説明

マグネットローラ

【課題】 軸一体型マグネットローラあるいはシャフトインサート型マグネットローラにおいて、容易に奇数極を形成し、現像剤の剥離性を向上させる。
【解決手段】軸部とマグネット本体部が一体的に成形されたマグネットローラにおいて、磁束密度の極性が同一である隣接する2つの磁極において、少なくとも1極の磁束密度最大値が30mT以上でかつ、2極間の磁束密度の極小値が同一極性で2mTから20mTとすることにより容易に奇数極を形成することができ、この2極間を現像剤剥離領域とすることにより現像剤の剥離性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に組み込まれるマグネットローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等における粉末トナーを用いた画像形成装置に組み込まれるマグネットローラは、次のように構成されているのが一般的である。
【0003】
すなわち、(1)同極の磁極ピースが隣接する位置において、該磁極ピース間に介在極ピースを介在させることにより、同極間の磁場波形を容易に制御することができるため、現像剤の剥離性が向上するというものである。(特許文献1)(2)同極磁気波形が隣接する部分の磁場成形ピースに切り欠き部を設けることにより、現像剤のつれ回りによる画質低下を防止するというものである。(特許文献2)
【特許文献1】特開2001−34068
【特許文献2】特開2003−229309
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、各磁極に対応するマグネットピースを貼り合わせ、かつ
現像剤剥離領域に対応する位置にもマグネットピースを設けているため、マグネットピースを貼り合わせるのに手間がかかり、また、貼り合わせの誤差が生じ、現像剤剥離領域も所望の位置からずれ、現像剤剥離が良好に行われない場合がある。
【0005】
また、特許文献2も上記と全く同様に、マグネットピースを貼り合わせるのに手間がかかり、また、貼り合わせの誤差が生じ、現像剤剥離領域も所望の位置からずれ、現像剤剥離が良好に行われない場合がある。
【0006】
更に、現状の軸部一体型マグネットローラ(軸部とマグネット本体部が同じ樹脂磁石材料で一体的に形成されたもの)では、通常4極構成であり、現像剤の剥離を必要としない1成分現像方式(磁性トナー使用)に用いられている。この4極構成の場合、隣接する磁極の極間角度は狭くても50度程度であるので、各磁極を配向着磁するヨークおよび励磁源(永久磁石あるいは電磁石)が隣接するもの同士で干渉することほとんどないが、5極構成を形成するには、ヨークおよび励磁源を1つあるいは2つ以上増やす必要があるため、ヨークおよび励磁源(永久磁石あるいは電磁石)が隣接するもの同士で干渉し、5極構成を形成できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマグネットローラは、軸部とマグネット本体部が一体的に成形されたマグネットローラであって、同一極性で形成された現像剤剥離領域において、2つの極大値と1つの極小値を持ち磁束密度の最大値が30mT以上でかつ極小値の磁束密度が2mTから20mTであることを特徴とするマグネットローラである。
【0008】
また、本発明のマグネットローラは、請求項1記載のマグネットローラであって、現像剤剥離領域の極小値が10mT〜20mTでありかつ極大値間の磁束密度値が30mT以下である範囲が15度以上であることを特徴とするマグネットローラである。
【0009】
また、本発明は、予め金型内にシャフトを挿入しておき、その後マグネット本体部を形成する樹脂磁石材料を金型内に注入して形成された請求項1,2記載のシャフト付きマグネットローラである。
【発明の効果】
【0010】
本発明(請求項1)により、軸部一体型マグネットローラで奇数極構成の磁束密度パターンを容易に得ることができ、良好な現像剤剥離領域を得ることができる。
【0011】
本発明(請求項2)により、軸部一体型マグネットローラで、現像剤入れ替え性がさらに良好な現像剤剥離領域を得ることができる。
【0012】
本発明(請求項3)により、シャフト付きマグネットローラで奇数極構成の磁束密度パターンを容易に得ることができ、良好な現像剤剥離領域を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、軸部とマグネット本体部が一体的に成形されたマグネットローラであって、同一極性で形成された現像剤剥離領域において、2つの極大値と1つの極小値を持ち磁束密度の最大値が30mT以上でかつ極小値の磁束密度が2mTから20mTであることを特徴とするマグネットローラ。
