説明

マイクロ流体チャネルネットワークにおいて光学スイッチを用いて細胞をソーティングするための方法および装置

マイクロ流体チャネルネットワークを通した細胞ルート設定の迅速で能動的な制御のための光学スイッチをベースとする微細加工蛍光活性化セルソーターの装置および方法を提供する。そのソーターは、少数の細胞(すなわち、1000−100,000細胞)の集団の低いストレスで、高い効率のソーティングを可能にする。本発明は、無菌で、ディスポーザブルな形式で、巨視的スケールの機器インターコネクトへのマイクロ流体チャネルネットワークを可能とする自蔵プラスチックカートリッジ中にマイクロ流体チャネルネットワークのパッケージを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本願は、出典明示して本明細書の一部とみなす、"Microsorter Cartridge"なる発明の名称で2003年8月28日に出願した米国仮特許出願番号60/499,294および"Optical Switch to Enable Cell Sorting in a Microfluidic Channel Network"なる発明の名称で2004年5月26日に出願した米国仮特許出願番号60/574,897に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、マイクロ流体チャネルネットワークを通る標的細胞の選択的ルート設定を可能にする光学スイッチを配して非標的細胞からそれをソートし、それを収集するための、該ネットワークにおける光圧力の使用のための方法および装置に関する。
【0003】
発明の背景
従来の蛍光活性化セルソーター(FACS)が、研究および臨床的な応用において広く使用されている。これらの機器は非常に迅速なマルチパラメーター分析およびソーティングが可能であるが、一般的に大きな試料容量、操作およびメインテナンスのための訓練されたオペレーターを必要とし、しかも滅菌が困難である。FACS機器は10,000ほどの少ない細胞および何千万ほども多い細胞を分析することができる。しかしながら、100,000未満の細胞の場合には、ソーティングを行う能力が減じられる。磁気ビーズのような他の分離方法はFACSほど多い細胞を必要としないが、それは非特異的な結合、細胞およびビーズの凝集、およびビーズ自体がその後の処理工程において妨げとなり得るという可能性に苦しめられる。したがって、一次組織からの貴重な小さい試料または細胞をソーティングするために、少ない細胞数の小容量の試料を取り扱うことができ、かつ、ソートした集団の効率的な回収を許容するセルソーターは、ユニークな科学的市場の隙間を扱う。
【0004】
微細加工サイトメーターは1000ほどの少ない細胞を用いてソートする能力を有すると同時に、使用し易い密閉系でより少ない試薬しか消費しない。後者のことは重要である。なぜなら、従来のFACS機器とは異なり、エーロゾルが作り出されず、ソートした細胞のコンタミネーションの危険性および生物学的に危険な材料を用いて作業する危険性が低下するためである。幾つかの微細加工セルソーターが記載されているが、それらのほとんどが"コンセプトの証明"としてである。Fuらは、17細胞/秒のスループットでの大腸菌(E. coli)の30倍富化を報告した。ソーティング後は20%の細菌しか生存しておらず、標的貯溜器におけるソート純度は30%であった。その後の研究において、スループットは44細胞/秒まで上昇したが、39%と報告された回収率とともに、標的純度は10%未満まで低下した。Wolffらは、100倍の富化でもって12,000事象/秒のスループットでニワトリ赤血球からビーズをソートし得た。しかしながら、標的ウェルにおける純度は約1%であった。これらの研究において、富化とは出発濃度と比較した収集ウェル中の標的集団の濃度における増加と定義された。純度はソートの精度を示し、収集ウェルにソートしたすべての細胞にわたるソートした標的細胞のパーセンテージであった。回収率は、蛍光ディテクターによってカウントされた細胞の数−対−収集ウェルから回収した細胞の数と定義された。後者の2の研究ではマイクロ流体デバイスにおいて圧力スイッチを用いており、それは全体の流路および、その後に、流体プラグ内に含まれるいずれもの粒子をスイッチングした。これらのスイッチにおける機械的コンプライアンスにより、流体スイッチ速度がスループットの律速段階となった。例えば電気浸透2、5、6または誘電泳動7、8、9のような動電学的流動制御も報告されているが、高電界グラジエントおよび緩衝液のイオン強度に対する物理化学的制約は、細胞に対して非理想的な条件である。
【0005】
Buicanらは、流体チャネルを通る粒子の偏向(deflection)に光圧力を使用することを最初に提唱した。光ビームによって粒子に及ぶ力は、光出力と粒子およびその取り囲む流体媒体の相対的光学特性との関数である。1pN/mWのような力は、直径ほぼ10μmの生物学的細胞について達成し得る。光圧力が小さい間は、細胞を隣接する流動ストリームに偏向させるのに必要な力も小さい。例えば、直径10μmの細胞を数ミリ秒で流動を横切って横方向に20−40μm運動させるためには900pNが必要である。これが、この横方向の運動によって意味される速度の細胞に対する粘性抵抗力を克服するために必要な力である。
【0006】
光圧力の背後にある原理および一般的な背景技術は、出典明示して本明細書の一部とみなす米国特許第6,744,038号に見い出し得る。
【0007】
発明の概要
以下に記載するように、これらの光圧力を用いて、セルソーティングシステムとして作動可能なマイクロ流体チャネルネットワークにおける光学スイッチを実現する。光学スイッチは、光散乱のような他の検出属性も光学スイッチの活性化のために等しく使用し得るが、光学スイッチ位置の上流のマイクロ流体チャネルネットワークで流動している標的細胞からの蛍光シグナルを検出することによってトリガーされる。光学スイッチを用いて、基礎をなす流動を改変することなく、細胞または粒子を複数の出力チャネル流動ストリームの1に方向付け、それによって目的の細胞をさらに使用するために収集する。マイクロ流体チャネル中の流動は、典型的には非常に低いレイノルド数の層であることは重要である。その結果、特定の層中または流動ストリーム中で流動しているいずれの細胞も、層を横切るいずれかの力が存在しなければその流動ストリーム中に留まるであろう。光学スイッチは細胞に対する光圧力を利用してまさにこれを成し遂げ、細胞の輸送は層を横切り、1の出力チャネルを通る分岐接合部を出る流動ストリームから第2の出力チャネルを通る分岐接合部を出る流動ストリームに運動する。
【0008】
以下のパラグラフに記載する発明は、高いソーティング性能を達成するための、光学スイッチを創製するために用いる方法、光学スイッチを最適化するために用いるアプローチ、マイクロ流体チャネルネットワークの設計、およびマイクロ流体ネットワークにおける細胞または粒子の流動の特性を詳細にする。光学スイッチは、一般的に、マイクロ流体チャネル中の確立された流れの細胞の軌道付近のマイクロ流体チャネルネットワークに光学照射場を投射することによって作用する。細胞と光学場との相互作用は、細胞が確立された流動における1の流動ストリームから他の流動ストリームへ運動するように、細胞を捕捉することなくまたは最初の流動におけるその運動を顕著に変化させることなく、細胞を確立された流動を横切って輸送する力を細胞に対して生じる。
【0009】
以下の明細書において、細胞および粒子なる用語は双方とも、いずれの生物学的細胞、生物学的粒子、天然の有機または無機粒子および人造の有機または無機粒子をも意味すると理解される。マイクロ流体チャネルネットワークにおいてソートする細胞のサイズ範囲は、典型的には、生物学的細胞のサイズ範囲であるが、ほぼ1μmからほぼ50μmの範囲の直径である。より一般的には、ほぼ100nmからほぼ100μmの範囲の直径を有する細胞が、マイクロ流体チャネルネットワークにおける光学スイッチによってソーティングする候補である。
【0010】
また、一般的には、レーザーを用いて光学スイッチに使用する光学ビームを生成する。光学スイッチに現在用いられているレーザーは、光学スイッチングを証明するために使用される出力密度および曝露時間において生物学的細胞の生存能力に悪影響を及ぼさないことが知られている近赤外線、連続発振レーザーである。粒子に対する損傷が問題とならない場合には可視光または近紫外線波長のレーザーを含む異なる応用に別のレーザー光源を考えることができ、あるいは、大きな光束を用いて粒子を非常に迅速に運動させる場合にはパルスレーザーが考えられる。しかしながら、本発明のさらなる議論ではレーザーを用いて光学スイッチを製造しているが、光学ビームの光源はレーザーに限定される必要はない。
