説明

マスクブランク用基板とその製造方法、インプリントモールド用マスクブランク及びインプリントモールドの製造方法

【課題】インプリントモールドの離型(剥離)を容易にするための凹部を精度良く形成でき、且つそのような加工の工程負荷が小さくて済み、さらに凹部を形成することによるモールドの強度や剛性の低下を抑えたインプリントモールドの作製に用いるマスクブランク用基板を提供する。
【解決手段】基板と該基板の表側主表面上に形成された薄膜とを有してなり、前記薄膜及び基板をエッチング加工してインプリントモールドを作製するためのマスクブランクに用いる基板である。この基板1は、所定の形状の孔2を穿設してなる基材1aを含む少なくとも2枚の基材を接合することにより基板の裏側主表面にその少なくとも外周部を除く領域に上記孔2からなる凹部3を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスや微細パターンにより光学的機能を付加した光学部品等の作製に使用するインプリントモールドの製造方法、この製造に用いるインプリントモールド用マスクブランク、該マスクブランク用基板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細回路パターン、微細パターンにより光学的機能を付加した光学部品作製、ハードディスクドライブ等に用いられる磁気記録媒体における磁性層の微細パターン形成において、同じ微細パターンを大量に転写するためのインプリント法が用いられるようになってきている。
インプリント法に使用するインプリントモールド(スタンパ)は同じ微細パターンを大量に転写するための原版となる。インプリント法は、転写対象物上に塗布されたレジスト膜にインプリントモールドを直接押し付けてパターンを転写する方式のため、インプリントモールドのパターンの断面形状も、作製される微細パターンの形状に大きく影響する。半導体回路の集積度が向上するにつれ、パターンの寸法は小さくなり、インプリントモールドの精度もより高いものが要求されてきている。特にインプリント法は、前記のとおりインプリントモールドを直接押し付ける転写方式であり、等倍でのパターン転写となるので、作製される微細パターン、例えば半導体回路パターンと要求される精度が同じになるため、インプリントモールドの方が例えばフォトマスクよりも高精度のものが要求されることになる。
【0003】
従来のインプリントモールドの作製においては、石英ガラスなどの透光性基板上にクロム等の薄膜を形成したマスクブランクが用いられ、このマスクブランク上にレジストを塗布した後、電子線露光などを用いてレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして薄膜をエッチング加工することにより薄膜パターン(マスクパターン)を形成している。
【0004】
さらに、光硬化型樹脂が塗布された転写対象物に対して使用するインプリントモールドでは転写時に光を照射するため、上記薄膜パターンをマスクとして透光性基板をエッチング加工して段差パターン(凹凸パターン)を作製するが、この場合にも、透光性基板のパターン寸法、精度は薄膜パターンの寸法、精度に直接影響を受ける。したがって、最終的に高精度の微細パターンが形成されたインプリントモールドを作製するためには、マスクブランクにおける上記薄膜パターンを高いパターン精度で形成する必要がある。
【0005】
しかし、インプリント法では、いくら高精度の微細パターンが形成されたインプリントモールドを用いてパターンを転写しようとしても、インプリントモールドと硬化した樹脂とが強く密着してしまうため、インプリントモールドを転写対象物から剥離(離型)する際に強い力を必要とするので、結果的に形成された転写対象物上のパターンの破壊が起きたり、さらにインプリントモールドも破損してしまうことが問題となっていた。
【0006】
そこで、特許文献1には、転写されたパターンの破損を防止し、インプリントモールドの剥離工程を容易にすることを目的として、凹凸パターンが形成された面と逆側の面の基板に、基板外縁部から基板中心部に向けて窪みが深くなるように形成された凹部を形成したインプリントモールドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−170773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の開示によれば、インプリントモールドの凹凸パターンが形成された面と逆側の面の基板に凹部を形成することにより、剥離時に樹脂とインプリントモールドの付着力等によって凹部に応力がかかり、インプリントモールド自体が湾曲し、剥離力が付着面の周囲に集中して働くため、従来よりも小さい力で剥離を開始することができ、剥離が進行するにつれて剥離力が周囲から中心へと順次効率よく働いていくとされているが、このような作用効果を持たせるためには、凹部を精度よく形成する必要があり、凹部の加工の工程負荷が大きい。凹部の寸法や形状精度があまり良くないと、剥離時に凹部に加わる応力のバランスが崩れ、モールドの破損を引き起こす恐れがある。また、凹部の深いところでは基板の板厚の半分以上の深さまでを掘り込む必要があり、1枚の基材を用いてこのような凹部加工を行うと、モールド自体の強度や剛性が低下し、剥離時のモールド破壊を起こしやすい。
【0009】
また、凹部加工を機械加工等で行った場合、凹部の底面などに残留応力が残ることが影響し、基板の表側主表面が変形して平坦度が悪化してしまう可能性があった。基板の凹部を加工後の凹部底面の表面粗さは大幅に悪化している。特に光硬化型樹脂に対してパターン転写するためのインプリントモールドの場合、凹部底面から光を入射させるため、表面粗さが悪化していると光の散乱等によって、光硬化型樹脂に到達する光量が低下するため問題となる。また、凹部内側(底面や側壁等)の表面粗さが悪化していると、そこに削りカス等のパーティクルの付着している恐れがある。凹部底面や側壁等の表面粗さを所定値以上にする研磨加工が必要であるが、凹部底面や側壁等の凹部内の研磨は精度よく行うことが難しい。
【0010】