【0014】
従来、特許文献1、2等が示すように、マグネットピース貼り合わせタイプのマグネットローラでは、貼り合わせ作業に時間がかかるためコストがアップしたり、また貼り合わせのずれにより、現像剤剥離領域が所望の位置からずれ、現像剤の剥離が良好に行われなかったり、また、軸部一体型マグネットローラで現像剤剥離領域を形成することは、ヨークおよび励磁源の干渉から困難な場合があった。
【0015】
本発明では、図1のような金型(磁気回路部)を用い、強磁性体粉末と樹脂バインダーを主体とする混合物により、軸部と本体部を磁石材料で一体射出成形して図7のようなマグネットローラを形成する。得られたマグネットローラの磁束密度パターンは図2のようになる。そして、図3に示すように、図2のN2極の磁束密度ピーク位置付近に相当するマグネットローラ外周面に減磁用ヨーク(電磁石)あるいは永久磁石を当接し、減磁を行う。減磁時の磁場は、減磁される磁極の磁束密度ピーク値に合わせて調整し、図4に示すように、減磁後の磁束密度のボトム値が2mT〜20mT望ましくは10mT〜20mTとなるようにする。この場合、該ボトム値が2mT未満の場合は、現像剤の剥離が良好に行われず、現像剤のつれ回りが発生し、画質に悪影響を及ぼす。20mTを超える場合も、2mT未満の場合と同様に、現像剤の剥離が良好に行われず、現像剤のつれ回りが発生し、画質に悪影響を及ぼす。
【0016】
本発明では、図6に示すように、減磁を施す磁極に対応する配向着磁ヨークの幅を、マグネット外周寸法の10%以上にする必要がある。望ましくは10%〜30%とする。ヨーク幅が10%未満の場合は、半値幅を80度以上にすることは困難で、30%を超えると半値幅は80度以上となるが、該磁極の磁束密度ピーク値が低下し、実用的でない値となる場合がある。そして、図3に示すように、図6の減磁を施す磁極(N2極)の磁束密度ピーク位置付近に相当するマグネットローラ外周面に減磁用ヨーク(電磁石)あるいは永久磁石を当接し、減磁を行う。減磁時の磁場は、減磁される磁極の磁束密度ピーク値に合わせて調整し、図4に示すように、減磁後の磁束密度のボトム値が2mT〜20mT望ましくは10mT〜20mTとなるようにする。この場合、該ボトム値が2mT未満の場合は、現像剤の剥離が良好に行われず、現像剤のつれ回りが発生し、画質に悪影響を及ぼす。20mTを超える場合も、2mT未満の場合と同様に、現像剤の剥離が良好に行われず、現像剤のつれ回りが発生し、画質に悪影響を及ぼす。
【0017】
また、本発明は請求項1記載のマグネットローラであって、現像剤剥離領域の極小値が10mT〜20mTでありかつ極大値間の磁束密度値が30mT以下である範囲が15度以上であることを特徴とするマグネットローラである。
【0018】
本発明では、図6に示すように、減磁を施す磁極に対応する配向着磁ヨークの幅を、マグネット外周寸法の10%以上、望ましくは10%〜30%とし、該磁極の半値幅が80度以上となるようにし、図3に示すように、図6の減磁を施す磁極(N2極)の磁束密度ピーク位置付近に相当するマグネットローラ外周面に減磁用ヨーク(電磁石)あるいは永久磁石を当接し、減磁を行う。減磁時の磁場は、減磁される磁極の磁束密度ピーク値に合わせて調整し、図4に示すように、減磁後の磁束密度のボトム値が10mT〜20mTとし、かつ30mT以下の範囲が15度以上となるようにする。この場合、該範囲(30mT以下の範囲)の磁気力がほぼゼロあるいは反発力(現像剤をスリーブから剥離しようという力)になり、更に現像剤の剥離が良好に行われる。該ボトム値が10mT未満の場合は、現像剤の剥離が良好に行われず、現像剤のつれ回りが発生し、画質に悪影響を及ぼす。20mTを超える場合も、10mT未満の場合と同様に、現像剤の剥離が良好に行われず、現像剤のつれ回りが発生し、画質に悪影響を及ぼす。また、30mT以下の範囲が15度未満の場合は、一旦現像剤はスリーブから剥離されるが、隣接する下流側の磁気力(吸引力)が近くに存在するため、一旦剥離された現像剤を、再びスリーブ上に吸着してしまい、結果的に現像剤の剥離が良好に行われず、現像剤のつれ回りが発生し、画質に悪影響を及ぼす。
【0019】
ここで上記マグネットローラは、異方性フェライト磁性粉の50重量%〜95重量%と、樹脂バインダーを5重量%〜50重量%とからなる混合物を主体とし、必要に応じて、磁性粉の表面処理剤としてシラン系やチタネート系等のカップリング剤、流動性を良好にするポリスチレン系・フッ素系滑剤等、安定剤、可塑剤、もしくは難燃剤などを添加し、混合分散し、溶融混練し、ペレット状に成形した後に、射出成形する。
【0020】
