マジック・パケット・フレームの送信方法および無線端末装置
【課題】WOL待機状態で動作する無線LANアダプタの消費電力を低減する。
【解決手段】STA21a〜21cの無線LANアダプタは、DTIMインターバルTdよりも長いウエイクアップ・インターバルTw1、Tw2でドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張PSモードで動作することができる。無線LANアダプタは、STAがWOL待機状態に入る前にAPにウエイクアップ・インターバルを通知する。APは、無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移するタイミングで、バッファに記憶していたマジック・パケット・フレームを送信する。無線LANアダプタはDTIMインターバルで遷移するよりも無線LANアダプタの消費電力を低減することができる。
【解決手段】STA21a〜21cの無線LANアダプタは、DTIMインターバルTdよりも長いウエイクアップ・インターバルTw1、Tw2でドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張PSモードで動作することができる。無線LANアダプタは、STAがWOL待機状態に入る前にAPにウエイクアップ・インターバルを通知する。APは、無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移するタイミングで、バッファに記憶していたマジック・パケット・フレームを送信する。無線LANアダプタはDTIMインターバルで遷移するよりも無線LANアダプタの消費電力を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末装置に搭載される無線LANアダプタの消費電力を低減する技術に関し、さらに詳細には無線端末装置がマジック・パケットを受信するまでのウエイク・オン・ラン(WOL)待機状態での無線LANアダプタの消費電力を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型パーソナル・コンピュータ(ノートPC)やタブレッド型コンピュータなどの無線端末装置(以下、STA:Stationという。)はモバイル環境においてバッテリィを電力源として動作するためさまざまな省電力の手法を取り入れている。近年のSTAには、電源オフ状態または省電力状態のときにネットワークを通じて遠方からマジック・パケットを受け取って起動するWOL(Wake On LAN)という機能が搭載されている。本明細書ではマジック・パケットを待ちながら省電力状態に遷移しているSTAの動作状態をWOL待機状態といい、STAがマジック・パケットを受け取って起動することをWOL起動ということにする。
【0003】
STAがWOL起動をするためには、無線基地局(以下、アクセス・ポイント(AP)という。)からマジック・パケットを受け取る際に無線LANカードに電源を供給しておく必要がある。IEEE802.11関連標準(以下、802.11標準という。)では、無線LANアダプタのバッテリィの消耗を抑制するためにパワー・マネジメント機能を規定している。パワー・マネジメントに関する無線LANアダプタの動作モードには、アクティブ・モードとパワー・セーブ・モード(PSモード)がある。また、無線LANアダプタの動作状態には、無線LANカードに完全に電力が供給されて送受信が可能なアウエイク状態と、必要最小限の電力で動作し送受信が不可能なドーズ状態またはスリープ状態がある。
【0004】
アクティブ・モードの無線LANアダプタは常にアウエイク状態である。PSモードの無線LANアダプタは、APが許容できるリッスン・インターバルに従ってドーズ状態からアウエイク状態に周期的に遷移し、アウエイク状態のときにだけ送受信をすることができる。無線LANアダプタはSTAがWOL待機状態のときのようにフレームの送受信をしない場合にはPSモードで動作する。WOL待機状態のSTAはCPUが停止してIPアドレスを認識することができないため、WOLに使用するマジック・パケットの送信にはブロードキャスト・フレームが使用される。以後、マジック・パケットを送信するブロードキャスト・フレームをマジック・パケット・フレームという。
【0005】
802.11標準では、APがブロードキャスト・フレームを受け取ったときに、基本サービス・ユニット(BSS:Basic Service Kit)に帰属するいずれかの無線LANアダプタがPSモードで動作している場合は、当該ブロードキャスト・フレームをただちに送信しないで一旦バッファに記憶する。APはバッファに記憶したブロードキャスト・フレームをDTIM(Delivery Traffic Indication Message)と呼ばれる情報要素を含むビーコン・フレームを送信した直後に接続されているすべての無線LANアダプタに送信する。以後、DTIMを含むビーコン・フレームをDTIMフレームといい、DTIMフレームの送信インターバルをDTIMインターバルという。
【0006】
APは、DTIMインターバルを、ビーコン・フレームを送信するインターバルであるビーコン・インターバルより長くなるように設定する。WOLをサポートするSTAは、WOL待機状態に移行している間にPSモードで動作する無線LANアダプタが毎回DTIMフレームを聴取できるようにリッスン・インターバルを設定する。そしてWOL待機状態のSTAは本体のプロセッサおよび主要なデバイスの電源を停止するが、無線LANアダプタはリッスン・インターバルでアウエイク状態に遷移するたびに電力を消費する。
【0007】
特許文献1は、ハンドシェイクしないでAPからマジック・パケットを受け取って起動するコンピュータを開示する。同文献には、コンピュータがDTIMのタイミングでアウエイクし、APにバッファリングされていたデータをブロードキャスト・フレームで受信することが記載されている。特許文献2は、DTIMビーコンのビーコン間欠数を大きく設定する際のマルチキャスト・データに対する遅延揺らぎを防止する技術を開示する。
【0008】
同文献の発明では、APが送信するDTIMビーコンにブロードキャスト送信予定のDTIMビーコン間欠周期情報を含ませる。ブロードキャスト送信予定のDTIMビーコン送信後にのみブロードキャストを送信し、かつ、マルチキャストの送信は行わない。また、PSモードで動作し、かつ、マルチキャスト・データ通信を行っていないSTAは、DTIMビーコン間欠周期情報に従ってブロードキャストデータに関わる受信制御を行うことで、DTIMビーコン周期のたびにアウエイクしないでもブロードキャストデータの受信をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−18377号公報
【特許文献2】特開2009−5118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
PSモードの無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移したときには無線LANカードの消費電力が増大し、さらに、再度PSモードに遷移することをAPに通知するフレームを送信するための電力も必要となって、実際のデータ転送をしない場合でも電力を消費する。ユーザは自宅や出張先からWOL待機状態のSTAにマジック・パケットを送って必要なデータを取得したい場合がある。オフィスではSTAの盗難防止のため、外出するユーザは施錠できるキャビネットやロッカーにSTAを収納することが通常であり、WOL待機状態のSTAはバッテリィで動作することがある。
【0011】
バッテリィで動作するSTAにとってWOL待機状態における無線LAMアダプタの消費電力は、待機時間を持続させるために特に重要である。802.11標準ではAPがサポートするDTIMインターバルの最大値については規定していない。したがって、APがDTIMインターバルを長く設定し、それに伴って無線LANアダプタがリッスン・インターバルを長く設定することで、WOL待機状態での無線LANアダプタの消費電力を低減することが考えられる。
【0012】
しかし、APは接続されているすべてのSTAの動作状態を管理しており、いずれか1つのSTAがPSモードに入っていることを知ると、ブロードキャスト・フレームをバッファリングすることになっているため、他のSTAが受け取るブロードキャスト・フレームの受信タイミングが遅延する。APは、あるDTIMインターバルでそれまでにバッファリングされたすべてのブロードキャスト・フレームを送信できない場合は、つぎのDTIMインターバルで送信する。ブロードキャスト・フレームで送信される音楽や映像などのリアル・ストリーミング再生では、各DTIMインターバルでデータ・フレームを受け取れない場合には再生動作が中断する場合がある。
【0013】
また、802.11標準では、APはバッファリングしたフレームを無線LANアダプタに送るまで破棄することができないことになっているため、長いDTIMインターバルを設定する場合には、バッファに多量のデータ・フレームが蓄積される。したがってDTIMインターバルを長く設定すると、バッファがオーバーフローしてIP電話や前述のリアル・ストリーミング再生に影響がでてくる。APはこのような事態を防止するためにDTIMインターバルの最大値を制限することができるので、無線LANアダプタは無条件に長いリッスン・インターバルを設定しようとしてもAPは許可しない場合がある。
【0014】
無線LANアダプタは、リッスン・インターバルをDTIMインターバルより長く設定することもできるが、この場合でも当該無線LANアダプタにフレームを送るまでの間のバッファのオーバーフローを避けるため、APは無条件に長いリッスン・インターバルを許可しない場合がある。あるいは、APは、DTIMインターバルのタイミングでブロードキャスト・フレームを送信したあとに、バッファをクリアするかもしれない。
【0015】
あらたに製造するAPにおいてはバッファのサイズを拡大して長いDTIMインターバルをサポートすることもできるが、データ量の少ないマジック・パケットをバッファリングするために過大なサイズのバッファを用意することは得策ではない。リッスン・インターバルが長くなるほど、用意するバッファのサイズは膨大なものになる。そこで、802.11標準で動作する無線LANアダプタが共存する無線LANシステムにおいて、WOL待機状態での無線LANアダプタの消費電力を一層低減するには新たなしくみが必要となる。
【0016】
そこで本発明の目的は、WOL待機状態で動作する無線端末装置の消費電力を低減する方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、WOL待機状態に移行している無線端末装置の消費電力をIEEE802.11標準の規定に基づいて動作する他の無線端末装置に影響を与えないようにしながら低減する方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、そのような方法を実現する無線端末装置、無線LANアダプタ、無線基地局およびコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、IEEE802.11標準で動作する無線LANシステムにおいて、WOL待機状態における無線LANアダプタの消費電力の一層の低減を実現する方法を提供する。IEEE802.11標準ではパワー・セーブ・モードを定義している。パワー・セーブ・モードでは、無線基地局がDTIMフレームの送信タイミングでブロードキャスト・フレームを送信する。
【0018】
これに対して本発明にかかる無線LANシステムでは、無線LANアダプタにIEEE802.11標準で規定するDTIMインターバルよりも長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードを定義して、WOL待機状態での無線LANアダプタの消費電力を低減する。無線LANアダプタは、無線端末装置がWOL待機状態に移行する際に、無線基地局に拡張パワー・セーブ・モードに移行する通知をすることができる。無線基地局は移行の通知に基づいて、拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移するタイミングを計測する。
【0019】
無線基地局がバックボーン・ネットワークからマジック・パケット・フレームを受け取り、かつ、無線基地局に拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタが接続されていると判断したときに無線基地局はマジック・パケット・フレームを第1のバッファに記憶する。無線基地局は、無線端末装置がアウエイク状態に遷移しているタイミングで第1のバッファに記憶されたマジック・パケット・フレームを送信する。このような構成によれば、無線LANアダプタは無線端末装置がWOL待機状態に移行している間に、IEEE802.11標準に規定するDTIMインターバルよりも長いウエイクアップ・インターバルで動作してマジック・パケット・フレームを受信できるようになる。
【0020】
ウエイクアップ・インターバルは、無線基地局が送信するビーコン・フレームの整数倍にすることができる。したがって、拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタは、いずれかのビーコン・フレームのタイミングでアウエイク状態に遷移することができ、また、無線基地局は同じビーコン・フレームのタイミングを計算してマジック・パケット・フレームを送信することができるようになる。
【0021】
無線基地局はバックボーン・ネットワークからブロードキャスト・フレームまたはマルチキャスト・フレームを受け取ったときに、接続されている複数の無線LANアダプタのいずれかがIEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作すると判断したときに、ブロードキャスト・フレームまたはマルチキャスト・フレームを第1のバッファに記憶しないで第2のバッファに記憶することができる。よって、同一の無線基地局にIEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作する無線端末装置が接続されていても、当該パワー・セーブ・モードにおけるブロードキャスト・フレームおよびマルチキャスト・フレームの転送には影響を与えない。
【0022】
第1のバッファと第2のバッファを区別することで、それぞれを独自のタイミングでクリアすることができるようになり、ブロードキャスト・フレームの送信とマジック・パケット・フレームの送信を停止するタイミングを相互に独立して決めることができるようになる。なお、第1のバッファと第2のバッファは、物理的に同一のメモリの記憶領域を区分することで構成することもできる。
【0023】
無線基地局は、IEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移しているタイミングで第2のバッファに記憶されたブロードキャスト・フレームおよびマルチキャスト・フレームを送信する。したがって、IEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタに対しては、DTIMフレームの送信直後に送信するブロードキャスト・フレームとしてマジック・パケット・フレームを送信することができる。
【0024】
無線基地局は、バックボーン・ネットワークからユニキャスト・フレームを受け取ることができる。そして、無線基地局は、ユニキャスト・フレームの宛先が拡張パワー・セーブ・モードで動作している無線LANアダプタであると判断したときに、ユニキャスト・フレームを破棄することができる。このような構成によれば、第1のバッファには、マジック・パケット・フレーム以外は記憶されないので、ウエイクアップ・インターバルが長くなってもオーバーフローをする恐れがなくなる。
【0025】
また、無線端末装置はWOL待機状態の間は、マジック・パケット・フレーム以外のフレームを受け取っても処理することができないので無線基地局がこのような処理を行っても支障はない。無線基地局は無線LANアダプタが拡張パワー・セーブ・モードで動作している間、無線LANアダプタの接続を維持する。したがって無線LANアダプタは、ウエイクアップ・インターバルが長くなっても、アウエイク状態に遷移するタイミングで再度アソシエーションをしないでも、マジック・パケット・フレームを受信することができる。
【0026】
拡張パワー・セーブ・モードで動作する複数の無線端末装置は、それぞれアウエイク状態に遷移するタイミングが異なる。無線基地局は、拡張パワー・セーブ・モードで動作する複数の無線LANアダプタのいずれかがアウエイク状態に遷移しているタイミングごとにブロードキャスト・フレームでマジック・パケット・フレームを送信することができる。無線基地局は、拡張パワー・セーブ・モードで動作しているすべての無線LANアダプタにマジック・パケット・フレームを送信したあとに、第1のバッファをクリアしてマジック・パケット・フレームの送信を中止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、WOL待機状態で動作する無線端末装置の消費電力を低減する方法を提供することができた。さらに本発明により、WOL待機状態に移行している無線端末装置の消費電力をIEEE802.11標準の規定に基づいて動作する他の無線端末装置に影響を与えないようにしながら低減する方法を提供することができた。さらに本発明により、そのような方法を実現する無線端末装置、無線LANアダプタ、無線基地局およびコンピュータ・プログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】802.11標準に規定するインフラストラクチャ・モードの無線LANシステムのネットワーク構成を示す図である。
【図2】STAの構成を示す概略の機能ブロック図である。
【図3】STAに搭載される無線LANアダプタの構成を示す概略の機能ブロック図である。
【図4】APの構成を示す概略の機能ブロック図である。
【図5】無線LANシステムの動作を示すタイムチャートである。
【図6】拡張PSモードをサポートするAPの動作を説明するフローチャートである。
【図7】拡張PSモードをサポートするAPの動作を説明するフローチャートである。
【図8】バッファに記憶されたイーサネット・フレームを送信する手順を説明するフローチャートである。
【図9】動作モード・テーブルのデータ構造を示す図である。
【図10】802.11MACフレームのデータ構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[無線LANシステムの構成]
図1は、802.11標準に規定するインフラストラクチャ・モードの無線LANシステム10のネットワーク構成を示す図である。図1ではバックボーン・ネットワーク11に、代表的にリモート・コンピュータ13およびAP20が接続された状態が示されている。バックボーン・ネットワーク11は無線および有線のインターネットおよびイントラネットなどのネットワークを含んで構成することができ、AP20は、イーサネット(登録商標)でバックボーン・ネットワーク11に接続されている。バックボーン・ネットワーク11には、図1には示していないWebサーバ、メール・サーバ、DNSサーバ、およびデータベース・サーバなどのさまざまなサーバや、IPパケットのルーティング機器が接続される。
【0030】
無線LANシステム10は、AP20、STA21a、21b、21c、31a、31bおよびバックボーン・ネットワーク11の一部で構成されている。各STAは、AP20の電波が到達できる範囲に存在しており、AP20と各STAはBSSを構成する。リモート・コンピュータ13は、バックボーン・ネットワーク11を通じて無線LANシステムにマジック・パケットを送信し、WOL待機状態で動作する特定のSTAをWOL起動することができる。
【0031】
リモート・コンピュータ13は典型的にはSTA21a、21b、21c、31a、31bのいずれかのユーザが出張先や自宅で自らのSTAをWOL起動するために使用するノートPCであったり、無線LANシステム10を管理する管理者がすべてのSTAを一斉にWOL起動してソフトウエアの更新やインストールなどをするための管理用コンピュータであったりする。
【0032】
[STAの構成]
図2は、STA21aの構成を示す概略の機能ブロック図である。STA21aは、CPU51、メモリー・コントロール・ハブ(MCH)55、メイン・メモリ53、ビデオ・カード57、アイオー・コントロール・ハブ(ICH)61、無線LANアダプタ59、ハードディスク・ドライブ(HDD)63、エンベデッド・コントローラ(EC)65およびフラッシュROM67を含んでいる。
【0033】