そこで、本発明は、このような従来の事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、第1に、インプリントモールドの離型(剥離)を容易にするための凹部を精度良く形成でき、且つそのような加工の工程負荷が小さくて済み、さらに凹部を形成することによるモールドの強度や剛性の低下を抑え、凹部内側の表面粗さを良好にでき、光硬化型樹脂に到達する光の光量の低下防止やパーティクル発生を抑制することができるインプリントモールドの作製に用いるマスクブランク用基板とその製造方法を提供することであり、第2に、このようなマスクブランク用基板を用いたインプリントモールド用マスクブランクを提供することであり、第3に、このようなマスクブランクを用いてモールドの剥離を容易にでき、モールドの破損等も防止できるインプリントモールドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
基板と該基板の表側主表面上に形成された薄膜とを有してなり、前記薄膜及び前記基板をエッチング加工してインプリントモールドを作製するためのマスクブランクに用いる基板であって、前記基板は、所定の形状の孔を穿設してなる基材を含む少なくとも2枚の基材を接合することにより前記基板の裏側主表面にその少なくとも外周部を除く領域に前記孔からなる凹部を形成してなることを特徴とするマスクブランク用基板である。
【0012】
(構成2)
前記基板を構成する少なくとも2枚の前記基材は、ガラスからなる基材を少なくとも含むことを特徴とする構成1に記載のマスクブランク用基板である。
(構成3)
前記基板に形成された前記凹部は、表側主表面のモールドパターン形成領域よりも大きな領域に形成されていることを特徴とする構成1又は2に記載のマスクブランク用基板である。
【0013】
(構成4)
前記凹部の底面の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.3nm以下であることを特徴とする構成1乃至3のいずれか一項に記載のマスクブランク用基板である。
(構成5)
前記基板を構成する所定の形状の孔を穿設してなる基材とそれ以外の基材とは、熱膨張係数の異なる材料を組み合わせてなることを特徴とする構成1乃至4のいずれか一項に記載のマスクブランク用基板である。
【0014】
(構成6)
基板と該基板の表側主表面上に形成された薄膜とを有してなり、前記薄膜及び前記基板をエッチング加工してインプリントモールドを作製するためのマスクブランクに用いる基板の製造方法であって、少なくとも1枚の所定の形状の孔を穿設してなる平板状の第1の基材を作製する工程と、前記第1の基材と、少なくとも1枚の平板状の第2の基材とを接合することにより前記基板の裏側主表面にその少なくとも外周部を除く領域に前記孔からなる凹部を形成する工程とを有することを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法である。
【0015】
(構成7)
前記第1の基材と前記第2の基材を接合する際の両者の接合面をそれぞれ所定の平坦度となるように仕上げる工程を含むことを特徴とする構成6に記載のマスクブランク用基板の製造方法である。
(構成8)
前記第1の基材と前記第2の基材がいずれもガラスからなることを特徴とする構成6又は7に記載のマスクブランク用基板の製造方法である。
【0016】
(構成9)
構成1乃至5のいずれか一項に記載のマスクブランク用基板の表側主表面にパターン形成用の薄膜を備えたことを特徴とするインプリントモールド用マスクブランクである。
【0017】
(構成10)
構成9に記載のインプリントモールド用マスクブランクにおける前記薄膜及び前記基板をエッチング加工する工程を有することを特徴とするインプリントモールドの製造方法である。
【0018】
(構成11)
所定の形状の孔を穿設してなる第1の基材を作製する工程と、第2の基材の表面にパターン形成用の薄膜を備えたマスクブランクを用いて第2の基材の表面に凹凸パターンを形成する工程と、前記第1の基材と、前記第2の基材の前記凹凸パターンを形成した面と反対側の面とを接合する工程とを有することを特徴とするインプリントモールドの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、インプリントモールドを作製するためのマスクブランクに用いる基板は、所定の形状の孔を穿設してなる基材を含む少なくとも2枚の基材を接合することにより前記基板の裏側主表面にその少なくとも外周部を除く領域に前記孔からなる凹部を形成したことにより、インプリントモールドの離型(剥離)を容易にするための凹部を精度良く形成でき、且つそのような加工の工程負荷が小さくて済み、さらに凹部を形成することによるモールドの強度や剛性の低下を抑え、凹部内側の表面粗さを良好にでき、光硬化樹脂に到達する光の光量の低下防止やパーティクル発生を抑制することができるインプリントモールドの作製に用いるマスクブランク用基板とその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、このようなマスクブランク用基板を用いたインプリントモールド用マスクブランクを提供することができる。
また、本発明によれば、このようなマスクブランクを用いてモールドの剥離を容易にでき、モールドの破損等も防止できるインプリントモールドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のマスクブランク用基板の構成を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明のマスクブランク用基板を構成する第1の基材の平面図である。
【図3】本発明のインプリントモールド用マスクブランクの概略断面図である。
【図4】本発明のインプリントモールドの使用状態を説明するための概略断面図である。
【図5】本発明のインプリントモールドの製造工程を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明のマスクブランク用基板は、基板と該基板の表側主表面上に形成された薄膜とを有してなり、前記薄膜及び前記基板をエッチング加工してインプリントモールドを作製するためのマスクブランクに用いる基板であって、前記基板は、所定の形状の孔を穿設してなる基材を含む少なくとも2枚の基材を接合することにより前記基板の裏側主表面にその少なくとも外周部を除く領域に前記孔からなる凹部を形成してなることを特徴としている。
