説明

マスクアライメント装置

【課題】有機ELディスプレイを製造するためにガラス基板とメタルマスクを位置合わせするためのマスクアライメント装置において、ガラス基板とマスクとの相対位置を高精度に検出できるようにする。
【解決手段】同軸落射照明装置22と斜照明装置23との2つの照明を設ける。斜照明装置23は、シャッタ32を用いて、点灯、消灯制御可能とする。斜照明が消灯するタイミングで、基板側アライメントマーク16のパターンを撮像し、斜照明が点灯するタイミングで、マスク側アライメントマーク17のパターンを撮像する。これにより、より大きいコントラストの画像で撮像することができ、ガラス基板11とメタルマスク12との相対位置を高精度で検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイを製造するためにガラス基板とメタルマスクを位置合わせするためのマスクアライメント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ製造装置では、特許文献1〜特許文献3に示されるように、ガラス基板とメタルマスクを精密に位置合わせして、真空蒸着により有機EL材料を所望のパターンで製膜する必要がある。このため、ガラス基板とメタルマスクにアライメントマークが形成され、このガラス基板とメタルマスクに設けられたアライメントマーク位置がCCD(Charge Coupled Device)カメラで撮像される。ガラス基板のアライメントマークはクロム等の金属薄膜で形成され、メタルマスクのアライメントマークとしては貫通穴で形成されるのが一般的である。
【0003】
このアライメントマークを撮影する光学系は、ガラス基板のアライメントマークが表面が平滑な鏡面状の反射体であることから、CCDカメラの光軸と、照明光の照射方向を同軸に配置する同軸落射照明方式が用いられる。
【0004】
メタルマスクの表面粗さは材質、製法などに依存してさまざまなバリエーションがある。特に表面粗さの大きいメタルマスクの場合は、同軸落射照明で撮影しようとすると、照明光がマスク表面の凹凸で散乱されるため、メタルマスク表面と貫通穴(マスク側アライメントマーク)の明暗コントラストが小さくなり、高精度な位置認識が困難となる。
【0005】
それに対して、メタルマスクと貫通穴の明暗コントラストを改善するために、同軸落射照明に加えて、CCDカメラ光軸に対して斜め方向から照射するためのリング状照明を補助的に用いることもある。
【特許文献1】特開2006−12597号公報
【特許文献2】特開2004−264404号公報
【特許文献3】特開2004−303559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この方式では明暗コントラストは改善するが、メタルマスク表面の平均明度がガラス基板のアライメントマークの明度に近づき、また、メタルマスク表面の凹凸によって生じる明度のむらが重なることによって、ガラス基板のアライメントマークの認識が困難になるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上述の課題を鑑み、ガラス基板とメタルマスクとの相対位置を高精度に検出することができるようにしたマスクアライメント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明は、ガラス基板に形成された基板側アライメントマークとマスクに形成されたマスク側アライメントマークを撮像し、前記基板側アライメントマークと前記マスク側アライメントマークの撮像画像から前記ガラス基板と前記マスクの相対位置関係を算出し、前記算出された相対位置関係に基づいて前記ガラス基板と前記マスクを位置合わせするマスクアライメント装置において、前記基板側アライメントマークと前記マスク側アライメントマークとを撮像する撮像手段と、前記撮像手段の光軸と同軸方向に照明光を照射する同軸落射照明手段と、前記撮像手段の光軸に対して斜め方向から照明光を照射する斜照明手段と、前記斜照明手段の点灯、消灯を制御する斜照明制御手段と、前記撮像手段により撮像された画像を用いて、前記マスク側アライメントマークの位置と前記基板側アライメントマークの位置を検出し、前記基板側アライメントマークの検出位置と前記マスク側アライメントマークの検出位置とに基づいて、前記ガラス基板と前記マスクとのずれ量を算出する制御手段と、前記算出されたずれ量に基づいて、前記ガラス基板と前記マスクとの位置合わせを行う基板移動手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
