説明

マクロライド含有水中油エマルジョン

本発明は、注入可能水中油エマルジョンおよびその凍結乾燥処方物を提供する。本発明はまた、そのような水中油エマルジョンおよびその凍結乾燥処方物を調製し使用するための方法を提供する。例えば、本発明の組成物は、以下の特性のうちの1つ以上を有する:(1)注入可能である、(2)水中油エマルジョンの形態である、(3)適切な保管条件下で安定である、(4)静脈非刺激性である、(5)薬学的有効量のマクロライドを含む、(6)濾過により滅菌可能である、(7)監督機関(例えば、FDA)により認可され得る成分を含む、および(8)高類脂血症または他の副作用を引き起こさない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、マクロライドを送達するための薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
マクロライド抗菌薬は、広範な病原菌に対する活性を有する。開発された最初のマクロライドであるエリスロマイシンは、Streptococcus pneumoniae、Mycoplasma pneumoniae、Legionella pneumophiliaおよびChlamydia trachomatisに対して有効である(Alvarez−Elcoroら、The macrolides:erythromycin,clarithromycin,and azithromycin.Mayo Clin Proc 74:613−34,1999)。より新しいマクロライド(例えば、クラリスロマイシン、エリスマイシンのメトキシ誘導体)は、幅広い活性スペクトルを有し、HIV関連の日和見感染(例えば、トリ結核菌複合疾患)に対して有効であることが証明された(Kissingerら、Composition of multiple drug therapy regimens for HIV−related disseminated mycobacterium avium complex disease.J acquir Immune Defic Syndr Hum Retrovirol 9:133−7、1995)。
【0003】
経口薬を服用し得ないか、または重篤な感染症を有し得る特定の患者に対して、初期の静脈内処置が必要であり得る。エリスロマイシンの静脈内処方が利用可能であり、長年にわたって臨床に用いられている。しかし、その有用性は、不都合な胃腸(GI)効果の高い発生率によって限定され得る(Kapusnik−Knerら、The pharmacological basis of therapeutics.第9版、New York:McGrawHill、p1135−40、1996)。さらに、静脈内のエリスロマイシンが推奨される濃度(すなわち、1mg/mL〜2mg/mL)で投与される場合、静脈炎が生じ得る(Caforio G.IV clarithromycinvs combined IV therapy with cefuroxime and erythromycin for pneumonia in hospitalized patients.Second International Conference on Macrolides,Azalides and Streptogramins:19−22 January 1994;Venice、p.65)。
【0004】
代替的な静脈内マクロライド治療は、クラリスロマイシンである。そのより広い抗生物質スペクトルに加えて、クラリスロマイシンはまた、報告されるところによれば、エリスロマイシンと比較して不都合な胃腸(GI)効果のより低い発生率およびより小さい重篤さに関連する。しかし、静脈内クラリスロマイシンの適用は、比較的限定される:その処方物(Abbott LabsによるKlaricid(登録商標))は、英国および特定の他の欧州の国でのみ承認されており、米国では認可されていない。静脈内クラリスロマイシンの局所的耐容性は、非常に問題があり、エリスロマイシンの局所的耐容性も同然であることが示されている(Torsten Zimmermanら、Comparative tolerability of intravenous azithromycin,clarithromycin and erythromycin in healthy volunteers:results of a double−blind,double−dummy,four−way crossover study.Clinical Drug Investigation 21:527−36,2001)。例えば、Zimmermanらは、高い発生率および重篤度を伴って、静脈内クラリスロマイシン(Klaricid(登録商標))投与に由来する注入部位における不都合な事象が、静脈炎(50%)、静脈の炎症(75%)および静脈の刺激(100%)であることを報告した。
【0005】
一般に、マクロライド(例えば、エリスロマイシンおよびクラリスロマイシン)は、親油性化合物(すなわち、水に不溶性の化合物)のクラスに属し、注入における静脈の刺激/疼痛を引き起こすことで知られている。したがって、マクロライドは、一般に、希釈(2mg/mL)溶液でゆっくりとした注入により静脈内に与えられる(1日の総量は、グラム量であり得る)。
【0006】
クラリスロマイシン遊離塩基は、実質的に、水に不溶性であるが、クラリスロマイシンが塩を形成する低いpH(pH<5)で可溶化され得る。例えば、クラリスロマイシンは、(Klaricid(登録商標)製品中のように)ラクトビオン酸塩またはグルコヘプトネート塩(glucoheptonate salt)に変換され得、得られる塩は、pH3〜4で水に可溶性である。しかし、そのような溶液は、上記のような静脈の刺激を示す。低いpH塩形態中の薬剤は、pHが中性の環境(例えば、血液)で再び不溶性になるかまたは析出し、それゆえ静脈の刺激が生じるとみなされている。クラリスロマイシンの相対的な親油性は、様々な研究者に、薬物を注入部位における敏感な組織との接触から保護し得る多様な脂質分散系(例えば、リポソーム、混合ミセルなど)を提案するように導いてきた。しかし、今日まで、これらの努力のうち、臨床開発まで進むものはなかった。
【0007】
特許文献1(Huiら、1990)は、注入可能なクラリスロマイシン水中油(o/w)脂肪エマルジョン組成物を記載し、この組成物は、脂質相としてトリグリセリド(例えば、ダイズ油)、乳化剤として卵レシチン、安定剤としてオレイン酸/ヘキサン酸、そして等張化剤としてグリセリンを含む。この特許文献1は、安定剤(例えば、オレイン酸/ヘキサン酸の組み合わせ)の使用が、脂肪エマルジョン中のクラリスロマイシンの可溶性および安定性を改善するために必要であることを開示する。しかし、オレイン酸およびヘキサン酸の使用は、市販される任意の注入処方物においてはまれである。実際に、米国食品医薬品局(FDA)は、静脈内注入処方物におけるオレイン酸またはヘキサン酸の使用に対するそれらの適用を認可していない(http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/iig/index.cfmを参照のこと)。この認可されていない状況は、おそらく、オレイン酸/ヘキサン酸の安全性および毒性の問題に関連する。
【0008】
特許文献2(Constantinidesら、2002)は、静脈内投与のための、クラリスロマイシンのトコール可溶性のイオン対処方物を開示する。このクラリスロマイシン処方物は、水中油脂肪エマルジョンである。その油相は、最終的な水中油エマルジョンに関して、5重量%のデルタ−トコフェロールおよび2.5重量%のCapmul MCMを含む;使用される乳化剤は、ポロキサマー 407(3重量%)であり;イオン対因子(クラリスロマイシンをより親油性の化合物に変換することによりクラリスロマイシンを可溶化させるために使用される)は、コハク酸ビタミンE(0.9重量%)である。
【0009】
この場合も、FDAは、静脈内注入生成物におけるデルタ−トコフェロールおよびコハク酸ビタミンEの使用を認可していない(http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/iig/index.cfmを参照のこと)。1983年に、ビタミンEエマルジョンであるE−Ferolが、ビタミンEの補充および新生児の治療のために導入された。数ヶ月以内に、30名を超える乳児がこの生成物を与えられた結果として死亡し、この結果、FDAにより市場からこの生成物の回収が促された(Aladeら、Pediatrics 77(4):593−597、1986)。今日まで、静脈の刺激が直面する問題のいくつかを解決するために多様な研究努力が向けられたが、いくつかの同程度に重要な問題を犠牲にしても解決されなかった。
【0010】
特許文献3(Macyら、1999)は、水混和性の薬学的組成物を開示し、その薬学的組成物は、非水系の水混和性有機溶媒系におけるマクロライドと酸との反応により、マクロライド抗生物質の約40%までを占める。この特許において提供される組成物のうちの1つは、ビヒクルとして、40重量%のN−メチルピロリドンおよび36重量%のプロピレングリコールを使用する。
【0011】
しかし、Macyらにより開示される処方組成物は、溶液の性質を有するものであり、それゆえ先に議論した水中油脂肪エマルジョンの分類外である。この相違の結果として、特許文献3で処方されるマクロライド(例えば、エリスロマイシンまたはクラリスロマイシン)は、注入部位における組織との曝露された接触に起因して、静脈の刺激を引き起こすと考えられる。さらに、静脈内注入のためのN−メチルピロリドンの適用は、ヒトにおける安全な使用に対して監督官庁による認可を受けていない。
【0012】
特許文献4(Haynes、1992)は、リン脂質でコーティングされた微結晶の水性懸濁液として注入可能な処方物中に水に不溶性の薬物を調製するための技術を開示する。その結晶性薬物は、超音波処理、またはリン脂質もしくは他の膜形成両親媒性脂質の存在下で大きな剪断を誘導する他のプロセスによって、5nm〜10ミクロンの寸法に縮小される。その膜形成脂質は、微結晶をコーティングしかつ覆う疎水性相互作用および親水性相互作用の両方により、微結晶を安定化し、それゆえ微結晶を凝集から保護し、そしてその薬物原料を、組織をほとんど刺激しない固形形態にする。
【0013】
本発明に基づいて、微結晶性の水不溶性薬物粒子をコーティングすることおよび覆うことは、マクロライド溶液に関連する静脈の刺激の問題を縮小する利益を集約するように思われ得る(特許文献3)。しかし、この技術の適用に伴ういくつかの新たな問題が存在する。第一に、微結晶性の薬物粒子に対するサイズ分布(5nm〜10ミクロン)が、極めて広い。この結果が、微結晶の周りを囲むリン脂質コーティングの不均一な厚さである。この不均一なリン脂質コーティングのさらなる意味は、異なるコーティング層からの注入後の予期し得ない薬物放出パターンである。例えば、急速な放出は、より薄いリン脂質コーティングの結果となり、一方で、遅い放出はより厚いリン脂質コーティングの結果となる。さらに、薬物粒子がリン脂質によりコーティングされるその固形形態中に存在するので、その溶解速度もまた、その薬物の水可溶性およびその処方物の他の物理化学的パラメータに依存して、注入後に予期し得ないままである。これらのリン脂質コーティング薬物微結晶が血流において高濃度で不溶性のままである場合、血管閉塞の可能性が患者にとって重大な安全性の問題である。
【0014】
特許文献5(Cannonら、1992)は、静脈内注入組成物を開示し、その組成物は、マクロライド(例えば、エリスロマイシンおよびクラリスロマイシン)の送達のためのミセルを含む。開示される技術は、ミセル形成プラットホームとして胆汁塩(例えば、グリコデオキシコール酸ナトリウム)を利用する。しかし、胆汁塩は、溶血剤であることが公知であり、そして監督官庁により非常に重篤な病気(例えば、全身性真菌感染症)に対してのみ、静脈内注入処方物における使用が認可されている。この胆汁塩を可溶化させたクラリスロマイシン処方物は、天然で溶液であり、それゆえ注入部位における組織との曝露された接触に起因して、静脈の刺激を引き起こすと考えられる。
【特許文献1】国際公開第90/014094号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,479,540号明細書
【特許文献3】米国特許第5,958,888号明細書
【特許文献4】米国特許第5,091,188号明細書
【特許文献5】米国特許第5,085,864号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
注入可能なクラリスロマイシン組成物が直面するこれらの問題の観点から、親油性かつ静脈を刺激する化合物(例えば、マクロライド)を送達するために使用され得るビヒクルを開発する必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たし、他の関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本願は、マクロライドを送達するための薬学的組成物、およびそのような組成物を作製し使用するための方法を提供する。本発明の組成物は、以下の特性のうちの1つ以上を有する:(1)注入可能である、(2)水中油エマルジョンの形態である、(3)適切な保管条件下で安定である、(4)静脈非刺激性である、(5)薬学的有効量のマクロライドを含む、(6)濾過により滅菌可能である、(7)監督機関(例えば、FDA)により認可され得る成分を含む、および(8)高類脂血症または他の副作用を引き起こさない。
【0017】
1つの局面において、本発明は、注入可能水中油エマルジョンを提供し、これは、(a)薬学的有効量のマクロライド、(b)油状成分を最大でも10重量%の濃度で、(c)1以上のリン脂質を約1.2重量%〜5重量%の間の総濃度で、そして(d)水を含む。
【0018】
特定の実施形態において、上記エマルジョンは、マクロライドを少なくとも0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%または1.0重量%の濃度で含む。
【0019】
特定の実施形態において、上記マクロライドは、クラリスロマイシン、エリスロマイシンまたはアジスロマイシンである。
【0020】
特定の実施形態において、上記油状成分は、植物油を含む。
【0021】
特定の実施形態において、上記油状成分は、植物油および中鎖トリグリセロールを含む。特定の実施形態において、上記植物油 対 上記中鎖トリグリセロールの重量比は、約9:1〜約1:1である。
【0022】
特定の実施形態において、上記エマルジョンは、安定剤(例えば、グリシンおよびEDTA)をさらに含む。
【0023】
特定の実施形態において、上記エマルジョンは、等張化剤(例えば、グリセロール)をさらに含む。
【0024】
特定の実施形態において、上記エマルジョン中の上記油滴の平均サイズは、約500nm未満、400nm未満、300nm未満、200nm未満、150nm未満または100nm未満である。
【0025】
別の局面において、本発明は、注入可能水中油エマルジョンを提供し、これは、(a)クラリスロマイシンを約0.5重量%またはそれ以上の濃度で、(b)中鎖トリグリセロール(例えば、Miglyol 812)を約1重量%〜約5重量%の濃度で、(c)植物油(例えば、ダイズ油)を約5重量%〜約9重量%の濃度で、(d)リン脂質(例えば、大豆レシチンまたは卵レシチン)を約3重量%の濃度で、そして(e)水を含む。
【0026】
特定の実施形態において、上記エマルジョンはさらに、グリシンを約1%の濃度で、張度調整因子(modifier)(グリセロール)を約1.5%の濃度で、そして/またはEDTAを約0.005%の濃度で含み得る。
【0027】
別の局面において、本発明は、注入可能水中油エマルジョンを提供し、これは、(a)マクロライドを治療有効濃度で、(b)油状成分、(c)乳化剤、および(水)を含み、ここで、上記エマルジョンは、静脈の刺激を引き起こさず、少なくとも3ヶ月間安定である。
【0028】
特定の実施形態において、上記油状成分は、植物油を含む。
【0029】
特定の実施形態において、上記油状成分は、植物油および中鎖トリグリセロールを含む。特定の実施形態において、上記植物油 対 上記中鎖トリグリセロールの重量比は、約9:1〜約1:1である。
【0030】
特定の実施形態において、上記乳化剤は、リン脂質である。
【0031】
特定の実施形態において、マクロライド以外の上記エマルジョンの個々の成分のうちのいくつかまたはすべては、一般に、医薬品規制当局により静脈内注入における使用のために安全とみなされる。
【0032】
別の局面において、本発明は、マクロライドの凍結乾燥処方物を提供し、ここで、その処方物は、水和された場合、本明細書中に記載されるような水中油エマルジョンを生成する。
【0033】
特定の実施形態において、上記再水和されたエマルジョンの平均液滴サイズは、凍結乾燥前のエマルジョンの平均液滴サイズの約500%、300%または150%以下である。
【0034】
別の局面において、本発明はまた、薬学的有効量のマクロライドを含む注入可能水中油エマルジョンを調製するための方法を提供する。その方法は、(a)以下の(i)、(ii)および(iii)を含む混合物を形成する工程:(i)薬学的有効量のマクロライド遊離塩基、(ii)油状成分(例えば、植物油、または植物油と中鎖トリグリセロールとの組み合わせ)、(iii)リン脂質;(b)工程(a)の混合物を含む水中油エマルジョンを形成する工程;(c)工程(b)のエマルジョンのpHを約2〜5に調整する工程;ならびに(d)工程(c)から得られるエマルジョンのpHを約6〜8に再度調整して、薬学的有効量のマクロライドを含む注入可能水中油エマルジョンを提供する工程を包含する。
【0035】
特定の実施形態において、工程(a)は、マクロライドを溶液(例えば、エタノール)に溶解させる工程、および溶解させたマクロライドを油状成分とリン脂質とを含む組成物と混合する工程によって行われ得る。
【0036】
特定の実施形態において、工程(b)は、水溶液を機械的な均質化を介して工程(a)の混合物に添加する工程によって行われ得る。
【0037】
別の局面において、本発明はまた、細菌感染および/または他の微生物感染の処置を必要とする被験体に、マクロライドを含む本明細書中に記載される注入可能水中油エマルジョンの薬学的有効量を投与することにより、細菌感染および/または他の微生物感染を処置する方法を提供する。
【0038】
特定の実施形態において、上記投与は、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、眼内、皮下、関節内および腹膜内であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明は、1つの局面において、マクロライドを送達するための薬学的組成物を提供する。そのような組成物は、マクロライド、油状成分、乳化剤および水を含む水中油エマルジョンである。必要に応じて、これらの組成物はさらに、安定剤または張度調整因子を含み得る。本発明の組成物は、以下の特性のうちの1以上を有する:(1)注入可能である、(2)適切な保管条件下で安定である、(3)静脈非刺激性である、(4)マクロライドを薬学的有効濃度で含む、(5)濾過により滅菌可能である、(6)監督機関(例えば、FDA)により認可され得る成分を含む、(7)高類脂血症または他の副作用を引き起こさない。
【0040】
「水中油エマルジョン」とは、液体油が小さい液滴(離散相、また「油相」とも称される)で水性媒体(連続相、また「水相」とも称される)中に分散されるコロイド分散系をいう。
【0041】
特定の実施形態において、マクロライドのうちの60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が、油相に存在する。
【0042】
「マクロライド」とは、1以上のデオキシ糖が結合する多員のラクトン環を含む抗生物質をいう。例示的なマクロライドとしては、エリスロマイシン、エリスロマイシンエストレート、エチルコハク酸エリスロマイシン、グルコヘプタン酸エリスロマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、プロピオン酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、スピラマイシン、ジリスロマイシン、ジョサマイシン、プロピオン酸ジョサマイシン、キタサマイシン、ミデカマイシン、ミオカマイシン、リン酸オレアンドマイシン、ロキスロマイシン、スピラマイシン、アジピン酸スピラマイシン、ロバマイシンおよびクラリスロマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「クラリスロマイシン」とは、6−O−メチル−エリスロマイシンをいい(米国特許第4,331,803号を参照のこと)、以下に示される構造:
【0044】
【化2】

