説明

マゼンタ金属錯体アゾ化合物とインク及びそれらのインクジェットプリンティングにおける使用

遷移金属塩を式(1):


[式中、
Xは、少なくとも一つの置換されていてもよい5〜7員ヘテロ環を形成するのに必要な複数の原子を表し;そして
Arは、式(1)に示されている−N=N−基に隣接してヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基を持つ置換されていてもよいスチルベン、アセナフチレン、フェナントレン又はアントラセン基、又はヒドロキシ基が式(1)に示されている−N=N−基に隣接している6−ヒドロキシキノリンである;
ただし、式(1)の化合物が式:


の場合、スルホン化度pは1〜2の範囲にない]
の化合物と接触させることによって得られる金属キレート化合物。並びに、組成物、インク、印刷基材及びインクジェットカートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、化合物、インク及びそれらのインクジェットプリンティング(“IJP”)における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IJPは、ノンインパクト方式の印刷技術で、インク滴が微細ノズルを通じて基材上に吐出される。その際ノズルが基材に接触することはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
IJPに使用される化合物及びインクに要求される性能要件はたくさんある。例えば、それらは、良好な耐水性、耐光性及び光学濃度を有する鮮鋭で滲みのない画像を提供するのが望ましい。インクは基材に適用されたら汚れ防止のために速乾性を要求されることが多いが、インクジェットノズルの先端にクラストを形成してはならない。プリンタの運転を止める原因になるからである。またインクは、分解したり微細ノズルを詰まらせかねない沈殿物を形成することなく長期間の貯蔵に対しても安定でなければならない。
【0004】
WO01/48090は、ナフトール成分及びヘテロ環式基を含む金属キレートアゾ化合物に関する。
IJPにおいて要求される性能要件に合う化合物、特に高彩度(すなわち明度)、高耐光性及び酸化ガス(例えばオゾン)に対する耐性の良好な組合せを有する化合物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の側面に従って、遷移金属塩を式(1):
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、
Xは、少なくとも一つの置換されていてもよい(すなわち、置換されていなくても又は所望により置換されていてもよい)5〜7員ヘテロ環を形成するのに必要な複数の原子を表し;そして
Arは、置換されていてもよいスチルベン、アセナフチレン、フェナントレン又はアントラセン基であって、式(1)に示されている−N=N−基に隣接したヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基を持つもの、又はヒドロキシ基が式(1)に示されている−N=N−基に隣接した、6−ヒドロキシキノリンである;
ただし、式(1)の化合物が式:
【0008】
【化2】

【0009】
の場合、スルホン化度pは1〜2の範囲にない]
の化合物又はその塩と接触させることによって得られる金属キレート化合物を提供する。「式(1)に示されている−N=N−基に隣接した」とは、Ar基上で、−N=N−基に結合している原子に隣接する原子がヒドロキシ等の基を持つことを意味する。
【0010】
置換されていてもよいスチルベン基は、好ましくは、式(2a)又は式(2b):
【0011】
【化3】

【0012】
[式中、
Qは、式(1)に示されている−N=N−基に隣接して配置されているヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基であり;
Gは水可溶化基であり;そして
m及びnはそれぞれ独立して0、1又は2である]
のものである。
【0013】
好ましくは、Qはヒドロキシ基である。
好ましくは、(m+n)の値は1より大きく、更に好ましくは1〜4であり、特に1〜2である。
【0014】
m及びnの値は、化合物が水可溶化基を既に持っている出発材料から製造される場合、整数を表しうる、又は水可溶化基が式(2a)もしくは(2b)の化合物の合成後、例えばスルホン化によって導入される場合、平均を表しうる、のいずれかである。
【0015】
好ましくは、各Gは独立して、スルホ、ホスフェート及びカルボキシから選ばれ、更に好ましくは、Gで表されるすべての基はスルホである。
置換されていてもよい6−ヒドロキシキノリン基は、好ましくは、式(3):
【0016】
【化4】

【0017】
[式中、
ヒドロキシ基は、式(1)に示されている−N=N−基に隣接して配置されており;
Gは水可溶化基であり;そして
mは0〜4、好ましくは0〜2である]
のものである。
【0018】
mの値は、化合物が水可溶化基を既に持っている出発材料から製造される場合、整数を表しうる、又は水可溶化基が式(3)の化合物の合成後、例えばスルホン化によって導入される場合、平均を表しうる、のいずれかである。
【0019】
好ましくは、各Gは独立して、スルホ、ホスフェート及びカルボキシから選ばれ、更に好ましくは、Gで表されるすべての基はスルホである。
置換されていてもよいフェナントレン基は、好ましくは、式(4):
【0020】
【化5】

【0021】
[式中、
MはC又はNであり;
Qは、式(1)に示されている−N=N−基に隣接して配置されているヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基であり;
Gは水可溶化基であり;そして
mは0より大、好ましくは1〜4、更に好ましくは2〜3である]
のもの、及び更に好ましくは式(4a):
【0022】
【化6】

【0023】
[式中、
Qは、式(1)に示されている−N=N−基に隣接して配置されているヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基であり;
Gは水可溶化基であり;そして
mは0より大、好ましくは1〜4、更に好ましくは2〜3である;
ただし、式(1)の化合物が、式:
【0024】
【化7】

【0025】
の場合、スルホン化度pは1〜2の範囲にない]
のものである。
mの値は、化合物が水可溶化基を既に持っている出発材料から製造される場合、整数を表しうる、又は水可溶化基が式(4)の化合物の合成後、例えばスルホン化によって導入される場合、平均を表しうる、のいずれかである。
【0026】
好ましくは、各Gは独立して、スルホ、ホスフェート及びカルボキシから選ばれ、更に好ましくは、Gで表されるすべての基はスルホである。
好適なアントラセン基は、式(5):
【0027】
【化8】

【0028】
[式中、
Qは、式(1)に示されている−N=N−基に隣接して配置されているヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基であり;
Gは水可溶化基であり;そして
mは1より大、好ましくは1〜4、更に好ましくは2〜3である]
のものである。
【0029】
mの値は、化合物が水可溶化基を既に持っている出発材料から製造される場合、整数を表しうる、又は水可溶化基が式(5)の化合物の合成後、例えばスルホン化によって導入される場合、平均を表しうる、のいずれかである。
【0030】
好ましくは、各Gは独立して、スルホ、ホスフェート及びカルボキシから選ばれ、更に好ましくは、Gで表されるすべての基はスルホである。
好適な置換されていてもよいアセナフチレン基は、式(6):
【0031】
【化9】

