説明

マスタシリンダおよび液圧制御システム

【課題】完全なバイワイヤ制御にも適用可能で、液圧制御システム内に組み込んだときに配置スペース取らないマスタシリンダを提供する。
【解決手段】マスタシリンダユニット14は、ブースタ室28、第1マスタ室30、第2マスタ室32を有し、第2マスタ室32の内部には、シミュレータスプリング58を有する。第2マスタ室32内のブレーキフルードをリザーバ22に逃がしてアキュムレータ12からのアキュムレータ圧によりホイールシリンダ20を制御する場合、シミュレータスプリング58を含む第2マスタ室32がストロークシミュレータとして機能させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスタシリンダおよび液圧制御システム、特に液圧ブースタを有するマスタシリンダの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中の車両に制動力を与える手段にディスクブレーキ装置やドラムブレーキ装置などの常用ブレーキがある。この常用ブレーキは、運転者が操作するブレーキペダルにより作動するマスタシリンダで発生させた加圧状態の作動流体を供給することにより所望の制動力を得ている。近年、モータ駆動などにより発生させた加圧状態の作動流体をアキュムレータに蓄え、その蓄えた加圧状態の作動流体を用いて制動力を得るシステムが導入されている。このようなアキュムレータを用いるシステムは、提供する液圧の制御およびそれにより発生させる制動力を電子制御可能である。そのため、運転者のブレーキペダルの操作状態に拘わらず制動力を制御するABS搭載車や回生制動が可能なハイブリッド車などの電子制御ブレーキシステムを搭載した車両に適用されている。
【0003】
ところで、電子制御ブレーキシステムにおいて、運転者が走行中に所望の減速度を得ようとしてブレーキペダルを操作する場合、マスタシリンダから受ける反力と同様の感覚を運転者に与えることが望ましい。そこで、運転者のブレーキペダルの操作量を検出して、アキュムレータからの供給圧力を調節する際にストロークシミュレータによりブレーキペダルに反力が与えられる。一般には、ストロークシミュレータはマスタシリンダと常用ブレーキのホイールシリンダの間の流路に配置され、本来マスタシリンダで発生するはずの反力を模擬的に生成する。模擬的な反力を発生することにより、ブレーキペダルの操作フィーリングが、電子制御ブレーキシステムにおいても変化しないようにしてる。また、特許文献1には、入力軸のストロークを制御することによりブレーキペダルの操作フィーリングが、回生ブレーキシステム等の他のブレーキシステムの動作、非動作に関係なく、ペダル踏力に対する車両減速度やペダルストロークをほぼ同じにするブレーキ特性が得られるストロークシミュレータを含むブレーキ増圧マスタシリンダが開示されている。
【特許文献1】特開2002−2478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、ストロークシミュレータの形態は様々であるが、それぞれ長所短所を有する。例えば、前者の一般的なタイプの場合、つまり流路にストロークシミュレータを配置するものは、マスタシリンダから受ける反力を完全に模擬できるので、完全なバイワイヤ制御にも適用可能である。その反面、ストロークシミュレータ本体を配置するスペースやそれを接続する流路配管が必要である。ストロークシミュレータを有する液圧制御システムが配置されるエンジンコンパートメントは、利用可能スペースが限られているとともに、近年の高性能化に伴い他のシステムで使用するスペースも増大してきている。そのため、前者のタイプのストロークシミュレータを有する液圧制御システムをに対しては、配置スペースの削減が望まれる。一方、後者の特許文献1のストロークシミュレータは、マスタシリンダ一体型なのでスペースの点では前者のものに比べ有利である。しかし、マスタシリンダから受ける反力を模擬的に生成するものではなく、ブレーキペダルの踏み込みで発生する圧力を全く用いない完全なバイワイヤ制御をする場合には適用できない。つまり、用途が限られてしまうという問題がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、完全なバイワイヤ制御にも適用可能で、液圧制御システム内に組み込んだときに配置スペースを取らないマスタシリンダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のマスタシリンダは、中空のブースタブロックと、前記ブースタブロックの中空内の端部に形成され、液圧源から加圧状態の作動流体を受け入れるブースタ室と、前記ブースタ室に隣接形成され、制御状態に応じてホイールシリンダへ作動流体の流通または非流通が切り替わる第1流路が接続された第1マスタ室と、前記第1マスタ室に隣接形成され、制御状態に応じてホイールシリンダへ作動流体の流通または非流通が切り替わる第2流路が接続された第2マスタ室と、前記ブースタ室と第1マスタ室の間で摺動自在に配置されたピストンであって、一端に前記ブースタ室を貫通したブレーキ操作部材を有し他端に前記第2マスタ室の作動流体をリザーバに還流させるか否かを切り換える