説明

マイクロ流体デバイスの大規模表面改良

マイクロ流体デバイスの一つ、二つ若しくはそれ以上のマイクロチャネル構造のうちの各々の中の内側表面の改良のための方法である。マイクロチャネル構造の各々は周囲の大気と繋がる一つ、二つ若しくはそれ以上のポート(PT)を含む。マイクロコンジット部は、改良されるべき内側表面を含む。本発明の方法は、上記マイクロチャネル構造の各々に対して、(I)上記の一つ、二つ若しくはそれ以上のポート(PT)のうちの少なくとも一つのポート(PT’)を介して表面改良薬剤を含む液体でマイクロコンジット部を充填するステップと、(II)上記マイクロコンジット部内部に上記液体を保持するステップと、(III)上記マイクロコンジット部から、例えば、上記マイクロコンジット部を含むマイクロチャネル構造から上記液体を除去するステップを含む。ステップ(I)の充填のために減圧が利用されることが本発明の特徴である。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイス内部に存する1つ、3つ又はそれ以上のマイクロチャネル構造の内側表面の改良のための方法に関する。
【0002】
本発明に係る内側表面の改良は、マイクロ流体デバイスのマイクロチャネル構造内部の液体接触表面の化学的及び/又は物理的表面特性を変更すること、即ち、マイクロチャネル構造を利用する際に液体と接触することになる表面の改良を含む。
【0003】
本明細書に引用の全ての特許出願及び交付済み特許は、参照することにより全体として本明細書と一体となる。
【0004】
[背景技術]
この20年間、μlの範囲であり反応物及び/又は試薬を含む液体量が移動され処理され得るマイクロ流体デバイスを設計することが、非常に重要であった。移動と処理は、典型的には準備、分析及び/又は合成の目的を有するものであった。分析の目的は、典型的には、未知のもの(検体)が量、活性、構造、独自性などの一つ又はそれ以上の特性により特徴付けられる処理プロトコルに関する。典型的な分析プロトコルは、酵素アッセイなどの触媒アッセイ、免疫アッセイ、細胞に基づくアッセイなどのレセプターリガンドアッセイを、含む。
【0005】
プロトコルに関する複数の処理ステップを同じマイクロチャネル構造の中に統合し、及び/又は、高度な並行によりそのようなプロトコルを実施し、正確な、再現可能な、信頼性の高い結果を取得することが、重要な目的である。内部表面特性、及び/又は、別の構造で同じ実験を並行して為すために得られる結果において、内側チャネルをあまり変更しない廉価で実効的な製造方法により、上記のことが重要となる。内部チャネルをあまり変更しないという目的は、デバイス間で、及び同じデバイス内部で適用される。デバイスがディスポーザとして利用され得るようにコストを下げることが、主要な目的の一つである。
【0006】
マイクロ流体デバイスのマイクロチャネル構造の内部表面は、典型的には、実施される特定プロトコル、試薬、反応物及び利用液体に関して、物理的に及び/又は化学的に改良される必要がある。通常の表面の改良は、一部でもよく、液体が移動され処理されるべきマイクロチャネル構造の実質的に全部分に渡って拡張してもよい。例えば、液体移動のために毛管現象が利用され液体がイオン化された水性であるならば、内部表面は、一般的には可溶性表面被膜を導入することによって、毛管現象に十分な可溶性を備えるように改良されねばならない。反応物及び/又は試薬の受け入れ不能な吸着作用に対するリスクがあれば、一般的には望ましくない吸着作用を低下し可溶性を増加する被膜を導入することによって、表面の改良は、これら分子種の望ましくない吸着作用を十分に低いものに確保すべきである。受動弁機能、孔機能、アンチウイッキング機能などで利用され得る非可溶性局部表面領域(疎水性中断)が、化学的表面特徴を改良することによって、導入されてもよい。意図される処理プロトコルが不均一反応、即ち溶質と固体相結合反応物との間の反応を含むならば、内部表面は、改良されて固体相結合反応を適切に晒し及び/又は利用可能な表面領域を拡張する必要がある、即ち、化学的及び物理的表面特徴にて変化が生じる。表面を拡張することによって物理的な表面特徴にて変化を生じることは、例えば、充填層などのポーラス層、若しくはポーラスモノリシックプラグを導入することを含む。
【0007】
既製品のデバイスで利用される処理プロトコルは、内部表面の改良を本来的に意味する一つ又はそれ以上のステップを含んでもよい。プロトコルが前段落で説明したタイプの不均一反応を含む場合は、例えば、水溶性反応物が固体相で捕獲されるステップを含むことがある。この水溶性反応物は、マイクロチャネル構造で移動され処理される液体内に存在する検体若しくは他の反応物と、後続のステップで相互作用する、検体若しくは反応物であればよい。この後者の相互作用は、反応物の固体相への結合/捕捉や、不溶性及び/又は沈殿性生成物、及び/又は水溶性生成物に繋がる反応を、含んでもよい。
【0008】
これまで2つの主たる手段が、マイクロ流体デバイスの内部表面の改良に利用されてきた。第1の手段は、基板の表面内に存在する覆われないマイクロチャネル構造の表面の改良を含む。基板表面は、続いてふたで覆われる。第2の手段は、マイクロチャネル構造の囲まれた形態で始まり、マイクロチャネル構造の中に表面改良液体を導入することを含む。適切な培養期間のあと液体は除去される。夫々の手段は、特定の表面改良処理に関して、通常それ自身選択する。両方の手段を利用することが有益であることもある。例えば、WO03086960(GyrosAB)、WO0147638(GyrosAB)、WO0056808(GyrosAB)、WO9800709(Amersham Pharmacia Biotech AB)、WO04067444(GyrosAB)を参照されたい。2つの手段には、2つ又はそれ以上のマイクロ流体デバイスを並行して改良するために調整されたものはない。コスト実効のある製造方法を研究する間に、第2の方法に対して、同じマイクロ流体デバイスのマイクロチャネル構造の並行充填に関する問題点が存在することに気付いた。
【0009】
Monahanら(Anal.Chem.73(2001)3193−3197)は、減圧を用いることにより、複雑な重合体マイクロ流体デバイス及びアレイを液体で充填する方法を示す。
【0010】
[発明の目的]
本発明の主たる目的は、マイクロ流体デバイスの内部表面の表面改良のための改良方法を提示することである。多数のマイクロチャネル構造及び/又はマイクロ流体デバイスに関して、高程度の並行処理で方法を実施することが可能である。方法は、マイクロ流体デバイスを利用して得られる結果の変形例から明白なように、内部表面の相互チャネルの変形例に、低い相互の及び/又は内部のデバイスを与えるものである。
【0011】
[発明]
[発明の概要]
表面改良されるべき内側表面があるマイクロチャネル構造の中に表面改良薬剤を注入するために、減圧が適切に利用されるならば、これらの目的が達成可能であることが、本発明では認識されている。
【0012】
