって、逓倍マイクロ波受信強度Lbが強度基準値L2を越えないとき、基準時間T1経過するまで、警報を報知しない(留保する)構成としているため、例えば誤警報源の発するマイクロ波(周波数fa)が強力であり、逓倍マイクロ波(周波数fb≒2fa)が微弱であって、誤警報源の発するマイクロ波(周波数fa)のみが検出され、逓倍マイクロ波がまだ検出されていない場合であっても、誤警報を防止することができる。
【0037】
なお、上述した実施形態では、基準時間T1を経過するまで警報を報知しない(留保する)構成としたが、これに代えてあるはこれとともに、解析判定部30は移動距離を検出し、この移動距離が所定の基準距離D1に達するまで警報を報知しない(留保する)構成としてもよい。
【0038】
また、例えば、解析判定部30は、警報を抑制した場合(図2のS150:YESの場合や後述する図3のS180:YESの場合)には、所定時間経過あるいは所定距離移動するまで、その警報の抑制を継続する構成(例えばS110に戻る前に、5秒待つウェイト処理を挿入する)とするとよい。このようにすれば、警報の抑制後、障害物の存在などにより逓倍マイクロ波が検出されたりされなかったりする場合であっても、引き続き誤警報を抑制できる。
【0039】
また、本実施形態では、S160で警報を行うように構成したが、これに代えて、例えば、S160で警報を開始し(すでに警報中の場合には警報を継続し)、S150:YESの場合とS110:NOの場合に警報を停止する構成としてもよい。さらにまた、本実施形態では、警報を抑制する例として、警報をしない処理を行う例を挙げたが、例えば、マイクロ波受信強度測定部で測定したマイクロ波受信強度Laが所定値以上になった場合には、警報表示部42及び警報音出力部44から警報を出力するハードウェア構成とし、(1),(2)の条件が満たされた場合にこの出力を抑制する(例えば、出力を停止あるいは、警報音の音量を下げる)ように構成してもよい。さらには、警報を抑制する形態として、正規の警報を停止しつつ異なる態様の警報(誤警報源からのマイクロ波の受信がわかるような態様の警報等)を行うようにしても良い。このように、誤警報源からのマイクロ波を受信したと判断した場合でも、正規の警報ではない何かしらの警報を発することで、マイクロ波を受信していることをユーザ(ドライバー)に通知することができる。すなわち、たとえば誤動作源からのマイクロ波と、車両速度測定装置等の検出対象物から放出されたマイクロ波が同時に受信する可能性もあり、係る場合に(1),(2)の条件を充足してしまうと正規の警報は抑制されてしまうが、何かしらの警報を発することで上記の可能性があることをドライバーに対して通知することができる。
【0040】
また、例えば、前述した(1)、(2)の条件に加え、次の(3)の条件または(4)の条件の一方あるいは双方を付加してもよい。すなわち(1)〜(4)のすべての条件を満たす場合に、自動ドア等の誤警報源の受信であると判定するようにしてもよいし、(1),(2),(3)のすべての条件あるいは(1),(2),(4)のすべての条件を満たす場合に、自動ドア等の誤警報源の受信であると判定するようにしてもよい。
(3)検出対象マイクロ波受信強度Laが逓倍マイクロ波受信強度Lbより大きい。
(4)検出対象マイクロ波受信強度Laと逓倍マイクロ波受信強度Lbの差が所定の強度差許容範囲内(Ldmin <La−Lb<Ldmax :Ldmin は強度差許容最低値、Ldmax は強度差許容最高値)である。
【0041】
すなわち、あるマイクロ波(基本波)の高調波(逓倍マイクロ波)であれば、逓倍マイクロ波の受信強度は基本となるマイクロ波の受信強度よりも低くなる。換言すれば、逓倍マイクロ波帯受信部22で受信したマイクロ波の受信強度の方が、検出対象マイクロ波帯受信部12で受信されたマイクロの受信強度よりも高い場合には、逓倍マイクロ波帯受信部22で受信したマイクロ波は逓倍マイクロ波ではないといえる。よって、上記の(3)の条件も判定条件に加えることで、より正確に誤警報源からのマイクロ波か否かを判断することができる。
【0042】