成形時に印加する配向着磁磁場は、各磁極に要求される磁束密度仕様により適宜選択すればよい。また、要求磁気特性によっては成形時に配向着磁磁場を印加せず、成形後に着磁してもよい。
【0021】
マグネットローラは、図1あるいは図5のような金型を用いて、注入口から溶融樹脂磁石を、電磁石あるいは永久磁石で、金型に配置した配向着磁用ヨークにより240K・A/m〜2400K・A/mの磁場を印加しながら注入し、磁性粒子を所望の方向に配向着磁し、硬化させ、マグネットローラが得られる。得られたマグネットローラは、射出成形により金型内で成形されるため、押出成形品よりも寸法精度が良好であるので、後加工が不要となり、低コストで高寸法精度のマグネットローラが得られる。また、射出成形の場合、溶融樹脂磁石の溶融粘度が押出成形等に比べはるかに低いので、磁性粒子の配向度が向上し、高磁気特性のマグネットピースが得られ、現像剤の搬送性が良好となり、また現像剤かぶりが防止でき高画質となる。
【0022】
ここで、磁性粉としては、MO・nFe23(nは自然数)で代表される化学式を持つ異方性フェライト磁性粉などがあげられる。式中のMとして、Sr、Baまたは鉛などの1種または2種以上が適宜選択して用いられる。
【0023】
また樹脂バインダーとして、ポリアミド樹脂、エチレン−エチルアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスフィド)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)、CPE(塩素化ポリエチレン)、およびPVC(ポリ塩化ビニル)などの熱可塑性樹脂の1種類あるいは2種類以上、もしくは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂の1種類あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0024】
また、要求される磁束密度により、磁性粉として、異方性フェライト磁性粉、等方性フェライト磁性粉、異方性希土類磁性粉(例えばSmFeN系)、等方性希土類磁性粉(例えばNeFeB系)を単独または2種類以上を混合して使用しても良い。
【0025】
上記に示した単独磁性粉あるいは混合磁性粉の含有率が50重量%未満では、磁性粉不足により、マグネットピースの磁気特性が低下して所望の磁力が得られにくくなり、またそれらの含有率が95重量%を超えると、バインダー不足となり成形性が損なわれるおそれがある。
【0026】
また、本発明は、予め金型内にシャフトを挿入しておき、その後マグネット本体部を形成する請求項1,2記載のシャフト付きマグネットローラである。
【0027】
本発明では、図5のようなシャフトインサート用金型(磁気回路部)を用い、強磁性体粉末と樹脂バインダーを主体とする混合物により、シャフトの外周部にマグネット本体部を磁石材料で射出成形して図8のようなマグネットローラを形成する。得られたマグネットローラの磁束密度パターンは図2のようになる。そして、図3に示すように、図2のN2極の磁束密度ピーク位置付近に相当するマグネットローラ外周面に減磁用ヨーク(電磁石)あるいは永久磁石を当接し、減磁を行う。減磁時の磁場は、減磁される磁極の磁束密度ピーク値に合わせて調整し、図4に示すように、減磁後の磁束密度のボトム値が2mT〜20mT望ましくは10mT〜20mTとなるようにする。この場合、該ボトム値が2mT未満の場合は、現像剤の剥離が良好に行われず、現像剤のつれ回りが発生し、画質に悪影響を及ぼす。20mTを超える場合も、2mT未満の場合と同様に、現像剤の剥離が良好に行われず、現像剤のつれ回りが発生し、画質に悪影響を及ぼす。また、本明細書においては、5極構成のマグネットロールを図示しているが、本発明は5極マグネットロールのみに限定されない。すなわち、所望の磁束密度と磁界分布により、マグネットピースの数量を選択し、磁極数や磁極位置も適宜設定すればよい。
【0028】
さらに、成形と同時に磁場を印加する場合、成形物の脱型性の向上や、成形物のマグカス等のゴミ付着防止やマグネットローラの取り扱い性を容易にするために、成形後金型内あるいは金型外で一旦脱磁し、その後着磁してもよい。
【実施例】
【0029】
以下に本発明を実施例および比較例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
図7のマグネットローラ材料として、樹脂バインダーにナイロン6(ユニチカ(株)製A1015P)を10重量%中(滑剤、可塑剤、安定剤も含む)磁性粉として異方性ストロンチウムフェライト磁性粉(SrO・6Fe23)を90重量%とし、これらを混合し、溶融混練し、ペレット状に成形し、このペレットを溶融状態にし、図1の金型を用いて、注入口から溶融樹脂磁石材料を射出注入し、500K・A/m〜1500K・A/mの磁場を印加しながら溶融樹脂磁石の磁性粒子を配向着磁し、図7に示すマグネットローラを射出成形した。マグネットローラ本体部の外径はφ13.6、マグネット本体部の長さは320mm、軸部の外径はφ6とした。(本体部と軸部の材料は同一樹脂磁石材料)