【0011】
発明の詳細な説明
図1は、1x2マイクロ流体チャネルネットワーク、すなわち1の主入力チャネル(11)および分岐接合部から延在する2の出力チャネル(12)および(13)を有するネットワーク、中で細胞をソートするように作用する光学スイッチ(10)の1の態様を示している。分岐接合部の“Y”構造を図1に示すが、“T”構造のような他の分岐も使用し得る。一般的に、これらのマイクロ流体チャネルは光学的に透明な基体で製造されており、光学スイッチおよび他の細胞検出光学構成部品のチャネルへの投射を可能にする。この基体は、典型的には、限定されるものではないがガラス、クウォーツ、プラスチック、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)ほか、および他のキャスト可能または作用可能なポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサン、PDMSまたはSU8)である。マイクロ流体チャネルの深さは、典型的には、限定されるものではないが10μmないし100μmの範囲である。マイクロ流体チャネルの幅は、典型的には、限定されるものではないが深さの1ないし5倍である。断面は、典型的には矩形、またはガラス基体のフォトリソグラフィーマスク形成につづくチャネルの等方エッチングによって製作したマイクロ流体チャネルの場合は四半円形角(quarter-round corner)を有する矩形である。
【0012】
流動条件は、光学ビーム、この場合においてはレーザーからの光学ビームが接合領域上で衝突しないように止めるまたは遮断した場合に、すべての細胞が出力チャネルのうちの1、例えば右側の出力チャネル(13)に優先的に流動するように設定する。光学ビームを出すまたは遮断を除いた場合、ビームが接合領域に当たり、細胞と光学ビームの相互作用によって生じた光圧力が細胞を左側の出力チャネル(12)に方向付ける。この例においては、細胞を方向付けるために選択した光学パターンは、流体の流動の方向に対してある角度を有するレーザー光の長く、細い線である。光勾配力(optical gradient force)は、スイッチングした細胞が主チャネルを出て1の出力チャネル、例えば(12)に入る一方でスイッチングされなかった細胞を、細胞の主要な流れを出て他の出力チャネル、例えば(13)に入るように、細胞の主要なストリーム線から離れて、横方向に追いやる。マイクロ流体チャネルネットワークにおける流動条件の設定および制御は、直接作動ポンピング、空気式ポンピング、動電学的手段、毛管現象、重力または流体の流動を生じる他の手段によって達成することができる。
【0013】
スループット(分岐接合部の上部でソーティング領域に入る細胞の特定時期の割合)、収穫効率(標的出力チャネル(12)中の標的細胞の画分)、および純度(標的出力チャネル(12)中の細胞の合計数に対する標的細胞の数の割合)の観点からのソーティング機構の性能は様々な要因によって影響を受け、その各々が光学スイッチの実行に影響する。光学スイッチは、マイクロ流体チャネルネットワークのソーティング接合領域に投射する光学パターンの形状、分岐接合部に対する該パターンの位置、光学パターンの初期位置および形状に対する光学パターンのいずれかの運動、光学スイッチの活性化の時間、光学スイッチパターンを生成するのに使用したレーザー光源の波長および電力ほか、のような幾つかのパラメーターによって特徴付け得る。光学スイッチに関するこれらのパラメーターの特定の値の選択は、他の事項の中でも、マイクロ流体チャネルシステムのトポロジーおよび形状、マイクロチャネルシステム内の流速(細胞速度)、主チャネル中の流動する細胞の位置(それが主チャネルの中央を流動していようと一方の側に片寄っていようと)を制御する能力、信頼し得るスイッチングを達成するために必要な細胞の置換の量、チャネルの深さ、チャネルの形状、および光学スイッチと細胞の相互作用によって生じる圧力の重要な関数である。
【0014】
一般的に、細胞を主チャネル中の流動に導入した場合、それは流動内のいずれかの横方向の位置でチャネルを下方に運動し得る。したがって、細胞は、マイクロ流体チャネル中の圧力作動流動のよく知られている放射状(円筒状のマイクロ流体チャネルについては)または擬放射状(より不定の断面については)の速度特性に起因するそれらの横方向の位置に依存して異なる速度で運動し得る。これが、すべての細胞の流動を1の出力チャネル、例えば図1に示す(13)にバイアスさせるのを困難とする。この流動外形を有する光学スイッチのいずれかの実行は、必然的に、低スループットおよび光学スイッチを作成するのに利用可能なレーザー出力の非効率的な使用を生じる。適当な流動条件の使用は、光学スイッチの性能に対するこれらの制約を軽減する助けとなり得る。
【0015】
適当な流動条件を確立することは多くの方法でなし得る。1の態様において、主チャネルの中央の単一の列への細胞の一次元フォーカシング(示す平面図において水平に)は、図2に示すシース流アプローチを用いて、細胞入力チャネル流動(20)を左側(21)および右側(22)の両方からの加えた緩衝液の流動で細胞入力チャネル流動(20)をすることによって達成する。細胞を主チャネルの中央に維持することは、各側からの等しい流動を有することによって達成する。この流動は、図2に示す流体分割面(23)を作り出し、これは最終的には分岐接合部における流動および細胞の50/50の分割を生じる。このマイクロ流体チャネル設計および流動条件を用いた細胞の混合集団から標的細胞をソートするための光学スイッチの実行は、両方の標的細胞を1の出力チャネルに能動的にスイッチングする、例えば図1に示す(12)、および非標的細胞を他の出力チャネルにスイッチングする、例えば(13)、光学スイッチを必要とする。
【0016】
あるいは、細胞のフォーカスされた線は、同等でない流動を側方シース流チャネルに押しやることによって主チャネルの中央からオフセットして位置付けることもできる。図3a−b。これは、入力チャネル(30)から主チャネル内の分割面(33)の1の側への細胞の斜めの流動を効率的に生じる。細胞流動が斜めにされる主チャネルの側は、シース流がより高い流速を有する側とは反対になるであろう。すなわち、右側のシース緩衝液(32)は左側のシース緩衝液(31)よりも速く流動し、図3a−bに示すように、細胞の線は主チャネル中の流動の左に向けて斜めにされる。しかしながら、左側のシース流がより早い流動を有することもあり、それは主チャネルの右側に向けて細胞の線を押しやる。図3a−bに示すように、蛍光ディテクター(34)および光学スイッチ(35)が存在する。蛍光ディテクターをいずれの細胞をソートするかを決定するための手段として用い、後にさらに詳細に論じる。効率的なソートには、分岐接合部を出て蛍光陰性非標的細胞マイクロ流体チャネル(36)に入る流動ストリームから分岐接合部を出て蛍光陽性標的細胞マイクロ流体チャネル(37)に入る流動ストリームまで分割面を横切って細胞を運動させることが含まれることは、図3bから明らかである。シース緩衝液の流速の操作は、直接作動ポンピング、空気式ポンピング、動電学的手段、毛管現象、重力または流体の流動を生じる他の手段を用いて各々の側方チャネルにおける流速を別々に制御することによってか、あるいは、各マイクロ流体チャネル中の圧力低下を注意深くバランスをとることを介してマイクロ流動シースネットワークを特異的に指定して中央流動(50/50分割)またはオフセット流動が生じることを保証することのいずれかによって達成することができる。
【0017】
蛍光検出(44)前の主チャネルにおける入力流動(40)から1の出力マイクロ流体チャネル、例えば蛍光陰性チャネル(46)、へのすべての細胞の優先的流動を達成する別のアプローチは、等しいシース緩衝液流速(41)および(42)を用いて中央締め付けを得るが、ついで蛍光陽性出力チャネル(47)に対して蛍光陰性出力チャネル(46)に入る分岐接合部の外側のより大きな容量の流体の流動を有することによって細胞の流動を蛍光陰性チャネルに優先的にバイアスすることである。このことを、左側の出力チャネル(46)が右側の出力チャネル(47)よりも広い図4a−bに示す。この構造は分割面(43)を中央に局在した細胞ストリームの右に効率的に位置させる。したがって、目的の位置に存在する細胞を用い、ついで光学スイッチ(45)を用いて、分割面を横切る標的細胞を、蛍光陽性の標的細胞を右側出力チャネルへと移動する。このアプローチは、左側出力チャネルよりも広い右側出力チャネルを有することにより等しく効率的であり、それによって、分割面(いまや、中央に位置する細胞のストリームの左側に位置する)を横切る光学スイッチによって標的細胞が移動し、その結果、左側の出力チャネルにソートされる。したがって、マイクロ流体チャネル出口ネットワークを特異的に指定することによって、あるいは、各々の出口チャネルにおける出口背圧を能動的に制御することによって、目的の出力チャネルへの細胞の流動を制御することができる。
