説明

マクロライド合成方法

本発明は、マクロライドの製造方法、特に場合により置換されている20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド及びその誘導体の製造方法、並びに薬剤を作成するためのマクロライドの使用、マクロライドを用いる治療方法、及び特にマクロライドを製造するために使用され得る中間体の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロライドの製造方法、特に場合により置換されている20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド及びその誘導体の製造方法、並びに前記マクロライドを用いる治療方法、薬剤を作成するための前記マクロライドの使用、及び特に前記マクロライドを製造するために使用され得る中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マクロライドがヒト、家畜、家禽及び他の動物における感染性疾患を治療するのに有効であることは長く知られている。従来のマクロライドには例えばタイロシンA
【0003】
【化1】

のような16員マクロライドが含まれる。例えば、米国特許第4,920,103号(5欄12−38行目)を参照されたい。米国特許第4,820,695号(7欄1−32行目)及びEP 0103465B1(5頁3行目)も参照されたい。長年にわたり、各種タイロシン誘導体が抗菌活性及び選択性を高めるという目的で開発されてきた。
【0004】
タイロシン誘導体には、例えば米国特許第6,514,946号において検討されている構造上式(I)
【0005】
【化2】

[式中、
及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素であり、
及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素である。]
に相当する化合物が含まれる。前記化合物の例には、下記構造
【0006】
【化3】

を有する20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドが含まれる。これらの化合物、特に20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドは、例えばパスツレラ症、ウシ呼吸器疾患及びブタ呼吸器疾患を安全且つ効果的に治療するための薬物動態的及び薬物力学的属性を有していると考えられている。家畜及び家禽疾患を治療するための上記化合物の使用が米国特許第6,514,946号において検討されている。この検討は参照により本明細書に含まれるとする。
【0007】
マクロライドを製造するための各種アプローチが報告されている。
【0008】
例えば、Debonoらは、EP 0103465B1において上記化合物を製造するための各種方法ステップを検討している。これらの方法は、例えば以下の還元
【0009】
【化4】

(式中、R、R、R、R及びRは各種置換基として定義されており、Rは特に場合により置換されている最高3個の不飽和もしくは飽和環を有する窒素含有環系として定義されている。)
を含む。Debonoらは、好ましい還元剤はシアノホウ水素化物であり、シアノホウ水素化ナトリウムが好ましい還元剤であると報告している。Debonoらは、この反応のための溶媒は通常不活性極性溶媒、例えばC−Cアルカノールであるとも述べている。6頁7−14行目参照されたい。Debonoらは更に、同じパテントファミリーの後願特許において(タイロシンを含めた)各種アルデヒド化合物のアミンを用いた還元アミノ化を検討している。シアノホウ水素化ナトリウム及びホウ水素化ナトリウムが適当な還元剤として挙げられており、無水メタノールが適当な溶媒として挙げられている。米国特許第4,820,695号の7欄60−68行目を参照されたい。
【0010】
Phanらも、米国特許第6,664,240号において還元アミノ化
【0011】
【化5】

(式中、R、R4、R7及びR8は各種置換基として定義されており、R7及びR8は特に各々独立の置換基として、または一緒になって3〜7員ヘテロ環式環を形成するとして定義されている。)
を検討している。Phanらは、この反応をアルコールまたはアセトニトリル溶媒中でホウ水素化試薬を用いて実施することを検討している。ホウ水素化試薬の例としてホウ水素化ナトリウム及びシアノホウ水素化ナトリウムがリストされており、アルコール溶媒の例としてメタノール、エタノール及びイソプロパノールがリストされている。例えば、15欄64行目〜16欄42行目及び22欄41−49行目を参照されたい。
【0012】
Taoらも、EP 0240264B1において還元アミノ化
【0013】
【化6】

(式中、R、R、R及びRは各種置換基として定義されており、R及びRは特に各々独立の置換基として、または一緒になって最高3個の場合により置換されている環を有するヘテロ環式環系を形成するとして定義されている。)
を検討している。Taoらは、この還元が還元剤としてギ酸を用いて達成され得ると報告している。Taoらは更に、溶媒は通常不活性極性有機溶媒であると報告している。前記溶媒の例として酢酸アミル及びアセトニトリルが挙げられている。4頁57行目〜5頁10行目を参照されたい。米国特許第4,921,947号の3欄62行目〜4欄16行目も参照されたい。
【0014】
Debonoらは、EP 0103465B1において以下の加水分解反応
【0015】
【化7】

(式中、R、R、R及びRは各種置換基として定義されている。)
を検討している。Debonoらは、この加水分解が強水性無機酸(例えば、塩酸または硫酸)または強有機酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)を用いて起こり得ると報告している。7頁3−8行目を参照されたい。Debonoらは更に、同じパテントファミリーの後願特許において十分に公知の酸加水分解手順を用いたタイロシン、マクロシン及びDOMMのC−20−修飾誘導体のマイカロース加水分解を検討している。米国特許第4,820,695号の8欄35−43行目も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4,920,103号明細書
【特許文献2】米国特許第4,820,695号明細書
【特許文献3】欧州特許第0103465号明細書
【特許文献4】米国特許第6,514,946号明細書
【特許文献5】欧州特許第0103465号明細書
【特許文献6】米国特許第6,664,240号明細書
【特許文献7】欧州特許第0240264号明細書
【特許文献8】米国特許第4,921,947号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
多くの病的状態の治療におけるマクロライドの重要性にてらして、マクロライドを製造するための費用効率がよい高収率方法が要望され続けている。以下の開示内容はこの要望に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、マクロライド、特に場合により置換されている20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド及びその誘導体の製造方法に関する。前記方法は、マクロライドそれ自体の製造方法、及び特に各種マクロライドを製造するための中間体として使用され得る化合物の製造方法を含む。
【0019】
要するに、本発明の一部は、マクロライド及びその塩の製造方法に関する。前記マクロライドは構造上式(I)
【0020】
【化8】

(式中、
、R及びRに関して、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素であり、
、R及びRに関して、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素である。)
に相当する。
【0021】
幾つかの実施形態では、この方法はタイロシン(例えば、タイロシンAまたはその塩)、式(II)を有するピペリジニル化合物及びギ酸を非極性溶媒の存在下で反応させることを含む。これらの実施形態では、式(II)を有するピペリジニル化合物は構造上
【0022】
【化9】

に相当する。
【0023】
幾つかの実施形態では、この方法は20−ピペリジニル−タイロシン化合物を酸と反応させることを含む。これらの実施形態では、20−ピペリジニル−タイロシン化合物は構造上式(III)
【0024】
【化10】

に相当する。
【0025】
幾つかの実施形態では、この方法は23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を酸と反応させることを含む。これらの実施形態では、23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物は構造上式(IV)
【0026】
【化11】

に相当する。
【0027】
幾つかの実施形態では、この方法は23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を活性化剤を用いて活性化して、活性化化合物を形成することを含む。これらの実施形態では、23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物は構造上式(V)
【0028】
【化12】

に相当する。活性化化合物(“23−L−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物”とも称される)は構造上式(VI)
【0029】
【化13】

(式中、Lは離脱基である。)
に相当する。
【0030】
他の実施形態では、この方法は式(VI)を有する活性化化合物を式(VII)を有するピペリジニル化合物と反応させることを含む。これらの実施形態では、式(VII)を有するピペリジニル化合物は構造上
【0031】
【化14】

に相当する。
【0032】
幾つかの実施形態では、この方法は式(I)を有するマクロライドまたはその塩を製造するために上記実施形態の組合せを含む。
【0033】
幾つかの実施形態では、この方法は、例えば非晶質、結晶質、共結晶質または溶媒和形態の式(I)を有するマクロライドまたはその塩を製造するために1つ以上の上記実施形態を含む。
【0034】
本発明の一部は、式(III)を有する20−ピペリジニル−タイロシン化合物またはその塩の製造方法にも関する。これらの実施形態では、この方法はタイロシン(例えば、タイロシンA)、式(II)を有するピペリジニル化合物及びギ酸を非極性溶媒の存在下で反応させることを含む。
【0035】
本発明の一部は、式(IV)を有する23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物またはその塩の製造方法にも関する。これらの実施形態では、この方法は式(III)を有する20−ピペリジニル−タイロシン化合物をHBrと反応させることを含む。
【0036】
本発明の一部は、式(V)を有する23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物またはその塩の製造方法にも関する。これらの実施形態では、この方法は式(IV)を有する23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を酸と反応させることを含む。
【0037】
本発明の一部は、式(VI)を有する活性化化合物またはその塩の製造方法にも関する。これらの実施形態では、この方法は式(V)を有する23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を活性化剤を用いて活性化することを含む。
【0038】
本発明はまた、本発明に従って製造した式(I)を有する化合物(及びその医薬的に許容され得る塩)の疾患、例えばパスツレラ症、ブタ呼吸器疾患またはウシ呼吸器疾患の治療方法における使用に関する。より具体的には、本発明の一部は、上記した方法の1つ以上に従って式(I)を有する化合物(またはその医薬的に許容され得る塩)を製造した後、治療有効量の前記化合物または塩を治療を要する動物に対して投与することを含む方法に関する。本発明の一部は、本発明に従って製造される式(I)を有する化合物(またはその医薬的に許容され得る塩)の薬剤、特に上記治療用薬剤を製造するための使用に関する。
【0039】
出願人の発明の更なる態様及び作用効果は本明細書から当業者に自明であろう。
【発明を実施するための形態】
【0040】
好ましい実施形態の詳細な記載は、当業者が具体的使用の要件に最も適するように本発明を各種形態で改変し、適用することができるように出願人の発明、その原則及びその実際的使用を当業者に理解させるために意図されている。この詳細な記載、及び本発明の好ましい実施形態を示している具体例は例示の目的だけに意図されている。従って、本発明は本明細書中に記載されている好ましい実施形態に限定されず、多種多様に修飾され得る。
【0041】
A.本発明により製造され得るマクロライド
本発明の方法により製造され得る化合物には、構造上式(I)
【0042】
【化15】

(式中、
及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素であり、
及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素である。)
に相当する化合物が含まれる。幾つかの実施形態では、式(I)を有するピペリジニル置換基は同一である。すなわち、
【0043】
【化16】


【0044】
【化17】

と同一である。幾つかの前記実施形態では、例えば両ピペリジニル置換基はピペリジン(すなわち、R、R、R、R、R及びRは各々水素である。)であり、この化合物は20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド
【0045】
【化18】

である。前記化合物には例えば
【0046】
【化19】

が含まれる。同一ピペリジニル置換基を有する他の化合物には
【0047】
【化20】

が含まれる。
【0048】
幾つかの実施形態では、式(I)を有するピペリジニル置換基は同一ではない。すなわち、
【0049】
【化21】


【0050】
【化22】

と異なる。異なるピペリジニル置換基を有する化合物には
【0051】
【化23】


が含まれる。
【0052】
B.マクロライド合成
本発明は当業界で通常入手し得る物質からマクロライドを合成するために使用され得る。
【0053】
B−1:20−ピペリジニル−タイロシン化合物の製造
幾つかの実施形態では、マクロライド合成は20−ピペリジニル−タイロシン化合物、特に構造上式(III)
【0054】
【化24】