【0022】
図1は、本発明のマスクブランク用基板の構成を説明するための概略断面図である。
図1は本発明のマスクブランク用基板の一実施の形態を示すものであり、かかるマスクブランク用基板(以下、単に「基板」と呼ぶこともある。)1は、平板状の基材に所定の形状の孔2を穿設してなる第1の基材1aと、平板状の第2の基材1bの主表面同士を接合することにより、基板1の片面側、すなわちインプリントモールドのパターンを形成する側の表側主表面(パターン形成面)11と反対側の面である裏側主表面(凹部形成面)12に、その少なくとも外周部を除く領域に前記孔2からなる凹部3を形成したものである。図2は上記基板1を構成する第1の基材1aの平面図であるが、本実施の形態においては、上記第1の基材1aは、全体が矩形状を成しており、上記孔2については円形状を成している。また、上記第2の基材1bについても全体が上記第1の基材1aと同じ矩形状を成している。もちろん、基板1の外形はこのような矩形状に限定される必要はなく、また上記孔2の形状はこのような円形状に限定される必要はなく、矩形状や多角形状であってもよく、インプリントモールドの用途、大きさなどに応じて適宜決定される。
【0023】
なお、このマスクブランク用基板から作製されるインプリントモールドを使用してパターン転写するときに転写装置(スタンパ装置)が、インプリントモールドを対向する端面を挟み込んで固定する方式の場合には、基板1の外形は、対向する端面間の幅のばらつきが50μm以下、より好ましくは40μm以下の平行度の高い方形状であることが望ましい。この場合、端面の平坦度が20μm以下、より好ましくは10μm以下であることが望ましい。
【0024】
また、基板1の孔2は、その中心が基板1の中心と一致していることが最も望ましく、少なくともそのずれが100μm以下、より好ましくは50μm以下であることが好ましい。表側主表面に形成されるモールドパターン(凹凸パターン)の中心を基板の中心に一致させるようにすることが一般的であり、転写対象物のレジスト膜へのインプリントモールドの押し付け時や剥離時の変形が凹凸パターンの中心から順次広がっていくようになるためである。また、孔2の形状(断面形状)は、真円形状であることが望ましい。転写装置にインプリントモールドを固定して転写するときの孔2の凹部3と転写装置の固定装置とで形成される空間内の内圧が表側主表面の変形に与える影響が同心円状の分布となり調整しやすいためである。なお、孔2の大きさであるが、円形状の場合では直径、矩形の場合は短辺方向の長さで50mm以上であることが好ましく、60mm以上であると好適である。また、孔2が穿設された基材1bの剛性確保を考慮すると基板1の大きさが約152mm角である場合においては、孔2の直径または短辺方向の長さは、100mm以下であることが望ましく、90mm以下であると好適である。
【0025】
本発明のマスクブランク用基板1は、そのパターン形成面11にマスクパターンである凹凸パターンが形成されることにより、インプリントモールドとして使用されるため、該基板1を構成する上記第1の基材1aおよび第2の基材1bの材質としては、インプリントモールドとして使用するのに要求される適度な強度や剛性を有する材料であれば特に制約はなく任意に用いることができる。例えば、石英ガラスやSiO−TiO系低膨張ガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、CaFガラス等のガラス素材、シリコン、ステンレス(SUS)、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属素材、樹脂素材などが挙げられる。これらのうちガラス素材は特に好適である。ガラス素材は、非常に精度の高い加工が可能で、しかも平坦度及び平滑度に優れるため、本発明により得られるインプリントモールドを使用してパターン転写を行う場合、転写パターンの歪み等が生じないで高精度のパターン転写を行える。従って、上記基板1を構成する第1の基材1aと第2の基材1bは、ガラスからなる基材を少なくとも含むことが好ましい。光硬化樹脂に対してパターン転写を行うインプリントモールドを作製するためのマスクブランク用基板の場合においては、少なくとも基板1bはガラス素材であることが望ましく、石英ガラスやSiO−TiO系低膨張ガラスが特に好ましい。
【0026】
また、上記第1の基材1aと第2の基材1bは、同じ材質であってもよいし、あるいは異なる材質であってもよい。異なる材質を用いる場合は、熱膨張係数の異なる材料を組み合わせることが特に好適である。第1の基材1aと第2の基材1bとが熱膨張係数の異なる材料であることにより、基板1に凹部3を形成したことに加えて、インプリントモールドの離型時に加熱又は冷却することで第1の基材1aと第2の基材1bの間で相対的な引っ張り応力あるいは圧縮応力が作用してモールドの離型がよりいっそうしやすくなる(つまり、より小さな力で離型できる)。例えば、石英ガラスとシリコンとは熱膨張係数が1桁程異なるので、第1の基材1aにシリコンを、第2の基材1bに石英ガラスを用いた場合、モールド離型時にモールドを冷却すると、第1の基材1aと第2の基材1bとの間で熱膨張差が生じ、第1の基材1aには圧縮応力が働くのに対し、第2の基材1bには相対的に引っ張り応力が働くため、モールドの離型が容易に行える。
【0027】
また、本発明のマスクブランク用基板1に形成する前記凹部3は、少なくとも外周部を除く領域に形成されるが、該凹部3を形成した裏側主表面12と反対側の表側主表面11に形成されるモールドパターン(凹凸パターン)形成領域よりも大きな領域に形成されることが好ましい。凹部3が形成される領域がモールドパターン形成領域よりも小さいと、外側のモールドパターンにほとんど変形しない部分が発生し、外側に変形するモールドパターンと挟まれるレジスト膜が潰されてしまう恐れがあるからである。特に、光硬化樹脂に対してパターン転写を行うインプリントモールドを作製するためのマスクブランク用基板の場合においては、凹部3と裏側主表面12との境界部分が、表側主表面11のモールドパターン形成領域に掛かってしまうと、光硬化樹脂を硬化させるための光の入射が正常に行うことができず、樹脂の硬化不良が起こる可能性がある。
【0028】
