説明

マニピュレータ

【課題】 アームとハンドとを備えたマニピュレータにおいて、ハンドを操作するための操作レバーの操作の際に、アームを操作するための操作ハンドルに意図しない操作力が入力されることを抑制する。
【解決手段】パワーアシストアーム(マニピュレータ)は、操作者がハンドの動作を視認可能な範囲内またはハンドが把持対象物を把持するときの音を聞き取り可能な範囲内に設置された操作装置を備えている。操作装置は、棒状体9を有する操作ハンドル13と、6軸力覚センサ10と、操作レバー15とを備えている。操作レバー15は、上側押圧プレート97および下側押圧プレート93と、連結プレート96に貼り付けられた歪みゲージ16とを備えている。棒状体9には、下向きに延びる第1支持棒91と下向きに延びる第2支持棒92とが設けられている。操作レバー15および操作ハンドル13は、固定プレート95に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人の力では行うことができない作業や危険な作業を人間に代わって行う装置として、マニピュレータが用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。通常、マニピュレータは、人が操作する操作装置と、作業を行う動作部と、操作装置に対する人の操作(以下、操作入力という)に基づいて動作部を駆動する駆動機構とを備えている。
【0003】
このようなマニピュレータの一種として、パワーアシスト型のマニピュレータが知られている。パワーアシスト型のマニピュレータは、動作部に人間の力以上の力を発揮させるマニピュレータであり、操作装置に対する人の操作力(例えば、操作ハンドルを押したり引いたりする力など)を増幅して、動作部を作動させる。パワーアシスト型のマニピュレータは、例えば、重量物の運搬等に好適に用いられる。
【0004】
ところで、大型のマニピュレータでは、操作装置は動作部から比較的離れた位置に配置されることになる。そのため、大型のマニピュレータでは、小型のマニピュレータと異なり、動作部の微妙な操作が難しく、操作者が直感的な操作を行い難いという課題があった。
【0005】
そこで、本願発明者は、パワーアシスト型のマニピュレータの操作性の向上を図るため、動作部から離れた位置にある操作装置に、力覚提示装置を設けることを考案した(特願2007−172654参照)。具体的には、直動関節および回転関節を有するアームと、アームの先端に設けられたハンドとを備えたパワーアシストアームに、アームを動かすための操作ハンドルと、ハンドを開閉させるための操作レバーとを設けることとした。そして、操作ハンドル、操作レバーに対して、それぞれアーム、ハンドからの力覚を伝える力覚提示装置を付設することとした。
【0006】
このパワーアシストアームでは、操作者は、操作ハンドルを握りながら、例えば、前後方向、左右方向、上下方向等に力を加えることによって、直動関節を操作することができる。また、操作ハンドルに回転力を加えることによって、回転関節を操作することができる。さらに、操作ハンドルを握りながら操作レバーを指で押し下げたり押し上げたりすることによって、ハンドを操作することができる。
【0007】
上記パワーアシストアームでは、ハンドの開閉変位を操作者に対してダイナミックに伝えやすいように、操作レバー自体が操作者の指の操作によって上下動するように構成されている。すなわち、操作レバーを指で下方に押し下げるとハンドが閉じ、逆に、操作レバーを指で上方に押し上げるとハンドが開くように構成されている。これにより、例えば、ハンドで物を把持した際には、ハンドの閉方向の変位が当該物によって規制されるので、その力覚が操作レバーに伝わり、操作レバーの下方への移動が規制される。そのため、操作レバーを下方へ押し下げる際に負荷が加わることによって、操作者は、ハンドが物を把持したことを直感的に理解することができる。
【特許文献1】特開2003−145464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、操作レバーを上下動可能に構成すると、操作者が操作レバーを指で上下動させる際に、操作ハンドルに余計な力が加わってしまうことがある。そのため、操作ハンドルに意図しない力が加わることにより、アームに無駄な動作が生じるおそれがある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操作レバーの操作の際に、操作ハンドルに意図しない操作力が入力されることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、鋭意研究の結果、ハンドが視認可能な範囲にある場合、またはハンドが把持対象物を把持するときの音を聞き取り可能な範囲にある場合、当該ハンドを操作するための操作レバーが移動不能であったとしても、ハンドを見ながら操作を行う操作者、またはハンドが把持対象物を把持するときの音を聞きながら操作を行う操作者にとって、ハンドの動作を直感的に理解することが可能であることを見出した。すなわち、従来は、ハンドの動作を直感的に理解可能とするためには、操作レバーが操作者の操作に伴って移動することが必要不可欠と考えられていたが、本願発明者は、ハンドが視認可能な範囲にある場合、またはハンドが把持対象物を把持するときの音を聞き取り可能な範囲にある場合、そのような操作レバー自体の移動は必ずしも必要ではないことを見出した。
【0011】
本発明に係るマニピュレータは、アームと、前記アームに取り付けられた開閉自在なハンドと、操作者によって操作される操作装置であって、前記操作者が前記ハンドの動作を視認可能な範囲内または前記ハンドが把持対象物を把持するときの音を聞き取り可能な範囲内に設置された操作装置と、前記操作者による前記操作装置に対する操作入力に基づき、前記アームおよび前記ハンドを駆動する駆動装置と、を備えたマニピュレータであって、前記操作装置は、前記操作者の手によって握られる棒状体を有し、前記アームを操作するための操作ハンドルと、前記操作ハンドルに直接または間接的に取り付けられ、前記操作者により加えられる力を検出する力覚センサと、前記棒状体を握ったときの前記操作者の手の指と接触可能な位置に配置された1または2以上のプレートを有し、前記棒状体に対して相対移動不能なレバー本体と、前記レバー本体に貼り付けられ、前記プレートに加えられた押圧力によって生じる前記レバー本体の歪みを検出する歪みゲージとを備え、前記プレートに加えられる押圧力に基づいて前記ハンドを操作する操作レバーと、を備えているものである。
【0012】
