説明

マイケル付加反応を促進するための方法

【課題】官能性混合物の硬化のための方法が提供される。
【解決手段】0.01μm〜500μmの平均粒子サイズを有する、均一に分散された固体反応プロモーターが、少なくとも1つの多官能性マイケル供与体および少なくとも1つの多官能性マイケル受容体の硬化性混合物を調製するために開示される。得られた硬化性混合物は、コーティング、接着剤、シーラントおよびエラストマーとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年6月24日に提出された米国仮出願60/693,850号の利益を主張する。
本発明は、エネルギー省により授与された契約No.FG36−04GO14317の下で政府援助においてなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
本発明は、触媒のようなマイケル付加反応を容易にすることに役立つ反応プロモーターに関する。本発明は、接着剤、シーラント、発泡体、エラストマー、フィルムおよびコーティングを調製するために使用される多官能性マイケル供与体および多官能性マイケル受容体の反応を容易にするための均一に分散した固体反応プロモーター(例として触媒があるが、それに限定されない。)に関する。固体反応プロモーターは多官能性マイケル供与体および多官能性マイケル受容体の硬化性官能性混合物の中で均一に分散している。硬化性官能性混合物は、種々の製造物品(例として結合ラミネート、パッケージおよび被覆された基体が挙げられるが、それらに限定されない。)を調製するために使用される。
【背景技術】
【0003】
マイケル付加反応は、周知の化学的なプロセスである。そこでは、マイケル受容体がマイケル供与体と反応し、マイケル付加生成物における炭素鎖を伸長させる。マイケル付加は、例えば、「Organic Chemistry,第3版,Allyn and Bacon,1973」の中でRT MorrisonおよびRN Boydによって、ならびにClemensおよびRector(Journal of Coatings Technology,Vol.61,No.770,1989)によって教示されている。この反応は、反応プロモーター(すなわち塩基触媒)の存在下で、マイケル供与体とマイケル受容体との間で起きると考えられている。しかしながら、望ましい生成物の性質にかかわらず、均一の塩基性触媒は、1つまたはすべての反応物に塩基触媒を溶かすことにより、または溶媒もしくは相間移動触媒の助けで塩基触媒を可溶化させることにより得られる。
【0004】
硬化性官能性混合物は、反応プロモーターの存在下で時間をかけて反応し、高分子量ポリマーを生成するマイケル供与体およびマイケル受容体を含む化合物の混合物である。マイケル受容体およびマイケル供与体を含有する酸から調製した官能性混合物が例として挙げられる、酸を含む特定の硬化性官能性混合物に伴う1つの問題は、その酸が、塩基性反応プロモーターのすべてまたはいくつかを中和する可能性があるということである。そのことは、マイケル付加反応が、望まれるポリマー生成物を生成することを遅くし、そして抑制する。
【0005】
米国特許5,350,875号は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、または炭酸塩から選択される不溶性塩基化合物を触媒として使った0℃〜150℃の温度における単官能マイケル供与体と単官能マイケル受容体との不均一触媒反応を開示する。その不溶性塩基触媒は、マイケル受容体の重合を最小にするために、ろ過によってマイケル付加生成物の混合物から除去することを必要とする。さらに、不溶性触媒の除去は、液状の小さい分子であって、潤滑剤および可塑剤のような液体添加物として有用性を持つマイケル付加生成物の形成を促進する目的で行われる。残念ながら、多官能性マイケル受容体および多官能性マイケル供与体の硬化性官能性混合物から不溶性触媒を取り除くことは望ましくない。というのは、官能性混合物は、速い硬化速度を有し、そして接着剤、シーラントまたはコーティングとして直接使用されるからである。さらに、不溶性触媒粒子の不均一な分散は、製造されるラミネート物品に使用される硬化性官能性混合物において受容できず、結果として望ましくない特性および外観を有するラミネートを生じさせる。常に攪拌していなければ、不均一触媒粒子は沈殿する可能性もまたあり、そのため接着剤、シーラント、エラストマー、またはコーティングに対して望ましくない粒状の外観を与え、そのような組成物を使用する物品製造において視覚的な欠陥をもたらしうる。
【特許文献1】米国特許5,350,875号明細書
【非特許文献1】Organic Chemistry,第3版,Allyn and Bacon,1973
【非特許文献2】Journal of Coatings Technology,Vol.61,No.770,1989
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、酸含有供与体、受容体および添加物、または酸レベルの変化に安定的な硬化性官能性混合物の存在下であっても、長いポットライフおよび短い硬化時間を有する多官能性マイケル受容体および多官能性マイケル供与体の混合物を硬化させることができ、一方、製造された物品において滑らかな外観を提供し、視覚的な欠陥を発生しない均一に分散されたマイケル付加反応プロモーター(触媒を包含するがこれに限定されるものではない)を提供することが望ましい。
【0007】
本発明者は、均一に分散した固体反応プロモーターを見いだした。その例としては、多官能性マイケル受容体と多官能性マイケル供与体との混合物の硬化を促進してポリマーを生成する触媒が挙げられるがそれに限定されない。調製された硬化性官能性混合物は、酸含有のマイケル供与体、受容体および/または添加物の存在下であっても、当該技術分野で公知の従来の触媒化組成物に比べて比較的長いポットライフおよび短い硬化時間を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、以下の工程を含む官能性混合物を硬化するための方法を提供する:
0.01μm〜500μmの平均粒子サイズを有する1つ以上の均一に分散された固体反応プロモーターを、少なくとも1つの多官能性マイケル供与体および少なくとも1つの多官能性マイケル受容体をさらに含む硬化性官能性混合物の一部、最高ではその全部に添加する工程。
【0009】
本発明は、以下の(a)(b)(c)をさらに含む硬化した官能性混合物と接触している少なくとも1つの基体を含む被覆物品を提供する:(a)0.01μm〜500μmの平均粒子サイズを有する1つ以上の均一に分散された固体反応プロモーター;(b)少なくとも1つの多官能性マイケル供与体;および(c)少なくとも1つの多官能性マイケル受容体。
【0010】
