説明

マグネット式エコエンジン

【課題】ガソリンや軽油などの燃料を必要とせず、燃料の燃焼を伴わないため、排気ガスの排出や排熱の発生など、環境問題を引き起こすことのないクリーンなエンジンを提供する。
【解決手段】基盤の周縁に非磁性体を挟んで永久磁石が取り付けられた回転可能な基盤と、基盤の下方に設置されたシリンダであって、シリンダ内のピストンのピストンヘッド上端部に永久磁石が取り付けられることにより、基盤が回転することで基盤の永久磁石と、ピストンヘッド上端部に取り付けられた永久磁石の二磁極間に働く引力と斥力の断続的な磁力作用により、ピストン運動をクランク機構で回転運動に変換させて動力を得ることを特徴とし、また、基盤の回転軸と、クランク軸とがベルトなどの連動手段で連結されていることにより、基盤の回転とクランク軸の回転とが同期することを特徴するマグネット式エンジン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンや軽油、重油、灯油、ガスなどの有限な化石燃料を使用せず、二酸化炭素などの排気ガスの排出や排熱の発生、また騒音などの環境問題を引き起こすことのない永久磁石(マグネット)の特性を利用したピストンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車や船舶などのエンジンは、ガソリンや軽油、重油、ガスなどの有限な化石燃料を利用し、シリンダ内でそれら燃料と空気を混合し、爆発させることにより、ピストンの往復運動を可能にし、動力を得ている。
【0003】
ガソリンや軽油、重油、灯油、ガスなどの燃料を燃焼させるため、二酸化炭素などの排気ガスの排出や排熱の発生、さらには騒音などが環境問題を引き起こしている。
【0004】
燃料の燃焼を伴わない電気自動車は、車両価格及び電池交換費用などのランニングコストが高く、充電に時間がかかり、走行距離も短い。
【0005】
さらに、電気自動車は、バッテリーや電池などに電気を充電するための充電スタンドとなるインフラを全国規模で整備しなければならず、莫大なコストがかかる。
【0006】
また、電気をつくり出す発電方式としては、原子力発電、太陽光発電、風力発電、火力発電、水力発電などがある。
【0007】
しかしながら、原子力発電による発電方式は、安全面や使用済み燃料の廃棄による環境汚染への対策が十分ではなく、事故が発生すると人間をはじめあらゆる産業に悪影響を及ぼす。太陽光発電及び風力発電による発電方式は、天候に左右されるため安定した電力を得ることが難しい。さらに、火力発電による発電方式は、有限な化石燃料やガスなどを燃焼させ、二酸化炭素を大量に排出するため、エネルギー資源保護と地球温暖化の観点から問題がある。また、水力発電による発電方式は、発電所建設などによる環境破壊や河川など自然環境への影響が懸念される。そして、原子力発電、太陽光発電、風力発電、火力発電、水力発電による発電方式は、発電所や変電所建設及び維持の為莫大なコストがかかる。
【0008】
一方、上記問題点を解決するものとして、従来の化石燃料を使用するピストンエンジンに代えて、磁力によりピストンを往復運動させる機構を採用したマグネットエンジンが種々提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−22894号公報
【特許文献2】特開平5−312142号公報
【特許文献3】特開2002−27734号公報
【特許文献4】特開2007−74806号公報
【特許文献5】特開2011−43157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に開示されたピストンエンジンは、コイルを用いて電流を流すことにより引力と斥力の動力を得る構造となっており、ピストンの往復運動のためには、常に磁界コイルに強力な電流を流し続けるため非効率であり、また、これらコイルの通電の制御のため、複雑な構造になる恐れがある。
【0011】
前記特許文献5の構造では、特に永久磁石を備えた円柱の筒の内側の支え台が上昇運動から下降運動に入る瞬間、もしくは下降運動から上昇運動に入る瞬間において、クランク軸が逆回転するか、もしくは円柱の筒の内側の永久磁石と磁石回転体の永久磁石とが引き寄せられた時点で停止してしまう。理論上、電磁石や永久磁石で回転運動などの動力を継続的に得る為には、磁力が作用しない絶縁部(非磁性体部分)を設け、引き合う磁力をなくすことで、慣性を生み出している。具体的には、永久磁石を用いた一般的なDCモーターに見られるように、絶縁部(非磁性体部分)を設けたコミュテーター(整流子)とブラシとでもってローターへの電流を一旦切断することで、ローターと永久磁石との間に発生していた引き合う磁力をなくし、これによりローターは慣性でもってスムーズに回転し続ける。この慣性を生かす機構は、ピストンの往復運動を安定、かつスムーズにさせ、クランク軸を同一方向へ安定的に回転させるための最も原則的な機構である。