を有する。
【0045】
「クラリスロマイシン」とはまた、クラリスロマイシンの半合成誘導体(例えば、クラリスロマイシンの薬学的に受容可能な塩およびエステル)も指す。
【0046】
「薬学的に受容可能な塩およびエステル」とは、正しい医療的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずにヒトおよび下等動物の組織との接触における使用のために適切であり、抗微生物感染の化学療法および予防法においてそれらの意図される使用に有効である塩およびエステルをいう。そのうち、より一般的なマクロライド抗生物質の薬学的に受容可能な塩およびエステルは、酢酸塩、エストレート(プロピオン酸エステルのラウリル硫酸塩)、エチルコハク酸塩、グルセプテート(グルコヘプタン酸塩)、ラクトビオン酸塩、ステアリン酸塩および塩酸塩形態である。薬学分野で使用される他の酸塩としては、以下が挙げられる:アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミスルホン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレン−スルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモエート、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレートおよびウンデカン酸塩。塩基性の窒素含有基は、そのような因子で、低級アルキルハライド(例えば、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、および臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル、およびヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル);ジメチル硫酸塩、ジエチル硫酸塩、ジブチル硫酸塩、ジアミル硫酸塩のようなジアルキル硫酸塩;長鎖ハライド(例えば、塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ミリスチル、塩化ステアリル、および臭化デシル、臭化ラウリル、臭化ミリスチル、塩化ステアリル、およびヨウ化デシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ミリスチル、ヨウ化ステアリル);臭化ベンジルおよび臭化フェネチルのようなアラルキルハライドならびにその他のものとして、四級化(quaternize)され得る。それにより、水または油に可溶性であるか、あるいは水または油に分散性の生成物が得られる。
【0047】
「治療有効濃度」(「薬学的有効濃度」と交換可能に使用される)とは、任意の医療処置で適用可能な適切な利益/リスク比で、感受性の細菌感染または他の微生物感染を処置または予防するために有効であるマクロライド(例えば、クラリスロマイシン)の濃度をいう。
【0048】
例示的なマクロライド(例えば、クラリスロマイシン)の治療有効濃度としては、約2.5mg/mL〜約10mg/mLが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、水中油エマルジョン中のマクロライドの濃度は、少なくとも約1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mLまたは25mg/mLである。特定の実施形態において、水中油エマルジョン中のマクロライドの濃度は、そのエマルジョンの総重量のうちの少なくとも約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.2%、1.4%、1.6%、1.8%、2.0%、2.5%、3%、4%または5%である。
【0049】
「重量濃度」とは、本明細書中で使用される場合、他に示されない限りは、組成物(例えば、マクロライド水中油エマルジョン)の総重量に対する、その組成物の成分(例えば、マクロライド)の重量の比(パーセンテージ)をいう。
【0050】
用語「油(油状物)」は、本明細書中で、炭化水素誘導体、炭水化物誘導体、または体温(例えば、37℃)で液体でありかつ注入可能処方物中で薬学的に受容可能である類似の有機化合物を識別するために、一般的な意味で使用される。このクラスとしては、植物油、動物性脂肪、および合成油、ならびにそのような油および脂肪の化学的処理により得られる種々の液体が挙げられる。特定の実施形態において、本発明で使用される油は、トコフェロールもトコトリエノールもそれらの誘導体も含まない。
【0051】
用語「油状成分」とは、水中油エマルジョン中の油状物、または複数の油状物の組み合わせをいう。
【0052】
特定の実施形態において、本発明の水中油エマルジョンの油状成分は、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリ、またはそれらの混合物を含む。特定の実施形態において、油状成分は、1以上脂肪酸とグリセロール以外のアルコールとの間で形成されるエステルをふくむ。
【0053】
「植物油」とは、植物の種またはナッツに由来する油をいう。例示的な植物油としては、アーモンド油、ルリヂサ油、クロフサスグリ種油、トウモロコシ油、ベニバナ油、ダイズ油、綿実油、ピーナッツ油、オリーブ油、菜種油、ココナッツ油、パーム油、カノーラ油などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
植物油は、代表的には、3つの脂肪酸(通常は、その油の供給源に依存して種々の数および種々の位置に不飽和結合を有する約14〜約22個の炭素長)がグリセロール上の3つのヒドロキシル基とエステル結合を形成する場合に形成される「長鎖トリグリセリド」である。特定の実施形態において、高純度等級(「超精製」とも称される)の植物油が、一般に、水中油エマルジョンの安全性および安定性を保証するために使用される。
【0055】
「中鎖トリグリセリド」(MCT)は、トリグリセリド油の別のクラスであり、これは、天然に由来するかまたは合成物のいずれかであり得る。MCTは、通常は約6〜約12個の炭素長である脂肪酸から作製される。植物油と同様に、MCTは、非経口的な栄養摂取を必要とする患者に対して、カロリー供給源として注入用に設計されたエマルジョンにおいて広範に使用されている。そのような油は、Miglyol 812(SASOL GmbH製、Germany)、CRODAMOL GTCC−PN(Parsippany(New Jersey)のCroda Inc.製)またはNeobees M−5オイル(Boonton(New Jersey)のPVO International,Inc.製)として市販される。他の低融点の中鎖油もまた、本発明において使用され得る。
【0056】
「動物性脂肪」とは、動物の供給源に由来する油をいう。それはまた、トリグリセリドも含むが、植物油と比較して、その長さ、不飽和結合、3つの脂肪酸が異なる。室温で固体である供給源(例えば、獣脂、ラードなど)に由来する動物性脂肪は、望ましい場合、加工されて液状にされ得る。室温で生得的に液体である他の型の動物性脂肪としては、種々の魚油などが挙げられる。
【0057】
特定の実施形態において、植物油とMCT油との組み合わせが、本発明において使用される。そのような組み合わせは、一般に、注入可能エマルジョン中の組み合わせにおいて安全な使用に関する長い記録を有し、本発明のエマルジョンに優位な安定性を提供する。使用される特定の型の植物油(すなわち、ダイズ油、トウモロコシ油またはベニバナ油など)は、その植物油が安全で、十分に耐容性で、薬学的に受容可能で、化学的に安定である限りは、危険ではなく、所望のサイズ範囲を有するエマルジョンの液滴を提供する。
【0058】
本発明のマクロライドエマルジョン中の全油状成分の含有量は、1重量%〜50重量%の範囲内であり得る。特定の実施形態において、油状成分の総濃度は、最大でも約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%または50重量%である。特定の実施形態において、水中油エマルジョンは、被験体に投与された場合に高類脂血症を生じない量で、油状物を含む。
【0059】
特定の実施形態において、水中油エマルジョン中の植物油 対 MCT油の比は、重量で約9:1〜約1:1の範囲内である。特定の実施形態において、植物油 対 MCT油の比は、約9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1または1:1である。
【0060】
「乳化剤」とは、注入可能エマルジョンが個々の油状物および水相に分離することを防止する化合物をいう。本発明において有用な乳化剤は、(1)本発明の水中油エマルジョンの他の成分と適合性である、(2)エマルジョン中のマクロライドの安定性または効力を妨げない、(3)調製において安定であり変質しない、そして(4)無毒性である。
【0061】
適切な乳化剤としては、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステルおよびプロピレングリコールジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのコポリマーおよびブロックコポリマー、脂肪アルコール硫酸エステル塩、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールグリセロールエーテルのエステル、油状物およびワックスベースの乳化剤、グリセロールモノステアレート、グリセリンソルビタン脂肪酸エステルおよびリン脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
「リン脂質」とは、2つの脂肪酸および1つのリン酸イオンを有するグリセロールのトリエステルをいう。本発明において有用な例示的なリン脂質としては、ホスファチジルコリン、レシチン(リン酸化ジアシルグリセリドのコリンエステルの混合物)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、約4〜約22個の炭素原子を有するホスファチジン酸、より一般的には約10〜約18個の炭素原子を有し飽和度が異なるホスファチジン酸が挙げられるが、これらに限定されない。薬物送達組成物のリン脂質成分は、単一のリン脂質またはいくつかのリン脂質の混合物のいずれかであり得る。リン脂質は、選択された投与経路に受容可能であるべきである。
【0063】
本発明において有用なリン脂質は、天然起源であり得る。天然に存在するレシチンは、ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸のジグリセリドの混合物であり、一般にホスファチジルコリンと呼ばれるリン酸のコリンエステルに結合され、種々の供給源(例えば、卵および大豆)から得られ得る。大豆レシチンおよび卵レシチン(これらの化合物の水素化バージョンを含む)は、安全性歴が長く、乳化と可溶化の組み合わされた特性を有し、ほとんどの合成界面活性剤よりも急速に分解されて無害の物質になる傾向を有する。市販の大豆リン脂質は、Central Soyaにより市販されるCentrophaseおよびCentrolex製品、Phospholipid GmbH(Germany)製のPhospholipon、Lipoid GmbH(Germany)のLipoid、ならびにDegussaのERIKURONである。
【0064】
本発明において有用なリン脂質はまた、合成され得る。例示的な一般的合成リン脂質は、以下に列挙される:
(ジアシルグリセロール)
1,2−ジラウロイル−sn−グリセロール(DLG)
1,2−ジミリストル−sn−グリセロール(DMG)
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロール(DPG)
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール(DSG)