かかる発明によれば、同軸落射照明と斜照明との2つの照明を用いて、ガラス基板とメタルマスクとの位置合わせが行われる。このような2つの照明を用いると、基板側アライメントマーク及びマスク側アライメントマークからの反射光を、それぞれ、より大きいコントラストの画像で撮像することができ、基板側アライメントマークとマスク側アライメントマークとの相対位置を高精度に検出することができる。
【0010】
上記発明において、制御手段は、前記制御手段は、前記斜照明が消灯した状態で前記撮像手段により撮像された画像から前記基板側アライメントマークの位置を検出する第1のマーク検出手段と、前記斜照明が点灯した状態で前記撮像手段により撮像された画像から前記マスク側アライメントマークの位置を検出する第2のマーク検出手段と、前記第1のマーク検出手段で検出された基板側アライメントマークの位置と、前記第2のマーク検出手段で検出されたマスク側アライメントマークの検出位置とに基づいて、前記ガラス基板と前記マスクとのずれ量を算出し、前記算出されたずれ量に基づいて、前記ガラス基板と前記マスクとの位置合わせを行う第1の位置合わせ処理手段と、を含むようにしたことを特徴とする。
【0011】
かかる発明によれば、斜照明が消灯するタイミングで、基板側アライメントマークのパターンを撮像し、斜照明が点灯するタイミングで、マスク側アライメントマークのパターンを撮像することで、基板側アライメントマーク及びマスク側アライメントマークからの反射光を、それぞれ、より大きいコントラストの画像で撮像することができ、ガラス基板とメタルマスクとの相対位置をより高精度に検出できる。
【0012】
上記発明において、前記制御手段は、前記斜照明が点灯した状態で前記撮像手段により撮像された画像から前記基板側アライメントマーク及び前記マスク側アライメントマークの双方の位置を検出する第3のマーク検出手段と、前記第3のマーク検出手段で検出された基板側アライメントマーク及びマスク側アライメントマークの検出位置に基づいて、前記ガラス基板と前記マスクとのずれ量を算出し、前記算出されたずれ量に基づいて、前記ガラス基板と前記マスクとの位置合わせを行う第2の位置合わせ処理手段とを含み、前記第1の位置合わせ処理手段による位置合わせを行った後に、前記第2の位置合わせ処理手段による位置合わせを行うようにしたことを特徴とする。
【0013】
かかる発明によれば、最初の位置検出では、斜照明の点灯、消灯を切り替えて、基板側アライメントマークとマスク側アライメントマークとを別々に検出する処理を行い、2回目以降の位置検出では、斜照明を点灯したまま、基板側アライメントマークとマスク側アライメントマーク処理とを同時に検出することで、処理の高速化が実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、斜照明が消灯するタイミングで、基板側アライメントマークのパターンを撮像し、斜照明が点灯するタイミングで、マスク側アライメントマークのパターンを撮像することで、基板側アライメントマーク及びマスク側アライメントマークからの反射光を、それぞれ、より大きいコントラストの画像で撮像することができ、ガラス基板とメタルマスクとの相対位置を高精度に検出することができる。また、表面の粗さの大きい安価なメタルマスクでも、ガラス基板とメタルマスクの位置を正しく位置合わせすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明のマスクアライメント装置を組み込んだ有機ELディスプレイ用蒸着装置の構成を示すものである。図1において、真空容器10内には、ガラス基板11とメタルマスク12とが積層されて配置される。メタルマスク12には、ディスプレイの画素パターンに対応する複数の開口13が形成されている。メタルマスク12は、図示していない保持機構により、真空容器10内に固定されている。一方、ガラス基板11は、基板移動機構42により、メタルマスク12に対して移動自在とされている。真空容器10内には、ガラス基板11に有機EL材料を製膜するための蒸着源15が設けられる。
【0016】
ガラス基板11の所定の位置には、基板側アライメントマーク16が形成されている。基板側アライメントマーク16は、例えばクロム等の金属薄膜からなるほぼ鏡面の反射素材である。メタルマスク12の所定の位置には、マスク側アライメントマーク17が形成されている。マスク側アライメントマーク17は、貫通穴である。基板側アライメントマーク16及びマスク側アライメントマーク17は互いに対応した位置に形成されている。
【0017】
真空容器10の上面には、窓18が形成されている。窓18は、真空容器10内にガラス基板11とメタルマスク12とを配置したときに、基板側アライメントマーク16及びマスク側アライメントマーク17に照射光を照射できる位置に形成されている。
【0018】
真空容器10の外部の上側には、この窓18に対応する位置に、光学装置20が配設される。光学装置20は、撮像装置21と、同軸落射照明装置22と、斜照明装置23とを含んでいる。
【0019】