STA21aは、ACPIの規格に適合しており、S0ステート(電源オン状態)、S3ステート(サスペンド状態)およびS4ステート(ハイバネーション状態)、およびS5ステート(ソフト・オフ状態)のいずれかのパワー・ステートに移行することができる。S3ステートとS4ステートをスリーピング状態という。スリーピング状態とソフト・オフ状態のときはCPU51が動作しないため、STA21aは、OSI参照モデルのレイヤ3(ネットワーク層)以上の機能が停止してAP20から受け取った802.11MACフレームのIPアドレスを解釈することはできない。
【0034】
ICH61は、USB(Universal Serial Bus)、SATA(Serial AT Attachment)、SPI (Serial Peripheral Interface)バス、 PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、PCI−Express(PCIe)バス、およびLPC(Low Pin Count)バスなどのインターフェースを備え、それらに対応したデバイスを接続することができる。ICH61は、また、STA21aの現在のパワー・ステートとパワー・ステートを変更したときの変更後のパワー・ステートを記憶するステート・レジスタと、WOLを設定するWOLレジスタを保有している。
【0035】
ステート・レジスタは、BIOSが設定する。ICH61はBIOSにより、S0ステートからS3ステートまたはS4ステートに遷移するようにステート・レジスタが設定された際に、無線LANアダプタ59に通知する。通知を受け取った無線LANアダプタ59は、電力管理フィールド311(図10)を設定してAP20に通知した後にIEEE802.11標準に規定するPSモードに移行することができる。ただし、後に説明するように、無線LANアダプタ59は拡張PSモード・フィールド327(図10)を設定して本実施の形態で新たに定義する拡張PSモードに移行することもできる。
【0036】
BIOSまたはOSがICH61のWOLレジスタをイネーブルに設定すると、ステート・レジスタに変更後のパワー・ステートがS3ステートまたはS4ステートに設定されたSTA21aはWOL待機状態に移行する。WOLレジスタがイネーブルに設定され、STA21aがS3ステートまたはS4ステートに移行している状態はWOL待機状態に相当する。WOL待機状態において無線LANアダプタ59が自分宛のマジック・パケットを受け取ったときにはICH61に通知する。通知を受け取ったICH61は、EC65を通じてSTA21aをパワー・オン状態に移行させてWOL起動をする。ただし、STA21aは、S5ステートのときにもWOL起動をするように構成することもできる。
【0037】
STA21a本体のパワー・ステートと無線LANアダプタ59の動作モードは、直接的に関連させる必要はない。無線LANアダプタ59は電源が投入されているときに、所定の時間802.11MACフレームの送受信がない場合は自らPSモードに移行することができる。したがって、STA21aがS0ステートのときも無線LANアダプタ59はPSモードに移行することがある。無線LANアダプタ59はSTA21aがスリーピング状態またはソフト・オフ状態のときには、WOLレジスタがイネーブルに設定されていればPSモードに移行し、ディスエーブルに設定されていればパワー・オフ状態に移行する。
【0038】
フラッシュROM67は、ACPI規格に適合するBIOSを格納している。EC65はCPU、ROMおよびRAMを含み、CPU51とは独立して動作してSTA21aの電源および温度を制御する。電源装置69は、DC/DCコンバータ、ハードウエア・ロジック回路、充電器および電源切換回路などを含み、STA21aを構成する電子デバイスに電力を供給する。電源切換回路は、AC/DCアダプタ71が接続されていることを検知したときはAC/DCアダプタ71からDC/DCコンバータおよび充電器に電力を供給し、または、AC/DCアダプタ71の接続を検出しないときはバッテリィ73からDC/DCコンバータに電力を供給する。
【0039】
DC/DCコンバータは、パワー・ステートに応じて電力を供給する電子デバイスを選択できるように系統が分割されている。EC65は、STA21aのパワー・ステートに応じて対応する電子デバイスに電力が供給されるように電源装置69を制御する。WOL待機状態では、少なくとも無線LANアダプタ59、ICH61のWOLに関連する回路、EC65および電源装置69のDC/DCコンバータを制御するハードウエア・ロジック回路に電力が供給されている。WOL待機状態のときに自分宛のマジック・パケット・フレームを受け取ると、無線LANアダプタ59はそれをEC65に通知する。EC65は電源装置69を制御してSTA21aをS0ステートに遷移させる。なお、図1に示した他のSTAも同じ構成になっている。
【0040】
[フレーム構造]
図10にIEEE802.11標準で定義されている802.11MACフレームのデータ構造を示す。802.11MACフレーム300は、AP20と各STAとの間で転送されるデータの構造を定義している。802.11MACフレーム300は、フレーム・ボディ305とMACヘッダで構成されている。MACヘッダは、フレーム制御フィールド301と宛先アドレス・フィールド303を含んでいる。48ビットの宛先フィールド303がすべて1のときは、当該802.11MACフレームはブロードキャスト・フレームであることを示す。
【0041】
フレーム制御フィールド301は、タイプ・フィールド307、サブタイプ・フィールド309、および電力管理フィールド311を含んでいる。タイプ・フィールド307は、802.11MACフレームがマネジメント・フレーム、制御フレーム、またはデータ・フレームのいずれのタイプであるかを示す。サブタイプ・フィールド309は、802.11MACフレームがマネジメント・フレームの場合は、アソシエーション要求フレーム、ビーコン・フレーム、認証要求フレームなどのいずれのタイプの802.11MACフレームであるかを示す。1ビットの電力管理フィールド311は、無線LANアダプタ59が送信する802.11MACフレームにおいて1に設定されると無線LANアダプタがその後PSモードで動作することを示し、0に設定されるとアクティブ・モードで動作することを示す。
【0042】
マネジメント・フレームのフレーム・ボディ305は、ビーコン・インターバル・フィールド313、リッスン・インターバル・フィールド315、TIM(traffic indication map)フィールド、およびベンダー・スペシフィック・フィールド325を含んでいる。ビーコン・インターバル・フィールド313は、ターゲット・ビーコンの送信時間間隔を示す。リッスン・インターバル・フィールド315は、SME(Station Management Entity)とMLME(MAC Layer Management Entity)との間で、PSモードで動作する無線LANアダプタ59が802.11MACフレームにおいてリッスン・インターバルを設定する。
【0043】
リッスン・インターバルは、PSモードで動作する無線LANアダプタ59がドーズ状態に遷移してからアウエイク状態に遷移するまでの、ビーコン・インターバルの数を示す。無線LANアダプタ59は、PSモードでAPが許容する範囲のリッスン・インターバルで動作することができる。TIMフィールドは、DTIMカウント・フィールド317、DTIM周期フィールド319、ビット・マップ制御フィールド321、およびPVBフィールド323を含んでおり、APが送信するビーコン・フレームにおいてパワー・マネジメントに関する情報が設定される。
【0044】
DTIMカウント・フィールド317は、次のDTIMフレームの前に送信されるビーコン・フレームの数を示しており、0のときに現在のビーコン・フレームがDTIMフレームであることを示す。また、DTIM周期フィールド319には、DTIMフレームが送信される周期的なインターバルをビーコン・フレームの数で表した値が設定される。DTIMフレームが送信される間隔をビーコン・インターバルの数で表した値がDTIMインターバルに相当し、ビーコン・インターバルの整数倍になる。
【0045】
ビーコン・フレームを受信した無線LANアダプタ59は、DTIMカウント・フィールド317を解析することで次回のビーコン・フレーム以降にDTIMフレームが送信されるタイミングを取得することができる。APは、バッファに1つ以上のマルチキャスト・フレームまたはブロードキャスト・フレームが記憶されたときには、ビット・マップ制御フィールド321を、DTIMカウント・フィールドが0のビーコン・フレームすなわちDTIMフレームにおいて1に設定する。
【0046】
APは、DTIMフレームを送信した直後にバッファに記憶されているマルチキャスト・フレームまたはブロードキャスト・フレームを送信する。PSモードで動作している無線LANアダプタ59は、DTIMフレームにおいて、ビット・マップ制御フィールド321に1が設定されているときは、マルチキャスト・フレームまたはブロードキャスト・フレームを受信するために十分な時間アウエイク状態を維持する。PVBフィールド323は、STAごとにバッファに記憶されているフレームが存在しかつ送信の準備ができているか否かを示す。
【0047】
ベンダー・スペシフィック・フィールド325には、IEEE802.11標準に定義されていない情報を設定することができる。ベンダー・スペシフィック・フィールド325は、本実施の携帯で定義する拡張PSモード・フィールド327およびアウエイク・インターバル・フィールド329を含む。無線LANアダプタ59が802.11MACフレームにおいて、拡張PSモード・フィールド327に拡張PSモードに入ることを示す情報を設定し、アウエイク・インターバル・フィールド329に、拡張PSモードのアウエイク・インターバルを設定する。アウエイク・インターバルは、APとの間のネゴシエーションで最終的に決定される。
【0048】
[無線LANアダプタ]
図3は、STA21aに搭載される無線LANアダプタ59の構成を示す概略の機能ブロック図である。無線LANアダプタ59は、OSI参照モデルのレイヤ1(物理レイヤ)の処理をする物理レイヤ部111とレイヤ2の処理をするデータ・リンク・レイヤ部を含む。PCIeインターフェース101は、ICH61のPCIeポートに合計4本の信号線で構成されたレーンおよびその他の信号線で接続され、CPU51とデータ・リンク・レイヤ部105の間でのIPパケットの転送を制御する。無線LANアダプタ59はPCIeインターフェース101に代えてUSBなどの他のインターフェースで構成することもできる。メモリ103は、IPパケットを格納する送受信用のバッファを含んでいる。
【0049】
データ・リンク・レイヤ部105は、OSI参照モデルのレイヤ3から受け取ったIPパケットにMACヘッダを付加して生成した802.11MACフレームを物理レイヤ部107に送り、物理レイヤ部107から受け取った802.11MACフレームからMACヘッダを除去して生成したIPパケットをレイヤ3に送る。データ・リンク・レイヤ部105は、CSMA/CAによる無線チャネル・アクセス機能と、AP20と無線LANアダプタ59との間の接続に関するマネジメント機能を含む。
【0050】
データ・リンク・レイヤ部105は、ビーコン・フレームの送信タイミングを制御したり、無線LANアダプタ59のパワー・マネジメントを実行したり、あるいはAP20との間でのアソシエーションを実行したりする。データ・リンク・レイヤ部105は、電源回路113の動作を制御する。電源回路113は、電源装置69から受け取った電力を無線LANアダプタ59の内部デバイスに供給する。
【0051】
データ・リンク・レイヤ部105はSTA21aがS0ステートのときに、一定の時間、送信または受信の802.11MACフレームが存在しないと判断したときに、APに電力管理フィールド311を設定したフレームを送信して通知した後に、802.11標準で規定するPSモードに移行し、さらに電源回路113に無線LANアダプタ59をPSモードで動作させるように指示する。PSモードでは、電源回路113は無線LANアダプタ59をAP20との間で取り決めしたリッスン・インターバルで周期的にドーズ状態からアウエイク状態に遷移させる。
【0052】
データ・リンク・レイヤ部105は、WOLをサポートする。データ・リンク・レイヤ部105は、STA21aがWOL待機状態で動作するときに無線LANアダプタ59が拡張PSモードで動作するための処理をする拡張PS処理部107を含む。拡張PSモードは、無線LANアダプタ59が802.11標準で規定するPSモードよりも長いインターバルで、周期的にドーズ状態からアウエイク状態に遷移する動作モードである。ユーザは、あらかじめ、拡張PS処理部107に、WOL待機状態のときに無線LANアダプタ59がPSモードで動作するか拡張PSモードで動作するかの設定をすることができる。
【0053】
拡張PSモードがイネーブルに設定された拡張PS処理部107は、ICH61からSTA21aがWOL待機状態に入る通知を受け取ると、拡張PSモード・フィールド327とアウエイク・インターバル・フィールド329を設定した802.11MACフレームをAP20に送信して拡張PSモードに移行する。拡張PS処理部107は、AP20から802.11MACフレームを受け取って、決定されたウエイクアップ・インターバルを認識すると、電源回路113に無線LANアダプタ59をドーズ状態に遷移させるように指示する。ウエイクアップ・インターバルについては後に詳しく説明する。拡張PS処理部107は、それ以後のビーコン・フレームに基づくビーコン・インターバルの数がウエイクアップ・インターバルに到達したときに、電源回路113に無線LANアダプタ59をアウエイク状態に遷移させるように指示する。
【0054】
拡張PS処理部107は無線LANアダプタ59がAP20に接続されている間、STA21aがWOL起動をするか、通常起動をするか、あるいはサスペンド状態からレジュームするかのいずれかによってS0ステートに移行するまで、周期的なウエイクアップ・インターバルで電源回路113を制御する。拡張PSモードで動作する間、拡張PS処理部107はアウエイク状態からドーズ状態に遷移する前に、毎回、AP20に802.11MACフレームを送信してウエイクアップ・インターバルを決定することができる。
【0055】
データ・リンク・レイヤ部105は、無線LANアダプタ59の固有の識別子であるMACアドレスを格納する不揮発性のメモリ109を有する。WOL起動をさせるためのマジック・パケットは、リモート・コンピュータ13がブロードキャスト・フレームのパケットであることを示すようにすべてのビットを1に設定した宛先IPアドレスに続いて、WOL起動したいSTAのMACアドレスを16回繰り返すように構成されている。
【0056】
AP20は、マジック・パケット・フレームをBSSに帰属するすべてのSTAに送信する。データ・リンク・レイヤ部105は、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59がアウエイク状態に遷移したときにAP20からマジック・パケット・フレームを受け取ると、宛先を確認するためにフレーム・ボディ・フィールド305に不揮発性メモリ109に格納されたMACアドレスに一致するMACアドレスが存在するか否かを判断し、一致する場合にはICH61に通知し、一致しない場合には当該802.11MACフレームを破棄する。
【0057】
なお拡張PS処理部107は、プロセッサ、メモリ、およびコンピュータ・プログラムで構成することができる。無線LANアダプタ59はSTA21aがWOL待機状態以外の状態のときは、拡張PSモードで動作することはなく、アクティブ・モードまたはPSモードで動作する。物理レイア部111は、符号化された802.11MACフレームで高周波信号を変調して送信し、受信した高周波信号を復調して符号化された802.11MACフレームを生成してデータ・リンク・レイヤ部105に送る。
【0058】
[APの構成]
図4は、AP20の構成を示す概略の機能ブロック図である。イーサネット・インターフェース151は、バックボーン・ネットワーク11にイーサネット(登録商標)で接続されて双方向のIPパケットの転送を制御する。制御部153は、CPU、プログラムの実行に利用するメモリ、およびプログラムを格納するフラッシュ・メモリを含み、それらが動作モード・テーブル157、カウンタ159、バッファ制御部161、およびデータ制御部163を構成する。
【0059】
バッファ165は、PSモードで動作する無線LANアダプタ59に対して、AP20がIEEE802.11標準に規定する802.11MACフレームを転送するために使用する。拡張バッファ167は、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59に対してAP20がマジック・パケット・フレームを転送するために使用する。バッファ165と拡張バッファ167は、物理的に異なるメモリでもよいが、同じメモリを使用して領域を区分して使用することもできる。
【0060】
データ制御部163は、BSSに帰属する無線LANアダプタ59とアソシエーションして、無線LANアダプタ59の動作モードが変更されるたびに動作モード・テーブル157に無線LANアダプタ59の動作状態を登録したり更新したりし、無線LANアダプタ59から切断要求があったときには登録を削除する。図9は動作モード・テーブルのデータ構造を示す図である。図9において、MACアドレス・フィールドには、現在AP20に接続されている無線LANアダプタ59のMACアドレスが登録されている。AID(Association ID)フィールドには、AP20が無線LANアダプタ59を接続するときに付与したAIDが登録される。PSモード・フィールドには、現在PSモードで動作する無線LANアダプタ59に対しては1が設定され、アクティブ・モードで動作する無線LANアダプタ59に対しては0に設定される。
【0061】
リッスン・インターバル・フィールドには、PSモードに入る前に無線LANアダプタ59とAP20の間で取り決めしたリッスン・インターバルが登録される。拡張PSモード・フィールドには、現在拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59では1に設定され、アクティブ・モードまたはPSモードで動作する無線LANアダプタ59では0に設定される。ウエイクアップ・インターバル・フィールドには、拡張PSモードに入る前に無線LANアダプタ59とAP20の間で取り決めした拡張PSモードでのウエイクアップ・インターバルが登録される。カウント値フィールドには、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59がつぎにウエイクアップするまでのビーコン・フレームの数が記録される。
【0062】
データ制御部163は、AP20に接続されているすべてのSTAの動作モードを管理して、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったイーサネット・フレームの送信タイミングを決定し、無線LAN通信部155に送る。送信のタイミングは、バッファ165またはバッファ167のいずれにフレームが記憶されたか否か、あるいはいずれにも記憶されていないか否かで異なる。データ制御部163は、送信のタイミングを判断して無線LAN通信部155に802.11MACフレームを送る。データ制御部163はまた無線LAN通信部155を通じて受け取った802.11MACフレームを、イーサネット・インターフェース151を通じてバックボーン・ネットワーク11に送る。
【0063】
カウンタ159は、無線LAN通信部155と同期して、ビーコン・フレームの送信タイミングをカウントする。カウンタ159は、動作モード・テーブル157にあるカウント値フィールドの現在のカウント値を、ビーコン・インターバルごとに減分し、0になったあとにウエイクアップ・インターバルを再度登録する。バッファ制御部161は、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったイーサネット・フレームを、動作モード・テーブル157を参照してバッファ165または拡張バッファ167に記憶したり、直接データ制御部163を経由して無線LAN通信部155に送ったりする。
【0064】
バッファ制御部161は、バックボーン・ネットワーク11からブロードキャスト・フレーム、マルチキャスト・フレームおよびユニキャスト・フレームを受け取ったときに、動作モード・テーブル157を参照する。そして、いずれかの無線LANアダプタ59がPSモードで動作していると判断したときに、ブロードキャスト・フレームおよびマルチキャスト・フレームをバッファ165に記憶してデータ制御部163にバッファ165にフレームが記憶されていることを通知する。
【0065】
また、PSモードで動作する無線LANアダプタ59を宛先とするユニキャスト・フレームを受け取ったときには当該フレームをバッファ165に記憶し、アクティブ・モードで動作する無線LANアダプタを宛先とするユニキャスト・フレームを受け取ったときは、ただちにデータ制御部163に送る。このときバッファ制御部161は、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59が接続されているか否かはバッファ165への記憶の条件にしない。