【0032】
[式中、
Qは、式(1)に示されている−N=N−基に隣接して配置されているヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基であり;
Gは水可溶化基であり;そして
mは0〜4、更に好ましくは0〜2、特に1〜2である]
のものである。
【0033】
mの値は、化合物が水可溶化基を既に持っている出発材料から製造される場合、整数を表しうる、又は水可溶化基が式(6)の化合物の合成後、例えばスルホン化によって導入される場合、平均を表しうる、のいずれかである。
【0034】
好ましくは、各Gは独立して、スルホ、ホスフェート及びカルボキシから選ばれ、更に好ましくは、Gで表されるすべての基はスルホである。
Xを含有するヘテロ環は、ヘテロ環上に置換基(1個又は複数個)を有していてもよく、又はヘテロ環上の置換基は更なる縮合によって縮合環を形成してもよく、そのようにして形成された縮合環も置換基(1個又は複数個)を有していてもよい。
【0035】
Xを含有するヘテロ環は、好ましくは、置換されていてもよいイミダゾール環、置換されていてもよいピリジン環、置換されていてもよいピラゾール環、置換されていてもよいトリアゾール環、置換されていてもよいイソオキサゾール環、置換されていてもよいチアゾール環、置換されていてもよいチアジアゾール環、置換されていてもよいピリダジン環、置換されていてもよいピリミジン環、置換されていてもよいピラジン環、置換されていてもよいベンゾチアゾール環、置換されていてもよいベンゾオキサゾール環又は置換されていてもよいベンゾイミダゾール環である。
【0036】
Xを含有するヘテロ環は、置換されていてもよいイミダゾール環、置換されていてもよいピラゾール環、置換されていてもよいチアゾール環、置換されていてもよいチアジアゾール環、又は更に好ましくは、置換されていてもよいチアジアゾール環、置換されていてもよいトリアゾール環、置換されていてもよいピリジン環又は置換されていてもよいオキサジアゾール環、特にピリジン環又はトリアゾール環が好適である。
【0037】
Xを含有するヘテロ環(一つ以上の縮合環を形成してもよい)が1個以上の置換基を有する場合、該置換基は好ましくは、置換されていてもよいアルキル基(例えば、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル基、エチル基など、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、トリフルオロメチル基など);置換されていてもよいアリール基(好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基など);置換されていてもよいアラルキル基(ベンジル基など。好ましくはアラルキル基は全部で7〜10個の炭素原子を有する);置換されていてもよいアリル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基など);置換されていてもよいアルコキシ基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基など);置換されていてもよいアリールオキシ基(例えばフェノキシ基など);置換されていてもよいアシルオキシ基(好ましくは2〜7個の炭素原子を有するアルカノイルオキシ基、例えばアセチルオキシ基、ベンゾオイルオキシ基など);置換されていてもよいアルコキシカルボニル基(好ましくは2〜7個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど);置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基など);置換されていてもよいカルバモイル基;置換されていてもよいアシル基(例えば、2〜10個の炭素原子を有するアシル基、例えばアセチル基など);カルボキシル基;ヒドロキシル基;シアノ基;置換されていてもよいアシルアミノ基(例えば2〜7個の炭素原子を有するアルカノイルアミノ基、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基など);ニトロ基;ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子など);ホスホノ基;スルホ基;メルカプト基;置換されていてもよいアルキルチオ基(例えば、1〜6個の炭素原子を有するアルキルチオ基、例えばメチルチオ基又はエチルチオ基など);置換されていてもよいアルキルスルホキシ基(例えば、1〜6個の炭素原子を有するアルキルスルホキシ基、例えばメチルスルホキシ基又はエチルスルホキシ基など);置換されていてもよいアルキルスルホニル基(例えば、1〜6個の炭素原子を有するアルキルスルホニル基、例えばメチルスルホニル基又はエチルスルホニル基など);又はチオシアナト基からそれぞれ独立して選ばれる。
【0038】
好適な置換されていてもよいイミダゾール環は、式(7):
【0039】
【化10】

【0040】
のものである。式中、各Rは同じ又は異なっていてよく、Rは、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、置換されていてもよいカルバモイル基、ヒドロキシル基、置換されていてもよいアシル基、シアノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、メルカプト基、置換されていてもよいアルキルチオ基及びチオシアナト基から選ばれる。Rはさらに、イミダゾール環と一緒になって縮合環を形成してもよい。cは0〜2の整数を表す。そしてRは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいアリル基を表す。
【0041】
特に、Rは、好ましくは、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、カルボキシ又はシアノである。
好ましくは、Rは、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基である。最も好ましくは、cは2であり、2個のRの両方ともシアノ又はカルボキシであり、Rは水素原子又は置換されていてもよいアルキル基である。
【0042】
好適な置換されていてもよいピラゾール環は、式(8):
【0043】
【化11】

【0044】
のものである。式中、各Rは同じ又は異なっていてよく、Rは、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、置換されていてもよいカルバモイル基、ヒドロキシル基、シアノ基又はスルホ基から選ばれる。dは0〜2の整数を表す。そしてRは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表す。
【0045】
好適な置換されていてもよいチアゾール環は、式(9):
【0046】
【化12】

【0047】
のものである。式中、各Rは同じ又は異なっていてよく、Rは、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換されていてもよいアシル基、シアノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、置換されていてもよいアルキルチオ基又は置換されていてもよいアリールチオ基から選ばれる。Rはさらに、チアゾール環と一緒になって縮合環を形成してもよい。eは0〜2の整数を表す。
【0048】
好ましくは、Rは置換されていてもよいアルキル基、e=0でRは不在、又はRはチアゾール環と一緒になって縮合環を形成する。
好適な置換されていてもよいチアジアゾール環は、式(10):
【0049】
【化13】

【0050】
のものである。式中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、メルカプト基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアルキルスルホキシ基又は置換されていてもよいアルキルスルホニル基から選ばれる。
【0051】
は、好ましくは、水素原子又は置換されていてもよいアルキル基である。
好適な置換されていてもよいトリアゾール環は、式(11):
【0052】
【化14】

【0053】
のものである。式中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、置換されていてもよいアシル基、シアノ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、メルカプト基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアルキルスルホキシ基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基又はチオシアナト基を表す。Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいアリル基を表す。RとRはトリアゾール環と一緒になって縮合環を形成してもよい。
【0054】
好適な置換されていてもよいテトラゾール環は、式(12):
【0055】
【化15】

【0056】
のものである。式中、Rは、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、シアノ基又はスルホ基を表す。
【0057】
好適な置換されていてもよいオキサジアゾール環は、式(13):
【0058】
【化16】

【0059】
のものである。式中、R10は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換されていてもよいアシル基、シアノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、置換されていてもよいアルキルチオ基又は置換されていてもよいアリールチオ基を表す。
【0060】
別の好適な置換されていてもよいオキサジアゾール環は、式(14):
【0061】
【化17】