【0018】
中央流動またはオフセット流動のいずれかの使用、および流体分割面からフォーカスされた細胞の流動の各々の距離は、信頼し得るスイッチングを達成するために必要な細胞の置換の大きさを最終的に指図する。さらに、これは、信頼し得るスイッチングを達成するために必要なレーザー線の長さおよびレーザー出力を指図する。細胞のストリームが分割面に近ければ近いほど、必要な置換は短くなり、ソーティングの工程はより効率的になる。ソートした集団の高い純度および高いスループットのために、一方向配置の単一の光学スイッチは、試料のストリームが分割面からオフセットされていることを必要とする。このようにして、間違ったソートの発生が最小限化される。
【0019】
この設計に代わるものは、2のレーザー線を利用する二方向光学スイッチを用いることである。このアプローチでは、1のレーザー線が目的の細胞を1の出力チャネルにソートし、他のレーザー線がすべての他の細胞を他の出力チャネルにソートする。このアプローチは図2の50/50、または図3および4のオフセット分割構造のいずれかと一緒に用い得る。後者の場合において、細胞がスイッチングゾーンに存在しない場合、レーザーをその2の位置状態のいずれかに放置することを選択することができ、あるいは、この時間の間にレーザーを閉じることもできる。光学スイッチは、分岐接合部のちょうど上方に位置し、独立して細胞を分岐接合部から由来する2の出力のいずれかに方向付けるようになる、スイッチング領域上で突き当たる2の鏡像レーザー線を有することによって二方向とすることもできる。
【0020】
1x2マイクロ流動ネットワークにおいてレーザー線を用いる二方向光学スイッチの概略図を図5に示す。同様の二方向光学スイッチは、図6に示すチャネルのいずれかの側に方向付けたレーザースポットを用いても達成される。一方向光学スイッチと同様にして、二方向光学スイッチに単一のレーザー光源を用いることができ、あるいは二方向光学スイッチは2の独立のレーザー光源を用いることができる。二方向設計は、一方向設計に対して幾つかの性能利点を潜在的に提供する。最初のものは、細胞ごとにレーザーによって方向付けられるために純度が潜在的に最大化されることである。第二に、ある所定の割合の流動の代わりに、等しい流動が2の出力口の各々の外側に方向付けられるため、流体の流動が単純化されることである。
【0021】
ここまで本明細書においては2の出力チャネルへの分岐部に入る1の入力主チャネルを通る流動を有する1x2マイクロ流体チャネル設計のみを考えてきたが、1xNまたはMxNの出力を有するマイクロ流体ネットワークも利用することができる。光学スイッチングは、任意の多数の独立して調節されるレーザー線を有することによって、これらのより大きなネットワークにおいて達成することができる。幾つかの形態を図7a−cに示す。さらに、細胞は、同じソーターを通して複数回フィードバックしてソートの純度を上昇させることもでき、あるいは、チャネルを多レベルのソーティングのためにカスケードに配置することもできる。
【0022】
一方向または二方向配置において光学スイッチを操作する場合、2の異なる活性化様式が考えられる;受動様式または能動様式。受動様式は、どの細胞をチャネルを通して流動し得るかにかかわらず、光学スイッチの状態がオンまたはオフのいずれかになるものである。この場合、何時またはどのくらいの数の細胞がスイッチング領域に入るかという知識は必要でなく、その結果、レーザーの状態に依存して、スイッチング領域内のすべての細胞がスイッチングされる。あるいは、能動様式においては、検出/選択領域に入る時に細胞は最初に検出され、ついで幾つかの決定プロセスに基づいてスイッチングされる。図3a−bおよび図4a−bは、スイッチング領域の直前に位置した蛍光ディテクターを用いるこの様式の例を示している。この場合、すべての蛍光細胞は1の出力チャネルに方向付けられ、すべての非蛍光細胞は他の出力チャネルに方向付けられる。決定プロセス用の他の非蛍光検出/選択技術には、飛行時間、散乱、イメージング、静電容量、または目的の細胞を同定し得るいずれかの検出の特徴的属性が含まれる。検出/選択方法にかかわらず、能動様式を用いるスイッチングを利用して幾つかの決定プロセスに基づいて細胞の1の集団を他の集団からソートすることができる。
【0023】
能動様式を利用するためには、光学ビームは決定プロセスに応答してオンまたはオフに調節しなければならない。使用するレーザーの数にかかわらず、または光学スイッチが一方向または二方向であるかに関係なく、エレクトロオプティックモジュレーターを用いること、レーザー出力を調節すること、レーザーを遮断すること、液晶モジュレーターを用いること、検流計を用いること、および音響−光学モジュレーターを用いることを含む多くの方法でレーザーをモジュレートすることができる。2のレーザーを有する二方向光学スイッチについては、別々のレーザーを独立して点灯したり消灯したりすることができる;しかしながら、単一のレーザー光源を用いる場合、光学スイッチ線の2の異なる方向は、偏光回転子(液晶モジュレーターのような)を用い、2の異なる線パターンの各々を2の分離した偏光の各々とすることによって達成し得る。同様にして、音響−光学モジュレーターまたは検流計ミラーを用いて、光学スイッチとして用いる単一スポットの位置をモジュレートすることができ、あるいは、二軸音響−光学モジュレーターまたは二軸検流計ミラーを用いて、二方向光学スイッチとして用いる2の異なる線の形状を引き出すことができる。
【0024】
図8は、光学スイッチのモジュレートおよび/または遮断を行うための3の異なる可能性のある光学設計を示す。図8aにおいて、二方向光学スイッチは、液晶モジュレーター(LCM)に向けて方向付けられおよびそれを通過する単一の光学ビーム(レーザー)から生成される。LCMは偏光回転子であり、したがってビームが一方向で偏光された場合、それは偏光ビームスプリッター(PBS)をまっすぐ通過し、線の形状を作り出す柱状レンズを通過し、もう1のPBSを通過し、ついで線をマイクロ流体スイッチング領域上にフォーカスする幾つかのフォーカシング光学構成部品を通過する。これは、細胞を分岐したチャネル出力のうちの1にスイッチするために用いる二方向光学スイッチの1の線を効率的に生成する。細胞を他の出力チャネルにスイッチするために、鏡像線を生成しなければならない。これは、ビームの偏光を変化させるLCMを回転することによって行う。その結果、ビームが第1のPBSに当たった場合に、それは異なる柱状レンズ(線の形状を作り出す)を通り、他のPBSを通る別の光路に方向付けられ、それはマイクロ流体スイッチング領域に鏡像線をフォーカスするフォーカシング光学構成部品を通して後ろにビームを方向付ける。柱状レンズを用いて二方向光学スイッチの線の形状を生成し;あるいは、柱状レンズを除去して、光学スイッチのために用いるスポットを生じ得ることは注記しておく。図8bにおいて、柱状レンズを有するか有しないLCMおよびPBSの組合せを使用するよりも、音響−光学モジュレーター(AOM)を用いて二方向光学スイッチに用いる線またはスポットを生成することができる。これは、AOMを形成して、必要である目的の線の形状を得ることによって達成される。また、AOMを用いて光学ビームをオン/オフ様式で遮断し、ビームを光学スイッチオフ条件のためのビーム終止部に方向付ける。図8cは、図8aおよび図8bに記載したシステムの結合を示す。AOMを用いてビームの方向を変化させる構成においては、目的のビーム運動に依存して、一軸または二軸のいずれかの検流計ミラーをAOMの代わりに用い得る。
【0025】