同様に、自動ドア等の誤警報源の場合、上述したように高調波成分の受信強度が、車両速度測定装置等の検出対象物から放出される高調波成分の受信強度に比べて比較的大きくなる。従って、仮に、検出対象マイクロ波帯受信部12で受信された基本波となるマイクロ波の受信強度と、逓倍マイクロ波帯受信部22で受信された逓倍マイクロ波の受信強度の差は、誤警報源の場合の方が小さくなる。よって、上記の(3)の条件も判定条件に加えることで、より正確に誤警報源からのマイクロ波か否かを判断することができる。
【0043】
強度許容範囲は例えば次のように設定する。すなわち、実際に設置されている速度測定装置から所定距離(例えば20m)の地点で、速度測定装置から出力された検出対象のマイクロ波を受信した際の検出対象マイクロ波受信強度Laと逓倍マイクロ波受信強度Lbとを測定しておき、この差を速度測定装置強度差Lds とする。一方、誤警報源からのマイクロ波を受信可能となる所定距離(例えば30m)の地点で、誤警報源から出力されたマイクロ波を受信した際の検出対象マイクロ波受信強度Laと逓倍マイクロ波受信強度Lbとを測定しておき、この差を誤警報源強度差Ldn とする。そして、強度差許容最高値Ldmax は、この速度測定装置強度差Lds と誤警報源強度差Ldn を弁別可能な値(例えば、これらの中間の値(Ldmax =(Lds +Ldn )/2))に設定する。また、強度差許容最低値Ldmin は誤警報源近傍(例えば1m)の地点におけるマイクロ波受信強度Laと逓倍マイクロ波受信強度Lbとの差の値とする。
【0044】
例えば(3),(4)の双方の判定を解析判定部30のマイコンで行うようにする場合には、例えば図3に示すように、図2の処理にさらにS170及びS180で示す処理を追加することで実現できる。すなわち前述したS150の処理の後、S170へ移行し、解析判定部30は、検出対象マイクロ波受信強度Laが逓倍マイクロ波受信強度Lbより大きいか否かを判定する(S170)。検出対象マイクロ波受信強度Laが逓倍マイクロ波受信強度Lb以下の場合には(S170:NO)、解析判定部30は、S160へ移行して警報を行う。一方、検出対象マイクロ波受信強度Laが逓倍マイクロ波受信強度Lbより大きい場合には(S170:YES)、S180へ移行する。そして、解析判定部30は、検出対象マイクロ波受信強度Laと逓倍マイクロ波受信強度Lbの差が所定の強度差許容範囲内(Ldmin <La−Lb<Ldmax :Ldmin は強度差許容最低値、Ldmax は強度差許容最高値)であるか否かを判定する(S180)。強度差許容範囲内でない場合には、S160へ移行し、解析判定部30は、警報を行う。一方、強度差許容範囲内である場合には、警報を行わず、S110へ戻る。
【0045】
上記(3)の条件を付加すれば、検出対象マイクロ波受信強度Laが逓倍マイクロ波受信強度Lb以下の場合には、警報を発することとなる。また、上記(4)の条件を付加すれば、検出対象マイクロ波受信強度Laと逓倍マイクロ波受信強度Lbの差が強度許容範囲内でない場合にも警報を発することとなる。したがって、より的確に誤警報源であるか、速度測定装置であるかを弁別することができ、本来、警報が必要な速度測定装置から送出されたマイクロ波であるのに警報されないという状況を防止することができる。
【0046】
なお、強度基準値L1、強度基準値L2、基準時間T1、強度許容範囲Ldは、特定の車両速度測定装置や特定の誤警報源の値を用いて決定してもよいが、多数の車両速度測定装置や誤警報源で測定した値に基づいて、総合的に弁別に適した値に微調整して決定するとなおよい。
【0047】
上述した各基準値等(L1,L2,t,fd,Ldmin ,Ldmax )は、(1) 車両速度測定装置における使用周波数強度と逓倍周波数強度の強度差、(2) 受信装置の取締装置使用周波数と逓倍周波数の受信感度差、(3) 空間伝搬時における取締装置使用周波数と逓倍周波数の減衰量の差を加味して決定するとよい。また、(4) La及びLbを得る部位は、飽和しないようダイナミックレンジを大きくするとよい。
【0048】
また、解析判定部30をマイコンを使わずに構成する場合には、例えば、検出対象マイクロ波受信周波数測定部14で測定した検出対象マイクロ波周波数faと、検出対象マイクロ波受信強度測定部16で測定した検出対象マイクロ波受信強度Laと、逓倍マイクロ波受信周波数測定部24で測定した逓倍マイクロ波受信周波数fbと、逓倍マイクロ波受信強度測定部26で測定した逓倍マイクロ波受信強度Lbをそれぞれ記憶する記憶部と、その記憶部に記憶されたこれらの値を上述した(1)〜(4)の条件で比較する比較器を設け、比較器で比較判定してもよい。