【0062】
のものである。式中、R11は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換されていてもよいアシル基、シアノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、置換されていてもよいアルキルチオ基又は置換されていてもよいアリールチオ基を表す。
【0063】
好適な置換されていてもよいチアジアゾール環は、式(15):
【0064】
【化18】

【0065】
のものである。式中、R12は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシルオキシ基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換されていてもよいアシル基、シアノ基、置換されていてもよいアシルアミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、置換されていてもよいアルキルチオ基又は置換されていてもよいアリールチオ基を表す。
【0066】
一般式(7)〜(15)のR〜R12が置換基を有する場合、該置換基の好適な例は、10個以下の炭素原子、好ましくは6個以下の炭素原子、特に1個以上5個以下の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシ基、カルボキシル基、及びシアノ基などである。これらの置換基の中で好適なのは、アルキル基、カルボキシル基、及びシアノ基である。これらの置換基の中で特に好適なのは、カルボキシル基及びシアノ基である。
【0067】
前述のヘテロ環は様々な互変異性体形で存在するが、そのような互変異性体もすべて本発明の一部として包含される。
特に好適な置換されていてもよいトリアゾール環は、式(16)、(17)、(18)、(19)又は(20):
【0068】
【化19】

【0069】
のものである。式中、Zは、H、−OH、−Br、−Cl、−F、−CN、−NO、−PO、−SOH、−COH、置換されていてもよいホスホルアミド、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキル、−SR13、−SO13、−SONR1415、−SOR13、−OR13、−C(O)R13、−C(O)OR13、−C(O)NR1415、−NR1415、−NHCOR13であり;Yは、CF又はZで定義した基のいずれか一つである。ここで、R13、R14及びR15は、それぞれ独立して、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいアラルキルであるか;又はR14及びR15は、それらが結合している窒素と一緒になって、置換されていてもよい5又は6員環を形成する。
【0070】
Y又はZが置換されていてもよいホスホルアミドの場合、該ホスホルアミドは、好ましくは、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール又は置換されていてもよいアラルキルによって置換されている。好適な置換基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、ヒドロキシエチル、置換されていてもよいフェニル又は置換されていてもよいベンジルなどである。
【0071】
Y又はZが置換されていてもよいアルキルの場合、該アルキル基は、好ましくは置換されていてもよいC1−4アルキル、更に好ましくはハロ、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ又はシアノで置換されていてもよいC1−4アルキルである。例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、トリフルオロメチル、ヒドロキシエチル、シアノエチル、スルホプロピル及びカルボキシエチルなどである。しかしながら、Y又はZが置換されていてもよいアルキルの場合、該アルキル基はメチル、エチル又はトリフルオロメチルであるのが特に好適である。
【0072】
Y又はZが置換されていてもよいアルケニルの場合、Y又はZは、好ましくは置換されていてもよいC−Cアルケニルである。
Y又はZが置換されていてもよいアルキニルの場合、Y又はZは、好ましくは置換されていてもよいC−Cアルキニルである。
【0073】
Y又はZが置換されていてもよいアリールの場合、該アリール基は、好ましくは、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいナフチル又は置換されていてもよいヘテロアリールである。Yが置換されていてもよいアリールの場合、それは置換されていてもよいフェニル又は置換されていてもよいヘテロアリールであるのが特に好適である。
【0074】
Yが置換されていてもよいアリールの場合のY上の好適な任意の置換基は、スルホ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、ハロ(好ましくはクロロ)、アルコキシ(好ましくはC1−6アルコキシ)、ハロゲン(好ましくはフルオロ)、ヒドロキシ、カルボキシ、リン酸及びスルホによって置換されていてもよいアルキル(好ましくはC1−6アルキル)などである。Yが置換されていてもよいアリールの場合のY上の特に好適な任意の置換基は、C1−4アルキル、カルボキシ、リン酸及びスルホから選ばれる。しかしながら、Yが置換されていてもよいアリールの場合、該アリール基はカルボキシで置換されているのが最も好適である。
【0075】
Zが置換されていてもよいアリールの場合のZ上の好適な任意の置換基は、スルホ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、ハロ(好ましくはクロロ)、アルコキシ(好ましくはC1−6アルコキシ)、ハロゲン(好ましくはフルオロ)、ヒドロキシ、カルボキシ、リン酸及びスルホによって置換されていてもよいアルキル(好ましくはC1−6アルキル)などである。置換されていてもよいアリールの場合のZ上の特に好適な任意の置換基は、カルボキシ又はハロゲン(好ましくはクロロ)から選ばれる。
【0076】
Y又はZが置換されていてもよいアラルキルの場合、該アラルキル基は好ましくは置換されていてもよいベンジルである。
しかしながら、式(16)、(17)、(18)、(19)又は(20)中のYは、好ましくは、H、チオール、カルボキシ、ハロ(好ましくはクロロ)、アルキル((好ましくはC1−6アルキル)、ヒドロキシ、カルボキシ、ハロ(好ましくはフルオロ)によって置換されていてもよい)又はスルホである。式(16)〜(20)中のYは、H、C1−4アルキル又はカルボキシ又はスルホであるのが特に好適である。しかしながら、Yは、H、COH又はスルホであるのが最も特に好適である。
【0077】
式(16)〜(20)中のZは、好ましくは、H、エチルエステル又はヒドロキシ、カルボキシ、ハロ(好ましくはフルオロ)又はスルホによって置換されていてもよいアルキル(好ましくはC1−4アルキル)である。式(16)〜(20)中のYは、H又はC1−4アルキルであるのが特に好適である。しかしながら、ZはHであるのが最も特に好適である。
【0078】
一態様において、ZはHであり、YはH、COH又はスルホである。
13、R14及びR15は、それぞれ独立して好ましくは、H、置換されていてもよいC1−4アルキル又は置換されていてもよいアリール、更に好ましくはH、C1−4アルキル(ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ又はシアノによって置換されていてもよい)又はフェニル(ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、ニトロ、トリフルオロメチル又はシアノによって置換されていてもよい)である。R13、R14及びR15によって表される基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、ヒドロキシエチル、シアノエチル、スルホプロピル、カルボキシエチル又はカルボキシフェニルなどである。しかしながら、R13、R14及びR15は、H、置換されていてもよいC1−4アルキル、例えばトリフルオロメチル、ヒドロキシエチル又はシアノエチル、又は置換されていてもよいアリール、例えばカルボキシによって置換されていてもよいフェニルであるのが特に好適である;又はR14とR15は、それらが結合している窒素と一緒になって、5又は6員環を形成する(好ましくはモルホリン、ピペリジン又はピペラジン)。
【0079】
好適な置換されていてもよいピリジン環は、式(21):
【0080】
【化20】