本発明はまた、以下の(a)(b)(c)をさらに含む硬化した官能性混合物と接触している少なくとも2つの基体を含む接着物品を提供する:(a)0.01μm〜500μmの平均粒子サイズを有する1つ以上の均一に分散された固体反応プロモーター;(b)少なくとも1つの多官能性マイケル供与体;および(c)少なくとも1つの多官能性マイケル受容体。
【0011】
本発明はまた、以下を含む硬化性官能性混合物もまた提供する:(a)0.01μm〜500μmの平均粒子サイズを有する1つ以上の均一に分散された固体反応プロモーター;(b)少なくとも1つの多官能性マイケル供与体;および(c)少なくとも1つの多官能性マイケル受容体。
【0012】
いくつかの実施態様においては、0.1μm以上の平均粒子サイズを有する固体反応プロモーターが使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書中で使用される「(メタ)アクリレート」はアクリレートまたはメタクリレートを意味し、そして「(メタ)アクリル」はアクリルまたはメタクリルを意味する。
【0014】
本明細書中で使用される用語「マイケル付加反応プロモーター」は、マイケル供与体とマイケル受容体との反応を容易にして本発明のマイケル付加生成物(ポリマー)を生成することができる任意の固体化合物を意味する。例としては、以下に限定されないが、触媒、共触媒、酸スカベンジャーおよびそれらの組み合わせ、の1以上が挙げられる。
【0015】
本明細書中で使用される「触媒」は、マイケル付加反応を触媒する化合物である。理論に拘束されるものではないが、触媒は、マイケル供与体からプロトンを取り出し、エノラートアニオンを発生させる。
【0016】
本明細書中で使用される「共触媒」は、触媒を活性化するか、あるいはプロトン化されたマイケル供与体とエノラートアニオンとの間の平衡を移動させて、それにより官能性混合物の硬化速度を速める任意の物質である。
【0017】
本明細書中で使用される「酸スカベンジャー」は、共有結合、イオン結合または錯体を形成することによって、酸と反応することができる化合物である。酸スカベンジャーと酸との間の反応は、酸スカベンジャー以外の化合物との相互作用に関与する酸の傾向を排除するか、あるいは弱める。
【0018】
本明細書中で使用される用語「均一に分散された固体反応プロモーター」は、500μm以下の平均粒子を有するか、あるいは硬化性官能性混合物の中で均一に分散している任意の固体反応プロモーターを意味する。いくつかの実施態様においては、固体反応プロモーターは、硬化性官能性混合物の中で均一に分散しており、また500μm以下の平均粒子サイズ、もしくは100μm以下の平均粒子サイズ、もしくは60μm未満の平均粒子サイズを有する。
【0019】
本発明に合致した有用な反応プロモーターとしては、マイケル付加反応が生成物に向かうのを可能にし、そして実質的に反応混合物に不溶である任意の固体有機化合物、任意の固体無機化合物、もしくは任意のポリマー固体またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0020】
いくつかの実施態様においては、適切な固体反応プロモーターは、0.01μm〜60μmの平均粒子サイズ、例えば0.01μm〜20μmの平均粒子サイズを有する。1つの実施態様に従えば、使用される反応プロモーターの平均粒子サイズは、必要とされる接着剤(0.01μm〜10μmの平均粒子サイズを有するラミネート接着剤、0.01μm〜20μmの平均粒子サイズを有する感圧接着剤、または構造用接着剤)、シーラントまたはコーティングのタイプに依存して変化する。
【0021】
いくつかの実施態様においては、500μm以下または400μm以下の平均粒子サイズを有する反応プロモーターが使用される。いくつかの実施態様においては、200μm以下または100μm以下の平均粒子サイズを有する反応プロモーターが使用される。いくつかの実施態様においては、0.01μm以上または0.1μm以上の平均粒子サイズを有する反応プロモーターが使用される。
【0022】
均一に分散された固体反応プロモーターは、任意の適切な技術により調製される。その技術の例としては、以下に限定されないが、例えば、適切な粒子サイズを得るためのミリング、粉砕、または沈殿が挙げられる。適切な溶媒に固体反応プロモーターを溶かし、官能性混合物の全部または一部の中で得られた溶液を分散させ、次いで蒸発または抽出により溶媒を除去して、適切な大きさの固体粒子を残すというプロセスもまた意図される。
【0023】
適切な固体反応プロモーターとしては、以下に限定されないが、例えば、アミン、アミン−官能性ポリマー、アミン−官能性樹脂、任意の塩基性金属塩、任意のアルカリ金属炭酸塩、任意のアルカリ土類金属炭酸塩、任意のアルカリ金属リン酸塩、任意のアルカリ土類金属リン酸塩、任意のリン酸水素アルカリ金属塩、任意のリン酸水素アルカリ土類金属塩、任意のアルカリ金属リン酸エステル、任意のアルカリ土類金属リン酸エステル、任意のアルカリ金属パイロリン酸塩、任意のアルカリ土類金属パイロリン酸塩、1〜22個の炭素原子を有する任意のアルカリ金属カルボキシレート、1〜22個の炭素原子を有する任意のアルカリ土類金属カルボキシレート、1〜22個の炭素原子を有する任意の他の適切な遷移金属カルボキシレートが挙げられる。1つの実施例によれば、反応プロモーターの混合物もまた、本発明に従って役に立つものである。
【0024】
さらなるいくつかの適切な固体反応プロモーターとしては、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属以外の金属のケイ酸塩、およびアルカリ土類金属ケイ酸塩のようなケイ酸塩が挙げられる。いくつかの実施態様においては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、またはケイ酸カリウムが使用される。いくつかの実施態様においては、ケイ酸ナトリウム塩またはカリウムケイ酸塩が使用される。
【0025】
適切な固体の反応プロモーターのさらなる例としては、アルカリフェノキシド塩(例えば、4−ヒドロキシメチルベンゾエートのナトリウム塩)、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウム)、アルカリ金属以外の金属の酸化物、およびアルカリ金属以外の金属の水酸化物が挙げられる。
【0026】
適切な固体反応プロモーターの混合物もまた、適している。
【0027】
本発明の均一に分散された固体反応プロモーターは、多官能性マイケル受容体と多官能性マイケル供与体との混合物の硬化を容易にして、ポリマーを生成する。本発明者は、これらの混合物が、受容体、供与体、添加物の含有の酸の存在下であっても、および官能性混合物の酸濃度の変化に対しても、当該技術分野で公知である従来通りに触媒された組成物と比較して、比較的長いポットライフおよび短い硬化時間を有することをさらに見いだした。
【0028】