上記マニピュレータによれば、操作レバーのレバー本体と操作ハンドルの棒状体とが相対移動不能となっているので、レバー本体は棒状体に対して相対的に固定された状態となる。そのため、操作者が棒状体を握った状態でレバー本体に力を加えても、操作者の手がレバー本体と共に変位することがない(厳密には、棒状体に対して相対的に変位することがない)ので、棒状体に対して意図しない操作力が入力されることが抑制される。なお、操作装置は、操作者がハンドの動作を視認可能な範囲内またはハンドが把持対象物を把持するときの音を聞き取り可能な範囲内に設置されているので、レバー本体が棒状体に対して相対的に固定された状態であっても、操作者はハンドの動作を直感的に認識することができる。
【0013】
前記操作装置は、前記棒状体から前記棒状体と略直交する方向に延び、前記棒状体を握ったときの前記操作者の手のひらを支える第1支持部材と、前記棒状体から前記棒状体と略直交する方向に延び、前記棒状体を握ったときの前記操作者の指の間に位置する第2支持部材と、をさらに備えていることが好ましい。
【0014】
上記マニピュレータによれば、操作ハンドルの棒状体を握りながら操作レバーを操作する操作者の手が、第1支持部材および第2支持部材によって安定して支持されることになる。したがって、操作ハンドルに意図しない操作力が入力されることをさらに抑制することができる。
【0015】
前記レバー本体は、前記棒状体の軸心を通りかつ前記プレートと平行な仮想面を境として前記プレートと反対側に位置し、前記プレートと平行な補助プレートを有していることが好ましい。
【0016】
上記マニピュレータによれば、例えば、操作者が操作ハンドルの棒状体を握りながら、人差し指と親指とで上記プレートおよび補助プレートをつまむことができる。そのため、一本の指のみで上記プレートを押し下げるまたは押し上げる場合と比べて、操作レバーを操作する際の操作者の手にかかる反力は補助プレートからの反力で打ち消され、棒状体に対する意図しない操作力は低減する。
【0017】
前記レバー本体は、前記プレートとして、前記操作者の人差し指の上方に配置される上側押圧プレートと、前記人差し指の下方に配置される下側押圧プレートとを備え、前記補助プレートとして、前記操作者の親指の上方に配置される上側補助プレートと、前記親指の下方に配置される下側補助プレートとを備えていてもよい。
【0018】
このことにより、操作レバーを操作する際の操作者の手の位置を、より一層安定化させることができる。
【0019】
前記マニピュレータは、前記操作ハンドルと前記操作レバーとを支持する固定部材をさらに備えていることが好ましい。
【0020】
上記マニピュレータによれば、操作ハンドルと操作レバーとが同一の固定部材に支持されるので、操作ハンドルに対する操作レバーの相対的な移動をより効果的に抑制することができる。
【0021】
前記固定部材は、前記操作ハンドルおよび前記操作レバーが固定された第1の面と、前記第1の面と反対側の面である第2の面とを有する固定プレートであり、前記力覚センサは、前記固定プレートの前記第2の面上であって前記固定プレートを挟んで前記操作ハンドルと反対側の位置に取り付けられていてもよい。
【0022】
このことにより、固定プレートが、操作ハンドルに加わる力と操作レバーに加わる力とを打ち消し合うので、力覚センサに余計な力が入力されにくくなる。したがって、操作性の向上を図ることができる。
【0023】
前記棒状体は、水平方向に延び、前記第1支持部材は、前記棒状体から後方斜め下向きに延びる面を有しており、前記第2支持部材は、前記棒状体から上向きまたは斜め上向きに延びていてもよい。
【0024】
このことにより、操作時における操作者の手をより一層安定化させることができる。
【0025】
前記第1支持部材は、前記棒状体から後方斜め下向きに延びる面を有するクッションを備えていてもよい。
【0026】
このことにより、操作者の手のひらをさらに安定して支持することができる。
【0027】
前記マニピュレータは、前記アームの力覚を前記操作ハンドルに伝える力覚提示装置をさらに備えていることが好ましい。
【0028】
このことにより、操作者はアームの力覚を感じることができ、アームの操作性を向上させることができる。
【0029】
前記駆動装置は、前記操作者による前記操作ハンドルに対する入力を増幅させて前記アームを駆動させ、前記操作者による前記操作レバーに対する入力を増幅させて前記ハンドを駆動させるものであってもよい。
【0030】
このことにより、人の腕および手の動きに似た動作を人の力以上の力で実行可能ないわゆるパワーアシストアームにおいて、上述の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、マニピュレータにおいて、操作レバーの操作の際に、操作ハンドルに意図しない操作力が入力されることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
《パワーアシストアームの全体構成》
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態では、本発明に係るマニピュレータの一例として、重量物や長大な物を運搬する際に操作者の作業を補うパワーアシストアーム1について説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を実施するための形態の一例に過ぎず、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0033】
図1は、実施形態に係るパワーアシストアーム1の構成を示す模式図である。図1に示すように、パワーアシストアーム1は、アーム2と、ハンド8と、アーム2の基端部2aが取り付けられた支持部3とを備えている。アーム2は、支持部3によって片持ち支持されている。支持部3は、鉛直方向に延びる支柱3aと、水平方向に延び、支柱3aの下端部が固定された支持台3bとを備えている。支柱3aの上端部にはアーム2の基端部2aが取り付けられている。なお、便宜上、以下の説明では、図1の左側を前側、右側を後側として説明する。
【0034】
アーム2は、基端部2aから先端部2bに向かって順に、上腕部4、直動関節5、回転関節6、および前腕部7を備えている。アーム2は、直動関節5によって伸縮自在に構成され、回転関節6によって屈曲自在に構成されている。
【0035】
上腕部4の後端部(アーム2の基端部2a)は、支持部3の上端部に取り付けられている。上腕部4の前端部には直動関節5の固定部5aが取り付けられている。直動関節5は固定部5aと、可動部5bとにより構成されている。可動部5bの後端部は固定部5aにスライド自在に支持されている。このような構成により、可動部5bが固定部5aに対して前後方向にスライドすることにより、直動関節5は伸縮する。
【0036】