切換部材を有する第1マスタピストンと、前記第1マスタ室と第2マスタ室の間で摺動自在に配置されたピストンであって、リング状の大径ピストンと、当該大径ピストンの内周に配置され軸方向に単独または前記大径ピストンとともに摺動自在な小径ピストンで構成される第2マスタピストンと、前記第1マスタ室の圧力が前記第2マスタ室の圧力より高いとき前記大径ピストンと小径ピストンの相互摺動を禁止するロックピンと、前記第2マスタ室内に配置され、前記大径ピストンの軸方向の摺動により押圧されることにより前記ブレーキ操作部材の操作に対する反力を発生するシミュレータスプリングと、前記第2マスタ室の一端面を構成するように配置され、当該第2マスタ室の圧力変化により作動して前記ブースタ室に加圧状態の作動流体を供給するレギュレータピストンと、を含むことを特徴とする。
【0007】
ホイールシリンダに液圧源から加圧状態の作動流体を提供して制動力を制御する場合、第1流路と第2流路は閉鎖される。このとき、ブレーキ操作部材が操作されると、第1マスタ室の内部圧力は上昇し、第2マスタ室の大径ピストンと小径ピストンを共に押す。そして、大径ピストンがシミュレータスプリングを押圧する。つまり、第2マスタ室のシミュレータスプリングは、ブレーキ操作部材の操作に対する反力を発生しストロークシミュレータとして機能する。
【0008】
この態様によれば、完全なバイワイヤ制御にも適用可能なストロークシミュレータ内蔵型のマスタシリンダを提供することができる。
【0009】
また、上記態様において、前記第1マスタ室は前記第1流路を介して、車両前後のホイールシリンダのうち対角位置に配置された2つのホイールシリンダに作動流体を供給し、前記第2マスタ室は前記第2流路を介して、他の対角位置に配置された2つのホイールシリンダに作動流体を供給してもよい。この態様によれば、第1マスタ室と第2マスタ室を用いて加圧状態の作動流体をホイールシリンダ側に送り出す場合、第1マスタ室と第2マスタ室には、踏力のみ、または踏力および液圧源からの圧力が作用する。この場合、第1マスタ室と第2マスタ室は同じ圧力を発生することができる。その結果、第1マスタ室から車両前後のホイールシリンダのうち対角位置に配置された2つのホイールシリンダに作動流体を供給し、第2マスタ室から他の対角位置に配置された2つのホイールシリンダに作動流体を供給しても左右の車輪で同じ制動力を発生できる。この場合、いわゆる「X配管」が可能になり、片側の流路系が失陥した場合でも従来の前後配管のように特殊なバルブや機構を用いることなく、対角位置に配置されたブレーキ装置で安定した制動を実現することができる。
【0010】
また、上記態様において、前記シミュレータスプリングは、前記第2マスタ室の作動流体が前記リザーバへ還流されるときのみ前記大径ピストンにより押圧され、前記ブレーキ操作部材の踏力をシミュレーションする反力を発生するようなばね定数に設定されていてもよい。第2マスタ室の作動流体が前記リザーバへ還流される場合、レギュレータピストンは作動しないので、ブースタ室に液圧源から加圧状態の作動流体は提供されない。その結果、シミュレータスプリングには、ブレーキ操作部材の踏力のみしか入力されない。したがって、シミュレータスプリングは、この踏力に抗するのみの小さなばね定数に設定することが可能になり、マスタシリンダの小型化に寄与できる。
【0011】
また、上記態様のマスタシリンダを液圧制御システムに含んでもよい。この態様によれば、ストロークシミュレータをマスタシリンダに内蔵するので、液圧制御システムの流路系にストロークシミュレータやその配管を設ける必要がなくなり、完全なバイワイヤ制御にも適用可能な液圧システムの小型化が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のマスタシリンダおよび液圧制御システムによれば、完全なバイワイヤ制御にも適用可能で、かつストロークシミュレータを内蔵可能なマスタシリンダが提供できる。また、そのマスタシリンダを用いることにより液圧制御システムの小型化ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。本実施形態のマスタシリンダユニットは、第2マスタ室にシミュレータスプリングを内蔵し、第2マスタ室をストロークシミュレータとして機能させる。その結果、完全なバイワイヤ制御を行う液圧制御システムに必要なストロークシミュレータを流路系内に設ける必要が無く、液圧制御システムの小型化および簡略化を可能にしている。
【0014】
図1は本実施形態の液圧制御システム10の全体構成を説明する機能ブロック図である。この液圧制御システム10は、液圧源として機能するアキュムレータ12とマスタシリンダユニット14を含む。アキュムレータ12またはマスタシリンダユニット14から送出される加圧状態の作動流体(以下、ブレーキフルードという)を車輪毎に配置される複数のブレーキ装置に提供する。本実施形態の場合、ブレーキ装置として、ディスクブレーキ装置を例示して、アキュムレータ12またはマスタシリンダユニット14から送出されたブレーキフルードは、制御アクチュエータ16を経てディスクブレーキ装置のキャリパ18内のホイールシリンダ20に提供される。なお、本実施形態において、車輪毎にホイールシリンダ20を区別する必要がある場合、左前輪用ホイールシリンダ20a、右後輪用ホイールシリンダ20b、右前輪用ホイールシリンダ20c、左後輪用ホイールシリンダ20dと示す場合がある。