特別な理論に拘束されるものではないが、反応の促進は、均一に分散された反応プロモーター粒子の表面において、あるいは微量の反応プロモーターを官能性混合物の中へ物質輸送することを介してのいずれかで起こると考えられる。さらに、均一に分散された固体反応プロモーター粒子は、新鮮な表面をさらすことまたは溶液中での擬似平衡の微量濃度を維持するためにさらに溶解することのいずれかによって、酸残留物で中和された任意の反応プロモーターを補充するリザーバーとして作用しうると考えられる。
【0029】
予期せぬことに、均一に分散された固体反応プロモーターは、当該技術分野で公知の不均一に分散された固体触媒よりかなり活性が高い可能性があることが見いだされた。1つの実施態様によれば、均一に分散された固体反応プロモーターの反応性は、粒子サイズを変えることで制御することができ、小さい粒子サイズであるほど活性が高い。
【0030】
少量の水を加えることで、均一に分散された固体反応プロモーターで触媒された官能性混合物の反応性が増加することもまた見いだされた。少量の酸もしくは酸無水物の添加は、均一に分散された固体反応プロモーターで触媒された官能性混合物の反応性を低減させる。
【0031】
均一に分散された反応プロモーターを含む混合物は、沈殿に関して安定している。均一に分散された固体反応プロモーターを使って硬化した官能性混合物は、2つ以上の基体を接着するため、被覆された基体を調製するため、ならびにラミネート接着剤、製品組立用接着剤、家庭修理用接着剤、感圧接着剤、シーラント、発泡体およびエラストマーを調製するために有用である。
【0032】
いくつかの実施態様において、均一に分散された反応プロモーターを含む混合物は、反応プロモーターの粒子と本発明の官能性混合物の1つ以上の成分を混合することによって作ることができる。例えば、1つ以上のマイケル受容体は、反応プロモーターの粒子と混合されることができる。いくつかの実施態様において、このような混合は、高速ミキサーまたはホモジナイザーで行なわれる。
【0033】
いくつかの実施態様において、均一に分散された反応プロモーターを含むこのような混合物は、任意の増粘剤、分散剤、チキソトロープ剤または他の安定性を向上させる他の化合物の存在がなくとも、沈殿に関して安定している。いくつかの実施態様において、100μm以下の平均粒子サイズを有する反応プロモーターが使用される場合、安定性向上化合物の存在なしに混合物を作ることが意図される。
【0034】
いくつかの実施態様において、例えば、ヒュームドシリカのようなチキソトロープ剤を含めた1つ以上の安定性向上化合物を加えることができる。いくつかの実施態様においては、100μmを超える平均粒子サイズを有する反応プロモーターを使って、安定性向上化合物および反応プロモーターを含む混合物を作ることが意図される。安定性向上化合物が使用される場合、いくつかの実施態様においては、反応プロモーターの安定性向上化合物に対する重量比は、5以下、または4以下である。それとは独立して、安定性向上化合物が使用されるいくつかの実施態様においては、反応プロモーターの安定性向上化合物に対する重量比は、0.5以上、または1以上、または2以上である。
【0035】
均一に分散された反応プロモーターを含むいくつかの混合物は、沈殿に関して安定しており、そして外観が滑らかである。このような混合物は、視覚的な欠陥がない物品を製造するのに使用することができる。
【0036】
いくつかの実施態様において、例えば、固体反応プロモーターの平均粒子サイズは100μmより大きく、そして混合物は安定性向上化合物の1つ以上を含む。このような実施態様のいくつかでは、固体反応プロモーターは、1つ以上のケイ酸塩を含む。
【0037】
上記とは独立して、いくつかの実施態様においては、例えば、固体反応プロモーターの平均粒子サイズは100μm以下であり、そして混合物はヒュームドシリカを全く含んでいない。このような実施態様のいくつかでは、混合物は、チキソトロープ剤、増粘剤、または分散剤を全く含んでいない。
【0038】
上記とは独立して、いくつかの実施態様においては、例えば、固体反応プロモーターの平均粒子サイズは100μm以下であり、そして混合物はケイ酸塩でない1つ以上の固体反応生成物を含む。このような実施態様のいくつかでは、反応混合物は、炭酸塩(すなわち、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩)である1つ以上の固体反応プロモーターを含む。
【0039】
上記とは独立して、いくつかの実施態様においては、例えば、固体反応プロモーターの平均粒子サイズは100μm以下であり;混合物は、チキソトロープ剤、増粘剤、または分散剤を全く含んでおらず;そして固体反応プロモーターは、1つ以上の炭酸塩を含む。
【0040】
本明細書中で使用される用語「硬化性官能性混合物」は、反応プロモーターの存在下で、時間をかけて反応し、高分子量ポリマー固体を生成する化合物の混合物である。硬化性官能性混合物としては、以下に限定されないが、例えば接着剤、シーラント、エラストマー、コーティングおよび発泡体が挙げられる。
【0041】
混合した後、硬化性官能性混合物が、コーティング作業、成型作業または形作り作業が可能であるのに十分な液体の状態を維持している期間は、「ポットライフ」と呼ばれる。混合物が重合し、固化し、有用な最終用途特性を示すのに必要とされる時間は、「硬化時間」と呼ばれる。硬化性混合物は、長いポットライフおよび短い硬化時間を有することが望ましいと考えられている。しかし、ポットライフおよび硬化時間は、強く相関関係にあり、そのためポットライフの改良は、一般に硬化時間を劣らせることが伴われ、そして硬化時間の改良は、ポットライフを劣らせることが伴われるということは、当業者により理解されていることである。この相関関係は、2つのファクターを動かしている共通の基礎をなしているプロセス(硬化性官能性混合物の分子量の増加)に起因するものである。
【0042】
本明細書中で使用される「ポットライフ」は、硬化性官能性混合物の粘度が、新たに混合された硬化性官能性混合物の所定の温度における粘度の2倍の値に達するのに要する時間である。硬化性官能性混合物の粘性は、任意の標準的な方法により測定することができる。1つの有用な粘度測定方法は、Brookfield粘度計の使用であり;それは、測定される材料に適切なようなに粘度計メーカーの指示に従って選択されるスピンドルタイプおよび回転速度で使用される。長いポットライフが望ましいと考えられ、同様の硬化時間になるように配合される場合、本発明の組成物は、当該技術分野で公知の従来の組成物と比較して長いポットライフを有する。
【0043】
1以上の、均一に分散された固体反応プロモーターを、少なくとも1つの多官能性マイケル供与体および少なくとも1つの多官能性マイケル受容体を含む硬化性官能性混合物の一部、または最高でその全部に添加することにより、硬化した官能性混合物が得られる。
【0044】