直動関節5の可動部5bの前端部は回転関節6に取り付けられている。また、回転関節6には、前腕部7の基端部が取り付けられている。これにより、回転関節6は、直動関節5と前腕部7との間に設けられ、直動関節5と前腕部7とを相対回転自在に接続している。前腕部7の先端部にはハンド8が取り付けられている。
【0037】
ハンド8は、前腕部7の先端部に固定された断面略L字状の板状体からなる固定部8aと、可動部8bとにより構成されている。可動部8bは、固定部8aの一方の面と対峙しており、固定部8aにスライド自在に連結されている。ハンド8は、可動部8bが固定部8aに対してスライドすることにより、開閉することとなる。このような動作により、ハンド8は対象物を把持することができる。
【0038】
なお、固定部8aの形状は、L字状に限られない。また、ハンド8は、固定部8aと可動部8bとにより構成されるものに限定されない。可動部と可動部とによりハンド8を構成してもよい。ハンド8は、対象物を把持することが可能ないかなる形状であってもよい。また、ハンド8は、開閉動作により対象物を挟むだけでなく、例えば、つまむ、握る等の動作を行うものであってもよい。
【0039】
パワーアシストアーム1は、第1操作装置11と、第2操作装置12とを備えている。第1操作装置11は支持部3に取り付けられている。第1操作装置11は、ハンド8から離れた位置に配置されている。第2操作装置12は、アーム2の先端部2b(本実施形態では前腕部7)に取り付けられており(なお、図1等では、第2操作装置12の構成を理解しやすいように、先端部2bから離して図示している。)、ハンド8に近接した位置に配置されている。ただし、第1操作装置11および第2操作装置12のいずれも、当該操作装置11,12を操作する操作者がハンド8を視認できる範囲に配置されている。あるいは、第1操作装置11および第2操作装置12のいずれも、当該操作装置11,12を操作する操作者が、ハンド8で対象物を把持する際にその把持に伴って発生する音を聞くことができる範囲に配置されている。なお、本実施形態では、パワーアシストアーム1には2つの操作装置(つまり、第1操作装置11および第2操作装置12)が設けられているが、いずれか一方の操作装置のみを設置することも勿論可能である。
【0040】
《操作装置の構成》
第1操作装置11と第2操作装置12とは、同一の構成を有している。そこで、以下では第1操作装置11の構成のみを説明し、第2操作装置12の説明は省略する。
【0041】
図2に示すように、第1操作装置11は、アーム2を操作するための操作ハンドル13と、ハンド8を操作するための操作レバー15とを備えている。
【0042】
操作ハンドル13は、水平方向に延びる棒状体9と、棒状体9の根元側に位置するフランジ90とを有している。フランジ90は、略円柱状の6軸力覚センサ10を介して固定プレート95に固定されている。本実施形態では、棒状体9の横断面は円形状に形成されており、棒状体9の輪郭は円柱状に形成されている。しかし、棒状体9は、横断面が長円形状を有する棒状に形成されていてもよい。また、棒状体9は、角柱状に形成されていてもよい。さらに、棒状体9の断面積は長手方向に沿って一定であってもよく、変化していてもよい。棒状体9の形状は、特に限定されるものではない。
【0043】
棒状体9の下側には、操作者の手のひらを支える第1支持棒91が取り付けられている。第1支持棒91は、棒状体9から下方に向かって突出している。棒状体9の上側には、第2支持棒92が取り付けられている。第2支持棒92は、棒状体9から上方に向かって突出している。このように、第1支持棒91と第2支持棒92とは、棒状体9の軸心9cを中心として互いに反対側の方向に延びている。言い換えると、第1支持棒91と第2支持棒92とは、棒状体9の長手方向から見て、軸心9cを中心として点対称の位置に配置されている。なお、第1支持棒91の直径と第2支持棒92の直径とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、第1支持棒91の長さと第2支持棒92の長さとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0044】
操作レバー15は、複数のプレートを組み合わせたような形状に形成されたレバー本体15Aと、レバー本体15Aに貼り付けられた歪みゲージ16とを備えている。レバー本体15Aは、上側押圧プレート97と、下側押圧プレート93と、上側補助プレート94aと、下側補助プレート98とを有している。上側押圧プレート97、下側押圧プレート93、上側補助プレート94a、および下側補助プレート98は、いずれも水平に延びるプレートである。これら上側押圧プレート97、下側押圧プレート93、上側補助プレート94a、および下側補助プレート98の前端部は、垂直に延びる連結プレート96によって連結されている。
【0045】
図3は、操作者が第1操作装置11を操作するときの状態を示している。図3に示すように、上側押圧プレート97と下側押圧プレート93との間には、操作者の人差し指X1を挿入可能な隙間が形成されている。上側補助プレート94aと下側補助プレート98との間には、操作者の親指X2を挿入可能な隙間が形成されている。図2に示すように、上側補助プレート94aは右側に延びている。上側補助プレート94aの右端には、上向きに延びる支持プレート94bが形成されている。支持プレート94bは、固定プレート95に固定されている。このように支持プレート94bが固定プレート95に固定されることによって、操作レバー15の全体が固定プレート95に固定されている。したがって、本実施形態では、操作レバー15および操作ハンドル13の両方が固定プレート95に固定されている。すなわち、操作レバー15と操作ハンドル13とは、同一の部材に固定されている。したがって、操作レバー15は操作ハンドル13に対して相対移動不能となっている。
【0046】
歪みゲージ16は、連結プレート96の前側の面に貼り付けられている。ただし、歪みゲージ16は、連結プレート96の後側の面に貼り付けられていてもよい。また、歪みゲージ16を連結プレート96の前側および後側の両方の面に貼り付けることも可能である。本実施形態では、歪みゲージ16は、連結プレート96の長手方向(すなわち上下方向)の中間の位置に配置されている。ただし、歪みゲージ16は、連結プレート96の上記中間位置から上側または下側にずれた位置に配置されていてもよい。また、歪みゲージ16は、連結プレート96に限らず、上側押圧プレート97、下側押圧プレート93、上側補助プレート94a、および下側補助プレート98のいずれか一箇所または二箇所以上に配置されていてもよい。例えば、歪みゲージ16は、下側押圧プレート93の根元側部分に貼り付けられていてもよい。
【0047】