【0081】
のものである。式中、各R16は同じ又は異なっていてよく、R16は、上記式(16)〜(20)中のYで記載し好適とした通りである。fは0〜4の整数を表す。
好ましくはfは0である。
【0082】
好適な置換されていてもよいピリミジン環は、式(22):
【0083】
【化21】

【0084】
のものである。式中、各R17は同じ又は異なっていてよく、R17は、上記式(16)〜(20)中のYで記載し好適とした通りである。gは0〜3の整数を表す。
好適な置換されていてもよいピラジン環は、式(23):
【0085】
【化22】

【0086】
のものである。式中、各R18は同じ又は異なっていてよく、R18は、上記式(16)〜(20)中のYで記載し好適とした通りである。hは0〜3の整数を表す。
5〜7員ヘテロ環は、置換されていてもよいピリジン、特に式(21)の基、又は1,2,4−トリアゾール、特に式(18)〜(20)の基であるのが特に好適である。
【0087】
遷移金属塩は、好ましくは以下の金属、すなわちニッケル、クロム、コバルト、銅、亜鉛、鉄又はマンガンの一つ以上を含む。
遷移金属塩は、ニッケル又は銅、特にニッケルを含むのが特に好適である。
【0088】
式(1)の化合物は、好ましくは、遷移金属に、それぞれ1:1、2:1、2:2又は2:3の比率、特にそれぞれ1:1又は2:1の比率でキレート結合している。
金属キレート化合物中に存在する式(1)のリガンドが2個以上ある場合、その式(1)のリガンドは同じでも異なっていてもよいが、好ましくはそれらは同じである。
【0089】
式(1)の化合物から得られる金属キレート化合物は1個以上の追加のリガンドを含むこともある。これらのリガンドは有色又は無色であってよく、2個以上存在する場合、それらは同じでも異なっていてもよい。
【0090】
式(1)の化合物及び式(1)の化合物から得られる金属キレート化合物は、前述のように、本明細書中に示したもの以外の互変異性体形で存在してもよい。これらの互変異性体も本発明の範囲内に含まれる。
【0091】
式(1)の化合物から得られる金属キレート化合物は、異なる幾何学、例えば8面体又は平面四角形で存在することもある。これらの異なる幾何学形も本発明の範囲内に含まれる。
【0092】
式(1)の化合物から得られる金属キレート化合物はマゼンタ色であるのが特に好適である。好ましくは、式(1)の化合物から得られる金属キレート化合物は、普通紙に印刷した場合に少なくとも50の彩度を有する。好ましくは、式(1)の化合物から得られる金属キレート化合物は水溶性であり、更に好ましくは20℃の水に0.5〜15、更に好ましくは0.6〜10重量%の溶解度を有する。
【0093】
本発明の第一の側面の式(1)の化合物から得られる金属キレート化合物は、高耐光性、耐オゾン性、耐水性及び良好な光学濃度を示す印刷物を提供する。
式(1)の化合物は好ましくは繊維反応基を持たない。繊維反応基という用語は当該技術分野では周知であり、例えばEP0356014 A1に記載されている。繊維反応基は、適切な条件下で、セルロース繊維に存在するヒドロキシル基又は天然繊維に存在するアミノ基と反応し、繊維と色素の間に共有結合を形成できる。本発明の第一の側面の化合物中に存在しないのが好ましい繊維反応基の例として、硫黄原子のβ位に硫酸エステル基を含有する脂肪族スルホニル基、例えば、β−スルファト−エチルスルホニル基、脂肪族カルボン酸、例えばアクリル酸、α−クロロ−アクリル酸、α−ブロモアクリル酸、プロピオル酸、マレイン酸並びにモノ及びジクロロマレイン酸のα,β−不飽和アシルラジカル;また、アルカリの存在下でセルロースと反応する置換基を含有する酸のアシルラジカル、例えば、クロロ酢酸、β−クロロ及びβ−ブロモプロピオン酸、並びにα,β−ジクロロ−及びジブロモプロピオン酸のようなハロゲン化脂肪酸のラジカル又はビニルスルホニル−もしくはβ−クロロエチルスルホニル−もしくはβ−スルファトエチル−スルホニル−エンド−メチレンシクロヘキサンカルボン酸のラジカルが挙げられる。セルロース反応基のその他の例は、テトラフルオロシクロブチルカルボニル、トリフルオロ−シクロブテニルカルボニル、テトラフルオロシクロブチルエテニルカルボニル、トリフルオロ−シクロブテニルエテニルカルボニル;活性化ハロゲン化1,3−ジシアノベンゼンラジカル;及びヘテロ環に1、2又は3個の窒素原子と、環の炭素原子上に少なくとも1個のセルロース反応置換基とを含有するヘテロ環式ラジカルである。
【0094】
式(1)の化合物及び式(1)の化合物から得られる金属キレート化合物は、遊離酸又は塩の形態でありうる。好適な塩は、水溶性の、例えばアルカリ金属塩、特に、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、置換アンモニウム及びそれらの混合塩である。好適なアルカリ金属塩は、ナトリウム又はリチウムを有するもの、アンモニウム及び置換アルキルアンモニウム塩である。
【0095】
好適なアンモニウム及び置換アンモニウム塩は、式NVのカチオンを有する。式中、各Vは独立してH又は置換されていてもよいアルキル、又はVで表される2個の基がH又は置換されていてもよいアルキルで、Vで表される残りの2個の基が、それらが結合しているN原子と一緒になって5又は6員環を形成する(好ましくはモルホリニル、ピリジニル又はピペリジニル環)。
【0096】
好ましくは、各Vは独立してH又はC1−4アルキル、更に好ましくはH、CH又はCHCH、特にHである。
カチオンの例は、NH、モルホリニウム、ピペリジニウム、ピリジニウム、(CHH、(CH、H(CH)(CHCH)、CH、CHCH、H(CHCH、CHCHCH、(CHCHN、N(CH、N(CHCH、N−メチルピリジニウム、N,N−ジメチルピペリジニウム及びN,N−ジメチルモルホリニウムなどである。
【0097】
ナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウム、又は置換アンモニウム塩が好適である。なぜならば、これらの塩は、インクジェットプリンティング用インクに配合した場合に高耐光性を示す印刷物を提供することが分かったからである。
【0098】
金属キレート化合物は、当該技術分野で周知の技術を用いて製造できる。例えば、適切な方法は、遷移金属塩の溶液と式(1)の化合物の溶液を、好ましくは水溶液の形態で混合することを含む。
【0099】
遷移金属塩が式(1)の化合物と金属キレート化合物を形成するには通常0.5〜24時間で十分である。
式(1)の化合物は、例えば、式Ar−NHの化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩にし、得られたジアゾニウム塩を所望のヒドロキシル化カプラーとカップリングさせることによって製造できる。好ましくはN−オキシド誘導体を用いた保護/脱保護手順が必要であろう。保護基の導入及び除去法は当該技術分野で周知である。
【0100】
ジアゾ化は好ましくは6℃未満の温度、更に好ましくは−10℃〜5℃の範囲の温度で実施される。好ましくは、ジアゾ化は好ましくはpH7未満の水中で実施される。所望の酸性条件を達成するのに希鉱酸、例えばHCl又はHSOが使用されることが多い。
【0101】
そのような化合物の代替の製造法は、ヒドラジン誘導体をジケトンと縮合してヒドラゾンを生成させることを含む。所望であれば、標準条件下で発煙硫酸を用いてヒドラゾンのスルホン化が達成できる。
【0102】
上記プロセスの生成物は、本明細書中で先に記載したように従来技術によって塩に変換できる。あるいは、該生成物を、反応混合物を好ましくは鉱酸、例えば塩酸を用いて酸性化することによって遊離酸形で単離してもよい。生成物が固体として沈殿する場合はろ過によって混合物から分離すればよい。不要なアニオンは、透析、浸透、限外ろ過又はそれらの組合せによって、プロセスの生成物から除去できる、及び好ましくは除去する。あるいは、生成物溶液を、生成物を単離せずに上記精製法に直接かける。
【0103】
本発明は、本発明の2種類以上の異なる金属キレート化合物又はその塩を含む混合物もカバーする。さらに、本発明の第一の側面の化合物はその他の色素、特に国際カラーインデックス(International Color Index)に掲載されているものと混合して、所望に応じてシェード(濃淡)又は他の性質を調整することができる。
【0104】
本発明の第二の側面に従って、(a)本発明の第一の側面による1種類以上の金属キレート化合物;及び(b)液体媒体を含む組成物を提供する。
液体媒体は、好ましくは、
(i)水;
(ii)水と有機溶媒の混合物;又は
(iii)水を含まない有機溶媒
を含む。
【0105】
インクの成分(a)の重量部数は、好ましくは0.01〜30、更に好ましくは0.1〜20、特に0.5〜15、さらに特に1〜5部である。成分(b)の重量部数は、好ましくは99.99〜70、更に好ましくは99.9〜80、特に99.5〜85、さらに特に99〜95部である。(a)+(b)の部数及び本明細書に記載のすべての部を合わせると100重量部になる。
【0106】
好ましくは、成分(a)は成分(b)中に完全に溶解する。好ましくは、成分(a)は、20℃における成分(b)中の溶解度が少なくとも10%である。これによって、より希薄なインクを製造するのに使用できる濃縮物の製造が可能になり、また貯蔵中に液体媒体の蒸発が起こってもインクの成分(a)の化合物が析出する機会が削減される。
【0107】
液体媒体が水と有機溶媒の混合物を含む場合、水と有機溶媒の重量比は、好ましくは99:1〜1:99、更に好ましくは99:1〜50:50、特に95:5〜80:20である。
【0108】