(ホスファチジン酸)
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸、ナトリウム塩(DMPA,Na)
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸、ナトリウム塩(DPPA,Na)
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸、ナトリウム塩(DSPA,Na)

(ホスホコリン)
1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DLPC)
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)

(ホスホエタノールアミン)
1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DMPE)
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)

(ホスホグリセロール)
1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DLPG)
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DMPG)
1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−グリセロール、アンモニウム塩(DMP−sn−1−G,NH4)
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DPPG,Na)
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DSPG,Na)
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−グリセロール、ナトリウム塩(DSP−sn−1G,Na)

(ホスホセリン)
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン、ナトリウム塩(DPPS,Na)

(混合鎖リン脂質)
1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)
1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(POPG,Na)
1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、アンモニウム塩(POPG,NH4)

(リゾリン脂質)
1−パルミトイル−2−リゾ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(P−リゾ−PC)
1−ステアロイル−2−リゾ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(S−リゾ−PC)

(Peg化リン脂質)
N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール 2000)−MPEG−2000−DPPE
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、ナトリウム塩
N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール 5000)−MPEG−5000−DSPE
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、ナトリウム塩
N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール 5000)−MPEG−5000−DPPE
1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、ナトリウム塩
N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール 750)−MPEG−750−DSPE
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、ナトリウム塩
N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール 2000)−MPEG−2000−DSPE
1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、ナトリウム塩