同軸落射照明装置22は、撮像装置21の光軸と同軸方向に照射光を照射するものである。斜照明装置23は、撮像装置21の光軸に対して斜め方向から照射光を照射するものである。撮像装置21は、基板側アライメントマーク16及びマスク側アライメントマーク17からの反射光を撮像するものである。
【0020】
図2は、本発明の第1実施形態における光学装置20の構成を説明するものである。図2において、撮像装置21は、CCDカメラ24とレンズ25とから構成される。この撮像装置21は、ガラス基板11及びメタルマスク12をほぼ垂直上方から撮影する。レンズ25には同軸落射照明装置22と斜照明装置23が取り付けられている。
【0021】
同軸落射照明装置22は、ハロゲン光源26とライトガイド27からなり、ハロゲン光源26からライトガイド27を介して出射された照明光は、レンズ25内のハーフミラー28で折り曲げられ、レンズ光軸と同軸にガラス基板11とメタルマスク12に照射される。
【0022】
一方、斜照明装置23は、ハロゲン光源29、ライトガイド30、リング照明ヘッド31からなり、レンズ光軸に対して斜め方向から照明光を照射する。また、斜照明装置23にはシャッタ32が設けられており、シャッタ32を開閉することにより斜照明の点灯、消灯を高速に切り替えることができる。なお、シャッタ32の開閉は、画像処理制御装置40(図1に示す)からの制御信号によって切り替えられる。
【0023】
また、図1に示すように、ガラス基板11とメタルマスク12との位置合わせを行う際には、光学装置20の同軸落射照明装置22及び斜照明装置23から同軸落射照明及び斜照明が出射される。照明として同軸落射照明と斜照明との2つの照明が用いられる理由やその開閉タイミングについては、後に説明する。この照明光は、窓18を介して、ガラス基板11及びメタルマスク12の基板側アライメントマーク16及びマスク側アライメントマーク17に向けて照射される。そして、基板側アライメントマーク16及びマスク側アライメントマーク17からの反射光は、撮像装置21を構成するCCDカメラ24で撮像される。
【0024】
図3は、CCDカメラ24の撮像画面を示すものであり、図3(A)はガラス基板11とメタルマスク12との位置がずれているときの画像を示し、図3(B)はガラス基板11とメタルマスク12との位置が合致しているときの画像を示している。基板側アライメントマーク16は、クロム等からなりほぼ鏡面状の反射体である。このため、CCDカメラ24で基板側アライメントマーク16を撮像すると、基板側アライメントマーク16は、図3(A)及び図3(B)に示すように、画像内で白色のパターンP1として認識される。これに対して、マスク側アライメントマーク17は貫通穴である。このため、マスク側アライメントマーク17では照明光は反射せず、マスク側アライメントマーク17の周囲のメタルマスク12の表面で反射した光が検出される。このため、マスク側アライメントマーク17は、図3(A)及び図3(B)に示すように、画像内で周囲と比べて黒いバターンP2となる。
【0025】
このCCDカメラ24からの画像に対して、画像処理制御装置40で正規化相関パターンマッチングなどの画像認識処理が行われ、基板側アライメントマーク16とマスク側アライメントマーク17との相対位置が検出され、基板移動機構42の移動量が算出される。この移動量に基づいて、アクチュエータ制御装置41により、基板側アライメントマーク16のパターンP1と、マスク側アライメントマーク17のパターンP2とが一致するように、基板移動機構42を介してガラス基板11が移動される。
【0026】
ガラス基板11がメタルマスク12に対して正しい位置に調整されたら、蒸着源15により、EL素子の蒸着が行われる。メタルマスク12には、ディスプレイの画像パターンに対応する開口13が設けられているため、開口13と同じパターンの有機EL膜パターンがガラス基板11に転写される。
【0027】
上述のように、本発明の第1の実施形態においては、光学装置20に、同軸落射照明装置22と斜照明装置23とが設けられ、同軸落射照明と斜照明との2つの照明を用いて、ガラス基板11とメタルマスク12との位置合わせが行われる。このような2つの照明を用いると、基板側アライメントマーク16及びマスク側アライメントマーク17からの反射光を、それぞれ、より大きいコントラストの画像で撮像することができ、ガラス基板11とメタルマスク12との相対位置を高精度に検出することができる。また、これにより、表面の粗さの大きい安価なメタルマスク12でも、ガラス基板11とメタルマスク12の位置を正しく位置合わせすることができる。このことについて、以下に説明する。
【0028】
図4(A)は同軸落射照明により基板側アライメントマーク16とマスク側アライメントマーク17とを検出したときの画像を模式的に示し、図4(B)は、同軸落射照明に加えて、さらに斜照明を点灯させたときの画像を模式的に示したものである。