水と有機溶媒の混合物中に存在する有機溶媒は、水混和性有機溶媒又はそのような溶媒の混合物であるのが好ましい。好適な水混和性有機溶媒は、C1−6アルカノール、好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノール及びシクロヘキサノール;直鎖アミド、好ましくはジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド;ケトン及びケトン−アルコール、好ましくはアセトン、メチルエーテルケトン、シクロヘキサノン及びジアセトンアルコール;水混和性エーテル、好ましくはテトラヒドロフラン及びジオキサン;ジオール、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えばペンタン−1,5−ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール及びチオジグリコール並びにオリゴ−及びポリ−アルキレングリコール、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくはグリセロール及び1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、特に2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]−エタノール及びエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド、好ましくは2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタム及び1,3−ジメチルイミダゾリドン;環状エステル、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシド及びスルホランなどである。好ましくは、液体媒体は、水と2種類以上、特に2〜8種類の水混和性有機溶媒を含む。
【0109】
特に好適な水溶性有機溶媒は、環状アミド、特に2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドン及びN−エチル−ピロリドン;ジオール、特に1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール;そしてジオールのモノ−C1−4アルキル及びC1−4アルキルエーテル、さらに好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、特に2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエタノールである。
【0110】
水と1種類以上の有機溶媒の混合物を含む更なる適切なインク媒体の例は、米国特許第4,963,189号、米国特許第4,703,113号、米国特許第4,626,284号及びEP4,251,50Aに記載されている。
【0111】
液体媒体が水を含まない(すなわち水1重量%未満)有機溶媒を含む場合、該溶媒は、好ましくは30℃〜200℃の沸点を有する。該有機溶媒は水非混和性、水混和性、又はそのような溶媒の混合物でありうる。好適な水混和性有機溶媒は、本明細書中で先に記載した水混和性有機溶媒のいずれか及びそれらの混合物である。好適な水非混和性有機溶媒は、例えば、脂肪族炭化水素;エステル、好ましくは酢酸エチル;塩素化炭化水素、好ましくはCHCl;及びエーテル、好ましくはジエチルエーテル;並びにそれらの混合物などである。
【0112】
液体媒体が水非混和性有機溶媒を含む場合、極性溶媒を含めるのが好ましい。なぜならば、こうすることによって液体媒体における色素の溶解度が増大するからである。極性溶媒の例はC1−4アルコールなどである。前述の好適な選択に照らして考えると、液体媒体が水を含まない有機溶媒の場合、それはケトン(特にメチルエチルケトン)及び/又はアルコール(特にC1−4アルカノール、例えばエタノール又はプロパノール)を含むのが特に好適である。
【0113】
水を含まない有機溶媒は、単一の有機溶媒であっても2種類以上の有機溶媒の混合物であってもよい。媒体が水を含まない有機溶媒の場合、2〜5種類の異なる有機溶媒の混合物であるのが好ましい。これによって、インクの乾燥特性及び貯蔵安定性に良好な制御を提供する媒体の選択が可能になる。
【0114】
水を含まない有機溶媒を含むインク媒体は、速い乾燥時間が要求される場合、及び特に疎水性及び非吸収性基材、例えばプラスチック、金属及びガラス上に印刷する場合に特に有用である。
【0115】
特に好適なインクは、
(a)全部で1〜10部の、本明細書中で先に定義した式(1)の金属キレート化合物;
(b)2〜60部、更に好ましくは5〜40部の水混和性有機溶媒;及び
(c)30〜97部、更に好ましくは40〜85部の水
を含む。以上の部はいずれも重量部である。
【0116】
好ましくは、部の合計(a)+(b)+(c)=100である。
インク中の液体媒体が水と有機溶媒の混合物;又は水を含まない有機溶媒を含む場合、インクの成分(a)は、本発明の第一の側面に関連して本明細書中で先に定義した化合物を含みうる。
【0117】
好適な低融点固体媒体は60℃〜125℃の範囲の融点を有する。適切な低融点固体は、長鎖脂肪酸又はアルコール、好ましくはC18−24鎖を持つもの、及びスルホンアミドなどである。本発明の第一の側面の化合物は低融点固体に溶解しうる又はその中に微細に分散しうる。
【0118】
好ましくは、本発明の第二の側面による組成物は、インクジェットプリンタに使用するのに適切なインクである。
本発明によるインクは、インクジェットプリンティング用インクに従来使用されている追加の成分、例えば、粘度及び表面張力変性剤、腐蝕防止剤、殺生物剤、コゲ削減用添加剤、用紙のカールを削減する皺防止剤及びイオン性又は非イオン性でありうる界面活性剤を含有することもできる。
【0119】
インクのpHは好ましくは4〜11、更に好ましくは7〜10である。
25℃におけるインクの粘度は、好ましくは50cP未満、更に好ましくは20cP未満、特に5cP未満である。
【0120】
本発明によるインクをインクジェットプリンティング用インクとして使用する場合、該インクは好ましくは、500ppm未満、更に好ましくは100ppm未満のハロゲン化物イオンの濃度を有する。
【0121】
また、インクは100未満、更に好ましくは50ppm(100万分の50部)未満の二価及び三価金属(式(1)の化合物に結合しているあらゆる二価及び三価金属イオン又はインクのあらゆるその他の成分以外)を有するのが好適である。ここで、部はインクの総重量に対する重量部のことである。
【0122】
好ましくは、インクジェットプリンタに使用するの適切なインクは、平均孔径10μm未満、更に好ましくは3μm未満、特に2μm未満、さらに特に1μm未満を有するフィルタを通してろ過されている。このろ過によって、多くのインクジェットプリンタに見られる微細ノズルを、ろ過しなければ詰まらせかねない粒状物が除去される。
【0123】
本発明の第三の側面は、基材上に画像を印刷する方法を提供する。該方法は、本発明の第二の側面によるインクをインクジェットプリンタによって基材に適用することを含む。
この方法で使用されるインクは好ましくは本発明の第二の側面で定義した通りである。
【0124】
インクジェットプリンタは、好ましくはインクを液滴の形態で基材に適用する。該液滴は、小オリフィスを通して基材上に吐出される。好適なインクジェットプリンタは、ピエゾエレクトリックインクジェットプリンタ及びサーマルインクジェットプリンタである。サーマルインクジェットプリンタでは、プログラムされた熱のパルスを、オリフィスに隣接する抵抗器(レジスタ)によってインク貯め(リザーバ)のインクに印加することによって、インクを小液滴の形態で基材に向かって吐出させる。その間基材とオリフィスとは相対的運動をする。ピエゾエレクトリックインクジェットプリンタでは、小型水晶の発振によってオリフィスからのインクの吐出を起こす。あるいは、可動式パドル又はプランジャに接続された電気機械式アクチュエータによってインクを吐出させてもよい。これについては、例えば、国際特許出願WO00/48938及び国際特許出願WO00/55089に記載されている。
【0125】
基材は、好ましくは、紙、プラスチック、布地、金属又はガラス、更に好ましくは、紙、オーバーヘッドプロジェクタ用スライド又は繊維材料、特に紙である。好適な紙は、酸性、アルカリ性又は中性の特性を有しうる普通紙又は加工紙である。光沢紙は特に好適である。さらに特に写真用紙は好適である。
【0126】
市販紙の例は、HPプレミアムコート紙(HP Premium Coated Paper)、HPフォトペーパー(HP Photopaper)(いずれもHewlett Packard Inc.社製)、スタイラスプロ720dpiコート紙(Stylus Pro 720 dpi Coated Paper)、エプソンフォトクオリティ光沢フィルム(Epson Photo Quality Glossy Film)、エプソンフォトクオリティ光沢紙(Epson Photo Quality Glossy Paper)(Seiko Epson Corp.社製)、キャノンHR101高解像度紙(Canon HR 101 High Resolution Paper)、キャノンGP201光沢紙(Canon GP 201 Glossy Paper)、キャノンHG101高光沢フィルム(Canon HG 101 High Gloss Film)(いずれもCanon Inc.社製)、ウィギンズコンケラー紙(Wiggins Conqueror Paper)(Wiggins Teape Ltd社製)、ゼロックス酸性紙(Xerox Acid Paper)及びゼロックスアルカリ性紙(Xerox Alkaline Paper)(Xerox社製)などである。
【0127】
本発明の第四の側面は、本発明の第一の側面による金属キレート化合物で印刷される、本発明の第二の側面によるインクで印刷される、又は本発明の第三の側面による方法によって印刷される基材、好ましくは紙、オーバーヘッドプロジェクタ用スライド又は繊維材料を提供する。
【0128】
本発明の第五の側面に従って、チャンバとインクを含むインクジェットプリンタ用カートリッジを提供する。インクはチャンバ内にあり、インクは本発明の第二の側面で記載の通りである。
【0129】
本発明の第六の側面に従って、インクジェットプリンタ用カートリッジを含有するインクジェットプリンタを提供する。インクジェットプリンタ用カートリッジは、本発明の第六の側面で定義の通りである。
【0130】
本発明を以下の実施例でさらに説明する。実施例中、すべての部及びパーセントは別途記載のない限り重量による。
【実施例】
【0131】
実施例1
式:
【0132】
【化23】