本明細書中で使用される「マイケル供与体」は、マイケル供与体官能基を少なくとも1つ有する化合物である。マイケル供与体官能基は、C=Oおよび/またはC≡Nのような、2つの電子吸引性基の間に位置している炭素原子に結合している水素原子である、マイケル活性水素原子を少なくとも1つ含む官能基である。マイケル供与体官能基の例としては、マロネートエステル、アセトアセテートエステル、マロンアミドおよびアセトアセトアミド(マイケル活性水素が2つのカルボニル基の間の炭素原子に結合している。)、ならびにシアノアセテートエステルおよびシアノアセトアミド(マイケル活性水素がカルボニル基とシアノ基との間の炭素原子に結合している。)である。2つ以上のマイケル活性水素原子を有する化合物は、本明細書中では、多官能性マイケル供与体として知られている。本明細書中で使用されるマイケル供与体の「骨格」は、マイケル活性水素原子を含む官能基以外の供与体分子の部分である。
【0045】
いくつかの実施態様においては、1分子あたり2つ以上の別々のマイケル供与体官能基を有する少なくとも1つのマイケル供与体が使用される。いくつかの実施態様においては、すべてのマイケル供与体が、1分子あたり2つ以上の別々のマイケル供与体官能基を有する。
【0046】
本明細書中で使用される「マイケル受容体」は、構造(I)で示される官能基を少なくとも1つ有する化合物である:
【0047】
【化1】

【0048】
ここで、R、RおよびRは、独立して、水素、または有機基、例えば、アルキル(直鎖、分岐鎖または環状)、アリール、アリール置換アルキル(アルアルキルまたはアリールキルとも呼ばれる)、およびアルキル置換アリール(アルカリールまたはアルキルアリールとも呼ばれる)であり、それらの誘導体および置換体も含まれる。R、RおよびRは、独立して、エーテル結合、カルボキシル基、さらにカルボニル基、それらのチオ類似物、窒素含有基、またはそれらの組み合わせを含んでもよいし、含まなくてもよい。Rは、酸素、窒素含有基、またはR、RおよびRについて上述した有機基である。それぞれが構造(I)を含む2つ以上の官能基を有する化合物は、本明細書中では多官能性マイケル受容体として知られている。本明細書中で使用されるマイケル受容体の「骨格」は、構造(I)以外の受容体分子の部分である。任意の構造(I)は、他の(I)基と結合することができ、または骨格と直接結合することができる。
【0049】
本発明において有用なマイケル供与体に適した骨格としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、および高級アルコールのようなアルコールが挙げられる。
【0050】
本発明において有用なマイケル供与体およびマイケル受容体の両方に適した骨格としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、テトラエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびトリシクロデカンデジメチロール)、トリオール(例えば、グリセロール、プロポキシル化グリセロール、トリメチロールプロパンおよびヒマシ油)、多価アルコール(例えば、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、多水酸基アルキレンオキシドおよび他の多水酸基ポリマー)、糖類(例えば、ブドウ糖、果糖、マルトース、スクロース、ソルビタールおよびイソソルビド)、ならびにエポキシド(ビスフェノールA、ジグリシジルエーテル、エポキシド化ポリブタジエンおよびエポキシド化大豆油)。類似のアルコールおよび類似のエポキシド、それらの置換体、ならびにそれらの混合物もまた意図される。
【0051】
本発明の実施においては、多官能性マイケル受容体の骨格は、多官能性マイケル供与体の骨格と同一であっても、または異なったものであってもよい。1より多いマイケル供与体または1より多いマイケル受容体を含む混合物が使用できることが、さらに意図される。
【0052】
本発明の実施においては、任意の組み合わせで、任意の順番で成分を集合させることができる。いくつかの実施態様においては、成分は、容器に同時に、または逐次的に添加し、そして混合される。いくつかの実施態様においては、2つ以上の成分は、後にさらなる成分と組み合わされる混合物として、一緒に混合および貯蔵され、本発明の硬化性官能性混合物を形成させる。
【0053】
本発明の硬化性混合物は、23℃において7日間以内に硬化可能である。混合物は、有用な強度に達した時に「硬化した」とみなされる。例えば、ラミネートにおける接着剤は、Tピール試験が有意な接着を示せば硬化したとみなされ、そしてエラストマーは、引張試験が有意な引張強度を示せば硬化したとみなされる。短い硬化時間が望ましいと考えられ、同様のポットライフとなるように配合される場合、本発明の組成物は、当該技術分野で公知の従来の組成物に比べて短い硬化時間を有する。
【0054】
いくつかの実施態様においては、硬化した官能性混合物は、ポリマーを含む。いくつかの実施態様においては、硬化した官能性混合物は、10,000以上;または20,000以上;または50,000以上;または100,000以上の重量平均分子量(Mw)を有する。それとは独立して、いくつかの実施態様においては、硬化した官能性混合物の各分子は、マイケル受容体分子の30を超える残留物、またはマイケル受容体分子の50を超える残留物を含む。
【0055】
いくつかの実施態様においては、硬化した官能性混合物は、分散された固体反応プロモーターを組成物から除去しないで使用される。すなわち、このような実施態様においては、硬化した官能性混合物は、硬化した官能性混合物の中に位置する、硬化プロセスの間に存在した固体反応プロモーターと共に、例えば、コーティング、接着剤、シーラント、エラストマー、または発泡体として使用される。
【0056】
本発明の硬化した官能性混合物は、任意の広範囲のガラス転移温度(Tg)を有し得る。いくつかの実施態様においては、硬化した官能性混合物は、−80℃以上のTgを有する。それとは独立して、いくつかの実施態様においては、硬化した官能性混合物は、120℃以下のTgを有する。Tgもしくは複数のTgは、硬化した官能性混合物の意図される用途のために望ましい最も良い特性が得られるように選ばれる。
【0057】
例えば、硬化した官能性混合物が構造用接着剤としての使用を意図する場合、硬化した官能性混合物が50℃以上のTgを有するように、官能性混合物は通常選択される。別の例として、硬化した官能性混合物が感圧性接着剤としての使用を意図する場合、硬化した官能性混合物が15℃以下、または0℃以下、または−25℃以下、または−50℃以下のTgを有するように、官能性混合物は通常選択される。さらに別の例として、硬化した官能性混合物がラミネート接着剤としての使用を意図する場合、硬化した官能性混合物が−30℃以上、または−15℃以上、または−5℃以上、または15℃以上、または30℃以上のTgを有するように、官能性混合物は通常選択される。