【0015】
アキュムレータ12は、ポンプなどによりブレーキフルードを昇圧して、その圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ(例えば14〜22MPa程度)に変換して蓄えるものである。ポンプは、例えば駆動源としてモータを有し、その吸込口がリザーバ22に接続され、吐出口がアキュムレータ12に接続される。また、アキュムレータ12に対しては、リリーフバルブが設けられている。アキュムレータ12におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブが開弁し、高圧のブレーキフルードはリザーバ22へ戻される。
【0016】
マスタシリンダユニット14は、例えば金属製のブースタブロック24内部に、ブレーキペダル26が配置されている側から順に、ブースタ室28、第1マスタ室30、第2マスタ室32が隣接形成されている。ブレーキペダル26は運転者が操作するブレーキ操作部材として機能する。
【0017】
ブースタ室28は、アキュムレータ12から加圧状態のブレーキフルードを受け入れ、第1マスタ室30内部に摺動自在に配置された第1マスタピストン34がブレーキペダル26の操作により図中矢印A方向に移動するときの推力を補う。
【0018】
第1マスタ室30は、ブースタ室28に隣接形成されている。また、制御状態に応じてホイールシリンダ20側へブレーキフルードの流通または非流通が切り替わる第1流路36が接続されている。さらに、第1マスタ室30内部のブレーキフルードをリザーバ22に対して出し入れする第1リザーバ流路38が接続されている。第2マスタ室32は、第1マスタ室30に隣接形成されている。また、制御状態に応じてホイールシリンダ20側へブレーキフルードの流通または非流通が切り替わる第2流路40が接続されている。さらに、第2マスタ室32内部のブレーキフルードをリザーバ22に対して出し入れする第2リザーバ流路42が接続されている。
【0019】
図2は、第1マスタ室30および第2マスタ室32の拡大図であり、図1と共に参照しながら以下説明する。第1マスタ室30内部で矢印A,B方向へ摺動自在に配置された第1マスタピストン34は、前述したように、一端面にブレーキペダル26を有し、他端面に第2マスタ室32のブレーキフルードをリザーバ22に還流させるか否かを切り換える切換部材として機能する作動連通ロッド44を有する。
【0020】
第2マスタ室32内部には、矢印A、B方向へ摺動自在な第2マスタピストン46が収納されている。第2マスタピストン46はリング状の大径ピストン48と、当該大径ピストン48の内周に配置され矢印A、B方向(軸方向)に単独または大径ピストン48とともに摺動自在な小径ピストン50で構成されている。小径ピストン50の内部には、第2マスタ室32のブレーキフルードの貯留空間と第2リザーバ流路42を接続する還流路52が形成されている。作動連通ロッド44は、還流路52を閉塞するように進退可能であるとともに、還流路52を流通可能にさせる貫通口44aを有している。小径ピストン50と第1マスタピストン34の相対位置が変化することにより還流路52と貫通口44aの位置が変化する。還流路52と貫通口44aの位置が一致した場合には、第2マスタ室32のブレーキフルードがリザーバ22に還流し、位置が一致しない場合には、第2マスタ室32内部にブレーキフルードが閉じ込められる。なお、第1マスタピストン34が矢印A方向に摺動した場合で、第1マスタ室30内のブレーキフルードの蓄圧容積が低下しない場合、つまり、第1流路36を通ってブレーキフルードがホイールシリンダ20側に流れない場合、還流路52と貫通口44aの位置が一致した状態が維持されるようになっている。
【0021】
また、小径ピストン50には、一端が第1マスタ室30側に開口し、他端が第2マスタ室32側に開口した作動流路54が形成されている。この作動流路54内部には、第1マスタ室30の圧力が第2マスタ室32の圧力より高いときに大径ピストン48と小径ピストン50の相互摺動を禁止するロックピン56が配置されている。第1マスタ室30と第2マスタ室32との間に差圧が無い場合、ロックピン56は図2の位置に保持され、第1マスタ室30の圧力が上昇した場合、小径ピストン50のみが矢印A方向に移動可能となる。一方、第1マスタ室30の圧力が第2マスタ室32の圧力より高くなった場合、ロックピン56は、第1マスタ室30の圧力により矢印C方向に押し下げられ、大径ピストン48に進入する。その結果、大径ピストン48に対し小径ピストン50が固定され、第1マスタ室30の圧力により大径ピストン48と小径ピストン50が一緒に矢印A方向に摺動可能となる。
【0022】
さらに、第2マスタ室32には、大径ピストン48が矢印A方向に摺動した場合に押圧されるシミュレータスプリング58が配置されている。シミュレータスプリング58は大径ピストン48が摺動する場合、具体的には大径ピストン48と小径ピストン50が共に矢印A方向に摺動する場合、第1マスタ室30および第1マスタピストン34を介したブレーキペダル26の操作に対する反力を発生する。