に相当する化合物の製造から出発し、または前記製造を含む。幾つかの実施形態では、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;またはR及びRは各々水素であり、Rはメチルである。他の実施形態では、R、R及びRは各々水素であり、この化合物は構造上
【0055】
【化25】

に相当する。
【0056】
20−ピペリジニル−タイロシン化合物は、タイロシンA及びピペリジニル化合物からギ酸(HCOOH)からなる還元剤を用いる還元アミノ化反応により製造され得る。
【0057】
【化26】

【0058】
、R及びRが各々水素の場合には、この反応は以下の通りである。
【0059】
【化27】

【0060】
タイロシンA、ピペリジニル化合物及びギ酸は市販されている。
【0061】
タイロシンA試薬は、例えば純粋な(または、少なくとも本質的に純粋な)タイロシンAであり得る。或いは、セクションB−7において下記されているように、タイロシンA試薬が混合物の一部であってもよく、この混合物は例えばタイロシンA及び1つ以上のタイロシンA誘導体(例えば、タイロシンB、タイロシンC及び/またはタイロシンD)からなる。
【0062】
タイロシンAは遊離塩基形態であっても、塩の形態であってもよい。同様に、タイロシンA誘導体も場合により1つ以上の塩の形態である。いろいろな塩が適していると考えられる。幾つかの実施形態では、塩は例えばリン酸塩からなる。他の実施形態では、塩は酒石酸塩からなる。更に他の実施形態では、塩はクエン酸塩または硫酸塩からなる。塩に関する更な検討は以下のセクションCにおいて見つけることができる。
【0063】
溶媒は1つ以上の溶媒からなり得る。幾つかの実施形態では溶媒は1つ以上の極性溶媒からなり得るが、溶媒が代わりに1つ以上の非極性溶媒からなることが好ましい。非極性溶媒は、導電性であるほど十分にイオン化せず、極性化合物(例えば、各種無機塩)を全く(または、少なくとも本質的に)溶解し得ないが、非極性化合物(例えば、炭化水素及び樹脂)を溶解できる溶媒である。通常、溶媒が試薬、生成物及び反応混合物中の他の成分と非反応性であることが好ましい。この溶媒は、例えばクロロホルム(CHCl)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(CHCl、DCMまたはメチレンクロリド)、四塩化炭素(CCl)、酢酸エチル(CHCOOC)、ジエチルエーテル(CHCHOCHCH)、シクロヘキサン(C12);或いは芳香族炭化水素溶媒、例えばベンゼン(C)、トルエン(CCH)、キシレン(C(CHまたはジメチルベンゼン(1,3−ジメチルベンゼン(すなわち、m−キシレン)、1,2−ジメチルベンゼン(すなわち、o−キシレン)、または1,4−ジメチルベンゼン(すなわち、p−キシレン)を含む)、エチルベンゼン、或いはこれらの混合物(例えば、m−キシレン、o−キシレン、p−キシレン及び/またはエチルベンゼンの混合物)からなり得る。幾つかの実施形態では、溶媒はジクロロメタン、クロロホルムまたは酢酸エチルからなる。他の実施形態では、溶媒はキシレンからなる。更に他の実施形態では、溶媒はトルエンからなる。幾つかの前記実施形態では、典型的な反応温度で使用しやすいためにトルエンが特に好ましい。
【0064】
幾つかの実施形態では、この溶媒は溶媒の混合物からなる。幾つかの前記実施形態では、この溶媒は例えばトルエンとDCMの混合物からなる。この場合、トルエン/DCM比は例えば約1:1〜約100:1または約5:1〜約8:1(v/v)であり得る。幾つかの前記実施形態では、前記比は例えば約8:1(v/v)である。他の実施形態では、前記比は例えば約5.3:1(v/v)である。
【0065】
アミノ化を実施するためには、通常タイロシンA試薬,ピペリジニル化合物、ギ酸(または、ギ酸の源)及び溶媒を反応器に装入し、混合する。これらの成分は通常任意の順序で反応器に装入され得る。
【0066】
反応器は各種反応器タイプからなり得る。幾つかの実施形態では、この反応器は例えば攪拌タンク反応器である。反応混合物に曝されたときに安定な組成物が使用され得るが、ガラス製反応器及びガラス内張反応器がしばしば好ましい。例えば、ステンレス鋼製反応器も通常使用され得る。
【0067】
典型的には、タイロシンA試薬、ピペリジニル化合物及びギ酸は等モル量ずつ使用され得る。しかしながら、通常、タイロシンA試薬のモル量に対して過剰量のピペリジニル化合物及びギ酸が使用される。
【0068】
幾つかの実施形態では、1〜約3当量(または、1.05〜約3当量)のピペリジニル化合物を反応器に装入する。幾つかの前記実施形態では、例えば1.05〜約1.2当量のピペリジニル化合物を反応器に装入する。他の前記実施形態では、約1.07〜約1.5当量のピペリジニル化合物を反応器に装入する。この場合、例えば約1.3当量のピペリジニル化合物を反応器に装入し得る。幾つかの実施形態では、ピペリジニル化合物を時間をかけて2回またはそれ以上に分けて反応器に装入するが、その後の装入量が第1回装入量よりも少ないことが好ましい。幾つかの実施形態では、例えばピペリジニル化合物を2回に分けて反応器に装入し、第2回装入量は第1回装入量の約10%である。出願人はこれが変換を高めるために有効であり得ることを知見した。
【0069】
幾つかの実施形態では、1〜約10当量(または、1.05〜約10当量、約2〜約5当量、または約2.5〜約4.5当量)のギ酸を使用する。幾つかの前記実施形態では、例えば約4.5当量のギ酸を使用する。他の前記実施形態では、約2.5〜約4当量のギ酸を使用する。幾つかの前記実施形態では、例えば約3.0当量のギ酸を使用する。
【0070】
典型的には、溶媒の量は、例えば試薬、生成物及び反応混合物中の他の成分が反応器に固着するのを防止(または、本質的に防止)し、試薬の均質分布を促進するのに十分な量である。幾つかの実施形態では、溶媒の量は少なくとも約1L/kg−タイロシンA試薬(または、タイロシンA試薬がタイロシンA試薬及びその誘導体の混合物の一部ならば、kg−全タイロシン混合物)である。溶媒の量は通常約40L/kg−タイロシンA試薬(または、タイロシン混合物)未満である。幾つかの実施形態では、溶媒の量は約2〜約15L(または、約5〜約15L、約5〜約12L、約5〜約10L、または約8〜約10L)/kg−タイロシンA試薬(または、タイロシン混合物)である。例示として、幾つかの前記実施形態では、溶媒はトルエンまたはトルエンとDCMの混合物からなり、溶媒の量は約8〜約10L/kg−タイロシンA試薬(または、タイロシン混合物)である。例えば、溶媒の量は約8L/kg−タイロシンA試薬(または、タイロシン混合物)であり得る。
【0071】
反応の少なくとも一部(または、全反応)は典型的には約20℃以上、約25℃以上、または約60℃以上で実施する。通常、反応の少なくとも一部(または、全反応)を溶媒の沸点を超えない温度、より典型的には沸点未満で実施する。例えば溶媒がトルエンのときには、反応の少なくとも一部(または、全反応)を典型的には約110℃未満で実施する。更に例示すると、溶媒がキシレンのときには、反応の少なくとも一部(または、全反応)を通常約165℃未満で実施する。通常、反応の少なくとも一部(または、全反応)を約60〜約95℃、約70〜約85℃、約70〜約80℃または約75〜約80℃で実施する。幾つかの実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)の反応温度は例えば約80℃である。他の実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)の反応温度は例えば約76℃である。前記範囲よりも低い温度を使用してもよいが、その温度では反応速度が遅くなる傾向がある。また、前記範囲よりも高い温度を使用してもよいが、その温度では望ましくない副生成物がより多く生ずる傾向がある。
【0072】
この反応は大気圧、大気圧未満及び大気圧以上を含めた広範囲の圧力下で実施され得る。しかしながら、典型的には反応をほぼ大気圧下で実施することが好ましい。好ましい実施形態では、この反応を不活性雰囲気(例えば、N)下で実施する。
【0073】
反応時間は各種要因に依存し得、前記要因には例えば反応温度、溶媒の特徴、成分の相対量及び所望変換が含まれる。バッチ反応器での反応時間は通常少なくとも約1分間、典型的には少なくとも約5分間、より典型的には少なくとも約1時間である。反応時間は通常約24時間未満である。幾つかの実施形態では、反応時間は例えば約0.5〜約12時間または約1〜約4時間である。幾つかの前記実施形態では、反応時間は約3.5時間である。他の前記実施形態では、反応時間は約1〜約3時間である。これらの実施形態では、反応時間は例えば約2時間であり得る。上記範囲よりも短い反応時間を使用してもよいが、その反応時間では変換が低くなる傾向がある。また、より長い反応時間を使用してもよいが、その反応時間では不純物がより多く生じ、装置及びマンパワーが効率的に使用されない傾向がある。
【0074】
生成物は例えば当業界で公知の各種方法を用いて精製または単離され得る。或いは、生成物を更に精製または単離することなく次ステップで使用してもよい。
【0075】
B−2 23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物の製造(マイカロシルオキシ置換基の加水分解)
幾つかの実施形態では、マクロライド合成は23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物、特に構造上式(IV)
【0076】
【化28】

に相当する化合物の製造から出発し、または前記製造を含む。幾つかの実施形態では、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;またはR及びRは各々水素であり、Rはメチルである。他の実施形態では、R、R及びRは各々水素であり、この化合物は構造上
【0077】
【化29】

に相当する。
【0078】
23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物は、20−ピペリジニル−タイロシン化合物を酸加水分解して製造され得る。
【0079】
【化30】