本発明の一つの主要な形態は、表面改良されるべき一つ又は複数のマイクロチャネル構造(152a,b..)を含むマイクロ流体デバイス(203;303;150)の一部であるマイクロチャネル構造(152)の内側表面の改良のための方法である。マイクロチャネル構造は、内部が周辺大気と介して繋がる一つ又は複数のポート(157;158;159;164a−l;178a−l;179;180a−l;181)を有する。一つ又はそれ以上のこれらのポートは、マイクロチャネル構造の内部に液体を注入するために利用され得、それ以外のポートは閉じられ及び/又はマイクロチャネル構造を液体で適切に充填する助けとなるために空気を排出させる。製造のこの段階でのマイクロチャネル構造のポートは内部に存在する必要もなく、既製デバイスと同じ機能を有する必要もない。表面改良のために利用される液体の注入は、例えば、既製デバイスでは実在しない(閉じられている)、過剰の空気を排出するのに利用される、若しくは過剰の即ち無駄な液体を放出するのに利用される開口部を介して、為され得る。本発明により表面改良されるべきマイクロチャネル構造(152a、b..)内のポート/開口部(157;158;159;164a−l;178a−l;179;180a−l;181)は以降、改良ポート、又は、単にMPs若しくはMポートと称する。
【0013】
本発明の方法は、上記マイクロチャネル構造の各々に対して、
(I)マイクロチャネル構造内の利用可能なポート(157;158;159;164a−l;178a−l;179;180a−l;181)のうちの少なくとも一つのポートを介して表面改良薬剤を含む液体で、内側表面を含むマイクロコンジット部(マイクロコンジット)を充填するステップと、
(II)上記マイクロコンジット部内部に上記液体を保持するステップと、
(III)上記マイクロコンジット部から、例えば、上記マイクロコンジット部を含むマイクロチャネル構造から、上記液体を除去するステップ
を含む。
ステップ(I)の充填のために減圧が利用されること、即ち、液体が入り込みマイクロコンジット部(液体の吸収)に入り込み/充填するマイクロチャネル構造(152)の各々の少なくとも一部の内部に減圧を為すことが、本発明の特徴である。
【0014】
好適な形態では、マイクロ流体デバイス(203a、b..;303a、b..;150)は、本発明の方法により並行して表面改良される複数のマイクロチャネル構造を含む。別の好適な実施形態では、本発明の方法は、複数のマイクロ流体デバイス(203;303;150)内の複数のマイクロチャネル構造の並行する表面改良を含む。
【0015】
この場合の並行は、個々のマイクロチャネル構造及び/又はマイクロ流体デバイスが一つ、二つ、若しくは三つのステップ(I)−(III)を実質的に同時に経験するということを、通常意味する。この場合のステップは、実際の充填、実際の保持若しくは実際の除去を意図している。
【0016】
マイクロチャネル構造及びマイクロ流体デバイスにおける“複数”という用語は、二つ、三つ若しくはそれ以上の関連する特定要素を含む。
【0017】
本発明により表面改良され得る複数のマイクロチャネル構造を含む適切な円形のマイクロ流体デバイスは、“マイクロ流体デバイス”の見出しの部分で説明する。
【0018】
マイクロ流体デバイスは、本発明の方法の変形例である方法により、若しくは完全に異なる方法により、別の機会に独立して表面改良される、若しくは表面改良されたマイクロチャネル構造を含んでもよい。マイクロ流体デバイスは表面改良されないマイクロチャネル構造を含んでもよい。
【0019】
個々のMポートは、本発明の方法において、液体のための入口及び/又は出口、及び/又は気体のための入口及び/又は出口として、機能し得る。Mポート(157;158;159;164a−l;178a−l;179;180a−l;181)は、単体のマイクロチャネル構造(178a−l;179;180a−l)に繋がってもよく、二つ若しくはそれ以上のマイクロチャネル構造(157;158;159;181)に対して共通であってもよい。従って、液体が注入されるポートは、マイクロ流体デバイス(150)のマイクロチャネル構造(152a−l)のサブグループ(151)に対して、共通でもよい。そのようなサブグループは、通常、2から20個、15個以下、12個以下、8個以下のマイクロチャネル構造を含んでもよく、常時二つ、三つ、四つ若しくはそれ以上のマイクロチャネル構造を含んでもよい。
【0020】
マイクロコンジット部は、間に改良される内側表面が配置される二つの独立の端部を含む。これらの独立の端部の各々は、マイクロコンジット部を介して通過せずにマイクロチャネル構造の一つ又は複数のMポート(夫々、MP1及びMP2)と繋がってもよい。改良されるべき内側表面の一でマイクロコンジット部と繋がる一つ又は複数のMポート(MP3)があってもよい。図1では、マイクロチャネル構造(例えば152i)のマイクロコンジット部は、例えば、ポート(157)と(178i)の間、ポート(157)と(159)の間、及びポート(158)と(178i若しくは179)の間に、配置されてもよい。
【0021】
Mポートは通常、既製マイクロ流体デバイスデバイス内に存在するポートである。Mポートは、デバイス製造の間にのみ利用されるポートであってもよい。即ち、既製デバイス内では不可逆の閉じられた/実在しないポートであってもよい。側チャネルを介して注入される粒子のトラップによる物理的表面改良を説明するWO03099438(アルバータ大学)と例えば比較されたい。
【0022】
[本発明の種々のステップの詳細な説明]
本発明に係る方法の一つの形態では、主要な特徴的な特性は、
(a)改良されるべき内部表面が、先行する段落に記載されるように分離ポート(MP及びMPの夫々)を介して周囲環境と分離端部により連絡するマイクロコンジット部の一部であり、
(b)マイクロチャネル構造の各々に対する(充填)ステップIは、(例えば、178a−l;179;180a−lなどの)MP2ポートの一つ又はそれ以上を介して減圧を適用することにより、又は、MP1ポートの一つ又はそれ以上を介して減圧を適用することにより、(例えば、157;158;159;164などの)MP1の一つ又はそれ以上を介して、本発明にて利用される液体を吸引することを含む、
ことである。
【0023】
存在すれば、吸引で利用されない残余のポートは通常閉じられる。ポートに対して上記で概略説明したように、一つ又はそれ以上のMP1ポート、及び/又は一つ又はそれ以上のMP2ポートは、単一のマイクロチャネル構造に結合してもよく、マイクロチャネル構造のサブグループに共通するものであってもよい。
【0024】
好適な別の形態では、特徴的特性は、充填ステップ(ステップ(I))が、
(i)
A)表面改良薬剤が含まれる液体(205;305)と、気体相(206)を含む閉じられた容器(201;301)と、
B)夫々が空であり、少なくとも一つのポート(MPs)(157;158;159;164a−l;178a−l;179;180a−l;181)を介してa)容器内に存する液体(205;305)か、b)容器内に存する気体相(206;306)かを伴う容器の内部と接触する、表面改良されるべき複数のマイクロチャネル構造を含む、マイクロ流体デバイス(203;303)と
を設けるステップと、