なお、レバー本体15Aは、単一物であってもよく、複数の部材を組み合わせたものであってもよい。言い換えると、上側押圧プレート97、下側押圧プレート93、上側補助プレート94a、支持プレート94b、下側補助プレート98、および連結プレート96は、一体物であってよく、複数の部材が溶接等によって結合された物であってもよい。
【0048】
また、固定プレート95に対する支持プレート94bの固定方法は、特に限定されない。支持プレート94bは、ねじやボルト等の締結具を用いて固定プレート95に固定されていてもよい。また、支持プレート94bは、溶接等によって固定プレート95に接合されていてもよく、接着剤等を用いて固定プレート95に接着されていてもよい。
【0049】
《駆動装置、力覚提示装置》
図4に示すように、パワーアシストアーム1は、アーム2を駆動する駆動装置として、直動関節5を駆動する直動関節駆動装置21と、回転関節6を駆動する回転関節駆動装置23とを備えている。また、パワーアシストアーム1は、ハンド8を駆動する駆動装置として、ハンド駆動装置25を備えている。また、パワーアシストアーム1は、直動関節5の動作に基づいて第1操作装置11の操作ハンドル13に力覚を提示する直動関節力覚提示装置22と、回転関節6の動作に基づいて第1操作装置11の操作ハンドル13に力覚を提示する回転関節力覚提示装置24とを備えている。
【0050】
直動関節駆動装置21は、第1操作装置11または第2操作装置12における操作ハンドル13の操作入力(詳しくは、操作者が操作ハンドル13に対して棒状体9の長手方向と直交する方向に加える力)に応じて、直動関節5を伸縮させる。例えば、操作者が操作ハンドル13を前方に向かって押すと、直動関節駆動装置21は、直動関節5の可動部5bを前方に移動させる。逆に、操作者が操作ハンドル13を後方に向かって引くと、直動関節駆動装置21は、直動関節5の可動部5bを後方に移動させる。このような操作によって、直動関節5は伸縮することとなる。
【0051】
なお、操作ハンドル13の操作の際に、操作者が棒状体9に対してその長手方向と直交する方向の力を加えると、棒状体9は傾くようになる。また、操作者が棒状体9に対してその長手方向の力を加えると、棒状体9は根元側に押しつけられ、または根元側から引っ張られる。そして、6軸力覚センサ10は、6軸の力成分、すなわち、棒状体9の長手方向(以下、Y軸方向ともいう)の力、Y軸方向と直交する方向(以下、X軸方向という)の力、X軸方向およびY軸方向のいずれとも直交する方向(以下、Z軸方向という)の力、X軸回りの回転力、Y軸回りの回転力、およびZ軸回りの回転力を検出する。
【0052】
直動関節力覚提示装置22は、直動関節5の伸縮動作に応じた伸縮長さに基づく力覚を第1操作装置11に伝達する。具体的には、直動関節力覚提示装置22は、操作ハンドル13を、直動関節5の伸縮長さに応じた長さ分だけ前後方向に変位させる。これにより、第1操作装置11の操作ハンドル13に、直動関節5の伸縮に応じた力覚が提示される。
【0053】
回転関節駆動装置23は、第1操作装置11または第2操作装置12における操作ハンドル13の操作入力(詳しくは、操作者が操作ハンドル13に対して棒状体9を回転させる方向に加える力)に応じて、回転関節6を回転させる。
【0054】
回転関節力覚提示装置24は、回転関節6の回転動作に応じた回転角度に基づく力覚を第1操作装置11の操作ハンドル13に伝達する。具体的には、回転関節力覚提示装置24は、操作ハンドル13を回転関節6の回転角度に応じた角度分だけ回転させる。これにより、第1操作装置11の操作ハンドル13に、回転関節6の回転動作に応じた力覚が提示される。
【0055】
ハンド駆動装置25は、第1操作装置11または第2操作装置12の操作入力(詳しくは、操作者が操作レバー15の上側押圧プレート97を押し上げる力、または下側押圧プレート93を押し下げる力)に応じて、ハンド8を開閉させる。例えば、操作者の人差し指X1(図3参照)が上側押圧プレート97を押し上げると、ハンド部駆動装置25は、ハンド8が開くようにハンド8の可動部8bをスライドさせる。逆に、操作者の人差し指X1が下側押圧プレート93を押し下げると、ハンド部駆動装置25は、ハンド8が閉じるようにハンド8の可動部8bをスライドさせる。このような操作によって、ハンド8は開閉することとなる。
【0056】
《直動関節力覚提示装置》
図5に示すように、直動関節力覚提示装置22は、第1の油圧シリンダ31および第2の油圧シリンダ41を備えている。第1の油圧シリンダ31は、シリンダ33と、シリンダ33内部を第1空間34と第2空間35とに仕切るピストン36と、ピストン36に取り付けられたピストンロッド37とにより構成されている。第2の油圧シリンダ41も第1の油圧シリンダ31と同様に、シリンダ43と、シリンダ43内部を第3空間44と第4空間45とに仕切るピストン46と、ピストン46に取り付けられたピストンロッド47とにより構成されている。第1の油圧シリンダ31のシリンダ33および第2の油圧シリンダ41のシリンダ43内には、作動油が封入されている。
【0057】
また、第1の油圧シリンダ31の第1空間34と第2の油圧シリンダ41の第3空間44とには第1配管38が接続されており、第1空間34と第3空間44とは連通している。一方、第1の油圧シリンダ31の第2空間35と第2の油圧シリンダ41の第4空間45とには第2配管39が接続されており、第2空間35と第4空間45とは連通している。また、ピストンロッド37と直動関節5の可動部5bとは、リンク機構37a等を介して接続されている。また、ピストンロッド47と操作ハンドル13とは、リンク機構47a等を介して接続されている。
【0058】
《回転関節力覚提示装置》
図6に示すように、回転関節力覚提示装置24は、第1の油圧シリンダ51と、第1のレバー52と、第2の油圧シリンダ61と、第2のレバー62とを備えている。
【0059】
第1の油圧シリンダ51は、シリンダ53と、シリンダ53内部を第1空間54と第2空間55とに仕切るピストン56と、ピストン56に取り付けられたピストンロッド57とにより構成されている。本実施形態では、ピストンロッド57は、第1空間54を貫く様に設けられている。シリンダ53は、回転関節6のシャフト6aと平行な方向に延びる軸53aに揺動自在に支持されている。シリンダ53内には作動油が封入されている。
【0060】
第2の油圧シリンダ61は、シリンダ63と、シリンダ63内部を第3空間64と第4空間65とに仕切るピストン66と、ピストン66に取り付けられたピストンロッド67とにより構成されている。本実施形態では、ピストンロッド67は、第3空間64を貫くように設けられている。シリンダ63は、操作ハンドル13の棒状体9と平行な方向に延びる軸63aに揺動自在に支持されている。シリンダ63内には作動油が封入されている。