【0080】
、R及びRが各々水素の場合には、この反応は以下の通りである。
【0081】
【化31】

【0082】
上記反応で使用される20−ピペリジニル−タイロシン化合物は、セクションB−1において先に検討した方法を用いて製造され得、別の方法(例えば、還元剤としてホウ水素化物を用いる方法)を用いて製造され得、または業者から入手し得る。幾つかの好ましい実施形態では、20−ピペリジニル−タイロシン化合物はセクションB−1において先に検討した方法を用いて製造される。
【0083】
酸は、例えば強無機酸、例えば塩酸(HCl)、硝酸(HNO)、フルオロホウ酸(HBF)、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、ポリリン酸(PPA)または臭化水素酸(HBr);或いは強有機酸、例えばp−トルエンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸(CFCOOH)であり得る。幾つかの実施形態では、酸はHClからなる。他の実施形態では、酸はHBrからなる。HBrを使用すると、例えばHClを用いて得られる生成物に比して生成物混合物中の不純物量が少なくなる傾向がある。幾つかの実施形態では、酸の混合物(特に、強酸と別の酸)を使用する。
【0084】
通常、マイカロシルオキシ置換基を加水分解(すなわち、開裂)してヒドロキシ基を形成するのに十分な酸を20−ピペリジニル−タイロシン化合物と混合する。典型的には、酸の量は20−ピペリジニル−タイロシン化合物の量に基づいて少なくとも約1当量である。通常、酸は濃厚な組成物の形態で反応混合物に添加する。濃度は典型的には約50%(質量/容量)以下、約48%(質量/容量)以下、約1〜約30%(質量/容量)、または約1〜約24%(質量/容量)である。幾つかの実施形態では、例えば酸はHBrであり、反応混合物に添加される酸溶液の濃度は約24%(質量/容量)である。幾つかの実施形態では、濃厚な酸は酸の混合物(例えば、HBrと別の酸)からなる。
【0085】
成分は通常反応器に任意の順序で装入され得る。反応器は各種反応器タイプからなり得る。幾つかの実施形態では、反応器は例えば攪拌タンク反応器である。酸性反応混合物に曝されたときに安定な組成物が使用され得るが、ガラス製反応器及びガラス内張反応器がしばしば好ましい。
【0086】
加水分解の少なくとも一部(または、全加水分解)を通常混合物の凝固点を超える温度で実施し、混合物を攪拌し、混合物を均質とする。典型的には、少なくとも約10℃(または、約15℃以上または約25℃以上)の温度が好ましい。通常、反応温度は溶媒(例えば、水)の沸点を超えず、典型的には沸点未満である。幾つかの実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を約100℃以下(または、約65℃以下)の温度で実施する。酸がHClまたはHBrである幾つかの実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を通した反応温度は約20〜約60℃である。幾つかの前記実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を通した反応温度は約40℃以下である。そのような例では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を通した反応温度は例えば約20〜約40℃、約25〜約40℃、または約30〜約40℃である。酸がHClまたはHBrである他の実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を通した反応温度は約45〜約60℃または約50〜約56℃である。例示として、前記実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を通した反応温度は例えば約56℃であり得る。前記範囲よりも高い温度を使用してもよいが、その温度では望ましくない副生成物がより多く生ずる傾向がある。また、前記範囲よりも低い温度を使用してもよいが、その温度では反応速度が遅くなる傾向がある。しかしながら、この加水分解が容易に起こるならば、そのような反応速度も適当であり得る。
【0087】
酸を反応器に装入しながら、反応混合物を所望反応温度よりも僅かに低い温度に維持してもよい。前記実施形態では、酸を反応器に装入したら温度が上昇する傾向がある。
【0088】
この反応は大気圧、大気圧未満及び大気圧以上を含めた広範囲の圧力下で実施され得る。しかしながら、典型的には反応をほぼ大気圧下で実施することが好ましい。
【0089】
反応時間は各種要因に依存し、前記要因には例えば反応温度、成分の相対量及び所望変換が含まれる。バッチ反応器での反応時間は1分未満、本質的に同時または同時であってもよい。しかしながら、反応時間は通常少なくとも約1分間、より典型的には少なくとも約5分間、更により典型的には少なくとも約15分間である。通常、反応時間は約3時間未満である。幾つかの実施形態では、反応時間は例えば約0.25〜約2時間、約0.25〜約1.5時間または約0.25〜約1.1時間である。より短い反応時間を使用してもよいが、その反応時間では変換が低くなることがある。また、より長い反応時間を使用してもよいが、その反応時間では不純物がより多く生じ、装置及びマンパワーが効率的に使用されない傾向がある。
【0090】
生成物は例えば当業界で公知の各種方法を用いて精製または単離され得る。或いは、生成物を更に精製または単離することなく次ステップで使用してもよい。
【0091】
B−3:23−ヒドロキシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物の製造(マイシノシルオキシ置換基の加水分解)
幾つかの実施形態では、マクロライド合成は23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物、特に構造上式(V)
【0092】
【化32】

に相当する化合物の製造から出発し、または前記製造を含む。幾つかの実施形態では、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;またはR及びRは各々水素であり、Rはメチルである。他の実施形態では、R、R及びRは各々水素である。
【0093】
【化33】

【0094】
23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物は、23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を酸加水分解反応して製造され得る。
【0095】
【化34】

【0096】
、R及びRが各々水素である場合には、この反応は次の通りである。
【0097】
【化35】

【0098】
上記反応で使用される23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物は、セクションB−2において先に検討した方法を用いて製造され得、別の方法を用いて製造され得、または業者から入手し得る。幾つかの好ましい実施形態では、23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物はセクションB−2において先に検討した方法を用いて製造される。
【0099】
酸は、例えば強無機酸、例えば塩酸、硝酸、フルオロホウ酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸または臭化水素酸;或いは強有機酸、例えばp−トルエンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸であり得る。幾つかの実施形態では、酸はHClからなる。幾つかの好ましい実施形態では、酸はHBrからなる。セクションB−2において先に検討した加水分解のように、この優先性は、HBrを使用すると例えばHClに比して生成物混合物中の不純物量が少なくなる傾向に由来する。幾つかの実施形態では、酸の混合物(特に、強酸と別の酸)を使用する。
【0100】
セクションB−2において先に検討したマイカロシルオキシの酸加水分解後にマイシノシルオキシ加水分解を生起させる実施形態では、マイシノシルオキシ加水分解反応及びマイカロシルオキシ加水分解反応で使用する酸が異なっていてもよいが、通常これらの酸が同一であることがより好ましい。幾つかの実施形態では、例えばHClを両反応で使用する。他の実施形態では、HBrを両反応で使用する。
【0101】
通常、マイシノシルオキシ置換基を加水分解してヒドロキシル基を形成するのに十分な酸を23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物と混合する。典型的には、酸の量は23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物のモル量に基づいて約1当量以上である。通常、酸は濃厚な組成物の形態で反応混合物に添加される。濃度は典型的には約50%(質量/容量)以下、約48%(質量/容量)以下、約1〜約30%(質量/容量)、または約1〜約24%(質量/容量)である。幾つかの実施形態では、例えば酸はHBrであり、反応混合物に添加される酸溶液の濃度は約24%(質量/容量)である。幾つかの実施形態では、濃厚な酸は酸の混合物(例えば、HBrと別の酸)からなる。
【0102】
成分は通常反応器に任意の順序で装入され得る。反応器は各種反応器タイプからなり得る。幾つかの実施形態では、反応器は例えば攪拌タンク反応器である。酸性反応混合物に曝されたときに安定な組成物が使用され得るが、ガラス製反応器及びガラス内張反応器がしばしば好ましい。
【0103】
混合物を通常混合物の凝固点を超える温度で維持し、混合物を攪拌し、混合物を均質とする。反応の少なくとも一部(または、全反応)を通した反応温度が溶媒(例えば、水)の沸点を超えないことが好ましく、典型的には沸点未満である。通常、反応の少なくとも一部(または、全反応)を少なくとも約10℃、約25℃以下または少なくとも約48℃の温度で実施する。反応の少なくとも一部(または、全反応)を通した反応温度は典型的には約100℃以下または約65℃以下である。幾つかの実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を通した反応温度は例えば約10〜約100℃である。酸がHClまたはHBrである幾つかの実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を通した反応温度は好ましくは約48〜約60℃である。幾つかの前記実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を通した温度は例えば約55〜約60℃である。他の前記実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を通した温度は約51〜約57℃(例えば、約54℃)である。更に他の前記実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を通した温度は約50〜約56℃である。前記範囲よりも低い温度を使用してもよいが、その温度では反応速度が遅くなる傾向がある。また、前記範囲よりも高い温度を使用してもよいが、その温度では望ましくない副生成物がより多く生ずる傾向がある。
【0104】
セクションB−2において先に検討したマイカロシルオキシ加水分解と同様に、酸の少なくとも一部(または、すべての酸)を反応器に装入しながらマイシノシルオキシ加水分解反応混合物を所望反応温度よりも僅かに低い温度に維持してもよい。
【0105】
この反応は大気圧、大気圧未満及び大気圧以上を含めた広範囲の圧力下で実施され得る。しかしながら、典型的には反応をほぼ大気圧下で実施することが好ましい。
【0106】
反応時間は各種要因に依存し、その要因には例えば反応温度、成分の相対量及び所望変換が含まれる。バッチ反応器での反応時間は通常少なくとも約1分間、より典型的には少なくとも約15分間である。典型的には、反応時間は約7時間未満である。幾つかの実施形態では、反応時間は例えば約0.5〜約7時間である。幾つかの前記実施形態では、反応時間は例えば約1〜約5時間または約3〜約5時間である。前記範囲よりも短い反応時間を使用してもよいが、その反応時間では変換が低くなる傾向がある。また、より長い反応時間を使用してもよいが、その反応時間では不純物がより多く生じ、装置及びマンパワーが効率的に使用されない傾向がある。
【0107】
セクションB−2において先に検討したマイカロシルオキシ加水分解後にマイシノシルオキシ加水分解を生起させる場合には、2つの反応(すなわち、セクションB−2及び本セクションB−3において先に検討した反応)を2つのばらばらのステップとしてまたは単一反応として実施してもよい。反応を単一反応として実施するときには、反応混合物を同一温度で維持しても、または温度を経時的に変化(典型的には、上昇)させてもよい。反応混合物を同一温度で維持する場合、混合物を通常少なくとも約10℃、典型的には約25℃以上、より典型的には少なくとも約30℃、更により典型的には少なくとも約45℃の温度で維持する。幾つかの実施形態では、温度を約10〜約100℃に維持する。幾つかの前記実施形態では、温度は例えば約48〜約70℃である。他の前記実施形態では、温度は例えば約50〜約56℃である。他の前記実施形態では、温度は例えば約55〜約60℃である。更に他の前記実施形態では、温度は約65〜約70℃である。混合物の温度を経時的に上昇させる場合には、加水分解開始時の混合物の温度は通常少なくとも約15℃または少なくとも約25℃である。反応がマイカロシルオキシ加水分解からマイシノシルオキシ加水分解に進行するにつれて、温度を少なくとも約30℃、少なくとも約45℃、または約48〜約70℃に上昇させることが好ましい。幾つかの前記実施形態では、上昇させた温度は約50〜約56℃である。他の前記実施形態では、上昇させた温度は約55〜約60℃である。更に他の前記実施形態では、上昇させた温度は約65〜約70℃である。幾つかの実施形態では、酸を反応器に装入しながら反応混合物を所望反応温度よりもわずかに低い温度に維持する。これらの実施形態では、酸を反応器に装入したら温度が上昇する傾向がある。
【0108】
2つの加水分解反応を合わせた全反応時間は各種要因に依存し、前記要因には例えば反応温度、成分の相対量及び所望変換が含まれる。しかしながら、バッチ反応器での両加水分解反応の反応時間は通常少なくとも約4時間である。幾つかの実施形態では、反応時間の合計は約4〜約6時間である。幾つかの前記実施形態では、反応時間の合計は例えば約4時間である。この反応時間は、例えば反応温度が65〜約70℃である場合に特に適している。他の実施形態では、反応時間は約5時間である。この反応時間は、例えば反応温度が約55〜約60℃である場合に特に適している。
【0109】
生成物は例えば当業界で公知の各種方法を用いて精製または単離され得る。或いは、生成物を更に精製または単離することなく次ステップで使用してもよい。
【0110】
B−4.活性化化合物の製造
幾つかの実施形態では、マクロライド合成は活性化化合物、特に構造上式(VI)
【0111】
【化36】