【0023】
図1に示すように、シミュレータスプリング58が接触する第2マスタ室32の一端面の一部には、レギュレータピストン60が配置されている。レギュレータピストン60は、第2マスタ室32に隣接形成された連通室62の内部を矢印A、B方向に摺動する。連通室62は、ブースタブロック24の外周部分を通る流路63でブースタ室28と連通している。連通室62には、アキュムレータ供給管66が接続されている。レギュレータピストン60が第2マスタ室32の圧力の上昇により矢印A方向に移動したときに、アキュムレータ供給管66の位置からレギュレータブロック64が退避させられると共に、連通室62に接続された第3リザーバ流路68を閉塞される。その結果、アキュムレータ12から連通室62に加圧状態のブレーキフルードが供給される。つまり、ブースタ室28にアキュムレータ12のブレーキフルードが供給される。第1マスタピストン34の背面(ブレーキペダル26が接続された面)はブースタ室28の一面を形成するので、ブースタ室28に導かれた加圧状態のブレーキフルードは、第1マスタピストン34をさらに矢印A方向に付勢し、第1マスタ室30の内部圧力を上昇させる。つまり、運転者のブレーキペダル26の踏み込み力をアシストすることになる。一方、レギュレータブロック64が図1の位置にある場合、つまり、アキュムレータ圧がマスタシリンダユニット14に導入されていない場合、連通室62には第3リザーバ流路68が連通され、リザーバ22と同圧になる。
【0024】
なお、図1に示すように、レギュレータピストン60とブースタブロック24の内壁面の間には、第2マスタ室32の内部圧力が上昇していないときにレギュレータピストン60を図1の位置(原点位置)に保持する保持スプリング70が配置されている。また、図1、図2に示すように、第2マスタピストン46とレギュレータピストン60の間には、第1マスタ室30の内部圧力が上昇していないときに第2マスタピストン46を図2の位置(原点位置)に保持する保持スプリング72が配置されている。なお、図2の場合、保持スプリング72はシミュレータスプリング58の内周部分に配置されているが、シミュレータスプリング58の外に配置してもよい。同様に、第1マスタピストン34と第2マスタピストン46の間には、ブレーキペダル26が踏み込まれていないときに第1マスタピストン34を図2の位置(原点位置)に保持する保持スプリング74が配置されている。
【0025】
制御アクチュエータ16は、マスタシリンダユニット14と複数のホイールシリンダ20との間に設けられる。この制御アクチュエータ16は、運転者の制動操作の有無に拘わらず、車両の走行状態に応じてホイールシリンダ20毎の液圧を調整して制動力を制御することで車両姿勢を安定化させる。制御アクチュエータ16は具体的には、アンチロックブレーキシステム(ABS)や横滑り防止システムなどに含まれる。ABSは、車輪のロックを検出すると、その車輪の液圧を一時的に減圧することにより車輪を回転させて路面との摩擦力を回復させる。その後再び増圧することにより制動をかける。この減圧と増圧を繰り返すことにより、車輪の方向性が維持され、車両姿勢の安定化を図りつつ制動を行うことができる。また、横滑り防止システムは、制動力の制御とエンジンなどの駆動源出力の制御を行い、オーバースピードでカーブに進入したときに曲がりきれないことを防止したり、カーブでハンドルを切りすぎたときのスピンを防止する。
【0026】
図3は、制御アクチュエータ16の内部構造を詳細に説明する説明図である。制御アクチュエータ16は、複数の流体通路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流体通路には、個別通路76,77,78,79と、主通路80とが含まれる。個別通路76〜79は、それぞれ主通路80から分岐されて対応する左前輪用ホイールシリンダ20a、右後輪用ホイールシリンダ20b、右前輪用ホイールシリンダ20c、左後輪用ホイールシリンダ20dに接続されている。これにより、左前輪用ホイールシリンダ20a、右後輪用ホイールシリンダ20b、右前輪用ホイールシリンダ20c、左後輪用ホイールシリンダ20dは、主通路80と連通可能となる。また、個別通路76,77,78,79の中途には、ABS増圧弁81,82,83,84が設けられている。各ABS増圧弁81〜84は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に開弁とされる常開型電磁弁である。
【0027】
更に、左前輪用ホイールシリンダ20a、右後輪用ホイールシリンダ20b、右前輪用ホイールシリンダ20c、左後輪用ホイールシリンダ20dは、個別通路76〜79にそれぞれ接続された減圧通路85,86,87,88を介して減圧通路89に接続されている。減圧通路85,86,87,88の中途には、ABS減圧弁90,91,92,93が設けられている。各ABS減圧弁90〜93は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁とされる常閉型電磁弁である。
【0028】