一または二方向光学スイッチのスイッチング効率を最適化する場合、光学パターンの多くの変形を考え得る。前記したように、レーザー線は光学スイッチパターンとして用いられる。線は、柱状レンズによって、検流計ミラーまたは音響−光学モジュレーターをスキャンすることによって、回折光学構成部品によって、特注の屈折光学構成部品、またはいずれかの他の技術によって生成し得る。現在まで線は柱状レンズを用いて、検流計をスキャンすることによって、または聴覚光学モジュレーターを用いることによって生成されている。線の長さは任意に長くても、あるいは単一の点のように短くてもよい。線は線の上部でより高い強度を有し、線の末端に向かって強度が徐々に逓減的に低下するものとし得る。さらに、線は、細胞の出力方向を最適化する湾曲した弧形とし得る。さらに、線の角度または線の形状はリアルタイムで変化してもよい(すなわち、旋回して出力を最適化してもよい)。多重出力チャネルを用いる実行については、2D空間のいずれかの線の任意のパターンを生成して、各出力細胞の方向を最適化し得る。あるいは、線は別々のスポットの配列によって生成し得る。
【0026】
スループット、収集効率および純度の観点からソーティング機構の性能をさらに改善するために、光学スイッチは、選択した細胞が分岐接合部に向けて主チャネルの下方に流動する間にレーザースポットがその選択した細胞のそばをスウィープし、それによって細胞とレーザーとの間の合計相互作用時間を増すように形成されている。光学スイッチは、分岐接合部に向けて主チャネルの長さの下方に直線で移動したレーザースポットを利用する。スポットによってスウィープされた線は、主チャネルの壁と平行(図9a)、または細胞の流動ストリームに対してある角度を有するもの(図9b)とし得る。したがって、角度は0−90°の範囲とし得る。スポットをスウィープする能力は、AOMまたはスキャニング検流計ミラーのいずれかを用いて達成する。光学スイッチをトリガーして、蛍光または目的の細胞を同定し得る他の検出特徴的属性を用いた目的の細胞の検出に基づく決定によってスウィープする;例えば、飛行時間、散乱、イメージングまたはキャパシタンス。細胞の位置は主チャネル中においてオフセットまたは中央のいずれかとし得、これはスポットによってスウィープする線の長さおよび効率的なスイッチング/ソーティングを達成するために用いるレーザー出力を指図する。したがって、目的の細胞が指図されると、光学スイッチが点灯し、スポットが目的の細胞のそばに出現する。ついで、スポットは選択した細胞のそばを探知し、光圧力を用いて選択した細胞を目的の出力チャネルに方向付ける。
【0027】
光学スイッチの効率的なトリガーを容易にするための2のアプローチを以下に記載する。両方の方法に典型的なのは、運動している細胞を分析するための一時的なシグナルの使用であり、この情報を用いてスイッチするかまたはスイッチしないかの決定を生成する。この一時的なシグナルは、本質的には時間の関数としてのシグナルの測定であり、それはピーク強度およびピーク幅の両方の観点から異なる一時的な識別特徴を与え得る。シグナルは蛍光、散乱(例えば、前方散乱)、キャパシタンス、イメージング、または目的の細胞を同定し得るいずれかの検出特徴的属性とし得る。1のアプローチは、2またはそれを超えるディテクターと結合した単一のレーザー光源を利用して細胞検出および細胞同定の両方を成し遂げることである。図10a−dは、蛍光ディテクターおよび前方散乱ディテクターと組み合わせた1のレーザー光源を用いるこのアプローチを示す。これらのディテクターからの一時的なシグナルは、スイッチ決定のための情報として用いる。細胞の存在は前方散乱シグナルによって証明され、このシグナルを所定のレンジ内にある蛍光シグナル強度と結合する場合;ついで、この"ゲーティング"情報を用いて光学スイッチをトリガーする。単一の蛍光ディテクターのみを示しているが、さらに精密な細胞同定のために多重蛍光ディテクターを用いることができることは注記しておく。描いた場合において、細胞のストリームは、細胞のストリームの右側に分割面を生成するために用いる異なる幅を有する出力チャネルと共に等流速シース緩衝液を用いることによって中央に位置する。しかしながら、先に論じたように、細胞のストリームおよび分割面の位置を操作するために用いるいずれの構成も使用し得る。また、両方の構成に共通するのは、エラーチェックディテクターの存在であり、それは細胞がスイッチされているか否かを証明する。この場合における検出は、蛍光、散乱(例えば、前方散乱)、キャパシタンス、イメージングまたは目的の細胞を同定し得るいずれかの検出特徴的属性に基づき得る。
【0028】
図10a−bは、ソートパラメーターが陰性であって光学スイッチがトリガーされない場合用のディテクター配置および時間的調節/トリガー図を示す。細胞は主流動チャネルに入り、両側から流動するシース緩衝液によって単一の列にフォーカスされる。細胞が検出/選択領域中のレーザーを通過する際に、蛍光および前方散乱シグナルの両方が同時またはほぼ同時に検出される。細胞の存在は前方散乱シグナルを介して首尾よく検出される(時間tにて)が、蛍光シグナルはゲーティングレベル未満であり、光学スイッチはトリガーされない(時間tにて)。したがって、スイッチされた細胞は存在しないため、エラーチェックシグナル(時間tにて)は得られない。別法として、図10c−dは、ソートパラメーターが陽性であって光学スイッチがトリガーされる場合用のディテクター配置および時間的調節/トリガー図を示す。ここで、細胞が検出/選択領域中のレーザーを通過する際に、蛍光および前方散乱シグナルが再度同時またはほぼ同時に(時間tにて)検出されるが、蛍光レベルはゲーティングレベル内であって、光学スイッチはトリガーされる(時間tにて)。細胞はスイッチされたため、エラーチェックシグナル(時間tにて)が得られる。このアプローチにおいて、トリガー時間(時間tにて)は、初期検出時間(t)から測定したプリセット値(Δt)であって、このΔt値は細胞の速度および検出/選択領域に対する光学スイッチの位置によって決まる。このアプローチは、効率的なソーティングを達成するのに満足いくものである;しかしながら、トリガー精度をさらに改善するための手段として、第2のアプローチを用いる。
【0029】
図11a−bはこの第2のアプローチを示し、ここでは1のレーザー光源の代わりに2のレーザー光源を用いている。また、前記した単一レーザーアプローチと同様に、これらのディテクターからの一時的シグナルをスイッチ決定用の情報として用いる。1のレーザーを検出ゾーンにおいて用いて、同定/選択領域より前に細胞検出を分離して行う。この場合における検出は蛍光、散乱(例えば、前方散乱)、キャパシタンス、イメージング、または目的の細胞を同定し得るいずれかの検出特徴的属性に基づき得る。第2のレーザーは2またはそれを超えるディテクターと結合しており、これを用いて細胞検出および細胞同定を成し遂げる。ここでも、この場合における同定は、蛍光、散乱(例えば、前方散乱)、キャパシタンス、イメージング、または目的の細胞を同定し得るいずれかの検出特徴的属性に基づき得る。2の一連の細胞検出工程の目的は、第1の検出(時間tにて)と第2の検出(時間tにて)との間の時間差(Δt)から細胞の流速が得られるようにすることである。ディテクターウインドウ間の間隔(d)がわかれば流速(v=d/Δt)が得られ、この値を同定ウインドウから光学スイッチの既知の距離(x)と結合し、ついでそれを用いて光学スイッチのトリガー時間(t=x/v)を算出する。ここでも、特異的ゲーティングレベルが細胞同定工程について達した場合にのみスイッチングが起きる。同定用の単一の蛍光ディテクターしか示していないが、多重蛍光ディテクターを用い得る。描いた場合において、細胞のストリームは、分割面を細胞のストリームの右側に生成するために用いた異なる幅を有する出力チャネルと共に、等しい流速のシース緩衝液を用いることによって中央に位置する。しかしながら、先に論じたように、細胞のストリームおよび分割面の位置を操作するために用いるいずれの構成も用いることができる。また、両方の構成に共通するのは、エラーチェックディテクターの存在であり、それは細胞がスイッチされているか否かを証明する。この場合における検出は、蛍光、散乱(例えば、前方散乱)、キャパシタンス、イメージング、または目的の細胞を同定し得るいずれかの検出特徴的属性に基づき得る。
【0030】
図11a−bは、ソートパラメーターが陰性であって光学スイッチがトリガーされない場合用のディテクター配置および時間的調節/トリガー図を示す。細胞は主流体チャネルに入り、両側から流動するシース緩衝液によって単一の列にフォーカスされる。細胞の存在は、それが検出ウインドウ領域を通過する際に前方散乱シグナル(時間tにて)によって証明される。細胞が同定/選択ウインドウを通過する際に第2の前方散乱シグナルが得られる(時間tにて)が、このシグナルはゲーティングレベル内に存在しない。蛍光シグナル強度(時間tにて)と結合される。スイッチされた細胞は存在しないため、エラーチェックシグナル(tにて)は得られない。セルソーティングをしなくても、細胞のストリームの流速(v)は(t)、(t)および検出および同定ウインドウ間の既知の距離(d)を用いて得る。これは関係式:Δt=(t)−(t)およびv=d/Δtを用いて得る。