に相当する化合物の合成から出発し、または前記化合物の合成を含む。
【0112】
幾つかの実施形態では、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;またはR及びRは各々水素であり、Rはメチルである。他の実施形態では、R、R及びRは各々水素であり、化合物は構造上
【0113】
【化37】

に相当する。
【0114】
Lは離脱基である。通常、離脱基は、アミノ化反応(例えば、セクションB−5において以下に検討するアミノ化反応)においてピペリジンを用いてピペリジニル基で(通常、求核置換により)置換され得る基である。幾つかの実施形態では、Lは例えばヨード(−I)、ブロモ(−Br)、アルキルスルホネート及びアリールスルホネートである。アルキルスルホネート及びアリールスルホネートは場合によりハロ、アルキル及びハロアルキルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されている。幾つかの前記実施形態では、Lは例えばヨード、ブロモ、メチルスルホネート(−OS(O)CHまたはメシレート)、トリフルオロメチルスルホネート(−OS(O)CFまたはトリフレート)、または4−メチルフェニルスルホネート(p−トルエンスルホネートまたはトシレート)である。幾つかの実施形態では、Lはヨードであり、この活性化化合物は構造上
【0115】
【化38】

に相当し、またはR、R及びRが各々水素の場合には構造上
【0116】
【化39】

に相当する。
【0117】
幾つかの実施形態では、Lはメシレートであり、この活性化化合物は構造上
【0118】
【化40】

に相当し、またはR、R及びRが各々水素の場合には構造上
【0119】
【化41】

に相当する。
【0120】
幾つかの実施形態では、Lはトシレートであり、この活性化化合物は構造上
【0121】
【化42】

に相当し、またはR、R及びRが各々水素の場合には構造上
【0122】
【化43】

に相当する。
【0123】
幾つかの実施形態では、Lはトリフレートであり、この活性化化合物は構造上
【0124】
【化44】

に相当し、またはR、R及びRが各々水素の場合には構造上
【0125】
【化45】

に相当する。
【0126】
この活性化化合物は、23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物及び活性化剤(すなわち、電子求引基を含む化合物)から活性化反応
【0127】
【化46】

により製造され得る。R、R及びRが各々水素の場合には、この反応は以下の通りである。
【0128】
【化47】

【0129】
上記反応で使用される23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物は、セクションB−3において先に検討した方法を用いて製造され得、別の方法を用いて製造され得、または業者から入手し得る。幾つかの好ましい実施形態では、23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物はセクションB−3において先に検討した方法を用いて製造される。
【0130】
幾つかの実施形態では、Lはヨードであり、活性化剤はI及びトリフェニルホスフィンを混合することにより形成される。
【0131】
【化48】

【0132】
典型的には、この反応は1つ以上の溶媒の存在下で実施される。溶媒は通常試薬、生成物及び反応混合物中の他の成分と非反応性である(下記するように、溶媒は例えば補助塩基として作用し得るが)。溶媒は、例えばジクロロメタン(DCM)、アセトン、アセトニトリル(ACN)、tert−ブチルメチルエーテル(tBME)、トルエン及びピリジンの1つ以上であり得る。幾つかの実施形態では、溶媒は例えばテトラヒドロフラン(THF)からなる。他の実施形態では、溶媒はピリジンからなり、これは補助塩基としても作用し得る。更に他の実施形態では、溶媒はジクロロメタンからなる。幾つかの前記実施形態では、溶媒は例えばジクロロメタン及びトルエンからなる。幾つかの実施形態では、ジクロロメタン:トルエンの比は例えば少なくとも約1:1、約3:1〜約10:1、または約3:1〜約5:1である。幾つかの実施形態では、溶媒の少なくとも一部は23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物の製造及び/または精製中に使用した方法ステップからの溶媒からなる。
【0133】
通常、溶媒の量は、例えば試薬、生成物及び反応混合物中の他の成分が反応器に固着するのを防止する(または、本質的に防止する)ため、試薬(特に、23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物)を溶解させるため、及び試薬の均質分布を促進するために十分な量である。溶媒の量は、典型的には少なくとも約1L/kg−23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物である。溶媒の量は、典型的には約100L/kg−23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を超えない。幾つかの実施形態では、溶媒の量は約5〜約20L(または、約5〜約15L、約10〜約12L)/kg−23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物である。例示として、幾つかの実施形態では、溶媒の量は約10L DCM/kgである。他の実施形態では、溶媒の量は約12L DCM/kgである。更に他の実施形態では、溶媒はDCMとトルエンの混合物(約4:1容量/容量)であり、溶媒の量は約10L/kgである。
【0134】
上記したように、この反応は塩基(または、“補助塩基”)の存在下で実施され得る。塩基は単一であっても、組み合わせてもよい。この塩基は、例えばトリエチルアミン、ピリジン、イミダゾール、炭酸カリウム及び/または4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)からなり得る。塩基を存在させると反応速度を増加させ得る。幾つかの実施形態では、塩基はピリジンからなる。幾つかの前記実施形態では、活性化剤は例えばI及びトリフェニルホスフィンからなる。他の実施形態では、塩基はイミダゾールからなる。他の実施形態では、塩基は炭酸カリウム及び4−ジメチルアミノピリジンの組合せからなる。幾つかの前記実施形態では、活性化剤は例えばp−トルエンスルホニルクロリドからなる。幾つかの実施形態では、補助塩基を固体支持体(例えば、樹脂)に付着させる。
【0135】
塩基を使用する場合、塩基のモル量は典型的には23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物のモル量に少なくとも等しい。幾つかの実施形態では、塩基の量は少なくとも1.05当量である。例えば、幾つかの実施形態では、塩基のモル量は約1.1〜約10当量、約1.1〜約5当量、または約1.1〜約3当量である。幾つかの前記実施形態では、塩基のモル量は約1.1〜約1.4当量(例えば、約1.15または約1.3当量)である。他の前記実施形態では、塩基のモル量は約2.8当量である。塩基の組合せを使用する場合、塩基の全モル量が上記した範囲に入ることが好ましい。例えば活性化剤源がp−トルエンスルホニルクロリドを含む場合、塩基の考えられる量の例は23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物の量に基づいて約1.5当量の炭酸カリウム及び約1.0当量の4−ジメチルアミノピリジンである。
【0136】
活性化剤の源がI及びトリフェニルホスフィンの場合、典型的にはまずI、トリフェニルホスフィン及び(場合により存在させる)塩基を溶媒の存在下で混合して活性化剤を形成した後、23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物と混合する。活性化剤を形成する反応器は、活性化剤を23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物と混合する反応器と同一であってもよい。或いは、活性化剤を別の反応器で形成し、その後23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物が装入されている反応器に装入してもよい。Iをトリフェニルホスフィンに1回以上の用量で添加しても、その逆であってもよい。幾つかの実施形態では、Iをトリフェニルホスフィンに2回以上に分けて(例えば、5回に分けて)添加しても、またはその逆であってもよい。1回分は等量であっても異なる量であってもよい。通常、I及びトリフェニルホスフィンの混合は溶媒の存在下で実施し、前記溶媒は例えば置換反応で使用する溶媒からなり得る。塩基(例えば、ピリジン)を存在させる場合、典型的には塩基をトリフェニルホスフィンと混合した後Iを添加する。好ましくは、トリフェニルホスフィンにIを添加している間混合物を約15〜約35℃(または、約20〜約30℃、例えば約25℃)に維持した後、添加後約15〜約35℃(または、約20〜約30℃、例えば約25℃)の温度に少なくとも約1分間(例えば、約2分間)、或いは少なくとも約5分間、約5〜約60分間または約30〜約60分間(例えば、約40分間)維持する。その後、温度を置換反応を開始させようとする温度にほぼ等しい温度に調節することが好ましい。
【0137】
置換反応を実施するために、通常23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物及び活性化剤を等モル量ずつ使用してもよい。しかしながら、通常は23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物のモル量に基づいて過剰量、典型的には少なくとも1.05当量の活性化剤を使用する。
【0138】
活性化剤をI及びトリフェニルホスフィンから形成する幾つかの実施形態では、I及びトリフェニルホスフィンのモル量は各々23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物のモル量に基づいて少なくとも1.05当量である。例えば、幾つかの前記実施形態では、I及びトリフェニルホスフィンのモル量は各々1.05〜約10当量、1.05〜約5当量、または1.05〜約3当量である。I及びトリフェニルホスフィンの各々の当量が同一であってもよいが、トリフェニルホスフィンの当量は典型的にはIの当量を超えている。例示として、I及びトリフェニルホスフィンの適当なモル量はそれぞれ23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物のモル量に基づいて約2.5当量及び2.6当量であり得る。他の実施形態では、I及びトリフェニルホスフィンの適当なモル量はそれぞれ23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物のモル量に基づいて約1.9当量及び2.0当量である。更に他の実施形態では、Iの適当なモル量は23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物のモル量に基づいて1.05〜約1.2当量てあり、トリフェニルホスフィンの適当な量は23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物のモル量に基づいて約1.09〜約1.25当量である。例えば、I及びトリフェニルホスフィンの適当なモル量はそれぞれ23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物のモル量に基づいて約1.06当量及び約1.13当量であり得る。更に例示すると、I及びトリフェニルホスフィンの適当なモル量はそれぞれ23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物のモル量に基づいて約1.2当量及び約1.25当量であり得る。
【0139】
活性化剤がp−トルエンスルホニルクロリドである幾つかの実施形態では、p−トルエンスルホニルクロリドのモル量は23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物のモル量に基づいて約1.1〜約10当量、約1.2〜約5当量または約1.2〜約3当量である。p−トルエンスルホニルクロリドの適当なモル量は例えば1.2当量であり得る。
【0140】
置換反応は、大気圧、大気圧未満及び大気圧以上を含めた広範囲の圧力下で実施され得る。しかしながら、典型的には反応をほぼ大気圧下で実施することが好ましい。
【0141】
置換反応の少なくとも一部(または、全置換反応)のための反応温度は典型的には溶媒の凝固点より高い。通常、置換反応の少なくとも一部(または、全置換反応)を通した反応温度は溶媒の沸点を超えず、典型的には沸点未満である。幾つかの実施形態では、例えば溶媒はジクロロメタンであり、反応の少なくとも一部(または、全反応)を約45℃以下の温度で実施する。幾つかの実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を約32℃以下の温度または約25℃以下の温度で実施する。幾つかの前記実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を例えば約−10℃〜約25℃で実施する。例えば、幾つかの実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を約0〜約20℃または約12〜約18℃(例えば、約13℃)で実施する。他の実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を約−10℃〜約45℃または約25〜約45℃で実施する。更に他の実施形態では、反応の少なくとも一部(または、全反応)を約−10〜約0℃または約−6〜約−5℃で実施する。上記した範囲よりも低い温度を使用してもよいが、その温度では反応速度が遅くなる傾向がある。また、上記した範囲よりも高い温度を使用してもよいが、その温度では望ましくない副生成物がより多く生ずる傾向がある。しかしながら、活性化剤の幾つかの源(例えば、トルエンスルホニルクロリド)を使用するとより高い温度(例えば、約25〜約45℃)を使用することができる。活性化剤がヨウ素の場合には、典型的には置換反応を23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物のジヨウ素化により生ずる不純物を許容できるレベルでしか生成しない温度範囲で実施することが好ましい。
【0142】
反応時間は各種要因に依存し、その要因には例えば反応温度、溶媒の特徴、成分の相対量及び所望変換が含まれる。バッチ反応器での総反応時間は典型的には少なくとも約1分間、より典型的には少なくとも約45分間である。通常、総反応時間は約24時間未満である。幾つかの実施形態では、総反応時間は例えば約5時間未満である。例示として、幾つかの実施形態では、反応時間は約45分間〜約5時間、または約1〜約3時間である。幾つかの前記実施形態では、反応時間は例えば約2〜約3時間、または約2〜約2.5時間(例えば、約2または約2.2時間)である。他の実施形態では、反応時間は約5〜約10時間、約6〜約10時間、約7〜約10時間、または約7〜約8時間である。上記範囲よりも短い反応時間を使用してもよいが、その反応時間では変換が低くなる傾向がある。また、より長い反応時間を使用してもよいが、その反応時間では不純物がより多く生じ、装置及びマンパワーが効率的に使用されない傾向がある。
【0143】
置換反応が発熱性であるために、幾つかの実施形態(特に、バッチ反応器を使用する実施形態)では、23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物と活性化剤を一度にでなく時間をかけて(または、複数回に分けて)混合する。幾つかの実施形態では、この混合に少なくとも1分間、少なくとも5分間、約5〜約60分間、または約30〜約60分間(例えば、約50分間)かける。例示として、幾つかの実施形態では、置換反応を約25℃の最高温度で実施し、活性化剤を約0.5〜約1時間かけて添加した後、更に約1時間反応させる。他の実施形態では、置換反応を約−5℃の最高温度で実施し、活性化剤を約0.7〜約1時間かけて添加した後、更に約7時間反応させる。
【0144】
幾つかの実施形態では、置換反応をクエンチして残留ヨウ素を失活させ、よって残留ヨウ素に起因する副生成物の形成を抑制(及び好ましくは防止)する。例えば、幾つかの前記実施形態では、反応物を水性亜硫酸ナトリウム(NaSO)でクエンチする。生成物は、例えば当業界で公知の各種方法を用いて精製または単離され得る。或いは、生成物を更に精製または単離することなく次ステップに使用してもよい。
【0145】
活性化剤形成反応及び置換反応は各種反応器タイプにおいて実施され得る。幾つかの実施形態では、反応器は例えば攪拌タンク反応器である。反応器は反応混合物に曝されたとき安定のままである組成物から作成され得る。前記材料には、例えばガラス(ガラス内張を含む)またはステンレス鋼のような各種材料が含まれる。
【0146】
B−5:マクロライドの製造
上記したように、本発明に従って製造されるマクロライドは構造上式(I)
【0147】
【化49】