(ii)容器内の気体相(206;306)の圧力を減じるステップと、
(iii)ステップ(i)が選択肢(b)に従うならば、(B)に示す少なくとも一つの上記Mポートを、(A)に示す液体と液体接触させるステップと、
(iv)通常は当初の圧力まで、容器(201;301)内の気体相(206;306)の圧力を増加するステップと
を含むことである。
【0025】
ステップ(i)では、上記の少なくとも一つのMPが容器の内部に接触する前に、若しくは後に、表面改良薬剤を含む液体(205;305)が容器(201;301)の中に注入され得る。
【0026】
Mポート間の液体の接触は、マイクロ流体デバイスが完全に若しくは部分的に液体の中に沈降することを、含む。ステップ(iii)は、容器内に存する液体と意図されたMポートのみ接触させることから、液体の中にマイクロ流体デバイスを部分的に若しくは完全に沈降することまでを、含む。
【0027】
表面改良薬剤を含む液体は、選択肢(a)に対するステップ(ii)の間、及び/又は後に、選択肢(b)に対するステップ(iv)の間、及び/又は後に、マイクロチャネル構造の少なくともマイクロコンジット部を充填する。液体は、閉じられた位置にある機械弁で停止し得る。圧力の減少が関連する特定の受動/毛管弁で生成される流れ抵抗を克服するのに十分でないならば、液体は受動若しくは毛管弁にても停止し得る。
【0028】
ステップ(i)の後及びステップ(ii)の前、表面改良されるべき個々のマイクロチャネル構造は、ステップ(ii)の前の容器内の気体圧と同じであり且つ通常は周囲大気の圧力と同じである圧力P1の気体相を含みという意味で、空虚である。ステップ(i)の後、容器内の気体圧はP’(<P1)である。適切な圧力P1は、1000±100ミリバールの間隔内に見出される。適切なP’は、0.01P1<P’<0.5P1などの0.01P1<P’<0.9P1の間隔で見出される。
【0029】
ステップ(i)内で示されている選択肢(a)及び(b)の両方では、残余のポートが有れば通常閉じられる。
【0030】
好適な形態では、マイクロ流体デバイスは、ステップ(i)、ステップ(ii)若しくはステップ(iii)の間に容器内部に完全に配置される。他の形態のマイクロ流体デバイスは、部分的に又は完全に、これらのステップの間に容器の外部に配置され得る。例えば、個々のマイクロチャネル構造の一部は容器の外部に存在する。両方の形態で、液体がマイクロチャネル構造の中に注入されるポート(=PT’)は、上述のように、容器の液体若しくは気体相と接触する。
【0031】
液体がマイクロチャネル構造の中に注入されるポート(=PT’)の各々は、毛管の一方の端部を介してマイクロチャネル構造に接続する毛管のもう一方の端部であってもよい。このボディ部は通常、マイクロチャネル構造の主要部を含む。デバイスを液体の中に沈降することなく所定のポートの中に液体を選択して注入することが望ましい場合には、この種の毛管を用いる形態は特に有用である。毛管をこのように利用すれば、表面改良する液体を伴う他のポートを含めてマイクロ流体デバイスのボディ部の汚れが回避される。
【0032】
[利用される適切なマイクロ流体デバイス及び配置の詳細な説明]
図2a−bは、ステップ(I:i)などステップ(I)で利用される表面改良液体のためのコンテナに対応する容器(201、第1の容器)と、内部に一つ又はそれ以上のマイクロチャネル構造がある一つ又は複数のマイクロ流体デバイス(203a、b...)のためのホルダ(202、第1のホルダ)を示す。ホルダ(202)は、ピン(204)を含んでもよく、図示されるマイクロ流体デバイス(203a、b...)は環状でもよい。マイクロ流体デバイス(203a、b...)は、例えばデバイス(203)上の中心に存するホールを介して、ホルダ(202)内に搭載されてもよい。容器(201)は、マイクロチャネル構造内に注入される液体(205)と、気体相(206)を含み得る。好適な形態では、ホルダ(202)は、複数のマイクロ流体デバイス(203a、b...)を並行して操作し処理することを簡素に実現できる。マイクロ流体デバイス(203a、b...)を伴うホルダ(202)は通常、必要な表面改良の液体の量を最小化するために、容器(201)の中に円滑に適合する。円滑に適合させる理由は、洗浄液、調整液などのより簡素な溶液に比べて、これらの種類の液体は通常高価であることである。
【0033】
図2bは更に、第1の容器(201)が閉鎖自在であり、一つ、三つ若しくはそれ以上のマイクロ流体デバイス(203a、b...)、又は、ホルダのない一つ若しくはそれ以上の簡素なマイクロ流体デバイスを伴うホルダ(202)が挿入され得る開口部(208)をぴったりとブロックできる開口自在の閉鎖部(207)を含む。第1の容器(201)は、弁機能(図示せず)を含み得るコンジット(209)を介して副次的圧力源(図示せず)に接続する。容器は、液体を注入する機能や液体を排出する機能も含んでもよい。これら機能の各々は通常、弁の機能と、容器(201)へ及び容器(201)から液体をガイドするコンジットを含む。最も簡素なバージョンでは、これらの2つの機能は、例えば、ホルダ(201)及び/又はマイクロ流体デバイス(203a、b...)を挿入するために用いられる同一の開口部(208)を介して、夫々容器の中に又は容器から液体が注がれる、ということに意図されている。本発明に係る方法は典型的には、表面改良薬剤を含む液体が第1の容器(201)の中に注入されることを含む。方法の繰り返しの循環にて及び先行のステップで、他の表面改良液体(205’)若しくは表面改良薬剤を含まない液体(205”)、例えば、調整液、洗浄液、他の濃度及び/又は他の種類の表面改良薬剤を含む液体が、この第1の容器(201)内に配置されてもよい。この種の他の液体は、本発明のステップ(I)に対して記載したのと同じように、減じられた圧力を利用することによって、マイクロ流体デバイスの一つ又はそれ以上のマイクロチャネル構造の中に注入され得る。
【0034】
図2cは、本設定は、マイクロ流体デバイスの内部表面の現実の改良が生じた後に、即ち、ステップ(II)の後に、洗浄液(211)内でマイクロ流体デバイス(203a、b...)の外部を洗浄する分離容器(210、洗浄容器)を含み得ることを示す。このタイプの洗浄容器(210)は、第1の容器(201)内で利用されるように同じホルダ(202)で保持しつつ、先行のステップで並行して処理されるマイクロ流体デバイス(203a、b...)の全てを同時に沈降せしめる内部形状及び体積を有するのが好ましい。図示される洗浄容器(210)は、減じられた圧力を用いてマイクロ流体デバイス(203)のマイクロチャネル構造の中に洗浄液を注入するように適合していない。
【0035】
図2dは、内部表面が改良される実際のステップの間に利用されるホルダ(202、第1のホルダ)が、容器に適合するホルダ(212、第2のホルダ)、即ち、例えば、乾燥のためのステップや、液体がマイクロ流体デバイス(203a、b...)のマイクロチャネル構造から除去される他のステップなどの、ステップ(II)の後の一つ又はそれ以上のステップにて利用される装置と、置き換えられ得ることを、示している。液体を除去するのに利用される利用可能デバイスや装置が、マイクロ流体デバイス(203a、b...)の搭載の際に第1の容器(201)より大きいホルダ(212)を要求するようなケースでは、このことは重要であり得る。第1の容器の内部形状をこの種の連続するステップで利用されるホルダ(212)に適合させるならば、高価な表面改良液体の消費量が増加し、これらの液体のためのコストを擁護不能なものにしてしまう。