このような本発明のマスクブランク用基板によれば、所定の形状の孔を穿設してなる基材を含む少なくとも2枚の基材を接合することにより前記基板の裏側主表面にその少なくとも外周部を除く領域に前記孔からなる凹部を形成してなるため、インプリントモールドの離型(剥離)を容易にするための凹部は、基板を構成する少なくとも1枚の基材に予め所定の形状の孔を穿設しておくことで形成できるので、そのような加工の工程負荷も小さくて済み、接合後の基板の裏側主表面に凹部を精度良く形成できる。さらに、本発明の基板は、前記孔を穿設した基材と平板状の基材の少なくとも2枚の基材を接合しているため、従来のような1枚の基板に凹部を形成することによるモールドの強度や剛性の低下を抑えることができる。また、少なくとも2枚の基材の材質が異なるものを使用したマスクブランク用基板を得ることが可能である。
【0029】
したがって、このような本発明のマスクブランク用基板を用いたマスクブランクを用いて得られるインプリントモールドは、離型時の剥離をより小さな力で容易に行えるとともに、転写対象物(被転写体)に転写されたパターンの破損や、モールド自体の破損等も有効に防止することが可能である。
【0030】
また、凹部加工を機械加工等で行った場合、凹部の底面などに残留応力が残ることが影響し、基板の表側主表面が変形して平坦度が悪化してしまう可能性があるが、本発明のマスクブランク用基板によれば、凹部形成による残留応力を抑制することが可能である。また、従来の1枚の基板の裏面主表面から凹部を形成する加工を行う場合、凹部を加工後の凹部底面の表面粗さは大幅に悪化している。特に光硬化型樹脂に対してパターン転写するためのインプリントモールドの場合、凹部底面から光を入射させるため、表面粗さが悪化していると光の散乱等によって、光硬化樹脂に到達する光量が低下するため問題となる。また、凹部内側(底面や側壁等)の表面粗さが悪化していると、そこに削りカス等のパーティクルの付着している恐れがある。凹部底面や側壁等の表面粗さを所定値以上にする研磨加工が必要であるが、凹部を形成した後に凹部底面や側壁等の凹部内を精度よく研磨することは非常に難しい。本発明のマスクブランク用基板によれば、表裏を貫通した孔を穿設した基材を先に作製するため、凹部の側壁を所望の表面粗さに研磨することは比較的容易にできる。また、凹部の底面となる平板状の基材の裏面は、従来の研磨技術で容易に所望の表面粗さや平坦度に加工できる。そして、所望の表面粗さに研磨された2つの基材を接合すれば、凹部内(底面や側壁)は所望の表面粗さとすることができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、上記第1の基材1aと第2の基材1bはともに1枚の基材を用いているが、第1の基材と第2の基材の一方を、あるいは両方をそれぞれ2枚以上の基材を接合させた構成としてもよい。
また、本発明の基板を構成する第1の基材1aと第2の基材1bのそれぞれの厚さは特に制約はされないが、第1の基材の厚さは、接合した後のマスクブランク用基板1の全体厚さに対して、0.1〜0.25倍の範囲とするのが好適である。第1の基材の厚さが0.25倍より厚くなると、第1の基材を変形させるために掛かる力が大きくなり過ぎ、変形後に元の形状に戻らなくなる恐れや、亀裂が入る恐れがある。また、第1の基材の厚さが0.1倍よりも薄くなると、基材の耐力が低く変形時に亀裂が入る恐れがある。
【0032】
次に、以上説明したような本発明のマスクブランク用基板の製造方法について説明する。
本発明は、本発明のマスクブランク用基板の製造方法についても提供するものであり、少なくとも1枚の所定の形状の孔を穿設してなる平板状の第1の基材を作製する工程と、前記第1の基材と、少なくとも1枚の平板状の第2の基材とを接合することにより前記基板の裏側主表面にその少なくとも外周部を除く領域に前記孔からなる凹部を形成する工程とを有することを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法である。
【0033】
上記第1の基材1aと第2の基材1bはいずれも所定の形状、外形寸法、板厚に仕上げられた平板状の基材を使用する。
上記第1の基材1aを作製する工程における所定の形状の孔2を穿設するための加工手段としては、特に制約される必要はなく、公知の機械加工法、エッチング法などの微細加工方法を任意に用いることができる。具体的には、例えば、レーザー加工、切削加工、ガスクラスターイオンビーム(GCIB)に代表されるイオンビームミリング加工、磁性流体研磨(magneto-rheological finishing:MRF)加工、ウォータージェット加工、エッチング(ウェットエッチング、ドライエッチング)、研磨スラリーを用いた研磨加工、等の微細加工方法の中から、基材の材質、加工する孔の形状や大きさ等を考慮して適宜選択して用いればよい。
【0034】
次に、上記所定の形状の孔2を穿設した第1の基材1aと平板状の第2の基材1bとを接合する手段としては、第1の基材と第2の基材との十分な接着力が得られる方法であれば、特に制約される必要はない。ここで十分な接着力とは、インプリントモールドの使用時に第1の基材と第2の基材との剥離等が起こらないような接着力のことである。
【0035】
本発明においては、具体的には、例えば、溶接(溶着)法、接着法、陽極接合法、フッ酸接合法、光学溶着法(オプティカルコンタクト)などの方法を好ましく用いることができる。
【0036】
上記溶接(溶着)法とは、接合する2つの部材(本発明では上記第1の基材1aと第2の基材1b)の接合面同士を加熱等により溶融・一体化(融合)させる方法である。この方法は、本発明における第1の基材1aと第2の基材1bの材質にかかわらず、また第1の基材1aと第2の基材1bの材質が同一でも或いは異なる場合でも適用することができる。
【0037】
また、上記接着法とは、接合する2つの部材(本発明では上記第1の基材1aと第2の基材1b)同士を接着剤(例えば紫外線(UV)硬化型接着剤などが好適)を用いて貼り合せる方法である。この方法は、用いる接着剤の種類にもよるが、第1の基材1aと第2の基材1bの材質が同一である場合に特に高い接着性が得られるので好適である。
【0038】