【0066】
ブロードキャスト・フレームは、ブロード・キャスト・ドメインのすべての無線LANアダプタ59を宛先とするフレームをいい、マルチキャスト・フレームは複数の無線LANアダプタ59を宛先とするフレームをいい、ユニキャスト・フレームは、1つの無線LANアダプタ59を宛先とするフレームをいう。マジック・パケット・フレームはブロードキャスト・フレームとして、バッファ165に記憶される。データ制御部163はマジック・パケット・フレーム163をPSモードで動作する無線LANアダプタ59にDTIMフレームの送信直後に送信する。
【0067】
バッファ制御部161は、バックボーン・ネットワーク11からマジック・パケット・フレームを受け取ったときに、動作モード・テーブル157を参照する。そして、拡張PSモードで動作するSTAが接続されていると判断したときに当該マジック・パケット・フレームを拡張バッファ167に記憶する。バッファ制御部161は、マジック・パケット・フレームを受け取ったときにPSモードで動作している無線LANアダプタ59および拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59が接続されていると判断したときは、当該マジック・パケット・フレームをバッファ165とバッファ167に記憶する。
【0068】
バッファ制御部161は、拡張PSモードで動作している無線LANアダプタ59を宛先とするユニキャスト・フレームを受け取ったときにはいずれのバッファにも記憶しないで破棄する。バッファ制御部161は、ユニキャスト・フレーム、マルチキャスト・フレームおよびマジック・パケット・フレーム以外のブロードキャスト・フレームを拡張バッファ167に記憶しない。バッファ制御部161は、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったイーサネット・フレームを、いずれの無線LANアダプタ59もPSモードまたは拡張PSモードで動作していないと判断したときは、ただちにデータ制御部163に送る。
【0069】
無線LAN通信部155は、データ・リンク・レイヤと物理レイヤの処理をして無線LANアダプタ59との間で無線による802.11MACフレームの送受信を行う。データ・リンク・レイヤ部は、データ制御部163から受け取ったイーサネット・フレームからイーサネット・ヘッダを削除してMACヘッダを付加し、あるいは、無線LANアダプタ59から受信した802.11MACフレームからMACヘッダを除去してイーサネット・ヘッダを付加する。AP20は、PSモードで動作することは許されておらず、つねにアクティブ・モードで動作する。
【0070】
なお、図1〜図4は本実施の形態を説明するために、本実施の形態に関連する主要なハードウエアの構成および接続関係を簡略化して記載したに過ぎないものである。無線LANアダプタ59やAP20にはここまでの説明で言及した以外にも、多くのデバイスが使われる。しかしそれらは当業者には周知であるので、ここでは詳しく説明しない。図で記載した複数のブロックを1個の集積回路もしくは装置としたり、逆に1個のブロックを複数の集積回路もしくは装置に分割して構成したりすることも、当業者が任意に選択することができる範囲においては本発明の範囲に含まれる。
【0071】
[無線LANシステム−の動作]
つぎに、無線LANシステム10の動作を説明する。図5は、無線LANシステム10の動作の一例を示すタイムチャートである。図6、図7は、拡張PSモードをサポートするAP20の動作を説明するフローチャートである。すべての無線LANアダプタ59は802.11標準に基づいて動作するが、STA21a〜21cに搭載された無線LANアダプタ59は、WOL待機状態の間さらに本実施の形態にかかる拡張PSモードで動作することができる。
【0072】
図5でAP20は、ビーコン・インターバルTでビーコン・フレームを送信している。ビーコン・フレーム2、5、・・・(n−3)、nはDTIMフレームに相当する。以下の説明において、無線LANアダプタとSTAを関連付けて説明する必要がある場合に、たとえば、STA21aに搭載された無線LANアダプタ59を無線LANアダプタ59(21a)と表記し、他の無線LANアダプタについても同様に表記する。無線LANアダプタ59(31a)はアクティブ・モードで動作しており、いつでも802.11MACフレームを送受信することができる。無線LANアダプタ59(31b)はPSモードで動作しており、リッスン・インターバルTdでドーズ状態からアウエイク状態に周期的に遷移している。リッスン・インターバルTdは、DTIMインターバルと一致しており、無線LANアダプタ59(31b)はすべてのDTIMフレームを聴取することができる。無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)は、拡張PSモードで動作している。
【0073】
無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)は、それぞれ時刻t6、t7、t5で拡張PSモードに移行している。拡張PSモードでは、ビーコン・インターバルTの整数倍のインターバルで、無線LANアダプタがドーズ状態からアウエイク状態に周期的に遷移する。拡張PSモードで動作する無線LANアダプタがドーズ状態からアウエイク状態に遷移するインターバルをリッスン・インターバルと区別するためにウエイクアップ・インターバルということにする。AP20と無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)との間で、ウエイクアップ・インターバルはリッスン・インターバルより長く設定される。
【0074】
ここでは、無線LANアダプタ59(21a)、59(21b)はウエイクアップ・インターバルTw1でアウエイク状態に遷移し、無線LANアダプタ59(21c)はウエイクアップ・インターバルTw2でアウエイク状態に遷移する。図5には、各DTIMフレームの直後にその時点までバッファ165に記憶されていたフレームが送信され、そのタイミングでアウエイク状態に遷移している無線LANアダプタ59が受信する状態を示している。そして、バッファ制御部161はフレームを送信したあとにバッファ165をクリアする。なお、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)がDTIMフレームの送信のタイミングでアウエイク状態に遷移して、バッファ165に記憶されていたフレームを受信する場合もあるが、それは本発明が意図する動作ではない。
【0075】
また、図5には無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)がすべて拡張PSモードで動作したあとの時刻t8で拡張バッファ167にマジック・パケット・フレームが記憶され、AP20がビーコン・フレーム(n−2)、(n−1)のタイミングで、マジック・パケット・フレームを送信したことを示している。そして、無線LANアダプタ59(21a)、59(21c)がビーコン・フレーム(n−2)のタイミングでアウエイク状態に遷移し、無線LANアダプタ59(21b)がビーコン・フレーム(n−1)のタイミングでアウエイク状態に遷移して、マジック・パケット・フレームを受信する。
【0076】
図6のブロック201では、AP20が動作してビーコン・インターバルTでビーコン・フレームを送信している。ブロック203では、時刻t1で無線LANアダプタ59(31a)がAP20によりMACレイヤ・レベルでの認証を受け、さらに、アソシエーションを実行してAP20に接続する。以後、無線LANアダプタ59(31a)は、アクティブ・モードで動作してアウエイク状態を維持する。無線LANアダプタ59(31a)は、AP20との間で任意のタイミングで802.11MACフレームの送受信をすることができる。
【0077】
AP20のデータ制御部163は、図9に示すように動作モード・テーブル157にSTA31aの無線LANアダプタ59(31a)を登録する。ブロック205では、無線LANアダプタ59(31b)が同様にAP20に接続される。無線LANアダプタ59(31b)は時刻t11で、WOL待機状態に移行するため電力管理フィールド311を1に設定した802.11MACフレームをAP20に送ってAP20との間でネゴシエーションをしてから、アクティブ・モードから802.11標準のPSモードに移行する。
【0078】
無線LANアダプタ59(31b)とAP20との間では、PSモードに入る際のリッスン・インターバルを決定するために、MLME-POWERMGT.requestとMLME-POWERMGT.confirmという命令を使用する。MLME-POWERMGT.requestは、リッスン・インターバルを示すListenIntervalという情報要素とすべてのDTIMを受信するか否かを示すReceiveDTIMsという情報要素を含む。無線LANアダプタ59(31b)は、すべてのDTIMフレームのタイミングでアウエイク状態に遷移する場合は、ReceiveDTIMsをtrueに設定する。
【0079】
図5に示したように、ここでは、リッスン・インターバルは3に設定され、無線LANアダプタ59(31b)は、ビーコン・フレーム2、5、・・・(n−3)、nの送信タイミングごとにアウエイク状態に遷移してビーコン・フレームを聴取する。AP20は、DTIMフレームを送信した直後にその時点でバッファ165に蓄積されていたマルチキャスト・フレームおよびブロードキャスト・フレームを送信する。
【0080】
AP20は、DTIMフレーム2の送信直後にそれまでバッファ165に記憶されていたフレームを送信してからバッファ165をクリアし、さらにDTIMフレーム5までの間にバックボーン・ネットワーク11から受け取ったイーサネット・フレームをバッファ165に記憶してからDTIMフレーム5の送信直後にバッファ165をクリアする。
【0081】
AP20はDTIMフレーム2のタイミングですべてのバッファ165に記憶されていたフレームを送信できなかった場合は、DTIMフレーム5の送信直後に残っていたフレームを送信する。無線LANアダプタ59(31b)は、DTIMフレームのPVBフィールド323を参照して自分宛のユニキャスト・フレームがバッファ165に蓄積されていることを知ると、PS-Pollという制御フレームをAP20に送信して受信することができる。
【0082】
無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)は、ICH61のWOLレジスタがイネーブルに設定され、拡張PS処理部107に拡張PSモードがイネーブルになるように設定されている。ブロック207では、S0ステートで動作するSTA21aが時刻t2でAP20に接続する。接続直後の無線LANアダプタ59(21a)はアクティブ・モードで動作している。ブロック209でユーザの操作または所定のアイドル時間が経過したことなどによりSTA21aがS3ステートまたはS4ステートに移行することで、WOL待機状態に移行する。このとき、ICH61は無線LANアダプタ59(21a)にSTA21aがWOL待機状態に移行することを通知する。
【0083】
無線LANアダプタ59(21a)のデータ・リンク・レイヤ部105は、ビーコン・フレーム3を受信した直後の時刻t6で拡張PSモードに移行するために、AP20に802.11MACフレームを送信する。AP20は、電力管理フィールド311の設定内容にかかわらず拡張PSモード・フィールド327を参照して無線LANアダプタ59(21a)がPSモードでは動作していないと判断する。ただし、AP20は、無線LANアダプタ59(21a)をアクティブ・モードで動作すると認識して802.11標準の規定に基づいてフレームのバッファリングや送信タイミングの制御をするのではなく、以下のように拡張PSモードに関する特別な制御をする。
【0084】
無線LANアダプタ59(21a)は802.11MACフレームの拡張PSモード・フィールド327に拡張PSモードに入るためのビットを設定し、アウエイク・インターバル・フィールド329にウエイクアップ・インターバルTw1を設定する。ウエイクアップ・インターバルTw1は、たとえば、ビーコン・インターバルの100倍〜200倍とすることができる。ウエイクアップ・インターバルTw1は、次に受信するビーコン・フレーム4からアウエイク状態に遷移するビーコン・フレーム(n−2)までのビーコン・インターバルTの整数倍の時間に相当し、ここでは図9に示したように200としている。
【0085】
AP20は、バックボーン・ネットワーク11からマジック・パケット・フレームを受信した際に、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59が存在する場合は一旦拡張バッファ167に記憶するが、そのデータ量は多くはないためウエイクアップ・インターバルを長くしてもバッファ・オーバーフローの問題は生じにくい。またAP20は、バッファ165に記憶したフレームを、拡張バッファ167に記憶されたマジック・パケット・フレームの送信からは独立したDTIMインターバルで送信するので、ウエイクアップ・インターバルを長くしても802.11標準でブロードキャスト・フレームを受信する他の無線LANアダプタ59に影響を与えることはない。
【0086】
無線LANアダプタ59(21a)は、ウエイクアップ・インターバルを、リモート・コンピュータ13がマジック・パケットを送ってからSTA21aが実際にWOL起動を開始するまでに許容される範囲でAP20とネゴシエートして決定することができる。あるいはAP20は、ウエイクアップ・インターバルをあらかじめ設定された固定値とするように無線LANアダプタ59(21a)に要求することもできる。AP20のデータ制御部163は、決定したウエイクアップ・インターバルTw1を802.11MACフレームに設定して無線LANアダプタ59(21a)に送信する。
【0087】
802.11MACフレームを送信したAP20のデータ制御部163は、動作モード・テーブル157に802.11MACフレームから読み取った無線LANアダプタ59(21a)のMACアドレスとアソシエーション時に決定したAIDを登録する。AP20は、802.11標準に基づいてデータ転送をする無線LANアダプタ59に対して所定時間トラフィックがない場合にアソシエーションを解除する設定をしている場合は、拡張PSモードに入る無線LANアダプタについてはアソシエーションを解除しないようにする。
【0088】
つづいてデータ制御部163は、動作モード・テーブル157の無線LANアダプタ59(21a)について、ウエイクアップ・インターバル・フィールドとカウント値フィールドにウエイクアップ・インターバルTw1と現在のカウント値を登録する。登録時点ではウエイクアップ・インターバルTw1と現在のカウント値は一致するが、現在のカウンタ159はそれ以降のビーコン・インターバルのタイミングで1ずつ減分される。
【0089】
ブロック211では、802.11MACフレームを受信した無線LANアダプタ59(21a)のデータ・リンク・レイヤ部105は、電源回路113を制御して無線LANアダプタ59を拡張PSモードで動作させる。無線LANアダプタ59(21a)は、ウエイクアップ・インターバルTw1で周期的にドーズ状態からアウエイク状態に遷移する。2回目以降にアウエイク状態からドーズ状態に遷移する際には、無線LANアダプタ59(21a)は802.11MACフレームを送信して同様の手順を実行する。ブロック213では、同様の手順で無線LANアダプタ59(21b)が時刻t7で拡張PSモードに移行し、無線LANアダプタ59(21c)が時刻t5で拡張PSモードに移行する。
【0090】
ブロック215では、AP20がバックボーン・ネットワーク11からイーサネット・フレームを受信する。ブロック217では、バッファ制御部161がイーサネット・フレームのタイプと接続されている無線LANアダプタ59の動作モードに応じてバッファリングの処理をする。ブロック217の手順を図7のフローチャートを参照して説明する。ブロック217−1でバッファ制御部161は、宛先のMACアドレスに基づいて、受け取ったイーサネット・フレームがブロードキャスト・フレームか否かを調べる。
【0091】
ブロードキャスト・フレームの場合は、ブロック217−3でバッファ制御部161は動作モード・テーブル157のPSモード・フィールドを参照して、現在接続されている無線LANアダプタ59の中にPSモードで動作している無線LANアダプタ59が接続されているか否かを調べる。PSモードで動作している無線LANアダプタ59が存在しない場合は、ブロック217−9に移行する。拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59が接続されていてもブロック217−9に移行する。
【0092】
ブロック217−3でPSモードの無線LANアダプタ59が接続されている場合は、ブロック217−7でバッファ制御部161は当該ブロードキャスト・フレームをバッファ165に記憶し、データ制御部163にバッファ165にフレームを記憶したことを通知する。データ制御部163は、DTIMフレームのタイミングで、バッファ165に記憶されたフレームを送信する必要があることを認識する。ブロック217−9では、バッファ制御部161は、動作モード・テーブル157の拡張PSモード・フィールドを参照して、現在接続されている無線LANアダプタ59の中に、拡張PSモードで動作している無線LANアダプタ59が接続されているか否かを調べる。
【0093】
拡張PSモードで動作している無線LANアダプタ59が接続されていない場合は、ブロック217−5に移行して、バッファ制御部161はただちに無線LAN通信部155からブロードキャスト・フレームを送信するようにデータ制御部163に送る。拡張PSモードで動作している無線LANアダプタ59が接続されている場合はブロック217−11に移行する。
【0094】
ブロック217−11でバッファ制御部161は、受け取ったブロードキャスト・フレームの宛先IPアドレスからマジック・パケット・フレームであるか否かを調べる。マジック・パケット・フレームである場合は、ブロック217−13でバッファ制御部161は当該フレームを拡張バッファ167に記憶し、データ制御部163に拡張バッファ167にデータを記憶したことを通知する。通知を受け取ったデータ制御部163は、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59がアウエイク状態に遷移しているタイミングで拡張バッファ167に記憶されたマジック・パケット・フレームを送信する必要があることを認識する。
【0095】
ブロック217−11でデータ制御部163は、マジック・パケット・フレームではないと判断したときは、ブロック217−15で当該フレームを破棄する。したがって、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)は、マジック・パケット・フレーム以外のブロードキャスト・フレームを受け取ることはない。ブロック217−1でバッファ制御部161が、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったイーサネット・フレームがブロードキャスト・フレームでないと判断したときは、ブロック217−17でマルチキャスト・フレームであるか否かを調べる。
【0096】
マルチキャスト・フレームの場合は、ブロック217−3に移行する。マルチキャスト・フレームはマジック・パケット・フレームではないため、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59(23a)〜59(23c)が接続されていても、マルチキャスト・フレームが拡張バッファ167に記憶されることはない。ブロック217−17でマルチキャスト・フレームでないと判断した場合、すなわち、ユニキャスト・フレームであると判断した場合は、ブロック217−19でバッファ制御部161は、動作モード・テーブル157の拡張PSモード・フィールドとMACアドレス・フィールドを参照して、宛先が拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59か否かを調べる。宛先が拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59でない場合、すなわち、アクティブ・モードで動作する無線LANアダプタ59またはPSモードで動作する無線LANアダプタ59の場合は、ブロック217−3に移行し、拡張PSモードで動作するSTAの場合は、ブロック217−15で当該フレームを破棄する。
【0097】