【0029】
前述したように、ガラス基板11の基板側アライメントマーク16はほぼ鏡面状の反射体であるため、同軸落射照明装置22からの同軸落射照明は、基板側アライメントマーク16で正反射してレンズ25に戻る。したがって、同軸落射照明を照射して基板側アライメントマーク16を撮像すると、図4(A)に示すように、基板側アライメントマーク16は、画像内で白色のパターンP1として認識される。一方、斜照明装置23からの斜照明は、反射角が生じるため、基板側アライメントマーク16で反射しても、レンズ25に入射しない。このため、斜照明の有無は、基板側アライメントマーク16のパターンP1の明るさに殆ど影響を与えない。よって、同軸落射照明に加えて、さらに、斜照明を点灯させても、図4(B)に示すように、パターンP1の明るさは殆ど変わらない。しかしながら、斜照明を点灯させると、全体の明るさL1が増加する。したがって、図4(B)に示すように、斜照明を点灯させると、基板側アライメントマーク16のパターンP1のコントラストは、全体の明るさL1が増加した分だけ低下する。
【0030】
これに対して、マスク側アライメントマーク17の場合、マスク側アライメントマーク17は貫通穴であるため、マスク側アライメントマーク17では照明は反射せず、マスク側アライメントマーク17の周囲のメタルマスク12の表面で反射した光がレンズ25に到達する。このため、図4(A)に示すように、マスク側アライメントマーク17は画像内で周囲と比べて黒いバターンP2となる。メタルマスク12の場合、メタルマスク12の表面が鏡面状でないため、同軸落射照明装置22からの同軸落射照明は散乱され、レンズ25に到達する光量は少ない。したがって、同軸落射照明だけでは、図4(A)に示すように、マスク表面の画像は比較的暗く、マスク側アライメントマーク17のパターンP2のコントラストは小さい。ここで、同軸落射照明に加えて、さらに、斜照明を点灯させると、図4(B)に示すように、マスク表面の反射光量が増加して全体の明るさL1が大きくなり、その分だけ、コントラストが増大する。
【0031】
以下の表は、以上の関係を表で示したものである。
【0032】
【表1】

【0033】
この表から分かるように、基板側アライメントマーク16の画像のパターンP1については、斜照明を消灯しているときにはコントラストが大きく、斜照明を点灯すると、コントラストが小さくなる。このことから、基板側アライメントマーク16の画像のパターンP1を検出する場合には、斜照明を消灯した方が位置検出精度が上がる。
【0034】
これに対して、マスク側アライメントマーク17の画像のパターンP2は、斜照明を消灯しているときにはコントラストが小さく、斜照明を点灯すると、コントラストが大きくなる。このことから、マスク側アライメントマーク17の画像のパターンP2を検出する場合には、斜照明を点灯した方が位置検出精度が上がる。
【0035】
図5は、本発明の第1の実施形態におけるガラス基板11とメタルマスク12との位置合わせを行う際のフローチャートである。この実施形態では、斜照明装置23からの斜照明が消灯するタイミングで、基板側アライメントマーク16のパターンP1を撮像し、斜照明が点灯するタイミングで、マスク側アライメントマーク17のパターンP2を撮像することで、精度の高い位置検出を行えるようにしている。なお、位置合わせを行う際には、同軸落射照明装置22及び斜照明装置23のハロゲン光源26及び29は常に点灯させておくものとし、シャッタ32を開閉させることで、斜照明の点灯、消灯を制御するものとする。
【0036】
図5において、ガラス基板11とメタルマスク12との位置合わせを行う際には、まず、画像処理制御装置40は、シャッタ32を閉じて、斜照明を消灯させる(ステップS1)。図4(A)に示したように、斜照明を消灯しているときには、基板側アライメントマーク16の画像のパターンP1を大きいコントラストで検出することができる。そして、画像処理制御装置40は、CCDカメラ24の画像を画像処理制御装置40に入力し(ステップS2)、CCDカメラ24の画像のパターンP1から、基板側アライメントマーク16の位置を検出する(ステップS3)。
【0037】
ステップS3で、基板側アライメントマーク16の位置が検出されたら、次に、画像処理制御装置40は、シャッタ32を開き、斜照明を点灯させる(ステップS4)。図4(B)に示したように、斜照明を点灯しているときには、マスク側アライメントマーク17の画像のパターンP2を大きいコントラストで検出することができる。そして、画像処理制御装置40は、CCDカメラ24の画像を画像処理制御装置40に入力し(ステップS5)、CCDカメラ24の画像のパターンP2から、マスク側アライメントマーク17の位置を検出する(ステップS6)。
【0038】