また、上記陽極接合法とは、接合する2つの部材(本発明では上記第1の基材1aと第2の基材1b)の接合面同士を重ね合わせて加熱(例えば300〜500℃程度)しながら電圧(例えば400〜600V程度)を印加する方法であり、これによって接合界面で共有結合による接合ができる。但し、この方法は、第1の基材1aと第2の基材1bの一方がガラス素材、他方がシリコンあるいは金属である場合に好ましく適用することができる。ガラス素材同士で接合する場合には、少なくとも一方の接合面に、SiN、SiC、アモルファスシリコンなどの薄膜を形成しておくとよい。
【0039】
また、上記フッ酸接合法とは、接合する2つの部材(本発明では上記第1の基材1aと第2の基材1b)の接合面にフッ酸を滴下後、接合面同士を重ね合わせ、所定の圧力で加圧することで接合させる方法であり、ガラス素材同士を接合させる場合に好適である。
【0040】
また、上記光学溶着法(オプティカルコンタクトとも呼ばれる。)とは、高平坦度且つ高平滑に仕上げられた2つの部材(本発明では上記第1の基材1aと第2の基材1b)の接合面同士を密着させる(場合によって同時に圧力をかける)方法であり、接合界面に生じる分子間力(分子間結合)により接合される。この方法は、精密研磨されたガラス平面同士を接合させる場合に特に好適である。
したがって、接合する第1の基材1aと第2の基材1bのそれぞれの材質に応じて好適な接合方法を適宜選択して用いればよい。
【0041】
なお、上記第1の基材1aと第2の基材1bを接合する際、上述したようないずれの接合方法を用いるにしても、強い接合力を得るためには両者の接合面それぞれの平坦度が高いことが要求され、とりわけ上記光学溶着法では接合面の高平坦度且つ高平滑性が要求される。したがって、上記第1の基材1aと第2の基材1bを接合する工程に先立ち、上記第1の基材1aと第2の基材1bの両者の接合面をそれぞれ所定の平坦度、例えば5μm以下程度の平坦度となるように仕上げる工程を含むことが好ましい。ここで、平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、例えば142mm角エリアにおいて、基材表面を基準として最小自乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基材表面の最も高い位置と、焦平面より下にある基材表面の最も低い位置との高低差の絶対値とする。ただし、光学溶着法による接合の場合、本発明では高い接合強度が求められるので、両接合面の面精度は、例えばλ/10(λ=633nmにおいて)、平坦度では60nm以下の高精度にしておくことが望ましい。
【0042】
上記第1の基材1aと第2の基材1bの両者の接合面をそれぞれ所定の平坦度となるように仕上げるための加工手段としては、特に制約される必要はなく、公知の機械加工法、エッチング法などの表面加工方法を任意に用いることができる。具体的には、例えば、局所プラズマエッチングによる加工、ガスクラスターイオンビーム(GCIB)に代表されるイオンビーム加工、磁性流体研磨(magneto-rheological finishing:MRF)加工、エッチング(ウェットエッチング、ドライエッチング)、研磨スラリーを用いた鏡面研磨加工、ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)、等の表面加工方法の中から、基材の材質等を考慮して適宜選択して用いればよい。なお、ガラス素材は、非常に精度の高い表面加工が可能であり、高平坦度及び高平滑度が得られる。
【0043】
なお、上記第1の基材1aに関しては、所定の形状の孔2を穿設する加工と、接合面を所定の平坦度となるように仕上げる加工のいずれを先に行ってもよいが、加工の工程負荷を低減させる観点からは、最初に接合面を所定の平坦度となるように仕上げる加工、次いで所定の形状の孔2を穿設する加工の順に実施することが好ましい。
また、上記第2の基材1bにおける接合面と反対側の面、つまりパターン形成面11については、インプリントモールドの微細モールドパターン(凹凸パターン)を形成するためのマスクブランクとするための薄膜を成膜できるように好適な表面状態に仕上げておくことが望ましい。
【0044】
以上説明したように、このような本発明のマスクブランク用基板の製造方法によれば、インプリントモールドの離型(剥離)を容易にするための凹部は、基板を構成する少なくとも1枚の基材に予め所定の形状の孔を穿設しておくことで形成できるので、そのような加工の工程負荷も小さくて済み、接合後の基板の片面側に凹部を精度良く形成することができる。また、本発明のマスクブランク用基板は、平板状の基材に前記孔を穿設した基材と、別の平板状の基材の少なくとも2枚の基材を接合することにより得られるため、従来のような1枚の基板に凹部を形成することによるモールドの強度や剛性の低下を抑えることができる。さらに、少なくとも2枚の基材の材質が異なるものを使用したマスクブランク用基板を得ることが可能である。
【0045】
次に、以上説明したような本発明のマスクブランク用基板を用いたインプリントモールド用マスクブランクについて説明する。
本発明は、インプリントモールド用マスクブランクについても提供するものであり、本発明のマスクブランク用基板の前記凹部を形成した裏側主表面とは反対側の表側主表面にパターン形成用の薄膜を備えたことを特徴とするインプリントモールド用マスクブランクである。
【0046】
図3は、本発明のインプリントモールド用マスクブランクの概略断面図であり、本発明のインプリントモールド用マスクブランクの一実施の形態を示すものである。
すなわち、図3に示すインプリントモールド用マスクブランク10は、本発明のマスクブランク用基板1の前記凹部3を形成した裏側主表面とは反対側の表側主表面、すなわちインプリントモールドのパターンを形成する側の面(パターン形成面)11に、パターン形成用の薄膜4を備えたものである。
【0047】
このようなインプリントモールド用マスクブランク10におけるパターン形成用の薄膜4としては、単層でも複数層でもよい。例えば、薄膜4がクロム材料の単層膜よりなるマスクブランクなどが一例として挙げられる。また、例えば薄膜4が少なくとも上層と下層の積層膜よりなり、上層はクロム(Cr)系材料で形成され、下層がタンタル(Ta)を主成分とする材料で形成されたマスクブランクなどが一例として挙げられる。クロム系材料としては、Cr単体、またはCrの窒化物、炭化物、炭化窒化物などのCr化合物があり、単層膜の場合はCrOCNが特に好ましい。また、タンタルを主成分とする材料としては、例えばTaHf、TaZr、TaHfZrなどのTa化合物、あるいはこれらのTa化合物をベース材料として、例えばB、Ge、Nb、Si、C、N等の副材料を加えた材料などがある。
