説明

マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびレチノイドの相乗的組合せ

33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンのようなマクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびエトレチナート、イソトレチノインまたはタザロテンのようなレチノイド、所望により更なる薬学的に活性な剤、とりわけ抗菌剤を含む相加または相乗効果を有する組合せ剤を提供し、これは、湿疹、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、乾癬、皮膚老化、日焼けによる損傷、ポストピール紅斑および皮膚線条のような皮膚疾患の処置においてとりわけ有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、とりわけ皮膚疾患の処置における使用のための、医薬組成物に関する。マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびレチノイドを含んでなる医薬組成物に関する。
【0002】
本発明において、驚くべきことに、マクロライドT細胞免疫調節剤および免疫抑制剤が、レチノイドとの組合せにおいて使用するとき、相加的にまたは相乗的に作用し、薬理学的活性の相乗作用が得られ、そのため、効果的で有利な、とりわけ抗乾癬および抗ざ瘡活性および例えば皮膚老化、日焼けによる損傷、ポストピール紅斑および皮膚線条を処置する能力が、個別に投与される有効投与量よりも十分に低い投与量での共投与において見られる;とりわけレチノイドの耐用性が、レチノイドの使用に関連する副作用(皮膚炎、紅斑)を減少させることにより改善され、したがって、全体的な患者の許容性、耐用性および最終的な効果を増大させることを発見した。
【0003】
したがって本発明は、マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤をレチノイドと併せてまたは組み合わせて含む新規医薬組成物(以後省略して“本発明の組成物”という)に関する。
【0004】
マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤は本明細書中において、ラクトンまたはラクタム部分を含むマクロ環化合物構造を有するT細胞免疫調節剤またはT細胞免疫抑制剤であると理解される。それは、好ましくは、少なくともいくらかのT細胞免疫調節または免疫抑制活性を有するが、付随してまたは主に、さらに抗炎症性活性のような医薬的な性質も示し得る。
【0005】
レチノイドは本明細書中において、天然または合成のいずれかの、レチノイン酸またはレチノイン酸と構造的に関連した化合物であると理解される。
本発明の組成物は全身、例えば経口もしくは静脈内、または好ましくは局所的使用に適応され得る;好ましくは、それらは皮膚上の使用に適応され得る。それらはその中に包含した特定の活性剤の既知の適応症に有用である。それらはとりわけ、皮膚疾患、例えばアトピー性皮膚炎、ざ瘡、乾癬、皮膚老化、日焼けによる損傷、ポストピール紅斑および皮膚線条のような炎症性要因を有するまたは炎症性合併症を含む皮膚疾患に使用するために、ならびに、例えば皮膚老化および日焼けによる損傷、ポストピール紅斑および皮膚線条の処置に使用されるレチノイド製剤の耐用性の改善への使用が指示される。
【0006】
好適なマクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤は例えば、FKBP12−結合カルシニューリン阻害剤またはマイトジェン−活性化キナーゼ調節剤または阻害剤、とりわけアスコマイシンまたはラパマイシンである。好ましくはアスコマイシンである。該マクロライドは、好ましくは、少なくともいくらかのカルシニューリン−またはマイトジェン−活性化キナーゼ調節または阻害活性を有するが、付随してまたは主に、さらに抗炎症性活性のような医薬的な性質も示し得る。それは、好ましくは同じ構造クラスの他のメンバーと比較してより長い作用活性を有する、例えば不活性な産物へと代謝的にゆっくりと分解される化合物、例えばアスコマイシンである。
【0007】
アスコマイシンまたはラパマイシンは、アスコマイシンまたはラパマイシンそのもの、またはその誘導体であると理解される。アスコマイシンまたはラパマイシン誘導体は、基礎的な構造を残し、少なくとも1つの生物学的、例えば免疫学的な親化合物の性質を調節する、親化合物のアンタゴニスト、アゴニストまたはアナログであると理解される。
【0008】