よって、前記特許文献5は、特に永久磁石を備えた円柱の筒の内側の支え台が上昇運動から下降運動へ入る瞬間と、下降運動から上昇運動へ入る瞬間において、円柱の筒の内側の永久磁石と、磁石回転体の永久磁石との間で慣性が働かない機構となっているため、クランク軸の回転する動力を得ることは不可能であり、具現性と実用性に欠ける。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題点を克服し、かつ簡単な構造で、しかも経済的でクリーンなエンジンを供給することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために本発明のマグネット式エンジンは、非磁性体を挟んで永久磁石AのN極とS極とが交互に周縁に取り付けられた回転可能な基盤と、該記基盤の下方に位置し、上端部に永久磁石Bが取り付けられたピストンヘッドと、コネクティングロッドの一端部と前記ピストンヘッドがピストンピンにより回動自在に連結され、前記コネクティングロッドの他端部とクランクアームがクランクピンにより回動自在に連結されたシリンダ装置と、によって構成され、前記基盤が回転することにより、該基盤の周縁に取り付けられた前記永久磁石Aと、前記ピストンヘッド上端部に取り付けられた前記永久磁石Bとの二磁極間に生じる引力と斥力の断続的な磁力を利用して、前記ピストンヘッドがシリンダ内で鉛直方向に往復運動し、該ピストンヘッドの往復運動に連動して前記コネクティングロッドを介してクランク機構によりクランク軸が回転することで、基盤の回転軸、もしくはクランク軸の軸回転を動力源として得ることを特徴とするマグネット式エンジンである。
【0014】
また、前記基盤の回転軸と、前記クランク軸とが連動手段で連結されていることにより、前記基盤の回転と前記クランク軸の回転とが同期することを特徴とする構造となっている。
【0015】
さらに、本発明のマグネット式エンジンは、一対の前記基盤と前記シリンダ装置が、複数対並行に連結されて多気筒式に形成することも可能である。多気筒式に形成することによって、ピストンの往復運動が安定するとともに、出力を増大させることができる。
【0016】
前記基盤に取り付けられた前記永久磁石AのS極とN極との間に非磁性体を設けることにより、ピストンの慣性をいかしたスムーズなピストン運動を可能にすることでクランク軸を同一方向に回転させることができることを特徴とするマグネット式エンジンである。
【0017】
さらに、本発明のエンジンは、発電機を回すエンジンでもあることを特徴とするマグネット式エンジンでもある。よって、本発明のマグネット式エンジンは、排気ガスを排出せず、車載用エンジンとして、もしくは各家庭や事務所、工場などの施設単位での自家発電を可能にするための発電機を回すエンジンとしても利用可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガソリンや軽油などの燃料と空気を圧縮し、爆発させる必要がないことから、ピストンとシリンダとにより密閉空間を形成する必要がない。
【0019】
本発明によれば、ガソリンや軽油などの燃料を必要としないため、燃焼のための各種部品や装置を必要としないシンプルな構造となる。さらに燃料の燃焼に伴う排気ガスの排出や排熱が発生されないため、環境問題を生じない無公害のエンジンである。
【0020】
本発明によれば、非磁性体を挟んで基盤の周縁にN極とS極が交互に配置された永久磁石と、ピストンヘッド上端部に取り付けられた永久磁石との二磁極間に発生する引力と斥力の断続的な磁力により、ピストンヘッドがスムーズにシリンダ内を往復運動し、単純な構成でクランク軸を同一方向へ連続的に回転させることが可能となる。
【0021】
本発明は、車載用エンジンとして、もしくは各家庭や事務所、工場などでの自家発電のための発電機を回すエンジンとしても利用できることから、発電所や変電所の建設及び維持、また送配電の為のインフラ整備に莫大なコストをかける必要がなく、大幅なコスト削減を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示す概略図である。
【図2】図1の一実施形態を側面方向からみた概略図である。
【図3】本発明の一実施形態を側面方向からみた直列多気筒式の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態を上方向からみた水平対向式の概略図である。