【0065】
本発明のエマルジョン中のリン脂質の量(重量)は、約1.2%〜約5%の範囲であり得る。特定の実施形態において、エマルジョン中のリン脂質は、約1.2重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%または5重量%の濃度である。
【0066】
本発明の組成物は、必要に応じて、エマルジョンの張度を調整するために添加剤(「張度調整因子」と称される)を含み得る。そのような化合物は、グリセロール(1重量%〜5重量%)およびアミノ酸(1重量%〜5重量%)であり得る。特定の実施形態において張度調整因子の濃度は、約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%または5%である。
【0067】
本発明の組成物は、必要に応じて、水中油エマルジョン中の他の成分の変質を防ぐかまたは減少させるために安定化因子(「安定剤」と称される)を含み得、それらとしては、抗酸化剤(例えば、グリシン、α−トコフェロールまたはアスコルビン酸)が挙げられる。あるいは、エマルジョン中の細菌増殖を防ぐかまたは阻害するために安定化因子(「安定剤」と称される)(例えば、EDTA)を含み得る。特定の実施形態において、グリシンの濃度は、約0.1重量%〜約5重量%(例えば、約1重量%)である。特定の実施形態において、EDTAの濃度は、約0.001重量%〜約0.01重量%(例えば、約0.005重量%)である。
【0068】
特定の実施形態において、本発明の水中油エマルジョンは、そのエマルジョンの油相中のマクロライドの溶解度を増大するために、およびそのエマルジョンの外へのマクロライドの沈殿を防ぐために、化合物(例えば、脂肪酸またはN−メチルピロリドン)を含み得る。他の実施形態において、水中油エマルジョンは上記のような化合物を含み得るが、本発明のエマルジョンの安定性および/または本発明のエマルジョンが治療有効濃度のマクロライドを送達する能力は、そのような化合物の存在を必要としない。
【0069】
本発明の水中油エマルジョンの水相は、通常は、そのエマルジョン組成物の少なくとも約70重量%の濃度である。特定の実施形態において、水相は、エマルジョン組成物の少なくとも約75重量%、80重量%または85重量%の濃度である。
【0070】
特定の実施形態において、水中油エマルジョン中のマクロライド以外の成分(例えば、油状成分、乳化剤、安定剤および張度調整因子)のうちのいくつかまたはすべては、安全で、十分に耐容性であり、そして静脈内注入に対してFDAにより認可され得る。
【0071】
水中油エマルジョンの成分は、患者において望ましくない全身性反応(例えば、アナフィラキシーショック)を引き起こさない場合に「安全である」とみなされる。
【0072】
水中油エマルジョンの成分は、注入部位において実質的に副作用(例えば、静脈炎、静脈の炎症または静脈の刺激)を生じない場合に「十分に耐容性である」とみなされる。
【0073】
水中油エマルジョンの成分は、本願の出願日の時点でFDAにより認可された静脈内注入生成物において使用され、かつFDAが認可した生成物において使用される濃度に相当する濃度で使用されている場合に、「FDAにより認可され得る」とみなされる。
【0074】
特定の実施形態において、水中油エマルジョン中のマクロライド以外の成分(例えば、油状成分、乳化剤、安定剤および張度調整因子)のうちのいくつかまたはすべては、概して医薬品規制当局により静脈内注入において使用するために安全であるとみなされる。
【0075】
水中油エマルジョンの成分は、本願の出願日の時点でFDAまたは欧州の医薬品規制当局により認可された静脈内注入生成物において使用され、かつ米国のFDAまたは欧州の医薬品規制当局により認可された生成物において使用される濃度に相当する濃度で使用されている場合に、「概して医薬品規制当局により静脈内注入において使用するために安全であるとみなされる」。
【0076】
特定の実施形態において、本発明の水中油エマルジョンは、静脈非刺激性である。「静脈非刺激性」とは、静脈内投与された場合に、例えば、肥厚した皮膚、壊死皮膚、局所的な発赤、局所的な腫脹、血液の詰まりの形成を伴う静脈の拡張または皮下炎症を伴う静脈塞栓症による証拠として、注入部位において実質的な刺激を引き起こさないという、化合物または組成物の特性をいう。
【0077】
特定の実施形態において、本発明の水中油エマルジョンは、化学的に安定かつ物理的に安定である。水中油エマルジョンは、適切な条件下で少なくとも1ヶ月間、100%を超える平均液滴サイズの増大も、相分離もしくは油滴の凝集(合体)の証拠もなく、保管され得る場合に、「物理的に安定である」。特定の実施形態において、本発明のエマルジョンの油滴の平均サイズは、適切な保管条件下で少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、9ヶ月間、12ヶ月間、15ヶ月間、18ヶ月間または24ヶ月間にわたって、約10%、20%、25%、30%、40%、50%、75%、100%、125%、150%、175%または200%を超えて増大しない。
【0078】
水中油エマルジョンは、エマルジョン中のマクロライド濃度が適切な保管条件下で少なくとも1ヶ月間、約20%まで変化しない場合に、「化学的に安定である」。特定の実施形態において、本発明のエマルジョン中のマクロライド濃度は、適切な保管条件下で少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、9ヶ月間、12ヶ月間、15ヶ月間、18ヶ月間または24ヶ月間にわたり、約5%、10%、15%または20%まで変化しない。
【0079】
特定の実施形態において、水中油エマルジョンの油滴は、サブミクロンサイズである。「サブミクロンサイズの液滴」とは、従来のサイズ測定技術(例えば、レーゼー光散乱スペクトロメトリー)で測定した場合に、1ミクロン未満の平均直径を有する、水中油エマルジョン中の油滴をいう。特定の実施形態において、本発明の組成物の油滴は、500nm未満、450nm未満、400nm未満、350nm未満、300nm未満または250nm未満、の平均直径を有する。サブミクロンサイズの油滴は、循環において毛細血管中をこれらの液滴が安全に通過するために望ましい。直径で5ミクロンを超える液滴は、毛細血管を塞ぎ肺塞栓症を生じ得るので、静脈内注入には危険であると考えられる。特定の実施形態において、本発明の組成物の油滴は、0.2ミクロン(200nm)未満の平均直径を有し、その結果、エマルジョンは0.2ミクロンサイズの濾過膜を通して濾過することにより滅菌され得る。特定の実施形態において、本発明の組成物の油滴は、約150nm未満、100nm未満、75nm未満、50nm未満、25nm未満、20nm未満、15nm未満または10nm未満の平均直径を有する。
【0080】
特定の実施形態において、本発明の水中油エマルジョンは、広範な温度安定性(例えば、−20℃〜40℃)を有する。特定の実施形態において、水中油エマルジョンは、約5℃〜約25℃で、または約2℃〜約8℃で保管される。
【0081】
特定の実施形態において、水中油エマルジョンは、静脈非刺激性で、安定でありかつ薬学的有効量のマクロライドを送達し得る。そのようなエマルジョンは、(a)マクロライドを少なくとも0.5重量%の濃度で、(b)油状成分を最大でも10重量%の濃度で、(c)1以上のリン脂質を約1.2重量%〜約5重量%の間の総濃度で、そして(d)水含み得る。これらのエマルジョンは、1以上の安定剤および/または張度調整因子をさらに含む。
【0082】
静脈非刺激性でかつ安定である例示的な水中油エマルジョンは、以下:(a)クラリスロマイシンを約0.5重量%またはそれ以上の濃度で、(b)Miglyol 812(または別の中鎖トリグリセリド)を約1重量%〜約5重量%の濃度で、(c)ダイズ油(または別の植物油)を約5重量%〜約9重量%の濃度で、(d)ホスホリポン 90G(または別のリン脂質)を約3重量%の濃度で、そして(e)水を含み、そして必要に応じて、以下の成分:(i)グリシンを約1%の濃度で、(ii)グリセロールを約1.5%の濃度で、そして(iii)EDTAを約0.005%の濃度で、のうちの1以上を含み得る。
【0083】
静脈非刺激性でありかつ安定である他の例示的な水中油エマルジョンは、以下:(a)クラリスロマイシンを約0.5重量%またはそれ以上の濃度で、(b)Miglyol 812(または別の中鎖トリグリセリド)を約1重量%〜約5重量%で、(c)ダイズ油(または別の植物油)を約5重量%〜約9重量%で、(d)卵レシチン(例えば、Lipoid E−80)を約3重量%の濃度で、そして(e)水を含み得、そして必要に応じて、以下の成分:(i)グリシンを約1%の濃度で、そして(ii)グリセロールを約1.5%の濃度で、のうちの1以上を含み得る。
【0084】
静脈非刺激性でありかつ安定である他の例示的な水中油エマルジョンは、以下:(a)クラリスロマイシンを0.5重量%またはそれ以上の濃度で、(b)ダイズ油(または別の植物油)を約5重量%〜約10重量%の濃度で、(c)卵レシチン(例えば、Lipoid E−80)または大豆レシチンを約3重量%の濃度で、そして(d)水を含み得、そして必要に応じて、以下の成分:(i)グリシンを約1%の濃度で、そして(ii)グリセロールを約1.5%の濃度で、のうちの1以上を含み得る。
【0085】
静脈非刺激性でありかつ安定である他の例示的な水中油エマルジョンは、以下:(a)クラリスロマイシンを約0.5重量%またはそれ以上の濃度で、(b)ダイズ油(または別の植物油)を約5重量%〜約10重量%の濃度で、(d)卵レシチン(例えば、Lipoid E−80)または大豆レシチンを約1.2重量%の濃度で、そして(e)水を含み得、そして必要に応じて、以下の成分:(i)グリシンを約1%の濃度で、そして(ii)グリセロールを約1.5%の濃度で、のうちの1以上を含み得る。
【0086】
静脈非刺激性でありかつ安定であるさらなる例示的な水中油エマルジョンは、以下:(a)クラリスロマイシンを約0.5重量%またはそれ以上の濃度で、(b)ダイズ油(または別の植物油)を約2.5重量%〜約5重量%の濃度で、(d)卵レシチン(例えば、Lipoid E−80)または大豆レシチンを約1.2重量%で、そして(e)水を含み得、そして必要に応じて、以下の成分:(i)グリシンを約1%の濃度で、そして(ii)グリセロールを約1.5%の濃度で、のうちの1以上を含み得る。
【0087】