“抗炎症性アスコマイシン誘導体”は本明細書中において、例えばアレルギー性接触性皮膚炎の動物モデルにおいて、顕著な抗炎症性活性を示すが、全身性免疫応答の抑制においては低い能力のみを有する、すなわち、局所投与でのアレルギー性接触性皮膚炎のマウスモデルにおいて、約0.04%w/vの濃度までの最小有効投与量(MED)を有し、、一方経口投与での同種腎臓移植のラットモデルにおいて、その能力がタクロリムス(MED14mg/kg)より少なくとも10倍低いアスコマイシン誘導体と定義する(Meingassner, J.G. et al.,Br. J. Dermatol. 137 [1997] 568-579; Stuetz, A. Seminars in Cutaneous Medicine and Surgery 20 [2001] 233-241)。かかる化合物は好ましくは親油性である。
【0009】
好適なアスコマイシンは例えば、EP 184162、EP 315978、EP 323042、EP 423714、EP 427680、EP 465426、EP 474126、WO 91/13889、WO 91/19495、EP 484936、EP 523088、EP 532089、EP 569337、EP 626385、WO 93/5059およびWO 97/8182に記載されており;
とりわけ:
−アスコマイシン;
−タクロリムス(FK506;プログラフ(Prograf)(登録商標));
−イミダゾリルメトキシアスコマイシン(WO 97/8182の実施例1および式Iの化合物);
−32−O−(1−ヒドロキシエチルインドール−5−イル)アスコマイシン(L−732531)(Transplantation 65 [1998] 10-18, 18-26、11ページ図1);および
−(32−デスオキシ,32−エピ−N1−テトラゾリル)アスコマイシン(ABT−281)(J.Invest.Dermatol. 12 [1999] 729-738、730ページ図1);
【0010】
好ましくは:
−{1R,5Z,9S,12S−[1E−(1R,3R,4R)],13R,14S,17R,18E,21S,23S,24R,25S,27R}−17−エチル−1,14−ジヒドロキシ−12−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28−ジオキサ−4−アザトリシクロ[22.3.1.0(4,9)]オクタコス−5,18−ジエン−2,3,10,16−テトラオン(EP 626385の実施例8)、
以下“5,6デヒドロアスコマイシン”という;
−{1E−(1R,3R,4R)]1R,4S,5R,6S,9R,10E,13S,15S,16R,17S,19S,20S}−9−エチル−6,16,20−トリヒドロキシ−4−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−15,17−ジメトキシ−5,11,13,19−テトラメチル−3−オキサ−22−アザトリシクロ[18.6.1.0(1,22)]ヘプタコス−10−エン−2,8,21,27−テトラオン(EP 569337の実施例6dおよび71)、
以下“ASD 732”という;
【0011】
およびとりわけ
−ピメクロリムス(INN推薦)(ASM981;エリデル(Elidel)(商標))、すなわち、式I
【化1】

の{[1E−(1R,3R,4S)]1R,9S,12S,13R,14S,17R,18E,21S,23S,24R,25S,27R}−12−[2−(4−クロロ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルビニル]−17−エチル−1,14−ジヒドロキシ−23,25−ジメトキシ−13,19,21,27−テトラメチル−11,28,ジオキサ−4−アザトリシクロ[22.3.1.0(4,9)]オクタコス−18−エン−2,3,10,16テトラオン、
(EP 427680の実施例66a)、
以下“33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシン”という
である。
【0012】
好適な抗炎症性アスコマイシン誘導体は例えば:
(32−デスオキシ−32−エピ−N1−テトラゾリル)アスコマイシン(ABT−281);5,6デヒドロアスコマイシン;ASD 732;およびピメクロリムスである。
【0013】
好適なラパマイシンは例えば、USP 3’929’992、WO 94/9010およびUSP 5’258’389に記載されており、好ましくはシロリムス(ラパマイシン;ラパミュン(Rapamune)(登録商標))およびエベロリムス(RAD001;セルチカン(Certican)(登録商標))である。
【0014】
とりわけ好ましいマクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤は、(特に記載がなければ遊離形の)ピメクロリムスである。
【0015】
好適なレチノイドは例えば:
−アシトレチン[エトレチン;(全−E)−9−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3,7−ジメチル−2,4,6,8−ノナ−テトラエン酸;ソリアタン(Soriatane)(登録商標)];
−βカロチン(カロタベン(Carotaben)(登録商標);プロビタミンA);
−エトレチナート[(全−E)−9−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3,7−ジメチル−2,4,6,8−ノナテトラエン酸エチルエステル];