主通路80は、中途に連通弁94を有しており、この連通弁94により個別通路76および77と接続される第1通路80aと、個別通路78および79と接続される第2通路80bとに区分けされている。すなわち、第1通路80aは、個別通路76および77を介して左前輪用ホイールシリンダ20a、右後輪用ホイールシリンダ20bに接続され、第2通路80bは、個別通路78および79を介して右前輪用ホイールシリンダ20c、左後輪用ホイールシリンダ20dに接続される。連通弁94は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁とされる常閉型電磁弁である。
【0029】
また、主通路80には、第1マスタ室30に接続された第1流路36に連通する第1マスタ通路95と、第2マスタ室32に接続された第2流路40に連通する第2マスタ通路96、およびアキュムレータ12と連通するアキュムレータ通路97が接続されている。より詳細には、第1マスタ通路95は、主通路80の第1通路80aに接続されており、第2マスタ通路96およびアキュムレータ通路97は、主通路80の第2通路80bに接続されている。更に、減圧通路89はリザーバ22に接続される。
【0030】
第1マスタ通路95は、中途に第1マスタ圧カット弁98を有する。第1マスタ圧カット弁98は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開弁とされる常開型電磁弁である。第2マスタ通路96は、中途に第2マスタ圧カット弁99を有する。第2マスタ圧カット弁99も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開弁とされる常開型電磁弁である。また、アキュムレータ通路97は、中途に増圧リニア制御弁(増圧制御弁)100を有し、アキュムレータ通路97および主通路80の第2通路80bは、減圧リニア制御弁(減圧制御弁)101を介して減圧通路89に接続されている。
【0031】
増圧リニア制御弁100と減圧リニア制御弁101とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉弁とされる常閉型電磁制御弁である。ここで、増圧リニア制御弁100の出入口間の差圧は、アキュムレータ12におけるブレーキフルードの圧力と主通路80におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応し、減圧リニア制御弁101の出入口間の差圧は、主通路80におけるブレーキフルードの圧力と減圧通路89におけるブレーキフルードの圧力との差圧に対応する。また、増圧リニア制御弁100および減圧リニア制御弁101のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁100および減圧リニア制御弁101の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。従って、増圧リニア制御弁100および減圧リニア制御弁101のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁100および減圧リニア制御弁101の出入口間の差圧を制御することができる。
【0032】
なお、増圧リニア制御弁100は上述のように常閉型電磁制御弁であることから、増圧リニア制御弁100が非通電状態にある場合、主通路80は、高圧液圧源としてのアキュムレータ12から遮断されることになる。また、減圧リニア制御弁101も上述のように常閉型電磁制御弁であることから、減圧リニア制御弁101が非通電状態にある場合、主通路80はリザーバ22から遮断されることになる。この点で、主通路80は、低圧液圧源としてもリザーバ22にも接続されているともいえる。
【0033】
アキュムレータ12からのブレーキフルードの供給によりホイールシリンダ20を作動させる場合、第1マスタ圧カット弁98および第2マスタ圧カット弁99閉弁するとともに、連通弁94を開弁する。そして、増圧リニア制御弁100および減圧リニア制御弁101のリニア制御と、ABS増圧弁81〜84およびABS減圧弁90〜93のON/OFF制御により、アキュムレータ12からのブレーキフルードを供給して各ホイールシリンダ20に詳細制御する。各電磁弁は各車輪のロック状態や車両姿勢を検出するセンサからの信号に基づき制御動作を行うABS−ECU102(図1参照)により制御される。ABS増圧弁81〜84とABS減圧弁90〜93を適宜開閉制御することにより、車両姿勢を安定化するような液圧制御、つまり制動力の制御ができる。
【0034】