【0049】
図4はさらに別の実施形態を示している。図4に示すように、この実施形態では、図1に示した構成に対してさらにGPS等によって自車の位置を検出する位置検出部52と、解析判定部30から誤警報源位置情報を読み書き可能に記憶するための誤警報源位置情報記憶部54を備える。
【0050】
そして、解析判定部30は、上述した検出対象マイクロ波受信周波数測定部14で測定した検出対象マイクロ波周波数faと、検出対象マイクロ波受信強度測定部16で測定した検出対象マイクロ波受信強度Laと、逓倍マイクロ波受信周波数測定部24で測定した逓倍マイクロ波受信周波数fbと、逓倍マイクロ波受信強度測定部26で測定した逓倍マイクロ波受信強度Lbを入力し、これらの状態に基づき、警報を行うか否かを解析して判定する。解析判定部30は、警報を行わないと判定した場合(例えば、図2のS150:YESや図3のS170:YESなどの場合)には、位置検出部52で検出した自車の位置情報(例えば緯度・経度・高度等に相当する情報)を誤警報源位置情報として誤警報源位置情報記憶部54に記憶しておく。そして、検出対象マイクロ波受信強度Laが強度基準値L1を超えた時(例えば図2、図3ではS110:YESの場合)、位置検出部52で検出した自車の位置情報が、誤警報源位置情報記憶部52に記憶された誤警報源位置情報の近傍に相当する場合(例えば誤警報源位置情報の示す位置を中心として半径50mの円内の場合)、警報を抑制する処理を行う(例えば、図2、図3の処理の場合、S110へ戻る処理を行う)。このようにすれば、過去に通過して誤警報源として登録された地点の近傍では、警報がされなくなるので、さらに誤警報を防止できる。
【0051】
また、誤警報源位置情報記憶部54に格納する誤警報源位置情報は、上記のように漏洩電波に基づいて検出されたものに限ることはなく、たとえば、検出対象マイクロ波受信周波数測定部14で測定した検出対象マイクロ波周波数faと、検出対象マイクロ波受信強度測定部16で測定した検出対象マイクロ波受信強度Laに基づき電波強度・周波数が所定の条件を満たすマイクロ波を受信している期間(エリア・距離)を求め、そのエリアが基準以下の狭い(短い)場合に、位置検出手段52で検出した現在位置を誤動作源位置として記憶するようにしてもよい。
【0052】
上述したように、漏洩電波の特徴としては、誤警報源からのマイクロ波の方が漏洩電波の受信強度が大きくなることから、検出された検出対象マイクロ波と漏洩電波のそれぞれの電波の受信強度の比に基づいて誤警報源からのマイクロ波か否かを弁別することができる。つまり、解析判定部30は、検出対象マイクロ波受信強度測定部16から取得した検出対象マイクロ波帯の電波の強度と、逓倍マイクロ波受信強度測定部26から取得した逓倍マイクロ波(漏洩電波)の強度の比に基づいて、正規の警報を抑制するか否かを判定するようにしてもよい。具体的には、仮に判定式が
逓倍マイクロ波の受信強度/検出対象マイクロ波の受信強度
とした場合、当該判定式の算出値が設定された閾値以上の場合には正規の警報を抑制すると判定する。これにより、元々の検出対象マイクロ波の受信強度が小さく(受信位置が発信源から離れている,出力された電波の強度が小さい等)それに伴い逓倍マイクロ波の強度も小さくなるような場合でも、受信したマイクロ波が誤警報源からのものか否かの弁別が精度良くできる。
【0053】
さらに上述した各実施形態並びに変形例では、いずれも、逓倍マイクロ波の受信系統を基本波(検出対象マイクロ波)の受信系統と別系統で独立して形成したが、その一部または全部を共通化することもできる。すなわち、上述した実施形態においても具体的な回路構成は省略しているが、この種のマイクロ波帯受信部は、スーパーへテロダイン方式の受信回路で構成することができる。この場合、係る受信回路における局部発振器の出力周波数を所定範囲内で掃引することにより、検出対象のマイクロ波の周波数を含む受信バンド幅(受信対象となる周波数帯域)を確保している。通常、局部発振器は、1回の動作時間において受信バンド幅内の周波数を1度だけ掃引し、それを繰り返し行う。従って、局部発振器の掃引する周波数の範囲を、検出対象マイクロ波の周波数帯域を受信可能とする第1掃引周波数範囲と、逓倍マイクロ波の周波数帯域を受信可能とする第2掃引周波数範囲の2種類を切り替えで実施することができるようにすると、同一のアンテナ及び受信回路を使用しつつ、第1掃引周波数で掃引している期間は検出対象マイクロ波帯受信部12として機能し、第2掃引周波数で掃引している期間は逓倍マイクロ波帯受信部22として機能する。よってアンテナ並びに受信部のハードウェア部品を共通化することができる。