(式中、
、R及びRに関して、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素であり、
、R及びRに関して、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素である。)
に相当する。
【0148】
幾つかの実施形態では、R、R、R、R、R及びRは各々水素である。
【0149】
【化50】

【0150】
幾つかの前記実施形態では、化合物は例えば構造上下記式
【0151】
【化51】

に相当する。
【0152】
幾つかの実施形態では、マクロライドの製造は活性化化合物のピペリジニル化合物を用いるアミノ化反応から出発し、または前記アミノ化反応を含む。
【0153】
【化52】

【0154】
、R、R、R、R及びRが各々水素の場合には、この反応は以下の通りである。
【0155】
【化53】

【0156】
上記反応で使用される活性化化合物は、セクションB−4において先に検討した方法を用いて製造され得、別の方法を用いて製造され得、または業者から入手し得る。幾つかの好ましい実施形態では、活性化化合物をセクションB−4において先に検討した方法を用いて製造する。
【0157】
典型的には、この反応を1つ以上の溶媒の存在下で実施する。通常、溶媒は試薬(例えば、活性化化合物)、生成物及び反応混合物中の他の成分と非反応性である。溶媒は例えばアセトニトリル(CHCN);クロロホルム;ジクロロメタン;テトラヒドロフラン;ケトン溶媒、例えばアセトン(CHCOCH);炭化水素溶媒、例えば芳香族炭化水素溶媒(例:トルエンまたはキシレン);または塩基、例えばピリジンまたはピペリジンであり得る。幾つかの実施形態では、溶媒はアセトニトリルからなる。幾つかの実施形態では、溶媒はテトラヒドロフランからなる。幾つかの実施形態では、溶媒はジクロロメタンからなる。幾つかの実施形態では、溶媒はキシレンからなる。幾つかの実施形態では、溶媒の少なくとも一部が活性化化合物の製造及び/または精製中に使用した方法プロセス由来の溶媒を含んでいてもよい。
【0158】
溶媒の量はゼロから希釈反応混合物を作成する量の範囲で広く変更し得る。典型的には、溶媒の量は、例えば試薬、生成物及び反応混合物中の他の成分が反応器に固着するのを防止する(または、本質的に防止する)、試薬の均質分布を促進するために十分な量である。幾つかの実施形態では、活性化試薬及びマクロライドの合計量が反応混合物の約5〜約50%(質量/容量)であるように十分な溶媒を存在させる。幾つかの実施形態では、溶媒の量は少なくとも約1L/kg−活性化化合物である。幾つかの前記実施形態では、溶媒の量は例えば約1〜約100L(または、約1〜約20L)/kg−活性化化合物である。例示として、幾つかの実施形態では、約5L/kg−活性化化合物の溶媒(例えば、キシレンまたはテトラヒドロフラン)を使用する。更に例示すると、他の実施形態では、10L/kg−活性化化合物の溶媒(例えば、アセトニトリル)を使用する。
【0159】
幾つかの実施形態では、アミノ化を塩基の存在下で実施する。幾つかの実施形態では、塩基は非水和塩基からなる。塩基は、例えば炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)または第3級アミンであり得る。前記塩基が存在すると、反応速度が速くなり、不純物の量が少なくなる傾向がある。この作用効果はプロトン化ピペリジニル化合物を脱プロトン化する塩基に由来し得ると考えられる。塩基がマクロライドコア中のラクトンを加水分解するほど強くないことが好ましい。通常、活性化化合物及び塩基は等モル量ずつ使用され得る。しかしながら、通常過剰量の塩基を使用する。幾つかの実施形態では、反応器に装入する活性化化合物のモル量に基づいて少なくとも1.05(または、約1.1〜約50、約2〜約30、約2〜約20または約2〜約10)当量の塩基を使用する。幾つかの前記実施形態では、約6.2当量の塩基を使用する。他の幾つかの前記実施形態では、約10当量の塩基を使用する。更に他の前記実施形態では、反応器に装入する活性化化合物のモル量に基づいて約1.1〜約10(または、約2〜約8または約4〜約6)当量の塩基を使用する。例示として、塩基の適当な当量は例えば約5当量であり得る。
【0160】
アミノ化を実施するためには、通常活性化化合物、ピペリジニル化合物、溶媒及び塩基(存在するならば)を反応器に装入し、混合する。これらの成分は通常反応器に任意の順序で装入され得る。反応器は各種反応器タイプからなり得る。幾つかの実施形態では、反応器は例えば攪拌タンク反応器である。反応混合物に曝されたときに安定な組成物を使用することができるが、ガラス製、ガラス内張及びステンレス鋼製反応器がしばしば好ましい。
【0161】
通常、活性化化合物及びピペリジニル化合物は等モル量ずつ使用され得る。しかしながら、通常、過剰量のピペリジニル化合物を使用する。幾つかの実施形態では、反応器に装入する活性化化合物のモル量に基づいて少なくとも1.05(または、約1.1〜約50、約2〜約30、約2〜約20、または約2〜約10)当量のピペリジニル化合物を使用する。幾つかの前記実施形態では、約10当量のピペリジニル化合物を使用する。他の前記実施形態では、反応器に装入する活性化化合物のモル量に基づいて約2〜約8(または、約4〜約6)当量を使用する。例示として、適当量(例えば、約4.7当量)のピペリジニル化合物を使用し得る。考えられる適当量(例えば、約5.7〜5.8当量)のピペリジニル化合物を使用し得る。
【0162】
反応の少なくとも一部(または、全反応)を通常約20℃以上または約25℃以上の温度で実施する。最適反応温度は、例えば溶媒に依存する。典型的には、反応の少なくとも一部(または、全反応)を溶媒の沸点以下、典型的には沸点未満である温度で実施する。通常、反応の少なくとも一部(または、全反応)を約50〜約110℃で実施する。幾つかの実施形態では、例えば反応の少なくとも一部(または、全反応)を約60〜約110℃または約75〜約110℃で実施する。例示として、溶媒がアセトニトリルまたはトルエンからなる場合には、反応の少なくとも一部(または、全反応)に対して考えられる適当な反応温度は約78℃〜約110℃(例えば、約78℃)である。更なる例示として、溶媒がキシレンの場合には、反応の少なくとも一部(または、全反応)に対して考えられる適当な反応温度は約95〜約105℃であり、前記反応に対する適当な反応時間は約15時間である。他の実施形態では、溶媒はテトラヒドロフランからなり、反応の少なくとも一部(または、全反応)を約55〜約75℃で実施する。前記範囲よりも低い温度を使用してもよいが、その温度では反応速度が遅くなる傾向がある。また、前記範囲よりも高い温度を使用してもよいが、その温度では望ましくない副生成物がより多く生ずる傾向がある。典型的には、より高い極性有する溶媒ではより低い温度を使用し得る。従って、温度は当業者により変更され得る。
【0163】
幾つかの実施形態では、アミノ化反応を1つ以上の温度で実施する。例えば、反応を最初1つの温度で実施した後、反応が進むにつれて別の温度にゆっくり上昇させる。
【0164】
アミノ化は大気圧、大気圧未満及び大気圧以上を含めた広範囲の圧力下で実施され得る。しかしながら、典型的には反応をほぼ大気圧下で実施することが好ましい。
【0165】
反応時間は各種要因に依存し、その要因には例えば反応温度、溶媒の特徴、成分の相対量及び所望変換が含まれる。バッチ反応器での反応時間は通常少なくとも約1分間、少なくとも約5分間、または少なくとも約45分間である。反応時間は通常約24時間を超えない。幾つかの実施形態では、反応時間は約2〜約15時間である。他の実施形態では、反応時間は約1〜約5時間、約2〜約4時間、または約2〜約3時間(例えば、約2.5時間)である。他の前記実施形態では、反応時間は約6〜約15時間である。上記範囲よりも短い反応時間を使用してもよいが、その反応時間では、変換が低くなる傾向がある。
【0166】
生成物は例えば当業界で公知の各種方法を用いて更に精製または単離され得る。
【0167】
B−6:考えられる反応スキームの例
本発明は上記反応のいずれかを用いる方法を意図している。幾つかの実施形態では、方法は上記反応の1つを含む。他の実施形態では、方法は上記反応の2つ、3つ、4つまたはすべてを含む。以下のスキームI
【0168】
【化54】