【0036】
図2eは、本発明に係る方法は、例えば、洗浄液(213’)若しくは調整液(213”)、及び気体相(214)で存在することにより、マイクロチャネル構造の中に充填される液体(213)が表面改良薬剤を含有する、又は含まないステップ(I)−(III)を含む付加的な連続ステップを含むことを、示す。この種の反復の連続ステップは、第1の閉鎖自在の容器(201)の下流に、及び/又は洗浄容器(210)の下流に配置される第2の閉鎖自在の容器(215)内で実施されてもよい。この第2の閉鎖自在の容器(215)は開口自在の閉鎖部(217)を有してもよく、第1の容器(201)の副次的圧力源と同じ若しくは異なる副次的圧力源(図示せず)と、コンジット(216)を介して接続してもよい。第2の閉鎖自在の容器(215)は、例えば、弁機能及び/又は入口及び/又は出口コンジット(図示せず)、又は開口自在の閉鎖部(217)を備える第1の容器(201)と、概略同様に、容器(215)の中に液体を注入する及び/又は容器から液体を排出する機能も、有してもよい。第2の閉鎖自在容器(215)は、変形例では第1の容器と同様の、若しくは本質的に同一のものであってもよい。図の例では、第2の閉鎖自在の容器(215)は、基本的に、過剰量で利用されてもよい洗浄液(213’)及び調整液(213”)等の比較的廉価な液体のためのものである。第2の閉鎖自在の容器(215)は、後のドライヤの中に嵌り込むホルダの適合する内部形状を有する。
【0037】
図3は、第1のマイクロ流体デバイスのセット(303a、b...)を坦持する第1のホルダ(302)を含有し得る第1の閉鎖自在の容器(301)と、第2のマイクロ流体デバイスのセット(303’a、b...)を坦持する第2のホルダ(312)を含有し得る第2の閉鎖自在の容器(315)を含む最適化された構成を示す。第2のセットは、第1の容器(301)内の本発明によって、予め表面改良されていてもよい。2つの容器(301,315)は、図2に示す2つの閉鎖自在の容器(201,215)に対して概説したのと同じ機能を概略有する。
【0038】
個々の容器(301,315)は、容器(301,315)に繋がる枝(320a,b)の各々が周辺大気への弁(321a,b)及び孔(322a,b)を有するT字枝状コンジット(319)を介して、副次的圧力源(318)と連絡している。T字枝状コンジット(319)の共通部(323)は、湿気と液体のためのトラップ(324)を有してもよい。減圧のための源(318)は、2つの容器(301,315)に対して共通であればよい。
【0039】
第1の容器(301)は、例えば、WO0056808(Gyros AB)にて記載されるポリエチレングリコール−ポリエチレンイミン複合体を含む、表面改良液体(305)、及び気体相(306)を含んでもよい。第1の容器は、第1の連続ステップで利用されるマイクロ流体デバイスの同じセット、若しくはサブセットに関する第2の連続ステップ(I)−(III)に対して、利用される。他の液体は、別の種類若しくは組み合わせの表面改良薬剤を有してもよく、及び/又は、別の濃度の第1の例で利用された表面改良薬剤を有してもよく、即ち、洗浄液(305’)、調整液(305”)などであればよい。同様に、第2の容器(315)は、図2の第2の閉鎖自在の容器(215)に対して議論したように、液体及び気体相(314)を含んでもよい。
【0040】
ステップ(I)及び/又はステップ(Iii)で利用されるホルダは、マイクロ流体デバイスのセットを伴うホルダを液体の中に沈降せしめられる閉鎖部を滑動自在に通過するシャフト(304)を、有するのが好ましい。例えば、シャフト(304)が図2のピン(204)に対応する図3の第1の容器(301)を参照されたい。例えば、ステップ(iii)を伴う、若しくは伴わない変形例に従って、即ち、ステップ(i)の変形例(b)若しくは(a)に従って、気体相の減圧が容器内部で形成される前に、若しくは後に、この沈降が生じてもよい。第1の閉鎖自在の容器(201,215)であっても、第2の閉鎖自在の容器(301,315)であっても、前述のような滑動自在のホルダを伴う設定では、例えば、表面改良液などの、液体を最小限だけ利用するように促進される。滑動自在のホルダ(302)は、表面改良液体の、若しくは、マイクロ流体デバイスの一つ以上のセットへのあらゆる種類の液体の、同じ部位を利用することを促進する。
【0041】
第2の容器(315)は通常より大きく、上述の図2eで述べた洗浄液(313)などのより廉価なより大量の液体のためのものであることが意図されている。
【0042】
構成は、本発明に係る方法に従うマイクロ流体デバイスのマイクロチャネル構造の内部から液体を除去するための一つ又はそれ以上の液体除去デバイスも、含んでもよい。このようなデバイスは、予め注入されステップ(III)で除去されるはずの液体を含有するマイクロコンジット部と連絡する一つ又はそれ以上のポートにて、気流、熱及び/又は減圧を利用することによる蒸発作用に基づくドライヤを含む。気流は、ファン、吸い出し、又は気体の吹き付けにより生成され、吹き付けの気体は通常高温及び/又は乾燥しており、空気若しくは窒素であり、デバイスのスピンなどで行われる。
【0043】
マイクロチャネル構造へ注入された液体を除去するための特に有用な方法は、第1の若しくは後続の期間の際のステップ(I)にて注入された液体を、他の種類の流体、例えば空気などの気体や、例えば洗浄液などの別の液体と、置換することである。この種の好適な液体除去デバイスは、スピン軸でマイクロ流体デバイスをスピンすることにより得られる遠心力を利用する。この場合、液体がマイクロチャネル構造の一部内に存在し液体が除去されるべきポートとなることが意図されているポートよりもスピン軸に近くなるように、マイクロ流体デバイスを傾けることができる、ということが必要である。マイクロチャネル構造がスピン軸から外へ向けられた傾きを含む場合、この傾きは、選択したスピン軸でスピンすることで生成される遠心力により除去され得ない液体をトラップし得る。このようにトラップされる液体は次のようにすれば除去され得る。a)マイクロチャネル構造を洗浄液などの液体で再補充し、前と同じスピン軸でのスピンを繰り返す。b)第1の例で使用したスピン軸に対してデバイスの向きを変更する(スピン軸を変更する)。c)既述の段落で述べたように蒸発させる。d)マイクロチャネル構造から液体を移送する、例えば、動電学的に移送する他の駆動力を加える。(a)に係る再補充は、本発明につき記載したのと同様に減圧を利用して実施できる。
【0044】
ステップ(I)で注入される液体を別の流体で置換するために、遠心力以外の力を利用してもよい。そのような力としては、動電学的なものでもそうでなくてもよい。
【0045】