また、マスタシリンダユニット14からのブレーキフルードの供給によりホイールシリンダ20を作動させる場合、つまり、アキュムレータ12や制御アクチュエータ16が正常に作動していない場合、各電磁弁は非通電状態となる。つまり、増圧リニア制御弁100、減圧リニア制御弁101および連通弁94を閉弁される。そして、第1マスタ圧カット弁98および第2マスタ圧カット弁99が開弁され、マスタシリンダユニット14から加圧状態のブレーキフルードを供給する。このときABS増圧弁81〜84は開弁され、ABS減圧弁90〜93へ閉弁されるので、各ホイールシリンダ20は、マスタシリンダユニット14の発生する圧力により直接作動する。なお、この場合、第1マスタ室30のブレーキフルードは、左前輪用ホイールシリンダ20aおよび右後輪用ホイールシリンダ20bの作動に利用され、第2マスタ室32のブレーキフルードは右前輪用ホイールシリンダ20cおよび左後輪用ホイールシリンダ20dの作動に利用される。つまり、第1マスタ室30から車両前後のホイールシリンダ20のうち対角位置に配置された2つのホイールシリンダにブレーキフルードを供給し、第2マスタ室32から他の対角位置に配置された2つのホイールシリンダ20にブレーキフルードを供給する。
【0035】
図1に示すように、ホイールシリンダ20は、マスタシリンダユニット14またはアキュムレータ12から送出された加圧状態のブレーキフルードの供給を制御アクチュエータ16を介して受けて車輪毎に制動力を付与する。ホイールシリンダ20は、たとえばブレーキ装置がディスクブレーキ装置の場合キャリパに含まれる。ホイールシリンダ20が加圧状態のブレーキフルードの供給を受けると、ディスクロータ18aの一面側に対面配置されているブレーキパッド18bをディスクロータ18aに押圧する。その反力によりキャリパ18の爪部18cがディスクロータ18aの他面側に配置されたブレーキパッド18dを押圧する。その結果、ディスクロータ18aが一対のブレーキパッド18b,18dにより挟持されて制動力を発生する。なお、ブレーキ装置としてドラムブレーキ装置を用いてもよい。
【0036】
第1マスタ室30と第2マスタ室32を用いて加圧状態の作動流体をホイールシリンダ20側に送り出す場合、第1マスタ室30と第2マスタ室32には、踏力のみの圧力、または踏力およびアキュムレータ12からの圧力がほぼ同じに作用する。その結果、第1マスタ室30と第2マスタ室32は同じ圧力を発生することができる。つまり、車両の左前輪に第1マスタ室30からの液圧を供給し、右後輪に第2マスタ室32からの液圧を提供しても左右同等の制動力を発生させることができる。したがって、第1マスタ室30から車両前後のホイールシリンダ20のうち対角位置に配置された2つのホイールシリンダにブレーキフルードを供給できる。同様に、第2マスタ室32から他の対角位置に配置された2つのホイールシリンダ20にブレーキフルードを供給できる。いわゆる「X配管」が可能になり、片側の流路系が失陥した場合でも従来の前後配管のように特殊なバルブなどを用いることなく、安定した制動を実現することができる。
【0037】
続いて、図4、図5を用いて、マスタシリンダユニット14の作動態様を説明する。なお、図4、図5は、マスタシリンダユニット14の第1マスタ室30および第2マスタ室32の部分拡大図である。前述したように、本実施形態のマスタシリンダユニット14は第2マスタ室32内部にシミュレータスプリング58を含んでいる。そして、制御アクチュエータ16とアキュムレータ12が正常に作動している場合、アキュムレータ12から提供される加圧状態のブレーキフルードによりホイールシリンダ20の液圧制御が行われる。このとき、マスタシリンダユニット14で発生した圧力は、制御アクチュエータ16の第1マスタ圧カット弁98、第2マスタ圧カット弁99でカットされる。このとき、第2マスタ室32の圧力は、リザーバ22に逃がされる。このときシミュレータスプリング58は、ブレーキフルードがリザーバ22に逃げなかったときに運転者がブレーキペダル26を介して感じる踏込反力を模擬的に発生させる。
【0038】
図4は、制御アクチュエータ16およびアキュムレータ12が正常に作動している場合のマスタシリンダユニット14の作動態様である。この場合、ホイールシリンダ20へのブレーキフルードの供給は、アキュムレータ12から行われる。このとき、第1マスタ室30および第2マスタ室32から第1流路36、第2流路40を通って制御アクチュエータ16に送り出されるブレーキフルードは、制御アクチュエータ16内の第1マスタ圧カット弁98、第2マスタ圧カット弁99により閉塞される。
【0039】
運転者がブレーキペダル26を踏み込み、第1マスタピストン34を矢印A方向に押し込むと、第1リザーバ流路38は第1マスタピストン34によって閉塞される。また、第1流路36は、第1マスタ圧カット弁98で閉塞されているので、第1マスタ室30の内部圧力は上昇する。その結果、第1マスタ室30の内部圧力は第1マスタピストン34の大径ピストン48と小径ピストン50を一緒に矢印A方向に押す。つまり、第2マスタピストン46を矢印A方向に摺動させる。このとき第1マスタピストン34と小径ピストン50は平行移動するのみで、第1マスタピストン34の作動前後で小径ピストン50と作動連通ロッド44の位置関係は変化しない。前述したように、第1流路36を通ってブレーキフルードがホイールシリンダ20側に流れない場合、還流路52と貫通口44aの位置が一致した状態が維持される。その結果、第1マスタ室30の圧力により第2マスタピストン46が矢印A方向に摺動するが、第2マスタ室32内のブレーキフルードは、リザーバ22側へ逃げ、第2マスタ室32の内部圧力はリザーバ22の内圧と同じ低圧状態が維持される。一方、第1マスタ室30側は第1リザーバ流路38および第1流路36が閉塞されているので高圧状態になっている。その結果、ロックピン56は矢印C方向に押し下げられ、大径ピストン48と小径ピストン50をロックされる。そして、大径ピストン48が第2マスタ室32内部を矢印A方向に摺動してシミュレータスプリング58を圧縮する。この圧縮により発生する反力は、第2マスタピストン46、第1マスタ室30のブレーキフルード、第1マスタピストン34、ブレーキペダル26へと順に伝達され運転者へ提供される。このようにして、第2マスタ室32はストロークシミュレータとして機能する。