−イソトレチノイン(アキュテイン(Accutane)(登録商標);ロアキュテイン(Roaccutane)(登録商標));
−モトレチニド[タスマデルム(Tasmaderm)(登録商標);(全−E)−N−エチル−9−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3,7−ジメチル−2,4,6,8−ノナテトラエンアミド];
−レチナール(レチンアルデヒド;レチネン;ビタミンAアルデヒド);
−レチノイン酸(ビタミンA酸;トレチノイン);
−レチノール(ビタミンA;レチノール(Retinol)(登録商標));
−レチノールパルミテート;
−タミバロテン;
−アダパレン(ロラック(Lorac)(登録商標);ジフェリン(Differin)(登録商標));
−アリトレチノイン;
−ベキサロテン;または
−タザロテン(ゾラック(Zorac)(登録商標);タゾラック(Tazorac)(登録商標);合成アセチレン酸レチノイド);
好ましくはエトレチナート、イソトレチノインまたはタザロテン;とりわけイソトレチノインまたはタザロテンである。
【0016】
本発明の組成物のサブグループは、マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤、好ましくは上記定義の抗炎症性アスコマイシン誘導体、とりわけピメクロリムスを、とりわけ(other than)以下のレチノイド:
−エトレチナートおよびアダパレン;および/または
−レチノイン酸(ビタミンA酸;トレチノイン);および/または
−アシトレチン;および/または
−タザロテン
の1個または任意の数を、組み合わせてまたは併せて含んでなる。
【0017】
とりわけ好ましい本発明の組成物は、タザロテンと併せたまたは組み合わせたピメクロリムスである。
【0018】
1つまたは両方の成分がある程度の固有の抗炎症性活性を有する本発明の組成物が、炎症を含む症状の処置における使用のために好ましい。該組成物はまた、例えばレチノイドが、減少した耐用性および局所的な副作用に至るある程度の皮膚炎症を引き起こし得るときの使用のためにとりわけ有益である。アスコマイシンとレチノイドを組み合わせて、とりわけ33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンとエトレチナート、イソトレチノインまたはタザロテンを組み合わせて含んでなる組成物がとりわけ好ましい。該炎症性症状は例えば、湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、ざ瘡、皮膚老化、日焼けによる損傷、ポストピール紅斑または皮膚線条である。
【0019】
本明細書中で使用される“処置”は、予防、すなわち予防的ならびに治療的処置を含む。
【0020】
レチノイドは、例えばざ瘡、乾癬、皮膚老化、ポストピール紅斑および皮膚線条の処置において極めて有効な医薬であるが、それらの使用にはしばしば皮膚炎、ドライアイ、皮膚乾燥および角質形成のような重大な副作用が伴う。本発明の組成物の投与は、例えば局所投与での有効性を維持しつつ、レチノイドの改善された耐用性プロファイルを可能にする。
【0021】
相乗効果は例えば、Berenbaum,Clin. Exp. Immunol. 28 (1977) 1に記載のように、Chou et al.,Transpl. Proc. 26 (1994) 3043に記載のように2つの薬剤の間のメカニズムにおける差異を補正するための相互作用項を使用して、計算される。相乗効果の指数は式:
【数1】

(式中、化合物AおよびBの投与量は、特定の組合せにおけるそれらの使用を意味し、AおよびBは、同じ効果が得られるAおよびBの個々の投与量である)により計算される。該結果が1より小さいとき、相乗効果が存在する;該結果が1であるとき、効果は相加的である;該結果が1より大きいとき、AおよびBはアンタゴニスト的である。Aの投与量/A対Bの投与量/Bのアイソボログラムをプロットすることにより、最大相乗効果の組合せを決定することができる。次いで、アイソボログラムにそった相乗的な量での2つの組成物の重量による比により表現された相乗効果比は、とりわけ最大相乗効果の位置でまたは位置付近で、最適な2つの化合物の相乗効果比を含む製剤を決定するために使用することができる。
【0022】
活性を、例えば該組成物の個々の成分の薬理学的活性を試験するための既知のアッセイモデルにおいて決定することができる。
【0023】
したがって、本発明の組成物の有益な効果は、家畜ブタ(Br. J. Dermatol. 137 [1997] 568-576; Br. J. Dermatol. 144 [2001] 788-794)において、単一の薬剤、または連続投与されるピメクロリムス(商業的に1%エリデル(Elidel)(登録商標)クリ−ム)およびタザロテン(商業的に0.1%ゾラック(Zorac)(登録商標)ゲル)での組合せ処置を使用した、例えば急性アレルギー性接触性皮膚炎(ACD)アッセイにおいて明らかとなる:
ACD誘発の12日前に、17匹の雄家畜ブタにジメチルスルホキシド/アセトン/オリーブオイル(1:5:3 v/v/v)に溶解した10%の2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)を500μl、皮膚上に、分割された量で、両耳の基部におよび両鼠径部に(100μl/部位)、感作のために投与する。剃った側背部の両部位にアレンジした試験部位(7cmの大きさ)に、15μlのDNFB1.0%で、該チャレンジ反応を誘発する。処置されたおよび未処置の部位をチャレンジの24時間後に試験し、そして0(なし)から4(重症(severw))までの範囲で、紅斑の強さおよび程度ならびに硬化を採点し、示された部位につき最大で12の組合せた評価ができる。
【0024】
右側背部の試験部位を80mg製剤で2度処置し、一方、左対照試験部位を比較のために未処置で残す。該試験部位をチャレンジの30分後に処置し、次いで、6時間目に、同じ薬剤、または組合せ剤のときは他方の薬剤の2度目の投与をする。ピメクロリムス/タザロテン、およびタザロテン/ピメクロリムスの組合せ処置で得られる反応が有意に異ならないので、両処置グループのデータを更なる評価のためにためる。得られた結果を以下に要約する。ここで、接触性過敏反応の阻害を57%引き起こす、ピメクロリムスの単一薬剤処置を表中で100%と定める:
【0025】
【表1】

【0026】
ここから、ピメクロリムス(100%)での単一薬剤処置が、タザロテン(89%)での単一薬剤処置より11%優れていることが証明されたことは明らかである。しかし、組合せ処置は、ピメクロリムス/ピメクロリムス処置と比較して11%(タザロテン/ピメクロリムス:111%)および16%(ピメクロリムス/タザロテン:116%)、またはタザロテン/タザロテンと比較して22%(タザロテン/ピメクロリムス)および27%(ピメクロリムス/タザロテン)優れている。
【0027】
本発明はまた、マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤、例えば33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンまたは5,6−デヒドロアスコマイシン、およびレチノイド、例えばエトレチナート、イソトレチノインまたはタザロテンを、相加/相乗的効果のある投与量で、共投与するための生産物および方法、例えば:
−湿疹、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、乾癬、皮膚老化、日焼けによる損傷、ポストピール紅斑および皮膚線条のような皮膚疾患の、かかる症状を有するかまたは危険がある対象における、処置または予防方法であって、本発明の組成物を相加/相乗的に効果のある量で共投与することを含んでなる方法;
−相加/相乗的に効果のある量でレチノイドと共投与するための医薬の製造における、マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の使用;
−相加/相乗的に効果のある量でマクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤と共投与するための医薬の製造における、レチノイドの使用;
【0028】
−マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびレチノイドを、分離した単位投与形態(好ましくは、該単位投与形態は相加/相乗的に効果のある量での成分化合物の投与に適している)で、使用のための指示書と一緒に含み、所望により成分化合物の投与のコンプライアンスを上昇させるための更なる手段、例えばラベルまたは図を含んでなる、キット;
−レチノイドとの共投与を容易にするために使用される医薬キットの製造における、マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の使用;
−マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤との共投与を容易にするために使用される医薬キットの製造における、レチノイドの使用;
【0029】
−同時に、分離してまたは連続して使用するための、好ましくは相加/相乗的に効果のある量での、例えば湿疹、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、乾癬、皮膚老化、日焼けによる損傷、ポストピール紅斑および皮膚線条のような皮膚疾患の処置または予防のための、組合せ医薬製剤としてのマクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびレチノイド;
−マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤をレチノイドと、例えば相加/相乗的に効果のある量で、組み合わせてまたは併せて、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含んでなる、例えば湿疹、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、乾癬、皮膚老化、日焼けによる損傷、ポストピール紅斑および皮膚線条のような皮膚疾患の処置または予防に使用するための、医薬組成物;ならびに
−マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびレチノイドを混合することを含み、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせたかまたは併せた、本発明の組成物の製造のためのプロセス
を提供する。
【0030】
“相加/相乗的に効果のある量”は、関連する適応症についてそれらのそれぞれの有効投与量を個々に下回っているが、例えば上記計算の通りの、例えば相加/相乗比における共投与で薬学的に活性である、マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の量およびレチノイドの量を意味する。さらに、“相乗的に効果のある量”は、関連する適応症についてそれらのそれぞれの有効投与量と個々に等しく、そして相加的効果よりも大きな効果となる、マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤の量およびレチノイドの量を意味し得る。
【0031】
存在するマクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤のモル量は、レチノイドの量とほぼ同等から著しく少なく、好ましくは半分ちょうどまたはそれ未満までである。マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤対レチノイドの重量による相加/相乗比は、したがって、好適には約10:1から約1:50、好ましくは約5:1から約1:20、最も好ましくは約1:1から約1:15、例えば約1:12である。
【0032】
本発明の組成物を自由な組合せとして投与することができ、または、患者の利便性を大きく向上させた、固定された組合せへと該薬剤を製剤することができる。
【0033】
化合物の絶対的な投与量は多くの要素、例えば個体、投与経路、所望の期間、活性剤の放出速度および処置される症状の性質および重症度に依存して変化するだろう。例えば、必要な活性剤の量およびその放出速度は、どれくらいの長さで血漿中の特定の活性剤の濃度が治療効果のために受け入れられるレベルで残存するかを測定することで、既知のインビトロおよびインビボ技術に基づいて決定し得る。
【0034】
例えば、湿疹、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、乾癬、皮膚老化、日焼けによる損傷、ポストピール紅斑および皮膚線条のような皮膚疾患の予防および処置において、維持投与量の約2から3倍の初期投与量を好適に投与し、次いで1から2週間、維持投与量の約2から3倍の日投与量を投与し、続いて投与量を徐々に、1週間につき約5%の割合で減少して維持投与量にする。一般に、大型の哺乳類、例えばヒトにおける、湿疹、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、乾癬、皮膚老化および日焼けによる損傷の予防および処置に使用するために、経口投与で33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンおよびタザロテンのようなレチノイドの相加/相乗的に効果のある量は、約50mg/kg/日まで、例えば約0.25mg/kg/日から約10mg/kg/日、好ましくは約0.5mg/kg/日から約1.0mg/kg/日の量のレチノイドと、上記相加/相乗比で、組み合わせまたは共投与する、約2mg/kg/日まで、例えば約0.01mg/kg/日から約2mg/kg/日、好ましくは約0.5mg/kg/日の33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンの量である。したがって、これらの化合物の経口共投与のための好適な単位投与形態には、約0.5mgから約100mg、好ましくは約3mgから約30mgの33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシン、および約10mgから約3000mg、好ましくは約50mgから約500mgのレチノイドの程度の量を含み得る。経口投与のための日投与量は、好ましくは1回の投与量で摂取するが、1日につき2、3または4回の投与に分割し得る。静脈内投与について、該有効投与量は、経口投与に必要な量より低い、例えば経口投与量の約1/5である。
【0035】
“共投与”は、一緒にまたは実質的に同時に、例えば全身性投与で、15分以内かまたはそれより短く、同じビークルまたは分離したビークルのいずれかの中の、本発明の組成物の成分の投与を意味し、そのため、経口投与で、例えば両化合物が同時に胃腸管内に存在する。しかし、局所投与で、成分の投与はまた、少なくとも数時間、例えば6時間または12時間の間隔で分けられていてもよい。好ましくは、該化合物は固定された組合せ剤として投与される。