マイクロ流体デバイスのマイクロチャネル構造から液体を除去するためのデバイスは、液体の除去を行う特定の容器を備えてもよい。この容器は、第1の若しくは後続の期間のステップ(I)で利用するホルダ(202、302、212、312)内に配置されるのと通常少なくとも同数の、複数マイクロ流体デバイスを含有するホルダを含めるようにすべきである。好適な実施例では、上述の蒸発と、上述と同じ好例である別流体での置換とを含む組み合わせにより、液体の除去は為され得る。好適な液体除去デバイスは、所謂スピンリンスドライヤである。本発明の方法を実施するために利用される構成内に、液体除去のためのスピナが含まれるのが望ましい、ということになる。
【0046】
表面改良液体
表面改良液体は、マイクロチャネル構造の内側面の化学的及び/又は物理的特性を変更できる一つ又はそれ以上の表面改良薬剤を含む。通常の表面改良薬剤は、表面改良液内で溶解された及び/又は分散された状態で存在し、改良手順の間に物理的に吸収されるような溶媒分子を通常含まない。通常の表面改良薬剤は、40%(重量%)以下、例えば、30%若しくは15%以下、又はそれ以下の量で、表面改良液内に存在する。
【0047】
分散した表面改良薬剤は、粒子、例えばビーズの形態であってもよい。
【0048】
溶性の即ち溶解した表面改良薬剤は先ず、改良されるべき表面の化学的表面特性を変化させ、特定の他の不溶性の表面改良薬剤は先ず、物理的表面特性を変化させる。或る溶性の即ち溶解した表面改良薬剤は改良プロセスの間に、特定の若しくは他の不溶性生成物になり、物理的表面改良のために溶性薬剤も利用可能であることを示す。重合可能な溶解した表面改良薬剤は、マイクロコンジット部の中で、周知のように重合を局所的に初期化することで改良される表面を含む多孔性プラグなどの多孔性床となる。このことは、例えば、照射による局所的な重合の初期化によって、発生し得る。表面改良薬剤の適切な溶性の例は、0147638(GyrosAB)、WO0056808(GyrosAB)、WO9800709(Amersham Phaemacia Bitech AB)、US6326023(Caliper)などに記載されるイオン若しくは非イオン親水性及び/又は疎水性重合体の中に見出すことができ、これらは、例えばマイクロ流体デバイスのマイクロチャネル構造の内側面への重合体の結合を促進する機能グループを含み得る共役の形態の誘導体を含む。溶性の例は、表面を活性化し、及び/又はマイクロ流体デバイス内の内側面での層若しくはプラグの形成、安定化若しくは結合に繋げる反応種も含む。形成、安定化及び結合はクロスリンクを含んでもよい。
【0049】
粒子の形態の不溶性表面改良薬剤は、表面の粗さを変化させるため、若しくは多孔性圧縮床の注入のために、利用され得る。多くの例では、このことは、圧縮床の形成のための場所はマイクロコンジット部の収縮により決定される。収縮の寸法は、収縮部を液体は通過するが粒子は通過しない程度のものである。例えば、WO0275775(GyrosAB)、WO0275776(GyrosAB)、WO02074438(GyrosAB)及びWO0275312(GyrosAB)を参照されたい。更にWO03099438(アルバータ大学)を参照されたい。
【0050】
マイクロ流体デバイス
本発明の表面改良方法に対して特に適合的なマイクロ流体デバイスついて説明する。
【0051】
適切なマイクロ流体デバイスは周知である。例えば、WO02074438(GyrosAB)の背景技術/文献に関する議論を参照されたい。
【0052】
適切なマイクロ流体デバイスは、通常、ディスク面に垂直な若しくはディスク面と一致するn本の対称軸(Cn)を有する。nは通常、自然数2、3、4、5、6、7若しくはそれ以上、例えば∞(C)(円形状)である。対称軸と一致する若しくは対称軸に垂直なスピン軸を決定し、個々のマイクロチャネル構造が上流の内側部から下流の外側部へ延在する基礎構造を含むようなマイクロ流体デバイスを製作することによって、スピン軸でデバイスをスピンすれば液体流はマイクロチャネル構造内で駆動され得る。この例の場合、内側部は外側部よりもスピン軸に近い。円形、円錐形及び球形は、ディスク面に垂直な対称軸Cを有し、且つC軸と一致するスピン軸でデバイスをスピンすることで液体龍が駆動され得る形状の例である。例えば、WO9721090(Gamera Bioscience)、WO9853311(Gamera Bioscience)、WO0056808(GyrosAB)、WO0146465(GyrosAB)、WO0147637(GyrosAB)、WO02074438(GyrosAB)、WO02075312(GyrosAB)、WO03018198(GyrosAB)、WO03024598(GyrosAB)及びWO02075776(GyrosAB)を参照されたい。この種のデバイスを中心ホールに備えることにより、図2−3内の上述したホルダ(202、302)のピン(204、304)に、それらデバイスは容易に装着され得る。
【0053】
WO04050247(GyrosAB)は、液体流を駆動するための遠心力及びスピンは、a)他の種類のCn軸、及びb)ディスク面に垂直でないスピン軸を有する非円形マイクロ流体デバイスにも適用可能である。例示のデバイスは、ディスク面内にCn軸を伴い、ディスクの外側の及び/又はディスク面に平行なスピン軸を伴う、矩形ディスクである。
【0054】
これらの例では、マイクロチャネル構造から液体を除去するために利用される遠心力の場合に、除去のステップ(III)のために他の設計のホルダが、通常要求される。
【0055】
デバイス上のマイクロチャネル構造の数は、通常10以上、25以上、90以上、180以上又は270以上などである。上限は2000若しくは3000である。
【0056】
上述の対称軸を有するマイクロ流体デバイスは通常、従来のコンパクトディスク(CD)に関して10%間隔で500%までの半径を伴うコンパクトディスクのサイズに対応する寸法を有する。従来のCDの寸法及び/又は形状は現状好ましいものである。
【0057】
マイクロチャネル構造は、マイクロチャネル構造の各々が、特に本発明により改良される内側表面の位置にて、10μm以下、10μm以下、若しくは10μm以下となる少なくとも一断面寸法を有するという意味で、マイクロフォーマットにある。マイクロチャネル構造に分配され、及び/又はマイクロチャネル構造内部で処理される部分標本の量は通常、nlフォーマットを含むμlフォーマットにある。μlフォーマットは、5000μl以下、1000μl以下、100μl以下若しくは10μl以下であり、nlフォーマットは、1000nl以下、100nl以下若しくは10nl以下である。
【0058】