【0040】
なお、このとき、第2マスタ室32の内部圧力は上昇しないので、レギュレータピストン60を押さない。つまり、連通室62に接続されたアキュムレータ供給管66は、レギュレータブロック64により閉塞され、アキュムレータ圧がマスタシリンダユニット14に導入されない。つまり、シミュレータスプリング58にはブレーキペダル26の踏力しか入力されない。その結果、シミュレータスプリング58は、ブレーキペダル26の踏力をシミュレーションする反力を発生するような比較的小さなばね定数に設定することが可能である。つまり、シミュレータスプリング58の小型化が可能で、省スペース化に寄与できる。
【0041】
図5は、アキュムレータ12は正常に作動しているが、一時的に制御アクチュエータ16が失陥した場合のマスタシリンダユニット14の作動態様である。この場合、制御アクチュエータ16は機能を停止するので、前述したように各電磁弁は非通電状態になり、マスタシリンダユニット14で発生させた液圧によりホイールシリンダ20を作動させることなる。つまり、第1マスタ室30および第2マスタ室32から第1流路36、第2流路40を通って制御アクチュエータ16側に送り出されるブレーキフルードは、第1マスタ圧カット弁98、第2マスタ圧カット弁99による閉塞を受けずにホイールシリンダ20に供給される。
【0042】
運転者がブレーキペダル26を踏み込み、第1マスタピストン34を矢印A方向に押し込むと、第1リザーバ流路38は第1マスタピストン34によって閉塞される。一方、第1流路36は閉塞されないので、第1マスタ室30のブレーキフルードはホイールシリンダ20側に流れる。この場合、ブレーキフルードはホイールシリンダ20に移動するのみで、リザーバ22に還流しないのでホイールシリンダ20への移動完了後第1マスタ室30の内部圧力は上昇する。ただし、第1マスタ室30からブレーキフルードがホイールシリンダ20に移動するので、第1マスタ室30における第1マスタピストン34と第2マスタピストン46の間の容積は減少する。その結果、第1マスタピストン34の作動前後で小径ピストン50と作動連通ロッド44の位置関係が変化する。前述したように、還流路52と貫通口44aの位置が一致しない場合には、還流路52は作動連通ロッド44によって閉塞され、第2マスタ室32内部のブレーキフルードは第2リザーバ流路42に流れることができず閉じ込められる。したがって、第2マスタ室32のブレーキフルードはホイールシリンダ20に移動するのみで、リザーバ22に還流しないのでホイールシリンダ20への移動完了後第2マスタ室32の内部圧力は上昇する。
【0043】
このとき、第1マスタ室30のブレーキフルードと第2マスタ室32のブレーキフルードは、いずれもホイールシリンダ20に流れるので、第1マスタ室30と第2マスタ室32の内部圧力は概ね同圧となる。その結果、ロックピン56は矢印C方向に押し下げられず、大径ピストン48と小径ピストン50はロックされない。その結果、小径ピストン50のみが矢印A方向に摺動可能になる。つまり、大径ピストン48は摺動しないので、シミュレータスプリング58は圧縮されず、ストロークシミュレータとして機能しない。
【0044】
なお、このとき、第2マスタ室32の内部圧力が上昇することにより、レギュレータピストン60が矢印A方向に押される。その結果、連通室62に接続されたアキュムレータ供給管66が連通室62に接続されアキュムレータ圧がマスタシリンダユニット14に導入される。つまり、アキュムレータ圧がブースタ室28に導入され、ブースタ室28が倍力装置(ハイドロブースタ)として機能し、運転者のブレーキペダル26の踏み込み力をアシストする。
【0045】
なお、制御アクチュエータ16の失陥が継続的に発生してアキュムレータ12の蓄圧が適正値以下になった場合、またはアキュムレータ12自体が失陥した場合、アキュムレータ12からブレーキフルードの供給が無いこと以外、マスタシリンダユニット14の挙動は図5に示す場合と同じである。この場合、マスタシリンダユニット14は完全な静圧作動のマスタシリンダになり、ブレーキペダル26の踏み込み力のみで発生する圧力によりホイールシリンダ20を作動させることになる。
【0046】
このように、本実施形態のマスタシリンダユニット14によれば、完全なバイワイヤ制御にも適用可能であり、また、ストロークシミュレータの機能を第2マスタ室32に内蔵することが可能になりシステム全体の小型化に寄与することができる。
【0047】
本実施形態に示すマスタシリンダユニット14の構造は一例であり、第1マスタ室30と第2マスタ室32を有し、第2マスタ室32内にシミュレータスプリング58を含む構成であれば、各部材の構成や形状は適宜変更してもよく、本実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0048】