これまでの手順によれば、バッファ制御部161は、PSモードで動作する無線LANアダプタ59(31b)だけが接続されている場合は、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったブロードキャスト・フレームとマルチキャスト・フレームをバッファ165に記憶する。バッファ制御部161は、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)だけが接続されている場合は、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったイーサネット・フレームの中でマジック・パケット・フレームだけをバッファ167に記憶する。
【0098】
PSモードで動作する無線LANアダプタ59(31b)と拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)が接続されている場合は、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったブロードキャスト・フレームとマルチキャスト・フレームをバッファ165に記憶し、さらにマジック・パケット・フレームだけをバッファ167に記憶する。バッファ制御部161は、拡張PSモードに移行している無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)についてはマジック・パケット・フレームだけをバッファ167に記憶してその他を破棄することになる。
【0099】
その理由は、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)は、WOL待機状態でS3ステートまたはS4ステートに移行していることが前提なので、マジック・パケット・フレーム以外の802.11MACフレームを受信できないためAP20は送信する必要がないからである。また、マジック・パケット・フレーム以外のイーサネット・フレームを破棄することでアウエイク・インターバルが長くなってもバッファ167のオーバーフローを避けることができる。
【0100】
図6に戻って、ブロック219では、いずれかの無線LANアダプタ59がAP20にアソシエーションを解除するためのアソシエーション解除フレームを送って切断する。データ制御部163は切断された無線LANアダプタ59の登録データを動作モード・テーブル157から削除する。よって、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59は、STAから解除要求があるまでAP20への接続が維持され、拡張PSモードに移行するたびにアソシエーションをする必要がなくなる。
【0101】
[フレームの送信手順]
図6、図7の手順によって、バッファ165および拡張バッファ167にはそれぞれイーサネット・フレームが記憶されている。つぎに、AP20が拡張バッファ167に記憶されたフレームを送信しそれを受信したSTAがWOL起動をする手順を図8のフローチャートを参照して説明する。ブロック401は、802.11標準にしたがって、バッファ165に記憶されたフレームが、AP20から無線LANアダプタ59に送信される。
【0102】
データ制御部163が、バッファ165に記憶されたブロードキャスト・フレームとマルチキャスト・フレームを、図5に示すDTIMフレーム2、5、(n−3)、nを送信した直後に送信する。送信されたブロードキャスト・フレームとマルチキャスト・フレームは、送信時にアウエイク状態の無線LANアダプタ59だけが受信することができる。
【0103】
ブロードキャスト・フレームがマジック・パケット・フレームの場合は、それを受信した無線LANアダプタ59は、自らを宛先とするマジック・パケットであると判断すればWOL起動をすることができる。バッファ165に記憶されたユニキャスト・フレームは、PSモードで動作する無線LANアダプタ59(31b)がリッスン・インターバルで受信したビーコン・フレームのTIMにあるPVBフィールド323を参照して、自らを宛先とするフレームがバッファ165に記憶されているか否かを認識する。無線LANアダプタ59(31b)は、自らを宛先とするフレームがバッファ165に記憶されていると認識したときはPs-Poll(Power-Save Poll)という制御フレームをAP20に送信して、AP20からユニキャスト・フレームを受信する。
【0104】
これ以降の手順では、拡張バッファ167に記憶されたマジック・パケット・フレームを無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)が受信する。拡張バッファ167には、マジック・パケット・フレームだけが記憶されている。マジック・パケット・フレームの送信は、バッファ165からのブロードキャスト・フレームの送信とは独立して行われる。
【0105】
データ制御部163は動作モード・テーブル157のカウント値が0になるビーコン・フレームで、当該無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移していることを認識することができる。ブロック403では、データ制御部163は動作モード・テーブル157の拡張PSモード・フィールドとカウント値フィールドを参照して、つぎの、ビーコン・フレームのタイミングでカウント値が0になる拡張PSモードの無線LANアダプタ59が存在するか否かを、ビーコン・フレームを送信するたびに判断している。
【0106】
ここでは、データ制御部163は無線LANアダプタ59(21a)と無線LANアダプタ59(21c)がビーコン・フレーム(n−2)でカウント値が0になると判断する。ブロック405でデータ制御部163は拡張バッファ167からマジック・パケット・フレームを読み出して、ビーコン・フレーム(n−2)を送信した直後に無線LAN通信部155から送信する。このときAP20はマジック・パケット・フレームを、ブロードキャスト・フレームとして送信する。
【0107】
ビーコン・フレーム(n−2)では、アウエイク状態に遷移している無線LANアダプタ59(21a)と無線LANアダプタ59(21c)がマジック・パケット・フレームを受信する。無線LANアダプタ59(21a)、59(21c)は、ビーコン・フレーム(n−2)において、ビット・マップ制御フィールド321に1が設定されているときは、ブロードキャスト・フレームを受信するために十分な時間アウエイク状態を維持する。無線LANアダプタ59(21a)と無線LANアダプタ59(21c)は、それぞれ、マジック・パケット・フレームの宛先を確認して、自らを宛先とするマジック・パケットを受け取ったSTA21aまたはSTA21cがブロック407でWOL起動をする。無線LANアダプタ59(21a)、59(21c)は、宛先が異なるマジック・パケット・フレームは破棄する。
【0108】
ブロック409では、データ制御部163は動作モード・テーブル157を参照して、拡張バッファ167にバックボーン・ネットワーク11から受け取ったマジック・パケット・フレームを記憶する前に動作モード・テーブル157に拡張PSモードの登録がされたすべての無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)に対して、それらがアウエイク状態のときにマジック・パケット・フレームを送信したか否かを判断する。データ制御部163は、ビーコン・フレーム(n−2)のタイミングでは無線LANアダプタ59(21b)のカウント値が0でないと判断して、ブロック403に戻り、ビーコン・フレーム(n−1)のタイミングで無線LANアダプタ59(21b)のカウント値が0になると判断する。
【0109】
そして、データ制御部163はブロック405で、ふたたび拡張バッファ167からマジック・パケット・フレームを読み出して、無線LAN通信部155から送信する。マジック・パケット・フレームを受信した無線LANアダプタ59(21b)は、自らを宛先とするマジック・パケット・フレームを受信したと判断する場合はブロック407でWOL起動をする。ブロック409でデータ制御部163は、マジック・パケット・フレームを受け取るよりも前に拡張PSモードを登録したすべての無線LANアダプタ59に、アウエイク状態のときにマジック・パケット・フレームを送信したと判断すると、ブロック411でビーコン・インターバル(n−1)を送信した直後に拡張バッファ167をクリアする。
【0110】
ブロック405では、マジック・パケット・フレームをAP20がブロードキャスト・フレームとして送信する例を説明したが、AP20は拡張バッファ167に記憶されたマジック・パケット・フレームをユニキャスト・フレームとして送信することもできる。この場合は、AP20がビーコン・フレームのベンダー・スペシフィック・フィールドを使用して、拡張バッファ117にマジック・パケット・フレームが記憶されていることを各無線LANアダプタ59に通知する。そして、アウエイク状態に遷移した拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59が、PS-Pollという制御フレームをAP20に送信して受信することができる。
【0111】
無線LANアダプタ59は、拡張PS処理部107に拡張PSモードがディスエーブルに設定されているときは、WOL待機状態ではPSモードで動作してマジック・パケット・フレームを受信することもできる。また無線LANアダプタ59は、拡張PSモードがイネーブルに設定されていても、WOL待機状態のとき以外は拡張PSモードに移行しないでアクティブ・モードまたはPSモードで動作する。
【0112】
よって、拡張PSモードで動作することができる無線LANアダプタ59は、IEEE802.11標準で動作する他の無線LANアダプタの動作に影響を与えることなく、WOL待機状態でアウエイク状態に遷移するまでのインターバルを長くして消費電力を低減することができる。また自らはWOL待機状態で動作するとき以外はIEEE802.11標準に規定された動作をすることができる。本発明は特に、バッテリィでWOL待機状態に移行しているSTAに有効である。
【0113】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0114】
10…無線LANシステム
153…制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末装置に搭載される無線LANアダプタの消費電力を低減する技術に関し、さらに詳細には無線端末装置がマジック・パケットを受信するまでのウエイク・オン・ラン(WOL)待機状態での無線LANアダプタの消費電力を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型パーソナル・コンピュータ(ノートPC)やタブレッド型コンピュータなどの無線端末装置(以下、STA:Stationという。)はモバイル環境においてバッテリィを電力源として動作するためさまざまな省電力の手法を取り入れている。近年のSTAには、電源オフ状態または省電力状態のときにネットワークを通じて遠方からマジック・パケットを受け取って起動するWOL(Wake On LAN)という機能が搭載されている。本明細書ではマジック・パケットを待ちながら省電力状態に遷移しているSTAの動作状態をWOL待機状態といい、STAがマジック・パケットを受け取って起動することをWOL起動ということにする。
【0003】
STAがWOL起動をするためには、無線基地局(以下、アクセス・ポイント(AP)という。)からマジック・パケットを受け取る際に無線LANカードに電源を供給しておく必要がある。IEEE802.11関連標準(以下、802.11標準という。)では、無線LANアダプタのバッテリィの消耗を抑制するためにパワー・マネジメント機能を規定している。パワー・マネジメントに関する無線LANアダプタの動作モードには、アクティブ・モードとパワー・セーブ・モード(PSモード)がある。また、無線LANアダプタの動作状態には、無線LANカードに完全に電力が供給されて送受信が可能なアウエイク状態と、必要最小限の電力で動作し送受信が不可能なドーズ状態またはスリープ状態がある。
【0004】
アクティブ・モードの無線LANアダプタは常にアウエイク状態である。PSモードの無線LANアダプタは、APが許容できるリッスン・インターバルに従ってドーズ状態からアウエイク状態に周期的に遷移し、アウエイク状態のときにだけ送受信をすることができる。無線LANアダプタはSTAがWOL待機状態のときのようにフレームの送受信をしない場合にはPSモードで動作する。WOL待機状態のSTAはCPUが停止してIPアドレスを認識することができないため、WOLに使用するマジック・パケットの送信にはブロードキャスト・フレームが使用される。以後、マジック・パケットを送信するブロードキャスト・フレームをマジック・パケット・フレームという。
【0005】
802.11標準では、APがブロードキャスト・フレームを受け取ったときに、基本サービス・ユニット(BSS:Basic Service Kit)に帰属するいずれかの無線LANアダプタがPSモードで動作している場合は、当該ブロードキャスト・フレームをただちに送信しないで一旦バッファに記憶する。APはバッファに記憶したブロードキャスト・フレームをDTIM(Delivery Traffic Indication Message)と呼ばれる情報要素を含むビーコン・フレームを送信した直後に接続されているすべての無線LANアダプタに送信する。以後、DTIMを含むビーコン・フレームをDTIMフレームといい、DTIMフレームの送信インターバルをDTIMインターバルという。
【0006】
APは、DTIMインターバルを、ビーコン・フレームを送信するインターバルであるビーコン・インターバルより長くなるように設定する。WOLをサポートするSTAは、WOL待機状態に移行している間にPSモードで動作する無線LANアダプタが毎回DTIMフレームを聴取できるようにリッスン・インターバルを設定する。そしてWOL待機状態のSTAは本体のプロセッサおよび主要なデバイスの電源を停止するが、無線LANアダプタはリッスン・インターバルでアウエイク状態に遷移するたびに電力を消費する。
【0007】
特許文献1は、ハンドシェイクしないでAPからマジック・パケットを受け取って起動するコンピュータを開示する。同文献には、コンピュータがDTIMのタイミングでアウエイクし、APにバッファリングされていたデータをブロードキャスト・フレームで受信することが記載されている。特許文献2は、DTIMビーコンのビーコン間欠数を大きく設定する際のマルチキャスト・データに対する遅延揺らぎを防止する技術を開示する。
【0008】
同文献の発明では、APが送信するDTIMビーコンにブロードキャスト送信予定のDTIMビーコン間欠周期情報を含ませる。ブロードキャスト送信予定のDTIMビーコン送信後にのみブロードキャストを送信し、かつ、マルチキャストの送信は行わない。また、PSモードで動作し、かつ、マルチキャスト・データ通信を行っていないSTAは、DTIMビーコン間欠周期情報に従ってブロードキャストデータに関わる受信制御を行うことで、DTIMビーコン周期のたびにアウエイクしないでもブロードキャストデータの受信をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−18377号公報
【特許文献2】特開2009−5118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
PSモードの無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移したときには無線LANカードの消費電力が増大し、さらに、再度PSモードに遷移することをAPに通知するフレームを送信するための電力も必要となって、実際のデータ転送をしない場合でも電力を消費する。ユーザは自宅や出張先からWOL待機状態のSTAにマジック・パケットを送って必要なデータを取得したい場合がある。オフィスではSTAの盗難防止のため、外出するユーザは施錠できるキャビネットやロッカーにSTAを収納することが通常であり、WOL待機状態のSTAはバッテリィで動作することがある。
【0011】
バッテリィで動作するSTAにとってWOL待機状態における無線LAMアダプタの消費電力は、待機時間を持続させるために特に重要である。802.11標準ではAPがサポートするDTIMインターバルの最大値については規定していない。したがって、APがDTIMインターバルを長く設定し、それに伴って無線LANアダプタがリッスン・インターバルを長く設定することで、WOL待機状態での無線LANアダプタの消費電力を低減することが考えられる。
【0012】
しかし、APは接続されているすべてのSTAの動作状態を管理しており、いずれか1つのSTAがPSモードに入っていることを知ると、ブロードキャスト・フレームをバッファリングすることになっているため、他のSTAが受け取るブロードキャスト・フレームの受信タイミングが遅延する。APは、あるDTIMインターバルでそれまでにバッファリングされたすべてのブロードキャスト・フレームを送信できない場合は、つぎのDTIMインターバルで送信する。ブロードキャスト・フレームで送信される音楽や映像などのリアル・ストリーミング再生では、各DTIMインターバルでデータ・フレームを受け取れない場合には再生動作が中断する場合がある。
【0013】
また、802.11標準では、APはバッファリングしたフレームを無線LANアダプタに送るまで破棄することができないことになっているため、長いDTIMインターバルを設定する場合には、バッファに多量のデータ・フレームが蓄積される。したがってDTIMインターバルを長く設定すると、バッファがオーバーフローしてIP電話や前述のリアル・ストリーミング再生に影響がでてくる。APはこのような事態を防止するためにDTIMインターバルの最大値を制限することができるので、無線LANアダプタは無条件に長いリッスン・インターバルを設定しようとしてもAPは許可しない場合がある。
【0014】
無線LANアダプタは、リッスン・インターバルをDTIMインターバルより長く設定することもできるが、この場合でも当該無線LANアダプタにフレームを送るまでの間のバッファのオーバーフローを避けるため、APは無条件に長いリッスン・インターバルを許可しない場合がある。あるいは、APは、DTIMインターバルのタイミングでブロードキャスト・フレームを送信したあとに、バッファをクリアするかもしれない。
【0015】
あらたに製造するAPにおいてはバッファのサイズを拡大して長いDTIMインターバルをサポートすることもできるが、データ量の少ないマジック・パケットをバッファリングするために過大なサイズのバッファを用意することは得策ではない。リッスン・インターバルが長くなるほど、用意するバッファのサイズは膨大なものになる。そこで、802.11標準で動作する無線LANアダプタが共存する無線LANシステムにおいて、WOL待機状態での無線LANアダプタの消費電力を一層低減するには新たなしくみが必要となる。
【0016】
そこで本発明の目的は、WOL待機状態で動作する無線端末装置の消費電力を低減する方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、WOL待機状態に移行している無線端末装置の消費電力をIEEE802.11標準の規定に基づいて動作する他の無線端末装置に影響を与えないようにしながら低減する方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、そのような方法を実現する無線端末装置、無線LANアダプタ、無線基地局およびコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、IEEE802.11標準で動作する無線LANシステムにおいて、WOL待機状態における無線LANアダプタの消費電力の一層の低減を実現する方法を提供する。IEEE802.11標準ではパワー・セーブ・モードを定義している。パワー・セーブ・モードでは、無線基地局がDTIMフレームの送信タイミングでブロードキャスト・フレームを送信する。
【0018】
これに対して本発明にかかる無線LANシステムでは、無線LANアダプタにIEEE802.11標準で規定するDTIMインターバルよりも長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードを定義して、WOL待機状態での無線LANアダプタの消費電力を低減する。無線LANアダプタは、無線端末装置がWOL待機状態に移行する際に、無線基地局に拡張パワー・セーブ・モードに移行する通知をすることができる。無線基地局は移行の通知に基づいて、拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移するタイミングを計測する。
【0019】
無線基地局がバックボーン・ネットワークからマジック・パケット・フレームを受け取り、かつ、無線基地局に拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタが接続されていると判断したときに無線基地局はマジック・パケット・フレームを第1のバッファに記憶する。無線基地局は、無線端末装置がアウエイク状態に遷移しているタイミングで第1のバッファに記憶されたマジック・パケット・フレームを送信する。このような構成によれば、無線LANアダプタは無線端末装置がWOL待機状態に移行している間に、IEEE802.11標準に規定するDTIMインターバルよりも長いウエイクアップ・インターバルで動作してマジック・パケット・フレームを受信できるようになる。