【0054】
また、このようにした場合、受信部からは検出対象マイクロ波か、逓倍マイクロ波のいずれかが出力され、どちらのマイクロ波が出力されるかは掃引周波数により決まるので、周波数測定部や受信強度測定部を共通化することもできる。
【0055】
また、図5に示すように、マイクロ波帯受信部12′は、ダブルスーパーへテロダイン方式とシングルスーパーへテロダイン方式の切り替え構造を採ることで、マイクロ波帯受信部とともに、そのマイクロ波帯受信部以降のハードウェアを共通化することができる。すなわち、このマイクロ波帯受信部12′は、アンテナで捕捉したマイクロ波と、第1局部発振器61から出力される信号(発振周波数:11.525GHz)とが、第1混合器62にて周波数混合される。検出対象マイクロ波は、第1混合器62にて周波数混合されて1GHzの混合信号として出力される。また、逓倍マイクロ波は、第1局部発振器61から出力される2倍高調波信号(23.05GHz)と第1混合器62にて周波数混合されて2GHzの混合信号として出力される。この第1混合器62の後段には、中間周波帯域増幅器63,第2混合器64の順にそれぞれが配置され、第2混合器64には、スイッチ65を介して第2局部発振器66が接続されている。第2局部発振器66の発振周波数は、900MHzとする。
【0056】
これにより、スイッチ65をOFFにすると、第2混合器64では周波数混合されずに、中間周波帯域増幅器63の出力がそのまま第2混合器64から出力され、スイッチ65をONにすると、第2混合器64にて中間周波帯域増幅器63の出力信号と、第2混合器66から出力される信号(発振周波数:900MHz)とが、周波数混合される。よって、検出対象マイクロ波は、スイッチ65をOFFにするとそのまま1GHzの信号が出力される。一方、逓倍波マイクロ波は、スイッチ65をONにすると第2局部発振器66で周波数混合され1.1GHzの信号として出力される。よって、第2局部発振器66から900MHzの信号が出力されている場合、スイッチ65の接点がONとOFFを切り換えて、中間周波数(IF)として1GHzと1.1GHzを評価することで、どちらのマイクロ波に基づく信号が出力されているかがわかり両者の受信強度等を認識できる。よって、ハードの共通化が可能となり、低コストで誤警報を防止することが可能となる。
【0057】
さらにまた、上述した各実施形態では、基本となるマイクロ波と、その逓倍マイクロ波に基づいて判定を行うようにしたが、3倍マイクロ波以上の高次高調波を用いてももちろん良い。ただし、高次になるほどその受信強度も弱くなるので、逓倍マイクロ波をもいるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の好適な一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の解析判定部30の機能を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態の解析判定部30の機能を示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施形態を示すブロック図である。
【図5】変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
12 検出対象マイクロ波帯受信部
14 検出対象マイクロ波受信周波数測定部
16 検出対象マイクロ波受信強度測定部
22 逓倍マイクロ波帯受信部
24 逓倍マイクロ波受信周波数測定部
26 逓倍マイクロ波受信強度測定部
30 解析判定部
42 警報表示部
44 警報音出力部
52 位置検出部
54 誤警報源位置情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のマイクロ波を検出するマイクロ波検出手段と、