【0133】
の化合物のニッケルキレートの製造
段階1(a)
フェナントレンキノン(2.08g、0.01mol)と2−ヒドラジノピリジン(1.09g、0.01mol)を撹拌氷酢酸(25ml)に加えた。該混合物を100℃に2時間加熱し、次いで室温に冷却してろ過した。ろ液を減圧下で蒸発させたところタール状物質が残った。この残渣を水の下で粉砕し、得られた固体をろ過によって回収できるようにした。該生成物を水洗し、次いで50℃のオーブンで乾燥させ、橙色/赤色固体を得た。
【0134】
段階1(b)
段階1(a)で製造したアゾフェナントレン(2.99g、0.01mol)を10%発煙硫酸の氷冷撹拌溶液(35ml)に加えた。反応混合物を100℃に加熱し、さらに2時間撹拌した。該反応混合物を注意深く氷上に注いだ後、氷/水浴で該温度を維持しながら、濃水酸化ナトリウムを用いてpHをpH8に上げた。該混合物を透析して導電率を下げ、ろ過し、減圧下で蒸発させることによってスルホン化リガンドを単離した。生成物は、オクタデカシリルカラムと0.01Mの酢酸アンモニウム溶液から最終溶液90%アセトニトリル:10%酢酸アンモニウムの傾斜溶離を用いる逆相HPLCによって、ジ−及びトリ−スルホン化物の混合物であることが示された。生成物の大部分は標記生成物と考えられるが、ピリジン環がスルホン化された生成物も一部存在しうる。ジ−及びトリ−スルホン化種の相対量は各種に対応するピークから推定した。
【0135】
段階1(c)
酢酸ニッケル四水和物(1.25g、0.005mol)の水(15ml)中溶液を、水(250ml)に溶解した段階(b)の生成物(4.59g、0.01mol)(pH7)に滴下添加した。該反応混合物を室温で撹拌し、溶液のpHを2M NaOHでpH8に上げた後、透析して導電率を下げた。溶液をろ過し、次いでろ液を減圧下で蒸発することによって標記化合物を得た。
【0136】
実施例2
式:
【0137】
【化24】