【0020】
ウエイクアップ・インターバルは、無線基地局が送信するビーコン・フレームの整数倍にすることができる。したがって、拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタは、いずれかのビーコン・フレームのタイミングでアウエイク状態に遷移することができ、また、無線基地局は同じビーコン・フレームのタイミングを計算してマジック・パケット・フレームを送信することができるようになる。
【0021】
無線基地局はバックボーン・ネットワークからブロードキャスト・フレームまたはマルチキャスト・フレームを受け取ったときに、接続されている複数の無線LANアダプタのいずれかがIEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作すると判断したときに、ブロードキャスト・フレームまたはマルチキャスト・フレームを第1のバッファに記憶しないで第2のバッファに記憶することができる。よって、同一の無線基地局にIEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作する無線端末装置が接続されていても、当該パワー・セーブ・モードにおけるブロードキャスト・フレームおよびマルチキャスト・フレームの転送には影響を与えない。
【0022】
第1のバッファと第2のバッファを区別することで、それぞれを独自のタイミングでクリアすることができるようになり、ブロードキャスト・フレームの送信とマジック・パケット・フレームの送信を停止するタイミングを相互に独立して決めることができるようになる。なお、第1のバッファと第2のバッファは、物理的に同一のメモリの記憶領域を区分することで構成することもできる。
【0023】
無線基地局は、IEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移しているタイミングで第2のバッファに記憶されたブロードキャスト・フレームおよびマルチキャスト・フレームを送信する。したがって、IEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタに対しては、DTIMフレームの送信直後に送信するブロードキャスト・フレームとしてマジック・パケット・フレームを送信することができる。
【0024】
無線基地局は、バックボーン・ネットワークからユニキャスト・フレームを受け取ることができる。そして、無線基地局は、ユニキャスト・フレームの宛先が拡張パワー・セーブ・モードで動作している無線LANアダプタであると判断したときに、ユニキャスト・フレームを破棄することができる。このような構成によれば、第1のバッファには、マジック・パケット・フレーム以外は記憶されないので、ウエイクアップ・インターバルが長くなってもオーバーフローをする恐れがなくなる。
【0025】
また、無線端末装置はWOL待機状態の間は、マジック・パケット・フレーム以外のフレームを受け取っても処理することができないので無線基地局がこのような処理を行っても支障はない。無線基地局は無線LANアダプタが拡張パワー・セーブ・モードで動作している間、無線LANアダプタの接続を維持する。したがって無線LANアダプタは、ウエイクアップ・インターバルが長くなっても、アウエイク状態に遷移するタイミングで再度アソシエーションをしないでも、マジック・パケット・フレームを受信することができる。
【0026】
拡張パワー・セーブ・モードで動作する複数の無線端末装置は、それぞれアウエイク状態に遷移するタイミングが異なる。無線基地局は、拡張パワー・セーブ・モードで動作する複数の無線LANアダプタのいずれかがアウエイク状態に遷移しているタイミングごとにブロードキャスト・フレームでマジック・パケット・フレームを送信することができる。無線基地局は、拡張パワー・セーブ・モードで動作しているすべての無線LANアダプタにマジック・パケット・フレームを送信したあとに、第1のバッファをクリアしてマジック・パケット・フレームの送信を中止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、WOL待機状態で動作する無線端末装置の消費電力を低減する方法を提供することができた。さらに本発明により、WOL待機状態に移行している無線端末装置の消費電力をIEEE802.11標準の規定に基づいて動作する他の無線端末装置に影響を与えないようにしながら低減する方法を提供することができた。さらに本発明により、そのような方法を実現する無線端末装置、無線LANアダプタ、無線基地局およびコンピュータ・プログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】802.11標準に規定するインフラストラクチャ・モードの無線LANシステムのネットワーク構成を示す図である。
【図2】STAの構成を示す概略の機能ブロック図である。
【図3】STAに搭載される無線LANアダプタの構成を示す概略の機能ブロック図である。
【図4】APの構成を示す概略の機能ブロック図である。
【図5】無線LANシステムの動作を示すタイムチャートである。
【図6】拡張PSモードをサポートするAPの動作を説明するフローチャートである。
【図7】拡張PSモードをサポートするAPの動作を説明するフローチャートである。
【図8】バッファに記憶されたイーサネット・フレームを送信する手順を説明するフローチャートである。
【図9】動作モード・テーブルのデータ構造を示す図である。
【図10】802.11MACフレームのデータ構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[無線LANシステムの構成]
図1は、802.11標準に規定するインフラストラクチャ・モードの無線LANシステム10のネットワーク構成を示す図である。図1ではバックボーン・ネットワーク11に、代表的にリモート・コンピュータ13およびAP20が接続された状態が示されている。バックボーン・ネットワーク11は無線および有線のインターネットおよびイントラネットなどのネットワークを含んで構成することができ、AP20は、イーサネット(登録商標)でバックボーン・ネットワーク11に接続されている。バックボーン・ネットワーク11には、図1には示していないWebサーバ、メール・サーバ、DNSサーバ、およびデータベース・サーバなどのさまざまなサーバや、IPパケットのルーティング機器が接続される。
【0030】
無線LANシステム10は、AP20、STA21a、21b、21c、31a、31bおよびバックボーン・ネットワーク11の一部で構成されている。各STAは、AP20の電波が到達できる範囲に存在しており、AP20と各STAはBSSを構成する。リモート・コンピュータ13は、バックボーン・ネットワーク11を通じて無線LANシステムにマジック・パケットを送信し、WOL待機状態で動作する特定のSTAをWOL起動することができる。
【0031】
リモート・コンピュータ13は典型的にはSTA21a、21b、21c、31a、31bのいずれかのユーザが出張先や自宅で自らのSTAをWOL起動するために使用するノートPCであったり、無線LANシステム10を管理する管理者がすべてのSTAを一斉にWOL起動してソフトウエアの更新やインストールなどをするための管理用コンピュータであったりする。
【0032】
[STAの構成]
図2は、STA21aの構成を示す概略の機能ブロック図である。STA21aは、CPU51、メモリー・コントロール・ハブ(MCH)55、メイン・メモリ53、ビデオ・カード57、アイオー・コントロール・ハブ(ICH)61、無線LANアダプタ59、ハードディスク・ドライブ(HDD)63、エンベデッド・コントローラ(EC)65およびフラッシュROM67を含んでいる。
【0033】
STA21aは、ACPIの規格に適合しており、S0ステート(電源オン状態)、S3ステート(サスペンド状態)およびS4ステート(ハイバネーション状態)、およびS5ステート(ソフト・オフ状態)のいずれかのパワー・ステートに移行することができる。S3ステートとS4ステートをスリーピング状態という。スリーピング状態とソフト・オフ状態のときはCPU51が動作しないため、STA21aは、OSI参照モデルのレイヤ3(ネットワーク層)以上の機能が停止してAP20から受け取った802.11MACフレームのIPアドレスを解釈することはできない。
【0034】
ICH61は、USB(Universal Serial Bus)、SATA(Serial AT Attachment)、SPI (Serial Peripheral Interface)バス、 PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、PCI−Express(PCIe)バス、およびLPC(Low Pin Count)バスなどのインターフェースを備え、それらに対応したデバイスを接続することができる。ICH61は、また、STA21aの現在のパワー・ステートとパワー・ステートを変更したときの変更後のパワー・ステートを記憶するステート・レジスタと、WOLを設定するWOLレジスタを保有している。
【0035】
ステート・レジスタは、BIOSが設定する。ICH61はBIOSにより、S0ステートからS3ステートまたはS4ステートに遷移するようにステート・レジスタが設定された際に、無線LANアダプタ59に通知する。通知を受け取った無線LANアダプタ59は、電力管理フィールド311(図10)を設定してAP20に通知した後にIEEE802.11標準に規定するPSモードに移行することができる。ただし、後に説明するように、無線LANアダプタ59は拡張PSモード・フィールド327(図10)を設定して本実施の形態で新たに定義する拡張PSモードに移行することもできる。
【0036】
BIOSまたはOSがICH61のWOLレジスタをイネーブルに設定すると、ステート・レジスタに変更後のパワー・ステートがS3ステートまたはS4ステートに設定されたSTA21aはWOL待機状態に移行する。WOLレジスタがイネーブルに設定され、STA21aがS3ステートまたはS4ステートに移行している状態はWOL待機状態に相当する。WOL待機状態において無線LANアダプタ59が自分宛のマジック・パケットを受け取ったときにはICH61に通知する。通知を受け取ったICH61は、EC65を通じてSTA21aをパワー・オン状態に移行させてWOL起動をする。ただし、STA21aは、S5ステートのときにもWOL起動をするように構成することもできる。
【0037】
STA21a本体のパワー・ステートと無線LANアダプタ59の動作モードは、直接的に関連させる必要はない。無線LANアダプタ59は電源が投入されているときに、所定の時間802.11MACフレームの送受信がない場合は自らPSモードに移行することができる。したがって、STA21aがS0ステートのときも無線LANアダプタ59はPSモードに移行することがある。無線LANアダプタ59はSTA21aがスリーピング状態またはソフト・オフ状態のときには、WOLレジスタがイネーブルに設定されていればPSモードに移行し、ディスエーブルに設定されていればパワー・オフ状態に移行する。
【0038】
フラッシュROM67は、ACPI規格に適合するBIOSを格納している。EC65はCPU、ROMおよびRAMを含み、CPU51とは独立して動作してSTA21aの電源および温度を制御する。電源装置69は、DC/DCコンバータ、ハードウエア・ロジック回路、充電器および電源切換回路などを含み、STA21aを構成する電子デバイスに電力を供給する。電源切換回路は、AC/DCアダプタ71が接続されていることを検知したときはAC/DCアダプタ71からDC/DCコンバータおよび充電器に電力を供給し、または、AC/DCアダプタ71の接続を検出しないときはバッテリィ73からDC/DCコンバータに電力を供給する。
【0039】
DC/DCコンバータは、パワー・ステートに応じて電力を供給する電子デバイスを選択できるように系統が分割されている。EC65は、STA21aのパワー・ステートに応じて対応する電子デバイスに電力が供給されるように電源装置69を制御する。WOL待機状態では、少なくとも無線LANアダプタ59、ICH61のWOLに関連する回路、EC65および電源装置69のDC/DCコンバータを制御するハードウエア・ロジック回路に電力が供給されている。WOL待機状態のときに自分宛のマジック・パケット・フレームを受け取ると、無線LANアダプタ59はそれをEC65に通知する。EC65は電源装置69を制御してSTA21aをS0ステートに遷移させる。なお、図1に示した他のSTAも同じ構成になっている。
【0040】
[フレーム構造]
図10にIEEE802.11標準で定義されている802.11MACフレームのデータ構造を示す。802.11MACフレーム300は、AP20と各STAとの間で転送されるデータの構造を定義している。802.11MACフレーム300は、フレーム・ボディ305とMACヘッダで構成されている。MACヘッダは、フレーム制御フィールド301と宛先アドレス・フィールド303を含んでいる。48ビットの宛先フィールド303がすべて1のときは、当該802.11MACフレームはブロードキャスト・フレームであることを示す。
【0041】
フレーム制御フィールド301は、タイプ・フィールド307、サブタイプ・フィールド309、および電力管理フィールド311を含んでいる。タイプ・フィールド307は、802.11MACフレームがマネジメント・フレーム、制御フレーム、またはデータ・フレームのいずれのタイプであるかを示す。サブタイプ・フィールド309は、802.11MACフレームがマネジメント・フレームの場合は、アソシエーション要求フレーム、ビーコン・フレーム、認証要求フレームなどのいずれのタイプの802.11MACフレームであるかを示す。1ビットの電力管理フィールド311は、無線LANアダプタ59が送信する802.11MACフレームにおいて1に設定されると無線LANアダプタがその後PSモードで動作することを示し、0に設定されるとアクティブ・モードで動作することを示す。
【0042】
マネジメント・フレームのフレーム・ボディ305は、ビーコン・インターバル・フィールド313、リッスン・インターバル・フィールド315、TIM(traffic indication map)フィールド、およびベンダー・スペシフィック・フィールド325を含んでいる。ビーコン・インターバル・フィールド313は、ターゲット・ビーコンの送信時間間隔を示す。リッスン・インターバル・フィールド315は、SME(Station Management Entity)とMLME(MAC Layer Management Entity)との間で、PSモードで動作する無線LANアダプタ59が802.11MACフレームにおいてリッスン・インターバルを設定する。
【0043】
リッスン・インターバルは、PSモードで動作する無線LANアダプタ59がドーズ状態に遷移してからアウエイク状態に遷移するまでの、ビーコン・インターバルの数を示す。無線LANアダプタ59は、PSモードでAPが許容する範囲のリッスン・インターバルで動作することができる。TIMフィールドは、DTIMカウント・フィールド317、DTIM周期フィールド319、ビット・マップ制御フィールド321、およびPVBフィールド323を含んでおり、APが送信するビーコン・フレームにおいてパワー・マネジメントに関する情報が設定される。
【0044】
DTIMカウント・フィールド317は、次のDTIMフレームの前に送信されるビーコン・フレームの数を示しており、0のときに現在のビーコン・フレームがDTIMフレームであることを示す。また、DTIM周期フィールド319には、DTIMフレームが送信される周期的なインターバルをビーコン・フレームの数で表した値が設定される。DTIMフレームが送信される間隔をビーコン・インターバルの数で表した値がDTIMインターバルに相当し、ビーコン・インターバルの整数倍になる。
【0045】
ビーコン・フレームを受信した無線LANアダプタ59は、DTIMカウント・フィールド317を解析することで次回のビーコン・フレーム以降にDTIMフレームが送信されるタイミングを取得することができる。APは、バッファに1つ以上のマルチキャスト・フレームまたはブロードキャスト・フレームが記憶されたときには、ビット・マップ制御フィールド321を、DTIMカウント・フィールドが0のビーコン・フレームすなわちDTIMフレームにおいて1に設定する。
【0046】
APは、DTIMフレームを送信した直後にバッファに記憶されているマルチキャスト・フレームまたはブロードキャスト・フレームを送信する。PSモードで動作している無線LANアダプタ59は、DTIMフレームにおいて、ビット・マップ制御フィールド321に1が設定されているときは、マルチキャスト・フレームまたはブロードキャスト・フレームを受信するために十分な時間アウエイク状態を維持する。PVBフィールド323は、STAごとにバッファに記憶されているフレームが存在しかつ送信の準備ができているか否かを示す。
【0047】
ベンダー・スペシフィック・フィールド325には、IEEE802.11標準に定義されていない情報を設定することができる。ベンダー・スペシフィック・フィールド325は、本実施の携帯で定義する拡張PSモード・フィールド327およびアウエイク・インターバル・フィールド329を含む。無線LANアダプタ59が802.11MACフレームにおいて、拡張PSモード・フィールド327に拡張PSモードに入ることを示す情報を設定し、アウエイク・インターバル・フィールド329に、拡張PSモードのアウエイク・インターバルを設定する。アウエイク・インターバルは、APとの間のネゴシエーションで最終的に決定される。
【0048】
[無線LANアダプタ]
図3は、STA21aに搭載される無線LANアダプタ59の構成を示す概略の機能ブロック図である。無線LANアダプタ59は、OSI参照モデルのレイヤ1(物理レイヤ)の処理をする物理レイヤ部111とレイヤ2の処理をするデータ・リンク・レイヤ部を含む。PCIeインターフェース101は、ICH61のPCIeポートに合計4本の信号線で構成されたレーンおよびその他の信号線で接続され、CPU51とデータ・リンク・レイヤ部105の間でのIPパケットの転送を制御する。無線LANアダプタ59はPCIeインターフェース101に代えてUSBなどの他のインターフェースで構成することもできる。メモリ103は、IPパケットを格納する送受信用のバッファを含んでいる。
【0049】
データ・リンク・レイヤ部105は、OSI参照モデルのレイヤ3から受け取ったIPパケットにMACヘッダを付加して生成した802.11MACフレームを物理レイヤ部107に送り、物理レイヤ部107から受け取った802.11MACフレームからMACヘッダを除去して生成したIPパケットをレイヤ3に送る。データ・リンク・レイヤ部105は、CSMA/CAによる無線チャネル・アクセス機能と、AP20と無線LANアダプタ59との間の接続に関するマネジメント機能を含む。
【0050】
データ・リンク・レイヤ部105は、ビーコン・フレームの送信タイミングを制御したり、無線LANアダプタ59のパワー・マネジメントを実行したり、あるいはAP20との間でのアソシエーションを実行したりする。データ・リンク・レイヤ部105は、電源回路113の動作を制御する。電源回路113は、電源装置69から受け取った電力を無線LANアダプタ59の内部デバイスに供給する。
【0051】
データ・リンク・レイヤ部105はSTA21aがS0ステートのときに、一定の時間、送信または受信の802.11MACフレームが存在しないと判断したときに、APに電力管理フィールド311を設定したフレームを送信して通知した後に、802.11標準で規定するPSモードに移行し、さらに電源回路113に無線LANアダプタ59をPSモードで動作させるように指示する。PSモードでは、電源回路113は無線LANアダプタ59をAP20との間で取り決めしたリッスン・インターバルで周期的にドーズ状態からアウエイク状態に遷移させる。
【0052】
データ・リンク・レイヤ部105は、WOLをサポートする。データ・リンク・レイヤ部105は、STA21aがWOL待機状態で動作するときに無線LANアダプタ59が拡張PSモードで動作するための処理をする拡張PS処理部107を含む。拡張PSモードは、無線LANアダプタ59が802.11標準で規定するPSモードよりも長いインターバルで、周期的にドーズ状態からアウエイク状態に遷移する動作モードである。ユーザは、あらかじめ、拡張PS処理部107に、WOL待機状態のときに無線LANアダプタ59がPSモードで動作するか拡張PSモードで動作するかの設定をすることができる。
【0053】