画像処理制御装置40は、マスク側アライメントマーク17の位置が検出されたら、ステップS3で検出された基板側アライメントマーク16の位置と、ステップS6で検出されたマスク側アライメントマーク17の位置とから、ガラス基板11とメタルマスク12との位置ずれ量を算出し(ステップS7)、位置ずれ量が許容範囲内かどうかを判定する(ステップS8)。
【0039】
位置ずれ量が許容範囲内でない場合には、画像処理制御装置40は、位置ずれ量から補正移動量を演算し、アクチュエータ制御装置41に補正移動量を送信する(ステップS9)。アクチュエータ制御装置41は、受信した移動量に基づいて、基板移動機構42を移動させ(ステップS10)、ステップS1にリターンする。
【0040】
ステップS1〜ステップS10を繰り返すことで、ガラス基板11とメタルマスク12との位置ずれ量は許容範囲内に近づいていく。そして、ステップS8で、位置ずれ量が許容範囲内と判定されたら、それで処理は終了となる。
【0041】
以上のように、本発明の実施形態では、斜照明が消灯した状態で、基板側アライメントマーク16のパターンP1を撮像し、斜照明が点灯した状態で、マスク側アライメントマーク17のパターンP2を撮像することで、基板側アライメントマーク16及びマスク側アライメントマーク17からの反射光を、それぞれ、より大きいコントラストの画像で撮像することができ、ガラス基板11とメタルマスク12との相対位置を高精度に検出できる。
【0042】
なお、同軸落射照明だけでは、光が散乱されて貫通穴のマスク側アライメントマーク17のパターンP2のコントラストが低下するという問題は、メタルマスク12の表面粗さに依存する。メタルマスク12の材質として一般的な鉄系合金の場合、平均表面粗さRaが0.2μm以上のときに、斜照明を用いることによるコントラストの向上の効果が顕著であることが実験的に確認されている。また、この問題はメタルマスク12とレンズの間隔(動作距離)が長いほど顕著になるため、本発明の実施形態では、有機EL蒸着装置のように両者が真空容器の内と外に配置されて100mm以上の動作距離が必要な場合に特に有効である。
【0043】
また、本発明の適用対象である位置合わせ装置では、アライメントマークの位置検出用画像を撮像する前にオートフォーカスによる焦点調節を行う場合もある(例えば特開2004−264404号等に記載されている)。このような装置では、画像の微分信号やコントラスト値に基づいて焦点調節を行っている。本発明の実施形態では、画像のコントラストが大きくなることから、アライメントマークの位置検出精度の向上が図るばかりでなく、オートフォーカスの精度、信頼性の向上を図ることもできる。
【0044】
<第2の実施形態>
上述の第1の実施形態では、基板側アライメントマーク16とマスク側アライメントマーク17の位置をそれぞれ別のタイミングで撮像した画像から検出している。そのため、撮像回数の増加や、斜照明の点灯、消灯の切り替え時間により、位置合わせ動作全体の動作時間が長くなる。また、撮像装置21などが振動して撮像画像が揺らいでいると、別々のタイミングで撮像した画像から算出される基板側アライメントマーク16とマスク側アライメントマーク17の相対位置に誤差が生じ、結果として位置合わせ精度が低下する可能性がある。
【0045】
この第2の実施形態は、上述の問題を解決したものである。なお、装置の構成は、第1の実施形態と同一であるので、以下では異なる部分のみ説明する。
【0046】
図1において、ガラス基板11とメタルマスク12のアライメントでは、通常、ガラス基板11が光学装置20に近い側に配置されるため、基板側アライメントマーク16がマスク側アライメントマーク17を隠蔽してしまわないように、基板側アライメントマーク16の径をマスク側アライメントマーク17の径より小さく設定し、且つ、基板側アライメントマーク16がマスク側アライメントマーク17の上に重なる位置を位置合わせの目標値に設定することが多い。基板側アライメントマーク16がマスク側アライメントマーク17の上に重なっている状態で同軸照明と斜照明を両方とも点灯して撮影した画像は、図6に示すように、基板側アライメントマーク16とマスク側アライメントマーク17の双方が共に周囲に比べてコントラストが高い。したがって、このような画像であれば、一つの画像から基板側アライメントマーク16及びマスク側アライメントマーク17を精度良く位置検出できる。
【0047】
最初の位置検出では、基板側アライメントマーク16とマスク側アライメントマーク17とのそれぞれの位置関係がわからないため、斜照明の点灯、消灯を切り替えて、基板側アライメントマーク16とマスク側アライメントマーク17とを別々に検出する処理を必要があるが、2回目以降では、少なくとも一度補正移動を行った後なので、基板側アライメントマーク16とマスク側アライメントマーク17とは重なる位置にあると予想できる。