(式中、
、R及びRに関して、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素であり、
、R及びRに関して、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素であり、
Lは離脱基である。)
は、上記反応のすべてを使用するシナリオを概略的に説明している。
【0169】
以下のスキームII
【0170】
【化55】

は、還元アミノ化における非極性溶媒がトルエンからなり;加水分解反応における酸がHBrからなり;活性化剤源がI、トリフェニルホスフィン及びピリジンからなり;最終アミノ化反応混合物が炭酸カリウムを含む上記シナリオを概略的に説明している。
【0171】
以下のスキームIII
【0172】
【化56】

は、2つの加水分解反応を第1加水分解を停止することなく、第2加水分解を実施する前に第1加水分解から生成物を単離することもなく実施するスキームIのシナリオを概略的に説明している。
【0173】
以下のスキームIV
【0174】
【化57】

は、還元アミノ化における非極性溶媒がトルエンからなり;加水分解反応における酸がHBrからなり;第1加水分解を停止せず、第1加水分解の生成物を第2加水分解を実施する前に単離せず;活性化剤源がI、トリフェニルホスフィン及びピリジンからなり;最終アミノ化反応混合物が炭酸カリウムを含むスキームIのシナリオを概略的に説明している。
【0175】
以下のスキームVは、
【0176】
【化58】

は、還元アミノ化における非極性溶媒がトルエンからなり;加水分解反応における酸がHBrからなり;還元アミノ化及び第1加水分解を停止させず、還元アミノ化及び第1加水分解の生成物を第2加水分解を実施する前に単離せず;活性化剤源がI、トリフェニルホスフィン及びピリジンからなり;最終アミノ化反応混合物が炭酸カリウムを含み;活性化反応を停止させず、活性化反応の生成物を最終アミノ化反応を実施する前に単離しないスキームIの2段階シナリオを概略的に説明している。
【0177】
B−7:タイロシン試薬
通常、本発明の方法において使用されるタイロシン試薬はタイロシンA(またはその塩)
【0178】
【化59】

からなる。本発明は純粋な(または、少なくとも本質的に純粋な)タイロシンA(またはその塩)を使用することを意図しているが、各種の市販されているタイロシン組成物は追加的または代替的に1つ以上のタイロシンA誘導体を含んでいてもよく、前記誘導体には
【0179】
【化60】

が含まれる。
【0180】
通常、これらの誘導体が存在する場合、その量はほんの少量である。幾つかの実施形態では、タイロシンA:組成物中のタイロシンA誘導体の合計量の重量比は少なくとも約1:1である。幾つかの前記実施形態では、例えば前記比は少なくとも約4:1、少なくとも約10:1、少なくとも約95:5、少なくとも約98:2、または少なくとも約99:1である。他の前記実施形態では、組成物中の約100重量%のタイロシン化合物(すなわち、タイロシンA及びタイロシンA誘導体)はタイロシンAからなる。タイロシンAが組成物中のタイロシン化合物の50重量%未満である他の実施形態も意図される。例示として、幾つかの前記実施形態では、タイロシンD:タイロシンAと他のタイロシンA誘導体の合計量の重量比は少なくとも約1:1、少なくとも約4:1、少なくとも約9:1、少なくとも約95:5、少なくとも約98:2、または少なくとも約99:1である。他の実施形態では、組成物中のタイロシン化合物の約100重量%がタイロシンDからなる。
【0181】
タイロシンAから20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを製造するための先に検討した方法は、通常タイロシンAに加えて(または、タイロシンAの代わりに)タイロシンB、C及び/またはDから20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを製造するために使用され、所望する場合には修飾され得る。
【0182】
例えば、タイロシンBは、5−マイカミノシル上にマイカロシル置換基でなくヒドロキシを有する。よって、タイロシンBから誘導される20−ピペリジニル中間体は、セクションB−2において先に検討した第1加水分解反応を必要としない。中間体をセクションB−2で検討した加水分解反応に曝す限り、中間体は通常23−マイシノシルオキシ置換基で非反応性のままであるか、または加水分解を開始する。
【0183】
タイロシンCは、23−マイシノシルオキシ置換基の3位にメトキシではなくヒドロキシを有している。この差は通常上記方法に関して影響を持たない。糖は通常、セクションB−3において上記した加水分解中タイロシンAの23−マイシノシルオキシと同一方法及び同一条件下で切断(すなわち、加水分解)される。
【0184】
タイロシンDは、20位にカルボニルでなくヒドロキシを有する。このヒドロキシは通常セクションB−1において上記した還元アミノ化方法を用いてピペリジニルに変換されない。しかしながら、反応条件に応じて、セクションB−4において上記した活性化反応中活性化されるようになり、次いでセクションB−5において上記したアミノ化方法中23位と一緒にピペリジンでアミノ化される。
【0185】
C.中間体及びマクロライドの塩
本発明は、遊離化合物形態及び塩形態のマクロライド化合物または中間体を製造するために使用され得る。加えて、本発明において使用される試薬が塩形態であってもよい。塩は例えば酸付加塩であり得る。通常、酸付加塩は無機酸または有機酸を用いて製造され得る。特定化合物(及び/またはその結晶構造)に応じて、1つ以上の塩の化学的または物理的特性、例えばいろいろな温度及び湿度での安定性、或いは水、油または他の溶媒中での所望溶解度のために化合物の塩が有利であることがある。幾つかの例では、この化合物の塩は化合物の単離または精製の際の助剤として使用され得る。幾つかの実施形態(特に、例えばインビトロ状況での使用とは反対に、塩を動物に対して投与することを意図している場合)では、塩は医薬的に許容性である。
【0186】
塩は、典型的には、例えば当業界で公知の各種方法を用いて遊離のマクロライドまたは中間体化合物を酸と混合することにより形成され得る。しばしば適している無機酸の例には塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸及びリン酸が含まれる。しばしば適している有機酸の例には脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族、ヘテロ環式、カルボン酸及びスルホン酸クラスの有機酸が含まれる。しばしば適している有機塩の具体例にはコール酸塩、ソルビン酸塩、ラウリン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸(CFCOOHまたはTFA)塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、ジグルコン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩(及びジベンゾイル酒石酸塩のようなその誘導体)、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、グルクロン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ピルビン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、アントラニル酸塩、メシル酸塩、ステアリン酸塩、サリチル酸塩、p−ヒドロキシ安息香酸塩、フェニル酢酸、マンデル酸塩(及びその誘導体)、エンボン酸塩(パモ酸塩)、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パントテン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、スルファニル酸塩、シクロヘキシルアミノスルホン酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、ガラクタル酸塩、ガラクツロン酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、グリコヘプタン酸塩、グリセロリン酸、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩が含まれる。幾つかの実施形態では、塩は塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩、酒石酸塩またはクエン酸塩からなる。
【0187】
D.薬剤の作成及びマクロライドを用いる治療方法
上記した方法で製造したマクロライドは、一般的には例えば動物、特に家畜及び家禽におけるパスツレラ症を治療するために使用される。幾つかの実施形態では、マクロライドはマンヘミア・ヘモリティカ(Mannheimia haemolytica)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)及びヒストフィルス・ソムニ(Histophilus somni)に関連するウシ呼吸器疾患(BRD)を患っているウシ動物を治療するために使用される。他の実施形態では、マクロライドはアクチノバチルス・プレウロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)及びボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)に関連するブタ呼吸器疾患を患っているブタ動物を治療するために使用される。
【0188】
通常、治療有効量の1つ以上のマクロライドをレシピエント動物に対して投与する。本明細書中で使用されている用語「治療有効量」は、標的病原体感染を予防、そのリスクの低下、その発症の遅延、回復、抑制または根絶させるのに十分な量を指す。通常、治療有効量は感染部位(または、感染の予防、感染リスクの低下または感染の発症の遅延のために使用するときには感染に感受性の部位)の標的病原体をコントロールするのに有効な濃度を得るのに必要な量として定義されている。感染部位(または、感染に感受性の部位)の濃度が標的病原体に対するマクロライドのMIC90レベル(最小阻止濃度、すなわち標的病原体の90%の増殖を阻止する濃度)に少なくとも等しいことが好ましい。前記量を動物レシピエントに対して2回またはそれ以上に分けて投与してもよいが、1回で投与することが好ましい。マクロライドを他の活性成分と一緒に投与する場合には、用語「治療有効量」は標的病原体感染を予防、そのリスクの低下、その発症の遅延、回復、抑制または根絶させるのに十分なマクロライドと他の活性成分を合計した全量を指す。
【0189】
好ましい投与レジメに影響を与える要因には、動物レシピエントのタイプ(例えば、 種及び品種)、年齢、体重、性別、食餌、活動度及び状態;病的状態の重症度;組成物を投与するために使用される装置及び使用する投与のタイプ;薬理学的要件、例えば投与される具体的組成物の活性、効力、薬物動態及び毒性プロフィール;組成物中の追加活性成分の存在;及び組成物を薬物及び/またはワクチンの組合せの一部として投与するかが含まれる。よって、実際に使用される用量は具体的動物患者ごと異なり得、従って上記した典型的な用量からはずれてもよい。前記用量は通常一般的な手段を用いて当業者により調節される。
【0190】
通常、マクロライドを動物に対して1回投与してもよいが、複数回投与してもよいと考えられる。
【0191】
ウシに対して投与されるマクロライドの全量は典型的には約0.1〜約40mg/kg−体重、より典型的には約1〜約10mg/kg−体重である。例えば、幾つかの実施形態では、ウシへの投与量は約4mg/kg−体重である。マクロライドを任意の年齢のウシに投与することができるが、幾つかの実施形態では、マクロライドを約1ヶ月〜約1.5年齢または約6ヶ月〜約1年齢のウシに投与する。幾つかの実施形態では、マクロライドを飼育用地に入っている乳離れした子ウシ(多くの場合、約6ヶ齢)に投与する。更なる他の実施形態では、ウシは約2〜約12週齢の子ウシであり、マクロライドは予防のためには約1〜約10mg/kg−体重の用量で、既存の感染を治療するためには約2〜約20mg/kg−体重の用量で投与される。
【0192】
ブタに対して投与されるマクロライドの全量は典型的には約0.1〜約50mg/kg−体重、より典型的には約1〜約10mg/kg−体重である。例えば、幾つかの実施形態では、ブタへの投与量は約4mg/kg−体重である。他の実施形態では、ブタへの投与量は約5mg/kg−体重である。マクロライドを任意の年齢のブタに投与することができるが、幾つかの実施形態では、マクロライドは子豚〜仕上げ豚に対して投与される。
【0193】
投与方法は動物に応じて変更可能であるが、大型哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ及びウマ)の場合には経口または非経口投与することが好ましい。「非経口投与」には、例えば皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、粘膜下注射及び輸注が含まれる。幾つかの実施形態では、例えば動物レシピエントはウシ動物であり、マクロライド組成物は例えば首に皮下投与される。他の実施形態では、例えば動物レシピエントはブタ動物であり、マクロライド組成物は筋肉内に投与される。
【0194】
マクロライドは医薬組成物組成物(または、薬剤)を形成するために使用され得る。前記組成物を完全に1つ以上のマクロライドから構成することが考えられる。しかしながら、組成物は通常他の成分も含む。
【0195】
組成物中の他の成分は例えば他の活性成分からなり得る。或いは(または、加えて)、他の成分は1つ以上の医薬的に許容され得る担体、ビヒクルび/または佐剤(まとめて「賦形剤」と称する)からなり得る。賦形剤の選択は各種要因、例えば投与モード、組成物を投与するために使用される装置、薬理学的要件(例えば、具体的組成物の活性、効力、薬物動態及び毒性プロフィール)、組成物中の追加活性成分の存在、及び組成物を薬物及び/またはワクチンの組合せの一部として投与するかに依存する。
【0196】
固体マクロライド組成物は、例えば糖類(例:ラクトース、グルコース及びスクロース)、デンプン(例:トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン)、セルロース誘導体(例:カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース)等を含み得る。
【0197】
液体マクロライド組成物は、例えば水、等張性生理食塩液、リンガー溶液、エチルアルコールを含み得、及び/またはリン酸バッファー溶液を存在させてもよい。前記組成物は油(例:落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油)及び/または多価アルコール(例:グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ポリチレングリコール及びポリ(エチレングリコール−2−プロピレングリコール−2−ポリエチレングリコール))をも含み得る。幾つかの例では、組成物が1つ以上の保存剤を含んでいることが望ましいことがある。保存剤を存在させると、例えば組成物または溶媒に対して長期間(例えば、数日間、数週間、数ヶ月間または数年間)保存し得る恩恵を与え得る。適当な保存剤を選択するに際し考慮すべき要因には、例えばその抗微生物活性、望ましい抗微生物活性を有するpH範囲、望ましい抗微生物活性を有する最小濃度、その水溶解度及び他の物理的特性(例えば、発泡の可能性)、非経口使用するためのその適正さ、活性成分との起こり得る相互作用(例えば、活性成分の溶解性に対するその影響)、非活性成分との起こり得る相互作用(例えば、溶媒の安定度に対するその影響)、及び組成物または溶媒を製造、販売または使用するときに適用され得る政令が含まれる。意図される保存剤には、例えばパラベン、プロピレングリコール、塩化ベンザルコニウム、フェニルエタノール、クロロクレゾール、メタクレゾール、エタノール、フェノキシエタノール及びベンジルアルコールが含まれる。
【0198】
マクロライド組成物にとって適当であり得る医薬的に許容され得る賦形剤に関する更なる検討は、例えば(本明細書中に援用する)“Gennaro,Remington:The Science and Practice of Pharmacy”(第20版,2000)に見つけることができる。例示として、他の適当な賦形剤には、例えば例えば着色剤、着香剤及び増粘剤(例:ポビドンカルボキシメチルセルロース及び/またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)が含まれる得る。
【0199】
マクロライドは、通常医薬組成物の少なくとも約0.5重量%を占める。例えば、ブタに使用するための幾つかの実施形態では、非経口投与用の適当なマクロライド濃度は例えば約5〜約500mg/ml、約10〜約100mg/ml、または約20〜約60mg/ml(例えば、約40mg/ml)であり得る。更に例示すると、ウシに使用するための幾つかの実施形態では、非経口投与用の適当なマクロライド濃度は例えば約5〜約2.0g/ml、約10〜約1.0g/ml、50〜約500mg/ml、または約100〜約300mg/ml(例えば、180mg/ml)であり得る。
【0200】
マクロライド濃度は投与形態に応じて変更され得ることを認識すべきである。例えばマクロライドを非経口投与する場合、マクロライド濃度が非経口投与のために許容され得る容量で所望の治療有効量のマクロライドを与えるのに十分であることが好ましい。最大の許容され得る容量は、例えば投与のために使用する装置、非経口投与のタイプ、レシピエント動物のサイズ及び使用者の主観的望みに応じて変更し得る。
【0201】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド及びその誘導体の家畜及び家禽疾患を治療するための使用に関する更なる検討は例えば米国特許第6,514,946号中に見つけることができる。先に示したように、これらの検討は本明細書中に参照により含めるとする。
【0202】
本発明は、例えば上記治療方法を実施する際に使用するのに適したキットにも関する。前記キットは、治療有効量の少なくとも1つの上記マクロライド、及びマクロライドを少なくとも1つの賦形剤と組み合わせるための説明書(例えば、マクロライドを液体賦形剤中に溶解または懸濁させるための説明書)を含む。前記キットは更に(または、代えて)追加構成成分、例えばマクロライド、1つ以上の追加の医薬的または生物学的材料、1つ以上の賦形剤及び/または1つ以上の診断ツールを含む(または、これらから誘導される)組成物を投与するための1つ以上の装置(例えば、注射器)を含む。
【0203】
実施例
下記実施例は本発明の実施形態を単に例示しており、本明細書の残りを決して限定するものではない。
【実施例1】
【0204】
タイロシンAからの20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの製造
【0205】
【化61】