勿論、このような薄膜の構成および材料の例示はあくまでも一例であり、本発明はこれらに制約される必要はまったくない。
【0048】
薄膜4を形成する方法は、特に制約される必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。スパッタリング成膜法によると、均一で膜厚の一定な膜を形成することができるので好適である。
スパッタリング成膜法によってたとえば上述の積層膜よりなる薄膜の下層として例えばTaHf膜を成膜する場合、スパッタターゲットとしてTaとHfの合金ターゲットを用い、チャンバー内に導入するスパッタガスは、アルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを用いる。また、上記積層膜の上層として例えばCrN膜を成膜する場合、スパッタターゲットとしてCrターゲットを用い、チャンバー内に導入するスパッタガスは、アルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスに窒素ガスを混合したものを用いる。
【0049】
また、上記マスクブランク10は、第2の基材1bの片面に先にパターン形成用の薄膜4を成膜してから、該第2の基材1bと、孔2を穿設した第1の基材1aとを接合することにより作製することも可能である。
また、本発明のインプリントモールド用マスクブランクは、上記薄膜4の上に、レジスト膜を形成した形態であっても構わない。
【0050】
次に、以上説明したような本発明のインプリントモールド用マスクブランクを用いたインプリントモールドの製造方法について説明する。
本発明は、インプリントモールドの製造方法についても提供するものであり、本発明のインプリントモールド用マスクブランクにおける前記薄膜及び基板をエッチング加工することを特徴とするインプリントモールドの製造方法である。
【0051】
図5は、本発明のインプリントモールドの製造工程を説明するための概略断面図である。この図5を参照して、本発明のインプリントモールド用マスクブランク10(図3参照)を用いたインプリントモールドの製造方法を説明する。なお、図5の(a)〜(e)においては、基板1の凹部3の図示を省略している。
まず、本発明のマスクブランク10の薄膜4の上面に、例えば電子線描画用のレジストを塗布し、所定のベーク処理を行って、マスクブランク10上にレジスト膜5を形成する(図5(a)参照)。
【0052】
次に、電子線描画機などを用いて、上記マスクブランク10のレジスト膜5に所定のパターン(例えばラインアンドスペースパターン)を描画した後、レジスト膜5を現像してレジストパターン5aを形成する(同図(b)参照)。
【0053】
次に、レジストパターン5aを形成したマスクブランク10を、ドライエッチング装置に導入し、上記レジストパターン5aをマスクとして薄膜4をエッチング加工して、同図(c)に示すように薄膜パターン4aを形成する。
ここで、ドライエッチング装置からマスクブランクを一旦取り出して、残存する上記レジストパターン5aを除去してもよい(同図(d)参照)。
なお、上記薄膜4の層構成、材質によっては、エッチング加工を1段階ではなく、2段階以上で行うこともある。
次いで、上記薄膜パターン4aをマスクとして基板1をエッチング加工して、基板1の凹凸パターン(段差パターン)6を形成する(同図(e)参照)。
【0054】
次に、上記基板1の凹凸パターン6を形成したマスクブランク上に同図(f)に示す台座構造用のレジストパターン7を形成する。
次いで、上記レジストパターン7を形成したマスクブランクについて、例えばウェットエッチングにより、レジストパターン7で保護されている部分以外の薄膜4を除去し、さらに基板1に例えばウェットエッチングを行い、さらにレジストパターン7を除去することで、同図(g)に示すような台座構造8を作製する。またさらに上記凹凸パターン6上の薄膜パターン4aを除去することにより、同図(h)に示す構造のインプリントモールド20を得る。
【0055】
以上は図3に示したマスクブランクを用いたインプリントモールドの製造方法を説明したが、本発明のインプリントモールドの製造方法はこれに限定されるものではない。本発明は、所定の形状の孔を穿設してなる第1の基材を作製する工程と、第2の基材の表面にパターン形成用の薄膜を備えたマスクブランクを用いて第2の基材の表面に凹凸パターンを形成する工程と、前記第1の基材と、前記第2の基材の前記凹凸パターンを形成した面と反対側の面とを接合する工程とを有することを特徴とするインプリントモールドの製造方法についても提供するものである。
【0056】
すなわち、前記第2の基材1bの片面にパターン形成用の薄膜4を成膜したマスクブランクを用いて、その薄膜4及び基材1bをエッチング加工することによって、該第2の基材1bの表面に凹凸パターンを形成する。そして、該第2の基材1bの前記凹凸パターンを形成した面と反対側の面と、孔2を穿設した第1の基材1aとを接合することによりインプリントモールドを作製することも可能である。
なお、このインプリントモールドの製造方法の場合、第1の基材と第2の基材とを接合するときには、第2の基材の表側主表面に形成されている凹凸パターンを少なくとも保護する保護膜を形成しておくことが望ましい。保護膜としては、接合後に剥離するときに基材へのダメージが極力小さい材料が望ましく、例えば、レジスト膜等の溶剤で除去可能な樹脂材料や、基材を形成する材料に対して高いエッチング選択性を有する金属材料(Cr系材料やTa系材料)などが挙げられる。なお、この保護膜に樹脂材料を適用する場合においては、第1の基材と第2の基材との接合方法は、前記の接合法のうち、加熱の不要な接着法、フッ酸接合法、光学溶着法が望ましい。
【0057】
図4は、本発明のインプリントモールドの使用状態を説明するための概略断面図である。