【0061】
第1の油圧シリンダ51の第1空間54と第2の油圧シリンダ61の第3空間64とには第1配管58が接続されており、第1空間54と第3空間64とは連通している。一方、第1の油圧シリンダ51の第2空間55と第2の油圧シリンダ61の第4空間65とには第2配管59が接続されており、第2空間55と第4空間65とは連通している。
【0062】
なお、第1のレバー52は棒状体からなり、回転関節6のシャフト6aからピストンロッド57に向かって延びている。第1のレバー52は、ピストンロッド57にピン52aを介して相対回転可能に結合されている。また、第1のレバー52は、回転関節6の回転機構6bに相対回転不能に接続されている。
【0063】
一方、第2のレバー62は棒状体からなり、操作ハンドル13の棒状体9からピストンロッド67に向かって延びている。第2のレバー62は、ピストンロッド67にピン62aを介して相対回転可能に結合されている。また、第2のレバー62は、操作ハンドル13に相対回転不能に接続されている。
【0064】
なお、図6では、第1のレバー52の端部とピストンロッド57の端部とが結合されている状態を示している。しかし、第1のレバー52とピストンロッド57とは、それぞれ端部ではなく中途部において結合されていてもよい。また、第2のレバー62とピストンロッド67も、同様に中途部において結合されていてもよい。
【0065】
《操作レバーを操作ハンドルに対して移動不能とした理由》
ところで、パワーアシストアーム1では、ハンド8の力覚を第1操作装置11および第2操作装置12の操作レバー15に伝達する力覚提示装置は設けられていない。また、ハンド8を操作するための操作レバー15は、固定プレート95に固定されており、移動不能となっている。しかし、本願発明者は、種々の実験の結果、そのような力覚提示装置を設けなくても、また、操作レバー15を移動可能に構成しなくても、操作者が視覚的情報または聴覚的情報に基づいてハンド8の力覚を実感することが可能であることを見出した。
【0066】
本願発明者は、複数の被験者を対象として、第1操作装置11を操作することによってハンド8でスチール缶を把持する実験を行った。実験には、長さが0.104mのスチール缶を用いた。ハンド8でスチール缶を把持しようとする場合、開いていたハンド8を閉じることになるが、ハンド8がスチール缶を把持する前では、ハンド8には負荷が加わらない。一方、ハンド8がスチール缶を把持し始めると、把持力に応じた負荷がハンド8に加わることになる。そこで、上記実験では、ハンド8が開いた状態から、操作レバー15の下側押圧プレート93を人差し指X1で押し下げ、ハンド8がスチール缶を把持したことを感じれば、下側押圧プレート93を押し下げることをやめ、逆に、人差し指X1で上側押圧プレート97を押し上げることとした。そして、このような動作、つまりハンド8の開閉を繰り返すこととした。
【0067】
図7〜図10は、上記実験結果を示すグラフである。詳しくは、図7は被験者Aによる1回目の実験結果を示し、図8は被験者Aによる2回目の実験結果を示す。図9は被験者Bの実験結果を示し、図10は被験者Cの実験結果を示す。図7〜図10における縦軸は、ハンド8の間隔(m)を表している。この間隔が0.104m(=スチール缶の長さ)となると、ハンド8はスチール缶を把持していることになり、上記間隔が0.104mよりも小さくなると、ハンド8はスチール缶を押しつぶしていることになる。上記間隔が減少して0.104m付近で停止すれば、被験者はハンド8の力覚を感じ、本ハンド8はスチール缶をつぶすのに十分な把持力を奏するが、ハンド8を閉じる操作を停止したことになる。
【0068】
図11は、上記実験結果をまとめた表であり、被験者がハンド8の閉じ動作を停止した位置(=ハンド8の間隔の値)を表している。図11の表から、多くの場合において、ハンド8はその間隔が0.104m付近の位置で停止されたことが分かる。このような結果から、ハンド8がスチール缶を把持する様子を視認できる範囲あるいはハンド8がスチール缶を把持する音が聞こえる範囲で操作する限り、ハンド8用の力覚提示装置を設けなくても、また、操作レバー15を移動可能に構成しなくても、操作者がハンド8の力覚を実感することが可能であることが分かった。
【0069】
そこで、本願発明者は、上記のような知見に基づき、操作レバー15を固定プレート95に固定し、操作レバー15を操作ハンドル13に対し相対移動不能とした。これにより、操作レバー15の操作に伴って操作ハンドル13に意図しない力が加えられることを抑制することができる。
【0070】
《パワーアシストアームの動作》
次に、パワーアシストアーム1の動作について説明する。なお、ここでは、動作の一例として、パワーアシストアーム1を用いて重量物500の運搬を行う場合について説明する。
【0071】
まず、図12(a)に示すように、操作者Xは、ハンド8から離れた位置にある第1操作装置11の操作ハンドル13を操作し、直動関節5を伸縮させるとともに回転関節6を回転させることにより、ハンド8を重量物500に接近させる。
【0072】
具体的には、直動関節5を伸縮させる際、操作者Xは、操作ハンドル13に対して前向きまたは後ろ向きの力を付加する。このとき、操作ハンドル13に取り付けられた6軸力覚センサ10により、その力の向きおよび大きさ等が検知される。そして、その力の向きおよび大きさ等を表す信号が、直動関節駆動装置21に送られる。直動関節駆動装置21は、上記信号に基づき、直動関節5の伸縮速度および伸縮長さを決定し、直動関節5の可動部5bを前方または後方に移動させる。これにより、直動関節5は伸縮させられることとなる。
【0073】
一方、直動関節5が伸縮すると、直動関節力覚提示装置22が駆動され、操作ハンドル13が前方または後方に変位する。これにより、直動関節5における力覚が操作者Xに提示される。
【0074】
具体的には、図5に示すように、直動関節5が伸縮すると、第1の油圧シリンダ31のピストンロッド37が直動関節5の可動部5bにリンクして、シリンダ33の第1空間34側または第2空間35側に移動する。これにより、第1の油圧シリンダ31が伸縮する。
【0075】
例えば、第1の油圧シリンダ31が伸びると、第1配管38を介して第1の油圧シリンダ31の第1空間34から第2の油圧シリンダ41の第3空間44に作動油が圧送されると共に、第2配管39を介して第2の油圧シリンダ41の第4空間45から第1の油圧シリンダ31の第2空間35に作動油が圧送される。一方、第1の油圧シリンダ31が縮むと、第2配管39を介して第1の油圧シリンダ31の第2空間35から第2の油圧シリンダ41の第4空間45に作動油が圧送されると共に、第1配管38を介して第2の油圧シリンダ41の第3空間44から第1の油圧シリンダ31の第1空間34に作動油が圧送される。