【0058】
本発明の実施態様のいくつかは、少なくとも1つの基体に硬化性官能性混合物を適用することを伴う。その層は、連続または不連続なフィルムであり得る。適用の方法は、当業者にとって公知の多くの方法の内のいずれでも可能であり、その例としては、例えば、ブラッシング、スプレー、ローラーコーティング、グラビアコーティング、フレキソコーティング、フローコーティング、カーテンコーティング、浸漬、ホットメルトコーティング、押出、共押出、類似の方法およびそれらの組み合わせである。いくつかの実施態様においては、基体への硬化性混合物層の適用は、室温で行われる。他の実施態様においては、例えば、硬化性官能性混合物の粘度を調節するために、適用は高温または低温で行うことができる。
【0059】
広範囲の基体が、本発明に従って被覆されうる。基体の例としては、以下に限定されないが、例えば、ポリオレフィン(例えば、配向ポリプロピレン(OPP)、SiOxコートOPP、PVDCコートOPP、キャストポリプロピレン、ポリエチレン、LDPE、PVDCコートLDPEおよびポリエチレンコポリマー)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、SiOxコートPET、PVDCコートPET、またはポリエチレンナフタレート(PEN))、ポリオレフィンコポリマー(例、エチレンビニルアセテート、エチレンアクリル酸およびエチレンビニルアルコール(EVOH))、ポリビニルアルコールおよびそのコポリマー、ポリアミド(例、ナイロンおよびメタ−キシレンアジパミド(MXD6))、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリアクリレート、イオノマー、多糖類(例、再生セルロース)、シリコーン(例、ゴムまたはシーラント)、他の天然ゴムもしくは合成ゴム、グラシンもしくは紙、粘土コート紙、板紙もしくはクラフト紙、金属化ポリマーフィルムおよび蒸着金属酸化物コートポリマーフィルム(例、AlOx、SiOxまたはTiOx)、インク(例、ポリアミド系インク、ポリウレタン系インク、ニトロセルロース系インク、アクリレート系インク、およびポリビニルブチラール系インク)が挙げられる。
【0060】
基体は、一般的にフィルムまたはシートの形状であるが、このことは必須ではない。基体は、互いの材料の適合性に従って、コポリマー、ラミネート、共押出、ブレンド、コーティングまたは上に挙げた基体の任意の組み合わせであり得る。さらに、基体は、堅固な物品の形状であり得る。
【0061】
他の適切な基体としては、以下に限定されないが、例えば、ガラス、床材(例、コンクリート)、金属(例、アルミニウム、鉄、鋼鉄および真ちゅう)、セラミックス(例、磁器製品、ストーンウェア、アルミナ、シリカおよび窒化ケイ素)、アスファルト、木製品(例えば、木材、合板、ラワンおよびパーティクルボード)、および電子材料(ケイ素、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、リン化インジウムおよびガリウムリン)が挙げられる。
【0062】
1つの実施態様によれば、基体はまた、コーティングの前に、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理および火炎処理(これらすべてが当該技術分野で公知である)によって前処理することもできる。
【0063】
組成物が第一基体に適用された後、次いで、別の基体と必要に応じて接触させ、複合体を形成することができる。そのようにして形成された複合体は、クランプで締めるか、またはローラーの間に通して、必要に応じて加圧される。本発明の別の実施態様においては、組成物は、第一基体の両面に同時または逐次的に適用することができ、次いで、その組成物を同時もしくは逐次的に2つの同一もしくは異ってもよい基体に接着させる。その複合構造体は、本明細書中で記述されたプロセスの前または後において、本発明の組成物もしくは別の組成物を使って、他の基体に逐次的に接着することができる。本発明の方法で接着された第一基体および第二基体は、同一であっても異なっていてもよい。その例としては、例えば、プラスティック、金属化プラスティック、金属、および紙が挙げられ、それらは、滑らかまたは構造化された表面を有することができ、ロール、シート、フィルム、ホイルなどの形状で得ることができる。官能性混合物は、例えば、0.2〜116g/m(0.12〜71.2 lb/リーム)の量で適用することができる。
【0064】
本発明に従えば、本発明の硬化性混合物は、「硬化」と言われる化学反応を受ける。本発明は任意の特別の理論に制限されないが、硬化性官能性混合物が形成されるときに硬化が始まり、少なくともポットライフの終わりまで硬化が継続し、その後も継続し得ると考えられる。いくつかの実施態様においては、ポットライフの終わり前に、硬化性官能性混合物の層が、基体に適用される。これらの実施態様のいくつかでは、少なくとも1つのさらなる基体が、硬化性官能性混合物の層に接触される。しばしば、そのさらなる基体は、ポットライフの終わり前に、硬化性官能性混合物の層に接触される。したがって、いくつかの実施態様においては、硬化性混合物および基体が接触した後まで、硬化は終了しない。いくつかの実施態様においては、大部分またはすべてのマイケル付加反応は、硬化性混合物が任意の基体と接触する前または硬化性混合物が1つのみの基体と接触している間に完了する。それぞれの場合において、硬化した混合物は、有用な接着結合を基体の間に形成する。
【0065】
本発明の1つの実施態様によれば、硬化性官能性混合物は、接着剤として有用である。他の実施態様によれば、硬化性官能性混合物は、コーティング、フィルム、ポリマー発泡体、シーラントおよびエラストマーとして有用に使用される。コーティングとして使用される場合、硬化性混合物は、基体に適用され、次いで硬化させ、そしてさらなる基体は、硬化性混合物と接触させることはなされない。
【0066】
硬化性官能性混合物は、当該技術分野で公知である任意の従来技法によって調製することができる。硬化性官能性混合物の成分を混ぜる順番に対して必要条件はない。1つの実施態様によれば、硬化性混合物は、マイケル成分と反応プロモーターとを混合することにより形成される。混合は、任意の手段で行うことができる。十分な攪拌により、固体反応プロモーターを均一に分散させるか、任意の他の固体成分を溶解させるか、あるいは均一に分散させることが意図される。いくつかの実施態様においては、例えば、種々の成分の交互の層を適用することにより、または基体の同じ領域において別々の流れの種々の成分をスプレーすることにより、種々の成分を基体上で混合することができる。
【0067】
他の実施態様においては(硬化した混合物がシーラント、発泡体またはエラストマーとして使用される場合)、硬化性官能性混合物は、型または他の適切な容器の中で成分を混ぜ、そして硬化反応の間その中で保持することによって形成させることができる。あるいは、成分を混合した後、硬化性官能性混合物を型または他の適切な容器の中に入れ、そして硬化反応の間その中で保持することが可能である。