静脈非刺激性でありかつ安定であるさらなる例示的な水中油エマルジョンは、以下:(a)エリスロマイシンを約0.5重量%またはそれ以上の濃度で、(b)Miglyol 812(または別の中鎖トリグリセリド)を%約1重量〜約5重量%の濃度で、(c)ダイズ油(または別の植物油)を約5重量%〜約9重量%の濃度で、(d)卵レシチン(例えば、Lipoid E−80)を約3重量%の濃度で、そして(e)水を含み得、そして必要に応じて、以下の成分:(i)グリシンを約1%の濃度で、そして(ii)グリセロールを約1.5%の濃度で、のうちの1以上を含み得る。
【0088】
本発明はまた、本明細書中に記載されるマクロライド(例えば、クラリスロマイシン)エマルジョン組成物を調製するための方法を提供する。そのようなエマルジョン組成物は、(a)(i)薬学的有効量のマクロライド遊離塩基、(ii)油状成分(例えば、植物油、または植物油と中鎖トリグリセリド)および(iii)リン脂質を含む混合物を形成する工程、(b)工程(a)と水溶液とを含む水中油エマルジョンを形成する工程、(c)工程(b)のエマルジョンのpHを約2〜5に調整する工程、ならびに(d)工程(c)から得たエマルジョンのpHを約6〜8に再調整して、薬学的有効量のマクロライドを含む注入可能水中油エマルジョンを提供する工程、によって調製され得る。
【0089】
特定の実施形態において、工程(a)は、マクロライドを溶液(例えば、アルコール)に溶解させる工程、および溶解させたマクロライドを油状成分(例えば、植物油、または植物油と中鎖トリグリセリドとの組み合わせ)およびリン脂質を含む組成物と混合する工程によって行われ得る。マクロライドを可溶化させるのに使用されるアルコール成分(例えば、エタノール)は中間体であり、通常は、工程(a)の後に例えば、ロータリーエバポレーターを使用することによって5%(w/w)未満の残量まで除去される。必要とされるアルコールの量は、そのマクロライドを完全に溶解させる必要性に依存する。
【0090】
特定の実施形態において、工程(b)は、工程(a)の混合物に水溶液を添加して初期エマルジョンを形成する工程によって行われ得る。その水溶液は、水または緩衝溶液であり得、そして安定剤および/または張度調整因子を含み得る。初期エマルジョンの配合は、機械的な均質化(例えば、高剪断混合、高圧押出および微小流動化)または他の適切な技術の使用によって行われても、その使用により促進されてもよい。
【0091】
初期エマルジョンのpHが中性(例えば、pH6〜8)である特定の実施形態において、いくらかのマクロライド(例えば、クラリスロマイシン)は、部分的に結晶化し、エマルジョンの外に沈殿し得る。結晶化したマクロライドは、エマルジョンのpHが例えばHClによって酸性(例えば、約2〜4、約3〜4、約3〜5または約2〜5)に調整される場合に、エマルジョン中に再溶解され得る。結晶化したマクロライドの再溶解後、エマルジョンのpHは、例えばNaOHにより中性(例えば、約6〜7または約6〜8)に再調整され得る。エマルジョンの中和は、通常は、マクロライドがエマルジョンの外に沈殿することを引き起こさない。したがって、まずエマルジョンのpHを酸性になるように調整して、次いでそのエマルジョンのpHを中性に再調整する上記工程は、水中油エマルジョンにおけるマクロライドのより高い濃度を可能にする。
【0092】
上に記載されるエマルジョンは、マイクロフルイダイザー(microfluidizer)または類似の装置を通って循環して極めて均一な油滴サイズを有する安定なエマルジョンを得ることによってさらに洗練され得る。得られる洗練されたエマルジョンは、例えば、0.22ミクロンの滅菌フィルターを通してフィルター滅菌され得る。
【0093】
水中油エマルジョンを使用する準備をするほかに、本発明のマクロライド組成物はまた、凍結乾燥された固体(すなわち、後日再構成され、注入前に水で希釈されて水中油エマルジョンを再編成し得る「固形物中油分散系(oil−in−solid dispersion system)」)として凍結保護物質とともに調製され得る。
【0094】
本明細書中で使用される場合、用語「固形物中油分散系」とは、本発明の水中油エマルジョンを凍結乾燥することによって調製される固体マトリクスを指し、これは、水と混合した際に同様の液滴サイズの水中油エマルジョンを再編成し得る(再構成)。特定の実施形態において、再編成されたエマルジョンの平均液滴サイズは、凍結乾燥前のエマルジョンの平均液滴サイズの約500%以下、400%以下、300%以下、200%以下または150%以下である。本発明の固体中油分散系は、必要に応じて、噴霧乾燥によって調製され得る。
【0095】
本発明のエマルジョン組成物において使用される「凍結保護物質」とは、凍結乾燥プロセス中にエマルジョンの分離したサブミクロンの液滴を維持し、エマルジョンの水が除去された際に、液滴に対する固体マトリクスが固体中油分散系を形成することを提供する成分をいう。
【0096】
本発明のエマルジョン組成物において使用され得る凍結保護物質としては、ポリオール、単糖類、二糖類、多糖類、アミノ酸、ペプチド、タンパク質および親水性ポリマー、あるいはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
本発明において使用され得るポリオールとしては、グリセリン、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、ポリグリシトールまたはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
本発明において使用され得る単糖類としては、グルコース、マンノース、フルクトース、ラクツロース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースまたはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
本発明において使用され得る二糖類としては、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、セルビオースまたはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
本発明において使用され得る多糖類としては、セルロース、アミロース、イヌリン、キチン、キトサン、アミロペクチン、グリコーゲン、ペクチン、ヒアルロン酸またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
本発明において使用され得るアミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンまたはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
本発明において使用され得るペプチドとしては、ジグリシンおよびトリグリシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
本発明において使用され得るタンパク質としては、アルブミン、コラーゲン、カゼインおよびゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
本発明において使用され得る親水性ポリマーとしては、ポリエチレングリコールポビドン、ポロキサマー、ポリビニルアルコールまたはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましい親水性ポリマーは、ポリエチレングリコールおよびポビドンである。
【0105】
液体エマルジョン組成物において使用される凍結保護物質の濃度は、約2%w/w〜約40%w/w(例えば、約5%w/w〜約20%w/wおよび約10%w/w〜約15%w/w)の範囲であり得る。
【0106】
本発明のマクロライド処方物は、マクロライドが有効である細菌感染症および/または他の微生物感染症(上気道感染症および下気道感染症、皮膚感染症、非定型抗酸菌感染症およびHelicobacter pylori感染症が挙げられる)を処置するために使用され得る。本発明のマクロライド処方物は、それを必要とする被験体(例えば、ヒトまたは他の哺乳動物)に薬学的有効量で、種々の経路(静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、眼内、皮下、関節内が挙げられるが、これらに限定されない)により投与され得る。
【0107】
「薬学的有効量」とは、細菌感染症および/または他の微生物感染症を処置するのに十分であるマクロライド水中油エマルジョンの量をいう。
【0108】
以下の実施例は、本発明の実施を限定することなく本発明を例示することが意図される。
【実施例】
【0109】
(実施例1)
本実施例は、油状成分(例えば、MCT(SASOL製のMiglyol 812、EP)と高純度のダイズ油(Croda製のUSPおよび超洗練型USP)との混合物)、乳化剤として大豆レシチンリン脂質(例えば、Phospholipid GmbH製で約90重量%のホスホチジルコリンを含む大豆レシチンであるホスホリポン90G)、安定剤/等張化剤としてグリシンおよびグリセロール、ならびに水を含む注入可能クラリスロマイシンエマルジョン組成物を調製するための方法を提供する。
【0110】
まず、クラリスロマイシンを、25℃で従来の機器(例えば、超音波処理器)を用いて、Miglyol 812とダイズ油、ホスホリポン90G、およびエタノールの組み合わせに溶解させて、クラリスロマイシン溶液を形成した。次いで、その溶液をロタリーエバポレーションに供して、エタノールが5%w/w未満の残量になるまで除去し、油相を形成させた。グリシンおよびグリセロールを含む適量の水相を油相に添加して、高剪断混合(Ultra−Turrax、Model SDT1810、Tekmar Company製)により一次o/wエマルジョンを生成した。この一次エマルジョンのpHを、HClでpH2〜5に調整し、次いで、NaOH溶液で中性(pH6〜8)に再調整した。次いで、クラリスロマイシン一次エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(Microfluidics(MA)製のMicrofluidizer Model M110F)を循環させて、0.22ミクロンのフィルターでフィルター滅菌される所望の油滴サイズを有する良質なエマルジョンを生成した。
【0111】
表1.1は、本発明で開示される方法を使用する5mg/gのクラリスロマイシン濃度の良質なクラリスロマイシンエマルジョン組成物を記載する。
【0112】
【表1】