拡張PSモードがイネーブルに設定された拡張PS処理部107は、ICH61からSTA21aがWOL待機状態に入る通知を受け取ると、拡張PSモード・フィールド327とアウエイク・インターバル・フィールド329を設定した802.11MACフレームをAP20に送信して拡張PSモードに移行する。拡張PS処理部107は、AP20から802.11MACフレームを受け取って、決定されたウエイクアップ・インターバルを認識すると、電源回路113に無線LANアダプタ59をドーズ状態に遷移させるように指示する。ウエイクアップ・インターバルについては後に詳しく説明する。拡張PS処理部107は、それ以後のビーコン・フレームに基づくビーコン・インターバルの数がウエイクアップ・インターバルに到達したときに、電源回路113に無線LANアダプタ59をアウエイク状態に遷移させるように指示する。
【0054】
拡張PS処理部107は無線LANアダプタ59がAP20に接続されている間、STA21aがWOL起動をするか、通常起動をするか、あるいはサスペンド状態からレジュームするかのいずれかによってS0ステートに移行するまで、周期的なウエイクアップ・インターバルで電源回路113を制御する。拡張PSモードで動作する間、拡張PS処理部107はアウエイク状態からドーズ状態に遷移する前に、毎回、AP20に802.11MACフレームを送信してウエイクアップ・インターバルを決定することができる。
【0055】
データ・リンク・レイヤ部105は、無線LANアダプタ59の固有の識別子であるMACアドレスを格納する不揮発性のメモリ109を有する。WOL起動をさせるためのマジック・パケットは、リモート・コンピュータ13がブロードキャスト・フレームのパケットであることを示すようにすべてのビットを1に設定した宛先IPアドレスに続いて、WOL起動したいSTAのMACアドレスを16回繰り返すように構成されている。
【0056】
AP20は、マジック・パケット・フレームをBSSに帰属するすべてのSTAに送信する。データ・リンク・レイヤ部105は、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59がアウエイク状態に遷移したときにAP20からマジック・パケット・フレームを受け取ると、宛先を確認するためにフレーム・ボディ・フィールド305に不揮発性メモリ109に格納されたMACアドレスに一致するMACアドレスが存在するか否かを判断し、一致する場合にはICH61に通知し、一致しない場合には当該802.11MACフレームを破棄する。
【0057】
なお拡張PS処理部107は、プロセッサ、メモリ、およびコンピュータ・プログラムで構成することができる。無線LANアダプタ59はSTA21aがWOL待機状態以外の状態のときは、拡張PSモードで動作することはなく、アクティブ・モードまたはPSモードで動作する。物理レイア部111は、符号化された802.11MACフレームで高周波信号を変調して送信し、受信した高周波信号を復調して符号化された802.11MACフレームを生成してデータ・リンク・レイヤ部105に送る。
【0058】
[APの構成]
図4は、AP20の構成を示す概略の機能ブロック図である。イーサネット・インターフェース151は、バックボーン・ネットワーク11にイーサネット(登録商標)で接続されて双方向のIPパケットの転送を制御する。制御部153は、CPU、プログラムの実行に利用するメモリ、およびプログラムを格納するフラッシュ・メモリを含み、それらが動作モード・テーブル157、カウンタ159、バッファ制御部161、およびデータ制御部163を構成する。
【0059】
バッファ165は、PSモードで動作する無線LANアダプタ59に対して、AP20がIEEE802.11標準に規定する802.11MACフレームを転送するために使用する。拡張バッファ167は、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59に対してAP20がマジック・パケット・フレームを転送するために使用する。バッファ165と拡張バッファ167は、物理的に異なるメモリでもよいが、同じメモリを使用して領域を区分して使用することもできる。
【0060】
データ制御部163は、BSSに帰属する無線LANアダプタ59とアソシエーションして、無線LANアダプタ59の動作モードが変更されるたびに動作モード・テーブル157に無線LANアダプタ59の動作状態を登録したり更新したりし、無線LANアダプタ59から切断要求があったときには登録を削除する。図9は動作モード・テーブルのデータ構造を示す図である。図9において、MACアドレス・フィールドには、現在AP20に接続されている無線LANアダプタ59のMACアドレスが登録されている。AID(Association ID)フィールドには、AP20が無線LANアダプタ59を接続するときに付与したAIDが登録される。PSモード・フィールドには、現在PSモードで動作する無線LANアダプタ59に対しては1が設定され、アクティブ・モードで動作する無線LANアダプタ59に対しては0に設定される。
【0061】
リッスン・インターバル・フィールドには、PSモードに入る前に無線LANアダプタ59とAP20の間で取り決めしたリッスン・インターバルが登録される。拡張PSモード・フィールドには、現在拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59では1に設定され、アクティブ・モードまたはPSモードで動作する無線LANアダプタ59では0に設定される。ウエイクアップ・インターバル・フィールドには、拡張PSモードに入る前に無線LANアダプタ59とAP20の間で取り決めした拡張PSモードでのウエイクアップ・インターバルが登録される。カウント値フィールドには、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59がつぎにウエイクアップするまでのビーコン・フレームの数が記録される。
【0062】
データ制御部163は、AP20に接続されているすべてのSTAの動作モードを管理して、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったイーサネット・フレームの送信タイミングを決定し、無線LAN通信部155に送る。送信のタイミングは、バッファ165またはバッファ167のいずれにフレームが記憶されたか否か、あるいはいずれにも記憶されていないか否かで異なる。データ制御部163は、送信のタイミングを判断して無線LAN通信部155に802.11MACフレームを送る。データ制御部163はまた無線LAN通信部155を通じて受け取った802.11MACフレームを、イーサネット・インターフェース151を通じてバックボーン・ネットワーク11に送る。
【0063】
カウンタ159は、無線LAN通信部155と同期して、ビーコン・フレームの送信タイミングをカウントする。カウンタ159は、動作モード・テーブル157にあるカウント値フィールドの現在のカウント値を、ビーコン・インターバルごとに減分し、0になったあとにウエイクアップ・インターバルを再度登録する。バッファ制御部161は、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったイーサネット・フレームを、動作モード・テーブル157を参照してバッファ165または拡張バッファ167に記憶したり、直接データ制御部163を経由して無線LAN通信部155に送ったりする。
【0064】
バッファ制御部161は、バックボーン・ネットワーク11からブロードキャスト・フレーム、マルチキャスト・フレームおよびユニキャスト・フレームを受け取ったときに、動作モード・テーブル157を参照する。そして、いずれかの無線LANアダプタ59がPSモードで動作していると判断したときに、ブロードキャスト・フレームおよびマルチキャスト・フレームをバッファ165に記憶してデータ制御部163にバッファ165にフレームが記憶されていることを通知する。
【0065】
また、PSモードで動作する無線LANアダプタ59を宛先とするユニキャスト・フレームを受け取ったときには当該フレームをバッファ165に記憶し、アクティブ・モードで動作する無線LANアダプタを宛先とするユニキャスト・フレームを受け取ったときは、ただちにデータ制御部163に送る。このときバッファ制御部161は、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59が接続されているか否かはバッファ165への記憶の条件にしない。
【0066】
ブロードキャスト・フレームは、ブロード・キャスト・ドメインのすべての無線LANアダプタ59を宛先とするフレームをいい、マルチキャスト・フレームは複数の無線LANアダプタ59を宛先とするフレームをいい、ユニキャスト・フレームは、1つの無線LANアダプタ59を宛先とするフレームをいう。マジック・パケット・フレームはブロードキャスト・フレームとして、バッファ165に記憶される。データ制御部163はマジック・パケット・フレーム163をPSモードで動作する無線LANアダプタ59にDTIMフレームの送信直後に送信する。
【0067】
バッファ制御部161は、バックボーン・ネットワーク11からマジック・パケット・フレームを受け取ったときに、動作モード・テーブル157を参照する。そして、拡張PSモードで動作するSTAが接続されていると判断したときに当該マジック・パケット・フレームを拡張バッファ167に記憶する。バッファ制御部161は、マジック・パケット・フレームを受け取ったときにPSモードで動作している無線LANアダプタ59および拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59が接続されていると判断したときは、当該マジック・パケット・フレームをバッファ165とバッファ167に記憶する。
【0068】
バッファ制御部161は、拡張PSモードで動作している無線LANアダプタ59を宛先とするユニキャスト・フレームを受け取ったときにはいずれのバッファにも記憶しないで破棄する。バッファ制御部161は、ユニキャスト・フレーム、マルチキャスト・フレームおよびマジック・パケット・フレーム以外のブロードキャスト・フレームを拡張バッファ167に記憶しない。バッファ制御部161は、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったイーサネット・フレームを、いずれの無線LANアダプタ59もPSモードまたは拡張PSモードで動作していないと判断したときは、ただちにデータ制御部163に送る。
【0069】
無線LAN通信部155は、データ・リンク・レイヤと物理レイヤの処理をして無線LANアダプタ59との間で無線による802.11MACフレームの送受信を行う。データ・リンク・レイヤ部は、データ制御部163から受け取ったイーサネット・フレームからイーサネット・ヘッダを削除してMACヘッダを付加し、あるいは、無線LANアダプタ59から受信した802.11MACフレームからMACヘッダを除去してイーサネット・ヘッダを付加する。AP20は、PSモードで動作することは許されておらず、つねにアクティブ・モードで動作する。
【0070】
なお、図1〜図4は本実施の形態を説明するために、本実施の形態に関連する主要なハードウエアの構成および接続関係を簡略化して記載したに過ぎないものである。無線LANアダプタ59やAP20にはここまでの説明で言及した以外にも、多くのデバイスが使われる。しかしそれらは当業者には周知であるので、ここでは詳しく説明しない。図で記載した複数のブロックを1個の集積回路もしくは装置としたり、逆に1個のブロックを複数の集積回路もしくは装置に分割して構成したりすることも、当業者が任意に選択することができる範囲においては本発明の範囲に含まれる。
【0071】
[無線LANシステム−の動作]
つぎに、無線LANシステム10の動作を説明する。図5は、無線LANシステム10の動作の一例を示すタイムチャートである。図6、図7は、拡張PSモードをサポートするAP20の動作を説明するフローチャートである。すべての無線LANアダプタ59は802.11標準に基づいて動作するが、STA21a〜21cに搭載された無線LANアダプタ59は、WOL待機状態の間さらに本実施の形態にかかる拡張PSモードで動作することができる。
【0072】
図5でAP20は、ビーコン・インターバルTでビーコン・フレームを送信している。ビーコン・フレーム2、5、・・・(n−3)、nはDTIMフレームに相当する。以下の説明において、無線LANアダプタとSTAを関連付けて説明する必要がある場合に、たとえば、STA21aに搭載された無線LANアダプタ59を無線LANアダプタ59(21a)と表記し、他の無線LANアダプタについても同様に表記する。無線LANアダプタ59(31a)はアクティブ・モードで動作しており、いつでも802.11MACフレームを送受信することができる。無線LANアダプタ59(31b)はPSモードで動作しており、リッスン・インターバルTdでドーズ状態からアウエイク状態に周期的に遷移している。リッスン・インターバルTdは、DTIMインターバルと一致しており、無線LANアダプタ59(31b)はすべてのDTIMフレームを聴取することができる。無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)は、拡張PSモードで動作している。
【0073】
無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)は、それぞれ時刻t6、t7、t5で拡張PSモードに移行している。拡張PSモードでは、ビーコン・インターバルTの整数倍のインターバルで、無線LANアダプタがドーズ状態からアウエイク状態に周期的に遷移する。拡張PSモードで動作する無線LANアダプタがドーズ状態からアウエイク状態に遷移するインターバルをリッスン・インターバルと区別するためにウエイクアップ・インターバルということにする。AP20と無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)との間で、ウエイクアップ・インターバルはリッスン・インターバルより長く設定される。
【0074】
ここでは、無線LANアダプタ59(21a)、59(21b)はウエイクアップ・インターバルTw1でアウエイク状態に遷移し、無線LANアダプタ59(21c)はウエイクアップ・インターバルTw2でアウエイク状態に遷移する。図5には、各DTIMフレームの直後にその時点までバッファ165に記憶されていたフレームが送信され、そのタイミングでアウエイク状態に遷移している無線LANアダプタ59が受信する状態を示している。そして、バッファ制御部161はフレームを送信したあとにバッファ165をクリアする。なお、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)がDTIMフレームの送信のタイミングでアウエイク状態に遷移して、バッファ165に記憶されていたフレームを受信する場合もあるが、それは本発明が意図する動作ではない。
【0075】
また、図5には無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)がすべて拡張PSモードで動作したあとの時刻t8で拡張バッファ167にマジック・パケット・フレームが記憶され、AP20がビーコン・フレーム(n−2)、(n−1)のタイミングで、マジック・パケット・フレームを送信したことを示している。そして、無線LANアダプタ59(21a)、59(21c)がビーコン・フレーム(n−2)のタイミングでアウエイク状態に遷移し、無線LANアダプタ59(21b)がビーコン・フレーム(n−1)のタイミングでアウエイク状態に遷移して、マジック・パケット・フレームを受信する。
【0076】
図6のブロック201では、AP20が動作してビーコン・インターバルTでビーコン・フレームを送信している。ブロック203では、時刻t1で無線LANアダプタ59(31a)がAP20によりMACレイヤ・レベルでの認証を受け、さらに、アソシエーションを実行してAP20に接続する。以後、無線LANアダプタ59(31a)は、アクティブ・モードで動作してアウエイク状態を維持する。無線LANアダプタ59(31a)は、AP20との間で任意のタイミングで802.11MACフレームの送受信をすることができる。
【0077】
AP20のデータ制御部163は、図9に示すように動作モード・テーブル157にSTA31aの無線LANアダプタ59(31a)を登録する。ブロック205では、無線LANアダプタ59(31b)が同様にAP20に接続される。無線LANアダプタ59(31b)は時刻t11で、WOL待機状態に移行するため電力管理フィールド311を1に設定した802.11MACフレームをAP20に送ってAP20との間でネゴシエーションをしてから、アクティブ・モードから802.11標準のPSモードに移行する。
【0078】
無線LANアダプタ59(31b)とAP20との間では、PSモードに入る際のリッスン・インターバルを決定するために、MLME-POWERMGT.requestとMLME-POWERMGT.confirmという命令を使用する。MLME-POWERMGT.requestは、リッスン・インターバルを示すListenIntervalという情報要素とすべてのDTIMを受信するか否かを示すReceiveDTIMsという情報要素を含む。無線LANアダプタ59(31b)は、すべてのDTIMフレームのタイミングでアウエイク状態に遷移する場合は、ReceiveDTIMsをtrueに設定する。
【0079】
図5に示したように、ここでは、リッスン・インターバルは3に設定され、無線LANアダプタ59(31b)は、ビーコン・フレーム2、5、・・・(n−3)、nの送信タイミングごとにアウエイク状態に遷移してビーコン・フレームを聴取する。AP20は、DTIMフレームを送信した直後にその時点でバッファ165に蓄積されていたマルチキャスト・フレームおよびブロードキャスト・フレームを送信する。
【0080】
AP20は、DTIMフレーム2の送信直後にそれまでバッファ165に記憶されていたフレームを送信してからバッファ165をクリアし、さらにDTIMフレーム5までの間にバックボーン・ネットワーク11から受け取ったイーサネット・フレームをバッファ165に記憶してからDTIMフレーム5の送信直後にバッファ165をクリアする。
【0081】
AP20はDTIMフレーム2のタイミングですべてのバッファ165に記憶されていたフレームを送信できなかった場合は、DTIMフレーム5の送信直後に残っていたフレームを送信する。無線LANアダプタ59(31b)は、DTIMフレームのPVBフィールド323を参照して自分宛のユニキャスト・フレームがバッファ165に蓄積されていることを知ると、PS-Pollという制御フレームをAP20に送信して受信することができる。
【0082】
無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)は、ICH61のWOLレジスタがイネーブルに設定され、拡張PS処理部107に拡張PSモードがイネーブルになるように設定されている。ブロック207では、S0ステートで動作するSTA21aが時刻t2でAP20に接続する。接続直後の無線LANアダプタ59(21a)はアクティブ・モードで動作している。ブロック209でユーザの操作または所定のアイドル時間が経過したことなどによりSTA21aがS3ステートまたはS4ステートに移行することで、WOL待機状態に移行する。このとき、ICH61は無線LANアダプタ59(21a)にSTA21aがWOL待機状態に移行することを通知する。
【0083】
無線LANアダプタ59(21a)のデータ・リンク・レイヤ部105は、ビーコン・フレーム3を受信した直後の時刻t6で拡張PSモードに移行するために、AP20に802.11MACフレームを送信する。AP20は、電力管理フィールド311の設定内容にかかわらず拡張PSモード・フィールド327を参照して無線LANアダプタ59(21a)がPSモードでは動作していないと判断する。ただし、AP20は、無線LANアダプタ59(21a)をアクティブ・モードで動作すると認識して802.11標準の規定に基づいてフレームのバッファリングや送信タイミングの制御をするのではなく、以下のように拡張PSモードに関する特別な制御をする。
【0084】
無線LANアダプタ59(21a)は802.11MACフレームの拡張PSモード・フィールド327に拡張PSモードに入るためのビットを設定し、アウエイク・インターバル・フィールド329にウエイクアップ・インターバルTw1を設定する。ウエイクアップ・インターバルTw1は、たとえば、ビーコン・インターバルの100倍〜200倍とすることができる。ウエイクアップ・インターバルTw1は、次に受信するビーコン・フレーム4からアウエイク状態に遷移するビーコン・フレーム(n−2)までのビーコン・インターバルTの整数倍の時間に相当し、ここでは図9に示したように200としている。
【0085】