【0036】
2つのみの薬学的に活性な成分の組合せまたは併用を主に意図しているが、本発明の目的に矛盾しない限りにおいて、更なる活性剤、例えば1つの更なる活性剤の存在を排除するものではない。
【0037】
組合せまたは併用のために好ましいかかる更なる薬学的に活性な成分は、抗菌剤である。
【0038】
好適な抗菌剤は例えば:
−サリチル酸またはサリチル酸誘導体、例えば:4−アミノサリチル酸(アパシル(Apacil)(登録商標))または5−アミノサリチル酸(メサラミン;メサラジン;アサコール(Asacol)(登録商標)またはそれらの誘導体、例えばオサラジン(メサラミンの2量体;5,5’−アザビス[サリチル酸])またはスルファサラジン(5−[p−(2−ピリジルスルファモイル)フェニルアゾ]サリチル酸;アズルフィジン(Azulfidine)(登録商標));
−スルホンアミド、例えばスルホアセトアミドまたはスルファジアジン;
【0039】
−抗生物質、例えば:
a)ペニシリン、例えばペニシリンそれ自体またはクロキサシリン;
b)アモキシシリン;テトラサイクリン、例えばテトラサイクリンそれ自体、ドキシサイクリン、オキシテトラサイクリン、またはミノサイクリン;またはセファロスポリン、例えばセフタジジムまたはWO 96/35692、WO 98/43981およびWO 99/48896に記載のようなセファロスポリン;
c)キノロン、例えばシプロフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシンまたはロメフロキサシン;
d)マクロライド系抗生物質、例えばエリスロマイシン;
e)クリンダマイシン;
f)クロラムフェニコールまたはアジダムフェニコール(azidamfenicol)(ロイコマイシンN(Leukomycin N)(登録商標));または
g)アミノグリコシド、例えばゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシンまたはトブラマイシン;
h)ポリエン、例えばナタマイシン;
i)プソイドモン酸、例えばムピロシン(プソイドモン酸A);
j)セフロキシム;
k)オミガナン(omiganan)(MBI−594;MBI−226)、WO 98/07745に記載;または
l)プレウロムチリン(pleuromutilin);
【0040】
−フシジン酸(ラマイシン)およびその誘導体;
−メトロニダゾール;または
−ポリペプチドグリコペプチド、例えばバトラシン(batracin)、ポリミキシン、例えばポリミキシンB、またはチロトリシン;
好ましくはサリチル酸誘導体、ペニシリン、キノロン、マクロライド系抗生物質またはアミノグリコシド;とりわけスルファサラジン、ペニシリン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、エリスロマイシンまたはゲンタマイシン;とりわけスルファサラジン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、エリスロマイシンまたはゲンタマイシン;更により好ましくはシプロフロキサシンまたはエリスロマイシンである。例えばグラム陽性菌、例えば連鎖球菌およびブドウ球菌、またはグラム陰性菌、例えばシュードモナス属、エシェリキア属、エンテロバクター属、クレブシエラ属、モラクセラ属およびエンテロコッカス属に対して活性である。
【0041】
本発明の組成物は、任意の常套の経路による投与に適した組成物を含み、とりわけ、経腸的に、例えば経口的、例えば飲用の溶液、錠剤またはカプセル剤の形態の、または非経腸的に、例えば注射用溶液または懸濁液の;または局所的に、例えば皮膚または粘膜の炎症性症状の処置のために、例えば各組成物の重量の約0.01%から約2%の濃度で、とりわけ浸透促進剤と組み合わせてまたは併せて含む、例えば皮膚クリーム、軟膏、点耳薬、ムース、シャンプー、溶液、ローション、ジェル、エマルジェル(emulgel)またはそのような製剤の形態の、ならびに目への適用のために、例えば眼クリーム、ジェルまたは点眼薬製剤の形態の、肺および気道の炎症性症状の処置のために、例えば吸入組成物の形態の、ならびに粘膜への適用のために、例えば膣錠剤の形態のいずれかの、投与に適した組成物を含む。
【0042】
本発明の組成物は好適にはエマルジョン、ミクロエマルジョン、エマルジョン前濃縮物もしくはミクロエマルジョン前濃縮物、または固形散剤、とりわけ油中水ミクロエマルジョン前濃縮物または水中油ミクロエマルジョンであって、マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびレチノイドを相乗比で含んでなる組成物である。
【0043】
本発明の組成物は常套の方法、例えばマクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびレチノイドと、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤または担体を組み合わせてまたは併せて混合することにより製造することができる。