【0138】
の化合物のニッケルキレートの製造
この化合物のニッケルキレートは、実施例1と同様の方法を用いて製造した。ただし、段階(b)で10%発煙硫酸の代わりに20%発煙硫酸を使用した。実施例1と同様、このようにして製造された生成物も、ピリジン環がスルホン化されている物質を一部含む。
【0139】
実施例3〜7
表1に記載の化合物を実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて製造した。ただし、段階1(a)で、2−ヒドラジノピリジンの代わりに代替のヒドラジンを用い、段階1(b)の場合のようにスクリーニングされた反応混合物を減圧下で蒸発単離する代わりに、沈殿物として形成された生成物をろ過により回収した。次いで、該生成物を氷酢酸で洗浄し、50℃の真空オーブン中で乾燥させ、橙色/赤色固体を得た。
表1
【0140】
【表1】

【0141】
実施例8〜11
表2に記載の化合物を実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて製造した。ただし、段階1(a)で、フェナントレンジオンの代わりに代替のジケトンを用い、反応は、変性エタノール(100ml)及び濃塩酸(0.5ml)中で実施した。
表2
【0142】
【表2】

【0143】
実施例12
実施例1で製造された化合物の銅キレートの製造
これは実施例1に記載のように製造した。ただし、酢酸ニッケル四水和物の代わりに酢酸銅(II)水和物の溶液を用いた。
【0144】
実施例13
実施例8で製造された化合物の銅キレートの製造
これは実施例8に記載のように製造した。ただし、酢酸ニッケル四水和物の代わりに酢酸銅(II)水和物の溶液を用いた。
【0145】
実施例14
実施例9で製造された化合物の銅キレートの製造
これは実施例9に記載のように製造した。ただし、酢酸ニッケル四水和物の代わりに酢酸銅(II)水和物の溶液を用いた。
【0146】
実施例15
実施例10で製造された化合物の銅キレートの製造
これは実施例10に記載のように製造した。ただし、酢酸ニッケル四水和物の代わりに酢酸銅(II)水和物の溶液を用いた。
【0147】
実施例16
実施例11で製造された化合物の銅キレートの製造
これは実施例11に記載のように製造した。ただし、酢酸ニッケル四水和物の代わりに酢酸銅(II)水和物の溶液を用いた。
【0148】
実施例17
式:
【0149】
【化25】

【0150】
の化合物のニッケルキレートの製造
段階17(a):
3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−カルボン酸水和物(1.28g、0.01mol)を水(50ml)に溶解した。亜硝酸ナトリウム(0.76g、0.011mol)を加え、溶液を亜硝酸ナトリウムが溶解するまで撹拌した。次に、該混合物を、氷水(30g)と濃塩酸(3.0ml)の冷却混合物(0〜5℃)に1滴ずつ加えた。混合物を0〜5℃で30分間撹拌し、次いで過剰の亜硝酸をスルファミン酸の添加によって分解した。得られたジアゾニウム塩懸濁液を、6−ヒドロキシキノリン(1.45g、0.01mol)の水(100ml)中溶液(pH8〜9、2M NaOHで調整)にゆっくり加え、5℃未満に冷却した。次に該反応混合物を0〜5℃で1時間撹拌し、2M HClでpH4に酸性化することによって生成物を沈殿させ、ろ過により回収した。該生成物を水洗し、真空デシケータ中で乾燥させ橙色固体を得た。
【0151】
段階17(b):
酢酸ニッケル四水和物(1.43g、0.0057mol)の水(10ml)中溶液を、水(100ml)に溶解した段階17(a)の生成物(2.5g、0.0076mol)(pH7)に滴下添加した。該反応混合物を室温で2時間撹拌した後、透析して導電率を下げた。標記化合物は、減圧下で蒸発することにより暗色結晶固体として得られる。
【0152】
実施例18〜20
表3に記載の化合物は、実施例17に記載したのと同様の方法を用いて製造できる。ただし、段階17(a)で、6−ヒドロキシキノリンの代わりに表3に示したカプラーを使用し、水溶性を増大するために追加のステップを用いた。
【0153】
追加のステップ
ステップ(a)で製造した非金属化色素(0.01mol)を20%発煙硫酸の氷冷撹拌溶液(10ml)に加える。該反応混合物を室温に温まらせ、さらに1時間撹拌する。該反応混合物を氷上に注意深く注ぎ、得られた固体をろ過により回収する。金属化ステップは実施例12の段階(b)のように実施する。
表3
【0154】
【表3】