【0031】
別法として、図11c−dは、ソートパラメーターが陽性であって光学スイッチがトリガーされる場合用のディテクター配置および時間的調節/トリガー図を示す。ここでは、細胞の存在が、それが検出ウインドウ領域を通過する際の前方散乱シグナル(時間tにて)によって再度証明される。細胞が同定/選択ウインドウを通過する際に第2の前方散乱シグナルが得られ(時間tにて)、ついでこのシグナルがゲーティングレベル内に存在する蛍光シグナル強度(時間tにて)と結合され、光学スイッチがトリガーされる(時間tにて)。細胞がスイッチされたため、この場合はエラーチェックシグナルが得られる(時間tにて)。このアプローチにおいて、トリガー時間(t)はプリセット値ではなく、むしろそれは、細胞のストリームの流速(v)および光学スイッチと同定ウインドウとの間の距離(x)とを用いて計算する。これは、関係式:Δt=(t)−(t);v=d/Δt;(t)=x/vを用いて得る。このアプローチは、細胞の流速中の揺らぎ(fluctuation)を算定することができるため、より効率的なソーティングが許容され、したがってより正確に光学スイッチをトリガーし得る。このアプローチの付加された利点は、各個々の細胞に対して、レーザースポットをチャネルの下方に移動させる速度を、前記のように決定した細胞の速度と合致し、したがって細胞と光学スイッチのレーザースポットとの間の相互作用時間が最大限化されるように調節されることの可能性である。レーザースポットの移動速度は、AOM用のドライバーを変化することによって変わるであろう。
【0032】
前記したトリガーアプローチを取り入れながらソーティング効率を改善するためのもう1のアプローチは、真の試料コアを生成するチャネル設計を用いて主チャネル中の細胞を中心に集めることであり、それによってコアがシース緩衝液によって完全に取り囲まれる。チャネルの高さに沿った細胞の位置における変化は、細胞検出および蛍光強度における変化を生じ得る。細胞が主チャネルの中央を流動するコアに存在することを保証することは、このことが細胞の放射状の分布に起因するいずれの変化も最小限化し、かつ、効率的なソーティングを遂げるために細胞を運動させる必要がある距離を制御するため、ソーティング効率を改善し得る。かかるコア流動は、シース緩衝液と共に入力流動ストリームの二次元締め付けを用いて達成し得る。
【0033】
このアプローチは底部基体および上部基体を必要とし;各々それらの中に形成されたマイクロ流体チャネルネットワークを有する。図12a−bおよび図13はこれを成し遂げるための1の方法を示し、そこでは、1の基体上のチャネル設計は他の基体上のチャネル設計の鏡像である。したがって、2の基体はチャネル設計を互いに面しつつ一緒になった場合、チャネルネットワークが重なり、完全な流体溝を形成する。図12a−bは、破線として示す試料チャネルを有する、このアプローチに使用した1の型の設計を示す。このアプローチの鍵となる特徴は、基体を一緒にした場合に試料溝が接合部に孔として入るように見えるように、試料チャネルがシースチャネルよりも浅くなることを保証することである。これを図13に示す。ここでは細胞は接合部に入るように見ることができ、ついで主チャネルの中央を流動する試料コアを創るすべての側面から締め付けられる。チャネルは化学ウェットエッチングまたはガラスもしくはクウォーツのレーザーエッチングによって、プラスチックまたはポリマーにおける成型またはエンボス加工によって形成し得る。
【0034】
もう1の方法には、第1の接合部/交差部において細胞が主チャネルの1の壁に向けて垂直的に押され、次の接合部/交差部がこの細胞の流れを主チャネルの中央に垂直的に押し、ついで第3の接合部/交差部において両側からの最後の締め付け流が主チャネル中を流動する試料コアの周りに完全なシース緩衝液シュラウドを生成するように配された一連の交差チャネルを有することが含まれる。これを、図16に示す1の可能性のあるチャネル概略図とともに図14および15に示す。この例においては、接合部(A)において、試料は上部基体から接合部に流動し、底部基体中のチャネルに落下し、そこではサイドシース緩衝液が両側から接合部に流入している。試料は、それが次の接合部(B)に向けて流動し続けるにつれて底部チャネルの上面壁にわずかに集められ、押される。接合部(B)において、試料は接合部(A)から接合部(B)に底部チャネルの上面に沿って流動する。ここで、第2のシース緩衝液は上部基体から接合部(B)に流動し、試料は底部基体中のチャネルの中位に押し下げられる。試料は、次の接合部(C)に向けて底部チャネルの中位に沿って流動し続ける。ここで、第3のシース緩衝液が両側から接合部(C)に流入し、試料は単一の列に締め付けられる。試料は、主入力チャネル内で水平的および垂直的の両方で中心に置かれた試料コアとして流動し続けるにつれて、いまやシース緩衝液によって取り囲まれる。
【0035】
図1−16に記載するすべてのマイクロ流体チャネルネットワークの設計は、従来のフォトリソグラフィーマスクおよびマスク形成したガラス基体の等方エッチングを利用してガラス基体に作製される。等方エッチングは、典型的には、チャネルの中心部に深さdおよび幅w=w+2×dを有するマイクロ流体チャネルを作製し、ここでwはチャネルを画定するフォトリソグラフィー・パターンの幅である。チャネルの底部特性は等方エッチングに起因して各端部で半径dの四半円形輪郭を有し、エッチングしたチャネルの上面は開放である。ガラス基体、典型的にはカバーガラス・スリップを、エッチングしたマイクロ流体チャネルを有する基体に熱的に結合してチャネルの上面をシールしてマイクロ流体チャネルネットワークを完成する。孔は典型的には熱的結合の前に上部基体にあけて、マイクロ流体チャネルネットワークへの流体の流れの進入および退出用のビアス(vias)を提供する。チャネルの深さdは化学的エッチングプロセスの速度およびエッチング工程の時間に依存する。マイクロ流体チャネルの深さは、典型的には、限定されるものではないが、10μmないし100μmの範囲である。マイクロ流体チャネルの幅は、典型的には、限定されるものではないが深さの2ないし5倍である。これは、典型的には、限定されるものではないが5μmないし400μmの範囲であるフォトリソグラフィーマスク上の線を用いることによって達成する。先に言及したごとく、プラスチックまたは成型可能もしくはキャスト可能なポリマーのような他の基体を用いることができる。これらの場合においては、マイクロ流体チャネルは典型的には矩形の断面を有しているか、さもなければガラス基体中のチャネルと同様である。その中にマイクロ流体チャネルを作製するガラス基体のサイズは、典型的には、限定されるものではないが、500μmないし2mmの全体厚さを有する、限定されるものではないが、5mm×5mmないし25mm×50mmの範囲である。上部基体は、典型的には、限定されるものではないが300μmないし1mmの範囲の厚さを有する、同じサイズのものである。ビアスは、典型的には、限定されるものではないが、直径200μmないし600μmである。マイクロ流体チャネルネットワークおよび流体の流動の進入および退出のための流体ポート用のビアスを有する結合したカバープレートを有する完成した基体は、マイクロ流体ソーティングチップまたは簡潔(brevity)用のチップという。
【0036】
図1−16に示すマイクロ流体チャネルネットワークは、典型的には、入口マイクロ流体チャネル、シース緩衝液締め付け接合部チャネル、細胞同定および光学スイッチ主チャネル、および出口チャネルへの主チャネルの分岐点の局部外形を記載しているにすぎない。この説明は拡大して各チャネルの領域について提供される必要があり、前記したビアスへのインターフェースを提供するマイクロスケールの流体デバイス中の貯留部への接合を作製して、ネットワークからの流体の流動の進入および退場を提供する。これらの各々のマイクロ流体チャネルの断面および長さは、典型的には、チャネル中の流動を達成するために選択した技術に依存して、全体のマイクロ流体チャネルネットワーク内に適当な制御された流動を保証するために調節する必要がある。これらのチャネルの断面および長さの両方は、フォトリソグラフィーマスクを作製するために用いたパターンによって決まる。
【0037】