【0113】
(実施例2)
実施例1に記載したエマルジョンの安定性の結果を表2.1に示す。平均液滴直径を、動的光散乱粒子サイズ測定器(Particle Sizing System(Santa Barbara,CA)製のModel 370 Submicron Particle Sizer)を用いて決定した。5ミクロンよりも大きい微粒子または液滴の計数を、光学顕微鏡および血球計(Hausser Scientific(PA)製のBright−Line)を用いて得た。
【0114】
【表2−1】

エマルジョン中のクラリスロマイシンの安定性の結果を、表2.2に示す。エマルジョン中のクラリスロマイシン濃度を、逆相高速液体クロマトグラフィー(Hewlett Parkard Model 1050 HPLC)により決定した。
【0115】
【表2−2】


【0116】
(実施例3)
実施例1に従って調製したエマルジョンは、ウサギの耳試験法を用いてウサギの耳の周縁静脈に、成人のヒト用量の3倍量で3mg/mL、4mg/mLおよび5mg/mLのクラリスロマイシン濃度で、3日連続して高速注入した後も、いかなる静脈刺激の徴候も炎症の徴候も示さなかった。
【0117】
(実施例4)
本研究の目的は、注入可能クラリスロマイシンエマルジョンの長期間の安定性を評価することである。
【0118】
クラリスロマイシンエマルジョンのバッチ(400mL)を、5mg/mLのクラリスロマイシン遊離塩基および実施例1に記載したような他の注入可能成分を含むように調製した。そのエマルジョンを、0.2ミクロンの膜フィルターでの濾過により滅菌した。その最終生成物を、ゴム栓をしたタイプ1のガラスビンに保管し、そのビンを5℃、25℃および40℃の安定度チャンバに置いた。各サンプリング時点において、エマルジョンサンプルを取り出し、HPLCによりクラリスロマイシン濃度を、レーザー光散乱粒子サイズ測定器により平均液滴サイズを、そして光学顕微鏡により大きいサイズの液滴を試験した。
【0119】
5℃で14ヶ月間の保管後、そのエマルジョン中のクラリスロマイシン濃度は、変化しないままであった;平均液滴サイズは、直径約140nm〜170nmで維持され、大きいサイズの液滴(直径5ミクロンを超えるもの)は観察されなかった。安定度データを、以下の表および図1に提供する。
【0120】
エマルジョンの安定度予後は、それが利用可能であることを示した。注入用のクラリスロマイシンエマルジョンが5℃で少なくとも1年〜1.5年の保管寿命提供し得ることが予測され得る。
【0121】
(表4.1. HPLCによるエマルジョン中のクラリスロマイシン濃度(mg/mL))
【0122】
【表4−1】

(表4.2. パーセント(%)で表したクラリスロマイシン濃度回復)
【0123】
【表4−2】

(表4.3. レーザー光散乱(LLS)による平均エマルジョン液滴直径(nm))
【0124】
【表4−3】

液滴サイズの増大は、サンプルを−20℃で凍結させた後に測定を行ったことに起因する。
【0125】
(表4.4. 光学顕微鏡による大きいサイズの液滴観察(直径5.0μmを超えるもの))
【0126】
【表4−4】

図1は、クラリスロマイシンの代表的なクロマトグラムを示す。約12分で溶出されたピークが、クラリスロマイシンに由来するものである。下から上に向かって:0.103mg/mlのクラリスロマイシン標準溶液;時間0でのクラリスロマイシンエマルジョンサンプル;および5℃で7.5ヶ月間保管した後のクラリスロマイシンエマルジョンサンプル。
【0127】
(実施例5)
本研究は、2種類のクラリスロマイシン(CLM)処方物の静脈内注入による局所刺激を評価するためのものである。すなわち、ウサギの周縁静脈モデルを用いる、静脈内注入用のCLMエマルジョン(CEII)および注入用のラクトビオン酸CLM溶液(CSI)である。CEIIは、CEIIが1.5%グリセロール(実施例1のように2.5%でない)およびさらなる0.005%脱水エデト酸二ナトリウムを含むことを除いて、実施例1に記載したクラリスロマイシンエマルジョンと同一である(U.S.P.)。CSIは、英国のAbbott Labsにより市販されるIV製品である注入用のKlaricid(登録商標)溶液を模倣し、0.5%(w/w)ラクトビオン酸CLMを含む。
【0128】
12匹(雄性6匹および雌性6匹)のニュージーランドシロウサギ(Oryctolagus)を、無作為に、雄性2匹と雌性2匹の3つの群に分けた。各々のウサギに、一定速度(1.0mL/分)で耳の周縁静脈にCEII、CSIまたは標準生理食塩水を注入し、その後、注入部位付近の静脈刺激反応についての発現観察を毎日、そして病理試験を3日後に行った。CEII群(n=4):4.39mg/mLでCEIIを、30mL/動物/日の用量で3日間注入した;CSI群(n=4):4.74mg/mLでCSIを、30mL/動物/日の用量で3日間注入した;コントロール群(n=4):注入用の0.9%塩化ナトリウムを、30mL/動物/日の用量で3日間注入した。病理試験を、最後の注入の48時間後に行った。耳の周縁静脈の組織学標本を、注入部位の2cm下流で取り、HE染色した。
【0129】
CSI群において、第1の注入の24時間後、重篤な耳の静脈刺激が、4匹のうち3匹のウサギで、局所的な発赤および腫れを伴って肥厚した皮膚および壊死皮膚で観察され、4匹目のウサギでは、静脈刺激の証拠は見られなかった。CEII群は、耳の周縁静脈に沿う静脈刺激のいかなる徴候も示さず、CEII群とコントロール群との間で外見の相違はまったく観察されなかった。
【0130】
血液の詰まりの形成を伴う静脈拡張が、4匹すべてのCSIウサギで観察された。部分的な皮下炎症を伴う静脈塞栓症が、4匹のうち2匹のCSIウサギで見られた。静脈内皮に対する炎症の証拠は、CEII群およびコントール群では見られなかった。組織学片を、図2A〜図2Fに示す。
【0131】
本研究は、注入用のラクトビオン酸CLM溶液が重篤な静脈刺激を引き起こす一方で、注入用のCLMエマルジョンは静脈刺激を伴わずに標準生理食塩水と同様の静脈適合性を示すことを示す。
【0132】
(実施例6)
本実施例は、油状成分(例えば、MCT(SASOL製のMiglyol 812、EP)と高純度のダイズ油(Croda製のUSPおよび超洗練USP)との混合物)、大豆レシチンリン脂質(例えば、ホスホリポン 90G)、乳化剤として約90重量%のホスファチジルコリン(Phospholipid GmbH製)を含む大豆レシチン、安定剤/等張化剤としてグリシンおよびグリセロール、ならびに水を含む、注入可能エリスロマイシンエマルジョン組成物を調製する方法を提供する。
【0133】
まず、エリスロマイシン(遊離塩基)を、25℃で従来の機器(例えば、超音波処理器)を用いて、Miglyol 812とダイズ油、ホスホリポン 90G、およびエタノールとの組み合わせに溶解させて、エリスロマイシン溶液を形成する。次いで、その溶液を、ロータリーエバポレーターに供して、5%w/w未満の残量になるまでエタノールを除去し、油相を形成する。グリシンおよびグリセロールを含む適量の水相を油相に添加して、高剪断混合により一次o/wエマルジョンを生成する。その一次エマルジョンのpHをHClでpH2〜5に調整し、次いで、NaOH溶液で中性(pH6〜8)に再調整する。次いで、このエリスロマイシン一次エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(Microfluidics(MA)製のMicrofluidizer Model M110F)を循環させて、0.22ミクロンのフィルターでフィルター滅菌される所望の油滴サイズを有する良質なエマルジョンを生成する。
【0134】
表6.1は、本発明において開示される方法を使用する5mg/gのエリスロマイシン濃度のエマルジョン組成物を記載する。
【0135】
【表6】