【0048】
そこで、この第2の実施形態では、最初の位置検出では、斜照明の点灯、消灯を切り替えて、基板側アライメントマーク16とマスク側アライメントマーク17とを別々に検出する処理を行い、2回目以降の位置検出では、斜照明を点灯したまま、基板側アライメントマーク16とマスク側アライメントマーク17とを同時に検出するようにしている。これにより、高速、高精度化が実現できる。
【0049】
図7は、本発明の第2の実施形態のフローチャートを示すものである。図7において、ガラス基板11とメタルマスク12との位置合わせを行う際には、まず、画像処理制御装置40は、シャッタ32を閉じて、斜照明を消灯させる(ステップS101)。そして、画像処理制御装置40は、CCDカメラ24の画像を画像処理制御装置40に入力し(ステップS102)、CCDカメラ24の画像から、基板側アライメントマーク16の位置を検出する(ステップS103)。
【0050】
ステップS103で、基板側アライメントマーク16の位置が検出されたら、次に、画像処理制御装置40は、シャッタ32を開き、斜照明を点灯させる(ステップS104)。そして、画像処理制御装置40は、CCDカメラ24の画像を画像処理制御装置40に入力し(ステップS105)、CCDカメラ24の画像から、マスク側アライメントマーク17の位置を検出する(ステップS106)。
【0051】
画像処理制御装置40は、マスク側アライメントマーク17の位置が検出されたら、ステップS103で検出された基板側アライメントマーク16の位置と、ステップS106で検出されたマスク側アライメントマーク17の位置とから、ガラス基板11とメタルマスク12との位置ずれ量を算出し(ステップS107)、位置ずれ量が許容範囲内かどうかを判定する(ステップS108)。
【0052】
位置ずれ量が許容範囲内でない場合には、画像処理制御装置40は、位置ずれ量から補正移動量を演算し、アクチュエータ制御装置41に補正移動量を送信する(ステップS109)。アクチュエータ制御装置41は、受信した移動量に基づいて、基板移動機構42を移動させる(ステップS110)。
【0053】
ステップS101〜S110の処理により、基板側アライメントマーク16とマスク側アライメントマーク17とは重なる位置になる。このため、斜照明を点灯したまま、基板側アライメントマーク16とマスク側アライメントマーク17とを、高いコントラストで同時に検出できる。
【0054】
ステップS101〜S110の処理を終了したら、画像処理制御装置40は、斜照明を点灯させたまま、CCDカメラ24の画像を画像処理制御装置40に入力し(ステップS111)、CCDカメラ24の画像から、基板側アライメントマーク16の位置と、マスク側アライメントマーク17の位置との双方を検出する(ステップS112)。そして、基板側アライメントマーク16の位置と、マスク側アライメントマーク17の位置とが検出されたら、基板側アライメントマーク16の位置と、マスク側アライメントマーク17の位置とから、ガラス基板11とメタルマスク12との位置ずれ量が演算する処理を行い(ステップS113)、ステップS108にリターンする。
【0055】
ステップS108〜ステップS113を繰り返すことで、ガラス基板11とメタルマスク12との位置ずれ量は許容範囲内に近づいていく。そして、ステップS108で、位置ずれ量が許容範囲内であると判定されたら、それで処理は終了となる。
【0056】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でさまざまな変形や応用が可能である。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、同軸落射照明装置22と斜照明装置23にハロゲン光源26、29を用いたが、LED(Light Emitting Diode)等他の光源を用いても良い。また、その場合、斜照明装置23の点灯、消灯の切り替えは、シャッタ32の代わりに、LED駆動電流のオン・オフで行うのが望ましい。これにより、斜照明を消灯すると基板側アライメントマーク16の位置検出精度がよくなり、点灯するとマスク側アライメントマーク17の位置検出精度がよくなることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態のマスクアライメント装置を組み込んだ有機ELディスプレイ用蒸着装置の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のマスクアライメント装置における光源の説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のマスクアライメント装置におけるアライメントマークの撮像画面の