図17は、入口チャネル、T−締め付け接合部への2のシースチャネルおよびT―分岐接合部からの2の出口チャネルを有する完全マイクロ流体チャネルネットワーク用のマスクの1を示す。このマスクは7:1の体積締め付け比率(シース流動速度が細胞入口流動速度よりも7倍大きい)を提供するために設計した。チャネルの長さを設計して両方の十分な圧力の低下を提供し、標準的な低流動シリンジポンプまたは低空気圧コントローラーのいずれかの使用を可能にして流動を確立する。該設計は、大気圧に維持された出口と、2のポンプ、そのうちの1は細胞入口チャネル用のもので、1は2のシースチャネル用のもの、のみの使用を可能にするために必要な圧力とのバランスをも反映している。シースチャネル入口は設計の上面の端部に存在し、細胞入口チャネルは2のシースチャネルの中央でこれよりも下方で始まり、7:1の締め付け比率を設定するのに適当な圧力低下を提供するのに十分に長く、および2の出口は底部の左および右の端部に位置する。
【0038】
図18は、10:1の体積締め付け比率を提供する設計の、締め付け接合部用の三角形接合部およびY−分岐接合部を取り入れるもう1の形態を示している。他の点では、設計は図17のものと外形的に同様である。他の設計も明らかに可能であるが、それらはすべて、流体に進入および退出を提供するための、流体の流動を確立するために選択した方法に適当な圧力の低下および圧力のバランスを提供するために必要な共通の特徴を共有している。同様な設計条件を用いて、以前に記載した2次元締め付け流動ネットワーク用のマイクロ流体チャネルネットワークを作製するために用いるフォトリソグラフィーマスクを作製する。
【0039】
図19は、完全なマイクロ流体ソーティングチップ中のマイクロ流体チャネルネットワークの好ましい形態を示す。この細胞試料流動用およびシース緩衝液流動用の2の入口が、蛍光陽性標的細胞用および蛍光陰性非標的細胞用、廃棄ストリーム用の2の出口と同じように同定されている。チップは24mm×40mmである。エッチングした基体の厚さは1.1mmである。結合したカバープレートの厚さは550μmである。マイクロ流体チャネルは50μmの深さである。細胞入口マイクロ流体チャネルは110μmの幅である。シース流動および出口マイクロ流体チャネルは、主マイクロ流体チャネルと同じように150μmの幅である。シース流締め付け接合部は、1の側当たり300μmの逆正三角形であり、接合部の底部で、三角形の頂点を通って各側から主チャネルへの2のシース流締め付けチャネルと、接合部の上部にて三角形の底辺を通って細胞入口チャネルを連結する。このマイクロ流体チャネルネットワーク設計は、すべての4の出入口において圧力制御を使用するのに最適化されている。
【0040】
チップへのマイクロ流体連結は、種々の方法で作製し得る。1の方法は、接着剤、または、出入口にてチップの表面に結合してもよい種々の管系アダプターを用いることのいずれかによって、出入口に直接的に連結された柔軟なマイクロ流体管系を使用することである。この管系は、細胞試料およびシース緩衝液の両方を取り扱うための体積を提供し、かつ、チップを通してこれらの体積を流動するための圧力を提供するシリンジポンプまたは同様の系に直接的に連結し得る。試料体積を取り扱うためのシリンジポンプを使用することは、ポンプが清掃されることおよび各試料について再充填されることを必要とし、1の試料から次の試料への持ち越しまたはコンタミネーションの可能性を導入する。
【0041】
チップへのマイクロ流体連結の改良された方法は、UV硬化性接着剤、PSA結合シート、または他の慣用的な結合方法を用いてチップに直接的に接着するカートリッジを利用する。カートリッジは、細胞入口チャネルへの境界面連結部を別々に提供する4のビルト・イン(built-in)貯留部、2のシースチャネル(1の貯留部からの)、および各々2の出口チャネルを有する。かかるカートリッジは、細胞試料およびソートした標的細胞およびソートした標的細胞の両方および廃棄ストリームの無菌の取扱いの可能性を提供する。なぜなら、それらは細胞ソートの前後のカートリッジの体積を完全に決めることができるからである。かかるカートリッジおよびチップ系の流動は、細胞入口およびシース緩衝液貯留部を別々に与圧する2の圧力式圧力コントローラーを用いて、チップのマイクロ流体チャネルネットワークを通り大気圧である出口貯留部までの流動を誘導することができる。
【0042】
改良された流動制御方法は、細胞入口、シース緩衝液、標的細胞収集部および廃棄物収集貯留部の各々を別々に与圧する4の圧力式コントローラーを用いることによって提供される。かかる流動制御系は、以前に記載したように、シース締め付け接合部における体積締め付け比率、蛍光分析および光学スイッチ用の主マイクロ流体チャネル中の細胞の流動速度、ならびにスイッチング分岐部における分割比を別々に調節する能力を提供する。
【0043】
図20は、細胞試料体積、シース緩衝液体積、ならびに各々標的細胞および廃棄物用の2の出口収集体積用の流体貯留部を提供する自蔵ディスポーザブル・カートリッジの好ましい形態を示す。カートリッジはアクリル酸系プラスチックから製造し、機械加工またはキャストのいずれかとし得る。適当な場合には、アクリル酸の代わりに他のプラスチックまたは好適な材料を用い得る。細胞試料体積は、典型的には形状において円錐形であって、入口マイクロ流体チャネルの出入口に向かって細くなる。好ましい形態において、入口貯留部は、細胞付着を最小限化し、その結果として細胞収率を最大限化するためのポリプロピレン・インサートを含む。チップは光学ウインドウ領域にUV接着剤を用いて結合し、チップからの出口はその各々の貯留部体積と接する。貯留部体積は、圧力式コントローラーおよび個々の貯留部の間を結合するための孔を開けた口を有するスナップ−オン(snap-on)蓋で密閉する。蓋にはカートリッジ本体に対しての密閉を助けるシリコーン・ガスケットが含まれる。それは、また、0.1μmポリプロピレン・フィルターをも取り込み、カートリッジ体積と外部環境との間に気体透過性で、液体タイトな境界面を作る。これは、カートリッジに無菌条件を維持し、使用者または機器に対する生物学的危険のコンタミネーションを最小限化する。
【0044】
カートリッジは、ルアーフィット(luer fitting)を有する通常のシリンジを用いて、シース緩衝液溶液でシース出入口を通るマイクロ流体チャネルネットワークを最初に準備することによって細胞ソーティング運転用に調製する。このようにしてチャネルを準備し、シース貯留部を800μlで満たし、各出口貯留部を200μlで満たす。細胞試料貯留部は過剰量の緩衝液を吸引し、ついで5−25μlの細胞試料をピペットを用いて試料入力貯留部に入れる。ついで、カートリッジ蓋を当て、所定位置にパチンと締めて、中で細胞ソーティング運転を行うための自蔵系(self-contained system)を提供する。
【0045】
カートリッジは、光学スイッチビームをチャネルに投射する光学イメージング系が適当に整列されおよび該チャネルにフォーカスされるように、チップの主チャネルの位置を定めるホルダーに設置されるように設計する。カートリッジホルダーは、外部管系によって4の圧力コントローラーに連結された、4の出入口を有する圧力マニホールドプレートも含む。各マニホールド出入口は、その各々のカートリッジ蓋出入口にO−リングでシールされ、これらのシールはカムーロック機構でもってマニホールドをカートリッジ蓋に対して押しつけることによって漏れがないものになる。
【0046】
光学スイッチの光学系の好ましい形態を図21に示す。スナップ・オン蓋に連結している圧力マニホールドを有するカートリッジは、光学スイッチがカートリッジの上方から見るレンズ系および下方から見るレンズ系の両方の焦点に光学スイッチ領域が存在するように設置する。488nmレーザーからの出力ビームは、図3―7および9−11に示すように、ソート領域のすぐ上流の主チャネルにイメージング系を通して投射し、蛍光−陽性標的細胞からの蛍光を検出するための励起を提供する。蛍光放射は同じレンズによって収集され、ダイクロイック・ミラーおよび適当な蛍光放射フィルタを通して光電子増倍管にイメージされる。光電子増倍管からのシグナルはエレクトロニクスによって加工されて、細胞からの蛍光のレベルを測定し、主チャネルの流動ストリーム中の蛍光陽性標的細胞の存在を決定する。蛍光励起は488nmの波長に限定されないが、標的細胞を同定するための発蛍光団に適当ないずれかの波長とすることができる。異なる励起光を用いる場合には、蛍光放出フィルタの波長をそれに従って変更しなければならない。蛍光陽性細胞を同定する場合、エレクトロニクスがAOMをトリガーしてIR−レーザーからのビーム、典型的には5ないし20W出力の1070nmのレーザー操作を光学スイッチ位置の主チャネルに指向する。好ましい形態において、AOMを制御して図9bに記載する光学スイッチパターンを作成するが、以前に記載したいずれの光学スイッチ方法も与えることができる。カートリッジ下方のレンズは488nm励起光をフォトダイオードにイメージする。このフォトダイオードによって検出したシグナルを用いて、蛍光標識を運搬し得るより小さい残渣から蛍光標識された細胞を区別することが助けられ、形成しているかもしれない細胞の塊も同定する。これらの事象は、標的出力チャネルへソーティングするための候補として拒絶される。