【0136】
(実施例7)
本実施例は、高純度のダイズ油(Croda製のUSPおよび超洗練USP)、乳化剤として卵レシチンリン脂質(例えば、Lipoid GmbH製のLipoid E−80)、安定剤/等張化剤としてグリシンおよびグリセロール、ならびに水を含む、注入可能クラリスロマイシンエマルジョン組成物を調製するための方法を提供する。
【0137】
まず、クラリスロマイシン(遊離塩基)を、25℃で従来の機器(例えば、超音波処理器)を用いて、ダイズ油、卵レシチンおよびエタノールの組み合わせに溶解させて、溶液を形成する。次いで、このエタノール溶液を、ロータリーエバポレーターに供して、5%w/w未満の残量になるまでエタノールを減少させ、油相を形成する。グリシンおよびグリセロールを含む適量の水相を油相に添加して、高剪断混合により一次o/wエマルジョンを生成する。その一次エマルジョンのpHをHClでpH2〜5に調整し、次いで、NaOH溶液で中性(pH6〜8)に再調整する。次いで、このクラリスロマイシン一次エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(Microfluidics(MA)製のMicrofluidizer Model M110F)を循環させて、0.22ミクロンのフィルターでフィルター滅菌される所望の油滴サイズを有する良質なエマルジョンを生成する。
【0138】
表7.1は、本発明において開示される方法を使用する5mg/gのエリスロマイシン濃度のエマルジョン組成物を記載する。
【0139】
【表7】


【0140】
(実施例8)
本実施例は、ダイズ油、中鎖トリグリセリド、大豆レシチンリン脂質乳化剤、凍結保護物質としてスクロースおよび水を含む、注入可能クラリスロマイシンエマルジョン組成物(表8.1)を凍結乾燥する方法を提供する。
【0141】
【表8】

まず、クラリスロマイシン(遊離塩基)を、従来の機器(例えば、超音波処理器)を用いて、ダイズ油、中鎖トリグリセリド、大豆レシチンおよびエタノールの組み合わせに溶解させて、クラリスロマイシン溶液を形成する。次いで、そのエタノール溶液を、ロータリーエバポレーターに供し、て、5%w/w未満の残量になるまでエタノールを減少させ、油相を形成する。スクロースを含む適量の水相を添加して、高剪断混合により一次o/wエマルジョンを生成する。その一次エマルジョンのpHを、HClでpH2〜5に調整し、次いで、NaOH溶液で中性(pH6〜8)に再調整する。次いで、このクラリスロマイシン一次エマルジョンを高圧ホモジナイザー(Microfluidics(MA)製のMicrofluidizer Model M110F)を循環させて、0.22ミクロンのフィルターでフィルター滅菌される所望の油滴サイズを有する良質なエマルジョンを生成する。この濾過したエマルジョンを、ガラスバイアルに充填し、プログラム化した凍結乾燥サイクル(これは、凍結乾燥器に命令して、約−80℃のコンデンサ温度、約−40℃のシェルフ温度、約50ミリTorrのチャンバ減圧に到達させる)を用いて凍結乾燥する。次いで、乾燥したエマルジョンをガラスバイアルに入れ、上部空間を窒素ガズで充填しゴム栓で密閉した。このような乾燥エマルジョンは、再水和して、本明細書中に記載される水中油エマルジョンを形成し得る。
【0142】
本明細書中で参照され、そして/または出願データシートで列挙される上記の米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、米国以外の国の特許、米国以外の国の特許出願および非特許文献のすべては、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0143】
前述のことから、本発明の特定の実施形態が本明細書中に例示目的で記載されてきたが、種々の改変が本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によるものを除いて、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】図1は、クラリスロマイシンの代表的なクロマトグラムを示す。
【図2A】図2A〜図2Fは、標準生理食塩水(図2Aおよび図2B)、ラクトビオン酸クラリスロマイシン溶液(0.5%w/w)(図2Cおよび図2D)、または0.5%w/wクラリスロマイシンを含むクラリスロマイシンエマルジョン(図2Eおよび図2F)を注入したニュージーランドシロウサギの耳の周縁静脈の組織学的分析を示す。
【図2B】図2A〜図2Fは、標準生理食塩水(図2Aおよび図2B)、ラクトビオン酸クラリスロマイシン溶液(0.5%w/w)(図2Cおよび図2D)、または0.5%w/wクラリスロマイシンを含むクラリスロマイシンエマルジョン(図2Eおよび図2F)を注入したニュージーランドシロウサギの耳の周縁静脈の組織学的分析を示す。
【図2C】図2A〜図2Fは、標準生理食塩水(図2Aおよび図2B)、ラクトビオン酸クラリスロマイシン溶液(0.5%w/w)(図2Cおよび図2D)、または0.5%w/wクラリスロマイシンを含むクラリスロマイシンエマルジョン(図2Eおよび図2F)を注入したニュージーランドシロウサギの耳の周縁静脈の組織学的分析を示す。
【図2D】図2A〜図2Fは、標準生理食塩水(図2Aおよび図2B)、ラクトビオン酸クラリスロマイシン溶液(0.5%w/w)(図2Cおよび図2D)、または0.5%w/wクラリスロマイシンを含むクラリスロマイシンエマルジョン(図2Eおよび図2F)を注入したニュージーランドシロウサギの耳の周縁静脈の組織学的分析を示す。
【図2E】図2A〜図2Fは、標準生理食塩水(図2Aおよび図2B)、ラクトビオン酸クラリスロマイシン溶液(0.5%w/w)(図2Cおよび図2D)、または0.5%w/wクラリスロマイシンを含むクラリスロマイシンエマルジョン(図2Eおよび図2F)を注入したニュージーランドシロウサギの耳の周縁静脈の組織学的分析を示す。
【図2F】図2A〜図2Fは、標準生理食塩水(図2Aおよび図2B)、ラクトビオン酸クラリスロマイシン溶液(0.5%w/w)(図2Cおよび図2D)、または0.5%w/wクラリスロマイシンを含むクラリスロマイシンエマルジョン(図2Eおよび図2F)を注入したニュージーランドシロウサギの耳の周縁静脈の組織学的分析を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入可能水中油エマルジョンであって、
(a)マクロライドを少なくとも約0.5重量%の濃度で、
(b)植物油を最大でも10重量%の濃度で、
(c)1以上のリン脂質を約1.2重量%〜約5重量%の間の総濃度で、そして
(d)水
を含む、注入可能水中油エマルジョン。
【請求項2】
中鎖トリグリセリドをさらに含む請求項1に記載の注入可能水中油エマルジョンであって、ここで
(i)前記植物油と前記中鎖トリグリセリドとの総濃度が最大でも10重量%であり、そして
(ii)該植物油 対 該中鎖トリグリセリドの重量比が、約9:1〜約1:1の間である、
注入可能水中油エマルジョン。
【請求項3】
前記マクロライドが、以下の構造:
【化1】