【図5】図4を側面方向からみた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するも、本発明がこれらの説明や手順に限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るピストンエンジンを示す概略図である。図2は、図1の一実施形態に係るピストンエンジンを側面方向からみた概略図である。図示の実施形態では、基盤1とシリンダ装置20が縦方向に配置されているが、必ずしも縦方向に限らず、図1の状態から90°回転させた横方向あるいは任意の角度に回転させた斜め方向等、その形態は任意である。本実施形態では、説明の便宜上図示のものに基づいて説明する。
【0025】
基盤1は、図示のように、シリンダ装置20の上方にその回転軸心がシリンダ4の軸心に対して直交する方向に回転自在に配置され、その周縁にS極とN極の永久磁石2が非磁性体3を挟んで交互に取り付けられている。なお、非磁性体3は、永久磁石間に例えば面一となるように非磁性材料からなる磁性体を配置してもよく、もしくは永久磁石間を一定の隙間にしてもよい。したがって、特許請求の範囲に記載の非磁性体の用語は、基盤1に特定の非磁性材料からなる非磁性体に限らず、隙間の場合も含むと解するべきである。
【0026】
シリンダ装置20は、ピストン-クランク機構を構成するものであり、シリンダ4が基盤1の垂直回転周縁の下方に位置し、その基盤1側の上端は開口または磁力線が透過可能な非磁性体で覆われている。該シリンダ4を上下に往復動するピストンヘッド6の上端部には永久磁石5が取り付けられている。ピストンヘッド6は、コネクティングロッド7の一端部がピストンピン7aを中心として回動自在に連結されている。また、コネクティングロッド7の他端部とクランクアーム12がクランクピン7bに回動自在に連結されている。なお、カウンターウエイト8は、半円形か扇形の形状にすることにより慣性を最大限に生かせる構造とすることが望ましい。
【0027】
図1は、クランクピン7bが時計回りの方向に回転し、ピストンヘッド6が下降途中の状態を示している。このとき、基盤1に取り付けられた永久磁石2と、ピストンヘッド6の上端部に取り付けられた永久磁石5との二極間では反発しあう磁力が作用している。このため、ピストンヘッド6は、反発の作用を受けて下降することになり、クランクピン7bが引き下げられる。
【0028】
基盤1の回転軸とクランク軸9とが連動手段で連結されていることにより、ピストンヘッド6の下降運動に連動して、ピストンヘッド6が下死点に到達する直前でシリンダ4の上方に設けられた基盤1の非磁性体3がシリンダ4の真上に回転し、慣性によりクランクピン7bはそのまま時計回りの回転を続け、下死点を過ぎ上死点へ向かう上昇運動に入る。ピストンヘッド6が下死点を過ぎ上死点に向かう上昇運動に連動してシリンダ4の上方に設けられた基盤1が引力の作用をもつ永久磁石2へと回転し、シリンダ4の真上に位置し、上死点までピストンヘッド6を引き上げる。これにより、ピストンヘッド6が上死点まで上昇する。ピストンヘッド6の上昇運動に連動して、ピストンヘッド6が上死点に到達する直前でシリンダ4の上方に設けられた基盤1が回転し、非磁性体3がシリンダ4の真上に位置する。よって慣性によりピストンヘッド6は上死点を過ぎ下死点へ向かう下降運動に入る。ピストンヘッド6が下降運動に入った瞬間にシリンダ4の上方に設けられた基盤1が斥力の作用をもつ永久磁石2へと回転し、ピストンヘッド6の上端部に取り付けられた永久磁石5と反発し、ピストンヘッド6を下死点まで引き下げる。このように基盤に取り付けられた永久磁石と、ピストンヘッド上端部に取り付けられた永久磁石との断続的な磁力作用により、ピストンのスムーズな往復運動を可能にする。
【0029】
そして、本実施形態では、図2に示すように、前記回転可能な基盤1の回転軸と、クランク軸9とが連動手段(符号10)で連結されていることにより、基盤1の回転とクランク軸の回転とが同期することを特徴とする構造としている。
【0030】
前記回転可能な基盤1の回転軸と、クランク軸9との連動手段のベルトの張りを一定に保つためにテンショナーを用いてもよい。
【0031】
本発明によれば、基盤1の回転力、もしくはクランク軸9により回転運動に変換された回転力を利用して、発電機を回すことも可能である。
【0032】
マグネット式エンジンが始動していない時には、図示しないモーターが連結ベルトB(符号11)の連動手段を介して、基盤を回転させることにより、初動の動力を得る。
【0033】
もしくは、基盤1に直接又は間接に連結された図示しないハンドルなどを回して初動の動力を得てもよい。
【0034】
ピストン運動を安定、もしくは補助する目的で、必要に応じて図示しないモーターが連結ベルトB(符号11)の連動手段を介して、基盤1を回転させてもよい。
【0035】
図示しないモーターと基盤1とを連結するための連結ベルトB(符号11)の連動手段は、チェーンでもよい。その際、基盤1の回転軸と図示しないモーターの回転軸との連動手段による連結部分は、スプロケットという歯車でチェーンと噛み合う構造となる。なお、チェーンの張りを一定に保つためにチェーンテンショナーと、揺れ防止のためのチェーンガイドを用いてもよい。