【0068】
いくつかの実施態様においては、揮発性化合物は、硬化プロセスの間にわずかしかまたは全く放出されない。例えば、いくつかの実施態様においては、硬化性官能性混合物の重量は、硬化する間に、硬化性混合物の当初の重量(すなわち、混合したての硬化性官能性混合物の重量)に対して10%以下減少する。いくつかの実施態様においては、硬化性官能性混合物の重量は、硬化プロセスの間に、硬化性混合物の当初の重量に対して5%以下、または2%以下、または1%以下減少する。
【0069】
硬化性官能性混合物が類似または非類似の基体を互いに接着するのに使用される実施態様の中でも、とりわけこれらの実施態様の内のいくつかにおいては、複合体は23℃を超える温度に加熱される。いくつかの実施態様においては、本発明の硬化性混合物は、23℃において硬化が可能である。しかし、このような実施態様のいくつかでは、23℃を超える温度まで複合体を加熱することにより、硬化プロセスを早め、その他改良することが望ましい。このような加熱が行なわれる場合、複合体は、35℃を超える、または50℃を超える、または100℃を超える温度にまで加熱することができる。複合体が、23℃未満の温度で硬化プロセスの間維持される実施態様もまた意図されている。
【0070】
1つ実施態様によれば、硬化性官能性混合物は、ラミネート接着剤として有用である。本明細書で使用されるラミネート接着剤は、2以上の平面基体を一緒に接着するのに適した接着剤である。ラミネート接着剤は、例えば、食品パッケージのような柔軟な複合体の調製で使用され、そして硬いラミネートは、例えば、ドアパネルの調製において使用される。
【0071】
別の実施態様によれば、硬化性官能性混合物は、有用なシーラントである。シーラントは、2つの物品の接合部に適用され、物品の間のギャップを満たして漏れを妨ぎ、そして差動的な膨張および収縮を許容可能とする材料である。シーラントの例としては、以下に限定されないが、例えば、コーキング剤およびグレージングコンパウンドが挙げられる。
【0072】
別の実施態様によれば、硬化性官能性混合物は、有用な感圧接着剤組成物である。感圧接着剤は、室温で顕著な粘着性を示し、そして指または手で押さえること以上の圧力を必要とすることなく、単に接触することで、種々の異なる面に強固に接着する接着剤である。別の実施態様によれば、硬化性官能性混合物は、剥離コーティングを含む少なくとも1つの基体と接触して硬化する。
【0073】
別の実施態様によれば、硬化性官能性混合物は、有用な製品組立用接着剤である。製品組立用接着剤は、恒久的な荷重に耐える十分な強度の接合により2つ以上の部品を接着しなければならない場合の物品を製造するのに役立つ。製品組立用接着剤の例としては、以下に限定されないが、例えば、ダイ接着剤およびパッケージ封止接着剤のような電子用接着剤、医療デバイス組立用接着剤、ならびに消費者用商品用接着剤が挙げられる。
【0074】
別の実施態様によれば、硬化性官能性混合物は、有用な家庭修理用接着剤である。家庭修理用接着剤は、2つ以上の断片を一緒に接着して破損した物品を修理することにより、金属、プラスチック、セラミック、木または他の材料でできた破損した物品を修理するのに適した恒久的な接着剤である。
【0075】
広範囲のラミネートは、ポリマー組成物および本発明の硬化性混合物を使って、効果的に調製される。本発明のいくつかの実施態様においては、基体は、比較的薄くそして平らであり、そして得られた複合体は、ラミネートと呼ばれる。ラミネートのための基体のいくつかの例は、ポリアルキレン(例、ポリエチレンおよびポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタエレート)、ポリアミド(ナイロン)、エチルセルロース、酢酸セルロース、金属化ポリプロピレン、紙、アルミホイル、他の金属、セラミックシート材料および関連材料である。これらは、ロール、シート、フィルム、ホイルおよび関連する形態の形状で提供することができる。ラミネートのための基体のさらなる例は、織布または不織布である。これらは、例えば、綿、羊毛、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリアルキレン、ガラス、またはセラミックスのような材料から作られている天然繊維もしくは合成繊維を1つ以上使った繊維から作られうる。
【0076】
硬化した官能性混合物は、任意の広範囲の目的のために使用することができる。例えば、硬化した混合物は、基体に接着するまたは弾性物品としてのいずれかのエラストマーとして使用することができる。別の例として、硬化した硬化性混合物は、発泡体を生成する条件下で形成および硬化させることができる。さらなる例として、硬化性混合物の層を、基体に適用し、次いで空気にさらした状態のままにして、コーティングを形成させることができる。このようなコーティングは、連続または不連続であり得る。そのコーティングは、保護用もしくは装飾用またはその両方であり得る。そのコーティングは、例えば、塗料として、別のタイプのコーティングとして、またはインクとして機能することができる。硬化した硬化性混合物の用途は、例えば、ガスケット、シーラント、屋根防水膜、またはフィルムの内の1つ以上としてであり得る。
【0077】
本明細書および特許請求の範囲の目的のために、本明細書中に記載された範囲および比率の限度は、組合わせることができるということは理解されるべきである。例えば、60〜120および80〜110の範囲が特定のパラメーターに対して列挙される場合、60〜110および80〜120の範囲もまた意図されていると理解される。さらなる独立した例としては、特定のパラメーターが、1、2、および3という適切な最小値を有することが開示され、かつそのパラメーターが9および10という適切な最大限を有するためことが開示されている場合、次の全ての範囲が意図されている:1〜9、1〜10、2〜9、2〜10、3〜9、および3〜10。
【0078】
本発明の範囲は、次の実施例を使って、例証される。それは、限定するものと解釈されるようには意図されない。
【実施例】
【0079】
以下の実施例においては、これらの省略および物質が使用される:
Morecure(商標)2000=ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート(Rohm and Haas社製)。
SR−306HP(商標)=トリプロピレングリコールジアクリレート(Sartomer社製)。
Miramer(商標)M3160 =エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、分子量560(Miwon Commercial社製造、Rahn USA社販売)。