を有するクラリスロマイシンである、請求項1に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項4】
前記マクロライドが、約2.5重量%の濃度である、請求項1に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項5】
前記植物油が、ダイズ油である、請求項1に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項6】
前記中鎖トリグリセリドが、Miglyol 812、Crodamol GTCC−PNまたはNeobees M−5オイルである、請求項2に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項7】
前記リン脂質が、大豆レシチンまたは卵レシチンである、請求項1に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項8】
安定剤をさらに含む、請求項1に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項9】
前記安定剤がグリシンである、請求項8に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項10】
前記グリシンの濃度が、約0.1重量%と約5重量%との間である、請求項9に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項11】
前記安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である、請求項8に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項12】
前記EDTAの濃度が、約0.001重量%と約0.01重量%との間である、請求項11に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項13】
張度調整因子をさらに含む、請求項1に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項14】
前記張度調整因子が、グリセロールである、請求項13に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項15】
前記グリセロールの濃度が、約0.5重量%と約2.5重量%との間である、請求項14に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項16】
前記エマルジョン中の油滴の平均サイズが、約250nm未満である、請求項1に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項17】
前記エマルジョン中の前記油滴の平均サイズが、約2℃〜8℃で6ヶ月の保管後に25%よりも増加しない、請求項1に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項18】
注入可能水中油エマルジョンであって、
(a)クラリスロマイシンを約0.5重量%またはそれ以上の濃度で、
(b)中鎖トリグリセリドを約1重量%〜約5重量%の濃度で、
(c)ダイズ油を約5重量%〜約9重量%の濃度で、
(d)大豆レシチンまたは卵レシチンを約3重量%の濃度で、
(e)グリシンを約1%の濃度で、
(f)グリセロールを約1.5%の濃度で、
(g)必要に応じて、EDTAを約0.005%の濃度で、そして
(h)水
を含む、注入可能水中油エマルジョン。
【請求項19】
注入可能水中油エマルジョンであって、
(a)クラリスロマイシンを約0.5重量%またはそれ以上の濃度で、
(b)中鎖トリグリセリドを約5重量%の濃度で、
(c)ダイズ油を約5重量%の濃度で、
(d)大豆レシチンまたは卵レシチンを約3重量%の濃度で、
(e)グリシンを約1%の濃度で、
(f)グリセロールを約1.5%の濃度で、
(g)必要に応じて、EDTAを約0.005%の濃度で、そして
(h)水
を含む、注入可能水中油エマルジョン。
【請求項20】
注入可能水中油エマルジョンであって、
(a)クラリスロマイシンを約0.5重量%またはそれ以上の濃度で、
(b)ダイズ油を約5重量%〜約10重量%の濃度で、
(c)大豆レシチンまたは卵レシチンを約3重量%の濃度で、
(d)グリシンを約1%の濃度で、
(e)グリセロールを約1.5%の濃度で、
(f)必要に応じて、EDTAを約0.005%の濃度で、そして
(g)水
を含む、注入可能水中油エマルジョン。
【請求項21】
注入可能水中油エマルジョンであって、
(a)クラリスロマイシンを約0.5重量%またはそれ以上の濃度で、
(b)ダイズ油を約5重量%〜約10重量%の濃度で、
(c)大豆レシチンまたは卵レシチンを約1.2重量%の濃度で、
(d)必要に応じて、グリシンを約1%の濃度で、
(e)必要に応じて、グリセロールを約1.5%の濃度で、そして
(f)水
を含む、注入可能水中油エマルジョン。
【請求項22】
注入可能水中油エマルジョンであって、
(a)クラリスロマイシンを約0.5重量%またはそれ以上の濃度で、
(b)ダイズ油を約2.5重量%〜約5重量%の濃度で、
(c)大豆レシチンまたは卵レシチンを約1.2重量%の濃度で、
(d)必要に応じて、グリシンを約1%の濃度で、
(e)必要に応じて、グリセロールを約1.5%の濃度で、そして
(f)水
を含む、注入可能水中油エマルジョン。
【請求項23】
注入可能水中油エマルジョンであって、
(a)クラリスロマイシンを約0.5重量%またはそれ以上の濃度で、
(b)中鎖トリグリセリドを約1重量%〜約5重量%の濃度で、
(c)ダイズ油を約5重量%〜約9重量%の濃度で、
(d)大豆レシチンまたは卵レシチンを約3重量%の濃度で、
(e)必要に応じて、グリシンを約1%の濃度で、
(f)必要に応じて、グリセロールを約1.5%の濃度で、
(g)必要に応じて、EDTAを約0.005%の濃度で、そして
(h)水
を含む、注入可能水中油エマルジョン。
【請求項24】
注入可能水中油エマルジョンであって、
(a)マクロライドを治療的に有効な濃度で、
(b)植物油、
(c)リン脂質、そして
(d)水
を含み、該エマルジョンは、静脈刺激を引き起こさず、かつ少なくとも3ヶ月間安定である、注入可能水中油エマルジョン。
【請求項25】
中鎖トリグリセリドをさらに含む、請求項24に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項26】
前記エマルジョンの安定性が、脂肪酸またはN−メチルピロリドンの存在を必要としない、請求項24に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項27】
前記エマルジョンの前記マクロライド以外のすべての個々の成分が、概して、医薬品規制当局により静脈内注入における使用のために安全とみなされる、請求項24に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項28】
前記マクロライドがクラリスロマイシンである、請求項24に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項29】
前記エマルジョンが、トコフェロールまたはトコトリエノールを含まない、請求項24に記載の注入可能水中油エマルジョン。
【請求項30】
薬学的有効量のマクロライドを含む注入可能水中油エマルジョンを調製するための方法であって、以下:
(a)以下を含む混合物を形成する工程:
(i)薬学的有効量のマクロライドを含まない基剤
(ii)植物油
(iii)必要に応じて、中鎖トリグリセリド、および
(iv)リン脂質、
(b)工程(a)の混合物と水溶液とを含む水中油エマルジョンを形成する工程、
(c)工程(b)のエマルジョンのpHを、約2〜5に調整する工程、ならびに
(d)工程(c)から得られるエマルジョンのpHを約6〜8に再調整して、薬学的有効量の該マクロライドを含む注入可能水中油エマルジョンを提供する工程
を包含する、方法。
【請求項31】
前記マクロライドがクラリスロマイシンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記注入可能水中油エマルジョン中のクラリスロマイシンの濃度が、少なくとも約0.5重量%である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記エマルジョンが中鎖トリグリセリドを含む場合、前記植物油 対 該中鎖トリグリセリドの比が、約9:1〜約1:1である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記注入可能水中油エマルジョン中の前記植物油と前記中鎖トリグリセリドとの総濃度が、最大でも10重量%である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記注入可能水中油エマルジョン中の前記リン脂質の濃度が、約1.2%と約5%との間である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記水溶液が、安定剤を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記安定剤が、グリシンである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記安定剤がEDTAである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記水溶液が張度調整因子を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記張度調整因子が、グリセロールである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記注入可能水中油エマルジョン中の油滴の平均サイズが、最大でも約250nmである、請求項30に記載の方法。
【請求項42】
前記注入可能水中油エマルジョンが、静脈刺激性ではない、請求項30に記載の方法。
【請求項43】
前記注入可能水中油エマルジョンが、少なくとも6ヶ月間安定である、請求項30に記載の方法。
【請求項44】
請求項30に記載の方法であって、工程(a)が、以下:
(i)前記マクロライドをアルコールで溶解させる工程、および
(ii)該溶解したマクロライドを、以下を含む組成物:
(1)前記植物油、
(2)必要に応じて、前記中鎖トリグリセリド、および
(3)前記リン脂質
と混合する工程
によって行われる、方法。
【請求項45】
請求項30に記載の方法であって、工程(b)が、前記水溶液を機械的な均質化を介して工程(a)の混合物に添加する工程によって行われる、方法。
【請求項46】
前記エマルジョン中の前記油の液滴の平均サイズが、約2℃〜8℃で6ヶ月間の保管後に、25%よりも増加しない、請求項30に記載の方法。
【請求項47】
細菌感染を処置するための方法であって、細菌感染の処置を必要とする被験体に、請求項1〜29のいずれか1項に記載の水中油エマルジョンの薬学的有効量を投与する工程を包含する、方法。
【請求項48】
前記水中油エマルジョンが、静脈内投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
マクロライドの凍結乾燥処方物であって、該処方物は、水和された場合、請求項1〜29のいずれか1項に記載の注入可能水中油エマルジョンを生成する、凍結乾燥処方物。
【請求項50】
前記凍結乾燥処方物が、液体媒体中で再構成されて、再構成されたエマルジョンを生成し、そして該再構成されたエマルジョンの平均液滴サイズが、凍結乾燥前の該エマルジョンの平均液滴サイズの200%以下である、請求項49に記載の凍結乾燥処方物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【公表番号】特表2007−501253(P2007−501253A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522715(P2006−522715)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/025284
【国際公開番号】WO2005/016308
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(506041028)エスディー ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】