前記マイクロ波検出手段による前記所定のマイクロ波の検出に基づいて警報手段を用いた警報を制御する制御手段とを備えるマイクロ波検出器において、
前記所定のマイクロ波の発生源からの漏洩電波を検出するための漏洩電波検出手段を備え、
前記制御手段は、前記マイクロ波検出手段によって前記所定のマイクロ波が検出された場合に、前記漏洩電波検出手段によって検出された漏洩電波の特徴が予め設定した誤警報源の特徴に該当しない場合には正規の警報を報知し、前記漏洩電波検出手段によって検出された漏洩電波の特徴が予め設定した誤警報源の特徴に該当する場合には正規の警報の報知を抑制するように制御することを特徴とするマイクロ波検出器。
【請求項2】
自車の位置を検出する位置検出手段と、
前記警報の抑制をした場合に、前記位置検出手段によって検出された自車の位置に関する情報を誤警報源の位置として記憶する誤警報源位置情報記憶手段とを備え、
前記制御手段は、前記マイクロ波検出手段によって所定のマイクロ波が検出された場合に、前記位置検出手段によって検出された自車の位置が、前記誤警報源位置情報記憶手段に記憶された誤警報源の位置から所定の範囲にある場合には、前記警報の報知を抑制することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波検出器。
【請求項3】
前記漏洩電波の特徴は、前記所定のマイクロ波を発する警報対象の装置の漏洩電波の周波数及び強度と、前記誤警報源の漏洩電波の周波数及び強度に関するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロ波検出器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記マイクロ波検出手段によって前記所定のマイクロ波が検出された場合に、前記漏洩電波検出手段によって検出された漏洩電波の強度を予め設定した基準強度と比較し、前記漏洩電波の強度が前記基準強度未満の場合には前記警報を報知し、前記基準強度以上の場合には前記警報を報知しないことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロ波検出器。
【請求項5】
前記漏洩電波検出手段は、前記漏洩電波として前記所定のマイクロ波の高調波と推定される所定範囲の周波数の電波を検出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロ波検出器。
【請求項6】
現在位置を検出する位置検出手段と、
前記漏洩電波検出手段によって検出された漏洩電波の特徴が予め設定した誤警報源の特徴に該当した場合に、前記位置検出手段で検出された現在位置を誤警報源位置として記憶保持する誤警報源位置記憶手段と、を備え、
前記制御手段は、前記マイクロ波検出手段でマイクロ波を検出した際の現在位置が、前記誤警報源位置記憶手段に記憶された誤警報源位置から基準距離以内の場合には正規の警報の報知を抑制する機能を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロ波検出器。
【請求項7】
現在位置を検出する位置検出手段と、
前記マイクロ波検出手段で前記所定のマイクロ波を受信しているエリアが基準以下の場合には、前記位置検出手段で検出した現在位置を誤動作源位置として記憶する誤警報源位置記憶手段と、を備え、
前記制御手段は、前記マイクロ波検出手段でマイクロ波を検出した際の現在位置が、前記誤警報源位置記憶手段に記憶された誤警報源位置から基準距離以内の場合には正規の警報の報知を抑制する機能を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のマイクロ波検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−122059(P2010−122059A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295815(P2008−295815)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(391001848)株式会社ユピテル (238)
【Fターム(参考)】