SS−200=ケイ酸ナトリウム粉末、200メッシュサイズ(PQ社製)。
Cab−o−sil(商標)M−5=ヒュームドシリカ(Cabot社製)。
Jeffamine(商標)D−230 =ポリエーテルジアミン(Huntsman社製)。
GTAA=グリセロールトリスアセトアセテート。
FRP=繊維強化プラスチック。
【0080】
(実施例1)
モノマー混合物の調製
Morcure(商標)2000(1650g)およびSR−306HP(商標)(1350g)を4リットルのステンレス鋼ビーカーの中に計量した。混合物を機械的に攪拌し、そして50℃にまで暖め、透明な溶液を作った。
【0081】
(実施例2)
モノマー混合中の均一に分散した固体触媒の調製
1.4リットルの水平ビーズミル(Dynomill KDL−Pilot、CB Mill製)を1mmケイ酸ジルコニウムビーズ(2644g)で満たした。実施例1(2275g)からのモノマー混合物および炭酸ナトリウム(1225g)を4リットルのステンレス鋼ビーカーの中に計量した。混合物を機械的に混ぜ、そして水平ビーズミルにより145分間回転をかけた。得られた混合物は、35%の炭酸ナトリウム、36%のMorcure(商標)2000、29%のトリプロピレングリコールジアクリレートという組成を有した。粉末化触媒の体積平均粒子サイズは、Coulter LS−120レーザー光分散装置により決定され、0.84μmであった。
【0082】
(実施例3)
不均一固体触媒粉末の調製
炭酸ナトリウムを35メッシュふるいおよび60メッシュふるいを使って分画した。35メッシュふるいを通って、そして60メッシュふるいの上に残った物質を使用した。ふるいの目の大きさに基づいて、得られた粉末は、粒子サイズ範囲250〜500μm、平均粒子サイズ380μmを有すると推測された。
【0083】
(実施例4)
可溶性触媒/モノマー溶液の調製
Morcure(商標)2000(64.4g)、SR−306HP(商標)(27.6g)および酢酸カリウム(4.5g)を70℃に加熱し、そして1時間攪拌した。熱いままの混合物を濾過し、溶けない固体を取り除き、次いで室温にまで冷やした。少量のサンプルを0.1N塩酸で滴定し、溶けている酢酸カリウム触媒の量を決定した。濾過された溶液は、1.9%の酢酸カリウム、68.7%のMorcure(商標)2000および29.4%のトリプロピレングリコールジアクリレートという組成を有していた。
【0084】
(実施例5)
均一に分散された固体触媒を含む接着剤混合物の調製
Morcure(商標)2000(11.95g)、SR−306HP(商標)(4.77g)および実施例2からの微粉砕触媒/モノマー混合物(2.57g)を50℃に加熱し、そして攪拌して、66.7%のMorcure(商標)2000、28.6%のトリプロピレングリコールジアクリレートおよび4.7%の微粉砕炭酸ナトリウム固体触媒という組成を有する混合物を生成させた。この混合物は、室温において24時間後も沈殿の兆候を示さない均一な懸濁物であった。
【0085】
(実施例6)
不均一固体触媒を含む接着剤混合物の調製
Morcure(商標)2000(12.88g)、SR−306HP(5.52g)および実施例3からのふるいにかけられた触媒粉末を50℃に加熱し、そして攪拌して、66.7%のMorcure(商標)2000、28.6%のSR−306HPおよび4.7%の粗い炭酸ナトリウム固体触媒という組成を有する混合物を生成させた。この懸濁物は、室温において24時間後に容器の底に沈殿する目に見える触媒粒子を有していた。この混合物を使用直前に攪拌し、触媒が混合物の中で懸濁するのを確実にした。
【0086】
(実施例7)
溶解している触媒を含む接着剤混合物の調製
Morcure(商標)2000(1.79g)、SR−306HP(商標)(0.77g)および実施例4からの溶解性触媒溶液を50℃に加熱し、そして攪拌して、68.9%のMorcure(商標)2000、29.5%のSR−306HP(商標)および1.6%の酢酸カリウム溶解性触媒という組成を有する混合物を生成させた。
【0087】
(実施例8)
接着剤混合物のポットライフ
実施例5、6および7の接着剤混合物ならびにトリメチロールプロパントリス−アセトアセテートのサンプルを35℃において平衡状態にした。それぞれの接着サンプルに、11.61gのトリメチロールトリス−アセトアセテートを加えた。得られた混合物を短時間混合し、次いでBrookfield LVDT粘度計を使って、100rpmにおいてスピンドル25を用いて粘度を測定した。最初の粘度を記録した。ポットライフを最初の粘度の2倍の粘度となった時間として記録した。結果を表1にまとめる。
【0088】
【表1】

【0089】
均一に分散された固体触媒を使っている実施例5からの接着剤は、一般に加工産業において受容できる最小値である20分を超えるポットライフを与える。可溶性触媒を使っている実施例7は、反応性が高すぎて、結果として受容できないくらい短いポットライフとなっている。実施例6は、極端に非反応性であり、24時間後であっても硬化の兆候を示さなかった。
【0090】
(実施例9)
ラミネートの調製
トリメチロールプロパントリス−アセトアセテート(11.61g)を実施例5、6および7の接着剤混合物の作製したばかりのサンプルに加えた。そのサンプルを短時間混合し、PolyType実験用コーターを使って印刷されたペットフィルム(Dupont 48LBT)の上にロールコーティングし、次いで1ミル厚の線形低密度ポリエチレンフィルム(Pliant GF−10)を接着剤コーティングと接触させた。ペットフィルム上の印刷は、Color Converting Industries社製のSealtech青インクおよび白インクからなっていた。両方のインクは、残留酸官能性を含むと考えられている。インクコート重量を1.9g/mとして重量測定法で測定した。
【0091】
各ケースで適用した接着剤のコート重量を表2において重量測定法で測定した。
【0092】
【表2】

【0093】
得られたラミネートを、さらなるテストの前に25℃で相対湿度50%の状態に3日間置いた。
【0094】
(実施例10)
ラミネートの外観
実施例9からのラミネートのサンプルを、25倍立体顕微鏡を使って目視により評価した。実施例5および7からの接着剤を使って調製したラミネートは、滑らかで均一に見えた。実施例6からの接着剤を使って調製したラミネートは、その外観を損なう目に見える砂模様を有していた。
【0095】
(実施例11)
ラミネートの接着
実施例8からのラミネートのサンプルを、Tピール接着について以下のように試験した。各ラミネートの1”の広さの細片を切り出し、そしてその細片を10in/分の速度において引張試験機で引き離した。2つのフィルムを分離するのに必要な最大の力として、Tピール接着を記録した。4つの細片を各ラミネートについてテストし、結果が平均された。結果は、以下の表3のようになった。
【0096】
【表3】

【0097】