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態において、斜照明を消灯、点灯したときのアライメントマークの撮像画面の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のマスクアライメント装置の動作説明に用いるフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態のマスクアライメント装置におけるアライメントマークの撮像画面の説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態のマスクアライメント装置の動作説明に用いるフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
10:真空容器
11:ガラス基板
12:メタルマスク
13:開口
15:蒸着源
16:基板側アライメントマーク
17:マスク側アライメントマーク
18:窓
20:光学装置
21:撮像装置
22:同軸落射照明装置
23:斜照明装置
24:CCDカメラ
25:レンズ
26:ハロゲン光源
27:ライトガイド
28:ハーフミラー
29:ハロゲン光源
30:ライトガイド
31:リング照明ヘッド
32:シャッタ
40:画像処理制御装置
41:アクチュエータ制御装置
42:基板移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板に形成された基板側アライメントマークとマスクに形成されたマスク側アライメントマークを撮像し、前記基板側アライメントマークと前記マスク側アライメントマークの撮像画像から前記ガラス基板と前記マスクの相対位置関係を算出し、前記算出された相対位置関係に基づいて前記ガラス基板と前記マスクを位置合わせするマスクアライメント装置において、
前記基板側アライメントマークと前記マスク側アライメントマークとを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段の光軸と同軸方向に照明光を照射する同軸落射照明手段と、
前記撮像手段の光軸に対して斜め方向から照明光を照射する斜照明手段と、
前記斜照明手段の点灯、消灯を制御する斜照明制御手段と、
前記撮像手段により撮像された画像を用いて、前記マスク側アライメントマークの位置と前記基板側アライメントマークの位置を検出し、前記基板側アライメントマークの検出位置と前記マスク側アライメントマークの検出位置とに基づいて、前記ガラス基板と前記マスクとのずれ量を算出する制御手段と、
前記算出されたずれ量に基づいて、前記ガラス基板と前記マスクとの位置合わせを行う基板移動手段と
を備えることを特徴とするマスクアライメント装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記斜照明が消灯した状態で前記撮像手段により撮像された画像から前記基板側アライメントマークの位置を検出する第1のマーク検出手段と、
前記斜照明が点灯した状態で前記撮像手段により撮像された画像から前記マスク側アライメントマークの位置を検出する第2のマーク検出手段と、
前記第1のマーク検出手段で検出された基板側アライメントマークの位置と、前記第2のマーク検出手段で検出されたマスク側アライメントマークの検出位置とに基づいて、前記ガラス基板と前記マスクとのずれ量を算出し、前記算出されたずれ量に基づいて、前記ガラス基板と前記マスクとの位置合わせを行う第1の位置合わせ処理手段と、
を含むようにしたことを特徴とする請求項1に記載のマスクアライメント装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記斜照明が点灯した状態で前記撮像手段により撮像された画像から前記基板側アライメントマーク及び前記マスク側アライメントマークの双方の位置を検出する第3のマーク検出手段と、
前記第3のマーク検出手段で検出された基板側アライメントマーク及びマスク側アライメントマークの検出位置に基づいて、前記ガラス基板と前記マスクとのずれ量を算出し、前記算出されたずれ量に基づいて、前記ガラス基板と前記マスクとの位置合わせを行う第2の位置合わせ処理手段とを含み、
前記第1の位置合わせ処理手段による位置合わせを行った後に、前記第2の位置合わせ処理手段による位置合わせを行うようにしたことを特徴とする請求項2に記載のマスクアライメント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−293841(P2008−293841A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139198(P2007−139198)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】