AP20は、バックボーン・ネットワーク11からマジック・パケット・フレームを受信した際に、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59が存在する場合は一旦拡張バッファ167に記憶するが、そのデータ量は多くはないためウエイクアップ・インターバルを長くしてもバッファ・オーバーフローの問題は生じにくい。またAP20は、バッファ165に記憶したフレームを、拡張バッファ167に記憶されたマジック・パケット・フレームの送信からは独立したDTIMインターバルで送信するので、ウエイクアップ・インターバルを長くしても802.11標準でブロードキャスト・フレームを受信する他の無線LANアダプタ59に影響を与えることはない。
【0086】
無線LANアダプタ59(21a)は、ウエイクアップ・インターバルを、リモート・コンピュータ13がマジック・パケットを送ってからSTA21aが実際にWOL起動を開始するまでに許容される範囲でAP20とネゴシエートして決定することができる。あるいはAP20は、ウエイクアップ・インターバルをあらかじめ設定された固定値とするように無線LANアダプタ59(21a)に要求することもできる。AP20のデータ制御部163は、決定したウエイクアップ・インターバルTw1を802.11MACフレームに設定して無線LANアダプタ59(21a)に送信する。
【0087】
802.11MACフレームを送信したAP20のデータ制御部163は、動作モード・テーブル157に802.11MACフレームから読み取った無線LANアダプタ59(21a)のMACアドレスとアソシエーション時に決定したAIDを登録する。AP20は、802.11標準に基づいてデータ転送をする無線LANアダプタ59に対して所定時間トラフィックがない場合にアソシエーションを解除する設定をしている場合は、拡張PSモードに入る無線LANアダプタについてはアソシエーションを解除しないようにする。
【0088】
つづいてデータ制御部163は、動作モード・テーブル157の無線LANアダプタ59(21a)について、ウエイクアップ・インターバル・フィールドとカウント値フィールドにウエイクアップ・インターバルTw1と現在のカウント値を登録する。登録時点ではウエイクアップ・インターバルTw1と現在のカウント値は一致するが、現在のカウンタ159はそれ以降のビーコン・インターバルのタイミングで1ずつ減分される。
【0089】
ブロック211では、802.11MACフレームを受信した無線LANアダプタ59(21a)のデータ・リンク・レイヤ部105は、電源回路113を制御して無線LANアダプタ59を拡張PSモードで動作させる。無線LANアダプタ59(21a)は、ウエイクアップ・インターバルTw1で周期的にドーズ状態からアウエイク状態に遷移する。2回目以降にアウエイク状態からドーズ状態に遷移する際には、無線LANアダプタ59(21a)は802.11MACフレームを送信して同様の手順を実行する。ブロック213では、同様の手順で無線LANアダプタ59(21b)が時刻t7で拡張PSモードに移行し、無線LANアダプタ59(21c)が時刻t5で拡張PSモードに移行する。
【0090】
ブロック215では、AP20がバックボーン・ネットワーク11からイーサネット・フレームを受信する。ブロック217では、バッファ制御部161がイーサネット・フレームのタイプと接続されている無線LANアダプタ59の動作モードに応じてバッファリングの処理をする。ブロック217の手順を図7のフローチャートを参照して説明する。ブロック217−1でバッファ制御部161は、宛先のMACアドレスに基づいて、受け取ったイーサネット・フレームがブロードキャスト・フレームか否かを調べる。
【0091】
ブロードキャスト・フレームの場合は、ブロック217−3でバッファ制御部161は動作モード・テーブル157のPSモード・フィールドを参照して、現在接続されている無線LANアダプタ59の中にPSモードで動作している無線LANアダプタ59が接続されているか否かを調べる。PSモードで動作している無線LANアダプタ59が存在しない場合は、ブロック217−9に移行する。拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59が接続されていてもブロック217−9に移行する。
【0092】
ブロック217−3でPSモードの無線LANアダプタ59が接続されている場合は、ブロック217−7でバッファ制御部161は当該ブロードキャスト・フレームをバッファ165に記憶し、データ制御部163にバッファ165にフレームを記憶したことを通知する。データ制御部163は、DTIMフレームのタイミングで、バッファ165に記憶されたフレームを送信する必要があることを認識する。ブロック217−9では、バッファ制御部161は、動作モード・テーブル157の拡張PSモード・フィールドを参照して、現在接続されている無線LANアダプタ59の中に、拡張PSモードで動作している無線LANアダプタ59が接続されているか否かを調べる。
【0093】
拡張PSモードで動作している無線LANアダプタ59が接続されていない場合は、ブロック217−5に移行して、バッファ制御部161はただちに無線LAN通信部155からブロードキャスト・フレームを送信するようにデータ制御部163に送る。拡張PSモードで動作している無線LANアダプタ59が接続されている場合はブロック217−11に移行する。
【0094】
ブロック217−11でバッファ制御部161は、受け取ったブロードキャスト・フレームの宛先IPアドレスからマジック・パケット・フレームであるか否かを調べる。マジック・パケット・フレームである場合は、ブロック217−13でバッファ制御部161は当該フレームを拡張バッファ167に記憶し、データ制御部163に拡張バッファ167にデータを記憶したことを通知する。通知を受け取ったデータ制御部163は、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59がアウエイク状態に遷移しているタイミングで拡張バッファ167に記憶されたマジック・パケット・フレームを送信する必要があることを認識する。
【0095】
ブロック217−11でデータ制御部163は、マジック・パケット・フレームではないと判断したときは、ブロック217−15で当該フレームを破棄する。したがって、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)は、マジック・パケット・フレーム以外のブロードキャスト・フレームを受け取ることはない。ブロック217−1でバッファ制御部161が、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったイーサネット・フレームがブロードキャスト・フレームでないと判断したときは、ブロック217−17でマルチキャスト・フレームであるか否かを調べる。
【0096】
マルチキャスト・フレームの場合は、ブロック217−3に移行する。マルチキャスト・フレームはマジック・パケット・フレームではないため、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59(23a)〜59(23c)が接続されていても、マルチキャスト・フレームが拡張バッファ167に記憶されることはない。ブロック217−17でマルチキャスト・フレームでないと判断した場合、すなわち、ユニキャスト・フレームであると判断した場合は、ブロック217−19でバッファ制御部161は、動作モード・テーブル157の拡張PSモード・フィールドとMACアドレス・フィールドを参照して、宛先が拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59か否かを調べる。宛先が拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59でない場合、すなわち、アクティブ・モードで動作する無線LANアダプタ59またはPSモードで動作する無線LANアダプタ59の場合は、ブロック217−3に移行し、拡張PSモードで動作するSTAの場合は、ブロック217−15で当該フレームを破棄する。
【0097】
これまでの手順によれば、バッファ制御部161は、PSモードで動作する無線LANアダプタ59(31b)だけが接続されている場合は、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったブロードキャスト・フレームとマルチキャスト・フレームをバッファ165に記憶する。バッファ制御部161は、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)だけが接続されている場合は、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったイーサネット・フレームの中でマジック・パケット・フレームだけをバッファ167に記憶する。
【0098】
PSモードで動作する無線LANアダプタ59(31b)と拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)が接続されている場合は、バックボーン・ネットワーク11から受け取ったブロードキャスト・フレームとマルチキャスト・フレームをバッファ165に記憶し、さらにマジック・パケット・フレームだけをバッファ167に記憶する。バッファ制御部161は、拡張PSモードに移行している無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)についてはマジック・パケット・フレームだけをバッファ167に記憶してその他を破棄することになる。
【0099】
その理由は、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)は、WOL待機状態でS3ステートまたはS4ステートに移行していることが前提なので、マジック・パケット・フレーム以外の802.11MACフレームを受信できないためAP20は送信する必要がないからである。また、マジック・パケット・フレーム以外のイーサネット・フレームを破棄することでアウエイク・インターバルが長くなってもバッファ167のオーバーフローを避けることができる。
【0100】
図6に戻って、ブロック219では、いずれかの無線LANアダプタ59がAP20にアソシエーションを解除するためのアソシエーション解除フレームを送って切断する。データ制御部163は切断された無線LANアダプタ59の登録データを動作モード・テーブル157から削除する。よって、拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59は、STAから解除要求があるまでAP20への接続が維持され、拡張PSモードに移行するたびにアソシエーションをする必要がなくなる。
【0101】
[フレームの送信手順]
図6、図7の手順によって、バッファ165および拡張バッファ167にはそれぞれイーサネット・フレームが記憶されている。つぎに、AP20が拡張バッファ167に記憶されたフレームを送信しそれを受信したSTAがWOL起動をする手順を図8のフローチャートを参照して説明する。ブロック401は、802.11標準にしたがって、バッファ165に記憶されたフレームが、AP20から無線LANアダプタ59に送信される。
【0102】
データ制御部163が、バッファ165に記憶されたブロードキャスト・フレームとマルチキャスト・フレームを、図5に示すDTIMフレーム2、5、(n−3)、nを送信した直後に送信する。送信されたブロードキャスト・フレームとマルチキャスト・フレームは、送信時にアウエイク状態の無線LANアダプタ59だけが受信することができる。
【0103】
ブロードキャスト・フレームがマジック・パケット・フレームの場合は、それを受信した無線LANアダプタ59は、自らを宛先とするマジック・パケットであると判断すればWOL起動をすることができる。バッファ165に記憶されたユニキャスト・フレームは、PSモードで動作する無線LANアダプタ59(31b)がリッスン・インターバルで受信したビーコン・フレームのTIMにあるPVBフィールド323を参照して、自らを宛先とするフレームがバッファ165に記憶されているか否かを認識する。無線LANアダプタ59(31b)は、自らを宛先とするフレームがバッファ165に記憶されていると認識したときはPs-Poll(Power-Save Poll)という制御フレームをAP20に送信して、AP20からユニキャスト・フレームを受信する。
【0104】
これ以降の手順では、拡張バッファ167に記憶されたマジック・パケット・フレームを無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)が受信する。拡張バッファ167には、マジック・パケット・フレームだけが記憶されている。マジック・パケット・フレームの送信は、バッファ165からのブロードキャスト・フレームの送信とは独立して行われる。
【0105】
データ制御部163は動作モード・テーブル157のカウント値が0になるビーコン・フレームで、当該無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移していることを認識することができる。ブロック403では、データ制御部163は動作モード・テーブル157の拡張PSモード・フィールドとカウント値フィールドを参照して、つぎの、ビーコン・フレームのタイミングでカウント値が0になる拡張PSモードの無線LANアダプタ59が存在するか否かを、ビーコン・フレームを送信するたびに判断している。
【0106】
ここでは、データ制御部163は無線LANアダプタ59(21a)と無線LANアダプタ59(21c)がビーコン・フレーム(n−2)でカウント値が0になると判断する。ブロック405でデータ制御部163は拡張バッファ167からマジック・パケット・フレームを読み出して、ビーコン・フレーム(n−2)を送信した直後に無線LAN通信部155から送信する。このときAP20はマジック・パケット・フレームを、ブロードキャスト・フレームとして送信する。
【0107】
ビーコン・フレーム(n−2)では、アウエイク状態に遷移している無線LANアダプタ59(21a)と無線LANアダプタ59(21c)がマジック・パケット・フレームを受信する。無線LANアダプタ59(21a)、59(21c)は、ビーコン・フレーム(n−2)において、ビット・マップ制御フィールド321に1が設定されているときは、ブロードキャスト・フレームを受信するために十分な時間アウエイク状態を維持する。無線LANアダプタ59(21a)と無線LANアダプタ59(21c)は、それぞれ、マジック・パケット・フレームの宛先を確認して、自らを宛先とするマジック・パケットを受け取ったSTA21aまたはSTA21cがブロック407でWOL起動をする。無線LANアダプタ59(21a)、59(21c)は、宛先が異なるマジック・パケット・フレームは破棄する。
【0108】
ブロック409では、データ制御部163は動作モード・テーブル157を参照して、拡張バッファ167にバックボーン・ネットワーク11から受け取ったマジック・パケット・フレームを記憶する前に動作モード・テーブル157に拡張PSモードの登録がされたすべての無線LANアダプタ59(21a)〜59(21c)に対して、それらがアウエイク状態のときにマジック・パケット・フレームを送信したか否かを判断する。データ制御部163は、ビーコン・フレーム(n−2)のタイミングでは無線LANアダプタ59(21b)のカウント値が0でないと判断して、ブロック403に戻り、ビーコン・フレーム(n−1)のタイミングで無線LANアダプタ59(21b)のカウント値が0になると判断する。
【0109】
そして、データ制御部163はブロック405で、ふたたび拡張バッファ167からマジック・パケット・フレームを読み出して、無線LAN通信部155から送信する。マジック・パケット・フレームを受信した無線LANアダプタ59(21b)は、自らを宛先とするマジック・パケット・フレームを受信したと判断する場合はブロック407でWOL起動をする。ブロック409でデータ制御部163は、マジック・パケット・フレームを受け取るよりも前に拡張PSモードを登録したすべての無線LANアダプタ59に、アウエイク状態のときにマジック・パケット・フレームを送信したと判断すると、ブロック411でビーコン・インターバル(n−1)を送信した直後に拡張バッファ167をクリアする。
【0110】
ブロック405では、マジック・パケット・フレームをAP20がブロードキャスト・フレームとして送信する例を説明したが、AP20は拡張バッファ167に記憶されたマジック・パケット・フレームをユニキャスト・フレームとして送信することもできる。この場合は、AP20がビーコン・フレームのベンダー・スペシフィック・フィールドを使用して、拡張バッファ117にマジック・パケット・フレームが記憶されていることを各無線LANアダプタ59に通知する。そして、アウエイク状態に遷移した拡張PSモードで動作する無線LANアダプタ59が、PS-Pollという制御フレームをAP20に送信して受信することができる。
【0111】
無線LANアダプタ59は、拡張PS処理部107に拡張PSモードがディスエーブルに設定されているときは、WOL待機状態ではPSモードで動作してマジック・パケット・フレームを受信することもできる。また無線LANアダプタ59は、拡張PSモードがイネーブルに設定されていても、WOL待機状態のとき以外は拡張PSモードに移行しないでアクティブ・モードまたはPSモードで動作する。
【0112】
よって、拡張PSモードで動作することができる無線LANアダプタ59は、IEEE802.11標準で動作する他の無線LANアダプタの動作に影響を与えることなく、WOL待機状態でアウエイク状態に遷移するまでのインターバルを長くして消費電力を低減することができる。また自らはWOL待機状態で動作するとき以外はIEEE802.11標準に規定された動作をすることができる。本発明は特に、バッテリィでWOL待機状態に移行しているSTAに有効である。
【0113】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0114】
10…無線LANシステム
153…制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局がWOL起動のためのマジック・パケット・フレームを送信する方法であって、
前記無線LANアダプタからIEEE802.11標準に規定するDTIMインターバルより長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードに移行する通知を受け取るステップと、
前記通知に基づいて前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移するタイミングを計測するステップと、
前記無線基地局がバックボーン・ネットワークから前記マジック・パケット・フレームを受け取り、かつ、前記無線基地局に前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタが接続されていると判断したときに前記マジック・パケット・フレームを第1のバッファに記憶するステップと、
前記無線LANアダプタが前記アウエイク状態に遷移しているタイミングで前記第1のバッファに記憶された前記マジック・パケット・フレームを送信するステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記通知を受け取るステップにおいて、前記無線基地局は前記無線LANアダプタを搭載する無線端末装置がWOL待機状態に移行する際に前記通知を受け取る請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バックボーン・ネットワークからブロードキャスト・フレームを受け取るステップと、
前記無線基地局に接続されている複数の無線LANアダプタのいずれかが前記IEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作しているか否かを判断するステップと、
前記パワー・セーブ・モードで動作していると判断したときに、前記ブロードキャスト・フレームを前記第1のバッファに記憶しないで第2のバッファに記憶するステップと
を有する請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のバッファに記憶された前記ブロードキャスト・フレームを前記DTIMインターバルで送信するステップを有する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記バックボーン・ネットワークからユニキャスト・フレームを受け取るステップと、
前記ユニキャスト・フレームの宛先が前記拡張パワー・セーブ・モードで動作している無線LANアダプタであるか否かを判断するステップと、
宛先が前記拡張パワー・セーブ・モードで動作している無線LANアダプタであると判断したときに、前記ユニキャスト・フレームを破棄するステップと