デバイスは、プラスチック部材、ガラス、シリコンなど様々の部材から形成され得る。ポリシリコンはプラスチック部材内に含まれる。プラスチック部材は通常廉価であり複製により大量生産が容易であるから、製造の観点からはプラスチック部材は非常に好ましい。複製技術の通常の例は、エンボス、インジェクションモールドなどである。例えば、WO9116966(Pharmacia Biotech AB)を参照されたい。通常、複製プロセスは中間生成物としてオープンのマイクロチャネル構造となり、続いてそのオープンのマイクロチャネル構造は頂部基板若しくは蓋で覆われる。例えば、WO0154810(GyrosAB)、若しくはそこで引用されている文献に記載される方法を参照されたい。ルールとしてプラスチック部材は、良好な毛管輸送のために非常に可溶性が低く、重要な非所望の吸着性を備える。良好な表面改良方法は、プラスチック部材内の高品質の使い捨てマイクロ流体デバイスの製造にとっては非常に重要であるということを、このことは意味する。
【0059】
図1は、既製のマイクロ流体デバイス内に存在するポートを全て有する円形マイクロ流体デバイスデバイス(150)の12のマイクロチャネル構造のサブグループ(151)の上方からの拡大図である。デバイスの中心(対称軸C)回りでデバイスをスピンすることにより液体輸送が為され得るように、構造は設計されている。デバイス(150)は円周(153)を有する。デバイス(150)の中心に向かう内側/上側方向は、矢印154により示される。この特定の設計及び機能に関する詳細は、WO02075312(GyrosAB)及びWO03024598(GyrosAB)に記されている。サブグループの全てのマイクロチャネル構造(152)に共通であり、マイクロチャネル構造毎に一つの体積計測マイクロキャビティ(156)(全体で12体積計測マイクロキャビティ)を含むミアンダ状の分配マニフォルド(155)が設けられている。マニフォルドは、2つの液体入口ポート(157、158)と、一つの液体出口ポート(159)を有する。マニフォルド(155)の個々の体積計測マイクロキャビティ(156a、b...)は、2つの近接の上側傾き(161a’及びa、a及びb、b及びc...)の中にあり、且つ、2つの近接の上側傾き(161a’及びa、a及びb、b及びc...)の間に位置する下側傾き(163a、b...)の最下部内のバルブ機能(162a、b..)により下流方向に向けられる、2つの近接の空気孔(160a’及びa、a及びb、b及びc...)の間で定義される。個々のマイクロチャネル構造(152a、b...)に対して、オーバーフローマイクロコンジット(168..i..)と入口マイクロコンジット(168..i..)との接合部と、体積計測マイクロキャビティ(166..i..)の出口端部におけるバルブ機能(170..i..)との間で設定される体積計測マイクロキャビティ(166..i..)を含む単体の体積画定ユニット(165..i..)に接続する独立入口ポート(164..i..)も設けられる。追加のバルブ機能(171)が中心共通入口ポート(158)に結合する。追加のバルブ機能(172..e..)は、共通の廃棄チャンバ(174)内への個々のオーバーフローマイクロコンジット(168..e..)の出口(173..e..)にも結合する。個々のマイクロチャネル構造(152a、b)は、下流方向に収縮(二重の深さ)(176..c..)により表される反応マイクロキャビティ(175..c..)も含んでもよい。更に疎水性表面の開路は矩形で示され、機能はバルブ、孔若しくは反潤滑手段で示される。更に周囲環境へのポートは、円で示される。詳細についてはWO02075312(GyrosAB)を参照されたい。
【0060】
対称軸でデバイスをスピンすることで生成される遠心力によりステップ(I)で注入される全ての液体を完全に除去することを、回避する、外側に方向付けされたU形状規定のマイクロコンジット(177a、b..)も、注目すべきである。この種の構造に対しては、他の種の除去操作が、補足として必要である。上記文献を参照されたい。
【0061】
周知のマイクロ流体構造と同様に、マイクロチャネル構造は、デバイス内部で意図された処理プロトコルを実施できる全ての機能ユニットを含む。2つの若しくはそれ以上のマイクロチャネル構造に対して共通の機能部分若しくはユニットは、個別のマイクロチャネル構造の共通の一部でもある。このことは、共通の入口及び出口ポート、共通の分配マニフォルド、共通の廃棄チャンバに対して、当て嵌まる。
【0062】
既製のデバイス内で処理プロトコルを実施することに関して、マイクロチャネル構造のサブグループ(151)は、本発明に係る表面改良を実行する際の充填ステップ(II)のためにポート(PT’)として潜在的に利用され得る以下のポートを含む。
a)処理液体のための2つの共通の入口ポート(157、158)。
b)液体のためのマイクロチャネル構造(152..i..)毎の、全体で12個の、一つの単体入口ポート(164..i..)。
c)過剰液体のための及び排出のための一つの共通出口ポート(159)。
d)液体の出口でもあるマイクロチャネル構造(152..f..)毎の一つの排出出口ポート(178..f)、及び、中心入口ポート(158)に直接接続する独立出口ポート(179)。
e)液体のために利用されないマイクロチャネル構造(152..c..)毎の一つの排出出口ポート(180..c..)。
f)液体のために利用されない一つの共通の排出出口ポート(181)。
【0063】
バルブ機能は、通常、別の疎水性マイクロチャネル内の局所疎水性表面領域即ち開路間の境界を基にするのが好ましい受動バルブなどの、WO02074438(GyrosAB)及びWO03018198(GyrosAB)で定義される非閉鎖のタイプのものである。表面が可溶性である若しくは親水性であるということは第一に、水接触角度が90°以下、70°以下、60°以下、45°以下、若しくは30°以下であることを意味する。マイクロコンジット/マイクロチャネル構造が親水性であるということは、水がマイクロコンジット内部を、若しくはマイクロチャネル構造の少なくとも一部の内部を毛管現象(自己吸引)により輸送され得るということを意味する。疎水性若しくは非可溶性表面は、水接触角度のバルブがこのバルブより低いが80°以上など70°より大きいのが通常である情況の下で、90°以上の水接触角を通常有する。親水性マイクロコンジット若しくはマイクロチャネル構造は、疎水性だけでなく親水性の内側表面を含んでよく、例えば、一面若しくは二面、できれば三面の側壁が疎水性であってもよい。
【0064】
望ましくない吸着及び/又は可溶性に関する最も重大なセクションは、最も下流の反応マイクロキャビティの上流に位置し、図1のマイクロチャネル構造内でその最も下流の反応マイクロキャビティは反応マイクロキャビティ(175a,b..)である。従って、これら反応マイクロキャビティ(175a、b..)の上流にあるポート(157、158、159、181、164a、b..)は、改良が概略親水性マイクロチャネル構造若しくはマイクロコンジットに低い望まれない吸着性を与えることを意図している場合に、本発明に係るステップ(I)の表面改良液体の入口のための一次的ターゲットであってもよい。この場合、液体の出口及び/又は入口のためのポート(157、158、159、164a、b..)は、排出ポート(180a、b..、181)としてのみ利用されるポートよりも重要であってもよく、更に利用されないポートを記憶するポート(178a、b..)は通常、充填のステップ(I)の間閉じられるべきである。最も簡素な例では、全てのポートはPT’ポートとして取り扱われ、当該方法の後続の期間で表面改良液体若しくは他の液体で構造を充填するためにオープン状態となる。