【0044】
活性剤成分は必要に応じて、遊離形のまたは薬学的に許容される塩形であり得る。
【0045】
以下の実施例は本発明を説明する。別な定義の記載がない限り、該化合物は遊離形、すなわち中性または塩基性形である。
【実施例】
【0046】
実施例1:クリーム
【表2】

【0047】
製剤はエマルジョンについての常套の製造方法にしたがう。該薬剤物質を、中鎖トリグリセリド、オレイルアルコール、硫酸ナトリウムセチルステアリル、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリルを含む、加熱された均一の油相へと加える。平行して、残りの成分を含んだ水相を油相と同じ温度まで加熱する。油相を水相へと加え、均一化を行う。得られたクリームを室温へと冷却する。
【0048】
実施例2:クリーム
実施例1の通り、ただし0.10gのタザロテンに代わって0.05gのイソトレチノインを使用する。
【0049】
実施例3:ローション
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤をレチノイドと組み合わせてまたは併せて、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含んでなる、医薬組成物。
【請求項2】
33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンをエトレチナート、イソトレチノインまたはタザロテンと組み合わせてまたは併せて含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
湿疹、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、乾癬、皮膚老化、日焼けによる損傷、ポストピール紅斑または皮膚線条のような皮膚疾患の、かかる症状を有するかまたは危険がある対象における、処置方法であって、相加/相乗的に有効な量の請求項1に記載の組成物を共投与することを含んでなる、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物の製造方法であって、マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびレチノイドを、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは併せて混合することを含んでなる、方法。
【請求項5】
マクロライドT細胞免疫調節剤または免疫抑制剤およびレチノイドを分離した単位投与形態で、使用のための指示書と共に含んでなる、キット。
【請求項6】
抗菌剤であるさらなる薬学的活性剤を含んでなる、請求項1または2のいずれか1項に記載の組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンをレチノイドと組み合わせてまたは併せて、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含んでなる、医薬組成物。
【請求項2】
該レチノイドがエトレチナート、イソトレチノインまたはタザロテンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
湿疹、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、乾癬、皮膚老化、日焼けによる損傷、ポストピール紅斑または皮膚線条のような皮膚疾患の、かかる症状を有するかまたは危険がある対象における、処置方法であって、相加/相乗的に有効な量の請求項1に記載の組成物を共投与することを含んでなる、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物の製造方法であって、33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンおよびレチノイドを、少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤または担体と組み合わせてまたは併せて混合することを含んでなる、方法。
【請求項5】
33−エピクロロ−33−デスオキシアスコマイシンおよびレチノイドを分離した単位投与形態で、使用のための指示書と共に含んでなる、キット。
【請求項6】
抗菌剤であるさらなる薬学的活性剤を含んでなる、請求項1または2のいずれか1項に記載の組成物。

【公表番号】特表2006−522057(P2006−522057A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504964(P2006−504964)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003511
【国際公開番号】WO2004/087118
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】