本発明により得られるインプリントモールド20は、被転写体(転写対象物)30における被転写体構成層(例えばシリコンウェハ)31上に塗布されたレジスト膜(例えばUV硬化型樹脂や熱硬化型樹脂)32に直接押し付けて凹凸パターン6を転写する。
本発明により得られるインプリントモールドを用いることにより、離型時のモールドの剥離をより小さい力で容易にでき、そのため被転写体上に転写されたパターンの破損や、モールドの破損等も有効に防止することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例によって、本発明を実施するための形態をより具体的に説明する。
(実施例1)
所定形状、大きさ、板厚に加工した合成石英からなる第1の基材1a(大きさ152mm×152mm×厚さ5.00mm)と第2の基材1b(大きさ152mm×152mm×厚さ1.30mm)を用意した。
これら2枚の基材1a,1bとも、その両主表面を所定の平滑度及び平坦度となるように、研磨スラリーを用いて鏡面研磨加工を行った。とくに、各基材1a,1bの接合面となる面については、平坦度が5μm以下になるように研磨加工を行った。また、第2の基材1bの両主表面の表面粗さを、算術平均粗さRaで0.3nm以下となるように研磨加工を行った。
【0059】
研磨加工を終えた第1の基材1aは、基材の主表面を中心とした直径70mmの円形断面の孔2を抜き孔加工(つまり孔を穿設)した。
次いで、これら第1の基材1aと第2の基材1bとを、5μm以下の平坦度に仕上げられている接合面同士が重なり合わされた状態で1700℃の高温炉内に入れて接合した。
以上のようにして、本発明のマスクブランク用基板を作製した。
【0060】
(実施例2)
実施例1と同様にして表面研磨加工、抜き孔加工を施した合成石英からなる第1の基材1aと、実施例1と同様にして表面研磨加工を施した合成石英からなる第2の基材1bを、UV硬化型接着剤を用いて接合することにより、本発明のマスクブランク用基板を作製した。
【0061】
(実施例3)
実施例1と同様にして表面研磨加工、抜き孔加工を施した合成石英からなる第1の基材1aと、実施例1と同様にして表面研磨加工を施した合成石英からなる第2の基材1bを、フッ酸結合法により接合した。第2の基材1bの接合面にフッ酸溶液(フッ酸濃度5wt%)を滴下し、第1の基材1aと第2の基材1bの接合面同士を重ね合わせ、両基材の接合面とは反対側の主表面から加圧して接合した。
以上のようにして、本発明のマスクブランク用基板を作製した。
【0062】
(実施例4)
実施例1と同様にして表面研磨加工、抜き孔加工を施した合成石英からなる第1の基材1aと、実施例1と同様にして表面研磨加工を施した合成石英からなる第2の基材1bを光学溶着法により接合した。ただし、実施例1とは異なり、各基材1a,1bの接合面となる面については、面精度がλ/10、平坦度で60nm以下となるように研磨加工を行った。そして、高い面精度(高平坦度)に仕上げた第1の基材1aと第2の基材1bの接合面同士を重ね合わせ、両基材の接合面とは反対側の主表面から加圧して接合した。
以上のようにして、本発明のマスクブランク用基板を作製した。
【0063】
(実施例5)
実施例1と同様にして表面研磨加工、抜き孔加工を施したシリコンからなる第1の基材1aと、実施例1と同様にして表面研磨加工を施した合成石英からなる第2の基材1bとを、陽極接合法により接合した。陽極接合法の条件は、1000℃に加熱しながら、500Vの電圧を印加することで接合を行った。
以上のようにして、本発明のマスクブランク用基板を作製した。
【0064】
(実施例6)
上記実施例1により得られた本発明のマスクブランク用基板の表側主表面上に、枚葉式スパッタ装置を用いて、スパッタターゲットにタンタル(Ta)とハフニウム(Hf)の合金ターゲット(原子%比 Ta:Hf=80:20)を用い、アルゴンガス雰囲気(ガス圧0.3Pa)で、DC電源の電力を2.0kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、TaHf膜(導電性膜)を膜厚7nmで成膜し、引き続いて、クロムターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)の混合ガス雰囲気で、CrN膜(Cr:N=80:20原子%比)を膜厚2.5nmで成膜することにより、TaHf膜とCrN膜の積層薄膜を形成して、インプリントモールドの作製に用いるマスクブランクを作製した。
【0065】
(実施例7)
上記実施例6により得られたマスクブランクを用いて以下のようにインプリントモールドを作製した。
本発明のマスクブランク用基板上にTaHf膜とCrN膜の積層薄膜を形成したマスクブランクの上面に、電子線描画用のレジスト(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ PRL009)を50nmの厚みに塗布し、所定のベーク処理を行って、マスクブランク上にレジスト膜を形成した。
【0066】
次に、電子線描画機を用いて、上記マスクブランクのレジスト膜にハーフピッチ20nmのラインアンドスペースパターンを描画した後、レジスト膜を現像してレジストパターンを形成した。
次に、上記レジストパターンを形成したマスクブランクを、ドライエッチング装置に導入し、酸素を含まない塩素ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、上記レジストパターンをマスクとしてTaHf膜とCrN膜の積層薄膜をエッチング加工して、この積層薄膜からなるパターンを形成した。この時のエッチング終点は、反射光学式の終点検出器を用いることで判別した。
ここで、ドライエッチング装置からマスクブランクを一旦取り出して、残存する上記レジストパターンを硫酸過水溶液によって除去した。
【0067】
次いで、再びマスクブランクを同じドライエッチング装置に導入し、フッ素系(CHF)ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、上記積層薄膜パターンをマスクとして合成石英ガラスからなる基板をエッチング加工して、ガラスパターン(ガラスの段差パターン)を形成した。