【0065】
前述の段落で述べたポート間のこの差異は、例えば、以下のような、局所表面改良を意図する場合に重要となる。
a)分配マニフォルド(155)内の、若しくは、単体のマイクロチャネル構造(152a、b..)に繋がる体積計測マイクロキャビティ(166a、b..)内の、若しくは、各々のマイクロチャネル構造(152a、b..)に存在する反応マイクロキャビティ(175a、b..)内の、化学的表面特性、及び、
b)例えば、反応マイクロキャビティ(175a、b..)内に多孔性床を注入することによる物理的表面特性(の改良)。
これらの例では、上記差異は或るポートを介する選択的な注入で重要となり得、マイクロチャネル構造内部で望まれないセクションへ表面改良液体を故意ではなく拡げないように下流バルブ機能に依存し得る。例えば、分配マニフォルド(155)の出口の受動バルブ(162a、b..)及び/又は反応マイクロキャビティ(175a、b..)への個々の単体の体積画定ユニット(165a、b..)の出口の受動バルブ(170a、b..)により形成される流れ抵抗に対して、減圧を適切にバランスさせることによって、表面改良液体で分配マニフォルド(155)若しくは個々の単体の体積画定ユニット(165a、b..)のいずれかを選択的に充填し、去年クレジットのステップでデバイスをスピンすることにより個々の反応マイクロキャビティ(175a、b..)の中への輸送を生じさせることが可能になると、思われる。表面改良液体が表面改良薬剤として分散粒子を含む場合、各々の反応マイクロキャビティ/マイクロチャネル構造(175a、b../152a、b..)のために、二重の深さ/収縮に対して圧縮床を形成することによって、物理的表面特性が変化される。表面改良液体が検体を含み反応マイクロキャビティ(175a、b..)の各々が固定化された捕獲反応物を含む場合、反応マイクロキャビティ内の化学的表面特性は検体の捕獲により変化される。原則として同様に、既製のマイクロ流体デバイスで実施される所望の処理プロトコル内で必要とされる種々の反応物の固定化をも含む、どの種類の局所表面改良が反応マイクロキャビティ内部で行われてもよい。
【0066】
本発明に係る一般的な処理に先立ち、マイクロチャネル構造(152a、b..)内に或る局所表面特性が存在してもよく、これら局所表面特性を維持することが重要である。通常のこのような局所表面特性は、排出機能、バルブ機能、アンチウイッキング機能などとして利用される疎水性の開路である。上記を参照されたい。これらの局所機能が確実に保持されるために、表面は、通常、本発明に従って利用される表面改良液体により表面改良を促進するように概略前処理され、続いて本発明の方法を利用する際に維持されるべき表面特性を局所的に注入する処理を為される。通常、これらの種類の前処理ステップが実施され、マイクロチャネル構造が覆いのない形態となる。例えば、プラスチック表面内の覆いのないマイクロチャネル構造が最初プラズマ親水性化され負荷電グループを注入し次に局所的に疎水性化され、その後蓋が表面に付され表面改良薬剤としてポリエチレングリコールとポリエチレンイミンの間の共役を含む溶液が覆いのされたマイクロチャネル構造の中に注入される、WO0147638(GyrosAB)及びWO0056808(GyrosAB)と比較されたい。マイクロチャネルシステムのマイクロコンジット部内への外部活性可能表面改良システムを含むマイクロチャネル構造のマイクロコンジット部を表面改良溶液で充填し、そのシステムを局所的に始動することにより、局所表面改良は内側表面の表面特性の局所改良を発生させる、と考えられる。活性可能システムは、照射により、若しくは他の類の外部適用活性原理により、活性可能となる重合系でああってもよい。
【0067】
本発明の創造的な形態は添付の請求項により詳細に定義される。本発明及びその利点を詳細に記載したが、添付の請求項に定義されるように、発明の精神及びハニから乖離することなく種々の変更、置換及び代案が為され得ることが理解されるべきである。更に、保出願の範囲は、明細書に記載した処理、機械、製造法、構成物、手段、方法及びステップの特定の実施形態に限定することを意図するものではない。当業者であれば本発明の開示内容から容易に理解しうるように、明細書に記載する対応の実施形態と実質的に同じ機能を実施する、若しくは実質的に同じ結果を達成する、現存の若しくは後に達成され得る処理、機械、製造法、構成物、手段、方法又はステップは、本発明に従って利用され得る。従って、添付の請求項は、処理、機械、製造法、構成物、手段、方法又はステップなどの範囲内に含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】改良すべき内部表面が内に存する複数のマイクロチャネル構造を含む環状マイクロ流体デバイスの一部を示す。
【図2】方法の種々のステップと、方法を実施する構成を示す。
【図3】構成の最適な変形例を示す。 参照番号の上一桁は図面の番号である。二桁目三桁目は意図された項目を示す。
【符号の説明】
【0069】
152・・・マイクロチャネル構造。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスの一つ、二つ若しくはそれ以上のマイクロチャネル構造の各々の中の内側表面を改良するための方法であって、
マイクロチャネル構造の各々が周囲の大気と連絡する一つ、二つ若しくはそれ以上のポート(PT)を含み、
マイクロチャネル構造の各々に対して、
(I)二つ若しくはそれ以上のポート(PT)のうちの少なくとも一つのポート(PT’)を介して、改良される内側表面を含むマイクロコンジット部を、表面改良薬剤(表面改良液体)を含む液体で充填するステップと、
(II)上記マイクロコンジット部内部に上記液体を保持するステップと、
(III)上記マイクロコンジット部から、若しくは、上記マイクロコンジット部を含むマイクロチャネル構造から、上記液体を除去するステップ
を含み、
ステップ(I)の充填のために減圧が利用されることを特徴とする方法。
【請求項2】
上記マイクロ流体デバイスが改良されるべき内側表面を含む二つ又はそれ以上のマイクロチャネル構造を含み、ステップ(I)−(III)の少なくとも一つが上記二つ又はそれ以上マイクロチャネル構造に対して並行して実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記マイクロチャネル構造の各々に対して、
(a)マイクロコンジット部の一方の端部と繋がる少なくとも一つのポート(PT1ポート)と、マイクロコンジット部の他方の端部と繋がる少なくとも一つのポート(PT2ポート)が存在し、
(b)残りのポートを閉鎖しつつPT2ポートの一つ又はそれ以上を介して減圧を適用することによって、PT1ポートの一つ又はそれ以上を介して、表面改良液体を吸収する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