【0206】
A部 還元アミノ化:23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物(2)の製造
【0207】
【化62】

【0208】
トルエン(19.2kg)、タイロシンA(1)(3.68kg;≧80% タイロシンA;≧95% タイロシンA、B、C及びD)、ピペリジン(0.40kg)及びギ酸(0.55kg)を反応器に装入した。混合物を攪拌しながら70〜80℃に加熱した。次いで、この温度で攪拌をもう1〜2時間続けた。20−ピペリジニル−タイロシン化合物(2)の形成をHPLCによりモニターした。反応完了(≦2% タイロシンA(I))後、生成物混合物を周囲温度に冷却した。
【0209】
B部 マイカロシルオキシ置換基の酸加水分解:23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物(3)の製造
【0210】
【化63】

【0211】
A部の生成物混合物に攪拌しながら、混合物を40℃未満に維持しながらHBr(24%に希釈した48% HBr)を添加した。その後、生成物混合物中の相を20分の相分離期間を用いて分離した。この相分離中生成物混合物は20〜25℃であった。下相のHPLCを使用して、反応完了(≦2% 20−ピペリジニル−タイロシン化合物(2))を確認した。
【0212】
C部 マイシノシルオキシ置換基の酸加水分解:23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(4)の製造
【0213】
【化64】

【0214】
B部から得た水性相に24% HBr(18.4L)を周囲温度で添加した後、攪拌しながら54±3℃に約1時間加熱した。この温度で攪拌をもう2〜4時間続け、反応をHPLCを用いてモニターした。反応完了後(≦2% 23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物(3))、混合物を−10℃冷却ジャケットを用いて周囲温度に冷却した。冷却後、混合物をジクロロメタンで3回(毎回9.8kg)抽出した。水性生成物を4〜8℃に冷却した後、pHを>10に調節するために6N NaOH(33.6kg)をゆっくり添加した。生じた混合物を周囲温度でジクロロメタンで3回(32.6kg、29.3kg及び24.5kg)抽出した。合わせた有機相を別の反応器に装入した。硫酸ナトリウム(2.9kg;NaSO)を添加し、濾別した。次いで、ジクロロメタン(4.9kg)を添加し、蒸留により除去した。生じた粗な生成物を溶解し、周囲温度でtert−ブチルメチルエーテルで2回(毎回6.1kg)再結晶した。その後、生成物をNutschフィルターを用いて濾過し、tert−ブチルメチルエーテルで2回(毎回1.0kg)洗浄し、トレー乾燥機において真空下40℃で一晩乾燥した。最終生成物をHPLCを用いて分析した。
【0215】
D部 ヨウ素化:活性化化合物(5)の製造
【0216】
【化65】

【0217】
トリフェニルホスフィン(0.9kg)及びピリジン(0.3kg;無水)を周囲温度でジクロロメタン(11.7kg)中に溶解した。次いで、ヨウ素(0.8kg)を添加した。次いで、すべてのヨウ素が溶解するまで生じた混合物を攪拌した。次いで、混合物を13℃に冷却した。15±3℃で攪拌しながら、冷却した混合物をジクロロメタン中のC部からの生成物(11.7kg)に添加した。反応をHPLCによりモニターし、2〜2.5時間(≦2% 23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物)で完了したと判定した。
【0218】
E部 アミノ化:20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(6)の製造
【0219】
【化66】

【0220】
D部の生成物に炭酸カリウム(1.8kg)、アセトニトリル(16.7kg)及びピペリジン(1.1kg)を添加した。次いで、生じた混合物を78℃に加熱しながら、ジクロロメタンを留去した。溶媒をアセトニトリルに切り替えた後、混合物を還流下で2〜2.5時間攪拌し、次いで周囲温度に冷却した。その後、残留炭酸カリウムを濾別し、フィルターケーキをアセトニトリル(2.8kg)で洗浄し、溶媒を真空下50℃ジャケット温度で留去した。生じた残渣を酢酸エチル(15.8kg)中に溶解し、0.5N HCl(35.6kg)と混合した。相を周囲温度で分離し、下の水性相を酢酸エチルで3回(毎回15.8kgを使用)抽出した。6N NaOH(6.4kg)を添加することにより生じた水性相のpHを11とし、周囲温度でジクロロメタンで3回(毎回18.7kg)抽出した。合わせた下の有機相を硫酸ナトリウム(5.3kg)と一緒に反応器に再び装入した。次いで、混合物を濾過してケーキを形成し、このケーキをジクロロメタン(4.9kg)で洗浄し、真空下50℃のジャケット温度で乾燥して、マクロライド生成物を形成した。この生成物をアセトニトリル(21.7L)と混合し、再結晶した。生じた結晶をNutschフィルターを用いて単離し、冷アセトニトリルで2回(毎回3.5L)洗浄し、真空下40℃で一晩乾燥して、マクロライド(5)生成物を形成した。生成物の組成をHPLCを用いて確認した。
【実施例2】
【0221】
代替アミノ化:20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(2)の製造
【0222】
【化67】