得られたマグネットローラの両端軸部を支持し、マグネットローラを回転させながら、マグネットローラの中心から8mm離れた位置(スリーブ上)にプローブ(磁束密度センサー)をセットし、ガウスメータにてマグネットローラの周方向磁束密度パターンを測定した。該マグネットローラの磁束密度パターンを図2に示す。
【0031】
図2に示すN2極の磁束密度ピーク位置付近に相当するマグネットローラ外周面に減磁用ヨーク(電磁石)を当接し、磁束密度の最大値が30mT以上(図4の10=40mT、11=30mT)でかつ磁束密度の極小値(ボトム値)が2mTとなるように減磁を行い、図4に示すような磁束密度パターンを形成する。減磁後のマグネットローラをスリーブ(スリーブ外径はφ16)およびフランジ等を装着して現像ローラとし、図9に示すように、スリーブ上に現像剤(2成分系現像剤:磁性キャリア+非磁性トナー)100gを長手方向に均一に吸着させ、駆動側のフランジを介してスリーブを200rpmの速度で1分間回転させ、その間に現像剤剥離領域での現像剤のつれ回りの有無を目視で観察するとともに、回転を止めた後にスリーブ上に残る現像剤の量を精密天秤にて測定した。スリーブ上の現像剤の残量は3g以下が実用的と判断した。
観察および測定結果を表1に示す。
【0032】
(実施例2)
磁束密度の最大値が30mT以上(図4の10=60mT、11=40mT)でかつ磁束密度の極小値(ボトム値)を20mTとする以外はすべて実施例1と同様に行った。観察および測定結果を表1に示す。
【0033】
(実施例3)
図5の金型を用いて、溶融樹脂磁石材料を射出注入する前に、金型内にシャフトを挿入しておき、シャフトの外周部に注入口から溶融樹脂磁石材料を射出注入し、500K・A/m〜1500K・A/mの磁場を印加しながら溶融樹脂磁石の磁性粒子を配向着磁し、図8に示すマグネットローラを射出成形した。マグネットローラ本体部の外径をφ13.6、マグネット本体部の長さを320mm、軸部の外径をφ6とし、材質をSUM22とする以外はすべて実施例1と同様に行った。
観察および測定結果を表1に示す。
【0034】
(実施例4)
磁束密度の最大値が30mT以上(図4の10=60mT、11=40mT)でかつ磁束密度の極小値(ボトム値)を20mTとする以外はすべて実施例3と同様に行った。観察および測定結果を表1に示す。
【0035】
(実施例5)
図1の金型をベースに、N2極に対応するヨーク幅を調整(大きく)することにより、N2極の半値幅を80度とする以外はすべて実施例1と同様に行った。
観察および測定結果を表1に示す。
【0036】
(実施例6)
図1の金型をベースに、N2極に対応するヨーク幅を調整(大きく)することにより、N2極の半値幅を120度とする以外はすべて実施例1と同様に行った。
観察および測定結果を表1に示す。
【0037】
(実施例7)
磁束密度の最大値が30mT以上(図4の10=50mT、11=40mT)でかつ減磁した磁束密度パターンの極小値(ボトム値)が5mT、かつ30mT以下の範囲が15度となるようにN2極を減磁する以外はすべて実施例3と同様に行った。
観察および測定結果を表1に示す。
【0038】
(実施例8)
磁束密度の最大値が30mT以上(図4の10=50mT、11=50mT)でかつ減磁した磁束密度パターンの極小値(ボトム値)が10mTかつ30mT以下の範囲が10度となるようにN2極を減磁する以外はすべて実施例3と同様に行った。
観察および測定結果を表1に示す。
【0039】
(実施例9)
磁束密度の最大値が30mT以上(図4の10=50mT、11=50mT)でかつ減磁した磁束密度パターンの極小値(ボトム値)が10mTかつ30mT以下の範囲が15度となるようにN2極を減磁する以外はすべて実施例3と同様に行った。
観察および測定結果を表1に示す。
【0040】
(実施例10)
磁束密度の最大値が30mT以上(図4の10=60mT、11=40mT)でかつ減磁した磁束密度パターンの極小値(ボトム値)が20mTかつ30mT以下の範囲が15度となるようにN2極を減磁する以外はすべて実施例3と同様に行った。
観察および測定結果を表1に示す。
【0041】
(実施例11)