【0076】
このような動作により、ピストン46およびピストンロッド47が、油圧により第2の油圧シリンダ41の第3空間44または第4空間45側へ押圧される。ここで、ピストンロッド47は、操作ハンドル13とリンク機構47a等を介して接続されている。そのため、操作ハンドル13は、ピストンロッド47の移動にリンクして、前方または後方に変位することとなる。
【0077】
回転関節6を回転させる際、操作者Xは、操作ハンドル13に対して周方向の力を付加する。このとき、操作ハンドル13に取り付けられた6軸力覚センサ10により、力の向きおよび大きさ等が検知される。そして、その力の向きおよび大きさ等を表す信号が、回転関節駆動装置23(図4参照)に伝達される。回転関節駆動装置23は、この信号に基づき、回転関節6の回転速度および回転角度等を決定し、回転関節6の回転機構6bを回転駆動する。これにより、回転関節6に接続された前腕部7およびハンド8は旋回させられることとなる。
【0078】
一方、回転関節6の回転機構6bが回転すると、回転関節力覚提示装置24が駆動され、操作ハンドル13が周方向に変位する。これにより、回転関節6における力覚が操作者Xに提示される。
【0079】
具体的には、図6に示すように、回転機構6bが回転すると、第1のレバー52が回転機構6bと共に回転する。第1の油圧シリンダ51のピストンロッド57は、第1のレバー52の回転にリンクしてシリンダ53の第1空間54側または第2空間55側に移動する。これにより、第1の油圧シリンダ51が伸縮することとなる。
【0080】
第1の油圧シリンダ51が伸びると、第1配管58を介して第1の油圧シリンダ51の第1空間54から第2の油圧シリンダ61の第3空間64に作動油が圧送されると共に、第2配管59を介して第2の油圧シリンダ61の第4空間65から第1の油圧シリンダ51の第2空間55に作動油が圧送される。一方、第1の油圧シリンダ51が縮むと、第2配管59を介して第1の油圧シリンダ51の第2空間55から第2の油圧シリンダ61の第4空間65に作動油が圧送されると共に、第1配管58を介して第2の油圧シリンダ61の第3空間64から第1の油圧シリンダ51の第1空間54に作動油が圧送される。
【0081】
このような動作により、第2の油圧シリンダ61の一方の空間に作動油が圧送されると、ピストン66およびピストンロッド67は、油圧によって第3空間64側または第4空間65側へ押圧されて移動する。これに伴い、第2のレバー62は、ピストンロッド67にリンクして回転する。前述したように、第2のレバー62は操作ハンドル13に相対回転不能に接続されている。そのため、第2のレバー62の回転に伴い、操作ハンドル13は周方向に変位することとなる。
【0082】
このようにして、直動関節5および回転関節6を動作させてハンド8を重量物500に接近させる。次に、操作者Xは、第1操作装置11の操作レバー15を操作することにより、ハンド8を開閉させて重量物500を把持させる。
【0083】
まず、操作者Xは、図3に示すように、操作レバー15の上側補助プレート94aの下面に親指X2を添えた状態で、下側押圧プレート93の上面を人差し指X1で押し下げる。言い換えると、人差し指X1と親指X2とで、下側押圧プレート93と上側補助プレート94aとをつまむ。このとき、連結プレート96に微小な歪みが生じ、その歪み方向および歪み量が歪みゲージ16によって検出される。これにより、操作者による力の向きおよび大きさ等が検知される。歪みゲージ16からの信号は、ハンド駆動装置25に伝達される。ハンド部駆動装置25は、上記信号に基づき、ハンド8の開閉速度および開閉度合いを決定し、ハンド8の可動部8bをスライド移動させる。これにより、ハンド8は閉じられることになる。なお、操作者Xが人差し指X1と親指X2とを開くようにすると、人差し指X1は上側押圧プレート97を押し上げることとなる。その結果、連結プレート96には逆方向の歪みが生じ、その歪み方向および歪み量が歪みゲージ16によって検出される。歪みゲージ16からの信号はハンド駆動装置25に伝達され、ハンド駆動装置25はハンド8を開く方向に駆動する。
【0084】
このようにして、パワーアシストアーム1によれば、ハンド8を開閉させて重量物500を把持することができる。なお、重量物500の中には、傷付き易いまたは把持可能な部分が小さい等の理由により、ハンド8によって把持する際に微妙な動作が必要となるものがある。このような重量物500をハンド8で把持する場合、以下のように操作することも可能である。
【0085】
すなわち、ハンド8に微妙な動作が要求される場合、図12(b)に示すように、操作者Xは、ハンド8の付近まで移動し、ハンド8に近接した位置にある第2操作装置12を用いて直動関節5、回転関節6およびハンド8を操作する。なお、第2操作装置12の操作方法は、第1操作装置11の操作方法と同様である。
【0086】
このようにして、ハンド8に近接した位置にある第2操作装置12を用いて操作することにより、操作者Xは、ハンド8の動作を間近で目視しながら、ハンド8で重量物500を把持することができる。また、第2操作装置12の操作ハンドル13を用いて、直動関節5を伸縮させ、また、回転関節6を回転させて、ハンド8の位置を微調整することも可能である。
【0087】
ハンド8で重量物500を把持した後、第1操作装置11または第2操作装置12を操作して、直動関節5を伸縮させ、あるいは回転関節6を回転させて、ハンド8を所定の位置まで移動させる。そして、所定の位置においてハンド8を開くと、重量物500はハンド8から離れ、所定の位置に載置される。このような動作により、重量物500は所定の位置まで運搬される。
【0088】
《実施形態の効果》
以上のように、本実施形態に係るパワーアシストアーム1によれば、操作レバー15のレバー本体15Aと操作ハンドル13の棒状体9とが相対移動不能となっているので、操作者が棒状体9を握ったままレバー本体15Aに力を加えても、操作者の手がレバー本体15Aと共に変位することがない。そのため、操作レバー15を操作する際に、操作ハンドル13に意図しない操作力が入力されることを抑制することができる。したがって、ハンド8の操作の際に、アーム2に不必要な動きが発生することを抑制することができる。
【0089】
また、操作ハンドル13の棒状体9には、棒状体9を握ったときの操作者の手のひらを支える第1支持棒91と、棒状体9を握ったときの操作者の指の間(図3に示す例では、人差し指と中指との間)に位置する第2支持棒92とが設けられている。このように、操作ハンドル13は、略十字型に形成されている。このような構成により、棒状体9を握りながら操作レバー15を操作する操作者の手を安定して支持することができる。したがって、操作ハンドル13に意図しない操作力が入力されることを、より一層抑制することが可能となる。