【0223】
D部の手順に従って製造した活性化化合物(1)(1.0kg)に炭酸カリウム(0.94kg)、キシレン(5L)及びピペリジン(0.55kg)を添加する。次いで、生じた混合物を95〜105℃に15時間加熱する。後処理はKCOを水中に溶解し、過剰のピペリジンを除去し、希HClに抽出し、pH11でtert−ブチルメチルエーテルに抽出し、溶媒をエタノールに切り替え、粗な生成物を沈殿させ、単離し、乾燥することを含む。次いで、生成物を酢酸メチルまたは酢酸エチルから再結晶する。生成物の組成をHPLCを用いて確認する。
【実施例3】
【0224】
20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドの別の製造例
A部 還元アミノ化:23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物(2)の製造
【0225】
【化68】

【0226】
タイロシンホスフェート(1)及びジクロロメタン(1.3L/kg−タイロシンホスフェート)を反応器に装入した。生じた混合物を攪拌すると、透明な溶液が生じた。次いで、ピペリジン(タイロシンホスフェートに基づいて1.2当量)、ギ酸(タイロシンホスフェートに基づいて4.5当量)及びトルエン(6.7L/kg−タイロシンホスフェート)を順次反応器に装入した。生じた混合物を攪拌しながら76℃に加熱した。次いで、この温度で攪拌を2.5時間続けた。次いで、追加のピペリジン(タイロシンホスフェートに基づいて0.1当量)を装入し、生じた混合物を76℃で更に1時間攪拌した。生成物混合物を50℃に冷却した。
【0227】
B部 マイカロシルオキシ置換基の酸加水分解:23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(4)の製造
【0228】
【化69】

【0229】
A部の生成物混合物に50℃で水性HBr(A部で使用したタイロシンホスフェートに基づいて23.3当量)を添加した。生じた混合物を56℃で5時間攪拌した。HPLCを使用して反応をモニターした。
【0230】
所望の変換が得られたら、生成物混合物を冷却した。水性相を25〜30℃でジクロロメタンで2回抽出した。次いで、水性相を0℃に冷却し、≦5℃でpHをNaOHを用いて10〜10.5に調節した。その後、水性相を20℃でジクロロメタンで2回抽出した。生じた合わせた有機相を水性NaHCOで2回抽出した。次いで、ジクロロメタンを合わせた有機相から蒸留により除去し、イソプロピルアルコールと切り替えた。その後、45℃でヘプタンを添加して、沈殿を開始させた。次いで、混合物を0℃で攪拌した。その後、結晶性生成物を濾過により単離した。単離した結晶をヘプタン及びイソプロピルアルコールで洗浄し、乾燥し、HPLCを用いて分析した。
【0231】
上記手順により、A部で使用したタイロシンホスフェート1kgあたり0.23kgの生成物が得られた。この生成物はイソプロピルアルコールを含んでいる恐れがある。イソプロピルアルコールを除去するために、生成物をトルエン及びジクロロメタン中に溶解した後、蒸留してもよい。
【0232】
C部 ヨウ素化:活性化化合物(5)の製造
【0233】
【化70】

【0234】
トリフェニルホスフィン(0.41kg/kg−B部の生成物)を25℃でジクロロメタン(12L/kgのトリフェニルホスフィン,≦100ppm HO)中に溶解させた。次いで、ピリジン(0.3kg/kg−トリフェニルホスフィン)を添加した。次いで、ヨウ素(0.9kg/kgのトリフェニルホスフィン)を25℃で5回に分けて添加した。生じた混合物を25℃で40分間攪拌した後、−6℃に冷却した。次いで、混合物をB部からの生成物に−6℃で攪拌しながら50分間かけて添加した。その後、混合物を−5℃に維持しながら攪拌を7時間続けた。反応をHPLCによりモニターした(十分な変換に達していないならば、混合物を−5℃で更に、例えば1.5時間攪拌してもよい)。
【0235】
所望の変換に達したら、生成物混合物を−5℃で水性NaSO溶液で洗浄した。次いで、有機相からジクロロメタンを蒸留により除去し、テトラヒドロフランで置換した。
【0236】
D部 アミノ化:20,23−ジピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド(6)の製造
【0237】
【化71】

【0238】
C部からの生成物にピペリジン(0.55kg/kg−B部からの生成物)及び炭酸カリウム(0.94kg/kg−B部からの生成物)を順次添加した。生じた混合物を55℃に加熱した後、攪拌しながらこの温度で3時間維持した。次いで、混合物を72℃に1時間かけて加熱した後、この温度で6時間攪拌した。生成物の組成をHPLCを用いて分析した。
【0239】
請求の範囲を含めた本明細書中の単語「含む」は排他的ではなく、総括的に解釈される。この解釈はこれらの単語が米国特許法に記載されている解釈と同じであると意図される。
【0240】
用語「医薬的に許容され得る」は、修飾された名詞が医薬品中に使用するために適していることを意味するべく本明細書中で形容詞的に使用されている。例えば賦形剤または塩を指すために使用されている場合、賦形剤または塩がレシピエント動物に及ぼす恐れがある有害作用に勝る利点を有する賦形剤または塩をキャラクタライズする。
【0241】
本明細書により別の方法で特徴づけられていないならば、用語「周囲温度」は約20〜約25℃の温度を意味する。
【0242】
本明細書中で引用されている文献はすべて参照により本明細書に含まれるとする。
【0243】
上記した好ましい実施形態の詳細な記載は、当業者が具体的使用の要件に最も適するように本発明を各種形態で改変し、適用することができるように本発明、その原則及びその実際的使用を当業者に理解させるためだけである。従って、本発明は上記実施形態に限定されず、多種多様に修飾され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイロシンA(またはその塩)、式(II)を有するピペリジニル化合物及びギ酸を非極性溶媒の存在下で反応させて、20−ピペリジニル−タイロシン化合物を形成すること;
20−ピペリジニル−タイロシン化合物を酸と反応させて、23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を形成すること;
23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を酸と反応させて、23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を形成すること;
23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を活性化剤を用いて活性化して、活性化化合物を形成すること;または
活性化化合物を式(VII)を有するピペリジニル化合物と反応させること:
を含む構造上式(I)
【化72】

に相当するマクロライドまたはその塩の製造方法であって、式(II)を有するピペリジニル化合物は構造上
【化73】

に相当し、20−ピペリジニル−タイロシン化合物は構造上式(III)
【化74】

に相当し、23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物は構造上式(IV)
【化75】

に相当し、23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物は構造上式(V)
【化76】

に相当し、活性化化合物は構造上式(VI)
【化77】

に相当し、式(VII)を有するピペリジニル化合物は構造上
【化78】

に相当する
[上記式中、
Lは離脱基であり、
、R及びRに関して、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素であり、
、R及びRに関して、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素である。]
前記方法。
【請求項2】
前記方法がタイロシンA(またはその塩)、式(II)を有するピペリジニル化合物及びギ酸を非極性溶媒の存在下で反応させて、20−ピペリジニル−タイロシン化合物を形成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が20−ピペリジニル−タイロシン化合物を酸と反応させて、23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を形成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を酸と反応させて、23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を形成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が更に、20−ピペリジニル−タイロシン化合物を酸と反応させることを含む方法により23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を製造することを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物の少なくとも一部及び20−ピペリジニル−タイロシン化合物の少なくとも一部をHBrと反応させる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を活性化剤を用いて活性して、活性化化合物を形成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が活性化化合物を式(VII)を有するピペリジニル化合物と反応させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が更に、
タイロシンA(またはその塩)、ピペリジン及びギ酸をトルエンの存在下で反応させること;
20−ピペリジニル−タイロシン化合物をHBrと反応させること;
23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物をHBrと反応させること;及び
23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を活性化剤を用いて活性化すること;
を含み、20−ピペリジニル−タイロシン化合物は構造上式(III−A)
【化79】

に相当し、23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物は構造上式(IV−A)
【化80】

に相当し、23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物は構造上式(V−A)
【化81】

に相当し、活性化化合物は構造上式(VI−A)
【化82】

に相当し、活性化剤はI、トリフェニルホスフィン及びピリジンを混合することを含む方法により製造され、式(VII)を有するピペリジニル化合物はピペリジンからなり、マクロライドは構造上式(I−A)
【化83】

に相当する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8及び9のいずれか1項に記載のマクロライドまたはその医薬的に許容され得る塩を製造し、治療有効量のマクロライドまたは塩をパスツレラ症、ブタ呼吸器疾患及びウシ呼吸器疾患からなる群から選択される疾患の治療を要する動物に対して投与することを含む前記疾患の治療方法。
【請求項11】
タイロシンA(またはその塩)、構造上
【化84】

に相当する式(II)を有するピペリジニル化合物及びギ酸を非極性溶媒の存在下で反応させることを含む構造上式(III)
【化85】

[式中、R、R及びRに関して、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素である。]
に相当する20−ピペリジニル−タイロシン化合物またはその塩の製造方法。
【請求項12】
構造上式(III)
【化86】

に相当する20−ピペリジニル−タイロシン化合物をHBrと反応させることを含む構造上式(IV)
【化87】

[式中、R、R及びRに関して、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素である。]
に相当する23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物またはその塩の製造方法。
【請求項13】
構造上式(IV)
【化88】

に相当する23−O−マイシノシル−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物を酸と反応させることを含む構造上式(V)
【化89】

[式中、R、R及びRに関して、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素である。]
に相当する23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライド化合物またはその塩の製造方法。
【請求項14】
構造上式(V)
【化90】

に相当する23−ヒドロキシ−20−ピペリジニル−5−O−マイカミノシル−タイロノライドを活性化剤を用いて活性化することを含む構造上式(VI)
【化91】

[式中、
Lは離脱基であり、
、R及びRに関して、R及びRは各々メチルであり、Rは水素であり;R及びRは各々水素であり、Rはメチルであり;またはR、R及びRは各々水素である。]
に相当する活性化化合物またはその塩の製造方法。
【請求項15】
非極性溶媒がトルエンからなる請求項1、2及び11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
Lがヨードである請求項1、7、8及び14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
、R及びRが各々水素である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、14及び15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
、R及びRが各々水素である請求項1、2、3、4、5、6、7及び8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
、R、R、R、R及びRが各々水素である請求項1、2、3、4、5、6、7及び8のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−544666(P2009−544666A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521274(P2009−521274)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057710
【国際公開番号】WO2008/012343
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【出願人】(000173913)財団法人微生物化学研究会 (29)
【Fターム(参考)】