を有する請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記無線基地局は前記無線LANアダプタが前記拡張パワー・セーブ・モードで動作している間、前記無線LANアダプタの接続を維持する請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記マジック・パケット・フレームを送信するステップが、前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する複数の無線LANアダプタのいずれかが前記アウエイク状態に遷移しているタイミングごとに前記マジック・パケット・フレームを送信するステップを含む請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記拡張パワー・セーブ・モードで動作しているすべての無線LANアダプタに前記マジック・パケット・フレームを送信したあとに、前記第1のバッファをクリアして前記マジック・パケット・フレームの送信を中止するステップを有する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
バックボーン・ネットワークからWOL起動のためのマジック・パケット・フレームを受け取ることが可能な無線基地局であって、
前記マジック・パケット・フレームを記憶する第1のバッファと、
前記バックボーン・ネットワークから受け取ったブロードキャスト・フレームを記憶することが可能な第2のバッファと、
無線LANアダプタがIEEE802.11標準に規定するDTIMインターバルより長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードに移行する通知を受け取ったときに、前記アウエイク状態へ遷移するタイミングをカウントするタイミング・カウント部と
前記バックボーン・ネットワークから前記マジック・パケット・フレームを受け取り、かつ、前記無線基地局に前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタが接続されていると判断したときに前記マジック・パケット・フレームを前記第1のバッファに記憶するバッファ制御部と、
前記無線LANアダプタが前記アウエイク状態に遷移しているタイミングで前記第1のバッファに記憶された前記マジック・パケット・フレームを送信するデータ制御部と
を有する無線基地局。
【請求項10】
前記バッファ制御部は、前記バックボーン・ネットワークからブロードキャスト・フレームを受け取り、かつ、前記無線基地局に接続されている複数の無線LANアダプタのいずれかが前記IEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作していると判断したときに、前記ブロードキャスト・フレームを前記第1のバッファに記憶しないで前記第2のバッファに記憶する請求項9に記載の無線基地局。
【請求項11】
前記バッファ制御部は、前記バックボーン・ネットワークから受け取ったフレームが前記拡張パワー・セーブ・モードで動作している無線LANアダプタを宛先とするユニキャスト・フレームであると判断したときに、前記ユニキャスト・フレームを破棄する請求項9または請求項10に記載の無線基地局。
【請求項12】
前記データ制御部は、前記拡張パワー・セーブ・モードで動作している複数の無線LANアダプタのいずれかがアウエイク状態に遷移しているタイミングごとに前記マジック・パケット・フレームを送信する請求項9から請求項11のいずれかに記載の無線基地局。
【請求項13】
前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタの識別子と前記ウエイクアップ・インターバルを登録する動作モード・テーブルを有し、
前記データ制御部は、前記拡張パワー・セーブ・モードで動作している無線LANアダプタから切断の要求があったときに前記動作モード・テーブルから前記無線LANアダプタの登録を削除して前記マジック・パケット・フレームの送信を中止する請求項9から請求項12のいずれかに記載の無線基地局。
【請求項14】
前記データ制御部は、前記無線LANアダプタから切断要求があるまで前記無線LANアダプタの接続を維持する請求項9から請求項13のいずれかに記載の無線基地局。
【請求項15】
無線端末装置に搭載された無線LANアダプタが無線基地局からマジック・パケット・フレームを受け取って前記無線端末装置がWOL起動をする方法であって、
前記無線端末装置のシステムから、WOL待機状態に移行する通知を受け取るステップと、
前記通知に応答してIEEE802.11標準に規定するDTIMインターバルより長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードに移行するステップと、
前記無線基地局に前記ウエイクアップ・インターバルを通知するステップと、
前記アウエイク状態に遷移しているタイミングで前記無線基地局から受信したマジック・パケット・フレームに応答して前記前記無線端末装置のシステムに前記WOL起動をするための通知をするステップと
を有する方法。
【請求項16】
前記IEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作するステップと、
前記パワー・セーブ・モードにおいてアウエイク状態に遷移するステップと、
前記アウエイク状態に遷移したときに、前記無線基地局からブロードキャスト・フレームを受信するステップと
を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
無線端末装置に搭載され、IEEE802.11標準に規定するリッスン・インターバルのパワー・セーブ・モードで動作することが可能な無線LANアダプタであって、
前記無線端末装置のシステムからWOL待機状態に移行する通知を受け取ったときに、前記無線LANアダプタを前記リッスン・インターバルより長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードで動作させる電力制御手段と、
前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する際に前記無線基地局に前記ウエイクアップ・インターバルを通知する通知手段と、
前記アウエイク状態に遷移しているタイミングで受信した前記マジック・パケット・フレームに応答して前記無線端末装置のシステムに前記WOL起動をするための通知をするWOL起動通知手段と
を有する無線LANアダプタ。
【請求項18】
請求項17に記載の無線LANアダプタを搭載した無線端末装置。
【請求項19】
無線基地局がWOL起動のためのマジック・パケット・フレームを送信するために、前記無線基地局に、
バッファに記憶したブロードキャスト・フレームをビーコン・フレームの整数倍のインターバルで無線LANアダプタに送信するステップと、
前記無線LANアダプタが前記ビーコン・フレームの整数倍のインターバルより長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードに移行する通知を受け取るステップと、
前記通知に基づいて前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移するタイミングを計測するステップと、
前記無線基地局がバックボーン・ネットワークから前記マジック・パケット・フレームを受け取り、かつ、前記無線基地局に前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタが接続されていると判断したときに前記マジック・パケット・フレームをバッファに記憶するステップと、
前記無線LANアダプタが前記アウエイク状態に遷移しているタイミングで前記バッファに記憶された前記マジック・パケット・フレームを送信するステップと
を含む処理を実行させるコンピュータ・プログラム。
【請求項20】
無線端末装置に搭載された無線LANアダプタに、前記無線端末装置がWOL起動をするために、
パワー・セーブ・モードで動作している間に前記無線基地局がバッファに記憶したブロードキャスト・フレームをビーコン・フレームの整数倍のインターバルで受信するステップと、
前記無線端末装置のシステムからWOL待機状態に移行する通知を受け取るステップと、
前記通知に応答して、前記ビーコン・フレームの整数倍のインターバルより長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードに移行するステップと、
前記無線基地局に前記ウエイクアップ・インターバルを通知するステップと、
前記アウエイク状態に遷移しているタイミングで受信した前記マジック・パケット・フレームに応答して前記無線端末装置のシステムに前記WOL起動をするための通知するステップと
を含む処理を実行させるコンピュータ・プログラム。
【請求項1】
無線基地局がWOL起動のためのマジック・パケット・フレームを送信する方法であって、
前記無線LANアダプタからIEEE802.11標準に規定するDTIMインターバルより長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードに移行する通知を受け取るステップと、
前記通知に基づいて前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移するタイミングを計測するステップと、
前記無線基地局がバックボーン・ネットワークから前記マジック・パケット・フレームを受け取り、かつ、前記無線基地局に前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタが接続されていると判断したときに前記マジック・パケット・フレームを第1のバッファに記憶するステップと、
前記無線LANアダプタが前記アウエイク状態に遷移しているタイミングで前記第1のバッファに記憶された前記マジック・パケット・フレームを送信するステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記通知を受け取るステップにおいて、前記無線基地局は前記無線LANアダプタを搭載する無線端末装置がWOL待機状態に移行する際に前記通知を受け取る請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バックボーン・ネットワークからブロードキャスト・フレームを受け取るステップと、
前記無線基地局に接続されている複数の無線LANアダプタのいずれかが前記IEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作しているか否かを判断するステップと、
前記パワー・セーブ・モードで動作していると判断したときに、前記ブロードキャスト・フレームを前記第1のバッファに記憶しないで第2のバッファに記憶するステップと
を有する請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のバッファに記憶された前記ブロードキャスト・フレームを前記DTIMインターバルで送信するステップを有する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記バックボーン・ネットワークからユニキャスト・フレームを受け取るステップと、
前記ユニキャスト・フレームの宛先が前記拡張パワー・セーブ・モードで動作している無線LANアダプタであるか否かを判断するステップと、
宛先が前記拡張パワー・セーブ・モードで動作している無線LANアダプタであると判断したときに、前記ユニキャスト・フレームを破棄するステップと
を有する請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記無線基地局は前記無線LANアダプタが前記拡張パワー・セーブ・モードで動作している間、前記無線LANアダプタの接続を維持する請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記マジック・パケット・フレームを送信するステップが、前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する複数の無線LANアダプタのいずれかが前記アウエイク状態に遷移しているタイミングごとに前記マジック・パケット・フレームを送信するステップを含む請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記拡張パワー・セーブ・モードで動作しているすべての無線LANアダプタに前記マジック・パケット・フレームを送信したあとに、前記第1のバッファをクリアして前記マジック・パケット・フレームの送信を中止するステップを有する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
バックボーン・ネットワークからWOL起動のためのマジック・パケット・フレームを受け取ることが可能な無線基地局であって、
前記マジック・パケット・フレームを記憶する第1のバッファと、
前記バックボーン・ネットワークから受け取ったブロードキャスト・フレームを記憶することが可能な第2のバッファと、
無線LANアダプタがIEEE802.11標準に規定するDTIMインターバルより長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードに移行する通知を受け取ったときに、前記アウエイク状態へ遷移するタイミングをカウントするタイミング・カウント部と
前記バックボーン・ネットワークから前記マジック・パケット・フレームを受け取り、かつ、前記無線基地局に前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタが接続されていると判断したときに前記マジック・パケット・フレームを前記第1のバッファに記憶するバッファ制御部と、
前記無線LANアダプタが前記アウエイク状態に遷移しているタイミングで前記第1のバッファに記憶された前記マジック・パケット・フレームを送信するデータ制御部と
を有する無線基地局。
【請求項10】
前記バッファ制御部は、前記バックボーン・ネットワークからブロードキャスト・フレームを受け取り、かつ、前記無線基地局に接続されている複数の無線LANアダプタのいずれかが前記IEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作していると判断したときに、前記ブロードキャスト・フレームを前記第1のバッファに記憶しないで前記第2のバッファに記憶する請求項9に記載の無線基地局。
【請求項11】
前記バッファ制御部は、前記バックボーン・ネットワークから受け取ったフレームが前記拡張パワー・セーブ・モードで動作している無線LANアダプタを宛先とするユニキャスト・フレームであると判断したときに、前記ユニキャスト・フレームを破棄する請求項9または請求項10に記載の無線基地局。
【請求項12】
前記データ制御部は、前記拡張パワー・セーブ・モードで動作している複数の無線LANアダプタのいずれかがアウエイク状態に遷移しているタイミングごとに前記マジック・パケット・フレームを送信する請求項9から請求項11のいずれかに記載の無線基地局。
【請求項13】
前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタの識別子と前記ウエイクアップ・インターバルを登録する動作モード・テーブルを有し、
前記データ制御部は、前記拡張パワー・セーブ・モードで動作している無線LANアダプタから切断の要求があったときに前記動作モード・テーブルから前記無線LANアダプタの登録を削除して前記マジック・パケット・フレームの送信を中止する請求項9から請求項12のいずれかに記載の無線基地局。
【請求項14】
前記データ制御部は、前記無線LANアダプタから切断要求があるまで前記無線LANアダプタの接続を維持する請求項9から請求項13のいずれかに記載の無線基地局。
【請求項15】
無線端末装置に搭載された無線LANアダプタが無線基地局からマジック・パケット・フレームを受け取って前記無線端末装置がWOL起動をする方法であって、
前記無線端末装置のシステムから、WOL待機状態に移行する通知を受け取るステップと、
前記通知に応答してIEEE802.11標準に規定するDTIMインターバルより長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードに移行するステップと、
前記無線基地局に前記ウエイクアップ・インターバルを通知するステップと、
前記アウエイク状態に遷移しているタイミングで前記無線基地局から受信したマジック・パケット・フレームに応答して前記前記無線端末装置のシステムに前記WOL起動をするための通知をするステップと
を有する方法。
【請求項16】
前記IEEE802.11標準に規定するパワー・セーブ・モードで動作するステップと、
前記パワー・セーブ・モードにおいてアウエイク状態に遷移するステップと、
前記アウエイク状態に遷移したときに、前記無線基地局からブロードキャスト・フレームを受信するステップと
を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
無線端末装置に搭載され、IEEE802.11標準に規定するリッスン・インターバルのパワー・セーブ・モードで動作することが可能な無線LANアダプタであって、
前記無線端末装置のシステムからWOL待機状態に移行する通知を受け取ったときに、前記無線LANアダプタを前記リッスン・インターバルより長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードで動作させる電力制御手段と、
前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する際に前記無線基地局に前記ウエイクアップ・インターバルを通知する通知手段と、
前記アウエイク状態に遷移しているタイミングで受信した前記マジック・パケット・フレームに応答して前記無線端末装置のシステムに前記WOL起動をするための通知をするWOL起動通知手段と
を有する無線LANアダプタ。
【請求項18】
請求項17に記載の無線LANアダプタを搭載した無線端末装置。
【請求項19】
無線基地局がWOL起動のためのマジック・パケット・フレームを送信するために、前記無線基地局に、
バッファに記憶したブロードキャスト・フレームをビーコン・フレームの整数倍のインターバルで無線LANアダプタに送信するステップと、
前記無線LANアダプタが前記ビーコン・フレームの整数倍のインターバルより長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードに移行する通知を受け取るステップと、
前記通知に基づいて前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタがアウエイク状態に遷移するタイミングを計測するステップと、
前記無線基地局がバックボーン・ネットワークから前記マジック・パケット・フレームを受け取り、かつ、前記無線基地局に前記拡張パワー・セーブ・モードで動作する無線LANアダプタが接続されていると判断したときに前記マジック・パケット・フレームをバッファに記憶するステップと、
前記無線LANアダプタが前記アウエイク状態に遷移しているタイミングで前記バッファに記憶された前記マジック・パケット・フレームを送信するステップと
を含む処理を実行させるコンピュータ・プログラム。
【請求項20】
無線端末装置に搭載された無線LANアダプタに、前記無線端末装置がWOL起動をするために、
パワー・セーブ・モードで動作している間に前記無線基地局がバッファに記憶したブロードキャスト・フレームをビーコン・フレームの整数倍のインターバルで受信するステップと、
前記無線端末装置のシステムからWOL待機状態に移行する通知を受け取るステップと、
前記通知に応答して、前記ビーコン・フレームの整数倍のインターバルより長いウエイクアップ・インターバルでドーズ状態からアウエイク状態に遷移する拡張パワー・セーブ・モードに移行するステップと、
前記無線基地局に前記ウエイクアップ・インターバルを通知するステップと、
前記アウエイク状態に遷移しているタイミングで受信した前記マジック・パケット・フレームに応答して前記無線端末装置のシステムに前記WOL起動をするための通知するステップと
を含む処理を実行させるコンピュータ・プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−95032(P2012−95032A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239672(P2010−239672)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】
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