【0047】
なお他の好ましい形態は、適当なイメージングおよび光学フィルタリングを取り込み、蛍光を励起するために使用する488nmレーザーによって細胞の光に基づく前方散乱シグナルを提供するであろう。光学構成部品は、限定されるものではないが、0.8°ないし10°のような角度感度の範囲を前方散乱シグナルの検出に提供するであろう。このシグナルは蛍光シグナルに加えて細胞を特徴付けするのを助けることができ、ならびに、残渣から細胞を区別するのを助けることができる。前方散乱光は蛍光励起レーザーに限定されるものではなく、主チャネルに適当にイメージするさらなる光源によって提供されるいずれか他の波長であってもよい。
【0048】
なお他の好ましい形態は、典型的には、限定されるものではないが、488nmのような単一の励起波長を用いて、異なる波長の蛍光放射に感受性であるさらなる蛍光検出チャネルを取り込むであろう。各検出チャネルは、適当なダイクロイック・ミラーおよびさらなる蛍光団の蛍光放射波長の放射フィルタを有するPMTを取り込むであろう。2ないし4の蛍光検出チャネルはこのよすいきに容易に順応する。この様式で1を超える発蛍光団を用いれば、光学スイッチを用いてソーティング用の標的細胞を同定する多重の検出基準の能力を提供する。
【0049】
他の好ましい形態は、典型的にはネットワークにおいて1のチャネルを横切る狭い線のような、および典型的には蛍光検出に使用する波長の範囲の外であるより長波長であるが、典型的には1070nmである光学スイッチ波長よりも短波長である、おそらくは限定されるものではないが固体レーザーからの785nmの光学光を提供するエラーチェック能力を取り込むであろう。この光源は、マイクロ流体チャネルネットワークに適当にイメージすることができて、ネットワークにおけるいずれかの垂直面を通過する粒子を検出するために使用することができる線を提供し得る。これは、光学スイッチ性能の性能をチェックする能力を提供し、および図11に記載するように光学スイッチのトリガーの時間的調節のためのさらなる可能性を提供する。
【0050】
光学系のなお他の好ましい形態は、例えばLEDからの光をフィルタリングするバンドパスによって生成されるような、制限するものではないが750nmのさらなる光学光路を取り込み、その光でマイクロ流体チャネルの領域を照射するであろう。その領域は750nmパスフィルターを通してCCDカメラにイメージされ、分岐接合部および/または締め付け接合部でマイクロ流動チャネルネットワーク中を流動する細胞の性能の視覚化を提供するであろう。カメラの前のフィルタは、蛍光の励起または検出と関連する、ならびに前方/側方散乱光学構成部品およびエラー検出光学構成部品と関連する、いずれかのより短い波長の放射を遮断するのに十分であろう。フィルタは光学スイッチからのより長い波長、1070nmの光も遮断するであろう。
【0051】
図20に示すカートリッジの好ましい形態は、すべてのチャネルおよび入口/出口が同じ垂直レベルに存在するように、水平構成でマイクロ流体チャネルネットワークを保持するように設計される。これは、マイクロ流体チャネルを通る圧力低下に対する重力の影響を最小限化し、ネットワークにおけるより安定かつ制御可能な流動に通じる。しかしながら、重力は流動中の細胞に対して、特に細胞が細胞試料貯留部から細胞入口マイクロ流体チャネルに移る際に、いまだ影響を有するであろう。この貯留部に細胞を静置することおよび締め付け接合部で細胞流動が速度を上昇する前に入口マイクロ流動チャネル中の比較的遅い流動にそれを静置することに対する重力の影響を制御するのを助けるためのソーターの他の好ましい形態は、細胞の静置が最小限化されるように細胞の浮力を高めることである。浮力を高めることは、試料緩衝液中の添加物を用いることによって達成し得る。これらの流動学的制御添加剤、特に擬似プラスチックまたは剪断が小さいかのいずれかまたは両方のものの例は、キサンタンガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルグア、アラビアガム、トラガカントガム、アルギネート、ポリアクリレート、カーボマーである。他の添加剤には、ポリスクロースおよびジアトリゾ酸ナトリウムの混合物であるHistopaque(登録商標)、および水中のイオジキサノールの60w/v溶液であるOptiprep(登録商標)が含まれる。用いるこれらの添加剤の濃度は、ソートする細胞の密度に依存する。例えば、Optiprep(登録商標)の場合、濃度は5%ないし40%の範囲とし得る。最後に、試料緩衝液の塩分濃度およびスクロースの添加も用いて、細胞の浮力を調整することもできる。
【0052】
細胞試料体積およびシース流のために使用する緩衝液は、ソートする細胞と生物学的に親和性であり、蛍光検出特徴的属性および光学スイッチの両方に使用する光学光と親和性であるいずれの緩衝液であってもよく、すなわち緩衝液は蛍光励起/検出波長および光学スイッチ波長で十分に低い吸収を有する。シース緩衝液の好ましい形態はPBS/BSA、1%ウシ血清アルブミン(BSA)フラクション5を含むpH7.2のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を使用する。細胞緩衝液の好ましい形態は、生細胞試料については14.5%のOptiprepを含むPBS/BSAを使用し、種々のホルマリン固定細胞試料については27%のOptiprepを使用する。
【0053】
マイクロ流体チャネルネットワークにおける細胞ソーティングの光学スイッチ法の性能は、以前に記載したソートのスループット、純度および回収率によって評価する。図20に記載したカートリッジは最適化して、性能の測定を許容する。それがアクリル酸製であり、標的および廃棄収集貯溜器の底面が透明であって、これらの貯溜器にソートされた細胞は倒立蛍光顕微鏡を用いて数および蛍光標識の両方について定量化し得るからである。図3−11に記載したスイッチ構成のいくつかを評価した。これらの評価は、1−もしくは2−の側方レーザースポットまたは0°もしくは8°の1−側方レーザースウィープのいずれかを用いてソートした生HeLa:HeLa−GFP細胞の50:50混合物を用いて行った。レーザーは240Hzでスウィープした。レーザーのON時間は4msecで、レーザー出力はすべてのスイッチモードについて20Wとした。スウィープスポット法については、フォーカスしたIRレーザースポットを、主チャネルに沿って約70μm書き換えた。
【0054】
図22に示すように、図6に記載したレーザースポットを有する二方向光学スイッチは、50細胞/秒のスループットまで、標的:非標的細胞の50:50混合物の純度および回収率について良好な結果を与えた。しかしながら、より低い準集団濃度においては(データは示さず)、非標的細胞をスイッチするレーザー出力の効率的な使用は存在せず、より高い細胞スループット速度では一致誤差が増加した。さらに、スイッチされなかった小さい粒子は標的貯溜器を汚染するであろう。
【0055】
図22は、流動と平行または僅かな角度のいずれかの、固定レーザースポットまたは流動の方向で書き換えられたスポットと一緒に、図9に記載した1−側方スイッチング方法の性能も示している。光学スイッチの不存在下のデフォルトによってすべての細胞が廃棄になるように、試料コア流動ストリームを廃棄出口にバイアスした。これらの方法は両方とも、スポットによって示されるように、改善した性能を与えた。これら2の方法の性能が交差するという事実は、光学スイッチのトリガーが最適でないことを示唆しており、図10および11に記載する光学スイッチの能動トリガーが性能を改善するであろうことを示唆している。
【0056】
巻末の注
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【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、マイクロ流体チャネルネットワークにおけるY型ソーティング接合部の平面図である。