【0090】
本実施形態によれば、操作ハンドル13と操作レバー15とは、同一の固定プレート95に固定されている。そのため、操作ハンドル13に対する操作レバー15の相対的な移動をより効果的に抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、操作レバー15のレバー本体15Aは、上側押圧プレート97および下側押圧プレート93に加えて、上側補助プレート94aおよび下側補助プレート98を備えている。なお、上側補助プレート94a、下側補助プレート98、上側押圧プレート97、および下側押圧プレート93は、互いに平行である。また、上側補助プレート94aおよび下側補助プレート98は、棒状体9の軸心9aを通りかつ下側押圧プレート93と平行な仮想面を境として、上側押圧プレート97および下側押圧プレート93と反対側に位置している。
【0092】
このような上側補助プレート94aを備えていることにより、図3に示すように、人差し指X1で下側押圧プレート93を押し下げようとした場合に、親指X2の動きが上側補助プレート94aによって規制されることになる。人差し指X1で下側押圧プレート93を押し下げようとすると、人差し指X1は、反力として下側押圧プレート93から上向きの力を受ける。しかし、親指X2の上方への移動が上側補助プレート94aによって規制されるので、人差し指X1が下側押圧プレート93から上向きの力を受けたとしても、操作者の手が操作ハンドル13上で不安定になることが抑制される。したがって、操作ハンドル13に対して意図しない操作力が入力されることを、さらに抑制することができる。
【0093】
また、下側補助プレート98を備えていることにより、人差し指X1で上側押圧プレート97を押し上げようとした場合に、親指X2の動きが下側補助プレート98によって規制されることになる。人差し指X1で上側押圧プレート97を押し上げようとすると、人差し指X1は、反力として上側押圧プレート97から下向きの力を受ける。しかし、親指X2の下方への移動が下側補助プレート98によって規制されるので、人差し指X1が上側押圧プレート97から下向きの力を受けたとしても、操作者の手が操作ハンドル13上で不安定になることが抑制される。したがって、操作ハンドル13に対して意図しない操作力が入力されることを抑制することができる。
【0094】
なお、直動関節駆動装置21および回転関節駆動装置23は、操作者が操作ハンドル13に対して加える力を増幅してアーム2を駆動させる。また、ハンド駆動装置25は、操作者が操作レバー15に対して加える力を増幅してハンド8を駆動させる。したがって、本実施形態によれば、マニピュレータの一種として、安定した操作が可能なパワーアシストアーム1を実現することができる。
【0095】
《変形例1》
図2に示すように、上記実施形態では、操作ハンドル13は6軸力覚センサ10を介して固定プレート95に固定されていた。言い換えると、6軸力覚センサ10は、操作ハンドル13と固定プレート95との間に介在していた(図13(a)参照)。しかし、図13(b)に示すように、6軸力覚センサ10を、固定プレート95を挟んで操作ハンドル13と反対側に配置してもよい。この変形例では、固定プレート95の左側の面(第1の面)に操作ハンドル13および操作レバー15が固定され、固定プレート95の右側の面(第2の面)であって固定プレート95を挟んで操作ハンドル13と反対側の位置に、6軸力覚センサ10が取り付けられている。この変形例では、操作ハンドル13に対する操作力は、固定プレート95を介して6軸力覚センサ10に伝わることになる。
【0096】
本変形例によれば、固定プレート95が操作ハンドル13に加わる力と操作レバー15に加わる力とを打ち消し合うので、6軸力覚センサ10に余計な力が入力されにくくなる。したがって、より正確な操作を行うことができる。
【0097】
《変形例2》
図2に示すように、上記実施形態では、操作ハンドル13の第1支持棒91は鉛直下向きに延び、第2支持棒92は鉛直上向きに延びており、第1支持棒91と第2支持棒92とは、棒状体9の軸心9aを中心として反対側の方向に延びていた。言い換えると、棒状体9の長手方向から棒状体9を見たときに、棒状体9の軸心9aから第1支持棒91が延びる方向と第2支持棒92が延びる方向とのなす角は、180度であった。しかし、この角度は、180度でなくてもよい。図14に示すように、第1支持棒91を後方斜め下向きに延ばすようにしてもよい。例えば、第1支持棒91を、鉛直線から45度(θ=45°)の角度をなすように後方斜め下向きに延ばすようにしてもよい。このような構成により、第1支持棒91の後側の面は棒状体9から後方斜め下向きに延びる面91sとなり、第1支持棒91を操作者の手のひらに対して、より接触しやすくすることができる。すなわち、第1支持棒91に、棒状体9を握ったときの手のひらに自然に沿うような接触面(上記の面91s)を形成することができる。したがって、棒状体9を握る操作者の手を、より安定化させることができる。
【0098】
《変形例3》
また、図15に示すように、手のひらに対する接触面積を大きくするよう、第1支持棒91にクッション91aを設けるようにしてもよい。なお、このクッション91aにも、棒状体9から後方斜め下向きに延びる面91sが含まれ、この面91sは手のひらに自然に沿うような接触面となる。このような形態であっても、棒状体9を握る操作者の手を、より安定化させることができる。
【0099】
《その他の変形例》
なお、本実施形態では、第1操作装置11は、支持部3に取り付けられていたが、第1操作装置11の設置位置はこれに限られない。例えば、アーム2の基端部2a(本実施形態では、上腕部4の後端部)に取り付けられていてもよい。
【0100】
本実施形態では、力覚の提示に際し、作動液として油を用いる油圧アクチュエータを用いている。しかし、作動液は油に限定されない。そのため、油圧アクチュエータではなく、他の液体を用いた液圧アクチュエータを用いてもよい。
【0101】
また、直動関節力覚提示装置22および回転関節力覚提示装置24は、作動液として油を用いる液圧アクチュエータを用いたものでなくてもよい。例えば、直動関節5、回転関節6の位置を検知する位置センサをそれぞれ設け、モータ等の駆動装置を用いて電気的に力覚を提示するものであってもよい。リンク機構等を用いて直接接続することにより、機械的に力覚を提示するものであってもよい。
【0102】