【0036】
図示しないモーターと基盤1とを連結するための連結ベルトB(符号11)の連動手段は、歯車でもよい。その際、基盤1の回転軸と図示しないモーターの回転軸との連動手段による連結部分の形状は、歯車で作用する構造となる。
【0037】
基盤1の回転軸と、クランク軸9とが同期するための連結ベルトA(符号10)の連動手段は、チェーンでもよい。その際、基盤1の回転軸とクランク軸9の連動手段による連結部分は、スプロケットという歯車でチェーンと噛み合う構造となる。なお、チェーンの張りを一定に保つためにチェーンテンショナーと、揺れ防止のためのチェーンガイドを用いてもよい。
【0038】
基盤1の回転軸と、クランク軸9とが同期するための連結ベルトA(符号10)の連動手段は、歯車でもよい。その際、基盤1の回転軸とクランク軸9の連動手段による連結部分の形状は、歯車で作用する構造となる。
【0039】
シリンダ本体は、非磁性体で形成されたものであることが望ましい。
【0040】
前記基盤に取り付けられた永久磁石A(符号2)とピストンヘッド上端部に取り付けられた永久磁石B(符号5)とが斥力のみの磁力作用となるようにしてもよい。
【0041】
ピストンの往復運動をスムーズにするために潤滑油を用いてもよい。
【0042】
基盤1の周縁に取り付けられた永久磁石A(符号2)の形状は、扇形に弧を描くように曲げられていることが望ましい。
【0043】
ピストンヘッドの上端部に取り付けられた永久磁石B(符号5)の形状は、基盤1の周縁に取り付けられた永久磁石A(符号2)の形状に合致するように反扇形(扇形凹型)に曲げられていることが望ましい。
【0044】
図3は、本発明の他の実施形態に係るマグネット式エンジンであり、本実施形態ではピストンの往復運動を安定させるため、一対の前記基盤と前記シリンダ装置が、複数対平行に連結されて多気筒式構造に形成されている。図3は直列4気筒式の構造となっており、両端のピストンヘッド6は、上死点を過ぎ下降運動に入った瞬間の状態を示している。両端の基盤1に取り付けられた永久磁石2がピストンヘッド6の上端部に取り付けられた永久磁石5に対して斥力の働きをもつ磁力に回転し、シリンダ4の真上に位置する。すると基盤1の永久磁石2とピストンヘッド6の上端部に取り付けられた永久磁石5とが反発し合い、両端のピストンヘッド6が引き下げられ下死点へ向かう。ピストンヘッド6が下死点に到達する直前、ピストンヘッド6の下降運動に連動してシリンダ4の上方の基盤1の非磁性体3がシリンダ4の真上に回転し、ピストンヘッド6は慣性により下死点を過ぎスムーズに上昇運動を行う。
【0045】
一方、両端のピストンヘッド6が下死点に到達する直前、クランク機構により、真ん中二つのピストンヘッド6は上死点に到達する直前となる。真ん中二つのピストンヘッド6の上昇運動に連動して、真ん中二つの基盤1の非磁性体3がシリンダ4の真上に回転し、ピストンヘッド6の上昇運動から下降運動へのスムーズな動きを可能にする。真ん中二つのピストンヘッド6が上死点から下降運動に入った瞬間、ピストンヘッド6の運動に連動して真ん中二つの基盤1が斥力の作用をもつ永久磁石2へと回転し、ピストンヘッド6の上端部に取り付けられた永久磁石5と反発し、真ん中二つのピストンヘッド6が引き下げられ下死点へ向かう。結果的に、真ん中二つのピストンヘッド6の下降運動はクランク機構を介して、両端のピストンヘッド6が上死点へ向かう慣性力と、基盤1の永久磁石2とピストンヘッド6の上端部に取り付けられた永久磁石5との引力の磁力とを補助する形となる。このように、多気筒式にすることにより、特に下死点から上死点へ向かう運動を他の機構が斥力でもって補助する形でピストンの往復運動を安定、かつスムーズにさせることができる。このように基盤に取り付けられた永久磁石と、ピストンヘッド上端部に取り付けられた永久磁石との間に生じる断続的な磁力作用により、ピストンの往復運動を可能する。また基盤の回転軸とクランク軸とがベルトなどの連動手段で連結されていることにより、基盤の回転とクランク軸の回転とが同期することを特徴とする。
【0046】
ピストン運動を安定させるため、図4のように水平対向構造にしてもよい。図5は、図4を側面からみた概略図である。本構造においても、特に下死点から上死点へ向かう運動を、もう一方のピストンが補助する機構となる。左側の基盤1の永久磁石2と、ピストンヘッド6の上端部に取り付けられた永久磁石5とが反発し、左側のピストンヘッド6が引き下げられる。ピストンヘッド6が下死点へ到達する直前では、右側のピストンヘッド6が上死点へ到達する直前となり、それぞれの基盤1の非磁性体3がピストンヘッド6の運動に連動してシリンダ4の真上に位置する。そして、慣性により、左側のピストンヘッド6は下死点を過ぎ上昇運動に入り、同時に右側のピストンヘッド6は上死点を過ぎ下降運動に入る。