図1の金型をベースに、N2極に対応するヨーク幅を調整(大きく)することにより、N2極の半値幅を120度とし、磁束密度の最大値が30mT以上(図4の10=55mT、11=50mT)でかつ減磁した磁束密度パターンの極小値(ボトム値)が15mTかつ30mT以下の範囲が15度となるようにN2極を減磁する以外はすべて実施例3と同様に行った。
【0042】
(比較例1)
磁束密度の最大値が30mT以上(図4の10=30mT、11=30mT)でかつ減磁した磁束密度パターンの極小値(ボトム値)を1mTとする以外はすべて実施例1と同様に行った。
観察および測定結果を表1に示す。
【0043】
(比較例2)
磁束密度の最大値が30mT以上(図4の10=60mT、11=40mT)でかつ減磁した磁束密度パターンの極小値(ボトム値)を25mTとする以外はすべて実施例1と同様に行った。
観察および測定結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

実施例1、2、3、4と比較例1、2を比べると、実施例1、2、3、4は現像剤のつれ回りも無く、スリーブ上の現像剤残量も3g以下となっており、現像剤剥離性も実用的には問題ないことがわかる。
【0045】
従って、磁束密度の最大値が30mT以上でかつ減磁を施した磁極の磁束密度の極小値(ボトム値)は、2mT〜20mTが望ましいことがわかる。
【0046】
実施例5、6と実施例1、2、3、4を比較すると、実施例5、6は、N2極(減磁を施す磁極)の半値幅を大きくすることにより、現像剤剥離領域30mT以下の幅が増し、結果的にスリーブ上の現像剤残量も実施例1、2、3、4よりも減っており、現像剤剥離性も実用的には問題ないことがわかる。
従って、減磁を施す磁極の半値幅は80度以上が望ましいことがわかる。
【0047】
実施例9、10、11と実施例7、8を比べると、実施例9、10、11は、現像剤のつれ回りも無く、スリーブ上の現像剤残量は1g未満となっており、極めて現像剤剥離性が良好であることがわかる。
【0048】
従って、減磁を施す磁極の半値幅を80度以上とし、磁束密度の最大値が30mT以上でかつ磁束密度の極小値(ボトム値)は10mT〜20mTの範囲とし、現像剤剥離領域30mT以下の幅が15度以上とすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】マグネットローラの成形用金型(磁気回路)
【図2】マグネットローラのスリーブ上の磁束密度パターン
【図3】N2極の減磁を説明する図
【図4】本発明のマグネットローラの磁束密度パターンを説明する図
【図5】シャフトインサート型マグネットローラの成形用金型(磁気回路)
【図6】本発明のN2極部の配向着磁ヨーク付近を説明する図
【図7】本発明のマグネットローラ
【図8】別の本発明のマグネットローラ
【図9】現像ローラの現像剤剥離状態を観察する装置
【符号の説明】
【0050】
1 マグネットローラ本体部
2 ヨーク(磁性体)
3 電磁石あるいは永久磁石
4 磁束密度パターン
5 N1極磁束密度ピーク位置
6 S1極磁束密度ピーク位置
7 N2極磁束密度ピーク位置
8 S2極磁束密度ピーク位置
9 スリーブ
10 磁束密度極大値
11 もう一方の磁束密度極大値
12 磁束密度極小値
13 シャフト
14 シャフト部(樹脂磁石材料で成形)
15 シャフト(SUM22)
16 スリーブ上に吸着された現像剤
17 駆動側フランジ
18 現像ローラ支持治具
19 現像ローラ支持治具台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部とマグネット本体部が一体的に成形されたマグネットローラであって、同一極性で形成された現像剤剥離領域において、2つの極大値と1つの極小値を持ち磁束密度の最大値が30mT以上でかつ極小値の磁束密度が2mTから20mTであることを特徴とするマグネットローラ。
【請求項2】
請求項1記載のマグネットローラであって、現像剤剥離領域の極小値が10mT〜20mTでありかつ極大値間の磁束密度値が30mT以下である範囲が15度以上であることを特徴とするマグネットローラ。
【請求項3】
予め金型内にシャフトを挿入しておき、その後マグネット本体部を形成する樹脂磁石材料を金型内に注入して形成された請求項1,2記載のシャフト付きマグネットローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−165477(P2006−165477A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358799(P2004−358799)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(596087214)栃木カネカ株式会社 (64)
【Fターム(参考)】