なお、ここでガラスパターンの断面形状を確認するため、上記と同様に作製した評価用のブランクを破断し、走査型電子顕微鏡によるパターン断面の観察を行ったところ、ガラスパターンの幅が、上記積層薄膜パターンの幅とほとんど同じであること、およびガラスパターンの深さが均一であることを確認した。
【0068】
次に、上記ガラスパターンを形成したマスクブランク上にフォトレジスト(東京応化社製 iP3500)を460nmの厚さに塗布し、紫外光による露光と現像を行い、台座構造用のレジストパターンを形成した。
次に、上記台座構造用のレジストパターンを形成したマスクブランクについて、硝酸第2セリウムアンモニウム液によるウェットエッチングにより、上記レジストパターンで保護されている部分以外の積層薄膜を除去し、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムの混合液(HF濃度4.6wt%、NHF濃度36.4wt%)で合成石英ガラスからなる基板にウェットエッチングを行い、さらに硫酸過水により上記レジストパターンを除去することで、深さが例えば15μm程度の台座構造を作製した。さらに上記ガラスパターン上の積層薄膜パターンを硝酸第2セリウムアンモニウム液で除去し、インプリントモールド(前述の図5(h)参照)を得た。
【0069】
得られたインプリントモールドは、上記TaHf膜とCrN膜の積層薄膜パターンのパターン精度が良好であったため、ガラスパターンについても寸法、精度の良好なパターンが得られた。
次に、得られたインプリントモールドを、前述の図4に示すように、被転写体(転写対象物)における例えばシリコンウェハ上に塗布されたレジスト膜(例えばUV硬化型樹脂)に直接押し付けてパターンを転写する工程を繰り返し実施したが、本発明により得られるインプリントモールドを用いることにより、離型時のモールドの剥離をより小さい力で容易にでき、被転写体上に転写されたパターン(レジストパターン)の破損や、モールドの破損等は発生しなかった。
【符号の説明】
【0070】
1 基板(マスクブランク用基板)
1a 第1の基材
1b 第2の基材
2 孔
3 凹部
4 薄膜
4a 薄膜パターン
5 レジスト層
5a レジストパターン
6 凹凸パターン
7 レジストパターン
8 台座構造
10 インプリントモールド用マスクブランク
11 パターン形成面
12 凹部形成面
20 インプリントモールド
30 被転写体
31 被転写体構成層
32 レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と該基板の表側主表面上に形成された薄膜とを有してなり、前記薄膜及び前記基板をエッチング加工してインプリントモールドを作製するためのマスクブランクに用いる基板であって、
前記基板は、所定の形状の孔を穿設してなる基材を含む少なくとも2枚の基材を接合することにより前記基板の裏側主表面にその少なくとも外周部を除く領域に前記孔からなる凹部を形成してなることを特徴とするマスクブランク用基板。
【請求項2】
前記基板を構成する少なくとも2枚の前記基材は、ガラスからなる基材を少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク用基板。
【請求項3】
前記基板に形成された前記凹部は、表側主表面のモールドパターン形成領域よりも大きな領域に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマスクブランク用基板。
【請求項4】
前記凹部の底面の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.3nm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマスクブランク用基板。
【請求項5】
前記基板を構成する所定の形状の孔を穿設してなる基材とそれ以外の基材とは、熱膨張係数の異なる材料を組み合わせてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のマスクブランク用基板。
【請求項6】
基板と該基板の表側主表面上に形成された薄膜とを有してなり、前記薄膜及び前記基板をエッチング加工してインプリントモールドを作製するためのマスクブランクに用いる基板の製造方法であって、
少なくとも1枚の所定の形状の孔を穿設してなる平板状の第1の基材を作製する工程と、前記第1の基材と、少なくとも1枚の平板状の第2の基材とを接合することにより前記基板の裏側主表面にその少なくとも外周部を除く領域に前記孔からなる凹部を形成する工程とを有することを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項7】
前記第1の基材と前記第2の基材を接合する際の両者の接合面をそれぞれ所定の平坦度となるように仕上げる工程を含むことを特徴とする請求項6に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項8】
前記第1の基材と前記第2の基材がいずれもガラスからなることを特徴とする請求項6又は7に記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のマスクブランク用基板の表側主表面にパターン形成用の薄膜を備えたことを特徴とするインプリントモールド用マスクブランク。
【請求項10】
請求項9に記載のインプリントモールド用マスクブランクにおける前記薄膜及び前記基板をエッチング加工する工程を有することを特徴とするインプリントモールドの製造方法。
【請求項11】
所定の形状の孔を穿設してなる第1の基材を作製する工程と、第2の基材の表面にパターン形成用の薄膜を備えたマスクブランクを用いて第2の基材の表面に凹凸パターンを形成する工程と、前記第1の基材と、前記第2の基材の前記凹凸パターンを形成した面と反対側の面とを接合する工程とを有することを特徴とするインプリントモールドの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−148227(P2011−148227A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12280(P2010−12280)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】