また、本実施形態で示す制御アクチュエータ16の構成やキャリパ18の構成は一例であり、同様な機能を有すれば、各部材の形状や配管形式を変更してもよく、本実施形態と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態における液圧制御システムの全体構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】図1の液圧制御システムに含まれるマスタシリンダユニットの第1マスタ室と第2マスタ室の拡大図である。
【図3】図1の液圧制御システムに含まれる制御アクチュエータの内部構成を説明する説明図である。
【図4】図1の液圧制御システムにおいて、制御アクチュエータおよびアキュムレータが正常に作動している場合のマスタシリンダユニットの作動態様を説明する説明図である。
【図5】図1の液圧制御システムにおいて、アキュムレータは正常に作動しているが、一時的に制御アクチュエータが失陥した場合のマスタシリンダユニットの作動態様を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0050】
10 液圧制御システム、 12 アキュムレータ、 14 マスタシリンダユニット、 16 制御アクチュエータ、 20 ホイールシリンダ、 22 リザーバ、 24 ブースタブロック、 26 ブレーキペダル、 28 ブースタ室、 30 第1マスタ室、 32 第2マスタ室、 34 第1マスタピストン、 36 第1流路、 38 第1リザーバ流路、 40 第2流路、 42 第2リザーバ流路、 44 作動連通ロッド、 44a 貫通口、 46 第2マスタピストン、 48 大径ピストン、 50 小径ピストン、 52 還流路、 54 作動流路、 56 ロックピン、 58 シミュレータスプリング、 60 レギュレータピストン、 62 連通室、 63 流路、 64 レギュレータブロック、 66 アキュムレータ供給管、 68 第3リザーバ流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のブースタブロックと、
前記ブースタブロックの中空内の端部に形成され、液圧源から加圧状態の作動流体を受け入れるブースタ室と、
前記ブースタ室に隣接形成され、制御状態に応じてホイールシリンダへ作動流体の流通または非流通が切り替わる第1流路が接続された第1マスタ室と、
前記第1マスタ室に隣接形成され、制御状態に応じてホイールシリンダへ作動流体の流通または非流通が切り替わる第2流路が接続された第2マスタ室と、
前記ブースタ室と第1マスタ室の間で摺動自在に配置されたピストンであって、一端に前記ブースタ室を貫通したブレーキ操作部材を有し他端に前記第2マスタ室の作動流体をリザーバに還流させるか否かを切り換える切換部材を有する第1マスタピストンと、
前記第1マスタ室と第2マスタ室の間で摺動自在に配置されたピストンであって、リング状の大径ピストンと、当該大径ピストンの内周に配置され軸方向に単独または前記大径ピストンとともに摺動自在な小径ピストンで構成される第2マスタピストンと、
前記第1マスタ室の圧力が前記第2マスタ室の圧力より高いとき前記大径ピストンと小径ピストンの相互摺動を禁止するロックピンと、
前記第2マスタ室内に配置され、前記大径ピストンの軸方向の摺動により押圧されることにより前記ブレーキ操作部材の操作に対する反力を発生するシミュレータスプリングと、
前記第2マスタ室の一端面を構成するように配置され、当該第2マスタ室の圧力変化により作動して前記ブースタ室に加圧状態の作動流体を供給するレギュレータピストンと、
を含むことを特徴とするマスタシリンダ。
【請求項2】
前記第1マスタ室は前記第1流路を介して、車両前後のホイールシリンダのうち対角位置に配置された2つのホイールシリンダに作動流体を供給し、前記第2マスタ室は前記第2流路を介して、他の対角位置に配置された2つのホイールシリンダに作動流体を供給することを特徴とする請求項1記載のマスタシリンダ。
【請求項3】
前記シミュレータスプリングは、前記第2マスタ室の作動流体が前記リザーバへ還流されるときのみ前記大径ピストンにより押圧され、前記ブレーキ操作部材の踏力をシミュレーションする反力を発生するようなばね定数に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のマスタシリンダ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のマスタシリンダを含むことを特徴とする液圧制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−265431(P2008−265431A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108684(P2007−108684)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】