実施例7からの接着剤を使って調製したラミネートは、実施例8で観察された高い反応性にもかかわらず、3日後でも硬化しなかった。印刷インクからの残留酸は、実施例8からの接着剤において塩基性触媒のかなりの画分を中和するのに十分な濃度で存在していたと考えられる。
【0098】
際立って対照的に、実施例5からの接着剤を使って調製したラミネートは、実施例7の接着剤よりも長いポットライフを有していながら、硬化して3日以内に良好な接着を示した。微粉砕固体触媒を使うことにより可能となったさらに高い触媒濃度により、良好な硬化反応速度を備えたまま、インク中の残留酸を中和するのに十分な塩基官能性が得られる。
【0099】
実施例6からの粗い固体接着剤使って調製したラミネートは、硬化せず、実施例8において観察された低い反応性と一致した。固体触媒を細かく粉砕することにより、その効率は劇的に増加することがわかる。
【0100】
(実施例12)
アクリル系塩基
アクリル系塩基を以下の成分を混合することにより作製した。SS−200およびCab−o−sil(商標)M5を、高速ミキサーを使って残りの成分の中に分散させた。
【0101】
【表4】

【0102】
(実施例13)
接着剤
実施例12のアクリル系塩基をGTAAと混ぜた。GTAAに対するアクリル系塩基の重量比は、80.34〜19.66であった。
【0103】
混合物のポットライフは、約1時間であった。Brookfield粘度(20℃、10rpm、スピンドル#4)は、2960であった。硬化した混合物の自由フィルムは、柔らかく、かつフレキシブルであった。混合物でコートされた基体を硬化させ、水に7日間浸漬した後も、気泡は観察されなかった。
【0104】
(実施例14)
接着剤の評価
実施例13の接着剤をラップ剪断試験によって評価した。
基体の長方形片を、目的の組成物を使って同じタイプの基体の別の長方形片に接着させ、複合構造物を形成させた。その複合構造物の一端には、基体の長方形片のフリー部分があった。また、他端には、基体の長方形片の一部があった。基体の「フリー」部分とは、別の基体片のいずれの部分にも隣接していない部分である。
【0105】
1つの基体のフリー部分を1つのアゴ部に、他の基体のフリー部分をもう1つのアゴ部に付け、その複合体を引張試験器に設置した。アゴ部を引き離して引張試験器を使い、そして最大力を記録した。実験を4つの同一のサンプルで繰り返し、最大力の値の平均を記録した。破損の箇所もまた記録した。
【0106】
このテストは、「乾燥」サンプル(すなわち、テストをする前に周囲条件において保存した複合体サンプル)について行い、そしてテストは、別の「湿潤」サンプル(すなわち、テストをする前に水中で保存した複合体サンプル)についてもまた行った。結果は、以下のようであった。
【0107】
【表5】

【0108】
注(1):金属基体が裂けたときにサンプルが破損した。
注(2):FRP基体が裂けたときにサンプルが破損した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの多官能性マイケル供与体および少なくとも1つの多官能性マイケル受容体をさらに含む硬化性官能性混合物の一部、最高ではその全部に、0.01μm〜500μmの平均粒子サイズを有する1つ以上の均一に分散された固体反応プロモーターを添加する工程;
を含む、官能性混合物を硬化する方法。
【請求項2】
1つ以上の均一に分散された固体反応プロモーターが:
アルカリフェノキシド塩、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属以外の金属の酸化物、およびアルカリ金属以外の金属の水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属以外の金属のケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩、アミン、アミン−官能性ポリマー、アミン−官能性樹脂、塩基性金属塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、リン酸水素アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ土類金属塩、アルカリ金属リン酸エステル、アルカリ土類金属リン酸エステル、アルカリ金属パイロリン酸塩、アルカリ土類金属パイロリン酸塩、1〜22個の炭素原子を有するアルカリ金属カルボキシレート、1〜22個の炭素原子を有するアルカリ土類金属カルボキシレート、および1〜22個の炭素原子を有する金属カルボキシレート:からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硬化性官能性混合物が、0〜5重量%の:(a)水、または(b)1つ以上の酸、または(c)1つ以上の酸無水物、またはそれらの組合せ:をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
均一に分散された固体反応プロモーターが、0.1μm〜20μmの平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
硬化した官能性混合物と接触する少なくとも1つの基体を含む、被覆された物品であって;
該硬化した官能性混合物が(a)0.01μm〜500μmの平均粒子サイズを有する1つ以上の均一に分散された固体反応プロモーター;(b)少なくとも1つの多官能性マイケル供与体;および(c)少なくとも1つの多官能性マイケル受容体;をさらに含む:
被覆された物品。
【請求項6】
硬化した官能性混合物と接触する少なくとも2つの基体を含む接着された物品であって;
該硬化した官能性混合物が(a)0.01μm〜500μmの平均粒子サイズを有する1つ以上の均一に分散された固体反応プロモーター;(b)少なくとも1つの多官能性マイケル供与体;および(c)少なくとも1つの多官能性マイケル受容体;をさらに含む:
接着された物品。
【請求項7】
(a)0.01μm〜500μmの平均粒子サイズを有する1つ以上の均一に分散された固体反応プロモーター;(b)少なくとも1つの多官能性マイケル供与体;および(c)少なくとも1つの多官能性マイケル受容体:
を含む硬化性官能性混合物。
【請求項8】
請求項7の硬化性官能性混合物から製造されたラミネート接着剤。
【請求項9】
請求項7の硬化性官能性混合物から製造されたシーラント。
【請求項10】
請求項7の硬化性官能性混合物から製造されたエラストマー。
【請求項11】
請求項7の硬化性官能性混合物から製造された発泡体。

【公開番号】特開2007−9202(P2007−9202A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−172293(P2006−172293)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】