右側のピストンヘッド6が下降運動に入った瞬間、ピストンヘッド6の運動と基盤の回転との連動により、右側の基盤1が斥力の作用をもつ永久磁石2へと回転し、ピストンヘッド6の上端部に取り付けられた永久磁石5とが、同極同士で反発し、右側のピストンヘッド6が引き下げられる。結果として、右側のピストンヘッド6が左側のピストンヘッド6の上死点へ向かう上昇運動をサポートする形で補助している。このように基盤に取り付けられた永久磁石と、ピストンヘッド上端部に取り付けられた永久磁石との間に生じる断続的な磁力作用により、ピストンのスムーズな往復運動を可能にする。また基盤の回転とクランク軸とがベルトなどの連動手段で連結されていることにより、基盤の回転軸とクランク軸の回転とが同期することを特徴とする。
【0047】
このような構成からなる装置によって発生させた回転力をエンジン(駆動源)として利用できる。
【0048】
なお、本発明自体が玩具として、もしくは玩具に取り付けられた駆動源としても利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るピストンエンジンによれば、石油や軽油、重油、灯油、ガスなどの燃料を必要としないため、経済的、かつ環境問題を引き起こすことがない。よって、本発明に係るピストンエンジンは、特に自動車や船舶などのエンジン、又は、自動車や船舶などのバッテリーや電池へ電気を供給する発電の為のエンジン、または各家庭や事務所、工場等における自家発電の為の発電機を回すエンジン、さらには原子力発電や太陽光発電、風力発電、火力発電、水力発電に代わる発電の為のエンジンとして有効である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・基盤
2・・・永久磁石A
3・・・非磁性体
4・・・シリンダ
5・・・永久磁石B
6・・・ピストンヘッド
7・・・コネクティングロッド
7a・・・ピストンピン
7b・・・クランクピン
8・・・カウンターウエイト
9・・・クランク軸
10・・・連結ベルトA
11・・・連結ベルトB
12・・・クランクアーム
20・・・シリンダ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体を挟んで永久磁石のN極とS極とが交互に周縁に取り付けられた回転可能な基盤と、該基盤の下方に位置し、シリンダ内を往復するピストンのピストンヘッド上端部に永久磁石が取り付けられたピストン-クランク機構からなるシリンダ装置と、によって構成され、前記基盤が回転することにより、基盤の周縁に取り付けられた永久磁石と、ピストンヘッド上端部に取り付けられた永久磁石との二磁極間に発生する引力と斥力の断続的な磁力を利用して、ピストンヘッドがシリンダ内で鉛直方向に往復運動し、ピストンヘッドの往復運動に連動してクランク機構によりクランク軸が回転することで、前記クランク軸の軸回転力を駆動源として動力を得ることを特徴とするマグネット式エンジン。
【請求項2】
前記基盤の軸回転力を駆動源として動力を得ることを特徴とする請求項1記載のマグネット式エンジン。
【請求項3】
前記基盤の回転軸と、前記クランク軸とが連動手段で連結されることにより、前記基盤の回転と前記クランク軸との回転とが同期することを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載のマグネット式エンジン。
【請求項4】
ピストン運動を安定、もしくは補助する目的で、必要に応じて図示しないモーターが連動手段を介して、前記基盤1を回転させることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のマグネット式エンジン。
【請求項5】
前記基盤に取り付けられた永久磁石と前記ピストンヘッドの上端部に取り付けられた永久磁石とが斥力のみの磁力作用となるように、いずれにも同極の永久磁石をそれぞれに設けたことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のマグネット式エンジン。
【請求項6】
一対の前記基盤と前記ピストン-クランク機構からなるシリンダ装置が、複数対平行に連結されて多気筒式に形成されてなる請求項1から5の何れかに記載のマグネット式エンジン。
【請求項7】
本発明自体が玩具として、もしくは玩具に取り付けられた駆動源となる請求項1から6の何れかに記載のマグネット式エンジン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−50102(P2013−50102A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140465(P2012−140465)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(303002480)
【Fターム(参考)】