i)A)表面改良薬剤を含む液体相及び気体相を含む、閉じられた容器と、B)上記マイクロチャネル構造の各々が空であり残余のポートを閉じつつ上記の少なくとも一つのポート(PT’)を介してa)上記液体相若しくはb)上記気体相と接触する上記マイクロ流体デバイスと
を設けるステップと、
ii)上記容器内の気体圧力を減じるステップと、
iii)ステップ(i)が選択(b)に拠るならば上記の少なくとも一つのポートを上記液体相に接触させるステップと、
iv)容器内の気体圧力を大気圧まで増加させるステップと
を含み、
上記液体が、
・選択(a)に対してはステップ(ii)の間に、
・選択(b)に対してはステップ(iv)の間に、
上記の少なくとも一つのポート(PT’)を介して上記マイクロチャネル構造の各々に入り込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
a)マイクロ流体デバイスが上記容器内部に配置されつつ、ステップ(ii)、ステップ(iii)、及びステップ(iv)が実施されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(ii)−(iv)が実施され、上記マイクロチャネル構造の各々の少なくとも主要部が上記容器の外側に配置され、上記の少なくとも一つの入り口ポート(PT’)は上記容器の内部と連絡していることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
上記の少なくとも一つのポート(PT’)の一つ又はそれ以上が、毛細管の一つの端部であり、その毛細管はもう一方の端部でマイクロチャネル構造の各々の少なくとも主要部を含む主要ボディ部に付属することを特徴とする請求項4〜6のうちのいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(I)の間に上記マイクロ流体デバイスが、複数の上記マイクロ流体デバイスを保持できるホルダ内に保持されることを特徴とする請求項4〜7のうちのいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
上記マイクロチャネル構造の各々に対して、ステップ(III)が、上記の二つ又はそれ以上のポート(PT)の少なくとも一つのポート(PT”)を介して、減圧、気流及び/又は熱を利用して、ステップ(I)で上記マイクロコンジット部の中に注入された液体の少なくとも一部を、通常PT”である少なくとも一つのポート(PT’’’)にまで蒸発させるステップを含むことを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれか一に記載の方法。
【請求項10】
上記マイクロチャネル構造の各々に対して、ステップ(III)が、上記ポート(PT)の少なくとも一つのポート(PT’’’)を介して、ステップ(I)で上記マイクロコンジット部の中に注入された液体を少なくとも一部除去するステップを含み、
上記の除去するステップが、気体と液体のうちで選択した流体と、上記流体を置き換えるステップを含むことを特徴とする請求項1〜9のうちのいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
A)上記マイクロ流体デバイスが、上記除去(ステップIII)のために遠心力を利用し、
B)上記除去のステップ(III)が、
a)上記マイクロ流体デバイスを、上記除去のために要求される遠心力を生成するように調整された遠心力デバイスに移すステップと、
b)複数の上記マイクロ流体デバイスを保持できるホルダ内に保持される間に、上記
マイクロ流体デバイスに遠心力を作用させるステップと、
c)上記マイクロ流体デバイスが、複数の上記マイクロ流体デバイスを保持できるホルダに保持される間に、上記の一つ又はそれ以上の入口若しくは出口ポートの少なくとも一つから蒸発させることにより、上記の一つ又はそれ以上のマイクロチャネル構造の内側を随意に乾燥するステップ
を含むことを特徴とする請求項1〜10のうちのいずれか一に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(I)で利用される液体が、前回に利用された液体と同じ若しくは異なる構成であって、
同じマイクロ流体デバイスで複数回繰り返されることを特徴とする請求項1〜11のうちのいずれか一に記載の方法。
【請求項13】
繰り返されるステップ(I)で利用される液体が、a)最初の表面改良薬剤と同じ若しくは異なる種類の若しくは濃度の表面改良薬剤を含む液体と、b)洗浄液と、c)調整液との中から、選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
a)最初の、若しくは繰り返しのステップ(I)の上記液体が、上記マイクロチャネル構造の各々の内部で実施される処理内で判定される検体を含み、
b)上記マイクロチャネル構造の各々が、上記内側表面に上記検体を保持するための捕獲機能を含むことを特徴とする請求項1〜13のうちのいずれか一に記載の方法。
【請求項15】
a)最初の、若しくは繰り返しのステップ(I)の上記液体が、上記マイクロチャネル構造の各々の内部で実施される処理内で利用される試薬若しくは反応物を含み、
b)上記マイクロチャネル構造の各々が、上記内側表面に上記試薬若しくは反応物を保持するための捕獲機能を含むことを特徴とする請求項1〜13のうちのいずれか一に記載の方法。
【請求項16】
a)最初の、若しくは繰り返しのステップ(I)の上記液体が、粒子の分散であり、
b)上記マイクロチャネル構造の各々が、上記マイクロコンジット部に上記粒子を保持するための捕獲機能を含むことを特徴とする請求項1〜13のうちのいずれか一に記載の方法。
【請求項17】
最初の、若しくは繰り返しのステップ(I)の上記液体が、70°C以上、80°C以上の、大気圧における沸点を有することを特徴とする請求項1〜16のうちのいずれか一に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(I)が、
a)複数の上記マイクロ流体デバイスを設けるステップと、
b)請求項4若しくは請求項4に従属する請求項に記載のステップ(I)を実施するために、ステップ(I)−(III)に従って、上記複数のマイクロ流体デバイスを並行して処理するステップと
を含むことを特徴とする請求項1〜17のうちのいずれか一に記載の方法。


【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−521496(P2007−521496A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546926(P2006−546926)
【出願日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【国際出願番号】PCT/SE2004/002030
【国際公開番号】WO2005/066066
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(505358004)ユィロス・パテント・アクチボラグ (22)
【氏名又は名称原語表記】Gyros Patent AB
【Fターム(参考)】