本実施形態に係るパワーアシストアーム1は、単独で使用してもよいが、複数で使用することも可能である。例えば、本パワーアシストアーム1を2つ用いることにより、双腕のパワーアシストアーム1を備えたパワーアシスト装置を実現することができる。当該パワーアシスト装置によれば、2つのパワーアシストアーム1を用いることにより、大きな動作と微妙な動作との両方を行わせることが可能なパワーアシスト装置を提供することができる。これにより、人間の両腕や両手の動作に近い動作を行わせることが可能となる。したがって、上記パワーアシスト装置によれば、操作性に優れたマニピュレータを複数備え、幅広い用途に用いることができるパワーアシスト装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明したように、本発明は、マニピュレータについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施形態に係るパワーアシストアームの構成を示す図である。
【図2】操作装置の斜視図である。
【図3】操作装置および操作装置を操作する手を表す斜視図である。
【図4】操作装置、駆動装置、および力覚提示装置の関係を示すブロック図である。
【図5】直動関節力覚提示装置の詳細図である。
【図6】回転関節力覚提示装置の詳細図である。
【図7】ハンドでスチール缶を把持する実験の結果を示すグラフである。
【図8】ハンドでスチール缶を把持する実験の結果を示すグラフである。
【図9】ハンドでスチール缶を把持する実験の結果を示すグラフである。
【図10】ハンドでスチール缶を把持する実験の結果を示すグラフである。
【図11】ハンドでスチール缶を把持する実験の結果をまとめた表である。
【図12】(a)は第1操作装置使用時の動作図であり、(b)は第2操作装置使用時の動作図である。
【図13】(a)は実施形態に係る操作装置の概略平面図であり、(b)は変形例に係る操作装置の概略平面図である。
【図14】変形例に係る操作ハンドルの斜視図である。
【図15】変形例に係る操作ハンドルの斜視図である。
【符号の説明】
【0105】
1 パワーアシストアーム(マニピュレータ)
2 アーム
5 直動関節
6 回転関節
8 ハンド
9 棒状体
10 6軸力覚センサ(力覚センサ)
11 第1操作装置
12 第2操作装置
13 操作ハンドル
15 操作レバー
15A レバー本体
16 歪みゲージ
21 直動関節駆動装置(駆動装置)
22 直動関節力覚提示装置(力覚提示装置)
23 回転関節駆動装置(駆動装置)
24 回転関節力覚提示装置(力覚提示装置)
25 ハンド部駆動装置(駆動装置)
90 フランジ
91 第1支持棒(第1支持部材)
92 第2支持棒(第2支持部材)
93 下側押圧プレート(プレート)
94 上側補助プレート
95 固定プレート(固定部材)
97 上側押圧プレート(プレート)
98 下側補助プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームと、
前記アームに取り付けられた開閉自在なハンドと、
操作者によって操作される操作装置であって、前記操作者が前記ハンドの動作を視認可能な範囲内または前記ハンドが把持対象物を把持するときの音を聞き取り可能な範囲内に設置された操作装置と、
前記操作者による前記操作装置に対する操作入力に基づき、前記アームおよび前記ハンドを駆動する駆動装置と、を備えたマニピュレータであって、
前記操作装置は、
前記操作者の手によって握られる棒状体を有し、前記アームを操作するための操作ハンドルと、
前記操作ハンドルに直接または間接的に取り付けられ、前記操作者により加えられる力を検出する力覚センサと、
前記棒状体を握ったときの前記操作者の手の指と接触可能な位置に配置された1または2以上のプレートを有し、前記棒状体に対して相対移動不能なレバー本体と、前記レバー本体に貼り付けられ、前記プレートに加えられた押圧力によって生じる前記レバー本体の歪みを検出する歪みゲージとを備え、前記プレートに加えられる押圧力に基づいて前記ハンドを操作する操作レバーと、
を備えているマニピュレータ。
【請求項2】
前記操作装置は、
前記棒状体から前記棒状体と略直交する方向に延び、前記棒状体を握ったときの前記操作者の手のひらを支える第1支持部材と、
前記棒状体から前記棒状体と略直交する方向に延び、前記棒状体を握ったときの前記操作者の指の間に位置する第2支持部材と、をさらに備えた、
請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項3】
前記レバー本体は、前記棒状体の軸心を通りかつ前記プレートと平行な仮想面を境として前記プレートと反対側に位置し、前記プレートと平行な補助プレートを有している、
請求項1または2に記載のマニピュレータ。
【請求項4】
前記レバー本体は、前記プレートとして、前記操作者の人差し指の上方に配置される上側押圧プレートと、前記人差し指の下方に配置される下側押圧プレートとを備え、前記補助プレートとして、前記操作者の親指の上方に配置される上側補助プレートと、前記親指の下方に配置される下側補助プレートとを備えている、
請求項3に記載のマニピュレータ。
【請求項5】
前記操作ハンドルと前記操作レバーとを支持する固定部材をさらに備えた、
請求項1〜4のいずれか一つに記載のマニピュレータ。
【請求項6】
前記固定部材は、前記操作ハンドルおよび前記操作レバーが固定された第1の面と、前記第1の面と反対側の面である第2の面とを有する固定プレートであり、
前記力覚センサは、前記固定プレートの前記第2の面上であって前記固定プレートを挟んで前記操作ハンドルと反対側の位置に取り付けられている、
請求項5に記載のマニピュレータ。
【請求項7】
前記棒状体は、水平方向に延び、
前記第1支持部材は、前記棒状体から後方斜め下向きに延びる面を有しており、
前記第2支持部材は、前記棒状体から上向きまたは斜め上向きに延びている、
請求項2に記載のマニピュレータ。
【請求項8】
前記第1支持部材は、前記棒状体から後方斜め下向きに延びる面を有するクッションを備えている、
請求項7に記載のマニピュレータ。
【請求項9】
前記アームの力覚を前記操作ハンドルに伝える力覚提示装置をさらに備えた、
請求項1〜8のいずれか一つに記載のマニピュレータ。
【請求項10】
前記駆動装置は、前記操作者による前記操作ハンドルに対する入力を増幅させて前記アームを駆動させ、前記操作者による前記操作レバーに対する入力を増幅させて前記ハンドを駆動させる、
請求項1〜9のいずれか一つに記載のマニピュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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