【図2】図2は、流動中の細胞の50/50分配を有する、主チャネルによって結合されたシース流締め付け接合部(pinch junction)およびY型ソーティング接合部の双方を取り込んでいるマイクロ流体チャネルネットワーク、集合的に50/50光学スイッチネットワークという、の平面図である。
【図3a】図3aは、光学スイッチを有する、異なるシース流を介した流動中の細胞の非対称分配を有する、主チャネルによって結合されたシース流締め付け接合部およびY型ソーティング接合部の双方を取り込んでいるマイクロ流体チャネルネットワーク、集合的に光学スイッチを有する、シース流非対称光学スイッチネットワークという、の平面図である。
【図3b】図3bは、光学スイッチを有する、異なるシース流を介した流動中の細胞の非対称分配を有する、主チャネルによって結合されたシース流締め付け接合部およびY型ソーティング接合部の双方を取り込んでいるマイクロ流体チャネルネットワーク、集合的に光学スイッチを有する、シース流非対称光学スイッチネットワークという、の平面図である。
【図4a】図4aは、光学スイッチを有する、異なる出口チャネル幅を介して流動中の細胞の非対称分配を有する、主チャネルによって結合されたシース流締め付け接合部およびY型ソーティング接合部の双方を取り込んでいるマイクロ流体チャネルネットワーク、集合的にシース流非対称光学スイッチネットワークという、の平面図である。[つづく図においては、数字ベースの標識の代わりにテキストベースの標識を用いており;それにもかかわらず、同様の図においては図1−4の数字ベースの標識をなお適用することに注意されたい]。
【図4b】図4bは、光学スイッチを有する、異なる出口チャネル幅を介して流動中の細胞の非対称分配を有する、主チャネルによって結合されたシース流締め付け接合部およびY型ソーティング接合部の双方を取り込んでいるマイクロ流体チャネルネットワーク、集合的にシース流非対称光学スイッチネットワークという、の平面図である。[つづく図においては、数字ベースの標識の代わりにテキストベースの標識を用いており;それにもかかわらず、同様の図においては図1−4の数字ベースの標識をなお適用することに注意されたい]。
【図5】図5は、二方向レーザー線光学スイッチを有する50/50光学スイッチネットワークである。
【図6】図6は、二方向レーザースポット光学スイッチを有する50/50光学スイッチネットワークである。
【図7a】図7aは、2よりも多い出口チャネルを有するより大きなマイクロ流体チャネルネットワークにおけるレーザー線光学スイッチの平面図である。
【図7b】図7bは、2よりも多い出口チャネルを有するより大きなマイクロ流体チャネルネットワークにおけるレーザー線光学スイッチの平面図である。
【図7c】図7cは、2よりも多い出口チャネルを有するより大きなマイクロ流体チャネルネットワークにおけるレーザー線光学スイッチの平面図である。
【図8】図8は、光学スイッチの変調および/または閉鎖のための可能な光学設計を示す。
【図9a】図9aは、細胞流動に平行または細胞流動に対してある角度で移動したレーザースポット光学スイッチを有する、シース流非対称光学スイッチネットワークの平面図である。
【図9b】図9bは、細胞流動に平行または細胞流動に対してある角度で移動したレーザースポット光学スイッチを有する、シース流非対称光学スイッチネットワークの平面図である。
【図10a】図10aは、細胞検出およびトリガー決定法(trigger decision method)用の単一レーザー光源を用いるディテクター配置および時間的調節/トリガー図を示す。
【図10b】図10bは、細胞検出およびトリガー決定法(trigger decision method)用の単一レーザー光源を用いるディテクター配置および時間的調節/トリガー図を示す。
【図10c】図10cは、細胞検出およびトリガー決定法(trigger decision method)用の単一レーザー光源を用いるディテクター配置および時間的調節/トリガー図を示す。
【図10d】図10dは、細胞検出およびトリガー決定法(trigger decision method)用の単一レーザー光源を用いるディテクター配置および時間的調節/トリガー図を示す。
【図11a】図11aは、細胞検出およびトリガー決定法用の2のレーザー光源を用いるディテクター配置および時間的調節/トリガー図を示す。
【図11b】図11bは、細胞検出およびトリガー決定法用の2のレーザー光源を用いるディテクター配置および時間的調節/トリガー図を示す。
【図11c】図11cは、細胞検出およびトリガー決定法用の2のレーザー光源を用いるディテクター配置および時間的調節/トリガー図を示す。
【図11d】図11dは、細胞検出およびトリガー決定法用の2のレーザー光源を用いるディテクター配置および時間的調節/トリガー図を示す。
【図12】図12は、これらの基体が結合して単一のネットワークを形成した場合に主チャネル中に細胞流動の2次元シース流締め付けを与える底部および上部ガラス基体の双方の中のマイクロ流体チャネルネットワーク用のフォトリソグラフィーマスクの代表的設計の概略図である。
【図13】図13は、図12に記載した設計の3次元の図面を示す。
【図14】図14は、垂直方向およびついで水平方向で細胞流動の一連のシース流締め付けを与え、主チャネル中に細胞流動の完全な2次元シース流締め付けを生じるマイクロ流体チャネルネットワークの側面図である。
【図15】図15は、図14に記載したマイクロ流体チャネルネットワークの3次元図である。
【図16】図16は、一緒に結合した場合に図14および15に図示したマイクロ流体チャネルネットワークを形成する底部および上部ガラス基体の双方の代表的なフォトリソグラフィーマスク設計の概略図である。
【図17】図17は、光学スイッチベースのセルソート法を実行するために、T−締め付け接合部および出口チャネルへのT−分岐接合部を有する、完全なマイクロ流体チャネルネットワークようのフォトリソグラフィーマスクの代表的な形態である。
【図18】図18は、光学スイッチをベースとするセルソート方法を実行するための、三角形締め付け接合部および出口チャネルへのY−分岐接合部を有する、完全なマイクロ流体チャネルネットワーク用のフォトリソグラフィーマスクの代表的な形態である。
【図19】図19は、完成したマイクロ流体セルソーティング・チップにおけるマイクロ流体チャネルネットワークの好ましい形態を示す。
【図20】図20は、光学スイッチをベースとするマイクロ流体チャネルネットワークセルソーター用の自蔵ディスポーザブル・カートリッジの好ましい形態を示す。
【図21】図21は、光学スイッチをベースとするマイクロ流体チャネルネットワークセルソーター用の光学システムの好ましい形態を示す。
【図22】図22は、光学スイッチの種々の実行のための、光学スイッチベースのマイクロ流体チャネルネットワークセルソーターの代表的性能を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含む流体を受容するよう適合された微細加工流路、
対象細胞の圧力を感知するディテクター、
対象細胞の検出に基づいて選択的に活性化するように適合された光学スイッチを含むセルソーターであって、ここに光学スイッチが、スイッチが流路の少なくとも一部分を照らして、細胞を非捕捉力(non-trapping force)に付すことを特徴とするセルソーター。
【請求項2】
ディテクターが蛍光ディテクターである請求項1に記載のセルソーター。
【請求項3】
照光が線の形態である請求項1に記載のセルソーター。
【請求項4】
線が細胞の流路に対して角度が付けられている請求項3に記載のセルソーター。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2007−504446(P2007−504446A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524942(P2006−524942)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/028213
【国際公開番号】WO2005/022147
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506030734)セルラ・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Celula, Inc.
【住所又は居所原語表記】3398 Carmel Mountain Road, San Diego, CA 92121, U.S.A.
【Fターム(参考)】