【0155】
比較色素1
比較色素1をEP1270676Aの実施例4に記載のように製造した。該色素の式は以下の通りである。
【0156】
【化26】

【0157】
比較色素2
比較色素2をEP0902064Bの実施例IVに記載のように製造した。該色素の式は以下の通りである。
【0158】
【化27】

【0159】
実施例21:インク及びインクジェットプリンティング
実施例1、2及び3に記載の色素と比較色素1及び2を、96.5部の液体媒体に各3.5部ずつ溶解することによって対応するインクにそれぞれ変換した。液体媒体は、
5部の2−ピロリドン;
5部のチオジグリコール;
2部のSurfynol(登録商標)465(非イオン性界面活性剤、Air Products Inc.社より入手);
88部の水
を含み、水酸化アンモニウムでpH9.5に調整。
【0160】
このようにして製造したインクを、配合された色素に応じてインク1、インク2、インク3、比較インク1及び比較インク2と名付けた。
【0161】
インクジェットプリンティング
インク1、2及び3と比較インク1及び2を、0.45ミクロンのナイロンフィルタを通してろ過した後、シリンジを用いて空のインクジェットプリント用カートリッジに入れた。
【0162】
次に、該インクをHP560Cプリンタを用いてHewlett Packard社のプレミアムプラスフォトペーパー(Premium Plus Photo Paper)とCanon社のプロフェッショナルフォトペーパー(Professional Photo Paper)PR101の両方に、100%及び70%の強度で印刷した。
【0163】
これらのプリントを、Hampden 903 Ozoneキャビネット内で、40℃、相対湿度50%で1ppmのオゾンに24時間暴露することによって耐オゾン性について試験した。また該プリントを、Atlas Ci5000 ウェザロメータ(塗膜耐候性試験装置)内でキセノンアーク灯に100時間暴露することによって耐光性についても試験した。印刷されたインクのオゾン及び光に対する堅牢度は、暴露前後の反射光学濃度(ROD)の差によって判定した。
【0164】
オゾン及び光への暴露前後のプリントの測色は、以下のパラメータにセットしたGretagスペクトロリノ分光光度計を用いて実施した。
測定幾何学: 0°/45°
スペクトル範囲: 400−700nm
スペクトル間隔: 20nm
光源: D65
観測視野: 2°(UE1931)
濃度: ANSI A
外部フィラー: なし
【0165】
耐オゾン性及び耐光性は、プリントのシェード(濃淡)の変化によって評価した。これはプリントのRODロス%によって判定した。数字が小さいほど高い堅牢度を示す。括弧内の数字は70%の強度でのプリントに対応する。
表4
【0166】
【表4】

【0167】
表4から、本発明の化合物及びインクから製造されたインクジェットプリントは、比較色素及びインクから得られたプリントと比べた場合、耐光性が改善され、耐オゾン性が非常に改善されたことが分かる。
【0168】
更なるインク
表A及びBに記載のインクが製造できる。表中、第1カラムに記載の化合物は、同じ番号の上記実施例で製造された化合物である。第2カラム以降に引用されている数字は、関係成分の部数を表す。すべて重量部である。インクは、サーマル又はピエゾインクジェットプリンティングによって紙に適用できる。
【0169】
以下の略号が表A及びBに使用されている。
PG=プロピレングリコール
DEG=ジエチレングリコール
NMP=N−メチルピロリドン
DMK=ジメチルケトン
IPA=イソプロパノール
MEOH=メタノール
2P=2−ピロリドン
MIBK=メチルイソブチルケトン
P12=プロパン−1,2−ジオール
BDL=ブタン−2,3−ジオール
CET=セチルアンモニウムブロミド
PHO=NaHPO及び
TBT=ターシャリー(tert)ブタノール
TDG=チオジグリコール
表A
【0170】
【表5】

【0171】
表B
【0172】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属塩を式(1):
【化1】

[式中、
Xは、少なくとも一つの置換されていてもよい5〜7員ヘテロ環を形成するのに必要な複数の原子を表し;そして
Arは、置換されていてもよいスチルベン、アセナフチレン、フェナントレン若しくはアントラセン基であって、式(1)に示されている−N=N−基に隣接したヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基を持つもの、又はヒドロキシ基が式(1)に示されている−N=N−基に隣接した、6−ヒドロキシキノリンである;
ただし、式(1)の化合物が式:
【化2】

の場合、スルホン化度pは1〜2の範囲にない]
の化合物と接触させることによって得られる金属キレート化合物。
【請求項2】
Arが、式(2a)又は式(2b):
【化3】

[式中、
Qは、式(1)に示されている−N=N−基に隣接して配置されているヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基であり;
Gは水可溶化基であり;そして
m及びnはそれぞれ独立して0〜2である]
の、置換されていてもよいスチルベン基である、請求項1に記載の金属キレート化合物。
【請求項3】
Arが、式(3):
【化4】

[式中、
ヒドロキシ基は、式(1)に示されている−N=N−基に隣接して配置されており;
Gは水可溶化基であり;そして
mは0〜2である]
の、置換されていてもよい6−ヒドロキシキノリン基である、請求項1に記載の金属キレート化合物。
【請求項4】
Arが、式(4a):
【化5】

[式中、
Qは、式(1)に示されている−N=N−基に隣接して配置されているヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基であり;
Gは水可溶化基であり;そして
mは2〜3である]
の、置換されていてもよいフェナントレン基である、請求項1に記載の金属キレート化合物。
【請求項5】
Arが、式(5):
【化6】

[式中、
Qは、式(1)に示されている−N=N−基に隣接して配置されているヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基であり;
Gは水可溶化基であり;そして
mは1〜4である]
の、置換されていてもよいアントラセン基である、請求項1に記載の金属キレート化合物。
【請求項6】
Arが、式(6):
【化7】

[式中、
Qは、式(1)に示されている−N=N−基に隣接して配置されているヒドロキシ、アミノ又はカルボキシ基であり;
Gは水可溶化基であり;そして
mは1〜2である]
の、置換されていてもよいアセナフチレン基である、請求項1に記載の金属キレート化合物。
【請求項7】
Gがスルホである、請求項2〜6のいずれか1項に記載の金属キレート化合物。
【請求項8】
Xを含有するヘテロ環が、置換されていてもよいピリジン又は置換されていてもよいトリアゾール環である、前記請求項のいずれか1項に記載の金属キレート化合物。
【請求項9】
遷移金属塩がニッケル又は銅を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の金属キレート化合物。
【請求項10】
遷移金属塩がニッケルを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の金属キレート化合物。
【請求項11】
(a)請求項1〜10のいずれか1項に記載の一つ以上の金属キレート化合物;及び(b)液体媒体を含む組成物。
【請求項12】
インクジェットプリンタでの使用に適切なインクである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項11又は請求項12のいずれかに記載のインクであって、
(a)全部で1〜10部の、請求項1〜10のいずれか1項に記載の金属キレート化合物;
(b)2〜60部の水混和性有機溶媒;及び
(c)30〜97部の水
(全ての部は重量部である)を含むインク。
【請求項14】
画像を基材に印刷する方法であって、請求項11〜13のいずれか1項に記載のインクをインクジェットプリンタによって該基材に適用することを含む方法。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の金属キレート化合物で印刷される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の組成物又はインクで印刷される、又は請求項14に記載の方法によって印刷される基材。
【請求項16】
チャンバ及びインクを含むインクジェットプリンタ用カートリッジであって、インクがチャンバ内にあり、該インクは請求項12又は請求項13のいずれかに記載の通りであるインクジェットプリンタ用カートリッジ。

【公表番号】特表2007−527436(P2007−527436A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508369(P2006−508369)
【出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002189
【国際公開番号】WO2004/108834
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】